説明

扁平形電池

【課題】台座に対する正極の挿入性を向上させて、生産性を向上させることができる扁平形電池を提供する。
【解決手段】本発明の扁平形電池は、有底円筒状の正極容器4と有天円筒状の負極容器5により形成された空間内に、円盤形状の正極1と円盤形状の負極2がセパレータを介して収容されたものであり、正極1の周囲に配置された、L字状の断面を有する環状の台座7aを含む。台座7aの周壁部は、正極容器4の底面部側から負極容器5の天面部側に向かって内径が大きくなるように傾斜している。これにより、台座7aの上端の内径が、正極1の下端の直径より大きくなり、台座7aに対する正極1の挿入性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扁平形電池に関する。
【背景技術】
【0002】
扁平形電池の一例として、図4に示すように、円盤形状の正極1と、円盤形状の負極2と、セパレータ3と、有底円筒形状の正極容器4と、有天円筒形状の負極容器5と、環状のパッキング6と、L字状の断面を有する環状の台座7とを備えた扁平形電池が知られている。台座7は、正極1の膨張方向を規制するためのものである。
【0003】
このような構成の扁平形電池において、放電を開始すると、放電がすすむにつれて負極2の容積が減少するため、電池内部の厚さ方向の接触圧力、特に、台座7と正極容器4との接触圧力がゆるみ、台座7と正極容器4との間の電気的な接触性が不十分となる。このような問題を解決するため、たとえば、特許文献1では、台座7と正極容器4とを溶接することで、電池の放電特性の安定化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平01−320760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の扁平形電池では、電池の組み立ての際、正極容器4に溶接された台座7内に正極1を挿入する必要がある。しかし、正極1は、通常、二酸化マンガンとカーボンブラック等の粉体とバインダーとを用いて成形されるものであるため強度が弱く、台座7内に挿入するときに台座7に接触すると、正極1に割れや欠けが発生するという問題があった。このような正極1に割れや欠けが発生しないように正極1を台座7内に挿入することは難しく、生産性を高めることができない。
【0006】
本発明は、上記問題点を解消するためになされたものであり、台座に対する正極の挿入性を向上させて、生産性を向上させることができる扁平形電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の扁平形電池は、有底円筒状の正極容器と有天円筒状の負極容器により形成された空間内に、円盤形状の正極と円盤形状の負極がセパレータを介して収容された扁平形電池において、前記正極の周囲に配置された、L字状の断面を有する環状の台座を含み、前記台座の前記負極容器の天面部側の端部の内径が、前記正極の前記正極容器の底面部側の主面の直径より大きくなるように、前記台座の周壁部及び前記正極の外周面のうちの少なくとも一方が傾斜していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、台座に対する正極の挿入性を向上させて、生産性を向上させることができる扁平形電池を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の扁平形電池の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の扁平形電池の他の例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の扁平形電池の他の例を示す概略断面図である。
【図4】従来の扁平形電池の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の扁平形電池は、有底円筒状の正極容器と有天円筒状の負極容器により形成された空間内に、円盤形状の正極と円盤形状の負極がセパレータを介して収容された扁平形電池において、上記正極の周囲に配置された、L字状の断面を有する環状の台座を含み、上記台座の上記負極容器の天面部側の端部の内径が、上記正極の上記正極容器の底面部側の主面の直径より大きくなるように、上記台座の周壁部及び上記正極の外周面のうちの少なくとも一方が傾斜していることを特徴とする。
【0011】
上記台座の上記負極容器の天面部側の端部の内径が、上記正極の上記正極容器の底面部側の主面の直径より大きくなるように、上記台座の周壁部及び上記正極の外周面のうち少なくとも一方が傾斜していることにより、台座に対する正極の挿入性を向上させて、生産性を向上させることができる扁平形電池を実現できる。
【0012】
上記台座の周壁部は、上記正極容器の底面部側から上記負極容器の天面部側に向かって内径が大きくなるように傾斜していることが好ましい。これにより、台座に対する正極の挿入性を向上できる。
【0013】
