所定量の液体を小出しにするための容器
本発明は、所定量の液体を小出しするための、こぼれるのを防止した容器に関し、この容器は、垂直軸線の周りに中空体を形成する、開口する両端を備えた本体を有し、この本体は、閉塞された第1の端部および反対側の開口する第2の端部を有する液体貯留室と、開口する第1の端部および反対側の閉塞された第2の端部を有する液体排出室と、管理された量の液体が液体貯留室から液体排出室へ流れるのを選択的に許容するように構成された、液体貯留室と液体排出室との間の1個または複数個の孔と、液体貯留室および液体排出室に対して液体を遣り取りするキャビティを備えた取り外し可能な底蓋とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体すなわち飲料のための容器の分野に関する。特に本発明は、容器から排出させる以前の飲料の温度を保つ容器を含む、こぼれるのを防止した、少しずつ飲めるように管理された量の液体を小分けする容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
こぼれるのを防止した飲料容器は、衰弱した患者を抱える病院または療養施設、幼児のトレーニング・カップ、ならびに航空機、ボート、船舶、列車および自動車等の移動する乗物のような、飲むときにこぼれる可能性が高い用途において高く望まれている。
【0003】
熱い飲料に関しては、容器内で小分けすることが望ましい。コーヒー等の熱い飲料は、ユーザーの口および唇をやけどさせるか傷付ける可能性がある80℃を超える温度で飲まれる。この問題の解決は、飲料を攪拌するか、または放熱によって飲料の温度が快適な温度になるまで待つかである。さらに、氷または、水またはミルク等の、より冷たい液体を加えて飲料の温度を下げることもできる。残念ながら、飲料を快適な温度にまで冷やすと、飲料の温度は急速に下がって、熱い飲料が理想的な飲み頃の温度よりも低い温度になってしまう。
【0004】
同様の状況が、歯に沁みたり、消化管の一部を冷して一次的な痙攣または痛みを生じさせたりする冷たい飲料にも存在する。
【0005】
量を小分けする容器はまた、嚥下障害と呼ばれる、嚥下するのが困難なユーザーにとっても望ましい。現在100万人もの人が嚥下障害と診断されている。嚥下障害患者は吸引等の医療上の厄介な問題に遭遇する。嚥下障害患者の気管に液体が入った場合には、咳をしてもそれを取り除くことが不可能な場合がある。気管内につかえた液体は肺に入り、有害なバクテリアが成長する機会が生じ、深刻な感染症(吸引性肺炎)を惹き起こす可能性がある。したがって、嚥下障害患者は飲食物が制限され、肺に吸い込むのを防止するために、飲料を少しずつ啜ることが要求される。
【0006】
現在市販されている幼児のトレーニング・カップは、このようなカップにバルブが使用されているために、幼児が飲料を啜る練習をするのに適当でないことが指摘されている。上記バルブは、液体がこぼれるのは防げても、幼児が飲料を啜る代わりに吸い込んでしまって、トレーニング・カップの目的を達成しない。それに加えて、多くのカップは、硬い吸い口を備えていて、幼児が持ち歩く際に、幼児の口や歯を傷付ける危険性を増大させる。
【0007】
熱い飲料のための旅行用容器またはマグが知られている。特許文献1には、バルブで作動される温度を適温にする室を備えた飲料容器が開示されている。断熱および温度調節容器を備えた卓上マグの例が特許文献2に開示され、流動制限カップは特許文献3に開示されている。
【0008】
公知の旅行用マグは、一般にバルブおよび/またはポンプ要素を備えた複雑な構造を有しており、かつ啜ったり、量を小分けにしたりする機能は備えていない。
【0009】
公知のこぼれ/跳ね返り防止用の蓋が特許文献4〜特許文献13に記載されている。このようなカップにおいては、蓋は通常、ユーザーが蓋または流動制御手段を全部外さずにカップから飲むことができるいくつかの形式のバルブを備えている。転倒防止手段も知られており、例えば特許文献14および特許文献15を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】カナダ国特許出願公開第2,386,384号明細書
【特許文献2】米国特許第5,823,380号明細書
【特許文献3】カナダ国特許出願公開第2,428,592号明細書
【特許文献4】カナダ国特許出願公開第2,219,618号明細書
【特許文献5】米国特許第5,102,000号明細書
【特許文献6】カナダ国特許出願公開第2,311,058号明細書
【特許文献7】米国特許第6,076,699号明細書
【特許文献8】カナダ国特許出願公開第2,425,200号明細書
【特許文献9】米国特許第5,570,797号明細書
【特許文献10】米国特許第5,150,816号明細書
【特許文献11】米国特許第5,249,703号明細書
【特許文献12】米国特許第6,568,557号明細書
【特許文献13】米国特許第4,438,865号明細書
【特許文献14】米国特許第5,454,470号明細書
【特許文献15】米国特許第6,520,369号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明のこぼれ防止容器は、液体を僅かな量(啜るだけの量)に小分けすることができる。熱い飲料の場合、飲み頃の温度に急速に冷めるように、熱い飲料全体から少量の部分が小分けされる。この容器は熱い飲料の大部分を熱い状態に保ち、かつこぼれるのを防止する。本発明の容器は、こぼれるのを防止しながら、バルブ、ポンプまたはスプリングを備えておらず、その結果、使用の容易さと製造コストの安さとを兼ね備えている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、同様の機能を有する従来の容器に比較して、比較的単純かつ安価な構成を有する、所定量の液体を小出しするためのこぼれを防止した容器を提供するものである。
【0013】
本発明は、所定量の液体を小出しための容器を提供するもので、この容器は、開口両端を備えて垂直の中心軸線の周りにほぼ中空体を形成する本体を備え、この本体は、閉塞された第1端および反対側の開口する第2端を有する液体貯留室と、開口する第1端および反対側の閉塞された第2端を有する液体排出室と、上記液体貯留室から上記液体排出室への管理された量の液体の小分けを選択的に許容するように構成された、上記液体貯留室と上記液体排出室との間の1個または複数個の孔と、上記液体貯留室および上記液体排出室と液体を遣り取りするキャビティを有する取り外し可能な底蓋とを備えている。上記液体排出室は上記液体貯留室の内部にあってもよい。
【0014】
