説明

成膜方法及び成膜装置

【課題】 金属と炭素とを含む膜における金属と炭素との組成比率の制御性を高めた成膜方法及び成膜装置を提供すること。
【解決手段】 回転体2の外周面2aに保持され、導電性を有する板状または箔状の被成膜体1を、成膜室5a内の第1領域に移動させて、その第1領域に配置された少なくとも1種類の金属を含む第1ターゲット4aから放出された金属原子を被成膜体1に付着させるステップと、被成膜体1を、成膜室5a内の第2領域に移動させて、その第2領域に配置された炭素を含む第2ターゲット4bから放出された炭素原子を被成膜体1に付着させるステップと、を交互に行うことにより金属と炭素とを含む膜を被成膜体1に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電極の酸化抑制のための保護膜として用いられる、チタンなどの金属と炭素との化合物膜または混合物膜の成膜方法及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電池、コンデンサ、半導体部品、その他電気部品などに用いられる電極などの導電性部材はその導電性を安定して確保することが望まれるが、周囲環境の化学物質などにより表面特性に化学的変動を受け、特性が劣化する問題があった。例えば、酸化膜が形成されることによる電極表面抵抗値の低下や電気容量の増大がある。
【0003】
例えば電極に関するよく知られた課題として、アルミニウム電解コンデンサにおいてはその陰極表面に酸化膜が形成されると以下に述べるような問題となる。アルミニウム電解コンデンサは、陽極用のアルミニウム箔表面には酸化処理によって酸化膜を形成し、その酸化膜を挟むように陰極用のアルミニウム箔を配置する。すなわち、陽極アルミニウム箔に形成した酸化膜はコンデンサの誘電層として機能する。そして、電解質に接することにより陰極アルミニウム箔表面にも酸化が進行して酸化膜が形成されると、コンデンサが直列接続された形となり、合計の容量が元の陽極のみの容量よりも小さくなってしまう。
【0004】
したがって、アルミニウム電解コンデンサにおいて、高い容量を安定して保つためには陰極の酸化を抑制する必要があり、陰極に形成される酸化膜を経時的に増加しがたくする性質の保護膜が望まれている。この保護膜は好ましくは高い導電性を有し、酸化抑制の他にも耐食性も求められる。
【0005】
例えば金めっきなどで電極表面を酸化から保護することが従来より行われている。しかし、金めっきは高価であり、また水溶液を用いたウェットプロセスであるため環境汚染などの問題があり、利用が限られる。
【0006】
金めっきに変わるものとして、DLC(Diamond Like Carbon)などの炭素系材料やチタンなどを保護膜として用いることが考えられるが、DLCのみでは付着強度が弱く剥離しやすく、チタンのみでは徐々に酸化が進行してしまうという問題がある。そこで、安価で導電性と環境安定性を有する保護膜として炭化チタン膜を用いることが好ましい。
【0007】
従来、炭化チタン膜は、反応性蒸着法または反応性スパッタ法により形成されている。反応性蒸着法では、水冷坩堝に入れたチタンを電子銃で溶解、蒸発させ、同時にアセチレン(C22)あるいはメタン(CH4)などの炭化水素ガスを流入して、このガスをイオン化させてチタンと反応させて炭化チタン膜を被成膜体に形成する。
【0008】
反応性スパッタによる炭化チタン膜の形成は例えば特許文献1に示されており、チタンターゲット近傍にアルゴンガスと共にアセチレン(C22)あるいはメタン(CH4)などの炭化水素ガスを流入して、これをイオン化させて、ターゲット表面でチタンと化合またはターゲットからスパッタされたチタンと反応させて炭化チタン膜を形成する。
【特許文献1】特開2000−339784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の炭化水素ガスを用いた方法では、チタンの蒸発速度あるいはスパッタ速度と、炭化水素ガスのガス量やそのイオン化率などが複雑に相互依存しており、目的とする組成の炭化チタン膜またはチタンと炭素との混合膜を得ることが容易ではなかった。すなわち、ターゲット材料の蒸発あるいはスパッタだけでなく、そのターゲット材料とガスとの反応も伴うので条件設定が難しく望む組成の金属炭化物を得るのが困難であった。
【0010】
