成膜方法及び発光装置の作製方法
【課題】光による加熱成膜法により正確なパターンで、かつ良質な膜を成膜し、高繊細な発光装置を生産性よく作製できる技術を提供することを課題の一とする。
【解決手段】光による加熱成膜法において、光吸収層への光照射工程を、光照射時間を0.1ミリ秒以上1ミリ秒未満(より好ましくは0.2ミリ秒以上0.5ミリ秒未満)とし、かつ光源から光吸収層に向かって照射されるエネルギー密度を2×103W/cm2以上2×105W/cm2以下(より好ましくは2×103W/cm2以上1×105W/cm2以下)とする。さらに、成膜する材料層(有機化合物材料を含む層)が設けられた成膜用基板と、対向して配置される被成膜基板とを、材料層表面と被成膜面との間隔dを0<d≦10μm(より好ましくは0<d≦5μm)とすることが好ましい。
【解決手段】光による加熱成膜法において、光吸収層への光照射工程を、光照射時間を0.1ミリ秒以上1ミリ秒未満(より好ましくは0.2ミリ秒以上0.5ミリ秒未満)とし、かつ光源から光吸収層に向かって照射されるエネルギー密度を2×103W/cm2以上2×105W/cm2以下(より好ましくは2×103W/cm2以上1×105W/cm2以下)とする。さらに、成膜する材料層(有機化合物材料を含む層)が設けられた成膜用基板と、対向して配置される被成膜基板とを、材料層表面と被成膜面との間隔dを0<d≦10μm(より好ましくは0<d≦5μm)とすることが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
成膜方法及び発光装置の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネセンス(以下、ELとも記す)素子を備える発光装置には、フルカラー表示を行うため、カラー発光するカラー発光素子を用いる。カラー発光素子を形成するには、各色の発光材料を微細なパターンに電極上に形成する必要がある。
【0003】
一般的に発光材料は、蒸着法によって成膜されるが、蒸着法は、材料利用効率が低いことや基板サイズが限られるなどの問題点を有しており、低コストで高生産性が要求される工業化には不向きである。
【0004】
上記問題を解決する技術として、発光材料をレーザーやフラッシュランプからの光を用いて有機ドナー層を有するドナー基板より、素子作成用基板に転写し発光層を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−308974号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のような転写法においては、素子作成用基板に成膜される発光層のパターンのずれやぼけ、膜質の不良などの問題があった。この問題は発光装置の高繊細化にともなって顕著となり、歩留まりの低下も招く。従って、さらなる正確なパターンでの良質な膜が成膜できる成膜方法が望まれている。
【0006】
上記問題を鑑みて、光による加熱成膜法により正確なパターンで、かつ良質な膜を成膜することを課題の一とする。高繊細な発光装置を生産性よく作製できる技術を提供することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
透光性基板上に光吸収層及び有機化合物材料を含む層が形成された成膜用基板に光を照射し、透光性基板を透過させて、光吸収層に光を照射することによって有機化合物材料を含む層に含まれる材料を、対向して配置された被成膜基板へ成膜する。有機化合物材料を含む層に含まれる材料の加熱手段として光照射工程を用いる。
【0008】
成膜方法において、得られる薄膜の形状の正確性、薄膜の膜質に大きく影響するのは光照射工程の制御である。本明細書で開示する発明は、光照射工程において、照射時間及びエネルギー密度を制御することで薄膜の形状不良(パターンぼけ)を抑制し、良質の膜質を得る。なお、エネルギー密度とは光源より照射領域に向かって照射されたエネルギー密度である。
【0009】
光吸収層への光照射工程において、光照射時間を0.1ミリ秒(msec.)以上1ミリ秒(msec.)未満(より好ましくは0.2ミリ秒(msec.)以上0.5ミリ秒(msec.)以下)とし、かつ光源から光吸収層に向かって照射されるエネルギー密度を2×103W/cm2以上2×105W/cm2以下(より好ましくは2×103W/cm2以上1×105W/cm2以下)とする。さらに、成膜する材料層(有機化合物材料を含む層)が設けられた成膜用基板と、対向して配置される被成膜基板とを、材料層表面と被成膜面との間隔dを0<d≦10μm(より好ましくは0<d≦5μm)とすることが好ましい。上記のような光照射工程を行うと、被成膜基板に正確なパターン形状の良質な薄膜を成膜することができる。
【0010】
光吸収層に照射された光のエネルギーは光吸収層によって、一部反射、吸収される。よって、光吸収層の光吸収率により熱として得られるエネルギーは異なる。光吸収層の光吸収率は、用いる材料や膜厚によって制御することができる。例えば、膜厚200nmのチタン膜であれば、キセノンフラッシュランプ光に対して約50%の光吸収率を示す。
【0011】
用いる光の波長は、光吸収層が吸収する波長であり、本明細書で開示する光照射時間及びエネルギー密度を満たす、パターンぼけ及び膜質不良が抑制できる波長を用いればよく、光源などの種類には特に限定されない。
【0012】
好適に用いられる例としてはフラッシュランプ(キセノンフラッシュランプ、クリプトンフラッシュランプなど)がある。フラッシュランプは短時間で強度の高い光を繰り返し、大面積に照射することができるため、処理基板の面積にかかわらず、効率よく均一に加熱することができる。また、ランプ光は一度に広範囲を処理することができるため、作製工程時間を短縮し、スループットを向上することが可能となる。ランプ光を用いる場合の照射時間は半値幅とする。
【0013】
光吸収層を成膜パターンを反映して選択的に形成すれば、被成膜基板に該パターンで薄膜を形成することができる。
【0014】
また、光吸収層に光が照射されないように、透光性基板と光吸収層との間に反射層を選択的に形成してもよい。反射層によって光は反射されるので、反射層のパターンを反映した薄膜を被成膜基板に形成することができる。
【0015】
さらに、反射層と有機化合物材料を含む層との間に熱の伝導を妨げる断熱層を設けてもよい。断熱層を、光に対する透過率は60%以上とし、かつ熱伝導率が反射層及び光吸収層に用いる材料の熱伝導率よりも小さい材料を用いて形成することが好ましい。熱伝導率が低いと、照射された光から得られる熱を効率よく成膜に用いることができる。
【0016】
本明細書で開示する発明の構成の他の一形態は、光吸収層が設けられた透光性基板と、光吸収層上に有機化合物材料を含む層とを含む成膜用基板を用い、成膜用基板の有機化合物材料を含む層形成面と、被成膜基板の被成膜面とが離れて向き合うように、成膜用基板と被成膜基板とを配置し、透光性基板を通過させて、光源より光を光吸収層に照射し、光を照射された光吸収層上の有機化合物材料を含む層に含まれる材料を被成膜基板上に成膜し、光源から光吸収層に向かって照射されるエネルギー密度は2×103W/cm2以上2×105W/cm2以下であり、時間は0.1ミリ秒以上1ミリ秒未満の間で光を光吸収層に照射する。
【0017】
本明細書で開示する発明の構成の他の一形態は、光吸収層が設けられた透光性基板と、光吸収層上に有機化合物材料を含む層とを含む成膜用基板を用い、成膜用基板の有機化合物材料を含む層形成面と、被成膜基板の被成膜面とが離れて向き合うように、成膜用基板と被成膜基板とを配置し、透光性基板を通過させて、光源より光を光吸収層に照射し、光を照射された光吸収層上の有機化合物材料を含む層に含まれる材料を被成膜基板上に成膜し、光源から光吸収層に向かって照射されるエネルギー密度は2×103W/cm2以上2×105W/cm2以下であり、時間は0.1ミリ秒以上1ミリ秒未満の間で光を光吸収層に照射し、光の照射は、有機化合物材料を含む層形成面と被成膜基板の被成膜面との距離を10μm以下に配置して行う。
【0018】
本明細書で開示する成膜方法を用いて、被成膜基板上に設けられた第1の電極層上に発光層を形成し、発光層上に第2の電極層を形成して発光素子を有する発光装置を作製することができる。また、本明細書で開示する成膜方法を用いて発光層を形成する場合、被成膜領域を一画素ごとに対応させてもよいし、被成膜領域を複数の画素を含むように対応させ複数の画素の発光層を一度に作製してもよい。
【0019】
本明細書で開示する成膜方法を用いると蒸着材料と被成膜基板との間にマスクを設けることなく、被成膜基板に微細なパターンの薄膜を形成することができる。
【0020】
光吸収層に光を照射する工程は減圧下で行うことが好ましい。減圧下で光を照射し、被成膜基板に材料を成膜する工程を行うと、成膜される膜へのゴミ等の汚染物の影響を軽減することができる。また、材料の気化温度が低下するので、熱による被成膜基板へのダメージを抑制できる。また、装置内に残存する残留気体に、気化分子が衝突し散乱するのを防止でき、パターンぼけの発生を抑制できる。
【0021】
本明細書で開示する成膜方法は、高範囲を処理することも可能なため、大面積基板であっても生産性よく被成膜基板に薄膜を形成することができる。よって、高繊細な発光装置及び電子機器を安価で作製することができる。
【発明の効果】
【0022】
蒸着材料と被成膜基板との間にマスクを設けることなく、被成膜基板に微細なパターンでかつ膜質の良好な薄膜を形成することができる。さらに、このような成膜方法を用いて発光素子を形成し、高繊細な発光装置を作製することができる。また、大面積の被成膜基板に薄膜を形成することができるため、大型の発光装置及び電子機器を作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本明細書で開示する発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。但し、本明細書で開示する発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0024】
(実施の形態1)
本実施の形態では、被成膜基板に微細なパターンで薄膜を形成することを目的とした成膜用基板及び成膜方法の一例について図1を用いて説明する。
【0025】
図1(A)に成膜用基板の一例を示す。第1の基板101上に選択的に光吸収層104が形成されている。第1の基板101と光吸収層104との間に下地膜となる絶縁膜を形成してもよい。
【0026】
成膜用基板に形成される光吸収層104に第1の基板101側より光を照射して、被成膜基板に膜を成膜する。従って、用いる光に対して、第1の基板101は透光性を、光吸収層104は光吸収性をそれぞれ有する必要がある。よって、照射される光の波長により、第1の基板101、光吸収層104に好適な材料の種類が変化するため、適宜材料を選択する必要がある。
【0027】
また、第1の基板101は熱伝導率が低い材料であることが好ましい。熱伝導率が低いと、照射された光から得られる熱を効率よく成膜に用いることができる。第1の基板101としては、例えば、ガラス基板、石英基板、無機材料を含むプラスチック基板などを用いることができる。ガラス基板としては、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスのような無アルカリガラスと呼ばれる電子工業用に使われる各種ガラス基板を適用することができる。
【0028】
光吸収層104は、成膜の際に照射された光を吸収し、発熱する層である。よって、光吸収層104は、照射する光に対して低い反射率を有し、高い吸収率を有する材料で形成されていることが好ましい。具体的には、光吸収層104は、照射される光に対して、70%以下の反射率を示すことが好ましい。
【0029】
光吸収層104には、種々の材料を用いることができる。例えば、窒化チタン、窒化タンタル、窒化モリブデン、窒化タングステンなどの金属窒化物、チタン、モリブデン、タングステンなどの金属、カーボンなどを用いることができる。なお、照射される光の波長に応じて、光吸収層104に好適な材料の種類が変化することから、適宜材料を選択する必要がある。また、光吸収層104は一層に限らず複数の層により構成されていてもよい。例えば、金属と金属窒化物の積層構造としてもよい。
【0030】
光吸収層104は、種々の方法を用いて形成することができる。例えば、スパッタリング法、電子ビーム蒸着法、真空蒸着法、化学気相成長(CVD;Chemical Vapor Deposition)法などにより形成することができる。
【0031】
光吸収層104の膜厚は、材料によって異なるが、照射した光が透過しない膜厚であることが好ましい。具体的には、10nm以上2μm以下の膜厚であることが好ましい。また、光吸収層の膜厚が薄い方が低いエネルギー密度の光で成膜することができるため、更に好ましくは10nm以上600nm以下の膜厚であるとよい。
【0032】
光吸収層104は、有機化合物材料を含む層105に含まれる材料の成膜可能温度(材料層に含まれる材料の少なくとも一部が被成膜基板へ成膜される温度)まで加熱できるのであれば、照射する光の一部が透過してもよい。ただし、一部が透過する場合には、有機化合物材料を含む層105に含まれる材料として、光によって分解しない材料を用いることが必要である。
【0033】
光吸収層104上に保護膜を形成してもよい。保護膜は光吸収層への光照射により光吸収層が蒸発するのを防ぐ効果がある。保護膜としては酸化珪素膜、窒化珪素膜、酸化窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜を用いることができ、それらの積層でもよい。保護膜の膜厚は100nm以下とするのが好ましい。
【0034】
光吸収層104上に被成膜基板上に成膜される材料を含む有機化合物材料を含む層105を形成する(図1(B)参照。)。
【0035】
有機化合物材料を含む層105は、被成膜基板上に成膜する材料を含んで形成される層である。そして、成膜用基板に光を照射することにより、有機化合物材料を含む層105に含まれる材料が加熱され、有機化合物材料を含む層105に含まれる材料の少なくとも一部が被成膜基板上に成膜される。有機化合物材料を含む層105が加熱されると、有機化合物材料を含む層に含まれる材料の少なくとも一部が気化すること、もしくは、有機化合物材料を含む層の少なくとも一部に熱変形が生じ、その結果応力が変化するために膜が剥がれ、被成膜基板上に成膜される。
【0036】
有機化合物材料を含む層105は、種々の方法により形成される。例えば、湿式法であるスピンコート法、ロールコート法、ダイコート法、ロールコート法、ブレードコート法、バーコート法、グラビアコート法、スプレー法、キャスト法、ディップ法、液滴吐出(噴出)法(インクジェット法)、ディスペンサ法、各種印刷法(スクリーン(孔版)印刷、オフセット(平版)印刷、凸版印刷やグラビア(凹版)印刷など所望なパターンで形成される方法)などを用いることができる。また、乾式法である真空蒸着法、CVD法、スパッタリング法等を用いることができる。
【0037】
有機化合物材料を含む層105に含まれる材料としては、種々の有機化合物材料を用いることができ、さらに種々の無機化合物材料を含んでも良い。発光素子のEL層を形成する場合には、EL層を形成する成膜可能な材料を用いる。例えば、EL層を形成する発光性材料、キャリア輸送性材料などの有機化合物の他、EL層を構成するキャリア輸送層やキャリア注入層、発光素子の電極などに用いられる金属酸化物、金属窒化物、ハロゲン化金属、金属単体といった無機化合物を用いることもできる。
【0038】
また、有機化合物材料を含む層105は、複数の材料を含んでいてもよい。また、有機化合物材料を含む層105は、単層でもよいし、複数の層が積層されていてもよい。
【0039】
湿式法を用いて有機化合物材料を含む層105を形成する場合には、所望の材料を溶媒に溶解あるいは分散させ、液状の組成物(溶液あるいは分散液)を調整すればよい。溶媒は、材料を溶解あるいは分散させることができ、且つ材料と反応しないものであれば特に限定されない。例えば、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、或いはクロロベンゼンなどのハロゲン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、n−プロピルメチルケトン、或いはシクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、ベンゼン、トルエン、或いはキシレンなどの芳香族系溶媒、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン、或いは炭酸ジエチルなどのエステル系溶媒、テトラヒドロフラン、或いはジオキサンなどのエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド、或いはジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒、ジメチルスルホキシド、ヘキサン、又は水等を用いることができる。また、これらの溶媒複数種を混合して用いてもよい。湿式法を用いることにより、材料の利用効率を高めることができ、製造コストを低減させることができる。
【0040】
有機化合物材料を含む層105によって被成膜基板上に形成される膜の膜厚および均一性を制御する場合には、有機化合物材料を含む層105の膜厚および均一性は制御される必要がある。しかし、被成膜基板上に形成される膜の膜厚および均一性に影響しないのであれば、有機化合物材料を含む層105は必ずしも均一の層である必要はない。例えば、微細な島状に形成されていてもよいし、凹凸を有する層状に形成されていてもよい。
【0041】
次に、第1の基板101の一方の面であって、光吸収層104及び有機化合物材料を含む層105が形成された面に対向する位置に、被成膜基板である第2の基板107を配置する(図1(C)参照。)。第2の基板107は、成膜処理により所望の層が成膜される被成膜基板である。
【0042】
成膜用基板における有機化合物材料を含む層105表面と、被成膜基板における被成膜面との距離dを至近距離、具体的には距離dを、0<d≦10μm(より好ましくは0<d≦5μm)となるように近づけて対向させることが好ましい。距離dが短いと有機化合物材料を含む層105に含まれる材料が被成膜面に移動する距離も短くなるため、より被成膜面に成膜される膜のパターンぼけを防止でき精度良く成膜することができる。
【0043】
第1の基板101及び第2の基板107が特に大型基板であると、基板のたわみやそりなどによって基板間で距離dに誤差が生じ、距離dの値に分布を有する場合がある。この場合、距離dは材料層表面と被成膜面との間の最長距離とする。基板の大きさや配置方法によっては、第1の基板101上の最表面の膜と第2の基板107上の最表面の膜とは一部接触する場合もある。
【0044】
第1の基板101上に光吸収層104及び有機化合物材料を含む層105が形成された成膜用基板において、より成膜される膜に高い信頼性を付与したい場合は、成膜用基板に真空中での加熱処理を行うこと好ましい。同様に、被成膜基板である第2の基板107も成膜前に真空中での加熱処理を行うと、成膜される膜の信頼性が向上する。特に、被成膜用基板に隔壁となる絶縁層などを設ける場合、真空中での加熱処理により水などの汚染物を除去することで、より信頼性の高い膜を成膜することができ、作製する発光素子、及び発光装置の信頼性も高めることができる。
【0045】
第1の基板101の裏面(光吸収層104及び有機化合物材料を含む層105が形成されていない面)側から光源121より光110を照射する(図1(D)参照。)。このとき、第1の基板101に照射された光は、第1の基板101を透過し、光吸収層104に吸収される。そして、光吸収層104は、吸収した光から得た熱を有機化合物材料を含む層105に含まれる材料に与えることにより、有機化合物材料を含む層105に含まれる材料の少なくとも一部を、第2の基板107上に膜111として成膜する。これにより、第2の基板107上に所望のパターンに成形された膜111が形成される(図1(E)参照。)。
【0046】
光吸収層104に光110を照射する工程は減圧下で行うことが好ましい。減圧下で光110を照射し、被成膜基板に材料を成膜する工程を行うと、成膜される膜へのゴミ等の汚染物の影響を軽減することができる。また、材料の気化温度が低下するので、熱による被成膜基板へのダメージを抑制できる。また、装置内に残存する残留気体に、気化分子が衝突し散乱するのを防止でき、パターンぼけの発生を抑制できる。
【0047】
また、光吸収層104に光110を照射する工程は有機化合物材料を含む層105を加熱状態(熱を保持している状態)として行ってもよい。有機化合物材料を含む層105に加熱処理を行い、加熱状態にしておくと、低いパワーの光の光源を用いた光照射でも材料層に含まれる材料を被成膜用基板に成膜することができる。光110を照射する工程を、有機化合物材料を含む層105を形成する際に行う加熱処理直後に行うと、有機化合物材料を含む層105は加熱状態とすることができる。また、ヒータなどの加熱手段を用いて。有機化合物材料を含む層105を加熱しながら光110を照射してもよい。
【0048】
成膜方法において、得られる薄膜の形状の正確性、薄膜の膜質に大きく影響するのは光照射工程の制御である。本実施の形態で、光照射工程において、照射時間及び光源から光吸収層に向かって照射されるエネルギー密度を制御することで薄膜の形状不良(パターンぼけ)を抑制し、良質の膜質を得る。
【0049】
本実施の形態の光吸収層104への光照射工程において、光110の照射時間を0.1ミリ秒(msec.)以上1ミリ秒(msec.)未満(より好ましくは0.2ミリ秒(msec.)以上0.5ミリ秒(msec.)以下)とし、かつ光110の照射により光吸収層104の照射領域に与えられるエネルギー密度を2×103W/cm2以上2×105W/cm2以下(より好ましくは2×103W/cm2以上1×105W/cm2以下)とする。上記のような光照射工程を行うと、被成膜基板に正確なパターン形状の良質な薄膜を成膜することができる。
【0050】
用いる光110は、光吸収層104が吸収する波長であり、本明細書で開示する発明における光照射時間及びエネルギー密度を満たす、パターンぼけ及び膜質不良が抑制できる波長を用いればよく、光源121などの種類には特に限定されない。
【0051】
光源121に好適に用いられる例としてはフラッシュランプ(キセノンフラッシュランプ、クリプトンフラッシュランプなど)がある。フラッシュランプは短時間で強度の高い光を繰り返し、大面積に照射することができるため、処理基板の面積にかかわらず、効率よく均一に加熱することができる。また、ランプ光は一度に広範囲を処理することができるため、作製工程時間を短縮し、スループットを向上することが可能となる。
【0052】
光110は、光源121にランプを用いたランプ光による強光、光源121にレーザ発振器を用いたレーザ光などを用いることができる。光の波長は400nm以上2500nm以下程度の光を好適に用いることができる。
【0053】
用いる光110は、赤外光、可視光、または紫外光のいずれか一またはそれらの組み合わせを用いることが可能である。例えば、紫外線ランプ、ブラックライト、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、または高圧水銀ランプから射出された光(ランプ光)を用いてもよい。その場合、ランプ光源は、必要な時間点灯させて照射してもよいし、複数回照射してもよい。
【0054】
また、光としてレーザ光を用いてもよく、レーザ発振器としては、紫外光、可視光、又は赤外光を発振することが可能なレーザ発振器を用いることができる。様々な波長のレーザ光を用いることができ、例えば、355、515、532、1030、1064nmなどの波長のレーザ光を用いることができる。
【0055】
レーザ光には、Arレーザ、Krレーザ、エキシマレーザなどの気体レーザ、単結晶のYAG、YVO4、フォルステライト(Mg2SiO4)、YAlO3、GdVO4、若しくは多結晶(セラミック)のYAG、Y2O3、YVO4、YAlO3、GdVO4に、ドーパントとしてNd、Yb、Cr、Ti、Ho、Er、Tm、Taのうち1種または複数種添加されているものを媒質とするレーザ、ガラスレーザ、ルビーレーザ、アレキサンドライトレーザ、Ti:サファイアレーザ、ファイバーレーザ等の固体レーザのうち一種または複数種から発振されるものを用いることができる。また、上記固体レーザから発振される第2高調波や第3高調波、さらに高次の高調波を用いることもできる。なお、レーザ媒体が固体である固体レーザを用いると、メンテナンスフリーの状態を長く保てるという利点や、出力が比較的に安定している利点を有している。
