成膜装置及び成膜方法
【課題】エアロゾルデポジション法による成膜において、厚さが均一な膜を効率良く形成できる成膜方法を提供する。
【解決手段】略一定のペースで供給される原料粉をガスによって分散させることによりエアロゾルを生成する工程(a)と、工程(a)において生成されたエアロゾルをノズルから基板に向けて噴射することにより、基板上に原料粉を堆積させる工程(b)とを含み、工程(b)が、ノズルと基板との内の少なくとも一方を移動させることにより、基板にエアロゾルを吹き付けることによって基板上に堆積する原料粉に対し、異なる軌道を通って原料粉を重ねて堆積させることにより、原料粉の厚さのばらつきが互いに相殺されるように、ノズルと基板との相対位置を制御しながら行われる。
【解決手段】略一定のペースで供給される原料粉をガスによって分散させることによりエアロゾルを生成する工程(a)と、工程(a)において生成されたエアロゾルをノズルから基板に向けて噴射することにより、基板上に原料粉を堆積させる工程(b)とを含み、工程(b)が、ノズルと基板との内の少なくとも一方を移動させることにより、基板にエアロゾルを吹き付けることによって基板上に堆積する原料粉に対し、異なる軌道を通って原料粉を重ねて堆積させることにより、原料粉の厚さのばらつきが互いに相殺されるように、ノズルと基板との相対位置を制御しながら行われる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料の粉体を分散させたエアロゾルを基板に向けて吹き付けることによって基板上に原料を堆積させる成膜装置及び成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、微小電気機械システム(MEMS:micro electrical mechanical system)関連の機器の開発に伴い、積層セラミックコンデンサや圧電アクチュエータ等の素子の微細化及び集積化がますます進んでいる。そのため、そのような素子を、成膜技術を用いて製造する研究が盛んに進められている。
【0003】
最近では、固体粒子の衝突付着現象を利用した成膜技術の1つであるエアロゾルデポジション(aerosol deposition:AD)法が、セラミック膜の形成方法として注目されている。AD法とは、原料の微小な粉体をガスに分散させることにより生成されたエアロゾルをノズルから基板に向けて噴射して、基板や先に形成された膜に粉体を衝突させることにより、原料を基板上に堆積させる成膜方法である。ここで、エアロゾルとは、「分散相は固体又は液体の粒子からなり、分散媒は気体からなるコロイド系」のことである(高橋幹二著、「エアロゾル学の基礎」、森北出版第1版、P.1)。AD法によれば、気孔率が低く、緻密で強固な膜を形成することができるので、上記のような微細な素子の性能を向上できる可能性がある。
【0004】
図13は、AD法において一般的に用いられているエアロゾル噴射ノズルの先端部を示す模式図である。通常、AD法においては、先端に長方形の開口101が形成されたノズル100が用いられる。開口101のサイズは膜の用途に応じて様々であるが、例えば、長辺が5mmで短辺が0.35mm程度のものが用いられる。本願においては、開口101の短辺に平行な方向をスキャン方向と呼び、長辺に平行な方向をノズル幅方向と呼ぶ。成膜を行う際には、通常、基板に対してノズルをスキャン方向に移動させる。
【0005】
このようなAD法を用いて、厚さや密度が均一な良質な膜を形成するためには、濃度が均一なエアロゾルを長時間に渡ってノズルから噴射させることが重要となる。エアロゾルの濃度が不安定であると、成膜レートが不均一になるので、膜厚にばらつきが生じてしまうからである。
【0006】
そのような問題を解決するために、特許文献1には、セラミック超微粒子のエアロゾルを発生させ、分級或いは解砕によりエアロゾル中の2次粒子を排除した後に、1次粒子或いはそれに準じる粒子のみを基板上に吹き付けることにより、焼成させることなく高密度の緻密室のセラミック構造物を基板上に得ることが開示されている。また、特許文献1においては、構造物を一定の厚さに保持するために、振動する篩からセラミック超微粒子を落下させて、連続的に安定した濃度のエアロゾルを発生させている。
【0007】
また、特許文献2には、粉体収納部とエアロゾル化手段との間に、循環式の輸送手段としての回転テーブルが配置されたエアロゾル発生装置が開示されている。即ち、回転テーブルの水平な上面に円環状の溝が形成されており、粉体収納部内でホッパーから溝内に粉体が供給され、次いで、下流側のスキージ板によって溝から上方に溢れた粉体が取り除かれ、この状態で回転テーブルの回転によって溝内の粉体がエアロゾル化手段に送られ、エアロゾルとなってノズルに供給される。また、特許文献2には、生成されたエアロゾルの濃度を測定し、その測定値に基づいてエアロゾル発生器やガスボンベ等をフィードバック制御することにより、エアロゾルの濃度を維持することも開示されている(段落0012)。
【0008】
一方、特許文献3には、噴射ノズルを所定の方向に走査させながらエアロゾルを噴射させることにより、基板上に一の堆積層を形成する第1の走査工程(A)と、噴射ノズルを走査方向と交差する交差方向に移動させることにより、直前の走査工程における走査径路から噴射ノズルの位置をずらす走査径路変更工程(B)と、噴射ノズルを直前の走査工程における走査方向に沿う方向に走査させながらエアロゾルを噴出させることにより、直前の走査工程により形成された堆積層に一部重なり合う他の堆積層を形成する第2の走査工程(C)と、工程(B)と(C)とを所定回数交互に繰り返す工程とを含む成膜方法が開示されている。
【0009】
また、特許文献4には、成膜室と、該成膜室に配置され、構造物が形成される基板を保持する基板ホルダと、成膜室内を排気する排気ポンプと、容器に配置された原料の粉体をガスによって吹き上げることによりエアロゾルを生成するエアロゾル生成部と、生成されたエアロゾルを成膜室に導入する搬送管と、搬送管を介して導入されたエアロゾルを基板に向けて噴射するノズルと、基板ホルダによって保持される基板の位置に対して、ノズルをカオス的に変化させる制御部とを含む成膜装置が開示されている。
【特許文献1】特開2001−181859号公報(第1頁)
【特許文献2】特開2003−275631号公報(第1、3頁)
【特許文献3】特開2006−32485号公報(第2頁)
【特許文献4】特開2005−305427号公報(第1頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、図13に示すように、一般的なノズルにおいては、中央付近の流速が速く、端部付近の流速が遅いというように、開口内の位置に応じてエアロゾルの速度が異なっている。このような流速分布が存在するため、基板に衝突した原料粉の付着確率も、開口内の位置に応じて変化してしまう。従って、特許文献1及び2に示すように、ノズルに対して基板を単純に走査する場合には、基板上に形成される膜の厚さが不均一になってしまう。
【0011】
図14は、図13に示すノズルと同様に、長方形の開口(長辺が5mm)を有するノズルを用いて膜を作製し、その膜の膜厚分布を測定した結果を示している。この実験においては、基板に対してノズルを短辺方向に10往復走査させることによって膜を形成した。図14に示すように、このような走査方法によれば、ノズルの開口幅(5mm)に対して、膜厚が均一な範囲は中央付近の約3mmの部分だけであった。即ち、両端の角が立った部分は膜として利用することができないので、歩留まりが非常に悪い。
【0012】
ここで、開口内の流速分布による影響を低減するためには、図13において、ノズル100をノズル幅方向に移動させることが考えられる。それにより、ノズル幅方向における膜厚の不均一性を相殺することができる。しかしながら、この場合には、大面積の膜を形成することが困難になる。
【0013】
上記の問題点を解決するために、特許文献3及び4に開示されているように、基板に対するノズルの走査方法を工夫することにより、エアロゾルの流速分布に起因する膜厚の不均一性を相殺することはできる。しかしながら、このような走査方法においては、別の問題が生じている。ここで、図15は、特許文献3に記載されているように、直前に形成された膜(堆積層)に一部が重なるように、ノズルの位置を0.2mmずつずらしながら、帯状の膜形成繰り返すことによって形成された膜の膜厚分布を示している。図15を一見すると、中央付近の6mm〜7mm程度の範囲は、比較的膜厚が均一であるように思われる。しかしながら、この範囲における膜厚の誤差Δxは約6.5μmであり、意外に大きい。この誤差Δxは、ノズルから噴射させるエアロゾルの濃度のばらつきに起因するものと考えられる。このような走査方式においては、ノズルから噴射されたエアロゾルの濃度に基づいてフィードバック制御しても、レスポンスが遅れてしまうので、やはり均一な膜厚を得ることは困難である。
【0014】
そこで、上記の点に鑑み、本発明は、エアロゾルデポジション法による成膜において、厚さが均一な膜を歩留まり良く、且つ、効率良く形成できる成膜装置及び成膜方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明の1つの観点に係る成膜装置は、原料粉をガスによって分散させたエアロゾルを基板に向けて吹き付けることにより、原料を基板上に堆積させるエアロゾルデポジション法を用いる成膜装置において、略一定のペースで供給される原料粉をガスによって分散させることによりエアロゾルを生成するエアロゾル生成手段と、基板を固定する基板ステージと、エアロゾル生成手段によって生成されたエアロゾルを基板に向けて噴射するノズルと、前記ノズルと前記基板ステージとの内の少なくとも一方を移動させることにより、基板にエアロゾルを吹き付けることによって基板上に堆積する原料粉に対し、異なる軌道を通って原料粉を重ねて堆積させることにより、原料粉の厚さのばらつきが互いに相殺されるように、ノズルと基板との相対位置を制御する制御手段とを具備する。
