説明

情報端末および情報システム

【課題】非接触通信媒体に対する情報の更新処理を確実に実施し得る情報端末および情報システムを提供する。
【解決手段】QRコードQからの反射光を取り込む読取口14bがアンテナ43の近傍に配置されている。そして、ICカードCに対して非接触通信可能な状態になったことが検知され、このICカードCの情報がICカード通信部40により取得されると、情報コード読取部30によりICカードCの裏面中央に表示されるQRコードQが読み取られた読取状態であると判定される場合に、ICカード通信部40により、当該ICカードCに対する更新処理が開始される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触通信媒体と非接触通信することで当該非接触通信媒体の情報を取得および変更可能な情報端末および情報システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非接触通信媒体と非接触通信することで当該非接触通信媒体の情報を取得および変更可能な情報端末に関する技術として、下記特許文献1に示す電子マネーシステムが知られている。この電子マネーシステムでは、カードユニットによって、第1ポーリング信号または第2ポーリング信号に応じてそれぞれ取引要求またはリカバリ要求が受信されると、携帯電話が受付けられ、この受付けられた携帯電話に対して、球貸処理に供される減算額分のバリューの減算を要求する減算要求が送信される。そして、携帯電話によって、減算が完了した旨を示す減算終了信号がカードユニットに返信される。
【0003】
そして、カードユニットによって、減算要求が送信されてから所定時間以内に携帯電話から減算終了信号が受信されると、球貸処理が実行される。一方、カードユニットによって、減算要求が送信されてから所定時間以内に携帯電話から減算終了信号を受信することなく、その後に、リカバリ要求が受信されると、当該携帯電話が受付けられたときの装置IDが取得される。そして、カードユニットによって、取得した装置IDが、記憶部に記憶された装置IDと一致するか否かが判定され、一致すると判定されたことを条件として、球貸処理が実行される。
【0004】
これにより、所定のカードユニットとの取引において、バリューの減算が行なわれることなく通信が途絶え、その後、他のカードユニットにおいて球貸処理が行なわれた後に、再び、上記所定のカードユニットに携帯電話が受付けられたときでも、二重に球貸処理を行なわれてしまうことを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願2007−079949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、非接触通信媒体、例えばICカードを使用した電子マネー決済では、ICカードから現在の金額(残高)等の情報を読み取り(取得し)、決済完了後の金額を計算した後に、この計算された金額をICカードに書き込む(更新する)ことで、決済処理が完了する。
【0007】
しかしながら、決済用の情報端末により非接触通信媒体に対する情報の読み書き(取得・更新)は、通常、非接触通信媒体をフォルダ等により固定した状態で実施されず、利用者が非接触通信媒体を単に決済用情報端末に近づけた状態で実施される。このため、利用者が非接触通信媒体への書き込みが実施されるタイミングで当該非接触通信媒体を決済用情報端末から離してしまうと、正しく書き込めたかどうか不明な状態や書込み失敗した状態になるという問題がある。この問題は、上記特許文献1に示す構成でも同様に発生する場合がある。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、非接触通信媒体に対する情報の更新処理を確実に実施し得る情報端末および情報システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の情報端末では、アンテナに近づけられた非接触通信媒体と非接触通信することで、当該非接触通信媒体の情報を取得可能な取得手段と、この取得手段により取得された情報と外部から入力される情報とに応じて当該非接触通信媒体の情報を更新する更新処理を実施可能な更新手段と、を備える情報端末において、前記非接触通信媒体には、光学的に読み取り可能な情報コードが表示されており、前記非接触通信媒体に対して非接触通信可能な状態になったことを検知する検知手段と、前記情報コードからの反射光を読取口を介して受光することで当該情報コードを光学的に読み取り可能な読取手段と、前記読取手段により前記情報コードが読み取られた読取状態であるか否かについて判定する判定手段と、を備え、前記読取口は、前記アンテナの近傍に配置されており、前記更新手段は、前記検知手段により前記非接触通信媒体に対して非接触通信可能な状態になったことが検知され、この非接触通信媒体の情報が前記取得手段により取得されると、前記判定手段により前記読取状態であると判定される場合に、当該非接触通信媒体に対する更新処理を開始することを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載の情報端末において、前記読取口は、前記アンテナの中央に配置されることