説明

感光体ユニット及びプロセスカートリッジ

【課題】潤滑剤による摩耗低減効果を長時間維持可能な感光体ユニット及びプロセスカートリッジを提供する。
【解決手段】潜像を担持する感光体と、感光体端部に圧入されるフランジ62と、感光体に固定され回転自在に支持する導電性のシャフト67と、フランジ62に接続されシャフト67と少なくとも2箇所で接触するアース板61とを有する感光体ユニットであって、アース板61は、シャフト67との接触箇所となる凸部65、66を備えており、凸部65、66のそれぞれは、その長手方向がシャフト67の軸方向に対して平行でも直角でもない所定の角度をなすように設置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に用いられる感光体ユニット及びそれに用いられるアース板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示される発明は、感光体とシャフトとの導通を安定して維持するために、感光体フランジ部に取り付けられたアース板に関し、シャフトに圧接する二つの接触点を互いにシャフト軸方向にずらした接触部を備えるアース板とすることにより摩耗を少なくしている。
【0003】
図8に、従来の感光体ユニットにおけるシャフトとアース板との接触部分の構成を示すの構成を示す。
感光体への電気的導通手段として、アース板50とシャフト52との接触面となるアース板凸部51の形状は、凸部長手方向がシャフト軸心に対して平行又は垂直のものが使用されていた。このような構成では、シャフト52とアース板凸部51との間に導電性グリスが塗布された場合、アース板凸部51の回転により軌道上の導電性グリスが掻き取られてしまい、シャフト52の摩耗が著しくなってしまうこと、シャフト52とアース板凸部51の摺動による異音が発生してしまうことが課題であった。
【特許文献1】特開2002−311755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される発明は、二つの接触点をシャフト軸方向の同じ箇所に接触させるよりは摩耗は少なくなるものの、例えば接触部にグリスなどを塗布した場合、グリスは接触部から逃げることとなり、グリスによる摩耗低減効果を長期間維持することができないという問題があった。
【0005】
本発明は係る問題に鑑みてなされたものであり、潤滑剤による摩耗低減効果を長時間維持可能な感光体ユニット及びプロセスカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、第1の態様として、潜像を担持する感光体と、感光体端部に圧入される樹脂フランジと、感光体に挿通され回転自在に支持する導電性のシャフトと、樹脂フランジに接続されシャフトと接触する少なくとも二つのアース板とを有する感光体ユニットであって、アース板のそれぞれは、シャフトとの接触箇所となる突起部を備えており、突起部のそれぞれは、その長手方向がシャフトの軸方向に対して平行でも直角でもない所定の角度をなすように設置されていることを特徴とする感光体ユニットを提供するものである。
【0007】
また、上記目的を達成するため、本発明は、第2の態様として、上記本発明の第1の態様に係る感光体ユニットを備えたプロセスカートリッジを提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、潤滑剤による摩耗低減効果を長時間維持可能な感光体ユニット及びプロセスカートリッジを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の好適な実施の形態について説明する。
図1に、本実施形態に係る画像形成装置の構成を示す。この画像形成装置は、感光体の周上に一つの現像装置を配置した作像部が四つ並んだカラー画像形成装置である。図1は、本実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す断面図であり、画像形成装置本体に現像装置及び感光体ユニットを装着した状態である。
【0010】
本実施形態に係る画像形成装置は、現像剤として各々が異なる色のトナーを収容した四つの現像器31(31a、31b、31c、31d)と、現像器31a〜31dと組み合わされて配置された感光体ドラム22(22a、22b、22c、22d)とを備えている。
【0011】
