説明

扉用の安全装置を備えた昇降システム

【課題】昇降カゴの移動中における扉部材の開放、および、カゴ側扉部材の開放時における昇降カゴの昇降を確実に防止する。
【解決手段】昇降システムとしてのエレベータは、昇降カゴ10と、案内レール30とを有する。昇降カゴは、上下方向に移動可能であって、開口部を有するカゴ本体11と、開閉方向に移動可能なカゴ側扉部材12と、カゴ側扉部材の開方向への移動に伴って前進する案内子144とを有する。案内レールの側面(規制面)は、予め定められた停止位置に昇降カゴが到達した場合には、案内子144が当接されずにカゴ側扉部材の開方向への移動を許容し、停止位置以外の位置にカゴ側扉部材がある場合には、案内子144が当接されてカゴ側扉部材の開方向への移動を規制する。また、停止位置に昇降カゴが到達した場合に案内子144は、開閉案内部32によって上下方向への過度な移動を制限される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人や物を載せて上下方向に移動される昇降カゴを備えた昇降システムであって、昇降カゴに設けられた扉用の安全装置を備えた昇降システムに関する。
【背景技術】
【0002】
人や物を載せて上下方向に移動される昇降カゴを備えた昇降システムとしては、例えばエレベータがある。この種の昇降システムでは、各階に定められた所定の停止位置に昇降カゴが停止する。そして、昇降カゴが有する扉部材は、停止位置にて開閉され、それ以外の位置では閉じられている。
【0003】
このような扉部材の開閉は電気的に制御されているが、万一のことを考慮し、機械的な規制を併用することが考えられている。例えば、扉部材が開放状態になると、上下方向へ過度に移動しないように、昇降カゴを固定する固定機構を備えた昇降システムが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。この固定機構は、カゴ側固定具と昇降路側固定具とを有する。カゴ側固定具は、昇降カゴに設けられ、扉部材の開方向や閉方向への移動に伴って移動される。昇降路側固定具は、昇降路を区画する建物の躯体側に、各階の停止位置に設けられる。この昇降路側固定具には、カゴ側固定具の一部が嵌る空間が形成されている。
【0004】
そして、或る階の停止位置で昇降カゴが停止し、その後に扉部材が開放状態になると、カゴ側固定具は、その階に設けられた昇降路側固定具の空間に嵌る。カゴ側固定具が昇降路側固定具の空間に嵌ると、カゴ側固定具における上下方向の移動範囲が昇降路側固定具によって規制される。このため、制御系の状態に関わらず、昇降カゴは停止位置の高さに維持される。
【特許文献1】特開平10−59662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の昇降システムでは、昇降カゴの移動中における扉部材の開放については特に考慮されていなかった。また、固定機構による昇降カゴの固定は、扉部材が大きく開くまで機能しなかった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、昇降カゴの移動中における扉部材の開放を確実に防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するための主たる発明は、
(A)上下方向に移動可能な昇降カゴであって、
側面に開口部を有するカゴ本体と、
前記開口部を塞ぐ閉方向と前記開口部を臨ませる開方向とに移動可能な扉部材と、
伝達部材を介して前記扉部材に接続され、前記扉部材の前記開方向への移動に伴って前進し、前記閉方向への移動に伴って後退するストッパー部材と、
を有する昇降カゴと、
(B)予め定められた停止位置に前記昇降カゴが到達した場合には、前記ストッパー部材が当接されずに、前記扉部材の前記開方向又は前記閉方向への移動を許容し、前記停止位置以外の位置に前記昇降カゴがある場合には、前記ストッパー部材が当接されて前記扉部材の前記開方向への移動を規制する規制面を備えた規制面形成部材と、
(C)を有する昇降システムである。
【0008】
