説明

情報記録ディスクの廃棄処理方法および装置

【課題】記録された情報の読み取りを不能としうるだけでなく、情報記録ディスクにおける基板と情報記録層等との少なくとも一部を、簡単に剥離させるか、または剥離容易な状態としうるようにした、情報記録ディスクの廃棄処理方法および装置を提供する。
【解決手段】基板の表面または中間層に、情報記録機能を有する情報記録層を形成した情報記録ディスク2を、一端部の間隔D2を、情報記録ディスク2の厚さT0より小とし、かつ他端部の間隔D3を、一端部の間隔D2より大とした1対の非平行ローラー23、23間を通過させることにより、情報記録ディスク2の一部を波形に塑性変形させ、基板と情報記録層との少なくとも一部を剥離させるか、または剥離容易とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクその他の、基板の表面または中間層に情報記録層を形成した情報記録ディスクの廃棄処理方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の方法または装置としては、情報記録ディスクの表面に、物理的に傷を付けたり、情報記録ディスクを折曲したり、一部を破断したりすることにより、記録された情報の読み取りを不能とするようにしたものが一般的である(例えば特許文献1または2参照)。
【0003】
また、光ディスクの外周部及び内周部を予め切除しておき、ロールミルの1対のローラの間に、光ディスクを1〜数回通して、記録された情報の破壊を行うとともに、金属反射層におけるディスク分離を行い、分離した光ディスクを、硝酸水溶液に2〜5分程度浸漬することにより前記金属反射層が除去された2枚の樹脂基板を得、これら樹脂基板に残った不要な層(接着層、オーバーコート層、印刷層など)を機械的に分離することにより、樹脂基板を純度よく回収することができるとともに、金属反射層が溶解した硝酸水溶液からは、電気分解等の手法により金属を回収しうるようにしたものもある(例えば特許文献3参照)。
【特許文献1】実用新案登録第3034847号公報
【特許文献2】特開2004−39059号公報
【特許文献3】特開2007−296791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前者は、記録された情報の読み取りを不能とするだけで、後者のように、基板や、情報記録層等に含まれる高価な成分を、再利用できるように回収しうるものではない。
また、後者は、基板や、情報記録層等に含まれる高価な成分を回収しうるものの、その処理作業が煩雑で、多くの時間と手間を要するという問題がある。
【0005】
本発明は、従来の技術が有する上記のような問題点に鑑み、記録された情報の読み取りを不能としうるだけでなく、情報記録ディスクにおける基板と情報記録層等との少なくとも一部を、簡単に剥離させるか、または剥離容易な状態としうるようにした、情報記録ディスクの廃棄処理方法および装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、発明者らの鋭意研究により、情報記録ディスクを、非平行とした1対のローラー間を通過させることにより、ローラー間の狭い部分を通過した情報記録ディスクの一部が波形に塑性変形し、その部分の情報記録層が、基板から剥離するか、または剥離容易な状態となっていることを発見したことに着目してなされたもので、その具体的な解決手段は、次の通りである。
【0007】
(1) 情報記録ディスクの廃棄処理方法において、基板の表面または中間層に、情報記録機能を有する情報記録層を形成した情報記録ディスクを、一端部の間隔を、前記情報記録ディスクの厚さより小とし、かつ他端部の間隔を、前記一端部の間隔より大とした1対の非平行ローラー間を通過させることにより、前記情報記録ディスクの一部を波形に塑性変形させ、前記基板と情報記録層との少なくとも一部を剥離させるか、または剥離容易とする。
【0008】