感光体ドラム22の周りには1次転写後の残トナーを掻き取るクリーニングブレード23(23a、23b、23c、23d)、感光体ドラム22に当接する帯電ローラ21(21a、21b、21c、21d)が設けられている。掻き取られたトナーは、水平に搬送するトナー搬送スクリュー24(24a、24b、24c、24d)、トナー搬送スクリュー24からのトナーを上方へ搬送するトナー搬送ベルト25(25a、25b、25c、25d)によって搬送され、廃トナー回収部26(26a、26b、26c、26d)に回収される。
現像器31、感光体ドラム22、クリーニングブレード23、帯電ローラ21、トナー搬送スクリュー24、トナー搬送ベルト25及び廃トナー回収部26は、一体として感光体ユニット20(20a、20b、20c、20d)を構成している。感光体ユニット20は、一体として画像形成装置に着脱可能なプロセスカートリッジとして構成することが可能である。
【0012】
感光体ユニット20のハウジングは後述するように、現像装置を内蔵することができる構成となっている。
【0013】
また、画像形成装置は、当接する駆動ローラ30及び従動ローラ27と、1次転写ローラ29(29a、29b、29c、29d)の周りに架け渡されて循環移動する中間転写ベルト28とで構成された中間転写ユニットを備えている。
【0014】
なお、感光体ドラム22a〜22dは、光走査装置からのレーザビーム36(36a、36b、36c、36d)によって露光される。
【0015】
各現像器31の現像ローラ32の芯金には不図示のバイアス電源から交流と直流とを重畳したマイナス電位のバイアス電圧が印加される。また、各帯電ローラ21には、他のバイアス電源から直流のマイナス電位のバイアス電圧が印加される。
【0016】
感光体ユニット20の内部には、現像器31と組み合う感光体ドラム22、これに当接するクリーニングブレード23及び帯電ローラ21によって構成される画像形成部が形成されている。すなわち、本実施形態に係る画像形成装置は、感光体ユニット20aの内部の第1画像形成部、感光体ユニット20bの内部の第2画像形成部、感光体ユニット20cの内部の第3画像形成部、感光体ユニット20dの内部の第4画像形成部の四つの画像形成部を備える。
【0017】
クリーニングブレード23aは、感光体ドラム22aの周面に残留するトナー汚れを清掃する。帯電ローラ21aは、清掃された感光体ドラム22aの周面を一様な高電位に帯電させて初期化する。そして、第1画像形成部の感光体ドラム22aにレーザビーム36aが照射される。これにより、一様な高電位に帯電している感光体ドラム22aの周面が画像データに基づいて選択的に露光され、この露光により電位の減衰した低電位部と初期化による高電位部とからなる静電電像が形成される。
第2〜第4画像形成部に関しても同様の動作を行う。
【0018】
現像器31aは、静電潜像の低電位部(又は高電位部)にトナーを転移させてトナー像を形成(現像)する。感光体ドラム22aは、トナー像を回転搬送して中間転写ベルト28に転写する。中間転写ベルト28上のトナー像が感光体ドラム22bとの当接部に来るタイミングに合わせて、上記同様に第2画像形成部が動作して、現像器31bが感光体ドラム28上の静電潜像をトナー像化(現像化)し、感光体ドラム22bがそのトナー像を回転搬送して中間転写ベルト28上のトナー像に重ねて転写する。
同様の動作を第3、第4画像形成部でも行う。
【0019】
中間転写ベルト28は、四重のトナー像を搬送し、そのトナー像を2次転写ローラ39によって不図示の用紙へ転送する。
【0020】
図2は、感光体ユニットの詳細な構成を示す図である。なお、感光体ドラム内部の様子を示すために、便宜的に感光体ドラムは半透明として図示している。感光体ドラム40内に設置されたアース板42により、感光体ドラムとシャフト41間の電気的導通を得ることができる。
【0021】
図3、図4、図5に、本実施形態に係る画像形成装置に適用されるアース板形状の一例を示す。図3は斜視図、図4は上面図、図5は側面図である。
図3において、アース板60は板状基材61を有し、板状基材61はフランジ62にカシメによってはめ込まれている。アース板60は、板状部材61の外周より内方にクランク状に折り曲げられた2本の接触片63、64が設けられており、接触片63、64の先端にはシャフト67の接点となる凸部65、66が設けられている。シャフト67と凸部65、66との接触面には導電性グリスが塗布されている。凸部65、66の長手方向は、シャフト軸心に対して平行でも直角でも無い角度(図4に示す角度θ)を持つ。
【0022】
凸部65、66の長手方向がシャフト軸心に対して角度θを持つことにより、図3の回転方向にフランジが回転したときに凸部65、66が互いにグリスを供給する。この効果により、凸部65、66とシャフト67との接触箇所に常にグリスが存在し、シャフト67の摩耗や摺動による異音の低減が可能となる。