一つの態様において、上記液体排出室は、所定の量の液体を容れる寸法を有する液体小分け室を形成する第1カップを備えた切頭円錐形を有し、上記液体小分け室は上記液体貯留室の下方に延出している。上記液体小分け室はその端壁上に第1の孔を有し、かつその側壁上に第2の孔を有する。上記底蓋のキャビティは上記第1の孔を通じて液体を流し、上記液体貯留室には上記第2の孔を通じて空気が流れる。円形またはスリット状である上記第1および第2の孔は、使用に際して液体の小分け量を決定する関係に隔離されている。
【0015】
別の態様においては、上記第1の孔が円形でかつ上記第2の孔が上記第1カップの垂直な中心軸線に対し平行に配置されたスリットである。
【0016】
さらなる態様においては、上記第1の孔が円形でかつ上記第2の孔が上記第1カップの垂直な中心軸線に対して傾斜したスリットである。
【0017】
さらなる態様においては、第2カップが上記液体小分け室の端部に回転可能に取り付けられている。この第2カップは、その端壁に上記小分け室の第1の孔と心合する第1の円孔を有し、かつ第2カップの垂直な中心軸線に対して傾斜したスリット状の第2の孔を有する。この第2の孔は、上記小分け室の第2の孔に対して傾斜しており、上記第2カップの回動により、双方のスリット状の孔が、一般に5.0ミリリットルから50ミリリットルまでの所定の液体小分け量を設定するための移動可能なオリフィスを画成する。
【0018】
さらなる態様においては、容器が、外側壁と、この外側壁の内部に配置された内側壁とを有する本体を備え、上記内側壁は上記本体の頂縁領域において上記外側壁に隣接しかつ垂直に対し反対方向に向かって傾斜して、上記本体の底部領域において上記外側壁の下方に延出する閉塞された端部カップを形成し、その場合に、上記外側壁および上記内側壁によって、上記本体の頂部に開口端を備えた内側の室と、反対側に開口端を備えた外側の室とが画成され、上記カップは1個または複数個の孔を有し、上記内側の室および外側の室と液体を遣り取りするキャビティを有する取り外し可能な底蓋を有し、上記孔は、上記外側の室から上記内側の室への液体の流動を選択的に許容する。
【0019】
さらなる態様において、上記容器は、開口両端を備えて垂直な中心線の周りにほぼ中空体を形成する本体を備え、この本体は、閉塞された第1の端部および反対側の開口する第2の端部を有する液体貯留室と、開口する第1の端部および反対側の閉塞された第2の端部を有する液体排出室と、上記液体貯留室から上記液体排出室への管理された量の液体の小分けを選択的に許容するように構成された、上記液体貯留室と上記液体排出室との間の1個または複数個の孔と、上記液体貯留室および上記液体排出室と液体を遣り取りするキャビティを有する取り外し可能な底蓋とを備えている。上記液体貯留室は上記液体排出室の内部にある。
【0020】
作動方法および構造の関連要素の機能のみでなく、本発明のその他の効果、機能および特徴、ならびに部品の組合せ、および製作の経済性は、下記に簡単に説明されている添付図面を参照した後述の詳細な説明および請求項の検討により明らかになるであろう。
【0021】
本発明は、添付図面と関連付けられた説明を参照することにより、さらに理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】直立位置すなわち液体小分け位置にある本発明の一実施の形態による容器の斜視図である。
【図2】直立位置にある図1の容器の図1のA−A線に沿った断面図である。
【図3】倒立位置すなわち液体充填位置にある図1の容器の分解正面図である。
【図4】倒立位置にある代替的実施の形態による容器の第2のカップを示す分解斜視図である。
【図5】第2のカップが一調整位置にある図4の容器の一部分解斜視図である。
【図6】第2のカップが別の調整位置にある図4の容器の一部分解斜視図である。
【図7】直立位置すなわち液体小分け位置にある本発明の別の実施の形態による容器の斜視図である。
【図8】倒立位置すなわち液体充填位置にある図7の容器の一部分解斜視図である。
【図9】図7に示された容器の代替的実施の形態の断面図である。
【図10】図9のA部分の拡大詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
下記の詳細説明およびそこに記載された実施の形態は、本発明の原理および態様の特定の実施の形態の例示説明のために提供される。これらの実施例は、本発明の原理の説明のために提供されるもので、本発明を限定するものではない。
【0024】
図1、図2および図3を参照すると、第1の直立位置で示されている容器10は、開口する頂端30および開口する底端40を備えて垂直軸線の周りにほぼ中空体を形成する本体20と、液体を保持するためのキャビティ60を画成しかつ本体20と密封状態に係合するように構成された底蓋50とを備えている。図示のように、底蓋50はほぼ平坦な底板70を備えている。随意的に、シール55を用いてもよい。
【0025】
上記本体20は、外側壁80および内側壁90を備えている。この内側壁90は、切頭円錐形を有するものとして示されているが、ほぼ円筒形であっても、実質的に円錐形であってもよい。上記内側壁90は、外側壁80内に配置され、かつ本体20の外頂縁部100において外側壁80に隣接し、かつ他端において、閉塞された底端壁110を有する短いほぼ円筒状のカップ部すなわち小分け室120を形成するように、垂直に対して反対方向に向かって傾斜している。カップ部120は、閉塞された底端壁110に上記キャビティ60から液体を供給される第1の孔130を有し、かつカップ部の根元部150に近接する側壁120に第2の孔140を有する。孔130および140は丸孔で示されているが、スリットであってもよい。何れの構成においても、上記孔は、容器に容れられる液体の表面張力によって寸法が決められる。したがって、外側壁80および内側壁90は、内側の中空空間すなわち室160と、外側の中空空間すなわち室170とを画成している。内側の室160は、本体20の頂端において開口し、かつ反対側の端部において閉塞されている。外側の室170は、本体20の底端において開口し、かつ本体20の外頂縁部100において閉塞されている。外側の室170には孔140を通じて空気が供給される。外側壁80の外周面には、開放端40に接して一連の雄ねじ溝180が形成されている。雄ねじ溝180は、底蓋50の内周面に形成された雌ねじ溝190と螺合可能である。本体20への底蓋50の係合は、図示のような螺合によっても、摩擦嵌合(不図示)またはその他の密封係合によってもよい。
【0026】