このような方法によると、情報記録ディスクを、1対の非平行ローラー間を通過させるだけで、その一部を波形に塑性変形させて、簡単に、情報記録層を基板から剥離させるか、または剥離容易とすることができ、記録された情報を読み取り不能としうるだけでなく、高価な材料を、容易に分別回収することができる。
【0009】
(2) 上記(1)項において、情報記録ディスクを、1対の非平行ローラー間を通過させるのに先だって、少なくとも一方のローラーの表面に、多数の突起を設けた1対の圧刻ローラー間を通過させることにより、情報記録ディスクの少なくとも一面に多数の凹部を形成し、情報記録ディスクに記録された情報を読み取り不能とする。
【0010】
このようにすると、情報記録ディスクの情報記録層に多数の孔が穿設され、記録された情報を読み取り不能としうるだけでなく、非平行ローラー間を通過させたときの情報記録層の剥離が助長されるとともに、剥離した情報記録層を化学的処理する際に、溶剤が浸透し易くなり、処理時間を短縮することができる。
【0011】
(3) 情報記録ディスクの廃棄処理装置において、1対の非平行ローラーを、その一端部の間隔が、両ローラー間を通過させようとする情報記録ディスクの厚さより小、かつ他端部の間隔が、前記一端部の間隔より大となるようにして、支持フレームに枢支し、かつ前記支持フレームに、前記両ローラーの少なくともいずれか一方を回転させる駆動手段を設ける。
【0012】
このような構成とすると、上記(1)項における情報記録ディスクの廃棄処理方法と同様の効果を奏することができるだけでなく、装置全体の構造を簡素化および小型化することができる。
【0013】
(4) 上記(3)項において、1対の非平行ローラーへの情報記録ディスクの送り込み側に、少なくとも一方のローラーの表面に、多数の突起を設けた1対の圧刻ローラーを、前記情報記録ディスクの厚さとほぼ等しい間隔をもって、互いに平行をなすようにして、支持フレームに枢支し、かつ前記圧刻ローラーの少なくとも一方のローラを、駆動手段により回転させるようにする。
【0014】
このような構成とすると、上記(2)項における情報記録ディスクの廃棄処理方法と同様の効果を奏することができるだけでなく、装置全体の構造を簡素化および小型化することができる。
【0015】
(5) 上記(4)項において、非平行ローラーと圧刻ローラーとの軸間距離を、情報記録ディスクの直径より小とする。
【0016】
このような構成とすると、情報記録ディスクは、進行方向の後端部が圧刻ローラーにより挟まれている状態で、前端部が非平行ローラー間に送り込まれるので、情報記録ディスクを、位置ずれ等を生じることなく、安定した状態で、確実に非平行ローラー間に送り込むことができる。
【0017】
(6) 上記(3)〜(5)項のいずれかにおいて、情報記録ディスクを、非平行ローラーまたは圧刻ローラーへ向かって案内する案内板と、情報記録ディスクを、非平行ローラーまたは圧刻ローラーへ向かって移動させる移動手段とを有するディスク送り装置を、支持フレームに設ける。
【0018】
このような構成とすると、情報記録ディスクを、適時に、安定して、確実に、非平行ローラーまたは圧刻ローラーへ送り込むことができるとともに、送り込み作業を容易に自動化することができる。
【0019】
(7) 上記(6)項において、案内板および移動手段を、非平行ローラーまたは圧刻ローラーへ向かって、下向き傾斜させる。
【0020】
このような構成とすると、案内板が下向き傾斜しているので、情報記録ディスクの重力による案内板と平行な方向の分力により、情報記録ディスクの送りが助長され、移動手段により、情報記録ディスクを、軽力で非平行ローラーまたは圧刻ローラーへ送り込むことができる。
【0021】
(8) 上記(6)または(7)項において、ディスク送り装置の始端部に、複数の情報記録ディスクを積み重ねて収容しうるとともに、下端部における移動手段による情報記録ディスクの送り方向側の面に、1枚の情報記録ディスクのみの通過を許容する開口が設けられたディスク収容手段を設ける。
【0022】
