説明

情報表示装置

【課題】指紋認証機能を有する情報表示装置において、不正ユーザーに対しては不正に対
する心理的抑止効果を与えると共に、正規ユーザーに対しては従来の利便性を確保する。
【解決手段】情報表示装置は、指紋認証機能を備え、ユーザーによる指紋認証中に所定回
数の認証エラーが連続した場合に、表示画面に指紋画像を静的に表示させ続けると共に、
指紋認証機能を継続的に認証可能な状態とし、その後に認証が許可された場合には指紋画
像の表示を停止する機能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、認証機能を備えた情報表示装置のセキュリティーを向上させる技術に関する

【背景技術】
【0002】
近年、情報セキュリティー意識の高まりにより、使用時にユーザーの生体認証を必要と
する情報表示装置が増えている。特に、紛失、盗難等のリスクが高まる携帯型情報表示装
置においては、その必要性が高まっている。生体認証の手段としては、その容易性、認証
精度、価格等のバランスの良さから、指紋認証が広く用いられている。
【0003】
しかし、指紋認証による認証方法は、100%の精度を達成することは技術的に困難で
あり、不正ユーザーを正規ユーザーとして受け入れてしまう可能性が残されている。その
ため、不正を試みようとするユーザーが、様々な指の指紋を用いて何度も指紋認証作業を
繰り返した場合には、誤って認証を通してしまうリスクが高まる。
【0004】
このようなリスクに対処するために、例えば特許文献1に記載の技術が知られている。
特許文献1に記載の技術によれば、複数種類の認証デバイスを備えた情報処理装置におい
て、規定回数回、連続して認証に失敗した場合には、そのデバイスによる認証を禁止し、
他の認証デバイスに認証を移行させる技術が開示されている。すべての認証デバイスで認
証に失敗した場合には、その後の認証処理は不可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−158763号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の方式によれば、不正ユーザーによる規定回数の認証失敗によって、その
後の認証処理の実行が停止されてしまうことになり、その後に正規ユーザーが認証を行お
うとした際に、実行ができないという不都合が生じる。また、指紋認証は、汚れ、濡れ、
乾燥、磨耗、経年変化等、認証時の指の状態の変化により、正規ユーザーであっても不正
ユーザーであると判定されてしまう確率が比較的高い技術である。そのため、上記の方式
によれば、正規ユーザーであっても規定回数の認証処理に失敗し、その後の認証を受け付
けてもらえなくなる可能性があった。さらに、認証処理の実行が制限された場合には、そ
の制限を解除するために何らかの特殊な手段、例えば特殊な機器に接続して修復を行う等
の作業が必要になり、ユーザーにとっては非常に使い難いものとなっていた。
また、仮に不正ユーザーが不正認証を繰り返し試みた場合であっても、認証失敗の際に
画面に表示されるメッセージは、その認証デバイスの使用を禁止し他の認証デバイスの使
用を推奨する内容のものであり、不正ユーザーに対して、不正行為に対する心理的抑止効
果を与えるまでには至らなかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題の少なくとも一つを解決するように、以下の適用例または形態とし
て実現され得る。
【0008】
[適用例1]本適用例に記載の情報表示装置は、表示画面と、指紋認証部と、指紋認証
中に所定回数の認証エラーが連続した場合に、前記表示画面に指紋画像を静的に表示させ
続けると共に、指紋認証機能を継続的に認証可能な状態とし、その後に認証が許可された
場合には前記指紋画像の表示を停止させる表示制御部と、を有することを特徴とする。

この構成によれば、不正ユーザーに対しては、画面に表示した指紋画像を見せることに
より、それ以上の不正に対しての心理的抑止効果を与えられると共に、正規ユーザーに対
しては、指紋認証機能を継続させることにより、使用不可能になってしまう不都合を回避
させることができる。
【0009】
[適用例2]また、上記適用例に記載の情報表示装置において、前記表示画面に前記指
紋画像を表示させる際、予め用意された指紋画像を用いることを特徴とする。
この構成によれば、表示する指紋画像を予め用意しているので、表示のために画像を生
成する処理が不要になり、処理コストを省くことができる。また、指紋画像は不正ユーザ
ー本人のものではないが、通常、ユーザーにとってはそのことは認識されないため、不正
抑止効果としては十分なものが得られる。さらに、指紋情報の開示に対して十分な社会的
コンセンサスが得られていない状況であっても、本人の指紋画像を用いないため結果的に
問題になることはない。
【0010】
[適用例3]また、上記適用例に記載の情報表示装置において、前記表示画面に前記指
紋画像を表示させる際、実際に認証エラーとなった指紋画像の内、いずれかの画像を用い
ることを特徴とする。
