説明

成形用金型

【課題】 小型・軽量で低コストな成形用金型を提供する。
【解決手段】 可動型2は、可動中子6と、可動中子6と嵌合する嵌合凹部5bを有する可動母型5と、可動中子6及び可動母型5の間において、可動中子6に対し押出しガイド棒12を介して押出し方向に前後移動可能に取り付けられ、前後移動に伴い可動中子6から成形体を取り出す押出し板11とを備える。可動母型5は、押出し板11を収納するスペースSと、押出し板11に連結され押出し板11を押出し方向に前後移動させる外部からの動力を伝達する連結棒15が挿通される貫通穴5fとを一体的に有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカストを初めとする各種鋳造や樹脂成形などにおける成形用金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、成形用金型として、例えば図6に示される構成のものが知られている。この成形用金型は、射出部を持ち移動することのない固定型81と、型の開閉動作のため移動する可動型82とを備えている。そして、可動型82は、成形体の形状を成形する可動中子83、可動中子83を保持する可動母型84、成形体のアンダーカット部を成形する移動中子85、移動中子85を保持するスライドホルダ86などからなるスライド機構部と、溶融金属あるいは樹脂を冷却固化させたり金型を冷却したりするために可動中子83に形成された冷却穴87aや冷却配管87bなどからなる冷却機構部と、成形体を金型から取り出すための押出し板88、押出しピン89、押出しガイド棒90、押出し量を制限し冷却部材(冷却配管87b)などを保護するための押出し板前進限ストッパー91、押出し後退位置を決めるための押出し板後退限ストッパー92、押出しピン89(押出し板88)を確実に押出し後退位置まで戻すためのリターンピン93などからなる押出し機構部と、押出し板88や冷却部材などの収納スペースを確保するダイベース94とから構成されている。このような成形用金型は、例えば特許文献1にも開示されている。
【0003】
近年、金型コスト低減、金型維持コスト低減、製品の品質向上や生産性向上等を図った新たな構成を有する金型や付加装置が公開されてもいるが、構造の複雑化や機能の付加を除けば、基本的に上記構成と大幅に異なるものではない。
【特許文献1】特開平11−047904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、成形用金型は、高圧、高速で溶融金属あるいは溶融樹脂が射出されるため、あるいは成形体が金型に喰い付く力に打ち勝ってこれを金型から引き離すため、各機能の実現のために相当な力を必要とし、且つ、これに耐えうるだけの剛性を必要とする。従って、金型は、重量が数t(トン)から数十tと大型であり、コストも膨大なものとなっている。
【0005】
本発明の目的は、小型・軽量で低コストな成形用金型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、可動中子と、前記可動中子と嵌合する嵌合部を有する可動母型と、前記可動中子及び前記可動母型の間において、該可動中子に対しガイド棒を介して一側方向に前後移動可能に取り付けられ、該前後移動に伴い前記可動中子から成形体を取り出す押出し板とを備え、前記可動母型は、前記押出し板を収納するスペースと、前記押出し板に連結され該押出し板を一側方向に前後移動させる外部からの動力を伝達する動力伝達棒が挿通される貫通穴とを一体的に有することを要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の成形用金型において、前記押出し板は、前記可動中子の対向端面に当接することで前進移動が規制され、前記可動母型の対向端面に当接することで後退移動が規制されることを要旨とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の成形用金型において、前記可動中子を冷却する冷却水の流路が形成された冷却分配板を備え、前記可動母型は、前記可動中子と挟み込む態様で前記冷却分配板と嵌合する分配板嵌合部を有することを要旨とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の成形用金型において、前記押出し板は、前記冷却分配板の対向端面に当接することで前進移動が規制され、前記可動母型の対向端面に当接することで後退移動が規制されることを要旨とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の成形用金型において、前記可動母型は、前記可動中子の反対側の端面から凹設されて動力伝達板を一側方向に前後移動可能に収容する収容凹部を備え、前記動力伝達棒には、前記動力伝達板を介して前記押出し板を一側方向に前後移動させる外部からの動力が伝達されることを要旨とする。
【0011】
(作用)
