説明

成型用二軸配向ポリエステルフィルム

【課題】
成型性、寸法安定性、耐傷性に優れており、成型加工を施して、様々な成型部材へ好適に使用することのできる成型用二軸配向ポリエステルフィルムを提供すること。
【解決手段】
ポリエステルA層とポリエステルB層を有する積層ポリエステルフィルムであって、A層におけるグリコール成分の95モル%以上が、エチレングリコールおよび/またはジエチレングリコールであり、ジカルボン酸成分の95モル%以上がテレフタル酸であり、フィルムのガラス転移温度が70℃以上である成型用二軸配向積層ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二軸配向ポリエステルフィルムに関し、成型性、寸法安定性、耐傷性に優れており、成型加工を施して、様々な成型部材へ好適に使用することのできる成型用二軸配向ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境意識の高まりにより、建材、自動車部品や携帯電話、電機製品などで、溶剤レス塗装、メッキ代替などの要望が高まり、フィルムを使用した加飾方法の導入が進んでいる。
【0003】
そのような中、成型用ポリエステルフィルムとして、いくつかの提案がされている。例えば、常温での特定の成型応力を規定した成型用ポリエステルフィルムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、25℃、100℃での成型応力、熱収縮率や面配向度を規定した成型用ポリエステルフィルムも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−347565号公報
【特許文献2】特開2008−095084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1にて提案されているフィルムでは成型性が必ずしも十分ではなく、また寸法安定性に関しても考慮されているフィルムには設計されてはいない。
【0007】
また、上記特許文献2にて提案されているフィルムでは、その寸法安定性、耐傷性については十分ではなく、用途が限定されてしまう。
【0008】
本発明の課題は上記した問題点を解消することにある。すなわち、成型性、寸法安定性、耐傷性に優れており、成型加工を施して、様々な成型部材へ好適に使用することのできる成型用二軸配向ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ポリエステルA層とポリエステルB層を有する積層ポリエステルフィルムであって、A層におけるグリコール成分の95モル%以上が、エチレングリコールおよび/またはジエチレングリコールであり、ジカルボン酸成分の95モル%以上がテレフタル酸であり、フィルムのガラス転移温度が70℃以上である成型用二軸配向積層ポリエステルフィルム。
【発明の効果】
【0010】
本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは、成型性に優れているため、真空成型、圧空成型、真空圧空成型や、射出樹脂圧で成型されるインモールド成形などといった様々な成型方法で成型が可能であり、また、コーティング、ラミネート、印刷、蒸着といった加工工程での寸法安定性に優れていることから、印刷、蒸着等により加飾を施すことができ、さらに耐傷性に優れていることから成型後の成型部材へ傷が付きにくいため、例えば、建材、自動車部品や携帯電話、電機製品、遊技機部品などの成型部材の加飾に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のポリエステルフィルムは、ポリエステル樹脂を用いてなるフィルムである。
【0012】
また、本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂とは、主鎖中の主要な結合をエステル結合とする高分子化合物の総称である。そして、ポリエステル樹脂は、通常ジカルボン酸成分とグリコール成分を重縮合反応させることによって得られ、重合後のポリエステルはジカルボン酸残基成分とグリコール残基成分から構成される。本発明において「残基成分」とは、かかる残基成分をいう。また、重合に際しては、ジカルボン酸に代えてジカルボン酸エステルを用いることがあるところ、本発明において「ジカルボン酸」とはジカルボン酸エステルをも含む概念で用いられるものである。それに伴い、ジカルボン酸残基成分とはジカルボン酸エステル残基成分をも含む概念で用いられるものである。なお、本明細書では、「残基成分」を単に「成分」と言うこともある。
【0013】
本発明のポリエステルフィルムに用いられる好ましいグリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族ジヒドロキシ化合物、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、スピログリコールなどの脂環族ジヒドロキシ化合物、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの芳香族ジヒドロキシ化合物など各成分が挙げられる。中でも、成型性、取り扱い性の点で、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールの各成分が好ましく用いられる。
【0014】
また、本発明のポリエステルフィルムに用いられる好ましいジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、パラオキシ安息香酸などのオキシカルボン酸などの各成分を挙げることができる。また、ジカルボン酸エステル誘導体成分としては上記ジカルボン酸化合物のエステル化物、たとえばテレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸2−ヒドロキシエチルメチルエステル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、ダイマー酸ジメチルなどの各成分を挙げることができる。中でも、成型性、取り扱い性の点で、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の各成分が好ましく用いられる。
【0015】
本発明のポリエステルフィルムは、ポリエステルA層とポリエステルB層を有する積層フィルムである。
【0016】
そして、本発明では、優れた成型性を達成するために、グリコール成分の80モル%以上95モル%未満がエチレングリコール成分であり、ジカルボン酸成分の95モル%以上がテレフタル酸成分であるポリエステルBからなるB層を有することが好ましい。ポリエステルBのエチレングリコール成分が80モル%未満であれば、寸法安定性が低下してしまい、コーティング、ラミネート、印刷、蒸着といった加工工程に耐えられない場合があり、用途が限定されてしまう。また、エチレングリコール成分が95モル%以上であれば、成型性が低下してしまう場合があり、深絞り成型に対応できない。成型性、寸法安定性の観点から、グリコール成分の83モル%以上92モル%未満がエチレングリコール成分であれば好ましく、85モル%以上90モル%未満であれば最も好ましい。また、ポリエステルBのテレフタル酸成分が95モル%未満の場合も、寸法安定性が低下してしまう。寸法安定性が特に必要な用途では、97モル%以上がテレフタル酸成分であることが好ましい。
【0017】
本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは、成型性を良好にする観点から、ポリエステルBに1,4−シクロヘキサンジメタノール成分および/またはネオペンチルグリコールを5モル%以上20モル%未満含んでいることが好ましい。ポリエステルBの1,4−シクロヘキサンジメタノール成分および/またはネオペンチルグリコール成分含有量が5モル%未満の場合、成型性が不充分となる場合がある、また、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分および/またはネオペンチルグリコールを20モル%以上含有すると、寸法安定性が低下してしまう場合があるため好ましくない。成型性、寸法安定性の観点からは、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびまたはネオペンチルグリコールが8モル%以上17モル%未満であればさらに好ましく、10モル%以上15モル%未満であれば最も好ましい。また、耐熱性の観点からは、ポリエステルBに1,4−シクロヘキサンジメタノール成分を5モル%以上20モル%未満、好ましくは8モル%以上17モル%未満、最も好ましくは10モル%以上15モル%未満含んでいることが好ましい。
【0018】
また、本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは、優れた寸法安定性、耐傷性を達成するために、ポリエステルB層の少なくとも片側に、グリコール成分の95モル%以上がエチレングリコール成分および/またはジエチレングリコール成分であり、ジカルボン酸成分の95モル%以上がテレフタル酸であるポリエステルAからなるA層を積層されることが必要である。ポリエステルAのエチレングリコール成分および/またはジエチレングリコール成分量が95モル%未満であれば、寸法安定性の低下、耐傷性が不充分になってしまう。耐傷性の観点からは、グリコール成分の96モル%以上がエチレングリコール成分および/またはジエチレングリコール成分であり、97モル%以上であれば最も好ましい。さらに、耐傷性と成型性を両立するために、ポリエステルAのエチレングリコール成分がポリエステルBよりも多く含むことが好ましい。ポリエステルAのエチレングリコール成分がポリエステルBよりも少ない場合は、成型性を維持したまま耐傷性を向上させることができないため好ましくない。また、ポリエステルAのテレフタル酸成分が95モル%未満の場合も、耐傷性が低下してしまう。耐傷性が特に必要な用途では、97モル%以上がテレフタル酸成分であることが好ましい。
【0019】
本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは、A層が、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分、ネオペンチルグリコール成分、イソフタル酸成分および2,6−ナフタレンジカルボン酸成分からなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を含有することが好ましい。本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムのA層は、これらの成分を含まなくても良いが、下記の点から、含むことも好ましい態様の一つである。
【0020】
