説明

成膜方法及び成膜装置

【課題】成膜レートを低下させることなく、基板上に形成される薄膜の厚み分布を改善できる成膜方法を提供する。
【解決手段】真空槽内の略中央付近に軸線Z1の回りに自転するメインドラム6を配置し、中心付近の領域には筒状の反応プロセスゾーン30を配置する。メインドラム6の外周には開口窓66がドラムの自転方向に沿って複数形成してあり、この開口窓66を通じてメインドラム6内側の反応プロセスゾーン30と、メインドラム6外側の成膜プロセスゾーン20とが連通する。メインドラム6の内側には、軸線Z1と同心の円上に沿って、かつ略等分周した位置に4つの軸線Z2が形成してあり、各軸線Z2の回りに回転するサブドラム12が配置してある。サブドラム12の外周には基板ホルダ14が装着してあり、サブドラム12の自転と同期して基板ホルダ14も回転する。メインドラム6の回転速度とサブドラム12の回転速度はそれぞれ独立に制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパッタを行うことで基板上に薄膜を形成するための成膜方法と、この方法の実現に適した成膜装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
金属ターゲットをスパッタして、基板上に金属または金属の不完全反応物からなる超薄膜を形成した後、その超薄膜に不活性ガスを混入した反応性ガスの活性種を接触させて反応させ、金属化合物に変換することを繰り返し行い、基板上に金属化合物からなる薄膜を所望厚みで形成する方法は知られている。このような方法を実現するための装置も知られている。
【0003】
例えば特許文献1では、断面方形状の真空槽内部の中央付近に、基板ホルダを装着した回転ドラムを配置し、この回転ドラムを真空槽の鉛直方向に延びる中心軸の回りに自転させることにより、基板ホルダに保持された基板を、真空槽の側壁付近に複数の仕切壁で区画された成膜ゾーンと反応ゾーンとの間で繰り返し移動させ、基板上に超薄膜を形成した後、この超薄膜の膜組成を変換させて薄膜とすることを所望厚みまで繰り返す技術が開示してある。
【0004】
こうした装置構成では、基板ホルダが成膜ゾーンと反応ゾーンとを繰り返し移動可能となるように形成されているので、基板ホルダの移動速度(回転速度)を調整することで、成膜ゾーンでのスパッタ時間と反応ゾーンでの反応時間を調整可能である。そして、基板ホルダの移動速度を制御しながら、基板ホルダを成膜ゾーンと反応ゾーンの間で移動させることにより、所定の光学特性を持つ薄膜を基板に形成することができるものである。
【0005】
なお、特許文献1における成膜ゾーンでは、金属ターゲットをスパッタすることにより、移動してきた基板に金属または金属の不完全反応物からなる超薄膜を形成し、反応ゾーンでは、移動してきた基板の超薄膜に不活性ガスを混入した反応性ガス(例えば酸素ガス)の活性種を接触させて反応させ、前記超薄膜を金属化合物からなる薄膜に膜組成を変換させる。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された装置の構成で、基板ホルダの移動速度(回転ドラムの回転速度)を制御した場合、回転ドラムの回転速度が遅いと、スパッタリング成膜レートが低下するだけでなく、スパッタリング成膜時間が長くなり、ドラム一回転あたりに基板に形成される超薄膜の膜厚が厚くなってしまって、その後の膜組成変換処理を適切に行うことが困難な場合を生じうる。このため、従来の装置構成では、回転ドラムの回転速度を速く設定する必要があった。ところが、回転ドラムの回転速度を速くすると、従来の装置構成では、反応ゾーンにおける基板の滞留時間が、成膜ゾーンにおける基板の滞留時間と同等か、あるいはそれよりも短くなることから、反応ゾーンでは、反応源としてのプラズマを高い出力で発生させていた。このようなハイパワーのプラズマを用いて超薄膜から薄膜への膜組成変換を行った場合、装置の構成部品や膜組成変換後の最終的な薄膜にダメージを与えやすく、得られる薄膜の品質が悪化し、所望の特性が得られないことがあった。
【0007】
また、従来の装置構成では、回転ドラムを自転させるだけで成膜ゾーンと反応ゾーンとの間を繰り返し移動させるものであったため、例えば凸レンズ基板のような凸状の薄膜形成面を持つ基板に処理する場合、最終的に形成される薄膜の厚み分布が平坦化しにくいとの問題もあった。
【0008】
【特許文献1】国際公開WO2004/108981
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、成膜レートを低下させることなく、基板上に形成される薄膜の厚み分布を改善することができる成膜方法と、この方法を実現するのに適した成膜装置とを、提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る成膜方法は、真空を維持した状態で、基板ホルダに保持された基板を成膜ゾーンと反応ゾーンとの間で繰り返し移動させる工程を有する。また、金属ターゲットをスパッタすることにより、前記成膜ゾーンに導入された基板に超薄膜を形成する工程を有する。また、反応性ガスを接触させることにより、前記反応ゾーンに導入された基板の前記超薄膜の膜組成を変換させる工程を有する。そして、中心軸の回りに前記基板ホルダを自転させながら、前記反応ゾーンに面する領域内で前記基板ホルダを移動させる。
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る成膜装置は、基板保持移動手段と、成膜ゾーンと、反応ゾーンとを、真空槽内に少なくとも有する。基板保持移動手段は、基板ホルダに保持される基板を成膜ゾーンと反応ゾーンとの間で繰り返し移動させる。成膜ゾーンは、金属ターゲットをスパッタすることにより、前記成膜ゾーンに導入される基板に超薄膜を形成する。反応ゾーンは、反応性ガスを接触させることにより、前記反応ゾーンに導入される基板の前記超薄膜の膜組成を変換させる。そして、中心軸の回りに前記基板ホルダを自転させる第1の駆動手段と、前記反応ゾーンに面する領域内で前記基板ホルダを移動させる第2の駆動手段とを、さらに有する。
【0012】
本発明でいう「回転」には、自転の他に公転も含む。従って、単に「中心軸の回りに回転する」と言う場合には、ある中心軸の回りに自転する態様の他に、ある中心軸の回りに公転する態様も含む。
【0013】
本発明でいう「移動」には、曲線的な移動(例えば円周移動)の他に直線移動も含む。従って、「反応ゾーンに面する領域内で基板ホルダを移動」には、ある中心軸の回りに公転移動する態様の他に、ある2点を結ぶ直線軌道上を往復移動する態様も含む。
【0014】
本発明でいう「超薄膜」とは、超薄膜が複数回堆積されて最終的な薄膜となることから、この「薄膜」との混同を防止するために用いた用語であり、最終的な「薄膜」より十分薄いという意味である。
【0015】
好ましくは、前記反応ゾーンを、真空槽の鉛直方向を長手方向とする筒状に形成するとともに、前記真空槽内の略中央付近に配置し、前記基板ホルダの自転軸を第1の中心軸(軸線Z2。以下同じ)とし、前記反応ゾーンの中心軸を第2の中心軸(軸線Z1。以下同じ)としたときに、前記基板ホルダを、第1の中心軸の回りに自転させながら、第2の中心軸の回りに公転させる。
【0016】
好ましくは、前記成膜ゾーンを、前記真空槽の側壁に沿って複数形成し、前記基板ホルダを、前記第2の中心軸と同心の円上に沿って、かつ略等分周した位置に形成された複数の前記第1の中心軸の回りに自転可能に配置し、各基板ホルダのそれぞれを自転させながら公転させる。
