説明

成膜装置

【課題】膜形成の条件が限定されない成膜装置を提供する。
【解決手段】成膜装置1は、シート3に膜を形成するroll to roll方式の成膜装置であり、成膜室2内にシート3を搬送する搬送路27が設定され、この搬送路27の側の上方に位置した成膜室2の上部24に、40個のフランジ孔26が形成されている。フランジ孔26には、搬送路27を搬送されるシート3に膜を形成するターゲット部5が装脱可能に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、シートに膜を形成する場合、roll to roll方式などの成膜装置が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に示すroll to roll方式の成膜装置は、シートを引き出す巻出体と、シートを巻き取るための巻取体と、巻出体より引き出したシートに膜を形成するスパッタ部とから構成され、巻出体よりシートを一定量引き出し、引き出したシートの一面に対してスパッタ部により所望の膜を形成し、シートへの膜の形成を終えた後にシートを巻取体に巻き取る。この成膜装置では、シートの一面に一種類一層の膜を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−298571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では、スパッタ部の数が決められており、膜形成の条件が限定される。
【0006】
そこで、上記課題を解決するために、本発明は、膜形成の条件が限定されない成膜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる成膜装置は、シートに膜を形成するroll to roll方式の成膜装置において、成膜室内に前記シートを搬送する搬送路が設定され、この搬送路の側の上方に位置した前記成膜室の上部に、複数個の筐体孔が形成され、前記筐体孔に、前記搬送路を搬送されるシートに膜を形成するターゲット部が装脱可能に設けられたことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、前記搬送路の側の上方に位置した前記成膜室の上部に、前記複数個の筐体孔が形成され、前記筐体孔に、少なくとも前記ターゲット部が装脱可能に設けられているので、ターゲット部の数や種類を限定させることなく、所望の膜形成の条件に対応させることが可能となる。
【0009】
前記構成において、前記ターゲット部が搬送路の両側に配されてもよい。前記構成において、前記ターゲット部は、前記搬送路の両側に沿って複数箇所に亘り配されることが好ましい。
【0010】
この場合、前記ターゲット部が前記搬送路の両側に配されるので、前記複数のターゲット部により、1回の成膜工程でシートの両面に膜を形成することが可能となる。
【0011】
前記構成において、前記ターゲット部には、成膜材料であるターゲット材と、前記ターゲット材に対応した反応性ガスを前記成膜室に注入するガス注入部とが設けられてもよい。
【0012】
この場合、前記ターゲット部には、前記ターゲット材と前記ガス注入部とが設けられているので、前記各ターゲット部では、前記ターゲット材の近傍で前記ガス注入部から前記ガスを注入することが可能となり、その結果、前記ターゲット部毎によってそれぞれ安定した膜をシートに形成することが可能となる。
【0013】
前記構成において、前記成膜室には、ガスを排気する排気部が、少なくともいずれか1つの前記ターゲット部に隣接して設けられてもよい。
【0014】
この場合、前記成膜室には前記排気部が、少なくともいずれか1つの前記ターゲット部に隣接して設けられているので、前記各ターゲット部によって発生するそれぞれのガスを前記排気部により排気することが可能となる。その結果、前記各ターゲット部によって発生するそれぞれのガスが混ざるのを抑制することが可能となり、良質の膜をシートに形成することが可能となる。
【0015】
前記構成において、前記搬送路は、前記シートをその幅方向が鉛直方向に沿う姿勢で搬送するよう設定されてもよい。
【0016】
この場合、前記搬送路は、前記シートをその幅方向が鉛直方向に沿う姿勢で搬送するよう設定されるので、シートに膜を形成する際にゴミなどが発生した場合であっても、ゴミなどがシートや前記ターゲット部に付着することを防止することが可能となる。
【0017】
前記構成において、前記ターゲット部同士を隔てる隔壁部が設けられてもよい。
【0018】
この場合、前記ターゲット部同士を隔てる前記隔壁部が設けられるので、前記ターゲット部同士を互いに干渉させずにシートに膜を形成することが可能となる。
