説明

成形回路部品

【課題】 イオンマイグレーシンの発生を防止して、非回路となる部分の絶縁性を確保すると共に無電解めっきの密着性を向上させる。
【解決手段】 絶縁性基体1の表面に選択的に無電解銅めっき層3を形成した成形回路部品において、この絶縁性基体として熱可塑性樹脂に酸化亜鉛の多針状結晶粒体からなる充填剤を混合したものを使用し、この無電解銅めっき層を形成する前に、この絶縁性基体の表層に混在する充填剤をエッチング液によって除去する。酸化亜鉛の多針状結晶粒体が除去された絶縁性基体1の表層は、無電解銅めっき層3に対して優れたアンカー効果を発揮すると共に、非回路となる部分1bにおけるイオンマイグレーシンの発生を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁性基体の表面に選択的に無電解めっき層を形成した成形回路部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から絶縁性基体の表面に選択的に無電解めっきを行って導電性回路を形成した成形回路部品が提供されている。この成形回路部品においては、絶縁性基体の表面と無電解めっきとの密着性を確保するために、無電解めっきを行なう部分について、通常、予め絶縁性基体の表面を粗化し、いわゆるアンカー効果によって無電解めっきの密着性を確保している(例えば特許文献1参照。)。絶縁性基体の表面を粗化する手段の1つとして、絶縁性基体に、エッチング液によって溶解し易い、例えばゴム物質の充填物を混合しておき、エッチング液によって、絶縁性基体の表層部分に混合する充填物を溶解させる手段がある。(例えば特許文献2参照。)
【0003】
また従来から充填剤は、絶縁性基体の強度や剛性等を向上させるためにも使用されている。これらの絶縁性基体の強度や剛性等を向上させるため充填剤としては、ガラス繊維、ガラスビーズ、炭素繊維、金属繊維、あるいは酸化亜鉛ウィスカー等の無機質充填剤が提案されている(例えば特許文献3参照。)。
【0004】
ところで近年、酸化亜鉛の多針状結晶粒体、すなわち酸化亜鉛の結晶粒体であって、多数の針状結晶が中心部から放射状に成長した形状を有するものが開発されて製品化されており、例えば株式会社アムテックの製品「パナテトラ」(登録商標)が市販されている。この「パナテトラ」を合成樹脂に混合することによって、優れた製品の成形性、耐摩耗性、帯電防止製、及び電波シールド性が得られるとされている。
【0005】
上述したように酸化亜鉛の多針状結晶粒体は、中心部から放射状に成長した多数の針状結晶を有するため、無電解めっきの密着性を確保するためのアンカー効果を得る上で、理想的と考えることができる。すなわち仮に、絶縁性基体に酸化亜鉛の多針状結晶粒体を混合し、絶縁性基体の表層に存在する酸化亜鉛の多針状結晶粒体を除去できれば、この多針状結晶粒体を除去した空洞は、四方に放射状に分岐したものとなるため、この空洞に無電解めっきが侵入すれば、極めて優れた密着性が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−145583号公報
【特許文献2】特開2006−240085号公報
【特許文献2】特開2000−239422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかるに酸化亜鉛の結晶は、酸及びアルカリ水溶液に溶解してイオン化し易い。このため酸化亜鉛の結晶を混合した絶縁性基体は、湿気がある雰囲気において電圧を印加すると、イオン化した亜鉛が金属亜鉛に還元されて、いわゆるイオンマイグレーシンが発生し、回路間の短絡を招き易いという問題がある。また酸化亜鉛の多針状結晶粒体は、導電性を有するため、無電解めっきが形成されない非回路となる部分の絶縁性を低下させることが考えられる。このため絶縁性基体の表面に選択的に無電解めっきを行なって、導電性回路を形成する成形回路部品に関しては、絶縁性基体と無電解めっきとの密着性を向上させるために、酸化亜鉛の多針状結晶粒体を充填剤として使用することは行なわれていなかった。
【0008】