本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは、成型性、耐傷性の両立、ポリエステルAとの層間密着性の点から、ポリエステルAに1,4−シクロヘキサンジメタノール成分および/またはネオペンチルグリコール成分を、A層のグリコール成分に対して、5モル%未満、好ましくは0.1モル%以上5モル%未満含むことが好ましい。本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは成型性の点からポリエステルBに、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分および/またはネオペンチルグリコールを5モル%以上20モル%未満含んでいることが好ましいため、ポリエステルB層とポリエステルA層との層間密着性を向上させるためにはポリエステルA層に1,4−シクロヘキサンジメタノールおよび/またはネオペンチルグリコールを含むことが好ましいが、ポリエステルAの1,4−シクロヘキサンジメタノールおよび/またはネオペンチルグリコールの含有量が0.1モル%未満であれば、層間密着性向上効果が低く、また成型性も低下してしまう場合があるため好ましくない。また、ポリエステルAの1,4−シクロヘキサンジメタノールおよび/またはネオペンチルグリコールの含有量が5モル%以上の場合は、耐傷性が低下してしまう場合があるため好ましくない。成型性、耐傷性の両立、層間密着性の点からは、ポリエステルAの1,4−シクロヘキサンジメタノールおよび/またはネオペンチルグリコールの含有量は0.5モル%以上4.5モル%未満であり、1モル%以上4モル%未満であれば最も好ましい。
【0021】
また、耐熱性の観点からは、ポリエステルAに1,4−シクロヘキサンジメタノール成分を0.1モル%以上5モル%未満、好ましくは1モル%以上4.5モル%未満、最も好ましくは2モル%以上4モル%未満含んでいることが好ましい。
【0022】
また、本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムのもう一つの形態として、優れた成型性を達成するために、グリコール成分95モル%以上がエチレングリコール成分、ジカルボン酸成分の80モル%以上95モル%未満がテレフタル酸成分であるポリエステルBからなるB層を有していることが重要である。ポリエステルBのテレフタル酸成分が80モル%未満であれば、寸法安定性が低下してしまい、コーティング、ラミネート、印刷、蒸着といった加工工程に耐えられない場合があり、用途が限定されてしまう。また、テレフタル酸成分が95モル%以上であれば、成型性が低下してしまう場合があり、深絞り成型に対応できない。成型性、寸法安定性の観点から、ジカルボン酸成分の83モル%以上92モル%未満がテレフタル酸成分であれば好ましく、85モル%以上90モル%未満であれば最も好ましい。また、ポリエステルBのエチレングリコール成分が95モル%未満の場合も、寸法安定性が低下してしまう。寸法安定性が特に必要な用途では、97モル%以上がエチレングリコール成分であることが好ましい。
【0023】
本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは、成型性を良好にする観点から、ポリエステルBにイソフタル酸成分および/または2,6−ナフタレンジカルボン酸成分を5モル%以上20モル%未満含んでいることが好ましい。ポリエステルBのイソフタル酸成分および/または2,6−ナフタレンジカルボン酸成分含有量が5モル%未満の場合、成型性が不充分となる場合がある、また、イソフタル酸成分および/または2,6−ナフタレンジカルボン酸成分を20モル%以上含有すると、寸法安定性が低下してしまう場合があるため好ましくない。成型性、寸法安定性の観点からは、イソフタル酸成分および/または2,6−ナフタレンジカルボン酸成分が8モル%以上17モル%未満であればさらに好ましく、10モル%以上15モル%未満であれば最も好ましい。
【0024】
また、本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは、優れた寸法安定性、耐傷性を達成するために、ポリエステルB層の少なくとも片側に、ジカルボン酸成分の95モル%以上がテレフタル酸成分であり、グリコール成分の95モル%以上がエチレングリコール成分および/またはジエチレングリコール成分であるポリエステルAからなるA層を積層されることが必要である。ポリエステルAのテレフタル酸成分が95モル%未満であれば、寸法安定性の低下、耐傷性が不充分になってしまう。耐傷性の観点からは、ジカルボン酸成分の96モル%以上がテレフタル酸成分であり、97モル%以上であれば最も好ましい。さらに、耐傷性と成型性を両立するために、ポリエステルAのテレフタル酸成分がポリエステルBよりも多く含むことが好ましい。ポリエステルAのテレフタル酸成分がポリエステルBよりも少ない場合は、成型性を維持したまま耐傷性を向上させることができないため好ましくない。また、ポリエステルAのエチレングリコール成分が95モル%未満の場合も、耐傷性が低下してしまう。耐傷性が特に必要な用途では、97モル%以上がエチレングリコール成分であることが好ましい。
【0025】
本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは、成型性、耐傷性の両立、ポリエステルAとの層間密着性の点から、ポリエステルAにイソフタル酸成分および/または2,6−ナフタレンジカルボン酸成分を5モル%未満、好ましくは0.1モル%以上5モル%未満含むことが好ましい。本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは成型性の点からポリエステルBに、イソフタル酸成分および/または2,6−ナフタレンジカルボン酸成分を5モル%以上20モル%未満含んでいることが好ましいため、ポリエステルB層とポリエステルA層との層間密着性を向上させるためにはポリエステルA層にイソフタル酸および/または2,6−ナフタレンジカルボン酸成分を含むことが好ましいが、ポリエステルAのイソフタル酸および/または2,6−ナフタレンジカルボン酸の含有量が0.1モル%未満であれば、層間密着性向上効果が低く、また成型性も低下してしまう場合があるため好ましくないことがある。また、ポリエステルAのイソフタル酸および/または2,6−ナフタレンジカルボン酸の含有量が5モル%以上の場合は、耐傷性が低下してしまう場合があるため好ましくない。成型性、耐傷性の両立、層間密着性の点からは、ポリエステルAのイソフタル酸および/または2,6−ナフタレンジカルボン酸成分の含有量は1モル%以上4.5モル%未満であり、2モル%以上4モル%未満であれば最も好ましい。
【0026】
本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは、成型性、耐傷性の観点から2層または3層のフィルムであることが好ましい。4層以上の構成の場合は、各層の層厚みが薄くなってしまうため、主に成型性に効果のあるポリエステルBの効果、主に耐傷性に効果のあるポリエステルAの効果がそれぞれ小さくなってしまうため好ましくない。また、本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムはA層の層厚みTA(μm)と、B層の層厚みTB(μm)との比TA/TBが0.1以上0.4以下であることが好ましい。TA/TBが0.1未満であれば、耐傷性に効果のあるポリエステルAの効果が小さくなってしまい、耐傷性に劣るフィルムとなるため好ましくない。また、TA/TBが0.4より大きくなると、成型性に効果のあるポリエステルBの効果が小さくなってしまい、成型性に劣るフィルムとなるため好ましくない。成型性、耐傷性の観点から、TA/TBは0.15以上0.35以下であればさらに好ましく、0.2以上0.3以下であれば最も好ましい。
【0027】
上記の積層厚み比は、A層を構成するポリエステルAと、B層を構成するポリエステルBを押出すときの吐出量を調整することにより達成することができる。吐出量は押出機のスクリューの回転数、ギヤポンプを使用する場合はギヤポンプの回転数、押出温度、ポリエステル原料の粘度などにより適宜調整できる。
【0028】
また、フィルムの積層比は、フィルムの断面を走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡、光学顕微鏡などで500倍以上10000倍以下の倍率で観察することによって、積層各層の厚みを測定し、積層比を求めることができる。
【0029】
また、本発明のフィルムにおいて、少なくとも最外層の一方がA層であることが好ましい。少なくとも最外層の一方をA層とすることにより、フィルム表面(A層表面)の硬度を飛躍的に向上させることができる。
【0030】
本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは、成型性、寸法安定性、耐傷性を達成するために、少なくとも一方の表面の面配向係数が0.11〜0.17であることが好ましい。ここで面配向係数(fn)とは、アッベ屈折率計等で測定されるフィルムの屈折率により定義される数値であり、フィルムの長手方向の屈折率をnMD、幅方向の屈折率をnTD 、厚み方向の屈折率をnZDとすると、fn=(nMD+nTD)/2−nZDの関係式で表される。フィルムの両面の面配向係数が0.11以下の場合は、寸法安定性、成型性に劣る場合があり、好ましくない。一方、フィルムの少なくとも片面の面配向係数が0.17を超えると、成型性が低下してしまう場合があり、好ましくない。成型性、寸法安定性、耐傷性の観点からは、少なくとも一方の面配向係数が0.12〜0.165であり、0.13〜0.16であれば最も好ましい。本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面配向係数を0.11〜0.17とするためには、ポリエステルA、ポリエステルBを上記した組成にすることに加え、製膜条件によっても調整することができる。好ましい延伸倍率としては、長手方向、幅方向ともに、3〜4.2倍、さらに好ましくは3〜4倍、最も好ましくは3〜3.8倍である。また、延伸速度は1,000%/分以上200,000%/分以下であることが望ましい。また、長手方向の好ましい延伸温度としては、70℃以上110℃以下であれば好ましく、75℃以上100℃以下であればさらに好ましく、80℃以上90℃以下であれば最も好ましい。また、幅方向の延伸温度の好ましい範囲としては、80℃以上120℃以下であり、さらに好ましくは85℃以上110℃以下であり、90℃以上105℃以下であれば最も好ましい。また、延伸方法は特に限定されないが、長手方向に延伸した後、幅方向に延伸する、あるいは、幅方向に延伸した後、長手方向に延伸する逐次二軸延伸方法、または、フィルムの長手方向、幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸方法などが挙げられる。また、二軸延伸の後にフィルムの熱処理条件も重要である。熱処理はオーブン中、加熱したロール上などの方法により行うことができるが、熱処理温度としては、高温で行うことで、配向が緩和され、面配向係数を低くすることができる。
【0031】
また、本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは、均一成型性の観点からフィルム両面の複屈折(Δn)が15×10−3未満であることが好ましい。ここで複屈折とは、アッベ屈折率計等で測定されるフィルムの屈折率により定義される数値であり、フィルムの長手方向の屈折率をnMD、幅方向の屈折率をnTDとすると、Δn=|nMD−nTD|の関係式で表される。複屈折が15×10−3以上の場合は、フィルムの面方向の配向バランスが悪いため、配向の高い方向の影響で成型性が低下してしまう場合があるため、好ましくない。より均一成型性を高めるためには12×10−3未満であればさらに好ましく、10×10−3未満であれば最も好ましい。複屈折を上記の範囲とするためには、例えば、延伸倍率を調整することにより達成することができる。二軸延伸方法の場合は、長手方向と幅方向の延伸倍率を近づけることで、複屈折を小さくすることができる。例えば、長手方向の延伸倍率を3〜3.8倍とし、幅方向の延伸倍率を3〜3.8倍、好ましくは長手方向の延伸倍率を3〜3.5倍、幅方向の延伸倍率を3〜3.5倍とすることが好ましい。複屈折を上記範囲とするためには、横延伸の予熱温度を80〜100℃、さらに好ましくは85〜95℃とすることが好ましい。横延伸温度は90℃以上120℃以下、95℃以上110℃以下とすることが好ましい。
