説明

情報処理装置及び情報処理方法及びプログラム

【課題】航空機や人工衛星等の移動プラットフォームに搭載され、地表面の高分解能画像及び高度情報を得る干渉型合成開口レーダ装置において、自機高度の測定誤差による地表面の高度情報の誤差を推定して補償することを可能とした干渉型合成開口レーダ装置を提供する。
【解決手段】機体の機軸と直交する平面内で直線状に3つ以上のアンテナ1〜3を配置し、この3つのアンテナで受信されたパルス信号及び動揺センサ4の計測結果を用いて3つの合成開口レーダ画像7を取得し、更に、3つのレーダ画像から2つの観測領域の高度情報9を取得し、2ベースラインによる誤差推定部10が、この得られた高度情報の差分から誤差を推定して補償し、インタフェロメトリ再処理部11が、再度干渉型合成開口レーダの処理を行うことにより、地表面の高度誤差が抑圧された誤差抑圧後の観測領域の高度情報12が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、航空機や衛星等の飛行体に搭載し、地表面を観測して高度情報を含んだ画像(合成開口レーダ画像及び数値標高モデル)を得るための干渉型合成開口レーダ技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
合成開口レーダは、航空機や衛星等の移動プラットフォームに搭載され、移動しつつ側方に電波を送受信して観測を行い、得られたデータを信号処理することにより観測領域の二次元の高分解能画像である合成開口レーダ画像を得ることが出来るレーダである。
干渉型合成開口レーダは、異なる位置から同じ地点を観測して得られた2枚の合成開口レーダ画像を用いて、観測領域の高度情報(数値標高モデル)を得ることが出来るレーダである(例えば、特許文献1)。
なお、この高度情報を求める処理をインタフェロメトリ処理と呼ぶ。
【特許文献1】特開2004−191053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
干渉型合成開口レーダは、2枚の合成開口レーダ画像から位相情報の差を求め、この位相情報の差を高度情報に変換することにより、観測領域の高度情報を求める。
この位相情報の差から高度情報への変換には、観測領域(観測対象)への入射角の値が必要であり、入射角の値を求めるためには自機の高度情報を必要とする。
このため、一般的な干渉型合成開口レーダでは、機体にGPS(Global PosItioning System)アンテナを搭載することにより自機の高度情報を計測する。
しかし、GPSは、位置精度は高いが高度精度が低く誤差を持つため、得られた観測領域の高度情報に誤差を生じてしまうという課題があった。
【0004】
本発明は、このような課題を解決することを主な目的の一つとし、観測領域の高度情報に含まれる誤差を抑制し、高精度の高度計測を行うことを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る情報処理装置は、
飛行体に搭載される情報処理装置であって、
前記飛行体に配置されている3つ以上のアンテナのうちのいずれかのアンテナから送信され、観測対象に反射して前記3つ以上のアンテナで受信されたパルス信号を取得し、前記飛行体の運動状況、位置及び高度を計測するセンサから前記飛行体の運動状況、位置及び高度の情報を取得し、前記パルス信号と前記飛行体の運動状況、位置及び高度の情報とを用いて、3つ以上の2次元画像を生成する画像生成部と、
前記画像生成部により生成された前記3つ以上の2次元画像を用いて、前記観測対象の高度を示す高度情報を2つ以上生成する第一の高度情報生成部と、
前記第一の高度情報生成部により生成された前記2つ以上の高度情報と、前記3つ以上のアンテナの位置関係とを用いて、高度情報に含まれる誤差を推定する誤差推定部と、
前記誤差推定部により推定された誤差を用いて、前記観測対象の誤差補正後の高度を示す高度情報を生成する第二の高度情報生成部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、観測対象についての2つ以上の高度情報と、3つ以上のアンテナの位置関係を用いて、高度情報に含まれる誤差を推定し、推定した誤差を用いて、誤差を補正して観測対象の高度を計測するため、高度情報に含まれる誤差を抑制し、高精度の高度計測を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
実施の形態1.