【0017】
好ましくは、基板ホルダの自転速度(RS1)と移動速度をそれぞれ独立して制御する。好ましくは、基板ホルダの自転速度が移動速度より早くなるよう制御する。ここでの移動速度は、例えば基板ホルダの公転速度(RS2)である。ただし、これに限定されない。例えば図12に示す態様も考えられる。
【0018】
好ましくは、前記移動速度に対する前記自転速度の比(自転速度/移動速度)が20以上である。移動速度が基板ホルダの公転速度(RS2)である場合、RS1に対するRS2の比(RS2/RS1)が20以上となるよう速度を制御することが好ましい。
【0019】
好ましくは、基板ホルダに保持された基板が成膜ゾーンに面する領域内に導入されてから導出されるまでの間に、基板ホルダを第1の中心軸の回りに少なくとも1周回(特に2周回以上)、回転させる。
【0020】
好ましくは、前記反応ゾーンを、真空槽の鉛直方向を長手方向とする筒状に形成するとともに、前記真空槽内の略中央付近に配置し、前記基板ホルダの自転軸を第1の中心軸とし、前記反応ゾーンの中心軸を第2の中心軸としたときに、前記第2の中心軸と同心の円上に沿って前記第1の中心軸が形成してあり、前記第1の中心軸の回りに前記基板ホルダが自転可能に配置してあり、前記第1の駆動手段は、前記第1の中心軸の回りに前記基板ホルダを自転させ、前記第2の駆動手段は、前記第2の中心軸の回りに前記基板ホルダを公転させるように構成する。
【0021】
好ましくは、前記成膜ゾーンを、前記真空槽の側壁に沿って複数形成し、前記第2の中心軸と同心の円上に沿って、かつ略等分周した位置に、前記第1の中心軸が複数形成してあり、各第1の中心軸の回りに前記基板ホルダが自転可能に配置してあり、各基板ホルダごとに、前記第1の駆動手段が複数設置してある。
【0022】
好ましくは、前記第2の中心軸の回りに自転する中空状の第1の筒体と、前記第1の筒体の内部に形成された前記各第1の中心軸の回りにそれぞれ自転し、外周面に前記基板ホルダを装着する複数の第2の筒体とを備え、前記第1の駆動手段は、前記第1の中心軸の回りに前記第2の筒体を自転させるものであり、前記第2の駆動手段は、前記第2の中心軸の回りに前記第1の筒体を自転させるとともに前記第2の円筒体を公転させるように構成してある。
【0023】
好ましくは、前記第1の筒体の外周には、前記第2の中心軸の軸線方向を長手方向とする開口窓が前記第1の筒体の回転方向に沿って断続的に複数形成してあり、前記第1の筒体の内壁に一端が固定され、他端が前記第2の中心軸に向けて延びる複数の仕切手段により前記第1の筒体の内部が複数の領域に区画してあり、この区画された各領域に、複数の前記第2の筒体が配置してある。
【0024】
好ましくは、前記第1の駆動手段と前記第2の駆動手段の各作動状況を別々に制御可能な制御手段をさらに有する。好ましくは、前記制御手段は、前記基板ホルダの自転速度が移動速度より早くなるように制御する。ここでの移動速度は、例えば基板ホルダの公転速度である。ただし、これに限定されない。例えば図12に示す態様も考えられる。
【0025】
好ましくは、前記制御手段は、前記基板ホルダに保持された基板が、前記成膜ゾーンに面する領域に導入されてから導出されるまでの間に、前記基板ホルダを第1の中心軸の回りに少なくとも1周回(特に2周回以上)、回転させるように制御する。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、基板ホルダを回転させながら、反応ゾーンに面する領域内で基板ホルダを移動させる。このため、第1に、基板ホルダの回転速度を速め、スパッタリング成膜レートを高めても、基板ホルダの移動速度を調整することによって、反応ゾーンにおける基板の必要十分な滞留時間を確保することができる。その結果、反応ゾーンにおいて、装置の構成部品や膜組成変換後の最終的な薄膜にダメージを与えにくい低出力のプラズマを用いることができる。第2に、基板ホルダを所定速度で自転させるだけの構成の従来の装置を用いた場合と比較して、例えば凸レンズ基板のような凸状の薄膜形成面を持つ基板に処理する場合であっても、最終的に形成される薄膜の厚み分布(特に厚みの横分布)を改善することができる。
【0027】
なお、従来の装置構成では、真空槽の略中央に単一の回転ドラムを備え、成膜ゾーンと反応ゾーンとは、真空槽の側壁付近に区画された領域に配置されるので、たとえ複数の仕切壁で領域を区切っても、成膜ゾーンと反応ゾーンとの間に不活性ガスと反応性ガスが回り込みやすく、成膜ゾーンでの成膜条件に制限があったが、本発明によれば、こうした不都合も解消される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0029】
《第1実施形態》
本実施形態では、成膜装置として、図1に示すスパッタリング装置2を例示して説明する。
【0030】
《スパッタリング装置》
図1及び図2に示すように、本実施形態に係るスパッタリング装置2は、一度の処理で複数の基板(図示省略)に対して成膜可能なバッチ方式の所謂カルーセル型のスパッタ成膜装置であって、真空槽4を有する。
【0031】
真空槽4は、本実施形態では鉛直方向(図1の紙面方向及び図2の上下方向。以下同様)に延びる側壁41で、平面方向(前記鉛直方向に直交する方向。図1の上下左右方向及び図2の紙面方向。以下同様)を取り囲んで構成してあるチャンバー本体42を有する。本実施形態では、チャンバー本体42の平面方向の断面を方形状としてあるが、その他の形状(例えば円状など)であってもよい。チャンバー本体42の底面には、図2に示すように開口部43が形成してある。本実施形態では、開口部43を、チャンバー本体42底面の平面方向の中心付近に配置してある。なお、真空槽4には、排気用の配管(図示省略)が接続される。この排気用配管には、真空槽4内を排気するための真空ポンプ(図示省略)が接続され、この真空ポンプとコントローラ(図示省略)とによって真空槽4内の真空度を調節できるようになっている。真空槽4は、例えばステンレスなどの金属で構成される。
【0032】
側壁41の内側には、複数の第1仕切壁44が固定してあり、この第1仕切壁44によって真空槽4の内部で取り囲まれる領域が複数形成される。各第1仕切壁44は、図1の時計回り上流側の第1の領域が形成された位置から、約90度と約180度移動した位置に、第2及び第3の各領域が形成されるように固定される。本実施形態では、第1仕切壁44は、向かい合う1対の面が開口した筒状の直方体であり、一方の端部(一対)が側壁41の内側に当接して固定される。第1仕切壁44には、水冷用の配管(図示省略)が取り付けてあってもよい。第1仕切壁44は、例えばステンレスなどの金属で構成される。
【0033】
真空槽4内の略中央付近には、単一のメインドラム6が配置してある。メインドラム6は、中空状の第1の筒体として機能し、本実施形態では中空状の円筒体としてあり、真空槽4の鉛直方向に沿った軸線Z1を中心軸(第2の中心軸)としてその回りに自転可能に設けられる。なお、メインドラム6は、中空であればよく、円筒体以外のその他の形状(例えば中空の多角柱体や中空の略円錐台形体など)であってもよい。メインドラム6は、真空槽4から電気的に絶縁され、電位的にフローティングされた状態となっている。
【0034】
メインドラム6は、真空槽4内を真空に維持した状態で、真空槽4の上部に設けられた第1の駆動手段としての第1サーボモータ8(図2、図6及び図7参照)によって回転駆動される。
