説明

成形装置および成形方法

【課題】成形工程におけるエネルギーの利用効率を向上させることが可能な成形技術を提供する。
【解決手段】成形室6の内部に、成形型50が順次移動される加熱ステージ11、プレスステージ12、冷却ステージ13を配置して、加熱、プレス成形、冷却の各工程を実施する成形装置M1において、冷却ステージ13の第1冷却プレート25および第2冷却プレート27の成形型50と反対側の背面に熱発電モジュール30Aおよび熱発電モジュール30Bを配置し、成形型50の冷却過程で得られる熱エネルギーを電力に変換して回収することで、成形工程におけるエネルギーの利用効率を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形装置および成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、ガラスレンズ、プリズム、ミラー等の光学素子の製造に関しては、生産性が高いため加熱プレスによる成形技術が多く用いられている。
【0003】
このような光学素子の加熱、プレス成形では、成形型に光学素子材料を配置し、成形型をブロック状の加熱手段である加熱ブロックにより加熱プレスした後、冷却プレートで冷却する手法が一般的に用いられている。
【0004】
そして、たとえば、成形温度の比較的高い光学ガラス素材を用いる高精度な光学素子の成形では、成形型を高温に加熱する必要があるため、大量の電力を必要としていた。
【0005】
また、加熱時の電力量を削減するために、例えば、特許文献1では、加熱ブロックにおいて、成形型と当接する面とは反対の面にヒータブロックの内部に設けられたヒータを取り囲むように空洞の断熱部を形成し、加熱ブロックの背面側からの伝熱を抑制して、加熱ブロックから成形型に対する伝熱効率を高めようとする技術が開示されている。
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1では、高温に加熱された成形型に蓄えられた熱エネルギーは、冷却工程で、成形型を冷却する過程で環境中に散逸して失われるため、エネルギー損失が発生していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2007−112639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、成形工程におけるエネルギーの利用効率を向上させることが可能な成形技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の観点は、成形素材が実装された成形型を加熱する加熱ステージと、
加熱された前記成形型を加圧して前記成形素材を成形するプレスステージと、
成形された前記成形型を冷却する冷却ステージと、を備え、
前記冷却ステージは、
前記成形型を挟持する第1冷却プレートおよび第2冷却プレートと、
前記第1冷却プレートおよび前記第2冷却プレートの少なくとも一方に配置され、冷却の際に前記成形型から放出される熱エネルギーを電力に変換する熱発電手段と、
を具備した成形装置を提供する。
【0010】
本発明の第2の観点は、成形素材が実装された成形型を加熱する加熱工程と、加熱された前記成形型を加圧して前記成形素材を成形するプレス工程と、前記成形型を冷却する冷却工程とを実行する成形方法であって、
前記冷却工程では、前記成形型の持つ熱を電力に変換することによって当該成形型の冷却を行う成形方法を提供する。
【0011】
本発明の第3の観点は、成形型を挟持する第1冷却プレートおよび第2冷却プレートと、前記第1冷却プレートおよび前記第2冷却プレートの少なくとも一方に配置され、前記成形型から放出される熱エネルギーを電力に変換する熱発電手段と、を含む成形装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、成形工程におけるエネルギーの利用効率を向上させることが可能な成形技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態である成形装置の全体の構成の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態である成形装置の冷却ステージの構成例を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態である成形装置を構成する熱発電モジュールの構造の一例を示す断面図である。
