説明

成形機の表示装置および表示方法

【課題】 実測成形データの時間と成形条件の変更履歴データの時間とを比較して、実測成形データとの関係において成形条件の変更履歴データが見やすくなる成形機の表示装置および表示方法を提供する。
【解決手段】 実測成形データ33の表示を行う成形機10の表示方法において、各成形の実測成形データ33と成形条件の変更履歴32をそれぞれ時間とともに記憶し、実測成形データ33の時間と成形条件の変更履歴データ32の時間を比較して実測成形データ33と成形条件の変更履歴データ32を時系列に沿って整列し、時系列に沿って整列された実測成形データ33と成形条件の変更履歴データ32を成形機10または成形機10外の表示部18に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形機の表示装置および表示方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形機を初めダイカスト成形機、プレス成形機、中空成形機、積層成形機などの成形機においては、記憶された成形条件に基づいて成形を行い、そして各成形において実測した成形データが記憶部に記憶される。そしてどの成形からどの成形までの間は、どの成形条件で行ったかが後で判別できるようになっている。
【0003】
また特に特許文献1においては、段落番号(0025)にも記載されるように、「設定変更表示エリア11−2においては、成形条件変更の有無を、稼働状況・異常発生表示エリア11−1に隣接させてしかも前記共通の時間軸に沿うような帯グラフにより表示するようにしており、特に成形条件変更の区別を色で表示するようにしている。図3においては、便宜上、斜線、網目等が色別の表示であることを示し、これらの色は、あらかじめ成形条件の種別に対応するように設定される。したがって、オペレータは色及び隣の色との境目を見ることでどのような成形条件の変更がいつ行われたかを知ることができる。」ようになっている。また(0023)、(図3)にも示されるように、「設定変更履歴データにより時刻に応じた設定変更を設定変更表示エリア11−2に表示させ、異常発生履歴データにより時刻に応じた異常発生を稼働状況・異常発生表示エリア11−1に表示させる。演算処理部13はさらに、ショット数データに基づいて稼働状況・異常発生表示エリア11−1に生産達成率を表示させる。」ようになっている。
【0004】
従って特許文献1では、異常が発生した際の稼働状況がどのような状態であったかが判るようになっている。しかし特許文献1では、どのショットとどのショットの間にどの成形条件の項目を変更したか、変更した項目のみの変更履歴を簡単には見ることができない。従ってどの項目の成形条件を変更したかについては、両方の成形条件をプリントアウトするか、画面に並列表示して、多数ある項目の中でどの項目が変更になっているかを探す必要がある。このような作業は、急いで成形条件を元に条件に戻したりして修正したい作業者にとっては、時間のロスやストレスになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−230901(0023)、(0025)、(図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明では、実測成形データの時間と成形条件の変更履歴データの時間とを比較して、実測成形データとの関係において成形条件の変更履歴データが見やすくなる成形機の表示装置および表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載の成形機の表示装置は、実測成形データを表示する成形機の表示装置において、各成形の実測成形データを時間とともに記憶する実測成形データ記憶部と、
成形条件の変更履歴を時間とともに記憶する成形条件の変更履歴データ記憶部と、実測成形データの時間と成形条件の変更履歴データの時間を比較して実測成形データと成形条件の変更履歴データを時系列に沿って整列するデータ整列部と、実測成形データと成形条件の変更履歴データを関連付けて表示する表示部とが成形機または成形機外に設けられたことを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項2に記載の成形機の表示装置は、請求項1において、いずれかの実測成形データが一定以上乖離した際に異常値であると判断する異常判断部と、異常値であると判断された