説明

成形体、同成形体を形成する方法、および同成形体の使用

本発明は、箔が1μm〜1000μmの厚さDを有しており、箔の中に少なくとも1つの中空構造があり、中空構造の外径dは箔の厚さDの少なくとも2倍の値を有しており、中空構造の高さhは外径dの高々2倍の値をとり、中空構造の壁強度bは箔の厚さDの0.02倍から箔の厚さDまでの間にあり、中空構造の局所的曲率rは壁強度bの0.2倍から5倍までの間にあり、前記箔と前記少なくとも1つの中空構造が多数の有利には統計的に分布した細孔を有しており、細孔の直径が好ましくは10nm〜10μmであるような、箔から成る成形体に関するものである。
本発明はさらに、上記成形体を形成する方法と、上記成形体の、マイクロ構造化された部材のハウジングとしての使用、無機分子または有機分子、生体分子、原核細胞または真核細胞の固定化のための使用、原核細胞または真核細胞の培養のための使用、バイオセンサまたはバイオリアクタとしての使用にも関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中に少なくとも1つの中空構造があり、かつ箔と前記少なくとも1つの中空構造が多数の細孔を有するような成形体と、この成形体を形成する方法と、この成形体の使用とに関するものである。
【0002】
マイクロ有孔箔(膜)を形成する現行の方法は、イオントラック技術、レーザー微細穿孔もしくはリソグラフィのような専用の物理的方法に基づいたものであるか、または、転相のような特別の析出法もしくは延伸法に基づいたものである。後者の2つの方法が平面的な精密濾過膜および限外濾過膜の形成に使用される一方で、マイクロ構造の微細穿孔にはふつう専用の物理的方法が使用される。しかし、この方法は、射出成形や箔押のようなマイクロ構造技術の方法と組み合わせた場合、既存の3次元マイクロ構造にしか適用できない。
【0003】
たしかに、このようなマイクロ構造の各面の穿孔は、原則的に、例えば照射の際に構造の回転および裏返しを行うことにより可能であるが、ただし、それは高いコストの下でのみ、また個別の独立した構造の場合のみでのことである。複数の構造が隣接している(構造のアレイ)場合、遅くともその際にはすでに構造平面に対して垂直なまたは小さな傾斜でのマイクロ穿孔しか可能でない。
【0004】
このことから、本発明の課題は、上に述べた欠点と制限を持たない成形体と、この成形体を形成する方法、ならびにこの成形体の使用を示すことである。とりわけ、成形体は全面にわたって多孔質の3次元薄壁ポリマー中空構造を有し、細孔は10nm〜10μmの決められたサイズでなければならない。
【0005】
この課題は、成形体に関しては、請求項1に記載の特徴により、方法に関しては、請求項14の方法ステップにより、使用に関しては、請求項19〜23により解決される。従属請求項はそれぞれ本発明の有利な実施形態を記述したものである。
【0006】
本発明による成形体は箔の厚さDが1μm〜1000μm、好ましくは、10μm〜100μmである箔(膜)から成っており、箔の厚さは好ましくは広い範囲(数平方メートル)にわたってほぼ一定である。箔自体は、有利には、熱可塑性の合成物質から、特に好ましくはポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチロール(PS)、ポリイミド(PI)、ポリプロピレン(PP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、またはシクロオレフィンコポリマー(COC)から成っている。
【0007】
箔の中にはさらに少なくとも1つの中空構造(キャビティ)が設けられており、この中空構造の幾何学的寸法は以下の値により定められる:
−中空構造の外径dは箔の厚さDの少なくとも2倍の値:
d≧2*D (1)
好ましくは、箔の厚さDの少なくとも3倍の値を有する。
−中空構造の高さh(見方によっては奥行きでもある)は外径dの高々2倍の値を有する:
h:d<2:1 (2)
−中空構造の壁強度(壁厚)bは箔の厚さDとほぼ同じオーダーの大きさ、またはより小さなオーダーの大きさである、すなわち、箔の厚さDの0.02倍から箔の厚さDまでの値をとる。
【0008】
0.02*D≦b≦D (3)
−中空構造の局所的曲率半径rはそれぞれ局所的壁強度bほどのオーダーの大きさである、すなわち、壁強度bの0.2倍〜5倍の値を有する。
【0009】