本発明は上述の問題に鑑みてなされ、その目的とするところは、金属と炭素とを含む膜における金属と炭素との組成比率の制御性を高めた成膜方法及び成膜装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の成膜方法は、成膜室内に配設された導電性を有する被成膜体を、成膜室内の第1領域に移動させて、その第1領域に配置された少なくとも1種類の金属を含む第1ターゲットから放出された金属原子を被成膜体に付着させるステップと、被成膜体を成膜室内の第2領域に移動させて、その第2領域に配置された炭素を含む第2ターゲットから放出された炭素原子を被成膜体に付着させるステップと、を交互に行うことにより金属と炭素とを含む膜を被成膜体に形成することを特徴としている。
【0012】
また、本発明の成膜装置は、導電性を有する被成膜体が配設される成膜室と、その成膜室の第1領域に配置された少なくとも1種類の金属を含む第1ターゲットと、同じ成膜室の第2領域に配置された炭素を含む第2ターゲットと、被成膜体を、第1領域と第2領域に交互に移動させる移動機構と、第1ターゲットから金属原子を放出させて、第1領域に移動された被成膜体に付着させる第1スパッタ機構と、第2ターゲットから炭素原子を放出させて、第2領域に移動された被成膜体に付着させる第2スパッタ機構と、を備えることを特徴としている。
【0013】
本発明では反応性ガスの反応を伴わず、ターゲットからのスパッタのみを利用して金属と炭素とを含む膜の成膜を行うので、得られる膜に含まれる金属と炭素の組成比率は、各ターゲットへの印加電力や、各ターゲットの特性(大きさや質量、密度など)に依存する。これらの値は容易に設定でき、よって形成される膜に含まれる金属と炭素との組成比率を容易に制御することが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、金属と炭素との組成比率を簡単な条件設定にて自由にコントロールすることが可能となり、金属と炭素とが原子レベルで互いに望んだ比率で化合、混合、積層した状態を実現できる。この結果、電極などの導電性を有する部材に長期的安定性を付与する保護膜を安定して、また高速且つ廉価に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る成膜装置は、図1及び図2に示すように、真空槽5と、回転体2と、第1スパッタ機構3aと、第2スパッタ機構3bとを備えている。
【0016】
真空槽5の内部空間は、被成膜体1に対する成膜が行われる成膜室5aとして機能する。成膜室5a内は、図2に示す排気ポート7を介して真空ポンプ6などを備えた真空排気系によって真空排気される。
【0017】
成膜室5a内の略中央には円柱状の回転体2が、その回転軸2bのまわりに回転可能に配設されている。回転体2の外周面2aには、様々な形状、寸法の被成膜体1を取り付けることができる。回転体2は、その回転により、被成膜体1を、第1スパッタ機構3aが配置された成膜室5a内の第1領域と、第2スパッタ機構3bが配置された成膜室5a内の第2領域に交互に移動させる移動機構として機能する。
【0018】
図1では、被成膜体1は矩形状に図示しているが、これに限ることはなく、正方形や円形などのその他形状であってもよい。また、被成膜体1は板状のものに限らず、箔状のものであってもよい。さらに、回転体2の外周部2aに互いに離間させて複数の被成膜体1を取り付けることに限らず、回転体2の外周面2aに連続した箔状の被成膜体を巻き付けてもよい。
【0019】
被成膜体1は、導電性を有する材料からなり、例えば、アルミニウム、銅、鉄、銀、鉛、錫、亜鉛のうちの少なくとも1つを主成分とする金属または合金からなる。
【0020】
本実施形態では、第1スパッタ機構3aと第2スパッタ機構3bは、回転体2の回転軸2bを挟んで対向するように、回転体2の外周面2aの周りに180゜間隔で配置されている。なお、第1スパッタ機構3aと第2スパッタ機構3bとの離間間隔は180゜に限ることはない。第1スパッタ機構3aには第1ターゲット4aが装着され、第2スパッタ機構3bには第2ターゲット4bが装着されている。第1ターゲット4aと第2ターゲット4bは、それぞれ回転体2の外周面2aに対向されている。被成膜体1は、その被成膜面を第1ターゲット4aと第2ターゲット4bに向けるように回転体2の外周面2aに取り付けられる。