そこで本願発明の目的は、イオンマイグレーシンの発生を防止して、非回路となる部分の絶縁性を確保すると共に、無電解めっきの密着性が極めて優れる成形回路部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者は、鋭意研究の結果、酸化亜鉛の多針状結晶粒体を混合した熱可塑性樹脂の表面をエッチング液でエッチングすれば、表層に混在する酸化亜鉛の多針状結晶粒体が除去されて、無電解めっきに対して理想的なアンカー効果が得られると共に、イオンマイグレーシンの発生が防止でき、かつ非回路となる部分の電気絶縁性も確保できることを見出して、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち本発明による成形回路部品の特徴は、絶縁性基体の表面に選択的に無電解めっき層を形成した成形回路部品であって、この絶縁性基体は、熱可塑性樹脂に酸化亜鉛の多針状結晶粒体からなる充填剤を混合したものであり、この無電解めっき層を形成する前に、この絶縁性基体の表層に混在する充填剤が、エッチング液によって除去されており、この絶縁性基体の表面において、非回路部の電気絶縁抵抗が少なくとも10E9Ωであることにある。上記充填剤の混合割合は、5〜45重量部%であることが望ましい。また上記絶縁性基体に、さらに上記エッチング液に溶解する他の無機充填剤を5〜20重量部%を混合してもよい。
【0011】
ここで「成形回路部品」とは、平面的な2次元形状のものに限らず、立体的な3次元形状のものや、中空形状のものも含む。「選択的に無電解めっき層を形成」とは、所定の経路形状からなる導電性回路となる部分にのみ無電解めっき層を形成し、残りの部分は絶縁性基体の表面が露呈した非回路となる部分になることを意味する。「熱可塑性樹脂」としては、耐酸性及び耐アルカリ性を有する、例えばポリエーテルイミド、ポリサルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフタルアミド、芳香族ポリエステル液晶ポリマー及びポリエーテルエーテルケトンが好ましい。
【0012】
「酸化亜鉛の多針状結晶粒体」とは、上述したように、多数の針状結晶が中心部から放射状に成長した形状を有するものを意味し、例えば株式会社アムテックの製品「パナテトラ」(登録商標)が該当する。「無電解めっき」とは、いわゆる通常の化学めっきを意味し、無電解銅めっき、無電解ニッケルめっき、無電解金めっき、無電解銀めっき、あるいは、めっき金属が相互に異なる無電解めっきを、複数段積層したものも含む。「エッチング液」とは、絶縁性基体の表層に混在する酸化亜鉛の多針状結晶粒体を、溶解除去する液を意味し、酸性液及びアルカリ性液の双方を含む。
【0013】
「10E9Ω」とは、表面抵抗率が10の9乗オームであることを意味する。なお「非回路部の電気絶縁抵抗が少なくとも10E9Ωである」としたのは、10E8Ω以下では導通するからである。「上記充填剤の混合割合は、5〜45重量部%であることが望ましい」としたのは、5重量部%未満であると、酸化亜鉛の多針状結晶粒体の分布が疎らになって、無電解めっきに対するアンカー効果が低くなるからであり、逆に45重量部%を超えると、酸化亜鉛の多針状結晶粒体の分布が密になって、非回路となる部分の電気絶縁抵抗が低下するからである。「上記エッチング液に溶解する他の無機充填剤」としては、例えば炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム及びピロリン酸カルシウムが該当する。
【発明の効果】
【0014】
絶縁性基体に酸化亜鉛の多針状結晶粒体を混合し、絶縁性基体の表層に混在する酸化亜鉛の多針状結晶粒体を、エッチング液で除去することによって形成した空洞は、四方に放射状に分岐したものとなるため、この空洞に無電解めっきが侵入すれば、極めて優れた密着性が得られる。また無電解めっきで覆われない非回路部も、その表層に混在する酸化亜鉛の多針状結晶粒体が、エッチング液で除去されているため、イオンマイグレーションの発生を防止できる。
【0015】
酸化亜鉛の多針状結晶粒体の混合割合を、所定の範囲とすることによって、非回路部の電気絶縁性を確保することができる。さらに無機充填剤として、エッチング液で溶解する材料、例えば炭酸カルシウムを混合することによって、酸化亜鉛の多針状結晶粒体を除去した空洞に、炭酸カルシウムが除去された空洞が連結し、更に無電解めっきに対するアンカー効果を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】成形回路部品の製造工程を示す工程図である。
