説明

情報処理装置、情報処理方法、およびプログラム

【課題】通信相手に対応する通信方式を効率的に選択する。
【解決手段】位置計測部32は、現在地の位置情報を取得し、リスト記憶部34は、複数の通信方式に優先順位がつけられて登録されている優先順位リストを位置情報に対応付けて記憶しており、情報処理部33は、取得された現在地の位置情報に対応する優先順位リストを、リスト記憶部34から読み出し、読み出した優先順位リストに基づいて、順次、複数の通信方式のうちのいずれかを選択し、選択した通信方式に対応して、通信相手との通信を非接触ICチップ35に実行させる。本発明は、例えば、非接触近接無線通信を行う携帯電話機に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、およびプログラムに関し、特に、通信相手に対応する通信方式を効率的に選択できるようにした情報処理装置、情報処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、非接触IC(Integrated Circuit)カードとリーダライタとの非接触近接無線通信においては、非接触ICカードがそれぞれ異なる通信方式により通信を実行する複数の回路を内蔵しており、リーダライタが単一の通信方式のみに対応している場合(以下、第1の場合という)がある。また反対に、非接触ICカードが単一の通信方式により通信を実行する回路を内蔵し、リーダライタが複数の通信方式に対応している場合(以下、第2の場合という)がある。
【0003】
なお、通信方式としては、例えば、非接触型ICカードの国際標準規格であるISO/IEC(International Organization for Standardization/International Electrotechnical Commission)14443に準拠した通信方式であるタイプAおよびタイプB、並びにソニー株式会社が開発したFeliCa(ソニー株式会社の登録商標)に準拠した通信方式(以下、タイプCという)などが存在する。
【0004】
上述した第1の場合には、非接触ICカード側がリーダライタ側に対応するように、複数の回路のうちのいずれかを選択する必要があり、以下のような回路選択技術が提案されている。
【0005】
すなわち、従来の回路選択技術では、非接触ICカードが、リーダライタと同一の通信方式により通信を行う回路がアクティベート(活性化、起動)されるまで、予め設定された所定の順序で、複数の回路を、順次、アクティベートしていくことにより、非接触近接無線通信が行われる。
【0006】
反対に、上述した第2の場合には、リーダライタ側が非接触ICカード側に対応するように、複数の通信方式を選択する必要があり、以下のようなカード捕捉信号発生技術が提案されている。
【0007】
すなわち、従来のカード捕捉信号発生技術では、単一の通信方式により通信を実行する回路を内蔵する非接触ICカードとの非接触近接無線通信を行うリーダライタが、それぞれ異なる通信方式を、順次、予め設定された所定の順序で選択し、通信方式が選択される毎に、選択された通信方式のカード捕捉信号を発生させることにより、非接触近接無線通信が行われる(例えば、特許文献1を参照)。
【0008】
【特許文献1】特開2004−264921号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、非接触ICカードと同等の機能を有する携帯電話が存在し、非接触ICカード(同等機能を有する携帯電話を含む)とリーダライタを用いる非接触近接無線通信は、日本のみならずヨーロッパやアメリカなどの各国各地域において利用されている。
【0010】
そして、各国各地域では、それぞれ、非接触近接無線通信における特定の通信方式が多数派を占める傾向にある。すなわち、例えば、日本では、タイプCが多数派を占めており、ヨーロッパでは、タイプAまたはタイプBが多数派を占めている。
【0011】
これに対して、従来の回路選択技術では、非接触近接無線通信を行う各国各地域に関係なく予め設定された所定の順序で、複数の回路を、順次、アクティベートしていくため、非接触近接無線通信を行う各国各地域によっては、通信相手に対応する通信方式を選択する選択効率が悪い。
【0012】
すなわち、例えば、それぞれ異なる通信方式により通信を実行する複数の回路を内蔵する非接触ICカードと同等の機能を有するとともに、いわゆる国際ローミングに対応する携帯電話を日本からヨーロッパなどに持っていって非接触ICカードとして使用するような場合、アクティベートの順序が固定されていると、通信相手となるリーダライタに対応する通信方式が速やかに選択されないことが発生し得る。
【0013】