【0035】
図2、図6及び図7に示すように、第1サーボモータ8は、第2の駆動手段として機能し、第1駆動制御装置10により制御される。第1駆動制御装置10は、第2の回転速度制御手段として機能し、第1サーボモータ8の駆動状況を制御する。第1サーボモータ8の駆動によりメインドラム6は回転する。
【0036】
図3及び図4に示すように、本実施形態では、メインドラム6の外周には、真空槽4の鉛直方向(上下方向)が長手方向となる矩形状の開口窓66がドラムの回転方向に沿って断続的に複数形成してある。開口窓66は、すべてが開口されている必要はなく、後述の基板ホルダ14に取り付けられる基板が、後述の成膜プロセスゾーン20に暴露される態様であれば、その一部に遮断部分を含んでいてもよい。
【0037】
本実施形態では、メインドラム6の側壁62の内側には、側壁62から軸線Z1の方向に向けて延びる複数の第2仕切壁64が固定してあり、この第2仕切壁64によってメインドラム6の内部を複数の領域に区画してある。第2仕切壁64は、一方の端部がメインドラム6の側壁62に当接して固定されるが、他方の端部は軸線Z1までは延びておらずその手前で止まっており、メインドラム6の中心(=軸線Z1)付近に所定範囲の筒状領域が確保されるようにしてあり、本実施形態ではここに後述の反応プロセスゾーン30が配置される。第2仕切壁64は、後述の成膜プロセスゾーン20と、後述の反応プロセスゾーン30との間でガスの回り込みを防ぐシールド壁としての機能を司る。第2仕切壁64も、第1仕切壁44と同様に、冷却可能構造にしてあってもよく、例えばステンレスなどの金属で構成される。
【0038】
メインドラム6の第2仕切壁64により区画された各領域には、複数のサブドラム12が配置してある。この点が、本実施形態での特徴点の一つである。サブドラム12の配置個数は、本実施形態では4個であるが、この個数に限定する趣旨ではない。
【0039】
サブドラム12は、第2の筒体として機能し、本実施形態では円筒体としてあり、真空槽4の鉛直方向に沿った軸線Z2を中心軸(第1の中心軸)としてその回りに自転可能に設けられる。サブドラム12の自転軸である軸線Z2は、上述したメインドラム6の自転軸である軸線Z1と同心の円上に沿って、かつ略等分周した位置にそれぞれ形成してある。したがって、本実施形態では、メインドラム6が軸線Z1を中心に自転すると、これに伴って、各サブドラム12は、メインドラム6の自転軸である軸線Z1の回りを公転する。なお、サブドラム12は、円筒体以外のその他の形状(例えば多角柱体や略円錐台形体など)であってもよい。
【0040】
図5に示すように、各サブドラム12の外側(外周)には、基板保持移動手段としての基板ホルダ14が装着してある。基板ホルダ14は、その外周面に設けられた基板保持手段(例えば凹部。図示省略)によって、薄膜形成対象としての複数の基板(図示省略)を例えば真空槽4の鉛直方向に複数列、保持することが可能である。基板ホルダ14の一部は、メインドラム6の外周面に形成された開口窓66(図3及び図4参照)を通じて、メインドラム6の外側で、かつ真空槽4内に露出される。
【0041】
図3〜図5に示すように、基板ホルダ14はサブドラム12と一体となって、メインドラム6の内側で、サブドラム12の軸線Z2を中心軸(第1の中心軸)としてその回りに自転可能に設けられる。基板ホルダ14の軸線(図示省略)とサブドラム12の軸線Z2は一致するので、サブドラム12を軸線Z2を中心に自転させることにより、これに同期して基板ホルダ14も自転する。
【0042】
サブドラム12及び基板ホルダ14は、ともに、真空槽4から電気的に絶縁され、電位的にフローティングされた状態となっている。
【0043】
サブドラム12は、真空槽4内を真空状態に維持した状態で、真空槽4の上部に設けられた第2サーボモータ16(図2、図6及び図7参照)によって回転駆動される。サブドラム12の回転に同期して基板ホルダ14も回転する。
【0044】
図6及び図7に示すように、第2サーボモータ16は、第2の駆動手段とは独立した第1の駆動手段として機能し、第2駆動制御装置18により制御される。第2駆動制御装置18は、第2の回転速度制御手段とは独立した第1の回転速度制御手段として機能し、第2サーボモータ16の駆動状況を制御する。第2サーボモータ16の駆動によりサブドラム12は回転(自転)し、その回転速度は例えば10〜150rpmの範囲で任意に制御される。
【0045】
メインドラム6の外側で、かつ真空槽4の第1仕切壁44によって囲まれる領域には、成膜プロセスゾーン20(図1及び図2参照)が配置してある。本実施形態では、成膜プロセスゾーン20は、超薄膜としての中間薄膜を形成する工程を実施する領域である。「超薄膜」とは上述したとおりである。「中間薄膜」とは、本実施形態では金属あるいは金属不完全酸化物からなり、成膜プロセスゾーン20で形成される薄膜のことである。
【0046】
図1及び図2に戻り、成膜プロセスゾーン20には、基板ホルダ14の外周面に対向するように、スパッタ電極21a、21bが配置してある。スパッタ電極21a、21bとしては、例えばマグネトロンスパッタ電極などが挙げられる。スパッタ電極21a、21bは、絶縁部材(図示省略)を介して接地電位にある真空槽4に固定される。本実施形態では、スパッタ電極21a、21bは、トランス22を介して、交流電源23に接続され、交番電界が印加可能に構成されている。
【0047】
スパッタ電極21a、21bには、ターゲットとしてのターゲット24a、24bが保持される。ターゲット24a、24bは、例えば平板状であり、基板ホルダ14の外周面と対向する面が、基板ホルダ14の軸線Z2と垂直な方向を向くように保持される。
【0048】
成膜プロセスゾーン20には、ガス導入手段としてのマスフローコントローラ25が、配管を介して連結してある。マスフローコントローラ25は、不活性ガス(例えばアルゴンガス)を貯留するスパッタガスボンベ27、反応性ガスを貯留する反応性ガスボンベ52に接続されている。この反応性ガスは、反応性ガスボンベ52から、マスフローコントローラ25で制御して、配管を通して成膜プロセスゾーン20に導入可能に構成されている。反応性ガスとしては、例えば酸素ガス、窒素ガス、弗素ガス、オゾンガスなどが挙げられる。
【0049】
成膜プロセスゾーン20におけるターゲット24a、24bと基板ホルダ14との間には、ターゲット24a、24bと基板ホルダ14との間を遮断または開放するように可動するプレスパッタシールド(図示省略)が配置してあってもよい。このプレスパッタシールドは、スパッタを開始する時に、スパッタが安定して行われるようになるまでターゲット24a、24bと基板ホルダ14との間を遮断し、スパッタが安定して行われるようになった後にターゲット24a、24bと基板ホルダ14との間を開放することにより、スパッタが安定してから基板へスパッタ原子を堆積するためのものである。
【0050】
メインドラム6の内部(中心付近)に確保された筒状の領域には、反応プロセスゾーン30が、メインドラム6の軸線Z1に沿って配置してある。すなわち、真空槽4内の略中央付近に、当該真空槽4の鉛直方向に沿って延びる態様で、反応プロセスゾーン30が配置してあり、本実施形態では、この反応プロセスゾーン30の配置も特徴的である。
【0051】
本実施形態では、反応プロセスゾーン30は、不活性ガスを混入した反応性ガスの活性種を、成膜プロセスゾーン20で基板に形成された中間薄膜に接触させ、この中間薄膜の膜組成を変換させる工程を実施する領域である。
