説明

感光性樹脂組成物

【課題】高感度で、且つ要求に応じた硬度を有する感光性樹脂組成物を得ること。
【解決手段】可溶性合成高分子化合物、光重合性不飽化合物および光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物であって、前記光重合性不飽和化合物が多価アルコールのポリグリシジルエーテルとメタアクリル酸及びアクリル酸との開環付加反応生成物であり、かつメタアクリル酸の反応比率が25〜75モル%の範囲にあることを特徴とする凸版印刷用感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高感度で、且つ要求に応じた硬度が得られる感光性樹脂組成物に関するものであり、金属またはプラスチック基材上に該感光性樹脂組成物層を設けて、感光性樹脂凸版として利用できるものである
【背景技術】
【0002】
従来より、感光性樹脂層に透明部分を持つネガティブまたはポジティブの原図フィルムを通して活性光線を照射し、原図フィルムの透明部分に対応する感光性樹脂に光重合を起こさせ、ついで未光重合部分を適当な溶剤で除去することによってレリーフを形成せしめること、およびこれを印刷版材として用いることが知られている
【0003】
一般に感光性樹脂凸版の印刷品質は、感光性樹脂層の硬さで大きく左右されることが知られている感光性樹脂層が硬い場合は印圧によるレリーフ頂部の変形が小さいために細線や点の画像の再現性は優れているが、樹脂硬度が高くなるにつれてインキ転移性が悪くなり易い傾向にあるそのために樹脂硬度には最適な硬度範囲があり、ショアーDで50°から65°の間が望まれている
【0004】
一方、充分な樹脂硬度を得るためには光重合性不飽和化合物としてメタクリル酸エポキシエステル基を有する化合物が有効であることが知られているが、光重合速度が遅いために低感度の感光性樹脂組成物になるという問題点があった。
そこで、上記の問題点を解決するために、高感度化を目的として光重合開始剤量を増加することが考えられるが、光重合開始剤の吸収によりベース(支持体)に近い底部の光硬化が不充分になるために画像再現性が低下するという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来の感光性樹脂凸版の問題点を解決するものであり、高硬度で且つ高感度の感光性樹脂組成物を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明者らは先に従来例として示した光重合性不飽和化合物としてメタクリル酸エポキシエステルを有する化合物が高硬度化には有効であるが、欠点として低感度になる問題があることに着目し、欠点の解決のため鋭意研究を重ねた。その結果、メタクリル酸エポキシエステル基による低感度化の欠点を解決するために光重合性に優れたアクリル酸エポキシエステル基とメタクリル酸エポキシエステル基とを特定の範囲で含有させることで高硬度で且高感度の感光性樹脂組成物を達成し、遂に本発明を完成することができた。即ち本発明は、少なくとも可溶性合成高分子化合物、光重合性不飽化合物および光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物であって、前記光重合性不飽和化合物が多価アルコールのポリグリシジルエーテルとメタアクリル酸及びアクリル酸との開環付加反応生成物であり、かつメタアクリル酸の反応比率が25〜75モル%の範囲にあることを特徴とする感光性樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0007】
以上、かかる構成よりなる本発明は、優れた感度を有するとともに、要求に応じた硬度を得ることができるので、産業界に寄与すること大である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明において、合成高分子化合物としては公知の合成高分子化合物を使用出来る。例えばポリエーテルアミド(例えば特開昭55−79437号公報等)、ポリエーテルエステルアミド(例えば特開昭58−113537公報等)、三級窒素含有ポリアミド(例えば特開昭50−76055公報等)、アンモニウム塩型三級窒素原子含有ポリアミド(例えば特開昭53−36555公報等)、アミド結合を一つ以上有するアミド化合物と有機ジイソシアネート化合物の付加重合体(例えば特開昭58−140737公報等)、アミド結合を有しないジアミンと有機ジイソシアネート化合物の付加重合体(例えば特開平4−97154公報等)等があげられ、その中でも三級窒素原子含有ポリアミド及びアンモニウム塩型三級窒素原子含有ポリアミドが好ましい。
【0009】
次に本発明における光重合性不飽和化合物としては、多価アルコールのポリグリシジルエーテルとメタアクリル酸及びアクリル酸との開環付加反応生成物であり、前記多価アルコールとして具体的には、ジペンタエリスリトール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、フタル酸のエチレンオキサイド付加物等が挙げられ、その中でもトリメチロールプロパンが好ましい。
【0010】
なお、本発明における光重合性不飽和化合物のメタアクリル酸の反応比率は、25〜75モル%の範囲、好ましくは30〜70モル%、特に35〜65モル%であることが望ましく、反応比率が25モル%未満では、硬度が低くなり、一方75モル%を超えると、感度が低くなるので好ましくない。
