情報処理装置、表示制御方法及びプログラム
【課題】ホバー対象が指で隠れないようにホバー座標のオフセットを最適化する。
【解決手段】タッチパネルのタッチ面に表示されたホバー座標と、デバイス本体の傾きとを特定し、前記特定されたデバイス本体の傾きに応じて、前記特定されたホバー座標のオフセット値を決定する表示制御部を備える、情報処理装置が提供される。
【解決手段】タッチパネルのタッチ面に表示されたホバー座標と、デバイス本体の傾きとを特定し、前記特定されたデバイス本体の傾きに応じて、前記特定されたホバー座標のオフセット値を決定する表示制御部を備える、情報処理装置が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、表示制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
指やスタイラス等を使ってタッチパネルの操作を行う場合、機器本体に付設された特定の操作キー又はタッチパネル上に設けられた特定の操作領域を使って入力操作のモード変更を行うことができる。通常の入力操作モードでは、タッチ直後にリリースを行う操作が、マウス操作時における通常のクリックに相当する。マウス操作には、前記クリック以外にマウスポインタのみの移動操作が挙げられ、ユーザは状況に応じてこれらの操作を使い分けることが必要とされる。マウスポインタの移動操作に相当するモードをホバーモード、マウスポインタの移動操作のための表示をホバー表示という。
【0003】
指などがタッチ面に触れないまでも、ある程度までタッチ面に近づいた場合、タッチ面から指までの対向距離に応じた表示状態の変化が起これば、今までにない情報表示状態を実現できる。例えば、指がタッチ面に接触した場合には入力操作モード、指が所定距離だけタッチ面に近接した場合にはホバーモードというように遷移して、表示状態のモードの変更が行われる構成形態では、占有面積を最小限に抑えて多種の操作を行うことができる。
【0004】
例えば、特許文献1では、静電容量型の表示パネルを用いて、表示パネルのタッチ面に指先が接触したときに接触した指先の位置を検出するとともに、タッチ面に指先が近づいたときに近接した指先の位置を検出する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−117371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ホバー表示されている対象(ホバー対象)に指を近付けていくと、ホバー対象に向けられている視線が操作する指で遮られ、ホバー対象の文字等が指で隠れて指の操作が正しくホバー対象に反応しているか見分けることが難しくなる。
【0007】
そこで、ホバー対象が指で隠れないようにホバー座標のオフセットを最適化することが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示によれば、タッチパネルのタッチ面に表示されたホバー座標とデバイス本体の傾きとを特定し、前記特定されたデバイス本体の傾きに応じて前記特定されたホバー座標のオフセット値を決定する表示制御部を備える、情報処理装置が提供される。
【0009】
また、本開示によれば、タッチパネルのタッチ面に表示されたホバー座標を特定することと、デバイス本体の傾きを特定することと、前記特定されたデバイス本体の傾きに応じて前記特定されたホバー座標のオフセット値を決定することを含む、表示制御方法が提供される。
【0010】
また、本開示によれば、タッチパネルのタッチ面に表示されたホバー座標を特定する処理と、デバイス本体の傾きを特定する処理と、前記特定されたデバイス本体の傾きに応じて前記特定されたホバー座標のオフセット値を決定する処理と、をコンピュータに実行させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように本開示によれば、ホバー対象が指で隠れないようにホバー座標のオフセットを最適化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1〜第3実施形態に係る情報処理装置のハードウエア構成図である。
【図2】タッチ面への近接及び接触を説明するための図である。
【図3】ファットフィンガを説明するための図である。
【図4】デバイス本体の傾きとオフセットを説明するための図である。
【図5】第1〜第3実施形態に係る情報処理装置の機能構成図である。
【図6】第1実施形態に係るホバー座標のオフセット処理を示すフローチャートである。
【図7】デバイス本体の傾きとオフセットとの関係を示したテーブルである。
【図8】デバイス本体の傾きとオフセットとの関係を説明するための図である。
【図9】ホバー表示の一例を示した図である。
【図10】視線の傾きとオフセットとの関係を説明するための図である。
【図11】第2実施形態に係るホバー座標のオフセット処理を示すフローチャートである。
【図12】デバイス本体の傾きと視線の傾きの差分とオフセットとの関係を示したテーブルである。
【図13】ホバー表示の一例を示した図である。
【図14】第3実施形態に係るホバー座標のオフセット処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0014】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.ファットフィンガ
2.第1実施形態(デバイス本体の傾きとオフセット)
3.第2実施形態(デバイス本体の傾き及び視線の傾きの差分とオフセット)
4.第3実施形態(オフセット値の正負判定)
【0015】
<1.ファットフィンガ>
まず、ファットフィンガについて説明する。ここでは、ホバー表示の一例としてホバーカーソルを例に挙げて説明するが、ホバー表示の方法はどんな図形や画像を用いてもよい。
【0016】
図3の左方に示したように、指が情報処理装置の筐体であるデバイス本体11上のタッチ面Tに対して所定時間以上近接状態にあるときホバーモードに遷移し、ホバーカーソルH1がホバー表示される。ホバーカーソルH1は、入力操作対象の位置を指し示す図形である。指が近接状態のままタッチ面Tの上方を移動すると、ホバーカーソルH1が移動し、指がホバーカーソルH1をタッチすると、ホバーカーソルH1内の文字等が入力操作される。
【0017】
しかし、ホバーカーソルH1に指を近付けていく際、ホバー対象に向けられている視線が操作する指で遮られ、ホバー対象の文字等が指で隠れて指の操作がホバー対象に正しく反応しているか見分けることが難しくなる。これをファットフィンガ(Fat Finger)という。
【0018】
そこで、ホバー対象に向けられている視線が操作する指で隠れないように、ホバーカーソルH1の位置を示すホバー座標をわずかにオフセットし、オフセット後のホバー座標にホバーカーソルH1’を表示する。図3の右方では、ホバー対象に向けられている視線が操作する指で遮られない位置までホバーカーソルH1’が移動している。これにより、指がホバー対象に正しく反応しているかを見分けることが容易になる。
【0019】