【図2】無電解めっきに対するアンカー効果を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に示す工程図を参照しつつ、本発明による成形回路部品の製造方法を説明する。さて最初の工程(A)において、射出成形によってブロック形状の絶縁性基体1を形成する。ここで絶縁性基体1の素材は、熱可塑性樹脂であるポリエーテルエーテルケトン(例えばダイセル・エボニック株式会社の製品「1000G」)50.1重量%に、酸化亜鉛の多針状結晶粒体(例えば株式会社アムテックの製品「パナテトラ(登録商標)WZ−0501」)32.6重量%、及び無機充填剤として炭酸カルシウム(例えば白石工業株式会社の製品「ホワイトンP−10」)12.3重量%を混合して製作する。
【0018】
次に工程(B)において絶縁性基体1を脱脂洗浄した後に、工程(C)において、エッチング液によって、この絶縁性基体表面をエッチングする。エッチング液としては、例えば濃硫酸400gと無水クロム酸400g/リッターとの酸性水溶液を使用し、温度70℃にて10分間、絶縁性基体1を浸漬する。
【0019】
次に絶縁性基体1を中和洗浄した後、工程(D)において、絶縁性基体1の表面を、回路となる部分1aを残して、非回路部となる部分1bをマスキング2にて被覆する。マスキング2は、水溶性であって温水で容易に溶解する、オキシアルキレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂(例えば日本合成化学工業株式会社の商品「エコマティAX」)を射出して成形する。なおマスキング2として、耐酸性であってアルカリ水溶液に容易に加水分解する、ポリ乳酸(例えば三井化学株式会社製「レイシア#H-100J/F」)、あるいはポリグリコール酸(例えば株式会社クレハ製「#KSK08」)等を使用してもよい。
【0020】
次の工程(E)において、マスキング2で被覆された絶縁性基体1に触媒を付与して、無電解めっきを析出させるための核を形成する。この触媒の付与手順としては、例えば、錫、パラジウム系の混合触媒液に、絶縁性基体1を浸漬した後、塩酸、硫酸などの酸で活性化し、表面にパラジウムを析出させる。または、塩化第1錫等の比較的強い還元剤を表面に吸着させ、金などの貴金属イオンを含む触媒溶液に浸漬し、表面に金を析出させる。液の温度は15〜23℃で5分間浸漬すれば良い。
【0021】
次の工程(F)において、絶縁性基体1を被覆するマスキング2を除去する。マスキング2が、オキシアルキレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂の場合には、マスキング2で被覆された絶縁性基体1を、80℃の温水中に10分間程度浸漬して、このマスキングを湯中に溶出させる。またマスキング2が、ポリ乳酸やポリグリコール酸の場合には、濃度2〜15重量%、温度25〜70℃の苛性アルカリ(NaOH、KOHなど)水溶液中に、1〜120分程度浸漬して、マスキング2を除去する。
【0022】
最後の工程(G)において、絶縁性基体1の表面であって、マスキング2で被覆されていなかった回路となる部分1aに、無電解銅めっき層3を形成する。すなわち回路となる部分1aには、後述するように酸化亜鉛の多針状結晶粒体が除去された空洞が開口し、かつ触媒が付与されているため、無電解銅めっき層3が表面と空洞内に析出し、この絶縁性基体に強固に固着する。具体的には、マスキング2で被覆された絶縁性基体1を、酸性浴組成のめっき液、例えば金属塩として硫酸銅を5〜15g/L、還元剤としてホルマリンの37容量%の溶液を8〜12mL/L、錯化材としてロッシェル塩を20〜25g/L、そしてアルカリ剤として水酸化ナトリウムを5〜12g/L混合した温度20℃の溶液に浸漬して行なう。
【0023】
図2を参照しつつ、無電解銅めっき3に対する優れたアンカー効果を説明する。図2(A)は、上述した図1の工程(A)において射出成形した絶縁性基体1について、その表層の断面を示している。すなわち絶縁性基体1は、熱可塑性樹脂11に、酸化亜鉛の多針状結晶粒体12と微粒状の炭酸カルシム13とを混合したものであり、この酸化亜鉛の多針状結晶粒体の一部が、表面に突き出ている。したがって、このままの状態において電圧を印加すると、空気中の湿気によって、酸化亜鉛の多針状結晶粒体12の表面に突き出た部分がイオン化して、イオンマイグレーシンが発生し、回路間の短絡を招く恐れがある。
