説明

感光性平版印刷版材料とその製造方法

【課題】高感度、高耐刷性であり、かつ印刷(インキ)汚れ防止性、プレヒートラチチュード等に優れている感光性平版印刷版材料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】支持体上に(A)光重合開始剤、(B)重合可能なエチレン性二重結合含有化合物、(C)分光増感剤、および(D)高分子結合材を含有する感光層を有する感光性平版印刷版材料において、該感光層が、該高分子結合材として酸価が異なる2種類以上の高分子結合材を含有し、かつ該高分子結合材の少なくとも1種の酸価が50〜100mgKOH/gであり、少なくとも他の1種の酸価が90〜150mgKOH/gであることを特徴とする感光性平版印刷版材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆるコンピューター・トゥ・プレート(computer−to−plate:以下において、CTPという。)システムに用いられる感光性平版印刷版に関し、特に、波長350〜450nmのレーザー光での露光に適した感光性平版印刷版材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像情報をコンピューターを用いて電子的に処理、蓄積、出力する、デジタル化技術が広く普及し、オフセット印刷用の印刷版の作製技術においては、デジタル化された画像情報に従って、指向性の高いレーザー光を走査し、直接感光性平版印刷版に記録するいわゆるCTPシステムが開発され、実用化が進展している。
【0003】
このCTPシステムに適応した感光性平版印刷版材料のうち、比較的高い耐刷力を要求される印刷の分野においては、重合可能な化合物及び高分子結合剤を含む重合型の感光性層を有するネガ型の感光性平版印刷版材料を用いることが知られている(例えば、特許文献1、2参照。)。この様な感光性平版印刷版材料は、一般に高分子結合材、エチレン性不飽和結合を有する化合物、重合開始剤を含んでなる感光性層を有している。
【0004】
従来、重合型の感光性層に用いられる高分子結合剤としては、特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭54−92723号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号公報等に記載されているメタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等のアルカリ現像可能な有機高分子ポリマーが用いられてきた。
【0005】
しかし、上記のような従来の高分子結合剤を含有する感光性層を設けたネガ型感光性平版印刷版は、レーザー出力に対応可能な分光波長と感度を十分に有していないばかりか、生産性をさらに高める目的で走査スピードを上げていくと、単位面積当たりの露光エネルギーがそれに対応して小さくなるため、露光部においても充分な硬化が得られなくなり、現像液中のアルカリ成分によって画像部がダメージを受け、高い耐刷性が得られないといった問題を有していた。
【0006】
一方、この様な重合型の感光性層を有するネガ型感光性平版印刷版に露光前後、若しくは露光中に加熱処理を加えることで、高感度と耐刷力向上が見られることは公知であり、現在の重合型の感光性平版印刷版形成システムでは、露光後に加熱処理を行うシステムが主流になっている。
【0007】
この様な加熱処理で、耐刷性は高められるが、過剰に加熱を強めた場合、開始剤の開裂、エチレン性不飽和化合物の反応により、カブリを生じる等の問題が生じる。このため、加熱条件には上限があり、一般的に100℃程度の処理を行っている。
【0008】
しかしながら、この様な一定条件下では、求められる高い耐刷性と、非画像部の汚れの両立が十分に満足のできるものとは言えない。
【0009】
上記のような問題を解決する方法として、各社高分子結合材の酸価やガラス転移温度(Tg)等に着目した手段が提案されている(例えば、特許文献3及び4参照。)。例えば、特許文献3では、酸価0.7〜2、ガラス転移温度120℃以下の高分子結合材を開示している。
【0010】
しかしながら、当該方法によっては、耐刷性と現像性は、幾らかは改良されるものの、未だ、耐刷性と現像性はもとより、画像形成感度や印刷(インキ)汚れ防止性、プレヒートラチチュード等の性能についての市場の高い要望レベルに十分に対応できるものではない。
【特許文献1】特開平1−105238号公報
【特許文献2】特開平2−127404号公報
【特許文献3】特開2004−219667号公報
【特許文献4】特開2001−100408号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、高感度、高耐刷性であり、かつ印刷(インキ)汚れ防止性、プレヒートラチチュード等に優れている感光性平版印刷版材料及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記課題は、以下の手段により解決される。
【0013】
1.支持体上に(A)光重合開始剤、(B)重合可能なエチレン性二重結合含有化合物、(C)分光増感剤、および(D)高分子結合材を含有する感光層を有する感光性平版印刷版材料において、該感光層が、該高分子結合材として酸価が異なる2種類以上の高分子結合材を含有し、かつ該高分子結合材のうち、少なくとも1種の酸価が50〜100mgKOH/gであり、少なくとも他の1種の酸価が90〜150mgKOH/gであることを特徴とする感光性平版印刷版材料。
【0014】
2.前記感光層が、前記分光増感剤として一般式(CS)で表される化合物を含有し、かつ前記光重合開始剤として鉄アレーン錯体を含有することを特徴とする前記1に記載の感光性平版印刷版材料。
【0015】
【化1】

【0016】
〔式中、R1〜R6は、それぞれ、水素原子又は置換基を表す。〕
3.支持体上に(A)光重合開始剤、(B)重合可能なエチレン性二重結合含有化合物、(C)分光増感剤、および(D)高分子結合材を含有する感光層を有する感光性平版印刷版材料の製造方法であって、前記1又は2に記載の感光性平版印刷版材料を製造することを特徴とする感光性平版印刷版材料の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の構成により、高感度、高耐刷性であり、かつ印刷(インキ)汚れ防止性、プレヒートラチチュード等に優れている感光性平版印刷版材料及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の感光性平版印刷版材料は、支持体上に(A)光重合開始剤、(B)重合可能なエチレン性二重結合含有化合物、(C)分光増感剤、および(D)高分子結合材を含有する感光層を有する感光性平版印刷版材料において、該感光層が、該高分子結合材として酸価が異なる2種類以上の高分子結合材を含有し、かつ該高分子結合材の少なくとも1種の酸価が50〜100mgKOH/gであり、少なくとも他の1種の酸価が90〜150mgKOH/gであることを特徴とする。
【0019】
以下、本発明とその構成要素等について詳細な説明をする。
【0020】
((A)重合開始剤)
本発明に係る光重合開始剤は、画像露光により、重合可能なエチレン性二重結合含有化合物の重合を開始し得るものであり、光重合開始剤として鉄アレーン錯体を含有する。本発明においては、光重合開始剤として、鉄アレーン錯体の他に、例えばチタノセン化合物、モノアルキルトリアリールボレート化合物、ポリハロゲン化合物ビイミダゾール化合物などを併用してもよい。
【0021】
本発明に係る鉄アレーン錯体は、下記一般式(a)で表される化合物である。
【0022】
一般式(a)[A−Fe−B]+X-
式中Aは、置換、無置換のシクロペンタジエニル基または、シクロヘキサジエニル基を表す。式中Bは芳香族環を有する化合物を表す。式中X-はアニオンを表す。
【0023】
芳香族環を有する化合物の、具体例としてはベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、ナフタレン、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン、ビフェニル、フルオレン、アントラセン、ピレン等が挙げられる。X-としては、PF6-、BF4-、SbF6-、AlF4-、CF3SO3-等が挙げられる。置換シクロペンタジエニル基またはシクロヘキサジエニル基の置換基としては、メチル、エチル基などのアルキル基、シアノ基、アセチル基、ハロゲン原子が挙げられる。
【0024】
鉄アレーン錯体は、重合可能な基を有する化合物に対して0.1〜20質量%の割合で含有することが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%である。
【0025】
鉄アレーン錯体の具体例を以下に示す。
Fe−1:(η6−ベンゼン)(η5−シクロペンタジエニル)鉄(2)ヘキサフルオロホスフェート
Fe−2:(η6−トルエン)(η5−シクロペンタジエニル)鉄(2)ヘキサフルオロフェート
Fe−3:(η6−クメン)(η5−シクロペンタジエニル)鉄(2)ヘキサフルオロホスフェート
Fe−4:(η6−ベンゼン)(η5−シクロペンタジエニル)鉄(2)ヘキサフルオロアルセネート
Fe−5:(η6−ベンゼン)(η5−シクロペンタジエニル)鉄(2)テトラフルオロポレート
Fe−6:(η6−ナフタレン)(η5−シクロペンタジエニル)鉄(2)ヘキサフルオロホスフェート
Fe−7:(η6−アントラセン)(η5−シクロペンタジエニル)鉄(2)ヘキサフルオロホスフェート
Fe−8:(η6−ピレン)(η5−シクロペンタジェニル)鉄(2)ヘキサフルオロホスフェート
Fe−9:(η6−ベンゼン)(η5−シアノシクロペンタジエニル)鉄(2)ヘキサフルオロホスフェート
Fe−10:(η6−トルエン)(η5−アセチルシクロペンタジニル)鉄(2)ヘキサフルオロホスフェート
Fe−11:(η6−クメン)(η5−シクロペンタジエニル)鉄(2)テトラフルオロボレート
Fe−12:(η6−ベンゼン)(η5−カルボエトキシシクロヘキサジエニル)鉄(2)ヘキサフルオロホスフェート