また、従来のカード捕捉信号発生技術では、単一の通信方式により通信を実行する回路を内蔵する非接触ICカードと、カード捕捉信号を発生させるリーダライタとが近接したときから、リーダライタが、それぞれ異なる通信方式を、順次、非接触近接無線通信を行う各国各地域に関係なく予め設定された所定の順序で、選択していく場合には、やはり、選択効率が悪い。
【0014】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、通信相手に対応する通信方式を効率的に選択できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一側面の情報処理装置、またはプログラムは、現在地の位置情報を取得する取得手段と、複数の通信方式に優先順位がつけられて登録されている優先順位リストを位置情報に対応付けて記憶している記憶手段と、取得された前記現在地の位置情報に対応する優先順位リストを、前記記憶手段から読み出す読み出し手段と、読み出された前記優先順位リストに基づいて、順次、前記複数の通信方式のうちのいずれかを選択する選択手段と、前記複数の通信方式のうちのいずれかを用いて、通信相手との通信を実行する複数の通信手段と、前記複数の通信手段のうち、選択された通信方式に対応するものに前記通信を実行させる制御手段とを備える情報処理装置、または情報処理装置として、コンピュータを機能させるためのプログラムである。
【0016】
前記記憶手段では、前記優先順位リストを、広域の位置情報に対応付けて記憶しているようにすることができる。
【0017】
選択された通信方式に対応する前記通信手段による前記通信が失敗した場合、前記選択手段では、前記優先順位に基づいて、新たに通信方式を選択し、前記制御手段では、新たに選択された通信方式に対応する前記通信手段に前記通信を実行させることができる。
【0018】
新たに選択された前記通信方式に対応する前記通信手段による前記通信が成功した場合、新たに選択された前記通信方式が、最も高い優先順位となるように、前記優先順位リストを更新する更新手段をさらに設けることができる。
【0019】
前記通信相手と通信したデータを処理する複数のデータ処理手段をさらに設けることができ、前記優先順位リストには、さらに、複数のデータ処理にも優先順位がつけられて登録されており、前記選択手段では、さらに、前記優先順位リストに基づいて、順次、複数のデータ処理のうちのいずれかを選択し、前記制御手段では、さらに、前記複数のデータ処理手段のうち、選択されたデータ処理に対応するものに前記データ処理を実行させることができる。
【0020】
前記通信手段では、前記複数の通信方式のうちのいずれかを用いて、前記通信相手との非接触近接無線通信を実行することができる。
【0021】
本発明の一側面の情報処理方法は、前記取得手段が、現在地の位置情報を取得し、前記読み出し手段が、取得された前記現在地の位置情報に対応する優先順位リストを、複数の通信方式に優先順位がつけられて登録されている優先順位リストを位置情報に対応付けて記憶している前記記憶手段から読み出し、前記選択手段が、読み出された前記優先順位リストに基づいて、順次、前記複数の通信方式のうちのいずれかを選択し、前記制御手段が、前記複数の通信方式のうちのいずれかを用いて、通信相手との通信を実行する前記複数の通信手段のうち、選択された通信方式に対応するものに前記通信を実行させるステップを含む情報処理方法である。
【0022】
本発明の一側面においては、現在地の位置情報が取得され、取得された現在地の位置情報に対応する優先順位リストが、複数の通信方式に優先順位がつけられて登録されている優先順位リストを位置情報に対応付けて記憶している記憶手段から読み出され、読み出された優先順位リストに基づいて、順次、複数の通信方式のうちのいずれかが選択され、複数の通信方式のうちのいずれかを用いて、通信相手との通信を実行する複数の通信手段のうち、選択された通信方式に対応するものが通信を実行させられる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、通信相手に対応する通信方式を効率的に選択できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0025】
図1は、本発明の一実施の形態である携帯電話機を示している。
【0026】
この携帯電話機1は、国際ローミングに対応したものであり、通常の通話処理の他、例えば、ユーザにより、リーダライタ(図示せず)等の通信相手に近接されたとき、通信相手と非接触でデータの送受信(非接触近接無線通信)を行うことができる。
【0027】
すなわち、例えば、携帯電話機1は、ユーザにより近接されたリーダライタの種類に応じて、鉄道用の定期券、ユーザの勤務先のID(Identification)カード、または所定の加盟店での支払いに使用されるプリペイドカードとして機能する。