なお、本発明の他の特徴は、本明細書、及び添付図面の記載により、明らかにする。
【発明の効果】
【0009】
このような昇降システムによれば、停止位置以外の位置に昇降カゴが位置する場合には、ストッパー部材が規制面に当接する。これに伴い、ストッパー部材の前進が阻止され、扉部材の開方向への移動も阻止される。一方、停止位置に昇降カゴが到達すると、ストッパー部材は規制面に当接せず、扉部材の開方向への移動が許容される。従って、昇降カゴが所定の停止位置に停止している場合には扉部材を開閉でき、それ以外の場合には扉部材を閉じた状態に維持できる。そして、閉じた状態の維持は構造的になされる。その結果、昇降カゴの移動中における扉部材の不測の開放を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本明細書の記載、及び添付図面の記載により、少なくとも次のことも明らかにされる。
すなわち、(A)上下方向に移動可能な昇降カゴであって、側面に開口部を有するカゴ本体と、前記開口部を塞ぐ閉方向と前記開口部を臨ませる開方向とに移動可能な扉部材と、伝達部材を介して前記扉部材に接続され、前記扉部材の前記開方向への移動に伴って前進し、前記閉方向への移動に伴って後退するストッパー部材と、を有する昇降カゴと、(B)予め定められた停止位置に前記昇降カゴが到達した場合には、前記ストッパー部材が当接されずに、前記扉部材の前記開方向又は前記閉方向への移動を許容し、前記停止位置以外の位置に前記昇降カゴがある場合には、前記ストッパー部材が当接されて前記扉部材の前記開方向への移動を規制する規制面を備えた規制面形成部材と、(C)を有する昇降システムを実現できることが明らかにされる。
【0011】
かかる昇降システムにおいて、前記規制面形成部材は、前記昇降カゴの上下方向への移動を規制する他の規制面であって、前記停止位置で前記扉部材が所定度合い以上に開放された場合に、前記ストッパー部材に対して上側又は下側から当接する他の規制面を備えることが好ましい。
このような昇降システムによれば、他の規制面によって、昇降カゴの上下方向への移動を規制できる。このため、停止位置の昇降カゴが上下方向へ大きく移動してしまう不具合を防止できる。
【0012】
かかる昇降システムにおいて、前記規制面形成部材は、建物の躯体側に設けられ、前記昇降カゴを上下方向に案内するための案内レールによって構成されていることが好ましい。
このような昇降システムによれば、昇降カゴを案内するための案内レールが、規制面形成部材を兼ねているので、構成の簡素化が図れる。
【0013】
かかる昇降システムであって、前記案内レールは、前記停止位置に前記昇降カゴが位置付けられた状態における前記ストッパー部材に対応する高さの部位に、前記ストッパー部材の少なくとも一部が嵌る空間を備えることが好ましい。
このような昇降システムによれば、案内レールに空間を形成するという簡単な構成で、扉部材の移動についての規制と規制の解除とが行える。
【0014】
かかる昇降システムであって、前記昇降カゴは、前記扉部材を前記開方向へ移動させるための外力を付与する外力付与機構を備えることが好ましい。
このような昇降システムによれば、外力付与機構によって付与された外力により、ストッパー部材が規制面に押し付けられた状態になる。このため、昇降カゴが停止位置に到達すると、規制面による規制が解かれ、扉部材が開方向へ移動される。従って、扉部材の開放を速やかに行うことができる。
【0015】
かかる昇降システムであって、前記外力付与機構は、前記昇降カゴの内側から操作可能であって、操作によって平常操作状態と非常操作状態とに切り替え可能な非常操作部と、前記開方向へ移動させるための外力を前記扉部材に付与する外力付与部であって、前記非常操作部が平常操作状態の場合には収縮状態とされて前記扉部材には作用せず、前記非常操作部が非常操作状態とされた場合には伸張状態となって前記外力を前記扉部材に付与する外力付与部とを備えることが好ましい。
このような昇降システムによれば、カゴ部材の内部から扉部材に外力を付与できる。そして、この外力の付与が外力付与部によってなされるので、確実に外力を付与できる。