この構成によれば、表示する指紋画像が不正ユーザー本人のものであるため、不正抑止
効果としてより強い効果が期待できる。
【0011】
[適用例4]また、上記適用例に記載の情報表示装置において、前記表示画面に前記指
紋画像を表示させる際、前記表示画面全体の過半領域を占有する大きさの指紋画像を表示
することを特徴とする。
この構成によれば、指紋画像が画面に大きく表示されるため、不正ユーザーがそれ以上
の不正を続けることに対して、非常に大きな心理的抑止効果を与えることができる。
【0012】
[適用例5]また、上記適用例に記載の情報表示装置において、前記表示画面に記憶性
表示体を用いたことを特徴とする。
この構成によれば、電力を消費することなく本適用例における指紋画像の静的表示が可
能になるため、不正抑止効果を何時間でも継続させることができる。また、記憶性表示体
においては、一般的に高精細な表示が可能になるため、指紋画像の表示画面に、よりリア
リティーを持たせて不正抑止効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る電子ペーパー端末を示す外観平面図。
【図2】本発明の実施形態に係る電子ペーパー端末のハードウェア構成図。
【図3】本発明の実施形態に係る認証動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1.構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る情報表示装置を示す外観平面図である。本実施形態
では、表示画面として記憶性表示体を有する情報表示装置としての携帯型電子ペーパー端
末を例に説明する。
電子ペーパー端末1は、ユーザーに対して情報を表示するために、コレステリック液晶
素子、電気泳動素子、その他の記憶性表示素子からなる記憶性表示体30を有する。ここ
で「記憶性表示素子」とは、電力を与えなくても一定時間の間は表示を維持できる表示素
子をいう。操作ボタン11,12,13は、ページ選択や機能設定のためにユーザーによ
り操作され、その操作に応じた信号を出力する。指紋認証部としての指紋センサー20は
、ユーザーの指紋情報を読み取り、その情報に応じた信号を出力する。
【0015】
図2は、電子ペーパー端末1のハードウェア構成(表示制御部)を示す図である。CP
U(Central Processing Unit)110は、電子ペーパー端末1の構成要素を制御する制
御装置である。ROM(Read Only Memory)120は、電子ペーパー端末1の起動および
動作に必要なプログラムおよびデータを記憶する記憶装置である。本実施形態に関して、
ROM120は、ユーザーの認証を行う認証プログラムを記憶している。RAM(Random
Access Memory)130は、CPU110がプログラムを実行する際のワークエリアとし
て機能する記憶装置である。電源回路140は、システムへの電源供給を制御する装置で
ある。グラフィックスコントローラー150は、記憶性表示体30を制御する表示コント
ローラーである。このグラフィックスコントローラー150は、OSまたはアプリケーシ
ョンプログラムによってVRAM(Video RAM)160に書き込まれた表示データに対応
する映像信号を、記憶性表示体30に送出する。指紋センサー20は、ユーザーの指紋情
報を読み取り、その情報に応じた信号を出力する。操作ボタン11,12,13は、ペー
ジ選択や機能設定のためにユーザーにより操作され、その操作に応じた信号を出力する。
以上の構成要素は、バス170を介して相互に接続されている。
【0016】
(2.動作)
図3は、本発明の実施形態に係る認証動作を示すフローチャートである。ユーザーが電
子ペーパー端末1を使用する際には、認証プログラムにより指紋センサー20を用いた認
証処理を必要とする。この処理は、一定の時間間隔、もしくはセキュリティー上重要な作
業を行うタイミングでユーザーに求められる。ユーザーが指紋センサー20に指を当てる
と、指紋センサー20はそのユーザーの指紋を画像として読み取りRAM130に記憶す
る。続いて、CPU110は、読み取った指紋画像からその指紋の特徴点を抽出し、予め
ROM120上に登録されている正規ユーザーの指紋特徴点との比較を基に、現ユーザー
が正規ユーザーであるかどうかの認証処理を行う(ステップS100)。
【0017】
ステップS100の結果、現ユーザーが正規ユーザーと同一人物であるか否かの判定が
行われ(ステップS110)、同一人物であると認証された場合(ステップS110:N
o)には、現ユーザーに対して電子ペーパー端末1の使用権が与えられる。一方、ステッ
プS110で同一人物であるとは判定されず認証エラーとなった場合(ステップS110
:Yes)には、その失敗の連続回数が所定の回数に達したかどうかの比較が行われる(
ステップS120)。
【0018】
ステップS120の結果、連続失敗回数が所定の回数に達していない場合には、再びス
テップS100に戻って指紋認証が要求される。一方、ステップS120で連続失敗回数