上記正極の外周面は、上記負極容器の天面部側から上記正極容器の底面部側に向かって上記正極の直径が小さくなるように傾斜していることが好ましい。これにより、台座に対する正極の挿入性を向上できる。
【0014】
上記台座の周壁部または上記正極の外周面の傾斜角度は、2度以上20度以下であることが好ましい。台座の周壁部の傾斜角度が2度以上であれば、台座に対する正極の挿入性を向上できるが、台座の周壁部の傾斜角度が20度を超えると、放電時に正極の膨張方向を規制することができない傾向がある。一方、正極の外周面の傾斜角度が2度以上であれば、台座に対する正極の挿入性を向上できるが、正極の外周面の傾斜角度が20度を超えると、正極の容積が減少し、電池容量が低下する。
【0015】
上記台座の周壁部と上記正極の外周面との隙間の最大値は、0.1mm以上1.0mm以下であることが好ましい。上記隙間の最大値が0.1mm以上であれば、台座に対する正極の挿入性を向上できるが、上記隙間の最大値が1.0mmを超えると、放電時に正極の膨張方向を規制することができなくなったり、正極の容積が減少し、電池容量が低下する。
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
(実施形態1)
本実施形態1では、台座の周壁部が傾斜している扁平形電池について図1を用いて説明する。図1は、本発明の扁平形電池の一例を示す概略断面図である。
【0018】
本実施形態1の扁平形電池は、図1に示すように、円盤形状の正極1、円盤形状の負極2、セパレータ3、有底円筒状の正極容器4、有天円筒状の負極容器5、環状のパッキング6、及び、L字状の断面を有する環状の台座7aを備え、電池内に非水電解液が充填されている。
【0019】
本実施形態1では、台座7aの周壁部は、正極容器4の底面部側から負極容器5の天面部側に向かって(図1において下側から上側に向かって)内径が広くなるように傾斜している。これにより、正極1の直径(幅)よりも、台座7aの上端(図1において、負極容器5の天面部側の端部)の内径が大きくなるため、台座7aに対する正極1の挿入性を向上させることができ、扁平形電池の生産性を向上できる。
【0020】
台座7aの周壁部の傾斜角度は2度以上であれば、正極1の幅よりも台座7aの上端の内径が大きくなるため、台座7aに対する正極1の挿入性が向上する。しかし、傾斜角度が20度より大きくなると、放電時に正極1の膨張方向を規制することができなくなるだけでなく、台座7aが電池内に占める割合が大きくなり、その他の構成要素が占める割合が少なくなる。よって、台座7aの周壁部の傾斜角度は、2度以上20度以下であることが好ましい。
【0021】
また、台座7aと正極1との間の隙間の最大値は0.1mm以上であれば、正極1の幅よりも台座7aの上端の内径が大きくなるため、台座7aに対する正極1の挿入性が向上する。しかし、上記隙間の最大値が1.0mmを超えると、放電時に正極の膨張方向を規制することができなくなるだけでなく、台座7aが電池内に占める割合が大きくなり、その他の構成要素が占める割合が少なくなる。よって、台座7aと正極1との間の隙間の最大値は、0.1mm以上1.0mm以下であることが好ましい。
【0022】
台座7aとしては、金属製、例えばステンレス鋼製のものを用いることができる。台座7aは、正極1の挿入に先立って、正極容器4の底面部に溶接される。正極の挿入後に台座を溶接すると、台座内に収容されている正極に悪影響を及ぼす可能性がある。溶接方法としては、電気的なスポット溶接の他、レーザ溶接、超音波溶接などを用いることができ、正極容器4の内側または外側のいずれから溶接しても良い。
【0023】
正極1に含まれる正極活物質としては、例えば、LiCoO2 、LiNiO2 、LiNixCo1-x2 のほか、LiMnO2 、LiMnO2 、LiNixMn1-x2 、LiMn3 6 、二酸化マンガンなどのマンガン含有酸化物、フッ化炭素などを用いることができる。
【0024】
正極1の作製にあたっては、通常、その正極活物質に加えて、導電助剤及びバインダーが用いられる。上記導電助剤としては、例えば、カーボンブラック、鱗片状黒鉛、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、繊維状炭素などが用いられ、バインダーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンラバーなどが用いられる。そして、正極の作製にあたっては、正極活物質と導電助剤とバインダーとを混合して調製した正極合剤を加圧成形することによって作製される。ただし、正極の作製方法は、上記例示の方法のみに限られることなく、他の方法によってもよい。
【0025】
負極2に含まれる負極活物質としては、特に限定されるものではなく、例えば、金属リチウム、リチウム−アルミニウム、リチウム−鉛、リチウム−ビスマス、リチウム−インジウム、リチウム−ガリウム、リチウム−インジウム−ガリウムなどのリチウム合金、炭素質材料、リチウムチタン酸化物に代表される金属酸化物などが挙げられる。上記負極活物質はそれ単独で負極を形成してもよいし、正極と同様にして負極合剤を作製し、これを集電体に塗布し、乾燥した後、加圧成形することによって負極2を作製してもよい。
