説明

感温性スマートテキスタイル

【課題】標準的な織布は生地の構築時に特性が定められ、この特性は周囲条件の変化及び物理作用にかかわらず保持される。これらの標準的な製品は、特に相乗効果のために他の織布と共に積層される場合にかなり効果的であり、また快適性を高める。
【解決手段】織布は、隣り合って設けられる少なくとも第1の材料と第2の材料とから形成される多成分繊維を組み込んで成る少なくとも1つの起毛面を有する。第1の材料及び第2の材料は特異的な熱伸長を示し、これは、多成分繊維を湾曲又はカールさせ、且つ温度変化に応じて可逆的に回復させることにより、周囲条件に応じて織布の断熱性能を調節する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織布、より詳細には周囲温度の変化に反応性である織布に関する。
【背景技術】
【0002】
標準的な織布は生地の構築時に特性が定められ、この特性は周囲条件の変化及び/又は物理作用にかかわらず保持される。これらの標準的な製品は、特に相乗効果のために他の織布と共に積層される場合にかなり効果的であり、また快適性を高める。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
フリースのような、起毛面(片面又は両面のいずれか)を有する織布は、様々な周囲条件及び様々な作用のために様々なパイル高さ及び様々な密度を有する。
【0004】
一態様によれば、織布は、隣り合って(例えば押出し、例えば共押出しされて)設けられる少なくとも第1の材料と第2の材料とから形成される多成分繊維(例えば、二成分繊維、三成分繊維等)を組み込んで成る少なくとも1つの起毛面を有する。第1の材料及び第2の材料は、多成分繊維を湾曲又はカールさせ、且つ温度変化に応じて可逆的に回復させる特異的な熱伸長(differential thermal elongation:示差的な熱伸長)(例えば、膨張及び/又は短縮)を示し、これにより周囲条件に応じて織布の断熱性能を調節する。
【0005】
好ましい実施態様は、1つ又は複数の以下のさらなる特徴点を含むことができる。第1の材料及び第2の材料は、所定の温度範囲にわたる温度変化に応じて特異的な熱伸長を示す。好ましくは、所定の温度範囲は32°F〜120°Fである。より好ましくは、所定の温度範囲は50°F〜100°Fである。
【0006】
この起毛面は、フリース、ベロア、パイル、シャーリング及びループテリーから成る群から選択される形態に加工される。織布は、円形ニット構造、片面ニット構造、両面ニット構造、よこ編構造及びたて編構造から成る群から選択されるニット構造を有する。織布は、織物構造又は2本針ラッセルたて編構造を有するパイル地である。多成分繊維としては、二成分繊維及び/又は三成分繊維が挙げられる。第1の材料は第1のポリマーであり、第2の材料は、第1のポリマーと相溶性である第2のポリマーである。第1の材料及び/又は第2の材料は、ポリエステル、ポリウレタン及び/又はナイロンから成る群から選択される熱可塑性ポリマーを含む。第1の材料は第1のポリマー(例えばナイロン)であり、第2の材料は、第1のポリマーと非相溶性である第2のポリマー(例えばポリエステル)である。多成分繊維はまた、第1のポリマーと第2のポリマーとの間に設けられる第3のポリマーを含んでいてもよい。第3のポリマーは、第1のポリマー及び第2のポリマーの互いに対する相溶性よりも、第1のポリマー及び第2のポリマーの両方と相溶性が高い場合がある。第1の材料及び第2の材料は、第1の材料と第2の材料との分離を防止するようになっている相補的な噛み合わせ面形状を含んでいてもよい。織布体は、ステッチ糸により形成される技術上の表面と、多成分繊維から成るループ及び/又はパイル糸により形成される技術上の裏面とを有する。保温(thermal)生地は、伸縮性及び形状回復性を高めるためにステッチ糸に組み込まれる弾性糸(例えば、Lycra(登録商標)等のスパンデックス)を含んでいてもよい。第1の材料及び第2の材料の特異的な熱伸長は、低ヒステリシスにより実質上可逆的である。織布の断熱性能の調節は、比較的低いヒステリシスにより実質上可逆的である。