【0016】
かかる昇降システムであって、前記伝達部材は、前記扉部材の移動方向への運動を、前記扉部材の移動方向とは交差する交差方向への運動に変換する伝達ワイヤーによって構成されることが好ましい。
このような昇降システムによれば、運動伝達部材が伝達ワイヤーによって構成されていので、構成の簡素化が図れる。
【0017】
かかる昇降システムであって、前記伝達部材は、前記扉部材の移動方向への運動を、前記扉部材の移動方向とは交差する交差方向への運動に変換するリンク機構によって構成されることが好ましい。
このような昇降システムによれば、伝達部材がリンク機構によって構成されているので、扉部材の移動とストッパー部材の移動とを確実に連動させることができる。
【0018】
===第1実施形態===
<エレベータの全体構成>
図1に示すように、例示したエレベータは、昇降カゴ10と、昇降機構20と、案内レール30とを有している。
【0019】
昇降カゴ10は、人が乗ったり物を載せたりするための室を区画し、建物40が有する昇降路41に配置される。この昇降路41は、建物40が有する複数の階(フロア)を貫くように、垂直方向に設けられている。この実施形態における昇降路41は、建物40の躯体42によって区画されている。なお、躯体42とは、建物40の壁面を構成する部材であり、この実施形態では骨組みとコンクリートとを含んでいる。なお、昇降カゴ10については、後で詳しく説明する。
【0020】
昇降機構20は、昇降カゴ10を上下方向に移動させるための機構である。本実施形態における昇降機構20は、ケーブル21と、巻き上げ機22と、カゴ用アイドラプーリ23と、釣り合いおもり24とを有する。ケーブル21は、その一端が昇降カゴ10に取り付けられ、他端が釣り合いおもり24に取り付けられている。このケーブル21は、巻き上げ機22が有するカゴ用駆動プーリ222に巻き付けられるとともに、カゴ用アイドラプーリ23に架け渡されている。巻き上げ機22は、ブレーキ付き巻き上げモータ221と、カゴ用駆動プーリ222とを有し、昇降路41における最も上方に配置されている。巻き上げモータ221は、昇降カゴ10を上下方向に移動させるための駆動源である。この巻き上げモータ221は、図示しない制御装置によって回転方向と回転量とが制御される。巻き上げモータ221の回転軸223は、カゴ用駆動プーリ222の回転中心に接合されている。カゴ用駆動プーリ222は、巻き上げモータ221によって回転される部材であり、その周面にはケーブル21が巻き付けられている。このカゴ用駆動プーリ222が回転すると、ケーブル21における片側の部分は巻き上げられ、反対側の部分は繰り出される。カゴ用アイドラプーリ23は、昇降カゴ10と釣り合いおもり24とが接触しないように、昇降カゴ10と釣り合いおもり24とを離れた位置に配置するためのものである。釣り合いおもり24は、昇降カゴ10との間で釣り合いをとるためのおもりである。
【0021】
この昇降機構20では、巻き上げモータ221によってカゴ用駆動プーリ222を回転させることで、昇降カゴ10を上下方向へ移動させることができる。例えば、ケーブル21における一端側の部分を巻き上げるようにカゴ用駆動プーリ222を回転させた場合には、昇降カゴ10が上昇される。このとき、釣り合いおもり24は、繰り出されたケーブル21によって降下される。反対に、ケーブル21における他端側の部分を巻き上げるようにカゴ用駆動プーリ222を回転させた場合には、釣り合いおもり24が上昇される。このとき、昇降カゴ10は、繰り出されたケーブル21によって降下される。また、巻き上げモータ221が有するブレーキは、巻き上げモータ221の停止時に作動し、巻き上げモータ221の起動に連動して解除される。
【0022】
案内レール30は、昇降カゴ10の上下方向への移動時において、昇降カゴ10を案内するための部材である。例えば図4に示すように、この案内レール30は、細長い矩形板状の鋼鉄材によって構成されている。そして、案内レール30は、躯体42の表面から、この表面に対して垂直方向に突出された状態で取り付けられている。このとき、案内レール30は、長辺が垂直方向に向いた状態で取り付けられる。また、案内レール30は、複数のものを連結して用いる。すなわち、複数の案内レール30は、昇降路41における上部から下部に亘って取り付けられている。本実施形態において、この案内レール30は、規制面形成部材として機能する。この点については、後で説明する。