【0052】
反応プロセスゾーン30の真空槽4の底面に形成された開口部43には、本実施形態では、活性種発生手段としての活性種発生装置31(図2参照)が連結されている。
【0053】
活性種発生装置31は、活性種発生手段として機能し、活性種を発生させ、ラジカル源とも呼ばれる。活性種発生装置31は、反応性ガスプラズマを発生させる石英管からなる反応性ガスプラズマ発生室33と、反応性ガスプラズマ発生室33に巻回されたコイル状の電極35と、マッチングボックス(MB)37と、マッチングボックス37を介してコイル状の電極35に接続された高周波電源39と、マスフローコントローラ50と、マスフローコントローラ50を介して接続された反応性ガスボンベ52と、を備える。
【0054】
活性種発生装置31の反応性ガスプラズマ発生室33で放電により生じるプラズマは、プラズマイオン、電子、ラジカル、励起状態のラジカル、原子、分子等を構成要素とする。
【0055】
反応性ガスプラズマ発生室33で発生したプラズマ中の反応性ガスの活性種は、反応プロセスゾーン30内において、反応プロセスに参加することが可能となる。反応性ガスの活性種とは、イオン、ラジカル等のことである。また、ラジカルとは、遊離基(ratical)であり、一個以上の不対電子を有する原子または分子である。また、励起状態(excite state)とは、エネルギーの最も低い安定な基底状態に対して、それよりもエネルギーの高い状態のことをいう。
【0056】
反応性ガスボンベ52からマスフローコントローラ50を介して酸素ガスなどの反応性ガスが、反応性ガスプラズマ発生室33に供給され、マッチングボックス37を介して高周波電源(RF.G)39からの高周波電力が、コイル状の電極35に印加されると、反応性ガスのプラズマが反応性ガスプラズマ発生室33内に発生するように構成されている。
【0057】
本実施形態では、外部磁石51が、反応性ガスプラズマ発生室33の外側に配置されている。また内部磁石53が、反応プロセスゾーン30内に配置されている。この外部磁石51及び内部磁石53は、プラズマ発生部に例えば20〜300ガウスの磁場を形成することにより高密度プラズマを発生させ、活性種発生効率を高めるという機能を有する。なお、本実施形態では、外部磁石51及び内部磁石53の双方を配設しているが、いずれか一方を配設するようにしてもよい。
【0058】
《スパッタリング方法》
次に、上述した構成のスパッタリング装置2を用いた成膜方法の一例としてのスパッタリング方法を説明する。本実施形態では、酸化ケイ素(SiO)からなる誘導体薄膜(最終薄膜)を基板上に形成する場合を例示する。
【0059】
(1)まず、複数の基板を基板ホルダ14に保持させ、ターゲット24a,24bを各スパッタ電極21a,21bに保持させた後、真空槽4内の圧力を、例えば1Pa以下に減圧する。
【0060】
基板としては、薄膜を形成させる基板面(以下、第1面)と第1面とは反対の基板面(以下、第2面)とが平行である平板状基板や、第1面が凸状となる凸状基板(例えば凸レンズ基板など)や、第1面が凹状となる凹状基板などが挙げられる。特に本実施形態では、凸状基板や凹状基板に薄膜形成処理を施す場合に有効である。
【0061】
ターゲット24a,24bを構成する材料としては、本実施形態ではケイ素(Si)を用いる。ただし、本発明ではこれに限定されないことは勿論である。
【0062】
(2)次に、第1サーボモータ8を作動させることによりメインドラム6の回転を開始し、メインドラム6を軸線Z1の回りを自転させる。メインドラム6の回転速度(RS1)は、例えば50rpm以下(但し、0rpmは除く)、好ましくは10rpm以下(但し、0rpmは除く)、より好ましくは6rpm以下(但し、0rpmは除く)の範囲で選択され、第1駆動制御装置10の設定を行う。なお、RS1の値が0(ゼロ)であると、従来の装置構成との差がなくなるので、RS1の下限は、好ましくは1rpmである。このように本実施形態ではメインドラム6をかなり遅い速度で回転させることができる。メインドラム6の内部には複数のサブドラム12が配置してあるので、このメインドラム6の自転に伴い、各サブドラム12は軸線Z1の回りを回転する。すなわち各サブドラム12は軸線Z1の回りを公転する。ここで、RS1は、各サブドラム12の公転速度に等しい。
【0063】
メインドラム6の回転開始と同時に、あるいはその前後に、第2サーボモータ16を作動させることによりサブドラム12の回転を開始し、サブドラム12を軸線Z2の回りを自転させる。これにより、基板ホルダ14も軸線Z2の回りを自転する。
【0064】
サブドラム12の回転速度(RS2)は、例えば10rpm以上、好ましくは30rpm以上、より好ましくは50rpm以上で選択され、第2駆動制御装置18の設定を行う。RS2の値を小さくしすぎると、スパッタリング成膜時間が長くなり、サブドラム12の一回転あたりに基板に形成される超薄膜の膜厚が厚くなり、反応プロセスゾーン30での膜組成変換処理(例えば酸化処理)を完全に行うことができない傾向がある。これに対し、RS2の値があまりに大きくしても、得られる効果にさほど影響を与えないので、RS2の上限は、好ましくは200rpm、より好ましくは100rpmである。このように本実施形態では、サブドラム12をメインドラム6に対してかなり速い速度で回転させる。
【0065】
本実施形態では、RS1に対するRS2の比(RS2/RS1)が、例えば20以上、好ましくは40以上、より好ましくは50以上となるよう、第1駆動制御装置16及び第2駆動制御装置18の設定を行うことが望ましい。(RS2/RS1)の値が大きくなるほど、基板回転方向に対する基板内膜厚の横分布が均一になっていく傾向がある。
【0066】
サブドラム12の回転方向は、メインドラム6の回転方向と同一であってもよいし(同方向回転)、あるいは異なっていてもよい(異方向回転)。
【0067】
本実施形態では、第2サーボモータ16は、第1サーボモータ8の駆動状況を制御する第1駆動制御装置10とは独立した第2駆動制御装置18によってその駆動状況が制御される。このため、軸線Z2の回りを自転するサブドラム12の回転速度(RS2)を、軸線Z1の回りを自転するメインドラム6の回転速度(RS1)と異ならせることができる。
【0068】
RS2が速い(回転数が多い)ほど、基板上に形成される超薄膜としての中間薄膜の厚み横分布が平坦化されやすくなるとともに、一回転あたりの成膜厚みが薄くなり、反応プロセスゾーン30における膜組成の変換工程を行いやすくなる利点がある。また、RS2が速いほど、基板ホルダ14に保持された基板の反応プロセスゾーン30に導入される頻度が多くなるので、反応プロセスの時間を長く確保することが可能となり、ローパワーのプラズマでも十分に対応可能となる利点もある。
【0069】
本実施形態では、サブドラム12をメインドラム6よりも早く回転(自転)させることが好ましい。すなわち、RS2≧RS1とすることが好ましい。こうすることで、成膜後の薄膜厚みの横分布が改善される利点がある。「薄膜厚みの横分布」とは、基板上に形成される薄膜の、サブドラム12の自転方向に沿った厚み分布のことである。
【0070】