本実施の形態では、航空機や人工衛星等の飛行体に搭載され、地表面の高分解能画像及び高度情報を得る干渉型合成開口レーダ装置において、自機高度の測定誤差による地表面の高度情報の誤差を推定して補償することを可能とした干渉型合成開口レーダ装置について説明する。
【0008】
図1は、この発明の実施の形態1による干渉型合成開口レーダ装置100の構成例を示す構成図である。
干渉型合成開口レーダ装置100は、航空機や人工衛星などの飛行体に搭載される。
また、干渉型合成開口レーダ装置100の構成要素のうち、破線で囲んだ範囲が本発明に係る情報処理装置200の例となる。
【0009】
図1において、1〜3はアンテナA、B、Cであり、航空機や人工衛星などの移動プラットフォームに搭載される部分であり、これらは、図2に示す位置関係を必要とする。
図2において、移動プラットフォームは紙面と直交する方向に移動し、アンテナA〜Cは、紙面と平行な平面内で、直線状に配置する。
従来の干渉型合成開口レーダではアンテナは2つあればよく、この構成は本装置の一つの特徴を構成する部分である。
干渉型合成開口レーダでは、インタフェロメトリ処理を行う2つのアンテナを結ぶ直線をベースラインと呼ぶが、本装置の構成では、水平面からの傾きが等しく、長さの異なるベースラインを必要とする。
具体的には、図2に示すように、アンテナA、アンテナB間をベースライン1と呼び、アンテナA、アンテナC間をベースライン2と呼ぶ。
また、アンテナ間距離、すなわちベースラインの長さをベースライン距離という。
【0010】
また、アンテナAは、信号送受信部2で生成された高周波パルス信号を空間に放射する部分であり、アンテナA〜Cは、その高周波パルス信号の反射信号、すなわち観測領域(観測対象)で反射した高周波パルス信号を受信する部分である。
動揺センサ4は、移動プラットフォームの運動状況(速度、加速度、姿勢等)を計測する慣性センサ及び移動プラットフォームの位置、高度を計測するGPS(Global PosItioning System)アンテナより構成される。
信号送受信部5は、高周波パルス信号を生成してアンテナAに送るとともに、アンテナA〜Cで受信された信号を増幅する送受信手段を構成する。
画像再生処理部6は、信号送受信部5より受信した信号と、動揺センサ4で計測したプラットフォームの運動状況及び位置、高度の情報から、2次元の高分解能画像である合成開口レーダ画像(2次元画像)を再生する。
合成開口レーダ画像7は、画像再生処理部6によって生成された画像データであり、アンテナA〜Cのデータ各々に対して生成する。
つまり、画像再生処理部6は、移動プラットフォーム(飛行体)に配置されている3つのアンテナのうちのいずれかのアンテナから送信され、観測対象に反射して3つのアンテナで受信されたパルス信号を取得し、移動プラットフォームの運動状況、位置及び高度を計測するセンサから移動プラットフォームの運動状況、位置及び高度の情報を取得し、パルス信号と移動プラットフォームの運動状況、位置及び高度の情報とを用いて、3つの2次元画像である合成開口レーダ画像7を生成する。
画像再生処理部6は、画像生成部の例である。
【0011】
インタフェロメトリ処理部8は、2枚の合成開口レーダ画像から、観測領域の高度情報を生成する。
観測領域の高度情報9は、観測領域(観測対象)の高度を示す高度情報である。3枚の合成開口レーダ画像のうち2枚を組み合わせることで、2つの高度情報を得ることができる。
つまり、インタフェロメトリ処理部8は、画像再生処理部6により生成された3枚の合成開口レーダ画像を用いて、観測領域の高度を示す高度情報を2つ生成する。
インタフェロメトリ処理部8は、第一の高度情報生成部の例である。
なお、インタフェロメトリ処理部8により生成された観測領域の高度情報9は、後に詳述するように、一般に誤差を含んでいる。
【0012】
2ベースラインによる誤差推定部10は、水平面からの傾きが等しく、長さの異なる2つベースラインの条件で求めた2つの高度情報から、高度情報に含まれる誤差を推定する。
つまり、2ベースラインによる誤差推定部10は、インタフェロメトリ処理部8により生成された2つの高度情報と、3つのアンテナの位置関係とを用いて、高度情報に含まれる誤差を推定する。