Fe−13:(η6−ベンゼン)(η5−1,3−ジクロルシクロヘキサジエニル)鉄(2)ヘキサフルオロホスフェート
Fe−14:(η6−シアノベンゼン)(η5−シクロヘキサジエニル)鉄(2)ヘキサフルオロホスフェート
Fe−15:(η6−アセトフェノン)(η5−シクロヘキサジエニル)鉄(2)ヘキサフルオロホスフェート
Fe−16:(η6−メチルベンゾエ−ト)(η5−シクロペンタジエニル)鉄(2)ヘキサフルオロホスフェート
Fe−17:(η6−ベンゼンスルホンアミド)(η5−シクロペンタジエニル)鉄(2)テトラフルオロボレート
Fe−18:(η6−ベンズアミド)(η5−シクロペンタジエニル)鉄(2)ヘキサフルオロホスフェート
Fe−19:(η6−シアノベンゼン)(η5−シアノシクロペンタジエニル)鉄(2)ヘキサフルオロホスフェート
FE−20:(η6−クロルナフタレン)(η5−シクロペンタジエニル)鉄(2)ヘキサフルオロホスフェート
Fe−21:(η6−アントラセン)(η5−シアノシクロペンタジエニル)鉄(2)ヘキサフルオロホスフェート
Fe−22:(η6−クロルベンゼン)(η5−シクロペンタジエニル)鉄(2)ヘキサフルオロホスフェート
Fe−23:(η6−クロルベンゼン)(η5−シクロペンタジエニル)鉄(2)テトラフルオロボレート
これらの化合物は、Dokl.Akd.Nauk SSSR 149 615(1963)に記載された方法により合成できる。
【0026】
ビイミダゾール化合物は、ビイミダゾールの誘導体であり、例えば特開2003−295426号公報に記載される化合物等が挙げられる。
【0027】
本発明においては、ビイミダゾール化合物として、ヘキサアリールビイミダゾール(HABI、トリアリール−イミダゾールの二量体)化合物を好ましく用いることができる。
【0028】
HABI類の製造工程はDE1,470,154に記載されておりそして光重合可能な組成物中でのそれらの使用はEP24,629、EP107,792、US4,410,621、EP215,453およびDE3,211,312に記述されている。
【0029】
好ましい誘導体は例えば、2,4,5,2′,4′,5′−ヘキサフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(2−ブロモフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラキス(3−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2′−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラキス(3,4,5−トリメトキシフェニル)−ビイミダゾール、2,5,2′,5′−テトラキス(2−クロロフェニル)−4,4′−ビス(3,4−ジメトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2′−ビス(2,6−ジクロロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(2−ニトロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ジ−o−トリル−4,5,4′,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(2−エトキシフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニルビイミダゾールおよび2,2′−ビス(2,6−ジフルオロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニルビイミダゾールである。
【0030】
チタノセン化合物としては、特開昭63−41483、特開平2−291に記載される化合物等が挙げられるが、更に好ましい具体例としては、ビス(シクロペンタジエニル)−Ti−ジ−クロライド、ビス(シクロペンタジエニル)−Ti−ビス−フェニル、ビス(シクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル、ビス(シクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル、ビス(シクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニル、ビス(シクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニル、ビス(シクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニル、ビス(メチルシクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル、ビス(メチルシクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル、ビス(メチルシクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニル(IRUGACURE727L:チバスペシャリティーケミカルズ社製)、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピリ−1−イル)フェニル)チタニウム(IRUGACURE784:チバスペシャリティーケミカルズ社製)、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,4,6−トリフルオロ−3−(ピリ−1−イル)フェニル)チタニウムビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,4,6−トリフルオロ−3−(2−5−ジメチルピリ−1−イル)フェニル)チタニウム等が挙げられる。
【0031】
モノアルキルトリアリールボレート化合物としては、特開昭62−150242、特開昭62−143044に記載される化合物等挙げられるが、更に好ましい具体例としては、テトラ−n−ブチルアンモニウム・n−ブチルートリナフタレン−1−イル−ボレート、テトラ−n−ブチルアンモニウム・n−ブチルートリフェニル−ボレート、テトラ−n−ブチルアンモニウム・n−ブチルートリ−(4−tert−ブチルフェニル)−ボレート、テトラ−n−ブチルアンモニウム・n−ヘキシルートリ−(3−クロロ−4−メチルフェニル)−ボレート、テトラ−n−ブチルアンモニウム・n−ヘキシルートリ−(3−フルオロフェニル)−ボレート等が挙げられる。
【0032】
ポリハロゲン化合物としては、トリハロゲンメチル基、ジハロゲンメチル基又はジハロゲンメチレン基を有する化合物が好ましく用いられ、特に下記一般式(1)で表されるハロゲン化合物及び上記基がオキサジアゾール環に置換した化合物が好ましく用いられる。
【0033】
この中でもさらに、下記一般式(2)で表されるハロゲン化合物が特に好ましく用いられる。
【0034】
一般式(1) R1−CY2−(C=O)−R2
式中、R1は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アシル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、イミノスルホニル基またはシアノ基を表す。R2は一価の置換基を表す。R1とR2が結合して環を形成してもかまわない。Yはハロゲン原子を表す。
【0035】
一般式(2) CY3−(C=O)−X−R3
式中、R3は、一価の置換基を表す。Xは、−O−、−NR4−を表す。R4は、水素原子、アルキル基を表す。R3とR4が結合して環を形成してもかまわない。Yはハロゲン原子を表す。これらの中でも特にポリハロゲンアセチルアミド基を有するものが好ましく用いられる。
【0036】
又、ポリハロゲンメチル基がオキサジアゾール環に置換した化合物も好ましく用いられる。さらに、特開平5−34904号公報、堂−45875号公報、同8−240909号公報に記載のオキサジアゾール化合物も好ましく用いられる。
【0037】
その他に任意の光重合開始剤の併用が可能である。例えばJ.コーサー(J.Kosar)著「ライト・センシテイブ・システムズ」第5章に記載されるようなカルボニル化合物、有機硫黄化合物、過硫化物、レドックス系化合物、アゾ並びにジアゾ化合物、ハロゲン化合物、光還元性色素などが挙げられる。更に具体的な化合物は英国特許1,459,563号に開示されている。
【0038】
即ち、併用が可能な光重合開始剤としては、次のようなものを使用することができる。
【0039】
ベンゾインメチルエーテル、ベンゾイン−i−プロピルエーテル、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン等のベンゾイン誘導体;ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4′−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体;2−クロロチオキサントン、2−i−プロピルチオキサントン等のチオキサントン誘導体;2−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン等のアントラキノン誘導体;N−メチルアクリドン、N−ブチルアクリドン等のアクリドン誘導体;α,α−ジエトキシアセトフェノン、ベンジル、フルオレノン、キサントン、ウラニル化合物の他、特公昭59−1281号、同61−9621号ならびに特開昭60−60104号記載のトリアジン誘導体;特開昭59−1504号、同61−243807号記載の有機過酸化物;特公昭43−23684号、同44−6413号、同44−6413号、同47−1604号ならびに米国特許3,567,453号記載のジアゾニウム化合物;米国特許2,848,328号、同2,852,379号ならびに同2,940,853号記載の有機アジド化合物;特公昭36−22062b号、同37−13109号、同38−18015号ならびに同45−9610号記載のo−キノンジアジド類;特公昭55−39162号、特開昭59−14023号ならびに「マクロモレキュルス(Macromolecules)」10巻,1307頁(1977年)記載の各種オニウム化合物;特開昭59−142205号記載のアゾ化合物;特開平1−54440号、ヨーロッパ特許109,851号、同126,712号ならびに「ジャーナル・オブ・イメージング・サイエンス(J.Imag.Sci.)」30巻,174頁(1986年)記載の金属アレン錯体;特願平4−56831号及び同4−89535号記載の(オキソ)スルホニウム有機硼素錯体;「コーディネーション・ケミストリー・レビュー(Coordination Chemistry Review)」84巻,85〜277頁(1988年)ならびに特開平2−182701号記載のルテニウム等の遷移金属を含有する遷移金属錯体;特開平3−209477号記載の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;四臭化炭素、特開昭59−107344号記載の有機ハロゲン化合物、等。
