説明

情報記録カードの作成方法およびそれにより作成された情報記録カード

【課題】 生産性及び耐候性に優れた電子写真方式で、保護層を設けず、鮮明且つ擦過性に優れた画像を有する情報記録カード及びその作成方法の提供。
【解決手段】 本発明は、画像形成用シート上に、電子写真方式によりトナー鏡像画像を形成した画像記録シートを作成した後、前記画像記録シートのトナー鏡像画像形成面と、カード基体を重ね合わせ、続いて熱圧着処理を施すことによって前記画像記録シートと前記カード基体を貼り合わせて積層シートを作成し、その際に前記画像記録シート上のトナー鏡像画像を前記カード基体側に転写させ、その後前記画像形成用シートを剥離除去することを特徴とする、情報記録カード作成方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は優れた画質で、しかも画像が耐候性並びに堅牢性等の保存性に優れた情報記録カードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、会員証、社員証、免許証などの個人の身分を証明するIDカード用途の情報記録カードにおいては、個人を認識する為に、顔写真などの画像情報を情報記録カード表面に設けることが行われている。情報記録カード表面に、このような画像情報を設ける方法としては、銀塩写真法で得られた顔写真をカード基材の所定の部分に接着剤等を用いて貼付する方法などがあるが、この方法ではカード表面に段差を生じて、取り扱い中に凸部が引っかかり易くダメージを受け易いという欠点がある。
【0003】
近年、このような欠点を解決するために、顔写真などのカラー画像情報を昇華熱転写方式、溶融熱転写方式、インクジェット方式、電子写真方式によりカードの全面に設ける方法が行われるようになったが、かかるタイプのカードも様々な欠点を抱える。例えば、運転免許証、身分証明書等のIDカードの用途では、長期間に亘って使用され、しかも使用及び保存される環境が光に晒されたり、人間の手に触れたりする環境であり、また可塑剤を含むシートに接触した状態で保存されることも多いため、高い耐光性、耐脂性、耐可塑剤性等の保存性が必要とされる。しかしながら、昇華熱転写方式、溶融熱転写方式、インクジェット方式で記録した画像は、そのような保存性が不十分である。また、昇華転写方式、溶融熱転写方式、インクジェット方式の何れも印字速度が遅く、生産性の面で劣っている。
【0004】
また、染料インクを用いた昇華転写方式では、文字の鮮鋭性が低いため、カラーの顔写真を印画した後に、鮮明な文字を溶融熱転写方式で設けるケースがあるが、この場合には工程増による高コストが問題となる。また、昇華熱転写方式では経時での印字濃度の低下が観られる事から保護層を設ける方法がとられ、更なるコストアップが問題であり、しかもこの方法を採ったとしても耐光性は不十分である。溶融熱転写方式でも、擦過性が著しく低いために保護層を設ける必要があり、高コストとなる。インクジェット方式も、耐光性や耐水性が劣るという問題を抱え、また顔料インクを用いる場合、擦過性が著しく低いために、保護層を設ける方法がとられるが、高コストにつながる。また、経時での印字濃度低下の問題は解決されていない。
【0005】
電子写真方式の場合、昇華熱転写、溶融熱転写方式、インクジェット方式より画像の耐候性並びに保存性に優れたものが得られ、しかも印刷速度が速いので生産性の面でも優れるが、品質的にはまだ不十分な点がある。例えば、特許文献1のように、接着剤層を有する透明シートを電子写真用受容シートとして用い、該接着剤層上に反転のトナー像を形成した後に、その画像が形成された面をカード基体に貼り合せることで作製された認識識別媒体の場合、画像は二枚のシートで挟まれているため擦過性に優れるが、トナーがブリードして不鮮明となり易いという問題がある。電子写真用受容シートにトナー像を形成した後に、画像が形成された面と反対の面にカード基体を貼り合せる方法の場合は、トナー画像上に保護層が無いために、通常はトナー画像部が受容シートの表面で凸状態となり、品位の面で劣り、擦過性が劣ることになり易い。この問題は、保護層を設けることによって解決できるが、高コストにつながる。
【0006】