【0023】
ここではシャフトとの接触点となる凸部が2個の構成を例としているが、凸部が3以上あっても同様である。
【0024】
アース板凸部65がフランジ62の回転によって移動したときに、凸部65の移動によって掻き取られる導電性グリスが凸部66に向かって軸方向に移動するように凸部65の長手方向が軸芯に対して角度θを持ち、且つ凸部66が移動した時に掻き取られる導電性グリスが凸部65に向かって軸方向に移動するように角度θを与える。これにより、フランジ62が回転した時に凸部65、66がお互いにグリスを供給することができ、シャフト67の摩耗や摺動による異音の低減が可能となる。
【0025】
一般的には、凸部が偶数個の場合には、シャフトの軸方向に一方にグリスを移動させる凸部と逆方向にグリスを移動させる凸部とを交互に配置し、各凸部によるグリスの移動量が同じとなるように凸部の角度を設定すればよい。一方、凸部が奇数個(2n+1個)の場合は、グリスがシャフトの軸方向に沿って交互に移動するように凸部を設置し、シャフトの一方にグリスを移動させるn個の凸部の軸芯に対する角度と、シャフトの他方にグリスを移動させるn+1個の凸部の軸心に対する角度とを、シャフトが一回転した時にグリスの移動が相殺されるように設定すればよい。具体的には、凸部が三つの場合には、1番目又は3番目の凸部によるグリスの移動量と、2番目の凸部によるグリスのとの比が1:2となるようにすれば、シャフトが1回転した時にグリスの移動が相殺され、凸部の移動領域にグリスを長時間存在させることができる。
【0026】
図4に示すように、アース板凸部65の形状は、長方形の短辺を半円とした形状であり、長手方向長さをa、短手方向長さをbとしたときに、a≧1.5bを満たしている。このような形状とすることで、アース板凸部65が回転移動した時に十分な量のグリスをシャフト軸方向に移動させることが可能となる。a<1.5bとなる形状では、凸部65、66の長手方向をシャフト軸心に対して平行でも直角でも無い角度としても、グリスを特定の方向に移動させる効果が十分に得られず、凸部の移動領域にグリスを長時間存在させることができない。
【0027】
図5に示すように、凸部65と凸部66とをシャフト軸方向に長さcだけオフセットさせることにより、凸部65が掻き取ったグリスが凸部66の移動領域からはみ出さないようにし、グリスを無駄なく二つの凸部で受け渡すことができる。cが大きい場合、二つの凸部でグリスの受け渡しができないため、c<acosθとしている。これにより、グリスを凸部の移動領域に長時間存在させることができる。
【0028】
また、図3に示すように、二つのアース板接触片63、64をシャフト軸心を挟んで対向する位置に配置することにより、アース板間の距離を等しくし、導電性グリスの移動をバランス良く行うことができる。なお、アース板接触片を3以上備える構成においては、図6に示すように、シャフト67の断面の外周をほぼ等分する位置でシャフトと接するように凸部を配置すればよい。
【0029】
アース板の材料としては導電性及び弾性に優れたステンレス鋼、アルミニウム、銅が望ましいが、これに限定される訳ではない。弾性に優れた材料でアース板を形成することにより、シャフト67に凸部65、66を圧接させて確実に電気的導通をとることができる。
【0030】
図7に示すように、凸部65、66が回転移動により軸方向に掻き取るグリスの量は、角度θが45°の時に最大となる。よって、凸部65、66の長手方向とシャフト軸心とがなす角度θを15°〜60°、特に45°とすることが好ましい。
【0031】
このように、本実施形態によれば、アース板の回転移動に伴う導電性グリスの移動を制御することができ、接触箇所でグリスが不足することを防ぎ、シャフトの摩耗や異音の発生を抑制できる。これにより、長期間の使用においても安定して感光体とシャフトとの間の電気的導通を得ることが可能となる。
【0032】
なお、上記実施形態は本発明の好適な実施の一例であり、本発明はこれに限定されることはない。
例えば、上記実施形態においては、4色のトナー像を重ね合わせて用紙に転写する画像形成装置を例として説明したが、単色のトナー像を用紙に転写するモノクロの画像形成装置の感光体ユニットとしても適用可能である。
このように、本発明は様々な変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の好適な実施の形態に係る画像形成装置の構成を示す図である。
