説明

感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法

【課題】 直接描画露光法によるレジストパターンの形成を、十分な感度及び解像度で行うことが可能な感光性樹脂組成物、並びにこれを用いた感光性エレメント、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造法を提供する。
【解決手段】 本発明は、(A)バインダポリマーと、(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合化合物と、(C1)下記一般式(1)で表される化合物とを有する感光性樹脂組成物。
【化1】



[式(1)中のRは、少なくとも一つがイソプロピル基を示し、a、b及びcの総和は1〜6である。a、b及びcの総和が2〜6のとき、同一分子中の複数のRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板、プラズマディスプレイ用配線板、液晶ディスプレイ用配線板、大規模集積回路、薄型トランジスタ、半導体パッケージ等の微細電子回路は、一般に、いわゆるフォトリソグラフィによってレジストパターンを形成する工程を経て製造されている。フォトリソグラフィでは、例えば、基板上に設けられた感光層に、所定のパターンを有するマスクフィルムを介して紫外線等の光を照射して露光した後、露光部と非露光部とで溶解度の異なる現像液で現像してレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクとして基板をめっき加工、エッチング加工等することにより、基板上に導体パターンを形成する。
【0003】
特に、プリント配線板、半導体パッケージなどの表面実装技術分野においては、電子回路の配線の更なる高密度化のための技術開発が活発に行われているところであり、配線を構成する導体パターンを10μm以下のスケールで形成することが求められている。このため、フォトリソグラフィに用いられる感光性樹脂組成物には、10μm以下のスケールでの解像度が必要とされている。
【0004】
また、感光性樹脂組成物には、更なる高感度化が求められている。配線の高密度化に伴って、電源線の抵抗による電圧降下の問題が顕在化する傾向にあるが、この問題に対しては、レジストパターンの膜厚を厚くすることによって、配線を構成する導体層を10μm程度以上まで厚くすることが有効である。膜厚の厚いレジストパターンを高い生産性で形成するためには、感光性樹脂の更なる高感度化が必要とされる。
【0005】
一方、レジストパターン形成の方法として、マスクパターンを用いることなくレジストパターンを直接描画する、いわゆる直接描画露光法が注目されている。この直接描画露光法によれば、高い生産性且つ高い解像度でのレジストパターンの形成が可能と考えられている。そして、近年、波長405nmのレーザ光を発振し、長寿命で高出力な窒化ガリウム系青色レーザ光源が光源として実用的に利用可能になってきている。直接描画露光法においてこのような短波長のレーザ光を利用することで、従来は製造が困難であった高密度のレジストパターンの形成が可能になることが期待される。このような直接描画露光法としては、Texas Instruments社が提唱したDLP(Digital Light Processing)システムを応用した方法がBall Semiconductor社から提案されており、既に、この方法を適用した露光装置の実用化が始まっている。
【0006】
更に、上記のような青色レーザ等のレーザを活性光線として用いた直接描画露光法によるレジストパターン形成を意図した感光性樹脂組成物が、これまでにもいくつか提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−296764号公報
【特許文献2】特開2004−45596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の感光性樹脂組成物の場合、直接描画露光法によって高密度のレジストパターンを形成する際、感度及び解像度の点でまだ十分ではなかった。
【0009】
そこで、本発明は、直接描画露光法によるレジストパターンの形成を、十分な感度及び解像度で行うことが可能な感光性樹脂組成物、並びにこれを用いた感光性エレメント、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、(A)バインダポリマーと、(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合化合物と、(C1)下記一般式(1)で表される化合物とを含有する感光性樹脂組成物を提供する。
【化1】



ここで、式(1)中のRは、少なくとも1つがイソプロピル基を示し、a、b及びcの総和は1〜6である。a、b及びcの総和が2〜6のとき、同一分子中の複数のRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0011】
本発明の感光性樹脂組成物は、上述のような特定の成分を組み合わせて構成されることにより、直接描画露光法によるレジストパターンの形成を、十分な感度及び解像度で行うことが可能である。上記(C1)成分のような特定の置換基を有するピラゾリン誘導体を含む光重合開始剤を用いることによって、上述のような感度及び解像度向上の効果が得られたと本発明者らは考えている。
【0012】
また、本発明の感光性樹脂組成物は上記一般式(1)で表される化合物のa、b及びcの総合が1〜2であることが好ましい。
【0013】
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)成分が、アクリル酸及び/又はメタクリル酸に由来するモノマー単位と、アクリル酸のアルキルエステル及び/又はメタクリル酸のアルキルエステルに由来するモノマー単位とを構成単位として有するアクリル系重合体を含むことが好ましい。これにより、アルカリ現像性及び光照射後のレジストのはく離性が更に向上する。
【0014】
本発明の感光性樹脂組成物は(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、(B)成分の配合量が20〜80質量部であり、(C1)成分の配合量が0.001〜5.0質量部であることが好ましい。
【0015】
本発明の感光性樹脂組成物は、上記成分に加えて、(C2)2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体又はその誘導体を更に含有することが好ましい。この(C2)成分も(C1)成分と同様に光重合開始剤として機能するものであり、光重合開始剤として(C1)成分と(C2)成分とを併用することにより、感度及び解像度が更に相乗的に高められるとともに、基板に対する密着性も高められる。
【0016】
本発明の感光性樹脂組成物は、最大波長が350nm以上410nm未満の光に露光してレジストパターンを形成するために用いられることが好ましい。最大波長が350nm以上410nm未満の光を活性光線として用いた直接描画露光法等によれば、高密度のレジストパターンを容易に形成することが可能である。したがって、本発明の感光性樹脂組成物は、このような特定波長の光によるレジストパターンの形成に対して特に有用なものである。