このような構成とすると、複数の情報記録ディスクを、ディスク収容手段に積み重ねておき、その下端のものから順に、移動手段により、1枚ずつ非平行ローラーまたは圧刻ローラーへ送り込むことができ、作業を容易に自動化することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、記録された情報の読み取りを不能としうるだけでなく、情報記録ディスクにおける基板と情報記録層等との少なくとも一部を、簡単に剥離させるか、または剥離容易な状態としうるようにした、情報記録ディスクの廃棄処理方法および装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の情報記録ディスクの廃棄処理装置の一実施形態を、添付図面を参照して説明する。
図1および図2に示すように、この情報記録ディスクの廃棄処理装置は、上面における前後方向の中央部に、前方に向かって下向き傾斜する傾斜面1aが形成された中空箱状の外装ケース1を備えている。
【0025】
外装ケース1における傾斜面1aの中央には、図9および図10に示すような複数の情報記録ディスク2を、積み重ねて収容しうるようにしたディスク収容手段をなす筒体3が、傾斜面1aと直交するようにして、外装ケース1内に埋設されている。
【0026】
この装置により処理しうる情報記録ディスク2には、例えば、特許文献3に記載されているような、CD、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−R、DVD−RW等の光ディスの他に、基板2aの表面または中間層に情報記録機能を有する情報記録層2bを形成したあらゆるタイプの情報記録ディスクが含まれる。
【0027】
CDやCD−ROM等は、ポリカーボネート樹脂製の1枚の基板2aの片面に、情報記録層2bとアルミニウム製の金属反射層(図示略)とを形成したものが一般的であり、CD−R、CD−RW、DVD−R、DVD−RW等は、ポリカーボネート樹脂製の2枚の基板間に、銀等からなる金属反射層と、有機色素やアモルファス金属等よりなる情報記録層と、接着剤層等とを重合したものが一般的である。
【0028】
外装ケース1における傾斜面1aより前方の水平面1bのほぼ中央には、操作盤4が設けられ、ここには、電源スイッチ(スタートスイッチ)5、および作動中であることや、異常が発生したこと等を表示する各種表示ランプ6等が設けられている。
外装ケース1の前面下端部には、処理された情報記録ディスク2の排出口7が設けられている。
【0029】
図2に破線で示すように、外装ケース1内には、水平の底板8と、その上面より、外装ケース1の横幅より狭い間隔をもって立設された左右1対の側板9、9とを備える支持フレーム10が配設されている。
【0030】
図3に示すように、支持フレーム10における両側板9、9間には、筒体3の下方において、傾斜面1aと平行をなすように前下方に向かって傾斜し、筒体3内における最下段の情報記録ディスク2を、前下方に向かって案内する案内板11が架設されている。
【0031】
筒体3の下端部前面には、1枚の情報記録ディスク2のみの前方への通過を許容する開口3aが、また筒体3の下端部後面には、上下寸法が開口3aの上下寸法とほぼ同一であって、後述する移動手段13におけるプッシャー17が前後方向に通過可能とした開口3bが設けられている。
【0032】
筒体3内の最下段の情報記録ディスク2を、前下方に向かって送るディスク送り装置12は、上記案内板11と、情報記録ディスク2を前下方に向かって移動させる移動手段13とを備えている。
【0033】
図3および図5に示すように、移動手段13は、案内板11の下面に、前後方向に摺動可能として装着した摺動体14と、この摺動体14の後端部より起立し、案内板11の後部のほぼ中央に設けた前後方向を向くスリット15を通って、案内板11の上面側に達する上向き突片16の上端に下面中央部が固着されたプッシャー17と、摺動体14の下面に設けた前後方向を向くラック18と、正逆回転可能とした出力軸19aが左右方向を向くようにして、支持フレーム10に固定された減速機構内蔵式のモータ19と、このモータ19の出力軸19aに固嵌され、ラック18と噛合するピニオン20とを備えている。