具体的には、2ベースラインによる誤差推定部10は、3つのアンテナのアンテナ間距離である相互に長さの異なる2つのベースライン距離を用いて、観測領域への高周波パルス信号の入射角(オフナディア角)の誤差を推定する。
観測領域への高周波パルス信号の入射角(オフナディア角)の誤差とは、アンテナAから送出された高周波パルス信号の観測領域の実際の入射角(オフナディア角)と、GPSにより測定された自機高度を用いて算出された計算上の高周波パルス信号の入射角(オフナディア角)との差異を意味する。
2ベースラインによる誤差推定部10は、誤差推定部の例である。
【0013】
インタフェロメトリ再処理部11は、補正した観測領域への入射角を用いて、再度インタフェロメトリ処理を行う。
この処理を行うことにより、誤差が抑圧された観測領域の高度情報12を得ることが出来る。
つまり、インタフェロメトリ再処理部11は、2ベースラインによる誤差推定部10により推定された誤差(入射角の誤差)を用いて、観測領域の誤差補正後の高度を示す高度情報を生成する。
インタフェロメトリ再処理部11は、第二の高度情報生成部の例である。
【0014】
なお、本装置において、少なくとも2ベースラインによる誤差推定部10、インタフェロメトリ再処理部11は、従来の構成に含まれておらず、本装置において新たに加わった部分である。
【0015】
加えて、本装置では、観測条件に制限があり、観測領域への入射角(オフナディア角)とベースラインの傾きの差が10度以下であることが望ましい。
干渉型合成開口レーダは、観測領域への入射角(オフナディア角)とベースラインの傾きが等しい場合に最も性能が高いため、上記の条件はよく用いられる。
本装置においても、観測領域への入射角(オフナディア角)とベースラインの傾きの差が少ないことが望まれ、例えば、両者の差が0〜5度程度であることがより望ましい。
【0016】
次に、本装置の構成により、観測領域の高度情報の誤差が抑圧できる原理について説明する。
【0017】
まず、図5に示す観測の幾何条件を考える。
レーダにおいては、信号の位相情報は、アンテナと観測領域の距離(スラントレンジ)に比例する。
このため、アンテナS1、S2で同じ地点を観測した信号の位相差φを求めると、幾何関係により次式を得る。
【0018】
【数1】

【0019】
ここで、λはレーダの波長、Bはベースラインの長さ、θは入射角、αはベースラインの傾き、hは観測領域の高度、Hは自機高度、rはスラントレンジを表す。
【0020】
これらの式1、式2について、θを媒介変数として微分することにより、高度変化に対する位相変化として次式を得る。
【0021】
【数2】

【0022】
これをφについて積分することにより、次式を得る。
【0023】
【数3】

【0024】
従来のインタフェロメトリ処理では、この式を用いて、位相情報を観測領域の高度情報に変換する。
【0025】
ここで、θについて考える。θは、図5に示すように、自機高度Hとスラントレンジrから次式によって求める。
【0026】
【数4】

【0027】
このため、自機高度Hに誤差があるとθに誤差を生じる。θに誤差があると、式4より観測領域の高度情報hに誤差を生じる(図5(c)参照))。
ここで、θの誤差をdθとし、誤差の生じた観測領域の高度情報をh’とすると、次式となる。
【0028】
【数5】

【0029】
なお、レーダでは、スラントレンジが少なくとも数km以上であり、GPSアンテナによるHの誤差は数m〜数十m程度であるため、dθ<<1である。このため、dθ<<1の条件で式6を近似して、次式を得る。
【0030】
【数6】

【0031】
さらに、上記した観測条件の制限である|θ−α|<<1より、式7を近似して次式を得る。
【0032】
【数7】

【0033】
これに対し、2つのベースラインの長さをB、Bとし、そのときの観測領域の高度情報をh’、h’とする。この差dh’を求めると次式となる。
【0034】
【数8】

【0035】
これより、dh’がdθに比例することが分かるため、dh’よりdθを求めることが可能である。このため、求めたdθを用いて、再度インタフェロメトリ処理を行うことにより、誤差の抑圧された観測領域の高度情報を得ることが出来る。
【0036】
