説明

感光性樹脂組成物

【課題】露光時の感度とアルカリ現像性の両立はもとより、さらに、良好な耐熱性を維持しつつ、寸法安定性に優れ、脆さの発現しない硬化物を与え得る感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】N−置換マレイミド基、カルボキシル基およびエチレン性不飽和二重結合を有し、かつ、ポリマー100質量部あたりのエチレン性不飽和二重結合のモル数が0.05モル未満であるポリマー(A)を含むことを特徴とする感光性樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成用として有用な感光性樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成用感光性樹脂組成物は、写真法(フォトリソグラフィー)の原理を応用することによって微細加工が可能な上に、物性に優れた硬化物を与えて画像を形成できることから、電子部品関係の各種レジスト材料や印刷版等の用途に多用されている。この画像形成用感光性樹脂組成物には溶剤現像型とアルカリ現像型があるが、近年では、環境対策の点から希薄な弱アルカリ水溶液で現像できるアルカリ現像型が主流になっており、例えば、プリント配線基板製造、液晶表示板製造、あるいは印刷製版等においても、アルカリ現像型の感光性樹脂組成物が用いられている。
【0003】
画像形成用感光性樹脂組成物を、例えば液状現像型ソルダーレジスト用樹脂組成物として写真法(フォトリソグラフィー)の工程に用いる場合には、先ず基板上に樹脂組成物を塗布し、続いて加熱乾燥を行って塗膜を形成させた後、この塗膜にパターン形成用フィルムを装着し、露光して、現像するという一連の工程が採用されている。このような工程において、加熱乾燥後の塗膜に粘着性が残存していると、剥離後のパターン形成用フィルムに一部のレジストが付着して正確なパターンの再現ができなくなったり、あるいはパターン形成用フィルムが剥離できない、といった問題があった。このため、塗膜形成後のタックフリー性は液状現像型レジストの重要な要求特性である。
【0004】
また、露光時の光感度や露光後の現像性も重要な要求特性である。すなわち、ファインパターンを高い信頼性で再現性良く形成させるためには、現像時においては、露光により硬化した部分は現像液に浸食されてはならないし、逆に未露光部分は現像の際に速やかに除去されなければならない。
【0005】
さらに、硬化部分については、その後に控える高温条件での処理工程(ソルダーレジストの場合、半田付け工程等)に絶え得る耐熱性や、耐水性、耐湿性等の長期信頼性に関わる特性が求められている。
【0006】
上記各特性をある程度満足するものとして、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレートに酸無水物を反応させてカルボキシル基を導入したカルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレートが知られている。このカルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレートは、タックフリー性、光感度、現像性といった相反する特性をバランス良く満足している上に、硬化物に求められる耐熱性や耐水性等の重要特性も比較的良好である。しかしながら、技術の進歩に伴って、さらにハイレベルな特性が求められており、例えば、微細なパターン形成に適合し得る高度な寸法安定性や、より高い温度条件での処理に耐えることが要求されるようになっている。
【0007】
上記のエポキシ(メタ)アクリレートであれば、多官能のエポキシ樹脂や(メタ)アクリレートを用いて樹脂骨格に二重結合を多数導入して、架橋密度を高めることにより耐熱性を向上させることが考えられる。しかし、二重結合の導入量を多くすると、硬化時の自由体積減少に起因する硬化収縮によって寸法安定性が不良になると共に、架橋密度が高くなることで硬化塗膜が脆くなっていくため、エポキシ(メタ)アクリレート系感光性樹脂では、高い耐熱性を維持しつつ、寸法安定性向上や脆さ低減を達成するのが難しいという問題がある。
【0008】
ところで、高耐熱性要求に応え得る感光性樹脂として、N−置換マレイミド基とエチレン性不飽和二重結合を有するポリマーが検討されている(例えば特許文献1および2)。しかしながら、この系においても、耐熱性に重きを置き過ぎると硬化物に脆さが発現することになりかねず、さらに、製造に長時間を有するものであった。
【0009】
そこで本願発明者等は鋭意検討を重ね、N−置換マレイミド成分を有するポリマーを主成分とし、耐熱性に優れつつも脆さの発現しない硬化物を与える画像形成用感光性樹脂を見出し、既に出願している(特許文献3)。
【特許文献1】特開平10−139843号公報
【特許文献2】特開2002−62651号公報
【特許文献3】特開2005−141011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特性の要求レベルはとどまるところを知らず、絶えずさらなる向上が求められる。そこで本発明では、露光時の感度とアルカリ現像性の両立はもとより、さらに、良好な耐熱性を維持しつつ、寸法安定性に優れ、脆さの発現しない硬化物を与え得る画像形成用感光性樹脂組成物を提供することを課題として掲げた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決した本発明は、N−置換マレイミド基、カルボキシル基およびエチレン性不飽和二重結合を有し、かつ、ポリマー100質量部あたりのエチレン性不飽和二重結合のモル数が0.05モル未満であるポリマー(A)を含むことを特徴とする感光性樹脂組成物である。
【0012】
N−置換マレイミド基を有する構成ユニットは、ポリマー(A)100モル%中、15〜60モル%であることが好ましい。
【0013】
本発明の感光性樹脂組成物は、上記ポリマー(A)以外に、エチレン性不飽和化合物(B)を含むことが好ましく、特にこのエチレン性不飽和化合物(B)の少なくとも一部はエポキシ(メタ)アクリレートであることが好ましい。また、上記ポリマー(A)が有するカルボキシル基の少なくとも一部が、1個以上のエステル結合を介してポリマー(A)の主鎖に結合していることが好ましい。本発明の感光性樹脂組成物は、さらに、カルボキシル基と反応し得る官能基を一分子中に2個以上有する化合物(C)を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の感光性樹脂組成物は、露光時の感度とアルカリ現像性を両立させることができ、さらに、高い耐熱性を維持しつつ、寸法安定性に優れ、かつ脆さの発現しない硬化物を与えるポリマーを樹脂成分として含んでいるので、硬化物の物性を優れたものとすることができた。従って、本発明の感光性樹脂組成物は、アルカリ現像可能な画像形成用感光性樹脂組成物として、例えば、プリント配線基板用ソルダーレジスト、エッチングレジスト、無電解メッキレジスト、ビルドアップ法プリント配線板の絶縁層、液晶表示板製造用、印刷製版等の各種の用途に好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明を詳述する。本発明の感光性樹脂組成物を構成するポリマー(A)は、N−置換マレイミド基、カルボキシル基、およびエチレン性不飽和二重結合を有するポリマーであり、ポリマー100質量部あたり、エチレン性不飽和二重結合のモル数が0.05モル未満のものである。
【0016】
