説明

感放射線性樹脂組成物、それから形成された突起およびスペーサー、ならびにそれらを具備する液晶表示素子

【課題】垂直配向型液晶表示素子の突起とスペーサーを同時に形成するために好適に用いられる感放射線性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】[A](a1)不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸無水物、
(a2)テトラヒドロフラン骨格、フラン骨格、テトラヒドロピラン骨格、ピラン骨格および下記式(1)
【化1】


〔式中、Rは水素またはメチル基を示し、nは2〜10の整数である。〕
で表される骨格の群から選ばれる少なくとも1つの骨格を含有する不飽和化合物ならびに
(a3)上記(a1)〜(a2)成分以外の他の不飽和化合物
を共重合して得られる共重合体、
[B]重合性不飽和化合物、および
[C]感放射線性重合開始剤
を含有することを特徴とする垂直配向型液晶表示素子の突起とスペーサーを同時に形成するための感放射線性樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直型液晶表示素子の突起およびスペーサーを同時に形成するために好適な感放射線性樹脂組成物、それから形成された突起およびスペーサー、ならびにそれらを具備する液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネルはフラットパネルディスプレーの中で今日最も広く使用されているが、特に、TFT(薄膜トランジスター)方式の液晶表示パネル(TFT−LCD)が、パソコン、ワープロ等のOA機器や、液晶テレビ等の普及に伴って、表示品質に対する要求性能がますます厳しくなっている。
TFT−LCDの中で現在最も利用されている方式はTN(Twisted Nematic)型LCDであり、この方式は、2枚の透明な電極の外側に配向方向が90度異なる偏光膜をそれぞれ配置し、2枚の透明な電極の内側に配向膜を配置するとともに、両配向膜間にネマチック型液晶を配置して、液晶の配向方向が一方の電極側から他方の電極側にかけて90度捩じれるようにしたものである。この状態で無偏光の光が入射すると、一方の偏光板を透過した直線偏光が液晶中を偏光方向がずれながら透過するため他方の偏光板を透過できて、明状態となる。次に、両電極に電圧を印加して液晶分子を直立させると、液晶に達した直線偏光がそのまま透過するため他方の偏光板を透過できず、暗状態となる。その後、再び電圧を印加しない状態にすると、明状態に戻ることになる。
このようなTN型LCDは、近年における技術改良により、正面でのコントラストや色再現性などはCRTと同等あるいはそれ以上となっている。しかしながら、TN型LCDには視野角が狭いという大きな問題がある。
【0003】
このような問題を解決するものとして、STN(Super Twisted Nematic)型LCDやMVA(Multi-domain Vertically Aligned)型LCD(垂直配向型液晶表示パネル)が開発されている。これらのうちSTN型LCDは、TN型LCDのネマチック型液晶中に光活性物質であるカイラル剤をブレンドして、液晶分子の配向軸が2枚の電極間で180度以上捩じれるようにしたものである。またMVA型LCDは、負の誘電率異方性を有するネガ型液晶と垂直方向の配向膜を組み合わせて、TN型LCDの旋光モードではなく複屈折モードを利用したものであり、電圧を印加していない状態でも、配向膜に近い位置にある液晶の配向方向がほぼ垂直に維持されるため、コントラスト、視野角などに優れ、また液晶を配向させるためのラビング処理を行なわなくてもよいなど製造工程の面でも優れている(非特許文献1および特許文献1参照)。
MVA型LCDにおいては、1つの画素領域で液晶が複数の配向方向をとりうるようにするために、ドメイン規制手段として、表示側の電極を1つの画素領域内にスリットを有するものとするとともに、光の入射側の電極上の同一画素領域内に、電極のスリットと位置をずらして、斜面を有する突起(例えば、三角錐状、半凸レンズ形状等)を形成している。
このような突起は、通常、微細加工が可能で、形状の制御が容易であるといった利点を持つ、フォトリソグラフィーにより形成される。
【0004】
一方、液晶パネルには2枚の基板の間隔を一定に保つために所定のスペーサーを設置する必要がある。従来、このようなスペーサーとして、所定の粒径を有するガラスビーズ、プラスチックビーズ等のスペーサー粒子が使用されていた。しかし、これらスペーサー粒子は、ガラス基板上にランダムに散布されるため、有効画素部内に上記スペーサーが存在すると、スペーサーの写り込みがあったり、入射光が散乱を受け液晶パネルのコントラストが低下するという問題があった。これらの問題を解決するために感放射線性樹脂組成物を用いて有効画素部以外にスペーサーをフォトリソグラフィーにより形成する方法がとられるようになってきた。
【0005】
突起形成とスペーサー形成は感放射線性樹脂を使用したフォトリソグラフィーを使用するという点で同様のプロセスが使用できるが、下記するようにそれぞれの要求性能が異なる。
(1)突起とスペーサーとで、要求される膜厚が異なること。
(2)要求される形状が、突起は半凸レンズ状であるのに対し、スペーサーは柱状または順テーパ状と、それぞれ異なること。
【0006】
また、突起上には配向膜を形成する必要があるため、後の工程で配向膜を形成した際にハジキが出ないよう、配向膜材料に対する十分な塗れ性が必要となる。
一方、スペーサーは、液晶パネルに係る外部圧力にも変形しないよう、高度の圧縮強度が必要とされる。
さらに、突起、スペーサーともに、後のパネル組立工程で加えられる熱に対する耐性が必要となる。
【0007】
突起上に配向膜を形成した際、突起の基板に対するテーパー角が大きすぎると、例えば、30度以上となると、突起の上部において、配向膜の印刷不良が起こり、パネル形成後に表示不良が発生する可能性が高くなる。そこで、突起の基板に対するテーパー角は30度以下とすることが好ましい。
【0008】
以上のように、突起とスペーサーとは相異なる形状、化学的性質を要求されるため、従来、別々の感放射線性材料を使用し、別々の工程で形成する必要があった。なお、特許文献2には、ネガ型感光材料を使用し、突起とスペ−サーを同時形成することができる旨が開示されているが、当該公報にはこのような用途に使用されるべき感放射線性組成物の具体的な態様は何ら開示されておらず、突起とスペーサーとを同時に形成するための感放射線性組成物は、未だ知られておらず、このような材料の提供が強く求められている。
【0009】
【非特許文献1】武田有広、液晶、日本液晶学会、1999年4月25日、Vol.3,No.2,117
【特許文献1】特開平11−258605号公報
【特許文献2】特開2001−83517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上の事情に鑑みなされたもので、その目的は、垂直配向型液晶表示素子の突起とスペーサーを同時に形成するために好適に用いられる感放射線性樹脂組成物、およびそれから形成された突起およびスペーサー、それらを具備する液晶表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によると、上記課題は、第一に、
[A](a1)不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸無水物、
(a2)テトラヒドロフラン骨格、フラン骨格、テトラヒドロピラン骨格、ピラン骨格および下記式(1)
【0012】
【化1】

〔式中、Rは水素またはメチル基を示し、nは2〜10の整数である。〕
で表される骨格の群から選ばれる少なくとも1つの骨格を含有する不飽和化合物ならびに
(a3)上記(a1)〜(a2)成分以外の他の不飽和化合物
を共重合して得られる共重合体、
[B]重合性不飽和化合物、および
[C]感放射線性重合開始剤
を含有することを特徴とする垂直配向型液晶表示素子の突起とスペーサーを同時に形成するための感放射線性樹脂組成物によって達成される。
【0013】
本発明は、第二に、上記記載の感放射線性樹脂組成物から形成された突起およびスペーサーによって達成される。
さらに、本発明は、第三に、上記記載の突起およびスペーサーを具備する液晶表示素子によって達成される。
さらに、本発明は、第四に、少なくとも以下の工程を以下に記載の順序で含むことを特徴とする突起とスペーサー同時に形成するための形成方法によって達成される。
(1)請求項1に記載の感放射線性組成物の塗膜を基板上に形成する工程、
(2)該塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程、
(3)現像工程、および
(4)加熱工程。
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
感放射線性樹脂組成物
〔A〕共重合体:
本発明の感放射線性樹脂組成物に用いられる(A)共重合体は、(a1)不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸無水物、(a2)テトラヒドロフラン骨格、フラン骨格、テトラヒドロピラン骨格、ピラン骨格、および上記式(1)で表される骨格の群から選ばれる少なくとも1つの骨格を含有する不飽和化合物、ならびに(a3)上記(a1)〜(a2)成分以外の他の不飽和化合物を共重合して得られる。
【0015】
〔A〕共重合体を構成する各成分のうち、(a1)不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸無水物(以下、これらをまとめて「(a1)不飽和カルボン酸系化合物」ともいう)としては、例えば、
アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸などのモノカルボン酸類;
マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸などのジカルボン酸類;
上記ジカルボン酸の無水物類などを挙げることができる。
【0016】