【図2】感光体ユニットの構成を示す図である。
【図3】本発明の好適な実施の形態に係る感光体ユニットにおけるシャフトとアース板との接触部分の構成を示す図である。
【図4】本発明の好適な実施の形態に係る感光体ユニットにおけるシャフトとアース板との接触部分の構成を示す図である。
【図5】本発明の好適な実施の形態に係る感光体ユニットにおけるシャフトとアース板との接触部分の構成を示す図である。
【図6】3以上の凸部を接触片を設ける場合のシャフトと凸部との位置関係を示す図である。
【図7】アース板の凸部の長手方向とシャフトとがなす角度と凸部が軸方向に掻き取るグリス量との関係を示す図である。
【図8】従来の感光体ユニットにおけるシャフトとアース板との接触部分の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
20 感光体ユニット
21 帯電ローラ
22 感光体ドラム
23 クリーニングブレード
24 トナー搬送スクリュー
25 トナー搬送ベルト
26 廃トナー回収部
27 従動ローラ
28 中間転写ベルト
29 1次転写ローラ
30 駆動ローラ
31 現像器
32 現像ローラ
40 感光体ドラム
41、52、67 シャフト
42、50、60 アース板
51 アース板凸部
61 板状基材
62 フランジ
63、64 接触片
65、66 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜像を担持する感光体と、前記感光体端部に圧入される樹脂フランジと、前記感光体に挿通され回転自在に支持する導電性のシャフトと、前記樹脂フランジに接続され前記シャフトと少なくとも2箇所で接触するアース板とを有する感光体ユニットであって、
前記アース板は、前記シャフトとの接触箇所となる突起部を備えており、
前記突起部のそれぞれは、その長手方向が前記シャフトの軸方向に対して平行でも直角でもない所定の角度をなすように設置されていることを特徴とする感光体ユニット。
【請求項2】
前記突起部のそれぞれは、長手方向の長さが短手方向の長さの1.5倍以上であることを特徴とする請求項1記載の感光体ユニット。
【請求項3】
前記突起部のそれぞれは、前記シャフトの軸方向に互いにオフセットした位置で該シャフトと接触するように配置されており、オフセット間隔は、前記突起部の長手方向寸法に前記所定の角度の余弦を乗じた値以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の感光体ユニット。
【請求項4】
前記シャフトの外周を概ね等分する位置で、前記アース板のそれぞれが前記シャフトに接触することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の感光体ユニット。
【請求項5】
前記アース板は、ステンレス鋼、銅又はアルミニウムで形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の感光体ユニット。
【請求項6】
前記突起部の長手方向が前記シャフトの軸方向に対してなす角度が略45°であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の感光体ユニット。
【請求項7】
前記突起部を複数個備え、任意の突起部を基準として、
奇数番目の突起部は、前記感光体の回転によって前記シャフトに対して相対的に移動した際に、前記シャフトの表面に塗布された導電性グリスを偶数番目の突起部側に向かって移動させるように前記所定の角度が設定されており、
偶数番目の突起部は、前記感光体の回転によって前記シャフトに対して相対的に移動した際に、前記シャフトの表面に塗布された導電性グリスを奇数番目の突起部側に向かって移動させるように前記所定の角度が設定されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の感光体ユニット。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項記載の感光体ユニットを備えたプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−145761(P2010−145761A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323199(P2008−323199)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】