【0007】
別の態様によれば、感温性織布製衣服は、多成分繊維から成る1つ又は複数の糸から形成される第1の起毛面を、着用者の皮膚に面して有するニット保温生地を含む。多成分繊維は、隣合って配置される第1の繊維成分と第2の繊維成分とを含む。多成分繊維は、異なる熱特性を有し、この熱特性は、多成分繊維を湾曲又はカールさせ、且つ温度変化に応じて可逆的に回復させることにより、周囲条件に応じて織布製衣服の断熱特性を調節する。好ましい実施態様は、1つ又は複数の以下のさらなる特徴点を含むことができる。ニット保温生地は、起毛ループ及び/又はパイル糸の1つ又は複数の領域を有する、着用者の皮膚に面した内面を含む。起毛ループ及び/又はパイル糸は、約32°F〜約120°Fの温度範囲にわたって嵩高さが約5%〜約50%変化する。好ましくは、周囲温度変化の関数である嵩高さを変化させる特性は、比較的低いヒステリシスにより可逆的である。多成分繊維は、約32°F〜約120°Fの温度範囲にわたって断面積が約5%〜約50%変化する。第1の繊維成分及び/又は第2の繊維成分は、コポリマー又はブロックポリマーであってもよい。第1の繊維成分及び第2の繊維成分は、物理的な固着により互いに固定されていてもよい。第1の繊維成分及び第2の繊維成分は、第1の材料と第2の材料との分離を防止するようになっている相補的な噛み合わせ面形状を含み得る。多成分繊維としては、二成分繊維及び/又は三成分繊維が挙げられる。第1の繊維成分としては第1のポリマーが挙げられ、第2の繊維成分としては、第1のポリマーと相溶性である第2のポリマーが挙げられる。第1の繊維成分としては第1のポリマー(例えばポリエステル)が挙げられ、第2の繊維成分としては、第1のポリマーと非相溶性である第2のポリマー(例えばナイロン)が挙げられる。多成分繊維はまた、第1の繊維成分と第2の繊維成分との間に設けられる第3のポリマーを含み得る。第3のポリマーは、第1のポリマー及び第2のポリマーの両方と相溶性である。多成分繊維は、第1の繊維成分と第2の繊維成分とを互いに物理的に固着させる付加物(例えば、ケイ酸塩、ゼオライト、二酸化チタン等)を含んでいてもよい。第1の繊維成分又は第2の繊維成分の少なくとも1つは鋸歯状面を含む。多成分繊維は、1つ又は複数の鋸歯状面を含む。多成分繊維は略矩形の断面形状を有する。第1の繊維成分及び第2の繊維成分は略円形の断面形状を有する。ニット保温生地は、第1の起毛面の反対側に、起毛ループ及び/又はパイル糸の1つ又は複数の領域を含む第2の起毛面を有する。第2の起毛面は、多成分繊維から成る1つ又は複数の糸を含む。
【0008】
さらに別の態様において、工学的な保温生地製衣服に用いられる感温性織布要素を形成する方法が、1つ又は複数の多成分繊維を含む糸及び/又は繊維の連続ウェブを形成することを含む。この方法はまた、所定のパイル高さを有し且つ1つ又は複数の多成分繊維から成るループ及び/又はパイル糸の1つ又は複数の領域を形成するように、連続ウェブの第1の面を加工することを含む。多成分繊維は、隣合って設けられる少なくとも第1の材料と第2の材料とから形成される。第1の材料及び第2の材料は特異的な熱伸長を示し、これは、多成分繊維を湾曲又はカールさせ、且つ温度変化に応じて可逆的に回復させることにより、周囲条件に応じて織布の断熱性能を調節する。
【0009】
好ましい実施態様は、1つ又は複数の以下のさらなる特徴点を含むことができる。また、上記方法は、多成分繊維から成るループ及び/又はパイル糸の1つ又は複数の他の領域を形成するように、連続ウェブの第2の面を加工することを含んでいてもよい。糸及び/又は繊維の連続ウェブを形成する工程は、電子針及び/又は選択されたシンカーを用いて糸及び/又は繊維を組み合わせることを含む。所定のパイル高さを有するループ及び/又はパイル糸の1つ又は複数の領域を形成するように、連続ウェブの第1の面を加工する工程は、織布要素の技術上の裏面にループを形成することを含む。糸及び/又は繊維の連続ウェブを形成する工程は、円筒状に編むことにより、1つ又は複数の多成分繊維を含む糸及び/又は繊維を組み合わせることを含む。