【0032】
また、本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは寸法安定性の点からガラス転移温度が70℃以上であることが必要である。コーティング、ラミネート、印刷、蒸着といった加工工程では、生産性の点から少なくとも70℃以上の温度がかかることが多く、ガラス転移温度が70℃未満であれば、加工時の寸法安定性が低下してしまう場合があるため、好ましくない。生産性の点からガラス転移温度は73℃以上であればさらに好ましく、75℃以上であれば最も好ましい。それゆえ、本発明のフィルムは熱寸法安定性が要求されるコーティング、ラミネート、印刷や蒸着等により加飾を施す用途に好適に用いることができる。
【0033】
また、本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは、寸法安定性、成型性の点から80℃におけるフィルム長手方向および幅方向の貯蔵弾性率がそれぞれ2500MPa以上4000MPa未満であること好ましい。80℃における貯蔵弾性率が、2500MPa未満であれば、印刷、蒸着、コーティング、ラミネートといった加工工程での寸法安定性が低下してしまう場合がある。逆に、貯蔵弾性率が5000MPa以上とすると、寸法安定性には優れるが、成型性が悪化する場合があるので好ましくない。
【0034】
すなわち寸法安定性の点から、80℃におけるフィルム長手方向および幅方向の貯蔵弾性率は、2500MPa以上であることが好ましく、2550MPa以上であればより好ましく、2600MPa以上であれば最も好ましい。また、成型性を低下させないためには、80℃におけるフィルム長手方向および幅方向の貯蔵弾性率は、4000MPa未満であることが必要であり、3500MPa未満であればより好ましく、3000MPa未満であれば最も好ましい。
【0035】
本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムにおいて、80℃における貯蔵弾性率を上記の範囲とする方法としては、フィルムのガラス転移温度を70℃以上とすることが最も好ましい。また、フィルム自体の結晶性を保持することも重要であることから、グリコール成分の80モル%以上をエチレングリコール成分とし、ジカルボン酸成分の95モル%以上がテレフタル酸成分とするポリエステルBらなるB層を有することも重要である。
【0036】
また、本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは幅広い温度範囲での寸法安定性を達成するために70℃から180℃の範囲でのフィルムの寸法変化が±3%未満であることが好ましい。本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは、様々な加工方法、成型方法に対応するために、幅広い温度範囲でのフィルムの寸法安定性が重要である。このため、70℃から180℃の範囲でのフィルムの寸法変化が±3%未満とすることが重要となる。さらにより高い寸法安定性を達成するために、70℃から180℃の範囲でのフィルムの寸法変化が±2%未満とすることが好ましく、±1%未満とすることが最も好ましい。
【0037】
ここで、70℃から180℃までのフィルムの寸法変化とは、熱機械分析装置(TMA)を用いて、初期荷重19.6mN、昇温速度5℃/分の条件で測定し、温度変化にともなうフィルムの寸法変化を連続的に測定したものである。この寸法変化が、70℃から180℃まで、いずれの温度でも±3%未満とすることが重要である。
【0038】
本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムの70℃から180℃の範囲のフィルムの寸法変化を±3%未満とするためには、ポリエステルA、ポリエステルBの組成を上記したような範囲とすることに加え、製膜条件を調整することにより、達成できる。特に熱処理条件に起因する部分が大きく、熱処理温度を高温化することで配向が緩和され、特に高温での寸法安定性が良好となる。好ましい熱処理温度としては、200℃以上245℃以下であり、より好ましくは、210℃以上240℃以下であり、220℃以上235℃以下であれば最も好ましい。さらに、熱処理はフィルムを長手方向および/または幅方向に弛緩させて行ってもよい。また、その後、中冷として、120℃以上180℃以下で熱処理を施すことは70℃から180℃の範囲でのフィルムの寸法変化が±3%未満とするためには非常に効果があるため好ましい。中冷の熱処理温度としては130℃以上170℃以下であればさらに好ましく、140℃以上160℃以下であれば最も好ましい。
【0039】
また、70℃から180℃の範囲でのフィルムの寸法変化が±3%未満とするためには、融点は220〜270℃であることが好ましく、230℃〜265℃であればさらに好ましく、235℃〜260℃であることが最も好ましい。ここで、ポリエステルフィルムの融点としては示差走査熱量計(DSC)を用いて、昇温速度20℃/分で測定を行った際の融解現象で発現する吸熱ピーク温度である(詳しくは後述する)。異なる組成のポリエステル樹脂をブレンドして使用し、フィルムとした場合には複数の融解に伴う吸熱ピークが現れる場合があるが、その場合、最も高温に現われる吸熱ピーク温度を本発明のポリエステルフィルムの融点とする。ポリエステルフィルムの融点を掛かる温度範囲とする方法としては、フィルム製膜時に使用するポリエステル樹脂段階において、融点を220〜270℃の範囲としておくことが好ましく、また、異なる組成のポリエステル樹脂を用いる場合でも、融点が220℃以上であるポリエステル樹脂を使用し、また、融点が低いポリエステル樹脂をブレンドして使用する場合においても、溶融混練時の樹脂間でのエステル交換反応による融点降下を抑制するために、予め樹脂中に残存している触媒を失活させたり、触媒能を低減させるためにリン化合物を添加する。また、残存触媒量の低いポリエステル樹脂を準備することで、融点を220〜270℃の範囲にすることができる。
【0040】
本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは外観、意匠性の点からヘイズが0.1%以上3%未満であることが好ましい。ヘイズが3%以上の場合は透明性が低下してしまい、フィルムに印刷、蒸着などを施した後の外観に劣り、成型後の成型部材の意匠性が低下してしまう場合がある。フィルムの滑り性、透明性の観点からは、ヘイズは0.3%以上2.7%未満であることが好ましく、さらにフィルムの滑り性と透明性を両立するためには、ヘイズは0.5%以上2.5%未満であればさらに好ましい。
【0041】
ヘイズを0.1%以上3%未満とする方法としては、例えば、滑り性を付与するための粒子をA層またはB層のみに添加する方法が挙げられる。A層またはB層のみに粒子を添加することで、粒子の添加量を少なくでき、取扱い性を悪化させることなく、ヘイズを低減させることができる。取扱い性をさらに向上させるために、A層/B層/C層の3層構成として、A層およびC層のみに粒子を含有させる態様は非常に好ましい。特に、本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは、A層の層厚みTA(μm)と、B層の層厚みTB(μm)との比TB/TAが0.1以上0.4以下とA層の層厚みの方が薄い構成であることが必要であるため、A層のみに粒子を含有させる態様が特に好ましい。ここで、使用する粒子としては特に限定されないが、搬送性、外観の点で、外部添加粒子が好ましく用いられる。外部添加粒子としては、たとえば、湿式および乾式シリカ、コロイダルシリカ、ケイ酸アルミ、酸化チタン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミなど、有機粒子としては、スチレン、シリコーン、アクリル酸類、メタクリル酸類、ポリエステル類、ジビニル化合物などを構成成分とする粒子を使用することができる。なかでも、湿式および乾式シリカ、アルミナなどの無機粒子およびスチレン、シリコーン、アクリル酸、メタクリル酸、ポリエステル、ジビニルベンゼンなどを構成成分とする粒子を使用することが好ましい。さらに、これらの外部添加粒子は二種以上を併用してもよい。搬送性、外観の点からフィルム中の粒子含有量はフィルム全体を100質量%として、0.001〜0.2質量%であれば好ましく、0.0015〜0.18質量%であればさらに好ましく、0.002〜0.15質量%であれば最も好ましい。
【0042】
また、フィルム原反中には実質的に粒子を含有させずにコーティング層中に粒子を含有させる方法も挙げられる。なお、上記でいう「フィルム自体に実質的に粒子を含有させず」とは、例えば無機粒子の場合、ケイ光X線分析で無機元素を定量した場合に検出限界以下となる含有量のことを差す。コーティング層中に粒子を含有する場合、コーティング層に用いる樹脂は密着性改質樹脂からなる組成物とすることで、印刷層との密着性も改良することができるので好ましい方法である。前記の密着性改質樹脂としては、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル系重合体および/またはそれらの共重合体から選ばれた少なくとも1種からなる樹脂が好ましい。
【0043】
本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは、表面品位の観点から、光沢度が130以上であることが好ましい。光沢度を130以上とすることで、成型後の成型部材の意匠性が非常に優れたものとなる。ここで、光沢度とはJIS Z−8741(1997年)に基づいて測定した60度鏡面光沢の値を示す。より、成型部材の意匠性を向上させるためには光沢度は135以上であれば好ましく、140以上であれば最も好ましい。光沢度はフィルムの表面形状に起因することが大きく、フィルムの表面を平滑にすることで光沢度を高くすることができる。光沢度を130以上にするためには、中心線平均粗さを20nm未満にすることが好ましい。ここで、中心線平均粗さとは、接触式の2次元粗さ計で測定した値である。中心線平均粗さを20nm未満にするためには、滑り性を付与するための粒子含有量を低減させる方法が好ましく用いられるが、フィルム全体を100質量%として、0.001〜0.15質量%であれば好ましく、0.001〜0.1質量%であればさらに好ましく、0.002〜0.05質量%であれば最も好ましい。
【0044】
また、フィルム表面に傷が多数存在すると光沢度が低下する場合があるため、製膜工程中にフィルム表面に傷がつかないようにすることが重要である。そのために、フィルム原反中に粒子を含有することが好ましい。フィルム原反中には実質的に粒子を含有させずにコーティング層中に粒子を含有させる場合、コーティングは製膜工程中のインラインで行われる場合も、長手方向−幅方向の逐次二軸延伸方法では、長手方向にロールの速度差を利用して延伸する工程を経た後、コーティングを施し、幅方向へ延伸する方法が通常行われる。このため、長手方向の延伸時のロールとの滑り性が悪いため、傷が発生しやすくなってしまう場合がある。
【0045】