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の情報端末において、前記取得手段は、前記検知手段により前記非接触通信媒体に対して非接触通信可能な状態になったことが検知されたことに応じて、前記情報コードを光学的に読み取るための処理を自動的に開始することを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の情報端末において、前記取得手段により取得される前記非接触通信媒体の情報に応じて、前記読取手段による読取可能範囲を調整する調整手段を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の情報端末において、前記検知手段により前記非接触通信媒体に対して非接触通信可能な状態になったことが検知されるとともにこの非接触通信媒体の情報が前記取得手段により取得されるときに、前記判定手段により前記読取状態であると判定されない場合に、前記更新手段による前記更新処理が開始できない状態である旨を報知する報知手段を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の情報端末において、前記非接触通信媒体に記録される情報は、所定の暗号化キーにより暗号化されており、前記情報コードには、前記所定の暗号化キーが前記読取手段により読み取り可能に記録され、前記読取手段により前記情報コードが読み取ることで得られた前記所定の暗号キーに基づいて、前記取得手段により取得された情報を解読する解読手段を備えることを特徴とする。
【0015】
請求項7の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の情報端末において、前記外部から入力される情報は、決済処理用の情報であり、前記更新手段は、前記検知手段により前記非接触通信媒体に対して非接触通信可能な状態になったことが検知され、この非接触通信媒体の情報として残高情報が前記取得手段により取得されると、前記判定手段により前記読取状態であると判定される場合に、当該非接触通信媒体に対して前記決済処理用の情報および前記残高情報に基づいて当該残高情報を決済完了後の状態に更新する更新処理を開始することを特徴とする。
【0016】
特許請求の範囲に記載の請求項8の情報システムでは、請求項1〜7のいずれか一項に記載の情報端末により、非接触通信媒体の情報の取得および更新を可能とする情報システムであって、前記非接触通信媒体は、前記情報端末からの表示要求の有無に応じて前記情報コードが表示される表示状態と非表示状態とを切り替え可能に構成されており、前記情報端末は、前記検知手段により前記非接触通信媒体に対して非接触通信可能な状態になったことが検知されると、この非接触通信媒体に対して前記表示要求を送信することで当該非接触通信媒体を前記表示状態に切り替えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明では、情報コードからの反射光を取り込む読取口がアンテナの近傍に配置されている。そして、検知手段により非接触通信媒体に対して非接触通信可能な状態になったことが検知され、この非接触通信媒体の情報が取得手段により取得されると、読取手段により非接触通信媒体に表示される情報コードが読み取られた読取状態であると判定手段により判定される場合に、更新手段により、当該非接触通信媒体に対する更新処理が開始される。
【0018】
これにより、非接触通信媒体に表示される情報コードが読み取られる読取状態、すなわち、非接触通信媒体が読取口の近傍のアンテナに近づいた状態で、更新手段により、当該非接触通信媒体に対する更新処理が開始されるので、非接触通信媒体に対する情報の更新処理を確実に実施することができる。
【0019】
請求項2の発明では、読取口は、アンテナの中央に配置されるため、非接触通信媒体に表示される情報コードを読取手段により読取口を介して読み取らせる場合には、非接触通信媒体がアンテナの中央に近づけられることとなるので、非接触通信媒体に対する情報の更新処理をより確実に実施することができる。
【0020】
請求項3の発明では、検知手段により非接触通信媒体に対して非接触通信可能な状態になったことが検知されたことに応じて、取得手段により、情報コードを光学的に読み取るための処理が自動的に開始される。このため、非接触通信媒体に対して非接触通信可能な状態になると、この非接触通信媒体に対する情報の取得および更新が特別な操作をすることもなく実施されることとなる。これにより、非接触通信媒体に対する情報の取得タイミングと更新タイミングとの時間差が小さくなるので、非接触通信媒体に対する情報の更新処理をより確実に実施することができる。
【0021】
請求項4の発明では、取得手段により取得される非接触通信媒体の情報に応じて、調整手段により読取手段による読取可能範囲が調整される。このため、非接触通信媒体の通信範囲が狭い場合に読取手段による読取可能範囲を狭く調整することで、更新処理時には非接触通信媒体がアンテナに近づけられることとなり、通信範囲が狭い非接触通信媒体に対しても情報の更新処理をより確実に実施することができる。また、非接触通信媒体の通信範囲が広い場合に読取手段による読取可能範囲を広く調整することで、非接触通信媒体がアンテナに対して比較的離れた位置にある場合でも更新処理が開始されるので、当該情報端末の操作性を高めることができる。