糸及び/又は繊維の連続ウェブを形成する工程は、反転めっき(reverse plating)により、1つ又は複数の多成分繊維を含む糸及び/又は繊維を組み合わせることを含む。第1の面を加工する工程は、片面フリースを形成するように第1の面を加工することを含む。この方法はまた、両面フリースを形成するように連続ウェブの第2の面を加工することを含んでいてもよい。糸及び/又は繊維の連続ウェブを形成する工程は、めっきにより、1つ又は複数の多成分繊維を含む糸及び/又は繊維を組み合わせることを含む。糸及び/又は繊維の連続ウェブを形成する工程は、標準めっき(regular plating)により、1つ又は複数の多成分繊維を含む糸及び/又は繊維を組み合わせることを含み、ここで、第1の面を加工することは、片面フリースを形成するように第1の面を加工することをさらに含む。糸及び/又は繊維の連続ウェブを形成する工程は、たて編み(例えば、2本針たて編み、例えばラッセルたて編)により、1つ又は複数の多成分繊維を含む糸及び/又は繊維を組み合わせることを含む。一例として、糸及び/又は繊維の連続ウェブを形成する工程は、ラッセルたて編みにより、糸及び/又は繊維を組み合わせることを含み、またこの方法は、相互結合パイルを切断することによって、片面カットパイル地を形成することを含む。この場合、この方法はまた、カットパイル地の技術上の表面を形成する糸を起毛させることにより、両面カットパイル地を形成してもよい。糸及び/又は繊維の連続ウェブを形成する工程は、シルバー編みにより、1つ又は複数の多成分繊維を含む糸及び/又は繊維を組み合わせることを含む。所定のパイル高さを有するループ及び/又はパイル糸の1つ又は複数の領域を形成するように連続ウェブの第1の面を加工する工程は、第1の面を起毛させることを含む。この方法は、連続ウェブの第1の面と反対側の第2の面を起毛させることを含んでもよい。この方法はまた、ループ及び/又はパイル糸の1つ又は複数の領域のループを切断すること、及びカットループを一般的なパイル高さに加工することを含んでもよい。第1の材料及び第2の材料は、所定の温度範囲にわたる温度変化に応じて特異的な熱伸長(例えば、膨張及び/又は短縮)を示す。好ましくは、所定の温度範囲は、32°F〜120°F、より好ましくは50°F〜約100°Fである。この方法はまた、第1の材料と第2の材料とを組み合わせることであって、それにより1つ又は複数の多成分繊維を形成する、組み合わせることを含んでいてもよい。第1の材料と第2の材料とを組み合わせることは、第1の材料及び第2の材料を共押出しすることを含んでいてもよい。第1の材料及び第2の材料は、非相溶性ポリマーであり、第1の材料と第2の材料とを組み合わせることは、多成分繊維において第1の材料と第2の材料との間に設けられるような第3のポリマーと共に、第1の材料及び第2の材料を共押出しすることを含んでいてもよい。第3のポリマーは、第1の材料及び第2の材料の両方と相溶性である。第1の材料と第2の材料とを組み合わせることは、第1の材料を第2の材料に物理的に固着させることを含んでいてもよい。第1の材料を第2の材料に物理的に固着させることは、ケイ酸塩、ゼオライト、二酸化チタン等の付加物を、第1の材料及び第2の材料の1つ又は両方に付け加えることを含んでいてもよい。ここで、この付加物は、第1の材料と第2の材料との間で物理的に又は化学的に作用し得る架橋である。第1の材料及び/又は第2の材料は、ポリエステル、ポリウレタン及びナイロンから成る群から選択され得る。ループ及び/又はパイル糸の1つ又は複数の領域は、約50°F〜約100°Fの温度範囲にわたって嵩高さが約5%〜約50%変化する。1つ又は複数の多成分繊維は、約50°F〜約100°Fの温度範囲にわたって断面積が約5%〜約50%変化する。
【0010】
本発明の1つ又は複数の実施の形態の詳細は、添付の図面及び以下の説明に記載されている。本発明の他の特徴、目的及び利点は、説明及び図面、並びに特許請求の範囲から明らかとなる。
【0011】