【0019】
前記構成において、前記成膜室内に、前記隔壁部とシートとによって囲まれる個別成膜空間が複数設けられてもよい。
【0020】
この場合、前記成膜室内に前記個別成膜空間が複数設けられるので、1つの前記成膜室内の前記複数の個別成膜空間においてシートへの膜形成を個別に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかる成膜装置によれば、膜形成の条件が限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本実施の形態にかかる成膜装置の構成を示す概略平面図である。
【図2】図2は、本実施の形態にかかる成膜装置の構成を示す側面視概略断面図である。
【図3】図3は、他の実施の形態にかかる成膜装置の構成を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態(以下、本実施の形態という)について図面を参照して説明する。
【0024】
−成膜装置1−
本実施の形態にかかる成膜装置1では、図1,2に示すように、シート3を配する成膜室2に、シート3を巻出や巻入させる第1巻体41および第2巻体42と、これら第1巻体41および第2巻体42を回動させる回転テーブル4と、成膜室2に配したシート3に膜を形成するためのターゲット部5と、が設けられている。なお、本実施の形態で用いるシート3は、巻回することでロール状体(以下、ロール33という)となる。
【0025】
−成膜室2−
成膜室2は、略円筒状に成形された真空チャンバ21から構成され、この成膜室2には、成膜室2内を真空にさせるための真空源(図示省略)が設けられている。
【0026】
成膜室2の下部22には、成膜室2内のガスを排気する排気孔23が設けられている。また、成膜室2の上部24には、ターゲット部5と、シート3を加熱するヒータ部8とを装脱可能とするフランジ孔26(本発明でいう筐体孔)が形成されたフランジ25が設けられている。フランジ孔26は、搬送路27(下記参照)の側の上方に位置した成膜室2の上部24(成膜装置1の筐体上部)に40個形成されている。
【0027】
また、成膜室2内には、15個のローラ43と、1個の第1送りローラ44と、1個の第2送りローラ45とが設けられている。15個のローラ43が、回転自在に成膜室2の外周に沿って等間隔に配され、第1送りローラ44と第2送りローラ45との間でシート3を張った状態でシート3の搬送を行うローラである。第1送りローラ44は、回転自在に設けられ、成膜室2の外周に沿って第1巻体41の近傍に配され、第1巻体41へのシート3の搬送(搬入および搬出)を行うローラである。第2送りローラ45は、回転自在に設けられ、成膜室2の外周に沿って第2巻体42の近傍に配され、第2巻体42へのシート3の搬送(搬入および搬出)を行うローラである。また、図1に示すように、第1送りローラ44および第2送りローラ45の径は、ローラ43の径よりも大きい。
【0028】
この成膜装置1では、ローラ43と第1送りローラ44と第2送りローラ45とにより、成膜室2内の外周に沿ってシート3の搬送路27(以下、搬送路27という)が設定されている。この搬送路27は、シート3をその幅方向が鉛直方向に沿う姿勢で搬送するよう設定される。
【0029】
具体的には、シート3は、第1巻体41から、第1送りローラ44、ローラ43、第2送りローラ45を順に介した搬送路27上に沿って、第2巻体42に搬送される。もしくは、シート3は、第2巻体42から、第2送りローラ45、ローラ43、第1送りローラ44を順に介した搬送路27上に沿って、第1巻体41に搬送される。
【0030】
−回転テーブル4の構成−
回転テーブル4は、図2に示すように、成膜室2の下部22に設けられ、第1巻体41と第2巻体42とを時計回りと反時計回りとに回動駆動させるための駆動源(図示省略)が設けられている。
【0031】
−ターゲット部5−
ターゲット部5は、搬送路27に沿って搬送路27の両側(内側、外側)に沿って複数箇所に亘り配されている。具体的には、搬送路27の両側にそれぞれ12個ずつ合計24個のターゲット部5が設けられている。
【0032】
搬送路27の内側では、近接する2個のターゲット部5を1セットとして、6セットのターゲットセット6(61,63,65,67,69,611)が構成され、同様に、搬送路27の外側では、近接する2個のターゲット部5を1セットとして、6セットのターゲットセット6(62,64,66,68,610,612)が構成される。
【0033】
また、図1に示すように、搬送路27を介してそれぞれ対向するターゲットセット61,63,65,67,69,611と、ターゲットセット62,64,66,68,610,612とにより、6グループのターゲットグループ7(71〜76)が構成される。