【0016】
また、本発明の1つの観点に係る成膜方法は、原料粉をガスによって分散させたエアロゾルを基板に向けて吹き付けることにより、原料を基板上に堆積させるエアロゾルデポジション法による成膜方法において、略一定のペースで供給される原料粉をガスによって分散させることによりエアロゾルを生成する工程(a)と、工程(a)において生成されたエアロゾルをノズルから基板に向けて噴射することにより、基板上に原料粉を堆積させる工程(b)とを具備し、工程(b)が、ノズルと基板との内の少なくとも一方を移動させることにより、基板にエアロゾルを吹き付けることによって基板上に堆積する原料粉に対し、異なる軌道を通って原料粉を重ねて堆積させることにより、原料粉の厚さのばらつきが互いに相殺されるように、ノズルと基板との相対位置を制御しながら行われる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、原料粉を略一定のペースで供給することにより、エアロゾルの濃度を一定に保つと共に、基板にエアロゾルを吹き付ける際に、原料粉の厚さのばらつきが相殺されるようにノズル又は基板を走査するので、広い面積に渡って厚さが均一で、且つ、気孔率が低くて緻密な膜を歩留まり良く得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、説明を省略する。
図1及び図2は、本発明の一実施形態に係る成膜装置の構成を示す模式図である。図1は、成膜装置の内のエアロゾル生成部を示しており、図2は、成膜装置の内の成膜部を示している。両者は、図2に示すエアロゾル搬送管30によって接続されている。また、成膜装置全体の動作は、図2に示す制御部35によって制御されている。
【0019】
図1の(a)は、エアロゾル生成部の構成を示す断面図であり、図1の(b)は、エアロゾル生成部の内部を示す平面図である。図1に示すように、このエアロゾル生成部は、粉体収納室10及びエアロゾル生成部20を含んでいる。
粉体収納室10は粉体を収納するチャンバであり、その上底部には粉体供給口10aが設けられており、下底部には開口11が形成されている。この開口11を介して、粉体収納室10とエアロゾル生成部20とが接続されている。
【0020】
粉体収納室10には、モータによって駆動されることにより回転する攪拌羽12が備えられている。この攪拌羽12の回転軸13にはO(オー)リング13aがはめ込まれており、それによって粉体収納室10内の気密が確保される。なお、図1の(b)には4枚の攪拌羽12が示されているが、攪拌羽の数は適宜変更しても構わない。攪拌羽12の材料としては、金属等の硬質な材料を用いても良いし、ゴム、シリコンゴム、テフロン(登録商標)等の柔軟性に優れた材料を用いても良い。或いは、金属羽の周縁部をゴムによって覆う等、それらの材料を組み合わせて用いても良い。
このような粉体収納室10に粉体を収納し、攪拌羽12によって粉体を攪拌する。それにより、粉体が開口11から落下し、エアロゾル生成部20に導出される。
【0021】
また、粉体収納室10には、粉体が開口11から導出されるのを補助又は促進するために、アシスト(補助)ガス導入部14が設けられている。アシストガス導入部14は、配管及びバルブを含んでおり、配管の先には、例えば、ガスボンベが接続されている。なお、アシストガスの種類としては、後述する分散ガスと同じものを用いることが望ましい。
【0022】
エアロゾル生成部20には、モータによって駆動されることにより回転する回転盤21が備えられている。回転盤21の回転軸22にはOリング22aがはめ込まれており、それによってエアロゾル生成部20内の気密が確保される。
回転盤21には、所定の幅及び深さを有する溝23が円周に沿って形成されている。回転盤21は、溝23が粉体収納室10の開口11に対向するように配置されている。このような回転盤21は、開口11から落下した粉体を溝23によって受けながら回転することにより、粉体を一定の割合で搬送する。なお、図1の(a)において、溝23の断面形状は半円となっているが、矩形やV字型のように、半円以外の形状であっても構わない。
【0023】
さらに、エアロゾル生成部20には、分散ガス導入部24及びエアロゾル導出部25が設けられている。
分散ガス導入部24は、配管及びバルブを含んでおり、配管の先には、例えば、ガスボンベが接続されている。分散ガスの種類としては、窒素(N2)、酸素(O2)、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、又は、それらの混合ガス、或いは、乾燥空気等が用いられる。図1の(a)に示すように、分散ガス導入部24によってエアロゾル生成部20内に導入される分散ガスの吹き出し口は、回転盤21の溝23に対向するように設けられている。なお、分散ガスは、後述するように、溝23に充填された粉体を分散させた後で粉体を搬送するので、キャリアガスとも呼ばれる。
【0024】
エアロゾル導出部25は、先端の開口部が溝23に対向するように配置された管であり、その他端は、例えば、フレキシブルな材料によって形成された配管を介して、図2に示すエアロゾル搬送管30に接続される。エアロゾル搬送管30は、エアロゾル生成部から成膜部に向けてエアロゾルを搬送する径路である。
【0025】
図2に示すように、成膜部は、成膜室31と、噴射ノズル32と、基板ステージ33と、排気管34とを含んでいる。
噴射ノズル32は、所定の形状及び大きさ(例えば、5mm×0.35mmの長方形)の開口を有しており、エアロゾル生成部からエアロゾル搬送管30を介して供給される原料粉のエアロゾルを、基板41に向けて噴射する。なお、噴射ノズル32から噴射されるエアロゾルの速度は、エアロゾル生成部と成膜室31との間の圧力差によって決定される。
【0026】
基板41が固定されている基板ステージ33は、基板41と噴射ノズル32との相対位置及び相対速度を制御するための3次元的に移動可能なステージである。この相対速度を調節することにより、1往復あたりに形成される膜の厚さが制御される。
なお、本実施形態においては、基板ステージ33側を移動させることにより、ノズル32と基板41との相対的位置を変化させているが、基板41の位置を固定してノズル32側を移動させるようにしても良い。
成膜室31の内部は、排気管34に接続されている排気ポンプによって排気されており、それによって所定の真空度に保たれている。
【0027】
このような成膜装置(図1及び図2)の動作について説明する。
図1に示すエアロゾル生成部において、粉体収納室10に所望の粉体を収納して攪拌羽12を駆動する。原料粉としては、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)やAl2O3(アルミナ)等のセラミックス粉が用いられる。そして、エアロゾル生成部20において回転盤21を回転させ、回転盤21の溝23に対して分散ガスを吹き付ける。
【0028】
粉体収納室10に収納された粉体は、攪拌羽12によって攪拌されながら、開口11を通って溝23に落下する。その際に、粉体収納室10にアシストガスを導入することにより、開口11内に気流を形成する。この気流が、粉体の導出を補助又は促進する駆動力として作用する。それにより、粉体は、よりスムーズに開口11から溝23に落下する。溝23に落下した粉体は、回転盤22の回転速度に応じて堆積して搬送される。なお、アシストガスは、連続的に導入しても良いし、間欠的に導入しても良い。
【0029】
一方、回転盤22の溝23においては、そこに吹き付けられた分散ガスが溝23に沿って流れることにより気流が形成されている。この分散ガスは、エアロゾル導出部25の先端部の開口からその内部に流れ込む。その際に、エアロゾル導出部25の周囲には、エアロゾル導出部25の内部に向かう吸引力が発生する。この吸引力により、溝23に堆積していた粉体が分散ガスと共にエアロゾル導出口25に流れ込む。このようにして生成されたエアロゾルは、エアロゾル導出口25及びエアロゾル搬送管30を介して、図2に示す成膜部に導入される。
【0030】
成膜部においては、制御部35の制御の下で、ノズル32からエアロゾルを噴射させながら、基板ステージ33を所定の走査方式で走査する。それにより、基板41上に膜42が形成される。
【0031】
図3は、基板ステージ33の走査方式を説明するための図である。
図3に示すように、本実施形態においては、ノズル32からエアロゾルを噴射しながら、ノズル32に対して基板41を、ノズル長方向(ノズル開口32aの短辺方向、図3においては左右方向)に1往復分又は片道分移動させることにより、1回目の走査を行う。それにより、幅Wを有する帯状の膜42aが形成される。次に、ノズル32をノズル幅方向(ノズル開口32aの長辺方向、図3においては上下方向)にピッチPだけ移動させ、2回目の走査を行う。このピッチPとしては、0より大きくWより小さい値が設定される。以下において、このピッチPのことを、ノズルの「ずらし幅」とも言う。また、成膜時にノズル32を移動させる方向(図3の左右方向)のことを「スキャン方向」とも言う。
【0032】
それにより、1回目の走査により形成された膜42aの上に幅L(L=W−P)だけ重なるように、帯状の膜42bが形成される。同様にして、ノズル32をノズル幅方向にピッチPだけずらして3回目の走査を行うことにより、膜42bの上に幅Lだけ重なるように、帯状の膜42cが形成される。このような走査を繰り返すことにより、基板41上の2次元領域に膜42が形成される。
【0033】
なお、図3においては、走査方式を説明し易くするために、膜42a、42b、…を左右方向にずらして示しているが、実際に成膜を行う際には、走査の開始位置(膜42a、42b、…の左端)及び折り返し位置(膜42a、42b、…の右端)をそれぞれ揃えることが望ましい。
【0034】