【0056】
また、レーザスポットの形状は、線状または矩形状とすることが好ましい。線状または矩形状とすることにより、処理基板にレーザ光を効率よく走査することができる。よって、成膜に要する時間(タクトタイム)が短くなり、生産性が向上する。また、レーザスポットの形状は楕円形状でもよい。
【0057】
また、光照射による成膜は、減圧雰囲気下で行うことが好ましい。従って、成膜室内を5×10−3Pa以下、好ましくは10−6Pa以上10−4Pa以下の雰囲気とすることが好ましい。
【0058】
本実施の形態のように光吸収層104を成膜パターンを反映して選択的に形成すれば、被成膜基板に該パターンで薄膜を形成することができる。
【0059】
また、光吸収層104に光が照射されないように、第1の基板101と光吸収層104との間に反射層を選択的に形成してもよい。反射層によって光は反射されるので、反射層のパターンを反映した薄膜を被成膜基板に形成することができる。
【0060】
さらに、反射層と有機化合物材料を含む層との間に熱の伝導を妨げる断熱層を設けてもよい。
【0061】
本明細書で開示する発明を適用することにより、第1の基板上に形成された有機化合物材料を含む層の膜厚を制御することによって、被成膜基板である第2の基板上に成膜される膜の膜厚を制御することができる。つまり、第1の基板上に形成された有機化合物材料を含む層に含まれる材料を全て成膜することにより第2の基板上に形成される膜が所望の膜厚となるように予め有機化合物材料を含む層の膜厚が制御されているため、第2の基板上に成膜する際の膜厚モニターは不要となる。よって、膜厚モニターを利用した成膜速度の調節を使用者が行う必要がなく、成膜工程を全自動化することが可能である。そのため、生産性の向上を図ることができる。
【0062】
また、本明細書で開示する発明を適用することにより、第1の基板上に形成された有機化合物材料を含む層105に含まれる材料を均一に成膜することができる。また、有機化合物材料を含む層105が複数の材料を含む場合でも、有機化合物材料を含む層105と同じ材料をほぼ同じ重量比で含有する膜を被成膜基板である第2の基板上に成膜することができる。従って、本明細書で開示する成膜方法は、成膜温度の異なる複数の材料を用いて成膜する場合でも、共蒸着のようにそれぞれ蒸着レートを制御する必要がない。そのため、蒸着レート等の複雑な制御を行うことなく、所望の異なる材料を含む層を容易に精度良く成膜することができる。
【0063】
本明細書で開示する成膜方法を用いて発光装置の発光層を形成する場合、第1の領域を一画素ごとに対応させてもよいし、第1の領域を複数の画素を含むように対応させ複数の画素の発光層を一度に作製してもよい。例えば、例えば三色の色要素(例えばRGB)でフルカラー表示を行いストライプ配置とする場合、複数の同色の発光を示す画素を含む領域を、成膜用基板の第1の領域と対応させ、被成膜用基板に複数の画素の発光層を形成することができる。
【0064】
フルカラーディスプレイを作製する場合には、発光層を作り分ける必要があるため、本明細書で開示する成膜方法を用いて発光層を形成すれば、容易に所望のパターンで発光層を作り分けることができる。また、精度良く発光層を作り分けることができる。
【0065】
また、本明細書で開示する成膜方法では、所望の材料を無駄にすることなく、被成膜基板に成膜することが可能である。よって、材料の利用効率が向上し、製造コストの低減を図ることができる。また、成膜室内壁に材料が付着することも防止でき、成膜装置のメンテナンスを容易にすることができる。
【0066】
また、本明細書で開示する発明を適用することにより、平坦でムラのない膜を成膜することが可能となる。また、所望の領域のみに成膜することが可能であるため、微細パターンの形成が可能となり、高精細な発光装置を作製することができる。
【0067】
また、本明細書で開示する発明を適用することにより、光を用いた成膜の際に選択的に所望の領域に成膜することができるので、材料の利用効率を高めることができ、精度良く、所望の形状に成膜することが容易であるため生産性向上を図ることができる。
【0068】
また、本明細書で開示する発明を適用することにより、光を用いた成膜の際に光源にランプを使用することができるため、大面積を一度に処理することが可能となる。よって生産性を向上させることができる。
【0069】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本明細書で開示する発明に用いることのできる成膜用基板の他の例を図3を用いて説明する。実施の形態1と同様な機能を有する構成の材料や作製方法は、実施の形態1と同様とすればよい。
【0070】
図3(A)乃至(F)は、成膜用基板に光吸収層の他に、反射層や断熱層を設ける例である。
【0071】
光吸収層に光が照射されないように、透光性基板と光吸収層との間に反射層を選択的に形成することができる。反射層によって光は反射されるので、反射層のパターンを反映した薄膜を被成膜基板に形成することができる。
【0072】
また、反射層と有機化合物材料を含む層との間に熱の伝導を妨げる断熱層を設けることもできる。断熱層を、光に対する透過率は60%以上とし、かつ熱伝導率が反射層及び光吸収層に用いる材料の熱伝導率よりも小さい材料を用いて形成することが好ましい。熱伝導率が低いと、照射された光から得られる熱を効率よく成膜に用いることができる。なお、本明細書で開示する発明において、断熱層は熱を完全に遮断することが好ましいが、本明細書では、少なくとも光吸収層よりも熱の伝導を妨げるものも断熱層という。
【0073】
図3(A)は、第1の基板101と光吸収層104との間に選択的に反射層102を設けており、光吸収層104上に有機化合物材料を含む層105が形成されている。反射層102上の光吸収層104には光は照射されないために、反射層102の形成領域以外の領域のパターンが被成膜用基板における薄膜の成膜パターンとすることができる。
【0074】
図3(B)は、図3(A)において、光吸収層104を選択的に形成し、第1の基板101上の反射層102の形成領域以外に光吸収層104を形成する例である。
【0075】
図3(C)は、図3(A)において、反射層102と光吸収層104との間に断熱層103を設ける例である。図3(D)は、図3(C)において、光吸収層104を選択的に形成し、第1の基板101上の反射層102の形成領域以外に光吸収層104を形成する例である。
【0076】
断熱層103を設けることで反射層102と光吸収層104とは接しなくなるために熱の伝わりをより防止することができる。
【0077】
図3(E)は、図3(C)において、反射層102と重畳する領域に、断熱層112をさらに設ける例である。図3(E)では、光吸収層104と有機化合物材料を含む層105との間に選択的に断熱層112が形成されている。図3(F)は、図3(E)において、光吸収層104を選択的に形成し、第1の基板101上の反射層102の形成領域以外に光吸収層104を形成する例である。よって図3(F)では、断熱層103と断熱層112とが接して積層する構成となる。
【0078】
このように断熱層を複数設けると、より被成膜基板において薄膜を成膜しない領域(第2の領域)へ、薄膜を成膜する領域(第1の領域)からの熱が伝わることを防止する効果を高めることができる。よって、より被成膜基板における薄膜のパターン形状を正確に制御することができ、高精細なパターン形状の薄膜を得ることが可能となる。
【0079】
反射層102は、成膜の際、光吸収層104の一部分に選択的に光を照射するために、それ以外の部分に照射される光を反射するための層である。よって、反射層102は、照射する光に対して高い反射率を有する材料で形成されていることが好ましい。具体的には、反射層102は、照射される光に対して、反射率が85%以上、さらに好ましくは、反射率が90%以上であることが好ましい。
【0080】
反射層102に用いることができる材料としては、例えば、銀、金、白金、銅、アルミニウムを含む合金、又は銀を含む合金などを用いることができる。
【0081】
反射層102の膜厚は、材料により異なるが、100nm以上とすることが好ましい。100nm以上の膜厚とすることにより、照射した光が反射層を透過することを抑制することができる。
【0082】
また、反射層102を所望の形状に加工する際には種々の方法を用いることができるが、ドライエッチングを用いることが好ましい。ドライエッチングを用いることにより、側壁が鋭くなり、微細なパターンを形成することができる。
【0083】
断熱層103、112は、熱伝導率が反射層102および光吸収層104を形成する材料よりも低い材料を用いる必要がある。また、図3に示すように、光を、断熱層103を透過させて光吸収層104に照射する構成の場合には、断熱層103は透光性を有する必要がある。この場合、本明細書で開示する発明における断熱層103は、熱伝導率の低い材料であると共に光透過率の高い材料を用いる必要がある。具体的には、断熱層103には、光に対する透過率が60%以上となる材料を用いることが好ましい。ただし光を透過させる必要のない断熱層112のような場合は、断熱層は透光性を有する必要はない。
【0084】
断熱層103、断熱層112に用いる材料としては、例えば、酸化チタン、酸化珪素、窒化酸化珪素、酸化ジルコニウム等を用いることができる。
【0085】
断熱層103、断熱層112の膜厚は、材料により異なるが、10nm以上2μm以下とすることが好ましく、より好ましくは、100nm以上1μm以下とする。10nm以上2μm以下の膜厚とすることにより、光を透過させつつ、熱が第2の領域の有機化合物材料を含む層に伝わるのを遮断する効果を有する。
【0086】
反射層102、断熱層103、断熱層112、及び光吸収層104は、種々の方法を用いて形成することができる。例えば、スパッタリング法、電子ビーム蒸着法、真空蒸着法、化学気相成長(CVD;Chemical Vapor Deposition)法などにより形成することができる。
【0087】
さらに、反射層102と光吸収層104の反射率は差が大きいほど好ましい。具体的には、照射する光の波長に対して、反射率の差が25%以上、より好ましくは30%以上であることが好ましい。
【0088】
図3(A)乃至(F)に示す成膜用基板を用いて、実施の形態1と同様に光を照射して、被成膜基板へ所望のパターンで膜を成膜することができる。従って本実施の形態に示す成膜用基板を用いて、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
【0089】
本明細書で開示する発明では、材料と被成膜基板との間にマスクを設けることなく、被成膜基板に微細なパターンの薄膜を形成することができる。
【0090】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本明細書で開示する発明を適用して、発光素子および発光装置を作製する方法について説明する。
【0091】
本明細書で開示する発明を適用して、例えば、図6(A)、(B)に示す発光素子を作製することができる。図6(A)に示す発光素子は、基板901上に第1の電極902、発光層913のみで形成されたEL層903、第2の電極904が順に積層して設けられている。第1の電極902及び第2の電極904のいずれか一方は陽極として機能し、他方は陰極として機能する。陽極から注入される正孔及び陰極から注入される電子がEL層903で再結合して、発光を得ることができる。本実施の形態において、第1の電極902は陽極として機能する電極であり、第2の電極904は陰極として機能する電極であるとする。
【0092】
また、図6(B)に示す発光素子は、図6(A)のEL層903が複数の層が積層された構造である場合を示しており、具体的には、第1の電極902側から正孔注入層911、正孔輸送層912、発光層913、電子輸送層914、および電子注入層915が順次設けられている。なお、EL層903は、図6(A)に示すように少なくとも発光層913を有していれば機能するため、これらの層を全て設ける必要はなく、必要に応じて適宜選択して設ければよい。
【0093】
図6に示す基板901には、絶縁表面を有する基板または絶縁基板を適用する。具体的には、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスのような電子工業用に使われる各種ガラス基板、石英基板、セラミック基板又はサファイヤ基板等を用いることができる。
【0094】
また、第1の電極902および第2の電極904は、様々な金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。具体的には、例えば、酸化インジウム−酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛(IZO:Indium Zinc Oxide)、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム等が挙げられる。この他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる。
【0095】
これらの材料は、通常スパッタリング法により成膜される。例えば、酸化インジウム−酸化亜鉛は、酸化インジウムに対し1〜20wt%の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。また、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウムは、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5〜5wt%、酸化亜鉛を0.1〜1wt%含有したターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。その他、ゾル−ゲル法などを応用して、インクジェット法、スピンコート法などにより作製してもよい。
【0096】
また、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、アルミニウムを含む合金等を用いることができる。その他、仕事関数の小さい材料である、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(アルミニウム、マグネシウムと銀との合金、アルミニウムとリチウムの合金)、ユーロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等を用いることもできる。
【0097】
アルカリ金属、アルカリ土類金属、これらを含む合金の膜は、真空蒸着法を用いて形成することができる。また、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む合金はスパッタリング法により形成することも可能である。また、銀ペーストなどをインクジェット法などにより成膜することも可能である。また、第1の電極902および第2の電極904は、単層膜に限らず、積層膜で形成することもできる。
【0098】
なお、EL層903で発光する光を外部に取り出すため、第1の電極902または第2の電極904のいずれか一方、または両方が光を通過するように形成する。例えば、インジウム錫酸化物等の透光性を有する導電材料を用いて形成するか、或いは、銀、アルミニウム等を数nm乃至数十nmの厚さとなるように形成する。また、膜厚を薄くした銀、アルミニウムなどの金属薄膜と、ITO膜等の透光性を有する導電材料を用いた薄膜との積層構造とすることもできる。
【0099】
なお、本実施の形態で示す発光素子のEL層903(正孔注入層911、正孔輸送層912、発光層913、電子輸送層914又は電子注入層915)は、実施の形態1で示した成膜方法を適用して形成することができる。また、電極を実施の形態1で示した成膜方法を適用して形成することもできる。
【0100】
発光層913としては種々の材料を用いることができる。例えば、蛍光を発光する蛍光性化合物や燐光を発光する燐光性化合物を用いることができる。
【0101】
発光層913に用いることのできる燐光性化合物としては、例えば、青色系の発光材料として、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)テトラキス(1−ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス[2−(3’,5’ビストリフルオロメチルフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:Ir(CF3ppy)2(pic))、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIracac)などが挙げられる。また、緑色系の発光材料として、トリス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(ppy)3)、ビス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(ppy)2(acac))、ビス(1,2−ジフェニル−1H−ベンゾイミダゾラト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(pbi)2(acac))、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bzq)2(acac))などが挙げられる。また、黄色系の発光材料として、ビス(2,4−ジフェニル−1,3−オキサゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(dpo)2(acac))、ビス[2−(4’−パーフルオロフェニルフェニル)ピリジナト]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(p−PF−ph)2(acac))、ビス(2−フェニルベンゾチアゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bt)2(acac))などが挙げられる。また、橙色系の発光材料として、トリス(2−フェニルキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(pq)3)、ビス(2−フェニルキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(pq)2(acac))などが挙げられる。また、赤色系の発光材料として、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジナト−N,C3’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(btp)2(acac))、ビス(1−フェニルイソキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(piq)2(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdpq)2(acac))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)等の有機金属錯体が挙げられる。また、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:Tb(acac)3(Phen))、トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(DBM)3(Phen))、トリス[1−(2−テノイル)−3,3,3−トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(TTA)3(Phen))等の希土類金属錯体は、希土類金属イオンからの発光(異なる多重度間の電子遷移)であるため、燐光性化合物として用いることができる。
【0102】
発光層913に用いることのできる蛍光性化合物としては、例えば、青色系の発光材料として、N,N’−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N’−ジフェニルスチルベン−4,4’−ジアミン(略称:YGA2S)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)などが挙げられる。また、緑色系の発光材料として、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCABPhA)、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−N−[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N−フェニルアントラセン−2−アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9−トリフェニルアントラセン−9−アミン(略称:DPhAPhA)などが挙げられる。また、黄色系の発光材料として、ルブレン、5,12−ビス(1,1’−ビフェニル−4−イル)−6,11−ジフェニルテトラセン(略称:BPT)などが挙げられる。また、赤色系の発光材料として、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)テトラセン−5,11−ジアミン(略称:p−mPhTD)、7,13−ジフェニル−N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)アセナフト[1,2−a]フルオランテン−3,10−ジアミン(略称:p−mPhAFD)などが挙げられる。
【0103】
また、発光層913として、発光性の高い物質(ドーパント材料)を他の物質(ホスト材料)に分散させた構成を用いることもできる。発光性の高い物質(ドーパント材料)を他の物質(ホスト材料)に分散させた構成を用いるにより、発光層の結晶化を抑制することができる。また、発光性の高い物質の濃度が高いことによる濃度消光を抑制することができる。
【0104】
発光性の高い物質を分散させる物質としては、発光性の高い物質が蛍光性化合物の場合には、蛍光性化合物よりも一重項励起エネルギー(基底状態と一重項励起状態とのエネルギー差)が大きい物質を用いることが好ましい。また、発光性の高い物質が燐光性化合物の場合には、燐光性化合物よりも三重項励起エネルギー(基底状態と三重項励起状態とのエネルギー差)が大きい物質を用いることが好ましい。
【0105】
発光層913に用いるホスト材料としては、例えば4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、4,4’−ビス[N−(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DFLDPBi)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)などの他、4,4’−ジ(9−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、9−[4−(9−カルバゾリル)フェニル]−10−フェニルアントラセン(略称:CzPA)などが挙げられる。
【0106】
また、ドーパント材料としては、上述した燐光性化合物や蛍光性化合物を用いることができる。
【0107】
発光層913として、発光性の高い物質(ドーパント材料)を他の物質(ホスト材料)に分散させた構成を用いる場合には、成膜用基板上の有機化合物材料を含む層として、ホスト材料とゲスト材料とを混合した層を形成すればよい。または、成膜用基板上の有機化合物材料を含む層として、ホスト材料を含む層とドーパント材料を含む層とが積層した構成としてもよい。このような構成の有機化合物材料を含む層を有する成膜用基板を用いて発光層913を形成することにより、発光層913は発光材料を分散させる物質(ホスト材料)と発光性の高い物質(ドーパント材料)とを含み、発光材料を分散させる物質(ホスト材料)に発光性の高い物質(ドーパント材料)が分散された構成となる。なお、発光層913として、2種類以上のホスト材料とドーパント材料を用いてもよいし、2種類以上のドーパント材料とホスト材料を用いてもよい。また、2種類以上のホスト材料及び2種類以上のドーパント材料を用いてもよい。