【0017】
本発明は支持体と、該支持体上に設けられた上記感光性樹脂組成物からなる感光層とを備える感光性エレメントを提供する。この感光性エレメントは、本発明の感光性樹脂組成物による感光層を備えることにより、直接描画露光法によるレジストパターンの形成を十分な感度及び解像度で行うことが可能である。従って、本発明の感光性エレメントは高密度な配線パターンを有するプリント配線板の製造などに好適に用いることができる。
【0018】
本発明は、基板上に本発明の感光性樹脂組成物からなる感光層を形成する感光層形成工程と、感光層の所定部分を最大波長350nm以上410nm未満の光に露光する露光工程と、露光した感光層を現像してレジストパターンを形成する現像工程とを備えるレジストパターンの形成方法を提供する。また、本発明は、上記工程に加えて、形成されたレジストパターンに基づいて、当該基板上に導体パターンを形成する導体パターン形成工程を備えるプリント配線板の製造方法を提供する。
【0019】
上記レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法によれば、本発明の感光性樹脂組成物を用いることにより、基板上に高密度なレジストパターン又は導体パターンを高い生産性で形成することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、直接描画露光法によるレジストパターンの形成を、十分な感度及び解像度で行うことが可能な感光性樹脂組成物、並びにこれを用いた感光性エレメント、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による感光性エレメントの一実施形態を示す模式断面図である。
【図2】本発明の参考例1及び実施例1に係る感光層のUV吸収スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。また、本明細書における「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸」及びそれに対応する「メタクリル酸」を意味し、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリロキシ基」とは「アクリロキシ基」及びそれに対応する「メタクリロキシ基」を意味し、「(メタ)アクリロイル基」とは「アクリロイル基」及びそれに対応する「メタクリロイル基」を意味する。
【0023】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、(A)バインダポリマーと、(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物と、(C1)上記一般式(1)で表されるピラゾリン誘導体とを含有するものである。
【0024】
(A)成分のバインダポリマーとしては、樹脂組成物中の他の成分を均一に溶解又は分散可能な高分子であれば特に制限はない。(A)成分としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、アミド系樹脂、アミドエポキシ系樹脂、アルキド系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて(A)成分として用いられる。これらの中でも、アルカリ現像性に優れる点、光照射後のレジストの剥離性に優れる点から、アクリル系重合体が(A)成分に含まれると好ましく、そのアクリル系重合体がアクリル酸及び/又はメタクリル酸に由来するモノマー単位、並びにアクリル酸のアルキルエステル及び/又はメタクリル酸のアルキルエステルに由来するモノマー単位の両方を構成単位として有するとより好ましい。ここで、「アクリル系重合体」とは、(メタ)アクリル基を有する重合性単量体に由来するモノマー単位を主に有する重合体のことを意味する。
【0025】
上記アクリル系重合体は、(メタ)アクリル基を有する重合性単量体のラジカル重合等により製造される。(メタ)アクリル基を有する重合性単量体としては、例えば、アクリルアミド、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、α−ブロモ(メタ)アクリル酸、α−クロル(メタ)アクリル酸、β−フリル(メタ)アクリル酸、β−スチリル(メタ)アクリル酸等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上組み合わせて重合性単量体として用いることができる。なお、これらのうち、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル及びこれらの構造異性体等が挙げられる。これらの重合性単量体は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
また、アクリル系重合体には、上記のような(メタ)アクリル基を有する重合性単量体の他に、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン及びp−エチルスチレン等の重合可能なスチレン誘導体、ビニル−n−ブチルエーテル等のビニルアルコールのエステル類、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル及びマレイン酸モノイソプロピル等のマレイン酸モノエステル、フマール酸、ケイ皮酸、α−シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸及びプロピオール酸等の1種又は2種以上の重合性単量体が共重合されていてもよい。
【0027】
バインダポリマーは、アルカリ現像性を特に優れるものとするために、カルボキシル基を有することが好ましい。カルボキシル基を有するバインダポリマーとしては、例えば、上述したようなアクリル系重合体であって、カルボキシル基を有する重合性単量体(好ましくはメタクリル酸)をモノマー単位として有するものが挙げられる。
【0028】
ここで、バインダポリマーがカルボキシル基を有する場合、その酸価は30〜200mgKOH/gであることが好ましく、45〜150mgKOH/gであることがより好ましい。酸価が30mgKOH/g未満では現像時間が長くなる傾向があり、200mgKOH/gを超えると、露光後、光硬化した感光層の耐現像液性が低下する傾向がある。
【0029】
また、バインダポリマーは、密着性及び剥離特性を共に良好なものとできる点から、スチレン又はスチレン誘導体をモノマー単位として含有することが好ましい。バインダポリマーは、その全体量を基準として、スチレン又はスチレン誘導体を3〜30質量%含有することが好ましく、4〜28質量%含有することがより好ましく、5〜27質量%含有することがさらに好ましい。この含有量が3質量%未満では密着性が劣る傾向があり、30質量%を超えると剥離片が大きくなり、剥離時間が長くなる傾向がある。スチレン又はスチレン誘導体をモノマー単位として有するバインダポリマーとしては、例えば、上述したようなアクリル系重合体であって、(メタ)アクリル基を有する重合性単量体と共に、スチレン又はスチレン誘導体を共重合したものが好ましい。
【0030】
さらに、必要に応じて、バインダポリマーは、エチレン性不飽和結合等の感光性基を有していてもよい。
【0031】