以上説明したように、本実施形態によれば、図1に示すエアロゾル生成部により、原料粉を略一定のペースでエアロゾル導出部25の端部に搬送することができるので、エアロゾルの濃度を一定に保つことができる。また、回転盤21の回転速度を調節することにより、エアロゾルを所望の濃度に調節することもできる。従って、濃度の安定したエアロゾル、又は、所望の濃度のエアロゾルを、長時間に渡って成膜部のノズルに供給することが可能になる。
【0035】
また、本実施形態によれば、図2に示す制御部で、先に形成された膜の一部に重なるようにエアロゾルを基板に吹き付けるので、エアロゾル内における流速分布に起因する膜厚の不均一性を相殺することができる。従って、広い面積に渡って厚さが均一な膜を、歩留まり良く作製することが可能になる。
【0036】
<実験1>
本発明の一実施形態に係る成膜装置(図1及び図2)を用いて、次の条件の下で、PZT膜を作製し、膜厚分布を測定した。実施例1と比較例2とにおいては、走査方式が異なっている。
原料粉:フルウチ化学株式会社製のPNN−PZT粉末
基板:厚さ1mmのYSZ(イットリウム安定化ジルコニア)基板
キャリアガス:酸素(O2)を6リットル/分
ノズルの開口:5mm×0.35mm
【0037】
(実施例1)
図4に示すように、ノズル32をスキャン方向に1回往復(片道10mm)させるごとに、ノズル32をノズル幅方向に1mmずらすという成膜動作を30回繰り返すことにより、基板41上に35mm×10mmの膜を形成した。なお、実施例1において、図1に示す回転盤21の回転スピードは、0.5回転であった。
【0038】
ここで、このように膜を形成すると、ノズル幅方向における両端5mmの領域はテーパー状となる。そのため、実施例1においては、その領域に予めマスク51を配置し、成膜後にマスク51を除去することにより、約25mm×10mmの膜52を得た。なお、両端の領域がテーパー状となるのは、それらの領域におけるノズルの走査回数が中央の領域よりも少ないからである。
【0039】
(比較例1)
図5に示すように、ノズル32をスキャン方向に1回往復(片道10mm)させるという成膜動作を、成膜領域をずらすことなく10回繰り返した。それにより、基板41上に5mm×10mmの膜53を得た。なお、比較例1において、図1に示す回転盤21の回転スピードは、0.5回転であった。
【0040】
実施例1の膜52と比較例1の膜53とについて、スキャン方向及びノズル幅方向における膜厚分布を、株式会社アルバック製の触針式表面形状測定器デックタック(Dektak)6Mを用いて測定した。その際には、図6に示すように、基板41の表面形状に起因する誤差を抑制するために、膜54上の領域と、膜54が形成されていない基板41上の領域(参照領域)との両方を測定器によって走査し、測定用走査によって得られた測定値から、参照用走査によって得られた測定値(参照値)を差し引くことにより、膜54の厚さを求めた。
【0041】
図7は、図4に示す膜52の膜厚分布を示している。また、図8は、図5に示す膜53の膜厚分布を示している。
図8に示すように、比較例1においては、膜53の中央付近及び端部の膜厚が薄いという結果が得られた。これは、ノズル32の長辺方向の断面において、エアロゾルの速度や濃度が異なるためと考えられる。即ち、ノズル32の中心付近においては、エアロゾルの流速が速すぎるので、原料粉が基板に衝突してもそこに付着できる確率が低くなる。一方、ノズル32の端部においては、エアロゾルの濃度が薄いために、膜厚が薄くなったものと考えられる。
それに対して、図7に示すように、実施例1においては、膜52のほぼ全域において、概ね均一な膜厚が得られていた。
【0042】
図9は、実施例1の膜52及び比較例1の膜53についてのノズル幅方向及びスキャン方向の各々における平均膜厚及び膜厚のばらつきを示している。ここで、平均膜厚及び膜厚のばらつきの算出にあたっては、次式(1)及び(2)を用いた。
平均膜厚={(膜内における最大膜厚)+(膜内における最小膜厚)}/2…(1)
膜厚のばらつき={(最大膜厚)−(平均膜厚)}/(平均膜厚)…(2)
【0043】
比較例1の膜53のノズル幅方向における最大膜厚は6.7μmであり、最小膜厚は2.5μmであった。従って、式(1)及び(2)より、平均膜厚は4.6μmであり、膜厚のばらつきは±46%であった。一方、実施例1の膜52のノズル幅方向における平均膜厚は5.2μmであり、膜厚のばらつきは±17%であった。このように、実施例1においては、ノズルを1往復させるごとに1mmずらして成膜することにより、比較例1よりも膜厚のばらつきを低く抑えることができた。
【0044】
また、スキャン方向についても膜厚のばらつきを算出したところ、比較例1の膜厚のばらつきが±17%であるので対して、実施例1の膜厚のばらつきは±9%と、低く抑えられていた。
さらに、平均膜厚に注目すると、実施例1においては、スキャン方向における平均膜厚が4.7μmであるのに対して、ノズル幅方向における平均膜厚が5.2μmであり、両者間に大きな違いはなかった。即ち、方向によらず、全体的に厚さが均一な膜が形成されていることがわかる。一方、比較例1においては、スキャン方向における平均膜厚が2.8μmであるのに対して、ノズル幅方向における平均膜厚が4.6μmであり、2μm近くの差が生じていた。即ち、膜全体において、方向に応じた膜厚分布が生じてしまった。
【0045】
<実験2>
原料粉の定量供給機構を有する成膜装置と、同機構を有しない成膜装置とを用いて、PZT膜を作製し、膜厚分布を測定する実験を行った。なお、成膜条件(原料粉、基板、及び、キャリアガスの種類)については、実験1におけるものと同様である。
【0046】
(実施例2)
成膜装置として、原料粉の定量供給機構を有する成膜装置(図1及び図2)を用いた。走査方式としては、図3に示すのと同様に、ノズル32をスキャン方向に1往復させるごとに、ノズル幅方向に0.5mmずらすという成膜動作を50回繰り返した。それにより、基板上に10mm×20mmの膜を形成した。なお、実施例2において、図1に示す回転盤21の回転スピードは、0.5回転であった。
【0047】
(比較例2)
成膜装置として、原料粉の定量供給機構を有しないものを用いた。即ち、容器内に原料粉を配置し、そこにキャリアガスを導入して原料粉を巻き上げることによりエアロゾルを生成するエアロゾル生成部を、図2に示す成膜部に接続した。成膜時の走査方式については、実施例2と同様である。それにより、基板上に10mm×20mmの膜を形成した。
【0048】
実施例2及び比較例2によって得られた膜について、スキャン方向及びノズル幅方向における膜厚分布を測定し、それらに基づいて、式(1)及び(2)を用いて平均膜厚及び膜厚のばらつきを算出した。この算出結果を、図9に示す。なお、膜厚分布の測定方法は、実験1におけるものと同様である。
【0049】
図9を参照すると、実施例1と実施例2とを比較して明らかなように、実施例2においては、ノズルの「ずらし幅」を実施例1におけるもの(1mm)よりも短くしたので(0.5mm)、スキャン方向及びノズル幅方向の両方において、膜厚のばらつきをさらに低減することができた。
【0050】
しかしながら、比較例2においては、実施例2と同様の走査方式で成膜したにも関わらず、スキャン方向及びノズル幅方向の両方において、膜厚のばらつきが極めて大きくなっていた。これは、エアロゾル生成部が原料粉の定量供給機構を有していなかったので、エアロゾルの濃度を一定に保てなかったためと考えられる。この場合には、ノズルをずらしながら成膜することのメリットが全く生かされないことが確認された。
【0051】
<実験3>
成膜装置として、原料粉の定量供給機構を有する成膜装置(図1及び図2)を用い、原料粉の供給量を変化させる実験を行った。なお、成膜条件(原料粉、基板、及び、キャリアガスの種類)については、実験1におけるものと同様である。
【0052】
(実施例2〜4)
先に説明した実施例2においては、回転スピードを0.5回転/分とした。これを基準として、実施例3においては、回転スピードを0.25回転/分(実施例2の半分)とし、実施例4においては1回転/分(実施例2の2倍)とした。
【0053】
(実施例5)
成膜部におけるノズルの「ずらし幅」を、実施例1と同様に、1往復の成膜に対して1mmとし、回転スピードを0.25回転/分(実施例1の半分)とした。
【0054】
図10は、実施例2〜5によって得られた膜のスキャン方向及びノズル幅方向における平均膜厚及び膜厚のばらつきを示している。なお、これらの取得方法については、実験1におけるのと同様である。
図10に示すように、ずらし幅を0.5mmに設定した実施例2〜4については、スキャン方向及びノズル幅方向のいずれについても、膜厚のばらつきが低く抑えられていた。また、それらの平均膜厚に着目すると、回転盤の回転スピードを上げるに従って、即ち、単位時間に供給される原料粉の量が増加するに従って、平均膜厚も増加していた。図11に示すように、実施例2〜4(ずらし幅0.5mm)については、平均膜厚と回転盤の回転スピードとの間に比例関係があることが確認された。一方、ずらし幅を1mmに設定した実施例1及び5についても、回転スピードに対する平均膜厚の増加率(直線の傾き)は実施例2〜4よりも小さいが、やはり、平均膜厚と回転盤の回転スピードとにおいてほぼ比例関係が見られることが確認された。
【0055】
実験3の結果をまとめると、次のようになる。即ち、ずらし幅を1mm以下とし、回転スピードを0.25回転/分以上とすることにより、ノズル幅方向における膜厚のばらつきを、±略25%以内、好ましくは±略20%以内、さらに好ましくは、±略10%以内に留めることができる。また、同じ条件の下で、スキャン方向における膜厚のばらつきを±略20%以内、好ましくは±略10%以内に留めることができる。
【0056】