【0023】
<昇降カゴ10の構成>
次に、昇降カゴ10について説明する。図2及び図3に示すように、昇降カゴ10は、カゴ本体11と、カゴ側扉部材12と、開閉機構13と、開放規制機構14と、案内溝形成部15とを有する。
【0024】
カゴ本体11は、側面に開口部111が形成された直方体状の箱体によって構成されている。開口部111は、人や物が出入りするための出入口となる。本実施形態の開口部111は矩形状に設けられている。そして、カゴ本体11の内部は、人が乗ったり物を載せたりするための室112となる。なお、便宜上、カゴ本体11において、開口部111が形成されている側面のことを、カゴ本体11の正面ともいう。図2に示すように、「正面側から見て」とは、「昇降カゴ10等を開口部111の方から見て」という意味である。また、「前方」とは正面側を基準にした前方を、「後方」とは正面側を基準にした後方をそれぞれ意味する。左右方向についても同様である。
【0025】
カゴ側扉部材12は、開口部111を塞いだり、この開口部111を臨ませたりするためのものである。本実施形態では、2枚のカゴ側扉部材12L,12Rが横並びに設けられており、開口部111を塞いだ閉状態では、正面側から見て右側のカゴ側扉部材12Rと左側のカゴ側扉部材12Lとが、開口部111における左右方向のほぼ中央で当接している。この閉状態から、各カゴ側扉部材12R,12Lを左右方向へ移動させることで、開口部111を正面側から臨ませることができる。すなわち、左側のカゴ側扉部材12Lを左側に、右側のカゴ側扉部材12Rを右側にそれぞれ移動させることで、開口部111を臨ませることができる。そして、図2に点線で示すように、開口部111の全体が臨む開放状態では、左側のカゴ側扉部材12Lにおける右側縁が開口部111の左側縁の近傍に位置し、右側のカゴ側扉部材12Rにおける左側縁が開口部111の右側縁の近傍に位置する。
【0026】
また、カゴ側扉部材12の移動に連動して、躯体側扉部材43が移動する。この躯体側扉部材43は、躯体42に取り付けられた扉部材であり、カゴ側扉部材12の後方に、カゴ側扉部材12に近接した状態で配置されている。躯体側扉部材43は、カゴ側扉部材12と同様に左側の躯体側扉部材43Lと右側の躯体側扉部材43Rとを有する。そして、左側の躯体側扉部材43Lは、左側のカゴ側扉部材12Lと連動して左右に移動し、右側の躯体側扉部材43Rは、右側のカゴ側扉部材12Rと連動して左右に移動する。
【0027】
開閉機構13は、カゴ側扉部材12を開方向へ移動させたり、閉方向へ移動させたりするためのものである。図2に示すように、本実施形態における開閉機構13は、扉駆動モータ131と、伝達ワイヤー132と、扉用駆動プーリ133と、扉用アイドラプーリ134と、ブラケット135とを有する。扉駆動モータ131は、カゴ側扉部材12を移動させるための動力を生成するものであり、図示しない制御部によって動作が制御される。この扉駆動モータ131の回転軸と扉用駆動プーリ133とは、扉用駆動プーリ133の回転中心で接合されている。伝達ワイヤー132は、扉駆動モータ131で生成された動力を、カゴ側扉部材12に伝達する。伝達ワイヤー132の一端と他端は、開放規制機構14が有するスライダ142(後述する。)に接続されている。このため、伝達ワイヤー132は、ループ状に形成されている。そして、この伝達ワイヤー132は、カゴ側扉部材12の移動を案内子144に伝達する伝達部材としても機能する。詳しくは、カゴ側扉部材12を移動させるための動力となる扉駆動モータ131の回転運動を、直線運動に変換してカゴ側扉部材12に伝達するための運動伝達部材とて機能する。
【0028】