【0026】
正極容器4及び負極容器5としては、例えば、ステンレス鋼製や、鉄製で表面をニッケルめっきしたもの等を用いることができる。
【0027】
セパレータ3としては、微孔性樹脂フィルム、樹脂不織布のいずれも用いることができる。その材質としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィンのほか、耐熱用途として、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体などのフッ素樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレートなどが挙げられる。また、上記材質の微孔性フィルムと不織布とを複数積層する、あるいは微孔性フィルム同士や不織布同士を複数積層することにより構成される複層体を用いることもできる。
【0028】
パッキング6としては、ポリプロピレン樹脂やポリフェニレンサルファイド樹脂などの弾性及び絶縁性に優れたプラスチック材を用いることができる。
【0029】
電池内に充填される非水電解液としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートなどの環状炭酸エステル、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネートなどの鎖状炭酸エステル、1,2−ジメトキシエタン、ジグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、トリグライム(トリエチレングリコールジメチルエーテル)、テトラグライム(テトラエチレングリコールジメチルエーテル)、メトキシエトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフランなどのエーテル、より選択される1種の溶媒あるいは2種以上の混合溶媒に、電解質塩を溶解させたものが用いられる。
【0030】
次に、本実施形態1の扁平形電池の製造方法について説明する。
【0031】
負極2については、負極容器5の天面部に圧着し、負極容器5の外周縁部に、負極容器5の下方から環状のパッキング6を装着する。正極1については、正極容器4の底面部に予め溶接されている台座7a内に挿入する。
【0032】
そして、上記正極1の正極容器4の底面部側とは反対側の主面上(図1において、正極1の上側主面上)にセパレータを介して上記負極2を配置する。その後、電池内部に非水電解液を注入してから、正極容器4の開口端部を内方に向かって締め付ける。これにより、負極容器5の外周面に装着されたパッキング6が押圧され、負極容器5の外周縁部と、正極容器4の開口端部の内周面とが圧接され密封される。このようにして、図1に示す扁平形電池が作製される。
【0033】
このような本実施形態1によれば、台座7aの周壁部に傾斜を設けたことにより、正極1の幅よりも、台座7aの上端の内径が大きくなるため、台座に対する正極の挿入性を向上させることができ、扁平形電池の生産性を向上できる。また、本実施形態1では、正極の外周面に傾斜を設けていないため、正極の成形が容易である。
【0034】
(実施形態2)
本実施形態2では、正極の外周面が傾斜している扁平形電池について図2を用いて説明する。図2は、本発明の扁平形電池の他の例を示す概略断面図である。図2において、図1と同一構成要素については同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0035】
本実施形態2に係る扁平形電池は、図2に示すように、円盤形状の正極1a、円盤形状の負極2、セパレータ3、有底円筒状の正極容器4、有天円筒状の負極容器5、環状のパッキング6、及び、L字状の断面を有する環状の台座7を備え、電池内に非水電解液が充填されている。
【0036】
本実施形態2では、正極1aの外周面は、負極容器5の天面部側から正極容器4の底面部側に向かって直径が小さくなるように(幅が狭くなるように)傾斜している。これにより、正極1aの下端の幅が台座7の上端の内径より小さくなるため、台座7に対する正極1aの挿入性を向上させることができ、扁平形電池の生産性を向上できる。
【0037】
正極1aの外周面の傾斜角度は2度以上であれば、台座7に対する正極1aの挿入性が向上する。しかし、傾斜角度が20度より大きくなると、正極1aの容積が減少し、電池容量が低下する。よって、正極1aの外周面の傾斜角度は、2度以上20度以下であることが好ましい。
【0038】
また、台座7と正極1aとの間の隙間の最大値は0.1mm以上であれば、台座7に対する正極1aの挿入性が向上する。しかし、上記隙間の最大値が1.0mmを超えると、正極1aの容積が減少し、電池容量が低下する。よって、台座7aと正極1との間の隙間の最大値は、0.1mm以上1.0mm以下であることが好ましい。