バインダポリマーは、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.0〜3.0であることが好ましく、1.0〜2.0であることがより好ましい。分散度が3.0を超えると接着性及び解像度が低下する傾向がある。但し、本実施形態における重量平均分子量及び数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、標準ポリスチレンを標準試料として換算した値である。
【0032】
バインダポリマーの重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される標準ポリスチレン換算値)は、5000〜300000であることが好ましく、40000〜150000であることがより好ましい。重量平均分子量が5000未満であると耐現像液性が低下する傾向にあり、300000を超えると現像時間が長くなる傾向にある。
【0033】
バインダポリマーは、1種のポリマーを単独で又は2種以上のポリマーを組み合わせて構成される。2種類以上のポリマーを組み合わせる場合、例えば、共重合成分が互いに異なる2種類以上の共重合体、重量平均分子量が互いに異なる2種類以上のポリマー、分散度が異なる2種類以上のポリマー等の組み合わせが挙げられる。また、特開平11−327137号公報記載のマルチモード分子量分布を有するポリマーをバインダポリマーとして用いることもできる。
【0034】
(A)成分のバインダポリマーの感光性樹脂組成物中における配合割合は、(A)成分及び後述の(B)成分の合計量100質量部に対し、20〜80質量部であると好ましく、30〜70質量部であるとより好ましい。この配合割合が20質量部未満であると、配合割合が上記範囲内にある場合と比較して、感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層を露光して硬化させた部分が脆くなりやすく、感光性エレメントとして用いた場合に塗膜性に劣る傾向にある。配合割合が80質量部を超えると、配合割合が上記範囲内にある場合と比較して、光感度が不十分となる傾向にある。
【0035】
(B)成分のエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物としては、1個以上のエチレン性不飽和結合を有するものであればよいが、特に、エチレン性不飽和結合を1つ有する単官能性の光重合性化合物と、エチレン性不飽和結合を2つ以上有する多官能性の光重合性化合物とを組み合わせて(B)成分として用いることが好ましい。
【0036】
(B)成分が有するエチレン性不飽和結合としては、光重合が可能なものであれば特に制限はないが、例えば、(メタ)アクリレート基等のα,β−不飽和カルボニル基が挙げられる。エチレン性不飽和結合としてα,β−不飽和カルボニル基を有する光重合性化合物としては、例えば、多価アルコールのα,β−不飽和カルボン酸エステル、ビスフェノールA骨格含有(メタ)アクリレート化合物、グリシジル基含有化合物のα,β−不飽和カルボン酸付加物、ウレタン結合含有(メタ)アクリレート化合物、ノニルフェノキシポリエチレンオキシアクリレート、フタル酸骨格含有(メタ)アクリレート化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。これらは1種類を単独で、または2種類以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、耐めっき性、密着性の観点から、ビスフェノールA骨格含有(メタ)アクリレート化合物及びウレタン結合含有(メタ)アクリレート化合物が好ましく、ビスフェノールA骨格含有(メタ)アクリレート化合物が特に好ましい。
【0037】
多価アルコールのα,β−不飽和カルボン酸エステルとしては、たとえば、エチレン基の数が2〜14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレン基の数が2〜14でありプロピレン基の数が2〜14であるポリエチレン・ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO,PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらを1種類を単独で、または2種類以上を組み合わせて用いられる。なお、上記化合物名において、「EO変性」とはエチレンオキサイド基のブロック構造を有するものであることを意味し、「PO変性」とはプロピレンオキサイド基のブロック構造を有するものであることを意味する。
【0038】
ビスフェノールA骨格含有(メタ)アクリレート化合物としては、ビスフェノール骨格(ビスフェノールAの2つのフェノール性水酸基から水素原子を除いた構造)を含有し、且つ、メタクリレート基及びアクリレート基のうち少なくとも一方を有するものであれば特に制限はない。具体的には、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリブトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。
【0039】
2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンは、エチレンオキサイド基の数が4〜20個であることが好ましく、8〜15個であることがより好ましい。具体的には、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンとして、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘプタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシオクタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシノナエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシウンデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシドデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサデカエトキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。
【0040】
上記化合物のうち、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパンは、「BPE−500」(新中村化学工業(株)製、製品名)として商業的に入手可能である。また、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパンは、「BPE−1300」(新中村化学工業(株)製、製品名)として商業的に入手可能である。
【0041】
上記2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンの1分子内のエチレンオキサイド基の数は4〜20であることが好ましく、8〜15であることがより好ましい。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。