【0034】
ターゲット部5は、図1に示すように、フランジ25のフランジ孔26に装脱可能な外形となっており、成膜室2に装脱可能に設けられている。ターゲット部5の一端部51は、フランジ孔26の上端にひっかかりフランジ孔26を塞ぐ天板となっている。また、ターゲット部5には、成膜材料であるターゲット材52と、ターゲット材52に対応した反応性ガスを成膜室2(具体的にはターゲット材52近傍領域)に注入可能なガス注入部(図示省略)が設けられている。ターゲット材52の材料は、シート3への成膜物に応じて任意に設定可能である。
【0035】
−ヒータ部8−
各ターゲットセット61〜612に隣接してヒータ部8が設けられている。ヒータ部8により、シート3の脱ガスを行なって、シート3に膜を形成し易くする。
【0036】
ヒータ部8は、ターゲット部5と同様にフランジ25のフランジ孔26に装脱可能な外形からなり、成膜室2に装脱可能に設けられている。ヒータ部8の一端部81は、フランジ孔26の上端にひっかかりフランジ孔26を塞ぐ天板となっている。ヒータ部8は、搬送路27に沿って搬送路27の両側(内側、外側)に沿って複数箇所に亘り配されている。具体的には、搬送路27の両側にそれぞれ8個ずつ合計16個のヒータ部5が設けられている。
【0037】
−シート3への成膜−
上記の構成からなる成膜装置1の第1巻体41と第2巻体42との何れか一方に、ロール33を配する。本実施の形態では、第1巻体41にロール33を配した場合を例に、シート3への成膜の説明を行う。
【0038】
未成膜状態のロール33を第1巻体41に配し、それぞれ任意の材料からなる各ターゲット材52を用いた各ターゲット部5によりフランジ25のフランジ孔26を塞ぎ、成膜室2を真空状態にする。この際、各ヒータ部8により成膜室2内の各ターゲット部5およびその近傍領域は加熱されてガス抜きが行なわれ、排気孔23から成膜室2内が真空引きされる。
【0039】
ロール33を配した第1巻体41を、回転テーブル4の回動駆動(一定の回転速度)により、反時計回りに回動させる。この第1巻体41の回動にともなってロール33からシート3を第1送りローラ44に引き出す(搬出する)。この時、回転テーブル4の回動駆動(一定の回転速度)により、第2巻体42を、反時計回りに回動させる。
【0040】
第1送りローラ44に引き出したシート3を、図1に示すように、ローラ43によってシート3を張った状態で、搬送路27上を時計回り方向に搬送させて第2送りローラ45に送り、第2送りローラ45から第2巻体42に搬入させる(巻き取る)。
【0041】
この第1巻体41から第2巻体42へのシート3の搬送中において、シート3の一面31に対して、搬送方向の内側に位置するターゲットセット61により第1膜を形成する。また、シート3の他面32に対して、搬送方向の外側に位置するターゲットセット62により第1膜を形成し、シート3の両面31,32に1層の膜を形成する(以上の工程を、第2膜形成工程という)。
【0042】
第1巻体41から第2巻体42へのシート3の搬送を終えると、回転テーブル4による第1巻体41および第2巻体42の回動駆動を止める。その後、回転テーブル4を逆回転に回動駆動(一定の回転速度)させ、この回動駆動により、第2巻体42を時計回りに回動させる。この第2巻体42の回動にともなってロール33からシート3を第2送りローラ45に引き出す(搬出する)。この時、回転テーブル4の回動駆動(一定の回転速度)により、第1巻体41を、時計回りに回動させる。
【0043】
第2送りローラ45に引き出したシート3を、図1に示すように、ローラ43によってシート3を張った状態で、搬送路27上を反時計回り方向に搬送させて第1送りローラ44に送り、第1送りローラ44から第1巻体42に搬入する(巻き取る)。
【0044】
この第2巻体41から第1巻体42へのシート3の搬送中において、シート3の一面31に対して、搬送方向の内側に位置するターゲットセット63により第2膜を形成する。また、シート3の他面32に対して、搬送方向の外側に位置するターゲットセット64により第2膜を形成し、シート3の両面31,32に2層の膜を形成する(以上の工程を、第2膜形成工程という)。
【0045】
第2巻体42から第1巻体41へのシート3の搬送を終えると、回転テーブル4による第1巻体41および第2巻体42の回動駆動を止める。その後、回転テーブル4を逆回転に回動駆動(一定の回転速度)させ、この回動駆動により、第1巻体41を反時計回りに回動させる。この第1巻体41の回動にともなってロール33からシート3を第1送りローラ44に引き出す(搬出する)。この時、回転テーブル4の回動駆動(一定の回転速度)により、第2巻体42を、時計回りに回動させる。以下、第1膜形成工程と同様の工程を行って、ターゲットセット65によりシート3の一面31に第3膜を形成し、ターゲットセット66によりシート3の他面32に第3膜を形成し、シート3の両面31,32に第3膜を形成する(以上の工程を、第3膜形成工程という)。