より好ましくは、軸線Z1の回りをサブドラム12が回転(公転)し、当該サブドラム12が各成膜プロセスゾーン20に導入されてから導出されるまでの間に、当該サブドラム12を軸線Z2の回りに、少なくとも1回、好ましくは複数回、回転(自転)するようにサブドラム12の回転速度(RS2)を設定する。例えば凸レンズ基板などの第1面が凸状となる基板の凸状第1面に薄膜を形成する場合において、凸状第1面を正面に見据え、当該凸状第1面に向かって右方面から、ターゲット24a、24bからスパッタされた金属あるいは金属不完全酸化物を付着させる場合に、金属などの粒子が付着してくる方向とは逆側の付着最左端より奥側(凸状第1面に向かって左方面側)の凸状第1面には、金属などの粒子は付着せず、第1面の中央付近により多くの粒子が付着し、結果的に、薄膜厚みの横分布が平坦化しにくくなる。そこで、メインドラム6の回転速度(RS1)に対してサブドラム12の回転速度(RS2)をこのように設定することにより、基板の凸状第1面に薄膜を形成する場合でも、その凸状第1面上に形成される中間薄膜の厚みの横分布を改善することができる。
【0071】
各成膜プロセスゾーン20を通過するまでの間のサブドラム12の回転回数が多いほど、中間薄膜の厚みの横分布がより一層平坦化されるので好ましい。
【0072】
従来の装置構成では、基板ホルダの回転速度いかんで、成膜プロセスゾーン20でのスパッタ時間を調整していた。すなわち、基板ホルダ14の回転速度を速くすると、スパッタ時間が短くなり、基板上に堆積する粒子数が少なくなって中間薄膜の膜厚が薄くなる。一方、基板ホルダ14の回転速度を遅くすると、スパッタ時間が長くなり、基板上に堆積する粒子数が多くなって中間薄膜の膜厚が厚くなる。本実施形態では、成膜プロセスゾーン20でのスパッタ時間は、基板ホルダ14の回転速度(RS2)とともに、基板ホルダ14の移動速度、すなわちメインドラム6の回転速度(RS1)にも依存する。そして、サブドラム12がメインドラム6の軸線Z1の回りを移動し、サブドラム12が各成膜プロセスゾーン20を通過するまでの間に、サブドラム12が軸線Z2の回りに1回以上、回転(自転)するようにサブドラム12の回転速度(RS2)を設定することにより、基板に形成される中間薄膜の厚みの横分布を改善することができる。
【0073】
(3)次に、真空槽4内の圧力が安定した後に、成膜プロセスゾーン20内の圧力を、例えば0.05〜0.2Paに調整する。
【0074】
次に、成膜プロセスゾーン20内に、スパッタ用の不活性ガスであるアルゴンガスと、反応性ガスとしての酸素ガスを、スパッタガスボンベ27、反応性ガスボンベ42からマスフローコントローラ25で流量調整して導き、成膜プロセスゾーン20内のスパッタ雰囲気を調整する。このとき、成膜プロセスゾーン20に導入するアルゴンガスの流量を、例えば100〜300sccm程度に調整する。成膜プロセスゾーン20に導入する酸素ガスの流量を、例えば10sccm程度以下(但し、0sccmを除く)に調整する。成膜プロセスゾーン20に導入する酸素ガスの流量が大きくなるほど、中間薄膜を構成するケイ素不完全酸化物SiO(x<2)の化学量論係数xの値が大きくなる。なお、「sccm」は、0℃、101325Paにおける1分間あたりの流量を表すもので、cm/minに等しい。
【0075】
(4)次に、交流電源23からトランス22を介して、マグネトロンスパッタ電極21a、21bに、周波数1〜100KHzの交流電圧を印加し、ターゲット24a、24bに、交番電界が掛かるようにする。これにより、ある時点においてはターゲット24aがカソード(マイナス極)となり、その時ターゲット24bは必ずアノード(プラス極)となる。次の時点において交流の向きが変化すると、今度はターゲット24bがカソード(マイナス極)となり、ターゲット24aがアノード(プラス極)となる。このように一対のターゲット24a、24bが、交互にアノードとカソードとなることにより、プラズマが形成され、カソード上のターゲットに対してスパッタを行う。
【0076】
スパッタを行っている最中は、基板温度を例えば室温に保持し、サブドラム12(引いては基板ホルダ14)を軸線Z2の回りに所定の回転速度(RS2)で回転駆動させ、しかもメインドラム6を軸線Z1の回り所定の回転速度(RS1)で回転駆動させて、基板を移動させながら、基板の第1面にケイ素或いはケイ素不完全酸化物からなる中間薄膜を形成させる。
【0077】
スパッタを開始する時には、スパッタが安定して行われるようになるまでターゲット24a、24bと基板ホルダ14との間をプレスパッタシールドで遮断し、スパッタが安定して行われるようになった後にターゲット24a、24bと基板ホルダ14との間を開放する。これにより、スパッタが安定してから基板へスパッタ原子を堆積させることができる。
【0078】
スパッタを行っている最中には、アノード上には非導電性あるいは導電性の低いケイ素不完全酸化物、酸化ケイ素等が付着する場合もあるが、このアノードが交番電界によりカソードに変換された時に、これらケイ素不完全酸化物等がスパッタされ、ターゲット表面は元の清浄な状態となる。そして、一対のターゲット24a、24bが、交互にアノードとカソードとなることを繰り返すことにより、常に安定なアノード電位状態が得られ、プラズマ電位(通常アノード電位とほぼ等しい)の変化が防止され、基板の第1面(膜形成面)に安定してケイ素不完全酸化物が形成される。
【0079】
このように、成膜プロセスゾーン20にてスパッタを行うことにより、中間薄膜としての、ケイ素或いはケイ素不完全酸化物からなる中間薄膜を基板の第1面に形成する。ケイ素不完全酸化物は、本発明における不完全反応物としての不完全反応物であり、酸化ケイ素SiOの構成元素である酸素が欠乏した不完全な酸化ケイ素SiO(x<2)のことである。
【0080】
なお、スパッタ電極21a、21bと基板ホルダ14との間に、補正板及び遮蔽板(いずれも図示省略)を設け、遮蔽板の形状に応じた膜厚分布の中間薄膜を形成させるようにしてもよい。
【0081】
(5)次に、中間薄膜形成工程を行った後には、メインドラム6の回転駆動によって基板ホルダ14(サブドラム12)に保持された基板を、成膜プロセスゾーン20に面する領域から反応プロセスゾーン30に面する領域に移動させる。
【0082】
反応プロセスゾーン30に面する領域に基板を移動させるには、本実施形態では、メインドラム6を軸線Z1の回りに回転させることにより行う。
【0083】
本実施形態では、反応プロセスゾーン30で、中間薄膜を構成するケイ素或いはケイ素不完全酸化物を酸化反応させて酸化ケイ素(SiO)に変換させることで、膜組成変換工程を行う。
【0084】
反応プロセスゾーン30には、反応性ガスボンベ52から反応性ガスとしての酸素ガスを導入する。コイル状の電極35に、100KHz〜50MHzの高周波電力を印加し、活性種発生装置31によりプラズマを発生させる。なお、反応プロセスゾーン30の圧力は、0.07〜1Paに維持する。反応性ガスプラズマ発生室33内のプラズマ中には、反応性ガスの活性種が存在し、この反応性ガスの活性種は、反応プロセスゾーン30に導かれる。
【0085】
そして、メインドラム6及びサブドラム12が回転して、ケイ素或いはケイ素不完全酸化物から構成される中間薄膜が形成した基板が反応プロセスゾーン30に面する領域に導入されると、反応プロセスゾーン30では、中間薄膜を構成するケイ素或いはケイ素不完全酸化物を酸化反応させる工程を行う。すなわち、ケイ素或いはケイ素不完全酸化物を酸素ガスの活性種により酸化反応させて、酸化ケイ素(SiO)に変換させる。
【0086】