本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは、耐傷性の観点からポリエステルA層の結晶融解エネルギーが30J/g以上であることが好ましい。ここでいう結晶融解エネルギーとは、示差走査熱量計(DSC)を用いて、昇温速度20℃/分で測定を行った際の融解現象で発現する吸熱ピーク熱量である。異なる組成のポリエステル樹脂をブレンドして使用し、ポリエステルフィルムとした場合には複数の融解に伴う吸熱ピークが現れる場合があるが、その場合は、最も高温に現われる吸熱ピークの熱量を本発明のポリエステルフィルムの結晶融解エネルギーとする。ポリエステルA層の結晶融解エネルギーが30J/g未満であれば、結晶性が低く、耐傷性が劣る場合があるため好ましくない。また、さらに耐傷性を向上させるためには、結晶融解エネルギーは35J/g以上であることが好ましい。
【0046】
本発明のポリエステルAの結晶融解エネルギーを30J/gとする方法としては、ポリエステルAを上記した組成とすることが非常に重要である。また、熱処理温度を調整することで結晶融解エネルギーを制御することができる。熱処理温度を高温化することで、結晶性が向上し、結晶融解エネルギーを大きくすることが可能である。好ましい熱処理温度としては200℃以上245℃以下であり、より好ましくは、210℃以上240℃以下であり、220℃以上235℃以下であれば最も好ましい。
【0047】
また、本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは、優れた耐傷性を達成するために、フィルム中に結晶核剤を含有させる方法も挙げられる。結晶核剤を含有させることで、結晶化度の向上、結晶構造の緻密化により、耐傷性を向上させることができる。本発明では、耐傷性、透明性の観点から、A層が結晶核剤を含有し、A層における結晶核剤の含有量が、A層に対し、0.05重量%以上であることが好ましい。より好ましくは0.075質量%以上5%未満である。
【0048】
結晶核剤が0.05質量%未満であれば、十分な効果を得ることができず、また結晶核剤が5質量%を超えると、製膜工程において結晶化が進行してしまい、製膜安定性が低下してしまい、さらに透明性も低下してしまう場合があるため好ましくない。耐傷性、製膜安定性、透明性の点で、結晶核剤は0.1〜2.5質量%含有していることが好ましく、0.2〜2質量%含有していれば最も好ましい。
【0049】
また、ポリエステルB層にも、結晶核剤を含有せしめても良いが、透明性の観点から、その含有量は、B層に対し、3質量%以下であることが好ましい。さらに透明性が重要な用途においては、B層の結晶核剤の含有量は、B層に対し、2質量%以下であることが好ましく、0.075質量%以下であることが最も好ましい。また、透明性と耐傷性の観点からはポリエステルA層のみに結晶核剤を0.01〜3質量%含有していることが特に好ましい。
【0050】
ここでいう結晶核剤とは、ポリエステルに添加することで、結晶化速度を向上させる結晶性物質のことを指し、例えば、タルク、脂肪族カルボン酸アミド、脂肪族カルボン酸塩、脂肪族アルコール、脂肪族カルボン酸エステル、ソルビトール系化合物、有機リン酸化合物などが、好ましく用いられる。本発明では、結晶核剤が、脂肪族カルボン酸アミド、脂肪族カルボン酸塩およびソルビトール系化合物からなる群から選ばれる、少なくとも1種の結晶核剤であることが特に好ましい。
【0051】
ここで、脂肪族カルボン酸アミドとしては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、リシノール酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミドのような脂肪族モノカルボン酸アミド類、N−オレイルパルミチン酸アミド、N−オレイルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、メチロールステアリン酸アミド、メチロールベヘニン酸アミドのようなN−置換脂肪族モノカルボン酸アミド類、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスベヘニン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、ブチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、へキサメチレンビスステアリン酸アミド、へキサメチレンビスベヘニン酸アミド、へキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、m−キシリレンビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミドのような脂肪族ビスカルボン酸アミド類、N,N´−ジオレイルセバシン酸アミド、N,N´−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N´−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N´−ジステアリルセバシン酸アミド、N,N´−ジステアリルイソフタル酸アミド、N,N´−ジステアリルテレフタル酸アミドのようなN−置換脂肪族カルボン酸ビスアミド類、N−ブチル−N´−ステアリル尿素、N−プロピル−N´−ステアリル尿素、N−ステアリル−N´−ステアリル尿素、N−フェニル−N´−ステアリル尿素、キシリレンビスステアリル尿素、トルイレンビスステアリル尿素、ヘキサメチレンビスステアリル尿素、ジフェニルメタンビスステアリル尿素、ジフェニルメタンビスラウリル尿素のようなN−置換尿素類を使用することができる。これらは一種類又は二種類以上の混合物であってもよい。この中でも、脂肪族モノカルボン酸アミド類、N−置換脂肪族モノカルボン酸アミド類、脂肪族ビスカルボン酸アミド類が好適に用いられ、特に、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、リシノール酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、m−キシリレンビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミドが好適に用いられる。
【0052】
脂肪族カルボン酸塩の具体例としては、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム等の酢酸塩、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ラウリン酸水素カリウム、ラウリン酸マグネシウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸銀等のラウリン酸塩、ミリスチン酸リチウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸水素カリウム、ミリスチン酸マグネシウム、ミリスチン酸カルシム、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸銀等のミリスチン酸塩、パルミチン酸リチウム、パルミチン酸カリウム、パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸銅、パルミチン酸鉛、パルミチン酸タリウム、パルミチン酸コバルト等のパルミチン酸塩、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸マグネシウム、オレイン酸カルシウム、オレイン酸亜鉛、オレイン酸鉛、オレイン酸タリウム、オレイン酸銅、オレイン酸ニッケル等のオレイン酸塩、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸タリウム、ステアリン酸鉛、ステアリン酸ニッケル、ステアリン酸ベリリウム等のステアリン酸塩、イソステアリン酸ナトリウム、イソステアリン酸カリウム、イソステアリン酸マグネシウム、イソステアリン酸カルシウム、イソステアリン酸バリウム、イソステアリン酸アルミニウム、イソステアリン酸亜鉛、イソステアリン酸ニッケル等のイソステアリン酸塩、ベヘニン酸ナトリウム、ベヘニン酸カリウム、ベヘニン酸マグネシウム、ベヘニン酸カルシウム、ベヘニン酸バリウム、ベヘニン酸アルミニウム、ベヘニン酸亜鉛、ベヘニン酸ニッケル等のベヘニン酸塩、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カリウム、モンタン酸マグネシウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸バリウム、モンタン酸アルミニウム、モンタン酸亜鉛、モンタン酸ニッケル等のモンタン酸塩等を使用することができる。これらは一種類又は二種類以上の混合物であってもよい。特に、ステアリン酸の塩類やモンタン酸の塩類が好適に用いられ、特に、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、モンタン酸ナトリウムなどが好適に用いられる。
【0053】
脂肪族アルコールの具体例としては、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、ノナデシルアルコール、エイコシルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール等の脂肪族モノアルコール類、1,6−ヘキサンジオール、1,7−へプタンジール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等の脂肪族多価アルコール類、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール等の環状アルコール類等を使用することができる。これらは一種類又は二種類以上の混合物であってもよい。特に脂肪族モノアルコール類が好適に用いられ、特にステアリルアルコールが好適に用いられる。
【0054】
また、かかる脂肪族カルボン酸エステルの具体例としては、ラウリン酸セチルエステル、ラウリン酸フェナシルエステル、ミリスチン酸セチルエステル、ミリスチン酸フェナシルエステル、パルミチン酸イソプロピリデンエステル、パルミチン酸ドデシルエステル、パルミチン酸テトラドデシルエステル、パルミチン酸ペンタデシルエステル、パルミチン酸オクタデシルエステル、パルミチン酸セチルエステル、パルミチン酸フェニルエステル、パルミチン酸フェナシルエステル、ステアリン酸セチルエステル、べヘニン酸エチルエステル等の脂肪族モノカルボン酸エステル類、モノラウリン酸グリコール、モノパルミチン酸グリコール、モノステアリン酸グリコール等のエチレングリコールのモノエステル類、ジラウリン酸グリコール、ジパルミチン酸グリコール、ジステアリン酸グリコール等のエチレングリコールのジエステル類、モノラウリン酸グリセリンエステル、モノミリスチン酸グリセリンエステル、モノパルミチン酸グリセリンエステル、モノステアリン酸グリセリンエステル等のグリセリンのモノエステル類、ジラウリン酸グリセリンエステル、ジミリスチン酸グリセリンエステル、ジパルミチン酸グリセリンエステル、ジステアリン酸グリセリンエステル等のグリセリンのジエステル類、トリラウリン酸グリセリンエステル、トリミリスチン酸グリセリンエステル、トリパルミチン酸グリセリンエステル、トリステアリン酸グリセリンエステル、パルミトジオレイン、パルミトジステアリン、オレオジステアリン等のグリセリンのトリエステル類等を使用することができる。これらは一種類又は二種類以上の混合物であってもよい。この中でもエチレングリコールのジエステル類が好適であり、特にエチレングリコールジステアレートが好適に用いられる。
