説明

感温式弁装置

【課題】感温物質19を充填した感温ケース18内に挿入されたスプールにさらにロッド21を挿入し、冷却水の温度の上昇に伴って感温物質19が膨張し、スプール20がロッド21を絞出すときにこのロッド21がアーム32から受ける反力を感温ケース18に取付け板14を介して取付けられている弁体13に伝達し、これによってこの弁体13を弁座12から離間させるようにした感温式弁装置において、必要に応じて初期のストロークを吸収する。
【解決手段】ロッド21の先端部とリング状フレーム10のアーム32との間に第2のばね30を介装し、このばね30の弾性復元力を小さな値に設定することによって、ロッド21の先端部とアーム32に取付けられているキャップ状ばね受け31との間のギャップをつめるように移動する初期のストロークを第2のばね30の弾性変形によって吸収し、これによって初期ストローク時における開弁動作を遅らせるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感温式弁装置に係り、とくに温度に応じて開閉し、あるいは弁体の開口量が制御されるようにした感温式弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の内燃機関から成るエンジンの温度が異常に上昇するのを防止するために、従来より冷却水をエンジンのシリンダブロックのウオータジャケットとラジエータとの間で循環させるようにした水冷式の冷却装置が広く用いられている。このような水冷式冷却装置における冷却水のラジエータとバイパス管路との循環の切換えのために、従来より感温式弁装置が広く用いられている。
【0003】
このような弁装置は、特開2005−98153号公報、特開2005−127217号公報、特開2005−214269号公報等に開示されているように、冷却水の流動環境中に配されている感温ケース内に感温物質を充填するとともに、この感温ケースの開口端側からケース内に挿入されたスプール内にさらにロッドを挿入するようにし、温度が上昇して感温物質が膨張し、スプールが絞られてロッドを押出すと、このロッドの先端側の部分を固定側の当接部に当接させるようにし、そのときの反力によって弁体を押して弁座から離間させることによって開弁動作を行なうようにしている。
【0004】
ここで従来の感温式弁装置は、弁体を弁座に対して圧着するためのばねを備えており、スプールによって押出された上述のロッドの反力を利用して上記弁体を上記ばねとは反対側に押圧するようにし、上記ばねとロッドの反力とのバランスによって弁体の開度を調整するようにしている。このような従来の感温式弁装置の温度に対する弁体の開口量、すなわちリフトの特性は、図6あるいは図10において点線で示す特性になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−98153号公報
【特許文献2】特開2005−127217号公報
【特許文献3】特開2005−214269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明の課題は、温度変化に対する開口量あるいはリフトの特性を目的に応じて変更するようにした感温式弁装置を提供することである。
【0007】
本願発明の別の課題は、弁体を弁座に圧着するための第1のばねの他にさらに開弁用のロッドを逆方向から押圧する第2のばねを設けるようにし、このばねを利用して開口量あるいはリフトの特性を変更するようにした感温式弁装置を提供することである。
【0008】
本願発明のさらに別の課題は、低温時における初期ストロークを吸収し、開弁温度が高温側に変更されるようにした感温式弁装置を提供することである。
【0009】
本願発明の上記の課題および別の課題は、以下に述べる本願発明の技術的思想およびその実施の形態によって明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願の主要な発明は、弁座に対して接触および離間可能に配されている第1の弁体と、
前記第1の弁体を押圧して前記弁座に圧着させる第1のばねと、
前記第1の弁体に設けられ、感温物質を充填した感温ケースと、
前記感温ケース内に挿入されたスプールが前記感温物質によって絞られると外に押出されて先端部が固定側の当接部に当接し、その反力によって前記第1の弁体を前記第1のばねに抗して開くロッドと、