ポリマー(A)を得る方法としては、(a)N−置換マレイミド化合物と、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物を単量体成分として得られる共重合体に、(メタ)アクリル酸等の不飽和一塩基酸またはそのハロゲン化物を付加させた後、エポキシ基が開環して生成したヒドロキシル基に対して多塩基酸無水物を反応させる方法、(b)N−置換マレイミド化合物と、(メタ)アクリル酸等の不飽和一塩基酸またはそのハロゲン化物を単量体成分として得られる共重合体に、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物を反応させる方法、(c)N−置換マレイミド化合物と、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和化合物を単量体成分として得られるヒドロキシル基含有共重合体のヒドロキシル基に対して多塩基酸無水物を反応させてカルボキシル基を導入し、さらにそのカルボキシル基に対してエポキシ基含有エチレン性不飽和化合物を反応させる方法、(d)N−置換マレイミド化合物と、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和化合物を単量体成分として得られるヒドロキシル基含有共重合体のヒドロキシル基に対して、(メタ)アクリル酸等の不飽和一塩基酸またはそのハロゲン化物、および多塩基酸無水物を反応させる方法、(e)N−置換マレイミド化合物と、(メタ)アクリル酸等の不飽和一塩基酸またはそのハロゲン化物を単量体成分として得られる共重合体に2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基を有する不飽和化合物を反応させる方法、等が挙げられる。また、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物に変えて、オキサゾリニル基やオキセタニル基等のカルボキシル基と反応し得る官能基を有するエチレン性不飽和化合物を用いることも可能である。
【0017】
本発明で使用可能なN−置換マレイミド化合物としては、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−メチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジエチルフェニル)マレイミド、N−(2−クロロフェニル)マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルメチルマレイミド、N−(2,4,6−トリブロモフェニル)マレイミド、N−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]マレイミド、N−オクタデセニルマレイミド、N−ドデセニルマレイミド、N−(2−メトキシフェニル)マレイミド、N−(2,4,6−トリクロロフェニル)マレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド等が挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、耐熱性向上効果が大きく、共重合性が良好で、かつ入手し易いという点で、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジエチルフェニル)マレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が好ましく、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドがより好ましく、N−フェニルマレイミドが最も好ましい。
【0018】
前記した合成方法(a)、(b)および(c)のいずれかを採用する場合に用いることのできるエポキシ基含有エチレン性不飽和化合物としては、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル等の脂肪族エポキシ化合物や、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等の脂環式エポキシ化合物が挙げられる。
【0019】
前記した合成方法(a)、(b)、(d)および(e)で用いる不飽和一塩基酸またはそのハロゲン化物としては、1個のカルボキシル基と1個以上のエチレン性不飽和二重結合を有する一塩基酸、およびそのハロゲン化物が挙げられ、具体例としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸、β−アクリロキシプロピオン酸、ヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和化合物と多塩基酸無水物との反応物、およびこれらのハロゲン化物等が挙げられる。
【0020】
本発明においては、N−置換マレイミド基のような疎水性基が存在しても良好なアルカリ現像性を発現させるため、主鎖から離間した位置にカルボキシル基を導入することが好ましい。このことから、(b)や(e)の方法のように、単量体成分として不飽和一塩基酸を用いる場合には、カルボキシル基とエチレン性不飽和結合が1個以上のエステル結合を介して結合しているβ−アクリロキシプロピオン酸や、ヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和化合物と多塩基酸無水物との反応物を用いることが好ましい。
【0021】
前記した合成方法(a)〜(e)で用いる多塩基酸無水物としては、無水フタル酸、無水コハク酸、オクテニル無水コハク酸、ペンタドデセニル無水コハク酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキシドと無水イタコン酸あるいは無水マレイン酸との反応物等の二塩基酸無水物;無水トリメリット酸;ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族あるいは芳香族四塩基酸二無水物等が挙げられる。
【0022】
前記した合成方法(b)、(c)、(d)および(e)で用いるヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和化合物としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル類、アリルアルコール、p−ヒドロキシスチレン等が挙げられる。これらの中でも、多塩基酸無水物との反応性が良好で、生成したカルボキシル基が立体障害を受けにくく、効率よく現像性を発現させ得る点から、1級のアルコール性ヒドロキシル基を有するものや、ヒドロキシル基を基準としたα位の炭素にメチル基やエチル基が結合した2級のアルコール性ヒドロキシル基を有するものが好ましく、特に好ましいものは2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートである。また、上記ヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和化合物にアルキレンオキサイドを付加したもの、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのポリカプロラクトン変性物である「プラクセルF」シリーズ(ダイセル化学工業社製)、1,18−オクタデカンジカルボン酸や1,16−(6−エチルヘキサデカン)ジカルボン酸等の長鎖二塩基酸とグリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有単量体との反応物等の長鎖アルコール類は、硬化塗膜に可撓性を付与することができるので、このような性質が塗膜に求められる場合に好適である。
【0023】