【特許文献1】特開平10−86562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、生産性及び耐候性に優れた電子写真方式で、保護層を設けず、鮮明且つ擦過性に優れた画像を有する情報記録カード及びその作成方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、トナー剥離性を有する画像形成用シートに、電子写真方式によりトナー鏡像画像を形成して画像記録シートを作成した後、画像記録シートの鏡像画像形成面とカード基体が接するように、画像記録シートとカード基体を重ね、その後、画像記録シートとカード基体を熱圧着処理することによって貼り合せ、その際に画像記録シート上のトナー鏡像画像層をカード基体側に転写させ、続いて、画像形成用シートを剥離除去することによって得られることを特徴とする情報記録カード及びその作成方法である。
本発明においては、カード基体が、内部にICユニットを備えたものであることが好ましい。
また本発明においては、カード基体或いはカード基体のトナー鏡像画像を設ける面の表層が、軟化点50〜150℃の熱可塑性樹脂を主成分とすることが好ましい。
また、熱圧着による貼り合せ処理後に、或いは画像記録シートを剥離した後に、所定の寸法に切断する工程を経て得られることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の情報記録カードは、画質が良好で、銀塩写真類似の画像が得られ、画像の耐候性が向上し、保存性が著しく良好となる。
また、カード基材も樹脂成分として塩素原子を含有する構成単位を含んでいないので、焼却廃棄しても有毒ガスが発生せず、環境に対して悪影響がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。図1〜図5は、本発明の実施形態の一例を示すものである。図1は、トナー剥離性を有する画像形成用シート10に電子写真方式によりトナー鏡像画像11を形成して得られた画像記録シート12を示す断面図であり、図2は、画像記録シート12の画像形成面がカード基体14と接するように、画像記録シート12とカード基体14を重ねて熱圧着処理して、貼り合わせ状態にしていることを示す断面図である。図3は、貼り合わせが完了した状態を示す断面図で、この段階でトナー鏡像画像11はカード基体14側に転写され、このトナー鏡像画像11とは鏡像関係にあるトナー画像13がカード基体14上に形成される。図4は、かくして得られた貼り合わせた積層シート15から画像形成用シート10を剥がしている状態を示す断面図である。図5は、その剥離が完了したもので、本発明の情報記録カード16(以下、「ICカード」と称することがある。)を示す断面図である。また、図6は、本発明の別の実施形態を示す断面図で、表裏両面にトナー画像13が転写されたICカード16を示している。これは、2枚の上記画像記録シートをカード基体の表裏面に重ねて熱圧着処理して貼り合わせ、その後2枚の画像形成用シートを剥がして得られる。
【0011】
本発明では、画像記録シート12とカード基体14を熱圧着処理で貼り合せる際の熱及び圧力によって、画像記録シート12上のトナー鏡像画像11層が転移して、カード基体14にトナー画像13となって埋め込まれるために、保護層を設けていないにも係わらず、鮮明且つ擦過性に優れた画像を有するカードとなる。カード基体14或いはカード基体のトナー画像を設ける面の表面は、軟化点50〜150℃の熱可塑性樹脂を主成分とすることが、この埋め込み性に優れる点で、好ましい。
【0012】
本発明に用いられる画像形成用シート10としては、トナーの剥離を容易にするためにトナーとの密着性の劣るものが望ましく、トナー定着処理条件下で、画像形成される表面が溶融しない熱可塑性樹脂シート、例えばPETフィルム等を挙げることが出来る。中でも、より好ましいものとしてはトナーの剥離を容易にするために、有機シリコーン等の離型剤を表面に塗布したPETフィルムを挙げることが出来る。シートの厚さは、特に限定されるものではないが、50〜300μmであることが好ましく、さらに好ましくは100〜200μmである。
【0013】
画像形成用シート10には、電子写真記録時の走行性改善、良好な画像形成のための表面電気抵抗調整などの表面処理を、必要に応じて施すことが出来る。画像形成用シートは、画質の面で表面電気抵抗が5×10〜5×1013Ω/□になるように設定することが好ましい。
【0014】
上記画像形成用シート10の鏡像画像形成には、公知の電子写真方式の画像形成装置を用いて行うことができる。一般に画像形成装置は、電子写真用受容シートの搬送部と、静電潜像形成部と、該静電潜像形成部に近接して配設されている現像部と、定着部を有しており、機種によっては、装置本体の中央に静電潜像形成部と電子写真用受容シートの搬送部とに近接して中間転写部を有している。
【0015】
本発明に用いられる電子写真用カラートナーとしては、汎用のトナーを挙げることが出来、粉砕法、懸濁造粒法等の何れの製法で得られたものであってもよい。