0.2*b≦r≦5*b (4)
好適な実施形態において、中空構造は凹みを有し、したがって断面ではΩ状の構造をとる。箔の厚さD、中空構造の外径d、および中空構造の高さhが同じオーダーの大きさであれば、特徴的な壁強度bの分布関数を有するΩ状構造が得られる。ただし、ここで、式(1)は依然として満たされていなければならない。
【0010】
箔の中には、好ましくは複数の、特に好ましくは多数の中空構造が収容されており、これら中空構造のそれぞれの間隔gは少なくとも各中空構造の外径dに相当する値をとる:
g≧d (5)
この間隔の下限(最小間隔)は実質的に箔成形工具の機械的強度によって決まる。材料と製造方法とに応じて、数マイクロメートルの幅の、非常に狭いが成形にとってはまだ安定したウェブが形成される。
【0011】
最終的に、成形体は、すなわち、箔も中空構造も、多数の細孔を有し、それぞれの細孔の直径δは好ましくは10nm〜10μmの値をとる。有利には、細孔は統計的には成形体の全体にわたって、すなわち、箔と中空構造とにわたって分布しており、個々の細孔は重なり合うこともありうる。択一的な実施形態では、細孔は箔と中空構造とにわたって間隔βで整列して分布する。
【0012】
本発明による成形体は以下の方法で形成される。ステップa)によれば、まず1μm〜1000μmの、好ましくは10μm〜100μmの厚さを有し、かつ有利にはポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチロール(PS)、ポリイミド(PI)、ポリプロピレン(PP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、またはシクロオレフィンコポリマー(COC)のような熱可塑性の合成物質から成る箔が形成される。
【0013】
続いて、ステップb)により、箔の内部に照射領域が生じるように電離放射線が箔に当てられる。箔の照射は、有利には、例えば132Xe21+などの重イオンを用いて行われる。比エネルギーは少なくとも箔を確実に貫通するほどの大きさに選ばれている。重イオンのフルエンスは単位面積当たりの平均細孔密度を調整するために選ばれる。好ましくは、重イオンは0.1MeV/核子を超える比エネルギーを有する。
【0014】
箔表面に対する照射角は有利にはほぼ90°である、すなわち、箔は重イオンビームの方向に対して実質的に垂直である。後の成長ステップにおいて適切な大きさの細孔として除去される領域を箔の中に形成することができるのであれば、重イオンの代わりに他のどの電離放射線でも適している。さらに、箔の照射のために、局所的に限定された有孔領域をまたは完全に切り離されるべき領域を形成するためのマスクが使用される。
【0015】
本発明による方法にとって決定的に重要なことは、これに続くステップc)において、箔の熱変形により成形体が形成されることである。このために、例えば、マイクロ熱成形の名称で知られる方法を用いてもよい。熱成形の際、箔の変形は合成物質のエントロピー弾性相においては行われるが、溶融相においては行われず、そのため照射量と照射位置との相関が失われることがない。重要なことは、イオントラックの消失または局所堆積線量の塗りつぶしを防ぐために、温度が熱可塑性合成物質の軟化温度(ガラス転移温度)の範囲内に、すなわち、融解温度よりも低くとどまることである。この目標は比較的低い変形温度と短い変形時間とにより達成される。
【0016】
本発明による方法は、ポリマー基板の照射と別状がなければ通常それに続く成長ステップとの間にマイクロ構造技術による成形プロセスを挿入することに基づいている。提案された方法にとって重要なことは、有孔のまたは網状の3次元薄壁中空構造を形成するために、電離放射線により局所的に変性させられたポリマー原材料を後で除去するために熱成形することである。
【0017】
3次元薄壁マイクロ中空構造の側壁にも底部にも穿孔することができるように、平坦な箔の半製品は有利にはイオン化粒子による電離放射線に曝される。したがって、有孔膜の古典的な形成法とは異なり、照射される箔はエッチングと溶解とにより細孔を成長させる前に(!)潜在イオントラックでマイクロ構造化される。この種の成形では、ポリマーを融解相に移行させるようなマイクロ工学的方法が可能である。というのも、そうでなければ、イオントラックの消失や局所堆積線量の塗りつぶしが生じてしまうからである。しかし、マイクロ熱成形は成形プロセス中にエントロピー弾性状態を有するマイクロ工学的方法であるため、ポリマーの物質的な結合が保証される。というのも、熱可塑性プラスチックはその軟化温度のすぐ近くの範囲内でしか変形しないからである。