1回の液体小分け量は、カップ部120の容積と、カップ部120の側壁上の第2の孔140の相対的位置によって予め決定される。もし孔140がカップ部の底端110に近接していれば、それだけ液体小分け量は少ない。嚥下障害者向けには、小分け量は一般に5〜20ミリリットルである。旅行用容器向きには、小分け量は一般に20〜50ミリリットルである。
【0027】
使用時には、蓋50が本体20から外され、かつ本体20は第1の位置から第2の、すなわち逆さにされた位置まで180度回転され、これにより外側の室170の開口端40が本体20の開口端になる。液体すなわち流体は、開口端40の縁以下の所望のレベルまで外側の室170内に注ぎ込まれ、かつ蓋50が再び取り付けられる。
【0028】
次に容器10は180度回転されて第1の位置に戻る。容器10が回転するにつれて、液体はキャビティ60を満たし、内側の室160からの空気が孔140を通って外側の室170内に入る。外側の室170に入った空気は、外側の室170内の液体を、カップ部120内の液体のレベルが孔140を覆うまで、孔130を通ってカップ部120内に流入させる。孔140がカップ部120内の液体によって覆われると、それ以上の空気は外側の室170内に入らず、かつそれ以上の液体はカップ部120内に流入しない。カップ部120内の液体の量は、ユーザーが容器を傾けることによって第1の開口端30から飲むことができる予め決定された管理された液体の小分け量を表す。
【0029】
容器を傾けて開口端30から、または容器を傾けることなくストローを用いて、液体を飲むことによって、内側の室160から液体を排除した後、容器10を第1の位置に戻すことによって、1回目の小分け量に等しい新たな液体の管理された小分け量が得られる。このような処理は、ユーザーによるさらなる消費に関してもう1回の液体の等しい小分け量を得る結果となる。これらの処理ステップおよび管理された液体の小分けは、外側の室170内に液体が残らなくなるまで反復可能である。
【0030】
図4、図5および図6は、液体の小分け量がユーザーによって調節可能な別の実施の形態を示す。倒立位置で示されている容器10は、この容器の頂端の開口端30(不図示)と、容器の底端の開口端40とを備えて垂直軸線の周りに中空体を形成する本体20を有する。底蓋50は本体20に対し密封状態で係合するように構成されている。図示のように、底蓋50はほぼ平坦な底板70を備えている。底蓋50の液体キャビティ60は図示されていない。外側壁80の開放端に隣接する外面領域には、一連の雄ねじ溝180が形成されている。雄ねじ溝180は、底蓋50の内側に形成された一連の雌ねじ溝190に螺合可能である。
【0031】
本実施の形態において、容器の本体20は、図1、図2および図3に示された実施の形態と同様の態様で画成された内側の室160(不図示)および外側の室170を備えている。内側壁90(不図示)は、閉塞された底端壁110を備えて外側壁80を越えて軸線方向に延出する短いほぼ円筒形のカップ部120すなわち閉塞された室を備えている。カップ部120は、その底端壁110に円孔130を備え、かつ側壁120上に傾斜したスリット状の孔200を備えている。カップ部120上に被せられて回動可能に嵌合する寸法を有する第2の円筒形カップ210は、その端壁230上に円孔220を備え、かつ円筒形カップ210の側壁上に傾斜したスリット状の孔240を備えている。たスリット状の孔240の傾斜角度は、スリット状の孔200に対してほぼ直角である。
【0032】
底蓋50が取り外され、かつ第2のカップ210がカップ部120上に嵌合されると、第2のカップ210の円孔220は、キャビティ60から液体が内側の室160へ流れるように、カップ部120の円孔130と位置が一致する。第2のカップ210がその軸線の周りで回動されるのにつれて、スリット状の孔240がスリット状の孔200と交差して、第2のカップ210の底端壁230から距離「h」を有する交差孔250を画成する。これによって、内側の室160から交差孔250を通じて外側の室170へ空気が流れる。
【0033】
第2のカップ210の軸線周りの回動を継続すると、第2のカップ210の底端壁230およびカップ部120の根元部150に対する交差孔250の位置が変化し、すなわち距離「h」が増減する。より小さい「h」の値は、より少ない液体の小分け量に対応し、かつ、より大きい「h」の値は、より多い液体の小分け量に対応する。第2のカップ210の側壁は、スリット状の孔240の外縁に沿って随意的に盛り上がっていてもよい。
【0034】
図7、図8、図9および図10は、液体貯留室(内側の室160)が液体排出室(外側の室170)の内側にある、さらに別の実施の形態を示す。本体20は、斜めになった接頭円錐形を有し、かつ外側壁80と、間に真空空間95を介在させた壁90aおよび90bから構成された真空壁構造(魔法瓶構造)の内側壁90とを有する。この真空壁構造は、液体貯留室(内側の室160)内の液体を断熱する。外側壁80は、一側が実質的に垂直で、他側が垂直に対して外方へ傾斜している、内側壁90は、本体20の底縁領域105において外側壁80に隣接し、かつ他端は、端壁115aおよび115bからなる閉塞された頂端を有するほぼ円筒状の液体貯留室160を形成している。この液体貯留室(内側の室160)は、開放端45の近傍における室160の側壁上に孔140を有する。孔140は図示のようにスリットであっても円形であってもよい。何れの構成においても、孔は、容器に容れられる液体の表面張力に応じて寸法が定められる。
【0035】
外側壁80および内側壁90は、これにより内側の中空空間すなわち室160および外側の中空空間すなわち室170を画成している。外側の室170は、本体20の頂部における開口端30と、反対側の閉塞端105とを有する。内側の室160は、本体20の底端における開口端45を有しかつ頂壁115において閉塞されている。外側の室170は、孔140を通じて液体および空気を遣り取りする。外側壁80には底縁部115に接して一連の雄ねじ溝180が形成されている。雄ネジ溝180は、底蓋50の内周面に形成された一連の雌ねじ溝190に螺合可能である。本体20に対する底蓋50の結合は、図示の螺合により、摩擦係合(不図示)により、またはその他の公知の封着態様によって行なわれる。
【0036】
使用時には、蓋50が本体20から外され、かつ本体20は第1の位置から第2の、すなわち逆さにされた位置まで180度回転され、これにより内側の室160の開口端45が本体20の開口頂端になる。液体すなわち流体は、孔140の下縁よりも下方の所望のレベルまで内側の室160内に注ぎ込まれ、かつ蓋50が再び取り付けられる。
【0037】