【0016】
本発明に用いられるカード基体14の厚さは特に限定されるものではないが、400〜1000μmの範囲のものが好ましく、更に好ましくは500〜900μmである。カード基体の厚さが400μm未満であると、ICカードの腰が乏しくなり、取り扱いにくくなる。一方、厚さが1000μmを超えると、コスト的に高いものとなる。
【0017】
図7は、本発明に用いられるカード基体14を更に詳細に示す断面図で、一例を示したものである。このカード基体14は、表面基材1と、裏面基材2と、表面基材1の一方の面1a上に形成され、表面基材1および裏面基材2を貼り合わせている接着剤層3と、裏面基材2の一方の面2a側に保持されたICチップなどからなるICユニット4から構成されている。
図8は、図7で示されるカード基体14の片面上に、図1〜図5で示した方法と同様の方法で画像形成して得られたICカード16の断面図である。
本発明に用いられるカード基体14は、上記の構造に限定されるものではなく、公知のものが使用できる。
【0018】
上記カード基体14を構成する、表面基材1としては、塩ビ系樹脂のような環境上の問題を有する樹脂ではなく、カードとしての加工性に優れているポリエチレンテレフタレート樹脂を主成分とするポリエステル樹脂シートが好ましい。中でも、テレフタル酸、エチレングリコール、シクロヘキサンジメタノールの繰り返し単位からなる共重合ポリエステル樹脂が好ましい。
本発明のポリエステル樹脂としては、軟化点50〜150℃の樹脂が好ましく、より好ましくは55〜130℃の樹脂である。
【0019】
表面基材1を形成するポリエステル樹脂には、耐熱性付与等を目的としてポリエステル樹脂と相溶性の高い他の熱可塑性樹脂を添加することができる。例えば、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のポリアセタール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、メチルメタクリレート−スチレン共重合体樹脂、エチルセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂などが挙げられる。又、該ポリエステル樹脂には、隠蔽性の改良等のために酸化チタンなどの無機顔料を含有させても良い。また、ポリエステル樹脂には、安定剤および滑剤としてステアリン酸金属塩などの金属石鹸、界面活性剤、酸化防止剤、帯電防止剤、増白剤、紫外線吸収剤、有色顔料などを含有させてもよい。
【0020】
裏面基材2としては、絶縁性を有する樹脂シートが用いられる。絶縁性を有する樹脂シートとしては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリブチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、紙、合成紙などが挙げられ、これらの1種または2種以上が適宜用いられる。
【0021】
また、裏面基材2は、表面基材1と同じ材料からなるものであってもよい。表面基材と裏面基材を同種類の樹脂シートからなるものとすることにより、これらの貼り合わせ工程における熱収縮の差が無くなるから、カール発生が無く、良好な外観を有するICカードを得ることができる。また、ICカードの厚みの調整、画像印画後の熱変形を防止する観点からは、裏面基材2を表面基材1と異なる材料からなる樹脂シートとしてもよい。
【0022】
表面基材1及び裏面基材2がポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂を主成分とする場合には、公知の方法の中から適宜選択して成形することができる。例えば、スクリュー型押出機に接続された単層または多層のTダイヤやIダイを使用して、ポリエステル樹脂を主成分とする溶融樹脂をシート状に押し出すキャスト成形、カレンダー成形、圧延成形、インフレーション成形などを用いて成形することができる。
【0023】
表面基材1および裏面基材2の厚さは、好ましくは20〜300μmであり、さらに好ましくは30〜200μmである。表面基材1には、接着性や濡れ性を向上させるために、コロナ放電処理、アンカーコート処理、帯電防止処理などの公知の処理を施してもよい。
【0024】
カード基体のトナー画像を形成する面のトナー定着性が劣る場合には、その面にトナー受容層を設けることが望ましい。トナー受容層は、カード基体の表裏面に直接設けることも出来るが、通常は貼り合わせ前の表面基材、裏面基材に設けた後に、貼り合せる方法が取られる。