【0040】
本発明に係る光重合開始剤の含有量(光重合開始剤の総量)は重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物に対して、0.1質量%〜20質量%が好ましく0.5質量%〜15質量%が特に好ましい。
【0041】
(酸化防止剤)
本発明の感光層と保護層に含まれる酸化防止剤としては、感光層成分の経時に伴う酸化を抑制するものであれば特に制限は無く、シーエムシー社出版の「高分子添加剤の開発技術」(1992年5月29日初版)15頁から83頁、化学工業社出版の「自動酸化とその理論」(昭和61年9月20日初版)165頁より記載されている酸化防止剤、メルカプト基含有化合物、チオエーテル基含有化合物のような含硫黄化合物;アミン類のような含窒素化合物;亜リン酸エステル類のような含リン化合物;フェノール類;ハイドロキノン類;アスコルビン酸類など、酸素と極めて反応性が高い化合物等が挙げられる。
【0042】
中でも、含硫黄化合物、含窒素化合物、含リン化合物が好ましく、具体的には、チオエーテル基含有化合物、アミン類、亜リン酸エステル類が好ましい。このような酸化防止剤を使用すれば、一層優れた保存安定性を提供することができる。特に好ましいのは、チオエーテル基含有化合物であり、なかでも酸基を有するものが好適である。
チオエーテル基含有化合物としては、例えば、アンチオックスL、アンチオックスM、アンチオックスS(それぞれ日本油脂社製)、ArbestabDTDTP(Robinson社製)、3,3’−チオジプロピオン酸、フェニルチオ酢酸等が挙げられる。
【0043】
亜リン酸エステル類とは、亜リン酸の水素が炭化水素基で置換された化合物のことである。このような亜リン酸エステル類としては、例えば、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸ジフェニルイソデシル、亜リン酸フェニルイソデシル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリ−n−プロピル、亜リン酸トリメチル、亜リン酸ジラウリル、亜リン酸ジステアリル、亜リン酸ジブチル等が挙げられる。
【0044】
また、アミン類としては、ヒンダードアミン系化合物が好ましく用いられる。このようなヒンダードアミン系化合物としては、例えば、サノールLS−770、サノールLS−765、サノールLS−622LD、キマソープ944(以上、三共株式会社製)、CYASORB UV−3346(以上、サンケミカル株式会社製)、ノックラック224、ノックラックCD、Uvasil299−299LM(以上、大内新興化学工業社製)、MARK LA−63、MARK RKLA−68(以上、旭電化工業社製)、TINUVIN144、TINUVIN123、TINUVIN312(以上、チバ・スペシャリティーケミカル社製)、その他、ヒンダードアミン構造を有するオリゴマータイプおよびポリマータイプの化合物等が挙げられる。
【0045】
酸化防止剤の添加量は、保護層全組成物の質量に対して0.001〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましく、0.1〜5質量%がさらに好ましい。
また感光層への添加は
これら酸化防止剤の保護層への添加方法は特に制限は無く、保護層を塗設する溶媒に溶解し添加する方法、保護層の溶媒に、固体分散・乳化などのように分散し添加する方法、などが挙げられる。
((B)重合可能なエチレン性二重結合含有化合物)
本発明の(A)重合可能な、エチレン性二重結合含有化合物は、画像露光された感光層中の光重合開始剤により重合し得るエチレン性二重結合を有する化合物である。
【0046】
本発明においては、重合可能な、エチレン性二重結合含有化合物として、特に下記(C1)〜(C3)の化合物の反応生成物が好ましく用いられる。
(C1)分子内に少なくとも1個のエチレン性二重結合と、1個のヒドロキシル基を含有する化合物
(C2)ジイソシアネート化合物
(C3)分子内に三級アミンの構造を有するジオール化合物、または分子内に二級アミン構造とヒドロキシル基を一個ずつ有する化合物
上記C1としては、例えば2−ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートが挙げられる。
【0047】
上記C2としては、1,3−ビス(1−イソシアナート−1−メチルエチル)ベンゼン(2モル)、1,3−ジイソシアナートベンゼン、1,3−ジイソシアナート−4−メチルベンゼン、1,3−ジ(イソシアナートメチル)ベンゼン、
上記C3としては、例えば、N−n−ブチルジエタノ−ルアミン、N−メチルジエタノ−ルアミン、1,4−ジ(2−ジヒドロキシエチル)、N−エチルジエタノ−ルアミンなどが挙げられる。
【0048】
(C1)〜(C3)の化合物の反応生成物としては、下記の化合物が挙げられる。
(M1−1)N−n−ブチルジエタノ−ルアミン(1モル)、1,3−ビス(1−イソシアナート−1−メチルエチル)ベンゼン(2モル)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2モル)の反応生成物
(M1−2)N−メチルジエタノ−ルアミン(1モル)、1,3−ジイソシアナートベンゼン(2モル)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2モル)の反応生成物
(M1−3)1,4−ジ(2−ジヒドロキシエチル)モルホリン(1モル)、1,3−ジイソシアナート−4−メチルベンゼン(2モル)、4−ヒドロキシブチルアクリレート(2モル)の反応生成物
(M1−4)N−n−ブチルジエタノ−ルアミン(1モル)、1,3−ジ(イソシアナートメチル)ベンゼン(2モル)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2モル)の反応生成物
(M1−5)N−エチルジエタノ−ルアミン(1モル)、1,3−ジ(イソシアナートメチル)ベンゼン(2モル)、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(2モル)の反応生成物
(B)重合可能な、エチレン性二重結合含有化合物としては、一般的なラジカル重合性のモノマー類、紫外線硬化樹脂に一般的に用いられる分子内に付加重合可能なエチレン性二重結合を複数有する多官能モノマー類や、多官能オリゴマー類をさらに併用して用いることができる。
【0049】
これらの化合物に限定は無いが、好ましいものとして、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、グリセロールアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルオキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルオキシヘキサノリドアクリレート、1,3−ジオキサンアルコールのε−カプロラクトン付加物のアクリレート、1,3−ジオキソランアクリレート等の単官能アクリル酸エステル類、或いはこれらのアクリレートをメタクリレート、イタコネート、クロトネート、マレエートに代えたメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸エステル、例えば、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングルコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ハイドロキノンジアクリレート、レゾルシンジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのジアクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートのジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物のジアクリレート、2−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−5−ヒドロキシメチル−5−エチル−1,3−ジオキサンジアクリレート、トリシクロデカンジメチロールアクリレート、トリシクロデカンジメチロールアクリレートのε−カプロラクトン付加物、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテルのジアクリレート等の2官能アクリル酸エステル類、或いはこれらのアクリレートをメタクリレート、イタコネート、クロトネート、マレエートに代えたメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸エステル、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートのε−カプロラクトン付加物、ピロガロールトリアクリレート、プロピオン酸・ジペンタエリスリトールトリアクリレート、プロピオン酸・ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ヒドロキシピバリルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリアクリレート等の多官能アクリル酸エステル酸、或いはこれらのアクリレートをメタクリレート、イタコネート、クロトネート、マレエートに代えたメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸エステル等を挙げることができる。