伝達ワイヤー132の一部は、扉用駆動プーリ133の周面に巻き付けられている。また、伝達ワイヤー132の位置は、扉用駆動プーリ133と複数の扉用アイドラプーリ134a〜134cとによって定められている。具体的に説明すると、扉用駆動プーリ133は、カゴ本体11の上面であって、正面側から見て右後方側(右手前側)の隅角部付近に配置され、第1の扉用アイドラプーリ134aは、左後方側(左手前側)の隅角部付近に配置されている。また、第2の扉用アイドラプーリ134bは、左前方側(左奥側)の隅角部に配置され、第3の扉用アイドラプーリ134cは、第1の扉用アイドラプーリ134aよりも少し右側であって、少し前方に配置されている。
【0029】
そして、扉用駆動プーリ133と第1の扉用アイドラプーリ134aとの間に位置する伝達ワイヤー132の第1部分132aは、カゴ本体11の正面と平行に配置されている。第1の扉用アイドラプーリ134aと第2の扉用アイドラプーリ134bとの間に位置する伝達ワイヤー132の第2部分132bは、カゴ本体11の左側面と平行に配置されている。第3の扉用アイドラプーリ134cと扉用駆動プーリ133との間に位置する伝達ワイヤー132の第3部分132cは、カゴ本体11の正面と平行に配置されている。すなわち、第3部分132cは、第1部分132aと平行であって、カゴ本体11の正面側から見て第1部分132aよりも奥側に配置されている。
【0030】
従って、図2に示す伝達ワイヤー132では、伝達ワイヤー132の第1部分132aが正面側から見て右側から左側へと移動するとき、第2部分132bは後方側から前方側へと移動し、第3部分132cは左側から右側へと移動する。反対に、伝達ワイヤー132の第1部分132aが左側から右側へと移動するとき、第2部分132bは前方側から後方側へと移動し、第3部分132cは右側から左側へと移動する。以下に説明するように、伝達ワイヤー132の第1部分132aと第3部分132cは、カゴ側扉部材12(12L,12R)を移動させるために用いられる。そして、カゴ側扉部材12は、これらの第1部分132aと第3部分132cの移動方向に沿って移動する。従って、伝達ワイヤー132は、扉駆動モータ131の回転運動を、カゴ側扉部材12を移動させるための直線運動に変換する変換部材として機能する。なお、開放規制機構14が有するスライダ142は、第2部分132bの途中に設けられている。このため、スライダ142は、第2部分132bとともに前後方向に移動することとなる。従って、伝達ワイヤー132は、扉駆動モータ131の回転運動を、スライダ142を移動させるための直線運動に変換する変換部材、言い換えれば、カゴ側扉部材12の移動方向への運動を、この移動方向とは交差する交差方向への運動に変換する変換部材としても機能する。
【0031】
ブラケット135は、伝達ワイヤー132とカゴ側扉部材12とを連結するための部材である。本実施形態におけるブラケット135は、側方から見て倒L字状に形成された部材で構成されている。そして、ブラケット135の下端はカゴ側扉部材12に接合され、ブラケット135の上側先端部には伝達ワイヤー132を接合するための接合部が設けられている。そして、左側のカゴ側扉部材12Lの上縁部に接合される左側ブラケット135Lは、伝達ワイヤー132の第1部分132aに接合される。また、右側のカゴ側扉部材12Rの上縁部に接合される右側ブラケット135Rは、伝達ワイヤー132の第3部分132cに接合される。
【0032】
このため、扉用駆動プーリ133が上方から見て時計回り(図2に符号Oの矢印で示す方向)に回転されると、伝達ワイヤー132の第1部分132aは正面側から見て左方向へ移動し、第3部分132cは右方向へ移動する。そして、第1部分132aに接合された左側ブラケット135Lは左方向へ移動し、第3部分132cに接合された右側ブラケット135Rは右方向へ移動する。その結果、左側のカゴ側扉部材12Lは左方向へ移動し、右側のカゴ側扉部材12Rは右方向へ移動する。要するに、左側のカゴ側扉部材12L及び右側のカゴ側扉部材12Rは、それぞれ開方向へ移動する。反対に、扉用駆動プーリ133が上方から見て反時計回り(図2に符号Cの矢印で示す方向)に回転されると、伝達ワイヤー132の第1部分132aや第3部分132cは、先の移動方向とは反対の方向へ移動する。その結果、左側のカゴ側扉部材12L及び右側のカゴ側扉部材12Rは、それぞれ閉方向へ移動する。