【図4】本発明の一実施の形態の成形装置の変形例における冷却ステージの構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施の形態の一態様では、たとえば、ガラス等の成形素材を収容した成形型を上下から挟み込み、加熱、プレス、冷却を順次行うことで光学素子を成形する光学素子成形装置において、成形型を冷却するための冷却ステージは、成形型と接触し成形型の熱を吸収する冷却プレートと、冷却水によって冷却されている水冷ブロックと、冷却プレートと水冷ブロックの両方に面接触するように配置された熱発電モジュールからなる構成とする。
【0015】
この熱発電モジュールは、たとえば、P型熱電材料エレメントとN型熱電材料エレメントが複数個直列にPN接合されてなる構成を用いることができる。
さらに、熱発電モジュールの冷却プレートおよび水冷ブロックに対する接触力や接触状態を調整することのできるコンプライアンス機構を備えている。
【0016】
本態様の成形装置では、高温に加熱された成形型の熱エネルギーは、冷却プレートの温度を上昇させることにより、熱発電モジュールの冷却プレート側の接合面を加熱する。
【0017】
また、熱発電モジュールの水冷ブロック側の接合面は、成形装置の全体を一定温度に保つための冷却水路により水冷ブロックが冷却されているため、熱発電モジュールの両端面で温度差が生じる。
【0018】
この熱発電モジュールの両端面に温度差が生じることで、発電を行うことが可能となり、成形型の加熱に用いられた熱エネルギーを環境中に散逸させることなく、冷却ステージにて電力として回収し、蓄積して再利用することが可能となる。
【0019】
すなわち、高温に加熱された成形型が持っている熱エネルギーを冷却時に電力として回収することにより、成形工程に必要なエネルギーの利用効率を向上させることが可能となる。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施の形態である成形装置の構成の一例を示す全体図であり、図2は、本発明の一実施の形態である成形装置の冷却ステージの一例を示す断面図であり、図3は、本実施の形態の成形装置を構成する熱発電モジュールの構造の一例を示す断面図である。
【0021】
本実施の形態の成形装置M1では、一例として光学ガラス素子の製造装置に適用した場合を例にとって説明する。
なお、本実施の形態では、図1において、左右方向をX方向、上下方向をZ方向、紙面に垂直な方向をY方向として説明する。また、一例として、Z方向は鉛直方向、X−Y平面は水平面とする。
【0022】
図1に例示されるように、本実施の形態の成形装置M1は、下ベース4、上ベース3、側板9で構成された成形室6を備えている。
【0023】
この成形室6の内部には、後述の成形型50に対して、加熱、加圧、冷却等の一連の成形工程を順次実施するために、加熱ステージ11(加熱工程)と、プレスステージ12(プレス工程)と、冷却ステージ13(冷却工程)がX方向に一列に配置されている。
【0024】
加熱ステージ11とプレスステージ12と冷却ステージ13が収容される成形室6の内部は、成形型50の酸化を防止するとともに、ガラスが失透するなど還元雰囲気による悪影響を与えたりしないために、99.9%以上の窒素ガスと0.1%以下の水素ガスを混合した混合ガス92の雰囲気となっている。
【0025】
この成形室6内の雰囲気を構成する混合ガス92は、成形室6の外部に設けられたガス供給器90からガス供給路91を通して成形室6に供給されている。
ガス供給器90は、成形型50の材質やガラスの材質、成形温度などの成形条件によっては、混合ガス92の混合比を変えることが可能な構成となっている。
【0026】
成形室6において、X方向の配列端に位置する加熱ステージ11および冷却ステージ13の各々に面した側板9には、投入シャッタ7および排出シャッタ8が設けられており、投入シャッタ7の側には投入台1が配置され、排出シャッタ8の側には、排出台2が配置されている。
【0027】
投入台1には、X方向に往復動作する投入爪5が設けられており、投入台1に載置された後述の成形型50を、投入シャッタ7を通じて成形室6内の加熱ステージ11に押し込んで投入する動作が行われる。
【0028】
成形室6には、図示しない成形搬送手段が設けられ、投入台1から加熱ステージ11に投入された成形型50は、順次、プレスステージ12、冷却ステージ13に移動された後、排出シャッタ8から外部の排出台2に排出される。
【0029】
