説明

成型金型および成型金型装置

【課題】金型の加熱から冷却に至る成型の1サイクルの時間を短縮する。特殊な金型構造を必要としない構成とする。
【解決手段】金型(1,4)と誘導加熱コイル(2,5)の間に、誘導加熱不可能材料製の厚さ約10mmの通水ダクト(3,6)を設ける。
【効果】金型と誘導加熱コイルの間が約10mm離れるが、この距離で最も効率よく金型を誘導加熱でき、短時間で金型を必要な温度まで加熱できる。通水ダクトに冷水を流せば、短時間で金型を冷却できる。よって、金型の加熱から冷却に至る成型の1サイクルの時間を短縮できる。また、金型に誘導加熱コイルを埋め込んだり通水孔を穿設する必要もないので、特殊な金型構造を必要とせず、コストを低減することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成型金型および成型金型装置に関し、さらに詳しくは、金型の加熱から冷却に至る成型の1サイクルの時間を短縮できると共に特殊な金型構造を必要とせずコストを低減することが出来る成型金型および成型金型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高周波誘導電流により金型を加熱する成型金型装置が知られている(例えば、特許文献1,特許文献2参照。)。
他方、熱水/冷水により金型を加熱/冷却する成型金型装置が知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特公昭58−40504号公報
【特許文献2】特開2005−179085号公報
【特許文献3】特許第2738974号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記高周波誘導電流により金型を加熱する成型金型装置では、短時間で金型を必要な温度まで加熱できるが、短時間では冷却できないため、金型の加熱から冷却に至る成型の1サイクルの時間が長くなる問題点があった。
逆に、上記熱水/冷水により金型を加熱/冷却する成型金型装置では、短時間で金型を冷却できるが、短時間に必要な温度まで加熱できないため、やはり金型の加熱から冷却に至る成型の1サイクルの時間が長くなる問題点があった。
そこで、本発明の目的は、金型の加熱から冷却に至る成型の1サイクルの時間を短縮できると共に特殊な金型構造を必要とせずコストを低減することが出来る成型金型および成型金型装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の観点では、本発明は、金型と前記金型を誘導加熱するための誘導加熱コイルの間に、誘導加熱不可能材料製の厚さ約10mmの通水ダクトを設けたことを特徴とする成型金型を提供する。
上記第1の観点による成型金型では、金型と誘導加熱コイルの間が約10mm離れるが、この距離で最も効率よく金型を誘導加熱でき、短時間で金型を必要な温度まで加熱できる。さらに、通水ダクトに冷水を流せば、短時間で金型を冷却できる。よって、金型の加熱から冷却に至る成型の1サイクルの時間を短縮できる。また、金型に誘導加熱コイルを埋め込んだり通水孔を穿設する必要もないので、特殊な金型構造を必要とせず、コストを低減することが出来る。
【0005】
第2の観点では、本発明は、前記第1の観点による成型金型において、前記通水ダクトに流れる水が金型に直接接触することを特徴とする成型金型を提供する。
上記第2の観点による成型金型では、通水ダクトに流れる水が金型に直接接触するので、水漏れを防ぐ構造とする必要はあるが、冷却効率を向上できる。
【0006】
第3の観点では、本発明は、前記第1または前記第2の観点による成型金型と、前記誘導加熱コイルに通電するための高周波電源と、前記通水ダクトに流す水を冷却する冷水温調器とを具備したことを特徴とする成型金型装置を提供する。
上記第3の観点による成型金型では、前記第1または前記第2の観点による成型金型を用いるため、金型の加熱から冷却に至る成型の1サイクルの時間を短縮でき、生産性を向上することが出来る。
【発明の効果】
【0007】
本発明の成型金型および成型金型装置によれば、金型の加熱から冷却に至る成型の1サイクルの時間を短縮でき、生産性を向上することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0009】
図1は、実施例1に係る成型金型装置100を示す一部破断正面図である。
この成型金型装置100は、成型金型10と、可動型駆動部11と、IH電源部12と、冷水温調器13と、制御部14とを備えている。
【0010】
成型金型10は、位置が一定の金型である固定型1と、固定型1を誘導加熱するための誘導加熱コイル2と、固定型1と誘導加熱コイル2の間に設けられた誘導加熱不可能材料製(例えば耐熱プラスチック,セラミック,耐熱ガラス,石などの非磁性体)の厚さ約10mmの通水ダクト3と、位置が可変の金型である可動型4と、可動型4を誘導加熱するための誘導加熱コイル5と、可動型4と誘導加熱コイル5の間に介設されている誘導加熱不可能材料製の厚さ約10mmの通水ダクト6とを具備している。