なお、式9を用いて、dh’よりdθを求める際に、式9右辺の括弧内のθは、式においては誤差の抑圧されたθであるが、実際に既知である値は誤差のあるθである。このため、dh’の算出の際に、誤差が残る。
この誤差は微小項であるため近似的に無視することが可能であるが、インタフェロメトリ処理部8〜インタフェロメトリ再処理部11の処理を繰り返し実施する収束演算を行うことにより、より誤差を抑圧することも可能である。
【0037】
以下、上記の観測の幾何条件を踏まえて、本実施の形態に係る干渉型合成開口レーダ装置100の動作例を説明するが、説明の前提として、先ず、上記の式1〜9に用いられた係数について説明する。
λ(レーダの波長)は、干渉型合成開口レーダ装置100の記憶装置(不図示)に予め記憶されている情報である。
B(ベースライン距離)は、干渉型合成開口レーダ装置100の記憶装置に予め記憶されている情報である。
θ(入射角(オフナディア角))は、インタフェロメトリ処理部8が、インタフェロメトリ処理の途中で式5により求める情報である。
α(ベースラインの傾き)は、干渉型合成開口レーダ装置100の記憶装置に予め記憶されている情報である。
h(観測領域の高度)は、インタフェロメトリ処理部8が、合成開口レーダ画像7からインタフェロメトリ処理で求める情報である。
H(自機高度)は、動揺センサ4により計測する情報である。
r(スラントレンジ)は、干渉型合成開口レーダ装置100の記憶装置に予め記憶されている情報である。
【0038】
次に、図6のフローチャートを用いて、本実施の形態に係る干渉型合成開口レーダ装置100の動作例を説明する。
【0039】
先ず、信号送受信部5で生成された高周波パルス信号を、アンテナAが空間に放射する。空間に放射され、地表面で反射された反射信号をアンテナA〜Cが受信する。
また、アンテナA〜Cで受信された信号を信号送受信部2が増幅する。その際、動揺センサ4が、移動プラットフォームの運動及び位置情報を計測する(ステップS1)。
【0040】
画像再生処理部6は、信号送受信部5よりアンテナA〜Cで受信されたパルス信号を取得し、また、動揺センサ4で計測したプラットフォームの運動状況及び位置、高度の情報を取得し、これらパルス信号、プラットフォームの運動状況及び位置、高度の情報から、画像再生処理部6は画像再生処理を行い、2次元の高分解能画像である合成開口レーダ画像を再生する。
このとき、画像再生処理は、アンテナA〜Cのデータ各々に対して行い、3枚の合成開口レーダ画像7を得る(ステップS2)(画像生成ステップ)。
【0041】
次に、インタフェロメトリ処理部8により、インタフェロメトリ処理を行う。
インタフェロメトリ処理部8の処理のうち、S3〜S8は、既存の方法で実現されるものであり、例えば、特許文献1に示される方法で実現することができる。但し、特許文献1に記載の方法に限定されるわけではなく、他の方法であってもよい。
従来と異なる点は、3枚の合成開口レーダ画像7から2枚選ぶ組合せを2つつくり、この組合せ毎にインタフェロメトリ処理を行い、2つの観測領域の高度情報9を得ることである。従来は、2枚の合成開口レーダ画像に対して1回の処理を行い、観測領域の高度情報を1つ得るものであった。
位相高度変換ステップ(S7)においては、インタフェロメトリ処理部8は、上記の式4を用いて、ベースライン1についての高度情報h及びベースライン2についての高度情報hの2つの高度情報を算出する。
具体的には、式4の係数Bにベースライン1のベースライン距離を代入してベースライン1についての高度情報hを算出し、式4の係数Bにベースライン2のベースライン距離を代入してベースライン2についての高度情報hを算出する。
なお、式4に含まれる係数θは、式5を用いて、位相高度変換ステップ(S7)以前の段階で算出していてもよいし、位相高度変換ステップ(S7)中に算出してもよい。
なお、インタフェロメトリ処理部8が式4を用いて算出した高度情報h及びhは、GPSにより計測された精度の高くない自機高度Hの影響を受けており(式5参照)、高度情報h及びhには、実際には、式8に示すような誤差が含まれており、この誤差を除去する必要がある。
【0042】
そこで、2ベースラインによる誤差推定部10が、2つの観測領域の高度情報h及びhから、観測領域への入射角(オフナディア角)の誤差を求める。