前記メタアクリル酸の反応比率が25〜75モル%の範囲にある光重合性不飽和化合物を得る方法としては、多価アルコールのポリグリシジルエーテルとメタクリル酸との付加反応物を多価アルコールのポリグリシジルエーテルとアクリル酸との反応物に対して25〜75モル%の比率で混合してもよいが、製造の面から多価アルコールのポリグリシジルエーテルとの付加反応時にメタアクリル酸とアクリル酸を適切な範囲で混合することが望ましい。なお、メタアクリル酸及びアクリル酸の反応比率は25〜75モル%であるが、要求される感光性樹脂組成物の硬度によって適度に選定すればよい。
【0011】
なお、本発明感光性樹脂組成物において、製造時または保存時の安定性を向上させるために公知の熱重合禁止剤を配合することは可能である。熱重合禁止剤の具体的な例としては、フェノール類、ハイドロキノン類、カテコール類、フェノチアジン類等が挙げられる。
その他、可塑剤、染料、顔料、紫外線吸収剤、香料などを添加することができる。
【0012】
本発明の感光性樹脂組成物を製造する方法としては、可溶性高分子化合物、光重合性不飽和化合物及び光重合開始剤などの混合は、公知の任意の方法に従って行なうことができる。例えば、溶融状態で混合する方法、或いはアルコールなどの適当な溶媒で混合したのちに溶剤を除去する方法などが挙げられる。
また本発明の組成物は、例えば熱プレス、注型、或いは溶融押し出し、溶液キャストなどの任意の方法により、所望の厚みの板、フィルム、又は箔などシート状物とすることに積層することができる。
支持体としては、スチール、アルミニウム、ガラス、ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルム、アルミ蒸着したフィルムなど任意のものが使用できる。
【実施例】
【0013】
次に本発明を実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら制限されるものではない。なお、部とあるのは重量部を意味する。硬度及び感度は、以下の方法で測定した。
1)硬度:西独ツビック社製、ショアー式デュロメーター(ショアーDタイプ)を用いて室温下(25℃)で測定した。
2)感度:ストッファー社製21段のグレースケールを感光性樹脂表面に乗せて日本電子精機社製ケミカルランプ露光機で2分間露光した後、25℃の中性水で現像し、70℃で10分間乾燥後に4分間の後露光を行って得たレリーフの硬化段数で表した。
【0014】
実施例1
ε−カプロラクタム500重量部、N,N’−ビスアミノプロピルピペラジンとアジピン酸とのナイロン塩450重量部、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンとアジピン酸のナイロン塩50部とを重合せしめて、比粘度2.40の3級窒素原子を有するポリアミドを得た。このようにして得られたポリアミド55部をメタノール200部に溶解し、この溶液にメタクリル酸3部、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルとアクリル酸50モル%及びメタクリル酸50モル%との反応物36部、N−エチル−P−トルエンスルホンアミド5部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部、ベンジルジメチルケタール1部を加え、感光性樹脂組成物溶液を得た。
この溶液をテフロン(登録商標)コートしたシャーレに流延し、暗室にてメタノールを除去後、更に一昼夜40℃で減圧乾燥し、厚み約800μの組成物シートを得た。このシートを褐色顔料入り接着剤を20μコートした250μのペットフィルムに張り合わせ、更に組成物の上面にポリビニルアルコールを2μコートした厚さ125μのペットフィルムでカバーし、110℃で熱プレスして感光性樹脂層の厚みが700μの感光性樹脂原版を作成した。次いでこの原版よりカバーフィルムを剥離し、感光性樹脂表面に検査ネガを密着させ2分間露光した。ネガを取り除いた後、25℃の中性水で3分間現像し、70℃で10分間乾燥した。得られた感光性樹脂の感度は15段、樹脂硬度はショアーDで60であり、満足できるものであった。
【0015】
比較例1
実施例1において光硬化性不飽和化合物としてトリメチロールプロパンのトリグリシジルロールとアクリル酸80モル%及びメタクリル酸20モル%との反応物を用いた以外は全て実施例1と同様にして、感光性樹脂組成物を作成した。得られた感光性樹脂の感度は16段であったが、樹脂硬度はショアーDで48であり、満足できるものではなかった。
【0016】
比較例2
実施例1において光硬化性不飽和化合物としてトリメチロールプロパンのトリグリシジルロールとアクリル酸20モル%及びメタクリル酸80モル%との反応物を用いた以外は全て実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を作成した。得られた感光性樹脂の樹脂硬度はショアーDで64と満足できるものであったが、感度は13段と低く、満足できるものではなかった。
【0017】
実施例2
実施例1において光硬化性不飽和化合物としてトリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテルとアクリル酸25モル%及びメタクリル酸75モル%との反応物を用いた以外は全て実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を作成し、レリーフを作成した。得られた感光性樹脂の感度は15段で樹脂硬度はショアーDで62であり、満足できるものであった。