【0018】
熱可塑性半製品は、マクロ的な熱成形に似て、壁の厚さを薄くして空間的に凹の形状で隠蔽される。熱可塑性プラスチックを隠蔽することで、着けられたイオントラックは維持されるが、それぞれの局所的な隠蔽に応じてその相対的な位置は変化する、すなわち、単位面積当たりのイオントラック密度が隠蔽の増加にともなって低下する。
【0019】
従来と同じように封じ込められた熱可塑性箔がマイクロ熱成形により3次元的にマイクロ構造化された後、照射された領域は、ステップd)にしたがって、変化したその物理的特性に応じて相応しい物質を用いたエッチングにより独立ないし分離され、これにより有利には10nm〜10μmの直径δを有する細孔が成形体内に形成される。特に好適な実施形態では、成形体内の照射領域の除去(切り離し)は例えば強アルカリ液による湿式化学エッチングにより行われる。細孔の所望の直径はエッチングステップのパラメータ(持続時間、温度)を介して調整される。
【0020】
最後に、ステップe)にしたがって、薄壁を有する3次元中空構造である本発明により形成された成形体が取り出される。なお、この3次元中空構造はその側壁および底部の全領域に所定の大きさの細孔を有しており、これらの細孔はこれらすべての領域において広範囲にわたって壁に対して垂直に並んでいる。
【0021】
本発明による方法により形成された成形体は多方面にわたって使用されうる。1つのまたは複数の中空構造をもつ成形体はマイクロ構造化された部材(構成要素)のハウジングにまたはマイクロ粒子もしくはナノ粒子の採集に適している。
【0022】
さまざまな反応媒質を潅流させることにより、例えば、上記粒子の表面が機能化される。
【0023】
さらに、外径dから壁強度bの2倍を差し引いて求まる内径diと10〜50μmの範囲の高さhをもつ中空構造を有する成形体により、生体分子、原核細胞、または真核細胞の生物学的または薬学的な個別研究が可能である。
【0024】
50〜500μmの範囲の内径diと高さhをもつを中空構造を有し、またその寸法が慣用の回転楕円体の領域内に収まるものであるような成形体は、原核細胞または真核細胞の3次元的培養に使用される。その例としては、浸潤性脈管形成(腫瘍の研究)または細胞間連絡の研究のための細胞の培養が挙げられる。
【0025】
好適な実施形態では、複数のまたは多数の中空構造が平面内に配置されている。ここで、中空構造は箔の全体または一部にわたって直列にまたは平面的に分布して配置することが可能である。後者の場合、中空構造は有利には行および列にまたは互い違いに配置される。
【0026】
このような成形体はマイクロ粒子またはナノ粒子の固定化ないし磁化のための指定可能なキャビティとして使用することができ、マイクロ粒子またはナノ粒子の表面は反応媒質の潅流により機能化させることができる。
【0027】
本発明による成形体の好適な使用は、例えばDE 41 32 379 A1から公知のように、原核細胞または真核細胞の3次元的培養のためのマイクロ構造化された細胞培養担体としての使用にある。これにより、潅流する媒質により栄養供給される細胞の固定化が可能である。これに関して、好ましいパラメータは次の通りである:
箔の厚さD:20−100μm,
壁強度b:5−10μm,
中空構造: 内径di:100−300μm,
高さh:100−300μm,
1〜5μmの直径δで106〜107孔/cm2
さらに、本発明による成形体は表面積が拡大されているため酵素や表面活性触媒の固定化に適している。拡大された表面に酵素が固定化されることにより、媒質(液体)がその周りを流れるだけでなく、媒質が直接貫流するバイオセンサの構造が可能になる。
【0028】
本発明による成形体は機械的、熱的、電気的、磁気的、または化学的な分離法において使用することができる。箔の適切なパラメータと連繋させれば、このような成形体は微生物の濾過にも適している。ここで、微生物とは、ウィルス、ファージないしバクテリア、または、例えば貫流する媒質からの可溶性タンパク質のような生体分子を含む。
【0029】
さらに、本発明による成形体は噴霧器としても適している。液相において混合しない物質は隣接した中空構造の細孔から細かく散った液滴(エアロゾル)の形態に変わり、このようにして混合される。