前記ロッドの先端部が前記固定側の当接部に当接するのに抗して押圧する第2のばねと、
前記固定側の当接部の孔に嵌合されており、前記ロッドの先端部を押圧する前記第2のばね受けを受けるキャップ状ばね受けと、
を有し、
前記第1のばねの弾性復元力が前記第2のばねの弾性復元力よりも大きく設定され、前記第2のばねの弾性変形によって前記第1の弁体が前記弁座に圧着された状態で初期ストロークが吸収される感温式弁装置に関するものである。
【0011】
ここで、前記固定側の当接部が前記弁座を備えるフレームに連設されたアームに設けられていてよい。また前記アームの中間部に形成された小孔に前記キャップ状ばね受けの先端側突部が嵌合されるとともに、該突部よりも大径の筒状部分に前記第2のばねの先端部が受入れられていてよい。また前記ロッドが前記感温ケースの蓋体に形成された貫通孔によって摺動可能に支持され、しかも前記蓋体に結合された状態で前記感温ケース内に挿入されたスプールに前記ロッドの基端側が挿入されていてよい。また前記感温ケースの前記ロッドが押出される端部とは反対側の端部に第2の弁体が取付けられていてよい。また前記第2の弁体が前記感温ケースの端部に取付けられた支持部材に摺動可能に取付けられ、しかも第3のばねによってケーシングの開口を閉じるように付勢されていてよい。またエンジンの冷却水の循環を前記冷却水の温度に応じて切換えてよい。
【発明の効果】
【0012】
本願の主要な発明は、弁座に対して接触および離間可能に配されている第1の弁体と、第1の弁体を押圧して弁座に圧着させる第1のばねと、第1の弁体に設けられ、感温物質を充填した感温ケースと、感温ケース内に挿入されたスプールが感温物質によって絞られると外に押出されて先端部が固定側の当接部に当接し、その反力によって第1の弁体を第1のばねに抗して開くロッドと、ロッドの先端部が固定側の当接部に当接するのに抗して押圧する第2のばねと、固定側の当接部の孔に嵌合されており、ロッドの先端部を押圧する第2のばね受けを受けるキャップ状ばね受けと、を有し、第1のばねの弾性復元力が第2のばねの弾性復元力よりも大きく設定され、第2のばねの弾性変形によって第1の弁体が弁座に圧着された状態で初期ストロークが吸収されるようにしたものである。
【0013】
従ってこのような感温式弁装置によれば、ロッドの先端部が固定側の当接部に当接するのに抗して押圧する第2のばねによって、この感温式弁装置のとくに第1の弁体のストロークあるいはリフトを変更することができる。ここで第1のばねの弾性復元力の方が第2のばねの弾性復元力よりも大きいために、初期ストロークが吸収され、第1の弁体が開くタイミングが高温側に移行される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施の形態の感温式弁装置の外観斜視図である。
【図2】同縦断面図である。
【図3】常温時の動作を示す縦断面図である。
【図4】初期リフトの吸収動作を示す縦断面図である。
【図5】開弁動作を示す縦断面図である。
【図6】温度に対するリフトの変化を示すグラフである。
【図7】第2の実施の形態の弁装置の常温時の状態の構造を示す縦断面図である。
【図8】バイパス用開口を閉じた状態の縦断面図である。
【図9】オーバストロークを吸収する状態を示す縦断面図である。
【図10】温度に対するリフトの変化を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下本願発明を図示の実施の形態によって説明する。図1および図2は第1の実施の形態の感温式弁装置を示しており、この感温式弁装置は、上から見ると円形であって円板状のリング状フレーム10を備えている。リング状フレーム10にはその中心側に円形の開口11が形成されるとともに、この開口11の下側のエッジの部分が弁座12になっている(図2参照)。そして弁座12に対して接触および離間可能にゴムリングから成る第1の弁体13が配されている。第1の弁体13は取付け板14の外周部に取付け固定されている。
【0016】