ポリマー(A)を得る方法としては、上記合成方法(a)〜(e)のいずれも採用できる。特に、(b)や(e)においての単量体成分としてカルボキシル基とエチレン性不飽和結合が1個以上のエステル結合を介して結合しているβ−アクリロキシプロピオン酸や、ヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和化合物と多塩基酸無水物との反応物を用いる方法や、(c)や(d)の方法が好ましい。これらの方法によれば、ポリマー主鎖から1個以上のエステル結合を介して離間した位置にカルボキシル基が導入できるからである。その結果、カルボキシル基のモビリティが向上して、N−置換マレイミド基のような疎水性基がポリマー中に存在していても、良好なアルカリ現像性を発現させることができる。一方、(b)や(e)において不飽和一塩基酸として(メタ)アクリル酸を共重合させたものは、主鎖にカルボキシル基が近接しているため、カルボキシル基の効果が充分に発現されないことがある。また、(a)のエポキシ基が開環して生成したヒドロキシル基に対して多塩基酸無水物を反応させたものも、導入されたエチレン性不飽和結合の近接位置にカルボキシル基が存在しているため、光(または熱)重合後のカルボキシル基のモビリティは低くなる。これらのことから、本発明においては、(b)や(e)において単量体成分としてβ−アクリロキシプロピオン酸や、ヒドロキシル基を有する不飽和化合物と多塩基酸無水物との反応物を用いる方法や、(c)や(d)の方法が好ましい。最も好ましいのは、(b)において単量体成分としてヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和化合物と多塩基酸無水物との反応物を用いる方法と、(c)の方法である。
【0024】
本発明において、ポリマー(A)を得る際に使用しても良いその他の単量体成分としては、スチレン、α−メチルスチレン、α−クロロスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル系単量体;酢酸ビニル、アジピン酸ビニル等のビニルエステルモノマー;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル系単量体;n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテルや対応するアルキルビニル(チオ)エーテル;N−ビニルピロリドン、N−ビニルオキサゾリドン等のN−ビニル系単量体等が挙げられる。これらの中では、N−置換マレイミド化合物との共重合性が良好で、電気特性に優れ、安価でもある芳香族系ビニル単量体(特にスチレン)が好ましい。
【0025】
前記したように、本発明においてポリマー(A)を得る方法としては、(b)において単量体成分として、ヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和化合物と多塩基酸無水物との反応物を用いる方法と、(c)の方法が最も好ましいので、以下、これらについてさらに説明する。
【0026】
(b)において、ヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和化合物と多塩基酸無水物との反応物を得るには、公知の手法を採用できる。具体的には、各化合物をヒドロキシル基と酸無水物基とが等モルになるように仕込み、必要に応じて触媒や溶媒の存在下、反応温度については好ましくは60〜150℃で、より好ましくは80〜130℃で反応させればよい。具体的な触媒としては、トリエチルアミン等の三級アミン、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、トリフェニルフォスフィンやテトラフェニルホスホニウムブロマイド等のリン化合物、酢酸リチウム等のカルボン酸金属塩、炭酸リチウム等の無機金属塩等が挙げられる。溶媒については、後述の溶液重合の際に使用できる溶媒から適宜選択すればよい。
【0027】
(b)におけるN−置換マレイミド化合物と、ヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和化合物と多塩基酸無水物との反応により得られた不飽和一塩基酸とを単量体成分とする共重合体、あるいは(c)におけるN−置換マレイミド化合物と、ヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和化合物とを単量体成分とする共重合体を得る方法は特に限定されず、溶液重合法や塊状重合法等、従来公知の重合法の採用が可能である。中でも、重合反応中の温度制御が容易な溶液重合法が好ましい。
【0028】
上記共重合体が100モル%の構成ユニットからなるものであるとき、N−置換マレイミド基を含有する構成ユニットは15〜60モル%とすることが好ましい。この好適範囲は、ポリマー(A)におけるN−置換マレイミド基含有ユニット数と同じである。N−置換マレイミド基含有ユニット量が15モル%未満では、硬化塗膜に充分な耐熱性を付与することができない。一方、N−置換マレイミド基含有ユニット量が60モル%を超えると、(b)においては不飽和一塩基酸由来のカルボキシル基量が、(c)においてはヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和化合物に由来するユニットの量が少なくなるため、後に続く多塩基酸無水物反応工程で導入されるカルボキシル基量が、それぞれアルカリ現像性を発現させるには不充分となることがある。N−置換マレイミド基含有ユニットのより好ましい下限は20モル%、さらに好ましい下限は25モル%である。また、より好ましい上限は50モル%、さらに好ましい上限は40モル%である。
【0029】
溶液重合の際の溶媒としては、重合を阻害したり、原料単量体各成分を変質させるおそれの無い溶媒であれば特に限定されない。使用可能な溶媒の具体的としては、トルエン、キシレン等の炭化水素類;セロソルブアセテート、カルビトールアセテート、(ジ)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、グルタル酸(ジ)メチル、コハク酸(ジ)メチル、アジピン酸(ジ)メチル、メチルアセテート、エチルアセテート、ブチルアセテート、メチルプロピオネート等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチル−t−ブチルエーテル、(ジ)エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等が挙げられ、これらの1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0030】
重合反応の際に使用可能な開始剤としては、通常のラジカル重合開始剤が挙げられる。具体的には、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルイソブチロニトリル)等のアゾ系化合物;ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物等を挙げることができ、所望する反応条件に応じて適宜選択して使用すればよい。重合開始剤の使用量は、重合反応に使用するN−置換マレイミド化合物(A)に対して、0.01〜15質量%とするのが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%である。
【0031】
溶液重合法の具体的手法としては特に限定されないが、溶媒中に、全ての成分を一時に仕込んで重合する方法、予め溶媒と成分の一部を仕込んだ反応容器に残りの成分を連続添加あるいは逐次添加して重合する方法等が採用可能である。反応時の圧力についても特に限定はなく、常圧、加圧のいずれの条件下で行ってもよい。重合反応時の温度については、使用する原料単量体成分の種類や組成比、使用溶媒の種類にもよるが、通常は20〜150℃の範囲で行うのが好ましく、より好ましくは30〜130℃である。