【0034】
プッシャー17は、情報記録ディスク2の外形と補形をなす平面視円弧状をなすとともに、前縁上面および後縁上面が、前方および後方に向かってなだらかに下向き傾斜し、かつ中央部分の最大板厚T1が、情報記録ディスク2の板厚T0とほぼ等しくなるようにしてある。
【0035】
プッシャー17における、図3に実線で示す後限から同じく2点鎖線で示す前限までの移動ストロークは、筒体3内の最下段の情報記録ディスク2の前端の位置から、次に説明する1対の圧刻ローラー21、21間の位置までの距離より大としてある。
【0036】
図3および図6に示すように、外装ケース1内の前部であって、かつ案内板11の前方への延長線の上下には、左右方向を向く上下1対の圧刻ローラー21、21が、情報記録ディスク2の厚さT0とほぼ等しい間隔D1をもって、かつ互いに平行をなすようにして、支持フレーム10における両側板9、9間に枢支されている。
【0037】
両圧刻ローラー21、21の表面には、図7に拡大して示すように、多数の微小な尖先状の突起22が、適宜のパターンで設けられている。
なお、廃棄処理しようとする情報記録ディスク2が、基板2a(図10参照)の片面のみに、情報記録層1b(図10参照)および金属反射層(図示略)等を形成したものである場合は、上下いずれか一方の圧刻ローラー21の表面のみに、多数の突起22を設けるだけとしてもよい。
【0038】
図3および図8に示すように、外装ケース1内の前部であって、かつ案内板11の前方への延長線上における1対の圧刻ローラー21、21よりさらに前方の上下には、左右方向を向く上下1対の非平行ローラー23、23が、互いに非平行をなすようにして、支持フレーム10における両側板9、9間に枢支されている。
【0039】
図8に示すように、非平行ローラー23、23の右方の端部の間隔D2は、両ローラー23、23間を通過させようとする情報記録ディスク2の厚さT0より小とし、同じく左方の端部の間隔D3は、右方の端部の間隔D2より大としてある。
間隔D2は、例えば、情報記録ディスク2の厚さT0の1/2〜19/20とするのが好ましく、間隔D3は、例えば、情報記録ディスク2の厚さT0と等しいか、または若干大(T0〜T0+α)となるようにするのが好ましい。
また、非平行ローラー23、23の表面は、摩擦係数を高めるため、粗面としたり、高摩擦係数の材料をコーティングする等の表面処理を施すのが好ましい。
【0040】
1対の圧刻ローラー21、21と1対の非平行ローラー23、23との軸間距離D4は、情報記録ディスク2の直径Lより小としてあり、それによって、情報記録ディスク2は、進行方向の後端部が圧刻ローラー21、21により挟まれている状態で、前端部が非平行ローラー23、23間に送り込まれるので、情報記録ディスク2を、位置ずれ等を生じることなく、安定した状態で、確実に非平行ローラー23、23間に送り込むことができるようになっている。
さらに、圧刻ローラー21、21と非平行ローラー23、23の外径は、すべて同一としておくのが好ましい。
【0041】
図4に示すように、支持フレーム10における右方の側板9を貫通した下方の圧刻ローラー21の軸21a、および同じく側板9を貫通した下方の非平行ローラー23の軸23aには、平歯車よりなる従動ギヤ24、25が固嵌されている。
両従動ギヤ24、25は、右方の側板9の内面に固着された減速機構内蔵式のモータ26における上記側板9を貫通してその外側方に突出する出力軸26aの外端部に固嵌した、平歯車よりなる駆動ギヤ27と噛合し、モータ26の作動により、互いに同期して、同方向に回転させられるようになっている。
【0042】
次に、上記の装置の作用および取り扱いとともに、本発明の情報記録ディスクの廃棄処理方法の実施要領について、主として図9を参照して、説明する。
まず、筒体3内に、複数の情報記録ディスク2を積み重ねて収容しておき、その状態で、電源スイッチ5をオンにする。
【0043】