【0028】
携帯電話機1は、位置計測アンテナ31、位置計測部32、情報処理部33、リスト記憶部34、非接触ICチップ35、非接触通信アンテナ36、通話アンテナ37、通話処理部38、ディスプレイ39、および操作部40により構成される。
【0029】
位置計測アンテナ31は、例えば、GPS(Global Positioning System)信号を受信し、位置計測部32に供給する。
【0030】
位置計測部32は、位置計測アンテナ31からのGPS信号に基づいて、携帯電話機1(位置計測部32)の現在地の位置を計測し、その計測により得られた現在地の位置を表す情報(現在地の位置情報)を、情報処理部33に供給する。
【0031】
情報処理部33は、後述するリスト記憶部34に記憶(保持)されている複数の優先順位リストのうち、位置計測部32からの現在地の位置情報に対応する優先順位リストを、リスト記憶部34から読み出す。
【0032】
また、情報処理部33は、リスト記憶部34から読み出した優先順位リストに基づいて、通信相手との非接触近接無線通信に用いる通信方式、および通信相手との非接触近接無線通信に応じて実行される処理(通信相手からのデータ等を処理するデータ処理)を選択する。
【0033】
さらに、情報処理部33は、選択した通信方式を用いて非接触近接無線通信を実行させるとともに、非接触近接無線通信に応じて、選択した処理が実行されるように、非接触ICチップ35を制御する。
【0034】
リスト記憶部34は、優先順位リストを、例えば、国や地域などの広域な位置情報(広域位置情報)に対応付けて記憶している。
【0035】
次に、図2は、広域位置情報に対応付けて、リスト記憶部34に記憶されている優先順位リストの一例を示している。
【0036】
図2Aの優先順位リストは、所定の広域位置情報が表す日本に対応付けて、リスト記憶部34に記憶されているものである。また、図2Bの優先順位リストは、他の広域位置情報が表すヨーロッパに対応付けて、リスト記憶部34に記憶されているものである。
【0037】
なお、図2Aの優先順位リストと図2Bの優先順位リストとは、同様に構成されているため、以下、図2Aの優先順位リストについてのみ説明する。
【0038】
図2Aの優先順位リストには、日本に存在する通信相手との非接触近接無線通信に用いる通信方式、および、その通信方式を用いた通信相手との非接触近接無線通信に応じて実行される処理が、選択される優先順位が高い順序で登録されている。
【0039】
すなわち、例えば、図2Aの優先順位リストには、優先順位が1位の通信方式および処理として、タイプC、およびタイプCを用いた非接触近接無線通信に応じて、鉄道用の定期券として機能するための処理が登録されている。
【0040】
また、例えば、優先順位が2位の通信方式および処理として、タイプC、およびタイプCを用いた非接触近接無線通信に応じて、ユーザの勤務先のIDカードとして機能するための処理が登録されている。
【0041】
さらに、例えば、優先順位が3位の通信方式および処理として、タイプA、およびタイプAを用いた非接触近接無線通信に応じて、所定の加盟店での支払いに使用されるプリペイドカードとして機能するための処理が登録されている。
【0042】
また、例えば、優先順位が4位の通信方式および処理として、タイプB、およびタイプBを用いた非接触近接無線通信に応じて、鉄道用の定期券として機能するための処理が登録されている。
【0043】
なお、優先順位リストは、例えば、携帯電話機1のメーカ等により予め作成されて、リスト記憶部34に記憶されているものとする。すなわち、例えば、携帯電話機1のメーカ等により、広域位置情報が表す国や地域等で用いられる頻度が高い順序を優先順位として、通信方式および処理を登録した優先順位リストが作成され、広域位置情報に対応付けられて、リスト記憶部34に記憶される。
【0044】
また、リスト記憶部34は、広域位置情報それぞれに対応付けられた複数の優先順位リストの他、広域位置情報に関係なく作成されたデフォルトの優先順位リストを記憶している。
【0045】
図1に戻り、非接触ICチップ35は、情報処理部33の制御にしたがって、非接触通信アンテナ36を介して、通信相手との非接触近接無線通信を行う。
【0046】
非接触通信アンテナ36は、非接触ICチップ35からのデータを送信する。また、非接触通信アンテナ36は、通信相手からのデータを受信し、非接触ICチップ35に供給する。
【0047】
通話アンテナ37は、通話相手からの音声信号を受信し、通話処理部38に供給する。また、通話アンテナ37は、通話処理部38からの音声信号を送信する。
【0048】