【0025】
受容層用塗液に用いられる樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、セルロース誘導体樹脂などが挙げられる。樹脂としては、軟化点50〜150℃の樹脂が好ましく、より好ましくは55〜130℃の樹脂である。この受容層用塗液には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの可塑剤、無機顔料、有機顔料、消泡剤、濡れ剤、界面活性剤、導電剤、架橋剤、増粘剤、滑剤、離型剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光染料などを必要に応じて含有させてもよい。架橋剤、滑剤、離型剤の添加は、受容シートが定着ロールに融着することを防ぐ効果がある。
【0026】
上記受容層は塗工方式或いは印刷方式で設けることが出来る。塗工方式では、例えばエアーナイフコーター、ロッドブレードコーター、グラビアコーター、バーコーター、ブレードコーター、ロールコーター、サイズプレスコーター、カーテンコーター、リップコーター、ダイコーターあるいはスロットダイコーターなどの各種塗工装置が適宜使用される。また、印刷方式では、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷などに用いられる各種印刷装置が適宜使用される。特に、受容層を部分的に形成する場合には印刷方式が好ましい。塗工量は、固形分量で25g/m2 以下が好ましく、より好ましくは15g/m2 以下である。25g/m2 を超えると不経済である。
【0027】
表面基材1と裏面基材2の間に設けられる接着剤層3の材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル−アクリル共重合体樹脂、EVA系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、アクリル酸エステル系共重合体樹脂、メタクリル酸エステル系共重合体樹脂、シアノアクリレート系樹脂、シリコーン系樹脂などの接着剤、天然ゴムにロジンおよびロジンエステルなどの粘着付与樹脂を加えたゴム系接着剤、ウレタン系接着剤などのエマルジョン型、溶剤型、ホットメルト型接着剤などを使用することができる。また、接着剤層3には、必要に応じて粘着付与剤、架橋剤、顔料、紫外線吸収剤、可塑剤、充填剤、老化防止剤などの添加剤を添加してもよい。
【0028】
特に、強い接着強度を必要とする場合には、上記接着剤または粘着剤の中でも、化学反応で硬化あるいは重合するタイプの化学反応型接着剤が好ましく用いられる。化学反応型接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂、レゾール型フェノール樹脂などの熱硬化型、2−シアノアクリル酸エステル系樹脂、シリコーン樹脂、アルキルチタネート樹脂などの湿気硬化型、アクリル系オリゴマー樹脂などの嫌気硬化型、エポキシ樹脂、ポリウレタン系樹脂などの付加反応型、紫外線硬化型、ラジカル重合型接着剤などが挙げられる。
【0029】
接着剤層3を、表面基材1の一方の面1a上、または裏面基材2の一方の面2a上に形成する方法としては、塗工方式或いは印刷方式を挙げることが出来るが、これらの表面上にシート状ホットメルト接着剤を積層する方法が好ましく利用される。また、接着剤層3の厚さは、ICユニットの厚さに応じて適宜設定される。
【0030】
ICユニット4としては、特に制限はなく、厚さが50〜500μmのものが使用されるが、通常、略平板状のアンテナコイル(図示略)と、このアンテナコイルの一方の面上に突出して配置されたICチップ(図示略)とが基板(図示略)上に形成されたものである。そして、アンテナコイルの両端は異方導電性テープ(図示略)で接続されていて、アンテナコイルとICチップとが導電性を保つようになっている。また、アンテナコイルは、基板上に形成された板状アンテナであってもよい。
【0031】
例えば、ICユニット4を構成する基板としては、厚さ20〜400μmの絶縁性基材フィルムが用いられる。絶縁性基材としては、PET樹脂、PET樹脂以外の軟化点が50〜140℃のポリエステル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂、ポリブチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、紙、合成紙などが挙げられ、これらの1種または2種以上が単独または併用されて用いられる。そして、この基板上に、アンテナコイルを形成する方法としては、銀や銅などのワイヤーからなるコイルを貼り付ける方法、銅やアルミニウムなどをコイル状にエッチングする方法、導電性インキなどを用いてコイル状に印刷を施す方法などがある。また、板状アンテナを形成する方法としては、導電性インキなどを用いて印刷を施す方法、銅やアルミニウムなどの金属を蒸着する方法などがある。また、ICチップとしては、通常、縦横の長さが0.5〜10mmで、厚さが50〜300μm程度のものが使用されている。