なお、反応プロセスゾーン30における膜組成変換工程では、最終薄膜の膜厚が中間薄膜の膜厚よりも厚くなるように、最終薄膜が形成される。すなわち、中間薄膜を構成するケイ素或いはケイ素不完全酸化物SiO(x<2)を酸化ケイ素(SiO)に変換することにより中間薄膜を膨張させ、最終薄膜の膜厚を中間薄膜の膜厚よりも厚くする。この膨張率は、成膜プロセスゾーン20に導入する酸素ガスの流量に依存する。すなわち、成膜プロセスゾーン20での中間薄膜形成工程で成膜プロセスゾーン20に導入する酸素ガスの流量を減少させて、ケイ素不完全酸化物の化学量論係数xの値を小さくするにしたがって、膜厚の増加率が大きくなる関係にある。言い換えれば、中間薄膜形成工程で、成膜プロセスゾーン20に導入する酸素ガスの流量を調整することで、中間薄膜を構成するケイ素不完全酸化物の化学量論係数xを決定して(xを0とするなら、中間薄膜はケイ素から構成される)、中間薄膜に対する最終薄膜の膜厚の増加率を決定することができる。
【0087】
(6)以上のように、成膜プロセスと反応プロセスを繰り返すことにより、基板上に酸化ケイ素(SiO)からなる誘導体薄膜(最終薄膜)を所定厚みで形成することができる。
【0088】
本実施形態に係るスパッタリング装置2を用いたスパッタリング方法によれば、成膜プロセスゾーン20におけるケイ素或いはケイ素不完全酸化物(SiO(x<2))の基板上への形成と、反応プロセスゾーン30におけるケイ素或いはケイ素不完全反応物の酸化ケイ素(SiO)への変換が繰り返され、基板上に所望の光学的特性を有する薄膜が所望厚みで形成される。
【0089】
特に本実施形態では、第1サーボモータ8によってメインドラム6が回転駆動されると、メインドラム6の内部に配置してあるサブドラム12は、メインドラム6の中心軸(第2の中心軸)の回りに公転する。このとき、第2サーボモータ16を作動させることでサブドラム12は第1の中心軸の回りに自転する。基板ホルダ14はサブドラム12と同期して回転するので、基板ホルダ14に保持される基板は、メインドラム6の外周に形成された開口窓66を介した成膜プロセスゾーン20に面する領域と、メインドラム6の中心(=軸線Z1)付近の筒状領域に配置された反応プロセスゾーン30に面する領域との間で移動する。これにより、基板は、成膜プロセスゾーン20に配置されるターゲット24a、24bに対して相対的に移動するとともに、反応プロセスゾーン30に対しても相対的に移動する。
【0090】
その結果、基板ホルダ14の自転速度(RS1)を速め、スパッタリング成膜レートを高めても、基板ホルダ14の公転速度(RS2)を調整することによって、反応プロセスゾーン30における基板の必要十分な滞留時間を確保することができる。その結果、反応プロセスゾーン30において、スパッタリング装置2の構成部品や膜組成変換後の最終的な薄膜にダメージを与えにくいローパワーのプラズマを用いることができる。また、例えば凸レンズ基板のような凸状の薄膜形成面を持つ基板の凸状面に薄膜を形成する場合であっても、最終的に形成される薄膜の厚みの横分布を平坦化することができる。
【0091】
また、成膜プロセスゾーン20と反応プロセスゾーン30の配置を工夫することで、各ゾーン20,30間に不活性ガスと反応性ガスが回り込むおそれもなく、成膜プロセスゾーン20での成膜条件に特に制限はない。
【0092】
さらに、基板ホルダ14に保持された多数の基板に対して、一度にスパッタによる薄膜を形成することが可能となり、薄膜の大量生産が可能となる。
【0093】
《第2実施形態》
図8に示すように、本実施形態では、図1及び図2に示す真空槽4内の略中央付近には、中空状の第1の筒体として機能する中空状の小円筒体6aが、軸線Z1を中心軸としてその回りに回転可能に配置してある。小円筒体6aは、真空槽4から電気的に絶縁され、電位的にフローティングされた状態となっており、真空槽4内を真空に維持した状態で、真空槽4の上部に設けられた第1の駆動手段としての第1サーボモータ8a(図2及び図11参照)によって軸線Z1を中心軸とし、その回りを回転駆動される。
【0094】
本実施形態では、小円筒体6aの内部が反応プロセスゾーン30とされる。反応プロセスゾーン30の真空槽4の底面に形成された開口部43には、第1実施形態と同様に、活性種発生装置31(図2参照)が連結される。
【0095】
図2及び図11に示すように、第1サーボモータ8aは、第1駆動制御装置10aにより制御される。第1サーボモータ8aの駆動により小円筒体6aは、第1実施形態のメインドラム6と同様に回転し、その回転速度が制御される。
【0096】
図8に戻り、小円筒体6aの外周には、真空槽4の鉛直方向(上下方向)が長手方向となる矩形状の開口窓66aがドラムの回転方向に沿って断続的に複数形成してある。開口窓66aは、すべてが開口されている必要はなく、基板ホルダ14に取り付けられる基板が、反応プロセスゾーン30に暴露される態様であれば、その一部に遮断部分を含んでいてもよい。
【0097】
隣接する各開口窓66a間の側壁62aの外側には、側壁62aから軸線Z1を中心に放射状に延びる複数の第2仕切壁64aが固定してあり、この第2仕切壁64aによって小円筒体6aの側壁62a外部を複数の領域に区画してある。第2仕切壁64aは、一方の端部が小円筒体6aの側壁62aに当接して固定されるが、他方の端部は軸線Z1を中心として放射状に延びている。
【0098】
図9及び図10に示すように、小円筒体6aの第2仕切壁64aにより区画された各領域には、複数のサブドラム12が配置してあり、その他の構成は第1実施形態と同様である。このような構成によっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0099】
《その他の実施形態》
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0100】
本実施形態では、カルーセル型のスパッタ装置を用いているが、これに限定する趣旨ではない。基板ホルダ14は必ず自転させる必要があるが、反応プロセスゾーン30の配置によっては必ずしも基板ホルダ14を公転させる必要はなく、基板ホルダ14を成膜プロセスゾーン20と反応プロセスゾーン30との間で繰り返し移動可能であり、その移動速度を制御することが可能な構成のスパッタ装置であればよい。例えば図12に示すように、平面方向の断面を方形状としてあるチャンバー本体42の左右(図12の紙面方向に向けての左右)の側壁41側に、それぞれ成膜プロセスゾーン20と反応プロセスゾーン30を設け、基板ホルダ14を自転させながら、成膜プロセスゾーン20と反応プロセスゾーン30との間を、直線的に繰り返し移動するような構成のスパッタ装置でもよい。
【0101】
本実施形態では、スパッタの一例であるマグネトロンスパッタを行うスパッタリング装置を用いているが、マグネトロン放電を用いない2極スパッタ等、他の公知のスパッタを行うスパッタリング装置を用いることもできる。
【0102】
本実施形態では、ターゲット24a,24bを構成する材料として、ケイ素(Si)を用いる場合を例示したが、それ以外に、例えばニオブ(Nb)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、スズ(Sn)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、テルル(Te)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、ハフニウム(Hf)、ニッケル・クロム(Ni−Cr)、インジウム・スズ(In−Sn)などの各種金属を用いることができる。また、単一種類の金属に限られるものではなく、複数種類の金属をターゲットとして使用してもよい。また、これらの金属の化合物、例えば、Al、TiO、ZrO、Ta、HfO等を用いることもできる。