実測成形データの時間と成形条件の変更履歴データの時間を比較して、異常値であると判断された実測成形データを含む実測成形データと成形条件の変更履歴データを時系列に沿って整列するデータ整列部とが設けられたことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項3に記載の成形機の表示方法は、実測成形データの表示を行う成形機の表示方法において、各成形の実測成形データを時間と成形条件の変更履歴とをそれぞれ時間とともに記憶し、実測成形データの時間と成形条件の変更履歴データの時間を比較して実測成形データと成形条件の変更履歴データを時系列に沿って整列し、実測成形データと成形条件の変更履歴データを関連付けて成形機または成形機外の表示部に表示することを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項4に記載の成形機の表示方法は、請求項3において、各成形の実測成形データを表示部にグラフとして表示するとともに、前記グラフと同一の表示部に実測成形データと成形条件の変更履歴データを関連付けて一覧表として表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の成形機の表示方法は、実測成形データの表示を行う成形機の表示方法において、成形の実測成形データを時間と成形条件の変更履歴とをそれぞれ時間とともに記憶し、実測成形データの時間と成形条件の変更履歴データの時間を比較して実測成形データと成形条件の変更履歴データを時系列に沿って整列し、時系列に沿って整列された実測成形データと成形条件の変更履歴データを成形機または成形機外の表示部に表示するので、実測成形データとの関係において成形条件の変更履歴データが見やすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態の射出成形機の表示装置における制御装置のブロック図である。
【図2】本実施形態の射出成形機の表示装置に示された一覧表である。
【図3】本実施形態の射出成形機の表示装置に示されたグラフである。
【図4】別の実施形態であって射出成形機の制御装置と成形機外部の制御装置を接続した例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態の射出成形機10の実測データを表示する表示装置11について図1により説明する。成形機の一種である射出成形機10はベッド13上に射出装置14と型締装置15が配置されている。射出装置14と型締装置15はいずれも、駆動用のアクチュエータ16と測定用のセンサ17を備えている。電動式射出成形機においては、サーボモータ等のアクチュエータとロータリエンコーダやロードセル、温度センサ等のセンサを備え、油圧式射出成形機においては、各種バルブやポンプによって作動される油圧シリンダからなるアクチュエータと、油圧センサや位置センサ、温度センサ等からなるセンサを備えている。そして型締装置15の固定盤の操作側には、設定や表示を行う表示部18が取付けられている。本実施形態では表示装置11の表示部18はタッチパネルからなり設定部19を兼ねている。しかし設定部19はテンキー等からなり表示部18と別に設けられたものや、表示部18と一部の機能が重複したものでもよい。
【0014】
次に図1に示される本実施形態の表示装置11における制御装置12とそのブロック図について説明する。ベッド13の下方には射出成形機10を制御するとともに表示装置11の表示を制御する制御装置12が配設されている。制御装置12は、演算部20と記憶部21等からなっている。図1において制御装置12は、本発明の表示装置11に関連する部分のみを機能的に記載しているが、その他にも射出成形機10のシーケンス制御等を行うための多数の機能を有している。制御装置12は、表示部18および設定部19と接続されている。また制御装置12は、前記のアクチュータ16やセンサ17と接続されている。そして射出成形機10は、制御装置12からの指令信号によってアクチュエータ16が作動されるようになっている。また表示部18が設けられた盤、制御装置12、またはベッド13の側方等のいずれかには、外部メモリ等の記録媒体を接続したり、図4に示される成形機外部のパーソナルコンピュータ41や上位の制御装置であるPLCへ通信するための信号線に接続する端子が設けられている。なお本発明は、前記端子を介して信号線により信号を通信するものに代わって無線により通信を行うものでもよい。