これらの(a1)不飽和カルボン酸系化合物のうち、共重合反応性、得られる〔A〕共重合体のアルカリ現像液に対する溶解性および入手が容易である点から、アクリル酸、メタクリル酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸などが好ましい。
〔A〕共重合体において、(a1)不飽和カルボン酸系化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0017】
〔A〕共重合体において、(a1)不飽和カルボン酸系化合物に由来する繰り返し単位の含有率は、5〜60重量%、好ましくは10〜50重量%、さらに好ましくは15〜40重量%[ただし、(a1)+(a2)+(a3)=100重量%、以下同じ]である。この場合、(a1)不飽和カルボン酸系化合物に由来する繰り返し単位の含有率が5重量%未満では、アルカリ現像液に対する溶解性が低下する傾向があり、一方60重量%を超えると、該共重合体のアルカリ現像液に対する溶解性が大きくなりすぎるおそれがある。
【0018】
化合物(a2)はテトラヒドロフラン骨格、フラン骨格、テトラヒドロピラン骨格、ピラン骨格、および上記式(1)で表される骨格の群から選ばれる少なくとも1つの骨格を含有し、かつラジカル重合性を有する不飽和化合物であり、例えば、テトラヒドロフラン骨格を含有する不飽和化合物としては、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイルオキシ−プロピオン酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフラン−3−イルエステルなど;
フラン骨格を含有する不飽和化合物としては、2−メチル−5−(3−フリル)−1−ペンテン−3−オン、フルフリル(メタ)アクリレート、1−フラン−2−ブチル−3−エン−2−オン、1−フラン−2−ブチル−3−メトキシ−3−エン−2−オン、6−(2−フリル)−2−メチル−1−ヘキセン−3−オン、6−フラン−2−イル−ヘキシ−1−エン−3−オン、アクリル酸2−フラン−2−イル−1−メチル−エチルエステル、6−(2−フリル)−6−メチル−1−ヘプテン−3−オンなど;
テトラヒドロピラン骨格を含有する不飽和化合物としては、(テトラヒドロピラン−2−イル)メチルメタクリレート、2,6−ジメチル−8−(テトラヒドロピラン−2−イルオキシ)−オクト−1−エン−3−オン、2−メタクリル酸テトラヒドロピラン−2−イルエステル、1−(テトラヒドロピラン−2−オキシ)−ブチル−3−エン−2−オンなど;
ピラン骨格を含有する不飽和化合物としては、4−(1,4−ジオキサ−5−オキソ−6−ヘプテニル)−6−メチル−2−ピロン、4−(1,5−ジオキサ−6−オキソ−7−オクテニル)−6−メチル−2−ピロンなど;
上記式(1)で表される骨格を含有する不飽和化合物としては、ポリエチレングリコール(n=2〜10)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2〜10)モノ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0019】
これらのうち、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=2〜10)モノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸 テトラヒドロフラン−3−イルエステル、1−(テトラヒドロピラン−2−オキシ)−ブチル−3−エン−2−オン、フルフリル(メタ)アクリレートなどが突起の基板に対するテーパ角を、30度以下に制御することを可能にし、しかも現像マージンを広くする点から好ましく用いられる。これらは、単独であるいは組み合わせて用いられる。
〔A〕共重合体において、(a2)は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0020】
〔A〕共重合体において、(a2)に由来する繰り返し単位の含有率は、1〜60重量%、好ましくは3〜50重量%、さらに好ましくは5〜40重量%である。この場合、(a2)に由来する繰り返し単位の含有率が1重量%未満では、現像液に対する溶解性が低下する傾向があり、一方60重量%を超えると、現像時の膨潤や溶液の粘度増加を発生させる傾向がある。
【0021】
さらに、(a3)他の不飽和化合物としては、まずエポキシ基含有不飽和化合物が挙げられる。
エポキシ基含有不飽和化合物としては、例えば、
アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−メチルグリシジル、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、アクリル酸3,4−エポキシブチル、アクリル酸6,7−エポキシヘプチル、アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルなどのアクリル酸エポキシ(シクロ)アルキルエステル類;
メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−メチルグリシジル、メタクリル酸3,4−エポキシブチル、メタクリル酸6,7−エポキシヘプチル、メタクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルなどのメタクリル酸エポキシ(シクロ)アルキルエステル類;
α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸6,7−エポキシヘプチル、α−エチルアクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルなどの他のα−アルキルアクリル酸エポキシ(シクロ)アルキルエステル類;
o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル類
などを挙げることができる。
【0022】
これらのエポキシ基含有不飽和化合物のうち、共重合反応性およびスペーサーや突起の強度の点から、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−メチルグリシジル、メタクリル酸6,7−エポキシヘプチル、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテルなどが好ましい。
〔A〕共重合体において、(a3)エポキシ基含有不飽和化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0023】
また、(a3)他の不飽和化合物としては、上記エポキシ基含有不飽和化合物以外に、例えば、
アクリル酸メチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸t−ブチルなどのアクリル酸アルキルエステル類;
メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸t−ブチルなどのメタクリル酸アルキルエステル類;
【0024】
アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−メチルシクロヘキシル、アクリル酸トリシクロ[ 5.2.1.02,6] デカン−8−イル、アクリル酸2−(トリシクロ[ 5.2.1.02,6] デカン−8−イルオキシ)エチル、アクリル酸イソボロニルなどのアクリル酸脂環式エステル類;
メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−メチルシクロヘキシル、メタクリル酸トリシクロ[ 5.2.1.02,6] デカン−8−イル、メタクリル酸2−(トリシクロ[5.2.1.02,6] デカン−8−イルオキシ)エチル、メタクリル酸イソボロニルなどのメタクリル酸脂環式エステル類;
【0025】
マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチルなどの不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル類;
【0026】
アクリル酸テトラヒドロフラン−2−イル、アクリル酸テトラヒドロピラン−2−イル、アクリル酸2−メチルテトラヒドロピラン−2−イルなどの含酸素複素5員環あるいは含酸素複素6員環を有するアクリル酸エステル類;
メタクリル酸テトラヒドロフラン−2−イル、メタクリル酸テトラヒドロピラン−2−イル、メタクリル酸2−メチルテトラヒドロピラン−2−イルなどの含酸素複素5員環あるいは含酸素複素6員環を有するメタクリル酸エステル類;
【0027】
スチレン、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンなどのビニル芳香族化合物;
1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンなどの共役ジエン系化合物のほか、
アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル
などを挙げることができる。
上記エポキシ基含有不飽和化合物以外の(a3)他の不飽和化合物のうち、共重合反応性および得られる〔A〕共重合体のアルカリ水溶液に対する溶解性の点から、アクリル酸2−メチルシクロヘキシル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸トリシクロ[ 5.2.1.02,6] デカン−8−イル、スチレン、p−メトキシスチレン、メタクリル酸テトラヒドロフラン−2−イル、1,3−ブタジエンなどが好ましい。
〔A〕共重合体において、エポキシ基含有不飽和化合物以外の(a3)他の不飽和化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0028】
〔A〕共重合体において、以上の(a3)他の不飽和化合物に由来する繰り返し単位の含有率は、10〜70重量%、好ましくは20〜50重量%、さらに好ましくは30〜50重量%である。この場合、(a3)他の不飽和化合物に由来する繰り返し単位の含有率が10重量%未満では、保存安定性が低下する傾向があり、一方70重量%を超えると、該共重合体のアルカリ現像液に対する溶解性が低下する傾向がある。