別個の図面における同じ参照符号は同じ要素を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1Aは、二成分繊維10の詳細図である。繊維成分10は、隣り合って配置される2つの感温性材料、すなわち第1の繊維成分A及び第2の繊維成分Bを含む。第1の繊維成分A及び第2の繊維成分Bは、温度変化に応じて特異的な熱伸長(differential thermal elongation:示差的な熱伸長)(例えば膨張及び/又は短縮)を示す。その結果、繊維は、周囲条件に応じて湾曲及び/又はカールする傾向にある。第1の繊維成分A及び/又は第2の繊維成分Bに好適な材料としては、ポリエステル、ポリウレタン及びナイロンが挙げられる。
【0013】
例えば、一実施形態において、第1の繊維成分Aは第2の繊維成分Bよりも相対的に大きい熱膨張率を有する(すなわち、温度上昇に応じて伸長(grow)及び/又は膨張する傾向が高い)。繊維10が臨界温度範囲を超える熱に曝されると、第1の繊維成分Aは、第2の繊維成分Bよりも相対的に速い速度で膨張するため、繊維が湾曲する(例えば図1Bを参照)。特異的な熱伸長(例えば、膨張及び/又は収縮)が或る特定の閾値レベルを超えると、繊維10はカールする傾向にある(例えば図1Cを参照)。このプロセスは、低ヒステリシスにより可逆的でもある。すなわち、温度が臨界温度範囲未満に戻ると、繊維10はその元の三次元構造に戻る。このタイプの好適な二成分繊維は、Mide Technologies Corporation(マサチューセッツ州メドフォード)により製造されている。
【0014】
図2Aは、上記のような二成分繊維10の起毛面を含む感温性織布20を示す。この織布20は、二成分繊維10を(例えば、シンカループ糸又はパイルとして)含む少なくとも1つの起毛面24(例えば、たて編又は特殊な丸編のパイル糸)を有する、好ましくはニット構造の、一般的なシート状基材22を含む。上記のニット構造のいずれかにおいて、例えばステッチ糸に弾性糸(例えば、Lycra(登録商標)等のスパンデックス)を加えてもよい。例えば、伸縮性及び形状回復性を高めるためにスパンデックスをステッチ糸に組み込むこともある。周囲温度が上昇すると、起毛面(複数可)の繊維は、起毛面方向に湾曲及び/又はカールし、織布の嵩高さ及び密度を変え、結果として、織布20の断熱性能を調節する。図2Bは、両面感温性織布の反応挙動を示す。
【0015】
一例として、感温性織布20は織布製衣服30に組み込まれ得る。図3Aに示されるように、二成分繊維10を含む起毛面24は使用者の皮膚Sと接触して、快適性の向上、水分管理、並びに空気の移動量の増大及び通気をもたらす。周囲温度が上昇すると、起毛面の繊維は、湾曲(図3B)及びカール(図3C)して、織布の三次元構造を変えることにより、衣服の断熱性を改質する。すなわち、周囲温度が上昇すると、織布は薄くなり(嵩高くない)、それゆえ断熱性が低くなり、全体的な快適性を高める。
【0016】
好ましくは、約32°F〜約120°F、より好ましくは約50°F〜約100°Fの温度範囲にわたって三次元構造の変化が起きる。
【0017】
本発明の多くの実施形態を記載するが、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、種々の変更形態が成され得ることは理解されるであろう。例えば、二成分繊維は、様々な断面形状を有することができる。例えば、図4Aは、長辺43及び長辺44並びに短辺45及び短辺46を有する略矩形の断面を有する二成分繊維40の一実施形態を示す。二成分繊維40は、隣り合って配置される2つの異なるポリマー、すなわち第1の繊維成分41及び第2の繊維成分42を含み、これらの繊維成分は、温度変化に応じて特異的な熱伸長(例えば、膨張及び/又は短縮)を示す。この例では、第1の繊維成分41が、第2の繊維成分42よりも相対的に大きい熱膨張率を有する。このため、(例えば、図1A〜図1Cに関する)上記の二成分繊維と同様に、繊維40が臨界温度範囲を超える熱に曝されると、第1の繊維成分41は、第2の繊維成分42よりも相対的に速い速度で膨張するため、繊維が湾曲し(例えば図4Aを参照)、特異的な熱伸長(例えば、膨張及び/又は短縮(収縮))が或る特定の閾値を超えると、繊維40はカールする傾向にある(例えば図4Bを参照)。略矩形の断面形状のために、二成分繊維40は、例えば短辺45及び短辺46と比べて、長辺43及び長辺44の方向に比較的容易に湾曲しやすい(図4Aの矢印47で示される)。このプロセスは、低ヒステリシスにより可逆的でもある。すなわち、温度が臨界温度範囲未満に戻ると、繊維40はその元の三次元構造に戻る。