【0015】
制御装置12の入力部22は、射出成形機10側の実測値を測定するセンサ17と設定部19に接続されている。また入力部22は、記憶部21のうちの各成形の実測成形データ33を時間とともに記憶する実測成形データ記憶部23と、成形条件の変更履歴データ32を時間とともに記憶する成形条件の変更履歴データ記憶部24に接続されている。従って制御装置12はタイマの機能も有しており、データの記録時間(変更時間)が記憶される。また実測成形データ記憶部23は、演算部20のうちの異常判断部25に接続されている。異常判断部25は、実測成形データ33が一定以上乖離した際に異常値であると判断する。変更履歴データ記憶部24と異常判断部25は、データ整列部26に接続されている。データ整列部26は、実測成形データ33の時間と成形条件の変更履歴データ32の時間を比較して実測成形データと成形条件の変更履歴データを時系列に沿って整列する。そしてまた実測成形データ記憶部23と変更履歴データ記憶部24とデータ整列部26はそれぞれ出力部27にも接続され、出力部27を介して表示部18やアクチュエータ16に接続されている。表示部18は、実測成形データ33と成形条件の変更履歴データ32を関連付けて表示する。
【0016】
次に本発明の表示装置11における成形条件の設定および成形条件の変更、成形条件の変更履歴データ32の記憶、実測成形データ33の記憶について説明する。まず最初に設定部19から成形条件を入力する。入力された成形条件は、成形機を作動させるための成形条件として記憶部21に記憶される。そして成形条件を設定した履歴は、設定された時間とともに変更履歴データ記憶部24に記録される。なお成形条件は、外部メモリ等を制御装置12に直接または間接に接続することにより入力されたものでもよい。
【0017】
そして射出成形機10を前記成形条件により成形を行う。成形条件を決定する際は手動、半自動、自動の順に行われることが一般的であるが、特定の金型で成形条件が予め判明している場合、手動または半自動の工程を省略してもよい。射出成形機10の成形中は、各センサ17により検出された実測成形データ33は入力部22から制御装置12の記憶部21に入力され、実測成形データ記憶部23に記憶される。各センサ17による成形条件の監視項目は、射出装置14側においては、射出開始位置、射出速度、射出圧力、ピーク射出圧、充填時間、保圧切換位置、射出完了位置、計量完了位置、加熱筒温度などである。また型締装置15における監視項目は、型開閉速度、型閉位置、型締完了位置、型締力(型締圧力)などである。また圧縮成形を行う場合は、型締装置側において更に複数の監視項目を設定することも行われる。
【0018】
本実施形態では、実測成形データ33の時間は、直接センサ17が測定した時間ではなく、測定した成形サイクルが完了し次の成形サイクルが開始される時間が、実測成形データ記憶部23にサンプリング時間として記憶される。従って1成形サイクル(1ショット)において、射出速度、保圧切換位置、加熱筒温度、型閉完了位置等の監視項目を測定した時間はそれぞれ異なっていても、成形サイクルごと(ショット番号ごと)に一つの同じ実測成形データ33の時間として処理され、記憶される。
【0019】
そして途中で成形条件を変更した場合については、入力部22を介して、変更した履歴が時間とともに変更履歴データ記憶部24に記憶され、その時点から変更された成形条件で成形が行われる。従って本実施形態では、成形条件を変更履歴データ32は、成形条件の設定を変更した変更時間(確定ボタンが押された時間)がそのまま成形条件の変更履歴の時間として処理され、記憶される。
【0020】
そして前記監視項目の実測成形データ33と成形条件の変更履歴データ32は、出力部27を介して表示装置11の表示部18に図2に示されるように一覧表31として表示される。また実測成形データは、図3に示されるようにグラフ28としても表示される。本実施形態では、作業者が見て作業しやすいように、グラフ28と一覧表31は、同じ表示部18の画面上に表示される。グラフ28については、センサ17により測定された個別の項目毎に波形29により描画される。そして波形のうちでデータが突出した部分が異常値30であると認識できる。なおグラフ28における波形29は、通常は一つの画面に、一つの項目の波形29(図3においては射出充填時間)が描画されるが、二つ以上の項目を同じグラフ28に描画したものでもよい。
【0021】