【0029】
なお、〔A〕共重合体において、(a3)他の不飽和化合物としては、エポキシ基含有不飽和化合物が好ましい。このエポキシ基含有不飽和化合物を用いる場合には、(a1)〜(a3)中、エポキシ基含有不飽和化合物に由来する繰り返し単位の含有率は、好ましくは10〜70重量%、さらに好ましくは15〜60重量%、特に好ましくは20〜50重量%である。この場合、(a3)エポキシ基含有不飽和化合物に由来する繰り返し単位の含有率が10重量%未満では、得られる突起やスペーサーの強度が低下する傾向があり、一方70重量%を超えると保存安定性が低下する傾向がある。
【0030】
〔A〕共重合体は、例えば、(a1)不飽和カルボン酸系化合物、(a2)テトラヒドロフラン骨格、フラン骨格、テトラヒドロピラン骨格、ピラン骨格および上記式(1)で表される骨格の群から選ばれる少なくとも1つの骨格を含有する不飽和化合物、および(a3)その他の不飽和化合物を、適当な溶媒中、ラジカル重合開始剤の存在下で重合することにより製造することができる。
【0031】
上記重合に用いられる溶媒としては、例えば、
メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノールなどのアルコール類;
テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルなどのエチレングリコールモノアルキルエーテル類;
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテートなどのエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
【0032】
エチレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルプロピオネートなどのエチレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネート類;
ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテルなどのジエチレングリコールアルキルエーテル類;
【0033】
プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルなどのプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテルなどのジプロピレングリコールアルキルエーテル類;
【0034】
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルプロピオネートなどのプロピレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネート類;
【0035】
トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;
メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンなどのケトン類;
【0036】
2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸n−プロピル、2−メトキシプロピオン酸n−ブチル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−エトキシプロピオン酸n−プロピル、2−エトキシプロピオン酸n−ブチル、2−n−プロポキシプロピオン酸メチル、2−n−プロポキシプロピオン酸エチル、2−n−プロポキシプロピオン酸n−プロピル、2−n−プロポキシプロピオン酸n−ブチル、2−n−ブトキシプロピオン酸メチル、2−n−ブトキシプロピオン酸エチル、2−n−ブトキシプロピオン酸n−プロピル、2−n−ブトキシプロピオン酸n−ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸n−プロピル、3−メトキシプロピオン酸n−ブチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸n−プロピル、3−エトキシプロピオン酸n−ブチル、3−n−プロポキシプロピオン酸メチル、3−n−プロポキシプロピオン酸エチル、3−n−プロポキシプロピオン酸n−プロピル、3−n−プロポキシプロピオン酸n−ブチル、3−n−ブトキシプロピオン酸メチル、3−n−ブトキシプロピオン酸エチル、3−n−ブトキシプロピオン酸n−プロピル、3−n−ブトキシプロピオン酸n−ブチルなどのアルコキシプロピオン酸アルキル類や、
【0037】
酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、ヒドロキシ酢酸メチル、ヒドロキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸n−プロピル、ヒドロキシ酢酸n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−プロピル、乳酸n−ブチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−ヒドロキシプロピオン酸メチル、3−ヒドロキシプロピオン酸エチル、3−ヒドロキシプロピオン酸n−プロピル、3−ヒドロキシプロピオン酸n−ブチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸n−プロピル、メトキシ酢酸n−ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸n−プロピル、エトキシ酢酸n−ブチル、n−プロポキシ酢酸メチル、n−プロポキシ酢酸エチル、n−プロポキシ酢酸n−プロピル、n−プロポキシ酢酸n−ブチル、n−ブトキシ酢酸メチル、n−ブトキシ酢酸エチル、n−ブトキシ酢酸n−プロピル、n−ブトキシ酢酸n−ブチルなどの他のエステル類
などを挙げることができる。
【0038】
これらの溶媒のうち、ジエチレングリコールアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、アルコキシプロピオン酸アルキル類などが好ましい。
上記溶媒は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
以上の溶媒の使用量は、(a1)〜(a3)成分の合計量100重量部に対し、150〜450重量部、好ましくは200〜400重量部である。
【0039】
また、上記ラジカル重合開始剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4―シアノバレリン酸)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物;ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシピバレート、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサンなどの有機過酸化物;過酸化水素などを挙げることができる。
また、ラジカル重合開始剤として過酸化物を用いる場合には、それを還元剤とを併用して、レドックス型開始剤としてもよい。
これらのラジカル重合開始剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0040】
ラジカル重合開始剤の使用量は、(a1)〜(a3)成分の合計量100重量部に対し、1〜20重量部、好ましくは3〜15重量部である。
【0041】
ラジカル重合に際しては、このほか、界面活性剤、連載移動剤などを併用することができる。
また、ラジカル重合条件は、温度が50〜110℃、好ましくは60〜100℃、重合時間が180〜480分、好ましくは240〜420分程度である。
【0042】
〔A〕共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(以下「Mw」という)は、2,000〜100,000、好ましくは5,000〜50,000である。この場合、Mwが2,000未満であると、得られる被膜のアルカリ現像性、残膜率などが低下したり、またパターン形状、耐熱性などが損なわれたりするおそれがあり、一方100,000を超えると、解像度が低下したり、パターン形状が損なわれたりするおそれがある。
〔A〕共重合体の分子量は、共重合体(a1)〜(a3)成分の合計量に対しての溶剤量、ラジカル重合開始剤の量、重合時間、重合温度、連鎖移動剤の使用により調整することができる。
【0043】
〔A〕共重合体は、カルボキシル基および/またはカルボン酸無水物基を有しており、アルカリ現像液に対して適度の溶解性を有することができる。また、(a2)テトラヒドロフラン骨格、フラン骨格、テトラヒドロピラン骨格、ピラン骨格、および上記式(1)で表される骨格の群から選ばれる少なくとも1つの骨格を含有する不飽和化合物を有することで、保存安定性が低下することなくアルカリ現像液に対する溶解性を向上させることができる。さらに、〔A〕共重合体は、カルボキシル基および/またはカルボン酸無水物基、エポキシ基および重合性不飽和結合を有する場合、特別な硬化剤を併用しなくとも加熱により容易に硬化することができるものである。従って、〔A〕共重合体を含有する本発明の感放射線性樹脂組成物は、現像する際に現像残りおよび膜減りを生じることなく、所定形状の突起およびスペーサーを容易に形成することができる。
【0044】
〔B〕重合性不飽和化合物:
〔B〕重合性不飽和化合物は、感放射線性重合開始剤の存在下における放射線の露光により重合する不飽和化合物からなる。
このような〔B〕重合性不飽和化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、単官能、2官能または3官能以上の(メタ)アクリル酸エステル類が共重合性が良好であり、得られる突起やスペーサーの強度が向上する点から好ましい。
【0045】