【0042】
ウレタン結合含有(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、β位にOH基を有する(メタ)アクリルモノマーとジイソシアネート化合物(イソホロンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等)との付加反応物や、トリス((メタ)アクリロキシテトラエチレングリコールイソシアネート)ヘキサメチレンイソシアヌレート、EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、EO,PO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレートの市販品としては、たとえば、「UA−11」(新中村化学工業(株)製、製品名)が挙げられる。また、EO,PO変性ウレタンジ(メタ)アクリレートの市販品としては、たとえば、「UA−13」(新中村化学工業(株)製、製品名)が挙げられる。これらは単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
ノニルフェノキシポリエチレンオキシアクリレートとしては、例えば、ノニルフェノキシテトラエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシペンタエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシヘキサエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシヘプタエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシオクタエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシノナエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシデカエチレンオキシアクリレート及びノニルフェノキシウンデカエチレンオキシアクリレートが挙げられる。これらを単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
上記フタル酸骨格含有(メタ)アクリレート化合物としては、フタル酸骨格(フタル酸の二つのカルボキシル基から水素原子を除いた構造)を含有し、且つ、メタクリレート基及びアクリレート基のうち少なくとも一方を有する化合物であれば特に制限はない。その具体例としては、例えば、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシアルキル−β’−(メタ)アクリロルオキシアルキル−o−フタレート等が挙げられる。
【0045】
(B)成分であるエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物の配合割合は、(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、20〜80質量部であることが好ましく、30〜70質量部であることがより好ましい。この配合割合が20質量部未満であると、配合割合が上記範囲内にある場合と比較して、光感度が不十分となる傾向にあり、配合割合が80質量部を超えると、配合割合が上記範囲内にある場合と比較して、光硬化部が脆くなる傾向にある。
【0046】
(C1)成分のピラゾリン誘導体は上記一般式(1)で表されるものであれば特に限定されない。一般式(1)中、Rのうち少なくとも1つが炭素数1〜10のアルコキシ基、若しくは炭素数1〜3のアルキル基であれば特に限定されず、その置換基が直鎖状であっても分岐状であってもよい。
【0047】
また、溶剤への溶解性及び感度を向上させる観点から、一般式(1)中、Rのうち少なくとも1つが、炭素数1〜10のアルコキシ基又は炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましく、メトキシ基又はイソプロピル基であることが特に好ましい。
【0048】
さらに、本発明の(C1)成分としては、一般式(1)中のa、b及びcの総和が1〜6であることが好ましく、1〜4であることがより好ましく、1若しくは2であることが特に好ましい。
【0049】
(C1)成分のピラゾリン誘導体の具体例としては、1−(4−メトキシフェニル)−3−スチリル−5−フェニル−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−メトキシスチリル)−5−(4−メトキシフェニル)−ピラゾリン、1,5−ビス−(4−メトキシフェニル)−3−(4−メトキシスチリル)−ピラゾリン、1−(4−イソプロピルフェニル)−3−スチリル−5−フェニル−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−イソプロピルスチリル)−5−(4−イソプロピルフェニル)−ピラゾリン、1,5−ビス−(4−イソプロピルフェニル)−3−(4−イソプロピルスチリル)−ピラゾリン、1−(4−メトキシフェニル)−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−tert−ブチル−フェニル)−3−(4−メトキシスチリル)−5−(4−メトキシフェニル)−ピラゾリン、1−(4−イソプロピル−フェニル)−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−tert−ブチル−フェニル)−3−(4−イソプロピル−スチリル)−5−(4−イソプロピル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−メトキシフェニル)−3−(4−イソプロピルスチリル)−5−(4−イソプロピルフェニル)−ピラゾリン、1−(4−イソプロピル−フェニル)−3−(4−メトキシスチリル)−5−(4−メトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(3,5−ジメトキシスチリル)−5−(3,5−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(3,4−ジメトキシスチリル)−5−(3,4−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(2,6−ジメトキシスチリル)−5−(2,6−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(2,5−ジメトキシスチリル)−5−(2,5−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(2,3−ジメトキシスチリル)−5−(2,3−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(2,4−ジメトキシスチリル)−5−(2,4−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−(4−メトキシフェニル)−3−(3,5−ジメトキシスチリル)−5−(3,5−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