また、実験3より、次のことが明らかになった。即ち、ノズルのずらし幅を小さく設定することによって膜厚のばらつきを低減できるので、膜質及び歩留まりを向上させることができる。しかしながら、単に、ずらし幅を小さくすると、単位面積当りに重ねて成膜される回数が増えるので、膜が厚くなってしまう。そこで、回転盤の回転スピードを調節することにより、1回当り(1往復又は片道)に形成される膜の厚さを制御できるので、膜全体で所望の厚さとすることができる。即ち、成膜部におけるノズルのずらし幅と、エアロゾル生成部における回転盤の回転スピード(原料粉の供給レート)との2つのパラメータを用いることにより、膜質(膜厚のばらつき)と膜厚との両方を制御することが可能になる。
【0057】
<実験4>
公知の塗布法を用いてPZT膜を形成し、平均膜厚及び膜厚のばらつきを測定し、実施例3において作製された膜と比較した。
(比較例3)
原料粉として、実施例3におけるのと同じPZT粉体を用意し、バインダとして、エチルセルロースを溶解させたα―テレピネオールを用意した。それらを混合したものをYSZ基板に塗布し、1000℃で2時間焼成することにより、PZT膜を作製し、これを比較例3の膜とした。
【0058】
実施例3及び比較例3の膜を基板に直交する面で切断し、集束イオンビーム(FIB)加工により断面を出した。そして、走査型電子顕微鏡(SEM)によって断面写真を撮影し、この断面写真に基づいて、次式(3)を用いて、各膜における気孔率を求めた。
気孔率=(断面における気孔の面積)/(断面の面積) …(3)
【0059】
図12に示すように、実施例3及び比較例3の両方において、平均膜厚及び膜厚のばらつきについては、大きな違いは見られなかった。即ち、従来の塗布法によっても、厚さが均一な膜を形成することができる。しかしながら、比較例3の膜における気孔率が20%であるのに対して、実施例3の膜における気孔率は6%と、非常に小さい。これは、原料粉が下層に衝突した際に生じた新生面が下層に密着するというAD法特有の成膜メカニズムに起因するものであり、この実験より、AD法によれば、気孔率が低く緻密な膜を形成できることが確認された。
【0060】
以上説明した本実施形態においては、1往復又は片道分の成膜を行うごとに、所定の幅だけノズルをずらす走査方式を用いた。しかしながら、エアロゾルが吹き付けられることにより基板上に堆積する原料粉に対し、異なる軌道を通って原料粉を重ねて堆積させることにより、原料粉の厚さのばらつきが互いに相殺されるようにエアロゾルの軌道を描くことができれば、それ以外の走査方式を用いても良い。例えば、ノズルに対して基板が2種類の回転(公転及び自転)を組み合わせた運動をするように走査しても良いし、ノズルに対して基板がカオス的な軌道を描くように走査しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、原料の粉体を分散させたエアロゾルを基板に向けて吹き付けることによって基板上に原料を堆積させる成膜方法及び成膜装置において利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施形態に係る成膜装置の内のエアロゾル生成部の構成を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る成膜装置の内の成膜部の構成を示す模式図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る成膜装置において行われる走査方式を説明するための図である。
【図4】実施例1における走査方式を説明するための図である。
【図5】比較例1における走査方式を説明するための図である。
【図6】膜厚分布の測定方法を説明するための図である。
【図7】実施例1の膜における膜厚分布を示す図である。
【図8】比較例1の膜における膜厚分布を示す図である。
【図9】実施例1及び2、並びに、比較例1及び2の膜における膜厚特性を示す表である。
【図10】実施例1〜5の膜における膜厚特性を示す表である。
【図11】実施例1〜5の膜における回転盤の回転スピードと平均膜厚との関係を示す図である。
【図12】実施例3及び比較例3の膜の膜厚特性及び気孔率を示す表である。
【図13】エアロゾル噴射ノズルの先端部を示す模式図である。
【図14】長方形の開口を有するノズルを用いて作製された膜の膜厚分布を示す図である。
【図15】ノズルをずらす走査方式により形成された膜の膜厚分布を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
10 粉体収納室
10a 粉体供給口
11 開口
12 攪拌羽
12a 攪拌羽の最下部
13、22 回転軸
13a、22a O(オー)リング
14 アシストガス導入部
20 エアロゾル生成室
21 回転盤
23 溝
24 分散ガス導入部
25 エアロゾル導出部
30 エアロゾル搬送管
31 成膜室
32 ノズル
32a ノズル開口
33 基板ステージ
34 排気管
35 制御部
41 基板
42、42a、42b、…、52、53、54 膜
51 マスク
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料の粉体を分散させたエアロゾルを基板に向けて吹き付けることによって基板上に原料を堆積させる成膜装置及び成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、微小電気機械システム(MEMS:micro electrical mechanical system)関連の機器の開発に伴い、積層セラミックコンデンサや圧電アクチュエータ等の素子の微細化及び集積化がますます進んでいる。そのため、そのような素子を、成膜技術を用いて製造する研究が盛んに進められている。
【0003】
最近では、固体粒子の衝突付着現象を利用した成膜技術の1つであるエアロゾルデポジション(aerosol deposition:AD)法が、セラミック膜の形成方法として注目されている。AD法とは、原料の微小な粉体をガスに分散させることにより生成されたエアロゾルをノズルから基板に向けて噴射して、基板や先に形成された膜に粉体を衝突させることにより、原料を基板上に堆積させる成膜方法である。ここで、エアロゾルとは、「分散相は固体又は液体の粒子からなり、分散媒は気体からなるコロイド系」のことである(高橋幹二著、「エアロゾル学の基礎」、森北出版第1版、P.1)。AD法によれば、気孔率が低く、緻密で強固な膜を形成することができるので、上記のような微細な素子の性能を向上できる可能性がある。
【0004】
図13は、AD法において一般的に用いられているエアロゾル噴射ノズルの先端部を示す模式図である。通常、AD法においては、先端に長方形の開口101が形成されたノズル100が用いられる。開口101のサイズは膜の用途に応じて様々であるが、例えば、長辺が5mmで短辺が0.35mm程度のものが用いられる。本願においては、開口101の短辺に平行な方向をスキャン方向と呼び、長辺に平行な方向をノズル幅方向と呼ぶ。成膜を行う際には、通常、基板に対してノズルをスキャン方向に移動させる。
【0005】
このようなAD法を用いて、厚さや密度が均一な良質な膜を形成するためには、濃度が均一なエアロゾルを長時間に渡ってノズルから噴射させることが重要となる。エアロゾルの濃度が不安定であると、成膜レートが不均一になるので、膜厚にばらつきが生じてしまうからである。
【0006】
そのような問題を解決するために、特許文献1には、セラミック超微粒子のエアロゾルを発生させ、分級或いは解砕によりエアロゾル中の2次粒子を排除した後に、1次粒子或いはそれに準じる粒子のみを基板上に吹き付けることにより、焼成させることなく高密度の緻密室のセラミック構造物を基板上に得ることが開示されている。また、特許文献1においては、構造物を一定の厚さに保持するために、振動する篩からセラミック超微粒子を落下させて、連続的に安定した濃度のエアロゾルを発生させている。
【0007】
また、特許文献2には、粉体収納部とエアロゾル化手段との間に、循環式の輸送手段としての回転テーブルが配置されたエアロゾル発生装置が開示されている。即ち、回転テーブルの水平な上面に円環状の溝が形成されており、粉体収納部内でホッパーから溝内に粉体が供給され、次いで、下流側のスキージ板によって溝から上方に溢れた粉体が取り除かれ、この状態で回転テーブルの回転によって溝内の粉体がエアロゾル化手段に送られ、エアロゾルとなってノズルに供給される。また、特許文献2には、生成されたエアロゾルの濃度を測定し、その測定値に基づいてエアロゾル発生器やガスボンベ等をフィードバック制御することにより、エアロゾルの濃度を維持することも開示されている(段落0012)。
【0008】
一方、特許文献3には、噴射ノズルを所定の方向に走査させながらエアロゾルを噴射させることにより、基板上に一の堆積層を形成する第1の走査工程(A)と、噴射ノズルを走査方向と交差する交差方向に移動させることにより、直前の走査工程における走査径路から噴射ノズルの位置をずらす走査径路変更工程(B)と、噴射ノズルを直前の走査工程における走査方向に沿う方向に走査させながらエアロゾルを噴出させることにより、直前の走査工程により形成された堆積層に一部重なり合う他の堆積層を形成する第2の走査工程(C)と、工程(B)と(C)とを所定回数交互に繰り返す工程とを含む成膜方法が開示されている。
【0009】
また、特許文献4には、成膜室と、該成膜室に配置され、構造物が形成される基板を保持する基板ホルダと、成膜室内を排気する排気ポンプと、容器に配置された原料の粉体をガスによって吹き上げることによりエアロゾルを生成するエアロゾル生成部と、生成されたエアロゾルを成膜室に導入する搬送管と、搬送管を介して導入されたエアロゾルを基板に向けて噴射するノズルと、基板ホルダによって保持される基板の位置に対して、ノズルをカオス的に変化させる制御部とを含む成膜装置が開示されている。
【特許文献1】特開2001−181859号公報(第1頁)
【特許文献2】特開2003−275631号公報(第1、3頁)
【特許文献3】特開2006−32485号公報(第2頁)