【0108】
また、図6(B)に示す発光素子を形成する場合には、EL層903(正孔注入層911、正孔輸送層912、発光層913、電子輸送層914、および電子注入層915)のそれぞれの層を形成する材料で形成された有機化合物材料を含む層を有する実施の形態1で示した成膜用基板を各層毎に用意し、各層の成膜毎に異なる成膜用基板を用いて、実施の形態1で示した方法により、基板901上の第1の電極902上にEL層903を形成することができる。そして、EL層903上に第2の電極904を形成することにより、図6(B)に示す発光素子を得ることができる。なお、この場合には、EL層903の全ての層に実施の形態1で示した方法を用いることもできるが、一部の層のみに実施の形態1で示した方法を用いても良い。
【0109】
湿式法で被成膜基板に膜を積層する場合、直接下層の膜上に材料を含む液状の組成物を付着させて形成するために、組成物中に含まれる溶媒によっては下層の膜が溶解してしまうため、積層できる材料が限定されてしまう。しかし、本明細書で開示する成膜方法を用いて積層を形成する場合、下層の膜に直接溶媒が付着しないため、溶媒による下層の膜への影響を考慮しなくてよい。従って、積層できる材料の選択性において自由度が広い。湿式法で直接被成膜基板に膜を形成してしまうと被成膜基板に既に成膜されている下層の膜に影響を与えない加熱条件で加熱処理を行わねばならないために、十分な膜質の向上を達成できない場合がある。
【0110】
例えば、正孔注入層911としては、モリブデン酸化物やバナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等を用いることができる。この他、フタロシアニン(略称:H2Pc)や銅フタロシアニン(略称:CuPc)等のフタロシアニン系の化合物、或いはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)等の高分子等によっても正孔注入層を形成することができる。
【0111】
また、正孔注入層911として、正孔輸送性の高い物質と電子受容性を示す物質を含む層を用いることができる。正孔輸送性の高い物質と電子受容性を示す物質とを含む層は、キャリア密度が高く、正孔注入性に優れている。また、正孔輸送性の高い物質と電子受容性を示す物質とを含む層を、陽極として機能する電極に接する正孔注入層として用いることにより、陽極として機能する電極材料の仕事関数の大小に関わらず、様々な金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。
【0112】
正孔注入層911に用いる電子受容性を示す物質としては、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F4−TCNQ)、クロラニル等を挙げることができる。また、遷移金属酸化物を挙げることができる。また元素周期表における第4族から第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0113】
正孔注入層911に用いる正孔輸送性の高い物質としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の化合物を用いることができる。なお、正孔注入層に用いる正孔輸送性の高い物質としては、10−6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。以下では、正孔注入層911に用いることのできる正孔の輸送性の高い物質を具体的に列挙する。
【0114】
例えば、正孔注入層911に用いることのできる芳香族アミン化合物としては、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)やN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)等を用いることができる。また、N,N’−ビス(4−メチルフェニル)(p−トリル)−N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(略称:DTDPPA)、4,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’−ビス(N−{4−[N’−(3−メチルフェニル)−N’−フェニルアミノ]フェニル}−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5−トリス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)等を挙げることができる。
【0115】
正孔注入層911に用いることのできるカルバゾール誘導体としては、具体的には、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等を挙げることができる。
【0116】
また、正孔注入層911に用いることのできるカルバゾール誘導体としては、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5−トリス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)、1,4−ビス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]−2,3,5,6−テトラフェニルベンゼン等を用いることができる。
【0117】
また、正孔注入層911に用いることのできる芳香族炭化水素としては、例えば、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、9,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2−tert−ブチル−9,10−ビス(4−フェニルフェニル)アントラセン(略称:t−BuDBA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuAnth)、9,10−ビス(4−メチル−1−ナフチル)アントラセン(略称:DMNA)、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]−2−tert−ブチル−アントラセン、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン、9,9’−ビアントリル、10,10’−ジフェニル−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス(2−フェニルフェニル)−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス[(2,3,4,5,6−ペンタフェニル)フェニル]−9,9’−ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペリレン、2,5,8,11−テトラ(tert−ブチル)ペリレン等が挙げられる。また、この他、ペンタセン、コロネン等も用いることができる。このように、1×10−6cm2/Vs以上の正孔移動度を有し、炭素数14〜42である芳香族炭化水素を用いることがより好ましい。
【0118】
なお、正孔注入層911に用いることのできる芳香族炭化水素は、ビニル骨格を有していてもよい。ビニル基を有している芳香族炭化水素としては、例えば、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10−ビス[4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)等が挙げられる。
【0119】
また、正孔輸送性の高い物質と電子受容性を示す物質とを含む層は、正孔注入性だけでなく、正孔輸送性も優れているため、上述した正孔注入層911を正孔輸送層として用いてもよい。
【0120】
また、正孔輸送層912は、正孔輸送性の高い物質を含む層であり、正孔輸送性の高い物質としては、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)やN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物等を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0121】
電子輸送層914は、電子輸送性の高い物質を含む層であり、例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq3)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等を用いることができる。また、この他ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンズオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX)2)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ)2)などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ01)バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)なども用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm2/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を電子輸送層として用いても構わない。また、電子輸送層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0122】
また、電子注入層915としては、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF2)等のようなアルカリ金属化合物、又はアルカリ土類金属化合物を用いることができる。さらに、電子輸送性を有する物質とアルカリ金属又はアルカリ土類金属が組み合わされた層も使用できる。例えばAlq中にマグネシウム(Mg)を含有させたものを用いることができる。なお、電子注入層として、電子輸送性を有する物質とアルカリ金属又はアルカリ土類金属を組み合わせた層を用いることは、第2の電極904からの電子注入が効率良く起こるためより好ましい。
【0123】
なお、EL層903は、層の積層構造については特に限定されず、電子輸送性の高い物質または正孔輸送性の高い物質、電子注入性の高い物質、正孔注入性の高い物質、バイポーラ性(電子及び正孔の輸送性の高い物質)の物質等を含む層と、発光層とを適宜組み合わせて構成すればよい。
【0124】
EL層903で得られた発光は、第1の電極902または第2の電極904のいずれか一方または両方を通って外部に取り出される。従って、第1の電極902または第2の電極904のいずれか一方または両方は、透光性を有する電極である。第1の電極902のみが透光性を有する電極である場合、光は第1の電極902を通って基板901側から取り出される。また、第2の電極904のみが透光性を有する電極である場合、光は第2の電極904を通って基板901と逆側から取り出される。第1の電極902および第2の電極904がいずれも透光性を有する電極である場合、光は第1の電極902および第2の電極904を通って、基板901側および基板901と逆側の両方から取り出される。
【0125】
なお、図6では、陽極として機能する第1の電極902を基板901側に設けた構成について示したが、陰極として機能する第2の電極904を基板901側に設けてもよい。
【0126】
また、EL層903の形成方法としては、実施の形態1で示した成膜方法を用いればよく、他の成膜方法と組み合わせてもよい。また、各電極または各層ごとに異なる成膜方法を用いて形成しても構わない。乾式法としては、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法などが挙げられる。また、湿式法としては、インクジェット法またはスピンコート法などが挙げられる。
【0127】
本実施の形態に係る発光素子は、本明細書で開示する発明を適用したEL層の形成が可能であり、それにより、高精度な膜が効率よく形成される為、発光素子の特性向上のみならず、歩留まり向上やコストダウンを図ることができる。
【0128】
本実施の形態は、上記の実施の形態1乃至3と適宜組み合わせることができる。
【0129】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本明細書で開示する発明を用いて作製されたパッシブマトリクス型の発光装置について図4乃至図5を用いて説明する。
【0130】
本実施の形態では、パッシブマトリクスの発光装置において、発光素子間を分離する隔壁(絶縁層)を設ける例を示す。2層の隔壁を有する発光装置の例を図4(A)(B)及び図5(A)乃至(D)に示す。
【0131】
図4(A)は発光装置の平面図であり、図4(B)は図4(A)における線Y3−Z3の断面図、図4(C)は図4(A)における線V3−X3の断面図である。しかし、図4(A)は隔壁782を形成した工程までの平面図であり、EL層及び第2の電極層は省略している。
【0132】
図4(A)の発光装置は、素子基板759上に第1の方向に延びた発光素子に用いる電極層である第1の電極層751a、751b、751c、第1の電極層751a、751b、751c上に選択的に形成されたEL層752a、752b、752cと、第1の方向と垂直な第2の方向に延びた発光素子に用いる電極層である第2の電極層753a、753b、753cとを有している(図4(A)(B)(C)参照。)。
【0133】
図4において、データ線(信号線)として機能する第1の電極層751bと、走査線(ソース線)として機能する第2の電極層753bとはEL層752bを間に挟持して交差しており、発光素子750を形成している。
【0134】
図4(A)乃至(C)に示すように、第1の電極層751a、751b、751c上に、画素領域に開口部を有して隔壁780が選択的に形成されている。図4(B)に示すように、隔壁780は、第1の電極層751a、751b、751cの端部を覆うようにテーパーを有する形状で形成されている。
【0135】
隔壁780上に選択的に隔壁782を形成する。隔壁782は隔壁782上に形成するEL層及び第2の電極層を非連続に分断する機能を有する。隔壁782の側壁は、基板面に近くなるに伴って、一方の側壁と他方の側壁との間隔が狭くなっていくような傾斜を有する。つまり、隔壁782の短辺方向の断面は、台形状であり、底辺(隔壁780の面方向と同様の方向を向き、隔壁780と接する辺)の方が上辺(隔壁780の面方向と同様の方向を向き、隔壁780と接しない辺)よりも短い。隔壁782はいわゆる逆テーパー形状であるために、自己整合的にEL層752bは、隔壁782によって分断され、第1の電極層751b上に選択的に形成することができる。従ってエッチングにより形状を加工しなくても、隣接する発光素子間は分断されており発光素子間のショートなどの電気的不良を防止することができる。
【0136】
本明細書で開示する成膜方法を用いた図4(B)に示す本実施の形態の発光装置の作製方法を図5(A)乃至(D)を用いて説明する。
【0137】
図5(A)は実施の形態2で示した図3(F)の成膜用基板と同様な構造である。
【0138】
成膜用基板において、基板711上に選択的に反射層712が形成され、反射層712上に断熱層713が形成されている。断熱層713上の反射層712と重畳する領域に断熱層716が形成され、反射層712と重畳しない領域に光吸収層714が形成されている。成膜用基板の最上層には有機化合物材料を含む層725が形成されている。
【0139】
被成膜基板である素子基板759には、第1の電極層751a、751b、751c、及び隔壁780が形成されており、第1の電極層751a、751b、751c及び隔壁780と、有機化合物材料を含む層715とが向き合うように、素子基板759と基板711とを配置する(図5(B)参照。)。図5(B)のように、隔壁780と第3の断熱層742を形成し、成膜用基板と被成膜基板とを接して設けると、各第1の領域をごとに他の画素領域と遮断することができる。よって、光照射により有機化合物材料を含む層より蒸発した材料が、他の画素領域へ付着することを抑制することができる。
【0140】
基板721の裏面(有機化合物材料を含む層715の形成面と反対の面)より光720を照射し、光吸収層724より与えられた熱によって有機化合物材料を含む層715に含まれる材料の少なくとも一部が素子基板759へEL層752a、752b、752cとして成膜される(図5(C)参照。)。
【0141】
本実施の形態の光吸収層714への光720の照射工程において、光720の照射時間を0.1ミリ秒(msec.)以上1ミリ秒(msec.)未満(より好ましくは0.2ミリ秒(msec.)以上0.5ミリ秒(msec.)以下)とし、かつ光720の照射により光吸収層714の照射領域に与えられるエネルギー密度を2×103W/cm2以上2×105W/cm2以下(より好ましくは2×103W/cm2以上1×105W/cm2以下)とする。さらに、成膜する有機化合物材料を含む層715が設けられた成膜用基板と、対向して配置される被成膜基板とを、有機化合物材料を含む層715表面と被成膜面の第1の電極層751a、751b、751cとの間隔dを0<d≦10μm(より好ましくは0<d≦5μm)とすることが好ましい。上記のような光照射工程を行うと、被成膜基板に正確なパターン形状の良質な薄膜を成膜することができる。
【0142】
上記工程によって、基板701上に設けられた第1の電極層751a、751b、751c上にそれぞれ、選択的にEL層752a、752b、752cを形成することができる(図5(D)参照。)。
【0143】
図5(D)のEL層752a、752b、752c上に第2の電極層753bを形成し、充填層781を形成し、封止基板758を用いて封止して図4(B)の発光装置を完成させることができる。
【0144】
封止基板758としては、ガラス基板や石英基板等を用いることができる。また可撓性基板を用いてもよい。可撓性基板とは、折り曲げることができる(フレキシブル)基板のことであり、例えば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルフォン等からなる、プラスチック基板の他、高温では可塑化されてプラスチックと同じような成型加工ができ、常温ではゴムのような弾性体の性質を示す高分子材料エラストマー等が挙げられる。また、フィルム(ポリプロピレン、ポリエステル、ビニル、ポリフッ化ビニル、塩化ビニルなどからなる)、無機蒸着フィルムを用いることもできる。
【0145】
隔壁780、隔壁782としては、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、その他の無機絶縁性材料、又はアクリル酸、メタクリル酸及びこれらの誘導体、又はポリイミド、芳香族ポリアミド、ポリベンゾイミダゾールなどの耐熱性高分子、又はシロキサン樹脂を用いてもよい。また、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールなどのビニル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ノボラック樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂材料を用いる。作製法としては、プラズマCVD法や熱CVD法などの気相成長法やスパッタリング法を用いることができる。また、液滴吐出法や、印刷法(を用いることもできる。塗布法で得られる膜なども用いることができる。
【0146】
次に、図4に示したパッシブマトリクス型の発光装置にFPCなどを実装した場合の上面図を図7に示す。
【0147】
図7において、画像表示を構成する画素部は、走査線群とデータ線群が互いに直交するように交差している。
【0148】
ここで、図4における第1の電極層751a、751b、751cが、図7のデータ線1102に相当し、図4における第2の電極層753a、753b、753cが、図7の走査線1103に相当し、図4におけるEL層752a、752b、752cが図7のEL層1104に相当する。データ線1102と走査線1103の間にはEL層1104が挟まれており、領域1105で示される交差部が画素1つ分(図4では発光素子750で示される)となる。
【0149】
なお、走査線1103は配線端で接続配線1108と電気的に接続され、接続配線1108が入力端子1107を介してFPC1109bに接続される。また、データ線は入力端子1106を介してFPC1109aに接続される。
【0150】
また、必要であれば、射出面に偏光板、又は円偏光板(楕円偏光板を含む)、位相差板(λ/4板、λ/2板)、カラーフィルタなどの光学フィルムを適宜設けてもよい。また、偏光板又は円偏光板に反射防止膜を設けてもよい。例えば、表面の凹凸により反射光を拡散し、映り込みを低減できるアンチグレア処理を施すことができる。
【0151】
なお、図7では、駆動回路を基板上に設けない例を示したが、本明細書で開示する発明は特に限定されず、基板上に駆動回路を有するICチップを実装させてもよい。
【0152】
また、ICチップを実装させる場合、画素部の周辺(外側)の領域に、画素部へ各信号を伝送する駆動回路が形成されたデータ線側IC、走査線側ICをCOG(Chip on Glass)方式によりそれぞれ実装する。COG方式以外の実装技術としてTCPやワイヤボンディング方式を用いて実装してもよい。TCPはTAB(Tape Automated Bonding)テープにICを実装したものであり、TABテープを素子形成基板上の配線に接続してICを実装する。データ線側IC、および走査線側ICは、単結晶シリコン基板を用いたものであってもよいし、ガラス基板、石英基板もしくはプラスチック基板上にTFTで駆動回路を形成したものであってもよい。また、片側に一つのICを設けた例を説明しているが、片側に複数個に分割して設けても構わない。
【0153】
なお、パッシブマトリクスの発光装置において、隔壁は必ずしも設けなくてもよい。この場合でも第1の電極層と第2の電極層との間に設けられるEL層を本明細書で開示する成膜方法を用いて、正確なパターン形状で選択的に形成することができる。
【0154】
本明細書で開示する発明を用いると、材料と被成膜基板との間にマスクを設けることなく、被成膜基板に微細なパターンの薄膜を形成することができる。本実施の形態のように、このような成膜方法を用いて発光素子を形成し、高繊細な発光装置を作製することができる。
【0155】
本実施の形態は、上記の実施の形態1乃至3と適宜組み合わせることができる。
【0156】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本明細書で開示する発明を用いて作製されたアクティブマトリクス型の発光装置について図8を用いて説明する。
【0157】
図8(A)は、発光装置を示す上面図、図8(B)は図8(A)をA−BおよびC−Dで切断した断面図である。点線で示された601は駆動回路部(ソース側駆動回路)、602は画素部、603は駆動回路部(ゲート側駆動回路)である。また、604は封止基板、605はシール材であり、シール材605で囲まれた内側は、空間607になっている。
【0158】
なお、引き回し配線608はソース側駆動回路601及びゲート側駆動回路603に入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキット)609からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
【0159】
次に、断面構造について図8(B)を用いて説明する。素子基板610上には駆動回路部及び画素部が形成されているが、ここでは、駆動回路部であるソース側駆動回路601と、画素部602中の一つの画素が示されている。
【0160】