【0050】
また、プレポリマーも上記同様に使用することができる。プレポリマーとしては、後述する様な化合物等を挙げることができ、また、適当な分子量のオリゴマーにアクリル酸、又はメタクリル酸を導入し、光重合性を付与したプレポリマーも好適に使用できる。これらプレポリマーは、1種又は2種以上を併用してもよいし、上述のモノマー及び/又はオリゴマーと混合して用いてもよい。
【0051】
プレポリマーとしては、例えばアジピン酸、トリメリット酸、マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、ハイミック酸、マロン酸、こはく酸、グルタール酸、イタコン酸、ピロメリット酸、フマル酸、グルタール酸、ピメリン酸、セバシン酸、ドデカン酸、テトラヒドロフタル酸等の多塩基酸と、エチレングリコール、プロピレングルコール、ジエチレングリコール、プロピレンオキサイド、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール等の多価のアルコールの結合で得られるポリエステルに(メタ)アクリル酸を導入したポリエステルアクリレート類、例えば、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン・(メタ)アクリル酸、フェノールノボラック・エピクロルヒドリン・(メタ)アクリル酸のようにエポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を導入したエポキシアクリレート類、例えば、エチレングリコール・アジピン酸・トリレンジイソシアネート・2−ヒドロキシエチルアクリレート、ポリエチレングリコール・トリレンジイソシアネート・2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルフタリルメタクリレート・キシレンジイソシアネート、1,2−ポリブタジエングリコール・トリレンジイソシアネート・2−ヒドロキシエチルアクリレート、トリメチロールプロパン・プロピレングリコール・トリレンジイソシアネート・2−ヒドロキシエチルアクリレートのように、ウレタン樹脂に(メタ)アクリル酸を導入したウレタンアクリレート、例えば、ポリシロキサンアクリレート、ポリシロキサン・ジイソシアネート・2−ヒドロキシエチルアクリレート等のシリコーン樹脂アクリレート類、その他、油変性アルキッド樹脂に(メタ)アクリロイル基を導入したアルキッド変性アクリレート類、スピラン樹脂アクリレート類等のプレポリマーが挙げられる。
【0052】
本発明に係る感光層には、ホスファゼンモノマー、トリエチレングリコール、イソシアヌール酸EO(エチレンオキシド)変性ジアクリレート、イソシアヌール酸EO変性トリアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、トリメチロールプロパンアクリル酸安息香酸エステル、アルキレングリコールタイプアクリル酸変性、ウレタン変性アクリレート等の単量体及び該単量体から形成される構成単位を有する付加重合性のオリゴマー及びプレポリマーを含有することができる。
【0053】
更に、本発明に併用可能なエチレン性単量体として、少なくとも一つの(メタ)アクリロイル基を含有するリン酸エステル化合物が挙げられる。該化合物は、リン酸の水酸基の少なくとも一部がエステル化された化合物であり、しかも、(メタ)アクリロイル基を有する限り特に限定はされない。
【0054】
その他に、特開昭58−212994号公報、同61−6649号公報、同62−46688号公報、同62−48589号公報、同62−173295号公報、同62−187092号公報、同63−67189号公報、特開平1−244891号公報等に記載の化合物などを挙げることができ、更に「11290の化学商品」化学工業日報社、p.286〜p.294に記載の化合物、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」高分子刊行会、p.11〜65に記載の化合物なども本発明においては好適に用いることができる。これらの中で、分子内に2以上のアクリル基又はメタクリル基を有する化合物が本発明においては好ましく、更に分子量が10,000以下、より好ましくは5,000以下のものが好ましい。
【0055】
この他にも、特開平1−105238号公報、特開平2−127404号公報に記載の、アクリレート又はアルキルアクリレートを用いることが出来る。
【0056】
本発明に係る(B)重合可能な、エチレン性二重結合含有化合物の感光層中における含有量は、感光層に対して、0.5質量%〜15.0質量%が好ましく、特に1.0〜8.0質量%が好ましい。
【0057】
((C)分光増感剤)
本発明の平版印刷版材料は、分光増感剤(以下において、分光増感剤に含まれる化合物の一部を「増感色素」ともいう。)を含むことが好ましい。分光増感剤は、画像露光に対する重合開始剤の感度を高めるものであり、本発明においては、本発明の感光性平版印刷版に係る技術分野において、従来使用されている種々の分光増感剤を、光源の発光波長領域(紫外光、可視光、赤外光等の波長領域)等の条件に応じて用いることができる。例えば、光源としての高出力の半導体レーザーの発光波長領域と同じ波長領域の光を吸収する分光増感剤を用いることが好ましい。本発明においては、分光増感剤として吸収極大波長が300〜1200nmにある分光増感剤を用いることができる。
【0058】
なお、本発明に係る分光増感剤は、光吸収によって得たエネルギーを光(電磁波)として重合開始剤に移動し得る機能を有する化合物であっても、当該エネルギーを熱に変換し重合開始剤に移動し得る機能を有する化合物であっても良い。また、両方の機能を有していても良い。
【0059】
可視光から近赤外まで波長増感させる化合物としては、例えばシアニン、フタロシアニン、メロシアニン、ポルフィリン、スピロ化合物、フェロセン、フルオレン、フルギド、イミダゾール、ペリレン、フェナジン、フェノチアジン、ポリエン、アゾ化合物、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、ポリメチンアクリジン、クマリン、クマリン誘導体、ケトクマリン、キナクリドン、インジゴ、スチリル、ピリリウム化合物、ピロメテン化合物、ピラゾロトリアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、バルビツール酸誘導体、チオバルビツール酸誘導体等、ケトアルコールボレート錯体、キサンテン染料、スチルベン誘導体、トリアリールオキサゾール誘導体が挙げられ、更に欧州特許568,993号、米国特許4,508,811号、特開2001−125255号、特開平11−271969号、特開昭63−260909号等に記載の化合物も用いられる。
【0060】
本発明では、記録光源として、レーザーを使うことができる。好ましいレーザー光源については後述するが、光源のレーザー光として、390nmから430nmの範囲に発光波長を有する半導体レーザー、いわゆるバイオレットレーザーを用いた記録を行う場合は、390nmから430nmの間に吸収極大有する分光増感剤を含有せしめることが望ましい。390nmから430nmの間に吸収極大有する分光増感剤としては、構造上特に制約は無いが、上記で述べた各分光増感剤群において、吸収極大がその要件を充たす限り、いずれも使用可能である。具体的には、特開2002−296764、特開2002−268239、特開2002−268238、特開2002−268204、特開2002−221790、特開2002−202598、特開2001−042524、特開2000−309724、特開2000−258910、特開2000−206690、特開2000−147763、特開2000−098605、特開2003−221517 、WO2005/029187A1、WO2004/049068A1、WO2004/074929A2、WO2004/074930A2等に記載のある分光増感剤を用いることが出来るが、これに限定されない。また、光源のレーザー光として、470nmから550nmの範囲に発光波長を有するレーザーを用いた記録を行う場合は、470nmから550nmの間に吸収極大有する分光増感剤を含有せしめることが望ましい。470nmから550nmの間に吸収極大有する分光増感剤としては、構造上特に制約は無いが、上記で述べた各分光増感剤群において、吸収極大がその要件を充たす限り、いずれも使用可能である。具体的には、特開2001−125255号、特開平11−271969号、特開昭63−260909号等に記載のある分光増感剤を用いることが出来るが、これに限定されない。
【0061】
また、390nmから430nmの間に吸収極大有する分光増感剤として好ましい化合物として、クマリン誘導体を挙げることができる。好ましいクマリンの構造は、上記一般式(CS)で表される。
【0062】
式中、R1〜R6は、水素原子又は置換基を表す。置換基としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、ヘテロアリール基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キナゾリル基、フタラジル基等)、ヘテロ環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基(フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、等が挙げられる。これらの置換基は、上記の置換基によってさらに置換されていてもよい。また、これらの置換基は複数が互いに結合して環を形成していてもよい。