上記したように、2つの観測領域の高度情報h及びhには式8に示すような誤差が含まれており、このため、高度情報h及びhは式9におけるh1’、h2’に相当する。また、観測領域への入射角の誤差が式9におけるdθに相当する。
このため、2ベースラインによる誤差推定部10は、式9により、h1’、h2’から、dθを求める(ステップS9)(誤差推定ステップ)。
【0043】
次に、インタフェロメトリ再処理部11が、2ベースラインによる誤差推定部10が求めたdθでθを補正し、インタフェロメトリ再処理部11により、再度インタフェロメトリ処理を行い、誤差抑圧後の観測領域の高度情報12を得る(ステップS10〜S15)。
具体的には、インタフェロメトリ再処理部11は、S14の位相高度変換ステップ(第二の高度情報生成ステップ)において、式4のθにdθを加えて、式4の計算を行う。
つまり、以下の式10に示す計算を行うことで、誤差が除去されたh(観測領域の高度)を得ることができる。
【0044】
【数9】

【0045】
なお、インタフェロメトリ再処理部11の処理のうちS10〜S15は、インタフェロメトリ処理部8のS3〜S8と同様であり、既存の技術で実現できるため、説明を省略する。
なお、図7に示すように、インタフェロメトリ再処理部11は、S10〜S13の処理を省略して、S14の位相高度変換ステップを直接行い、上記の式10の計算を行うようにしてもよい。
【0046】
また、以上では、アンテナが3つであり、このため、合成開口レーダ画像が3つとなり、観測領域の高度情報が2つとなる例を説明したが、アンテナを4つ以上とすることも可能である。
例えば、アンテナを4つとした場合、合成開口レーダ画像が4つとなり、観測領域の高度情報が3つとなる。観測領域の高度情報をh’、h’、h’とした場合、dθ=h’−h’、dθ=h’−h’のように2つの誤差dθが導出される。この2つの誤差dθ及びdθの平均値を、式10に代入することにより、アンテナを4つとした場合にも、誤差が除去されたh(観測領域の高度)を得ることができる。
アンテナを5つ以上とした場合も、同様に、複数の誤差dθの平均値を用いて、誤差が除去されたh(観測領域の高度)を得ることができる。
【0047】
このように、本実施の形態によれば、航空機や人工衛星等の移動プラットフォームに搭載され、地表面の高分解能画像及び高度情報を得る干渉型合成開口レーダ装置において、自機高度の測定誤差による地表面の高度情報の誤差を推定して補償することが可能になる。
つまり、機体の機軸と直交する平面内で直線状に3つ以上のアンテナを配置し、干渉型合成開口レーダ画像の高度情報を2つ得て、この得られた高度情報の差分から誤差を推定して補償し、再度干渉型合成開口レーダの処理を行うことにより、地表面の高度誤差を抑圧することができる。そして、この結果、地形についての高精度な3次元情報を取得することができる。
【0048】
以上、本実施の形態では、以下の構成を有する干渉型合成開口レーダ装置について説明した。
(a)航空機や衛星などの移動プラットフォームに搭載され、機体の機軸と直交する平面内に直線状に配置された3つ以上のアンテナ、
(b)移動プラットフォームの運動を計測する慣性センサ及び移動プラットフォームの位置、高度を計測するGPSアンテナより構成される動揺センサ、
(c)高周波パルス信号を生成して前記アンテナに送るとともに、前記アンテナで受信された信号を増幅する送受信手段を構成する信号送受信部、
(d)前記信号送受信部より受信した信号と、動揺センサで計測したプラットフォームの運動及び位置情報から、2次元の高分解能画像である合成開口レーダ画像を再生する画像再生処理部、
(e)2枚の合成開口レーダ画像から、観測領域の高度情報を生成するインタフェロメトリ処理部、
(f)水平面からの傾きが等しく、長さの異なる2つベースラインの条件で求めた2つの高度情報から、観測領域への入射角の誤差を求める2ベースラインによる誤差推定部、
(g)補正した観測領域への入射角を用いて、再度インタフェロメトリ処理を行うインタフェロメトリ再処理部、
(h)観測領域への入射角とベースラインの水平面からの傾きの差が数度以下である観測条件。
【0049】
実施の形態2.