一覧表31には、実測成形データ33がショット番号34やその保存された時間データ35とともに表示される。なお本実施形態で一覧表31は主要な項目の実測成形データ33を複数表示しているが、単一の実測成形データ33または作業者が選んだ実測成形データ33を一覧表示してもよい。そして実測成形データ33は、対応する成形金型を取付けてからの全ての実測成形データ33か、設定したショット区間の実測成形データ33が表示される。ショット区間を設定する場合は、作業員が設定した時間内(○時○分○秒〜○時○分○秒、または○月○日)か、または設定したショット内(○番目のショット〜○番目のショット)の実測成形データ33が表示部18に表示される。また本実施形態では一覧表31には実測成形データ33の表示と共に、対応する時間内またはショット内に行われた成形条件の変更履歴データ32がすべて表示される。この際にデータ整列部26において、実測成形データ33の時間(記録された時間)と、成形条件の変更履歴データ32の時間(記録された時間)が比較され、実測成形データ33の時間と、成形条件の変更履歴データ32の時間が時系列に沿って整列される。そして出力部27介して表示部18の一覧表31に、時間順に並んだ実測成形データ33の間に成形条件の変更履歴データ32が割り込む形で関連付けて表示される。(または表計算ソフトであるエクセル(登録商標)を使用した場合は、直近の実測成形データ33の時間と、成形条件の変更履歴データ32の時間は同列に表示される場合もある。)
【0022】
そのため、作業者は、成形条件全体でなく、成形条件のどの設定項目が、どのタイミングでどのように変更されたかを容易に把握することができる。そして従来では前後の成形条件全体同士を突き合わせてどの部分が変更になったかを調べていた時間が省略できる。本実施形態では図2に示されるように成形条件の変更履歴データ32は、一覧表31の実測成形データ33の部分の欄外(例えば右側)表示されている。具体的には保存された時間データ36が9:54:58である成形条件の変更履歴データ32において、変更前のデータ37である射出圧力18.6MPaと、変更後のデータ38である12.2MPaが変更履歴として表示される。成形条件の変更履歴データ32は実測成形データ33と色を変更したり文字のフォントを変更して識別力を高めるようにしてもよい。
【0023】
なお、成形条件の変更履歴データ32の表示の仕方は、上記に限らず、実測成形データ33の部分と縦方向に重なって時系列順に関連付けて表示されるものでもよい。または実測成形データ33と変更履歴データ32は、並列してそれぞれ別の表を構成するようにしてもよい。その場合、実測成形データ33の表のどの部分に変更履歴データ32が挿入あるいは該当するかが関連付けて表示される。従って時系列に沿った処理とは、完全に時系列に整列されて表示されたもの以外に、作業者が同一画面上で、変更履歴データ32の時間と実測成形データ33の時間の関係が判るように関連付けて表示されたものを含む。また一覧表の時間軸は、縦方向ではなく横方向に設けられたものあってもよいことは言うまでもない。更には特定の項目の変更履歴データ32(例えば射出充填時間の変更履歴データ)に対して、射出充填時間の実測成形データ33のみを関連付けて表示するものでもよい。更にまた、特定の項目の変更履歴データ32に対して、その変更前と変更後の実測成形データ33のそれぞれの平均値を関連付けて示すものでもよい。従って本発明において実測成形データ33とは、単独の実測データのみならず、実測成形データ33を元にして加工された平均値などのデータも含まれる。
【0024】
上記したのは、実測成形データ33に対して成形条件の変更履歴データ32の変更された項目部分のみを時系列に沿って整列して一覧表31に表示するとともに、グラフ28には実測成形データ33のみを波形により表示する方法である。しかし本発明としてはグラフ28にショット番号を記載した欄39などにも成形条件の変更履歴データ32を関連付けて表示するようにしてもよい。また本発明は、表示装置11の表示部18にグラフ28または一覧表31のいずれか一方を表示するものでもよい。
【0025】
次に、射出成形機10のセンサ17による検出値に異常値30が検出された際に、異常値30を成形条件の変更履歴データ32と関連づけて一覧表31に表示する場合について説明する。本実施形態において異常の判断方法は、実測成形データ記憶部23から異常判断部25へ記憶された複数の実測成形データ33を送り、異常判断部25において演算処理して標準偏差を求め、一定以上の偏差を有する実測成形データ33を異常と判断している。しかし他の演算方法を用いたものであってもよく、予め作業員が異常の範囲を設定入力したものでもよい。