ところが、図4の左方に示したように、デバイス本体11の傾きが0度の場合のホバー座標のオフセット値と、図4の右方に示したように、デバイス本体11の傾きが45度の場合のホバー座標のオフセット値とを同値に設定すると、デバイス本体11の傾きが45度の場合には、オフセット後のホバー座標に表示したホバーカーソルH1’が、逆に指から離れすぎて「ズレ」としてユーザに認識されてしまう場合がある。
【0020】
<2.第1実施形態>
そこで、第1実施形態に係る情報処理装置10では、デバイス本体11の傾きに応じてホバー座標のオフセット値を可変に制御し、これにより、適切な位置にホバーカーソルを表示する。情報処理装置10は、ユーザの指の接触位置、近接位置及びデバイス本体の傾きを検出できるセンサを搭載したデバイスである。情報処理装置10は、近接式タッチパネル付きの機器であればよい。
【0021】
(ハードウエア構成)
図1は、第1実施形態に係る情報処理装置10のハードウエア構成を示す。第1実施形態に係る情報処理装置10は、近接検出式タッチパネル12、傾き検出センサ14、視線検出センサ16、CPU18、RAM20、不揮発メモリ22及び表示装置24を有する。
【0022】
近接検出式タッチパネル12は、近接を検出可能な表示パネルである。近接検出式タッチパネル12には静電容量式の表示パネルが用いられる。たとえば、図2に示したように、指から近接検出式タッチパネル12のタッチ面までの距離が予め定められた閾値Lpより大きい場合、近接検出式タッチパネル12は何も検知しない(図2(a):非近接状態 不感帯)。指からタッチ面までの距離が閾値Lpより小さくなり指が中間検出領域に入り所定時間が経過すると、近接検出式タッチパネル12は指の近接位置を検出する(図2(b):近接状態 感帯)。指がタッチ面に接触した場合、近接検出式タッチパネル12は指の接触位置を検出する(図2(c):接触状態)。
【0023】
このように、近接検出式タッチパネル12は、近接検出式タッチパネル12のタッチ面からの奥行き方向(z方向の座標)の指の近接位置を検出するとともに、タッチ面での指の接触位置(x方向及びy方向の座標)を検出することが可能である。
【0024】
再び図1に戻って、傾き検出センサ14は、情報処理装置10のデバイス本体11に取り付けられていて、デバイス本体11の基本姿勢(デバイス本体11の傾き0度)の基準面に対するx軸方向及びy軸方向の傾斜角を算出する。傾き検出センサ14は、加速度センサの一例としてのジャイロセンサで実現することができる。
【0025】
視線検出センサ16は、近接検出式タッチパネル12を操作するユーザの視線を検出する。例えば、視線検出センサ16は、視線検出方法を用いて瞳孔の動きをカメラで追跡し、撮像した画像を解析することにより視線の傾き(視線の方向)を検出する。光学式センサを用いて画像から虹彩、瞳孔、ブルキニエ像(反射像)を検出することにより視線の傾きを検出してもよい。
【0026】
近接検出式タッチパネル12、傾き検出センサ14、視線検出センサ16によりそれぞれ検出されたセンサ値は、RAM20又は不揮発性メモリ22に送られ、記憶される。CPU18は各部と接続されていて、RAM20又は不揮発性メモリ22に記憶された各種センサ値を取得し、各種センサ値に基づき、指の接触位置、指の近接位置、デバイス本体の傾き、視線の傾きを算出する。
【0027】
また、RAM20や不揮発メモリ22には、ホバー座標のオフセット処理を実行するためのプログラムやオフセット値を決定するためのテーブル、閾値等の各種データが記憶されている。CPU18は、上記プログラムを読み出して実行することにより、ホバー座標のオフセット処理を実行する。表示装置24は、オフセット処理後のホバー座標の位置にホバーカーソル等を表示する。CPU18は、表示装置24と接続され、表示装置24から送信される情報を処理する。
【0028】
(機能構成)
以上、図1を参照して、第1実施形態に係る情報処理装置10のハードウエア構成を説明した。次に、図5を参照しながら、第1実施形態に係る情報処理装置10の機能構成について説明する。第1実施形態に係る情報処理装置10は、表示制御部30と記憶部32とを有している。
【0029】
表示制御部30は、近接検出式タッチパネル12によるホバー座標の検出結果から近接検出式タッチパネル12のタッチ面に表示されたホバー座標(x方向、y方向の座標)を特定する。表示制御部30は、近接検出式タッチパネル12による奥行き検出結果から指の近接位置(z方向の座標)を特定する。表示制御部30は、傾き検出センサ14によるデバイス本体11の傾き検出結果からデバイス本体11の傾きを特定する。表示制御部30は、特定されたデバイス本体11の傾きに応じて、ホバー座標のオフセット値を決定してもよい。また、表示制御部30は、視線検出センサ16による視線検出結果からタッチ面への視線の傾きを特定する。表示制御部30は、デバイス本体の傾き及び視線の傾きの差分に応じてオフセット値を決定してもよい。表示制御部30は、オフセット値をホバー座標に加算することによりホバー座標を補正し、これによりタッチ面のホバー表示をずらす。
【0030】
記憶部32は、近接又は非近接を判定するための閾値Lpや、オフセット値を決定するためのテーブル(図7、図13)を記憶する。表示制御部30は、各テーブルに基づき、オフセット値を決定することができる。
【0031】
(動作)
以上、図5を参照して、第1実施形態に係る情報処理装置10の機能構成を説明した。続いて、図6〜図9を参照し、第1実施形態に係る情報処理装置10の動作を説明する。
【0032】
図6は、第1実施形態に係る情報処理装置10の動作を示すフローチャートである。図6に示したように、まず、指が中空検出領域内で一定時間待機していることが検出された場合(S605)、表示制御部30は、ホバーモードに遷移し、表示装置24にホバーカーソルを表示させる(S610)。
【0033】
また、表示制御部30は、近接検出式タッチパネル12からホバー座標の検出結果を取得し(S615)、傾き検出センサ14からデバイス本体11の傾き検出結果を取得する(S620)。続いて、表示制御部30は、デバイス本体11の傾きに応じて、ホバーカーソルのオフセット値を決定する(S625)。ここで、図7を参照し、デバイス本体の傾きとオフセット値との関係について具体的に説明する。
【0034】
図7は、デバイス本体の傾きとオフセット値との関係を示したテーブルである。図7に示したように、例えばデバイス本体11の傾きが0〜90度の範囲内では傾きが大きいほどオフセット値は減少する。また、デバイス本体11の傾きが90〜180度の範囲内ではオフセット値は0となる。
【0035】
デバイス本体11の傾きが180〜270度の範囲内では傾きが大きいほどオフセット値は増加する。さらに、表示制御部30は、デバイス本体11の傾きが270〜360度の範囲内ではオフセット値は一定になり、デバイス本体11の傾きが0度の場合と同値になる。このテーブルでは、いずれの範囲内でもオフセット値は正の値をもつ。
【0036】
ここで、図6に戻ると、表示制御部30は、S625において決定したオフセット値を、S615において取得したホバー座標に加算する(S630)。そして、表示制御部30は、S630で算出したホバー座標にホバーカーソルを表示するように制御する(S635)。以上、情報処理装置10の動作について説明した。以下、図8および図9を参照し、ホバーカーソルの表示制御についてより具体的に説明する。
【0037】