通話処理部38は、通話アンテナ37からの音声信号に対して、ノイズキャンセラなどの処理を行い、その処理後の音声信号を、図示せぬスピーカなどに出力する。
【0049】
また、通話処理部38は、ユーザの発話により、図示せぬマイクロホンを介して得られた音声信号に対して、その音声信号を通話相手に送信するための処理を行い、その処理後の音声信号を、通話アンテナ37に供給する。
【0050】
ディスプレイ39は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)等であり、操作部40を用いたユーザ操作により、着信履歴等を表示する。
【0051】
操作部40は、各種のボタンやキー等により構成されており、ユーザにより操作される。
【0052】
次に、図3は、所定のプログラムを実行する非接触ICチップ35により実現される機能的な構成例を示している。
【0053】
非接触ICチップ35は、所定のプログラムを実行することにより、通信選択部61、通信部62-1乃至62-N、エレメント選択部63、およびセキュアエレメント64-1乃至64-Mとして機能する。
【0054】
なお、以下の説明において、通信部62-1乃至62-Nを、それぞれ区別する必要がない場合、単に、通信部62という。また、セキュアエレメント64-1乃至64-Mを、それぞれ区別する必要がない場合、単に、セキュアエレメント64という。
【0055】
通信選択部61は、情報処理部33の制御にしたがって、複数の通信部62のうち、通信相手との非接触近接無線通信に用いる通信用の通信部62を選択し、アクティベートする。なお、通信用の通信部62が、すでにアクティベートされている場合、通信用の通信部62のアクティベートは不要である。
【0056】
通信選択部61は、通信用の通信部62に、非接触通信アンテナ36からのデータを供給する。また、通信選択部61は、通信用の通信部62からのデータを、非接触通信アンテナ36に供給する。
【0057】
通信部62-1は、通信部62-2乃至62-Nそれぞれとは異なる通信方式を用いて、非接触通信アンテナ36および通信選択部61を介して、通信相手との非接触近接無線通信を実行する。
【0058】
すなわち、例えば、通信部62-1は、通信部62-1自身の通信方式に規定された復調方式および復号方式により、通信選択部61からのデータを復調および復号し、情報処理部33に供給する。また、通信部62-1は、通信部62-1自身の通信方式に規定された変調方式および符号化方式により、情報処理部33からのデータを変調および符号化し、通信選択部61に供給する。
【0059】
なお、通信部62-2乃至62-Nは、通信部62-1と同様に構成されるため、説明は省略する。
【0060】
エレメント選択部63は、情報処理部33の制御にしたがって、複数のセキュアエレメント64のうち、通信用の通信部62による非接触近接無線通信に応じて所定の処理を実行する処理用のセキュアエレメント64を選択し、アクティベートする。なお、処理用のセキュアエレメント64が、すでにアクティベートされている場合、処理用のセキュアエレメント64のアクティベートは不要である。
【0061】
エレメント選択部63は、処理用のセキュアエレメント64に、情報処理部33からのデータを供給する。また、通信選択部61は、処理用のセキュアエレメント64からのデータを、情報処理部33に供給する。
【0062】
セキュアエレメント64-1は、セキュアエレメント64-2乃至64-Mそれぞれとは異なるアプリケーションで動作し、例えば、通信相手との非接触近接無線通信により得られたデータ等を処理対象とするデータ処理をセキュアに実行する。
【0063】
なお、セキュアエレメント64-2乃至64-Mは、セキュアエレメント64-1と同様に構成されるため、説明は省略する。
【0064】
次に、図4のフローチャートを参照して、図1の携帯電話機1が行う非接触近接無線通信処理を説明する。
【0065】
この非接触近接無線通信処理は、例えば、ユーザが携帯電話機1の非接触通信アンテナ36が設置されている面を、通信相手の非接触通信アンテナに近接させたときに開始される。
【0066】
ステップS1において、位置計測部32は、位置計測アンテナ31を介して、GPS信号を受信したか否かを判定し、GPS信号を受信したと判定した場合、処理は、ステップS2に進められる。
【0067】
ステップS2において、位置計測部32は、位置計測アンテナ31からのGPS信号に基づいて、携帯電話機1の現在地の位置を計測し、その計測により得られた現在地の位置情報を、情報処理部33に供給する。
【0068】
ステップS3において、情報処理部33は、リスト記憶部34に記憶されている複数の優先順位リストのうち、位置計測部32からの現在地の位置情報に対応する優先順位リストを、リスト記憶部34から読み出す。