【0063】
この中で、特に好ましいのは、R5にアミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルアリールアミノ基を有するクマリンである。この場合、アミノ基に置換したアルキル基が、R4、R6の置換基と環を形成しているものも好ましく用いることができる。
【0064】
さらに、R1,R2のいずれか、あるいは両方が、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、ヘテロアリール基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キナゾリル基、フタラジル基等)、ヘテロ環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基(フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン化アルキル基(トリフルオロメチル基、トリブロモメチル基、トリクロロメチル基等)であると更に好ましい。
【0065】
好ましいクマリン系分光増感剤の具体例として、下記の化合物が挙げられるが、これに限定するものではない。
【0066】
【化2】

【0067】
【化3】

【0068】
【化4】

【0069】
上記具体例の他に、特開平8−129258号公報のB−1からB−22のクマリン誘導体、特開2003−21901号公報のD−1からD−32のクマリン誘導体、特開2002−363206号公報の1から21のクマリン誘導体、特開2002−363207号公報の1から40のクマリン誘導体、特開2002−363208号公報の1から34のクマリン誘導体、特開2002−363209号公報の1から56のクマリン誘導体等も好ましく使用可能である。
【0070】
本発明の分光増感剤として使用する分光増感剤の、感光層中への添加量は、記録光源波長における、版面の反射濃度が、0.1から1.2の範囲となる量であることが好ましい。この範囲となる、該分光増感剤の感光層中における質量比率は、各分光増感剤の分子吸光係数と、感光層中における結晶性の程度により、大幅に異なるが、一般的には、0.5質量パーセントから、10質量パーセントの範囲であることが多い。
【0071】
((D)高分子結合材)
本発明に係る高分子結合材は、感光層に含まれる成分を担持支持体上に担持し得るものであり、高分子結合材としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、その他の天然樹脂等が使用出来る。これらを2種以上併用してもかまわない。
【0072】
本発明に係る感光層は、高分子結合材として酸価が異なる2種類以上の高分子結合材を含有し、かつ該高分子結合材の少なくとも1種の酸価が50〜100mgKOH/gであり、少なくとも他の1種の酸価が90〜150mgKOH/gであることを特徴とする。
【0073】
ここでいう酸価は、JIS K0070−1992に記載の方法(中和滴定法)に従って測定して得られた測定値である。
【0074】
本発明に係る酸価は、分子内にCOOH、SO3H、PO32等の酸性置換基を有する重合性モノマーと、前記の酸性置換基を有しないモノマーの共重合において、酸性置換基を有するモノマーの共重合比率を調整することにより、酸価を調整することが出来る。酸性置換基を有するモノマーの共重合比率を高めることにより、酸価は高くでき、逆に該共重合比率を低めることにより、酸価は低く出来る。酸性置換基を有する重合性モノマーとして好ましいのはメタクリル酸、アクリル酸であり、特にメタクリル酸が好ましい。
【0075】
本発明に係る高分子結合体としては、アクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合体が好ましい。さらに、高分子結合材の共重合組成として、(a)カルボキシル基含有モノマー、(b)メタクリル酸アルキルエステル、またはアクリル酸アルキルエステルの共重合体であることが好ましい。
【0076】
カルボキシル基含有モノマーの具体例としては、α,β−不飽和カルボン酸類、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。その他、フタル酸と2−ヒドロキシメタクリレートのハーフエステル等のカルボン酸も好ましい。
【0077】
メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ウンデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ウンデシル、アクリル酸ドデシル等の無置換アルキルエステルの他、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル等の環状アルキルエステルや、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、グリシジルアクリレート等の置換アルキルエステルも挙げられる。
【0078】
さらに、高分子結合材は、共重合モノマーとして、下記(1)〜(14)に記載のモノマー等を用いる事が出来る。
【0079】
1)芳香族水酸基を有するモノマー、例えばo−(又はp−,m−)ヒドロキシスチレン、o−(又はp−,m−)ヒドロキシフェニルアクリレート等。
【0080】
2)脂肪族水酸基を有するモノマー、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、5−ヒドロキシペンチルアクリレート、5−ヒドロキシペンチルメタクリレート、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、ヒドロキシエチルビニルエーテル等。
【0081】
3)アミノスルホニル基を有するモノマー、例えばm−(又はp−)アミノスルホニルフェニルメタクリレート、m−(又はp−)アミノスルホニルフェニルアクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド等。
【0082】
4)スルホンアミド基を有するモノマー、例えばN−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド等。
【0083】
5)アクリルアミド又はメタクリルアミド類、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−(4−ニトロフェニル)アクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド等。
【0084】
6)弗化アルキル基を含有するモノマー、例えばトリフルオロエチルアクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、ヘキサフルオロプロピルメタクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート、N−ブチル−N−(2−アクリロキシエチル)ヘプタデカフルオロオクチルスルホンアミド等。
【0085】
7)ビニルエーテル類、例えば、エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等。
【0086】
8)ビニルエステル類、例えばビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等。
【0087】
9)スチレン類、例えばスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等。
【0088】
10)ビニルケトン類、例えばメチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等。
【0089】
11)オレフィン類、例えばエチレン、プロピレン、i−ブチレン、ブタジエン、イソプレン等。
【0090】
12)N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、4−ビニルピリジン等。
【0091】
13)シアノ基を有するモノマー、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、2−ペンテンニトリル、2−メチル−3−ブテンニトリル、2−シアノエチルアクリレート、o−(又はm−,p−)シアノスチレン等。
【0092】
14)アミノ基を有するモノマー、例えばN,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリブタジエンウレタンアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−i−プロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド等。
【0093】
さらにこれらのモノマーと共重合し得る他のモノマーを共重合してもよい。
【0094】
さらに、高分子結合材は、側鎖にカルボキシル基および重合性二重結合を有するビニル系重合体であることが好ましい。例えば、上記ビニル系共重合体の分子内に存在するカルボキシル基に、分子内に(メタ)アクリロイル基とエポキシ基を有する化合物を付加反応させる事によって得られる、不飽和結合含有ビニル系共重合体も高分子結合材として好ましい。
【0095】
分子内に不飽和結合とエポキシ基を共に含有する化合物としては、具体的にはグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、特開平11−271969号に記載のあるエポキシ基含有不飽和化合物等が挙げられる。また、上記ビニル系重合体の分子内に存在する水酸基に、分子内に(メタ)アクリロイル基とイソシアネート基を有する化合物を付加反応させる事によって得られる、不飽和結合含有ビニル系共重合体も高分子結合材として好ましい。分子内に不飽和結合とイソシアネート基を共に有する化合物としては、ビニルイソシアネート、(メタ)アクリルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、m−またはp−イソプロペニル−α,α′−ジメチルベンジルイソシアネートが好ましく、(メタ)アクリルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等が挙げられる。