図8は、デバイス本体11の代表的な傾きにおいてホバー座標に加算されるオフセット値を説明するための図である。図8に示したように、ホバー座標に加算されるオフセット値は、デバイス本体11の傾きが0度の場合に最も大きく、デバイス本体11の傾きが90度の場合に最も小さくなる。デバイス本体11の傾きが45度の場合のオフセット値は、傾きが0度の場合のオフセット値と90度の場合のオフセット値の中間値をとる。これにより、デバイス本体11の傾きに応じて、ホバーカーソルHで示された文字等が指で隠れてしまうことを防止しつつ、適切な位置にホバーカーソルHを表示することが可能となる。
【0038】
図9は、ホバー表示例である。ホバー座標にオフセット値を加算しないと、図9の左方に示したように、ホバーカーソルHで示されるホバー対象の文字等が指で隠れてしまう。一方、本実施形態では、デバイス本体の傾きに応じて、オフセット値を可変に制御することにより、図9の右方に示したようにホバーカーソルHで示されるホバー対象の文字等が指で隠れず、かつホバーカーソルHが指から離れすぎないようにホバー表示を制御することができる。これにより、デバイス本体11の傾きによってユーザの操作コンテキストを推定し、ホバー表示時のオフセット値を最適値に調整することによって、指の操作がホバー対象に正しく反応しているかを見分けることが容易になる。
【0039】
(変形例)
以上、第1実施形態に係る情報処理装置10では、デバイス本体11の傾きに応じてオフセット値を可変に制御した。これに対して、変形例では視線の傾きに応じてオフセット値を可変に制御する。図10を参照しながら変形例について説明する。
【0040】
図10は、視線の代表的な傾きにおいてホバー座標に加算されるオフセット値を示す。図10に示したように、ホバー座標に加算されるオフセット値は、視線の傾きが135度及び45度の場合、正負が反対で大きさが同じ値を有し、視線の傾きが90度の場合は視線方向の傾きが135度と45度の場合より小さい値をとってもよい。これにより、視線の傾きに応じて、ホバーカーソルH内の文字等が指で隠れてしまうことを防止しつつ、適切な位置にホバーカーソルHを表示することが可能となる。
【0041】
<3.第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る情報処理装置10について説明する。第2実施形態に係る情報処理装置10のハードウエア構成及び機能構成は第1実施形態と同じであるため、ここでは省略する。以下では、図11〜図13を参照し、第2実施形態に係る情報処理装置10の動作について説明する。
【0042】
(動作)
図11は、第2実施形態に係る情報処理装置10の動作を示すフローチャートである。S605〜S620は第1実施形態と同様であり、指が中空検出領域内で一定時間待機していることが検出された場合(S605)、表示制御部30は、ホバーモードに遷移し、表示装置24にホバーカーソルを表示させる(S610)。また、表示制御部30は、近接検出式タッチパネル12からホバー座標の検出結果を取得し(S615)、傾き検出センサ14からデバイス本体11の傾き検出結果を取得する(S620)。
【0043】
次に、表示制御部30は、視線検出センサ16から視線の傾きの検出結果を取得したかを判定する(S1105)。取得したと判定した場合、表示制御部30は、デバイス本体11の傾きと視線の傾きの差分に基づき、オフセット値を決定する(S1110)。ここで、図12を参照し、デバイス本体11の傾きと視線の傾きの差分(以下、単に差分ともいう)とオフセット値との関係について具体的に説明する。
【0044】
図12の中央に示すグラフは、デバイス本体11の傾きと視線の傾きの差分とオフセット値との関係を示したテーブルである。図12に示したように、例えばデバイス本体11の傾きと視線の傾きの差分が0〜90度の範囲内では、前記差分が大きいほどオフセット値は増加する。また、この範囲でのオフセット値は負の値を取る。デバイス本体11の傾きと視線の傾きの差分が90〜180度の範囲内でも、前記差分が大きいほどオフセット値は増加する。また、この範囲でのオフセット値は正の値を取る。
【0045】
デバイス本体11の傾きと視線の傾きの差分が180〜360度の範囲内ではその差分の値によらずオフセット値は0となる。180〜360度の範囲内では、タッチ面の裏側から覗く形になるためオフセット処理は不要だからである。
【0046】
ここで、図11の説明に戻り、S1105において視線検出センサ16から視線の傾きの検出結果を取得していないと判定した場合、表示制御部30は、デバイス本体11の傾きに応じてオフセット値を決定する(S625)。
【0047】
次に、表示制御部30は、S1110又はS625において決定したオフセット値を、S615において検出したホバー座標に加算する(S630)。そして、表示制御部30は、S630で算出したオフセット後のホバー座標にホバーカーソルを表示するように制御する(S635)。以下、図12および図13を参照し、ホバーカーソルの表示制御についてより具体的に説明する。
【0048】
図12の右方及び左方は、デバイス本体11の傾きと視線の傾きとの差分が45度と135度の場合のオフセット値を示す。前記差分が45度の場合にホバー座標に加算されるオフセット値は、差分が135度の場合にホバー座標に加算されるオフセット値と正負が逆で絶対値が同じ値となる。これにより、デバイス本体11の傾きと視線の傾きとの差分に応じて、ホバーカーソルHで示されたホバー対象の文字等が指で隠れてしまうことを防止しつつ、適切な位置にホバーカーソルHを表示することが可能となる。
【0049】
図9及び図13は、ホバー表示例である。前述したように、ホバー座標にオフセット値を加算しないと、図9及び図13の左方で示したように、ホバーカーソルHで示されるホバー対象の文字等が指で隠れてしまう。S1105本実施形態では、デバイス本体11の傾きと視線の傾きの差分に応じてオフセット値を可変に制御することにより、図9及び図13の右方に示したようにホバーカーソルHで示されるホバー対象の文字等が指で隠れず、かつホバーカーソルHが指から離れすぎないようにホバー表示を制御することができる。この結果、指の操作がホバーに正しく反応しているか見分けることが容易になる。
【0050】
また、オフセット値が負の値となる場合には、図13の右方に示したようにホバーカーソルHの位置は、オフセット値が正の値となる場合と反対側にずれる。デバイス本体11の傾きと視線の傾きの差分が0〜90度の範囲内においては、オフセット値が負の値をとるため、図13の右方に示したようにホバーカーソルHが紙面上で下方に移動する。前記差分が90〜180度の範囲内においては、オフセット値が正の値をとるため、図9に示したようにホバーカーソルHが紙面上で上方に移動する。これによれば、対面操作等、画面上の通常操作方向と逆の方向から覗く操作の場合にも指の操作がホバーに正しく反応しているか見分けることが容易になる。なお、図9及び図13では、タッチ面のy方向にオフセット処理されている。
【0051】
<4.第3実施形態>
最後に、第3実施形態に係る情報処理装置10について説明する。第3実施形態に係る情報処理装置10のハードウエア構成及び機能構成は第1実施形態と同じであるため、ここでは省略する。以下では、図14を参照し、第3実施形態に係る情報処理装置10の動作について説明する。