上記単官能(メタ)アクリル酸エステル類としては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルメタクリレート、イソボロニルアクリレート、イソボロニルメタクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、3−メトキシブチルメタクリレート、(2−アクリロイルオキシエチル)(2−ヒドロキシプロピル)フタレート、(2−メタクリロイルオキシエチル)(2−ヒドロキシプロピル)フタレートなどを挙げることができ、また市販品として、商品名で、例えば、アロニックスM−101、同M−111、同M−114(以上、東亜合成(株)製);KAYARAD TC−110S、同 TC−120S(以上、日本化薬(株)製);ビスコート158、同2311(以上、大阪有機化学工業(株)製)などを挙げることができる。
【0046】
また、上記2官能(メタ)アクリル酸エステル類としては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジメタクリレート、ポリエステル両末端(メタ)アクリル変性、ポリプロピレングリコール両末端(メタ)アクリル変性、ポリテトラメチレングリコール両末端(メタ)アクリル変性を挙げることができ、また市販品として、商品名で、例えば、アロニックスM−210、同M−240、同M−6200(以上、東亜合成(株)製)、KAYARAD HDDA、同 HX−220、同 R−604(以上、日本化薬(株)製)、ビスコート260、同312、同335HP(以上、大阪有機化学工業(株)製)、U-108A、U-200AX、UA-4100、UA−4400、UA−340P、UA−2235PE、UA−160TM、UA−6100、U−2PPA200A(以上、新中村化学工業(株)製)など、UN―9000PEP、UN−9200A、UN−7600,UN−5200、UN−1003、UN−1255、UN−6060PTM、UN−6060P、SH−500B(以上、根上工業(株)製)などを挙げることができる。
【0047】
さらに、上記3官能以上の(メタ)アクリル酸エステル類としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、トリ(2−アクリロイルオキシエチル)フォスフェート、トリ(2−メタクリロイルオキシエチル)フォスフェートや、9官能以上の(メタ)アクリル酸エステル類として、直鎖アルキレン基および脂環式構造を有し、かつ2個以上のイソシアネート基を有する化合物と、分子内に1個以上の水酸基を有し、かつ3個、4個あるいは5個のアクリロイルオキシ基および/またはメタクリロイルオキシ基を有する化合物とを反応させて得られる多官能ウレタンアクリレート系化合物などを挙げることができる。
【0048】
3官能以上の(メタ)アクリル酸エステル類の市販品としては、商品名で、例えば、アロニックスM−309、同M−400、同M−405、同M−450、同M−7100、同M−8030、同M−8060、同TO−1450(以上、東亜合成(株)製)、KAYARAD TMPTA、同 DPHA、同 DPCA−20、同 DPCA−30、同 DPCA−60、同 DPCA−120(以上、日本化薬(株)製)、ビスコート295、同300、同360、同GPT、同3PA、同400(以上、大阪有機化学工業(株)製)や、多官能ウレタンアクリレート系化合物を含有する市販品として、ニューフロンティア R−1150(以上 第一工業製薬(株)製)、KAYARAD DPHA−40H(以上 日本化薬(株)製)、U−4HA、U−6HA、U−6LPA、U−15HA、UA−32P、U−324A、U−4H、U−6H(以上、新中村化学工業(株)製)、UN-9000H、UN−3320HA、UN−3320HB、UN−3320HC、UN−901T、UN−1200TPK(以上、根上工業(株)製)などを挙げることができる。
【0049】
これらの単官能、2官能または3官能以上の(メタ)アクリル酸エステル類のうち、2官能以上の(メタ)アクリル酸エステル類がさらに好ましく、特に、ポリエステル両末端アクリル変性、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートや、多官能ウレタンアクリレート系化合物を含有する市販品などが好ましい。
上記単官能、2官能または3官能以上の(メタ)アクリル酸エステル類は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0050】
本発明の感放射線性樹脂組成物において、〔B〕重合性不飽和化合物の使用量は、〔A〕共重合体100重量部に対して、好ましくは1〜100重量部、さらに好ましくは3〜80重量部である。この場合、〔B〕重合性不飽和化合物の使用量が1重量部未満では、現像時に現像残りが発生するおそれがあり、一方100重量部を超えると、得られる突起やスペーサーの密着性が低下する傾向がある。
【0051】
〔C〕感放射線性重合開始剤:
〔C〕感放射線性重合開始剤は、可視光線、紫外線、遠紫外線、荷電粒子線、X線などの放射線の露光により、〔B〕重合性不飽和化合物の重合を開始しうる活性種を発生する成分からなる。
このような〔C〕感放射線性重合開始剤としては、例えば、9.H.−カルバゾール系のO−アシルオキシム型重合開始剤(以下、「O−アシルオキシム型重合開始剤(I)」という)が好ましい。
【0052】
O−アシルオキシム型重合開始剤(I)としては、例えば、1−〔9−エチル−6−ベンゾイル−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−ノナン−1,2−ノナン−2−オキシム−O−ベンゾアート、1−〔9−エチル−6−ベンゾイル−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−ノナン−1,2−ノナン−2−オキシム−O−アセタート、1−〔9−エチル−6−ベンゾイル−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−ペンタン−1,2−ペンタン−2−オキシム−O−アセタート、1−〔9−エチル−6−ベンゾイル−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−オクタン−1−オンオキシム−O−アセタート、1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−エタン−1−オンオキシム−O−ベンゾアート、1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−エタン−1−オンオキシム−O−アセタート、1−〔9−エチル−6−(1,3,5−トリメチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−エタン−1−オンオキシム−O−ベンゾアート、1−〔9−ブチル−6−(2−エチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−エタン−1−オンオキシム−O−ベンゾアートなどを挙げることができる。
これらのO−アシルオキシム型重合開始剤(I)のうち、特に1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−エタン−1−オンオキシム−O−アセタートが好ましい。
上記O−アシルオキシム型重合開始剤(I)は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0053】
また、本発明においては、〔C〕感放射線性重合開始剤として、O−アシルオキシム型重合開始剤(I)以外のO−アシルオキシム型光重合開始剤(以下、「O−アシルオキシム型重合開始剤(II)」という。)を1種以上併用することができる。
【0054】
O−アシルオキシム型重合開始剤(II)としては、例えば、1,2−オクタジオン−1−〔4−(フェニルチオ)フェニル〕−2−(O−ベンゾイルオキシム)、1,2−ブタンジオン−1−〔4−(フェニルチオ)フェニル〕−2−(O−ベンゾイルオキシム)、1,2−ブタンジオン−1−〔4−(フェニルチオ)フェニル〕−2−(O−アセチルオキシム)、1,2−オクタジオン−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−(O−ベンゾイルオキシム)、1,2−オクタジオン−1−〔4−(フェニルチオ)フェニル〕−2−(O−(4―メチルベンゾイルオキシム))などを挙げることができる。
これらのO−アシルオキシム型重合開始剤(II)のうち、特に1,2−オクタジオン−1−〔4−(フェニルチオ)フェニル〕−2−(O−ベンゾイルオキシム)が好ましい。
【0055】
本発明において、O−アシルオキシム型重合開始剤(I)あるいはこれとO−アシルオキシム型重合開始剤(II)との混合物(以下、これらをまとめて単に「O−アシルオキシム型重合開始剤」という)を用いることにより高感度を達成でき、かつ良好な密着性を有する突起やスペーサーを得ることが可能となる。
【0056】
本発明の感放射線性樹脂組成物において、O−アシルオキシム型重合開始剤(I)の使用量は、〔B〕重合性不飽和化合物100重量部に対して、好ましくは5〜30重量部、さらに好ましくは5〜20重量部である。この場合、O−アシルオキシム型重合開始剤(I)の使用量が5重量部未満では、現像時の残膜率が低下する傾向があり、一方30重量部を超えると、現像時に未露光部のアルカリ現像液に対する溶解性が低下する傾向がある。
また、O−アシルオキシム型重合開始剤(II)の使用割合は、O−アシルオキシム型重合開始剤(I)とO−アシルオキシム型重合開始剤(II)との合計100重量部に対して、好ましくは30重量部以下、さらに好ましくは20重量部以下である。
【0057】
さらに、本発明の感放射線性樹脂組成物においては、O−アシルオキシム型重合開始剤と共に、他の感放射線性重合開始剤を1種以上併用することもできる。
上記他の感放射線性重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、α−ジケトン系化合物、多核キノン系化合物、キサントン系化合物、ホスフィン系化合物、トリアジン系化合物などを挙げることができ、これらのうちアセトフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物などが好ましい。