なお、ソース側駆動回路601はnチャネル型トランジスタ623とpチャネル型トランジスタ624とを組み合わせたCMOS回路が形成される。また、駆動回路を形成するトランジスタは、種々のCMOS回路、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成しても良い。また、本実施の形態では、基板上に駆動回路を形成したドライバ一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、駆動回路を基板上ではなく外部に形成することもできる。
【0161】
また、画素部602はスイッチング用トランジスタ611と、電流制御用TFトランジスタ612とそのドレインに電気的に接続された第1の電極613とを含む複数の画素により形成される。なお、第1の電極613の端部を覆って絶縁層614が形成されている。ここでは、ポジ型の感光性アクリル樹脂膜を用いることにより形成する。第1の電極613は層間絶縁層である絶縁層619上に形成されている。
【0162】
また、被覆性を良好なものとするため、絶縁層614の上端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにする。例えば、絶縁層614の材料としてポジ型の感光性アクリルを用いた場合、絶縁層614の上端部のみに曲率半径(0.2μm〜3μm)を有する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁層614として、光の照射によってエッチャントに不溶解性となるネガ型、或いは光の照射によってエッチャントに溶解性となるポジ型のいずれも使用することができる。
【0163】
なお、トランジスタの構造は、特に限定されない。トランジスタはチャネル形成領域が一つ形成されるシングルゲート構造でも、二つ形成されるダブルゲート構造もしくは三つ形成されるトリプルゲート構造であっても良い。また、周辺駆動回路領域のトランジスタも、シングルゲート構造、ダブルゲート構造もしくはトリプルゲート構造であっても良い。
【0164】
トランジスタは、トップゲート型(例えば順スタガ型、コプラナ型)、ボトムゲート型(例えば、逆コプラナ型)、あるいはチャネル領域の上下にゲート絶縁膜を介して配置された2つのゲート電極層を有する、デュアルゲート型やその他の構造においても適用できる。
【0165】
また、トランジスタに用いる半導体の結晶性についても特に限定されない。半導体層を形成する材料は、シランやゲルマンに代表される半導体材料ガスを用いて気相成長法やスパッタリング法で作製される非晶質半導体(、該非晶質半導体を光エネルギーや熱エネルギーを利用して結晶化させた多結晶半導体、また単結晶半導体などを用いることができる。
【0166】
非晶質半導体としては、代表的には水素化アモルファスシリコン、結晶性半導体としては代表的にはポリシリコンなどがあげられる。ポリシリコン(多結晶シリコン)には、800℃以上のプロセス温度を経て形成されるポリシリコンを主材料として用いた所謂高温ポリシリコンや、600℃以下のプロセス温度で形成されるポリシリコンを主材料として用いた所謂低温ポリシリコン、また結晶化を促進する元素などを用いて非晶質シリコンを結晶化させたポリシリコンなどを含んでいる。また、このような薄膜プロセスに換えて、絶縁表面に単結晶半導体層を設けたSOI基板を用いても良い。SOI基板は、SIMOX(Separation by IMplanted Oxygen)法や、Smart−Cut法を用いて形成することができる。SIMOX法は、単結晶シリコン基板に酸素イオンを注入し、所定の深さに酸素含有層を形成した後、熱処理を行い、表面から一定の深さで埋込絶縁層を形成し、埋込絶縁層の上に単結晶シリコン層を形成する方法である。また、Smart−Cut法は、酸化された単結晶シリコン基板に水素イオン注入を行い、所望の深さに相当する所に水素含有層を形成し、他の支持基板(表面に貼り合わせ用の酸化シリコン膜を有する単結晶シリコン基板など)と貼り合わせる、加熱処理を行うことにより水素含有層にて単結晶シリコン基板を分断し、支持基板上に酸化シリコン膜と単結晶シリコン層との積層を形成する方法である。
【0167】
第1の電極613上には、EL層616、および第2の電極617がそれぞれ形成されている。本実施の形態で示す発光素子のEL層616は、実施の形態1で示した成膜方法を適用して形成することができる。
【0168】
シール材605で封止基板604を素子基板610と貼り合わせることにより、素子基板610、封止基板604、およびシール材605で囲まれた空間607に発光素子618が備えられた構造になっている。なお、空間607には、充填材が充填されており、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材605で充填される場合もある。
【0169】
なお、シール材605には可視光硬化性、紫外線硬化性または熱硬化性の樹脂を用いるのが好ましい。具体的にはエポキシ系樹脂を用いることができる。また、これらの材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板604に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。また、フィルム(ポリプロピレン、ポリエステル、ビニル、ポリフッ化ビニル、塩化ビニルなどからなる)、無機蒸着フィルムを用いることもできる。
【0170】
また、発光素子上にパッシベーション膜(保護膜)として絶縁層を設けてもよい。パッシベーション膜としては、窒化珪素、酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒素含有量が酸素含有量よりも多い窒化酸化アルミニウムまたは酸化アルミニウム、ダイアモンドライクカーボン(DLC)、窒素含有炭素膜を含む絶縁膜からなり、該絶縁膜を単層もしくは組み合わせた積層を用いることができる。又はシロキサン樹脂を用いてもよい。
【0171】
充填材の代わりに、窒素雰囲気下で封止することによって、窒素等を封入してもよい。充填材を通して光を発光装置外に取り出す場合、充填材も透光性を有する必要がある。充填材は、例えば可視光硬化、紫外線硬化または熱硬化のエポキシ樹脂を用いればよい。充填材は、液状の状態で滴下し、発光装置内に充填することもできる。充填材として、乾燥剤などの吸湿性を含む物質を用いる、または充填材中に吸湿物質を添加すると、さらなる吸水効果が得られ、素子の劣化を防ぐことができる。
【0172】
また、位相差板や偏光板を用いて、外部から入射する光の反射光を遮断するようにしてもよい。隔壁となる絶縁層を着色しブラックマトリクスとして用いてもよい。この隔壁は液滴吐出法により形成することができ、ポリイミドなどの樹脂材料に、カーボンブラック等を混合させてもよく、その積層でもよい。液滴吐出法によって、異なった材料を同領域に複数回吐出し、隔壁を形成してもよい。位相差板としてはλ/4板、λ/2板を用い、光を制御できるように設計すればよい。構成としては、順に素子基板、発光素子、封止基板(封止材)、位相差板(λ/4、λ/2)、偏光板となり、発光素子から放射された光は、これらを通過し偏光板側より外部に放射される。この位相差板や偏光板は光が放射される側に設置すればよく、両面放射される両面放射型の発光装置であれば両方に設置することもできる。また、偏光板の外側に反射防止膜を有していても良い。これにより、より高繊細で精密な画像を表示することができる。
【0173】
本実施の形態では、上記のような回路で形成するが、本明細書で開示する発明はこれに限定されず、周辺駆動回路としてICチップを前述したCOG方式やTAB方式によって実装したものでもよい。また、ゲート線駆動回路、ソース線駆動回路は複数であっても単数であっても良い。
【0174】
また、本明細書で開示する発光装置において、画面表示の駆動方法は特に限定されず、例えば、点順次駆動方法や線順次駆動方法や面順次駆動方法などを用いればよい。代表的には、線順次駆動方法とし、時分割階調駆動方法や面積階調駆動方法を適宜用いればよい。また、発光装置のソース線に入力する映像信号は、アナログ信号であってもよいし、デジタル信号であってもよく、適宜、映像信号に合わせて駆動回路などを設計すればよい。
【0175】
発光層は、発光波長帯の異なる発光層を画素毎に形成して、カラー表示を行う構成としても良い。典型的には、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色に対応した発光層を形成する。この場合にも、画素の光放射側にその発光波長帯の光を透過するフィルターを設けた構成とすることで、色純度の向上や、画素領域の鏡面化(映り込み)の防止を図ることができる。フィルターを設けることで、発光層から放射される光の損失を無くすことができる。さらに、斜方から画素領域(表示画面)を見た場合に起こる色調の変化を低減することができる。
【0176】
本明細書で開示する発明を用いると、材料と被成膜基板との間にマスクを設けることなく、被成膜基板に微細なパターンの薄膜を形成することができる。本実施の形態のように、このような成膜方法を用いて発光素子を形成し、高繊細な発光装置を作製することができる。
【0177】
本実施の形態は、上記の実施の形態1乃至4と適宜組み合わせることができる。
【0178】
(実施の形態6)
本明細書で開示する発明を適用して、様々な表示機能を有する発光装置を作製することができる。即ち、それら表示機能を有する発光装置を表示部に組み込んだ様々な電子機器に本明細書で開示する発明を適用できる。
【0179】
その様な本明細書で開示する発明に係る電子機器として、テレビジョン装置(単にテレビ、又はテレビジョン受信機ともよぶ)、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等のカメラ、携帯電話装置(単に携帯電話機、携帯電話ともよぶ)、PDA等の携帯情報端末、携帯型ゲーム機、コンピュータ用のモニタ、コンピュータ、カーオーディオ等の音響再生装置、家庭用ゲーム機等の記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDigital Versatile Disc(DVD))等が挙げられる。また、パチンコ機、スロットマシン、ピンボール機、大型ゲーム機など発光装置を有するあらゆる遊技機に適用することができる。その具体例について、図9及び図10を参照して説明する。
【0180】
本明細書で開示する発光装置の適用範囲は極めて広く、この発光装置をあらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。実施の形態1に示すような本明細書で開示する成膜方法を用いるため、生産性がよく、かつ高繊細なパターンを有するため大型の表示部又は照明部を有する高画質の電子機器を安価で提供することができる。
【0181】
図9(A)に示す携帯情報端末機器は、本体9201、表示部9202等を含んでいる。表示部9202は、本明細書で開示する発光装置を適用することができる。その結果、高画質の携帯情報端末機器を安価で提供することができる。
【0182】
図9(B)に示すデジタルビデオカメラは、表示部9701、表示部9702等を含んでいる。表示部9701は本明細書で開示する発光装置を適用することができる。その結果、高画質のデジタルビデオカメラを安価で提供することができる。
【0183】
図9(C)に示す携帯電話機は、本体9101、表示部9102等を含んでいる。本明細書で開示する発明を適用した携帯電話機としては、上記構成に加えて、非接触ICチップ、小型記録装置等を内蔵していてもよく、赤外線通信機能、テレビ受信機能等を備えたものであってもよい。表示部9102は、本明細書で開示する発光装置を適用することができる。その結果、高画質の携帯電話機を安価で提供することができる。
【0184】
図9(D)に示す携帯型のコンピュータは、本体9401、表示部9402等を含んでいる。表示部9402は、本明細書で開示する発光装置を適用することができる。その結果、高画質の携帯型のコンピュータを安価で提供することができる。
【0185】
本明細書で開示する発明を適用した発光装置は、小型の電気スタンドや室内の大型な照明装置として用いることもできる。図9(E)は卓上照明器具であり、照明部9501、傘9502、可変アーム9503、支柱9504、台9505、電源9506を含む。本明細書で開示する発光装置を照明部9501に用いることにより作製される。なお、照明器具には天井固定型の照明器具または壁掛け型の照明器具なども含まれる。本明細書で開示する発明により大型な照明器具も安価で提供することができる。
【0186】
さらに、本明細書で開示する発光装置を液晶表示装置のバックライトとして用いることもできる。本明細書で開示する発光装置は、面発光の照明装置であり大面積化も可能であるため、バックライトの大面積化が可能であり、液晶表示装置の大面積化も可能になる。さらに、本明細書で開示する発光装置は薄型であるため、液晶表示装置の薄型化も可能となる。
【0187】
図9(F)に示す携帯型のテレビジョン装置は、本体9301、表示部9302等を含んでいる。表示部9302は、本明細書で開示する発光装置を適用することができる。その結果、高画質の携帯型のテレビジョン装置を安価で提供することができる。またテレビジョン装置としては、携帯電話機などの携帯端末に搭載する小型のものから、持ち運びをすることができる中型のもの、また、大型のもの(例えば40インチ以上)まで、幅広いものに、本明細書で開示する発光装置を適用することができる。
【0188】
図10(A)は大型の表示部を有するテレビジョン装置である。本明細書で開示する発光装置により主画面2003が形成され、その他付属設備としてスピーカー部2009、操作スイッチなどが備えられている。このように、テレビジョン装置を完成させることができる。
【0189】
図10(A)に示すように、筐体2001に発光素子を利用した表示用パネル2002が組みこまれ、受信機2005により一般のテレビ放送の受信をはじめ、モデム2004を介して有線又は無線による通信ネットワークに接続することにより一方向(送信者から受信者)又は双方向(送信者と受信者間、又は受信者間同士)の情報通信をすることもできる。テレビジョン装置の操作は、筐体に組みこまれたスイッチ又は別体のリモコン操作機2006により行うことが可能であり、このリモコン装置にも出力する情報を表示する表示部2007が設けられていても良い。
【0190】
また、テレビジョン装置にも、主画面2003の他にサブ画面2008を第2の表示用パネルで形成し、チャネルや音量などを表示する構成が付加されていても良い。
【0191】
図10(B)は例えば20〜80インチの大型の表示部を有するテレビジョン装置であり、筐体2010、表示部2011、操作部であるリモコン装置2012、スピーカー部2013等を含む。本明細書で開示する発明は、表示部2011の作製に適用される。本明細書で開示する発明を適用することによって大型でかつ高画質なテレビジョン装置を安価で提供することができる。また図10(B)のテレビジョン装置は、壁かけ型となっており、設置するスペースを広く必要としない。
【0192】
勿論、本明細書で開示する発明は鉄道の駅や空港などにおける情報表示盤や、街頭における広告表示盤など大面積の表示媒体としても様々な用途に適用することができる。
【0193】
本実施の形態は、上記の実施の形態1乃至5と適宜組み合わせることができる。
【実施例1】
【0194】
試料1〜5において成膜用基板を作製し、それぞれ光熱転写法によって被成膜基板に薄膜を形成した。得られた薄膜の評価を以下に示す。
【0195】
図11に試料1〜5における成膜用基板の構造を示す。ガラス基板である基板401上に、反射層402、反射層402上に断熱層403が形成されている。断熱層403上において、反射層402と重畳する領域に断熱層412が、重畳しない領域に光吸収層404が設けられている。光吸収層404及び断熱層412上に有機化合物材料を含む層405が形成されている。試料1〜5の成膜用基板に用いた材料及び膜の膜厚を表1に示す。
【0196】
【表1】
【0197】
反射層402、断熱層403、光吸収層404、断熱層412はスパッタ法、有機化合物材料を含む層405は共蒸着法によって成膜した。反射層402としてはアルミニウム膜、断熱層403及び断熱層412としては酸化珪素膜、光吸収層404としてはチタン膜、又は窒化チタン膜を用いた。有機化合物材料を含む層405に用いた9−[4−(N−カルバゾリル)]フェニル−10−フェニルアントラセン(略称:CzPA)、9,10−ジフェニル−2−[N−フェニル−N−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)アミノ]アントラセン(略称:2PCAPA)の構造式を化1に示す。
【0198】
【化1】
【0199】
試料1〜5の成膜用基板に光照射を行い、被成膜用基板に薄膜(CzPA:2PCAPA膜)を形成した。試料1〜5の光照射条件(エネルギー密度及び照射時間)を表2に示す。なお、光源として試料1〜3は波長532nm、周波数80MHz、パルス幅100fsのレーザ発振器を用い、試料4、5はキセノンフラッシュランプを用いた。表2における試料4、5のエネルギー密度はキセノンフラッシュランプ光の半値幅を用いて算出した。有機化合物材料を含む層405形成面と被成膜基板の被成膜面との距離dは、試料1、試料4及び試料5では0.9μm、試料2及び試料3では0.75μmとした。
【0200】
【表2】
【0201】
各試料1〜5において被成膜基板に形成された薄膜(CzPA:2PCAPA膜)について、光学顕微鏡及び走査透過電子顕微鏡(Scanning Transmission Electron Microscope;STEM)により観察を行った。光学顕微鏡観察による基板上から撮影した光学顕微鏡写真を図12乃至図16(A)に、FIB(Focused Ion Beam)装置により加工した試料のSTEMによる断面写真を図12乃至図16(B)にそれぞれ示す。
【0202】
試料1においては、図12(B)に示すようにCzPA:2PCAPA膜中に円形の低密度領域が生じ、不均一な膜質であった。また、試料5においては、図16(A)に示すようにCzPA:2PCAPA膜のパターンにぼけが生じており、形状不良な膜であった。一方、試料2〜4においては図13、図14及び図15(A)(B)に示すように、パターンぼけも膜中に低密度領域も生じずに正確なパターンで、かつ良質な膜であった。
【0203】
照射時間、エネルギー密度、及び得られた膜の評価を反映した結果を図2に示す。図2において、正確なパターンで、かつ良質な膜であった試料2〜4は丸印のドット、膜質かパターン形状に不良が生じた膜であった試料1、5を×印のドットで表している。また、図2において、本明細書で開示する最適な光照射条件である光照射時間0.1ミリ秒(msec.)以上1ミリ秒(msec.)未満、かつ光源から光吸収層に向かって照射されるエネルギー密度2×103W/cm2以上2×105W/cm2以下の範囲を実線で囲んで示す。
【0204】
図2に示すように、正確なパターンで、かつ良質な膜と評価された試料2〜4の丸印のドットは光照射時間0.1ミリ秒(msec.)以上1ミリ秒(msec.)未満、かつ光源から光吸収層に向かって照射されるエネルギー密度2×103W/cm2以上2×105W/cm2以下の範囲に含まれ、一方、膜質かパターン形状に不良が生じた膜と評価された試料1、5の×印のドットは光照射時間0.1ミリ秒(msec.)以上1ミリ秒(msec.)未満、かつ光源から光吸収層に向かって照射されるエネルギー密度2×103W/cm2以上2×105W/cm2以下の範囲に含まれていない。
【0205】
従って、光熱転写法において、光照射時間0.1ミリ秒(msec.)以上1ミリ秒(msec.)未満、かつ光源から光吸収層に向かって照射されるエネルギー密度2×103W/cm2以上2×105W/cm2以下の範囲で光照射を行うことにより、正確なパターンで、かつ良質な膜を形成することができることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0206】
【図1】成膜方法を示した断面図である。
【図2】光の照射時間とエネルギー密度の関係を示す図である。
【図3】成膜用基板の一例の断面図である。
【図4】発光装置を示した平面図及び断面図である。
【図5】発光装置の作製工程を示した断面図である。
【図6】発光装置の作製工程を示した断面図である。
【図7】発光素子の構成を示した断面図である。
【図8】発光表示モジュールを示した断面図である。
【図9】電子機器を示した図である。
【図10】電子機器を示した図である。
【図11】実施例1の試料に用いる構造を示す図ある。
【図12】実施例1の試料1の光学顕微鏡写真及び断面STEM像を示す図ある。
【図13】実施例1の試料2の光学顕微鏡写真及び断面STEM像を示す図ある。
【図14】実施例1の試料3の光学顕微鏡写真及び断面STEM像を示す図ある。
【図15】実施例1の試料4の光学顕微鏡写真及び断面STEM像を示す図ある。
【図16】実施例1の試料5の光学顕微鏡写真及び断面STEM像を示す図ある。
【技術分野】
【0001】
成膜方法及び発光装置の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネセンス(以下、ELとも記す)素子を備える発光装置には、フルカラー表示を行うため、カラー発光するカラー発光素子を用いる。カラー発光素子を形成するには、各色の発光材料を微細なパターンに電極上に形成する必要がある。
【0003】
一般的に発光材料は、蒸着法によって成膜されるが、蒸着法は、材料利用効率が低いことや基板サイズが限られるなどの問題点を有しており、低コストで高生産性が要求される工業化には不向きである。
【0004】
上記問題を解決する技術として、発光材料をレーザーやフラッシュランプからの光を用いて有機ドナー層を有するドナー基板より、素子作成用基板に転写し発光層を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−308974号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のような転写法においては、素子作成用基板に成膜される発光層のパターンのずれやぼけ、膜質の不良などの問題があった。この問題は発光装置の高繊細化にともなって顕著となり、歩留まりの低下も招く。従って、さらなる正確なパターンでの良質な膜が成膜できる成膜方法が望まれている。
【0006】
上記問題を鑑みて、光による加熱成膜法により正確なパターンで、かつ良質な膜を成膜することを課題の一とする。高繊細な発光装置を生産性よく作製できる技術を提供することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
透光性基板上に光吸収層及び有機化合物材料を含む層が形成された成膜用基板に光を照射し、透光性基板を透過させて、光吸収層に光を照射することによって有機化合物材料を含む層に含まれる材料を、対向して配置された被成膜基板へ成膜する。有機化合物材料を含む層に含まれる材料の加熱手段として光照射工程を用いる。
【0008】
成膜方法において、得られる薄膜の形状の正確性、薄膜の膜質に大きく影響するのは光照射工程の制御である。本明細書で開示する発明は、光照射工程において、照射時間及びエネルギー密度を制御することで薄膜の形状不良(パターンぼけ)を抑制し、良質の膜質を得る。なお、エネルギー密度とは光源より照射領域に向かって照射されたエネルギー密度である。
【0009】
光吸収層への光照射工程において、光照射時間を0.1ミリ秒(msec.)以上1ミリ秒(msec.)未満(より好ましくは0.2ミリ秒(msec.)以上0.5ミリ秒(msec.)以下)とし、かつ光源から光吸収層に向かって照射されるエネルギー密度を2×103W/cm2以上2×105W/cm2以下(より好ましくは2×103W/cm2以上1×105W/cm2以下)とする。さらに、成膜する材料層(有機化合物材料を含む層)が設けられた成膜用基板と、対向して配置される被成膜基板とを、材料層表面と被成膜面との間隔dを0<d≦10μm(より好ましくは0<d≦5μm)とすることが好ましい。上記のような光照射工程を行うと、被成膜基板に正確なパターン形状の良質な薄膜を成膜することができる。
【0010】
光吸収層に照射された光のエネルギーは光吸収層によって、一部反射、吸収される。よって、光吸収層の光吸収率により熱として得られるエネルギーは異なる。光吸収層の光吸収率は、用いる材料や膜厚によって制御することができる。例えば、膜厚200nmのチタン膜であれば、キセノンフラッシュランプ光に対して約50%の光吸収率を示す。