【0032】
以下に、図8のICカード16の製造方法の概略を示す。まず、表面基材1の一方の面1a上または裏面基材2の一方の面2a上にICユニット4を装着する。次に、ICユニット4が装着されていない、表面基材1または裏面基材2を重ね合わせ、これを金属板で挟んで熱プレス機中に供し、所定のプレス条件(プレス温度、プレス圧力、プレス時間)で圧着して貼り合わせて図7に示すカード基体14を得る。次に、トナー剥離性を有する画像形成用シート10にトナー鏡像画像11を形成し、続いて、該シートを、トナー鏡像画像形成面が内側となるように、カード基体14の表面基材1の表面上に重ね合わせ、次に、これを2枚の金属板で挟んで熱プレス機中に供し、所定のプレス条件(プレス温度、プレス圧力、プレス時間)で圧着して貼り合わせて積層シート15を作成する。その際の熱圧で、画像形成用シート上のトナー鏡像画像11がカード基体14にトナー画像13となって転移する。冷却後、得られた積層シートを取り出し、続いて画像形成用シート10を剥離除去し、更に打ち抜き機でカード型に成形して、図8のICカード16を得る。
【0033】
本発明の画像形成用シートの貼り合わせ処理は、上記のようにカード基体に対して行う以外に、表面基材1及び/又は裏面基材に対して直接行うことも出来、その場合には、予め表面にトナー画像層を設けた表面基材1及び/又は裏面基材を用いて、本発明のICカードが造られる。
【0034】
本発明の画像形成用シートとカード基体の熱圧着貼合工程での熱プレス条件は、特に限定されるものではないが、通常60〜250℃の範囲の熱プレス温度で処理される。
【0035】
本発明において、カード型に打ち抜く工程は、画像形成用シートとカード基体の貼り合わせ後に行うことが最も好ましい。
【実施例】
【0036】
以下、具体的な実施例を示して本発明の効果を明らかにする。
【0037】
(実施例1)
(画像形成用シートの作製)
支持体として100μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの両面に、シリコーン樹脂(商品名KR216、信越化学工業社製)をグラビアコーターを用いて片面が1g/m2 (絶質重量)となるように塗工、乾燥して画像形成用シートを得た。
【0038】
(画像形成用シートへの鏡像形成)
文字、ベタ部および顔写真からなる画像情報を電気的に変換した電気信号を、市販の乾式電子写真方式プリンター(リコー社製 Imagio NeO C320)を用いて、画像形成用シートへ印画し、鏡像を形成した。
【0039】
(ICユニットの作製)
絶縁性基材フィルム(商品名:テトロンS、厚さ175μm、材質:ポリエチレンテレフタレート、帝人社製)を用意した。まず、この絶縁性基材フィルムの裏面側に下記組成の(塗料−3)を、乾燥質量が1g/m2 となるように、塗工、乾燥して帯電防止層を形成した。次に、この絶縁性基材フィルムの表面側に3ターンの巻き線アンテナおよび回路を銀ペーストを用いて、スクリーン印刷法により作製した。巻き線アンテナおよび回路の所定の位置に異方性樹脂を介してICチップ(型番:SLE44R31、厚さ185μm、シーメンス社製)をフェースボンディングにて搭載し、ICユニットを得た。
(塗料−3)
アクリル樹脂(商品名:リカボンドSAR−615A、中央理化社製) 100質量部
エポキシ硬化剤(商品名:リカボンドSAR−615B、中央理化社製) 5質量部
導電剤(商品名:ST2000H、三菱油化社製) 75質量部
シリカ顔料(商品名:P78A、水沢化学社製) 30質量部
【0040】
(カード基体の作製)