【0011】
固定型1および可動型4には、温度センサ7が設置されている。
温度センサ7は、制御部14に接続されている。
誘導加熱コイル2,5は、IH電源部12に接続されている。
通水ダクト3には、冷水温調器13から冷水が供給される。
【0012】
成型の1サイクルは、例えば次のような手順になる。
(0)初期状態として、可動型4は開いている。通水ダクト3,6は排水されている。
(1)制御部14は、可動型4を閉じる。
(2)制御部14は、IH電源部12より誘導加熱コイル2,5に通電し、固定型1および可動型4を必要な温度に誘導加熱し、温度センサ7に応じて通電を制御して温度を維持する。
(3)固定型1と可動型4の間のキャビティに溶融樹脂を注入する。
(4)制御部14は、誘導加熱コイル2,5への通電を停止し、冷水温調器13により通水ダクト3,6に冷水を通水し、固定型1および可動型4を冷却し、樹脂が安定に硬化する温度まで冷却できたこと温度センサ7で確認したら、可動型4を開き、通水ダクト3,6から排水する。
(5)成型品を取り出せば、初期状態に戻る。
【0013】
実施例1の成型金型装置100及び成型金型10によれば次の効果が得られる。
(1)金型1,4と誘導加熱コイル2,5の間が約10mm離れるが、この距離で最も効率よく金型1,4を誘導加熱でき、短時間で金型1,4を必要な温度まで加熱できる。また、通水ダクト3,6に冷水を流すことにより、短時間で金型1,4を冷却できる。よって、金型の加熱から冷却に至る成型の1サイクルの時間を短縮することが出来る。
(2)金型1,4と誘導加熱コイル2,5の間が通水ダクト3,6を介して約10mm離れているので、金型1,4の熱が誘導加熱コイル2,5に伝わり難く、誘導加熱コイル2,5の温度上昇を回避でき、誘導加熱効率の低下を防ぐことが出来る。また、通水ダクト3,6に冷水を流すことにより誘導加熱コイル2,5も冷却できるので、誘導加熱コイル2,5を冷却するファン等の設置が不要になり、コストを低減できる。
(3)金型1,4に誘導加熱コイルを埋め込んだり通水孔を穿設する必要もないので、特殊な金型構造を必要とせず、コストを低減することが出来る。
【実施例2】
【0014】
図2は、実施例2に係る成型金型装置200を示す一部破断正面図である。
この成型金型装置200では、成型金型20において、通水ダクト3a,6aを流れる冷水が金型1,4の外面1a,4aに直接接触するようになっている。
8a,8bは、水漏れを防止するためのパッキンである。
【0015】
実施例2の成型金型装置200および成型金型20によれば、通水ダクト3a,6aに流れる水が金型1,4に直接接触するので、冷却効率を向上できる。
【実施例3】
【0016】
(a)誘導加熱コイル2と通水ダクト3又は誘導加熱コイル5と通水ダクト6のいずれか一方を省略してもよい。
(b)通水ダクト3,6において、水路を多数の連通丸孔としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明の成型金型および成型金型装置は、樹脂やゴムのモールド成型やプレス成型などに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1に係る成型金型装置を示す一部破断正面図である。
【図2】実施例2に係る成型金型装置を示す一部破断正面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 固定型
2,5 誘導加熱コイル
3,3a,6,6a 通水ダクト
4 可動型
7 温度センサ
8a,8b パッキン
10,20 成型金型
11 可動型駆動部
12 IH電源部
13 冷水温調器
14 制御部
100,200 成型金型装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型と前記金型を誘導加熱するための誘導加熱コイルの間に、誘導加熱不可能材料製の厚さ約10mmの通水ダクトを設けたことを特徴とする成型金型。
【請求項2】
請求項1に記載の成型金型において、前記通水ダクトに流れる水が金型に直接接触することを特徴とする成型金型。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の成型金型と、前記誘導加熱コイルに通電するための高周波電源と、前記通水ダクトに流す水を冷却する冷水温調器とを具備したことを特徴とする成型金型装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−168495(P2008−168495A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−3146(P2007−3146)
【出願日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(000003414)東京特殊電線株式会社 (173)
【Fターム(参考)】