【0046】
第3膜形成工程の後に、第2膜形成工程と同様の工程を行って、ターゲットセット67によりシート3の一面31に第4膜を形成し、ターゲットセット68によりシート3の他面32に第4膜を形成し、シート3の両面31,32に第4膜を形成する(以上の工程を、第4膜形成工程という)。
【0047】
第4膜形成工程の後に、第1膜形成工程と同様の工程を行って、ターゲットセット69によりシート3の一面31に第5膜を形成し、ターゲットセット610によりシート3の他面32に第5膜を形成し、シート3の両面31,32に第5膜を形成する(以上の工程を、第5膜形成工程という)。
【0048】
第5膜形成工程の後に、第2膜形成工程と同様の工程を行って、ターゲットセット611によりシート3の一面31に第6膜を形成し、ターゲットセット612によりシート3の他面32に第6膜を形成し、シート3の両面31,32に第6膜を形成し(以上の工程を、第6膜形成工程という)、その後、第1巻体41にシート3を巻き取ってシート3への成膜を終える。
【0049】
−成膜装置1による作用効果−
本実施の形態にかかる成膜装置1によれば、成膜室2内に搬送路27が設定され、この搬送路27の側の上方に位置した成膜室2の上部24に、40個のフランジ孔26が形成され、フランジ孔26に、少なくともターゲット部5が装脱可能に設けられているので、ターゲット部5の数や種類を限定させることなく、所望の膜形成の条件に対応させることができる。
【0050】
また、ターゲット部5が搬送路27の両側に配されるので、ターゲット部5により、1回の成膜工程によりシート3の両面31,32に膜を形成することができる。特に、ターゲット部5は、搬送路27の両側に沿って複数箇所に亘り配されることが好適であり、本実施の形態にかかる成膜装置1では、24個のターゲット部5(12個のターゲットセット6)が搬送路27の両側に沿って配されている。
【0051】
また、成膜室2にはヒータ部8が少なくともいずれか1つのターゲット部5に隣接して設けられているので、各ターゲット部5によって発生するそれぞれのガスをヒータ部8により排気することができる。その結果、各ターゲット部5によって発生するそれぞれのガスが混ざるのを抑制することができ、良質の膜をシート3に形成することができる。
【0052】
また、ターゲット部5には、ターゲット材52とガス注入部とが設けられるので、各ターゲット部5では、ターゲット材52の近傍でガス注入部からガスを注入することができ、その結果、ターゲット部5毎によってそれぞれ安定した膜をシート3に形成することができる。
【0053】
また、搬送路27は、シート3をその幅方向が鉛直方向に沿う姿勢で搬送するよう設定されるので、シート3に膜を形成する際にゴミなどが発生した場合であっても、ゴミなどがシート3やターゲット部5(具体的にはターゲット材52)に付着することを防止することができる。
【0054】
−変形例−
なお、本実施の形態では、シート3に6層の膜(第1膜から第6膜)を形成しているが、シート3へ形成する膜数は、これに限定されるものではなく、任意の膜数でよい。例えば、ターゲットセット61〜610を用いて、シート3上から順にSiO2膜、ITO膜、MO合金膜、Al合金膜、Mo合金膜の5層の膜を形成してもよい。この場合、シート3の厚み50μm〜180μmに対して、SiO2膜の厚みを20nm、ITO膜の厚みを20nm、MO合金膜の厚みを50nm、Al合金膜の厚みを200nm、Mo合金膜の厚みを50nmとすることで、0.2Ω/m2以下の低抵抗値の配線パターンをシート3に形成することができる。また、この実施の形態では、配線パターンとして、MO合金膜、Al合金膜、Mo合金膜の3層からなる金属膜を用いているが、これに限定されるものではなく、1層からなる金属膜(例えばAg合金膜)を用いてもよく、金属膜の構成は任意に設定可能である。
【0055】
また、本実施の形態では、40個のフランジ孔26に、24個のターゲット部5と16個のヒータ部8を装脱可能に設けているが、ターゲット部5とヒータ部8との数はこれに限定されるものではない。例えば、40個のフランジ孔26に、30個のターゲット部5と10個のヒータ部8を装脱可能に設けてもよい。また、本実施の形態では、フランジ孔26を40個形成しているが、フランジ孔26の数はこれに限定されるものではなく、任意に設定可能である。このように、フランジ孔26の数や、フランジ孔26に装脱可能に設けるターゲット部5およびヒータ部8の数および配置は、所望の膜形成の条件に対応させて設定できる。