【0096】
側鎖にカルボキシル基および重合性二重結合を有するビニル系重合体は、全高分子結合剤において、50〜100質量%であることが好ましく、100質量%であることがより好ましい。
【0097】
感光層中における高分子結合材の含有量は、10〜90質量%の範囲が好ましく、15〜70質量%の範囲が更に好ましく、20〜50質量%の範囲で使用することが感度の面から特に好ましい。
【0098】
(各種添加剤)
本発明に係る感光層には、上記した成分の他に、感光性平版印刷版材料の製造中あるいは保存中において重合可能なエチレン性二重結合単量体の不要な重合を阻止するために、重合防止剤を添加することが望ましい。
【0099】
適当な重合防止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン第一セリウム塩、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0100】
重合防止剤の添加量は、感光層の全固形分の質量に対して、約0.01%〜約5%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加したり、塗布後の乾燥の過程で感光性層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、全組成物の約0.5%〜約10%が好ましい。
【0101】
また、着色剤も使用することができ、着色剤としては、市販のものを含め従来公知のものが好適に使用できる。例えば、改訂新版「顔料便覧」,日本顔料技術協会編(誠文堂新光社)、カラーインデックス便覧等に述べられているものが挙げられる。
【0102】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、赤色顔料、褐色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料等が挙げられる。具体的には、無機顔料(二酸化チタン、カーボンブラック、グラファイト、酸化亜鉛、プルシアンブルー、硫化カドミウム、酸化鉄、ならびに鉛、亜鉛、バリウム及びカルシウムのクロム酸塩等)及び有機顔料(アゾ系、チオインジゴ系、アントラキノン系、アントアンスロン系、トリフェンジオキサジン系の顔料、バット染料顔料、フタロシアニン顔料及びその誘導体、キナクリドン顔料等)が挙げられる。
【0103】
これらの中でも、使用する露光レーザーに対応した分光増感色素の吸収波長域に実質的に吸収を持たない顔料を選択して使用することが好ましく、この場合、使用するレーザー波長での積分球を用いた顔料の反射吸収が0.05以下であることが好ましい。又、顔料の添加量としては、上記組成物の固形分に対し0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.2〜5質量%である。
【0104】
上記の感光波長領域での顔料吸収及び現像後の可視画性の観点から、紫色顔料、青色顔料を用いるのが好ましい。このようなものとしては、例えばコバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、フォナトーンブルー6G、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルーフアーストスカイブルー、インダンスレンブルー、インジコ、ジオキサンバイオレット、イソビオランスロンバイオレット、インダンスロンブルー、インダンスロンBC等を挙げることができる。これらの中で、より好ましくはフタロシアニンブルー、ジオキサンバイオレットである。
【0105】
また、感光層は、本発明の性能を損わない範囲で、界面活性剤を塗布性改良剤として含有することが出来る。その中でも好ましいのはフッ素系界面活性剤である。
【0106】
また、硬化皮膜の物性を改良するために、無機充填剤やジオクチルフタレート、ジメチルフタレート、トリクレジルホスフェート等の可塑剤等の添加剤を加えてもよい。これらの添加量は全固形分の10%以下が好ましい。
【0107】
また、本発明に係る感光層の感光層塗布液を調製する際に使用する溶剤としては、例えば、アルコール:多価アルコールの誘導体類では、sec−ブタノール、イソブタノール、n−ヘキサノール、ベンジルアルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、又エーテル類:プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、又ケトン類、アルデヒド類:ジアセトンアルコール、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、又エステル類:乳酸エチル、乳酸ブチル、シュウ酸ジエチル、安息香酸メチル等が好ましく挙げられる。
【0108】
以上感光層塗布液について説明したが、本発明に係わる感光層は、これを用いて支持体上に塗設することにより構成される。
【0109】
本発明に係る感光層は支持体上の付き量としては、0.1g/m2〜10g/m2が好ましく特に0.5g/m2〜5g/m2が好ましい。
【0110】
(保護層(酸素遮断層))
本発明に係る感光層の上側には、必要に応じ保護層を設けることが出来る。
【0111】
この保護層(酸素遮断層)は、後述の現像液(一般にはアルカリ水溶液)への溶解性が高いことが好ましく、具体的には、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンを挙げることができる。ポリビニルアルコールは酸素の透過を抑制する効果を有し、また、ポリビニルピロリドンは隣接する感光層との接着性を確保する効果を有する。
【0112】
上記2種のポリマーの他に、必要に応じ、ポリサッカライド、ポリエチレングリコール、ゼラチン、膠、カゼイン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチル澱粉、アラビアゴム、サクローズオクタアセテート、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアミン、ポリエチレンオキシド、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、水溶性ポリアミド等の水溶性ポリマーを併用することもできる。
【0113】
本発明の感光性平版印刷版に保護層を設ける場合、感光層と保護層間の剥離力が35mN/mm以上であることが好ましく、より好ましくは50mN/mm以上、更に好ましくは75mN/mm以上である。好ましい保護層の組成としては特願平8−161645号に記載されるものが挙げられる。
【0114】
本発明における剥離力は、保護層上に十分大きい粘着力を有する所定幅の粘着テープを貼り、それを感光性平版印刷版材料の平面に対して90度の角度で保護層と共に剥離する時の力を測定することにより求めることができる。
【0115】
保護層には、更に必要に応じて界面活性剤、マット剤等を含有することができる。上記保護層組成物を適当な溶剤に溶解し感光層上に塗布・乾燥して保護層を形成する。塗布溶剤の主成分は水、あるいはメタノール、エタノール、i−プロパノール等のアルコール類であることが特に好ましい。
【0116】
保護層を設ける場合その厚みは0.1〜5.0μmが好ましく、特に好ましくは0.5〜3.0μmである。
【0117】
(支持体)
本発明に係る支持体は感光層を担持可能な板状体またはフィルム体であり、感光層が設けられる側に親水性表面を有するのが好ましい。
【0118】
本発明に係る支持体として、例えばアルミニウム、ステンレス、クロム、ニッケル等の金属板、また、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のプラスチックフィルムに前述の金属薄膜をラミネートまたは蒸着したもの等が挙げられる。
【0119】
また、ポリエステルフィルム、塩化ビニルフィルム、ナイロンフィルム等の表面に親水化処理を施したもの等が使用できるが、アルミニウム支持体が好ましく使用される。
【0120】
アルミニウム支持体の場合、純アルミニウムまたはアルミニウム合金が用いられる。
【0121】
支持体のアルミニウム合金としては、種々のものが使用でき、例えば、珪素、銅、マンガン、マグネシウム、クロム、亜鉛、鉛、ビスマス、ニッケル、チタン、ナトリウム、鉄等の金属とアルミニウムの合金が用いられる。又アルミニウム支持体は、保水性付与のため、表面を粗面化したものが用いられる。
【0122】
アルミニウム支持体を用いる場合、粗面化(砂目立て処理)するに先立って表面の圧延油を除去するために脱脂処理を施すことが好ましい。脱脂処理としては、トリクレン、シンナー等の溶剤を用いる脱脂処理、ケシロン、トリエタノール等のエマルジョンを用いたエマルジョン脱脂処理等が用いられる。又、脱脂処理には、苛性ソーダ等のアルカリの水溶液を用いることもできる。脱脂処理に苛性ソーダ等のアルカリ水溶液を用いた場合、上記脱脂処理のみでは除去できない汚れや酸化皮膜も除去することができる。脱脂処理に苛性ソーダ等のアルカリ水溶液を用いた場合、支持体の表面にはスマットが生成するので、この場合には、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸、或いはそれらの混酸に浸漬しデスマット処理を施すことが好ましい。粗面化の方法としては、例えば、機械的方法、電解によりエッチングする方法が挙げられる。
【0123】
用いられる機械的粗面化法は特に限定されるものではないが、ブラシ研磨法、ホーニング研磨法が好ましい。
【0124】
電気化学的粗面化法も特に限定されるものではないが、酸性電解液中で電気化学的に粗面化を行う方法が好ましい。
【0125】