【0039】
なお、正極1aの材質や製造方法は、上記実施形態1で説明した正極1と同様である。
【0040】
また、本実施形態2では、台座7の周壁部は、傾斜しておらず、台座7の底部に対して垂直である。なお、台座7の材質や、正極容器4への溶接方法等については、上記実施形態1で説明した台座7aと同様である。
【0041】
なお、本実施形態2の扁平形電池の製造方法については、上記実施形態1と同様である。
【0042】
このような本実施形態2によれば、正極1aの外周面に傾斜を設けたことにより、正極1の下端の幅が、台座7の上端の内径より小さくなるため、台座に対する正極の挿入性を向上させることができ、扁平形電池の生産性を向上できる。また、本実施形態2では、台座7には傾斜を設けていない、つまり、台座7の周壁部は台座7の底部に対して垂直であることから、正極の膨張方向を十分に規制できる。
【0043】
(実施形態3)
図3は、本発明の扁平形電池の他の例を示す概略断面図である。図3において、図1または図2と同一構成要素については同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0044】
本実施形態3に係る扁平形電池は、図3に示すように、円盤形状の正極1a、円盤形状の負極2、セパレータ3、有底円筒状の正極容器4、有天円筒状の負極容器5、環状のパッキング6、及び、L字状の断面を有する環状の台座7aを備え、電池内に非水電解液が充填されている。
【0045】
本実施形態3では、台座7aの周壁部、及び正極1aの外周面が共に傾斜している。そのため、上記実施形態1及び2に比べて、台座7aに対する正極1aの挿入性を大幅に向上でき、扁平形電池の生産性をより向上できる。
【0046】
なお、本実施形態3の扁平形電池の製造方法については、上記実施形態1と同様である。
【実施例】
【0047】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例のみに限定されない。
【0048】
(実施例1)
まず、正極1については、正極活物質として二酸化マンガンと、導電助剤として人造黒鉛と、バインダーとしてテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体を準備し、二酸化マンガンが91.7質量%、人造黒鉛が7.6質量%、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体が0.7質量%となるように混合して正極合剤を調製し、調製後の正極合剤を金型に充填して加圧成形することにより、正極1を作製した。この正極1は直径18.9mm、厚さ3mmの円盤形状をしている。
【0049】
正極容器4及び負極容器5としては、ステンレス鋼製のものを準備した。
【0050】
台座7aとしては、ステンレス鋼製のものを準備した。台座7aは、周壁部の長さ2.5mm、厚さ100μmとした。台座7aの周壁部の傾斜角度を10度とした。台座7aの周壁部の最大内径(台座7aの上端の内径)は19.6mm、最小内径(台座7aの底部上面の直径)は18.9であった。
【0051】
負極2については、厚さ1.0mmのリチウム板と、厚さ6μmのアルミニウム箔とを積層したものを、直径が19mmの円盤形状となるように打ち抜くことにより作製した。なお、負極2は、電池の組み立て後、非水電解液の存在下で電気化学的に合金化され、リチウム−アルミニウム合金で構成されることになる。
【0052】
非水電解液としては、プロピレンカーボネートと1,2−ジメトキシエタンとの体積比1:1の混合溶媒にLiClO4を0.5mol/l溶解させたものを準備した。
【0053】
セパレータ3としては、厚さ400μmの不織布を準備した。パッキング6としては、ポリフェニレンサルファイド製のものを準備した。
【0054】
そして、以下のようにして電池の組み立てを行った。
【0055】
負極2については、負極容器5の天面部に圧着し、負極容器5の外周縁部には、負極容器5の下方から環状のパッキング6を装着した。台座7aについては、正極容器4の底面部に溶接した。
【0056】
そして、正極容器4に溶接されている台座7a内に正極1を挿入し、次いで、正極1の上側主面上にセパレータ3を介して、上記負極2を配置した。その後、電池内部に非水電解液を0.5ml注入し、正極容器4の開口端部を内方に向かって締め付けた。
【0057】
このようにして、図1に示す構造の厚さ5mm、直径24mmの扁平形電池を作製した。
【0058】
(実施例2)
本実施例2の扁平形電池は、台座の周壁部の傾斜角度を変更したこと以外、上記実施例1と同様にして作製した。本実施例2の扁平形電池は、図1に示す構造をしている。図1において、台座7aは、周壁部の長さ2.5mm、厚さ100μmとした。台座7aの周壁部の傾斜角度は20度とした。台座7aの周壁部の最大内径は20.7mm、最小内径は18.9mmであった。正極1は、直径18.9mm、厚さ3mmの円盤形状とした。