−(4−メトキシフェニル)−3−(3,4−ジメトキシスチリル)−5−(3,4−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−(4−メトキシフェニル)−3−(2,6−ジメトキシスチリル)−5−(2,6−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−(4−メトキシフェニル)−3−(2,5−ジメトキシスチリル)−5−(2,5−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−(4−メトキシフェニル)−3−(2,3−ジメトキシスチリル)−5−(2,3−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−(4−メトキシフェニル)−3−(2,4−ジメトキシスチリル)−5−(2,4−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−(4−tert−ブチル−フェニル)−3−(3,5−ジメトキシスチリル)−5−(3,5−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−(4−tert−ブチル−フェニル)−3−(3,4−ジメトキシスチリル)−5−(3,4−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−(4−tert−ブチル−フェニル)−3−(2,6−ジメトキシスチリル)−5−(2,6−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−(4−tert−ブチル−フェニル)−3−(2,5−ジメトキシスチリル)−5−(2,5−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−(4−tert−ブチル−フェニル)−3−(2,3−ジメトキシスチリル)−5−(2,3−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−(4−tert−ブチル−フェニル)−3−(2,4−ジメトキシスチリル)−5−(2,4−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−(4−イソプロピル−フェニル)−3−(3,5−ジメトキシスチリル)−5−(3,5−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−(4−イソプロピル−フェニル)−3−(3,4−ジメトキシスチリル)−5−(3,4−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−(4−イソプロピル−フェニル)−3−(2,6−ジメトキシスチリル)−5−(2,6−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−(4−イソプロピル−フェニル)−3−(2,5−ジメトキシスチリル)−5−(2,5−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−(4−イソプロピル−フェニル)−3−(2,3−ジメトキシスチリル)−5−(2,3−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−(4−イソプロピル−フェニル)−3−(2,4−ジメトキシスチリル)−5−(2,4−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、などが挙げられる。(C1)成分は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。
【0050】
上記(C1)成分のうち、合成の容易さ及び感度を向上させる観点から、1−フェニル−3−(4−メトキシスチリル)−5−(4−メトキシフェニル)−ピラゾリンが特に好ましく、合成の容易さ及び溶解性を向上させる観点から、1−フェニル−3−(4−イソプロピルスチリル)−5−(4−イソプロピルフェニル)−ピラゾリンが特に好ましい。
【0051】
本発明に係る(C1)成分のピラゾリン誘導体は公知の方法で合成することができる。このピラゾリン誘導体は、例えば特許第2931693号公報に記載の合成方法又はそれに準拠した合成方法で得られる。例えば、先ず、特定のベンズアルデヒドとアセトン又は特定のアセトフェノン化合物とを公知の縮合方法で、例えば水−アルコールの混合溶媒中塩基性物質の存在下で縮合する。あるいは、特定のベンズアルデヒド化合物と特定のアセトフェノン化合物とを有機溶媒中で塩基性触媒、例えばピペリジンの存在下で縮合する。次いで、これらの縮合により得られるカルコン化合物と、特定のヒドラジン化合物とを公知の方法で縮合、例えば酢酸中又はアルコール中で反応させることにより、本発明に係るピラゾリン誘導体を得ることができる。
【0052】
また、市販のものとしては、1−フェニル−3−(4−メトキシスチリル)−5−(4−メトキシフェニル)ピラゾリン((株)日本化学工業所製)、1−フェニル−3−(4−イソプロピルスチリル)−5−(4−イソプロピルフェニル)ピラゾリン((株)日本化学工業所製)等が挙げられる。
【0053】
(C1)成分である上記一般式(1)で表される化合物の配合割合は、(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、0.001〜5.0質量部であることが好ましく、0.05〜3.0質量部であることがより好ましく、0.01〜2.0質量部であることが更に好ましい。この配合割合が上記範囲から外れると、配合割合が上記範囲内にある場合と比較して、光感度及び解像度の両方を十分なものにすることが困難となる傾向にある。
【0054】
本発明者らは、本実施形態の感光性樹脂組成物が直接描画露光法において十分に高い感度及び解像度を達成できる主要因の一つとして、(C1)成分であるピラゾリン誘導体を他の成分と併用していることが挙げられると考えている。
【0055】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、密着性及び感度の点から、光重合開始剤として、(C1)成分に加えて、(C2)成分の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体又はその誘導体を更に含有することがより好ましい。上記(C2)成分を用いることにより、高感度化及び高解像度化の効果が得られる。
【0056】
2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体としては、例えば、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて(C2)成分として用いることができる。
【0057】
(C2)成分である2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体又はその誘導体の配合割合は、(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、0.1〜20質量部であると好ましく、0.5〜10質量部であるとより好ましく、1〜5質量部であると特に好ましい。この配合割合が0.1質量部を下回ると、(C2)成分を配合することによる上記効果を十分に奏し難くなる傾向にあり、20質量部を超えると、他の成分により奏される効果が阻害される傾向にある。