加熱ステージ11およびプレスステージ12の各々には、下ベース4の側に支持された下冷却ブロック17、下断熱ブロック18、下加熱プレート20が設けられている。
下加熱プレート20には、ヒータ20aが設けられ、下加熱プレート20に載置される成形型50を下側から所望の温度に加熱することが可能になっている。
【0030】
下加熱プレート20の成形型50と反対の背面側に位置する下断熱ブロック18は、下加熱プレート20の熱が下ベース4の側に散逸することを防止して成形型50の加熱効率を向上させる。
【0031】
さらに下断熱ブロック18の、下加熱プレート20と反対の背面側に下ベース4との間に位置する下冷却ブロック17は、内部に図示しない通水路が設けられ、この通水路に冷却水を通すことによって下加熱プレート20の熱によって下ベース4が過熱することを防止している。
【0032】
一方、下加熱プレート20とZ方向に対向する位置には、上軸14およびシリンダ10を介して上ベース3の側に支持された上加熱プレート19、上断熱ブロック16、上冷却ブロック15が設けられている。
【0033】
成形型50に上側から当接する上加熱プレート19には、ヒータ19aが設けられ、成形型50を上側から所望の温度に加熱することが可能になっている。
【0034】
上加熱プレート19の成形型50と反対の背面側には、上断熱ブロック16が設けられ、上加熱プレート19の熱が上ベース3の側に散逸することを防止して、成形型50の加熱効率を向上させている。
【0035】
上断熱ブロック16の背面側に上軸14との間に設けられた上冷却ブロック15は、上述の下冷却ブロック17と同様の構造を持ち、上側の上軸14、シリンダ10、上ベース3等が上加熱プレート19の熱で過熱することを防止している。
シリンダ10は、上軸14を介して上加熱プレート19を上下方向(Z方向)に駆動する動作を行う。
【0036】
本実施の形態の場合、加熱ステージ11では、シリンダ10は、上加熱プレート19を成形型50の上側に当接させ、下加熱プレート20との間で成形型50を挟むように動作する。
【0037】
また、プレスステージ12では、シリンダ10は、上加熱プレート19を所定のプレス圧力で成形型50に当接させ、下加熱プレート20との間で成形型50を挟圧することで成形動作を行う。
【0038】
一方、図1および図2に例示されるように、各ステージの配列終端に位置する本実施の形態の冷却ステージ13は、シリンダ10、冷却ブロック駆動軸21、第1水冷ブロック22、第1コンプライアンス機構23、第1冷却水路24、第1冷却プレート25、第2冷却水路26、第2冷却プレート27、第2コンプライアンス機構28、第2水冷ブロック29、熱発電モジュール30A(熱発電手段)、熱発電モジュール30B(熱発電手段)を備えている。
【0039】
本実施の形態の成形装置M1では、第1冷却プレート25の成形型50に当接する面と反対側の背面には、第1コンプライアンス機構23、熱発電モジュール30A、および第1水冷ブロック22を介して冷却ブロック駆動軸21が接続されている。
冷却ブロック駆動軸21は、シリンダ10を介して上ベース3に支持されている。
【0040】
同様に、Z方向に第1冷却プレート25に対向し、成形型50が載置される第2冷却プレート27の背面側には、第2コンプライアンス機構28、熱発電モジュール30A、および第2水冷ブロック29が配置され、第2水冷ブロック29は、下ベース4に支持されている。
【0041】
第1コンプライアンス機構23は、第1水冷ブロック22に対して第1冷却プレート25を変位自在に支持する柔軟支持構造であり、第1水冷ブロック22の側に固定された熱発電モジュール30Aに対する第1冷却プレート25の姿勢を柔軟に変化させることにより、温度変動による寸法変化などの影響を補正して、第1冷却プレート25の背面と熱発電モジュール30Aとの接触面が、最大の接触面積を保つことができるように、すなわち、第1冷却プレート25と熱発電モジュール30Aとの間の伝熱効率が最大となるように配置されている。
【0042】
同様に、第2コンプライアンス機構28は、第2水冷ブロック29に対して第2冷却プレート27を変位自在に支持する柔軟支持構造であり、温度変動による寸法変化などの影響を補正して、第2冷却プレート27の背面と熱発電モジュール30Bとの接触面が、最大の接触面積を保つことができるように、すなわち、第2冷却プレート27と熱発電モジュール30Bとの間の伝熱効率が最大となるように配置されている。
【0043】