請求項1に記載の発明によれば、前記押出し板は、前記可動中子及び前記可動母型の間に配置され、該可動母型に該押出し板を収納するスペースを設けた。そして、前記押出し板を一側方向に前後移動させる外部からの動力を伝達する動力伝達棒は、前記可動母型に設けた貫通穴に挿通されて該押出し板に連結される。従って、例えば前記押出し板を収納するスペース等を可動母型の裏面側に設ける必要がなく、該スペースの確保のためにダイベースを設けたりする必要もないことから、成形用金型は全体として小型・軽量化されてコストも低減される。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、例えば前記押出し板の押出し量を制限するための前進移動の規制や、後退位置を決めるための後退移動の規制が、前記可動中子若しくは前記可動母型の対向端面との当接によって実現される。従って、これらの規制のためのストッパー部材などを前記可動母型のスペースに別途設ける必要がなく、その分、前記可動母型が小型化される。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、前記冷却分配板は、前記分配板嵌合部と嵌合して前記可動中子及び前記可動母型の間に挟み込まれる態様で配置される。従って、例えば前記冷却分配板を収納するスペースを可動母型の裏面側に設ける必要がないことから、成形用金型は全体として更に小型・軽量化されてコストも低減される。また、前記冷却分配板は、冷却対象である前記可動中子に当接して配置されることから、金型内での冷却回路も全体としてコンパクトにまとめられる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、例えば前記押出し板の押出し量を制限するための前進移動の規制や、後退位置を決めるための後退移動の規制が、前記冷却分配板若しくは前記可動母型の対向端面との当接によって実現される。従って、これらの規制のためのストッパー部材などを前記可動母型のスペースに別途設ける必要がなく、その分、前記可動母型が小型化される。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、例えば動力源側(外部)の既存の動力伝達部材が、金型の形状の制約などで前記押出し板を一側方向に前後移動させる動力をバランスよく伝達し得ない場合であっても、当該動力を前記動力伝達板で一旦受け、これを介して力点の位置を変換させることでバランスよく伝達し得る。
【発明の効果】
【0016】
以上詳述したように、請求項1乃至5に記載の発明では、小型・軽量で低コストな成形用金型を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態について図面に従って説明する。
図1は、本発明が適用される金型を示す断面図である。なお、図1の左右方向が型開閉の方向に相当する。図1に示されるように、本実施形態の金型は、射出部を有する固定型1と、可動型2とを備えている。固定型1は、固定母型3及び固定中子4を備えている。一方、可動型2は、可動母型5、可動中子6、スライドホルダ7及び移動中子8を備えている。そして、可動型2は、押出し板11、ガイド棒としての押出しガイド棒12、押出しピン13、リターンピン14などからなる押出し機構部を備えている。
【0018】
前記固定母型3は成形機の固定プラテンに保持されており、略直方体の形状を有している。そして、固定母型3の可動型2側の端面の四隅には、同可動型2側に突出する位置決めピン3aがそれぞれ設けられている。これら位置決めピン3aは、前記可動型2の型開閉時の位置決めのためのものである。
【0019】
また、前記固定母型3には、固定中子4の外形に応じた内壁面を有して可動型2側の端面から凹設された中子嵌合凹部3bが形成されている。前記固定中子4は、上記中子嵌合凹部3bの開口側から組み付けられこれと嵌合することで固定母型3に保持されている。この固定中子4は、成形体の外形に応じたキャビティ型面4aを有している。さらに、前記固定母型3には、前記スライドホルダ7と嵌合するホルダ嵌合凹部3cが形成されている。
【0020】
前記可動母型5は成形機の可動プラテンに保持されており、略直方体の形状を有している。そして、可動母型5の固定型1(固定母型3)側の端面の四隅には、前記位置決めピン3aの軸線に沿って穿設された位置決め孔5aがそれぞれ設けられている(図4参照)。可動型2(可動母型5)は、その型開閉時にこれら位置決め孔5aに前記位置決めピン3aが挿入されることで位置決めされる。
【0021】
また、前記可動母型5には、可動中子6の外形に応じた内壁面を有して固定型1側の端面から凹設された嵌合部としての嵌合凹部5bが形成されている。この嵌合凹部5bは、型閉鎖時にその開口が前記中子嵌合凹部3bの開口と一致するように形成されている。前記可動中子6は、上記嵌合凹部5bの開口側から組み付けられこれと嵌合することで可動母型5に保持されている。この可動中子6は、成形体の外形に応じたキャビティ型面6aを有している。