【0056】
また、本実施の形態では、2個のターゲット部5により1組のターゲットセット6(61〜612)が構成され、搬送路27を挟んで対向するターゲットセット6(61〜612)により1組のターゲットグループ7(71〜76)が構成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、搬送路27を挟んで対向する2個のターゲット部5により1組のターゲットグループが構成されてもよい。
【0057】
また、本実施の形態では、搬送路27の内側のターゲット部5と、搬送路27の外側のターゲット部5とが、対向して配されているが、これは好適な例であり、これに限定されるものではなく、搬送路27の内側のターゲット部5と搬送路27の外側のターゲット部5とが対向して形成されていなくてもよい。
【0058】
また、本実施の形態では、搬送路27が環状に形成されているが、これに限定されるものではなく、直線状の搬送路であってもよく、成膜室2に形成されていれば任意に搬送路を設定できる。
【0059】
また、本実施の形態では、2個のターゲット部5により1組のターゲットセット6が構成されているが、ターゲット部5の数はこれに限定されるものではなく、任意に設定可能である。
【0060】
また、本実施の形態では、24個のターゲット部5を用いているが、これに限定されるものではなく、任意の個数のターゲット部5を用いてもよい。
【0061】
また、本実施の形態では、ローラ43の数が15個となっているが、これに限定されるものではなく、任意に設定可能である。
【0062】
また、本実施の形態では、第1送りローラ44および第2送りローラ45の径は、ローラ43の径よりも大きいが、ローラ43の径は、これに限定されるものではなく、任意に設定可能である。
【0063】
また、本実施の形態では、フランジ孔26に装脱可能なものとして、ターゲット部5の他に、シート3の脱ガスを目的としたヒータ部8を用いているが、これに限定されるものではなく、成膜室2内のガスを排気する排気孔を用いてもよく、または、ヒータ部8と排気孔とを併用してもよい。
【0064】
また、本実施の形態では、ターゲットセット61〜612毎にそれぞれ異なる材料を用いているが、これに限定されるものではなく、同一の材料が含まれてもよい。
【0065】
また、本実施の形態では、一定の回転速度で第1巻体41と第2巻体42とを回動駆動させているが、これに限定されるものではなく、第1巻体41と第2巻体42との回転速度を、各ターゲット部5における成膜条件により可変させてもよい。このように第1巻体41と第2巻体42との回転速度を、各ターゲット部5における成膜条件により可変させることで、シート3の両面31,32に積層する各膜の形成自由度を高めることができる。
【0066】
また、本実施の形態にかかる成膜装置1では、シート3を第1巻体41と第2巻体42との間で1回搬送する間、シート3の両面31,32に1層の膜を形成しているが、これに限定されるものではなく、各ターゲットセット61〜612毎に異なる材料のターゲット材52を用いることで、シート3を第1巻体41と第2巻体42との間で1回搬送する間、シート3の両面31,32に複数層の膜を形成することもできる。
【0067】
−他の実施の形態−
次に、本実施の形態にかかる成膜装置1と異なる他の実施の形態(以下、他の実施の形態という)にかかる成膜装置1を図3を用いて説明する。他の実施の形態にかかる成膜装置1は、上記した本実施の形態に係る成膜装置1に対して、隔壁部91(図3参照)を追加したものであり、他の構成は同様の構成となっている。そのため、同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0068】
他の実施の形態では、図3に示すように、成膜室2の各ターゲットセット61〜612毎に隔壁部91が設けられ、隔壁部91によってターゲットセット61〜612同士を隔てる。
【0069】
隔壁部91は、壁面部92と、壁面部92の両端からそれぞれ直行する方向に延出した延出部93とから構成されている。延出部93の先端は、搬送路27上のシート3に近接した位置まで延出する。
【0070】
他の実施の形態にかかる成膜装置1では、図3に示すように、隔壁部91とシート3の両面31,32によって囲まれる個別成膜空間94がそれぞれ形成され、個別成膜空間94内に各ターゲットセット61〜612が個別に配されている。
【0071】