【0058】
上記アセトフェノン系化合物としては、例えば、α−ヒドロキシケトン系化合物、α−アミノケトン系化合物などを挙げることができる。
上記α−ヒドロキシケトン系化合物としては、例えば、1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−i−プロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどを挙げることができ、また上記α−アミノケトン系化合物としては、例えば、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−(4−メチルベンゾイル)−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オンなどを挙げることができ、これら以外の化合物として、例えば、2,2−ジメトキシアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンなどを挙げることができる。
【0059】
これらのアセトフェノン系化合物のうち、特に、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−(4−メチルベンゾイル)−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オンが好ましい。
本発明においては、アセトフェノン系化合物を併用することにより、感度、突起およびスペーサー形状や圧縮強度をさらに改善することが可能となる。
【0060】
また、上記ビイミダゾール系化合物としては、例えば、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾールなどを挙げることができる。
【0061】
これらのビイミダゾール系化合物のうち、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾールなどが好ましく、特に2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、が好ましい。
本発明においては、ビイミダゾール系化合物を併用することにより、感度、解像度や密着性をさらに改善することが可能となる。
【0062】
また、ビイミダゾール系化合物を併用する場合、それを増感するため、ジアルキルアミノ基を有する脂肪族系または芳香族系の化合物(以下、「アミノ系増感剤」という)を添加することができる。
アミノ系増感剤としては、例えば、N−メチルジエタノールアミン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸i−アミルなどを挙げることができる。
これらのアミノ系増感剤のうち、特に4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンが好ましい。
上記アミノ系増感剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0063】
さらに、ビイミダゾール系化合物とアミノ系増感剤とを併用する場合、水素供与化合物として、チオール系化合物を添加することができる。ビイミダゾール系化合物は、上記アミノ系増感剤によって増感されて開裂し、イミダゾールラジカルを発生するが、そのままでは高い重合開始能が発現されず、得られるスペーサーが逆テーパ形状のような好ましくない形状となる場合が多い。しかし、ビイミダゾール系化合物とアミノ系増感剤とが共存する系に、チオール系化合物を添加することにより、イミダゾールラジカルにチオール系化合物から水素ラジカルが供与される結果、イミダゾールラジカルが中性のイミダゾールに変換されるとともに、重合開始能の高い硫黄ラジカルを有する成分が発生し、それによりスペーサーの形状をより好ましい順テーパ状にすることができる。
【0064】
上記チオール系化合物としては、例えば、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−メトキシベンゾチアゾール、2−メルカプト−5−メトキシベンゾイミダゾールなどの芳香族系化合物;3−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸メチル、3−メルカプトプロピオン酸エチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチルなどの脂肪族系モノチオール類;3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジチオール、ペンタエリストールテトラ(メルカプトアセテート)、ペンタエリストールテトラ(3−メルカプトプロピオネート)などの2官能以上の脂肪族系チオール類を挙げることができる。
これらのチオール系化合物のうち、特に2−メルカプトベンゾチアゾールが好ましい。
【0065】
本発明の感放射線性樹脂組成物において、他の感放射線性重合開始剤の使用割合は、全感放射線性重合開始剤100重量部に対して、好ましくは80重量部以下、さらに好ましくは70重量部以下、特に好ましくは60重量部以下である。この場合、他の感放射線性重合開始剤の使用割合が80重量部を超えると、本発明の所期の効果が損なわれるおそれがある。
【0066】
また、ビイミダゾール系化合物とアミノ系増感剤とを併用する場合、アミノ系増感剤の添加量は、ビイミダゾール系化合物100重量部に対して、好ましくは0.1〜50重量部、さらに好ましくは1〜20重量部である。この場合、アミノ系増感剤の添加量が0.1重量部未満では、感度、解像度や密着性の改善効果が低下する傾向があり、一方50重量部を超えると、得られる突起およびスペーサーの形状が損なわれる傾向がある。
また、ビイミダゾール系化合物とチオール系化合物とを併用する場合、チオール系化合物の添加量は、ビイミダゾール系化合物100重量部に対して、好ましくは0.1〜50重量部、さらに好ましくは1〜20重量部である。この場合、チオール系化合物の添加量が0.1重量部未満では、突起およびスペーサーの形状の改善効果が低下したり、膜減りを生じやすくなる傾向があり、一方50重量部を超えると、得られる突起およびスペーサーの形状が損なわれる傾向がある。
【0067】
ただし、本発明においては、O−アシルオキシム型重合開始剤(I)以外の〔C〕感放射線性重合開始剤だけを、単独でまたは2種以上を混合して使用することもできる。
【0068】
添加剤:
本発明の感放射線性樹脂組成物には、本発明の所期の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて、上記成分以外にも、界面活性剤、接着助剤、保存安定剤、耐熱性向上剤などの添加剤を配合することもできる。
【0069】
上記界面活性剤は、塗布性を改善する作用を有する成分であり、フッ素系界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤が好ましい。
上記フッ素系界面活性剤としては、末端、主鎖および側鎖の少なくともいずれかの部位にフルオロアルキル基あるいはフルオロアルキレン基を有する化合物が好ましく、その具体例としては、1,1,2,2−テトラフロロオクチル(1,1,2,2−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、1,1,2,2−テトラフルオロ−n−オクチル(n−ヘキシル)エーテル、オクタエチレングリコールジ(1,1,2,2−テトラフルオロ−n−ブチル)エーテル、ヘキサエチレングリコール(1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロ−n−ペンチル)エーテル、オクタプロピレングリコールジ(1,1,2,2−テトラフルオロ−n−ブチル)エーテル、ヘキサプロピレングリコールジ(1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロ−n−ペンチル)エーテル、1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロ−n−デカン、1,1,2,2,8,8,9,9,10,10−デカフルオロ−n−ドデカン、パーフルオロ−n−ドデシルスルホン酸ナトリウムや、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム類、フルオロアルキルホスホン酸ナトリウム類、フルオロアルキルカルボン酸ナトリウム類、フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル類、ジグリセリンテトラキス(フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル)類、フルオロアルキルアンモニウムヨージド類、フルオロアルキルベタイン類、フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル類、パーフルオロアルキルポリオキシエタノール類、パーフルオロアルキルアルコキシレート類、フッ素系アルキルエステル類などを挙げることができる。
【0070】
また、フッ素系界面活性剤の市販品としては、商品名で、例えば、BM−1000、同−1100(以上、BM CHEMIE社製)、メガファックF142D、同F172、同F173、同F183、同F178、同F191、同F471、同F476(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、フロラードFC 170C、同FC−171、同FC−430、同FC−431(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS−112、同S−113、同S−131、同S−141、同S−145、同S−382、同SC−101、同SC−102、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−106(以上、旭硝子(株)製)、エフトップEF301、同EF303、同EF352(以上、新秋田化成(株)製)、フタージェントFT−100、同FT−110、同FT−140A、同FT−150、同FT−250、同FT−251、同FTX−251、同FTX−218、同FT−300、同FT−310、同FT−400S(以上、(株)ネオス製)などを挙げることができる。