次に容器10は180度回転されて第1の位置に戻る。容器10が回転するにつれて、液体はキャビティ60を満たし、外側の室170からの空気が孔140を通って内側の室160内に入る。内側の室160に入った空気は、内側の室160内の液体を、液体のレベルが孔140を覆うまで外側の室170内に流入させる。孔140が外側の室170内の液体によって覆われると、それ以上の空気が内側の室160内に入らず、それ以上の液体が外側の室170内に流入しない。外側の室170内の液体の量は、ユーザーが容器を傾けることによって第1の開口端30から飲むことができる予め決定された管理された液体の小分け量を表す。
【0038】
容器を傾けて開口端30から、または容器を傾けるこまとなくストローを用いて、液体を飲むことによって外側の室170から液体を排除することによって、1回目の小分け量に等しいさらなる液体の管理された小分け量が得られる。
【0039】
本発明の典型的な容器およびその構成要素は、通常は硬質プラスチック材料で形成されるが、他の材料も同様に種々の用途に適している。容器は、陶器、磁器、ガラス、金属、粘土、紙またはそれらの組み合わせで構成されていてもよい。
【0040】
この容器は、貯留された液体が所望の温度を保つために、随意的に断熱材料で構成されていても、あるいは真空壁を有していてもよい。
【0041】
この容器は、随意的に、外壁に取り付けられた、または外壁に予め形成された取っ手を備えていてもよい。
【0042】
本発明の精神または下記の請求項に規定された本発明の範囲から離れることなしに、当業者によって種々の変形、変更および適応がなされ得ることを理解すべきである。
【符号の説明】
【0043】
10 容器
20 本体
30 頂端
40 底端
50 底蓋
55 シール
60 底蓋のキャビティ
70 底蓋の底板
80 外側壁
90 内側壁
95 真空空間
100 外頂縁部
110 底端壁
120 カップ部(液体小分け室)
130,140 孔
150 カップ部の根元部
160 内側の室
170 外側の室
180 雄ねじ溝
190 雌ねじ部
200,240 傾斜したスリット状の孔
210 第2のカップ
220 円孔
230 第2のカップの端壁
250 交差孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体すなわち飲料のための容器の分野に関する。特に本発明は、容器から排出させる以前の飲料の温度を保つ容器を含む、こぼれるのを防止した、少しずつ飲めるように管理された量の液体を小分けする容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
こぼれるのを防止した飲料容器は、衰弱した患者を抱える病院または療養施設、幼児のトレーニング・カップ、ならびに航空機、ボート、船舶、列車および自動車等の移動する乗物のような、飲むときにこぼれる可能性が高い用途において高く望まれている。
【0003】
熱い飲料に関しては、容器内で小分けすることが望ましい。コーヒー等の熱い飲料は、ユーザーの口および唇をやけどさせるか傷付ける可能性がある80℃を超える温度で飲まれる。この問題の解決は、飲料を攪拌するか、または放熱によって飲料の温度が快適な温度になるまで待つかである。さらに、氷または、水またはミルク等の、より冷たい液体を加えて飲料の温度を下げることもできる。残念ながら、飲料を快適な温度にまで冷やすと、飲料の温度は急速に下がって、熱い飲料が理想的な飲み頃の温度よりも低い温度になってしまう。
【0004】
同様の状況が、歯に沁みたり、消化管の一部を冷して一次的な痙攣または痛みを生じさせたりする冷たい飲料にも存在する。
【0005】
量を小分けする容器はまた、嚥下障害と呼ばれる、嚥下するのが困難なユーザーにとっても望ましい。現在100万人もの人が嚥下障害と診断されている。嚥下障害患者は吸引等の医療上の厄介な問題に遭遇する。嚥下障害患者の気管に液体が入った場合には、咳をしてもそれを取り除くことが不可能な場合がある。気管内につかえた液体は肺に入り、有害なバクテリアが成長する機会が生じ、深刻な感染症(吸引性肺炎)を惹き起こす可能性がある。したがって、嚥下障害患者は飲食物が制限され、肺に吸い込むのを防止するために、飲料を少しずつ啜ることが要求される。
【0006】
現在市販されている幼児のトレーニング・カップは、このようなカップにバルブが使用されているために、幼児が飲料を啜る練習をするのに適当でないことが指摘されている。上記バルブは、液体がこぼれるのは防げても、幼児が飲料を啜る代わりに吸い込んでしまって、トレーニング・カップの目的を達成しない。それに加えて、多くのカップは、硬い吸い口を備えていて、幼児が持ち歩く際に、幼児の口や歯を傷付ける危険性を増大させる。
【0007】
熱い飲料のための旅行用容器またはマグが知られている。特許文献1には、バルブで作動される温度を適温にする室を備えた飲料容器が開示されている。断熱および温度調節容器を備えた卓上マグの例が特許文献2に開示され、流動制限カップは特許文献3に開示されている。
【0008】
公知の旅行用マグは、一般にバルブおよび/またはポンプ要素を備えた複雑な構造を有しており、かつ啜ったり、量を小分けにしたりする機能は備えていない。
【0009】
公知のこぼれ/跳ね返り防止用の蓋が特許文献4〜特許文献13に記載されている。このようなカップにおいては、蓋は通常、ユーザーが蓋または流動制御手段を全部外さずにカップから飲むことができるいくつかの形式のバルブを備えている。転倒防止手段も知られており、例えば特許文献14および特許文献15を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】カナダ国特許出願公開第2,386,384号明細書
【特許文献2】米国特許第5,823,380号明細書
【特許文献3】カナダ国特許出願公開第2,428,592号明細書
【特許文献4】カナダ国特許出願公開第2,219,618号明細書
【特許文献5】米国特許第5,102,000号明細書
【特許文献6】カナダ国特許出願公開第2,311,058号明細書
【特許文献7】米国特許第6,076,699号明細書
【特許文献8】カナダ国特許出願公開第2,425,200号明細書
【特許文献9】米国特許第5,570,797号明細書
【特許文献10】米国特許第5,150,816号明細書
【特許文献11】米国特許第5,249,703号明細書
【特許文献12】米国特許第6,568,557号明細書
【特許文献13】米国特許第4,438,865号明細書
【特許文献14】米国特許第5,454,470号明細書