【0058】
さらに、(C1)及び(C2)成分以外にも、必要に応じて、クマリン誘導体、ベンゾフェノン、N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン等のN,N’−テトラアルキル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1,2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパノン−1等の芳香族ケトン、アルキルアントラキノン等のキノン類、ベンゾインアルキルエーテル等のベンゾインエーテル化合物、ベンゾイン、アルキルベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体等の光重合開始剤を感光性樹脂組成物中にさらに加えてもよい。
【0059】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、上述の各成分に加えて、ロイコクリスタルバイオレットを更に含有すると好ましい。これにより、本実施形態の感光性樹脂組成物は光感度と解像度とを更にバランスよく向上できる。ロイコクリスタルバイオレットは光を吸収して特定色に発色する光発色剤としての性質を有しており、その性質に起因して、上記効果を奏するものと考えられる。
【0060】
この効果をより有効に奏する観点から、本実施形態の感光性樹脂組成物中におけるロイコクリスタルバイオレットの配合割合は、(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して0.01〜10質量部であると好ましく、0.05〜5質量部であるとより好ましい。
【0061】
本実施形態の感光性樹脂組成物には、以上説明したような成分に加えて、必要に応じて、マラカイトグリーン等の染料、トリブロモフェニルスルホン、ロイコクリスタルバイオレット以外の光発色剤、熱発色防止剤、p−トルエンスルホンアミド等の可塑剤、顔料、充填剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、イメージング剤、熱架橋剤等の他の添加剤を、(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して各々0.01〜20質量部程度含有させてもよい。
【0062】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、最大波長が350nm以上410nm未満(より好ましくは335〜365nm又は405nm)の光に露光してレジストパターンを形成するために用いられるものであることが好ましい。
【0063】
最大波長が350nm以上410nm未満の光としては、公知の光源であってもよく、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、Arイオンレーザ及び半導体レーザ等の紫外線又は可視光等を有効に放射するものが挙げられる。
【0064】
また、後述の直接描画法で有効に用いられる光源としては、364nmの光を発振するアルゴンガスレーザ、355nmの光を発振する固体UVレーザ、405nmの光を発振する窒化ガリウム系青色レーザ等が挙げられる。その中で、より容易にレジストパターンを形成する観点から、窒化ガリウム系青色レーザが好適に用いられる。また、日立ビアメカニクス社製の「DE−1AH」(商品名)等のデジタルダイレクト露光機を用いてもよい。
【0065】
以上説明したような感光性樹脂組成物は、銅、銅系合金、鉄、鉄系合金等の金属面上に、液状レジストとして塗布してから乾燥後、必要に応じて保護フィルムを被覆して用いるか、下記のような感光性エレメントの形態で、フォトリソグラフィのために用いられる。
【0066】
図1は、本実施形態の感光性エレメントの好適な一実施形態を示す模式断面図である。図1に示した感光性エレメント1は、支持体10と、支持体10上に設けられた感光層14と、で構成される。感光層14は、上述した本実施形態の感光性樹脂組成物からなる。
【0067】
感光層14の厚みは特に制限されないが、1〜100μm程度であることが好ましい。また、感光層14上の支持体10と反対側の面F1を保護フィルムで被覆してもよい。この保護フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のフィルムなどが挙げられるが、感光層14との接着力が、支持体10と感光層14との接着力よりも小さいものが好ましく、また、低フィッシュアイのフィルムが好ましい。
【0068】
支持体10としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等のフィルムを好適に用いることができ、その厚みは、1〜100μmとすることが好ましい。
【0069】
また、感光性エレメント1には、上記のような支持体10、感光層14及び保護フィルムの他、クッション層、接着層、光吸収層、ガスバリア層等の中間層や保護層が更に設けられていてもよい。
【0070】
感光性エレメント1は、例えば、支持体10上に感光性樹脂組成物を塗布した後、乾燥して感光層14を形成させて得ることができる。塗布は、例えば、ロールコータ、コンマコータ、グラビアコータ、エアーナイフコータ、ダイコータ、バーコータ等の公知の方法で行うことができる。また、乾燥は、70〜150℃、5〜30分間程度で行うことができる。
【0071】
支持体10上に感光性樹脂組成物を塗布する際、必要に応じて、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の溶剤又はこれらの混合溶剤に感光性樹脂組成物を溶解した、固形分30〜60質量%程度の溶液を塗布することが好ましい。但し、この場合、乾燥後の感光層中の残存有機溶剤量は、後の工程での有機溶剤の拡散を防止するため、2質量%以下とすることが好ましい。
【0072】
得られた感光性エレメント1は、そのままで、又は感光層14上に上記保護フィルムをさらに積層してから、円筒状の巻芯に巻き取るなどして貯蔵される。なお、巻き取る際、支持体10が外側になるように巻き取ることが好ましい。巻芯としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)等のプラスチックからなるものを好適に用いることができる。
【0073】
巻き取ってロール状とされた感光性エレメントロールの端面には、端面保護のため端面セパレータを設置することが好ましく、耐エッジフュージョンの点からは、防湿端面セパレータを設置することが好ましい。また、ロール状に巻き取られた感光性エレメントは、透湿性の小さいブラックシートに包んで包装して梱包することが好ましい。
【0074】
本実施形態のレジストパターンの形成方法は、基板上に上記本実施形態の感光性樹脂組成物からなる感光層を形成する感光層形成工程と、感光層の所定部分を最大波長が350nm以上410nm未満の光に露光する露光工程と、露光した感光層を現像してレジストパターンを形成する現像工程とを備える。