また、第1水冷ブロック22は、当該第1水冷ブロック22に接続される冷却ブロック駆動軸21や当該冷却ブロック駆動軸21を駆動するシリンダ10等が熱により変形しないように配置されている。
【0044】
この第1水冷ブロック22は内部に第1冷却水路24が配置され、冷却水等の冷却媒体が常に流れており、常時、熱発電モジュール30A等の冷却が行われる構造となっている。
【0045】
同様に、第2コンプライアンス機構28を介して第2冷却プレート27を背後から支持する第2水冷ブロック29の内部にも第2冷却水路26が配置され、冷却媒体が常に流れて、常時冷却が行われる構造となっており、成形装置M1の成形室6を構成する下ベース4等を熱から保護する構造となっている。
【0046】
この場合、第1冷却プレート25の背面側と第1水冷ブロック22との間に配置された熱発電モジュール30A、および第2冷却プレート27の背面側と第2水冷ブロック29の間に配置された熱発電モジュール30Bの各々は、例えば、PN接合を構成するように、P型熱電材料エレメントとN型熱電材料エレメントが複数個直列に接続されてなる構成となっており、両端面に温度差が生じることで、熱発電モジュール30A(熱発電モジュール30B)が発電する構造となっている。
【0047】
図3は、本実施の形態における熱発電モジュール30Aおよび熱発電モジュール30Bの構成を例示した側面図である。この場合、熱発電モジュール30Aおよび熱発電モジュール30Bは同一の構成であり、取り付け姿勢がZ方向に互いに反転している。
【0048】
熱発電モジュール30A(熱発電モジュール30B)は、複数のP型半導体31(P型熱電材料エレメント)およびN型半導体32(N型熱電材料エレメント)を、PN接合を構成するように、複数の熱源側電極33および冷却側電極34を介して交互に直列に接続した構成となっており、その両端の冷却側電極34に、リード線35およびリード線36が接続されている。
【0049】
熱源側電極33および冷却側電極34の各々の外面は、例えば、セラミックス等の耐熱性の絶縁体からなる絶縁カバー37および絶縁カバー38で覆われている。
【0050】
そして、熱源側電極33(絶縁カバー37)の側を高温の第1冷却プレート25に当接させ、冷却側電極34(絶縁カバー38)の側を低温の第1水冷ブロック22の側に当接させることで、リード線35およびリード線36から、第1水冷ブロック22と第1冷却プレート25の温度差に応じた電力が、熱発電モジュール30Aのリード線35およびリード線36に取り出される。
【0051】
同様に、熱源側電極33(絶縁カバー37)の側を高温の第2冷却プレート27に当接させ、冷却側電極34(絶縁カバー38)の側を低温の第2水冷ブロック29の側に当接させることで、リード線35およびリード線36から、第2水冷ブロック29と第2冷却プレート27の温度差に応じた電力が、熱発電モジュール30Bのリード線35およびリード線36に取り出される。
【0052】
本実施の形態の場合、一例として、上述の熱発電モジュール30Aおよび熱発電モジュール30Bのリード線35およびリード線36は電力を蓄積することが可能な二次電池60に接続され、熱発電モジュール30Aおよび熱発電モジュール30Bが発電した電力が二次電池60に蓄積される構成となっている。
【0053】
また、上述の二次電池60を成形装置M1の一部、もしくは他の装置の電気機器に接続して、熱発電モジュール30Bが発電した電力を利用する構成としても良い。
【0054】
図2に拡大して例示したように、一例として、成形型50は、筒状のスリーブ53の内部に、上型51および下型52が対向して配置され、各々の対向端に設けられた成形面51aおよび成形面52aの間に、熱可塑性の成形素材40が実装される構成となっている。
【0055】
スリーブ53の壁面部には、上型51の成形面51aと下型52の成形面52aとの間に形成される成形空間に連通するように通気孔53aが形成されおり、成形時に、当該成形空間内の空気が速やかに外部に排出されるようになっている。
【0056】
そして、成形型50の全体を所望の成形温度に加熱した状態で、上型51および下型52を軸方向に挟圧することで、成形面51aおよび成形面52aを成形素材40に転写する型成形が行われる。
【0057】
(作用)
以下、本実施の形態の成形装置M1の作用を説明する。
まず、加熱ステージ11およびプレスステージ12の各々では、上加熱プレート19および下加熱プレート20が、ヒータ19aおよびヒータ20aによって所定の温度に加熱されている。