すると、モータ26が作動させられ、その回転力が、出力軸26aから駆動ギヤ27および従動ギヤ24、25を介して、下方の圧刻ローラー21と下方の非平行ローラー23とに伝達され、それらが同期して、情報記録ディスク2を排出口7に向かって送り出す方向に回転させられる。
【0044】
また、図3に実線で示すように、プッシャー17が後限に位置していることを位置センサ(図示略)が検出していると、モータ19が、予め定めた正転方向に作動させられ、ピニオン20とラック18とを介して、摺動体14が、案内板11の下面に沿って前進させられ、それに伴ってプッシャー17も前進させられ、その前縁で筒体3内の最下段の情報記録ディスク2のみが前方に向けて押動される。
【0045】
プッシャー17における、図3に実線で示す後限から、同じく2点鎖線で示す前限までの移動ストロークは、筒体3内の最下段の情報記録ディスク2の前端の位置から、1対の圧刻ローラー21、21の間の中間位置までの距離より大としてあるので、プッシャー17が、図3に2点鎖線で示す前限に到達する以前に、情報記録ディスク2の前端部は、1対の圧刻ローラー21、21間に確実に挟まれる。
【0046】
情報記録ディスク2の前端部が、1対の圧刻ローラー21、21間に挟まれると、下方の圧刻ローラー21がモータ26により回転させられているので、情報記録ディスク2は、前下方に向かって引き込まれつつ、上下の圧刻ローラー21、21の表面に設けられた多数の突起22により、上下両面(または片面)に多数のテーパー孔状、または倒立角錐孔状等の凹部28(図9参照)が、所定のパターンで形成される。
【0047】
このとき、情報記録ディスク2の情報記録層1bには凹部28の一部をなす多数の孔が形成され、それによって、情報記録ディスク2に記録された情報が読み取り不能となるとともに、次の行程において、非平行ローラー23、23間を通過するときの情報記録層2bの剥離が助長される。
さらに、剥離した情報記録層2bを化学的処理する際に、この多数の孔に溶剤が浸透し、処理時間を短縮することができる。
【0048】
1対の圧刻ローラー21、21間より前下方に向かって送り出された情報記録ディスク2は、進行方向の後端部が圧刻ローラー21、21により挟まれている状態で、前端部が非平行ローラー23、23間に送り込まれる。
したがって、情報記録ディスク2は、位置ずれ等を生じることなく、安定した状態で、確実に非平行ローラー23、23間に送り込まれる。
【0049】
1対の非平行ローラー23、23間を通過する間に、情報記録ディスク2は、1対の非平行ローラー23、23の一端部の間隔D2を、情報記録ディスク2の厚さT0より小としてあることにより、局部的に圧潰されつつ前方に送られ、結果として、図9および図10に示すように、一部の周縁が波形に塑性変形させられて、その部分の、特に谷側の屈曲部分の情報記録層2bが、基板2aから剥離させられるか、または剥離容易な状態となり、その状態で、排出口7から装置の前下方へ排出される。
【0050】
図10に示す情報記録ディスク2は、例えば、CDやCD−ROM等のように、ポリカーボネート樹脂製の1枚の基板2aの片面に、情報記録層2bとアルミニウム製の金属反射層(図示略)とを形成したものであるが、例えばCD−R、CD−RW、DVD−R、DVD−RW等のように、ポリカーボネート樹脂製の2枚の基板間に、情報記録層、金属反射層、接着剤層等を、重合して接着したタイプのものにおいては、周縁が波形に塑性変形させられた部分において、2枚の基板が互いに離間し、その間の情報記録層2b等が外部に露呈した状態となる。
【0051】
プッシャー17が前限に達したことを位置センサ(図示略)が検出すると、モータ19が、逆転作動させられ、それによって、プッシャー17は、案内板11に沿って後方へ復帰移動させられ、プッシャー17が後限に達っすると、下から第2段目の情報記録ディスク2、およびその上に載置されたすべての情報記録ディスク2が、それぞれ一段ずつ下降し、元の第2段目の情報記録ディスク2が最下段となる。
【0052】
プッシャー17が後限に達っしたことを位置センサ(図示略)が検出すると、モータ19の作動態様が、正転方向に切り換えられ、プッシャー17は、再度前進させられ、第1回目の作動と同様の作動が、順次繰り返される。