【0026】
そして前記異常値30であると判断された実測成形データ33は、他の実測成形データ33と同様に時系列順に並べられ、データ整列部26において成形条件の変更履歴データ32の変更時間と比較され、成形条件の変更履歴データ32を挿入する形、または図2のように並列する形で、一覧表31に関連付けて表示部18に表示される。なお一覧表31において、異常値30の含まれるショット番号の実測成形データ33にはアンダーラインが入れられて他の実測成形データ33とは区別可能としてもよい。また異常値30として表示された実測成形データ33の表示は、下地や文字の色や線の太さ、字体等を変えて表示してもよく、異常項目のみを識別力を高めて表示するようにしてもよい。
【0027】
そして異常値30として表示された実測成形データ33の直前に変更された成形条件の変更履歴データ32(時間データ36=9:54:58、射出圧力18.8MPa→12.2MPa)や、その直後に変更された成形条件の変更履歴データ32(時間データ36=9:57:22、射出圧力12.2MPa→16.6MPa)も一覧表31の右側部分に、同じ段や一段下に表示される。このような表示を行うことにより、異常値30が出た実測成形データ33の前や後に、どのような項目の成形条件を変更したかを作業者は容易に把握することができる。そして作業者による使用方法としては、例えば異常値30が増えてきたとき(その結果として不良品が増えてきたとき)は、最初に異常値30が出たときの直前の成形条件の変更履歴データ32のうちの変更前のデータ37を見て、それ変更前の成形条件に速やかに戻すことも容易である。またある異常値30から成形条件を変更して異常が出なくなった場合についても、異常値30が出た直後の成形条件の変更履歴データ32の変更後のデータ38を見て、異常が出なくなった原因を探ることができる。または他の成形条件との相関関係を把握することもできる。そして成形品については、成形終了後に数時間から数日以内に反りなどの形状変化が現れたりする場合がある。また部品として使用された後に強度不足等の問題点が発覚する場合もある。更には気温変動によっても成形品に差異が発生したりする。本発明では、こうした成形完了後、すぐに現れない成形不良や成形傾向や、同じ成形条件を続けていても発生する成形不良や成形傾向の変化に対して、成形時の成形条件変更履歴を知ることができ、トレーサビリティの観点からの品質管理に有効であり、対応策を立案するために役立てることができる。
【0028】
上記の実施形態においては成形数が一定以上進行した状態で、実測成形データ記憶部23等に記憶された複数のデータにより一覧表31やグラフ28等の表示をする例で説明した。その方が標準偏差を用いて異常値30を把握しやすい。しかし一覧表31やグラフ28の表示は、成形と並行して行うようにしてもよい。その場合、最初から異常値30の範囲を決めておいてもよく、後から演算により異常値30を求めることも可能である。また一定ショット分しか記憶せずに新しい実測成形データ33を保存する毎に過去の実測成形データ33を消去するものでもよい。更には本実施形態では一覧表31において成形条件の変更履歴データ32と異常値30を表示したが、グラフ28の波形29の異常値30の部分に隣接、或いは関連付けて成形条件の変更履歴データ32のみを表示するようにしてもよい。またグラフ28における異常値30の部分は波形29からでも判別可能だが、更に横軸のショット番号を記載した欄39または時間を表した欄に対して、異常値30の部分が明確に判るように縦線等を挿入するなどして異常値30の識別力を高めるようにしてもよい。
【0029】
なお上記の実施形態においては、正常な実測成形データ33と異常値30が出た実測成形データ33の両方を表示部18に一覧表31として表示しているが、異常値30が出た実測成形データ33のみと成形条件の変更履歴データ32のみを一覧表31にしてもよい。または異常値30の出た実測成形データ33とその前後の所定範囲の正常な実測成形データ33と成形条件の変更履歴データ32のみを一覧表31および/またはグラフ28に表示してもよい。
【0030】