上記の電気化学的粗面化法で粗面化した後、表面のアルミニウム屑等を取り除くため、酸又はアルカリの水溶液に浸漬することが好ましい。酸としては、例えば、硫酸、過硫酸、弗酸、燐酸、硝酸、塩酸等が用いられ、塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が用いられる。これらの中でもアルカリの水溶液を用いるのが好ましい。
【0126】
表面のアルミニウムの溶解量としては、0.5〜5g/m2が好ましい。又、アルカリの水溶液で浸漬処理を行った後、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸或いはそれらの混酸に浸漬し中和処理を施すことが好ましい。
【0127】
機械的粗面化処理法、電気化学的粗面化法はそれぞれ単独で用いて粗面化してもよいし、又、機械的粗面化処理法に次いで電気化学的粗面化法を行って粗面化してもよい。
【0128】
粗面化処理の次には、陽極酸化処理を行うことができる。本発明において用いることができる陽極酸化処理の方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。陽極酸化処理を行うことにより、支持体上には酸化皮膜が形成される。
【0129】
陽極酸化処理された支持体は、必要に応じ封孔処理を施してもよい。これら封孔処理は、熱水処理、沸騰水処理、水蒸気処理、珪酸ソーダ処理、重クロム酸塩水溶液処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム処理等公知の方法を用いて行うことができる。
【0130】
更に、これらの処理を行った後に、水溶性の樹脂、例えばポリビニルホスホン酸、スルホン酸基を側鎖に有する重合体および共重合体、ポリアクリル酸、水溶性金属塩(例えばホウ酸亜鉛)もしくは、黄色染料、アミン塩等を下塗りしたものも好適である。更に、特開平5−304358号公報に開示されているようなラジカルによって付加反応を起し得る官能基を共有結合させたゾル−ゲル処理基板も好適に用いられる。
【0131】
(塗布)
上記の感光層塗布液を従来公知の方法で支持体上に塗布し、乾燥し、感光性平版印刷版材料を作製することが出来る。
【0132】
塗布液の塗布方法としては、例えばエアドクタコータ法、ブレードコータ法、ワイヤバー法、ナイフコータ法、ディップコータ法、リバースロールコータ法、グラビヤコータ法、キャストコーティング法、カーテンコータ法及び押し出しコータ法等を挙げることが出来る。
【0133】
感光層の乾燥温度は60〜160℃の範囲が好ましく、より好ましくは80〜140℃、特に好ましくは、90〜120℃の範囲で乾燥することが好ましい。
【0134】
(画像露光)
本発明の感光性平版印刷版材料に画像記録する光源としては、当該材料の感光波長領域に合わせて、種々の光源を使用することができるが、レーザー光光源の使用が好ましい。
【0135】
当該印刷版は、印刷版材料を感光層を有する面から画像データに応じてレーザ光を照射して画像を形成することにより得られる。
【0136】
レーザー露光の場合には、光をビーム状に絞り画像データに応じた走査露光が可能なので、マスク材料を使用せず、直接書込みを行うのに適している。又、レーザーを光源として用いる場合には、露光面積を微小サイズに絞ることが容易であり、高解像度の画像形成が可能となる。
【0137】
本発明の感光性平版印刷版を露光するレーザー光源としては紫外及び可視短波長領域に発光波長を有するレーザー光源を用いることができる。具体的には、例えば、He−Cdレーザー(441nm)、固体レーザーとしてCr:LiSAFとSHG結晶の組合わせ(430nm)、半導体レーザー系として、KNbO3、リング共振器(430nm)、AlGaInN(350nm〜450nm)、AlGaInN半導体レーザー(市販InGaN系半導体レーザー400〜410nm)等を挙げることができる。
【0138】
また、本発明の感光性平版印刷版を露光するレーザー光源としては、赤外及び/または近赤外領域、即ち、700〜1500nmの波長範囲に発光波長を有するレーザー光源を用いることもきる。具体的には、YAGレーザー、半導体レーザー等を好適に用いることが可能である。
【0139】
レーザーの走査方法としては、円筒外面走査、円筒内面走査、平面走査などがある。円筒外面走査では、記録材料を外面に巻き付けたドラムを回転させながらレーザー露光を行い、ドラムの回転を主走査としレーザー光の移動を副走査とする。円筒内面走査では、ドラムの内面に記録材料を固定し、レーザービームを内側から照射し、光学系の一部又は全部を回転させることにより円周方向に主走査を行い、光学系の一部又は全部をドラムの軸に平行に直線移動させることにより軸方向に副走査を行う。平面走査では、ポリゴンミラーやガルバノミラーとfθレンズ等を組み合わせてレーザー光の主走査を行い、記録媒体の移動により副走査を行う。円筒外面走査及び円筒内面走査の方が光学系の精度を高め易く、高密度記録には適している。
【0140】
尚、本発明においては、10mJ/cm2以上の版面エネルギー(版材上でのエネルギー)で画像露光されることが好ましく、その上限は500mJ/cm2である。より好ましくは10〜300mJ/cm2である。このエネルギー測定には例えばOphirOptronics社製のレーザーパワーメーターPDGDO−3Wを用いることができる。
【0141】
(現像液)
画像露光した感光層は露光部が硬化する。これをアルカリ性現像液で現像処理することにより、未露光部を除去して画像形成することが好ましい。
【0142】
この様な現像液としては、従来より知られているアルカリ水溶液が使用できる。例えばケイ酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム;第二燐酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム;重炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム;炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム;炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム;ホウ酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム;水酸化ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム及び同リチウム等の無機アルカリ剤を使用するアルカリ現像液が挙げられる。
【0143】
また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノ−i−プロピルアミン、ジ−i−プロピルアミン、トリ−i−プロピルアミン、ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノ−i−プロパノールアミン、ジ−i−プロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン等の有機アルカリ剤も用いることができる。
【0144】
これらのアルカリ剤は、単独又は2種以上組合せて用いられる。また、この現像液には、必要に応じてアニオン性界面活性剤、両性活性剤やアルコール等の有機溶媒を加えることができる。
【0145】
アルカリ性現像液は、顆粒状、錠剤等の現像液濃縮物から調製することもできる。
【0146】
現像液濃縮物は、一旦、現像液にしてから蒸発乾固してもよいが、好ましくは複数の素材を混ぜ合わせる際に水を加えず、又は少量の水を加える方法で素材を混ぜ合わせることで濃縮状態とする方法が好ましい。又、この現像液濃縮物は、特開昭51−61837号、特開平2−109042号、同2−109043号、同3−39735号、同5−142786号、同6−266062号、同7−13341号等に記載される従来よく知られた方法にて、顆粒状、錠剤とすることができる。又、現像液の濃縮物は、素材種や素材配合比等の異なる複数のパートに分けてもよい。
【0147】
アルカリ性現像液及びその補充液には、更に必要に応じて防腐剤、着色剤、増粘剤、消泡剤及び硬水軟化剤などを含有させることもできる。
【0148】
(自動現像機)
感光性平版印刷版材料の現像には自動現像機を用いるのが有利である。自動現像機として好ましくは現像浴に自動的に現像補充液を必要量補充する機構が付与されており、好ましくは一定量を超える現像液は、排出する機構が付与されており、好ましくは現像浴に自動的に水を必要量補充する機構が付与されており、好ましくは、通版を検知する機構が付与されており、好ましくは通版の検知を基に版の処理面積を推定する機構が付与されており、好ましくは通版の検知及び/又は処理面積の推定を基に補充しようとする補充液及び/又は水の補充量及び/又は補充タイミングを制御する機構が付与されており、好ましくは現像液の温度を制御する機構が付与されており、好ましくは現像液のpH及び/又は電導度を検知する機構が付与されており、好ましくは現像液のpH及び/又は電導度を基に補充しようとする補充液及び/又は水の補充量及び/又は補充タイミングを制御する機構が付与されている。又、現像液濃縮物を一旦、水で希釈・撹拌する機能を有することが好ましい。現像工程後に水洗工程がある場合、使用後の水洗水を現像濃縮物の濃縮液の希釈水として用いることができる。
【0149】
自動現像機は、現像工程の前に前処理液に版を浸漬させる前処理部を有してもよい。この前処理部は、好ましくは版面に前処理液をスプレーする機構が付与されており、好ましくは前処理液の温度を25〜55℃の任意の温度に制御する機構が付与されており、好ましくは版面をローラー状のブラシにより擦る機構が付与されている。この前処理液としては、水などが用いられる。
【0150】
(後処理)
アルカリ性現像液で現像処理された平版印刷版材料は、水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体等を主成分とするフィニッシャーや保護ガム液で後処理を施される。これらの処理を種々組み合わせて用いることができ、例えば現像→水洗→界面活性剤を含有するリンス液処理や現像→水洗→フィニッシャー液による処理が、リンス液やフィニッシャー液の疲労が少なく好ましい。更にリンス液やフィニッシャー液を用いた向流多段処理も好ましい態様である。