【0055】
また、かかる脂肪族/芳香族カルボン酸ヒドラジドの具体例としては、セバシン酸ジ安息香酸ヒドラジド、メラミン系化合物の具体例としては、メラミンシアヌレート、ポリビン酸メラミン、フェニルホスホン酸金属塩の具体例としては、フェニルホスホン酸亜鉛塩、フェニルホスホン酸カルシウム塩、フェニルホスホン酸マグネシウム塩、フェニルホスホン酸マグネシウム塩等を使用することができる。
【0056】
ソルビトール系化合物としては、1,3−ジ(P−メチルベンジリデン)ソルビトール、2,4−ジ(P−メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3−ジベンジリデンソルビトール、2,4−ジベンジリデンソルビトール、1,3−ジ(P−エチルジベンジリデン)ソルビトール、2,4−ジ(P−エチルジベンジリデン)ソルビトールなどが挙げられる。
【0057】
リン酸ビス(4−t−ブチルフェニル)ナトリウム、リン酸−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム、環状有機リン酸エステル塩基性多価金属塩とアルカリ金属カルボン酸塩、アルカリ金属β−ジケトナート及びアルカリ金属β−ケト酢酸エステル塩有機カルボン酸金属塩の1種とから選ばれる混合物などが挙げられる。
【0058】
上記した中でも、透明性、耐熱性の点から、脂肪族カルボン酸アミド、脂肪族カルボン酸塩、ソルビトール系化合物が、好ましく用いられる。
【0059】
本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは、耐傷性の観点からフィルムの表面硬度がHB以上であることが好ましい。フィルム原反の表面硬度がHB以上とすることで、本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムを成型加工し、成型部材とした場合、成型部材表面に傷がつきにくくなるため、好ましい。また、さらに表面硬度が必要な用途へ展開する場合は、フィルム表面にハードコート層を設けることでさらに耐傷性を向上させることができる。また、フィルム原反の表面硬度がHB以上であれば、ハードコート後のフィルム表面への耐傷性が飛躍的に向上させることが可能である。フィルム原反の表面硬度としては、F以上であればさらに好ましく、H以上であれば最も好ましい。
【0060】
ここで、表面硬度とは、フィルムをA4サイズにサンプリングし、フィルム表面を、JIS K5600−5−4(1999)に準じて、各種硬度の鉛筆を45゜の角度であて、荷重750gの下で引掻きを与えた時、傷が発生した時の鉛筆の硬さを指す。なお、2層積層フィルムの場合は、面配向係数が高い面を測定面とした。
【0061】
本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは、成型加工性の点から150℃におけるフィルム長手方向および幅方向の100%伸長時応力(F100値)がそれぞれ5MPa以上60MPa未満であることが好ましい。成型部材の成型方法としては、真空成型、圧空成型、真空圧空成型、プレス成型、プラグアシスト成型といった加熱成型方法が挙げられるが、何れの成型法も赤外線ヒーターなどによる予熱工程でフィルムの温度を高い状態とした後に成型される工程を有する。このため、高温での成型応力を低くすることで、複雑な形状に成型することが可能となる。このため、150℃における100%伸長時応力(F100値)が5MPa以上60MPa未満とすることが重要である。F100値が5MPa未満であると、成型加工での予熱工程でフィルム移送のための張力に耐えることができず、フィルムが変形、場合によっては破断してしまう場合があり、成型用途への使用に耐えないフィルムとなってしまう。逆に60MPa以上になると、熱成型時に変形が不十分であり、複雑な形状への成型が困難となってしまう。取扱い性、成型性の点で、150℃におけるフィルム長手方向および幅方向の100%伸長時応力(F100値)は10MPa以上50MPa未満であれば好ましく、15MPa以上40MPa未満であれば最も好ましい。
【0062】
本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムにおいて、150℃におけるフィルムの100%伸長時応力を上記の範囲とする方法としては、特に限定されないが、例えばポリエステルBを上記した組成にすること、少なくとも一方の表面の面配向係数を0.11〜0.17とすることなどが挙げられる。
【0063】
本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは、成型部材の深み性、形状保持性の点から、フィルム厚みは50μm以上500μm以下であることが好ましく、75μm以上300μm以下であればさらに好ましく、150μm以上250μm以下であれば最も好ましい。
【0064】
次に本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムの具体的な製造方法について記載するが製造方法はこれに限定されるものではない。
【0065】
まず、ポリエステルA層に使用するポリエステルAとして、ポリエチレンテレフタレート樹脂(a)と1,4−シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(b)を必要に応じて、所定の割合で計量する。また、ポリエステルB層に使用するポリエステルBとして、ポリエチレンテレフタレート樹脂(c)と1,4−シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(d)をポリエステルAよりも濃度を低くした所定の割合で計量する。
【0066】
そして、混合したポリエステル樹脂をベント式二軸押出機に供給し溶融押出する。ついで、フィルターやギヤポンプを通じて、異物の除去、押出量の均整化を各々行い、Tダイより冷却ドラム上にシート状に吐出する。その際、高電圧を掛けた電極を使用して静電気で冷却ドラムと樹脂を密着させる静電印加法、キャスティングドラムと押出したポリマーシート間に水膜を設けるキャスト法、キャスティングドラム温度をポリエステル樹脂のガラス転移点〜(ガラス転移点−20℃)にして押出したポリマーを粘着させる方法、もしくは、これらの方法を複数組み合わせた方法により、シート状ポリマーをキャスティングドラムに密着させ、冷却固化し、未延伸フィルムを得る。これらのキャスト法の中でも、ポリエステルを使用する場合は、生産性や平面性の観点から、静電印加する方法が好ましく使用される。
【0067】
本発明のフィルムは、耐熱性、寸法安定性の観点から二軸配向フィルムとすることが必要である。二軸配向フィルムは、未延伸フィルムを長手方向に延伸した後、幅方向に延伸する、あるいは、幅方向に延伸した後、長手方向に延伸する逐次二軸延伸方法により、または、フィルムの長手方向、幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸方法などにより延伸を行うことで得ることができる。
【0068】
かかる延伸方法における延伸倍率としては、それぞれの方向に、好ましくは、3.0倍以上4.2倍、さらに好ましくは3倍以上4.0倍以下、特に好ましくは3倍以上3.8倍以下が採用される。また、延伸速度は1,000%/分以上200,000%/分以下であることが望ましい。また延伸温度は、長手方向は70℃以上120℃以下、幅方向は、80℃以上120℃以下とすることが好ましい。また、延伸は各方向に対して複数回行っても良い。
【0069】
さらに二軸延伸の後にフィルムの熱処理を行う。熱処理はオーブン中、加熱したロール上など従来公知の任意の方法により行うことができる。この熱処理は120℃以上ポリエステルの融点以下の温度で行われるが、好ましくは200℃以上250℃以下であり、より好ましくは、210℃以上245℃以下である。また、熱処理時間は特性を悪化させない範囲において任意とすることができ、好ましくは1秒以上60秒以下、より好ましくは1秒以上30秒以下行うのがよい。さらに、熱処理はフィルムを長手方向および/または幅方向に弛緩させて行ってもよい。さらに、印刷層や接着剤、蒸着層、ハードコート層、耐候層といった各種加工層との接着力を向上させるため、少なくとも片面にコロナ処理を行ったり、易接着層をコーティングさせることもできる。コーティング層をフィルム製造工程内のインラインで設ける方法としては、少なくとも一軸延伸を行ったフィルム上にコーティング層組成物を水に分散させたものをメタリングリングバーやグラビアロールなどを用いて均一に塗布し、延伸を施しながら塗剤を乾燥させる方法が好ましく、その際易接着層厚みとしては0.01μm以上1μm以下とすることが好ましい。また、易接着層中に各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、顔料、染料、有機または無機粒子、帯電防止剤、核剤などを添加してもよい。易接着層に好ましく用いられる樹脂としては、接着性、取扱い性の点からアクリル樹脂、ポリエステル樹脂およびウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。中でもアクリル樹脂は、耐候性、耐熱・耐湿性に優れるため好ましい。
【0070】
また、本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは、屋外で使用させる場合、耐候性を付与することができる。耐侯性を付与する方法は特に限定されないが、例えばポリエステルフィルム中に紫外線吸収剤を添加する方法、紫外線吸収剤を含有する層を積層する方法が挙げられる。本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムが優れた耐侯性を達成するためには、少なくとも波長350nm以上360nm以下の光エネルギーを吸収し、非常に速いエネルギー変換により無害な熱エネルギー、燐光や蛍光を放射し、ポリマー中の不純物の光励起、光化学反応を抑制し、白化、脆化、亀裂、黄変などを防止する機能を有することが好ましい。優れた耐侯性を達成するためには、フィルムの波長範囲350nm以上360nm以下の平均透過率が45%以下、好ましくは30%以下となることが好ましい。耐侯性を付与する方法として耐侯層を積層する場合、耐候層の好ましい厚みの範囲としては0.5μm以上20μm以下であり、1μm以上15μm以下であればさらに好ましく、2μm以上10μm以下であれば最も好ましい。
【0071】
また、本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは、耐傷性が特に厳しい用途に用いられる場合は、ハードコート層を積層することができる。ハードコート層とは、硬度が高く、耐傷性、耐摩耗性に優れたものであれば良く、アクリル系、ウレタン系、メラミン系、有機シリケート化合物、シリコーン系、金属酸化物などで構成することができる。特に、硬度と耐久性、更に、硬化性、生産性の点でアクリル系、特に活性線硬化型のアクリル系組成物、または熱硬化型のアクリル系組成物からなるものが好ましく用いられる。
【0072】