上記第1の弁体13を弁座12に対して圧着および離間させるための感温式のアクチュエータについて説明する。この感温式のアクチュエータは円筒状をなす有底の感温ケース18を備えており、この感温ケース18内に外部の温度に応じて膨張および収縮する感温物質19が充填される。また感温物質19を充填した感温ケース18内には上部開口からスプール20が挿入されている。そしてスプール20内にはさらに上方に突出するようにロッド21が挿入されている。ロッド21は上記感温ケース18の上部開口を閉塞する小さな円盤状の蓋体22の中心部に軸線方向に形成された貫通孔23を貫通している。なお上記ロッド21の外周部と蓋体22の貫通孔23との間をシールするように上下一対のOリング24が蓋体22の貫通孔23の内周面に形成された凹部に装着されている。そして上側のOリング24の上にはさらに押えリング25が取付けられている。
【0017】
感温ケース18の蓋体22から突出したロッド21の上端側の部分には止め輪28が装着されるとともに、この止め輪28よりも上側の部分においてロッド21の外周部にはばね受け29が摺動可能に嵌合されており、その下面が止め輪28で受けられるようになっている。そしてばね受け29はロッド21の外周部に装着された第2のばね30の下端部を受けるようになっている。第2のばね30の上端側の部分はキャップ状ばね受け31によって受けられている。キャップ状ばね受け31はリング状フレーム10の円形の開口11を跨ぐように設けられているアーム32の小孔33に嵌合されており、このアーム32によって押えられている。
【0018】
上記リング状フレーム10の下側には、側面が開放されたU字状のブラケット36が取付けられており、上記ブラケット36の両側の上部の係止片37がリング状フレーム10の小孔に係合されて取付けられている。そしてブラケット36の内側には第1のばね38が配され、この第1のばね38の上端側の部分が、上記取付け板14の下面を押圧している。すなわち第1のばね38は、取付け板14を介して、第1の弁体13を弁座12に圧着するように付勢している。
【0019】
感温ケース18の下端側の部分にはロッド状をなす支持部材41が下方に突出するように取付けられている。そしてこの支持部材41の外周部には円錐台状の第3のばね42が配されている。第3のばね42は支持部材41に摺動自在に保持されている第2の弁体43の上面を押圧するようになっている。なお第2の弁体43は、上記支持部材41によって摺動可能に支持されるとともに、この支持部材41に取付けられた止め輪44によってその下端が受けられており、これによって第2の弁体43が支持部材41から脱落しないようにしている。
【0020】
このような感温式の弁装置は、図2に示すように、エンジンの冷却水を冷却する循環管路中に接続されたハウジング50内に配されている。このハウジング50の上部には、キャップ51が結合されており、ハウジング50とキャップ51との接合部においてハウジング50の開口の縁部に形成された保持用凹部52が、上記リング状フレーム10の外周側のゴムリング53を保持し、このようなゴムリング53を介して感温式弁装置がハウジング50とキャップ51との接合部に取付け固定される。
【0021】
キャップ51には上部に開放するように入口ポート55が形成されている。これに対してハウジング50の側部には出口ポート56が形成される。またハウジング50の底部にはバイパス用開口57が形成されている。エンジン61のシリンダブロックのウオータジャケットは、冷却水の循環回路に接続されたラジエータ62と接続されるとともに、このラジエータ62の出口側の管路が上記キャップ51の入口ポート55に接続される。またウオータポンプ63の入口側の部分が上記ハウジング50の出口ポート56に接続される。またエンジン61のシリンダブロックからのバイパス管路が上記バイパス用開口57に接続される。
【0022】
ここでエンジン61の冷却水の温度が高い場合には、この感温式弁装置が開かれるようになり、このためにエンジン61の冷却水はラジエータ62で冷却された後に、この感温式弁装置の入口ポート55から出口ポート56に流れ、ウォータポンプ63によって再びエンジン61のシリンダブロックに戻るようになっている。このような循環を行なうことにより、温度が上昇した冷却水を、ラジエータ62で放熱してその温度を低くすることができる(図5参照)。
【0023】