【0011】
用いる光の波長は、光吸収層が吸収する波長であり、本明細書で開示する光照射時間及びエネルギー密度を満たす、パターンぼけ及び膜質不良が抑制できる波長を用いればよく、光源などの種類には特に限定されない。
【0012】
好適に用いられる例としてはフラッシュランプ(キセノンフラッシュランプ、クリプトンフラッシュランプなど)がある。フラッシュランプは短時間で強度の高い光を繰り返し、大面積に照射することができるため、処理基板の面積にかかわらず、効率よく均一に加熱することができる。また、ランプ光は一度に広範囲を処理することができるため、作製工程時間を短縮し、スループットを向上することが可能となる。ランプ光を用いる場合の照射時間は半値幅とする。
【0013】
光吸収層を成膜パターンを反映して選択的に形成すれば、被成膜基板に該パターンで薄膜を形成することができる。
【0014】
また、光吸収層に光が照射されないように、透光性基板と光吸収層との間に反射層を選択的に形成してもよい。反射層によって光は反射されるので、反射層のパターンを反映した薄膜を被成膜基板に形成することができる。
【0015】
さらに、反射層と有機化合物材料を含む層との間に熱の伝導を妨げる断熱層を設けてもよい。断熱層を、光に対する透過率は60%以上とし、かつ熱伝導率が反射層及び光吸収層に用いる材料の熱伝導率よりも小さい材料を用いて形成することが好ましい。熱伝導率が低いと、照射された光から得られる熱を効率よく成膜に用いることができる。
【0016】
本明細書で開示する発明の構成の他の一形態は、光吸収層が設けられた透光性基板と、光吸収層上に有機化合物材料を含む層とを含む成膜用基板を用い、成膜用基板の有機化合物材料を含む層形成面と、被成膜基板の被成膜面とが離れて向き合うように、成膜用基板と被成膜基板とを配置し、透光性基板を通過させて、光源より光を光吸収層に照射し、光を照射された光吸収層上の有機化合物材料を含む層に含まれる材料を被成膜基板上に成膜し、光源から光吸収層に向かって照射されるエネルギー密度は2×103W/cm2以上2×105W/cm2以下であり、時間は0.1ミリ秒以上1ミリ秒未満の間で光を光吸収層に照射する。
【0017】
本明細書で開示する発明の構成の他の一形態は、光吸収層が設けられた透光性基板と、光吸収層上に有機化合物材料を含む層とを含む成膜用基板を用い、成膜用基板の有機化合物材料を含む層形成面と、被成膜基板の被成膜面とが離れて向き合うように、成膜用基板と被成膜基板とを配置し、透光性基板を通過させて、光源より光を光吸収層に照射し、光を照射された光吸収層上の有機化合物材料を含む層に含まれる材料を被成膜基板上に成膜し、光源から光吸収層に向かって照射されるエネルギー密度は2×103W/cm2以上2×105W/cm2以下であり、時間は0.1ミリ秒以上1ミリ秒未満の間で光を光吸収層に照射し、光の照射は、有機化合物材料を含む層形成面と被成膜基板の被成膜面との距離を10μm以下に配置して行う。
【0018】
本明細書で開示する成膜方法を用いて、被成膜基板上に設けられた第1の電極層上に発光層を形成し、発光層上に第2の電極層を形成して発光素子を有する発光装置を作製することができる。また、本明細書で開示する成膜方法を用いて発光層を形成する場合、被成膜領域を一画素ごとに対応させてもよいし、被成膜領域を複数の画素を含むように対応させ複数の画素の発光層を一度に作製してもよい。
【0019】
本明細書で開示する成膜方法を用いると蒸着材料と被成膜基板との間にマスクを設けることなく、被成膜基板に微細なパターンの薄膜を形成することができる。
【0020】
光吸収層に光を照射する工程は減圧下で行うことが好ましい。減圧下で光を照射し、被成膜基板に材料を成膜する工程を行うと、成膜される膜へのゴミ等の汚染物の影響を軽減することができる。また、材料の気化温度が低下するので、熱による被成膜基板へのダメージを抑制できる。また、装置内に残存する残留気体に、気化分子が衝突し散乱するのを防止でき、パターンぼけの発生を抑制できる。
【0021】
本明細書で開示する成膜方法は、高範囲を処理することも可能なため、大面積基板であっても生産性よく被成膜基板に薄膜を形成することができる。よって、高繊細な発光装置及び電子機器を安価で作製することができる。
【発明の効果】
【0022】
蒸着材料と被成膜基板との間にマスクを設けることなく、被成膜基板に微細なパターンでかつ膜質の良好な薄膜を形成することができる。さらに、このような成膜方法を用いて発光素子を形成し、高繊細な発光装置を作製することができる。また、大面積の被成膜基板に薄膜を形成することができるため、大型の発光装置及び電子機器を作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本明細書で開示する発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。但し、本明細書で開示する発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0024】
(実施の形態1)
本実施の形態では、被成膜基板に微細なパターンで薄膜を形成することを目的とした成膜用基板及び成膜方法の一例について図1を用いて説明する。
【0025】
図1(A)に成膜用基板の一例を示す。第1の基板101上に選択的に光吸収層104が形成されている。第1の基板101と光吸収層104との間に下地膜となる絶縁膜を形成してもよい。
【0026】
成膜用基板に形成される光吸収層104に第1の基板101側より光を照射して、被成膜基板に膜を成膜する。従って、用いる光に対して、第1の基板101は透光性を、光吸収層104は光吸収性をそれぞれ有する必要がある。よって、照射される光の波長により、第1の基板101、光吸収層104に好適な材料の種類が変化するため、適宜材料を選択する必要がある。
【0027】
また、第1の基板101は熱伝導率が低い材料であることが好ましい。熱伝導率が低いと、照射された光から得られる熱を効率よく成膜に用いることができる。第1の基板101としては、例えば、ガラス基板、石英基板、無機材料を含むプラスチック基板などを用いることができる。ガラス基板としては、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスのような無アルカリガラスと呼ばれる電子工業用に使われる各種ガラス基板を適用することができる。
【0028】
光吸収層104は、成膜の際に照射された光を吸収し、発熱する層である。よって、光吸収層104は、照射する光に対して低い反射率を有し、高い吸収率を有する材料で形成されていることが好ましい。具体的には、光吸収層104は、照射される光に対して、70%以下の反射率を示すことが好ましい。
【0029】
光吸収層104には、種々の材料を用いることができる。例えば、窒化チタン、窒化タンタル、窒化モリブデン、窒化タングステンなどの金属窒化物、チタン、モリブデン、タングステンなどの金属、カーボンなどを用いることができる。なお、照射される光の波長に応じて、光吸収層104に好適な材料の種類が変化することから、適宜材料を選択する必要がある。また、光吸収層104は一層に限らず複数の層により構成されていてもよい。例えば、金属と金属窒化物の積層構造としてもよい。
【0030】
光吸収層104は、種々の方法を用いて形成することができる。例えば、スパッタリング法、電子ビーム蒸着法、真空蒸着法、化学気相成長(CVD;Chemical Vapor Deposition)法などにより形成することができる。
【0031】
光吸収層104の膜厚は、材料によって異なるが、照射した光が透過しない膜厚であることが好ましい。具体的には、10nm以上2μm以下の膜厚であることが好ましい。また、光吸収層の膜厚が薄い方が低いエネルギー密度の光で成膜することができるため、更に好ましくは10nm以上600nm以下の膜厚であるとよい。
【0032】
光吸収層104は、有機化合物材料を含む層105に含まれる材料の成膜可能温度(材料層に含まれる材料の少なくとも一部が被成膜基板へ成膜される温度)まで加熱できるのであれば、照射する光の一部が透過してもよい。ただし、一部が透過する場合には、有機化合物材料を含む層105に含まれる材料として、光によって分解しない材料を用いることが必要である。
【0033】
光吸収層104上に保護膜を形成してもよい。保護膜は光吸収層への光照射により光吸収層が蒸発するのを防ぐ効果がある。保護膜としては酸化珪素膜、窒化珪素膜、酸化窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜を用いることができ、それらの積層でもよい。保護膜の膜厚は100nm以下とするのが好ましい。
【0034】
光吸収層104上に被成膜基板上に成膜される材料を含む有機化合物材料を含む層105を形成する(図1(B)参照。)。
【0035】
有機化合物材料を含む層105は、被成膜基板上に成膜する材料を含んで形成される層である。そして、成膜用基板に光を照射することにより、有機化合物材料を含む層105に含まれる材料が加熱され、有機化合物材料を含む層105に含まれる材料の少なくとも一部が被成膜基板上に成膜される。有機化合物材料を含む層105が加熱されると、有機化合物材料を含む層に含まれる材料の少なくとも一部が気化すること、もしくは、有機化合物材料を含む層の少なくとも一部に熱変形が生じ、その結果応力が変化するために膜が剥がれ、被成膜基板上に成膜される。
【0036】
有機化合物材料を含む層105は、種々の方法により形成される。例えば、湿式法であるスピンコート法、ロールコート法、ダイコート法、ロールコート法、ブレードコート法、バーコート法、グラビアコート法、スプレー法、キャスト法、ディップ法、液滴吐出(噴出)法(インクジェット法)、ディスペンサ法、各種印刷法(スクリーン(孔版)印刷、オフセット(平版)印刷、凸版印刷やグラビア(凹版)印刷など所望なパターンで形成される方法)などを用いることができる。また、乾式法である真空蒸着法、CVD法、スパッタリング法等を用いることができる。
【0037】
有機化合物材料を含む層105に含まれる材料としては、種々の有機化合物材料を用いることができ、さらに種々の無機化合物材料を含んでも良い。発光素子のEL層を形成する場合には、EL層を形成する成膜可能な材料を用いる。例えば、EL層を形成する発光性材料、キャリア輸送性材料などの有機化合物の他、EL層を構成するキャリア輸送層やキャリア注入層、発光素子の電極などに用いられる金属酸化物、金属窒化物、ハロゲン化金属、金属単体といった無機化合物を用いることもできる。
【0038】
また、有機化合物材料を含む層105は、複数の材料を含んでいてもよい。また、有機化合物材料を含む層105は、単層でもよいし、複数の層が積層されていてもよい。
【0039】
湿式法を用いて有機化合物材料を含む層105を形成する場合には、所望の材料を溶媒に溶解あるいは分散させ、液状の組成物(溶液あるいは分散液)を調整すればよい。溶媒は、材料を溶解あるいは分散させることができ、且つ材料と反応しないものであれば特に限定されない。例えば、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、或いはクロロベンゼンなどのハロゲン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、n−プロピルメチルケトン、或いはシクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、ベンゼン、トルエン、或いはキシレンなどの芳香族系溶媒、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン、或いは炭酸ジエチルなどのエステル系溶媒、テトラヒドロフラン、或いはジオキサンなどのエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド、或いはジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒、ジメチルスルホキシド、ヘキサン、又は水等を用いることができる。また、これらの溶媒複数種を混合して用いてもよい。湿式法を用いることにより、材料の利用効率を高めることができ、製造コストを低減させることができる。
【0040】
有機化合物材料を含む層105によって被成膜基板上に形成される膜の膜厚および均一性を制御する場合には、有機化合物材料を含む層105の膜厚および均一性は制御される必要がある。しかし、被成膜基板上に形成される膜の膜厚および均一性に影響しないのであれば、有機化合物材料を含む層105は必ずしも均一の層である必要はない。例えば、微細な島状に形成されていてもよいし、凹凸を有する層状に形成されていてもよい。
【0041】
次に、第1の基板101の一方の面であって、光吸収層104及び有機化合物材料を含む層105が形成された面に対向する位置に、被成膜基板である第2の基板107を配置する(図1(C)参照。)。第2の基板107は、成膜処理により所望の層が成膜される被成膜基板である。
【0042】
成膜用基板における有機化合物材料を含む層105表面と、被成膜基板における被成膜面との距離dを至近距離、具体的には距離dを、0<d≦10μm(より好ましくは0<d≦5μm)となるように近づけて対向させることが好ましい。距離dが短いと有機化合物材料を含む層105に含まれる材料が被成膜面に移動する距離も短くなるため、より被成膜面に成膜される膜のパターンぼけを防止でき精度良く成膜することができる。
【0043】
第1の基板101及び第2の基板107が特に大型基板であると、基板のたわみやそりなどによって基板間で距離dに誤差が生じ、距離dの値に分布を有する場合がある。この場合、距離dは材料層表面と被成膜面との間の最長距離とする。基板の大きさや配置方法によっては、第1の基板101上の最表面の膜と第2の基板107上の最表面の膜とは一部接触する場合もある。
【0044】
第1の基板101上に光吸収層104及び有機化合物材料を含む層105が形成された成膜用基板において、より成膜される膜に高い信頼性を付与したい場合は、成膜用基板に真空中での加熱処理を行うこと好ましい。同様に、被成膜基板である第2の基板107も成膜前に真空中での加熱処理を行うと、成膜される膜の信頼性が向上する。特に、被成膜用基板に隔壁となる絶縁層などを設ける場合、真空中での加熱処理により水などの汚染物を除去することで、より信頼性の高い膜を成膜することができ、作製する発光素子、及び発光装置の信頼性も高めることができる。
【0045】
第1の基板101の裏面(光吸収層104及び有機化合物材料を含む層105が形成されていない面)側から光源121より光110を照射する(図1(D)参照。)。このとき、第1の基板101に照射された光は、第1の基板101を透過し、光吸収層104に吸収される。そして、光吸収層104は、吸収した光から得た熱を有機化合物材料を含む層105に含まれる材料に与えることにより、有機化合物材料を含む層105に含まれる材料の少なくとも一部を、第2の基板107上に膜111として成膜する。これにより、第2の基板107上に所望のパターンに成形された膜111が形成される(図1(E)参照。)。
【0046】
光吸収層104に光110を照射する工程は減圧下で行うことが好ましい。減圧下で光110を照射し、被成膜基板に材料を成膜する工程を行うと、成膜される膜へのゴミ等の汚染物の影響を軽減することができる。また、材料の気化温度が低下するので、熱による被成膜基板へのダメージを抑制できる。また、装置内に残存する残留気体に、気化分子が衝突し散乱するのを防止でき、パターンぼけの発生を抑制できる。
【0047】
また、光吸収層104に光110を照射する工程は有機化合物材料を含む層105を加熱状態(熱を保持している状態)として行ってもよい。有機化合物材料を含む層105に加熱処理を行い、加熱状態にしておくと、低いパワーの光の光源を用いた光照射でも材料層に含まれる材料を被成膜用基板に成膜することができる。光110を照射する工程を、有機化合物材料を含む層105を形成する際に行う加熱処理直後に行うと、有機化合物材料を含む層105は加熱状態とすることができる。また、ヒータなどの加熱手段を用いて。有機化合物材料を含む層105を加熱しながら光110を照射してもよい。
【0048】
成膜方法において、得られる薄膜の形状の正確性、薄膜の膜質に大きく影響するのは光照射工程の制御である。本実施の形態で、光照射工程において、照射時間及び光源から光吸収層に向かって照射されるエネルギー密度を制御することで薄膜の形状不良(パターンぼけ)を抑制し、良質の膜質を得る。
【0049】
本実施の形態の光吸収層104への光照射工程において、光110の照射時間を0.1ミリ秒(msec.)以上1ミリ秒(msec.)未満(より好ましくは0.2ミリ秒(msec.)以上0.5ミリ秒(msec.)以下)とし、かつ光110の照射により光吸収層104の照射領域に与えられるエネルギー密度を2×103W/cm2以上2×105W/cm2以下(より好ましくは2×103W/cm2以上1×105W/cm2以下)とする。上記のような光照射工程を行うと、被成膜基板に正確なパターン形状の良質な薄膜を成膜することができる。
【0050】
用いる光110は、光吸収層104が吸収する波長であり、本明細書で開示する発明における光照射時間及びエネルギー密度を満たす、パターンぼけ及び膜質不良が抑制できる波長を用いればよく、光源121などの種類には特に限定されない。
【0051】
光源121に好適に用いられる例としてはフラッシュランプ(キセノンフラッシュランプ、クリプトンフラッシュランプなど)がある。フラッシュランプは短時間で強度の高い光を繰り返し、大面積に照射することができるため、処理基板の面積にかかわらず、効率よく均一に加熱することができる。また、ランプ光は一度に広範囲を処理することができるため、作製工程時間を短縮し、スループットを向上することが可能となる。
【0052】
光110は、光源121にランプを用いたランプ光による強光、光源121にレーザ発振器を用いたレーザ光などを用いることができる。光の波長は400nm以上2500nm以下程度の光を好適に用いることができる。
【0053】
用いる光110は、赤外光、可視光、または紫外光のいずれか一またはそれらの組み合わせを用いることが可能である。例えば、紫外線ランプ、ブラックライト、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、または高圧水銀ランプから射出された光(ランプ光)を用いてもよい。その場合、ランプ光源は、必要な時間点灯させて照射してもよいし、複数回照射してもよい。
【0054】
また、光としてレーザ光を用いてもよく、レーザ発振器としては、紫外光、可視光、又は赤外光を発振することが可能なレーザ発振器を用いることができる。様々な波長のレーザ光を用いることができ、例えば、355、515、532、1030、1064nmなどの波長のレーザ光を用いることができる。
【0055】
レーザ光には、Arレーザ、Krレーザ、エキシマレーザなどの気体レーザ、単結晶のYAG、YVO4、フォルステライト(Mg2SiO4)、YAlO3、GdVO4、若しくは多結晶(セラミック)のYAG、Y2O3、YVO4、YAlO3、GdVO4に、ドーパントとしてNd、Yb、Cr、Ti、Ho、Er、Tm、Taのうち1種または複数種添加されているものを媒質とするレーザ、ガラスレーザ、ルビーレーザ、アレキサンドライトレーザ、Ti:サファイアレーザ、ファイバーレーザ等の固体レーザのうち一種または複数種から発振されるものを用いることができる。また、上記固体レーザから発振される第2高調波や第3高調波、さらに高次の高調波を用いることもできる。なお、レーザ媒体が固体である固体レーザを用いると、メンテナンスフリーの状態を長く保てるという利点や、出力が比較的に安定している利点を有している。
【0056】
また、レーザスポットの形状は、線状または矩形状とすることが好ましい。線状または矩形状とすることにより、処理基板にレーザ光を効率よく走査することができる。よって、成膜に要する時間(タクトタイム)が短くなり、生産性が向上する。また、レーザスポットの形状は楕円形状でもよい。
【0057】
また、光照射による成膜は、減圧雰囲気下で行うことが好ましい。従って、成膜室内を5×10−3Pa以下、好ましくは10−6Pa以上10−4Pa以下の雰囲気とすることが好ましい。
【0058】
本実施の形態のように光吸収層104を成膜パターンを反映して選択的に形成すれば、被成膜基板に該パターンで薄膜を形成することができる。
【0059】
また、光吸収層104に光が照射されないように、第1の基板101と光吸収層104との間に反射層を選択的に形成してもよい。反射層によって光は反射されるので、反射層のパターンを反映した薄膜を被成膜基板に形成することができる。
【0060】
さらに、反射層と有機化合物材料を含む層との間に熱の伝導を妨げる断熱層を設けてもよい。
【0061】
本明細書で開示する発明を適用することにより、第1の基板上に形成された有機化合物材料を含む層の膜厚を制御することによって、被成膜基板である第2の基板上に成膜される膜の膜厚を制御することができる。つまり、第1の基板上に形成された有機化合物材料を含む層に含まれる材料を全て成膜することにより第2の基板上に形成される膜が所望の膜厚となるように予め有機化合物材料を含む層の膜厚が制御されているため、第2の基板上に成膜する際の膜厚モニターは不要となる。よって、膜厚モニターを利用した成膜速度の調節を使用者が行う必要がなく、成膜工程を全自動化することが可能である。そのため、生産性の向上を図ることができる。
【0062】
また、本明細書で開示する発明を適用することにより、第1の基板上に形成された有機化合物材料を含む層105に含まれる材料を均一に成膜することができる。また、有機化合物材料を含む層105が複数の材料を含む場合でも、有機化合物材料を含む層105と同じ材料をほぼ同じ重量比で含有する膜を被成膜基板である第2の基板上に成膜することができる。従って、本明細書で開示する成膜方法は、成膜温度の異なる複数の材料を用いて成膜する場合でも、共蒸着のようにそれぞれ蒸着レートを制御する必要がない。そのため、蒸着レート等の複雑な制御を行うことなく、所望の異なる材料を含む層を容易に精度良く成膜することができる。
【0063】
本明細書で開示する成膜方法を用いて発光装置の発光層を形成する場合、第1の領域を一画素ごとに対応させてもよいし、第1の領域を複数の画素を含むように対応させ複数の画素の発光層を一度に作製してもよい。例えば、例えば三色の色要素(例えばRGB)でフルカラー表示を行いストライプ配置とする場合、複数の同色の発光を示す画素を含む領域を、成膜用基板の第1の領域と対応させ、被成膜用基板に複数の画素の発光層を形成することができる。
【0064】
フルカラーディスプレイを作製する場合には、発光層を作り分ける必要があるため、本明細書で開示する成膜方法を用いて発光層を形成すれば、容易に所望のパターンで発光層を作り分けることができる。また、精度良く発光層を作り分けることができる。
【0065】
また、本明細書で開示する成膜方法では、所望の材料を無駄にすることなく、被成膜基板に成膜することが可能である。よって、材料の利用効率が向上し、製造コストの低減を図ることができる。また、成膜室内壁に材料が付着することも防止でき、成膜装置のメンテナンスを容易にすることができる。
【0066】
また、本明細書で開示する発明を適用することにより、平坦でムラのない膜を成膜することが可能となる。また、所望の領域のみに成膜することが可能であるため、微細パターンの形成が可能となり、高精細な発光装置を作製することができる。
【0067】
また、本明細書で開示する発明を適用することにより、光を用いた成膜の際に選択的に所望の領域に成膜することができるので、材料の利用効率を高めることができ、精度良く、所望の形状に成膜することが容易であるため生産性向上を図ることができる。
【0068】
また、本明細書で開示する発明を適用することにより、光を用いた成膜の際に光源にランプを使用することができるため、大面積を一度に処理することが可能となる。よって生産性を向上させることができる。
【0069】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本明細書で開示する発明に用いることのできる成膜用基板の他の例を図3を用いて説明する。実施の形態1と同様な機能を有する構成の材料や作製方法は、実施の形態1と同様とすればよい。