【0103】
本実施形態では、成膜プロセスゾーン20と反応プロセスゾーン30とに、同一の反応性ガスボンベ52から反応性ガスを導入するように構成しているが、成膜プロセスゾーン20と反応プロセスゾーン30とに、異なるガスボンベを連結し、同じ元素を有する、異なるガスを導入することも可能である。
【0104】
本実施形態では、成膜プロセスゾーン20と反応プロセスゾーン30に反応性ガスとして酸素を導入しているが、その他に、オゾン、一酸化二窒素(NO)等の酸化性ガス、窒素等の窒化性ガス、メタン等の炭化性ガス、弗素、四弗化炭素(CF)等の弗化性ガスなどを導入することもできる。
【0105】
本実施形態では、反応性ガスプラズマ部として、反応性ガスプラズマ発生室の外部または内部に電極を設けた誘導結合型プラズマ源を用いているが、反応性ガスプラズマ発生室内にコイル電極を配置した誘導結合型プラズマ源や、容量結合型プラズマ源や、誘導結合・容量結合混在型プラズマ源などを用いることもできる。
【実施例】
【0106】
次に、本発明の実施の形態をより具体化した実施例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明する。但し、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0107】
《実験例1〜8》
まず、マグネトロンスパッタを行う構成の図1〜図5に示すスパッタリング装置2を準備した。本例では、断面が円形(半径r1=450mm)の中空円筒体をメインドラム6として用い、このメインドラム6の内側に第2仕切壁64によって区画された4つの領域に、各領域ごとに、断面が円形(半径r2=150mm)の円筒体をサブドラム12として配置した。
【0108】
そして、基板を基板ホルダ14に保持させ、ターゲット24a,24bを各スパッタ電極21a,21bに保持させた後、真空槽4内を0.1Paに減圧した。基板としては、φ50mm×(中央部厚み20mm+端部厚み3mm)の第1面(薄膜形成面)が凸状で、材質がガラスのものを用いた。こうした基板を基板ホルダ14の外周面に、6個(鉛直方向)×6列(周方向)で配置した。ターゲット24a,24bとしては、縦670mm×横150mm×厚み6mmの平板状で、材質がニオブのターゲットを用いた。
【0109】
次に、第1サーボモータ8を作動させ、メインドラム6を軸線Z1の回りに表1に示す回転速度(RS1)で回転させた。これと同時に、第2サーボモータ16を作動させ、サブドラム12を軸線Z2の回りに表1に示す各回転速度(RS2)で、かつ表1に示す回転方向で回転させた。
【0110】
次に、真空槽4内の圧力が安定した後に、成膜プロセスゾーン20内の圧力を0.15Paに調整した。
【0111】
次に、成膜プロセスゾーン20内に、アルゴンガスを150sccm程度の流量で導入し、成膜プロセスゾーン20内のスパッタ雰囲気を調整した。
【0112】
次に、スパッタ電極21a、21bに、周波数40KHzの交流電圧を印加し、ターゲット24a、24bに交番電界が掛かるようにした(その他のスパッタ条件は、投入電力:8kW、基板温度:室温とした。)
次に、反応プロセスゾーン30内に、酸素ガスを180sccm程度の流量で導入するとともに、反応プロセスゾーン30内の圧力を0.15Paに調整し、さらに活性種発生装置31としての誘導結合型プラズマ発生装置(図1及び図2参照)を作動させた(投入電力:3kW)。このとき、コイル状の電極35に135MHzの高周波電力を印加し、プラズマを発生させた。
【0113】
そして、所定時間経過後に、ターゲット24a、24bと基板ホルダ14との間を遮断するプレスパッタシールドを開放して、目的とする特性値及び膜厚を得るために、中間薄膜の成膜と反応を繰り返し実施し、最終薄膜を形成した。
【0114】
メインドラム6と基板ホルダ14(サブドラム12)の各回転速度ごとに、成膜時間(単位は秒)、基板に形成された最終薄膜の光学的特性を評価した。光学的特性の評価のパラメータとしては、厚み、屈折率(λ=550nm)、消衰係数(λ=550nm)及び横分布を選択し、分光エリプソメータ及び片面反射率計の測定データを用いて評価した。
【0115】
特に最終薄膜の「横分布」は、次のようにして評価した。まず、最終薄膜の中心部分と、左右端からそれぞれ5mm位置の部分との片面反射率を測定し、分光チャートを得る。次に、得られた分光チャートからそれぞれの位置での反射率が最高となる波長を読み取る。ここでは、最高反射率波長を、λ(左端5mm部分)、λ(中心部分)、λ(右端5mm部分)とする。次に、各位置での最高反射率波長の平均値λAv(=((λ+λ+λ)/3))と、最大値λmax と、最小値λmin とを特定し、次式により算出した(単位は%)。
【0116】
[数1] ((λmax −λmin )/λAv)×100
結果を表1に示す。なお、表中での消衰係数の表示において、例えば「8E−4」は「8×10−4」を意味し、以下同様である。
【0117】
《実験例9》
図13に示す構造のスパッタリング装置を準備した。真空チャンバーの側壁付近には、複数の仕切壁で区画されたスパッタ成膜ゾーンと、酸化反応ゾーンとを形成した。真空チャンバーの中央付近に、基板ホルダを装着した断面が円形(半径=450mm)の中空円筒体を回転ドラムを配置した。回転ドラムは真空チャンバーの鉛直方向に延びる中心軸の回りに回転(自転)可能に配置され、基板ホルダに保持された基板を、スパッタ成膜ゾーンと、酸化反応ゾーンとの間で繰り返し移動させることが可能である。本例では、回転ドラムを中心軸の回りに100rpmの回転速度で回転させた。これら以外は、上述した《実験例1〜8》と同じ条件で、中間薄膜の成膜と反応を繰り返し実施して最終薄膜を形成し、同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0118】
【表1】

表1に示すように、本発明の装置を用いて成膜した場合(実験例1〜8)、実験例9の装置を用いて成膜した場合と比較して、最終薄膜の横分布に優れた結果が得られることが確認できた。
【0119】
以上、説明したように、基板ホルダ14を自転させながら公転移動させることにより、基板ホルダを自転させるだけであった従来のスパッタリング装置と比較して、優位性を確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】図1は本実施形態に係るスパッタリング装置を示す平面図である。
【図2】図2は図1のII-II線に沿った断面図である。
【図3】図3は図1及び図2で用いるメインドラムとサブドラムの配置の一例を示す斜視図である。
【図4】図4は図3のIV-IV線に沿った断面図である。
【図5】図5は図3及び図4で用いるサブドラムの構成例を示す斜視図である。
【図6】図6は図3及び図4のメインドラムとサブドラムをそれぞれ独立駆動させる一例を示す斜視図である。
【図7】図7は図6のVII-VII線に沿った断面図である。
【図8】図8は図3及び図4のメインドラムに代わる構成例を示す斜視図である。
【図9】図9は図8の小円筒体とサブドラムの配置の一例を示す斜視図である。
【図10】図10は図9のX-X線に沿った断面図である。