【0018】
実施例3
実施例1の光硬化性不飽和化合物としてトリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテルとアクリル酸70モル%及びメタクリル酸30モル%との反応物を用いた以外は全て実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を作成し、レリーフを作成した。得られた感光性樹脂の感度は16段で樹脂硬度はショアーDで56であり、満足できるものであった。
【0019】
実施例4
実施例1において光硬化性不飽和化合物としてエチレングリコールジエポキシエーテルとアクリル酸30モル%及びメタアクリル酸70モル%との反応物を用いた以外は全て実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を作成し、レリーフを作成した。得られた感光性樹脂の感度は15段、樹脂硬度はショアーDで57と満足できるものであった。
【0020】
実施例5
数平均分子量600のポリオキシエチレングリコールの両末端にアクリロニトリルを付加し、これを水素還元して得たα、ω−ジアミノポリオキシエチレンとアジピン酸との当モル塩55重量部、ε−カプロラクタム25重量部、およびヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との当モル塩20重量部を通常の条件で溶融重合して相対粘度(ポリマ−1gを抱水クロラ−ル100mlに溶解し、25℃で測定した)2.1のポリアミドを得た。
得られた重合体55部をメタノール200部に溶解し、この溶液に実施例1で用いたトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルとアクリル酸50モル%及びメタクリル酸50モル%との反応物39部、N−エチル−P−トルエンスルホンアミド5部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部、ベンジルジメチルケタール1部を加え、感光性樹脂組成物溶液を得た。得られた感光性樹脂組成物を実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を作成し、レリーフを作成した。
得られた感光性樹脂の感度は15段、樹脂硬度はショアーDで57であり、満足できるものであった。
【0021】
実施例6
2−メチルペンタメチレンジアミン 4部、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン14部をメタノールに溶解し、ポリエチレングリコール(平均分子量600)600部とヘキサメチレンジイソシアネート370部と反応させて末端に実質的に両末端にイソシアネート基を有するウレタンオリゴマーを82部をジアミンの溶液に攪拌下に徐々に添加した。両者の反応は10分間で完了した。この溶液をテフロン(登録商標)コートしたシャーレに取り、メタノールを蒸発除去後、減圧乾燥して得られた重合体は、主鎖にポリエチレングリコール鎖を50%含有し、比粘度が1.55であった。
得られた重合体55部をメタノール200部に溶解し、アジピン酸3.1部を加えて溶解した。この溶液に実施例2で使用したトリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテルとアクリル酸25モル%及びメタクリル酸75モル%との反応物34部、N−エチル−P−トルエンスルホンアミド5部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部、ベンジルジメチルケタール1部を加え、実施例1と用いて同様に感光性樹脂組成物を作成し、レリーフを作成した。
得られた感光性樹脂の感度は15段、樹脂硬度はショアーDで56であり、満足できるものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成高分子化合物としてポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミド、三級窒素含有ポリアミド、アンモニウム塩型三級窒素原子含有ポリアミド、アミド結合を一つ以上有するアミド化合物と有機ジイソシアネート化合物の付加重合体又はアミド結合を有しないジアミンと有機ジイソシアネート化合物の付加重合体、光重合性不飽化合物および光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物であって、前記光重合性不飽和化合物がトリメチロールプロパンを多価アルコールとする多価アルコールのポリグリシジルエーテルとメタアクリル酸及びアクリル酸との開環付加反応生成物であり、かつメタアクリル酸の反応比率が25〜75モル%の範囲にあることを特徴とする凸版印刷用感光性樹脂組成物。

【公開番号】特開2010−15169(P2010−15169A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214338(P2009−214338)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【分割の表示】特願平11−238545の分割
【原出願日】平成11年8月25日(1999.8.25)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】