【0069】
なお、ステップS1において、GPS信号を受信していないと判定した場合、位置計測部32は、携帯電話1の現在地の位置を計測できなかったことを表す位置不明情報を、情報処理部33に供給する。そして、ステップS4において、情報処理部33は、リスト記憶部34に記憶されている複数の優先順位リストのうち、現在位置が不明であるときに用いられるデフォルトの優先順位リストを、リスト記憶部34から読み出す。
【0070】
ステップS5において、情報処理部33は、リスト記憶部34から読み出した優先順位リストに基づいて、優先順位が最も高い通信方式および処理、すなわち、例えば、図2に示したように、優先順位が1位のタイプCおよびタイプCを用いた非接触近接無線通信に応じて、鉄道用の定期券として機能するための処理を選択する。
【0071】
ステップS6において、情報処理部33は、ステップS5の処理で選択した通信方式を用いて非接触近接無線通信を実行させるために、通信選択部61および通信部62を制御する。
【0072】
このとき、通信選択部61は、情報処理部33の制御にしたがって、複数の通信部62のうち、通信相手との非接触近接無線通信に用いる通信用の通信部62を選択し、アクティベートする。また、通信用の通信部62は、情報処理部33の制御にしたがって、非接触通信アンテナ36および通信選択部61を介して、通信相手との非接触近接無線通信を実行する。
【0073】
ステップS7において、情報処理部33は、通信相手との非接触近接無線通信に応じて、ステップS5の処理で選択した処理が実行されるように、エレメント選択部63およびセキュアエレメント64を制御する。
【0074】
このとき、エレメント選択部63は、情報処理部33の制御にしたがって、複数のセキュアエレメント64のうち、通信用の通信部62を用いた非接触近接無線通信に応じて所定の処理を実行する処理用のセキュアエレメント64を選択し、アクティベートする。また、処理用のセキュアエレメント64は、情報処理部33の制御にしたがって、所定の処理を実行する。
【0075】
ステップS6およびステップS7において、情報処理部33が、通信選択部61乃至セキュアエレメント64を制御することにより、通信用の通信部62が通信相手との非接触近接無線通信を実行し、その非接触近接無線通信に応じて、処理用のセキュアエレメント64が所定の処理を実行する通信処理が行われるのを待って、処理は、ステップS8に進められる。
【0076】
ステップS8において、情報処理部33は、通信処理が成功したか否か、すなわち、例えば、通信処理により、通信相手とのデータのやりとりを正常に行うことができたか否かを判定する。
【0077】
ステップS8において、情報処理部33は、通信処理が失敗したと判定した場合、処理は、ステップS5に戻る。そして、情報処理部33は、優先順位リストに基づいて、前回のステップS5で選択した通信方式および処理の次に優先順位が高い通信方式および処理を選択する。
【0078】
ステップS5の終了後、処理は、ステップS6に進められ、以下、同様の処理が繰り返される。
【0079】
また、ステップS8において、情報処理部33は、通信処理が成功したと判定した場合、処理は、ステップS9に進められる。そして、情報処理部33は、成功した通信処理が、優先順位リストの優先順位が最も高い通信方式および処理による通信処理(1回目の通信処理)であるか否か、すなわち、1回目の通信処理で成功したか否かを判定する。
【0080】
ステップS9において、情報処理部33は、1回目の通信処理で成功したと判定した場合、処理は、ステップS10をスキップして、非接触近接無線通信処理は終了される。
【0081】
また、ステップS9において、情報処理部33は、1回目の通信処理で成功しなかったと判定した場合、処理は、ステップS10に進められる。そして、情報処理部33は、通信処理に成功したときの通信方式および処理の優先順位が最も高くなるように、ステップS3またはステップS4の処理で読み出した優先順位リストを更新し、リスト記憶部34に供給して、上書きする形で記憶させる。以上で、非接触近接無線通信処理は終了される。
【0082】
図3の非接触近接無線通信処理では、現在地の位置情報に対応する優先順位リストに登録された通信方式および処理が、優先順位が高い順序で選択され、通信方式および処理が選択される毎に、選択された通信方式により非接触近接無線通信を実行し、その非接触近接無線通信に応じて、選択された処理を実行する通信処理を行うこととした。
【0083】
したがって、例えば、複数の通信部62および複数のセキュアエレメント64を、現在地の位置情報に関係なく、所定の順序でアクティベートしていく場合と比較して、統計的に、通信相手との通信処理が成功するときに用いられる通信部62およびセキュアエレメント64を選択する選択効率を向上させることができる。