【0022】
請求項5の発明では、検知手段により非接触通信媒体に対して非接触通信可能な状態になったことが検知されるとともにこの非接触通信媒体の情報が取得手段により取得されるときに、判定手段により読取状態であると判定されない場合には、報知手段により、更新手段による更新処理が開始できない状態である旨が報知される。この報知により、利用者は、非接触通信媒体がアンテナ(読取口)から離れているために更新処理が開始されない状態であることを認識するので、利用者に対して、更新処理を開始させるための動作、すなわち、非接触通信媒体をアンテナ(読取口)に近づける動作を促すことができる。
【0023】
請求項6の発明では、非接触通信媒体に記録される情報は、所定の暗号化キーにより暗号化されており、情報コードには、上記所定の暗号化キーが読取手段により読み取り可能に記録されている。そして、読取手段により情報コードを読み取ることで得られた所定の暗号キーに基づいて、取得手段により取得された情報が解読手段により解読される。これにより、暗号化された非接触通信媒体の情報を解読する場合でも、この暗号化を解除するためのキー入力操作や認証情報の入力等をなくすことができ、利用者に特別な操作をさせることなく、セキュリティ性を向上させることができる。
【0024】
請求項7の発明では、検知手段により非接触通信媒体に対して非接触通信可能な状態になったことが検知され、この非接触通信媒体の残高情報が取得手段により取得されると、読取手段により非接触通信媒体に表示される情報コードが読み取られた読取状態であると判定手段により判定される場合に、更新手段により、当該非接触通信媒体に対して決済処理用の情報および残高情報に基づいて当該残高情報を決済完了後の状態に更新する更新処理が開始される。
【0025】
このように、決済処理用に使用される非接触通信媒体に対しても、当該非接触通信媒体が読取口の近傍のアンテナに近づいた状態で、更新手段により、当該非接触通信媒体に対する更新処理が開始されるので、非接触通信媒体に対する決済処理を確実に実施することができる。
【0026】
請求項8の発明では、非接触通信媒体は、情報端末からの表示要求の有無に応じて情報コードが表示される表示状態と非表示状態とを切り替え可能に構成されている。そして、情報端末は、検知手段により非接触通信媒体に対して非接触通信可能な状態になったことが検知されると、この非接触通信媒体に対して上記表示要求を送信することで当該非接触通信媒体を表示状態に切り替える。これにより、非接触通信媒体に対して常に情報コードを表示させることなく、非接触通信媒体に対する情報の更新処理を確実に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施形態に係る決済端末の概略構成を示す斜視図である。
【図2】決済端末の電気的構成を例示するブロック図である。
【図3】第1実施形態の制御部における決済処理の流れを例示するフローチャートである。
【図4】第2実施形態の制御部における決済処理の流れを例示するフローチャートである。
【図5】第3実施形態に係る情報システムの要部を示す説明図である。
【図6】第3実施形態の制御部における決済処理の流れを例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[第1実施形態]
以下、本発明の情報端末を決済端末10に適用した第1実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、第1実施形態に係る決済端末10の概略構成を示す斜視図である。図2は、決済端末10の電気的構成を例示するブロック図である。
【0029】
本実施形態に係る決済端末10は、商品の購入に関する決済を行う携帯型の端末であって、現金だけでなくキャッシュカードやクレジットカードのような非接触通信媒体と非接触通信(無線通信)することで決済処理を行うように構成されている。本第1実施形態では、上記非接触通信媒体として、非接触型のICカードCが採用されており、このICカードCは、金銭的価値を有する電子マネーを利用可能に構成されている。
【0030】
図1に示すように、決済端末10の外郭を構成する筐体11は、操作者に把持される把持部12と、液晶表示器23が取り付けられる表示部13と、平面状のカード読取面14aが形成される通信部14と、を備えている。把持部12のうち液晶表示器23の近傍には、当該決済端末10の操作に関する情報を入力可能なファンクションキーや数字情報を入力可能なテンキー等、情報を入力する際に操作されるキー操作部24が設けられている。
【0031】
カード読取面14aの中央には、後述する情報コードからの反射光を入射させるための矩形状の読取口14bが形成されている。また、カード読取面14aには、当該カード読取面14aに近接してかざされるICカードCと非接触通信するためのアンテナ43が、読取口14bを囲うように配置されている。
【0032】
本実施形態では、図1に示すように、非接触通信であるICカードCの裏面中央には、所定の情報が光学的に読み取り可能に記憶される情報コードとして、QRコード(登録商標)Qが表示されている。このため、決済処理時に、ICカードCの裏面を決済端末10のカード読取面14aに近接してかざすときには、当該ICカードCの裏面中央に表示されるQRコードQがカード読取面14aに形成される読取口14bに対して近接して対向することとなる。