【0032】
重合反応時には、重合体溶液の最終固形分濃度が10〜70質量%となるように、溶媒と各単量体成分の量を設定することが好ましい。この最終固形分濃度が10質量%未満では、生産性が低くなるため好ましくない。一方、最終固形分濃度が70質量%を越える場合、溶液重合の場合でも重合液の粘度が上昇して重合転化率が上昇しないおそれがある。より好ましい最終固形分濃度は20〜65質量%であり、さらに好ましくは30〜60質量%である。
【0033】
樹脂組成物としての特性、アルカリ現像性、硬化塗膜物性、耐熱性等を考慮すれば、共重合体の重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したときの値(詳しい測定条件は後述する)として、ポリスチレン換算値で1,000〜200,000が好ましい。Mwが1,000未満では、加熱乾燥による塗膜形成の際のタックフリー性や硬化塗膜の耐熱性が不充分となることがある。一方、Mwが200,000を越えると、アルカリ現像性が低下するおそれがある。Mwのより好ましい下限は3,000、さらに好ましい下限は5,000である。また、より好ましい上限は150,000、さらに好ましい上限は100,000である。
【0034】
この範囲の分子量に調整するために、必要であれば、重合反応時に連鎖移動剤を用いてもよい。使用可能な連鎖移動剤としては、重合に使用する各単量体成分に悪影響を及ぼさないものであればよく、通常、チオール化合物が使用される。具体的には、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン;チオフェノール等のアリールメルカプタン;メルカプトプロピオン酸、メルカプトプロピオン酸メチル等のメルカプト基含有脂肪族カルボン酸およびそのエステル等が好ましいものとして挙げられる。連鎖移動剤の使用量は特に限定されず、所望の分子量を有する共重合体が得られるように適宜調節すればよいが、一般的には、重合に使用される単量体の総モル数に対して、0.001〜1.0(モル比)の範囲で使用される。
【0035】
(c)においては、引き続いて共重合体中のヒドロキシル基に対して多塩基酸無水物を反応させる。多塩基酸無水物は、共重合体中のヒドロキシル基1化学当量に対して、多塩基酸無水物中の酸無水物基が0.1〜1.1モルとなるように反応させることが好ましく、より好ましくは0.2〜1.0モルである。
【0036】
反応時の溶媒としては特に限定されず、重合溶媒として用いることのできる溶媒として前記した溶媒がいずれも使用可能である。工業的には、溶液重合に引き続いて、反応溶液中に多塩基酸無水物を添加して変性反応を行うのが簡便である。反応条件については、(b)において、ヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和化合物と多塩基酸無水物との反応物を得る際に採用できた公知の手法をここでも採用できる。
【0037】
ここまで、N−置換マレイミド基を含み、カルボキシル基が1個以上のエステル結合を介して主鎖に結合した共重合体の合成方法(代表例)を説明した。なお、これらの説明及び以後の説明で「共重合体」というのは、次工程でポリマー(A)に変性される前の段階のものを指す。
【0038】
次に、この共重合体のカルボキシル基に対して、カルボキシル基と反応し得る官能基を有するエチレン性不飽和化合物を反応させて、ポリマー(A)を得る方法について説明する。
【0039】
カルボキシル基と反応し得る官能基としては、エポキシ基、ビニルエーテル基、オキサゾリニル基、アジリジニル基、オキセタニル基等が挙げられる。カルボキシル基と反応し得る官能基を有するエチレン性不飽和化合物の具体例としては、前記したエポキシ基含有エチレン性不飽和化合物、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、N−(メタ)アクリロイルアジリジン、3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0040】
また、共重合体がヒドロキシル基を有する場合には、ヒドロキシル基と反応し得る官能基を有するエチレン性不飽和化合物を反応させて、ポリマー(A)にエチレン性不飽和二重結合を導入することもできる。ヒドロキシル基と反応し得る官能基としては、イソシアネート基、ビニルエーテル基等が挙げられる。ヒドロキシル基と反応し得る官能基を有するエチレン性不飽和化合物の具体例としては、イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0041】
(c)において、共重合体中のヒドロキシル基と、ヒドロキシル基と反応し得る官能基を有するエチレン性不飽和化合物とを反応させる場合は、多塩基酸無水物との反応の前後で、あるいは同時に、任意の段階で行うことができる。エチレン性不飽和二重結合導入反応は、各々の官能基について、公知の手法で、触媒、反応温度を適宜選択して行えばよい。
【0042】
共重合体中のカルボキシル基および/またはヒドロキシル基に反応させるためのエチレン性不飽和化合物は、得られるポリマー(A)100質量部あたり、エチレン性不飽和二重結合のモル数が0.05モル未満となるように反応させる。具体的には、エチレン性不飽和化合物中のこれらと反応し得る官能基が0.9モル以下、より好ましくは0.8モル以下となるようにすることが好ましい。ポリマー(A)100質量部あたりのエチレン性不飽和二重結合のモル数が0.05モル以上となると、硬化塗膜に脆さが発現したり、硬化時の体積収縮によって基板との密着性が低下する(寸法安定性が低下する)等、物性バランスが損なわれる。より好ましい上限は0.048モルである。
【0043】
本発明の感光性樹脂組成物は、ポリマー(A)がカルボキシル基を有していることからアルカリ現像が可能であるが、弱アルカリ水溶液でも良好なアルカリ現像性を発現させるためには、ポリマー(A)の酸価が30mgKOH/g以上(より好ましくは50mgKOH/g以上)、150mgKOH/g以下(より好ましくは120mgKOH/g以下)となるよう、重合時の単量体組成やエチレン性不飽和化合物の使用量を調整することが好ましい。
【0044】
このようにして得られたポリマー(A)は、カルボキシル基とエチレン性不飽和二重結合の両方を有していることから、単独でアルカリ現像型の画像形成用感光性樹脂とすることができる。また、ポリマー(A)とエチレン性不飽和化合物(B)とを混合してアルカリ現像型の画像形成用感光性樹脂組成物として用いることもできる。
【0045】
このようなエチレン性不飽和化合物(B)としては、ラジカル重合性樹脂とラジカル重合性モノマーとがある。
【0046】
ラジカル重合性樹脂としては、不飽和ポリエステル、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等が使用できる。
【0047】
エチレン性不飽和化合物(B)としてこれらのラジカル重合性樹脂を用いる場合、本発明の感光性樹脂組成物のポリマー(A)に由来する耐熱性向上効果等を有効に発揮させるためには、本発明のポリマー(A)100質量部に対し、ラジカル重合性樹脂を300質量部以下で使用することが好ましい。より好ましい上限値は200質量部、さらに好ましい上限値は150質量部である。
【0048】
上記ラジカル重合性樹脂の中で、特にエポキシ(メタ)アクリレートは、光重合性が良好で、得られる硬化物の特性改善に効果的であることから、本発明の感光性樹脂組成物の感光性樹脂成分として好適に用いることができる。エポキシ(メタ)アクリレートは、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する公知のエポキシ樹脂と不飽和一塩基酸((メタ)アクリル酸等)との反応物をそのまま用いることができる。
