説明

感圧位置特定センサケーブル

【課題】従来のセンサケーブルは、衝撃発生位置の距離を求めることができるが、抵抗層の抵抗値の変化率は非常に小さく、距離精度を十分高めることができない。特に、発生する電圧が低い場合には、その測定精度が低いと十分な分解能を得ることが難しいという課題があった。
【解決手段】代表例を挙げると、中心導体の上に誘電体を施し、その上に外部導体を施した副導体を、主同軸ケーブルの中心導体の上に巻き付け、または縦添えし、その上に圧電体、外部導体、外被を順次形成した構造であるので、直線状の主同軸ケーブル等に巻き付けた副導体等のケーブル長は長くなるため、副導体等からの信号出力は、主同軸ケーブル等の信号出力から遅延されて出力され、この2つの信号の時間差から衝撃による感圧位置発生地点迄の距離を算出でき、かつ、感圧検知時だけ動作する測定装置の使用により、低消費電力型の感圧位置特定センサケーブルを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃による感圧位置発生地点迄の距離を容易に特定することが可能な低消費電力型感圧位置特定センサケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のセンサケーブルは、下記の特許文献に示されているように、伝送路上に抵抗層を設けることにより、圧電効果により発生した電圧が分圧される。
【0003】
【特許文献1】米国特許第6534999号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この分圧された電圧比は、圧電効果により発生した電圧の大小に関わらず距離に比例するため、距離を求めることができるが、抵抗層の抵抗値の変化率は非常に小さいため、距離精度を十分高めることができない。特に、発生する電圧が低い場合には、その測定精度が低いと十分な分解能を得ることは難しいという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、これらの問題を解決する為に、鋭意検討した結果、
第1に、中心導体の上に誘電体を施し、その上に外部導体を施した副導体を、主同軸ケーブルの中心導体の上に巻き付け、または縦添えし、その上に圧電体を施し、更に、その上に外部導体を施し、最後に、外被を形成した構造で、
第2に、中心導体の上に誘電体を施し、その上に外部導体を施した副導体を、主同軸ケーブルの中心導体の上に配置された圧電体の上に、巻き付け、または縦添えし、その上に外部導体を施し、最後に、外被を形成した構造で、
第3に、第1、第2の副導体の代わりに、第1、第2の副導体の上に更に、絶縁体を施した副同軸ケーブルを使用した構造で、
第4に、第2の副導体を複数本にして主同軸ケーブルに並列に巻き付け、または配置し、副導体の外部導体を主同軸ケーブルの外部導体として併用する構造で、
第5に、中心導体上に圧電体を施した主センサケーブルを直線状に形成し、その周りに、中心導体上に圧電体を施した副センサケーブルを巻き付けた構造で、
第6に、直線状の主同軸ケーブルや主センサケーブルに巻き付けた副導体や副同軸ケーブルや副センサケーブルは、ケーブル長が長くなるため、副導体や副同軸ケーブルや副センサケーブルからの信号出力は、主同軸ケーブルや主センサケーブルの信号出力から遅延を伴って出力され、この2つの信号の時間差から衝撃による感圧位置発生地点迄の距離を算出する感圧位置特定センサケーブルである。
【発明の効果】
【0006】
以上説明のように、本発明の感圧位置特定センサケーブルによれば、
1.衝撃による感圧位置発生地点迄の距離を容易に算出することが可能になる。
2.従来のように、距離測定のための信号を常時印加する必要がなく、低消費電力で、測定用回路を動作させることができる。
3.主同軸ケーブルと副導体からなる第1実施例の場合、ケーブル2本を使用する必要がなく、低コストでシステムの構築ができる。
という優れた効果があるので、その工業的価値は大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の感圧位置特定センサケーブルの実施例を添付図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0008】
本発明の第1実施例の感圧位置特定センサケーブル高感度センサケーブル1Aは、図1(イ)に示すように、中心導体3Fの上に誘電体6Fを施し、その上に外部導体7Fを施した副導体4Fを、主同軸ケーブル2Sの中心導体3Sの上に巻き付け、その上に圧電体5Sを施し、更に、その上に外部導体7Sを施し、最後に、外被8Sを形成した構造である。図面では、巻き付けた場合を示しているが、縦添えでも構わない。本発明の第1実施例は、巻き付けピッチの調整により、精度を高める場合に適している。
【実施例2】
【0009】
本発明の第2実施例の感圧位置特定センサケーブルは、図には示さないが、主同軸ケーブル2Sの中心導体3Sの上に巻き付けた第1実施例とは、異なり、中心導体3Sの上ではなく、中心導体3Sに配置された圧電体6Fの上に設けた構造である。本発明の第2実施例は、第1実施例と同様、巻き付けピッチの調整により、精度を高める場合に適している。
【実施例3】
【0010】
本発明の第3実施例の感圧位置特定センサケーブルも、図には示さないが、第1、第2の副導体の代わりに、第1、第2の副導体の上に更に、絶縁体を施した副同軸ケーブルを使用した構造で、特に、100m以下の短距離等の場合において精度が要求される場合に適している。
【実施例4】
【0011】
本発明の第4実施例の感圧位置特定センサケーブルも、図には示さないが、第2の副導体を複数本にして主同軸ケーブルに並列に巻き付け、または配置し、副導体の外部導体を主同軸ケーブルの外部導体として併用する構造で、特に、耐ノイズ性が要求される場合に最適である。
【実施例5】
【0012】
本発明の第5実施例の感圧位置特定センサケーブル1Bは、図1(ロ)に示すように、中心導体3S上に圧電体5Sを施した主センサケーブル9Sを直線状に形成し、その周りに、中心導体3F上に圧電体5Fを施した副センサケーブル10Fを巻き付けた構造で、特に、100m以上等の長距離の場合に適している。
【実施例6】
【0013】
本発明の第6実施例の感圧位置特定センサケーブルは、図1(イ)、(ロ)と表2に示すように、直線状の主同軸ケーブル2Sや主センサケーブル9Sに巻き付けた副導体4Fや副同軸ケーブルや副センサケーブル10Fは、ケーブル長が長くなるため、副導体4Fや副同軸ケーブルや副センサケーブル10Fからの信号出力は、主同軸ケーブル2Sや主センサケーブル9Sの信号出力から遅延を伴って出力され、この2つの信号の時間差から衝撃による感圧位置発生地点迄の距離を算出する感圧位置特定センサケーブルである。ここで、図1(イ)に示すように、主同軸ケーブル2Sに衝撃が印加された時点で、主同軸ケーブルの中心導体3Sと主同軸ケーブルの外部導体7S間に圧電効果による起電力が生じる。同時に、主同軸ケーブルの中心導体3S上に巻き付けられた副導体4Fにおいて、副導体の中心導体3F上に配置された誘電体6Fによる容量性結合により副導体の中心導体3F上に電位を生じる。主同軸ケーブル2Sと副導体4F上に発生した電圧信号は、ケーブル端末部まで伝播する。この伝播した圧電信号は主同軸ケーブル2Sと副導体4Fのケーブル長の差から遅延時間を生じる。この2つの遅延時間の差から衝撃が印加された場所までの距離を算出することができる。次に、低消費電力型にする場合には、測定端に最初に到達する信号をトリガとして起動する計時装置とすることで待機電力を低減し、感圧検知時だけ動作する測定装置を使用することにより、低消費電力での動作が可能となり、装置自体の信頼性も高めることができる。また、本発明の第1〜第6実施例の感圧位置特定センサケーブルの構成体の代表例一覧表を下記の表1に示す。
【0014】
【表1】