【0021】
第1ターゲット4aは、少なくとも1種類の金属を含み、例えば、チタン、タンタル、ニオビウム、ハフニウム、ジルコニウムのうちの少なくとも1つを主成分とする金属または合金からなる。第2ターゲット4bは、炭素を含む材料からなり、例えば、無定形炭素、グラファイト、DLC(Diamond Like Carbon)などのアモルファス(非晶質)カーボン、有機ポリマーのうちの少なくとも1つを主成分とする材料からなる。
【0022】
各スパッタ機構3a、3bは例えばマグネトロンスパッタ機構である。各スパッタ機構3a、3bはそれぞれカソード(図示せず)を備え、各カソードは、それぞれのターゲット4a、4bを支持すると共に、加えられた電界に垂直な磁界を各ターゲット4a、4bの表面に沿って発生させる永久磁石を内蔵している。また、各スパッタ機構3a、3bは、図示しないシャッターにより開閉される開口部9a、9bを有しアノードとして機能するバッフル8a、8bを備える。
【0023】
次に、上記成膜装置を用いた成膜方法について説明する。
【0024】
各カソードへの印加電力すなわち各ターゲット4a、4bへの印加電力と、スパッタ用の不活性ガス流量と、成膜室5a内のガス圧力と、回転体2の回転速度とが安定して、所望の成膜速度が得られる状態になると、各スパッタ機構3a、3bの上記シャッターを開く。なお、成膜室5a内には例えばArガスなどの不活性ガスのみが導入され、活性ガス(反応性ガス)は導入されない。
【0025】
回転体2は60〜200rpmで回転され、この回転体2の回転により、その外周面2aに保持された被成膜体1は、第1ターゲット4aが配置された第1領域と、第2ターゲット4bが配置された第2領域に交互に移動される。第1領域では、不活性ガスイオンの衝突によって第1ターゲット4aから放出された金属原子が被成膜体1に付着され、第2領域では同じく不活性ガスイオンの衝突によって第2ターゲット4bから放出された炭素原子が被成膜体1に付着される。
【0026】
回転体2の連続的な回転により、被成膜体1は第1領域と第2領域への移動を交互に繰り返し、金属原子と炭素原子とが被成膜体1に堆積していき、さらにプラズマ雰囲気にさらされることにより金属原子と炭素原子とが相互に化合して金属と炭素との化合物膜が被成膜体1に形成される。または、金属と炭素との混合膜、あるいは金属原子の層と炭素原子の層とが交互に積層された積層膜が被成膜体1に形成される。
【0027】
それぞれのターゲット4a、4bへの印加電力を適正に設定することにより、回転体2が1回転するときに成膜される膜厚を約0.05nm〜4nm程度に制御することができる。また、回転体2の1回転で1層の原子層が形成されるとは限らず、2回転以上されることで、ほぼ隙間なく原子が並んだ状態の1原子層が形成される場合もある。なお、4nmの膜厚は数十原子層程度に相当する。
【0028】
このように、本実施形態では、活性ガスとの反応を伴わない、固体ターゲットからのスパッタ現象のみを利用した成膜を行うことで、形成された膜に含まれる金属と炭素の組成比率を、従来の活性ガス反応を用いた場合に比べて容易に制御することが可能となり、少なくとも1種類の金属元素と、炭素とが原子レベルで所望の組成比率で化合または混合した膜が得られる。この結果、電極などに長期安定性を与える保護膜を、ばらつきのない安定したプロセスで、さらに高速、廉価に生産することが可能になる。
【0029】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、上記第1の実施形態と同じ構成部分には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0030】
本実施形態では、図3に示すように、第1スパッタ機構3aと第2スパッタ機構3bとを隣り合わせに並べて配置している。そして、各ターゲット4a、4bに直流または交流マグネトロンスパッタを行う。直流の場合は各ターゲット4a、4bへの電力比率を調整し、交流の場合はデューティ比率を調整し、第1ターゲット4aが負電位のときには第2ターゲット4bはスパッタされずに第1ターゲット4aのみがスパッタされ、逆に第1ターゲット4aが正電位のときには第1ターゲット4aはスパッタされずに第2ターゲット4bのみがスパッタされるようにする。
【0031】