【0024】
図2(B)は、上述した図1の工程(C)においてエッチングした後の、絶縁性基体1の表層の断面を示している。すなわち酸化亜鉛の多針状結晶粒体12は、絶縁性基体1の表面から突き出た部分だけでなく、この絶縁性基体の表面内部の部分も溶解除去されて、四方に広がる空洞14が形成される。また酸化亜鉛の多針状結晶粒体12に接触する炭酸カルシム13も溶解除去されて、空洞14と連通する粒状空洞15が形成される。
【0025】
図2(B)は、上述した図1の工程(G)において無電解銅めっき層3を形成した、絶縁性基体1の表層の断面を示している。すなわち無電解銅めっき層3は、絶縁性基体1の表面部部分31だけでなく、酸化亜鉛の多針状結晶粒体12及び炭酸カルシム13が溶解除去された空洞14及び粒状空洞15の内部にも形成される。したがって無電解銅めっき層3は、絶縁性基体1の表層に強固に固着する。なお無電解銅めっき層3が形成されない非回路となる部分1bにおいては、絶縁性基体1の表層に混在する酸化亜鉛の多針状結晶粒体12、及び炭酸カルシム13は溶解除去されているため、イオンマイグレーシンの発生を防止することができる。
【0026】
無電解銅めっき3層は、上述した工程に限らず、他の工程で容易に成形することができる。例えば、図1における工程(D)(マスキング)と、工程工程(E)(触媒付与)とを入れ替えることも可能である。また工程(F)(マスキング除去)と、工程工程(G)(無電解銅めっき)とを入れ替えることも可能である。さらには、絶縁性基体1に、予め触媒を混入しておけば、図1における工程(E)(触媒付与)を省略することもできる。なおこの場合には、工程(F)(マスキング除去)と、工程工程(G)(無電解銅めっき)とを入れ替えることが必要である。
【0027】
また難めっき性の素材によって絶縁性基体1を形成し、この表面に、上述した熱可塑性樹脂11に酸化亜鉛の多針状結晶粒体12と炭酸カルシム13とを混合した材料によって、マスキング2を選択的に形成し、このマスキング2の表面に無電解銅めっき層3を形成することも可能である。さらには無電解銅めっき層3に重ねて、無電解ニッケル層や電解銅めっき層を積層することも容易にできる。
【実施例1】
【0028】
熱可塑性樹脂11として、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)(ダイセル・エボニック株式会社の製品「#1000G」)50.1質量部%に対し、酸化亜鉛の多針状結晶粒体として(株式会社アムテックの製品「♯パナテトラWZ-0501」)32.6重量部%、及び無機充填材炭酸カルシウム(CaCO3)(白石工業株式会社の製品「♯ホワイトンP-10」)12.3重量部%を配合した複合材を用いて絶縁性基体1を形成し、脱脂洗浄後に、化学エッチング剤として濃硫酸400g、無水クロム酸400g/リッターの水溶液中で、70℃/10分間エッチングを施し、この絶縁性基体の表層に混在する酸化亜鉛の多針状結晶粒体12、及び炭酸カルシウム13を完全除去し、上述した無電解銅めっき層3を形成して、非回路部1bの絶縁抵抗を測定した結果、10の10乗Ω以上であることが検証できた。無電解銅めっき層の3の密着強度は、ピール試験で2.0KN/mであった。
【実施例2】
【0029】
熱可塑性樹脂11として、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)(ダイセル・エボニック株式会社の製品「♯1000G」)62.8重量部%に対し、酸化亜鉛針状結晶粒体として(株式会社アムテックの製品「♯パナテトラWZ-0501」)37.2重量部%を配合した複合材を用いて絶縁性基体1を形成し、脱脂洗浄後、化学エッチング剤として濃硫酸400g、無水クロム酸400g/リッターの水溶液中で、70℃/10分間エッチングを施し、この絶縁性基体の表層に混在する酸化亜鉛の針状結晶粒体12を完全除去し、上述した無電解銅めっき層3を形成して、非回路部1bの絶縁抵抗を測定した結果、10の10乗Ω以上であることが検証できた。また無電解銅めっき層3の密着強度は、ピール試験で1.5KN/mであった。