また、本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは、金属調加飾に用いられる場合、フィルムの少なくとも片面に金属化合物を蒸着して使用することが好ましい。金属化合物を蒸着して使用することで、外観が金属調となり、現在メッキした樹脂が用いられている成型部品の代替品としても使用することができる。中でも、融点が150℃以上400℃以下である金属化合物を蒸着して使用することがより好ましい。掛かる融点範囲の金属を使用することで、ポリエステルフィルムが成型可能温度領域で、蒸着した金属層も成形加工が可能であり、成型による蒸着層欠点の発生を抑制しやすくなるので好ましい。特に好ましい金属化合物の融点としては150℃以上300℃以下である。融点が150℃以上400℃以下である金属化合物としては特に限定されるものではないが、インジウム(157℃)やスズ(232℃)が好ましく、特に金属調光沢、色調の点でインジウムを好ましく用いることができる。また、蒸着簿膜の作製方法としては、真空蒸着法、EB蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などを用いることができる。なお、ポリエステルフィルムと蒸着層との密着性をより向上させるために、フィルムの表面をあらかじめコロナ放電処理やアンカーコート剤を塗布するなどの方法により前処理しておいても良い。また、蒸着膜の厚みとしては、1nm以上500nm以下であれば好ましく、3n以上300nm以下であればより好ましい。生産性の点からは3nm以上200nm以下であることが好ましい。
【0073】
また、本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは、印刷を施すことによって、成型部材の表面に用いられた場合、外観、意匠性を付与することができる。印刷方法は特に限定されないが、グラビヤ印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷などが好ましく用いられる。また、印刷層の厚みは好ましくは、1nm以上20μm以下である。
【0074】
本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは、成型部材の加飾用途に好ましく用いられるが、成型加飾方法として、例えばインモールド成形用途、インサート成形用途に好ましく使用される。ここで言うインモールド成形とは、金型内にフィルムそのものを設置して、インジェクションする樹脂圧で所望の形状に成形して成形加飾体を得る成形方法である。また、インサート成形とは、金型内に設置するフィルム成型体を真空成型、圧空成型、真空圧空成型、プレス成型、プラグアシスト成型などで作成しておき、その形状に樹脂を充填することで、成形加飾体を得る成形方法である。より複雑な形状を出すことができることから、本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムはインサート成形用途に特に好ましく用いられる。
【0075】
本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは、成型性に優れているため、真空成型、圧空成型、真空圧空成型や、射出樹脂圧で成型されるインモールド成形などといった様々な成型方法で成型が可能であり、また、寸法安定性に優れているためコーティング、ラミネート印刷、蒸着といった加工に適しており、さらに耐傷性に優れていることから成型加工後の成型品に傷がつきにくいため、印刷、蒸着等により加飾を施し、例えば、建材、自動車部品や携帯電話、電機製品などの成型部材の加飾に好適に用いることができる。
【0076】
なお、特性は以下の方法により測定、評価した。
【0077】
(1)融点、結晶融解エネルギー、ガラス転移温度
示差走査熱量計(セイコー電子工業製、RDC220)を用い、JIS K7121−1987、JIS K7122−1987に準拠して測定および、解析を行った。ポリエステル層もしくはポリエステルフィルムを5mgをサンプルに用い、25℃から20℃/分で300℃まで昇温した際のDSC曲線より得られた吸熱ピークの頂点の温度を融点とした。また、吸熱ピーク面積から得られる単位質量当たりの熱量を結晶融解エネルギーとした。DSC曲線が直線の場合は、ピーク前後でベースラインから離れる点とベースラインに戻る点とを直線で結び、DSC曲線が湾曲している場合は、その湾曲した曲線で2点間を結んで解析を行った。吸熱ピークが複数存在する場合は、最も高温側の吸熱ピークの頂点の温度を融点とし、その吸熱ピーク面積から得られる単位質量当たりの熱量を結晶融解エネルギーとした。なお、ベースライン上に見られる、極微小なピーク面積(結晶融解エネルギー換算で0.5J/g以下)の吸熱ピークについてはノイズとして除去した。
【0078】
また、ガラス状態からゴム状態への転移に基づく比熱変化を読み取り、各ベースラインの延長した直線から縦軸(熱流を示す軸)方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の中間点ガラス転移温度を求め、ガラス転移温度とした。ガラス転移温度が複数存在する場合は、最も低温側のものを本発明のガラス転移温度とした。なお、各測定データは、いわゆる1strunでのデータを採用するものとする。
【0079】
(2)ポリエステルの固有粘度
ポリエステル樹脂およびフィルムの極限粘度は、ポリエステルをオルトクロロフェノールに溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃にて測定した。
【0080】
(3)ポリエステルの組成
ポリエステル樹脂およびフィルムをヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解し、H−NMRおよび13C−NMRを用いて各モノマー残基成分や副生ジエチレングリコールについて含有量を定量することができる。積層フィルムの場合は、積層厚みに応じて、フィルムの各層を削り取ることで、各層単体を構成する成分を採取し、評価することができる。なお、本発明のフィルムについては、フィルム製造時の混合比率から計算により、組成を算出した。
【0081】
(4)フィルム厚み、層厚み
フィルムをエポキシ樹脂に包埋し、フィルム断面をミクロトームで切り出した。該断面を透過型電子顕微鏡(日立製作所製TEM H7100)で5000倍の倍率で観察し、フィルム厚みおよびポリエステル層の厚みを求めた。求めた層厚みからTB/TAを算出した。
【0082】
(5)ヘイズ
JIS K 7105(1985年)に基づいて、ヘーズメーター(スガ試験器社製HGM−2GP)を用いてフィルムヘイズの測定を行った。測定は任意の3ヶ所で行い、その平均値を採用した。
【0083】
(6)光沢度
JIS−Z−8741(1997年)に規定された方法に従って、スガ試験機製デジタル変角光沢度計UGV−5Dを用いて、60°鏡面光沢度を測定した。測定はn=5で行い、最大値と最小値を除いた平均値を光沢度とした。
【0084】
(7)面配向係数、複屈折
ナトリウムD線(波長589nm)を光源として、アッベ屈折計を用いて、フィルムの長手方向の屈折率(nMD)、幅方向の屈折率(nTD)、厚み方向の屈折率(nZD)を測定し、下記式から面配向係数(fn)、複屈折(Δn)を算出した。
fn=(nMD+nTD)/2−nZD
Δn=|nMD−nTD|。
【0085】
(8)150℃での100%伸長時応力(F100値)
フィルムを長手方向および幅方向に長さ150mm×幅10mmの矩形に切り出しサンプルとした。引張試験機(オリエンテック製テンシロンUCT−100)を用いて、初期引張チャック間距離50mmとし、引張速度を300mm/分としてフィルムの長手方向と幅方向にそれぞれ引張試験を行った。測定は予め150℃に設定した恒温層中にフィルムサンプルをセットし、90秒間の予熱の後で引張試験を行った。サンプルが100%伸長したとき(チャック間距離が100mmとなったとき)のフィルムにかかる荷重を読み取り、試験前の試料の断面積(フィルム厚み×10mm)で除した値を100%伸長時応力(F100値)とした。なお、測定は各サンプル、各方向に5回ずつ行い、その平均値で評価を行った。
【0086】
(10)寸法変化
フィルムを長手方向および幅方向に長さ50mm×幅4mmの矩形に切り出しサンプルとした。熱機械分析装置(セイコ−インスツルメンツ製、TMA EXSTAR6000)を使用して、下記の条件下で昇温した際の各温度でのフィルム長の変化率を寸法変化として求めた。
【0087】
試長:15mm、荷重:19.6mN、昇温速度:5℃/min、測定温度範囲:70〜180℃
寸法変化(%)={|試長(mm)−保持後のフィルム長(mm)|/試長(mm)}×100。
【0088】
(11)フィルム外観
フィルム表面にスクリーン印刷を行った。印刷は、ミノグループ(株)製インキU−PET(517)、スクリーンSX270Tを用いて、スキージスピード300mm/sec、スキージ角度45°の条件で行い、次いで80℃条件下の熱風オーブン中で15分間乾燥して、印刷層積層フィルムを得た。得られた印刷層積層フィルムについて、印刷層の反対面からのフィルム外観について、下記の基準で評価を行った。
S:印刷が鮮明であり、意匠性に優れた外観であった。
A:印刷が若干ヘイジーではあったが意匠性に優れた外観であった。
B:印刷がヘイジーではあったが、意匠性は問題ないレベルであった。
C:印刷が不鮮明であり、外観に劣るものであった。
【0089】
(12)真空圧空成型性
本発明のポリエステルフィルムを、450℃の遠赤外線ヒーターを用いて、表面温度が150℃の温度になるように加熱し、金型温度70℃の円筒形金型(底面直径50mm、高さ20mm)に沿って真空圧空成型(圧力:0.2MPa)を行った。円筒形金型は、エッジ部分のRを1mm、2mm、3mmの3種類準備して真空成型を行った。金型に沿って成型できた状態を以下の基準で評価した。
S:R1mmで成型できた(R1mmを再現できた)。
A:R2mmで成型できた(R2mmを再現できた)が、R1mmでは成型できなかった。
B:R3mmで成型できた(R3mmを再現できた)が、R2mmは成型できなかった。
C:R3mmで成型できなかった。
【0090】
(13)均一成型性
(8)で実施した引張試験において、フィルム長手方向と幅方向のF100値の絶対値の差を下記の通り評価した。
S:フィルム長手方向と幅方向のF100値の絶対値の差が10未満
A:フィルム長手方向と幅方向のF100値の絶対値の差が10以上15未満
B:フィルム長手方向と幅方向のF100値の絶対値の差が15以上20未満
C:フィルム長手方向と幅方向のF100値の絶対値の差が20以上。
【0091】
(14)寸法安定性1
(11)と同様の条件でスクリーン印刷、乾燥を行った印刷層積層フィルムについて、印刷層の反対面のフィルム表面について、下記の基準で評価を行った下記の基準で評価を行った。
S:フィルム表面に全く粗れ、うねりが見られず、表面性に優れたものであった。
A:フィルム表面に若干のうねりが見られたが、表面性に優れたものであった。
B:フィルム表面にうねりが見られたが、表面性は問題ないレベルであった。
C:フィルム表面に粗れが発生し、表面性に劣るものであった。
【0092】
(15)寸法安定性2
(10)で求めた寸法変化について、以下の基準で判定した。
S:フィルム長手方向と幅方向の寸法変化が±1%未満
A:フィルム長手方向と幅方向の寸法変化が±1%以上±2%未満
B:フィルム長手方向と幅方向の寸法変化が±2%以上±3%未満
C:フィルム長手方向と幅方向の寸法変化が±3%以上。
【0093】
(15)表面硬度1
フィルムをA4サイズにサンプリングし、フィルム表面を、JIS K5600−5−4(1999)に準じて、各種硬度の鉛筆を45゜の角度であて、荷重750gの下で引掻きを与えた時、傷が発生した時の鉛筆の硬さを表面硬度とした。2層積層フィルムの場合は、面配向係数が高い面を測定面とした。試験は5回行い、1回でも傷が発生した鉛筆の硬さを採用した。
【0094】
(16)表面硬度2