【0030】
別の好適な実施形態では、本発明による成形体は一重にまたは螺旋状に巻かれ、中空構造は内側または外側を向く。択一的には、本発明による成形体は折り畳まれたり、波形にされる。最後に、同一のまたは異なったパラメータを有する、並列、上下、または入れ子に配置された複数の成形体が存在していてもよい。これら複数の成形体は例えば膜濾過に使用することができる。
【0031】
こうして、酵素の固定化や表面活性触媒のための使用の他に、例えば、マイクロ粒子またはナノ粒子をその大きさに従って細孔のサイズで段階付けられた複数の層を介して連続的に分離することができる。同様に、この種の成形体は、例えば製薬業やバイオテクノロジーなどにおける物質分離のための、所定の細孔サイズを持った3次元的なフィルタとしても適している。
【0032】
本発明による1つまたは複数の管状成形体は、一般に使用されている中空ファイバに比べて表面積が格段に大きなモジュールである。このようなモジュールは、例えばモノクローナル抗体を得るために、または体外臓器支援システムとして使用することができる。
【0033】
さらに別の使用分野は、所定の位置に所定サイズの開口部ないし細孔を有する、例えばプロービング、換気、物質分離などのための微視的な薄壁の導管構造または貯蔵構造の製造にある。このような成形体は、例えば、μ毛管電気泳動チップまたはLab-on-a-Chipシステムにおいて使用されうる。
【0034】
本発明は特に以下の利点を有している:
−マイクロ構造化プロセスの前に平板ポリマー箔を簡単に照射することができる;
−例えばエンドロス箔の構造化されていない大きな面を簡単に照射することができる;
−局所的に限定された有孔領域をまたは完全に切り離されるべき領域を形成するためのマスク(直接的なマスクコンタクト)の使用が容易である;
−3次元マイクロ中空構造の全面にわたるマイクロ穿孔が可能である;
−通常は費用のかかるコスト集約的なマイクロ構造化に先立って、費用のかからない箔半製品上で照射のステップが実行されることにより、既にある高価なマイクロ構造への照射ミスによる撃ち抜きの発生が回避されるため、製造の信頼性が高い;
以下では、実施例と図面とに基づき本発明をより詳細に説明する。
図1は、多孔質中空構造を有する成形体の横断面を概略的に示したものである。
図2は、凹みのある中空構造(Ω状構造)を有する成形体の横断面を概略的に示したものである。
図3は、平面内での複数の中空構造の
a)直列的配置;
b)行および列での配置;
c)互い違いの平面的配置
の断面を概略的に示したものである。
図4は、
a)内側に向いて一重に巻かれた中空構造;
b)内側に向いて螺旋状に巻かれた中空構造;
c)外側に向いて一重に巻かれた中空構造
の3次元的配置の横断面を概略的に示したものである。
図5は、2つの成形体の3次元的配置の横断面を概略的に示したものである。
図6は、ステップd)以前の中空構造の断面をラスタ走査型電子顕微鏡で撮影したものである。
図7は、ステップd)以後の図6の中空構造の断面をラスタ走査型電子顕微鏡で撮影したものである。
図8は、ステップd)以後の別の中空構造の断面をラスタ走査型電子顕微鏡で撮影したものである。
図9は、図6〜8の成形体の外部の断面(離散構造)を示したものである。
図10は、さらに細孔の貫通を明示するために図9の一部を示したものである。
【0035】
図1は、多孔質中空構造を有する成形体の横断面を概略的に示している。この図で言及されているパラメータは個別的には次の通りである:
D 箔の厚さ
d 中空構造の外径
h 中空構造の高さ
b 中空構造の壁強度
r 中空構造の曲率半径
g 隣接した2つの中空構造の間隔
δ 細孔の直径
β 細孔の間隔
図2には、真の凹みを持つ中空構造、すなわち、いわゆるΩ構造を有する成形体の断面が概略的に示されている。この図からは、壁強度bの特徴的な分布関数が見て取れる。
【0036】
図3は平面内に複数の中空構造を配置するいくつかの可能な形態を示しており、一方で図4には、本発明による成形体の可能な空間的配置が示されている。図5は、2つの成形体をスタックまたはサンドイッチの形で配置するいくつかの可能な形態を示している。個々の成形体の中空型は、同じ方向(a,d)もしくは逆方向(b,c,e,f)に、直列(a−c)もしくは互い違い(d−f)に、または、内側もしくは外側を向いて(bに対してc、eに対してf)配置することができる。