また、交流の場合には、回転体2の回転速度に比べて交流のサイクルを数倍以上にし、交流波形やデューティ比率を変えることにより、第1ターゲット4aと第2ターゲット4bとがスパッタされている時間比率を変えることができ、金属元素と炭素との組成比率を任意に変えた炭化金属膜または金属と炭素との混合膜を形成することができる。
【0032】
[第3の実施形態]
図4は、本発明の第3の実施形態に係るスパッタ装置を示す。本実施形態では、被成膜体を第1領域と第2領域に移動させる移動機構が上記第1、第2の実施形態と異なる。
【0033】
本実施形態における移動機構は、筒体12と、送り出しローラ13aと、巻き取りローラ13bと、ガイドローラ14a、14bとを備える。筒体12の外周面は、第1ターゲット4aと第2ターゲット4bに対向している。送り出しローラ13aと巻き取りローラ13bは、筒体12の内部に配設されている。
【0034】
第1スパッタ機構3aと第2スパッタ機構3bは、筒体12の外周面の周りに180゜間隔で配置されている。あるいは、1点鎖線で示すように、第2の実施形態と同様、隣り合わせに並べて配置してもよい。
【0035】
送り出しローラ13は、図4において時計方向に回転されることでその外周面に巻回された箔状の被成膜体11を、ガイドローラ14aを介して筒体12の外周面へと送り出す。この送り出された被成膜体11は、筒体12の外周面に沿って図4において時計方向に走行して、時計方向に回転している巻き取りローラ13bに巻き取られる。これにより、被成膜体11は、第2スパッタ機構3bが配置された第2領域と、第1スパッタ機構3aが配置された第1領域を順に通過していき、第2領域で炭素原子が、第1領域で金属原子がそれぞれ被成膜体11に付着される。この結果、金属と炭素との化合物膜、またはそれらの混合膜、あるいは金属原子の層と炭素原子の層との積層膜が被成膜体11に形成される。
【0036】
本実施形態では、被成膜体11における新しい被成膜面が次々と連続的に第1領域と第2領域を通過していくので、上記第1、第2の実施形態に比べて、被成膜体の交換頻度を少なくでき、特に量産に向いている。
【0037】
なお、被成膜体11を直接筒体12の外周面に走行させることに限らず、筒体12の外周面を走行するシートに被成膜体11を保持させてもよい。さらに、被成膜体11は筒体12の外周面の周方向に連続していることに限らず、間欠的であってもよい。また、第1スパッタ機構3aと第2スパッタ機構3bの配置位置を図4に示す状態から入れ替えて、先に第1ターゲット4aのスパッタ成膜を受けるようにしてもよい。
【実施例1】
【0038】
図1、2に示す上記第1の実施形態に係る成膜装置において、第1ターゲット4aとしてチタンを、第2ターゲット4bとしてグラファイトを用いて、以下に示す条件でスパッタ成膜を行った。
【0039】
グラファイトターゲット(のカソード)への印加電力を25kW、チタンターゲット(のカソード)への印加電力を5.5kWとした。回転体2はその外周面の表面をPET(polyethylene terephthalate)で保護し、その外周面に、横方向長さが10mm、縦方向(回転体2の高さ方向)長さが30mm、厚さが0.5mmのガラス基板を取り付けた。回転体2の回転数は60rpmとした。真空ポンプ6としてターボモレキュラーポンプを用いその出力を100%(毎分3万回転)に設定した。成膜室5a内にはアルゴンガスを流量650sccmで導入し、成膜室5a内圧力を0.6Paとした。
【0040】
以上の条件により、約0.5Å/秒の成膜速度でTiC膜がガラス基板に形成された。表1に、この成膜により得られたTiC膜の反射率測定の結果を示す。なお、上記条件でグラファイトターゲットを使わず、チタンターゲットだけで形成したTi膜の反射率と、Ti:C=1:1の組成比に調整されたTiC膜の反射率を参考に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
本実施例1により形成されたTiC膜は、その反射率がTiC膜(参考)に近く、すなわちTi:C=1:1の良好な黒色のTiC膜を得ることができた。
【実施例2】
【0043】