フィルムをA4サイズにサンプリングし、日本合成化学工業(株)製のハードコート剤「紫光UV−7640B」と酢酸エチルを質量比1:1で混合し、#4メタリングバーにて均一に塗布した。2層積層フィルムの場合は、面配向係数が高い面を塗布面とした。塗布後、60℃の熱風オーブン中で3分間保管し、UV照射装置(アイグラフィックス製、ECS−401GX)にて、積算光量が450mJ/cm2となるようにUV照射を行った。得られたハードコート積層フィルム表面を、JIS K5600−5−4(1999)に準じて、各種硬度の鉛筆を45゜の角度であて、荷重750gの下で引掻きを与えた時、傷が発生した時の鉛筆の硬さを表面硬度とした。試験は5回行い、1回でも傷が発生した鉛筆の硬さを採用した。
【0095】
(17)耐傷性
(16)と同様にして得られたハードコート層積層フィルム表面を、スチールウール#0000で荷重を変更し、一定荷重下で10往復(速度10cm/s)摩擦し、傷がつかなかった最大荷重を測定し、以下の基準で評価を行った。
S:最大荷重が2kg/cm以上
A:最大荷重が1以上2kg/cm未満
B:最大荷重が0.5以上1kg/cm未満
C:最大荷重が0.5kg/cm未満。
【0096】
(18)80℃のおける貯蔵弾性率
フィルムを長手方向および幅方向に長さ60mm×幅10mmの矩形に切り出しサンプルとした。動的粘弾性測定装置(セイコーインスツルメンツ製、DMS6100)を用い、下記の条件下で、80℃での貯蔵弾性率(E‘)を求めた。
【0097】
周波数:10Hz、試長:20mm、最小荷重:約100mN、振幅:10μm、
測定温度範囲:25℃〜200℃、昇温速度:5℃/分。
【実施例】
【0098】
(ポリエステルの製造)
製膜に供したポリエステル樹脂は以下のように準備した。
【0099】
(ポリエステルA)
ジカルボン酸成分としてテレフタル成分が100モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が98モル%、ジエチレングリコール成分が2モル%であるポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.65)。
【0100】
(ポリエステルB)
1,4−シクロヘキサンジメタノールがグリコール成分に対し33mol%共重合された共重合ポリエステル(イーストマン・ケミカル社製 GN001)を、シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレートとして使用した(固有粘度0.75)。
【0101】
(ポリエステルC)
ジカルボン酸成分としてテレフタル成分が100モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が68モル%、ネオペンチルグリコール成分が30モル%、ジエチレングリコール成分が2モル%であるネオペンチルグリコール共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.75)。
【0102】
(ポリエステルD)
ジカルボン酸成分としてテレフタル成分が82.5モル%、イソフタル成分が17.5モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が98モル%、ジエチレングリコール成分が2モル%であるイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.7)。
【0103】
(ポリエステルE)
ジカルボン酸成分としてテレフタル成分が87モル%、2,6−ナフタレンジカルボン酸成分が13モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が98モル%、ジエチレングリコール成分が2モル%である2,6−ナフタレンジカルボン酸共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.68)。
【0104】
(ポリエステルF)
ジカルボン酸成分としてテレフタル成分が100モル%、グリコール成分として1,4−ブタンジオール成分が100モル%であるポリブチレンテレフタレート樹脂(固有粘度1.22)。
【0105】
(粒子マスターA)
ポリエステルA中に平均粒子径2.2μmの凝集シリカ粒子を粒子濃度2質量%で含有したポリエチレンテレフタレート粒子マスター(固有粘度0.65)。
【0106】
(核剤マスターA)
ポリエステルAと、ステアリン酸バリウムを、質量比95:5で混合し、ベント式二軸押出機を用いて、280℃で混練し、ステアリン酸バリウム5質量%の核剤マスターを作製した。
【0107】
(核剤マスターB)
ポリエステルAと、モンタン酸ナトリウムを、質量比95:5で混合し、ベント式二軸押出機を用いて、270℃で混練し、モンタン酸ナトリウム5質量%の核剤マスターを作製した。
【0108】
(核剤マスターC)
テレフタル酸ジメチル100質量部、エチレングリコール70質量部の混合物に酢酸マンガン0.04質量部を加え、徐々に昇温し、最終的には220℃でメタノールを留出させながら、エステル交換反応を行った。次いで、リン酸85%水溶液0.025質量部、二酸化ゲルマニウム0.02質量部を添加し、さらに酢酸ナトリウムを5質量部添加し、290℃、1hPaの減圧下で重縮合反応を行い、固有粘度が0.65、副生したジエチレングリコールがグリコール成分に対し2モル%共重合された酢酸ナトリウム5質量%のポリエチレンテレフタレート樹脂を得た。
【0109】
(核剤マスターD)
ポリエステルAと、エチレンビスラウリン酸アミドを、質量比95:5で混合し、ベント式二軸押出機を用いて、270℃で混練し、エチレンビスラウリン酸アミド5質量%の核剤マスターを作製した。
【0110】
(実施例1)
A/B/Aの3層積層フィルムとした。A層用の原料として、ポリエステルAとポリエステルBと粒子マスターとを質量比89:10:1で混合したものを用いた。B層用原料として、ポリエステルAとポリエステルBとを質量比60:40の割合で混合したものを用いた。
【0111】
A層用の原料とB層用の原料をそれぞれ別々のベント二軸押出機に供給、275℃で溶融し、異物の除去、押出量の均整化を行った後、Tダイより25℃に温度制御した冷却ドラム上にシート状に吐出した。その際、直径0.1mmのワイヤー状電極を使用して静電印加し、冷却ドラムに密着させA層/B層/A層からなる3層積層未延伸フィルムを得た。
【0112】
次いで、長手方向への延伸前に加熱ロールにてフィルム温度を上昇させ、予熱温度を85℃、延伸温度を90℃で長手方向に3.2倍延伸し、すぐに40℃に温度制御した金属ロールで冷却化した。
【0113】
その後、コロナ放電処理を施し、基材フィルムの両面の濡れ張力を55mN/mとし、その処理面(フィルム両面)に、以下の塗剤A、B、C、Dを超音波分散させながら混合し、#4メタリングバーにて均一に塗布した。
【0114】
塗剤A:水分散アクリル樹脂
塗剤B:メチロール化メラミン(希釈剤:イソプロパノール/水)
塗剤C:コロイダルシリカ(平均粒径:80nm)
塗剤D:フッ素系界面活性剤(希釈剤:水)。
【0115】
次いでテンター式横延伸機にて予熱温度90℃、延伸温度100℃で幅方向に3.3倍延伸し、そのままテンター内にて温度225℃で5秒間の熱処理を行い、その後、幅方向に5%のリラックスを掛けながら150℃にて3秒間熱処理を行い、フィルム厚み188μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0116】
(実施例2〜20、実施例28〜39、比較例1〜3)
A層用の原料およびB層用の原料を表に記載のものを用いた以外は実施例1と同様にしてフィルム厚み188μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0117】
(実施例21)
A/B/Aの3層積層フィルムとした。A層として、ポリエステルAとポリエステルBと核剤マスターAと粒子マスターを質量比59:10:30:1で混合して使用した。B層としては、ポリエステルAとポリエステルBとを質量比60:40の割合で混合して使用した。
【0118】
その後は、幅方向の延伸倍率3.5とした以外は実施例1と同様にしてフィルム厚み188μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0119】
(実施例22)
A/B/Aの3層積層フィルムとした。A層として、ポリエステルAとポリエステルBと核剤マスターAと粒子マスターを質量比59:10:30:1で混合して使用した。B層としては、ポリエステルAとポリエステルBとを質量比60:40の割合で混合して使用した。
【0120】
その後は、幅方向の延伸倍率3.6とした以外は実施例1と同様にしてフィルム厚み188μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0121】
(実施例23)
A/B/Aの3層積層フィルムとした。A層として、ポリエステルAとポリエステルBと核剤マスターAと粒子マスターを質量比59:10:30:1で混合して使用した。B層としては、ポリエステルAとポリエステルBとを質量比60:40の割合で混合して使用した。
【0122】
その後は、幅方向の延伸倍率3.8とした以外は実施例1と同様にしてフィルム厚み188μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0123】
(実施例24)
A/Bの2層積層フィルムとした。A層として、ポリエステルAとポリエステルBと核剤マスターAと粒子マスターを質量比59:10:30:1で混合して使用した。B層としては、ポリエステルAとポリエステルBとを質量比60:40の割合で混合して使用した。
【0124】
その後は、実施例1と同様にしてフィルム厚み188μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0125】
(実施例25)
A/B/Aの3層積層フィルムとした。A層として、ポリエステルAとポリエステルBと核剤マスターAと粒子マスターを質量比59:10:30:1で混合して使用した。B層としては、ポリエステルAとポリエステルBとを質量比60:40の割合で混合して使用した。
【0126】
その後は、実施例1と同様にしてフィルム厚み126μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0127】
(実施例26)
A/B/Aの3層積層フィルムとした。A層として、ポリエステルAとポリエステルBと核剤マスターAと粒子マスターを質量比59:10:30:1で混合して使用した。B層としては、ポリエステルAとポリエステルBとを質量比60:40の割合で混合して使用した。積層比を変更した以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み188μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0128】
(実施例27)
A/B/Aの3層積層フィルムとした。A層として、ポリエステルAとポリエステルBと核剤マスターAと粒子マスターを質量比59:10:30:1で混合して使用した。B層としては、ポリエステルAとポリエステルBとを質量比60:40の割合で混合して使用した。積層比を変更した以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み188μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0129】
【表1】