【0151】
これらの後処理は、一般に現像部と後処理部とから成る自動現像機を用いて行われる。後処理液は、スプレーノズルから吹き付ける方法、処理液が満たされた処理槽中を浸漬搬送する方法が用いられる。又、現像後一定量の少量の水洗水を版面に供給して水洗し、その廃液を現像液原液の希釈水として再利用する方法も知られている。このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間等に応じてそれぞれの補充液を補充しながら処理することができる。又、実質的に未使用の後処理液で処理する、いわゆる使い捨て処理方式も適用できる。このような処理によって得られた平版印刷版は、オフセット印刷機に掛けられ、多数枚の印刷に用いられる。
【実施例】
【0152】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。尚、実施例における「部」は、特に断りない限り「質量部」を表す。
【0153】
(高分子結合材樹脂合成1)
窒素気流下の三ツ口フラスコに、メタクリル酸メチル70.0部、メタクリル酸30.0部、エタノール100部及びα,α’−アゾビスイソブチロニトリル1.23部を入れ、窒素気流中80℃のオイルバスで6時間反応させて高分子重合体P−1を得た。GPCを用いて測定した質量平均分子量は約30,000、酸価190mgKOH/g、Tg142℃であった。
【0154】
(高分子結合材樹脂合成2〜6)
以下、上記と同じ様にして、組成を変化させ高分子重合体P−2〜P−6を合成し、
酸価を測定した。結果を表1に示す。
【0155】
【表1】

【0156】
(支持体の作製)
厚さ0.3mmのアルミニウム板(材質1050,調質H16)を65℃に保たれた5%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、1分間の脱脂処理を行った後、水洗した。この脱脂アルミニウム板を、25℃に保たれた10%塩酸水溶液中に1分間浸漬して中和した後、水洗した。
【0157】
次いで、このアルミニウム板を、0.3質量%の硝酸水溶液中で、25℃、電流密度100A/dm2の条件下に交流電流により60秒間、電解粗面化を行った後、60℃に保たれた5%水酸化ナトリウム水溶液中で10秒間のデスマット処理を行った。
【0158】
デスマット処理を行った粗面化アルミニウム板を、15%硫酸溶液中で、25℃、電流密度10A/dm2、電圧15Vの条件下に1分間陽極酸化処理を行い、更に1%ポリビニルホスホン酸で75℃で親水化処理を行って支持体を作製した。
【0159】
この時、表面の中心線平均粗さ(Ra)は0.65μmであった。
【0160】
(平版印刷版試料の作製)
上記支持体上に、下記組成の感光層塗工液1を乾燥時1.5g/m2になるようワイヤーバーで塗布し、95℃で1.5分間乾燥し、続いて酸素遮断層塗工液1を乾燥時1.5g/m2になるようワイヤーバーで塗布し、75℃で1.5分間乾燥し平版印刷版材料を得た。なお、同様にして表2に示した各種試料を作製した。
【0161】
(感光層塗工液1)
N−n−ブチルジエタノールアミン(1モル)、1,3−ビス(1−イソシアナート−1−メチルエチル)ベンゼン(2モル)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2モル)の反応生成物 42.0部
トリエチレングリコールジメタクリレート 6.0部
表1に記載のバインダーポリマー
表1に記載の増感色素(分光増感剤) 3.0部
表1に記載の重合開始剤 3.0部
2−メルカプトベンゾチアゾール 0.3部
1,3−ビス(トリブロモアセチルアミノ)2,2−ジメチルプロパン 1.0部
2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシスチリル)−1,3,5−トリアジン 1.0部
N−フェニルグリシンベンジルエステル 4.0部
フタロシアニン顔料(MHI#454:御国色素社製) 3.5部
2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート(スミライザーGS:住友3M社製) 0.2部
2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール 1.0部
ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート 0.1部
弗素系界面活性剤(F−178K;大日本インキ社製) 0.5部
シロキサン系界面活性剤(BYK337;ビックケミー社製) 0.9部
メチルエチルケトン 80部
プロピレングリコールメチルエーテル 820部
(酸素遮断層塗工液1)
ポリビニルアルコール(セルボール103:Celaneas社製) 70.0部
ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体(ルビテックVA64W:BASF製)
30.0部
サーフィノール465(エアープロダクツ社製) 0.2部
水 900部
(平版印刷版材料の評価)
《感度》
平版印刷版材料に、405nm、60mWの光源を備えたプレートセッター(NewsCTP:ECRM社製)を用いて、2400dpi(dpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す)で露光を行った。
【0162】
露光パターンは、100%画像部、および、Times New Rohmanフォント、3ポイントから10ポイントサイズ、アルファベット大文字と小文字の抜き文字の、原稿画像データを使用した。
【0163】
次いで、105℃に設定されたプレヒート部、酸素遮断層を除去するためのプレ水洗部、下記組成の現像液を充填し、30℃に温度調節された現像部、版面に付着した現像液を取り除く水洗部、画線部保護のためのガム液(GW−3:三菱化学社製を2倍希釈したもの)処理部を備えたCTP自動現像機(RaptorPolymer:Glunz&Jensen社製)で現像処理を行い、平版印刷版を得た。
【0164】
(現像液組成(下記添加剤を含有する水溶液))
Aケイ酸カリ 8.0部
ニューコールB−13SN:日本乳化剤(株)製 3.0部
水 89.0部
苛性カリ pH=12.3となる添加量
平版印刷版の版面に記録された100%画像部において、膜減りが観察されない最低量の露光エネルギー量を記録エネルギーとし、感度の指標とした。記録エネルギーが小さい程高感度であることを表す。
【0165】
《インキ汚れ防止性》
下記印刷条件にて印刷物を作製し、100枚目の印刷物の非画像部(100cm2内)のインキ汚れを目視にて評価した。
【0166】
○:非画像部にインキ汚れは認められない
×:非画像部にインキ汚れが認められ、印刷物として不適
《プレヒートラチチュード》
上記の様にして作製した感光性平版印刷版を露光後の熱処理温度を変化させ、同一現像処理を行った後、印刷し非画像部に汚れ若しくはシャドー部の絡みの生じない温度上限を確認した。印刷条件は上記の条件と同様に行った。
【0167】
この評価では、上記現像処理機の加熱装置部分の電源は切り、加熱処理は露光後、セーフライト環境下に置いた別の加熱装置を用いて、所望の版面温度となるように設定し、30秒間熱処理を行った。
【0168】
《耐刷性》
下記印刷条件下で、50μj/cm2で露光した175線の評価チャートを印刷し、印刷開始から、再現網点が3%変動するまでの印刷枚数を耐刷性と評価した。
【0169】
(印刷条件)
印刷機:DAIYA1F−1:三菱重工業社製
紙:コート紙(再生パルプ含有率20%北越製紙社製)
ブランケット:SR100(SRIハイブリッド社製)
印刷インキ:大豆油インキ ナチュラリス100(Y,M,C,K):大日本インキ化学工業社製
湿し水:H液SG−51濃度1.5%:東京インク社製
印刷スピード:4000枚/時
以上の評価の結果をまとめて表2に示す
【0170】
【表2】

【0171】
DR−1: 1,4−ビス(4−メトキシスチリル)ベンゼン
I−1:η6−クメン−(η5−シクロペンタジエニル)鉄ヘキサフルオロホスフェートI−2:2,2′−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニルビイミダゾール
表2から明らかなように、本発明に係る平版印刷版材料は、高感度、高耐刷性であり、かつ印刷(インキ)汚れ防止性、プレヒートラチチュード等の性能に優れていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に(A)光重合開始剤、(B)重合可能なエチレン性二重結合含有化合物、(C)分光増感剤、および(D)高分子結合材を含有する感光層を有する感光性平版印刷版材料において、該感光層が、該高分子結合材として酸価が異なる2種類以上の高分子結合材を含有し、かつ該高分子結合材のうち、少なくとも1種の酸価が50〜100mgKOH/gであり、少なくとも他の1種の酸価が90〜150mgKOH/gであることを特徴とする感光性平版印刷版材料。
【請求項2】
前記感光層が、前記分光増感剤として一般式(CS)で表される化合物を含有し、かつ前記光重合開始剤として鉄アレーン錯体を含有することを特徴とする請求項1に記載の感光性平版印刷版材料。
【化1】

〔式中、R1〜R6は、それぞれ、水素原子又は置換基を表す。〕
【請求項3】
支持体上に(A)光重合開始剤、(B)重合可能なエチレン性二重結合含有化合物、(C)分光増感剤、および(D)高分子結合材を含有する感光層を有する感光性平版印刷版材料の製造方法であって、請求項1又は2に記載の感光性平版印刷版材料を製造することを特徴とする感光性平版印刷版材料の製造方法。

【公開番号】特開2007−293168(P2007−293168A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−123271(P2006−123271)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】