実施例2では、ガラス基板を回転体外周面の高さ方向(回転軸方向)に10枚取り付けた以外は上記実施例1と同じである。ガラス基板1枚の寸法は上記実施例1と同じく横方向長さが10mm、縦方向(回転体2の高さ方向)長さが30mm、厚さが0.5mmである。表2に、回転体の高さ方向に沿った7箇所の測定位置ごとのTiC膜の成膜速度を示す。表2中における測定位置を示す番号は、回転体の高さ1080mmを15等分した分割線の下から数えた位置を示す。その表2に示されるように、TiC膜の成膜速度は回転体の高さ方向に関して大きなばらつきはなくほぼ均一とすることができた。また、実施例1と同様な反射率測定の結果、良好な黒色のTiC膜を得た。
【0044】
【表2】

【実施例3】
【0045】
実施例3では、図4に示した第3の実施形態に係る成膜装置を用いて、長さ50mの銅箔を筒体12の外周面に沿って走行させて、その銅箔にTiC膜の成膜を行った。その他各種条件は上記実施例1と同じである。なお、実施例3では、各ターゲット4a、4bは図4において実線で示すように互いに離間した配置とした。
【0046】
成膜速度は0.9Å/秒であった。また、実施例1と同様な反射率測定の結果、良好な黒色のTiC膜を得た。また、銅箔に連続してTiC膜を成膜でき、量産に適していることが確認できた。
【実施例4】
【0047】
実施例4では、各ターゲット4a、4bを図4において1点鎖線で示すように隣り合わせに並べて配置し、40kHz、30kWの交流電力を、グラファイトターゲット4bに83%、チタンターゲット4aに17%の時間デューティ比率にて供給してスパッタを行った。その他各種条件は上記実施例3と同じである。
【0048】
本実施例ではTiC膜の成膜速度は約1.0Å/秒であった。また、実施例1と同様な反射率測定の結果、良好な黒色のTiC膜を得た。また、銅箔に連続してTiC膜を成膜でき、量産に適していることが確認できた。
【0049】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、勿論、本発明はこれらに限定されることなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0050】
上述した回転体を中空状にしてその内周面に被成膜体1を保持させ、ターゲットはその被成膜体1に対向するように、回転体の中空部に配置した構成としてもよい。また、図4に示す筒体12においても、その内周面に沿って被成膜体が走行するようにし、その被成膜体に対向するように筒体12の内部にターゲットを配置した構成としてもよい。
【0051】
また、移動機構として回転円盤を用いて、被成膜体をその円盤の周面ではなく端面に保持させ、ターゲットを円盤の端面に対向させる構成としてもよい。
【0052】
被成膜体は、連続的に移動させることに限らず、途中で移動機構を一時的に停止させたりしてもよい。さらに、移動速度も一定に限らず、可変してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る成膜装置の概略斜視図である。
【図2】同成膜装置の模式平面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る成膜装置の模式平面図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係る成膜装置の模式平面図である。
【符号の説明】
【0054】
1…被成膜体、2…回転体、2a…外周面、3a…第1スパッタ機構、3b…第2スパッタ機構、4a…第1ターゲット、4b…第2ターゲット、5…真空槽、5a…成膜室、6…真空ポンプ、11…被成膜体、12…筒体、13a…送り出しローラ、13b…巻き取りローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜室内に配設された導電性を有する被成膜体を、前記成膜室内の第1領域に移動させて、前記第1領域に配置された少なくとも1種類の金属を含む第1ターゲットから放出された金属原子を前記被成膜体に付着させるステップと、
前記被成膜体を、前記成膜室内の第2領域に移動させて、前記第2領域に配置された炭素を含む第2ターゲットから放出された炭素原子を前記被成膜体に付着させるステップと、
を交互に行うことにより前記金属と前記炭素とを含む膜を前記被成膜体に形成することを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