が所定の回数に達した場合には、そのユーザーは不正ユーザーであるとみなされ、認証プ
ログラムは、これ以上不正使用されるのを防止するために、記憶性表示体30上に指紋画
像を大きく目立つ形で表示し警告を与える(ステップS130)。
【0019】
ステップS130で表示される指紋画像は、認証プログラムが予めROM120の中に
格納していた画像を用いる。この画像は、認証中のユーザーの指紋とは無関係であり、人
工的に合成して生成された指紋画像を用いる。一旦表示された指紋画像はそのまま静的に
表示され続け、不正ユーザーに対して心理的抑止効果を与える。
【0020】
記憶性表示体30に、警告を伝える指紋画像が表示され続ける一方、認証プログラムは
指紋センサー20による指紋認証機能を継続的に動作させる(ステップS140)。
【0021】
次に、再び現ユーザーが正規ユーザーと同一人物であるか否かの判定が行われる(ステ
ップS150)。
ステップS150で認証に失敗した場合には、再びステップS140に戻り指紋認証を
継続させる。一方、ステップS150で認証に成功した場合には、そのユーザーを正規ユ
ーザーとみなし指紋画像の表示を停止して通常画面に復帰させ、電子ペーパー端末1の使
用権を与える(ステップS160)。
【0022】
以上で説明したように、本実施形態によれば、不正ユーザーに対しては、画面に表示し
た指紋画像を見せることにより、それ以上の不正に対しての心理的抑止効果を与えられる
と共に、正規ユーザーに対しては、指紋認証機能を継続させることにより、使用不可能に
なってしまう不都合を回避させることができる。また、認証プログラムは予め用意した人
工合成の指紋画像を用いるため、プライバシー侵害が問題になることはない。さらに、表
示装置として記憶性表示体30を用いることにより、指紋画像を表示し続ける際にも電力
を消費せず、ユーザーにとって好適である。特に、電気泳動素子を用いた表示体の場合に
は、モノクロ2値高解像度の情報表示に適しており、本発明の実施形態において最適な形
となる。
【0023】
(3.他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。
【0024】
<3−1.変形例1>
表示する指紋画像は、上述の実施形態で示した例に限定されない。不正ユーザーのプラ
イバシー権に対して厳しい姿勢を取る社会環境においては、不正を犯したと判定されたユ
ーザーに対しては実際のユーザーの指紋画像を表示する手段を取ってもよい。その場合、
表示する指紋画像が不正ユーザー本人のものであるため、不正抑止効果としてより強い効
果が期待できる。
【0025】
<3−2.他の変形例>
上記実施形態では情報表示装置のディスプレイとして記憶性表示体30を用いていたが
、本発明はこれに限定されるものではなく、非記憶性表示体を用いて指紋画像の表示を行
ってもよい。その場合、指紋画像の表示中に電源断により一旦表示が消去されても、再起
動時には再び指紋画像の表示状態に復帰することが望ましい。
【符号の説明】
【0026】
1…情報表示装置としての電子ペーパー端末、11,12,13…操作ボタン、20…
指紋認証部としての指紋センサー、30…記憶性表示体、110…CPU、120…RO
M、130…RAM、140…電源回路、150…グラフィックスコントローラー、16
0…VRAM、170…バス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示画面と、
指紋認証部と、
指紋認証中に所定回数の認証エラーが連続した場合に、前記表示画面に指紋画像を静的
に表示させ続けると共に、指紋認証機能を継続的に認証可能な状態とし、その後に認証が
許可された場合には前記指紋画像の表示を停止させる表示制御部と、
を有することを特徴とする情報表示装置。
【請求項2】
前記表示画面に前記指紋画像を表示させる際、予め用意された指紋画像を用いることを
特徴とする請求項1に記載の情報表示装置。
【請求項3】
前記表示画面に前記指紋画像を表示させる際、実際に認証エラーとなった指紋画像の内
、いずれかの画像を用いることを特徴とする請求項1に記載の情報表示装置。
【請求項4】
前記表示画面に前記指紋画像を表示させる際、前記表示画面全体の過半領域を占有する
大きさの指紋画像を表示することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の情
報表示装置。
【請求項5】
前記表示画面に記憶性表示体を用いたことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項
に記載の情報表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−287023(P2010−287023A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−140013(P2009−140013)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】