【0075】
感光層形成工程においては、上記本実施形態の感光性エレメントを好適に用いることができる。感光性エレメントを用いる場合、感光性エレメントが保護フィルムを有するときにはこれを除去してから、感光層を70〜130℃程度に加熱しながら、減圧下又は常圧下で、基板に0.1〜1MPa程度(1〜10kgf/cm2程度)の圧力で圧着して積層して、基板上に感光層を形成する。基板としては、例えば、ガラス繊維強化エポキシ樹脂等の絶縁性材料からなる層の片面又は両面に銅箔を設けた銅張積層板が好適に用いられる。
【0076】
露光工程においては、基板上に積層された感光層のうち、所望のレジストパターンに対応する所定部分に対して光(活性光線)を照射する。露光は、マスクパターンを介して行うマスク露光法や、レーザ直接描画露光法及びDLP露光法等の直接描画露光法で行うことができるが、解像度等の点から、直接描画露光法が好ましい。上記活性光線の光源としては、公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、Arイオンレーザ、半導体レーザ等の紫外線、可視光などを有効に放射するものが用いられる。
【0077】
本実施形態では高感度及び高解像度の観点から直接描画法が好適に用いられている。直接描画法で使用される光源としては、364nmの光を発振するアルゴンガスレーザ、355nmの光を発振する固体UVレーザ、405nmの光を発振する窒化ガリウム系青色レーザ等が挙げられる。その中で、より容易にレジストパターンを形成する観点から、窒化ガリウム系青色レーザが好適に用いられる。また、日立ビアメカニクス社製の「DE−1AH」(商品名)等のデジタルダイレクト露光機を用いてもよい。
【0078】
上記光としては、最大波長が350nm以上440nm未満の活性光線を発する光源からの光を用いるか、あるいはフィルタによる分光等によって、最大波長が上記範囲内となるように調整した光を用いる。その他光源の詳細については、感光性樹脂組成物の説明において上述した内容と同様である。
【0079】
露光後、感光層上に支持体がある場合にはこれを除去した後、アルカリ性水溶液、水系現像液及び有機溶剤等の現像液によるウエット現像や、ドライ現像等で未露光部を除去することによって現像し、レジストパターンを形成する。現像の方式は特に限定されないが、例えば、ディップ方式、スプレー方式、ブラッシング、スラッピング等の方法で現像を行うことができる。
【0080】
現像に用いるアルカリ性水溶液としては、例えば、0.1〜5質量%炭酸ナトリウム水溶液、0.1〜5質量%炭酸カリウム水溶液、0.1〜5質量%水酸化ナトリウム水溶液等が挙げられる。また、アルカリ性水溶液のpHは9〜11の範囲とすることが好ましく、その温度は、感光層の溶解性等に応じて適宜調節すればよい。アルカリ性水溶液中には、さらに、表面活性剤、消泡剤、有機溶剤等を加えてもよい。なお、現像工程後、導体パターンを形成する前に、必要に応じて、60〜250℃程度の加熱又は0.2〜10J/cm2程度の露光により、レジストパターンを形成している樹脂をさらに硬化してもよい。
【0081】
本実施形態のプリント配線板の製造方法においては、以上のようにして形成されたレジストパターンに基づいて上記基板上に導体パターンを形成する導体パターン形成工程を経て、プリント配線板を製造する。導体パターンの形成は、現像されたレジストパターンをマスクとして、マスクされずに露出している銅箔部分を、エッチング、めっき等の公知の方法で処理して行う。めっきを行う方法としては、例えば、銅めっき、はんだめっき、ニッケルめっき、金めっきなどが挙げられる。また、エッチングは、例えば、塩化第二銅溶液、塩化第二鉄溶液、アルカリエッチング溶液等を用いて行うことができる。これらの方法を採用することにより、レジストパターンにおける溝の部分(基板の露出部分)に選択的に導体層を形成して、導体パターンを形成することができる。あるいは、これと逆に、現像後に残存する樹脂層で保護された部分に選択的に導体層を形成してもよい。
【0082】
エッチング又はめっきによる処理後、レジストパターンを形成している感光層を、例えば、現像に用いたアルカリ性水溶液よりさらに強アルカリ性の水溶液等を用いて剥離する工程を経て、所定の導体パターンが形成されたプリント配線板が得られる。強アルカリ性の水溶液としては、例えば、1〜10質量%水酸化ナトリウム水溶液、1〜10質量%水酸化カリウム水溶液等が用いられる。感光層を剥離する方法としては、例えば、浸漬方式、スプレー方式等が挙げられる。
【0083】
以上のような製造方法を採用して、小径スルーホールを有する多層プリント配線板等のプリント配線板を好適に製造することができる。
【0084】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0085】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<感光性樹脂組成物溶液の調製>
【0086】
表1に示す各原料、表2に示す(C1)成分、表3に示す1−フェニル−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン(表3では、「PYR−B」と示す。)及びN,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(表3では、「EAB」と示す。)を、各表に示す配合量で均一に混合して、参考例1〜3、実施例1〜3、比較例1〜2及び参考例4の感光性樹脂組成物の溶液を調製した。なお、(C1)成分として、1−フェニル−3−(4−メトキシスチリル)−5−(4−メトキシフェニル)ピラゾリン(表2では、「PYR−M」と示す。)及び1−フェニル−3−(4−イソプロピルスチリル)−5−(4−イソプロピルフェニル)ピラゾリン(表2では、「PYR−I」と示す。)を用いた。
【0087】
感度及び解像度の両方をバランスよく向上させる観点から、溶媒に対するPYR−M、PYR−I及びPYR−Bの溶解性が高い方が好適である。また、溶解性が高いと、感光性樹脂組成物溶液の調製が容易となり、その作業性に優れる。23℃におけるトルエン溶媒100mLに対するそれらの溶解度は表4に示すとおりとなった。
【0088】
【表1】



【0089】
【表2】



【0090】
【表3】



【0091】
【表4】



<感光性エレメント>
【0092】
上記のように調製した参考例1〜3、実施例1〜3、比較例1〜2及び参考例4の感光性樹脂組成物の溶液を、16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム上に均一に塗布し、熱風対流式乾燥器を用いて70℃で10分間及び100℃で10分間乾燥して、支持体としてのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、上記感光性樹脂組成物からなる感光層が設けられた感光性エレメントを得た。感光層の膜厚は、25μmであった。
【0093】