周面が前記第1ターゲット及び前記第2ターゲットに対向して配設された回転体の前記周面に前記被成膜体を保持させ、前記回転体を回転させることにより、前記被成膜体が前記第1領域と前記第2領域をそれぞれ通過するように移動させることを特徴とする請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
送り出しローラから前記被成膜体を送り出すと共に、その被成膜体が、前記第1ターゲット及び前記第2ターゲットに対向する筒体の周面に沿って走行するように巻き取りローラで巻き取ることにより、前記被成膜体が前記第1領域と前記第2領域をそれぞれ通過するように移動させることを特徴とする請求項1に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記第1ターゲットへの印加電力と前記第2ターゲットへの印加電力をそれぞれ制御することにより、前記被成膜体に形成される前記膜に含まれる前記金属と前記炭素との組成比率を制御することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の成膜方法。
【請求項5】
前記第1ターゲットは、チタン、タンタル、ニオビウム、ハフニウム、ジルコニウムのうちの少なくとも1つを主成分とする金属または合金からなることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の成膜方法。
【請求項6】
前記第2ターゲットは、無定形炭素、グラファイト、アモルファスカーボン、有機ポリマーのうちの少なくとも1つを主成分とする材料からなることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の成膜方法。
【請求項7】
前記被成膜体は、アルミニウム、銅、鉄、銀、鉛、錫、亜鉛のうちの少なくとも1つを主成分とする金属または合金からなることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れかに記載の成膜方法。
【請求項8】
導電性を有する被成膜体が配設される成膜室と、
前記成膜室の第1領域に配置された少なくとも1種類の金属を含む第1ターゲットと、
前記成膜室の第2領域に配置された炭素を含む第2ターゲットと、
前記被成膜体を、前記第1領域と前記第2領域に交互に移動させる移動機構と、
前記第1ターゲットから金属原子を放出させて、前記第1領域に移動された前記被成膜体に付着させる第1スパッタ機構と、
前記第2ターゲットから炭素原子を放出させて、前記第2領域に移動された前記被成膜体に付着させる第2スパッタ機構と、
を備えることを特徴とする成膜装置。
【請求項9】
前記移動機構は、前記第1ターゲット及び前記第2ターゲットに対向する周面を有し、前記周面に前記被成膜体を保持して回転される回転体であることを特徴とする請求項8に記載の成膜装置。
【請求項10】
前記移動機構は、
前記第1ターゲット及び前記第2ターゲットに対向する周面を有する筒体と、
前記被成膜体を前記周面に沿って走行させるべく送り出す送り出しローラと、
前記周面を走行してきた前記被成膜体を巻き取る巻き取りローラと、
を備えることを特徴とする請求項8に記載の成膜装置。
【請求項11】
前記第1ターゲットは、チタン、タンタル、ニオビウム、ハフニウム、ジルコニウムのうちの少なくとも1つを主成分とする金属または合金からなることを特徴とする請求項8乃至請求項10の何れかに記載の成膜装置。
【請求項12】
前記第2ターゲットは、無定形炭素、グラファイト、アモルファスカーボン、有機ポリマーのうちの少なくとも1つを主成分とする材料からなることを特徴とする請求項8乃至請求項11の何れかに記載の成膜装置。
【請求項13】
前記被成膜体は、アルミニウム、銅、鉄、銀、鉛、錫、亜鉛のうちの少なくとも1つを主成分とする金属または合金からなることを特徴とする請求項8乃至請求項12の何れかに記載の成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−52443(P2006−52443A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−235062(P2004−235062)
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(593071993)タイゴールド株式会社 (2)
【Fターム(参考)】