【0037】
本発明による方法を実施するために、箔として、ポリカーボネート(PC)からなる厚さ50μmの鋳造箔を使用した。箔の照射は、在ダルムシュタットの重イオン研究協会(GSI)の線形加速器UNILACにおいて、11.4MeV/核子の比エネルギーと106イオン/cm2のフルエンスを持つ重イオンを用いて行われた。箔表面への照射角度は90°であった。
【0038】
続くマイクロ熱成形のために、箔は80°Cで45分間にわたって真空乾燥された。マイクロ熱成形は164°Cの成形温度と5MPa(50bar)のガス圧のもと80000Nの機械的接触圧力で行われた。型を外す温度はおよそ70°Cであった。ほぼ240μm〜250μmの奥行きの中空構造が得られた。
【0039】
細孔の形成には、エッチング剤として、10%のメタノールを含んだ5規定NaOHからなる溶液を用いた。エッチングは50°Cの温度で6時間にわたって行われた。その結果、4μm〜5μmの範囲の大きさの細孔が得られた。
【0040】
図6には、ポリカーボネート(PC)からなる50μmの厚さのマイクロ成形箔の中空構造の断面をラスタ走査型電子顕微鏡で撮影したものが示されている。最大奥行きはおよそ250μmであり、切断平面の奥行きはそれよりもやや小さい。箔は成形過程の前に重イオンで照射された。
【0041】
図7には、図6に既に示されているポリカーボネート(PC)からなるマイクロ成形箔の中空構造のエッチングステップ後の断面をラスタ走査型電子顕微鏡で撮影したものが示されている。幾つかのケースで細孔の貫通が見られる。細孔の向きは切断平面と正確には一致していないため、横断面では少数の細孔しかそのフルサイズが識別できない。
【0042】
図8には、図6に既に示されているポリカーボネート(PC)からなるマイクロ成形箔の中空構造のステップd)以後の断面をラスタ走査型電子顕微鏡で撮影したものが示されている。ここでも、幾つかのケースで細孔の貫通がはっきりと見られる。
【0043】
図9には、図5〜8に既に示されているポリカーボネート製のマイクロ成形箔の外部の断面が示されている。図10には、図9の一部を拡大したものが示されており、同様に細孔の貫通が見て取れる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】多孔質中空構造を有する成形体の横断面を概略的に示す。
【図2】凹みのある中空構造(Ω状構造)を有する成形体の横断面を概略的に示す。
【図3】平面内での複数の中空構造のa)直列的配置;b)行および列での配置;c)互い違いの平面的配置の断面を概略的に示す。
【図4】a)内側に向いて一重に巻かれた中空構造;b)内側に向いて螺旋状に巻かれた中空構造;c)外側に向いて一重に巻かれた中空構造の3次元的配置の横断面を概略的に示す。
【図5】2つの成形体の3次元的配置の横断面を概略的に示す。
【図6】ステップd)以前の中空構造の断面をラスタ走査型電子顕微鏡で撮影したものを示す。
【図7】ステップd)以後の図6の中空構造の断面をラスタ走査型電子顕微鏡で撮影したものを示す。
【図8】ステップd)以後の別の中空構造の断面をラスタ走査型電子顕微鏡で撮影したものを示す。
【図9】図6〜8の成形体の外部の断面(離散構造)を示す。
【図10】図10は、さらに細孔の貫通を明示するために図9の一部を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
箔から成る成形体において、
a)箔は1μm〜1000μmの厚さDを有しており、
b)箔の中に少なくとも1つの中空構造があり、中空構造の外径dは箔の厚さDの少なくとも2倍の値を有しており、中空構造の高さhは外径dの高々2倍の値をとり、中空構造の壁強度bは箔の厚さDの0.02倍から箔の厚さDまでの間にあり、中空構造の局所的曲率rは壁強度bの0.2倍から5倍までの間にあり、
c)前記箔と前記少なくとも1つの中空構造が多数の細孔を有している
ことを特徴とする成形体。
【請求項2】
前記少なくとも1つの中空構造が凹みを有する、請求項1記載の成形体。
【請求項3】
細孔が10nm〜10μmの直径δを有する、請求項1または2記載の成形体。
【請求項4】
細孔が前記箔と前記少なくとも1つの中空構造にわたって統計的に分布している、請求項1から3のいずれか1項記載の成形体。
【請求項5】
箔が熱可塑性合成物質から成る、請求項1から4のいずれか1項記載の成形体。
【請求項6】