【0049】
好ましいエポキシ樹脂は、1分子中に3個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であり、より好ましくはノボラック型エポキシ樹脂であり、さらには軟化点75℃以上のノボラック型エポキシ樹脂を用いると、加熱乾燥による塗膜形成の際のタックフリー性が良好となる点で好ましい。また、エポキシ(メタ)アクリレートに、前記した多塩基酸無水物をエポキシ(メタ)アクリレートの有するヒドロキシル基に付加反応させて得られるカルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレートを用いることも可能であり、高レベルのアルカリ現像性を確保することができる。
【0050】
エポキシ(メタ)アクリレートと多塩基酸無水物との反応は、前記したヒドロキシル基と多塩基酸無水物との反応と同様の手法で行うことができる。また、ポリマー(A)を得る方法として(c)を採用する場合は、多塩基酸無水物を反応させる前の共重合体とエポキシ(メタ)アクリレートの混合物に多塩基酸無水物を反応させ、ポリマー(A)へのカルボキシル基導入反応と同時に行うこともできる。
【0051】
エチレン性不飽和化合物(B)としてラジカル重合性モノマーも用いることができ、単官能(ラジカル重合可能な二重結合が1個)モノマーと多官能モノマー(ラジカル重合可能な二重結合が2個以上)のいずれも使用可能である。ラジカル重合性モノマーは光重合に関与し、得られる硬化物の特性を改善する上に、感光性樹脂組成物の粘度を調整することもできる。ラジカル重合性モノマーを使用する場合の好ましい使用量は、本発明のポリマー(A)とラジカル重合性樹脂の総量100質量部に対し、300質量部以下(より好ましくは100質量部以下)である。
【0052】
ラジカル重合性モノマーの具体例としては、ポリマー(A)を得る際の原料であるN−置換マレイミド化合物、ヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和化合物、(メタ)アクリル酸等の不飽和一塩基酸、エポキシ基等のカルボキシル基と反応し得る官能基を有するエチレン性不飽和化合物、および併用してもよいものとして例示した前記単量体類(単官能モノマー)に加え、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルベンゼンホスホネート等の芳香族ビニル系モノマー;(ジ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]トリアジン等の(メタ)アクリル系モノマー;(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル等のエチレン性不飽和二重結合を有するビニル(チオ)エーテル化合物;トリアリルシアヌレート等、ラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能モノマーが挙げられる。これらは、感光性樹脂組成物の用途や要求特性に応じて適宜選択され、1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0053】
なお、エチレン性不飽和化合物(B)は、ポリマー(A)およびエチレン性不飽和化合物(B)の合計量100質量部あたり、ポリマー(A)およびエチレン性不飽和化合物(B)中のエチレン性不飽和二重結合の総モル数が0.03〜0.3モルとなるように配合することが好ましい。エチレン性不飽和二重結合の総モル数が0.3モルを超えると、硬化塗膜に脆さが発現したり、硬化時の体積収縮によって基板との密着性が低下する(寸法安定性が低下する)等、物性バランスが損なわれる。より好ましい上限は0.25モル、さらに好ましい上限は0.2モルである。また、0.03モルを下回ると、耐熱性が充分に発現しない。より好ましい下限は0.05モル、さらに好ましい下限は0.07モルである。
【0054】
本発明の感光性樹脂組成物を基材に塗布する際の作業性等の観点から、組成物中に溶媒を配合してもよい。溶媒としては、重合体を溶液重合法で得る際に使用できる溶媒がここでも使用可能であり、1種または2種以上を混合して用いることができ、塗布作業時に組成物が最適粘度となるように適当量使用するとよい。
【0055】
本発明の感光性樹脂組成物は公知の熱重合開始剤を使用することにより熱硬化も可能であるが、フォトリソグラフィーにより微細加工や画像形成を行うには、光重合開始剤を添加して光硬化させることが好ましい。
【0056】
光重合開始剤としては公知のものが使用でき、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、4−(1−t−ブチルジオキシ−1−メチルエチル)アセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4−(1−t−ブチルジオキシ−1−メチルエチル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オンや2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1;アシルホスフィンオキサイド類およびキサントン類等が挙げられる。
【0057】
これらの光重合開始剤は1種または2種以上の混合物として使用され、ポリマー(A)とエチレン性不飽和化合物(B)の合計100質量部に対し、0.5〜30質量部含まれていることが好ましい。光重合開始剤の量が0.5質量部より少ない場合には、光照射時間を増やさなければならなかったり、光照射を行っても重合が起こりにくかったりするため、適切な表面硬度が得られなくなる。なお、光重合開始剤を30質量部を超えて配合しても、多量に使用するメリットはない。
【0058】
本発明の感光性樹脂組成物には、カルボキシル基と反応し得る官能基を一分子中に2個以上有する化合物(C)を配合してもよい。この化合物(C)は、ポリマー(A)中のカルボキシル基に対して架橋反応を行う架橋剤である。化合物(C)を配合しておけば、光と熱とを併用して三次元硬化反応を起こさせることができ、より強固な硬化塗膜を得ることができる。画像形成に用いる場合は、光照射、アルカリ現像後に熱処理することで、硬化塗膜中のカルボキシル基を消費させつつ架橋度を上げることができ、耐久性等の物性を一層向上させることができる。
【0059】
上記化合物(C)としては、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキセタン化合物等が挙げられる。具体的には、エポキシ化合物としては、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート等が、オキサゾリン化合物としては1,3−フェニレンビスオキサゾリン等が、オキセタン化合物としては、1,4−ビス{3−(3−エチルオキセタニル)メトキシ}ベンゼンが挙げられる。
【0060】
化合物(C)の好ましい使用量は、ポリマー(A)とエチレン性不飽和化合物(B)の合計100質量部に対し、5〜70質量部、より好ましい使用量は10〜60質量部である。このとき、ジシアンジアミド、イミダゾール化合物等の硬化剤を併用してもよい。
【0061】
本発明の感光性樹脂組成物には、さらに必要に応じて、タルク、クレー、硫酸バリウム等の充填材、着色用顔料、消泡剤、カップリング剤、レベリング剤、増感剤、離型剤、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、重合抑制剤、増粘剤等の公知の添加剤を添加してもよい。さらに、各種強化繊維を補強用繊維として用い、繊維強化複合材料とすることができる。