【0052】
(動作)
図14は、第3実施形態に係る情報処理装置10の動作を示すフローチャートである。S605〜S625、S1105、S1110は第2実施形態と同様であるためここでは説明を省略するが、これら一連の処理によりオフセット値が決定される。
【0053】
次に、表示制御部30は、手の向きの検出結果を取得したかを判定する(S1405)。静電容量型の近接検出式タッチパネル12を用いて手の根元方向を検出することにより、手の向き(手の先の向き)は検出される。S1405において手の向きの検出結果を取得したと判定した場合、表示制御部30は、S1110又はS625で決定したオフセット値の正負を判定する(S1410)。例えば、手の向きに基づき手の根元方向に顔があると想定できるため、手の根元方向から視線がタッチ面上に注がれることになる。よって、表示制御部30は、S1410において手の向きと反対側にホバー座標をオフセットするように、S1110又はS625にて決定したオフセット値の正負を判定する。手の向きの替わりに指の向きを検出することにより視線の方法を推測するようにしてもよい。
【0054】
次に、表示制御部30は、決定した正負を持つオフセット値を、S615において検出したホバー座標に加算する(S1415)。表示制御部30は、S1415で算出したオフセット後のホバー座標にホバーカーソルを表示するように制御する(S635)。
【0055】
本実施形態によれば、オフセット値の正負を判定することによりオフセット値を正しい値に制御することができる。これにより、ホバーカーソル内のホバー対象である文字が指で隠れず、かつホバーカーソルが指から離れすぎないようにすることができる。この結果、指の操作が正しくホバー対象に反応しているか見分けることが容易になる。特に、本実施形態では、オフセット値の正負を判定するため、ホバーカーソルHが適正な位置の逆側にオフセットされることを回避することができる。
【0056】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示はかかる例に限定されない。本開示の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0057】
例えば、デバイス本体の傾きの替わりに視線の傾きのみに応じてホバー座標のオフセット値を決定してもよい。また、各実施形態を適宜組み合わせることができる。
【0058】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(1)タッチパネルのタッチ面に表示されたホバー座標とデバイス本体の傾きとを特定し、前記特定されたデバイス本体の傾きに応じて、前記特定されたホバー座標のオフセット値を決定する表示制御部を備える、情報処理装置。
(2)前記表示制御部は、更に前記タッチ面への視線の傾きを特定し、前記特定された視線の傾き及び前記デバイス本体の傾きに応じてオフセット値を決定する前記(1)に記載の情報処理装置。
(3)前記表示制御部は、前記デバイス本体の傾きと前記視線の傾きとの差分に応じてオフセット値を決定する前記(2)に記載の情報処理装置。
(4)前記表示制御部は、デバイス本体の傾きとオフセット値とを関連付けて記憶したテーブルに基づき、前記デバイス本体の傾きに応じてオフセット値を決定する前記(1)に記載の情報処理装置。
(5)前記表示制御部は、デバイス本体の傾きと視線の傾きとの差分と、オフセット値とを関連付けて記憶したテーブルに基づき、前記デバイス本体の傾きと視線の傾きとの差分に応じてオフセット値を決定する前記(3)に記載の情報処理装置。
(6)前記表示制御部は、前記オフセット値を用いて前記ホバー座標を補正することにより前記タッチ面のホバー表示をずらす前記(1)から(5)のいずれか一項に記載の情報処理装置。
(7)前記表示制御部は、更に前記タッチ面を操作する操作手の向きを特定し、前記操作手の向きに応じて前記決定されたオフセット値の正負を判定する前記(1)に記載の情報処理装置。
(8)タッチパネルのタッチ面に表示されたホバー座標を特定することと、デバイス本体の傾きを特定することと、前記特定されたデバイス本体の傾きに応じて、前記特定されたホバー座標のオフセット値を決定することを含む、表示制御方法。
(9)タッチパネルのタッチ面に表示されたホバー座標を特定する処理と、デバイス本体の傾きを特定する処理と、前記特定されたデバイス本体の傾きに応じて、前記特定されたホバー座標のオフセット値を決定する処理と、をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0059】
10 情報処理装置
11 デバイス本体
12 近接検出式タッチパネル
14 傾き検出センサ
16 視線検出センサ
24 表示装置
30 表示制御部
32 記憶部
T タッチ面
H、H1,H1’ ホバーカーソル
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、表示制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
指やスタイラス等を使ってタッチパネルの操作を行う場合、機器本体に付設された特定の操作キー又はタッチパネル上に設けられた特定の操作領域を使って入力操作のモード変更を行うことができる。通常の入力操作モードでは、タッチ直後にリリースを行う操作が、マウス操作時における通常のクリックに相当する。マウス操作には、前記クリック以外にマウスポインタのみの移動操作が挙げられ、ユーザは状況に応じてこれらの操作を使い分けることが必要とされる。マウスポインタの移動操作に相当するモードをホバーモード、マウスポインタの移動操作のための表示をホバー表示という。
【0003】
指などがタッチ面に触れないまでも、ある程度までタッチ面に近づいた場合、タッチ面から指までの対向距離に応じた表示状態の変化が起これば、今までにない情報表示状態を実現できる。例えば、指がタッチ面に接触した場合には入力操作モード、指が所定距離だけタッチ面に近接した場合にはホバーモードというように遷移して、表示状態のモードの変更が行われる構成形態では、占有面積を最小限に抑えて多種の操作を行うことができる。
【0004】
例えば、特許文献1では、静電容量型の表示パネルを用いて、表示パネルのタッチ面に指先が接触したときに接触した指先の位置を検出するとともに、タッチ面に指先が近づいたときに近接した指先の位置を検出する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−117371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ホバー表示されている対象(ホバー対象)に指を近付けていくと、ホバー対象に向けられている視線が操作する指で遮られ、ホバー対象の文字等が指で隠れて指の操作が正しくホバー対象に反応しているか見分けることが難しくなる。
【0007】
そこで、ホバー対象が指で隠れないようにホバー座標のオフセットを最適化することが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示によれば、タッチパネルのタッチ面に表示されたホバー座標とデバイス本体の傾きとを特定し、前記特定されたデバイス本体の傾きに応じて前記特定されたホバー座標のオフセット値を決定する表示制御部を備える、情報処理装置が提供される。