【特許文献4】特開2005−305427号公報(第1頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、図13に示すように、一般的なノズルにおいては、中央付近の流速が速く、端部付近の流速が遅いというように、開口内の位置に応じてエアロゾルの速度が異なっている。このような流速分布が存在するため、基板に衝突した原料粉の付着確率も、開口内の位置に応じて変化してしまう。従って、特許文献1及び2に示すように、ノズルに対して基板を単純に走査する場合には、基板上に形成される膜の厚さが不均一になってしまう。
【0011】
図14は、図13に示すノズルと同様に、長方形の開口(長辺が5mm)を有するノズルを用いて膜を作製し、その膜の膜厚分布を測定した結果を示している。この実験においては、基板に対してノズルを短辺方向に10往復走査させることによって膜を形成した。図14に示すように、このような走査方法によれば、ノズルの開口幅(5mm)に対して、膜厚が均一な範囲は中央付近の約3mmの部分だけであった。即ち、両端の角が立った部分は膜として利用することができないので、歩留まりが非常に悪い。
【0012】
ここで、開口内の流速分布による影響を低減するためには、図13において、ノズル100をノズル幅方向に移動させることが考えられる。それにより、ノズル幅方向における膜厚の不均一性を相殺することができる。しかしながら、この場合には、大面積の膜を形成することが困難になる。
【0013】
上記の問題点を解決するために、特許文献3及び4に開示されているように、基板に対するノズルの走査方法を工夫することにより、エアロゾルの流速分布に起因する膜厚の不均一性を相殺することはできる。しかしながら、このような走査方法においては、別の問題が生じている。ここで、図15は、特許文献3に記載されているように、直前に形成された膜(堆積層)に一部が重なるように、ノズルの位置を0.2mmずつずらしながら、帯状の膜形成繰り返すことによって形成された膜の膜厚分布を示している。図15を一見すると、中央付近の6mm〜7mm程度の範囲は、比較的膜厚が均一であるように思われる。しかしながら、この範囲における膜厚の誤差Δxは約6.5μmであり、意外に大きい。この誤差Δxは、ノズルから噴射させるエアロゾルの濃度のばらつきに起因するものと考えられる。このような走査方式においては、ノズルから噴射されたエアロゾルの濃度に基づいてフィードバック制御しても、レスポンスが遅れてしまうので、やはり均一な膜厚を得ることは困難である。
【0014】
そこで、上記の点に鑑み、本発明は、エアロゾルデポジション法による成膜において、厚さが均一な膜を歩留まり良く、且つ、効率良く形成できる成膜装置及び成膜方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明の1つの観点に係る成膜装置は、原料粉をガスによって分散させたエアロゾルを基板に向けて吹き付けることにより、原料を基板上に堆積させるエアロゾルデポジション法を用いる成膜装置において、略一定のペースで供給される原料粉をガスによって分散させることによりエアロゾルを生成するエアロゾル生成手段と、基板を固定する基板ステージと、エアロゾル生成手段によって生成されたエアロゾルを基板に向けて噴射するノズルと、前記ノズルと前記基板ステージとの内の少なくとも一方を移動させることにより、基板にエアロゾルを吹き付けることによって基板上に堆積する原料粉に対し、異なる軌道を通って原料粉を重ねて堆積させることにより、原料粉の厚さのばらつきが互いに相殺されるように、ノズルと基板との相対位置を制御する制御手段とを具備する。
【0016】
また、本発明の1つの観点に係る成膜方法は、原料粉をガスによって分散させたエアロゾルを基板に向けて吹き付けることにより、原料を基板上に堆積させるエアロゾルデポジション法による成膜方法において、略一定のペースで供給される原料粉をガスによって分散させることによりエアロゾルを生成する工程(a)と、工程(a)において生成されたエアロゾルをノズルから基板に向けて噴射することにより、基板上に原料粉を堆積させる工程(b)とを具備し、工程(b)が、ノズルと基板との内の少なくとも一方を移動させることにより、基板にエアロゾルを吹き付けることによって基板上に堆積する原料粉に対し、異なる軌道を通って原料粉を重ねて堆積させることにより、原料粉の厚さのばらつきが互いに相殺されるように、ノズルと基板との相対位置を制御しながら行われる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、原料粉を略一定のペースで供給することにより、エアロゾルの濃度を一定に保つと共に、基板にエアロゾルを吹き付ける際に、原料粉の厚さのばらつきが相殺されるようにノズル又は基板を走査するので、広い面積に渡って厚さが均一で、且つ、気孔率が低くて緻密な膜を歩留まり良く得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、説明を省略する。
図1及び図2は、本発明の一実施形態に係る成膜装置の構成を示す模式図である。図1は、成膜装置の内のエアロゾル生成部を示しており、図2は、成膜装置の内の成膜部を示している。両者は、図2に示すエアロゾル搬送管30によって接続されている。また、成膜装置全体の動作は、図2に示す制御部35によって制御されている。
【0019】
図1の(a)は、エアロゾル生成部の構成を示す断面図であり、図1の(b)は、エアロゾル生成部の内部を示す平面図である。図1に示すように、このエアロゾル生成部は、粉体収納室10及びエアロゾル生成部20を含んでいる。
粉体収納室10は粉体を収納するチャンバであり、その上底部には粉体供給口10aが設けられており、下底部には開口11が形成されている。この開口11を介して、粉体収納室10とエアロゾル生成部20とが接続されている。
【0020】
粉体収納室10には、モータによって駆動されることにより回転する攪拌羽12が備えられている。この攪拌羽12の回転軸13にはO(オー)リング13aがはめ込まれており、それによって粉体収納室10内の気密が確保される。なお、図1の(b)には4枚の攪拌羽12が示されているが、攪拌羽の数は適宜変更しても構わない。攪拌羽12の材料としては、金属等の硬質な材料を用いても良いし、ゴム、シリコンゴム、テフロン(登録商標)等の柔軟性に優れた材料を用いても良い。或いは、金属羽の周縁部をゴムによって覆う等、それらの材料を組み合わせて用いても良い。
このような粉体収納室10に粉体を収納し、攪拌羽12によって粉体を攪拌する。それにより、粉体が開口11から落下し、エアロゾル生成部20に導出される。
【0021】
また、粉体収納室10には、粉体が開口11から導出されるのを補助又は促進するために、アシスト(補助)ガス導入部14が設けられている。アシストガス導入部14は、配管及びバルブを含んでおり、配管の先には、例えば、ガスボンベが接続されている。なお、アシストガスの種類としては、後述する分散ガスと同じものを用いることが望ましい。
【0022】
エアロゾル生成部20には、モータによって駆動されることにより回転する回転盤21が備えられている。回転盤21の回転軸22にはOリング22aがはめ込まれており、それによってエアロゾル生成部20内の気密が確保される。
回転盤21には、所定の幅及び深さを有する溝23が円周に沿って形成されている。回転盤21は、溝23が粉体収納室10の開口11に対向するように配置されている。このような回転盤21は、開口11から落下した粉体を溝23によって受けながら回転することにより、粉体を一定の割合で搬送する。なお、図1の(a)において、溝23の断面形状は半円となっているが、矩形やV字型のように、半円以外の形状であっても構わない。
【0023】
さらに、エアロゾル生成部20には、分散ガス導入部24及びエアロゾル導出部25が設けられている。
分散ガス導入部24は、配管及びバルブを含んでおり、配管の先には、例えば、ガスボンベが接続されている。分散ガスの種類としては、窒素(N2)、酸素(O2)、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、又は、それらの混合ガス、或いは、乾燥空気等が用いられる。図1の(a)に示すように、分散ガス導入部24によってエアロゾル生成部20内に導入される分散ガスの吹き出し口は、回転盤21の溝23に対向するように設けられている。なお、分散ガスは、後述するように、溝23に充填された粉体を分散させた後で粉体を搬送するので、キャリアガスとも呼ばれる。
【0024】
エアロゾル導出部25は、先端の開口部が溝23に対向するように配置された管であり、その他端は、例えば、フレキシブルな材料によって形成された配管を介して、図2に示すエアロゾル搬送管30に接続される。エアロゾル搬送管30は、エアロゾル生成部から成膜部に向けてエアロゾルを搬送する径路である。
【0025】
図2に示すように、成膜部は、成膜室31と、噴射ノズル32と、基板ステージ33と、排気管34とを含んでいる。
噴射ノズル32は、所定の形状及び大きさ(例えば、5mm×0.35mmの長方形)の開口を有しており、エアロゾル生成部からエアロゾル搬送管30を介して供給される原料粉のエアロゾルを、基板41に向けて噴射する。なお、噴射ノズル32から噴射されるエアロゾルの速度は、エアロゾル生成部と成膜室31との間の圧力差によって決定される。
【0026】
基板41が固定されている基板ステージ33は、基板41と噴射ノズル32との相対位置及び相対速度を制御するための3次元的に移動可能なステージである。この相対速度を調節することにより、1往復あたりに形成される膜の厚さが制御される。
なお、本実施形態においては、基板ステージ33側を移動させることにより、ノズル32と基板41との相対的位置を変化させているが、基板41の位置を固定してノズル32側を移動させるようにしても良い。
成膜室31の内部は、排気管34に接続されている排気ポンプによって排気されており、それによって所定の真空度に保たれている。
【0027】
このような成膜装置(図1及び図2)の動作について説明する。