【0033】
次に、決済端末10の電気的構成について図2を用いて説明する。
図2に示すように、筐体11内には、決済端末10全体を制御する制御部21が設けられている。この制御部21は、マイコンを主体として構成されるものであり、CPU、システムバス、入出力インターフェース等を有しており、メモリ22とともに情報処理装置を構成し得るもので情報処理機能を有している。また、制御部21には、液晶表示器23、キー操作部24および通信インターフェース25などが接続されている。
【0034】
液晶表示器23は、制御部21によって制御される構成をなしており、それぞれ、制御部21から表示処理等に関する指令を受けて動作するようになっている。また、キー操作部24は、制御部21に対して操作信号を与える構成をなしており、制御部21は、これらからの操作信号を受けて操作信号の内容に応じた動作を行うようになっている。
【0035】
通信インターフェース25は、外部(例えば銀行側サーバや外部ホスト装置)との間でのデータ通信を行うためのインターフェースとして構成されており、制御部21と協働して通信処理を行う構成をなしている。また、筐体11内には、電源となるバッテリ26や電源部27が収容されており、これらによって制御部21や各種電気部品に電力が供給されるようになっている。
【0036】
また、制御部21には、情報コード読取部30およびICカード通信部40がそれぞれ接続されている。
情報コード読取部30は、上述したQRコードQを含めた情報コードを光学的に読み取る機能を有するもので、画像認識モジュール31を備えている。この画像認識モジュール31は、照明光源や受光センサ(図略)等を備えており、照明光源からの照射光が情報コードにて反射され反射光が上述した読取口14bを介して受光センサにて受光されると、この反射光に応じた受光信号を受光センサから制御部21に出力するように構成されている。制御部21では、この受光信号に基づいて情報コードの情報が取得されることとなる。なお、情報コード読取部30は、特許請求の範囲に記載の「読取手段」の一例に相当し得る。
【0037】
ICカード通信部40は、ICカードリーダ制御部41とICカードリーダ通信部42とアンテナ43とを備えている。ICカードリーダ制御部41は、ICカードリーダ通信部42を制御することで当該ICカードリーダ通信部42およびアンテナ43を介して、ICカードCとの間で電磁波による非接触通信(無線通信)を行ない、当該ICカードCに記憶される残高情報などの決済に関する決済関連情報の読み取り等を行なうように機能するものである。なお、ICカード通信部40は、特許請求の範囲に記載の「取得手段」および「更新手段」の一例に相当し得る。
【0038】
次に、本実施形態における決済処理について説明する。
本実施形態では、決済処理時において更新データを書き込む際にICカードCとアンテナ43とが近づけられた状態を維持するために、決済処理時には、ICカードCの裏面をカード読取面14aにかざしてQRコードQが光学的に読み取られた場合に、このICカードCに対して決済時の更新データが書き込まれる。これは、QRコードQが読み取られる場合には、当該QRコードQがカード読取面14aに形成される読取口14bに対して近接して対向することから、ICカードCとアンテナ43とが十分に近づけられた状態が維持されていると判断することができるからである。
【0039】
以下、決済端末10において制御部21により実施される決済処理について図3のフローチャートを参照して詳細に説明する。図3は、第1実施形態の制御部21における決済処理の流れを例示するフローチャートである。
【0040】
まず、当該決済端末10が電源オン状態になり、購入商品に関する購入金額等の購入情報が取得されると、図3のステップS101にてキャリア出力処理がなされて、所定のキャリアがアンテナ43を介して出力される状態になる。次に、ステップS103において、ポーリング処理がなされ、アンテナ43に近づけられたICカードCを検知(捕捉)するための処理がなされる。そして、ICカードCがカード読取面14aにかざされることで当該ICカードCと非接触通信可能な状態となるまで、ステップS105にてNoとの判定が繰り返される。なお、ステップS105を実行する制御部21は、特許請求の範囲に記載の「検知手段」の一例に相当し得る。
【0041】
そして、ICカードCがカード読取面14aにかざされることで、このICカードCと非接触通信可能な状態になると(S105でYes)、ステップS107において、決済情報取得処理がなされる。この処理では、ICカードCに記録される残高情報等の決済に関する情報が、ICカード通信部40による無線通信により読み出されて取得される。続いて、ステップS109において、更新データ作成処理がなされる。この処理では、ステップ107にて取得された残高情報と上述のように取得された購入金額情報とから求められる決済完了後の残高情報や、この購入に関する情報等が更新データとして作成される。
【0042】
このように更新データが作成されると、ステップS111において、コード読取処理がなされる。この処理では、照明光源からの照射光が読取口14bを介して外方に照射される状態となり、読取口14bに対向するように情報コードが位置する場合にはこの情報コードが光学的に読み取られることとなる。