【0009】
また、本開示によれば、タッチパネルのタッチ面に表示されたホバー座標を特定することと、デバイス本体の傾きを特定することと、前記特定されたデバイス本体の傾きに応じて前記特定されたホバー座標のオフセット値を決定することを含む、表示制御方法が提供される。
【0010】
また、本開示によれば、タッチパネルのタッチ面に表示されたホバー座標を特定する処理と、デバイス本体の傾きを特定する処理と、前記特定されたデバイス本体の傾きに応じて前記特定されたホバー座標のオフセット値を決定する処理と、をコンピュータに実行させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように本開示によれば、ホバー対象が指で隠れないようにホバー座標のオフセットを最適化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1〜第3実施形態に係る情報処理装置のハードウエア構成図である。
【図2】タッチ面への近接及び接触を説明するための図である。
【図3】ファットフィンガを説明するための図である。
【図4】デバイス本体の傾きとオフセットを説明するための図である。
【図5】第1〜第3実施形態に係る情報処理装置の機能構成図である。
【図6】第1実施形態に係るホバー座標のオフセット処理を示すフローチャートである。
【図7】デバイス本体の傾きとオフセットとの関係を示したテーブルである。
【図8】デバイス本体の傾きとオフセットとの関係を説明するための図である。
【図9】ホバー表示の一例を示した図である。
【図10】視線の傾きとオフセットとの関係を説明するための図である。
【図11】第2実施形態に係るホバー座標のオフセット処理を示すフローチャートである。
【図12】デバイス本体の傾きと視線の傾きの差分とオフセットとの関係を示したテーブルである。
【図13】ホバー表示の一例を示した図である。
【図14】第3実施形態に係るホバー座標のオフセット処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0014】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.ファットフィンガ
2.第1実施形態(デバイス本体の傾きとオフセット)
3.第2実施形態(デバイス本体の傾き及び視線の傾きの差分とオフセット)
4.第3実施形態(オフセット値の正負判定)
【0015】
<1.ファットフィンガ>
まず、ファットフィンガについて説明する。ここでは、ホバー表示の一例としてホバーカーソルを例に挙げて説明するが、ホバー表示の方法はどんな図形や画像を用いてもよい。
【0016】
図3の左方に示したように、指が情報処理装置の筐体であるデバイス本体11上のタッチ面Tに対して所定時間以上近接状態にあるときホバーモードに遷移し、ホバーカーソルH1がホバー表示される。ホバーカーソルH1は、入力操作対象の位置を指し示す図形である。指が近接状態のままタッチ面Tの上方を移動すると、ホバーカーソルH1が移動し、指がホバーカーソルH1をタッチすると、ホバーカーソルH1内の文字等が入力操作される。
【0017】
しかし、ホバーカーソルH1に指を近付けていく際、ホバー対象に向けられている視線が操作する指で遮られ、ホバー対象の文字等が指で隠れて指の操作がホバー対象に正しく反応しているか見分けることが難しくなる。これをファットフィンガ(Fat Finger)という。
【0018】
そこで、ホバー対象に向けられている視線が操作する指で隠れないように、ホバーカーソルH1の位置を示すホバー座標をわずかにオフセットし、オフセット後のホバー座標にホバーカーソルH1’を表示する。図3の右方では、ホバー対象に向けられている視線が操作する指で遮られない位置までホバーカーソルH1’が移動している。これにより、指がホバー対象に正しく反応しているかを見分けることが容易になる。
【0019】
ところが、図4の左方に示したように、デバイス本体11の傾きが0度の場合のホバー座標のオフセット値と、図4の右方に示したように、デバイス本体11の傾きが45度の場合のホバー座標のオフセット値とを同値に設定すると、デバイス本体11の傾きが45度の場合には、オフセット後のホバー座標に表示したホバーカーソルH1’が、逆に指から離れすぎて「ズレ」としてユーザに認識されてしまう場合がある。
【0020】
<2.第1実施形態>
そこで、第1実施形態に係る情報処理装置10では、デバイス本体11の傾きに応じてホバー座標のオフセット値を可変に制御し、これにより、適切な位置にホバーカーソルを表示する。情報処理装置10は、ユーザの指の接触位置、近接位置及びデバイス本体の傾きを検出できるセンサを搭載したデバイスである。情報処理装置10は、近接式タッチパネル付きの機器であればよい。
【0021】
(ハードウエア構成)
図1は、第1実施形態に係る情報処理装置10のハードウエア構成を示す。第1実施形態に係る情報処理装置10は、近接検出式タッチパネル12、傾き検出センサ14、視線検出センサ16、CPU18、RAM20、不揮発メモリ22及び表示装置24を有する。
【0022】
近接検出式タッチパネル12は、近接を検出可能な表示パネルである。近接検出式タッチパネル12には静電容量式の表示パネルが用いられる。たとえば、図2に示したように、指から近接検出式タッチパネル12のタッチ面までの距離が予め定められた閾値Lpより大きい場合、近接検出式タッチパネル12は何も検知しない(図2(a):非近接状態 不感帯)。指からタッチ面までの距離が閾値Lpより小さくなり指が中間検出領域に入り所定時間が経過すると、近接検出式タッチパネル12は指の近接位置を検出する(図2(b):近接状態 感帯)。指がタッチ面に接触した場合、近接検出式タッチパネル12は指の接触位置を検出する(図2(c):接触状態)。
【0023】
このように、近接検出式タッチパネル12は、近接検出式タッチパネル12のタッチ面からの奥行き方向(z方向の座標)の指の近接位置を検出するとともに、タッチ面での指の接触位置(x方向及びy方向の座標)を検出することが可能である。
【0024】
再び図1に戻って、傾き検出センサ14は、情報処理装置10のデバイス本体11に取り付けられていて、デバイス本体11の基本姿勢(デバイス本体11の傾き0度)の基準面に対するx軸方向及びy軸方向の傾斜角を算出する。傾き検出センサ14は、加速度センサの一例としてのジャイロセンサで実現することができる。
【0025】
視線検出センサ16は、近接検出式タッチパネル12を操作するユーザの視線を検出する。例えば、視線検出センサ16は、視線検出方法を用いて瞳孔の動きをカメラで追跡し、撮像した画像を解析することにより視線の傾き(視線の方向)を検出する。光学式センサを用いて画像から虹彩、瞳孔、ブルキニエ像(反射像)を検出することにより視線の傾きを検出してもよい。
【0026】
近接検出式タッチパネル12、傾き検出センサ14、視線検出センサ16によりそれぞれ検出されたセンサ値は、RAM20又は不揮発性メモリ22に送られ、記憶される。CPU18は各部と接続されていて、RAM20又は不揮発性メモリ22に記憶された各種センサ値を取得し、各種センサ値に基づき、指の接触位置、指の近接位置、デバイス本体の傾き、視線の傾きを算出する。