【0084】
また、図3の非接触近接無線通信処理では、選択効率を向上させることができるため、現在地の位置情報に関係なく、所定の順序でアクティベートしていく場合と比較して、アクティベートされる通信部62およびセキュアエレメント64の個数を少なくすることができる。したがって、通信処理が成功するまでの時間を短縮することができるとともに、アクティベートするときに消費される消費電力を抑制することが可能となる。
【0085】
さらに、図3の非接触近接無線通信処理では、ユーザによる選択操作により、予め、通信相手に対応する通信部62およびセキュアエレメント64を選択する必要がないため、非接触近接無線通信を実行するときに、ユーザに煩わしさを感じさせることを防止することが可能となる。
【0086】
なお、図4の非接触近接無線通信処理では、位置計測部32が、位置計測アンテナ31を介して、GPS信号を受信したと判定した場合、受信したGPS信号に基づいて、携帯電話機1の現在地の位置を計測して得られた現在地の位置情報に対応する優先順位リストを、リスト記憶部34から読み出すこととしたが、これに限定されない。
【0087】
すなわち、例えば、位置計測部32は、予め、所定のタイミングなどで、現在地の位置を計測し、現在地の位置情報を取得しておき、情報処理部33は、予め、所定のタイミングなどで、位置計測部32の計測により得られている現在地の位置情報に対応する優先順位リストを、リスト記憶部34から読み出すようにしてもよい。この場合、ステップS1、およびステップS2の処理を省略することができるため、より迅速に非接触近接無線通信処理を行うことが可能となる。
【0088】
また、例えば、位置計測部32により、予め、所定のタイミングなどで、現在地の位置を計測し、現在地の位置情報を取得しておいた上で、図4の非接触近接無線通信処理を行うようにすることができる。この場合、ステップS1において、位置計測部32がGPS信号を受信できなかった場合であっても、予め、所定のタイミングなどで、位置計測部32の計測により得られている現在地の位置情報を用いて、確実に、現在地の位置情報に対応する優先順位リストを読み出すことができる。
【0089】
したがって、例えば、位置計測部32が、予め、所定のタイミングなどで、現在地の位置を計測せずに、図4の非接触近接無線通信処理を行う場合と比較して、より選択効率を向上させることができる。
【0090】
上記実施の形態では、位置計測部32が、GPS信号に基づいて、携帯電話機1の現在地の位置を計測して、現在地の位置情報を取得することとしたが、これに限定されない。
【0091】
すなわち、例えば、位置計測部32は、携帯電話機1が接続可能な基地局から、その基地局を一意に表す基地局IDを受信し、受信した基地局IDに基づいて、基地局の位置を特定し、特定した基地局の位置に基づいて、携帯電話機1の位置を計測して、現在地の位置情報を取得することができる。また、例えば、位置計測部32は、携帯電話機1が接続可能な基地局から、その基地局の位置を表す情報を受信できる場合には、その情報を、そのまま、現在地の位置情報として取得するようにしてもよい。
【0092】
上記実施の形態では、通信方式として、非接触近接無線通信による通信方式を採用することとしたが、例えば、データの送受信に用いる接続端子を設けることにより、携帯電話機1と通信相手との接続端子どうしを接続(接触)させて通信を実行するときに用いられる通信方式にも適用することが可能である。
【0093】
さらに、上記実施の形態では、例えば、携帯電話機1のメーカ等が、広域位置情報が表す国や地域等で用いられる頻度が高い順序を優先順位として、通信方式および処理を登録した優先順位リストを作成し、広域位置情報に対応づけて、リスト記憶部34に記憶しておき、現在地の位置情報を含む広域位置情報に対応する優先順位リストを、通信方式および処理の選択に用いることとしたが、これに限定されない。
【0094】
すなわち、例えば、所定の位置に、通信方式および処理がそれぞれ異なる複数の通信相手が存在する場合には、位置情報が表す所定の位置で用いられる頻度が高い順序を優先順位として、通信方式および処理を登録した優先順位リストを作成し、位置情報に対応付けて、リスト記憶部34に記憶しておき、現在地の位置情報に対応する優先順位リストを、通信方式および処理の選択に用いるようにしてもよい。
【0095】
この場合、現在地の位置に存在する複数の通信相手の通信方式および処理のみを考慮して作成された優先順位リストを、通信方式および処理の選択に用いることができるため、現在地の位置の他、現在地の位置以外の位置に存在する通信相手の通信方式および処理が考慮されて作成された、現在地の位置情報を含む広域位置情報に対応する優先順位リストを、通信方式および処理の選択に用いる場合と比較して、より選択効率を向上させることが可能となる。