他の実施の形態にかかる成膜装置1によれば、ターゲットセット61〜612同士を隔てる隔壁部91が12個設けられているので、ターゲットセット61〜612同士を互いに干渉させずにシート3に膜を形成することができる。なお、他の実施の形態にかかる成膜装置1によれば、隔壁部91は、成膜室2の各ターゲットセット61〜612同士を隔てるが、これに限定されるものではなく、ターゲット部5同士を隔てるものであってもよい。また、隔壁部91の数は12個に限定されるものではなく、任意に設定可能である。
【0072】
また、成膜室2に、隔壁部91とシート3(具体的にはシート3の両面31,32)によって囲まれる個別成膜空間94がそれぞれ形成されるので、1つの成膜室2内の複数の個別成膜空間94(他の実施の形態では、12個の個別成膜空間94)においてシート3への膜形成を個別に行うことができる。
【0073】
また、他の実施の形態にかかる成膜装置1では、上記の本実施の形態にかかる成膜装置1と同一の構成を有するので、本実施の形態にかかる成膜装置1の同一の構成による作用効果及び変形例を有する。
【0074】
他の実施の形態は、特に、各ターゲットセット61〜612毎に異なる材料のターゲット材52を用いて、シート3を第1巻体41と第2巻体42との間で1回搬送する間、シート3の両面31,32に複数層の膜を形成するのに好適な形態である。
【0075】
なお、本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、シートに対して膜を形成する成膜装置に適用できる。
【符号の説明】
【0077】
1 成膜装置
2 成膜室
21 真空チャンバ
22 成膜室の下部
23 排気孔
24 成膜室の上部
25 フランジ
26 フランジ孔
27 搬送路
3 シート
31 一面
32 他面
33 ロール
4 回転テーブル
41 第1巻体
42 第2巻体
43 ローラ
44 第1送りローラ
45 第2送りローラ
5 ターゲット部
51 ターゲット部の一端部
52 ターゲット材
6(61〜612)ターゲットセット
7(71〜76)ターゲットグループ
8 ヒータ部
81 ヒータ部の一端部
91 隔壁部
92 壁面部
93 延出部
94 個別成膜空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに膜を形成するroll to roll方式の成膜装置において、
成膜室内に前記シートを搬送する搬送路が設定され、この搬送路の側の上方に位置した前記成膜室の上部に、複数個の筐体孔が形成され、
前記筐体孔に、前記搬送路を搬送されるシートに膜を形成するターゲット部が装脱可能に設けられた成膜装置。
【請求項2】
請求項1に記載の成膜装置において、
前記ターゲット部が搬送路の両側に配された成膜装置。
【請求項3】
請求項2に記載の成膜装置において、
前記ターゲット部は、前記搬送路の両側に沿って複数箇所に亘り配された成膜装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の成膜装置において、
前記ターゲット部には、成膜材料であるターゲット材と、前記ターゲット材に対応した反応性ガスを前記成膜室に注入するガス注入部と、が設けられた成膜装置。
【請求項5】
請求項4に記載の成膜装置において、
前記成膜室には、シートを加熱するヒータ部が、少なくともいずれか1つの前記ターゲット部に隣接して設けられた成膜装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちいずれか1つに記載の成膜装置において、
前記搬送路は、前記シートをその幅方向が鉛直方向に沿う姿勢で搬送するよう設定された成膜装置。
【請求項7】
請求項2乃至6のうちいずれか1つに記載の成膜装置において、
前記ターゲット部同士を隔てる隔壁部が設けられた成膜装置。
【請求項8】
請求項7に記載の成膜装置において、
前記成膜室内に、前記隔壁部とシートとによって囲まれる個別成膜空間が複数設けられた成膜装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−184733(P2011−184733A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50960(P2010−50960)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【特許番号】特許第4574739号(P4574739)
【特許公報発行日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(391006429)三容真空工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】