【0022】
さらに、前記可動母型5には、前記嵌合凹部5bの一側(図1の上側)において型開閉方向と直交する方向(図1の上下方向)に連通するスライド溝5hが形成されている。そして、このスライド溝5hには、前記スライドホルダ7が可動中子6に当接するまでの範囲で移動可能に装着されている。前記移動中子8は、このスライドホルダ7に保持されており、成形体のアンダーカット部を成形する。
【0023】
なお、上記スライドホルダ7には、前記ホルダ嵌合凹部3cと嵌合する嵌合突部7aが形成されている。これにより、上記スライドホルダ7は、型締め時に移動中子8とともに固定母型3及び可動母型5間に堅固に保持される。
【0024】
さらにまた、前記可動母型5には、上記嵌合凹部5bよりも縮幅されて更にその底面から凹設された押出し板収納凹部5cが形成されている。可動母型5は、この押出し板収納凹部5cにより、上記可動中子6によって閉塞されるスペースSを形成している。このスペースSには、前記押出し板11が型開閉の方向(押出し方向)に前後移動可能に取り付けられている。
【0025】
詳述すると、上記可動母型5は、この押出し板収納凹部5cの底面中央から突設されて前記可動中子6の対向端面(裏面)に当接する突壁部5dを有している。この突壁部5dは、型締め時に前記可動中子6を支える支柱としての機能を有している。そして、前記押出し板11は、上記突壁部5dにその中央部が貫通される態様でスペースSに収容されている。また、前記押出しガイド棒12は、その軸線が押出し方向に伸びるように上記スペースS内において一端及び他端がそれぞれ押出し板収納凹部5cの底面及び可動中子6の裏面に支持されている。なお、上記押出しガイド棒12は、図1の上側で1本、同下側で2本が配設されている(図4参照)。
【0026】
上記押出し板11は、これら押出しガイド棒12が挿通されるガイド孔を有しており、同押出しガイド棒12を介して位置決めされて可動中子6に対しその裏面側で押出し方向に前後摺動可能に取り付けられている。この押出し板11の前後摺動は、それぞれ可動中子6の対向端面(裏面)及び押出し板収納凹部5cの対向端面(底面)に当接するまでの範囲に設定されている。
【0027】
前記押出しピン13は、その軸線が押出し方向に伸びるように前記押出し板11に支持されている。すなわち、前記押出し板11は、押出し方向に積層されたフロントプレート11a及びリヤプレート11bを有し、前記押出しピン13はその基端側のフランジがこれらフロントプレート11a及びリヤプレート11bにより挟持されている。そして、上記押出しピン13は、フロントプレート11a及び可動中子6を貫通してその先端をキャビティ型面6aに突出し得るように設けられている。従って、成形体の成形後の型を開いた状態では、前記押出し板11の前進により押出しピン13の先端がキャビティ型面6aから突出することで可動中子6から成形体が取り出される。このとき、押出し板11と可動中子6との当接によって同押出し板11の前進が規制され、押出しピン13の突出量が規制されている。一方、押出し板11と可動母型5との当接によって同押出し板11の後退が規制されるとき、前記押出しピン13の先端は可動中子6から突出しないように設定されている。なお、上記押出しピン13は、8本が配設されている(図4参照)。
【0028】
前記押出し板11は、その四隅から放射状に伸びる4つの延出部11cを有し(図4参照)、前記リターンピン14は各延出部11cにおいてその軸線が押出し方向に伸びるように前記押出し板11に支持されている。これらリターンピン14も、前記フロントプレート11a及びリヤプレート11bによりその基端側のフランジが挟持されており、同リターンピン14は、フロントプレート11a及び可動中子6を貫通してその先端をキャビティ型面6aの周縁の端面に突出し得るように設けられている。
【0029】
従って、成形体の成形後の型を開いた状態では、前記押出し板11の前進によりリターンピン14の先端がキャビティ型面6aの外側から突出する。また、型を閉じた型締め時の状態では、リターンピン14は、その先端が固定中子4の対向端面(キャビティ型面4aの周縁の端面)に押圧されることで、前記押出し板11及び押出しピン13とともに後退する。押出し板11と可動母型5との当接によって同押出し板11の後退が規制されるとき、前記リターンピン14の先端は可動中子6から突出しないように設定されている。
【0030】
上記可動母型5は、前記可動中子6と反対側の端面(裏面)から凹設された凹部の底面中央から突設された突壁部5eを有している。この突壁部5eは、前記突壁部5dと同一の軸線を有してその反対側に突設されている。そして、可動母型5には、これら突壁部5d,5eの周囲において押出し方向に軸線が伸びる複数の貫通穴5fが形成されている。これら貫通穴5fは、前記押出し板収納凹部5cの底面に開口する。そして、これら貫通穴5fには、前記押出し板11に一端が連結された動力伝達棒としての連結棒15が挿通されている。上記連結棒15は成形機側の部品(マシン部品)であって、前記押出し板11は、この連結棒15を介して成形機と連結され、押出し方向に前後移動させる外部からの動力(押出し・引戻し動力)が伝達される。