【0071】
上記シリコーン系界面活性剤としては、市販品として、商品名で、例えば、トーレシリコーンDC3PA、同DC7PA、同SH11PA、同SH21PA、同SH28PA、同SH29PA、同SH30PA、同SH−190、同SH−193、同SZ−6032、同SF−8428、同DC−57、同DC−190(以上、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)、TSF−4440、同−4300、同−4445、同−4446、同−4460、同−4452(以上、GE東芝シリコーン(株)製)などを挙げることができる。
【0072】
さらに、上記以外の界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn−ノニルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアリールエーテル類;ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジステアレートなどのポリオキシエチレンジアルキルエステル類などのノニオン系界面活性剤や、市販品として、商品名で、例えば、KP341(信越化学工業(株)製)、ポリフローNo.57、同No.95(共栄社化学(株)製)などを挙げることができる。
上記界面活性剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
界面活性剤の配合量は、〔A〕共重合体100重量部に対して、好ましくは5重量部以下、さらに好ましくは2重量部以下である。この場合、界面活性剤の配合量が5重量部を超えると、塗布時に膜荒れを生じやすくなる傾向がある。
【0073】
上記接着助剤は、突起やスペーサーと基体との密着性をさらに改善する作用を有する成分であり、官能性シランカップリング剤が好ましい。
上記官能性シランカップリング剤としては、例えば、カルボキシル基、メタクリロイル基、ビニル基、イソシアネート基、エポキシ基などの反応性官能基を有する化合物を挙げることができ、より具体的には、トリメトキシシリル安息香酸、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどを挙げることができる。
これらの接着助剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
接着助剤の配合量は、〔A〕共重合体100重量部に対して、好ましくは20重量部以下、さらに好ましくは10重量部以下である。この場合、接着助剤の配合量が20重量部を超えると、現像残りが生じやすくなる傾向がある。
【0074】
上記保存安定剤としては、例えば、硫黄、キノン類、ヒドロキノン類、ポリオキシ化合物、アミン、ニトロニトロソ化合物などを挙げることができ、より具体的には、4−メトキシフェノール、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウムなどを挙げることができる。
これらの保存安定剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
保存安定剤の配合量は、〔A〕共重合体100重量部に対して、好ましくは3重量部以下、さらに好ましくは0.001〜0.5重量部である。この場合、保存安定剤の配合量が3重量部を超えると、感度が低下してパターン形状が損なわれるおそれがある。
【0075】
上記耐熱性向上剤としては、例えば、N−(アルコキシメチル)グリコールウリル化合物、N−(アルコキシメチル)メラミン化合物、2個以上のエポキシ基を有する化合物などを挙げることができる。
上記N−(アルコキシメチル)グリコールウリル化合物としては、例えば、N,N,N,N−テトラ(メトキシメチル)グリコールウリル、N,N,N,N−テトラ(エトキシメチル)グリコールウリル、N,N,N,N−テトラ(n−プロポキシメチル)グリコールウリル、N,N,N,N−テトラ(i−プロポキシメチル)グリコールウリル、N,N,N,N−テトラ(n−ブトキシメチル)グリコールウリル、N,N,N,N−テトラ(t−ブトキシメチル)グリコールウリルなどを挙げることができる。
これらのN−(アルコキシメチル)グリコールウリル化合物のうち、特にN,N,N,N−テトラ(メトキシメチル)グリコールウリルが好ましい。
【0076】
また、上記N−(アルコキシメチル)メラミン化合物としては、例えば、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(メトキシメチル)メラミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(エトキシメチル)メラミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(n−プロポキシメチル)メラミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(i−プロポキシメチル)メラミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(n−ブトキシメチル)メラミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(t−ブトキシメチル)メラミンなどを挙げることができる。
これらのN−(アルコキシメチル)メラミン化合物のうち、特にN,N,N,N,N,N−ヘキサ(メトキシメチル)メラミンが好ましく、その市販品としては、商品名で、例えば、ニカラックN−2702、同MW−30M(以上 三和ケミカル(株)製)などを挙げることができる。
【0077】
また、上記2個以上のエポキシ基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂や、市販品として、商品名で、例えば、エポライト40E、同100E、同200E、同70P、同200P、同400P、同1500NP、同1600、同80MF、同100MF、同3002、同4000(以上 共栄社化学(株)製)、EOCN102、同103S、同104S、同1020、同1025、同1027(日本化薬(株)製)、エピコート180S(ジャパン・エポキシ・レジン社製)などを挙げることができる。
上記耐熱性向上剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
耐熱性向上剤の配合量は、〔A〕共重合体100重量部に対して、好ましくは30重量部以下、さらに好ましくは20重量部以下である。この場合、耐熱性向上剤の配合量が30 重量部を超えると、感放射線性樹脂組成物の保存安定性が低下する傾向がある。
【0078】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、適当な溶剤に溶解した組成物溶液として使用に供することが好ましい。
上記溶剤としては、感放射線性樹脂組成物を構成する各成分を均一に溶解し、各成分と反応せず、適度の揮発性を有するものが用いられるが、各成分の溶解能、各成分との反応性および塗膜形成の容易性の観点から、アルコール類、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ジエチレングリコールアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、アルコキシプロピオン酸アルキル類などが好ましく、特に、ベンジルアルコール、2−フェニルエタノール、3−フェニル−1−プロパノール、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどが好ましい。
上記溶剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0079】
本発明においては、さらに、上記溶剤と共に、高沸点溶剤を併用することもできる。
上記高沸点溶剤としては、例えば、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ベンジルエチルエーテル、ジ−n−ヘキシルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテートなどを挙げることができる。
これらの高沸点溶剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
高沸点溶剤の使用量は、全溶剤中に好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下である。
また、以上の溶剤の使用量は、本発明の感放射線性樹脂組成物の固形分濃度が、通常、15〜45重量%、好ましくは20〜40重量%程度になる量である。
なお、上記のように調製された組成物溶液は、孔径0.5μm程度のミリポアフィルタなどを用いてろ過して、使用に供することもできる。
【0080】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、特に、垂直配向型液晶表示素子の突起とスペーサーの形成に極めて好適に使用することができる。
【0081】
突起およびスペーサーの形成方法
次に、本発明の感放射線性樹脂組成物を用いて本発明の突起およびスペーサーを形成する方法について説明する。
本発明の突起およびスペーサーを形成は、少なくとも以下の工程を以下に記載の順序で含むものである。
(イ)本発明の感放射線性樹脂組成物の被膜を基板上に形成する工程、
(ロ)該被膜の少なくとも一部に露光する工程、
(ハ)露光後の該被膜を現像する工程、および
(ニ)現像後の該被膜を加熱する工程。
【0082】
以下、これらの各工程について順次説明する。
(イ)工程:
透明基板の一面に透明導電膜を形成し、該透明導電膜の上に、感放射線性樹脂組成物を、好ましくは組成物溶液として塗布したのち、塗布面を加熱(プレベーク)することにより、被膜を形成する。