【0043】
ここで、ICカードCの裏面がカード読取面14aにかざされることで、当該ICカードCの裏面中央に表示されるQRコードQがカード読取面14aに形成される読取口14bに対して近接して対向する状態が維持される場合には、このQRコードQが読み取られる読取状態となり、ステップS113にてYesと判定される。なお、QRコードQは、本決済処理に関する特有の情報が光学的に読み取られるように構成されており、他の情報コードが読み取られる場合でも、ステップS113にてYesと判定されないようになっている。
【0044】
このようにQRコードQが読み取られる読取状態である場合には(S113でYes)、ICカードCがアンテナ43に対して十分に近接している状態が維持されていると判断することができるため、ステップS115にて更新処理がなされる。この処理では、ステップS109にて作成された更新データが、ICカード通信部40によりICカードCに書き込まれて、決済処理が終了する。これにより、ICカードCがアンテナ43に対して十分に近接した状態で、更新データをICカードCに確実に書き込むことができ、書込みが失敗した状態や正しく書き込めたかどうか不明な状態をなくすことができる。
【0045】
一方、QRコードQが読み取られない場合には、QRコードQが読取口14bに近接していないとして、ICカードCがアンテナ43に対して十分に近接していないと判断することができる。この場合には、ステップS113にてNoと判定されて、ステップS117にて警告処理がなされる。この処理では、QRコードQが読み取られていないことから更新データをICカードCに書き込む更新処理ができない旨が、液晶表示器23に表示されて報知される。これにより、利用者は、QRコードQが読み取られていないためにICカードCに対する書込処理ができない状態であることを視認することができる。なお、液晶表示器23は、特許請求の範囲に記載の「報知手段」の一例に相当し得る。
【0046】
続いて、ステップS119において、更新データの作成から所定時間が経過しているかについて判定され、当該所定時間が経過するまで、ステップS119にてNoと判定されて、ステップS111からの処理が繰り返される。
【0047】
そして、この繰り返し処理中に、ICカードCの表示されるQRコードQが光学的に読み取られると(S113でYes)、ICカードCがアンテナ43に対して十分に近接している状態になったとして、上述したステップS115における書込処理がなされる。一方、上記繰り返し処理中に、QRコードQが読み取られることなく、上記所定時間が経過すると(S119でYes)、ステップS121にて無効化処理がなされる。この処理では、ステップS107にて取得された情報やステップS109にて作成された更新データが無効化(破棄)されて、上述したステップS101からの処理が再びなされることとなる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態に係る決済端末10では、QRコードQからの反射光を取り込む読取口14bがアンテナ43の近傍に配置されている。そして、ステップS105にてICカードCに対して非接触通信可能な状態になったことが検知され、このICカードCの情報がICカード通信部40により取得されると、情報コード読取部30によりICカードCの裏面中央に表示されるQRコードQが読み取られた読取状態であると判定される場合に、ICカード通信部40により、当該ICカードCに対する更新処理が開始される。
【0049】
これにより、ICカードCに表示されるQRコードQが読み取られる読取状態、すなわち、ICカードCが読取口14bの近傍のアンテナ43に近づいた状態で、当該ICカードCに対する更新処理が開始されるので、ICカードCに対する情報の更新処理を確実に実施することができる。
【0050】
特に、読取口14bは、アンテナ43の中央に配置されるため、ICカードCに表示されるQRコードQを読取口14bを介して読み取らせる場合には、ICカードCがアンテナ43の中央に近づけられることとなるので、ICカードCに対する情報の更新処理をより確実に実施することができる。なお、読取口14bは、アンテナ43の中央に形成されることに限らず、カード読取面14aに対するICカードCのかざされ方を反映させて、カード読取面14aのいずれかに形成されてもよい。
【0051】
また、ステップS105にてICカードCに対して非接触通信可能な状態になったことが検知されたことに応じて、情報コード読取部30により、QRコードQを光学的に読み取るためのコード読取処理が自動的に開始される。このため、ICカードCに対して非接触通信可能な状態になると、このICカードCに対する情報の取得および更新が特別な操作をすることもなく実施されることとなる。これにより、ICカードCに対する情報の取得タイミングと更新タイミングとの時間差が小さくなるので、ICカードCに対する情報の更新処理をより確実に実施することができる。
【0052】