【0058】
この状態で、投入シャッタ7を通じて、投入台1から投入爪5によって成形型50を成形室6の内部に投入し、加熱ステージ11の下加熱プレート20に載置する。
【0059】
そして、シリンダ10によって上軸14を駆動することにより、上加熱プレート19をZ方向に下降させ、成形型50の上型51に当接させることで、下加熱プレート20と上加熱プレート19の間に成形型50を挟持し、成形型50に対して上下両方からヒータ19aおよびヒータ20aの熱を伝えることにより、成形型50の温度を成形素材40が成形可能な所定の温度に上昇させる。
【0060】
次に、図示しない成形型搬送手段によって成形型50をプレスステージ12の下加熱プレート20に移載する。
【0061】
そして、シリンダ10によってプレスステージ12の上軸14を駆動させることによって上加熱プレート19を下降させ、下加熱プレート20と上加熱プレート19との間で成形型50を挟持して、上下方向からヒータ19aおよびヒータ20aの熱を成形型50に伝えて当該成形型50の温度を維持すると共に、さらに、上軸14によって上加熱プレート19を下降させて成形型50の上型51にZ方向にプレス圧力を加え、成形型50における上型51および下型52の成形面51aおよび成形面52aの形状を成形素材40に転写する。
【0062】
次に、図示しない成形型搬送手段によって成形型50を冷却ステージ13の第2冷却プレート27の上に移載して、シリンダ10によって冷却ブロック駆動軸21を駆動し、第1冷却プレート25を下降させ、第2冷却プレート27との間で成形型50を挟持する。
【0063】
このとき、本実施の形態の場合には、第1冷却プレート25は第1コンプライアンス機構23を介して第1水冷ブロック22に支持されているため、第1冷却プレート25の背面が熱発電モジュール30Aに全面にわたって密着し伝熱抵抗が小さくなるように当該第1冷却プレート25の姿勢が自律的に調整される。
【0064】
同様に、第2冷却プレート27も第2コンプライアンス機構28を介して第2水冷ブロック29に支持されているため、第2冷却プレート27の背面が熱発電モジュール30Bの全面にわたって密着し伝熱抵抗が小さくなるように当該第2冷却プレート27の姿勢が自律的に調整される。
【0065】
そして、成形型50の熱エネルギーを成形型50との接触面を通して第1冷却プレート25および第2冷却プレート27に伝達させる。
この場合、成形型50から第1冷却プレート25に伝えられた熱は、当該第1冷却プレート25に上述のように密着した熱発電モジュール30Aに効率よく伝達される。
【0066】
同様に、成形型50から第2冷却プレート27に伝えられた熱は、当該第2冷却プレート27に上述のように密着した熱発電モジュール30Bに効率よく伝えられる。
これにより成形型50の温度は、室温付近にまで冷却され、後述のように、冷却過程で成形型50から放出された熱は電力に変換されて回収される。
【0067】
その後、排出シャッタ8を通じて成形型50を成形装置M1の外の排出台2に搬出し、内部の成形済みの成形素材40である光学素子を取り出す。
【0068】
ここで、本実施の形態の場合、成形型50を冷却ステージ13で冷却する際、高温に加熱されていた成形型50の熱エネルギーは、第1冷却プレート25に伝えられ、さらに、この第1冷却プレート25と密着した熱発電モジュール30Aの一端面(熱源側電極33の絶縁カバー37側)が同時に加熱される。
【0069】
また、同様に第2冷却プレート27にも伝えられ、さらにこの第1冷却プレート25と密着した熱発電モジュール30Bの一端面(熱源側電極33の絶縁カバー37側)が同時に加熱される。
また、前記熱発電モジュール30Aの他端面は第1水冷ブロック22と接触しており、常に冷却されている。
【0070】
同様に熱発電モジュール30Bの他端面は第2水冷ブロック29と接触しており、常に冷却されている。
【0071】
したがって、熱発電モジュール30Aは、一端面(熱源側電極33の絶縁カバー38の側)が第1冷却プレート25を通して加熱され、他端面(冷却側電極34の絶縁カバー38の側)が第1水冷ブロック22により冷却されている状態となり、熱源側電極33と冷却側電極34の間に温度差を生じる。
【0072】
同様に熱発電モジュール30Bは、一端面(熱源側電極33の絶縁カバー38の側)が第2冷却プレート27を通して加熱され、他端面(冷却側電極34の絶縁カバー38側)が第2水冷ブロック29により冷却されている状態となり、熱源側電極33と冷却側電極34の間に温度差を生じる。