スペーサーの形成に用いられる透明基板としては、例えば、ガラス基板、樹脂基板などを挙げることができ、より具体的には、ソーダライムガラス、無アルカリガラスなどのガラス基板;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリイミドなどのプラスチックからなる樹脂基板を挙げることができる。
透明基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO2)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In2O3−SnO2)からなるITO膜などを用いることができる。
組成物溶液の塗布方法としては、例えば、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、スリットダイ塗布法、バー塗布法、インクジェット塗布法などの適宜の方法を採用することができるが、特に、スピンコート法、スリットダイ塗布法が好ましい。
また、プレベークの条件は、各成分の種類、配合割合などによっても異なるが、通常、70〜120℃で1〜15分程度である。
【0083】
(ロ)工程:
次いで、形成された被膜の少なくとも一部に露光する。この場合、被膜の一部に露光する際には、通常、所定のパターンを有するフォトマスクを介して露光する。
ここで、突起とする領域およびスペーサーとする領域について、生産性を考慮すると実質同一の露光量にて露光するのが好ましい。この場合、露光ギャップ一定のもとでは、マスクの開口幅を小さくするほど露光照度が低下するため架橋度が低くなり、その結果、ポストベーク時にフローしやすくなるため、高さに差が生じることとなる。
また、スペーサーおよび突起形状の制御がより厳しく要求される場合は、必要に応じて異なる実質露光量にて露光してもよい。このとき、突起とする領域の実効露光量は、スペーサー部の実効露光量よりも少なくする。そのような実効露光量で各領域を露光することにより、容易にスペーサー部の膜厚を突起部の膜厚より大きくすることができる。異なる実効露光量にて露光する方法としては適宜の方法が採用できるが、例えば、以下の方法を使用することができる。
(1)放射線透過率の大なる部分と放射線透過率の小なる部分を有するパターンマスクを介して露光する方法。
(2)パターンの異なる2種のパターンマスクを用いて複数回露光する方法。
(3)塗膜上面からの露光と基板裏面からの露光の双方を行う方法。
使用する放射線としては、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線などを使用できるが、190〜450nmの範囲の波長を含む放射線が好ましく、特に360nmの波長を含む放射線(紫外線)が好ましい。
【0084】
このときの実効露光量としては、露光される放射線の波長365nmにおける強度を、照度計(OAI model 356 、OAI Optical Associates Inc. 製)により測定した値として、突起とする領域については、通常、100〜4000J/m、好ましくは200〜3000J/m、とくに好ましくは400〜2000J/mである。この範囲の実効露光量とすることで、形成される突起の膜厚を0.1〜3.0μm、好ましくは0.5〜2.0μm、とくに好ましくは1.0〜1.5μmに制御することができる。
また、スペーサーとする領域の実効露光量としては、通常、500〜10000J/m、好ましくは800〜5000J/m、とくに好ましくは1000〜4000J/mである。この範囲の実効露光量とすることで、形成されるスペーサーの膜厚を1〜10μm、好ましくは2〜8μm、とくに好ましくは3〜5μmに制御することができる。
また、スペーサー部の膜厚は突起部の膜厚より大きくすることが好ましい。これにより、スペーサー部は十分な強度を有することができ、一方、突起部は後述するポストベーク工程によってその形状を配向規制に有効な形状に成形することができるようになる。
【0085】
(ハ)工程:
次いで、露光後の被膜を現像することにより、不要な部分を除去して、所定のパターンを形成する。
現像に使用される現像液としては、アルカリ現像液が好ましく、その例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニアなどの無機アルカリ類;エチルアミン、n−プロピルアミンなどの脂肪族1級アミン類;ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミンなどの脂肪族2級アミン類;トリメチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエチルアミン、トリエチルアミンなどの脂肪族3級アミン類;ピロール、ピペリジン、N−メチルピペリジン、N−メチルピロリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネンなどの脂環族3級アミン類;ピリジン、コリジン、ルチジン、キノリンなどの芳香族3級アミン類;エタノールジメチルアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドなどの4級アンモニウム塩などのアルカリ性化合物の水溶液を挙げることができる。
また、上記アルカリ性化合物の水溶液には、メタノール、エタノールなどの水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
現像方法としては、液盛り法、ディッピング法、シャワー法などのいずれでもよく、現像時間は、通常、10〜180秒間程度である。
現像後、例えば流水洗浄を30〜90秒間行ったのち、例えば圧縮空気や圧縮窒素で風乾させることによって、所望のパターンが形成される。
【0086】
(二)工程:
次いで、得られたパターンを、例えばホットプレート、オーブンなどの加熱装置により、所定温度、例えば150〜250℃で、所定時間、例えばホットプレート上では5〜30分間、オーブン中では30〜180分間、加熱(ポストベーク)をすることにより、所定の突起やスペーサーを得ることができる。
【発明の効果】
【0087】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、垂直配向型液晶表示素子の突起とスペーサーを同時に形成でき、十分なパターン形状が得られ、スペーサー強度、ラビング耐性、透明基板との密着性、耐熱性などにも優れた垂直配向型液晶表示素子用の突起とスペーサーを形成することができる。
また、本発明の垂直配向型液晶表示素子は、パターン形状、スペーサー強度、ラビング耐性、透明基板との密着性、耐熱性などの諸性能に優れた突起およびスペーサーを具備するものであり、長期にわたり高い信頼性を表現することができる。
【実施例】
【0088】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。ここで、部および%は重量基準である。
【0089】
合成例1
冷却管、撹拌機を備えたフラスコに、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)5部、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル250部を仕込み、引き続いてスチレン5部、メタクリル酸20部、メタクリル酸n-ブチル25部、メタクリル酸トリシクロ[ 5.2.1.02,6] デカン−8−イル25部、テトラヒドロフルフリルメタクリレート25部を仕込んで、窒素置換したのち、緩やかに攪拌しつつ、溶液の温度を90℃に上昇させ、この温度を5時間保持して重合することにより、固形分濃度28.5%の〔A〕共重合体溶液を得た。これを〔A-1〕重合体とする。
得られた〔A-1〕重合体について、MwをGPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー) HLC−8020(商品名、東ソー(株)製)を用いて測定したところ、15,000であった。
【0090】
合成例2
冷却管、撹拌機を備えたフラスコに、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)7部、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル250部を仕込み、引き続いてメタクリル酸20部、メタクリル酸トリシクロ[ 5.2.1.02,6] デカン−8−イル25部メタクリル酸n-ブチル25部、メタクリル酸グリシジル25部、テトラヒドロフルフリルメタクリレート25部を仕込んで、窒素置換したのち、さらに1,3−ブタジエン5部を仕込み、緩やかに攪拌しつつ、溶液の温度を90℃に上昇させ、この温度を5時間保持して重合することにより、固形分濃度28.2%の〔A〕共重合体溶液を得た。これを〔A-2〕重合体とする。
得られた〔A-2〕重合体について、MwをGPCにより測定したところ、9,800であった。
【0091】
合成例3
冷却管、撹拌機を備えたフラスコに、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)7部、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル250部を仕込み、引き続いてスチレン5部、メタクリル酸20部、メタクリル酸2-メチルグリシジル25部、メタクリル酸トリシクロ[ 5.2.1.02,6] デカン−8−イル25部、ベンジルメタクリレート15部、ポリエチレングリコール(n=2〜10)モノメタクリレート10部を仕込んで、窒素置換したのち緩やかに攪拌しつつ、溶液の温度を70℃に上昇させ、この温度を4時間保持して重合することにより、固形分濃度29.0%の〔A〕共重合体溶液を得た。これを〔A-3〕重合体とする。
得られた〔A-3〕重合体について、MwをGPCにより用いて測定したところ、15,000であった。
【0092】
合成例4