【特許文献15】米国特許第6,520,369号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明のこぼれ防止容器は、液体を僅かな量(啜るだけの量)に小分けすることができる。熱い飲料の場合、飲み頃の温度に急速に冷めるように、熱い飲料全体から少量の部分が小分けされる。この容器は熱い飲料の大部分を熱い状態に保ち、かつこぼれるのを防止する。本発明の容器は、こぼれるのを防止しながら、バルブ、ポンプまたはスプリングを備えておらず、その結果、使用の容易さと製造コストの安さとを兼ね備えている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、同様の機能を有する従来の容器に比較して、比較的単純かつ安価な構成を有する、所定量の液体を小出しするためのこぼれを防止した容器を提供するものである。
【0013】
本発明は、所定量の液体を小出しための容器を提供するもので、この容器は、開口両端を備えて垂直の中心軸線の周りにほぼ中空体を形成する本体を備え、この本体は、閉塞された第1端および反対側の開口する第2端を有する液体貯留室と、開口する第1端および反対側の閉塞された第2端を有する液体排出室と、上記液体貯留室から上記液体排出室への管理された量の液体の小分けを選択的に許容するように構成された、上記液体貯留室と上記液体排出室との間の1個または複数個の孔と、上記液体貯留室および上記液体排出室と液体を遣り取りするキャビティを有する取り外し可能な底蓋とを備えている。上記液体排出室は上記液体貯留室の内部にあってもよい。
【0014】
一つの態様において、上記液体排出室は、所定の量の液体を容れる寸法を有する液体小分け室を形成する第1カップを備えた切頭円錐形を有し、上記液体小分け室は上記液体貯留室の下方に延出している。上記液体小分け室はその端壁上に第1の孔を有し、かつその側壁上に第2の孔を有する。上記底蓋のキャビティは上記第1の孔を通じて液体を流し、上記液体貯留室には上記第2の孔を通じて空気が流れる。円形またはスリット状である上記第1および第2の孔は、使用に際して液体の小分け量を決定する関係に隔離されている。
【0015】
別の態様においては、上記第1の孔が円形でかつ上記第2の孔が上記第1カップの垂直な中心軸線に対し平行に配置されたスリットである。
【0016】
さらなる態様においては、上記第1の孔が円形でかつ上記第2の孔が上記第1カップの垂直な中心軸線に対して傾斜したスリットである。
【0017】
さらなる態様においては、第2カップが上記液体小分け室の端部に回転可能に取り付けられている。この第2カップは、その端壁に上記小分け室の第1の孔と心合する第1の円孔を有し、かつ第2カップの垂直な中心軸線に対して傾斜したスリット状の第2の孔を有する。この第2の孔は、上記小分け室の第2の孔に対して傾斜しており、上記第2カップの回動により、双方のスリット状の孔が、一般に5.0ミリリットルから50ミリリットルまでの所定の液体小分け量を設定するための移動可能なオリフィスを画成する。
【0018】
さらなる態様においては、容器が、外側壁と、この外側壁の内部に配置された内側壁とを有する本体を備え、上記内側壁は上記本体の頂縁領域において上記外側壁に隣接しかつ垂直に対し反対方向に向かって傾斜して、上記本体の底部領域において上記外側壁の下方に延出する閉塞された端部カップを形成し、その場合に、上記外側壁および上記内側壁によって、上記本体の頂部に開口端を備えた内側の室と、反対側に開口端を備えた外側の室とが画成され、上記カップは1個または複数個の孔を有し、上記内側の室および外側の室と液体を遣り取りするキャビティを有する取り外し可能な底蓋を有し、上記孔は、上記外側の室から上記内側の室への液体の流動を選択的に許容する。
【0019】
さらなる態様において、上記容器は、開口両端を備えて垂直な中心線の周りにほぼ中空体を形成する本体を備え、この本体は、閉塞された第1の端部および反対側の開口する第2の端部を有する液体貯留室と、開口する第1の端部および反対側の閉塞された第2の端部を有する液体排出室と、上記液体貯留室から上記液体排出室への管理された量の液体の小分けを選択的に許容するように構成された、上記液体貯留室と上記液体排出室との間の1個または複数個の孔と、上記液体貯留室および上記液体排出室と液体を遣り取りするキャビティを有する取り外し可能な底蓋とを備えている。上記液体貯留室は上記液体排出室の内部にある。
【0020】
作動方法および構造の関連要素の機能のみでなく、本発明のその他の効果、機能および特徴、ならびに部品の組合せ、および製作の経済性は、下記に簡単に説明されている添付図面を参照した後述の詳細な説明および請求項の検討により明らかになるであろう。
【0021】
本発明は、添付図面と関連付けられた説明を参照することにより、さらに理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】直立位置すなわち液体小分け位置にある本発明の一実施の形態による容器の斜視図である。
【図2】直立位置にある図1の容器の図1のA−A線に沿った断面図である。
【図3】倒立位置すなわち液体充填位置にある図1の容器の分解正面図である。
【図4】倒立位置にある代替的実施の形態による容器の第2のカップを示す分解斜視図である。
【図5】第2のカップが一調整位置にある図4の容器の一部分解斜視図である。
【図6】第2のカップが別の調整位置にある図4の容器の一部分解斜視図である。
【図7】直立位置すなわち液体小分け位置にある本発明の別の実施の形態による容器の斜視図である。
【図8】倒立位置すなわち液体充填位置にある図7の容器の一部分解斜視図である。
【図9】図7に示された容器の代替的実施の形態の断面図である。
【図10】図9のA部分の拡大詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
下記の詳細説明およびそこに記載された実施の形態は、本発明の原理および態様の特定の実施の形態の例示説明のために提供される。これらの実施例は、本発明の原理の説明のために提供されるもので、本発明を限定するものではない。
【0024】
図1、図2および図3を参照すると、第1の直立位置で示されている容器10は、開口する頂端30および開口する底端40を備えて垂直軸線の周りにほぼ中空体を形成する本体20と、液体を保持するためのキャビティ60を画成しかつ本体20と密封状態に係合するように構成された底蓋50とを備えている。図示のように、底蓋50はほぼ平坦な底板70を備えている。随意的に、シール55を用いてもよい。
【0025】