図3はこの発明の実施の形態2による高分解能レーダ装置である干渉型合成開口レーダ装置100の構成例を示す構成図であり、実施の形態1に対し、異なるベースラインの傾きによる誤差推定部13、及び、アンテナA〜Cの配置方法が異なる。
【0050】
アンテナA〜Cは、図4に示すように、アンテナA、B、Cによって構成されるベースラインの長さが等しく、それぞれのベースラインの水平面に対する傾きが異なるように配置する。
【0051】
異なるベースラインの傾きによる誤差推定部13は、長さが等しく、水平面からの傾きが異なる2つベースラインの条件で求めた2つの高度情報から、観測領域への入射角の誤差を求める部分である。
【0052】
異なるベースラインの傾きによる誤差推定部13が、2つの高度情報から、観測領域への入射角の誤差を求める式は、実施の形態1と同様に求めることができ、次式である。
【0053】
【数10】

【0054】
ここで、αは、ベースライン1(アンテナA、アンテナB間のベースライン)の水平面に対する傾きを示し、αは、ベースライン2(アンテナA、アンテナC間のベースライン)の水平面に対する傾きを示す。
式9との違いは、式9では、異なる長さのベースライン距離B、Bが含まれていたが、式11では、ベースラインごとの水平面に対する傾きα、αが含まれている点である。
【0055】
本実施の形態では、図6又は図7のフローチャートにおいて、2ベースラインによる誤差推定ステップ(S9)の代わりに、異なるベースラインの傾きによる誤差推定ステップを行う。異なるベースラインの傾きによる誤差推定ステップ以外は、図6又は図7に示す処理と同じ処理を行う。
異なるベースラインの傾きによる誤差推定ステップでは、インタフェロメトリ処理において導出された2つの高度情報h及びhに対して、式9の代わりに式11を用いて、観測領域への入射角の誤差dθを求める。
そして、インタフェロメトリ再処理において、異なるベースラインの傾きによる誤差推定処理で得られた誤差dθを式10に代入して、誤差が抑制された高度情報が得られる。
【0056】
以上、本実施の形態では、以下の構成を有する干渉型合成開口レーダ装置について説明した。
(a)航空機や衛星などの移動プラットフォームに搭載され、機体の機軸と直交する平面内に直線状に配置された3つ以上のアンテナ、
(b)移動プラットフォームの運動を計測する慣性センサ及び移動プラットフォームの位置、高度を計測するGPSアンテナより構成される動揺センサ、
(c)高周波パルス信号を生成して前記アンテナに送るとともに、前記アンテナで受信された信号を増幅する送受信手段を構成する信号送受信部、
(d)前記信号送受信部より受信した信号と、動揺センサで計測したプラットフォームの運動及び位置情報から、2次元の高分解能画像である合成開口レーダ画像を再生する画像再生処理部、
(e)2枚の合成開口レーダ画像から、観測領域の高度情報を生成するインタフェロメトリ処理部、
(f)長さが等しく、水平面からの傾きが異なる2つベースラインの条件で求めた2つの高度情報から、観測領域への入射角の誤差を求める異なるベースラインの傾きによる誤差推定部、
(g)補正した観測領域への入射角を用いて、再度インタフェロメトリ処理を行うインタフェロメトリ再処理部、
(h)観測領域への入射角とベースラインの水平面からの傾きの差が数度以下である観測条件。
【0057】
最後に実施の形態1、2に示した情報処理装置200のハードウェア構成例について説明する。
情報処理装置200は、プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサともいう)を備えている。CPUは、バスを介して、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、磁気ディスク装置等と接続され、これらのハードウェアデバイスを制御する。
磁気ディスク装置には、例えば、オペレーティングシステム(OS)、プログラム群、ファイル群が記憶されている。プログラム群のプログラムは、CPU、オペレーティングシステムにより実行される。
【0058】
上記プログラム群には、実施の形態1、2の説明において「〜部」として説明している機能を実行するプログラムが記憶されている。プログラムは、CPUにより読み出され実行される。
ファイル群には、実施の形態1、2の説明において、「〜の判断」、「〜の計算」、「〜の比較」、「〜の測定」、「〜の推定」、「〜の変換」、「〜の作成」等として説明している処理の結果を示す情報やデータや信号値や変数値やパラメータが、「〜ファイル」や「〜データベース」の各項目として記憶されている。「〜ファイル」や「〜データベース」は、ディスクやメモリなどの記録媒体に記憶される。ディスクやメモリになどの記憶媒体に記憶された情報やデータや信号値や変数値やパラメータは、読み書き回路を介してCPUによりメインメモリやキャッシュメモリに読み出され、抽出・検索・参照・比較・演算・計算・処理・編集・出力などのCPUの動作に用いられる。抽出・検索・参照・比較・演算・計算・処理・編集・出力などのCPUの動作の間、情報やデータや信号値や変数値やパラメータは、メインメモリ、レジスタ、キャッシュメモリ、バッファメモリ等に一時的に記憶される。