さらに、ステップS105にてICカードCに対して非接触通信可能な状態になったことが検知されるとともにこのICカードCの情報がICカード通信部40により取得されるときに、ステップS113により読取状態であると判定されない場合には、液晶表示器23に、更新処理が開始できない状態である旨が表示されて報知される。この報知により、利用者は、ICカードCがアンテナ43(読取口14b)から離れているために更新処理が開始されない状態であることを認識するので、利用者に対して、更新処理を開始させるための動作、すなわち、ICカードCをアンテナ43(読取口14b)に近づける動作を促すことができる。
【0053】
本第1実施形態の変形例として、ICカードCに記録される情報は、所定の暗号化キーにより暗号化され、QRコードQは、上記所定の暗号化キーが情報コード読取部30により読み取り可能に記録されるように構成されてもよい。このように構成される場合には、情報コード読取部30によりQRコードQが読み取ることで得られた上記所定の暗号キーに基づいて、ICカード通信部40により取得された情報が解読される。
【0054】
これにより、暗号化されたICカードCの情報を解読する場合でも、この暗号化を解除するためのキー入力操作やPIN(Personal Identification Number)等の認証情報の入力等をなくすことができ、利用者に特別な操作をさせることなく、セキュリティ性を向上させることができる。特に、暗号化されたQRコードをICカードCに表示することで、この暗号化を解除するための情報を有する決済端末10のみが当該ICカードCを用いた決済処理を実行できるようになり、セキュリティ性をさらに向上させることができる。
【0055】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る決済端末10について図4を参照して説明する。図4は、第2実施形態の制御部21における決済処理の流れを例示するフローチャートである。
本第2実施形態に係る決済端末10では、ICカードCの通信範囲に応じて情報コード読取部30による読取可能範囲を調整するために、上述した決済処理について図3に示すフローチャートに代えて図4に示すフローチャートに基づいて演算処理している点が、上記第1実施形態に係る決済端末と主に異なる。したがって、上述した第1実施形態の決済端末と実質的に同一の構成部分には同一符号を付し、説明を省略する。
【0056】
本第2実施形態では、情報コード読取部30は、制御部21により制御されることで、その読取可能範囲が調整可能に構成されている。具体的には、情報コード読取部30は、例えば、読取口14bを介して照射される照射光の照度を調整することで、その読取可能範囲が調整される。これにより、照射光の照度を低くすることで、読取口14bに対して比較的離れた情報コードではその反射光が受光されなくなるので、上記読取可能範囲を狭くするように調整することができる。また、照射光の照度を高くすることで、読取口14bから比較的離された情報コードでもその反射光が受光されるので、上記読取可能範囲が広くなるように調整することができる。
【0057】
以下、本第2実施形態における制御部21による決済処理について、図4のフローチャートを用いて説明する。
上記第1実施形態における決済処理と同様に、ステップS109までの処理が終了すると、図4のステップS123において、読取可能範囲調整処理がなされる。この処理では、ステップS107にて取得された情報に基づいて、情報コード読取部30の読取可能範囲が調整される。
【0058】
具体的には、ステップS107にて取得された情報に基づいて、無線通信可能範囲が比較的狭い非接触通信媒体、例えば、電子マネーを使用可能な携帯電話を用いて決済することがわかると、当該非接触通信媒体を確実にアンテナ43に近づけるために、照射光の照度が低く設定されて上記読取可能範囲が狭く調整される。一方、ステップS107にて取得された情報に基づいて、無線通信可能範囲が比較的広い非接触通信媒体を用いて決済することがわかると、当該決済端末10の操作性を高めるために、照射光の照度が高く設定されて上記読取可能範囲が広く調整される。
【0059】
そして、このように読取可能範囲が調整された情報コード読取部30によりQRコードQが読み取られると(S113でYes)、上述したステップS115にて更新処理がなされ、ステップS109にて作成された更新データが、ICカード通信部40によりICカードCに書き込まれて、決済処理が終了する。
【0060】
以上説明したように、本実施形態に係る決済端末10では、ICカード通信部40により取得される非接触通信媒体の情報に応じて、情報コード読取部30による読取可能範囲が調整される。このため、非接触通信媒体の通信範囲が狭い場合に情報コード読取部30による読取可能範囲を狭く調整することで、更新処理時には非接触通信媒体がアンテナ43に近づけられることとなり、通信範囲が狭い非接触通信媒体に対しても情報の更新処理をより確実に実施することができる。また、非接触通信媒体の通信範囲が広い場合に情報コード読取部30による読取可能範囲を広く調整することで、非接触通信媒体がアンテナ43に対して比較的離れた位置にある場合でも更新処理が開始されるので、当該決済端末10の操作性を高めることができる。
【0061】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る決済端末10および情報システム1について図5および図6を参照して説明する。図5は、第3実施形態に係る情報システム1の要部を示す説明図である。図6は、第3実施形態の制御部21における決済処理の流れを例示するフローチャートである。