上記本体20は、外側壁80および内側壁90を備えている。この内側壁90は、切頭円錐形を有するものとして示されているが、ほぼ円筒形であっても、実質的に円錐形であってもよい。上記内側壁90は、外側壁80内に配置され、かつ本体20の外頂縁部100において外側壁80に隣接し、かつ他端において、閉塞された底端壁110を有する短いほぼ円筒状のカップ部すなわち小分け室120を形成するように、垂直に対して反対方向に向かって傾斜している。カップ部120は、閉塞された底端壁110に上記キャビティ60から液体を供給される第1の孔130を有し、かつカップ部の根元部150に近接する側壁120に第2の孔140を有する。孔130および140は丸孔で示されているが、スリットであってもよい。何れの構成においても、上記孔は、容器に容れられる液体の表面張力によって寸法が決められる。したがって、外側壁80および内側壁90は、内側の中空空間すなわち室160と、外側の中空空間すなわち室170とを画成している。内側の室160は、本体20の頂端において開口し、かつ反対側の端部において閉塞されている。外側の室170は、本体20の底端において開口し、かつ本体20の外頂縁部100において閉塞されている。外側の室170には孔140を通じて空気が供給される。外側壁80の外周面には、開放端40に接して一連の雄ねじ溝180が形成されている。雄ねじ溝180は、底蓋50の内周面に形成された雌ねじ溝190と螺合可能である。本体20への底蓋50の係合は、図示のような螺合によっても、摩擦嵌合(不図示)またはその他の密封係合によってもよい。
【0026】
1回の液体小分け量は、カップ部120の容積と、カップ部120の側壁上の第2の孔140の相対的位置によって予め決定される。もし孔140がカップ部の底端110に近接していれば、それだけ液体小分け量は少ない。嚥下障害者向けには、小分け量は一般に5〜20ミリリットルである。旅行用容器向きには、小分け量は一般に20〜50ミリリットルである。
【0027】
使用時には、蓋50が本体20から外され、かつ本体20は第1の位置から第2の、すなわち逆さにされた位置まで180度回転され、これにより外側の室170の開口端40が本体20の開口端になる。液体すなわち流体は、開口端40の縁以下の所望のレベルまで外側の室170内に注ぎ込まれ、かつ蓋50が再び取り付けられる。
【0028】
次に容器10は180度回転されて第1の位置に戻る。容器10が回転するにつれて、液体はキャビティ60を満たし、内側の室160からの空気が孔140を通って外側の室170内に入る。外側の室170に入った空気は、外側の室170内の液体を、カップ部120内の液体のレベルが孔140を覆うまで、孔130を通ってカップ部120内に流入させる。孔140がカップ部120内の液体によって覆われると、それ以上の空気は外側の室170内に入らず、かつそれ以上の液体はカップ部120内に流入しない。カップ部120内の液体の量は、ユーザーが容器を傾けることによって第1の開口端30から飲むことができる予め決定された管理された液体の小分け量を表す。
【0029】
容器を傾けて開口端30から、または容器を傾けることなくストローを用いて、液体を飲むことによって、内側の室160から液体を排除した後、容器10を第1の位置に戻すことによって、1回目の小分け量に等しい新たな液体の管理された小分け量が得られる。このような処理は、ユーザーによるさらなる消費に関してもう1回の液体の等しい小分け量を得る結果となる。これらの処理ステップおよび管理された液体の小分けは、外側の室170内に液体が残らなくなるまで反復可能である。
【0030】
図4、図5および図6は、液体の小分け量がユーザーによって調節可能な別の実施の形態を示す。倒立位置で示されている容器10は、この容器の頂端の開口端30(不図示)と、容器の底端の開口端40とを備えて垂直軸線の周りに中空体を形成する本体20を有する。底蓋50は本体20に対し密封状態で係合するように構成されている。図示のように、底蓋50はほぼ平坦な底板70を備えている。底蓋50の液体キャビティ60は図示されていない。外側壁80の開放端に隣接する外面領域には、一連の雄ねじ溝180が形成されている。雄ねじ溝180は、底蓋50の内側に形成された一連の雌ねじ溝190に螺合可能である。
【0031】
本実施の形態において、容器の本体20は、図1、図2および図3に示された実施の形態と同様の態様で画成された内側の室160(不図示)および外側の室170を備えている。内側壁90(不図示)は、閉塞された底端壁110を備えて外側壁80を越えて軸線方向に延出する短いほぼ円筒形のカップ部120すなわち閉塞された室を備えている。カップ部120は、その底端壁110に円孔130を備え、かつ側壁120上に傾斜したスリット状の孔200を備えている。カップ部120上に被せられて回動可能に嵌合する寸法を有する第2の円筒形カップ210は、その端壁230上に円孔220を備え、かつ円筒形カップ210の側壁上に傾斜したスリット状の孔240を備えている。たスリット状の孔240の傾斜角度は、スリット状の孔200に対してほぼ直角である。
【0032】
底蓋50が取り外され、かつ第2のカップ210がカップ部120上に嵌合されると、第2のカップ210の円孔220は、キャビティ60から液体が内側の室160へ流れるように、カップ部120の円孔130と位置が一致する。第2のカップ210がその軸線の周りで回動されるのにつれて、スリット状の孔240がスリット状の孔200と交差して、第2のカップ210の底端壁230から距離「h」を有する交差孔250を画成する。これによって、内側の室160から交差孔250を通じて外側の室170へ空気が流れる。
【0033】
第2のカップ210の軸線周りの回動を継続すると、第2のカップ210の底端壁230およびカップ部120の根元部150に対する交差孔250の位置が変化し、すなわち距離「h」が増減する。より小さい「h」の値は、より少ない液体の小分け量に対応し、かつ、より大きい「h」の値は、より多い液体の小分け量に対応する。第2のカップ210の側壁は、スリット状の孔240の外縁に沿って随意的に盛り上がっていてもよい。
【0034】
図7、図8、図9および図10は、液体貯留室(内側の室160)が液体排出室(外側の室170)の内側にある、さらに別の実施の形態を示す。本体20は、斜めになった接頭円錐形を有し、かつ外側壁80と、間に真空空間95を介在させた壁90aおよび90bから構成された真空壁構造(魔法瓶構造)の内側壁90とを有する。この真空壁構造は、液体貯留室(内側の室160)内の液体を断熱する。外側壁80は、一側が実質的に垂直で、他側が垂直に対して外方へ傾斜している、内側壁90は、本体20の底縁領域105において外側壁80に隣接し、かつ他端は、端壁115aおよび115bからなる閉塞された頂端を有するほぼ円筒状の液体貯留室160を形成している。この液体貯留室(内側の室160)は、開放端45の近傍における室160の側壁上に孔140を有する。孔140は図示のようにスリットであっても円形であってもよい。何れの構成においても、孔は、容器に容れられる液体の表面張力に応じて寸法が定められる。