【0096】
なお、上記実施の形態では、本発明を適用した情報処理装置として、携帯電話機を採用することとしたが、これに限定されない。すなわち、例えば、複数の通信方式のうち、選択された所定の通信方式により通信を行い、その通信に応じて、複数の処理のうち、選択された所定の処理を行う、非接触ICカードやリーダライタなどに、本発明を適用することも可能である。
【0097】
ところで、上述した図4の非接触近接無線通信処理は、専用のハードウエアにより実行させることもできるし、ソフトウエアにより実行させることもできる。非接触近接無線通信処理をソフトウエアにより実行させる場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、いわゆる組み込み型のコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、記録媒体からインストールされる。
【0098】
図5は、上述した図4の非接触近接無線通信処理をプログラムにより実行するコンピュータの構成例を示している。
【0099】
CPU(Central Processing Unit)201は、ROM(Read Only Memory)202、または記憶部208に記憶されているプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM(Random Access Memory)203には、CPU201が実行するプログラムやデータなどが適宜記憶される。これらのCPU201、ROM202、およびRAM203は、バス204により相互に接続されている。
【0100】
CPU201にはまた、バス204を介して入出力インタフェース205が接続されている。入出力インタフェース205には、キーボード、マウス、マイクロホンなどよりなる入力部206、ディスプレイ、スピーカなどよりなる出力部207が接続されている。CPU201は、入力部206から入力される指令に対応して各種の処理を実行する。そして、CPU201は、処理の結果を出力部207に出力する。
【0101】
入出力インタフェース205に接続されている記憶部208は、例えばハードディスクからなり、CPU201が実行するプログラムや各種のデータを記憶する。通信部209は、インターネットやローカルエリアネットワークなどのネットワークを介して外部の装置と通信する。
【0102】
また、通信部209を介してプログラムを取得し、記憶部208に記憶してもよい。
【0103】
入出力インタフェース205に接続されているドライブ210は、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどのリムーバブルメディア211が装着されたとき、それらを駆動し、そこに記録されているプログラムやデータなどを取得する。取得されたプログラムやデータは、必要に応じて記憶部208に転送され、記憶される。
【0104】
コンピュータにインストールされ、コンピュータによって実行可能な状態とされるプログラムを記録(記憶)する記録媒体は、図5に示すように、磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disc)を含む)、光磁気ディスク(MD(Mini-Disc)を含む)、もしくは半導体メモリなどよりなるパッケージメディアであるリムーバブルメディア211、または、プログラムが一時的もしくは永続的に格納されるROM202や、記憶部208を構成するハードディスクなどにより構成される。記録媒体へのプログラムの記録は、必要に応じてルータ、モデムなどのインタフェースである通信部209を介して、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線または無線の通信媒体を利用して行われる。
【0105】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0106】
また、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明を適用した携帯電話機の構成例を示すブロック図である。
【図2】優先順位リストの一例を示す図である。
【図3】非接触ICチップの機能的な構成例を示すブロック図である。
【図4】非接触近接無線通信処理を説明するフローチャートである。
【図5】コンピュータの構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0108】