【0018】
この二成分繊維は、平面及び/又は1つ若しくは複数の鋸歯状面を有し得る。例えば、図5は、鋸歯状面53を有する第1の繊維成分51と、鋸歯状面54を有する第2の繊維成分52とを含む二成分繊維50を示す。鋸歯状面は、例えば図1A及び図4Aに示される平面と比べて、異なる外観、感触、靱性、及び/又は光反射率を提供し得る。
【0019】
実施形態によっては、二成分繊維は、ナイロン及びポリエステル等の、2つの非相溶性ポリマー(例えば繊維成分)又は相溶性が低いポリマーを含むことができる。例えば、場合によって、二成分繊維は、隣り合って設けられるナイロン繊維とポリエステル繊維とを含んでいてもよい。非相溶性ポリマー又は相溶性が低いポリマーにより形成される繊維は裂ける傾向を示す可能性がある、すなわち、個々の繊維成分は分離する傾向を示す可能性があり、これは温度変化に反応性である二成分繊維の作用を変える可能性がある。
【0020】
図6及び図7は、多成分繊維の個々の繊維成分の分離を防止するアプローチを示す。図6は、略円形の断面を有する第1の繊維成分61及び第2の繊維成分62を含む三成分繊維60に適用されるようなアプローチを示す。図6に示されるように、第3のポリマー63は、第1のポリマーと第2のポリマー(すなわち、第1の繊維成分61及び第2の繊維成分62)との間に(例えば、これらのポリマーと共に共押出しされて)設けられる。第3のポリマー63は、第1のポリマーと第2のポリマーとを互いに固定するのを助ける架橋として用いられる。第3の「架橋」ポリマー63は、第1のポリマー及び第2のポリマーの互いに対する相溶性よりも、第1のポリマー及び第2のポリマーのそれぞれとの相溶性が高いため、第1のポリマーと第2のポリマーとの間のより強力な結合を提供し、また分離の可能性を低減することができる。
【0021】
図7は、鋸歯状面73を有する略矩形の断面を有する第1の繊維成分71及び鋸歯状面74を有する略矩形の断面を有する第2の繊維成分72を含む三成分繊維70に適用されるような、図6に関する上記のアプローチを示す。図7に示されるように、第3のポリマー75は、第1の繊維成分71及び第2の繊維成分72である非相溶性ポリマーを固定する架橋として用いられる。
【0022】
図8及び図9は、多成分繊維の個々の繊維成分の分離を防止する別のアプローチを示す。ここで、個々の繊維成分は、物理的な固着により互いに固定される。このアプローチは、単独で、又は図7及び図8に関する上記のアプローチと組み合わせて用いてもよい。物理的な固着は、繊維成分の境界面で、合わせ面と噛み合う様々な形状を設けることによって達成することができる。例えば、図8に示されるように、第1の繊維成分81及び第2の繊維成分82の合わせ面に、第1のポリマーと第2のポリマーとを互いに固着させるように作用する相補的な噛み合わせ形状83及び84を設ける。代替的に又は付加的に、図9の例で示されるように、物理的な固着は、付加物93(例えば、ケイ酸塩、ゼオライト、二酸化チタン(TiO)等)を付け加えることによっても達成され得る。この付加物93は、多成分繊維90の第1の繊維成分91と第2の繊維成分92とを物理的又は化学的に架橋することにより、繊維成分91と繊維成分92とを互いに固着させる。
【0023】