【0031】
また、前記可動母型5には、その裏面側において冷却機構部を構成する冷却配管16が設けられている。この冷却配管16は、可動中子6側に屈曲して可動母型5の配管挿通孔5g及び押出し板11の配管挿通孔11dを貫通し、可動中子6に形成された冷却穴6bに連通している。可動中子6は、冷却配管16を介してその冷却穴6bに冷却水が流れる。
【0032】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、前記押出し板11は、前記可動中子6及び前記可動母型5の間に配置され、可動母型5に押出し板11を収納するスペースSを設けた。そして、前記押出し板11を押出し方向に前後移動させる外部からの動力を伝達する連結棒15は、前記可動母型5に設けた貫通穴5fに挿通されて押出し板11に連結される。従って、例えば前記押出し板11を収納するスペース等を可動母型5の裏面側に設ける必要がなく、同スペースの確保のために従来のようなダイベースを設けたりする必要もないことから、成形用金型を全体として小型・軽量化し、コストも低減することができる。すなわち、可動母型5の裏面側には、所要の冷却配管16等を収納する最小限のスペースがあればよいため、成形機との駆動連結に必要な面積を十分に確保することができ、ダイベースを廃止することが可能となる。
【0033】
(2)本実施形態では、例えば前記押出し板11の押出し量を制限するための前進移動の規制や、後退位置を決めるための後退移動の規制が、前記可動中子6若しくは前記可動母型5の対向端面との当接によって実現される。従って、これらの規制のためのストッパー部材などを前記可動母型5のスペースSに別途設ける必要がなく、その分、前記可動母型5を小型化することができる。
【0034】
(3)本実施形態では、従来のダイベースの脚部(可動型を支持する筒状の延出部)に比べて可動母型5の脚部を短くし得、また、これらの締結のためのボルトなども不要になるため、可動型2は十分な剛性を維持することができる。そして、金型(可動型2)の剛性不足に起因する成形体のバリ、フラッシュなども低減することができる。
【0035】
(4)本実施形態では、ダイベースという、従来において大物部品を廃止することができ、且つ、可動型2自体の厚さも低減できることから、軽量化およびコストの低減ができる。
【0036】
(5)本実施形態では、可動母型5に、可動中子6に当接する突壁部5dを設けたことで、型締め時に可動母型5が可動中子6から受ける荷重の受圧面積を増大することができ、ひいては可動型2の剛性を増大することができる。
【0037】
(第2の実施形態)
以下、本発明を具体化した第2の実施形態について図面に従って説明する。なお、第2の実施形態は、第1の実施形態において成形機側の動力を中継する態様で押出し板に伝達するように変更した構成であるため、同様の部分については同一の符号を付してその説明を一部省略する。
【0038】
図2は、本発明が適用される金型を示す断面図であり、図4及び図5は可動型の正面図及び背面図である。同図に示されるように、本実施形態の可動型20は、前記可動母型5に準じた可動母型21を備えている。そして、可動型20は、前記押出し板11、押出しガイド棒12、押出しピン13及びリターンピン14に加えて、動力伝達板としての押出し中継板22、押出し中継板ガイド棒23、動力伝達棒としての押出し連結棒24などからなる押出し機構部を備えている。
【0039】
前記可動母型21は、前記可動中子6と反対側の端面(裏面)から凹設された収容凹部21aの底面中央から突設された突壁部21bを有している。この突壁部21bは、前記突壁部5dと同一の軸線を有してその反対側に突設されている。
【0040】
前記押出し中継板22は、上記突壁部21bにその中央部が貫通される態様で収容凹部21aに収容されている。また、前記押出し中継板ガイド棒23は、その軸線が押出し方向に伸びるように上記収容凹部21a内において一端がその底面に支持されている。なお、図5に示されるように、上記押出し中継板ガイド棒23は、押出し中継板22の上側の中央に1本、同下側の両端に2本が配設されている。
【0041】
上記押出し中継板22は、これら押出し中継板ガイド棒23が挿通されるガイド孔を有しており、同押出し中継板ガイド棒23を介して位置決めされて可動母型21に対し押出し方向に前後摺動可能に取り付けられている。なお、上記押出し中継板ガイド棒23の先端にはフランジが設けられており、上記押出し中継板22はその裏面にフランジが係止されることで抜け止めされている。
【0042】