【0070】
図3(A)乃至(F)は、成膜用基板に光吸収層の他に、反射層や断熱層を設ける例である。
【0071】
光吸収層に光が照射されないように、透光性基板と光吸収層との間に反射層を選択的に形成することができる。反射層によって光は反射されるので、反射層のパターンを反映した薄膜を被成膜基板に形成することができる。
【0072】
また、反射層と有機化合物材料を含む層との間に熱の伝導を妨げる断熱層を設けることもできる。断熱層を、光に対する透過率は60%以上とし、かつ熱伝導率が反射層及び光吸収層に用いる材料の熱伝導率よりも小さい材料を用いて形成することが好ましい。熱伝導率が低いと、照射された光から得られる熱を効率よく成膜に用いることができる。なお、本明細書で開示する発明において、断熱層は熱を完全に遮断することが好ましいが、本明細書では、少なくとも光吸収層よりも熱の伝導を妨げるものも断熱層という。
【0073】
図3(A)は、第1の基板101と光吸収層104との間に選択的に反射層102を設けており、光吸収層104上に有機化合物材料を含む層105が形成されている。反射層102上の光吸収層104には光は照射されないために、反射層102の形成領域以外の領域のパターンが被成膜用基板における薄膜の成膜パターンとすることができる。
【0074】
図3(B)は、図3(A)において、光吸収層104を選択的に形成し、第1の基板101上の反射層102の形成領域以外に光吸収層104を形成する例である。
【0075】
図3(C)は、図3(A)において、反射層102と光吸収層104との間に断熱層103を設ける例である。図3(D)は、図3(C)において、光吸収層104を選択的に形成し、第1の基板101上の反射層102の形成領域以外に光吸収層104を形成する例である。
【0076】
断熱層103を設けることで反射層102と光吸収層104とは接しなくなるために熱の伝わりをより防止することができる。
【0077】
図3(E)は、図3(C)において、反射層102と重畳する領域に、断熱層112をさらに設ける例である。図3(E)では、光吸収層104と有機化合物材料を含む層105との間に選択的に断熱層112が形成されている。図3(F)は、図3(E)において、光吸収層104を選択的に形成し、第1の基板101上の反射層102の形成領域以外に光吸収層104を形成する例である。よって図3(F)では、断熱層103と断熱層112とが接して積層する構成となる。
【0078】
このように断熱層を複数設けると、より被成膜基板において薄膜を成膜しない領域(第2の領域)へ、薄膜を成膜する領域(第1の領域)からの熱が伝わることを防止する効果を高めることができる。よって、より被成膜基板における薄膜のパターン形状を正確に制御することができ、高精細なパターン形状の薄膜を得ることが可能となる。
【0079】
反射層102は、成膜の際、光吸収層104の一部分に選択的に光を照射するために、それ以外の部分に照射される光を反射するための層である。よって、反射層102は、照射する光に対して高い反射率を有する材料で形成されていることが好ましい。具体的には、反射層102は、照射される光に対して、反射率が85%以上、さらに好ましくは、反射率が90%以上であることが好ましい。
【0080】
反射層102に用いることができる材料としては、例えば、銀、金、白金、銅、アルミニウムを含む合金、又は銀を含む合金などを用いることができる。
【0081】
反射層102の膜厚は、材料により異なるが、100nm以上とすることが好ましい。100nm以上の膜厚とすることにより、照射した光が反射層を透過することを抑制することができる。
【0082】
また、反射層102を所望の形状に加工する際には種々の方法を用いることができるが、ドライエッチングを用いることが好ましい。ドライエッチングを用いることにより、側壁が鋭くなり、微細なパターンを形成することができる。
【0083】
断熱層103、112は、熱伝導率が反射層102および光吸収層104を形成する材料よりも低い材料を用いる必要がある。また、図3に示すように、光を、断熱層103を透過させて光吸収層104に照射する構成の場合には、断熱層103は透光性を有する必要がある。この場合、本明細書で開示する発明における断熱層103は、熱伝導率の低い材料であると共に光透過率の高い材料を用いる必要がある。具体的には、断熱層103には、光に対する透過率が60%以上となる材料を用いることが好ましい。ただし光を透過させる必要のない断熱層112のような場合は、断熱層は透光性を有する必要はない。
【0084】
断熱層103、断熱層112に用いる材料としては、例えば、酸化チタン、酸化珪素、窒化酸化珪素、酸化ジルコニウム等を用いることができる。
【0085】
断熱層103、断熱層112の膜厚は、材料により異なるが、10nm以上2μm以下とすることが好ましく、より好ましくは、100nm以上1μm以下とする。10nm以上2μm以下の膜厚とすることにより、光を透過させつつ、熱が第2の領域の有機化合物材料を含む層に伝わるのを遮断する効果を有する。
【0086】
反射層102、断熱層103、断熱層112、及び光吸収層104は、種々の方法を用いて形成することができる。例えば、スパッタリング法、電子ビーム蒸着法、真空蒸着法、化学気相成長(CVD;Chemical Vapor Deposition)法などにより形成することができる。
【0087】
さらに、反射層102と光吸収層104の反射率は差が大きいほど好ましい。具体的には、照射する光の波長に対して、反射率の差が25%以上、より好ましくは30%以上であることが好ましい。
【0088】
図3(A)乃至(F)に示す成膜用基板を用いて、実施の形態1と同様に光を照射して、被成膜基板へ所望のパターンで膜を成膜することができる。従って本実施の形態に示す成膜用基板を用いて、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
【0089】
本明細書で開示する発明では、材料と被成膜基板との間にマスクを設けることなく、被成膜基板に微細なパターンの薄膜を形成することができる。
【0090】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本明細書で開示する発明を適用して、発光素子および発光装置を作製する方法について説明する。
【0091】
本明細書で開示する発明を適用して、例えば、図6(A)、(B)に示す発光素子を作製することができる。図6(A)に示す発光素子は、基板901上に第1の電極902、発光層913のみで形成されたEL層903、第2の電極904が順に積層して設けられている。第1の電極902及び第2の電極904のいずれか一方は陽極として機能し、他方は陰極として機能する。陽極から注入される正孔及び陰極から注入される電子がEL層903で再結合して、発光を得ることができる。本実施の形態において、第1の電極902は陽極として機能する電極であり、第2の電極904は陰極として機能する電極であるとする。
【0092】
また、図6(B)に示す発光素子は、図6(A)のEL層903が複数の層が積層された構造である場合を示しており、具体的には、第1の電極902側から正孔注入層911、正孔輸送層912、発光層913、電子輸送層914、および電子注入層915が順次設けられている。なお、EL層903は、図6(A)に示すように少なくとも発光層913を有していれば機能するため、これらの層を全て設ける必要はなく、必要に応じて適宜選択して設ければよい。
【0093】
図6に示す基板901には、絶縁表面を有する基板または絶縁基板を適用する。具体的には、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスのような電子工業用に使われる各種ガラス基板、石英基板、セラミック基板又はサファイヤ基板等を用いることができる。
【0094】
また、第1の電極902および第2の電極904は、様々な金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。具体的には、例えば、酸化インジウム−酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛(IZO:Indium Zinc Oxide)、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム等が挙げられる。この他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる。
【0095】
これらの材料は、通常スパッタリング法により成膜される。例えば、酸化インジウム−酸化亜鉛は、酸化インジウムに対し1〜20wt%の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。また、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウムは、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5〜5wt%、酸化亜鉛を0.1〜1wt%含有したターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。その他、ゾル−ゲル法などを応用して、インクジェット法、スピンコート法などにより作製してもよい。
【0096】
また、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、アルミニウムを含む合金等を用いることができる。その他、仕事関数の小さい材料である、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(アルミニウム、マグネシウムと銀との合金、アルミニウムとリチウムの合金)、ユーロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等を用いることもできる。
【0097】
アルカリ金属、アルカリ土類金属、これらを含む合金の膜は、真空蒸着法を用いて形成することができる。また、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む合金はスパッタリング法により形成することも可能である。また、銀ペーストなどをインクジェット法などにより成膜することも可能である。また、第1の電極902および第2の電極904は、単層膜に限らず、積層膜で形成することもできる。
【0098】
なお、EL層903で発光する光を外部に取り出すため、第1の電極902または第2の電極904のいずれか一方、または両方が光を通過するように形成する。例えば、インジウム錫酸化物等の透光性を有する導電材料を用いて形成するか、或いは、銀、アルミニウム等を数nm乃至数十nmの厚さとなるように形成する。また、膜厚を薄くした銀、アルミニウムなどの金属薄膜と、ITO膜等の透光性を有する導電材料を用いた薄膜との積層構造とすることもできる。
【0099】
なお、本実施の形態で示す発光素子のEL層903(正孔注入層911、正孔輸送層912、発光層913、電子輸送層914又は電子注入層915)は、実施の形態1で示した成膜方法を適用して形成することができる。また、電極を実施の形態1で示した成膜方法を適用して形成することもできる。
【0100】
発光層913としては種々の材料を用いることができる。例えば、蛍光を発光する蛍光性化合物や燐光を発光する燐光性化合物を用いることができる。
【0101】
発光層913に用いることのできる燐光性化合物としては、例えば、青色系の発光材料として、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)テトラキス(1−ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス[2−(3’,5’ビストリフルオロメチルフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:Ir(CF3ppy)2(pic))、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIracac)などが挙げられる。また、緑色系の発光材料として、トリス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(ppy)3)、ビス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(ppy)2(acac))、ビス(1,2−ジフェニル−1H−ベンゾイミダゾラト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(pbi)2(acac))、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bzq)2(acac))などが挙げられる。また、黄色系の発光材料として、ビス(2,4−ジフェニル−1,3−オキサゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(dpo)2(acac))、ビス[2−(4’−パーフルオロフェニルフェニル)ピリジナト]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(p−PF−ph)2(acac))、ビス(2−フェニルベンゾチアゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bt)2(acac))などが挙げられる。また、橙色系の発光材料として、トリス(2−フェニルキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(pq)3)、ビス(2−フェニルキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(pq)2(acac))などが挙げられる。また、赤色系の発光材料として、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジナト−N,C3’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(btp)2(acac))、ビス(1−フェニルイソキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(piq)2(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdpq)2(acac))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)等の有機金属錯体が挙げられる。また、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:Tb(acac)3(Phen))、トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(DBM)3(Phen))、トリス[1−(2−テノイル)−3,3,3−トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(TTA)3(Phen))等の希土類金属錯体は、希土類金属イオンからの発光(異なる多重度間の電子遷移)であるため、燐光性化合物として用いることができる。
【0102】
発光層913に用いることのできる蛍光性化合物としては、例えば、青色系の発光材料として、N,N’−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N’−ジフェニルスチルベン−4,4’−ジアミン(略称:YGA2S)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)などが挙げられる。また、緑色系の発光材料として、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCABPhA)、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−N−[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N−フェニルアントラセン−2−アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9−トリフェニルアントラセン−9−アミン(略称:DPhAPhA)などが挙げられる。また、黄色系の発光材料として、ルブレン、5,12−ビス(1,1’−ビフェニル−4−イル)−6,11−ジフェニルテトラセン(略称:BPT)などが挙げられる。また、赤色系の発光材料として、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)テトラセン−5,11−ジアミン(略称:p−mPhTD)、7,13−ジフェニル−N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)アセナフト[1,2−a]フルオランテン−3,10−ジアミン(略称:p−mPhAFD)などが挙げられる。
【0103】
また、発光層913として、発光性の高い物質(ドーパント材料)を他の物質(ホスト材料)に分散させた構成を用いることもできる。発光性の高い物質(ドーパント材料)を他の物質(ホスト材料)に分散させた構成を用いるにより、発光層の結晶化を抑制することができる。また、発光性の高い物質の濃度が高いことによる濃度消光を抑制することができる。
【0104】
発光性の高い物質を分散させる物質としては、発光性の高い物質が蛍光性化合物の場合には、蛍光性化合物よりも一重項励起エネルギー(基底状態と一重項励起状態とのエネルギー差)が大きい物質を用いることが好ましい。また、発光性の高い物質が燐光性化合物の場合には、燐光性化合物よりも三重項励起エネルギー(基底状態と三重項励起状態とのエネルギー差)が大きい物質を用いることが好ましい。
【0105】
発光層913に用いるホスト材料としては、例えば4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、4,4’−ビス[N−(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DFLDPBi)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)などの他、4,4’−ジ(9−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、9−[4−(9−カルバゾリル)フェニル]−10−フェニルアントラセン(略称:CzPA)などが挙げられる。
【0106】
また、ドーパント材料としては、上述した燐光性化合物や蛍光性化合物を用いることができる。
【0107】
発光層913として、発光性の高い物質(ドーパント材料)を他の物質(ホスト材料)に分散させた構成を用いる場合には、成膜用基板上の有機化合物材料を含む層として、ホスト材料とゲスト材料とを混合した層を形成すればよい。または、成膜用基板上の有機化合物材料を含む層として、ホスト材料を含む層とドーパント材料を含む層とが積層した構成としてもよい。このような構成の有機化合物材料を含む層を有する成膜用基板を用いて発光層913を形成することにより、発光層913は発光材料を分散させる物質(ホスト材料)と発光性の高い物質(ドーパント材料)とを含み、発光材料を分散させる物質(ホスト材料)に発光性の高い物質(ドーパント材料)が分散された構成となる。なお、発光層913として、2種類以上のホスト材料とドーパント材料を用いてもよいし、2種類以上のドーパント材料とホスト材料を用いてもよい。また、2種類以上のホスト材料及び2種類以上のドーパント材料を用いてもよい。
【0108】
また、図6(B)に示す発光素子を形成する場合には、EL層903(正孔注入層911、正孔輸送層912、発光層913、電子輸送層914、および電子注入層915)のそれぞれの層を形成する材料で形成された有機化合物材料を含む層を有する実施の形態1で示した成膜用基板を各層毎に用意し、各層の成膜毎に異なる成膜用基板を用いて、実施の形態1で示した方法により、基板901上の第1の電極902上にEL層903を形成することができる。そして、EL層903上に第2の電極904を形成することにより、図6(B)に示す発光素子を得ることができる。なお、この場合には、EL層903の全ての層に実施の形態1で示した方法を用いることもできるが、一部の層のみに実施の形態1で示した方法を用いても良い。
【0109】
湿式法で被成膜基板に膜を積層する場合、直接下層の膜上に材料を含む液状の組成物を付着させて形成するために、組成物中に含まれる溶媒によっては下層の膜が溶解してしまうため、積層できる材料が限定されてしまう。しかし、本明細書で開示する成膜方法を用いて積層を形成する場合、下層の膜に直接溶媒が付着しないため、溶媒による下層の膜への影響を考慮しなくてよい。従って、積層できる材料の選択性において自由度が広い。湿式法で直接被成膜基板に膜を形成してしまうと被成膜基板に既に成膜されている下層の膜に影響を与えない加熱条件で加熱処理を行わねばならないために、十分な膜質の向上を達成できない場合がある。
【0110】
例えば、正孔注入層911としては、モリブデン酸化物やバナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等を用いることができる。この他、フタロシアニン(略称:H2Pc)や銅フタロシアニン(略称:CuPc)等のフタロシアニン系の化合物、或いはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)等の高分子等によっても正孔注入層を形成することができる。
【0111】
また、正孔注入層911として、正孔輸送性の高い物質と電子受容性を示す物質を含む層を用いることができる。正孔輸送性の高い物質と電子受容性を示す物質とを含む層は、キャリア密度が高く、正孔注入性に優れている。また、正孔輸送性の高い物質と電子受容性を示す物質とを含む層を、陽極として機能する電極に接する正孔注入層として用いることにより、陽極として機能する電極材料の仕事関数の大小に関わらず、様々な金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。
【0112】
正孔注入層911に用いる電子受容性を示す物質としては、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F4−TCNQ)、クロラニル等を挙げることができる。また、遷移金属酸化物を挙げることができる。また元素周期表における第4族から第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0113】
正孔注入層911に用いる正孔輸送性の高い物質としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の化合物を用いることができる。なお、正孔注入層に用いる正孔輸送性の高い物質としては、10−6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。以下では、正孔注入層911に用いることのできる正孔の輸送性の高い物質を具体的に列挙する。
【0114】
例えば、正孔注入層911に用いることのできる芳香族アミン化合物としては、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)やN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)等を用いることができる。また、N,N’−ビス(4−メチルフェニル)(p−トリル)−N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(略称:DTDPPA)、4,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’−ビス(N−{4−[N’−(3−メチルフェニル)−N’−フェニルアミノ]フェニル}−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5−トリス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)等を挙げることができる。
【0115】