表面基材として酸化チタンが添加されたテレフタル酸−エチレングリコール−シクロヘキサンジメタノール共重合体樹脂からなる高隠蔽白色PETGフィルム(商品名:デイアフィクスPG−WHI、厚さ100μm、一般タイプ、軟化点69℃、三菱樹脂社製)を用意した。また、裏面基材として酸化チタンが添加されたテレフタル酸−エチレングリコール−シクロヘキサンジメタノール共重合体樹脂からなる高隠蔽白色PETGフィルム(商品名:デイアフィクスPG−WHI、厚さ200μm、一般タイプ、軟化点69℃、三菱樹脂社製)を用意した。次に、この裏面基材、シート状ポリエステル系接着剤、ICユニット、シート状ポリエステル系接着剤、表面基材を、この順に重ね合せた。次に、この積層物をマット仕上げしたステンレス鋼板で挟んで、プレス温度120℃、圧力5kgf/cm2 で10分間保持して、貼り合わせた。次に、貼り合わされた積層物を室温まで冷却して、ステンレス鋼板から剥がし、カード基体を得た。得られたカード基体の厚さは760μmであった。
(ICカードの作製)
鏡像画像形成された画像形成用シートを、鏡像画像形成面が内側になるように、カード基体に重ね合わせ、この積層物をマット仕上げしたステンレス鋼板で挟んで、プレス温度120℃、圧力5kgf/cm2 で10分間保持して、貼り合わせた。次に、貼り合わされた積層シートを室温まで冷却して、ステンレス鋼板から剥がし、得られた積層シートを打ち抜き機でカード型(縦55mm×横85mm)に成形し、その後に画像形成用シートを剥離除去してICカードを得た。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】トナー鏡像画像の形成された画像形成用シート。
【図2】画像形成用シートとカード基体とを重ねて熱圧着処理する工程。
【図3】図2の熱圧着処理により貼り合わせた積層シート。
【図4】積層シートから画像形成用シートを剥離する工程。
【図5】片面にトナー画像の形成された本発明の情報記録カード。
【図6】両面にトナー画像の形成された本発明の情報記録カード。
【図7】本発明の情報記録カードに用いられるカード基体の断面図。
【図8】図7に示すカード基体に画像形成して得られた本発明の情報記録カードの断面図。
【符号の説明】
【0042】
1 表面基材
1a 表面基材の一方の面
2 裏面基材
2a 裏面基材の一方の面
3 接着剤層
10 画像形成用シート
11 トナー鏡像画像
12 画像記録シート
13 トナー画像
14 カード基体
15 積層シート
16 情報記録カード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成用シート上に、電子写真方式によりトナー鏡像画像を形成した画像記録シートを作成した後、前記画像記録シートのトナー鏡像画像形成面と、カード基体を重ね合わせ、続いて熱圧着処理を施すことによって前記画像記録シートと前記カード基体を貼り合わせて積層シートを作成し、その際に前記画像記録シート上のトナー鏡像画像を前記カード基体側に転写させ、その後前記画像形成用シートを剥離除去することを特徴とする、情報記録カードの作成方法。
【請求項2】
前記トナー鏡像画像を形成した前記画像記録シートを、前記カード基体の一面に貼り合わせる、請求項1記載の情報記録カードの作成方法。
【請求項3】
前記トナー鏡像画像を形成した前記画像記録シートを、前記カード基体の両面に貼り合わせる、請求項1記載の情報記録カードの作成方法。
【請求項4】
前記画像形成用シートの少なくとも一面が、トナー剥離性を有するものである、請求項1〜3のいずれか1項記載の情報記録カードの作成方法。
【請求項5】
前記カード基体が、内部にICユニットを備える、請求項1〜4のいずれか1項記載の情報記録カードの作成方法。
【請求項6】
前記カード基体が、その少なくとも一面上に、軟化点が50〜150℃の熱可塑性樹脂を主成分とするトナー受容層を有するものである、請求項1〜5のいずれか1項記載の情報記録カードの作成方法。
【請求項7】
前記熱圧着処理により貼り合わせた前記積層シートを作成後、前記積層シートを所定の寸法に切断する工程を経て得られる、請求項1〜6のいずれか1項記載の情報記録カードの作成方法。
【請求項8】
前記熱圧着処理により貼り合せた前記積層シートから画像形成用シートを剥離除去した後、該シートを所定の寸法に切断する工程を経て得られる、請求項1〜6のいずれか1項記載の情報記録カードの作成方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載された情報記録カードの作成方法により、作成されたことを特徴とする情報記録カード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−35829(P2006−35829A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−223510(P2004−223510)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】