また、実施の形態1、2で説明しているフローチャートの矢印の部分は主としてデータや信号の入出力を示し、データや信号値は、RAMのメモリ、磁気ディスク装置の磁気ディスク、その他の記録媒体に記録される。
【0059】
また、実施の形態1、2の説明において「〜部」として説明しているものは、「〜回路」、「〜装置」、「〜機器」、であってもよく、また、「〜ステップ」、「〜手順」、「〜処理」であってもよい。すなわち、「〜部」として説明しているものは、ROMに記憶されたファームウェアで実現されていても構わない。或いは、ソフトウェアのみ、或いは、素子・デバイス・基板・配線などのハードウェアのみ、或いは、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせ、さらには、ファームウェアとの組み合わせで実施されても構わない。ファームウェアとソフトウェアは、プログラムとして、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等の記録媒体に記録可能である。プログラムはCPUにより読み出され、CPUにより実行される。すなわち、プログラムは、実施の形態1、2の「〜部」としてコンピュータを機能させるものである。あるいは、実施の形態1、2の「〜部」の手順や方法をコンピュータに実行させるものである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】この発明の実施の形態1による干渉型合成開口レーダ装置の構成例を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1による干渉型合成開口レーダ装置のアンテナの配置例を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態2による干渉型合成開口レーダ装置の構成例を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態2による干渉型合成開口レーダ装置のアンテナの配置例を示す図である。
【図5】この発明の解決する課題を説明するための観測の幾何条件を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態1による干渉型合成開口レーダ装置の動作例を示すフローチャート図である。
【図7】この発明の実施の形態1による干渉型合成開口レーダ装置の動作例を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0061】
1 アンテナA、2 アンテナB、3 アンテナC、4 動揺センサ、5 信号送受信部、6 画像再生処理部、7 合成開口レーダ画像、8 インタフェロメトリ処理部、9 観測領域の高度情報、10 2ベースラインによる誤差推定部、11 インタフェロメトリ再処理部、12 誤差抑圧後の観測領域の高度情報、13 異なるベースラインの傾きによる誤差推定部、100 干渉型合成開口レーダ装置、200 情報処理装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行体に搭載される情報処理装置であって、
前記飛行体に配置されている3つ以上のアンテナのうちのいずれかのアンテナから送信され、観測対象に反射して前記3つ以上のアンテナで受信されたパルス信号を取得し、前記飛行体の運動状況、位置及び高度を計測するセンサから前記飛行体の運動状況、位置及び高度の情報を取得し、前記パルス信号と前記飛行体の運動状況、位置及び高度の情報とを用いて、3つ以上の2次元画像を生成する画像生成部と、
前記画像生成部により生成された前記3つ以上の2次元画像を用いて、前記観測対象の高度を示す高度情報を2つ以上生成する第一の高度情報生成部と、
前記第一の高度情報生成部により生成された前記2つ以上の高度情報と、前記3つ以上のアンテナの位置関係とを用いて、高度情報に含まれる誤差を推定する誤差推定部と、
前記誤差推定部により推定された誤差を用いて、前記観測対象の誤差補正後の高度を示す高度情報を生成する第二の高度情報生成部とを有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記誤差推定部は、