【実施例3】
【0030】
熱可塑性樹脂11として、ポリフタルアミド(PPA)(株式会社クラレの製品「♯ジェネスタN1000 M42」)41.45重量部%に対し、酸化亜鉛の針状結晶粒体12として株式会社アムテックの製品「♯パナテトラWZ-0501」)38.55重量部%、及び無機充填材として炭酸カルシウム(CaCO3)(白石工業株式会社の製品「♯ホワイトンP-10」)20重量部%を配合した複合材を用いて絶縁性基体1を成形し、脱脂洗浄後、化学エッチング剤として濃硫酸400g、無水クロム酸400g/リッターの水溶液中で、50℃/5分間エッチングを施し、この絶縁性基体の表層に混在する酸化亜鉛の針状結晶粒体12を完全除去し、上述した無電解銅めっき層3を形成して、非回路部1bの絶縁抵抗を測定した結果、10の10乗Ω以上であることが検証できた。また無電解銅めっき層3の密着強度は、ピール試験で1.0KN/mであった。
【実施例4】
【0031】
熱可塑性樹脂11として、液晶ポリマー(LCP)(ポリプラスチックス株式会社の製品「ベクトラ♯C820」)40重量部%に対し、液晶ポリマー(LCP)(ポリプラスチックス株式会社の製品「ベクトラ♯A950」)40重量部%、及び酸化亜鉛の多針状結晶粒体12として株式会社アムテックの製品「♯パナテトラWZ-0501」)20重量部%を配合した複合材を用いて絶縁性基体1を成形し、脱脂洗浄後、化学エッチング剤として苛性ソーダ45重量%に溶解した、温度70℃のアルカリ性水溶液に、この絶縁性基体を50分間浸漬してエッチングを行い、この絶縁性基体の表層に混在する酸化亜鉛の多針状結晶粒体12、及びピロリン酸カルシウム(予め「ベクトラ♯C820」に添加されているもの)を完全除去し、公知のレーザーパターンニングによる回路形成を施し、非回路部1bの絶縁抵抗を測定した結果、10の10乗Ω以上であることが検証できた。また無電解銅めっき層3の密着強度は、ピール試験で1.0KN/mであった。
【実施例5】
【0032】
上述した実施事例1〜4の供試体に対して、エレクトロケミカルマイグレーション試験(試験規格JPCA-ET04-2007の温湿定常試験)を、温度85℃、相対湿度85%において行ったところ、いずれもマイグレーションの発生がなく、絶縁抵抗値も低下しないことが検証できた。
【産業上の利用可能性】
【0033】
イオンマイグレーシンの発生を防止して、非回路となる部分の絶縁性を確保すると共に、無電解めっきの密着性が極めて優れるため、電子機器等に関する産業に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 絶縁性基体
1a 回路となる部分
1b 非回路となる部分
2 マスキング
3 無電解銅めっき(無電解めっき)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性基体の表面に選択的に無電解めっき層を形成した成形回路部品であって、
上記絶縁性基体は、熱可塑性樹脂に酸化亜鉛の多針状結晶粒体からなる充填剤を混合したものであり、
上記無電解めっき層を形成する前に、上記絶縁性基体の表層に混在する上記充填剤がエッチング液によって除去されており、
上記絶縁性基体の表面において、非回路部の電気絶縁抵抗が少なくとも10E9Ωである
ことを特徴とする成形回路部品。
【請求項2】
上記充填剤の混合割合が、5〜45重量部%であることを特徴とする請求項1に記載の成形回路部品。
【請求項3】
上記絶縁性基体に、さらに上記エッチング液に溶解する他の無機充填剤を5〜20重量部%を混合してあることを特徴とする請求項1または2に記載の成形回路部品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−99157(P2011−99157A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256392(P2009−256392)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(000175504)三共化成株式会社 (28)
【Fターム(参考)】