図1に示すエアロゾル生成部において、粉体収納室10に所望の粉体を収納して攪拌羽12を駆動する。原料粉としては、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)やAl2O3(アルミナ)等のセラミックス粉が用いられる。そして、エアロゾル生成部20において回転盤21を回転させ、回転盤21の溝23に対して分散ガスを吹き付ける。
【0028】
粉体収納室10に収納された粉体は、攪拌羽12によって攪拌されながら、開口11を通って溝23に落下する。その際に、粉体収納室10にアシストガスを導入することにより、開口11内に気流を形成する。この気流が、粉体の導出を補助又は促進する駆動力として作用する。それにより、粉体は、よりスムーズに開口11から溝23に落下する。溝23に落下した粉体は、回転盤22の回転速度に応じて堆積して搬送される。なお、アシストガスは、連続的に導入しても良いし、間欠的に導入しても良い。
【0029】
一方、回転盤22の溝23においては、そこに吹き付けられた分散ガスが溝23に沿って流れることにより気流が形成されている。この分散ガスは、エアロゾル導出部25の先端部の開口からその内部に流れ込む。その際に、エアロゾル導出部25の周囲には、エアロゾル導出部25の内部に向かう吸引力が発生する。この吸引力により、溝23に堆積していた粉体が分散ガスと共にエアロゾル導出口25に流れ込む。このようにして生成されたエアロゾルは、エアロゾル導出口25及びエアロゾル搬送管30を介して、図2に示す成膜部に導入される。
【0030】
成膜部においては、制御部35の制御の下で、ノズル32からエアロゾルを噴射させながら、基板ステージ33を所定の走査方式で走査する。それにより、基板41上に膜42が形成される。
【0031】
図3は、基板ステージ33の走査方式を説明するための図である。
図3に示すように、本実施形態においては、ノズル32からエアロゾルを噴射しながら、ノズル32に対して基板41を、ノズル長方向(ノズル開口32aの短辺方向、図3においては左右方向)に1往復分又は片道分移動させることにより、1回目の走査を行う。それにより、幅Wを有する帯状の膜42aが形成される。次に、ノズル32をノズル幅方向(ノズル開口32aの長辺方向、図3においては上下方向)にピッチPだけ移動させ、2回目の走査を行う。このピッチPとしては、0より大きくWより小さい値が設定される。以下において、このピッチPのことを、ノズルの「ずらし幅」とも言う。また、成膜時にノズル32を移動させる方向(図3の左右方向)のことを「スキャン方向」とも言う。
【0032】
それにより、1回目の走査により形成された膜42aの上に幅L(L=W−P)だけ重なるように、帯状の膜42bが形成される。同様にして、ノズル32をノズル幅方向にピッチPだけずらして3回目の走査を行うことにより、膜42bの上に幅Lだけ重なるように、帯状の膜42cが形成される。このような走査を繰り返すことにより、基板41上の2次元領域に膜42が形成される。
【0033】
なお、図3においては、走査方式を説明し易くするために、膜42a、42b、…を左右方向にずらして示しているが、実際に成膜を行う際には、走査の開始位置(膜42a、42b、…の左端)及び折り返し位置(膜42a、42b、…の右端)をそれぞれ揃えることが望ましい。
【0034】
以上説明したように、本実施形態によれば、図1に示すエアロゾル生成部により、原料粉を略一定のペースでエアロゾル導出部25の端部に搬送することができるので、エアロゾルの濃度を一定に保つことができる。また、回転盤21の回転速度を調節することにより、エアロゾルを所望の濃度に調節することもできる。従って、濃度の安定したエアロゾル、又は、所望の濃度のエアロゾルを、長時間に渡って成膜部のノズルに供給することが可能になる。
【0035】
また、本実施形態によれば、図2に示す制御部で、先に形成された膜の一部に重なるようにエアロゾルを基板に吹き付けるので、エアロゾル内における流速分布に起因する膜厚の不均一性を相殺することができる。従って、広い面積に渡って厚さが均一な膜を、歩留まり良く作製することが可能になる。
【0036】
<実験1>
本発明の一実施形態に係る成膜装置(図1及び図2)を用いて、次の条件の下で、PZT膜を作製し、膜厚分布を測定した。実施例1と比較例2とにおいては、走査方式が異なっている。
原料粉:フルウチ化学株式会社製のPNN−PZT粉末
基板:厚さ1mmのYSZ(イットリウム安定化ジルコニア)基板
キャリアガス:酸素(O2)を6リットル/分
ノズルの開口:5mm×0.35mm
【0037】
(実施例1)
図4に示すように、ノズル32をスキャン方向に1回往復(片道10mm)させるごとに、ノズル32をノズル幅方向に1mmずらすという成膜動作を30回繰り返すことにより、基板41上に35mm×10mmの膜を形成した。なお、実施例1において、図1に示す回転盤21の回転スピードは、0.5回転であった。
【0038】
ここで、このように膜を形成すると、ノズル幅方向における両端5mmの領域はテーパー状となる。そのため、実施例1においては、その領域に予めマスク51を配置し、成膜後にマスク51を除去することにより、約25mm×10mmの膜52を得た。なお、両端の領域がテーパー状となるのは、それらの領域におけるノズルの走査回数が中央の領域よりも少ないからである。
【0039】
(比較例1)
図5に示すように、ノズル32をスキャン方向に1回往復(片道10mm)させるという成膜動作を、成膜領域をずらすことなく10回繰り返した。それにより、基板41上に5mm×10mmの膜53を得た。なお、比較例1において、図1に示す回転盤21の回転スピードは、0.5回転であった。
【0040】
実施例1の膜52と比較例1の膜53とについて、スキャン方向及びノズル幅方向における膜厚分布を、株式会社アルバック製の触針式表面形状測定器デックタック(Dektak)6Mを用いて測定した。その際には、図6に示すように、基板41の表面形状に起因する誤差を抑制するために、膜54上の領域と、膜54が形成されていない基板41上の領域(参照領域)との両方を測定器によって走査し、測定用走査によって得られた測定値から、参照用走査によって得られた測定値(参照値)を差し引くことにより、膜54の厚さを求めた。
【0041】
図7は、図4に示す膜52の膜厚分布を示している。また、図8は、図5に示す膜53の膜厚分布を示している。
図8に示すように、比較例1においては、膜53の中央付近及び端部の膜厚が薄いという結果が得られた。これは、ノズル32の長辺方向の断面において、エアロゾルの速度や濃度が異なるためと考えられる。即ち、ノズル32の中心付近においては、エアロゾルの流速が速すぎるので、原料粉が基板に衝突してもそこに付着できる確率が低くなる。一方、ノズル32の端部においては、エアロゾルの濃度が薄いために、膜厚が薄くなったものと考えられる。
それに対して、図7に示すように、実施例1においては、膜52のほぼ全域において、概ね均一な膜厚が得られていた。
【0042】
図9は、実施例1の膜52及び比較例1の膜53についてのノズル幅方向及びスキャン方向の各々における平均膜厚及び膜厚のばらつきを示している。ここで、平均膜厚及び膜厚のばらつきの算出にあたっては、次式(1)及び(2)を用いた。
平均膜厚={(膜内における最大膜厚)+(膜内における最小膜厚)}/2…(1)
膜厚のばらつき={(最大膜厚)−(平均膜厚)}/(平均膜厚)…(2)
【0043】
比較例1の膜53のノズル幅方向における最大膜厚は6.7μmであり、最小膜厚は2.5μmであった。従って、式(1)及び(2)より、平均膜厚は4.6μmであり、膜厚のばらつきは±46%であった。一方、実施例1の膜52のノズル幅方向における平均膜厚は5.2μmであり、膜厚のばらつきは±17%であった。このように、実施例1においては、ノズルを1往復させるごとに1mmずらして成膜することにより、比較例1よりも膜厚のばらつきを低く抑えることができた。
【0044】
また、スキャン方向についても膜厚のばらつきを算出したところ、比較例1の膜厚のばらつきが±17%であるので対して、実施例1の膜厚のばらつきは±9%と、低く抑えられていた。
さらに、平均膜厚に注目すると、実施例1においては、スキャン方向における平均膜厚が4.7μmであるのに対して、ノズル幅方向における平均膜厚が5.2μmであり、両者間に大きな違いはなかった。即ち、方向によらず、全体的に厚さが均一な膜が形成されていることがわかる。一方、比較例1においては、スキャン方向における平均膜厚が2.8μmであるのに対して、ノズル幅方向における平均膜厚が4.6μmであり、2μm近くの差が生じていた。即ち、膜全体において、方向に応じた膜厚分布が生じてしまった。
【0045】
<実験2>
原料粉の定量供給機構を有する成膜装置と、同機構を有しない成膜装置とを用いて、PZT膜を作製し、膜厚分布を測定する実験を行った。なお、成膜条件(原料粉、基板、及び、キャリアガスの種類)については、実験1におけるものと同様である。
【0046】
(実施例2)
成膜装置として、原料粉の定量供給機構を有する成膜装置(図1及び図2)を用いた。走査方式としては、図3に示すのと同様に、ノズル32をスキャン方向に1往復させるごとに、ノズル幅方向に0.5mmずらすという成膜動作を50回繰り返した。それにより、基板上に10mm×20mmの膜を形成した。なお、実施例2において、図1に示す回転盤21の回転スピードは、0.5回転であった。
【0047】
(比較例2)
成膜装置として、原料粉の定量供給機構を有しないものを用いた。即ち、容器内に原料粉を配置し、そこにキャリアガスを導入して原料粉を巻き上げることによりエアロゾルを生成するエアロゾル生成部を、図2に示す成膜部に接続した。成膜時の走査方式については、実施例2と同様である。それにより、基板上に10mm×20mmの膜を形成した。
【0048】