前記第一の高度情報生成部により生成された前記2つ以上の高度情報と、前記3つ以上のアンテナのアンテナ間距離である2つ以上のベースライン距離とを用いて、誤差を推定することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記画像生成部は、
前記飛行体に直線状に配置されている3つ以上のアンテナで受信されたパルス信号を取得し、
前記誤差推定部は、
前記2つ以上の高度情報と、相互に長さの異なる2つ以上のベースライン距離とを用いて、誤差を推定することを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記情報処理装置は、
前記3つ以上のアンテナを結ぶベースラインの水平面に対する傾きとオフナディア角との差が10度以下である飛行体に搭載されることを特徴とする請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記画像生成部は、
前記飛行体に、アンテナ間を結ぶベースラインの水平面に対する傾きがベースライン毎に相違するとともにベースライン距離が相互に等しくなるように配置されている3つ以上のアンテナで受信されたパルス信号を取得し、
前記誤差推定部は、
前記第一の高度情報生成部により生成された前記2つ以上の高度情報と、各々のベースラインの水平面に対する傾きとを用いて、誤差を推定することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記誤差推定部は、
前記観測対象へのパルス信号の入射角の誤差を推定し、
前記第二の高度情報生成部は、
前記誤差推定部により推定された前記入射角の誤差を用いて、前記観測対象の誤差補正後の高度を示す高度情報を生成することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記画像生成部は、
前記3つ以上の2次元画像として、2次元の高分解能画像である合成開口レーダ画像を3つ以上生成し、
前記第一の高度情報生成部は、
前記画像生成部により生成された3つ以上の合成開口レーダ画像を用いてインタフェロメトリ処理を行って、前記観測対象の高度を示す高度情報を2つ以上生成することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項8】
飛行体に搭載されるコンピュータを用いる情報処理方法であって、
前記コンピュータが、前記飛行体に配置されている3つ以上のアンテナのうちのいずれかのアンテナから送信され、観測対象に反射して前記3つ以上のアンテナで受信されたパルス信号を取得し、前記飛行体の運動状況、位置及び高度を計測するセンサから前記飛行体の運動状況、位置及び高度の情報を取得し、前記パルス信号と前記飛行体の運動状況、位置及び高度の情報とを用いて、3つ以上の2次元画像を生成する画像生成ステップと、
前記コンピュータが、前記画像生成ステップにより生成された前記3つ以上の2次元画像を用いて、前記観測対象の高度を示す高度情報を2つ以上生成する第一の高度情報生成ステップと、
前記コンピュータが、前記第一の高度情報生成ステップにより生成された前記2つ以上の高度情報と、前記3つ以上のアンテナの位置関係とを用いて、高度情報に含まれる誤差を推定する誤差推定ステップと、
前記コンピュータが、前記誤差推定ステップにより推定された誤差を用いて、前記観測対象の誤差補正後の高度を示す高度情報を生成する第二の高度情報生成ステップとを有することを特徴とする情報処理方法。
【請求項9】
飛行体に搭載されるコンピュータに、
前記飛行体に配置されている3つ以上のアンテナのうちのいずれかのアンテナから送信され、観測対象に反射して前記3つ以上のアンテナで受信されたパルス信号を取得し、前記飛行体の運動状況、位置及び高度を計測するセンサから前記飛行体の運動状況、位置及び高度の情報を取得し、前記パルス信号と前記飛行体の運動状況、位置及び高度の情報とを用いて、3つ以上の2次元画像を生成する画像生成処理と、
前記画像生成処理により生成された前記3つ以上の2次元画像を用いて、前記観測対象の高度を示す高度情報を2つ以上生成する第一の高度情報生成処理と、
前記第一の高度情報生成処理により生成された前記2つ以上の高度情報と、前記3つ以上のアンテナの位置関係とを用いて、高度情報に含まれる誤差を推定する誤差推定処理と、
前記誤差推定処理により推定された誤差を用いて、前記観測対象の誤差補正後の高度を示す高度情報を生成する第二の高度情報生成処理とを実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−249551(P2008−249551A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−92383(P2007−92383)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】