前記可動母型21には、前記突壁部5d,21bの周囲において押出し方向に軸線が伸びる複数(3つ)の貫通穴21cが形成されている。これら貫通穴21cは、前記押出し板収納凹部5cの底面に開口する。そして、これら貫通穴21cには、前記押出し板11及び押出し中継板22に一端及び他端が連結された押出し連結棒24が挿通されている。図5に示されるように、上記押出し連結棒24は、押出し中継板22の上側の両端に2本、同下側の中央に1本が配設されている。
【0043】
さらに、前記押出し中継板22の裏面には、突壁部21bを包囲する態様で複数(4本)の連結棒25の一端が連結されている。上記連結棒25は成形機側の部品(マシン部品)であって、その配置は当該機の既存の構造によって規定されている。前記押出し板11は、これら連結棒25、押出し中継板22及び押出し連結棒24を介して成形機と連結され、押出し方向に前後移動させる外部からの動力(押出し・引戻し動力)が伝達される。このように、4本の連結棒25から伝達される成形機側の動力を、押出し中継板22を介して3本の押出し連結棒24にて押出し板11に伝達しているのは、可動型20の形状の制約の範囲で成形機側の動力をバランスよく伝達するためである。
【0044】
以上詳述したように、本実施形態によれば、前記第1の実施形態における(1)〜(5)の効果に加えて以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、例えば成形機側(外部)の既存の連結棒25が、金型の形状の制約(成形体の形状に規制される押出しガイド棒12の干渉回避等)などで前記押出し板11を押出し方向に前後移動させる動力をバランスよく伝達し得ない場合であっても、当該動力を押出し中継板22で一旦受ける。そして、この押出し中継板22を介して力点の位置を変換させることで上記動力をバランスよく伝達することができる。
【0045】
(2)本実施形態では、連結棒25を押出し板11に直結できない場合であっても好適にこれに対応することができる。
(第3の実施形態)
以下、本発明を具体化した第3の実施形態について図面に従って説明する。なお、第3の実施形態は、第2の実施形態において冷却分配板を備えた冷却機構部に変更したのみの構成であるため、同様の部分については同一の符号を付してその説明を一部省略する。
【0046】
図3は、本発明が適用される金型を示す断面図であり、図4及び図5は可動型の正面図及び背面図である。同図に示されるように、本実施形態の可動型30は、前記可動母型21に準じた可動母型31を備えている。そして、可動型30は、前記可動中子6を冷却する冷却水の流路が形成された冷却分配板32、冷却配管33などからなる冷却機構部を備えている。
【0047】
前記可動母型31には、前記嵌合凹部5bよりも縮幅されて更にその底面から凹設された分配板嵌合部としての分配板嵌合凹部31aが形成されている。この分配板嵌合凹部31aは、前記冷却分配板32の外形に応じた内壁面を有しており、前記押出し板収納凹部5cよりも拡幅されて嵌合凹部5b及び押出し板収納凹部5c間に配置されている。前記冷却分配板32は、上記分配板嵌合凹部31aの開口側から組み付けられ前記可動中子6とで挟み込まれる態様でこれと嵌合することで可動母型31に保持されている。
【0048】
そして、前記押出し板収納凹部5cにより形成されるスペースSは、上記冷却分配板32によって閉塞されている。また、前記突壁部5dは、前記冷却分配板32の対向端面(裏面)に当接しており、型締め時にこの冷却分配板32を介して前記可動中子6を支える。さらに、前記押出しガイド棒12の一端は、可動中子6に代えて冷却分配板32の裏面に支持されている。
【0049】
上記冷却分配板32の流路は、前記冷却配管33及び可動中子6の冷却穴6bに連通しており、可動中子6は、これら冷却分配板32及び冷却配管33を介してその冷却穴6bに冷却水が流れる。
【0050】
以上詳述したように、本実施形態によれば、前記第1の実施形態における(1)(3)(4)、前記第2の実施形態における(1)(2)の効果に加えて以下に示す効果が得られるようになる。
【0051】
(1)本実施形態では、前記冷却分配板32は、前記分配板嵌合凹部31aと嵌合して前記可動中子6及び前記可動母型31の間に挟み込まれる態様で配置される。従って、例えば前記冷却分配板32を収納するスペースを可動母型31の裏面側に設ける必要がないことから、成形用金型を全体として更に小型・軽量化してコストも低減することができる。また、前記冷却分配板32は、冷却対象である可動中子6に当接して配置されることから、金型内での冷却回路も全体としてコンパクトにまとめることができる。
【0052】
(2)本実施形態では、例えば前記押出し板11の押出し量を制限するための前進移動の規制や、後退位置を決めるための後退移動の規制が、前記冷却分配板32若しくは前記可動母型の対向端面との当接によって実現される。従って、これらの規制のためのストッパー部材などを前記可動母型31のスペースSに別途設ける必要がなく、その分、前記可動母型31を小型化することができる。