実施例2及び比較例2によって得られた膜について、スキャン方向及びノズル幅方向における膜厚分布を測定し、それらに基づいて、式(1)及び(2)を用いて平均膜厚及び膜厚のばらつきを算出した。この算出結果を、図9に示す。なお、膜厚分布の測定方法は、実験1におけるものと同様である。
【0049】
図9を参照すると、実施例1と実施例2とを比較して明らかなように、実施例2においては、ノズルの「ずらし幅」を実施例1におけるもの(1mm)よりも短くしたので(0.5mm)、スキャン方向及びノズル幅方向の両方において、膜厚のばらつきをさらに低減することができた。
【0050】
しかしながら、比較例2においては、実施例2と同様の走査方式で成膜したにも関わらず、スキャン方向及びノズル幅方向の両方において、膜厚のばらつきが極めて大きくなっていた。これは、エアロゾル生成部が原料粉の定量供給機構を有していなかったので、エアロゾルの濃度を一定に保てなかったためと考えられる。この場合には、ノズルをずらしながら成膜することのメリットが全く生かされないことが確認された。
【0051】
<実験3>
成膜装置として、原料粉の定量供給機構を有する成膜装置(図1及び図2)を用い、原料粉の供給量を変化させる実験を行った。なお、成膜条件(原料粉、基板、及び、キャリアガスの種類)については、実験1におけるものと同様である。
【0052】
(実施例2〜4)
先に説明した実施例2においては、回転スピードを0.5回転/分とした。これを基準として、実施例3においては、回転スピードを0.25回転/分(実施例2の半分)とし、実施例4においては1回転/分(実施例2の2倍)とした。
【0053】
(実施例5)
成膜部におけるノズルの「ずらし幅」を、実施例1と同様に、1往復の成膜に対して1mmとし、回転スピードを0.25回転/分(実施例1の半分)とした。
【0054】
図10は、実施例2〜5によって得られた膜のスキャン方向及びノズル幅方向における平均膜厚及び膜厚のばらつきを示している。なお、これらの取得方法については、実験1におけるのと同様である。
図10に示すように、ずらし幅を0.5mmに設定した実施例2〜4については、スキャン方向及びノズル幅方向のいずれについても、膜厚のばらつきが低く抑えられていた。また、それらの平均膜厚に着目すると、回転盤の回転スピードを上げるに従って、即ち、単位時間に供給される原料粉の量が増加するに従って、平均膜厚も増加していた。図11に示すように、実施例2〜4(ずらし幅0.5mm)については、平均膜厚と回転盤の回転スピードとの間に比例関係があることが確認された。一方、ずらし幅を1mmに設定した実施例1及び5についても、回転スピードに対する平均膜厚の増加率(直線の傾き)は実施例2〜4よりも小さいが、やはり、平均膜厚と回転盤の回転スピードとにおいてほぼ比例関係が見られることが確認された。
【0055】
実験3の結果をまとめると、次のようになる。即ち、ずらし幅を1mm以下とし、回転スピードを0.25回転/分以上とすることにより、ノズル幅方向における膜厚のばらつきを、±略25%以内、好ましくは±略20%以内、さらに好ましくは、±略10%以内に留めることができる。また、同じ条件の下で、スキャン方向における膜厚のばらつきを±略20%以内、好ましくは±略10%以内に留めることができる。
【0056】
また、実験3より、次のことが明らかになった。即ち、ノズルのずらし幅を小さく設定することによって膜厚のばらつきを低減できるので、膜質及び歩留まりを向上させることができる。しかしながら、単に、ずらし幅を小さくすると、単位面積当りに重ねて成膜される回数が増えるので、膜が厚くなってしまう。そこで、回転盤の回転スピードを調節することにより、1回当り(1往復又は片道)に形成される膜の厚さを制御できるので、膜全体で所望の厚さとすることができる。即ち、成膜部におけるノズルのずらし幅と、エアロゾル生成部における回転盤の回転スピード(原料粉の供給レート)との2つのパラメータを用いることにより、膜質(膜厚のばらつき)と膜厚との両方を制御することが可能になる。
【0057】
<実験4>
公知の塗布法を用いてPZT膜を形成し、平均膜厚及び膜厚のばらつきを測定し、実施例3において作製された膜と比較した。
(比較例3)
原料粉として、実施例3におけるのと同じPZT粉体を用意し、バインダとして、エチルセルロースを溶解させたα―テレピネオールを用意した。それらを混合したものをYSZ基板に塗布し、1000℃で2時間焼成することにより、PZT膜を作製し、これを比較例3の膜とした。
【0058】
実施例3及び比較例3の膜を基板に直交する面で切断し、集束イオンビーム(FIB)加工により断面を出した。そして、走査型電子顕微鏡(SEM)によって断面写真を撮影し、この断面写真に基づいて、次式(3)を用いて、各膜における気孔率を求めた。
気孔率=(断面における気孔の面積)/(断面の面積) …(3)
【0059】
図12に示すように、実施例3及び比較例3の両方において、平均膜厚及び膜厚のばらつきについては、大きな違いは見られなかった。即ち、従来の塗布法によっても、厚さが均一な膜を形成することができる。しかしながら、比較例3の膜における気孔率が20%であるのに対して、実施例3の膜における気孔率は6%と、非常に小さい。これは、原料粉が下層に衝突した際に生じた新生面が下層に密着するというAD法特有の成膜メカニズムに起因するものであり、この実験より、AD法によれば、気孔率が低く緻密な膜を形成できることが確認された。
【0060】
以上説明した本実施形態においては、1往復又は片道分の成膜を行うごとに、所定の幅だけノズルをずらす走査方式を用いた。しかしながら、エアロゾルが吹き付けられることにより基板上に堆積する原料粉に対し、異なる軌道を通って原料粉を重ねて堆積させることにより、原料粉の厚さのばらつきが互いに相殺されるようにエアロゾルの軌道を描くことができれば、それ以外の走査方式を用いても良い。例えば、ノズルに対して基板が2種類の回転(公転及び自転)を組み合わせた運動をするように走査しても良いし、ノズルに対して基板がカオス的な軌道を描くように走査しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、原料の粉体を分散させたエアロゾルを基板に向けて吹き付けることによって基板上に原料を堆積させる成膜方法及び成膜装置において利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施形態に係る成膜装置の内のエアロゾル生成部の構成を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る成膜装置の内の成膜部の構成を示す模式図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る成膜装置において行われる走査方式を説明するための図である。
【図4】実施例1における走査方式を説明するための図である。
【図5】比較例1における走査方式を説明するための図である。
【図6】膜厚分布の測定方法を説明するための図である。
【図7】実施例1の膜における膜厚分布を示す図である。
【図8】比較例1の膜における膜厚分布を示す図である。
【図9】実施例1及び2、並びに、比較例1及び2の膜における膜厚特性を示す表である。
【図10】実施例1〜5の膜における膜厚特性を示す表である。
【図11】実施例1〜5の膜における回転盤の回転スピードと平均膜厚との関係を示す図である。
【図12】実施例3及び比較例3の膜の膜厚特性及び気孔率を示す表である。
【図13】エアロゾル噴射ノズルの先端部を示す模式図である。
【図14】長方形の開口を有するノズルを用いて作製された膜の膜厚分布を示す図である。
【図15】ノズルをずらす走査方式により形成された膜の膜厚分布を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
10 粉体収納室
10a 粉体供給口
11 開口
12 攪拌羽
12a 攪拌羽の最下部
13、22 回転軸
13a、22a O(オー)リング
14 アシストガス導入部
20 エアロゾル生成室
21 回転盤
23 溝
24 分散ガス導入部
25 エアロゾル導出部
30 エアロゾル搬送管
31 成膜室
32 ノズル
32a ノズル開口
33 基板ステージ
34 排気管
35 制御部
41 基板
42、42a、42b、…、52、53、54 膜
51 マスク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料粉をガスによって分散させたエアロゾルを基板に向けて吹き付けることにより、原料を基板上に堆積させるエアロゾルデポジション法を用いる成膜装置において、
略一定のペースで供給される原料粉をガスによって分散させることによりエアロゾルを生成するエアロゾル生成手段と、
基板を固定する基板ステージと、
前記エアロゾル生成手段によって生成されたエアロゾルを基板に向けて噴射するノズルと、
前記ノズルと前記基板ステージとの内の少なくとも一方を移動させることにより、前記基板にエアロゾルを吹き付けることによって前記基板上に堆積する原料粉に対し、異なる軌道を通って原料粉を重ねて堆積させることにより、原料粉の厚さのばらつきが互いに相殺されるように、前記ノズルと前記基板との相対位置を制御する制御手段と、
を具備する成膜装置。
【請求項2】
前記制御手段が、前記基板上に先に堆積する原料粉の軌道に対し、重ねて堆積される原料粉が略平行且つ一部が重なる軌道を描くように、前記ノズルと前記基板ステージとの内の少なくとも一方を移動させる、請求項1記載の成膜装置。
【請求項3】
前記制御手段が、前記基板上に堆積する原料粉により、複数の回転運動を組み合わせた軌道が描かれるように、前記ノズルと前記基板ステージとの内の少なくとも一方を移動させる、請求項1記載の成膜装置。
【請求項4】
前記制御手段が、前記基板上に堆積する原料粉により、カオス的な軌道が描かれるように、前記ノズルと前記基板ステージとの内の少なくとも一方を移動させる、請求項1記載の成膜装置。
【請求項5】