感光層の露光波長に対する光学密度(O.D.値)を、UV分光光度計((株)日立製作所製 U−3310分光光度計)を用いて測定した。測定は、支持体として用いたものと同じ種類のポリエチレンテレフタレートフィルムをリファレンスとして、吸光度モードにより550〜300nmまでの連続測定で行ってUV吸収スペクトルを得、365nm、405nmにおける吸光度の値を、それぞれの波長におけるO.D.値とした。UV吸収スペクトルを図2に示す。a1は参考例1、a2は実施例1、a3は参考例4に係るUV吸収スペクトルである。図2において、約340〜420nmの範囲におけるa2及びa3のスペクトルはほぼ重なっていた。実施例1及び参考例4の吸光度は、365nmの光を照射した場合、それぞれ0.48及び0.44であり、405nmの光を照射した場合、それぞれ0.49及び0.45であった。
<レジストパターンの形成>
【0094】
銅箔(厚さ35μm)をガラス繊維強化エポキシ樹脂層の両面に積層した両面銅張積層板(日立化成工業(株)製、「MCL−E−67」(製品名))の銅表面を、#600相当のブラシを装着した研磨機(三啓(株)製)を用いて研磨し、水洗後、空気流で乾燥させた。次いで、両面銅張積層板を80℃に加温しながら、上記で得た感光性エレメントを、その感光層側が銅箔表面に密着するように貼り合わせ、120℃に加熱しながら0.4MPaで加圧した後、23℃になるまで冷却して、両面銅張積層板の両面に感光層が設けられた積層板を得た。
【0095】
続いて、上記積層板の最外層に位置するポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、濃度領域0.00〜2.00、濃度ステップ0.05、タブレット(矩形)の大きさ20mm×187mmで、各ステップ(矩形)の大きさが3mm×12mmである41段ステップタブレットを有するフォトツールと、解像度評価用ネガとしてライン幅/スペース幅が6/6〜35/35(単位:μm)の配線パターンを有するフォトツールとを順に積層し、さらにその上に、波長405nm±30nmの光を分光するハンドパスフィルターである朝日分光株式会社製分光フィルタ「HG0405」(製品名)を置いた。
【0096】
この状態で、5kWショートアークランプを光源とする平行光露光機(オーク製作所製、「EXM−1201」(製品名))を用いて、41段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が14段、17段、20段となる露光量で露光を行った。このとき、41段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が17段となる露光量を感度とした。なお、バンドパスフィルターを透過した光の照度を、紫外線積算光量計(「UIT−150−A」(製品名)、ウシオ電機株式会社製、照度計としても使用可能)及び受光器である「UVD−S405」(感度波長域:320nm〜470nm、絶対校正波長:405nm)を用いて測定し、照度×露光時間を露光量とした。
【0097】
次いで、ポリエチレンテレフタレートフィルムを除去し、露出した感光層に1.0重量%炭酸ナトリウム水溶液を30℃で24秒間スプレーすることにより未露光部分を除去して、現像処理を行った。そして、未露光部分をきれいに除去することができ、なおかつラインが蛇行、カケを生じることなく生成されたライン幅間のスペース幅の最小値を、解像度とした。この解像度及び上記感度の値は、共に、数値が小さいほど良好な値である。
【0098】
参考例1〜3、実施例1〜3、比較例1〜2及び参考例4の感光性樹脂組成物について行った上記のような評価の結果を、表2及び表3にまとめて示す。
【符号の説明】
【0099】
1…感光性エレメント、10…支持体、14…感光層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)バインダポリマーと、
(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物と、
(C1)下記一般式(1)で表される化合物と、
を含有する感光性樹脂組成物。
【化1】



[式(1)中のRは、少なくとも1つがイソプロピル基を示し、a、b及びcの総和は1〜6である。a、b及びcの総和が2〜6のとき、同一分子中の複数のRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。]
【請求項2】
前記a、b、及びcの総和が1〜2である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)成分が、アクリル酸及び/又はメタクリル酸に由来するモノマー単位と、アクリル酸のアルキルエステル及び/又はメタクリル酸のアルキルエステルに由来するモノマー単位と、を構成単位として有するアクリル系重合体を含むものである、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A)成分及び前記(B)成分の総量100質量部に対して、前記(B)成分の配合量が20〜80質量部であり、前記(C1)成分の配合量が0.001〜5.0質量部である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
(C2)成分として、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体又はその誘導体を更に含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
最大波長が350nm以上410nm未満の光に露光してレジストパターンを形成するために用いられる請求項1〜5のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
支持体と、前記支持体上に設けられた請求項1〜6のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物からなる感光層と、を備える感光性エレメント。
【請求項8】
基板上に請求項1〜6のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物からなる感光層を形成する感光層形成工程と、
前記感光層の所定部分を最大波長350nm以上410nm未満の光に露光する露光工程と、
露光した前記感光層を現像してレジストパターンを形成する現像工程と、を備えるレジストパターンの形成方法。
【請求項9】
基板上に請求項1〜6のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物からなる感光層を形成する感光層形成工程と、
前記感光層の所定部分を最大波長350nm以上410nm未満の光に露光する露光工程と、
露光した前記感光層を現像してレジストパターンを形成する現像工程と、
前記レジストパターンに基づいて前記基板上に導体パターンを形成する導体パターン形成工程と、を備えるプリント配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−198027(P2010−198027A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85184(P2010−85184)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【分割の表示】特願2006−105416(P2006−105416)の分割
【原出願日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】