【0059】
(実施例3)
本実施例3の扁平形電池は、台座に傾斜を設けるのではなく、正極側に傾斜を設けたこと以外、上記実施例1と同様にして作製した。本実施例3の扁平形電池は、図2に示す構造をしている。図2において、正極1aの外周面の傾斜角度は10度とした。正極1aは、最大幅(負極容器5の天面部側の主面の直径)は18.9mm、最小幅(正極容器4の底面部側の主面の直径)は17.9mm、厚さ3mmの側面に傾斜を有する円盤形状とした。台座7は、周壁部の長さ2.5mm、厚さ100μmとし、台座7の周壁部の内径は18.9mmとした。
【0060】
(比較例1)
本比較例1の扁平形電池は、台座及び正極に傾斜を設けていないこと以外、上記実施例1と同様にして作製した。本比較例1の扁平形電池は、図4に示す構造をしている。図4において、台座7は、周壁部の長さ2.5mm、厚さ100μmとし、台座7の周壁部の内径は18.9mmとした。正極1は直径18.9mm、厚さ3mmの円盤形状とした。
【0061】
上記実施例1〜3、及び比較例1の扁平形電池について、予備放電、エージングを行った後の安定電圧が得られている各扁平形電池の開回路電圧を測定した。これを初期電圧とした。その後、これら各扁平形電池に振動を付加した。ここで、振動は、振動回数範囲10〜55Hz、片振幅0.5mmで1分間振動させる操作を1サイクルとして、X方向、Y方向、Z方向に各2時間ずつ行うこととした。
【0062】
上記振動を付加した後の各扁平形電池の開回路電圧を測定し、測定した電圧値が初期電圧よりも20mV以上低下しているものを不良品と判定した。上記各扁平形電池の試料数は100個とし、そのうちの不良品の個数を調べた。
【0063】
また、上記各扁平形電池を新たに5個ずつ準備し、それぞれ、20℃の環境下、放電電流1mAで、放電深度80%まで放電させてから、内部抵抗を測定し、その平均値を求めた。
【0064】
【表1】

【0065】
表1に示す結果から明らかなように、実施例1〜3のいずれにおいても、不良品が発生していないが、比較例1では、不良品の発生が見られた。このことから、台座及び正極のいずれにも傾斜を設けていない比較例1では、電池の組み立ての際に、正極に割れまたは欠けが発生したため、正極と台座との電気的な接触が不十分となったと考えられる。
【0066】
また、実施例1及び2では、内部抵抗値が比較例1に比べて大きい値となっていた。これは、実施例1及び2では台座の周壁部が傾斜しているため、正極の膨張方向の規制が十分でなかったものと考えられるが、比較例1の内部抵抗値との差は僅かであるため、扁平形電池の使用に際して特に影響はないと考えられる。
【0067】
一方、実施例3の内部抵抗値は、比較例1と同じ値であることから、正極の膨張方向を十分に規制できていることが分かる。これは、実施例3では、正極のみが傾斜し、台座の周壁部は台座の底部に対して垂直であるため、比較例1と同じ値になったと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の扁平形電池は、振動などの影響を受けにくい電池として、タイヤ空気圧センサ等の電源に利用可能である。
【符号の説明】
【0069】
1、1a 正極
2 負極
3 セパレータ
4 正極容器
5 負極容器
6 パッキング
7、7a 台座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底円筒状の正極容器と有天円筒状の負極容器により形成された空間内に、円盤形状の正極と円盤形状の負極がセパレータを介して収容された扁平形電池において、
前記正極の周囲に配置された、L字状の断面を有する環状の台座を含み、
前記台座の前記負極容器の天面部側の端部の内径が、前記正極の前記正極容器の底面部側の主面の直径より大きくなるように、前記台座の周壁部及び前記正極の外周面のうちの少なくとも一方が傾斜していることを特徴とする扁平形電池。
【請求項2】
前記台座の周壁部は、前記正極容器の底面部側から前記負極容器の天面部側に向かって内径が大きくなるように傾斜している請求項1に記載の扁平形電池。
【請求項3】
前記正極の外周面は、前記負極容器の天面部側から前記正極容器の底面部側に向かって前記正極の直径が小さくなるように傾斜している請求項1に記載の扁平形電池。
【請求項4】
前記台座の周壁部または前記正極の外周面の傾斜角度は、2度以上20度以下である請求項1に記載の扁平形電池。
【請求項5】
前記台座の周壁部と前記正極の外周面との隙間の最大値は、0.1mm以上1.0mm以下である請求項1に記載の扁平形電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−225301(P2010−225301A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68069(P2009−68069)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】