【0035】
外側壁80および内側壁90は、これにより内側の中空空間すなわち室160および外側の中空空間すなわち室170を画成している。外側の室170は、本体20の頂部における開口端30と、反対側の閉塞端105とを有する。内側の室160は、本体20の底端における開口端45を有しかつ頂壁115において閉塞されている。外側の室170は、孔140を通じて液体および空気を遣り取りする。外側壁80には底縁部115に接して一連の雄ねじ溝180が形成されている。雄ネジ溝180は、底蓋50の内周面に形成された一連の雌ねじ溝190に螺合可能である。本体20に対する底蓋50の結合は、図示の螺合により、摩擦係合(不図示)により、またはその他の公知の封着態様によって行なわれる。
【0036】
使用時には、蓋50が本体20から外され、かつ本体20は第1の位置から第2の、すなわち逆さにされた位置まで180度回転され、これにより内側の室160の開口端45が本体20の開口頂端になる。液体すなわち流体は、孔140の下縁よりも下方の所望のレベルまで内側の室160内に注ぎ込まれ、かつ蓋50が再び取り付けられる。
【0037】
次に容器10は180度回転されて第1の位置に戻る。容器10が回転するにつれて、液体はキャビティ60を満たし、外側の室170からの空気が孔140を通って内側の室160内に入る。内側の室160に入った空気は、内側の室160内の液体を、液体のレベルが孔140を覆うまで外側の室170内に流入させる。孔140が外側の室170内の液体によって覆われると、それ以上の空気が内側の室160内に入らず、それ以上の液体が外側の室170内に流入しない。外側の室170内の液体の量は、ユーザーが容器を傾けることによって第1の開口端30から飲むことができる予め決定された管理された液体の小分け量を表す。
【0038】
容器を傾けて開口端30から、または容器を傾けるこまとなくストローを用いて、液体を飲むことによって外側の室170から液体を排除することによって、1回目の小分け量に等しいさらなる液体の管理された小分け量が得られる。
【0039】
本発明の典型的な容器およびその構成要素は、通常は硬質プラスチック材料で形成されるが、他の材料も同様に種々の用途に適している。容器は、陶器、磁器、ガラス、金属、粘土、紙またはそれらの組み合わせで構成されていてもよい。
【0040】
この容器は、貯留された液体が所望の温度を保つために、随意的に断熱材料で構成されていても、あるいは真空壁を有していてもよい。
【0041】
この容器は、随意的に、外壁に取り付けられた、または外壁に予め形成された取っ手を備えていてもよい。
【0042】
本発明の精神または下記の請求項に規定された本発明の範囲から離れることなしに、当業者によって種々の変形、変更および適応がなされ得ることを理解すべきである。
【符号の説明】
【0043】
10 容器
20 本体
30 頂端
40 底端
50 底蓋
55 シール
60 底蓋のキャビティ
70 底蓋の底板
80 外側壁
90 内側壁
95 真空空間
100 外頂縁部
110 底端壁
120 カップ部(液体小分け室)
130,140 孔
150 カップ部の根元部
160 内側の室
170 外側の室
180 雄ねじ溝
190 雌ねじ部
200,240 傾斜したスリット状の孔
210 第2のカップ
220 円孔
230 第2のカップの端壁
250 交差孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定量の液体を小出しにするための容器であって、該容器が直立位置にある場合に、
a.閉塞された頂端および開口する底端を有する液体貯留室、
b.開口する頂端および閉塞された底端を有して前記液体貯留室と入れ子関係にある液体排出室、
c.前記液体貯留室と前記液体排出室との間の液体の流通を可能にするキャビティを有して、前記液体貯留室の底端を密封する取り外し可能な底蓋、
d.前記液体排出室から前記液体貯留室内へ空気が流れるために前記液体排出室に形成された孔、および
e.前記液体貯留室から前記前記液体排出室内へ液体が流れるために前記液体排出室に形成された孔を備え、
前記空気が流れる孔は前記液体排出室の側壁に配置され、
前記容器が前記直立位置から液体充填位置まで逆さにされた場合に、前記液体貯留室が液体で満たされ得るように、前記底蓋は前記液体貯留室から取り外されるのが可能であり、
前記底蓋が再び取り付けられた後、前記容器は前記液体充填位置から前記直立位置まで逆さにされ、空気は前記液体排出室から前記液体貯留室へ流れ、かつ液体は、前記液体排出室内の液体レベルが前記液体貯留室内への空気の流れを阻止するまで、前記液体貯留室から前記液体排出室内へ流入し、これにより、所定量の液体を前記液体排出室内へ小出しにすることを特徴とする、所定量の液体を小出しにするための容器。
【請求項2】
前記液体排出室は前記液体貯留室の内部にあり、かつ前記液体貯留室の開口端の下方に随意的に延出して、前記底蓋の内部に液体小分け室を形成していることを特徴とする請求項1記載の容器。
【請求項3】
前記液体排出室がほぼ切頭円錐形を有することを特徴とする請求項2記載の容器。
【請求項4】
前記液体が流れる孔が前記液体排出室の底端にあり、前記容器が前記液体充填位置から前記直立位置まで逆さにされた場合に、空気が前記液体排出室の側壁に配置された孔を通って前記液体貯留室内へ流入し、かつ液体は、前記液体排出室内の液体レベルが前記液体貯留室内への空気の流れを阻止するまで、前記液体排出室の端壁に配置された孔を通って前記液体排出室内へ流入することを特徴とする請求項2または3記載の容器。
【請求項5】
前記容器が小出しようとする前記液体の所定量の調節が可能なように、前記側壁の孔が位置決めされるのを許容するために、前記液体排出室の底端に取り付けられた回動可能なカップをさらに備えていることを特徴とする請求項2から4の何れか1項記載の容器。
【請求項6】
前記回動可能に取り付けられたカップの傾斜したスリットが、前記液体排出室の側壁のスリットに被せられることによって、前記調節可能な孔が画成されることを特徴とする請求項5記載の容器。
【請求項7】
前記液体貯留室が前記液体排出室の内側にあり、前記空気が流れる孔と前記液体が流れる孔とは、前記液体排出室の側壁に形成された同一の孔であり、このため、前記容器が前記液体充填位置から前記直立位置まで逆さにされた場合に、空気が前記孔を通って前記液体排出室から前記液体貯留室へ流れ、かつ前記液体排出室内の液体レベルにより、前記液体貯留室内への空気の流れが阻止されるまで、液体が前記孔を通って前記液体排出室内へ流入することを特徴とする請求項1記載の容器。