正孔注入層911に用いることのできるカルバゾール誘導体としては、具体的には、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等を挙げることができる。
【0116】
また、正孔注入層911に用いることのできるカルバゾール誘導体としては、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5−トリス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)、1,4−ビス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]−2,3,5,6−テトラフェニルベンゼン等を用いることができる。
【0117】
また、正孔注入層911に用いることのできる芳香族炭化水素としては、例えば、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、9,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2−tert−ブチル−9,10−ビス(4−フェニルフェニル)アントラセン(略称:t−BuDBA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuAnth)、9,10−ビス(4−メチル−1−ナフチル)アントラセン(略称:DMNA)、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]−2−tert−ブチル−アントラセン、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン、9,9’−ビアントリル、10,10’−ジフェニル−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス(2−フェニルフェニル)−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス[(2,3,4,5,6−ペンタフェニル)フェニル]−9,9’−ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペリレン、2,5,8,11−テトラ(tert−ブチル)ペリレン等が挙げられる。また、この他、ペンタセン、コロネン等も用いることができる。このように、1×10−6cm2/Vs以上の正孔移動度を有し、炭素数14〜42である芳香族炭化水素を用いることがより好ましい。
【0118】
なお、正孔注入層911に用いることのできる芳香族炭化水素は、ビニル骨格を有していてもよい。ビニル基を有している芳香族炭化水素としては、例えば、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10−ビス[4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)等が挙げられる。
【0119】
また、正孔輸送性の高い物質と電子受容性を示す物質とを含む層は、正孔注入性だけでなく、正孔輸送性も優れているため、上述した正孔注入層911を正孔輸送層として用いてもよい。
【0120】
また、正孔輸送層912は、正孔輸送性の高い物質を含む層であり、正孔輸送性の高い物質としては、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)やN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物等を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0121】
電子輸送層914は、電子輸送性の高い物質を含む層であり、例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq3)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等を用いることができる。また、この他ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンズオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX)2)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ)2)などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ01)バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)なども用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm2/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を電子輸送層として用いても構わない。また、電子輸送層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0122】
また、電子注入層915としては、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF2)等のようなアルカリ金属化合物、又はアルカリ土類金属化合物を用いることができる。さらに、電子輸送性を有する物質とアルカリ金属又はアルカリ土類金属が組み合わされた層も使用できる。例えばAlq中にマグネシウム(Mg)を含有させたものを用いることができる。なお、電子注入層として、電子輸送性を有する物質とアルカリ金属又はアルカリ土類金属を組み合わせた層を用いることは、第2の電極904からの電子注入が効率良く起こるためより好ましい。
【0123】
なお、EL層903は、層の積層構造については特に限定されず、電子輸送性の高い物質または正孔輸送性の高い物質、電子注入性の高い物質、正孔注入性の高い物質、バイポーラ性(電子及び正孔の輸送性の高い物質)の物質等を含む層と、発光層とを適宜組み合わせて構成すればよい。
【0124】
EL層903で得られた発光は、第1の電極902または第2の電極904のいずれか一方または両方を通って外部に取り出される。従って、第1の電極902または第2の電極904のいずれか一方または両方は、透光性を有する電極である。第1の電極902のみが透光性を有する電極である場合、光は第1の電極902を通って基板901側から取り出される。また、第2の電極904のみが透光性を有する電極である場合、光は第2の電極904を通って基板901と逆側から取り出される。第1の電極902および第2の電極904がいずれも透光性を有する電極である場合、光は第1の電極902および第2の電極904を通って、基板901側および基板901と逆側の両方から取り出される。
【0125】
なお、図6では、陽極として機能する第1の電極902を基板901側に設けた構成について示したが、陰極として機能する第2の電極904を基板901側に設けてもよい。
【0126】
また、EL層903の形成方法としては、実施の形態1で示した成膜方法を用いればよく、他の成膜方法と組み合わせてもよい。また、各電極または各層ごとに異なる成膜方法を用いて形成しても構わない。乾式法としては、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法などが挙げられる。また、湿式法としては、インクジェット法またはスピンコート法などが挙げられる。
【0127】
本実施の形態に係る発光素子は、本明細書で開示する発明を適用したEL層の形成が可能であり、それにより、高精度な膜が効率よく形成される為、発光素子の特性向上のみならず、歩留まり向上やコストダウンを図ることができる。
【0128】
本実施の形態は、上記の実施の形態1乃至3と適宜組み合わせることができる。
【0129】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本明細書で開示する発明を用いて作製されたパッシブマトリクス型の発光装置について図4乃至図5を用いて説明する。
【0130】
本実施の形態では、パッシブマトリクスの発光装置において、発光素子間を分離する隔壁(絶縁層)を設ける例を示す。2層の隔壁を有する発光装置の例を図4(A)(B)及び図5(A)乃至(D)に示す。
【0131】
図4(A)は発光装置の平面図であり、図4(B)は図4(A)における線Y3−Z3の断面図、図4(C)は図4(A)における線V3−X3の断面図である。しかし、図4(A)は隔壁782を形成した工程までの平面図であり、EL層及び第2の電極層は省略している。
【0132】
図4(A)の発光装置は、素子基板759上に第1の方向に延びた発光素子に用いる電極層である第1の電極層751a、751b、751c、第1の電極層751a、751b、751c上に選択的に形成されたEL層752a、752b、752cと、第1の方向と垂直な第2の方向に延びた発光素子に用いる電極層である第2の電極層753a、753b、753cとを有している(図4(A)(B)(C)参照。)。
【0133】
図4において、データ線(信号線)として機能する第1の電極層751bと、走査線(ソース線)として機能する第2の電極層753bとはEL層752bを間に挟持して交差しており、発光素子750を形成している。
【0134】
図4(A)乃至(C)に示すように、第1の電極層751a、751b、751c上に、画素領域に開口部を有して隔壁780が選択的に形成されている。図4(B)に示すように、隔壁780は、第1の電極層751a、751b、751cの端部を覆うようにテーパーを有する形状で形成されている。
【0135】
隔壁780上に選択的に隔壁782を形成する。隔壁782は隔壁782上に形成するEL層及び第2の電極層を非連続に分断する機能を有する。隔壁782の側壁は、基板面に近くなるに伴って、一方の側壁と他方の側壁との間隔が狭くなっていくような傾斜を有する。つまり、隔壁782の短辺方向の断面は、台形状であり、底辺(隔壁780の面方向と同様の方向を向き、隔壁780と接する辺)の方が上辺(隔壁780の面方向と同様の方向を向き、隔壁780と接しない辺)よりも短い。隔壁782はいわゆる逆テーパー形状であるために、自己整合的にEL層752bは、隔壁782によって分断され、第1の電極層751b上に選択的に形成することができる。従ってエッチングにより形状を加工しなくても、隣接する発光素子間は分断されており発光素子間のショートなどの電気的不良を防止することができる。
【0136】
本明細書で開示する成膜方法を用いた図4(B)に示す本実施の形態の発光装置の作製方法を図5(A)乃至(D)を用いて説明する。
【0137】
図5(A)は実施の形態2で示した図3(F)の成膜用基板と同様な構造である。
【0138】
成膜用基板において、基板711上に選択的に反射層712が形成され、反射層712上に断熱層713が形成されている。断熱層713上の反射層712と重畳する領域に断熱層716が形成され、反射層712と重畳しない領域に光吸収層714が形成されている。成膜用基板の最上層には有機化合物材料を含む層725が形成されている。
【0139】
被成膜基板である素子基板759には、第1の電極層751a、751b、751c、及び隔壁780が形成されており、第1の電極層751a、751b、751c及び隔壁780と、有機化合物材料を含む層715とが向き合うように、素子基板759と基板711とを配置する(図5(B)参照。)。図5(B)のように、隔壁780と第3の断熱層742を形成し、成膜用基板と被成膜基板とを接して設けると、各第1の領域をごとに他の画素領域と遮断することができる。よって、光照射により有機化合物材料を含む層より蒸発した材料が、他の画素領域へ付着することを抑制することができる。
【0140】
基板721の裏面(有機化合物材料を含む層715の形成面と反対の面)より光720を照射し、光吸収層724より与えられた熱によって有機化合物材料を含む層715に含まれる材料の少なくとも一部が素子基板759へEL層752a、752b、752cとして成膜される(図5(C)参照。)。
【0141】
本実施の形態の光吸収層714への光720の照射工程において、光720の照射時間を0.1ミリ秒(msec.)以上1ミリ秒(msec.)未満(より好ましくは0.2ミリ秒(msec.)以上0.5ミリ秒(msec.)以下)とし、かつ光720の照射により光吸収層714の照射領域に与えられるエネルギー密度を2×103W/cm2以上2×105W/cm2以下(より好ましくは2×103W/cm2以上1×105W/cm2以下)とする。さらに、成膜する有機化合物材料を含む層715が設けられた成膜用基板と、対向して配置される被成膜基板とを、有機化合物材料を含む層715表面と被成膜面の第1の電極層751a、751b、751cとの間隔dを0<d≦10μm(より好ましくは0<d≦5μm)とすることが好ましい。上記のような光照射工程を行うと、被成膜基板に正確なパターン形状の良質な薄膜を成膜することができる。
【0142】
上記工程によって、基板701上に設けられた第1の電極層751a、751b、751c上にそれぞれ、選択的にEL層752a、752b、752cを形成することができる(図5(D)参照。)。
【0143】
図5(D)のEL層752a、752b、752c上に第2の電極層753bを形成し、充填層781を形成し、封止基板758を用いて封止して図4(B)の発光装置を完成させることができる。
【0144】
封止基板758としては、ガラス基板や石英基板等を用いることができる。また可撓性基板を用いてもよい。可撓性基板とは、折り曲げることができる(フレキシブル)基板のことであり、例えば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルフォン等からなる、プラスチック基板の他、高温では可塑化されてプラスチックと同じような成型加工ができ、常温ではゴムのような弾性体の性質を示す高分子材料エラストマー等が挙げられる。また、フィルム(ポリプロピレン、ポリエステル、ビニル、ポリフッ化ビニル、塩化ビニルなどからなる)、無機蒸着フィルムを用いることもできる。
【0145】
隔壁780、隔壁782としては、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、その他の無機絶縁性材料、又はアクリル酸、メタクリル酸及びこれらの誘導体、又はポリイミド、芳香族ポリアミド、ポリベンゾイミダゾールなどの耐熱性高分子、又はシロキサン樹脂を用いてもよい。また、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールなどのビニル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ノボラック樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂材料を用いる。作製法としては、プラズマCVD法や熱CVD法などの気相成長法やスパッタリング法を用いることができる。また、液滴吐出法や、印刷法(を用いることもできる。塗布法で得られる膜なども用いることができる。
【0146】
次に、図4に示したパッシブマトリクス型の発光装置にFPCなどを実装した場合の上面図を図7に示す。
【0147】
図7において、画像表示を構成する画素部は、走査線群とデータ線群が互いに直交するように交差している。
【0148】
ここで、図4における第1の電極層751a、751b、751cが、図7のデータ線1102に相当し、図4における第2の電極層753a、753b、753cが、図7の走査線1103に相当し、図4におけるEL層752a、752b、752cが図7のEL層1104に相当する。データ線1102と走査線1103の間にはEL層1104が挟まれており、領域1105で示される交差部が画素1つ分(図4では発光素子750で示される)となる。
【0149】
なお、走査線1103は配線端で接続配線1108と電気的に接続され、接続配線1108が入力端子1107を介してFPC1109bに接続される。また、データ線は入力端子1106を介してFPC1109aに接続される。
【0150】
また、必要であれば、射出面に偏光板、又は円偏光板(楕円偏光板を含む)、位相差板(λ/4板、λ/2板)、カラーフィルタなどの光学フィルムを適宜設けてもよい。また、偏光板又は円偏光板に反射防止膜を設けてもよい。例えば、表面の凹凸により反射光を拡散し、映り込みを低減できるアンチグレア処理を施すことができる。
【0151】
なお、図7では、駆動回路を基板上に設けない例を示したが、本明細書で開示する発明は特に限定されず、基板上に駆動回路を有するICチップを実装させてもよい。
【0152】
また、ICチップを実装させる場合、画素部の周辺(外側)の領域に、画素部へ各信号を伝送する駆動回路が形成されたデータ線側IC、走査線側ICをCOG(Chip on Glass)方式によりそれぞれ実装する。COG方式以外の実装技術としてTCPやワイヤボンディング方式を用いて実装してもよい。TCPはTAB(Tape Automated Bonding)テープにICを実装したものであり、TABテープを素子形成基板上の配線に接続してICを実装する。データ線側IC、および走査線側ICは、単結晶シリコン基板を用いたものであってもよいし、ガラス基板、石英基板もしくはプラスチック基板上にTFTで駆動回路を形成したものであってもよい。また、片側に一つのICを設けた例を説明しているが、片側に複数個に分割して設けても構わない。
【0153】
なお、パッシブマトリクスの発光装置において、隔壁は必ずしも設けなくてもよい。この場合でも第1の電極層と第2の電極層との間に設けられるEL層を本明細書で開示する成膜方法を用いて、正確なパターン形状で選択的に形成することができる。
【0154】
本明細書で開示する発明を用いると、材料と被成膜基板との間にマスクを設けることなく、被成膜基板に微細なパターンの薄膜を形成することができる。本実施の形態のように、このような成膜方法を用いて発光素子を形成し、高繊細な発光装置を作製することができる。
【0155】
本実施の形態は、上記の実施の形態1乃至3と適宜組み合わせることができる。
【0156】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本明細書で開示する発明を用いて作製されたアクティブマトリクス型の発光装置について図8を用いて説明する。
【0157】
図8(A)は、発光装置を示す上面図、図8(B)は図8(A)をA−BおよびC−Dで切断した断面図である。点線で示された601は駆動回路部(ソース側駆動回路)、602は画素部、603は駆動回路部(ゲート側駆動回路)である。また、604は封止基板、605はシール材であり、シール材605で囲まれた内側は、空間607になっている。
【0158】
なお、引き回し配線608はソース側駆動回路601及びゲート側駆動回路603に入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキット)609からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
【0159】
次に、断面構造について図8(B)を用いて説明する。素子基板610上には駆動回路部及び画素部が形成されているが、ここでは、駆動回路部であるソース側駆動回路601と、画素部602中の一つの画素が示されている。
【0160】
なお、ソース側駆動回路601はnチャネル型トランジスタ623とpチャネル型トランジスタ624とを組み合わせたCMOS回路が形成される。また、駆動回路を形成するトランジスタは、種々のCMOS回路、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成しても良い。また、本実施の形態では、基板上に駆動回路を形成したドライバ一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、駆動回路を基板上ではなく外部に形成することもできる。
【0161】
また、画素部602はスイッチング用トランジスタ611と、電流制御用TFトランジスタ612とそのドレインに電気的に接続された第1の電極613とを含む複数の画素により形成される。なお、第1の電極613の端部を覆って絶縁層614が形成されている。ここでは、ポジ型の感光性アクリル樹脂膜を用いることにより形成する。第1の電極613は層間絶縁層である絶縁層619上に形成されている。
【0162】
また、被覆性を良好なものとするため、絶縁層614の上端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにする。例えば、絶縁層614の材料としてポジ型の感光性アクリルを用いた場合、絶縁層614の上端部のみに曲率半径(0.2μm〜3μm)を有する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁層614として、光の照射によってエッチャントに不溶解性となるネガ型、或いは光の照射によってエッチャントに溶解性となるポジ型のいずれも使用することができる。
【0163】
なお、トランジスタの構造は、特に限定されない。トランジスタはチャネル形成領域が一つ形成されるシングルゲート構造でも、二つ形成されるダブルゲート構造もしくは三つ形成されるトリプルゲート構造であっても良い。また、周辺駆動回路領域のトランジスタも、シングルゲート構造、ダブルゲート構造もしくはトリプルゲート構造であっても良い。
【0164】
トランジスタは、トップゲート型(例えば順スタガ型、コプラナ型)、ボトムゲート型(例えば、逆コプラナ型)、あるいはチャネル領域の上下にゲート絶縁膜を介して配置された2つのゲート電極層を有する、デュアルゲート型やその他の構造においても適用できる。
【0165】
また、トランジスタに用いる半導体の結晶性についても特に限定されない。半導体層を形成する材料は、シランやゲルマンに代表される半導体材料ガスを用いて気相成長法やスパッタリング法で作製される非晶質半導体(、該非晶質半導体を光エネルギーや熱エネルギーを利用して結晶化させた多結晶半導体、また単結晶半導体などを用いることができる。
【0166】
非晶質半導体としては、代表的には水素化アモルファスシリコン、結晶性半導体としては代表的にはポリシリコンなどがあげられる。ポリシリコン(多結晶シリコン)には、800℃以上のプロセス温度を経て形成されるポリシリコンを主材料として用いた所謂高温ポリシリコンや、600℃以下のプロセス温度で形成されるポリシリコンを主材料として用いた所謂低温ポリシリコン、また結晶化を促進する元素などを用いて非晶質シリコンを結晶化させたポリシリコンなどを含んでいる。また、このような薄膜プロセスに換えて、絶縁表面に単結晶半導体層を設けたSOI基板を用いても良い。SOI基板は、SIMOX(Separation by IMplanted Oxygen)法や、Smart−Cut法を用いて形成することができる。SIMOX法は、単結晶シリコン基板に酸素イオンを注入し、所定の深さに酸素含有層を形成した後、熱処理を行い、表面から一定の深さで埋込絶縁層を形成し、埋込絶縁層の上に単結晶シリコン層を形成する方法である。また、Smart−Cut法は、酸化された単結晶シリコン基板に水素イオン注入を行い、所望の深さに相当する所に水素含有層を形成し、他の支持基板(表面に貼り合わせ用の酸化シリコン膜を有する単結晶シリコン基板など)と貼り合わせる、加熱処理を行うことにより水素含有層にて単結晶シリコン基板を分断し、支持基板上に酸化シリコン膜と単結晶シリコン層との積層を形成する方法である。
【0167】
第1の電極613上には、EL層616、および第2の電極617がそれぞれ形成されている。本実施の形態で示す発光素子のEL層616は、実施の形態1で示した成膜方法を適用して形成することができる。
【0168】
シール材605で封止基板604を素子基板610と貼り合わせることにより、素子基板610、封止基板604、およびシール材605で囲まれた空間607に発光素子618が備えられた構造になっている。なお、空間607には、充填材が充填されており、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材605で充填される場合もある。
【0169】