実施態様によっては、糸及び/又は繊維を組み合わせるのに好適な任意の手法によって織布を製造し、少なくとも1つの起毛面を有する加工織布を作製してもよい。多成分繊維の第1の材料及び第2の材料は、相対湿度の変化又は(例えば、感温性織布が衣服に組み込まれている場合には)発汗量の変化に応じて特異的な熱伸長を示し得る。起毛面は、フリース、ベロア、パイル及び/又はテリーループとして加工することができる。感温性織布を多層衣服系の断熱層に組み込むことができる。したがって、他の実施形態も添付の特許請求の範囲の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1A】感温性二成分繊維の詳細図である。
【図1B】感温性二成分繊維の詳細図である。
【図1C】感温性二成分繊維の詳細図である。
【図2A】感温性スマートテキスタイルファブリック(smart textile fabric)の断面図である。
【図2B】感温性スマートテキスタイルファブリックの断面図である。
【図3A】感温性スマートテキスタイルファブリック製衣服の詳細な断面図である。
【図3B】感温性スマートテキスタイルファブリック製衣服の詳細な断面図である。
【図3C】感温性スマートテキスタイルファブリック製衣服の詳細な断面図である。
【図4A】略矩形の断面形状を有する感温性二成分繊維の一実施形態の詳細図である。
【図4B】略矩形の断面形状を有する感温性二成分繊維の一実施形態の詳細図である。
【図5】鋸歯状面を有する感温性二成分繊維の詳細図である。
【図6】多成分繊維の個々の繊維成分を互いに固定するための1つのアプローチを示す図である。
【図7】多成分繊維の個々の繊維成分を互いに固定するための1つのアプローチを示す図である。
【図8】多成分繊維の個々の繊維成分を互いに固定するための1つのアプローチを示す図である。
【図9】多成分繊維の個々の繊維成分を互いに固定するための1つのアプローチを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合って設けられる少なくとも第1の材料と第2の材料とから形成される多成分繊維を組み込んで成る少なくとも1つの起毛面を有する織布であって、該第1の材料及び該第2の材料は、該多成分繊維を湾曲又はカールさせ、且つ温度変化に応じて可逆的に回復させる特異的な熱伸長を示し、これにより周囲条件に応じて該織布の断熱性能を調節する、織布。
【請求項2】
前記多成分繊維は一対の共押出しされた繊維を含む、請求項1に記載の織布。
【請求項3】
前記第1の材料及び前記第2の材料は、32°F〜120°Fの所定の温度範囲にわたる温度変化に応じて特異的な熱伸長を示す、請求項1又は2に記載の織布。
【請求項4】
前記第1の材料及び前記第2の材料は、50°F〜100°Fの所定の温度範囲にわたる温度変化に応じて特異的な熱伸長を示す、請求項1又は2に記載の織布。
【請求項5】
前記多成分繊維は、二成分繊維又は三成分繊維である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の織布。
【請求項6】
前記第1の材料は第1のポリマーであり、前記第2の材料は、該第1のポリマーと相溶性である第2のポリマーである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の織布。
【請求項7】
前記第1の材料は第1のポリマーであり、前記第2の材料は、該第1のポリマーと非相溶性である第2のポリマーである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の織布。
【請求項8】
前記多成分繊維は、前記第1のポリマーと前記第2のポリマーとの間に設けられる第3のポリマーをさらに含み、該第3のポリマーは、前記第1のポリマー及び前記第2のポリマーの互いに対する相溶性よりも、前記第1のポリマー及び前記第2のポリマーの両方と相溶性が高い、請求項7に記載の織布。
【請求項9】
前記第1の材料及び前記第2の材料は、該第1の材料と該第2の材料との分離を防止するようになっている相補的な噛み合わせ面形状を含む、請求項1又は3〜8のいずれか1項に記載の織布。
【請求項10】
前記織布は、ステッチ糸により形成される技術上の表面と、ループ及び/又はパイル糸により形成される技術上の裏面とを有し、該ループ及び/又はパイル糸は前記多成分繊維から成る、請求項1〜9のいずれか1項に記載の織布。