本発明の感圧位置特定センサケーブルにおいて、衝撃による感圧位置発生地点迄の距離算出式並びにその説明図を下記の表2に示す。
【0015】
【表2】

【0016】
このことから、直線状の主同軸ケーブルや主センサケーブルに巻き付けた副導体や副同軸ケーブルや副センサケーブルは、ケーブル長が長くなるので、副導体や副同軸ケーブルや副センサケーブルからの信号出力は、主同軸ケーブルや主センサケーブルの信号出力から遅延を伴って出力され、この2つの信号の時間差から、上記計算式により、ケーブル端末部から衝撃による感圧位置発生地点迄の距離を算出することが可能になる。この上記計算式から、遅延時間の差は、ケーブル長や誘電率に起因することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
これまで、本発明の感圧位置特定センサケーブルは、代表例で示しているが、これ以外の各種の変形例等は、設計上本発明の範囲内であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(イ)は、本発明の第1実施例の感圧位置特定センサケーブル1Aの斜視図と断面図並びに等価回路説明図である。(ロ)は、本発明の第5実施例の感圧位置特定センサケーブル1Bの斜視図である。
【符号の説明】
【0019】
1A、1B
本発明の感圧位置特定センサケーブル
2S 主同軸ケーブル
3S 中心導体
3F 中心導体
4F 副導体
5S 圧電体
5F 圧電体
6F 誘電体
7S 外部導体
7F 外部導体
8S 外 被
8F 外 被
9S 主センサケーブル
10F 副センサケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心導体の上に誘電体を施し、その上に外部導体を施した副導体を、主同軸ケーブルの中心導体の上に巻き付け、または縦添えし、その上に圧電体を施し、更に、その上に外部導体を施し、最後に、外被を形成したことを特徴とする感圧位置特定センサケーブル。
【請求項2】
中心導体の上に誘電体を施し、その上に外部導体を施した副導体を、主同軸ケーブルの中心導体の上に配置された圧電体の上に、巻き付け、または縦添えし、その上に外部導体を施し、最後に、外被を形成したことを特徴とする感圧位置特定センサケーブル。
【請求項3】
請求項1、請求項2の副導体の代わりに、請求項1、請求項2の副導体の上に更に、絶縁体を施した副同軸ケーブルを使用したことを特徴とする感圧位置特定センサケーブル。
【請求項4】
請求項2の副導体を複数本にして主同軸ケーブルに並列に巻き付け、または配置し、副導体の外部導体を主同軸ケーブルの外部導体として併用することを特徴とする感圧位置特定センサケーブル。
【請求項5】
中心導体上に圧電体を施した主センサケーブルを直線状に形成し、その周りに、中心導体上に圧電体を施した副センサケーブルを巻き付けたことを特徴とする感圧位置特定センサケーブル。
【請求項6】
直線状の主同軸ケーブルや主センサケーブルに巻き付けた副導体や副同軸ケーブルや副センサケーブルは、ケーブル長が長くなるため、副導体や副同軸ケーブルや副センサケーブルからの信号出力は、主同軸ケーブルや主センサケーブルの信号出力から遅延を伴って出力され、この2つの信号の時間差から衝撃による感圧位置発生地点迄の距離を算出することを特徴とする感圧位置特定センサケーブル。

【図1】
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【公開番号】特開2006−98175(P2006−98175A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−283441(P2004−283441)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(390002598)沖電線株式会社 (45)
【Fターム(参考)】