【0130】
【表2】

【0131】
【表3】

【0132】
【表4】

【0133】
【表5】

【0134】
【表6】

【0135】
【表7】

【0136】
【表8】

【0137】
【表9】

【0138】
【表10】

【0139】
【表11】

【0140】
【表12】

【0141】
【表13】

【0142】
【表14】

【0143】
【表15】

【0144】
【表16】

【0145】
【表17】

【0146】
【表18】

【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明は二軸配向ポリエステルフィルムに関し、成型性、寸法安定性、耐傷性に優れており、成型加工を施して、様々な成型部材へ好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルA層とポリエステルB層を有する積層ポリエステルフィルムであって、
A層におけるグリコール成分の95モル%以上が、エチレングリコールおよび/またはジエチレングリコールであり、ジカルボン酸成分の95モル%以上がテレフタル酸であり、
フィルムのガラス転移温度が70℃以上である成型用二軸配向積層ポリエステルフィルム。
【請求項2】
A層が結晶核剤を含有し、A層における結晶核剤の含有量が、A層に対し、0.075
重量%以上5%未満である請求項1に記載の成型用二軸配向積層ポリエステルフィルム。
【請求項3】
B層における結晶核剤の含有量が、B層に対し、0.075重量%未満である請求項1または2に記載の成型用二軸配向積層ポリエステルフィルム。
【請求項4】
フィルムの表面硬度がHB以上である請求項1〜3のいずれかに記載の成型用二軸配向積層ポリエステルフィルム。
【請求項5】
フィルムのヘイズが0.1%以上3%未満である請求項1〜4のいずれかに記載の成型用二軸配向積層ポリエステルフィルム。
【請求項6】
結晶核剤が、脂肪族カルボン酸アミド、脂肪族カルボン酸塩およびソルビトール系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項2〜5のいずれかに記載の成型用二軸配向積層ポリエステルフィルム。
【請求項7】
A層が、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分、ネオペンチルグリコール成分、イソフタル酸成分および2,6−ナフタレンジカルボン酸成分からなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を含有し、
A層における1,4−シクロヘキサンジメタノール成分および/またはネオペンチルグリコール成分の含有量が、A層のグリコール成分に対して、5モル%未満であるか、
A層におけるイソフタル酸成分および/または2,6−ナフタレンジカルボン酸成分の含有量が、A層のジカルボン酸成分に対して、5モル%未満である請求項1〜6のいずれかに記載の成型用二軸配向積層ポリエステルフィルム。
【請求項8】
80℃におけるフィルム長手方向および幅方向の貯蔵弾性率が2500MPa以上4000MPa未満である成型用二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項9】
150℃におけるフィルム長手方向および幅方向の100%伸長時応力(F100値)がそれぞれ5MPa以上60MPa未満である請求項1〜8のいずれかに記載の成型用二軸配向積層ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2011−73151(P2011−73151A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223897(P2009−223897)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】