冷却管、撹拌機を備えたフラスコに、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)5部、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル250部を仕込み、引き続いてスチレン5部、メタクリル酸20部、メタクリル酸グリシジル25部、メタクリル酸n-ブチル25部、メタクリル酸トリシクロ[ 5.2.1.02,6] デカン−8−イル25部を仕込んで、窒素置換したのち、緩やかに攪拌しつつ、溶液の温度を90℃に上昇させ、この温度を5時間保持して重合することにより、固形分濃度28.7%の〔A〕共重合体溶液を得た、〔A-4〕重合体とする。
得られた〔A-4〕重合体について、MwをGPCにより測定したところ、15,000であった。
【0093】
実施例1
組成物溶液の調製
〔A〕成分として、合成例1で得た〔A〕共重合体溶液を重合体(A-1)として100部、〔B〕成分として、ジペンタエリストールヘキサアクリレート(商品名 KAYARAD DPHA、日本化薬(株)製)60部、〔C〕成分として、2−(4−メチルベンゾイル)−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(商品名イルガキュア379、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製))15部、接着助剤として、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン5部、界面活性剤として、FTX−218(商品名、(株)ネオス製)0.5部、保存安定剤として、4−メトキフェノール0.5部を混合し、固形分濃度が30%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解したのち、孔径0.5μmのミリポアフィルタでろ過して、組成物溶液を調製した。
【0094】
突起およびスペーサーの形成
無アルカリガラス基板上にスピンナーを用いて、上記組成物溶液を塗布したのち、80℃のホットプレート上で3分間プレベークして、膜厚4.0μmの被膜を形成した。
次いで、得られた被膜に、5μmおよび15μm丸の残しパターンのフォトマスクを介して、露光ギャップ200μmで、365nmにおける強度が250W/mの紫外線を4秒間露光した。この時の実効露光量は、1000J/mに相当する。その後、水酸化カリウム0.05重量%水溶液により、25℃で所定時間現像したのち、純水で1分間洗浄し、さらに220℃のオーブン中で60分間加熱することにより、突起およびスペーサーを一度の露光で同時に形成した。5μmの残しパターンのフォトマスクを介して突起材が形成され、15μm丸の残しパターンのフォトマスクを介してスペーサーが形成された。
【0095】
次いで、下記の要領で各種評価を行った。評価結果を、表2に示す。
(1)現像時間の評価
現像時間を変量とした以外は、上記突起およびスペーサーの形成と同様にして、突起およびスペーサーを形成した。このとき、現像時間を50、60、70、80、90、100秒とし、それぞれの現像時間の時、光学顕微鏡で未露光部の残渣を観察した。
【0096】
(2)断面形状の評価
得られた突起およびスペーサーの断面形状を走査型電子顕微鏡(商品名S−4200(株)日立製作所製)にて観察して、図1に示すA〜Eのいずれに該当するかにより評価した。突起の場合、断面形状が図1(D)のような半凸レンズ状となった場合良好であり、図1(E)のような正三角形状となった場合、配向膜塗布性の観点から良好ではない。
一方、スペーサーの場合、図1(A)のような柱状あるいは図1(B)のような順テーパー状に形成された場合は、断面形状が良好といえる。これに対して、図1(C)に示すように、逆テーパ状(断面形状で、膜表面の辺が基板側の辺よりも長い逆三角形状)である場合も、後のラビング処理時にパターンが剥がれるおそれが非常に大きくなることから、断面形状が不良と言える。
また、基板面に対する突起のテーパ角を走査型電子顕微鏡より3000倍の倍率で取り込んだ突起の画像から、分度器により測定した。
【0097】
(3)スペーサー強度の評価
得られたスペーサーについて、微小圧縮試験機(商品名MCTM−200、(株)島津製作所製)を用い、直径50μmの平面圧子により、負荷速度2.6mN /秒として、10mNの荷重を加えた時の変形量を測定した(測定温度23℃)。この値が0.5μm以下の時、スペーサーの強度は良好と言える。
【0098】
(4)ラビング耐性の評価
スペーサーを形成した基板に、液晶配向剤としてAL3046(商品名、JSR(株)製)を液晶配向膜塗布用印刷機により塗布したのち、180℃で1時間乾燥して、膜厚0.05μmの液晶配向剤の塗膜を形成した。
その後、この塗膜に、ポリアミド製の布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンにより、ロールの回転数500rpm、ステージの移動速度1cm/秒として、ラビング処理を行った。このとき、パターンの削れや剥がれの有無を評価した。
【0099】
(5) 密着性の評価
フォトマスクを使用しなかった以外は、上記スペーサーの形成と同様にして、硬化膜を形成したのち、JIS K−5400(1900)8.5の付着性試験のうち、8.5・2の碁盤目テープ法により評価した。このとき、100個の碁盤目のうち残った碁盤目の数を表2に示す。
【0100】
(6)耐熱性の評価
フォトマスクを使用しなかった以外は、上記スペーサーの形成と同様にして硬化膜を形成したのち、240℃のオーブン中で60分間加熱し、加熱前後の膜厚を測定して、残膜率(加熱後の膜厚×100/初期膜厚)により評価した。
【0101】
実施例2〜10、比較例1〜2
実施例1において、表1に示す各成分を、接着助剤として、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン5部、界面活性剤として、FTX−218を0.5部、保存安定剤として、4−メトキフェノール0.5部と混合し、固形分濃度が30%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解したのち、孔径0.5μmのミリポアフィルタでろ過して、組成物溶液を調製した。その後、実施例1と同様にして、スペーサーを形成して、実施例1と同様にして評価した。評価結果を、表2に示す。
【0102】
表1において、重合体以外の各成分は、下記のとおりである。
〔B〕成分
B-1:ジペンタエリストールヘキサアクリレート(商品名KAYARAD DPHA)
B-2:多官能ウレタンアクリレート系化合物を含有する市販品(商品名KAYARAD DPHA−40H)
【0103】
〔C〕成分
C-1:1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−エタン−1−オンオキシム−O−アセタート(商品名CGI−242、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)
D-1:2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン(商品名イルガキュア907、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)
D-2:2−(4−メチルベンゾイル)−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(商品名イルガキュア379、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)
E-1:2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール
E-2:2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニ
ル−1,2’−ビイミダゾール、
E-3:4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン
E-4:2−メルカプトベンゾチアゾール
【0104】
【表1】

【0105】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】スペーサーの断面形状を例示する模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
[A](a1)不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸無水物、
(a2)テトラヒドロフラン骨格、フラン骨格、テトラヒドロピラン骨格、ピラン骨格および下記式(1)
【化1】

〔式中、Rは水素またはメチル基を示し、nは2〜10の整数である。〕
で表される骨格の群から選ばれる少なくとも1つの骨格を含有する不飽和化合物ならびに
(a3)上記(a1)〜(a2)成分以外の他の不飽和化合物
を共重合して得られる共重合体、
[B]重合性不飽和化合物、および
[C]感放射線性重合開始剤
を含有することを特徴とする垂直配向型液晶表示素子の突起とスペーサーを同時に形成するための感放射線性樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の感放射線性樹脂組成物から形成された突起およびスペーサー。
【請求項3】
請求項2に記載の突起およびスペーサーを具備する液晶表示素子。
【請求項4】
以下の工程を以下に記載の順序で含むことを特徴とする突起とスペーサー同時に形成するための形成方法。
(1)請求項1に記載の感放射線性組成物の塗膜を基板上に形成する工程、
(2)該塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程、
(3)現像工程、および
(4)加熱工程。

【図1】
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【公開番号】特開2006−259472(P2006−259472A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−79054(P2005−79054)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】