31 位置計測アンテナ, 32 位置計測部, 33 情報処理部, 34 リスト記憶部, 35 非接触ICチップ, 36 非接触通信アンテナ, 61 通信選択部, 62-1乃至62-N 通信部, 63 エレメント選択部, 64-1乃至64-M セキュアエレメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現在地の位置情報を取得する取得手段と、
複数の通信方式に優先順位がつけられて登録されている優先順位リストを位置情報に対応付けて記憶している記憶手段と、
取得された前記現在地の位置情報に対応する優先順位リストを、前記記憶手段から読み出す読み出し手段と、
読み出された前記優先順位リストに基づいて、順次、前記複数の通信方式のうちのいずれかを選択する選択手段と、
前記複数の通信方式のうちのいずれかを用いて、通信相手との通信を実行する複数の通信手段と、
前記複数の通信手段のうち、選択された通信方式に対応するものに前記通信を実行させる制御手段と
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記記憶手段は、前記優先順位リストを、広域の位置情報に対応付けて記憶している
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
選択された通信方式に対応する前記通信手段による前記通信が失敗した場合、
前記選択手段は、前記優先順位に基づいて、新たに通信方式を選択し、
前記制御手段は、新たに選択された通信方式に対応する前記通信手段に前記通信を実行させる
請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
新たに選択された前記通信方式に対応する前記通信手段による前記通信が成功した場合、新たに選択された前記通信方式が、最も高い優先順位となるように、前記優先順位リストを更新する更新手段をさらに備える
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記通信相手と通信したデータを処理する複数のデータ処理手段をさらに備え、
前記優先順位リストには、さらに、複数のデータ処理にも優先順位がつけられて登録されており、
前記選択手段は、さらに、前記優先順位リストに基づいて、順次、複数のデータ処理のうちのいずれかを選択し、
前記制御手段は、さらに、前記複数のデータ処理手段のうち、選択されたデータ処理に対応するものに前記データ処理を実行させる
請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記通信手段は、前記複数の通信方式のうちのいずれかを用いて、前記通信相手との非接触近接無線通信を実行する
請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項7】
通信相手との通信を実行する情報処理装置の情報処理方法において、
前記情報処理装置は、
取得手段と、
記憶手段と、
読み出し手段と、
選択手段と、
複数の通信手段と、
制御手段と
を備え、
前記取得手段が、現在地の位置情報を取得し、
前記読み出し手段が、取得された前記現在地の位置情報に対応する優先順位リストを、複数の通信方式に優先順位がつけられて登録されている優先順位リストを位置情報に対応付けて記憶している前記記憶手段から読み出し、
前記選択手段が、読み出された前記優先順位リストに基づいて、順次、前記複数の通信方式のうちのいずれかを選択し、
前記制御手段が、前記複数の通信方式のうちのいずれかを用いて、通信相手との通信を実行する前記複数の通信手段のうち、選択された通信方式に対応するものに前記通信を実行させる
ステップを含む情報処理方法。
【請求項8】
コンピュータを、
現在地の位置情報を取得する取得手段と、
複数の通信方式に優先順位がつけられて登録されている優先順位リストを位置情報に対応付けて記憶している記憶手段と、
取得された前記現在地の位置情報に対応する優先順位リストを、前記記憶手段から読み出す読み出し手段と、
読み出された前記優先順位リストに基づいて、順次、前記複数の通信方式のうちのいずれかを選択する選択手段と、
前記複数の通信方式のうちのいずれかを用いて、通信相手との通信を実行する複数の通信手段と、
前記複数の通信手段のうち、選択された通信方式に対応するものに前記通信を実行させる制御手段と
して機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−303107(P2009−303107A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−157665(P2008−157665)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】