【0062】
図5に示すように、本第3実施形態に係る情報システム1は、上述のように構成される決済端末10を備え、この決済端末10を用いた決済処理に使用される非接触通信媒体として携帯電話50を制御可能に構成されている。
【0063】
携帯電話50は、電子マネーを利用可能な一般的な携帯電話と同等に構成されており、電子マネーに関する情報等がメモリ(図示略)に記憶されている。また、携帯電話50は、所定の情報が表示される表示部51と、数字キーや機能キー等からなるキー操作部52とを備えており、表示部51の周囲には、決済端末10等と無線通信するためのアンテナ53が配置されている。
【0064】
この携帯電話50は、特に、決済処理用として所定のアプリケーションを実行させることで、電子マネーを利用した決済が可能な状態となり、この状態では、決済端末10から送信されるコード表示指令に応じて、メモリに予め記憶されたQRコードQが表示部51に表示されるように構成されている。すなわち、携帯電話50は、決済端末10からの表示要求(コード表示指令)の有無に応じてQRコードQが表示される表示状態と非表示状態とを切り替え可能に構成される。このため、決済時には、QRコードQが表示される表示部51がカード読取面14aにかざされることで、QRコードQが情報コード読取部30により読み取られることとなる。
【0065】
以下、携帯電話50を決済用の非接触通信媒体として使用した場合の決済端末10の制御部21における決済処理について、図6のフローチャートを用いて説明する。
上記第1実施形態における決済処理と同様にステップS103にてポーリング処理がなされ、上記アプリケーションが実行された携帯電話50の表示部51がカード読取面14aにかざされることで、アンテナ43およびアンテナ53等を介して、この携帯電話50と非接触通信可能な状態になると、ステップS105にてYesと判定される。
【0066】
このように携帯電話50と非接触通信可能な状態になると、ステップS125にて、コード表示指令送信処理がなされ、当該携帯電話50に対して、QRコードQを表示させるためのコード表示指令が送信される。これにより、このコード表示指令を受信した携帯電話50の表示部51には、上述したQRコードQが表示される(図5参照)。
【0067】
上述のようにコード表示指令が送信されると、ステップS107にてICカード通信部40による無線通信により携帯電話50から読み出されて取得され、ステップS109にて上記更新データが作成される。そして、携帯電話50の表示部51に表示されたQRコードQがカード読取面14aに形成される読取口14bに対して近接して対向する状態が維持されることで、ステップS111にてこのように表示されたQRコードQが読み取られると、ステップS113にてYesと判定される。そして、上述したステップS115にて更新処理がなされ、ステップS109にて作成された更新データが、ICカード通信部40により携帯電話50のメモリに書き込まれて、決済処理が終了する。
【0068】
以上説明したように、本実施形態に係る情報システム1では、携帯電話50は、決済端末10からのコード表示指令(表示要求)の有無に応じてQRコードQが表示される表示状態と非表示状態とを切り替え可能に構成されている。そして、決済端末10は、携帯電話50に対して非接触通信可能な状態になったことが検知されると、この携帯電話50に対して上記コード表示指令を送信することで当該携帯電話50の表示部51をQRコードQが表示される表示状態に切り替える。これにより、携帯電話50に対して常にQRコードQを表示させることなく、携帯電話50に対する情報の更新処理を確実に実施することができる。
【0069】
なお、情報システム1では、携帯電話50を非接触通信媒体として採用したが、これに限らず、決済端末10からのコード表示指令(表示要求)の有無に応じて情報コードが表示される表示状態と非表示状態とを切り替え可能に構成される決済用の非接触通信媒体を採用してもよい。また、本実施形態に係る情報システム1における決済端末10の決済処理では、上記第2実施形態における読取可能範囲調整処理(S123)を、ステップS107の処理後であってステップS111の処理前に実行してもよい。
【0070】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよい。
(1)上記第1,2実施形態において、ICカードCを用いた決済処理について説明したが、これに限らず、携帯電話など電子マネー等の決済機能を有する非接触通信媒体を用いて決済処理を実施してもよい。この場合、非接触通信媒体には、QRコードQなどの情報コードが光学的に読み取り可能に表示される。
【0071】
(2)上記各実施形態において、ICカードCなどの非接触通信媒体に表示される情報コードは、QRコードQに限らず、例えば、バーコードのような一次元コードや他の二次元コードのように、光学的に読み取り可能な情報コードであればよい。
【0072】