【0062】
本発明の感光性樹脂組成物を画像形成用として使用する場合には、通常、基材に公知の方法で塗布・乾燥し、露光して硬化塗膜を得た後、未露光部分をアルカリ水溶液に溶解させてアルカリ現像を行う。現像に使用可能なアルカリの具体例としては、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物;水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属化合物;アンモニア;モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジメチルプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリエチレンイミン等の水溶性有機アミン類が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0063】
本発明の感光性樹脂組成物は、液状のものを直接基材に塗布する方法以外にも、予めポリエチレンテレフタレート等のフィルムに塗布して乾燥させたドライフィルムの形態で使用することもできる。この場合、ドライフィルムを基材に積層し、露光前または露光後にフィルムを剥離すればよい。
【0064】
また、印刷製版分野で最近多用されているCTP(Computer To Plate)システム、すなわち、露光時にパターン形成用フィルムを使用せず、デジタル化されたデータによってレーザー光を直接塗膜上に走査・露光して描画する方法を採用することができる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例によって本発明をさらに詳述するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは全て本発明の技術的範囲に包含される。なお、以下の説明では特に断らない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を表す。また、以下の実施例における各物性値の測定方法は次の通りである。
【0066】
[現像性]
イルガキュアー907(イルガキュアは登録商標;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の光重合開始剤)をポリマー(A)の溶液とエチレン性不飽和化合物(B)の溶液との混合物の固形分に対して5%添加して均一溶液とし、銅板上に乾燥後の膜厚が50μmとなるように塗布した後、80℃で30分間加熱した。その後、30℃の1%炭酸ナトリウム水溶液中に浸漬し、現像性(アルカリ溶解性)を評価した。60秒以内に塗膜が溶解除去されたものを○、60秒経過しても塗膜が残存しているものを×とした。
【0067】
[光硬化性]
現像性評価と同様にして得た乾燥塗膜に対し、紫外線露光装置を用いて2J/cmの露光を行った後、30℃の1%炭酸ナトリウム水溶液中に90秒浸漬し、塗膜の残存度合いによって光硬化性を評価した。塗膜に影響がない場合を○、塗膜が剥がれた場合を×とした。
【0068】
[耐熱性:ガラス転移温度]
ポリマー(A)の溶液とエチレン性不飽和化合物(B)の溶液との混合物の固形分に対して、化合物(C)としてのクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商品名「EOCN−104S」;日本化薬社製;エポキシ当量219)を40%、前記イルガキュアー907を5%、硬化剤としてジシアンジアミドを2%添加して均一溶液とし、ポリエチレンテレフタレートフィルムに乾燥後の膜厚が100μmになるように塗布した後、80℃で30分間加熱した。次いで、紫外線露光装置を用いて2J/cmの露光を行った後、さらに、160℃で1時間加熱した。室温まで冷却した後、ポリエチレンテレフタレートフィルムから硬化塗膜を剥離して試験片を得た。耐熱性の尺度として、ガラス転移温度(Tg;℃)をTMA(島津製作所製TMA−50使用)により測定した。なお、TMA測定用の試料は、縦、約20mm、横、約5mmの長方形とし、23℃から200℃まで昇温速度5℃/分で昇温しながら、縦方向の引張によってTgを測定した。
【0069】
[耐屈曲性]
TMA測定用試験片と同様にして得た試験片を用い、室温(23℃)下、10mmφの心棒で、JIS K 5400-1990の8.1に準じて耐屈曲性の評価を行った。クラックの発生の有無は、目視で評価した。クラック発生なしの場合を○、クラックが発生した場合を×とした。また、クラックの発生がなかったものについては、別の試験片を120℃で1週間熱処理した後に、室温(23℃)下で上記と同様にして耐屈曲性の評価を行った。
【0070】
[密着性(寸法安定性)]
現像性評価と同様にして得た乾燥塗膜に対し、紫外線露光装置を用いて2J/cmの露光を行った後、高温条件として180℃で30分加熱した。室温まで冷却した後、セロハンテープ(ニチバン社製;品番「CT−24」)を、約20mm四方の貼着面となるよう手で貼り付け、すぐにまた手で剥がしたときの塗膜を残存状態を目視で評価した。塗膜に影響がなかった場合を○、一部の塗膜が剥離した場合を△、塗膜の大部分が剥離した場合を×とした。
【0071】
合成例1(ポリマー(A−1)の合成)
撹拌装置、温度計、還流冷却器、ガス導入管および滴下ロートを備えた容器に、溶媒としてDBE−5(商品名;デュポン社製、グルタル酸ジメチル主成分)を260部仕込み、容器内を10分間窒素ガス置換した後、撹拌しながら内温が110℃になるまで加熱した。別途、滴下ロートを2つ用意し、その1つに、N−フェニルマレイミド113.1部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート141.6部、スチレン45.3部および溶媒としてDBE−5を200部混合して得た溶液を仕込んだ。また、他の1つに、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)[V−59;和光純薬工業社製]6部および溶媒としてDBE−5を60部混合して得た溶液を仕込んだ。
【0072】
容器内の温度を110℃に維持し、窒素雰囲気下、2つの滴下ロート内の溶液を各々2時間かけて滴下して重合し、滴下終了後、110℃でさらに3時間熟成させた。熟成終了後、導入ガスを窒素から窒素/空気=1/1(vol.%)の混合ガスに切り替え、120℃に昇温して1時間保ち、重合開始剤を失活させた。
【0073】
N−フェニルマレイミド:2−ヒドロキシエチルメタクリレート:スチレン=30:50:20(モル比)、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が24000の共重合体を36.6%含む溶液が得られた。なお、GPCによる測定条件は、以下の通りである。
測定装置 :HLC−8020(東ソー社製)
カラム :TSKgel G4000H×1本、TSKgel G3000H×2本、TSKgel G2000H×1本を直列に連結(いずれも東ソー社製)
溶離液 :テトラヒドロフラン
溶離液流量 :1ml/分
検出器 :RI
【0074】
次に、カルボキシル基導入反応を行った。上記共重合体溶液全量に、テトラヒドロ無水フタル酸149部、触媒としてベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.24部を加え、窒素/空気=1/1(vol.%)の混合ガス雰囲気下、120℃で4時間反応させた。酸価が122mgKOH/gのカルボキシル基が導入された共重合体を46.3%含む溶液が得られた。
【0075】