【0053】
排出口7から排出された処理済みの情報記録ディスク2は、一旦収容ボックス(図示略)に収容した後、次行程に搬送するか、またはベルトコンベヤ等の移送手段により、直接次行程に搬送し、情報記録層2b等を、基板2aから剥離した、または剥離容易となった部分を手掛かりに、基板2aから完全に剥離し、それを溶剤に浸漬して、そこから必要な成分を回収したり、基板2aも溶剤に浸漬して、表面に残存している情報記録層等の一部を完全に除去し、基板2aの素材であるポリカーボネート樹脂を回収したりすることができる。
【0054】
基本的な作動は以上の通りであり、その他に、筒体3内の情報記録ディスク2がなくなったことをセンサ(図示略)が検知したとき、モータ19、26の作動を停止させるとともに、表示ランプ6のひとつの警報ランプを点灯させたり、モータ19、26の負荷が、予め設定した値を超えたとき、表示ランプ6のひとつの別の警報ランプを点灯させたり、または、モータ26が作動している間は、表示ランプ6のひとつの作動確認ランプを点灯させたりする機能を付加するのが好ましい。
【0055】
以上から明らかなように、本発明の情報記録ディスクの廃棄処理方法および装置によると、記録された情報の読み取りを不能としうるだけでなく、情報記録ディスク2における基板2aと情報記録層2bとの少なくとも一部を、簡単に剥離させるか、または剥離容易な状態とすることができる。
【0056】
なお、本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、例えば、次のような幾多の変形した態様での実施が可能である。
(1) 上記実施形態においては、圧刻ローラー21、21および非平行ローラー23、23の一方のみをモータ26により駆動し、他方はフリーとしてあるが、図3における従動ギヤ24、25の上方において、上方の圧刻ローラー21の軸21aおよび上方の非平行ローラー23の軸23aに、従動ギヤ24、25と噛合する第2の従動ギヤ(図示略)を固嵌し、圧刻ローラー21、21および非平行ローラー23、23の両方をモータ26により駆動するようにする。
(2) 案内板11およびそれに関連する情報記録ディスク2の送り方向が水平となるように、外装ケース1内の部材の向きをすべて変更する。
(3) 圧刻ローラー21、21を省略して実施する。
(4) 摺動体14、スリット15、上向き突片16、ラック18、ピニオン20を、それぞれ左右1対ずつ設け、左右の上向き突片16により、プッシャー17の両側端部を支持するとともに、左右のピニオン20を、モータ19の出力軸19aの延長部分に、左右1対として固嵌する。
このようにすると、プッシャー17の支持が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の情報記録ディスクの廃棄処理装置の外観斜視図である。
【図2】同じく、正面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う縦断正面図である。
【図4】図2のIV−IV線に沿う縦断正面図である。
【図5】図4のV−V線に沿う断面図である。
【図6】図3のVI−VI線に沿う拡大断面図である。
【図7】図6のVII部の部分拡大図である。
【図8】図3のVIII−VIII線に沿う拡大断面図である。
【図9】情報記録ディスクの廃棄処理作業の流れを模式的に示す斜視図である。
【図10】図9のX−X線に沿う拡大断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 外装ケース
1a傾斜面
1b水平面
2 情報記録ディスク
2a基板
2b情報記録層
3 筒体(ディスク収容手段)
3a、3b 開口
4 操作盤
5 電源スイッチ
6 表示ランプ
7 排出口
8 底板
9 側板
10 支持フレーム
11 案内板
12 ディスク送り装置
13 移動手段
14 摺動体
15 スリット
16 上向き突片
17 プッシャー
18 ラック
19 モータ
19a出力軸
20 ピニオン