次に実測成形データ33の時間や成形条件の変更履歴データ32の時間の記憶処理について他の実施形態について説明する。上記の本実施形態では、或る成形サイクル分(1ショット分)の実測成形データ33は、成形の進行とともにサンプリングされ、次の成形サイクルの開始時間をその時間(記憶時間)として一括して記憶される。しかし或る成形サイクル分の実測成形データ33の時間は、全てその成形サイクル開始時の時間として処理し記憶するようにしてもよい。また各々の実測成形データ33の時間は、実際のセンサ17による測定時間をそのまま実測データ記憶部23に記憶するようにしてもよい。従って実測成形データ33の時間は、一つの方法から導き出された時間に限定されない。
【0031】
また成形条件の変更履歴データ32の時間については、上記の実施形態では変更された時間がそのまま記憶処理される。しかし成形条件の変更がその成形サイクル(1ショット分)の成形に反映されず、次の成形サイクルの成形から反映される場合は、作業者が変更のために入力した時間が変更履歴の時間ではなく、次のショット開始時であって前回の実測成形データ33が記憶された時間よりも後の時間が、成形条件の変更履歴データ32の変更時間として成形条件の変更履歴データ記憶部24に記憶される。具体的には成形サイクルA1の型閉途中で射出充填に関する成形条件を変更した場合に、成形サイクルA1で射出充填に関する成形条件が変更されずに次の成形サイクルA2から射出充填に関する成形条件が変わる設定となっている場合は、次のサイクルA2の開始時が成形条件の変更履歴データ32の変更時間として記憶される。従って成形条件の変更履歴データ32の時間は、一つの方法から導き出された時間に限定されない。
【0032】
更に上記の本実施形態のように成形条件の変更が即、変更履歴の時間として記憶されるとともにその成形サイクルの成形にもすぐに反映されるが、その成形サイクル分(1ショット分)の実測成形データ33の記憶時間は次のショットの開始時間として一括処理して記憶するような処理を行う際は、次のような特例的な処理をするようにしてもよい。即ち1成形サイクルの中で、項目aの成形工程が終了してから、項目aに最も関連のある成形条件を変更した場合、上記の本実施形態では、成形条件の変更履歴データ32→実測成形データ33の順に並んで整列されることになる。そのため一覧表31では成形条件の変更が反映されていない実測成形データ33が、成形条件の変更履歴データ32の後ろに整列されることになる。そこでその成形条件の変更履歴の項目と、最も影響を受ける成形時の項目を関連づけ、1成形サイクル内でその成形時の項目が完了してから、同じ項目の成形条件を変更した場合は、変更履歴データ32の記憶時間をその成形サイクルの実測成形データ33の記憶時間の後に整列されるように処理するようにしてもよい。なおこのような処理は必須のものではない。本発明の基本は、実測成形データ33の時間と成形条件の変更履歴データ32の時間を比較して実測成形データ33と成形条件の変更履歴データ32を時系列に沿って整列するものであるが、同様の目的および技術思想で時系列に沿って実測成形データ33と成形条件の変更履歴データ32を整列するものは当然含まれる。
【0033】
次に図4により上記の一覧表31やグラフ28の表示が成形機外部のパーソナルコンピュータ41等の表示装置11の表示部18により行われる別の実施形態について説明する。図1に示される実施形態においてはこれらの演算および表示が射出成形機10の表示装置11と部の制御装置12と射出成形機10に取付けられる表示部18において行われる例について記載した。しかし本発明は、射出成形機10の制御装置12に通信線42または無線により接続、或いは外部メモリを接続してデータを転送させた成形機外部に設けたパーソナルコンピュータ41やPLCを用いて実施するものでもよい。パーソナルコンピュータ41を用いる場合は、言うまでもなく、パーソナルコンピュータ41自体が表示部18と設定部19と制御装置43を備えている。また必要に応じて図示しないプリンタに接続される。
【0034】
パーソナルコンピュータ41を使用し、市販のエクセル(登録商標)などの表計算ソフトを使用し、マクロ処理することにより、実測成形データ33の時間と成形条件の変更履歴データ32の変更時間を同一シート上で時間軸をメインに並べ替え処理して整列することができる。またエクセル(登録商標)を使用した場合は、実測成形データ33からの図3に示されるような波形29を有するグラフ28の表示が、特別のソフトを使用しないでも作成でき、グラフ28により異常値30の部分が容易に判別できるようにできるので好適である。また図2に示されるような時間を時系列に沿って並べた一覧表31も特別のソフトを使用しないでも作成できる。そしてそれらのグラフ28と一覧表31は、パーソナルコンピュータ41の表示部18に並列して表示される。