(3)本発明は、携帯型の決済端末に採用されることに限らず、据え置き型の決済端末に採用されてもよい。このようにしても、非接触通信媒体(ICカードC)に表示される情報コード(QRコードQ)が読み取られる読取状態、すなわち、非接触通信媒体が読取口14bの近傍のアンテナ43に近づいた状態で、当該非接触通信媒体に対する更新処理が開始されるので、非接触通信媒体に対する情報の更新処理を確実に実施することができる。
【符号の説明】
【0073】
10…決済端末(情報端末)
14a…カード読取面
14b…読取口
21…制御部(検知手段)
23…液晶表示器(報知手段)
30…情報コード読取部(読取手段)
40…ICカード通信部(取得手段,更新手段)
43…アンテナ
50…携帯電話(非接触通信媒体)
C…ICカード(非接触通信媒体)
Q…QRコード(情報コード)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナに近づけられた非接触通信媒体と非接触通信することで、当該非接触通信媒体の情報を取得可能な取得手段と、この取得手段により取得された情報と外部から入力される情報とに応じて当該非接触通信媒体の情報を更新する更新処理を実施可能な更新手段と、を備える情報端末において、
前記非接触通信媒体には、光学的に読み取り可能な情報コードが表示されており、
前記非接触通信媒体に対して非接触通信可能な状態になったことを検知する検知手段と、
前記情報コードからの反射光を読取口を介して受光することで当該情報コードを光学的に読み取り可能な読取手段と、
前記読取手段により前記情報コードが読み取られた読取状態であるか否かについて判定する判定手段と、を備え、
前記読取口は、前記アンテナの近傍に配置されており、
前記更新手段は、前記検知手段により前記非接触通信媒体に対して非接触通信可能な状態になったことが検知され、この非接触通信媒体の情報が前記取得手段により取得されると、前記判定手段により前記読取状態であると判定される場合に、当該非接触通信媒体に対する更新処理を開始することを特徴とする情報端末。
【請求項2】
前記読取口は、前記アンテナの中央に配置されることを特徴とする請求項1に記載の情報端末。
【請求項3】
前記取得手段は、前記検知手段により前記非接触通信媒体に対して非接触通信可能な状態になったことが検知されたことに応じて、前記情報コードを光学的に読み取るための処理を自動的に開始することを特徴とする請求項1または2に記載の情報端末。
【請求項4】
前記取得手段により取得される前記非接触通信媒体の情報に応じて、前記読取手段による読取可能範囲を調整する調整手段を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の情報端末。
【請求項5】
前記検知手段により前記非接触通信媒体に対して非接触通信可能な状態になったことが検知されるとともにこの非接触通信媒体の情報が前記取得手段により取得されるときに、前記判定手段により前記読取状態であると判定されない場合に、前記更新手段による前記更新処理が開始できない状態である旨を報知する報知手段を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の情報端末。
【請求項6】
前記非接触通信媒体に記録される情報は、所定の暗号化キーにより暗号化されており、
前記情報コードには、前記所定の暗号化キーが前記読取手段により読み取り可能に記録され、
前記読取手段により前記情報コードが読み取ることで得られた前記所定の暗号キーに基づいて、前記取得手段により取得された情報を解読する解読手段を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の情報端末。
【請求項7】
前記外部から入力される情報は、決済処理用の情報であり、
前記更新手段は、前記検知手段により前記非接触通信媒体に対して非接触通信可能な状態になったことが検知され、この非接触通信媒体の情報として残高情報が前記取得手段により取得されると、前記判定手段により前記読取状態であると判定される場合に、当該非接触通信媒体に対して前記決済処理用の情報および前記残高情報に基づいて当該残高情報を決済完了後の状態に更新する更新処理を開始することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の情報端末。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の情報端末により、非接触通信媒体の情報の取得および更新を可能とする情報システムであって、
前記非接触通信媒体は、前記情報端末からの表示要求の有無に応じて前記情報コードが表示される表示状態と非表示状態とを切り替え可能に構成されており、
前記情報端末は、前記検知手段により前記非接触通信媒体に対して非接触通信可能な状態になったことが検知されると、この非接触通信媒体に対して前記表示要求を送信することで当該非接触通信媒体を前記表示状態に切り替えることを特徴とする情報システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−185662(P2012−185662A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48034(P2011−48034)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】