【請求項11】
前記ステッチ糸は、伸縮性及び形状回復性を高めるために弾性糸を含む、請求項10に記載の織布。
【請求項12】
前記第1の材料及び前記第2の材料の前記特異的な熱伸長は、低ヒステリシスにより実質上可逆的である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の織布。
【請求項13】
前記多成分繊維は、1つ又は複数の鋸歯状面を有する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の織布。
【請求項14】
前記多成分繊維は、略矩形の断面形状を有する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の織布。
【請求項15】
織布製衣服に組み込まれる、請求項1〜14のいずれか1項に記載の織布。
【請求項16】
工学的な保温生地製衣服に用いられる感温性織布要素を形成する方法であって、
1つ又は複数の多成分繊維を含む糸及び/又は繊維の連続ウェブを形成すること、及び
所定のパイル高さを有し且つ1つ又は複数の多成分繊維から成るループ及び/又はパイル糸の1つ又は複数の領域を形成するように、前記連続ウェブの少なくとも第1の面を加工することを含み、該多成分繊維は、隣合って設けられる少なくとも第1の材料と第2の材料とから形成され、該第1の材料及び該第2の材料は、該多成分繊維を湾曲又はカールさせ、且つ温度変化に応じて可逆的に回復させる特異的な熱伸長を示し、これにより周囲条件に応じて該織布の断熱性能を調節する、感温性織布要素を形成する方法。
【請求項17】
ループ糸から成る前記1つ又は複数の領域の前記ループを切断することをさらに含む、請求項16に記載の感温性織布要素を形成する方法。
【請求項18】
前記糸及び/又は繊維の前記連続ウェブを形成する工程は、ラッセルたて編を含み、
相互結合パイルを切断することであって、それによりカットパイル地を形成する、切断することをさらに含む、請求項16又は17に記載の感温性織布要素を形成する方法。
【請求項19】
前記第1の材料と前記第2の材料とを組み合わせることであって、それにより前記1つ又は複数の多成分繊維を形成する、組み合わせることをさらに含む、請求項16〜18のいずれか1項に記載の感温性織布要素を形成する方法。
【請求項20】
前記第1の材料と前記第2の材料とを組み合わせることは、該第1の材料及び該第2の材料を共押出しすることを含む、請求項19に記載の感温性織布要素を形成する方法。
【請求項21】
前記第1の材料及び前記第2の材料は非相溶性ポリマーであり、該第1の材料と該第2の材料とを組み合わせることは、前記多成分繊維において該第1の材料と該第2の材料との間に設けられるような第3のポリマーと共に、該第1の材料及び該第2の材料を共押出しすることを含む、請求項19に記載の感温性織布要素を形成する方法。
【請求項22】
前記第1の材料と前記第2の材料とを組み合わせることは、該第1の材料を該第2の材料に物理的に固着させることを含む、請求項19に記載の感温性織布要素を形成する方法。
【請求項23】
前記第1の材料を前記第2の材料に物理的に固着させることは、該第1の材料及び該第2の材料の1つ又は両方に付加物を付け加えることを含み、該付加物は、該第1の材料と該第2の材料との間で物理的又は化学的に作用し得る架橋(bridge)である、請求項22に記載の感温性織布要素を形成する方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−57099(P2008−57099A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−203935(P2007−203935)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【出願人】(507165305)エムエムアイ−アイピーシーオー、エルエルシー (7)
【氏名又は名称原語表記】MMI−IPCO,LLC
【Fターム(参考)】