これに対してエンジンの冷却水の温度が低い場合には、図2および図3に示すように、この感温式弁装置の第1の弁体13が弁座12に圧着されて閉じられる。従ってエンジン61の冷却水はラジエータ62内を循環することはなく、バイパス管路を通してバイパス用開口57からこの感温式弁装置のハウジング50内に入り、その後に出口ポート56からウオータポンプ63に導かれ、エンジン61のシリンダブロックに戻るようになる。すなわちエンジン61の冷却水の温度が低い場合には、さらにラジエータ62で冷却することなく、バイパス管路を介して循環させるようにし、過冷却を防止している。
【0024】
次にこの第1の実施の形態の感温式弁装置の動作について説明する。この感温式弁装置は、その第1のばね38の弾性復元力の方が第2のばね30の弾性復元力よりも大きな値に設定されている。このようなばね38、30の弾性復元力の設定によって、ロッド21の初期のストロークが吸収されるようにしており、従来の図6における点線で示す特性を、実線で示す特性に変更するようにしており、温度に対する開弁量あるいはリフトの特性が改善されている。
【0025】
エンジンの冷却水の温度が低い場合には、感温ケース18内の感温物質19が膨張していないために、スプール20に挿入されたロッド21は図3に示すように上方に押出されていない。従ってロッド21とキャップ状ばね受け31の受け面との間には所定の初期ストロークに相当する隙間がある。
【0026】
このような状態においてエンジンの冷却水の温度が上昇すると、感温ケース18内の感温物質19が膨張し、このために感温物質19によってスプール20が絞られる。従ってロッド21は図4に示すように、上方に押出されることになる。このときにロッド21はその上端側に取付けられている第2のばね30によって下方に押されているために、この第2のばね30を圧縮させながら上昇し、このロッド21の上端とキャップ状ばね受け31との間の隙間を無くすように移動する。
【0027】
ロッド21とキャップ状ばね受け31が当接するまでの間は、ロッド21はキャップ状ばね受け31を保持しているアーム32に対して押圧力を及ぼすことがないために、このロッド21がアーム32から反力を受けることがない。従ってこの初期のリフトの状態において、図6においてAで示す低温側では、温度の変化に対してリフトを生じない。すなわちAと対応する温度までは、ロッド21の初期ストロークが吸収されるようになり、第1の弁体13は弁座12に圧着された状態で維持される。従ってこの初期ストロークの段階においてはこの感温式弁装置は閉じたままの状態になっている。
【0028】
エンジンの冷却水の温度がさらに上昇すると、図5に示すように、感温ケース18内の感温物質19がさらに膨張するために、スプール20がロッド21を絞出し、これによってロッド21が上方へ大きく押出される。ロッド21の上端部は第2のばね30を完全に押潰し、キャップ状ばね受け31を介してアーム32を押圧する。ここでアーム32は固定されているために、ロッド21はアーム32からの反力によって、逆に感温ケース18を下方に押圧する。従ってこの感温ケース18と結合されている取付け板14の外周側の第1の弁体13が図5に示すように下方に移動するようになり、第1の弁体13が弁座12から離間する。これによってこの感温式弁装置が開かれるようになる。すると入口ポート55から入ってきた冷却水が出口ポート56に流れるようになり、これによってラジエータ62を通過する冷却水の循環管路が確立される。
【0029】
なお所定の温度に達すると、上記感温ケース18の下端側の支持部材41に取付けられている第2の弁体43がハウジング50のバイパス用開口57を閉じるようになり、このためにエンジンの冷却水がバイパス管路を循環しなくなる。そして以降は、第3のばね42が圧縮されるとともに、この第3のばね42が感温ケース18に対して上方への付勢力を与えるために、ロッド21の下方への反力に対する抵抗力が増大する。図6におけるB点で、温度に対するリフトの移動量が緩やかになるのは、温度上昇に伴う感温ケース18内の感温物質19の膨張による。そしてこの後は、温度の上昇に伴って、感温ケース18内の感温物質19が膨張し、ロッド21をさらに押出すために、ロッド21がアーム32からの反力によって感温ケース18を下方に押すとともに、このときの感温ケース18の移動量は、第1のばね38と第3のばね42の弾性復元力の和に抗した移動になり、このために温度に対するリフトの変化が図6に示すように、緩やかになる。
【0030】