【0073】
熱発電モジュール30Aは両端で温度差が生じると、P型半導体31およびN型半導体32が電力を発生するため、リード線35およびリード線36を二次電池60に接続することで、成形装置M1の冷却ステージ13において、高温に加熱された成形型50を冷却する際に捨てられていた熱エネルギーを、電力として回収して二次電池60に蓄電して適宜の目的に再利用することが可能となる。
【0074】
同様に、熱発電モジュール30Bにおいても、リード線35およびリード線36から電力を回収することができ、有効に再利用することができる。
【0075】
以上説明したように、本実施の形態の成形装置M1では、従来と同様の成形型50を用いた型成形によって光学素子の製造を行う過程で、従来は大気中や第1水冷ブロック22、第2水冷ブロック29の冷却水中に放出され無駄となっていた熱エネルギーを、熱発電モジュール30Aおよび熱発電モジュール30Bによって電力に変換して確実に回収することで、成形型50の加熱に必要なエネルギーの一部の回収および蓄積と再利用を実現することが可能となる。
【0076】
すなわち、本実施の形態の成形装置M1においては、成形型50の成形サイクルに投入されたエネルギーの利用効率を確実に向上させることが可能となる。
【0077】
また、本実施の形態の熱発電モジュール30Aおよび熱発電モジュール30Bは、複数のP型半導体31およびN型半導体32を用いて構成されているため、保守管理を必要とするような可動機構部が存在せず、動作の信頼性や耐久性も高い。
【0078】
このため、たとえば、成形装置M1を連続操業等で長時間にわたって稼働させる場合でも、熱発電モジュール30Aおよび熱発電モジュール30Bから安定して電力を取り出すことができるとともに、保守管理のために成形装置M1の稼働を停止させる頻度も減り、成形装置M1の稼働率の向上により、成形工程の生産性が向上する。
【0079】
また、本実施の形態の場合には、熱発電モジュール30Aおよび成形型50に接する第1冷却プレート25が、第1コンプライアンス機構23を介して第1水冷ブロック22に支持され、熱発電モジュール30Bおよび成形型50に接する第2冷却プレート27が、第2コンプライアンス機構28を介して第2水冷ブロック29に支持されていることにより、第1冷却プレート25および第2冷却プレート27の各々が、伝熱抵抗が小さくなるように、熱発電モジュール30Aおよび熱発電モジュール30Bの各々に最大面積で密着する。
【0080】
これにより、成形型50の熱による熱発電モジュール30Aおよび熱発電モジュール30Bの発電効率が一層向上し、成形型50の成形サイクルに用いられるエネルギーの回収効率および再利用効率が確実に向上する。
図4は、本実施の形態の成形装置M1の変形例である成形装置M2の冷却ステージの構成例を示す断面図である。
【0081】
この場合、熱発電モジュール30Aで発電された電力が、成形装置M2の一部を構成する照明装置70に利用され、熱発電モジュール30Bで発電された電力が外部電気機器80に利用されるようにしたところが、上述の成形装置M1と異なり、他は同様である。
【0082】
この変形例の成形装置M2に例示したように、熱発電モジュール30A、熱発電モジュール30Bから得られた電力を、照明装置70や外部電気機器80において直接的に利用することで、成形装置M2の稼働に必要な消費電力の削減、および成形装置M2のランニングコストの削減を実現することが可能となる。
【0083】
なお、本発明は、上述の実施の形態に例示した構成に限らず、その趣旨を逸脱しない範囲で変更可能なことはいうまでもない。
たとえば、熱発電モジュール30Aおよび熱発電モジュール30Bは、P型半導体およびN型半導体等の熱電材料エレメント用いる構成に限らず、比較的低温で動作する熱機関等を用いてもよい。
【0084】
(付記1)
成形型を挟持する第1冷却プレートおよび第2冷却プレートと、前記第1冷却プレートおよび前記第2冷却プレートの少なくとも一方に配置され、前記成形型から伝熱により得る熱エネルギーを電力に変換する熱発電モジュールと、を含むことを特徴とする成形装置。
【0085】
(付記2)
付記1の成形装置において、さらに、前記第1冷却プレートおよび前記第2冷却プレートの各々の背面を支持する第1水冷ブロックおよび第2水冷ブロックを備え、前記熱発電モジュールは、前記第1冷却プレートと前記第1水冷ブロックとの間、および前記第2冷却プレートと前記第2水冷ブロックとの間、の少なくとも一方に配置されていることを特徴とする成形装置。