次に、エチレン性不飽和二重結合導入反応を行った。上記カルボキシル基が導入された共重合体溶液100部に、グリシジルメタクリレート3.17部、重合禁止剤としてメチルハイドロキノン0.03部、触媒としてベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.02部を仕込み、窒素/空気=1/1(vol.%)の混合ガス雰囲気下、110℃で6時間反応させた。その結果、酸価が89mgKOH/g、ポリマー100質量部あたりのエチレン性不飽和二重結合のモル数が0.045モルのポリマー(A−1)を48.0%含むDBE−5溶液が得られた。
【0076】
合成例2(エチレン性不飽和化合物(B)としてのカルボキシル基含有エポキシアクリレートの合成)
撹拌装置、温度計、還流冷却器、ガス導入管を備えた容器に、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商品名「YDCN−703」;東都化成製;エポキシ当量207)414部、アクリル酸145部、前記DBE−5を314部、エステル化触媒としてベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド1.7部、重合禁止剤としてメチルハイドロキノン0.5部を仕込み、窒素/空気=1/1(vol.%)の混合ガス雰囲気下、120℃で20時間反応させ、反応物の酸価が2mgKOH/gになったことを確認した。次いで、テトラヒドロ無水フタル酸109部、触媒としてベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.3部を仕込み、窒素/空気=1/1(vol.%)の混合ガス雰囲気下、100℃で2時間反応させ、酸価が62mgKOH/gのエチレン性不飽和化合物(B)を68.0%含むDBE−5溶液が得られた。
【0077】
実施例1(感光性樹脂組成物の調製および特性評価)
前記ポリマー(A−1)の溶液10部と上記エチレン性不飽和化合物(B)の溶液8.6部とを混合した樹脂組成物を用いて、前記した方法で現像性、光硬化性、熱的特性、耐屈曲性、密着性を評価した。結果を表1に示した。
【0078】
合成例3(ポリマー(A−2)の合成)
合成例1におけるポリマー(A−1)の合成途中で得られた酸価が122mgKOH/gのカルボキシル基が導入された共重合体を46.3%含む溶液100部を用いて、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(日本化成社製)によるエチレン性二重結合導入反応を行った。
【0079】
グリシジルメタクリレートに変えて4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルを4.47部用いたことと、仕込みの際にDBE−5を1.40部添加したこと、110℃で8時間反応させたこと以外は、合成例1と同様にして反応を行い、酸価が88mg/KOH、ポリマー100部当たりのエチレン性不飽和二重結合のモル数が0.044モルのポリマー(A−2)を48.0%含むDBE−5溶液が得られた。
【0080】
実施例2(感光性樹脂組成物の調製および特性評価)
実施例1において、ポリマー(A−1)の溶液に変えて上記ポリマー(A−2)の溶液を用いた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、各特性を評価した。結果を表1に示した。
【0081】
合成例4(ポリマー(A−3)の合成)
合成例1で用いたものと同様の容器に、溶媒としてDBE−5を276部仕込み、容器内を10分間窒素ガス置換した後、撹拌しながら内温が110℃になるまで加熱した。別途、滴下ロートを2つ用意し、その1つに、N−フェニルマレイミド111部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート166.8部、スチレン22.2部およびDBE−5を216部混合して得た溶液を仕込んだ。また、他の1つに、重合開始剤として1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)[V−40;和光純薬工業社製]6部とDBE−5を60部混合して得た溶液を仕込んだ。後は、合成例1と同様にして重合し、N−フェニルマレイミド:2−ヒドロキシエチルメタクリレート:スチレン=30:60:10(モル比)、Mwが45000の共重合体を35.2%含む溶液が得られた。
【0082】
次に、上記共重合体溶液全量と、テトラヒドロ無水フタル酸178.8部、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.26部を用いて、合成例1と同様にしてカルボキシル基導入反応を行った。酸価が138mgKOH/gのカルボキシル基が導入された共重合体を46.4%含む溶液が得られた。
【0083】
次に、上記共重合体溶液100部と、グリシジルメタクリレート2.92部、メチルハイドロキノン0.03部、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.02部を用いて、合成例1と同様にしてエチレン性不飽和二重結合導入反応を行った。その結果、酸価が106mgKOH/g、ポリマー100質量部あたりのエチレン性不飽和二重結合のモル数が0.042モルのポリマー(A−3)を48.0%含むDBE−5溶液が得られた。
【0084】
実施例3(感光性樹脂組成物の調製および特性評価)
実施例1において、ポリマー(A−1)の溶液に変えて上記ポリマー(A−3)の溶液を用いた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、各特性を評価した。結果を表1に示した。
【0085】
合成例5(ポリマー(A−4)の合成)
合成例1で用いたものと同様の容器に、DBE−5を174.1部仕込み、容器内を10分間窒素ガス置換した後、撹拌しながら内温が110℃になるまで加熱した。滴下ロートの1つに、N−フェニルマレイミド100部、「ライトアクリレートHOA−HH」(商品名;共栄社化学社製;2−ヒドロキシエチルアクリレートとヘキサヒドロ無水フタル酸との付加反応物)260部、スチレン40部およびDBE−5を268.2部混合して得た溶液を仕込んだ。また、他の1つに、前出の[V−59]8部とDBE−5を80部混合して得た溶液を仕込んだ。後は、合成例1と同様にして重合し、N−フェニルマレイミド:HOA−HH:スチレン=30:50:20(モル比)、酸価が135mgKOH/g、Mwが15000のカルボキシル基が導入された共重合体を43.4%含む溶液が得られた。
【0086】
次に、上記共重合体溶液100部と、グリシジルメタクリレート2.94部、メチルハイドロキノン0.03部、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.02部を用いて、合成例1と同様にしてエチレン性不飽和二重結合導入反応を行った。その結果、酸価が102mgKOH/g、ポリマー100質量部あたりのエチレン性不飽和二重結合のモル数が0.045モルのポリマー(A−4)を45.0%含むDBE−5溶液が得られた。
【0087】
実施例4(感光性樹脂組成物の調製および特性評価)
実施例1において、ポリマー(A−1)の溶液に変えて、上記ポリマー(A−4)の溶液を10.7部用いた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、各特性を評価した。結果を表1に示した。
【0088】
実施例5(感光性樹脂組成物の調製および特性評価)
上記ポリマー(A−4)のDBE−5溶液38.7部と、合成例2で得たエチレン性不飽和化合物(B)のDBE−5溶液8.6部とを混合して樹脂組成物を調製し、各特性を評価した。結果を表1に示した。
【0089】