従って本実施の形態の感温式弁装置は、図6に示すような特性になる。この特性の特徴は、初期ストロークが吸収され、開弁動作が開始される位置が高温側であってA点に移行することである。またその後における開弁動作は、とくにA〜Bの区間において、温度の変化に対する第1の弁体13の移動量が急峻な特性になる。従って温度の変化に対する開弁動作の感度が改善されることになる。
【0031】
次に第2の実施の形態を図7〜図10によって説明する。この実施の形態は、第2のばね30がリボン状の鋼板をコイル状に成形した硬いばねから構成され、この板ばね30の弾性復元力の方が線材をコイル状に巻いた第1のばね38の弾性復元力よりも大きな値に設定される。さらにここでは、第3のばね42の弾性復元力が、第2のばね30の弾性復元力よりも大きな値に設定される。このようなばねの設定によって、図10における点線で示す特性を実線で示す特性に改善することが可能になる。
【0032】
温度が低い場合には図7に示すように、感温ケース18内の感温物質19が収縮しており、スプール20がロッド21を絞出すことがない。従ってこのロッド21はスプール20にほぼ収納された状態にあり、ロッド21がアーム32から受ける反力によって第1の弁体13を下方に押圧することがない。従って第1の弁体13は弁座12に圧着された状態に維持される。これによってこの感温式弁装置は閉じた状態に維持される。
【0033】
エンジンの冷却水の温度が上昇すると、図8に示すように、感温ケース18内の感温物質19が膨張し、スプール20が絞られ、ロッド21が上方に押出される。このときに第2のばね30の弾性復元力の方が第1のばね38の弾性復元力よりも大きく設定されているために、第2のばね30はここでは収縮しない。従ってロッド21の上方への移動に伴う押圧力が、止め輪28、ばね受け29、第2のばね30、キャップ状ばね受け31を介してアーム32に伝達される。固定側のアーム32は逆にキャップ状ばね受け31、第2のばね30、下側のばね受け29、止め輪28を介してロッド21に対して下方への力を与える。従ってこの力によって、ロッド21が感温ケース18を下降させることになる。従ってこの感温ケース18に取付け板14を介して取付けられている第1の弁体13が弁座12から離間し、この感温式弁装置が開弁される。
【0034】
従ってエンジンの冷却水は、入口ポート55から入り、出口ポート56に出るように循環し、ラジエータを通過し、ラジエータによる冷却作用が働くことになる。
【0035】
所定の温度までエンジンの冷却水の温度が上昇し、感温ケース18がロッド21によって下方に押圧されると、やがてこの感温ケース18の下端側の支持部材41に取付けられている第2の弁体43がハウジング50のバイパス用開口57を閉じる。これによってバイパス管路による冷却水の循環が停止される。
【0036】
さらに冷却水の温度が上昇すると、図9に示すように、第2のばね30が弾性変形してオーバストロークを吸収する動作が行なわれる。すなわち第3のばね42によって下方に押圧されている第2の弁体43がハウジング50のバイパス用開口57を閉じる位置まで移動されると、第2の弁体43を下方に押圧している第3のばね42の弾性復元力が感温ケース18を上方に付勢する。従って感温ケース18は、第1のばね38の弾性復元力と第3のばね42の弾性復元力の和によって上方に押されるようになる。ここでこの2つのばね38、42の弾性復元力の和は、上側の第2のばね30の弾性復元力よりも大きな値に設定されるために、それ以上感温ケース18が下降することがない。
【0037】
従って冷却水の温度がさらに上昇し、感温ケース18内の感温物質19がさらに膨張した場合には、ロッド21が止め輪28および下側のばね受け29を介して第2のばね30を押圧して弾性変形させる。従って以降はロッド21の上端とキャップ状ばね受け31の間のギャップを詰めるように第2のばね30の弾性変形によってオーバストロークが吸収され、この間の感温ケース18および第1の弁体13の下方への移動が停止される。
【0038】
従って図10において実線で示すように、B点よりもさらに温度が上昇した場合において、この感温式弁装置の第1の弁体13のリフトあるいは開口量は変化しなくなる。これによって、所定の温度以上になった場合における弁体13のオーバストロークが吸収され、所定の温度になった後における弁体の開口量が増大することがなくなり、安定な特性の感温式弁装置が得られるようになる。
【0039】