前記制御手段が、前記エアロゾル生成手段において供給される原料粉の供給ペースを変化させる、請求項1〜4のいずれか1項記載の成膜装置。
【請求項6】
前記エアロゾル生成手段が、
原料粉を収納する粉体収納室であって、開口が形成されている前記粉体収納室と、
円周上に一定の幅及び深さを有する溝が形成されている回転体であって、該溝の一部が前記粉体収納室の開口に対向するように配置されている前記回転体と、
前記溝の内で、前記粉体収納室の開口に対向する第1の領域とは異なる第2の領域に対して原料粉を分散させるガスを供給するガス供給手段と、
を含み、
前記回転体を回転させることにより、前記粉体収納室の開口を通って前記回転体の溝の第1の領域に充填される原料粉が、前記第2の領域に搬送される、請求項1〜5のいずれか1項記載の成膜装置。
【請求項7】
前記制御手段が、前記回転体の回転速度を変化させることにより、前記第2の領域に搬送される原料粉の供給ペースを変化させる、請求項6記載の成膜装置。
【請求項8】
原料粉をガスによって分散させたエアロゾルを基板に向けて吹き付けることにより、原料を基板上に堆積させるエアロゾルデポジション法による成膜方法において、
略一定のペースで供給される原料粉をガスによって分散させることによりエアロゾルを生成する工程(a)と、
工程(a)において生成されたエアロゾルをノズルから基板に向けて噴射することにより、前記基板上に原料粉を堆積させる工程(b)と、
を具備し、
工程(b)が、前記ノズルと前記基板との内の少なくとも一方を移動させることにより、前記基板にエアロゾルを吹き付けることによって前記基板上に堆積する原料粉に対し、異なる軌道を通って原料粉を重ねて堆積させることにより、原料粉の厚さのばらつきが互いに相殺されるように、前記ノズルと前記基板との相対位置を制御しながら行われる、
成膜方法。
【請求項9】
工程(b)が、前記基板上に先に堆積する原料粉の軌道に対し、重ねて堆積させる原料粉が略平行且つ一部が重なる軌道を描くように、前記ノズルと前記基板との内の少なくとも一方を移動させることを含む、請求項8記載の成膜方法。
【請求項10】
工程(b)が、前記基板上に堆積する原料粉により、複数の回転運動を組み合わせた軌道が描かれるように、前記ノズルと前記基板との内の少なくとも一方を移動させることを含む、請求項8記載の成膜方法。
【請求項11】
工程(b)が、前記基板上に堆積する原料粉により、カオス的な軌道が描かれるように、前記ノズルと前記基板との内の少なくとも一方を移動させることを含む、請求項8記載の成膜方法。
【請求項12】
工程(a)が、原料粉の供給ペースを変化させることを含む、請求項8〜11のいずれか1項記載の成膜方法。
【請求項13】
工程(a)が、円周上に一定の幅及び深さを有する溝が形成されている回転体の溝に原料粉を充填し、前記回転体を回転させることにより、前記原料粉が充填された第1の領域から、前記第1の領域とは異なる第2の領域に原料粉を搬送し、前記第2の領域において前記原料粉をガスに分散させることを含む、請求項8〜12のいずれか1項記載の成膜方法。
【請求項14】
工程(a)が、前記回転体の回転速度を変化させることにより、前記第2の領域に搬送される原料粉の供給ペースを変化させることを含む、請求項13記載の成膜方法。
【請求項15】
工程(b)が、厚さが10μm以下となるように前記基板上に原料粉を堆積させることを含む、請求項8〜14のいずれか1項記載の成膜方法。
【請求項16】
請求項8〜15のいずれか1項記載の成膜方法を用いることにより、無機材料によって製造された、厚さが0.1μm以上且つ10μm以下の膜であって、気孔率が20%未満であり、厚さのばらつきが±25%以内である無機材料膜。
【請求項17】
厚さのばらつきが±20%以内である請求項16記載の無機材料膜。
【請求項18】
厚さのばらつきが±10%以内である請求項16記載の無機材料膜。
【請求項19】
気孔率が5%未満である、請求項16〜18のいずれか1項記載の無機材料膜。
【請求項1】
原料粉をガスによって分散させたエアロゾルを基板に向けて吹き付けることにより、原料を基板上に堆積させるエアロゾルデポジション法を用いる成膜装置において、
略一定のペースで供給される原料粉をガスによって分散させることによりエアロゾルを生成するエアロゾル生成手段と、
基板を固定する基板ステージと、
前記エアロゾル生成手段によって生成されたエアロゾルを基板に向けて噴射するノズルと、
前記ノズルと前記基板ステージとの内の少なくとも一方を移動させることにより、前記基板にエアロゾルを吹き付けることによって前記基板上に堆積する原料粉に対し、異なる軌道を通って原料粉を重ねて堆積させることにより、原料粉の厚さのばらつきが互いに相殺されるように、前記ノズルと前記基板との相対位置を制御する制御手段と、
を具備する成膜装置。
【請求項2】
前記制御手段が、前記基板上に先に堆積する原料粉の軌道に対し、重ねて堆積される原料粉が略平行且つ一部が重なる軌道を描くように、前記ノズルと前記基板ステージとの内の少なくとも一方を移動させる、請求項1記載の成膜装置。
【請求項3】
前記制御手段が、前記基板上に堆積する原料粉により、複数の回転運動を組み合わせた軌道が描かれるように、前記ノズルと前記基板ステージとの内の少なくとも一方を移動させる、請求項1記載の成膜装置。
【請求項4】
前記制御手段が、前記基板上に堆積する原料粉により、カオス的な軌道が描かれるように、前記ノズルと前記基板ステージとの内の少なくとも一方を移動させる、請求項1記載の成膜装置。
【請求項5】
前記制御手段が、前記エアロゾル生成手段において供給される原料粉の供給ペースを変化させる、請求項1〜4のいずれか1項記載の成膜装置。
【請求項6】
前記エアロゾル生成手段が、
原料粉を収納する粉体収納室であって、開口が形成されている前記粉体収納室と、
円周上に一定の幅及び深さを有する溝が形成されている回転体であって、該溝の一部が前記粉体収納室の開口に対向するように配置されている前記回転体と、
前記溝の内で、前記粉体収納室の開口に対向する第1の領域とは異なる第2の領域に対して原料粉を分散させるガスを供給するガス供給手段と、
を含み、
前記回転体を回転させることにより、前記粉体収納室の開口を通って前記回転体の溝の第1の領域に充填される原料粉が、前記第2の領域に搬送される、請求項1〜5のいずれか1項記載の成膜装置。
【請求項7】
前記制御手段が、前記回転体の回転速度を変化させることにより、前記第2の領域に搬送される原料粉の供給ペースを変化させる、請求項6記載の成膜装置。
【請求項8】
原料粉をガスによって分散させたエアロゾルを基板に向けて吹き付けることにより、原料を基板上に堆積させるエアロゾルデポジション法による成膜方法において、
略一定のペースで供給される原料粉をガスによって分散させることによりエアロゾルを生成する工程(a)と、
工程(a)において生成されたエアロゾルをノズルから基板に向けて噴射することにより、前記基板上に原料粉を堆積させる工程(b)と、
を具備し、
工程(b)が、前記ノズルと前記基板との内の少なくとも一方を移動させることにより、前記基板にエアロゾルを吹き付けることによって前記基板上に堆積する原料粉に対し、異なる軌道を通って原料粉を重ねて堆積させることにより、原料粉の厚さのばらつきが互いに相殺されるように、前記ノズルと前記基板との相対位置を制御しながら行われる、
成膜方法。
【請求項9】
工程(b)が、前記基板上に先に堆積する原料粉の軌道に対し、重ねて堆積させる原料粉が略平行且つ一部が重なる軌道を描くように、前記ノズルと前記基板との内の少なくとも一方を移動させることを含む、請求項8記載の成膜方法。
【請求項10】
工程(b)が、前記基板上に堆積する原料粉により、複数の回転運動を組み合わせた軌道が描かれるように、前記ノズルと前記基板との内の少なくとも一方を移動させることを含む、請求項8記載の成膜方法。
【請求項11】
工程(b)が、前記基板上に堆積する原料粉により、カオス的な軌道が描かれるように、前記ノズルと前記基板との内の少なくとも一方を移動させることを含む、請求項8記載の成膜方法。
【請求項12】
工程(a)が、原料粉の供給ペースを変化させることを含む、請求項8〜11のいずれか1項記載の成膜方法。
【請求項13】
工程(a)が、円周上に一定の幅及び深さを有する溝が形成されている回転体の溝に原料粉を充填し、前記回転体を回転させることにより、前記原料粉が充填された第1の領域から、前記第1の領域とは異なる第2の領域に原料粉を搬送し、前記第2の領域において前記原料粉をガスに分散させることを含む、請求項8〜12のいずれか1項記載の成膜方法。
【請求項14】
工程(a)が、前記回転体の回転速度を変化させることにより、前記第2の領域に搬送される原料粉の供給ペースを変化させることを含む、請求項13記載の成膜方法。
【請求項15】
工程(b)が、厚さが10μm以下となるように前記基板上に原料粉を堆積させることを含む、請求項8〜14のいずれか1項記載の成膜方法。
【請求項16】
請求項8〜15のいずれか1項記載の成膜方法を用いることにより、無機材料によって製造された、厚さが0.1μm以上且つ10μm以下の膜であって、気孔率が20%未満であり、厚さのばらつきが±25%以内である無機材料膜。
【請求項17】
厚さのばらつきが±20%以内である請求項16記載の無機材料膜。
【請求項18】
厚さのばらつきが±10%以内である請求項16記載の無機材料膜。
【請求項19】
気孔率が5%未満である、請求項16〜18のいずれか1項記載の無機材料膜。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−81830(P2008−81830A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−266468(P2006−266468)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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