【請求項8】
前記液体排出室は、一側がほぼ垂直でかつ他側が外方に傾斜した外壁を有することを特徴とする請求項1から7の何れか1項記載の容器。
【請求項9】
前記容器によって小出しにされる液体の所定量が5ミリリットルと20ミリリットルとの間であり、前記液体貯留室と前記液体排出室との間の壁が随意的に真空空間またはその他の断熱材を備えていることを特徴とする請求項1から8の何れか1項記載の容器。
【請求項10】
請求項1から9の何れか1項記載の容器を用いて所定量の液体を小出しする方法であって、
a.前記容器が逆さにされたときに、前記底蓋を取り外して前記液体貯留室を開口させる工程、
b.前記液体貯留室内に液体を容れる工程、
c.前記容器を逆さにして直立位置に戻し、これにより、所定量の液体を前記液体排出室内に小分けにする工程、および
d.前記液体貯留室を密封するように前記底蓋を再度取り付ける工程、
を含むことを特徴とする、所定量の液体を小出しする方法。
【請求項1】
所定量の液体を小出しにするための容器であって、該容器が直立位置にある場合に、
a.閉塞された頂端および開口する底端を有する液体貯留室、
b.開口する頂端および閉塞された底端を有して前記液体貯留室と入れ子関係にある液体排出室、
c.前記液体貯留室と前記液体排出室との間の液体の流通を可能にするキャビティを有して、前記液体貯留室の底端を密封する取り外し可能な底蓋、
d.前記液体排出室から前記液体貯留室内へ空気が流れるために前記液体排出室に形成された孔、および
e.前記液体貯留室から前記前記液体排出室内へ液体が流れるために前記液体排出室に形成された孔を備え、
前記空気が流れる孔は前記液体排出室の側壁に配置され、
前記容器が前記直立位置から液体充填位置まで逆さにされた場合に、前記液体貯留室が液体で満たされ得るように、前記底蓋は前記液体貯留室から取り外されるのが可能であり、
前記底蓋が再び取り付けられた後、前記容器は前記液体充填位置から前記直立位置まで逆さにされ、空気は前記液体排出室から前記液体貯留室へ流れ、かつ液体は、前記液体排出室内の液体レベルが前記液体貯留室内への空気の流れを阻止するまで、前記液体貯留室から前記液体排出室内へ流入し、これにより、所定量の液体を前記液体排出室内へ小出しにすることを特徴とする、所定量の液体を小出しにするための容器。
【請求項2】
前記液体排出室は前記液体貯留室の内部にあり、かつ前記液体貯留室の開口端の下方に随意的に延出して、前記底蓋の内部に液体小分け室を形成していることを特徴とする請求項1記載の容器。
【請求項3】
前記液体排出室がほぼ切頭円錐形を有することを特徴とする請求項2記載の容器。
【請求項4】
前記液体が流れる孔が前記液体排出室の底端にあり、前記容器が前記液体充填位置から前記直立位置まで逆さにされた場合に、空気が前記液体排出室の側壁に配置された孔を通って前記液体貯留室内へ流入し、かつ液体は、前記液体排出室内の液体レベルが前記液体貯留室内への空気の流れを阻止するまで、前記液体排出室の端壁に配置された孔を通って前記液体排出室内へ流入することを特徴とする請求項2または3記載の容器。
【請求項5】
前記容器が小出しようとする前記液体の所定量の調節が可能なように、前記側壁の孔が位置決めされるのを許容するために、前記液体排出室の底端に取り付けられた回動可能なカップをさらに備えていることを特徴とする請求項2から4の何れか1項記載の容器。
【請求項6】
前記回動可能に取り付けられたカップの傾斜したスリットが、前記液体排出室の側壁のスリットに被せられることによって、前記調節可能な孔が画成されることを特徴とする請求項5記載の容器。
【請求項7】
前記液体貯留室が前記液体排出室の内側にあり、前記空気が流れる孔と前記液体が流れる孔とは、前記液体排出室の側壁に形成された同一の孔であり、このため、前記容器が前記液体充填位置から前記直立位置まで逆さにされた場合に、空気が前記孔を通って前記液体排出室から前記液体貯留室へ流れ、かつ前記液体排出室内の液体レベルにより、前記液体貯留室内への空気の流れが阻止されるまで、液体が前記孔を通って前記液体排出室内へ流入することを特徴とする請求項1記載の容器。
【請求項8】
前記液体排出室は、一側がほぼ垂直でかつ他側が外方に傾斜した外壁を有することを特徴とする請求項1から7の何れか1項記載の容器。
【請求項9】
前記容器によって小出しにされる液体の所定量が5ミリリットルと20ミリリットルとの間であり、前記液体貯留室と前記液体排出室との間の壁が随意的に真空空間またはその他の断熱材を備えていることを特徴とする請求項1から8の何れか1項記載の容器。
【請求項10】
請求項1から9の何れか1項記載の容器を用いて所定量の液体を小出しする方法であって、
a.前記容器が逆さにされたときに、前記底蓋を取り外して前記液体貯留室を開口させる工程、
b.前記液体貯留室内に液体を容れる工程、
c.前記容器を逆さにして直立位置に戻し、これにより、所定量の液体を前記液体排出室内に小分けにする工程、および
d.前記液体貯留室を密封するように前記底蓋を再度取り付ける工程、
を含むことを特徴とする、所定量の液体を小出しする方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2010−540361(P2010−540361A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−526116(P2010−526116)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【国際出願番号】PCT/CA2008/001682
【国際公開番号】WO2009/039632
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(510081458)
【氏名又は名称原語表記】DRUYAN, Eugene
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【国際出願番号】PCT/CA2008/001682
【国際公開番号】WO2009/039632
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(510081458)
【氏名又は名称原語表記】DRUYAN, Eugene
【Fターム(参考)】
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