【図11】図11は図10及び図10の小円筒体とサブドラムをそれぞれ独立駆動させる一例を示す斜視図である。
【図12】図12は本実施形態に係るスパッタリング装置の他の態様例を示す平面図である。
【図13】図13は従来構成のスパッタリング装置を示すイメージ平面図である。
【符号の説明】
【0121】
2… スパッタリング装置(成膜装置)
4… 真空槽
44… 第1仕切壁
6… メインドラム(第1の筒体)
6a… 小円筒体(第1の筒体)
Z1… メインドラムの中心軸線(第2の中心軸)
62,62a… 側壁
64,64a… 第2仕切壁
66,66a… 開口窓
8,8a… 第1サーボモータ(第2の駆動手段)
10,10a… 第1駆動制御装置
12… サブドラム(第2の筒体)
Z2… サブドラムの中心軸線(第1の中心軸)
14… 基板ホルダ
16… 第2サーボモータ(第1の駆動手段)
18… 第2駆動制御装置
20… 成膜プロセスゾーン(成膜ゾーン)
30… 反応プロセスゾーン(反応ゾーン)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空を維持した状態で、基板ホルダに保持された基板を成膜ゾーンと反応ゾーンとの間で繰り返し移動させる工程と、
金属ターゲットをスパッタすることにより、前記成膜ゾーンに導入された基板に超薄膜を形成する工程と、
反応性ガスを接触させることにより、前記反応ゾーンに導入された基板の前記超薄膜の膜組成を変換させる工程とを、有する成膜方法であって、
中心軸の回りに前記基板ホルダを自転させながら、前記反応ゾーンに面する領域内で前記基板ホルダを移動させることを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
請求項1に記載の成膜方法において、
前記反応ゾーンを、真空槽の鉛直方向を長手方向とする筒状に形成するとともに、前記真空槽内の略中央付近に配置し、
前記基板ホルダの自転軸を第1の中心軸とし、
前記反応ゾーンの中心軸を第2の中心軸としたときに、
前記基板ホルダを、第1の中心軸の回りに自転させながら、第2の中心軸の回りに公転させることを特徴とする成膜方法。
【請求項3】
請求項2に記載の成膜方法において、
前記成膜ゾーンを、前記真空槽の側壁に沿って複数形成し、
前記基板ホルダを、前記第2の中心軸と同心の円上に沿って、かつ略等分周した位置に形成された複数の前記第1の中心軸の回りに自転可能に配置し、
各基板ホルダのそれぞれを自転させながら公転させることを特徴とする成膜方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の成膜方法において、
前記基板ホルダの自転速度と移動速度をそれぞれ独立して制御する成膜方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の成膜方法において、
前記基板ホルダの自転速度が移動速度より早くなるよう制御する成膜方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の成膜方法において、
前記移動速度が、前記基板ホルダの公転速度である成膜方法。
【請求項7】
請求項6に記載の成膜方法において、
前記公転速度に対する前記自転速度の比(自転速度/公転速度)が20以上である成膜方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の成膜方法において、
前記基板ホルダに保持された基板が前記成膜ゾーンに面する領域内に導入されてから導出されるまでの間に、前記基板ホルダを第1の中心軸の回りに少なくとも1周回、回転させる成膜方法。
【請求項9】
基板ホルダに保持される基板を成膜ゾーンと反応ゾーンとの間で繰り返し移動させる基板保持移動手段と、
金属ターゲットをスパッタすることにより、前記成膜ゾーンに導入される基板に超薄膜を形成する成膜ゾーンと、
反応性ガスを接触させることにより、前記反応ゾーンに導入される基板の前記超薄膜の膜組成を変換させる反応ゾーンとを、真空槽内に少なくとも有する成膜装置であって、
中心軸の回りに前記基板ホルダを自転させる第1の駆動手段と、
前記反応ゾーンに面する領域内で前記基板ホルダを移動させる第2の駆動手段とを、さらに有する成膜装置。
【請求項10】
請求項9に記載の成膜装置において、
前記反応ゾーンを、真空槽の鉛直方向を長手方向とする筒状に形成するとともに、前記真空槽内の略中央付近に配置し、
前記基板ホルダの自転軸を第1の中心軸とし、
前記反応ゾーンの中心軸を第2の中心軸としたときに、
前記第2の中心軸と同心の円上に沿って前記第1の中心軸が形成してあり、前記第1の中心軸の回りに前記基板ホルダが自転可能に配置してあり、
前記第1の駆動手段は、前記第1の中心軸の回りに前記基板ホルダを自転させ、前記第2の駆動手段は、前記第2の中心軸の回りに前記基板ホルダを公転させるように構成してある成膜装置。
【請求項11】
請求項10に記載の成膜装置において、
前記成膜ゾーンを、前記真空槽の側壁に沿って複数形成し、
前記第2の中心軸と同心の円上に沿って、かつ略等分周した位置に、前記第1の中心軸が複数形成してあり、
各第1の中心軸の回りに前記基板ホルダが自転可能に配置してあり、
各基板ホルダごとに、前記第1の駆動手段が複数設置してある成膜装置。
【請求項12】
請求項11に記載の成膜装置において、
前記第2の中心軸の回りに自転する中空状の第1の筒体と、
前記第1の筒体の内部に形成された前記各第1の中心軸の回りにそれぞれ自転し、外周面に前記基板ホルダを装着する複数の第2の筒体とを備え、
前記第1の駆動手段は、前記第1の中心軸の回りに前記第2の筒体を自転させるものであり、前記第2の駆動手段は、前記第2の中心軸の回りに前記第1の筒体を自転させるとともに前記第2の円筒体を公転させるように構成してある成膜装置。
【請求項13】
請求項12に記載の成膜装置において、
前記第1の筒体の外周には、前記第2の中心軸の軸線方向を長手方向とする開口窓が前記第1の筒体の回転方向に沿って断続的に複数形成してあり、
前記第1の筒体の内壁に一端が固定され、他端が前記第2の中心軸に向けて延びる複数の仕切手段により前記第1の筒体の内部が複数の領域に区画してあり、この区画された各領域に、複数の前記第2の筒体が配置してある成膜装置。
【請求項14】
請求項9〜13のいずれかに記載の成膜装置において、
前記第1の駆動手段と前記第2の駆動手段の各作動状況を別々に制御可能な制御手段をさらに有する成膜装置。
【請求項15】
請求項14に記載の成膜装置において、
前記制御手段は、前記基板ホルダの自転速度が移動速度より早くなるように制御する成膜装置。
【請求項16】
請求項14または15に記載の成膜装置において、
前記制御手段は、前記基板ホルダに保持された基板が、前記成膜ゾーンに面する領域に導入されてから導出されるまでの間に、前記基板ホルダを第1の中心軸の回りに少なくとも1周回、回転させるように制御する成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−74136(P2009−74136A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−244222(P2007−244222)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(390007216)株式会社シンクロン (52)
【Fターム(参考)】