21 圧刻ローラー
21a軸
22 突起
23 非平行ローラ
23a軸
24、25 従動ギヤ
26 モータ
26a出力軸
27 駆動ギヤ
28 凹部
T0 情報記録ディスクの板厚
T1 プッシャーの最大板厚
D1 圧刻ローラー間の間隔
D2 非平行ローラの一端部間の間隔
D3 非平行ローラの他端部間の間隔
D4 圧刻ローラーと非平行ローラーとの軸間距離
L 情報記録ディスクの直径L

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面または中間層に、情報記録機能を有する情報記録層を形成した情報記録ディスクを、一端部の間隔を、前記情報記録ディスクの厚さより小とし、かつ他端部の間隔を、前記一端部の間隔より大とした1対の非平行ローラー間を通過させることにより、前記情報記録ディスクの一部を波形に塑性変形させ、前記基板と情報記録層との少なくとも一部を剥離させるか、または剥離容易とすることを特徴とする情報記録ディスクの廃棄処理方法。
【請求項2】
情報記録ディスクを、1対の非平行ローラー間を通過させるのに先だって、少なくとも一方のローラーの表面に、多数の突起を設けた1対の圧刻ローラー間を通過させることにより、情報記録ディスクの少なくとも一面に多数の凹部を形成し、情報記録ディスクに記録された情報を読み取り不能とすることを特徴とする請求項1記載の情報記録ディスクの廃棄処理方法。
【請求項3】
1対の非平行ローラーを、その一端部の間隔が、両ローラー間を通過させようとする情報記録ディスクの厚さより小、かつ他端部の間隔が、前記一端部の間隔より大となるようにして、支持フレームに枢支し、かつ前記支持フレームに、前記両ローラーの少なくともいずれか一方を回転させる駆動手段を設けたことを特徴とする情報記録ディスクの廃棄処理装置。
【請求項4】
1対の非平行ローラーへの情報記録ディスクの送り込み側に、少なくとも一方のローラーの表面に、多数の突起を設けた1対の圧刻ローラーを、前記情報記録ディスクの厚さとほぼ等しい間隔をもって、互いに平行をなすようにして、支持フレームに枢支し、かつ前記圧刻ローラーの少なくとも一方のローラを、駆動手段により回転させるようにしたことを特徴とする請求項3記載の情報記録ディスクの廃棄処理装置。
【請求項5】
非平行ローラーと圧刻ローラーとの軸間距離を、情報記録ディスクの直径より小としたことを特徴とする請求項4記載の情報記録ディスクの廃棄処理装置。
【請求項6】
情報記録ディスクを、非平行ローラーまたは圧刻ローラーへ向かって案内する案内板と、情報記録ディスクを、非平行ローラーまたは圧刻ローラーへ向かって移動させる移動手段とを有するディスク送り装置を、支持フレームに設けたことを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の情報記録ディスクの廃棄処理装置。
【請求項7】
案内板および移動手段を、非平行ローラーまたは圧刻ローラーへ向かって、下向き傾斜させたことを特徴とする請求項6記載の情報記録ディスクの廃棄処理装置。
【請求項8】
ディスク送り装置の始端部に、複数の情報記録ディスクを積み重ねて収容しうるとともに、下端部における移動手段による情報記録ディスクの送り方向側の面に、1枚の情報記録ディスクのみの通過を許容する開口が設けられたディスク収容手段を設けたことを特徴とする請求項6または7記載の情報記録ディスクの廃棄処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−23428(P2010−23428A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−190207(P2008−190207)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(506150146)ビフレステック株式会社 (16)
【出願人】(508223077)株式会社ジー・ピー・シー・コア (1)
【出願人】(508222058)株式会社コーヨー (1)
【Fターム(参考)】