なお、シール材605には可視光硬化性、紫外線硬化性または熱硬化性の樹脂を用いるのが好ましい。具体的にはエポキシ系樹脂を用いることができる。また、これらの材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板604に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。また、フィルム(ポリプロピレン、ポリエステル、ビニル、ポリフッ化ビニル、塩化ビニルなどからなる)、無機蒸着フィルムを用いることもできる。
【0170】
また、発光素子上にパッシベーション膜(保護膜)として絶縁層を設けてもよい。パッシベーション膜としては、窒化珪素、酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒素含有量が酸素含有量よりも多い窒化酸化アルミニウムまたは酸化アルミニウム、ダイアモンドライクカーボン(DLC)、窒素含有炭素膜を含む絶縁膜からなり、該絶縁膜を単層もしくは組み合わせた積層を用いることができる。又はシロキサン樹脂を用いてもよい。
【0171】
充填材の代わりに、窒素雰囲気下で封止することによって、窒素等を封入してもよい。充填材を通して光を発光装置外に取り出す場合、充填材も透光性を有する必要がある。充填材は、例えば可視光硬化、紫外線硬化または熱硬化のエポキシ樹脂を用いればよい。充填材は、液状の状態で滴下し、発光装置内に充填することもできる。充填材として、乾燥剤などの吸湿性を含む物質を用いる、または充填材中に吸湿物質を添加すると、さらなる吸水効果が得られ、素子の劣化を防ぐことができる。
【0172】
また、位相差板や偏光板を用いて、外部から入射する光の反射光を遮断するようにしてもよい。隔壁となる絶縁層を着色しブラックマトリクスとして用いてもよい。この隔壁は液滴吐出法により形成することができ、ポリイミドなどの樹脂材料に、カーボンブラック等を混合させてもよく、その積層でもよい。液滴吐出法によって、異なった材料を同領域に複数回吐出し、隔壁を形成してもよい。位相差板としてはλ/4板、λ/2板を用い、光を制御できるように設計すればよい。構成としては、順に素子基板、発光素子、封止基板(封止材)、位相差板(λ/4、λ/2)、偏光板となり、発光素子から放射された光は、これらを通過し偏光板側より外部に放射される。この位相差板や偏光板は光が放射される側に設置すればよく、両面放射される両面放射型の発光装置であれば両方に設置することもできる。また、偏光板の外側に反射防止膜を有していても良い。これにより、より高繊細で精密な画像を表示することができる。
【0173】
本実施の形態では、上記のような回路で形成するが、本明細書で開示する発明はこれに限定されず、周辺駆動回路としてICチップを前述したCOG方式やTAB方式によって実装したものでもよい。また、ゲート線駆動回路、ソース線駆動回路は複数であっても単数であっても良い。
【0174】
また、本明細書で開示する発光装置において、画面表示の駆動方法は特に限定されず、例えば、点順次駆動方法や線順次駆動方法や面順次駆動方法などを用いればよい。代表的には、線順次駆動方法とし、時分割階調駆動方法や面積階調駆動方法を適宜用いればよい。また、発光装置のソース線に入力する映像信号は、アナログ信号であってもよいし、デジタル信号であってもよく、適宜、映像信号に合わせて駆動回路などを設計すればよい。
【0175】
発光層は、発光波長帯の異なる発光層を画素毎に形成して、カラー表示を行う構成としても良い。典型的には、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色に対応した発光層を形成する。この場合にも、画素の光放射側にその発光波長帯の光を透過するフィルターを設けた構成とすることで、色純度の向上や、画素領域の鏡面化(映り込み)の防止を図ることができる。フィルターを設けることで、発光層から放射される光の損失を無くすことができる。さらに、斜方から画素領域(表示画面)を見た場合に起こる色調の変化を低減することができる。
【0176】
本明細書で開示する発明を用いると、材料と被成膜基板との間にマスクを設けることなく、被成膜基板に微細なパターンの薄膜を形成することができる。本実施の形態のように、このような成膜方法を用いて発光素子を形成し、高繊細な発光装置を作製することができる。
【0177】
本実施の形態は、上記の実施の形態1乃至4と適宜組み合わせることができる。
【0178】
(実施の形態6)
本明細書で開示する発明を適用して、様々な表示機能を有する発光装置を作製することができる。即ち、それら表示機能を有する発光装置を表示部に組み込んだ様々な電子機器に本明細書で開示する発明を適用できる。
【0179】
その様な本明細書で開示する発明に係る電子機器として、テレビジョン装置(単にテレビ、又はテレビジョン受信機ともよぶ)、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等のカメラ、携帯電話装置(単に携帯電話機、携帯電話ともよぶ)、PDA等の携帯情報端末、携帯型ゲーム機、コンピュータ用のモニタ、コンピュータ、カーオーディオ等の音響再生装置、家庭用ゲーム機等の記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDigital Versatile Disc(DVD))等が挙げられる。また、パチンコ機、スロットマシン、ピンボール機、大型ゲーム機など発光装置を有するあらゆる遊技機に適用することができる。その具体例について、図9及び図10を参照して説明する。
【0180】
本明細書で開示する発光装置の適用範囲は極めて広く、この発光装置をあらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。実施の形態1に示すような本明細書で開示する成膜方法を用いるため、生産性がよく、かつ高繊細なパターンを有するため大型の表示部又は照明部を有する高画質の電子機器を安価で提供することができる。
【0181】
図9(A)に示す携帯情報端末機器は、本体9201、表示部9202等を含んでいる。表示部9202は、本明細書で開示する発光装置を適用することができる。その結果、高画質の携帯情報端末機器を安価で提供することができる。
【0182】
図9(B)に示すデジタルビデオカメラは、表示部9701、表示部9702等を含んでいる。表示部9701は本明細書で開示する発光装置を適用することができる。その結果、高画質のデジタルビデオカメラを安価で提供することができる。
【0183】
図9(C)に示す携帯電話機は、本体9101、表示部9102等を含んでいる。本明細書で開示する発明を適用した携帯電話機としては、上記構成に加えて、非接触ICチップ、小型記録装置等を内蔵していてもよく、赤外線通信機能、テレビ受信機能等を備えたものであってもよい。表示部9102は、本明細書で開示する発光装置を適用することができる。その結果、高画質の携帯電話機を安価で提供することができる。
【0184】
図9(D)に示す携帯型のコンピュータは、本体9401、表示部9402等を含んでいる。表示部9402は、本明細書で開示する発光装置を適用することができる。その結果、高画質の携帯型のコンピュータを安価で提供することができる。
【0185】
本明細書で開示する発明を適用した発光装置は、小型の電気スタンドや室内の大型な照明装置として用いることもできる。図9(E)は卓上照明器具であり、照明部9501、傘9502、可変アーム9503、支柱9504、台9505、電源9506を含む。本明細書で開示する発光装置を照明部9501に用いることにより作製される。なお、照明器具には天井固定型の照明器具または壁掛け型の照明器具なども含まれる。本明細書で開示する発明により大型な照明器具も安価で提供することができる。
【0186】
さらに、本明細書で開示する発光装置を液晶表示装置のバックライトとして用いることもできる。本明細書で開示する発光装置は、面発光の照明装置であり大面積化も可能であるため、バックライトの大面積化が可能であり、液晶表示装置の大面積化も可能になる。さらに、本明細書で開示する発光装置は薄型であるため、液晶表示装置の薄型化も可能となる。
【0187】
図9(F)に示す携帯型のテレビジョン装置は、本体9301、表示部9302等を含んでいる。表示部9302は、本明細書で開示する発光装置を適用することができる。その結果、高画質の携帯型のテレビジョン装置を安価で提供することができる。またテレビジョン装置としては、携帯電話機などの携帯端末に搭載する小型のものから、持ち運びをすることができる中型のもの、また、大型のもの(例えば40インチ以上)まで、幅広いものに、本明細書で開示する発光装置を適用することができる。
【0188】
図10(A)は大型の表示部を有するテレビジョン装置である。本明細書で開示する発光装置により主画面2003が形成され、その他付属設備としてスピーカー部2009、操作スイッチなどが備えられている。このように、テレビジョン装置を完成させることができる。
【0189】
図10(A)に示すように、筐体2001に発光素子を利用した表示用パネル2002が組みこまれ、受信機2005により一般のテレビ放送の受信をはじめ、モデム2004を介して有線又は無線による通信ネットワークに接続することにより一方向(送信者から受信者)又は双方向(送信者と受信者間、又は受信者間同士)の情報通信をすることもできる。テレビジョン装置の操作は、筐体に組みこまれたスイッチ又は別体のリモコン操作機2006により行うことが可能であり、このリモコン装置にも出力する情報を表示する表示部2007が設けられていても良い。
【0190】
また、テレビジョン装置にも、主画面2003の他にサブ画面2008を第2の表示用パネルで形成し、チャネルや音量などを表示する構成が付加されていても良い。
【0191】
図10(B)は例えば20〜80インチの大型の表示部を有するテレビジョン装置であり、筐体2010、表示部2011、操作部であるリモコン装置2012、スピーカー部2013等を含む。本明細書で開示する発明は、表示部2011の作製に適用される。本明細書で開示する発明を適用することによって大型でかつ高画質なテレビジョン装置を安価で提供することができる。また図10(B)のテレビジョン装置は、壁かけ型となっており、設置するスペースを広く必要としない。
【0192】
勿論、本明細書で開示する発明は鉄道の駅や空港などにおける情報表示盤や、街頭における広告表示盤など大面積の表示媒体としても様々な用途に適用することができる。
【0193】
本実施の形態は、上記の実施の形態1乃至5と適宜組み合わせることができる。
【実施例1】
【0194】
試料1〜5において成膜用基板を作製し、それぞれ光熱転写法によって被成膜基板に薄膜を形成した。得られた薄膜の評価を以下に示す。
【0195】
図11に試料1〜5における成膜用基板の構造を示す。ガラス基板である基板401上に、反射層402、反射層402上に断熱層403が形成されている。断熱層403上において、反射層402と重畳する領域に断熱層412が、重畳しない領域に光吸収層404が設けられている。光吸収層404及び断熱層412上に有機化合物材料を含む層405が形成されている。試料1〜5の成膜用基板に用いた材料及び膜の膜厚を表1に示す。
【0196】
【表1】
【0197】
反射層402、断熱層403、光吸収層404、断熱層412はスパッタ法、有機化合物材料を含む層405は共蒸着法によって成膜した。反射層402としてはアルミニウム膜、断熱層403及び断熱層412としては酸化珪素膜、光吸収層404としてはチタン膜、又は窒化チタン膜を用いた。有機化合物材料を含む層405に用いた9−[4−(N−カルバゾリル)]フェニル−10−フェニルアントラセン(略称:CzPA)、9,10−ジフェニル−2−[N−フェニル−N−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)アミノ]アントラセン(略称:2PCAPA)の構造式を化1に示す。
【0198】
【化1】
【0199】
試料1〜5の成膜用基板に光照射を行い、被成膜用基板に薄膜(CzPA:2PCAPA膜)を形成した。試料1〜5の光照射条件(エネルギー密度及び照射時間)を表2に示す。なお、光源として試料1〜3は波長532nm、周波数80MHz、パルス幅100fsのレーザ発振器を用い、試料4、5はキセノンフラッシュランプを用いた。表2における試料4、5のエネルギー密度はキセノンフラッシュランプ光の半値幅を用いて算出した。有機化合物材料を含む層405形成面と被成膜基板の被成膜面との距離dは、試料1、試料4及び試料5では0.9μm、試料2及び試料3では0.75μmとした。
【0200】
【表2】
【0201】
各試料1〜5において被成膜基板に形成された薄膜(CzPA:2PCAPA膜)について、光学顕微鏡及び走査透過電子顕微鏡(Scanning Transmission Electron Microscope;STEM)により観察を行った。光学顕微鏡観察による基板上から撮影した光学顕微鏡写真を図12乃至図16(A)に、FIB(Focused Ion Beam)装置により加工した試料のSTEMによる断面写真を図12乃至図16(B)にそれぞれ示す。
【0202】
試料1においては、図12(B)に示すようにCzPA:2PCAPA膜中に円形の低密度領域が生じ、不均一な膜質であった。また、試料5においては、図16(A)に示すようにCzPA:2PCAPA膜のパターンにぼけが生じており、形状不良な膜であった。一方、試料2〜4においては図13、図14及び図15(A)(B)に示すように、パターンぼけも膜中に低密度領域も生じずに正確なパターンで、かつ良質な膜であった。
【0203】
照射時間、エネルギー密度、及び得られた膜の評価を反映した結果を図2に示す。図2において、正確なパターンで、かつ良質な膜であった試料2〜4は丸印のドット、膜質かパターン形状に不良が生じた膜であった試料1、5を×印のドットで表している。また、図2において、本明細書で開示する最適な光照射条件である光照射時間0.1ミリ秒(msec.)以上1ミリ秒(msec.)未満、かつ光源から光吸収層に向かって照射されるエネルギー密度2×103W/cm2以上2×105W/cm2以下の範囲を実線で囲んで示す。
【0204】
図2に示すように、正確なパターンで、かつ良質な膜と評価された試料2〜4の丸印のドットは光照射時間0.1ミリ秒(msec.)以上1ミリ秒(msec.)未満、かつ光源から光吸収層に向かって照射されるエネルギー密度2×103W/cm2以上2×105W/cm2以下の範囲に含まれ、一方、膜質かパターン形状に不良が生じた膜と評価された試料1、5の×印のドットは光照射時間0.1ミリ秒(msec.)以上1ミリ秒(msec.)未満、かつ光源から光吸収層に向かって照射されるエネルギー密度2×103W/cm2以上2×105W/cm2以下の範囲に含まれていない。
【0205】
従って、光熱転写法において、光照射時間0.1ミリ秒(msec.)以上1ミリ秒(msec.)未満、かつ光源から光吸収層に向かって照射されるエネルギー密度2×103W/cm2以上2×105W/cm2以下の範囲で光照射を行うことにより、正確なパターンで、かつ良質な膜を形成することができることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0206】
【図1】成膜方法を示した断面図である。
【図2】光の照射時間とエネルギー密度の関係を示す図である。
【図3】成膜用基板の一例の断面図である。
【図4】発光装置を示した平面図及び断面図である。
【図5】発光装置の作製工程を示した断面図である。
【図6】発光装置の作製工程を示した断面図である。
【図7】発光素子の構成を示した断面図である。
【図8】発光表示モジュールを示した断面図である。
【図9】電子機器を示した図である。
【図10】電子機器を示した図である。
【図11】実施例1の試料に用いる構造を示す図ある。
【図12】実施例1の試料1の光学顕微鏡写真及び断面STEM像を示す図ある。
【図13】実施例1の試料2の光学顕微鏡写真及び断面STEM像を示す図ある。
【図14】実施例1の試料3の光学顕微鏡写真及び断面STEM像を示す図ある。
【図15】実施例1の試料4の光学顕微鏡写真及び断面STEM像を示す図ある。
【図16】実施例1の試料5の光学顕微鏡写真及び断面STEM像を示す図ある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光吸収層が設けられた透光性基板と、
前記光吸収層上に有機化合物材料を含む層とを含む成膜用基板を用い、
前記成膜用基板の前記有機化合物材料を含む層形成面と、被成膜基板の被成膜面とが離れて向き合うように、前記成膜用基板と前記被成膜基板とを配置し、
前記透光性基板を通過させて、光源より光を前記光吸収層に照射し、前記光を照射された前記光吸収層上の前記有機化合物材料を含む層に含まれる材料を前記被成膜基板上に成膜し、
前記光源から前記光吸収層に向かって照射されるエネルギー密度は2×103W/cm2以上2×105W/cm2以下であり、
時間は0.1ミリ秒以上1ミリ秒未満の間で前記光を前記光吸収層に照射することを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
光吸収層が設けられた透光性基板と、
前記光吸収層上に有機化合物材料を含む層とを含む成膜用基板を用い、
前記成膜用基板の前記有機化合物材料を含む層形成面と、被成膜基板の被成膜面とが離れて向き合うように、前記成膜用基板と前記被成膜基板とを配置し、
前記透光性基板を通過させて、光源より光を前記光吸収層に照射し、前記光を照射された前記光吸収層上の前記有機化合物材料を含む層に含まれる材料を前記被成膜基板上に成膜し、
前記光源から前記光吸収層に向かって照射されるエネルギー密度は2×103W/cm2以上2×105W/cm2以下であり、
時間は0.1ミリ秒以上1ミリ秒未満の間で前記光を前記光吸収層に照射し、
前記光の照射は、有機化合物材料を含む層形成面と被成膜基板の被成膜面との距離を10μm以下に配置して行うことを特徴とする成膜方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、前記透光性基板と前記光吸収層との間には選択的に反射層を形成することを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項4】
請求項3において、前記反射層と前記有機化合物材料を含む層との間に断熱層を形成することを特徴とする成膜方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項において、前記光源としてフラッシュランプを用いることを特徴とする成膜方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項において、前記光吸収層に光を照射する工程は減圧下で行うことを特徴とする成膜方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項において、前記光源から前記光吸収層に向かって照射されるエネルギー密度は2×103W/cm2以上1×105W/cm2以下であり、
時間は0.2ミリ秒以上0.5ミリ秒以下の間で前記光を前記光吸収層に照射し、
前記光の照射は、有機化合物材料を含む層形成面と被成膜基板の被成膜面との距離を5μm以下に配置して行うことを特徴とする成膜方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の成膜方法を用いて、
前記光を照射された前記光吸収層上の前記有機化合物材料を含む層に含まれる材料を前記被成膜基板の第1の電極層上に成膜して発光層を形成し、
前記発光層上に第2の電極層を形成することを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項9】
請求項8において、前記光を照射された前記光吸収層上の前記有機化合物材料を含む層に含まれる材料を前記被成膜基板の前記第1の電極層上に成膜して複数の画素の発光層を形成することを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項1】
光吸収層が設けられた透光性基板と、
前記光吸収層上に有機化合物材料を含む層とを含む成膜用基板を用い、
前記成膜用基板の前記有機化合物材料を含む層形成面と、被成膜基板の被成膜面とが離れて向き合うように、前記成膜用基板と前記被成膜基板とを配置し、
前記透光性基板を通過させて、光源より光を前記光吸収層に照射し、前記光を照射された前記光吸収層上の前記有機化合物材料を含む層に含まれる材料を前記被成膜基板上に成膜し、
前記光源から前記光吸収層に向かって照射されるエネルギー密度は2×103W/cm2以上2×105W/cm2以下であり、
時間は0.1ミリ秒以上1ミリ秒未満の間で前記光を前記光吸収層に照射することを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
光吸収層が設けられた透光性基板と、
前記光吸収層上に有機化合物材料を含む層とを含む成膜用基板を用い、
前記成膜用基板の前記有機化合物材料を含む層形成面と、被成膜基板の被成膜面とが離れて向き合うように、前記成膜用基板と前記被成膜基板とを配置し、
前記透光性基板を通過させて、光源より光を前記光吸収層に照射し、前記光を照射された前記光吸収層上の前記有機化合物材料を含む層に含まれる材料を前記被成膜基板上に成膜し、
前記光源から前記光吸収層に向かって照射されるエネルギー密度は2×103W/cm2以上2×105W/cm2以下であり、
時間は0.1ミリ秒以上1ミリ秒未満の間で前記光を前記光吸収層に照射し、
前記光の照射は、有機化合物材料を含む層形成面と被成膜基板の被成膜面との距離を10μm以下に配置して行うことを特徴とする成膜方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、前記透光性基板と前記光吸収層との間には選択的に反射層を形成することを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項4】
請求項3において、前記反射層と前記有機化合物材料を含む層との間に断熱層を形成することを特徴とする成膜方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項において、前記光源としてフラッシュランプを用いることを特徴とする成膜方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項において、前記光吸収層に光を照射する工程は減圧下で行うことを特徴とする成膜方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項において、前記光源から前記光吸収層に向かって照射されるエネルギー密度は2×103W/cm2以上1×105W/cm2以下であり、
時間は0.2ミリ秒以上0.5ミリ秒以下の間で前記光を前記光吸収層に照射し、
前記光の照射は、有機化合物材料を含む層形成面と被成膜基板の被成膜面との距離を5μm以下に配置して行うことを特徴とする成膜方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の成膜方法を用いて、
前記光を照射された前記光吸収層上の前記有機化合物材料を含む層に含まれる材料を前記被成膜基板の第1の電極層上に成膜して発光層を形成し、
前記発光層上に第2の電極層を形成することを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項9】
請求項8において、前記光を照射された前記光吸収層上の前記有機化合物材料を含む層に含まれる材料を前記被成膜基板の前記第1の電極層上に成膜して複数の画素の発光層を形成することを特徴とする発光装置の作製方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−153045(P2010−153045A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−326688(P2008−326688)
【出願日】平成20年12月23日(2008.12.23)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月23日(2008.12.23)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】
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