以上本願発明を図示の実施の形態によって説明したが、本願発明は上記実施の形態によって限定されることなく、本願発明の技術的思想の範囲内において各種の変更が可能である。例えば上記実施の形態における感温式弁装置の具体的な構造や、部品の組合せ等については、各種の設計変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本願発明は、エンジンの冷却水をラジエータとバイパス管路とに切換えるための感温式の切換え弁として利用することができ、エンジンの冷却装置の主要部分である感温弁として利用可能である。
【符号の説明】
【0041】
10 リング状フレーム
11 円形の開口
12 弁座
13 第1の弁体(ゴムリング)
14 取付け板
18 感温ケース
19 感温物質
20 スプール
21 ロッド
22 蓋体
23 貫通孔
24 Oリング
25 押えリング
28 止め輪
29 ばね受け
30 第2のばね
31 キャップ状ばね受け
32 アーム
33 小孔
36 ブラケット
37 係止片
38 第1のばね
41 支持部材
42 第3のばね
43 第2の弁体
44 止め輪
50 ハウジング
51 キャップ
52 保持用凹部
53 ゴムリング
55 入口ポート
56 出口ポート
57 バイパス用開口
61 エンジン
62 ラジエータ
63 ウオータポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁座に対して接触および離間可能に配されている第1の弁体と、
前記第1の弁体を押圧して前記弁座に圧着させる第1のばねと、
前記第1の弁体に設けられ、感温物質を充填した感温ケースと、
前記感温ケース内に挿入されたスプールが前記感温物質によって絞られると外に押出されて先端部が固定側の当接部に当接し、その反力によって前記第1の弁体を前記第1のばねに抗して開くロッドと、
前記ロッドの先端部が前記固定側の当接部に当接するのに抗して押圧する第2のばねと、
前記固定側の当接部の孔に嵌合されており、前記ロッドの先端部を押圧する前記第2のばね受けを受けるキャップ状ばね受けと、
を有し、
前記第1のばねの弾性復元力が前記第2のばねの弾性復元力よりも大きく設定され、前記第2のばねの弾性変形によって前記第1の弁体が前記弁座に圧着された状態で初期ストロークが吸収される感温式弁装置。
【請求項2】
前記固定側の当接部が前記弁座を備えるフレームに連設されたアームに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の感温式弁装置。
【請求項3】
前記アームの中間部に形成された小孔に前記キャップ状ばね受けの先端側突部が嵌合されるとともに、該突部よりも大径の筒状部分に前記第2のばねの先端部が受入れられていることを特徴とする請求項2に記載の感温式弁装置。
【請求項4】
前記ロッドが前記感温ケースの蓋体に形成された貫通孔によって摺動可能に支持され、しかも前記蓋体に結合された状態で前記感温ケース内に挿入されたスプールに前記ロッドの基端側が挿入されていることを特徴とする請求項2に記載の感温式弁装置。
【請求項5】
前記感温ケースの前記ロッドが押出される端部とは反対側の端部に第2の弁体が取付けられていることを特徴とする請求項4に記載の感温式弁装置。
【請求項6】
前記第2の弁体が前記感温ケースの端部に取付けられた支持部材に摺動可能に取付けられ、しかも第3のばねによってケーシングの開口を閉じるように付勢されていることを特徴とする請求項5に記載の感温式弁装置。
【請求項7】
エンジンの冷却水の循環を前記冷却水の温度に応じて切換えることを特徴とする請求項1に記載の感温式弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−189218(P2012−189218A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−110241(P2012−110241)
【出願日】平成24年5月14日(2012.5.14)
【分割の表示】特願2007−272750(P2007−272750)の分割
【原出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(503339834)株式会社 クゼー (12)
【Fターム(参考)】