【0053】
(3)本実施形態では、可動母型5に、冷却分配板32に当接する突壁部5dを設けたことで、型締め時に可動母型31が可動中子6から受ける荷重の受圧面積を増大することができ、ひいては可動型30の剛性を増大することができる。
【0054】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記第1の実施形態において、連結棒15の数及びその配置は一例である。
・前記第2及び第3の実施形態において、押出し連結棒24及び連結棒25の数及びその配置は一例である。
【0055】
・前記第3の実施形態において、押出しガイド棒12の一端は、冷却分配板32を貫通させて可動中子6の裏面に支持してもよい。
・前記各実施形態において、押出しガイド棒12を可動中子6若しくは冷却分配板32の裏面に突き当てて、型締め時に可動母型5,21,31が可動中子6から受ける荷重の受圧面積を増大し、可動型2,20,30の剛性を増大してもよい。
【0056】
・前記各実施形態において、成形体のアンダーカット部を成形する部材(スライドホルダ7、移動中子8等)を割愛してもよい。
・前記各実施形態において、押出しガイド棒12、押出しピン13及びリターンピン14の数及びその配置は一例である。
【0057】
・前記各実施形態において、型締め時に可動母型5,21,31が可動中子6から受ける荷重の受圧面積を増大するためには、前記押出し板11をより小型化することが好ましい。このため、例えばリターンピン14を中子内の形状面から離れた位置に設定する、若しくは、廃止してばね等で押出し後退位置まで戻してもよい。
【0058】
・本発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、その趣旨の範囲であれば全ての金型、真空(減圧)成形用金型などを問わず、どのような形態であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す断面図。
【図2】本発明の第2の実施形態を示す断面図。
【図3】本発明の第3の実施形態を示す断面図。
【図4】本発明の第2及び第3の実施形態を示す正面図。
【図5】本発明の第2及び第3の実施形態を示す背面図。
【図6】従来の形態を示す断面図。
【符号の説明】
【0060】
S…スペース、5,21,31…可動母型、5b…嵌合部としての嵌合凹部、5f…貫通穴、6…可動中子、11…押出し板、12…ガイド棒としての押出しガイド棒、15…動力伝達棒としての連結棒、21a…収容凹部、22…動力伝達板としての押出し中継板、31a…分配板嵌合部としての分配板嵌合凹部、32…冷却分配板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動中子と、
前記可動中子と嵌合する嵌合部を有する可動母型と、
前記可動中子及び前記可動母型の間において、該可動中子に対しガイド棒を介して一側方向に前後移動可能に取り付けられ、該前後移動に伴い前記可動中子から成形体を取り出す押出し板とを備え、
前記可動母型は、
前記押出し板を収納するスペースと、
前記押出し板に連結され該押出し板を一側方向に前後移動させる外部からの動力を伝達する動力伝達棒が挿通される貫通穴とを一体的に有することを特徴とする成形用金型。
【請求項2】
請求項1に記載の成形用金型において、
前記押出し板は、
前記可動中子の対向端面に当接することで前進移動が規制され、
前記可動母型の対向端面に当接することで後退移動が規制されることを特徴とする成形用金型。
【請求項3】
請求項1に記載の成形用金型において、
前記可動中子を冷却する冷却水の流路が形成された冷却分配板を備え、
前記可動母型は、前記可動中子と挟み込む態様で前記冷却分配板と嵌合する分配板嵌合部を有することを特徴とする成形用金型。
【請求項4】
請求項3に記載の成形用金型において、
前記押出し板は、
前記冷却分配板の対向端面に当接することで前進移動が規制され、
前記可動母型の対向端面に当接することで後退移動が規制されることを特徴とする成形用金型。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の成形用金型において、
前記可動母型は、前記可動中子の反対側の端面から凹設されて動力伝達板を一側方向に前後移動可能に収容する収容凹部を備え、
前記動力伝達棒には、前記動力伝達板を介して前記押出し板を一側方向に前後移動させる外部からの動力が伝達されることを特徴とする成形用金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−7277(P2006−7277A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−188037(P2004−188037)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】