【0027】
また、RAM20や不揮発メモリ22には、ホバー座標のオフセット処理を実行するためのプログラムやオフセット値を決定するためのテーブル、閾値等の各種データが記憶されている。CPU18は、上記プログラムを読み出して実行することにより、ホバー座標のオフセット処理を実行する。表示装置24は、オフセット処理後のホバー座標の位置にホバーカーソル等を表示する。CPU18は、表示装置24と接続され、表示装置24から送信される情報を処理する。
【0028】
(機能構成)
以上、図1を参照して、第1実施形態に係る情報処理装置10のハードウエア構成を説明した。次に、図5を参照しながら、第1実施形態に係る情報処理装置10の機能構成について説明する。第1実施形態に係る情報処理装置10は、表示制御部30と記憶部32とを有している。
【0029】
表示制御部30は、近接検出式タッチパネル12によるホバー座標の検出結果から近接検出式タッチパネル12のタッチ面に表示されたホバー座標(x方向、y方向の座標)を特定する。表示制御部30は、近接検出式タッチパネル12による奥行き検出結果から指の近接位置(z方向の座標)を特定する。表示制御部30は、傾き検出センサ14によるデバイス本体11の傾き検出結果からデバイス本体11の傾きを特定する。表示制御部30は、特定されたデバイス本体11の傾きに応じて、ホバー座標のオフセット値を決定してもよい。また、表示制御部30は、視線検出センサ16による視線検出結果からタッチ面への視線の傾きを特定する。表示制御部30は、デバイス本体の傾き及び視線の傾きの差分に応じてオフセット値を決定してもよい。表示制御部30は、オフセット値をホバー座標に加算することによりホバー座標を補正し、これによりタッチ面のホバー表示をずらす。
【0030】
記憶部32は、近接又は非近接を判定するための閾値Lpや、オフセット値を決定するためのテーブル(図7、図13)を記憶する。表示制御部30は、各テーブルに基づき、オフセット値を決定することができる。
【0031】
(動作)
以上、図5を参照して、第1実施形態に係る情報処理装置10の機能構成を説明した。続いて、図6〜図9を参照し、第1実施形態に係る情報処理装置10の動作を説明する。
【0032】
図6は、第1実施形態に係る情報処理装置10の動作を示すフローチャートである。図6に示したように、まず、指が中空検出領域内で一定時間待機していることが検出された場合(S605)、表示制御部30は、ホバーモードに遷移し、表示装置24にホバーカーソルを表示させる(S610)。
【0033】
また、表示制御部30は、近接検出式タッチパネル12からホバー座標の検出結果を取得し(S615)、傾き検出センサ14からデバイス本体11の傾き検出結果を取得する(S620)。続いて、表示制御部30は、デバイス本体11の傾きに応じて、ホバーカーソルのオフセット値を決定する(S625)。ここで、図7を参照し、デバイス本体の傾きとオフセット値との関係について具体的に説明する。
【0034】
図7は、デバイス本体の傾きとオフセット値との関係を示したテーブルである。図7に示したように、例えばデバイス本体11の傾きが0〜90度の範囲内では傾きが大きいほどオフセット値は減少する。また、デバイス本体11の傾きが90〜180度の範囲内ではオフセット値は0となる。
【0035】
デバイス本体11の傾きが180〜270度の範囲内では傾きが大きいほどオフセット値は増加する。さらに、表示制御部30は、デバイス本体11の傾きが270〜360度の範囲内ではオフセット値は一定になり、デバイス本体11の傾きが0度の場合と同値になる。このテーブルでは、いずれの範囲内でもオフセット値は正の値をもつ。
【0036】
ここで、図6に戻ると、表示制御部30は、S625において決定したオフセット値を、S615において取得したホバー座標に加算する(S630)。そして、表示制御部30は、S630で算出したホバー座標にホバーカーソルを表示するように制御する(S635)。以上、情報処理装置10の動作について説明した。以下、図8および図9を参照し、ホバーカーソルの表示制御についてより具体的に説明する。
【0037】
図8は、デバイス本体11の代表的な傾きにおいてホバー座標に加算されるオフセット値を説明するための図である。図8に示したように、ホバー座標に加算されるオフセット値は、デバイス本体11の傾きが0度の場合に最も大きく、デバイス本体11の傾きが90度の場合に最も小さくなる。デバイス本体11の傾きが45度の場合のオフセット値は、傾きが0度の場合のオフセット値と90度の場合のオフセット値の中間値をとる。これにより、デバイス本体11の傾きに応じて、ホバーカーソルHで示された文字等が指で隠れてしまうことを防止しつつ、適切な位置にホバーカーソルHを表示することが可能となる。
【0038】
図9は、ホバー表示例である。ホバー座標にオフセット値を加算しないと、図9の左方に示したように、ホバーカーソルHで示されるホバー対象の文字等が指で隠れてしまう。一方、本実施形態では、デバイス本体の傾きに応じて、オフセット値を可変に制御することにより、図9の右方に示したようにホバーカーソルHで示されるホバー対象の文字等が指で隠れず、かつホバーカーソルHが指から離れすぎないようにホバー表示を制御することができる。これにより、デバイス本体11の傾きによってユーザの操作コンテキストを推定し、ホバー表示時のオフセット値を最適値に調整することによって、指の操作がホバー対象に正しく反応しているかを見分けることが容易になる。
【0039】
(変形例)
以上、第1実施形態に係る情報処理装置10では、デバイス本体11の傾きに応じてオフセット値を可変に制御した。これに対して、変形例では視線の傾きに応じてオフセット値を可変に制御する。図10を参照しながら変形例について説明する。
【0040】
図10は、視線の代表的な傾きにおいてホバー座標に加算されるオフセット値を示す。図10に示したように、ホバー座標に加算されるオフセット値は、視線の傾きが135度及び45度の場合、正負が反対で大きさが同じ値を有し、視線の傾きが90度の場合は視線方向の傾きが135度と45度の場合より小さい値をとってもよい。これにより、視線の傾きに応じて、ホバーカーソルH内の文字等が指で隠れてしまうことを防止しつつ、適切な位置にホバーカーソルHを表示することが可能となる。
【0041】
<3.第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る情報処理装置10について説明する。第2実施形態に係る情報処理装置10のハードウエア構成及び機能構成は第1実施形態と同じであるため、ここでは省略する。以下では、図11〜図13を参照し、第2実施形態に係る情報処理装置10の動作について説明する。
【0042】
(動作)
図11は、第2実施形態に係る情報処理装置10の動作を示すフローチャートである。S605〜S620は第1実施形態と同様であり、指が中空検出領域内で一定時間待機していることが検出された場合(S605)、表示制御部30は、ホバーモードに遷移し、表示装置24にホバーカーソルを表示させる(S610)。また、表示制御部30は、近接検出式タッチパネル12からホバー座標の検出結果を取得し(S615)、傾き検出センサ14からデバイス本体11の傾き検出結果を取得する(S620)。