【0035】
なおパーソナルコンピュータ41を使用する場合、実測成形データ33や成形条件の変更履歴データ32は、射出成形機10の制御装置12、パーソナルコンピュータ41の制御装置43、外部メモリのいずれの側にあるものでもよい。また演算処理についても前記制御措置12と制御装置43で適宜に分担処理するものでもよい。更にデータの表示についても、一例として射出成形機10の表示部18には、実測成形データ33や現在の各成形条件を表示させ、パーソナルコンピュータの表示部18の側では成形条件の変更履歴データ32のみを前記実測成形データ33と関連付けて表示させ、両方の表示部18を作業者が容易に見比べできるようにするなど、適宜に分担処理するものでもよい。(従って図1の制御装置12のブロック図の機能がパーソナルコンピュータ41の内部にあるものが含まれる。)そしてパーソナルピュータ41を使用する場合は、パーソナルコンピュータ41の表示部18を見ながら射出成形機10の表示部18(設定部19)の側で成形条件を修正してもよい。従ってパーソナルコンピュータは持ち運び可能なノート型がより好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明に利用される成形機は、射出成形機を初めダイカスト成形機、プレス成形機、中空成形機、積層成形機など各種の成形機にも応用することができる。また成形材料についても限定されない。
【符号の説明】
【0037】
10 射出成形機
11 表示装置
12 制御装置
14 射出装置
15 型締装置
16 アクチュエータ
17 センサ
18 表示部
19 設定部
20 演算部
21 記憶部
23 実測成形データ記憶部
24 変更履歴データ記憶部
25 異常判断部
26 データ整列部
28 グラフ
30 異常値
31 一覧表
32 変更履歴データ
33 実測成形データ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
実測成形データを表示する成形機の表示装置において、
各成形の実測成形データを時間とともに記憶する実測成形データ記憶部と、
成形条件の変更履歴を時間とともに記憶する成形条件の変更履歴データ記憶部と、
実測成形データの時間と成形条件の変更履歴データの時間を比較して実測成形データと成形条件の変更履歴データを時系列に沿って整列するデータ整列部と、
実測成形データと成形条件の変更履歴データを関連付けて表示する表示部とが成形機または成形機外に設けられたことを特徴とする成形機の表示装置。
【請求項2】
いずれかの実測成形データが一定以上乖離した際に異常値であると判断する異常判断部と、
異常値であると判断された実測成形データの時間と成形条件の変更履歴データの時間を比較して、異常値であると判断された実測成形データを含む実測成形データと成形条件の変更履歴データを時系列に沿って整列するデータ整列部とが設けられたことを特徴とする請求項1に記載の成形機の表示装置。
【請求項3】
実測成形データの表示を行う成形機の表示方法において、
成形の実測成形データを時間と成形条件の変更履歴とをそれぞれ時間とともに記憶し、
実測成形データの時間と成形条件の変更履歴データの時間を比較して実測成形データと成形条件の変更履歴データを時系列に沿って整列し、
実測成形データと成形条件の変更履歴データを関連付けて成形機または成形機外の表示部に表示することを特徴とする成形機の表示方法。
【請求項4】
各成形の実測成形データを表示部にグラフとして表示するとともに、
前記グラフと同一の表示部に実測成形データと成形条件の変更履歴データを関連付けて一覧表として表示することを特徴とする請求項3に記載の成形機の表示方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−43336(P2013−43336A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181940(P2011−181940)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000155159)株式会社名機製作所 (255)
【Fターム(参考)】