箔がポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチロール(PS)、ポリイミド(PI)、ポリプロピレン(PP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、またはシクロオレフィンコポリマー(COC)から成る、請求項5記載の成形体。
【請求項7】
箔の中に複数の中空構造があり、中空構造のそれぞれの間隔gは少なくとも中空構造の外径dに等しい、請求項1から6のいずれか1項記載の成形体。
【請求項8】
複数の中空構造が直列に配置されている、請求項7記載の成形体。
【請求項9】
前記複数の中空構造が箔全体に分布している、請求項7記載の成形体。
【請求項10】
前記複数の中空構造が行および列でまたは互い違いに配置されている、請求項9記載の成形体。
【請求項11】
成形体が一重にまたは螺旋状に巻かれており、中空構造が内側または外側を向いている、請求項7から10のいずれか1項に記載の成形体。
【請求項12】
折り畳まれた、または波形にした請求項7から11のいずれか1項に記載の成形体。
【請求項13】
並列、上下、または入れ子に配置された請求項7から12のいずれか1項に記載の成形体。
【請求項14】
成形体を形成する方法において、
a)熱可塑性合成物質から箔を作製するステップ、
b)電離放射線により箔を照射し、箔内に照射領域を生じさせるステップ、
c)熱可塑性合成物質の融解温度よりも低い温度で箔を熱成形して成形体にするステップ、
d)照射領域を取り除くことにより成形体中に細孔を形成するステップ、および、
e)成形体を取り出すステップ
から成ることを特徴とする、成形体の形成方法。
【請求項15】
箔の照射をマスクを通して行う、請求項14記載の方法。
【請求項16】
箔の照射を重イオンを用いて行う、請求項14または15記載の方法。
【請求項17】
前記重イオンは0.1MeV/核子を超える比エネルギーを有するものである、請求項16記載の方法。
【請求項18】
照射領域を取り除くステップを湿式化学エッチングにより行う、請求項14から17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
請求項1から13のいずれか1項記載の成形体の、フィルタまたは噴霧器としての使用。
【請求項20】
請求項1から13のいずれか1項記載の成形体の、マイクロ構造化された部材のハウジングとしての使用。
【請求項21】
無機分子または有機分子、生体分子、原核細胞または真核細胞の固定化のための、請求項1から13のいずれか1項記載の成形体の使用。
【請求項22】
原核細胞または真核細胞の培養のための、請求項1から13のいずれか1項に記載の成形体の使用。
【請求項23】
請求項1から13のいずれか1項記載の成形体のバイオセンサまたはバイオリアクタとしての使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−507424(P2008−507424A)
【公表日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521826(P2007−521826)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【国際出願番号】PCT/EP2005/007043
【国際公開番号】WO2006/007948
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(591004618)フォルシュングスツェントルム カールスルーエ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (50)
【氏名又は名称原語表記】Forschungszentrum Karlsruhe GmbH
【住所又は居所原語表記】Weberstrasse 5, D−76133 Karlsruhe,Germany
【出願人】(504343177)ゲゼルシャフト フュア シュヴェリオーネンフォルシュング ミット ベシュレンクテル ハフツング (8)
【氏名又は名称原語表記】Gesellschaft fuer Schwerionenforschung mbH
【住所又は居所原語表記】Planckstr. 1, D−64291 Darmstadt, Germany
【Fターム(参考)】