【0043】
次に、表示制御部30は、視線検出センサ16から視線の傾きの検出結果を取得したかを判定する(S1105)。取得したと判定した場合、表示制御部30は、デバイス本体11の傾きと視線の傾きの差分に基づき、オフセット値を決定する(S1110)。ここで、図12を参照し、デバイス本体11の傾きと視線の傾きの差分(以下、単に差分ともいう)とオフセット値との関係について具体的に説明する。
【0044】
図12の中央に示すグラフは、デバイス本体11の傾きと視線の傾きの差分とオフセット値との関係を示したテーブルである。図12に示したように、例えばデバイス本体11の傾きと視線の傾きの差分が0〜90度の範囲内では、前記差分が大きいほどオフセット値は増加する。また、この範囲でのオフセット値は負の値を取る。デバイス本体11の傾きと視線の傾きの差分が90〜180度の範囲内でも、前記差分が大きいほどオフセット値は増加する。また、この範囲でのオフセット値は正の値を取る。
【0045】
デバイス本体11の傾きと視線の傾きの差分が180〜360度の範囲内ではその差分の値によらずオフセット値は0となる。180〜360度の範囲内では、タッチ面の裏側から覗く形になるためオフセット処理は不要だからである。
【0046】
ここで、図11の説明に戻り、S1105において視線検出センサ16から視線の傾きの検出結果を取得していないと判定した場合、表示制御部30は、デバイス本体11の傾きに応じてオフセット値を決定する(S625)。
【0047】
次に、表示制御部30は、S1110又はS625において決定したオフセット値を、S615において検出したホバー座標に加算する(S630)。そして、表示制御部30は、S630で算出したオフセット後のホバー座標にホバーカーソルを表示するように制御する(S635)。以下、図12および図13を参照し、ホバーカーソルの表示制御についてより具体的に説明する。
【0048】
図12の右方及び左方は、デバイス本体11の傾きと視線の傾きとの差分が45度と135度の場合のオフセット値を示す。前記差分が45度の場合にホバー座標に加算されるオフセット値は、差分が135度の場合にホバー座標に加算されるオフセット値と正負が逆で絶対値が同じ値となる。これにより、デバイス本体11の傾きと視線の傾きとの差分に応じて、ホバーカーソルHで示されたホバー対象の文字等が指で隠れてしまうことを防止しつつ、適切な位置にホバーカーソルHを表示することが可能となる。
【0049】
図9及び図13は、ホバー表示例である。前述したように、ホバー座標にオフセット値を加算しないと、図9及び図13の左方で示したように、ホバーカーソルHで示されるホバー対象の文字等が指で隠れてしまう。S1105本実施形態では、デバイス本体11の傾きと視線の傾きの差分に応じてオフセット値を可変に制御することにより、図9及び図13の右方に示したようにホバーカーソルHで示されるホバー対象の文字等が指で隠れず、かつホバーカーソルHが指から離れすぎないようにホバー表示を制御することができる。この結果、指の操作がホバーに正しく反応しているか見分けることが容易になる。
【0050】
また、オフセット値が負の値となる場合には、図13の右方に示したようにホバーカーソルHの位置は、オフセット値が正の値となる場合と反対側にずれる。デバイス本体11の傾きと視線の傾きの差分が0〜90度の範囲内においては、オフセット値が負の値をとるため、図13の右方に示したようにホバーカーソルHが紙面上で下方に移動する。前記差分が90〜180度の範囲内においては、オフセット値が正の値をとるため、図9に示したようにホバーカーソルHが紙面上で上方に移動する。これによれば、対面操作等、画面上の通常操作方向と逆の方向から覗く操作の場合にも指の操作がホバーに正しく反応しているか見分けることが容易になる。なお、図9及び図13では、タッチ面のy方向にオフセット処理されている。
【0051】
<4.第3実施形態>
最後に、第3実施形態に係る情報処理装置10について説明する。第3実施形態に係る情報処理装置10のハードウエア構成及び機能構成は第1実施形態と同じであるため、ここでは省略する。以下では、図14を参照し、第3実施形態に係る情報処理装置10の動作について説明する。
【0052】
(動作)
図14は、第3実施形態に係る情報処理装置10の動作を示すフローチャートである。S605〜S625、S1105、S1110は第2実施形態と同様であるためここでは説明を省略するが、これら一連の処理によりオフセット値が決定される。
【0053】
次に、表示制御部30は、手の向きの検出結果を取得したかを判定する(S1405)。静電容量型の近接検出式タッチパネル12を用いて手の根元方向を検出することにより、手の向き(手の先の向き)は検出される。S1405において手の向きの検出結果を取得したと判定した場合、表示制御部30は、S1110又はS625で決定したオフセット値の正負を判定する(S1410)。例えば、手の向きに基づき手の根元方向に顔があると想定できるため、手の根元方向から視線がタッチ面上に注がれることになる。よって、表示制御部30は、S1410において手の向きと反対側にホバー座標をオフセットするように、S1110又はS625にて決定したオフセット値の正負を判定する。手の向きの替わりに指の向きを検出することにより視線の方法を推測するようにしてもよい。
【0054】
次に、表示制御部30は、決定した正負を持つオフセット値を、S615において検出したホバー座標に加算する(S1415)。表示制御部30は、S1415で算出したオフセット後のホバー座標にホバーカーソルを表示するように制御する(S635)。
【0055】
本実施形態によれば、オフセット値の正負を判定することによりオフセット値を正しい値に制御することができる。これにより、ホバーカーソル内のホバー対象である文字が指で隠れず、かつホバーカーソルが指から離れすぎないようにすることができる。この結果、指の操作が正しくホバー対象に反応しているか見分けることが容易になる。特に、本実施形態では、オフセット値の正負を判定するため、ホバーカーソルHが適正な位置の逆側にオフセットされることを回避することができる。
【0056】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示はかかる例に限定されない。本開示の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0057】
例えば、デバイス本体の傾きの替わりに視線の傾きのみに応じてホバー座標のオフセット値を決定してもよい。また、各実施形態を適宜組み合わせることができる。
【0058】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(1)タッチパネルのタッチ面に表示されたホバー座標とデバイス本体の傾きとを特定し、前記特定されたデバイス本体の傾きに応じて、前記特定されたホバー座標のオフセット値を決定する表示制御部を備える、情報処理装置。
(2)前記表示制御部は、更に前記タッチ面への視線の傾きを特定し、前記特定された視線の傾き及び前記デバイス本体の傾きに応じてオフセット値を決定する前記(1)に記載の情報処理装置。