合成例6(ポリマー(A−5)の合成)
合成例1で用いたものと同様の容器に、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを94部仕込み、容器内を10分間窒素ガス置換した後、撹拌しながら内温が110℃になるまで加熱した。滴下ロートの1つに、N−フェニルマレイミド107.6部、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート149.3部、スチレン43.1部およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを287部混合して得た溶液を仕込んだ。また、他の1つに、前出の[V−59]9部とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを90部混合して得た溶液を仕込んだ。後は、合成例1と同様にして重合し、N−フェニルマレイミド:2−ヒドロキシプロピルメタクリレート:スチレン=30:50:20(モル比)、Mwが21000の共重合体を38.9%含む溶液が得られた。
【0090】
次に、上記共重合体溶液の全量と、テトラヒドロ無水フタル酸142部、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.24部を用いて、合成例1と同様にしてカルボキシル基導入反応を行った。酸価が118mgKOH/gのカルボキシル基が導入された共重合体を48.4%含む溶液が得られた。
【0091】
次に、上記共重合体溶液100部と、グリシジルメタクリレート3.19部、メチルハイドロキノン0.04部、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.03部を用いて、合成例1と同様にしてエチレン性不飽和二重結合導入反応を行った。その結果、酸価が86mgKOH/g、ポリマー100質量部あたりのエチレン性不飽和二重結合のモル数が0.044モルのポリマー(A−5)を50.0%含むプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液が得られた。
【0092】
実施例6(感光性樹脂組成物の調製および特性評価)
上記ポリマー(A−5)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液11.6部と、合成例2で得たエチレン性不飽和化合物(B)のDBE−5溶液8.6部とを混合して樹脂組成物を調製し、各特性を評価した。結果を表1に示した。
【0093】
合成例7(比較用ポリマー(A’−1)の合成)
合成例1におけるポリマー(A−1)の合成途中で得られた酸価が122mgKOH/gのカルボキシル基が導入された共重合体を46.3%含む溶液100部と、グリシジルメタクリレート4.12部、メチルハイドロキノン0.03部、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.02部、DBE−5を1.03部用いた以外は合成例1と同様にして、エチレン性二重結合導入反応を行った。その結果、酸価が81mg/KOH、ポリマー100部当たりのエチレン性不飽和二重結合のモル数が0.058モルの比較用ポリマー(A’−1)を48.0%含むDBE−5溶液が得られた。
【0094】
比較例1(感光性樹脂組成物の調製および特性評価)
実施例1において、ポリマー(A−1)の溶液に変えて上記ポリマー(A’−1)の溶液を用いた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、各特性を評価した。結果を表1に示した。
【0095】
合成例8(比較用ポリマー(A’−2)の合成)
合成例4におけるポリマー(A−3)の合成途中で得られた酸価が138mgKOH/gのカルボキシル基が導入された共重合体を46.4%含む溶液100部と、グリシジルメタクリレート4.40部、メチルハイドロキノン0.03部、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.02部、DBE−5を1.55部用いて、合成例1と同様にしてエチレン性不飽和二重結合導入反応を行った。その結果、酸価が92mgKOH/g、100質量部あたりのエチレン性不飽和二重結合のモル数が0.061の比較用ポリマー(A’−2)を48.0%含むDBE−5溶液が得られた。
【0096】
比較例2(感光性樹脂組成物の調製および特性評価)
実施例1において、ポリマー(A−1)の溶液に変えて上記ポリマー(A’−2)の溶液を用いた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、各特性を評価した。結果を表1に示した。
【0097】
比較例3
合成例2で合成したエチレン性不飽和化合物(B)のDBE−5溶液を用いて(ポリマー(A)は使用せず)、各特性を評価した。結果を表1に示した。
【0098】
【表1】

【0099】
表1から、実施例の感光性樹脂組成物は、現像性、光硬化性が良好であり、硬化塗膜については、ガラス転移温度が維持されたまま、耐屈曲性や密着性が良好なものとなった。従って、本発明の感光性樹脂組成物を用いることにより、硬化物の耐熱性と、寸法安定性や脆さ軽減という相反する特性をバランス良く向上させることができた。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の感光性樹脂組成物は、アルカリ現像可能な画像形成用感光性樹脂組成物として、例えば、プリント配線基板用ソルダーレジスト、エッチングレジスト、無電解メッキレジスト、ビルドアップ法プリント配線板の絶縁層、液晶表示板製造用、印刷製版等の各種の用途に好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N−置換マレイミド基、カルボキシル基およびエチレン性不飽和二重結合を有し、かつ、ポリマー100質量部あたりのエチレン性不飽和二重結合のモル数が0.05モル未満であるポリマー(A)を含むことを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項2】
N−置換マレイミド基を有する構成ユニットが、ポリマー(A)100モル%中、15〜60モル%である請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
上記ポリマー(A)と、(A)以外のエチレン性不飽和化合物(B)を含むものである請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
上記エチレン性不飽和化合物(B)の少なくとも一部がエポキシ(メタ)アクリレートである請求項3に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
上記ポリマー(A)が有するカルボキシル基の少なくとも一部は、1個以上のエステル結合を介してポリマー(A)の主鎖に結合しているものである請求項1〜4のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、カルボキシル基と反応し得る官能基を一分子中に2個以上有する化合物(C)を含むものである請求項1〜5のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。

【公開番号】特開2007−139991(P2007−139991A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−332101(P2005−332101)
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】