【0086】
(付記3)
付記1または付記2の成形装置において、前記熱発電モジュールは、電力を蓄電する二次電池に接続されていることを特徴とする成形装置。
【0087】
(付記4)
付記1または付記2の成形装置において、前記熱発電モジュールは、前記成形装置の一部を構成する電気機器に接続されていることを特徴とする成形装置。
【0088】
(付記5)
付記1または付記2の成形装置において、前記熱発電モジュールは、前記成形装置以外の電気機器に接続されていることを特徴とする成形装置。
【符号の説明】
【0089】
1 投入台
2 排出台
3 上ベース
4 下ベース
5 投入爪
6 成形室
7 投入シャッタ
8 排出シャッタ
9 側板
10 シリンダ
11 加熱ステージ
12 プレスステージ
13 冷却ステージ
14 上軸
15 上冷却ブロック
16 上断熱ブロック
17 下冷却ブロック
18 下断熱ブロック
19 上加熱プレート
19a ヒータ
20 下加熱プレート
20a ヒータ
21 冷却ブロック駆動軸
22 第1水冷ブロック
23 第1コンプライアンス機構
24 第1冷却水路
25 第1冷却プレート
26 第2冷却水路
27 第2冷却プレート
28 第2コンプライアンス機構
29 第2水冷ブロック
30A 熱発電モジュール
30B 熱発電モジュール
31 P型半導体
32 N型半導体
33 熱源側電極
34 冷却側電極
35 リード線
36 リード線
37 絶縁カバー
38 絶縁カバー
40 成形素材
50 成形型
51 上型
51a 成形面
52 下型
52a 成形面
53 スリーブ
53a 通気孔
60 二次電池
70 照明装置
80 外部電気機器
90 ガス供給器
91 ガス供給路
92 混合ガス
M1 成形装置
M2 成形装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形素材が実装された成形型を加熱する加熱ステージと、
加熱された前記成形型を加圧して前記成形素材を成形するプレスステージと、
成形された前記成形型を冷却する冷却ステージと、を備え、
前記冷却ステージは、
前記成形型を挟持する第1冷却プレートおよび第2冷却プレートと、
前記第1冷却プレートおよび前記第2冷却プレートの少なくとも一方に配置され、冷却の際に前記成形型から放出される熱エネルギーを電力に変換する熱発電手段と、
を具備したことを特徴とする成形装置。
【請求項2】
前記成形型を冷却する前記冷却ステージは、さらに、前記第1冷却プレートおよび前記第2冷却プレートの各々の前記成形型と反対側の背面を、コンプライアンス機構を介して変位自在に支持する第1水冷ブロックおよび第2水冷ブロックを備え、
前記熱発電手段は、前記第1冷却プレートと前記第1水冷ブロックとの間、および前記第2冷却プレートと前記第2水冷ブロックとの間、の少なくとも一方に配置されていることを特徴とする請求項1記載の成形装置。
【請求項3】
前記熱発電手段は、前記成形型に接する高温側の前記第1冷却プレートまたは前記第2冷却プレートに接する複数の熱源側電極と、低温側の前記第1水冷ブロックまたは前記第2水冷ブロックに接する複数の冷却側電極とに交互に直列に接続された複数のP型熱電材料エレメントおよび複数のN型熱電材料エレメントからなる熱発電モジュールであることを特徴とする請求項2記載の成形装置。
【請求項4】
成形素材が実装された成形型を加熱する加熱工程と、加熱された前記成形型を加圧して前記成形素材を成形するプレス工程と、成形された前記成形型を冷却する冷却工程とを実行する成形方法であって、
前記冷却工程では、前記成形型の持つ熱を電力に変換することによって当該成形型の冷却を行うことを特徴とする成形方法。
【請求項5】
成形型を挟持する第1冷却プレートおよび第2冷却プレートと、前記第1冷却プレートおよび前記第2冷却プレートの少なくとも一方に配置され、前記成形型から放出される熱エネルギーを電力に変換する熱発電手段と、を含むことを特徴とする成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−228977(P2010−228977A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78833(P2009−78833)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】