(3)前記表示制御部は、前記デバイス本体の傾きと前記視線の傾きとの差分に応じてオフセット値を決定する前記(2)に記載の情報処理装置。
(4)前記表示制御部は、デバイス本体の傾きとオフセット値とを関連付けて記憶したテーブルに基づき、前記デバイス本体の傾きに応じてオフセット値を決定する前記(1)に記載の情報処理装置。
(5)前記表示制御部は、デバイス本体の傾きと視線の傾きとの差分と、オフセット値とを関連付けて記憶したテーブルに基づき、前記デバイス本体の傾きと視線の傾きとの差分に応じてオフセット値を決定する前記(3)に記載の情報処理装置。
(6)前記表示制御部は、前記オフセット値を用いて前記ホバー座標を補正することにより前記タッチ面のホバー表示をずらす前記(1)から(5)のいずれか一項に記載の情報処理装置。
(7)前記表示制御部は、更に前記タッチ面を操作する操作手の向きを特定し、前記操作手の向きに応じて前記決定されたオフセット値の正負を判定する前記(1)に記載の情報処理装置。
(8)タッチパネルのタッチ面に表示されたホバー座標を特定することと、デバイス本体の傾きを特定することと、前記特定されたデバイス本体の傾きに応じて、前記特定されたホバー座標のオフセット値を決定することを含む、表示制御方法。
(9)タッチパネルのタッチ面に表示されたホバー座標を特定する処理と、デバイス本体の傾きを特定する処理と、前記特定されたデバイス本体の傾きに応じて、前記特定されたホバー座標のオフセット値を決定する処理と、をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0059】
10 情報処理装置
11 デバイス本体
12 近接検出式タッチパネル
14 傾き検出センサ
16 視線検出センサ
24 表示装置
30 表示制御部
32 記憶部
T タッチ面
H、H1,H1’ ホバーカーソル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチパネルのタッチ面に表示されたホバー座標とデバイス本体の傾きとを特定し、前記特定されたデバイス本体の傾きに応じて、前記特定されたホバー座標のオフセット値を決定する表示制御部を備える、情報処理装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、更に前記タッチ面への視線の傾きを特定し、前記特定された視線の傾き及び前記デバイス本体の傾きに応じてオフセット値を決定する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記デバイス本体の傾きと前記視線の傾きとの差分に応じてオフセット値を決定する請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、デバイス本体の傾きとオフセット値とを関連付けて記憶したテーブルに基づき、前記デバイス本体の傾きに応じてオフセット値を決定する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、デバイス本体の傾きと視線の傾きとの差分と、オフセット値とを関連付けて記憶したテーブルに基づき、前記デバイス本体の傾きと視線の傾きとの差分に応じてオフセット値を決定する請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記表示制御部は、前記オフセット値を用いて前記ホバー座標を補正することにより前記タッチ面のホバー表示をずらす請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記表示制御部は、更に前記タッチ面を操作する操作手の向きを特定し、
前記操作手の向きに応じて前記決定されたオフセット値の正負を判定する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
タッチパネルのタッチ面に表示されたホバー座標を特定することと、
デバイス本体の傾きを特定することと、
前記特定されたデバイス本体の傾きに応じて、前記特定されたホバー座標のオフセット値を決定することを含む、表示制御方法。
【請求項9】
タッチパネルのタッチ面に表示されたホバー座標を特定する処理と、
デバイス本体の傾きを特定する処理と、
前記特定されたデバイス本体の傾きに応じて、前記特定されたホバー座標のオフセット値を決定する処理と、をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項1】
タッチパネルのタッチ面に表示されたホバー座標とデバイス本体の傾きとを特定し、前記特定されたデバイス本体の傾きに応じて、前記特定されたホバー座標のオフセット値を決定する表示制御部を備える、情報処理装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、更に前記タッチ面への視線の傾きを特定し、前記特定された視線の傾き及び前記デバイス本体の傾きに応じてオフセット値を決定する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記デバイス本体の傾きと前記視線の傾きとの差分に応じてオフセット値を決定する請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、デバイス本体の傾きとオフセット値とを関連付けて記憶したテーブルに基づき、前記デバイス本体の傾きに応じてオフセット値を決定する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、デバイス本体の傾きと視線の傾きとの差分と、オフセット値とを関連付けて記憶したテーブルに基づき、前記デバイス本体の傾きと視線の傾きとの差分に応じてオフセット値を決定する請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記表示制御部は、前記オフセット値を用いて前記ホバー座標を補正することにより前記タッチ面のホバー表示をずらす請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記表示制御部は、更に前記タッチ面を操作する操作手の向きを特定し、
前記操作手の向きに応じて前記決定されたオフセット値の正負を判定する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
タッチパネルのタッチ面に表示されたホバー座標を特定することと、
デバイス本体の傾きを特定することと、
前記特定されたデバイス本体の傾きに応じて、前記特定されたホバー座標のオフセット値を決定することを含む、表示制御方法。
【請求項9】
タッチパネルのタッチ面に表示されたホバー座標を特定する処理と、
デバイス本体の傾きを特定する処理と、
前記特定されたデバイス本体の傾きに応じて、前記特定されたホバー座標のオフセット値を決定する処理と、をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−247936(P2012−247936A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118319(P2011−118319)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]