【0033】
開放規制機構14は、カゴ側扉部材12の開方向への移動を規制したり、許容したりするために用いられるものである。本実施形態における開放規制機構14は、図4A、図4B、図6A、図6Bに示されるように、ガイド部材141と、スライダ142と、連結部143と、案内子144とを有する。ガイド部材141は、スライダ142の移動方向を規制するためのガイド溝141aを有する。図6Bに示すように、ガイド溝141aは、スライダ142及び連結部143が丁度嵌る形状とされ、ガイド部材141の長手方向に沿って設けられている。そして、ガイド溝141aが伝達ワイヤー132の第2部分132bと平行な状態となるよう、ガイド部材141は、カゴ本体11の上面に接合されている。スライダ142は、ガイド溝141a内に、このガイド溝141aの長手方向に沿って移動可能な状態で配置される。このスライダ142には、伝達ワイヤー132における一端と他端とが接続されている。従って、スライダ142は、伝達ワイヤー132(すなわち、第2部分132b)とともに移動する。また、スライダ142の側面には、連結部143が取り付けられている。この連結部143は、案内子144とスライダ142とを連結するためのものである。
【0034】
案内子144は、ローラ状の部材によって構成され、スライダ142側とは反対の連結部143の先端に取り付けられている。この取り付け状態において、案内子144はガイド部材141よりも外側に位置し、連結部143(スライダ142)とともに移動する。前述したように、スライダ142は、伝達ワイヤー132とともに移動するので、案内子144は、カゴ側扉部材12に連動して移動する。この案内子144は、ストッパー部材として機能するものであり、この例では案内レール30の側面(規制面31に相当する。)に当接することで、カゴ側扉部材12の開方向への移動を規制する。便宜上、以下の説明において、案内子144が規制面31に向かう方向のことを前進方向ともいい、案内子144が規制面31から離れる方向のことを後退方向ともいう。なお、案内子144によるカゴ側扉部材12の移動規制については、後で説明する。
【0035】
案内溝形成部15は、案内レール30に嵌る案内溝151を形成する。この案内溝151は、移動中における昇降カゴ10の姿勢を安定させるためのものである。すなわち、案内溝151に案内レール30の一部を嵌めることで、昇降カゴ10を上下方向に移動させた際における昇降カゴ10の姿勢を規制できる。例示した案内溝形成部15は、ガイド部材141の上面に接合されている。すなわち、案内溝形成部15は、ガイド部材141を介してカゴ本体11に接合されているといえる。
【0036】
<案内レール30(規制面形成部材)について>
次に、案内レール30について説明する。なお、案内レール30の概略は、既に説明をした。そこで、ここではカゴ側扉部材12の移動を規制するための規制面31を中心に説明をする。図5にも示すように、案内レール30は縦に長い板状部材によって構成されている。この案内レール30は、その長辺を上下方向に向けた状態で躯体42に取り付けられている。この場合、案内レール30が有する一方の側面がカゴ本体11における正面側を向き、他方の側面がカゴ本体11における背面側を向く。この実施形態では、案内レール30が有する側面であって、カゴ本体11における正面側の側面が規制面31として機能する。この規制面31には、カゴ側扉部材12の開方向への移動によって前進する案内子144(ストッパー部材)が当接する。
【0037】
この案内レール30における所定の高さの部位には、切断部Sが設けられている。ここで、所定の高さの部位とは、昇降カゴ10が予め定められた停止位置(すなわち停止階)に到達した際における、案内子144が位置付けられる高さの部位である。この切断部Sが設けられることにより、案内レール30の規制面31が部分的に欠ける。そして、案内子144は、案内レール30における規制面31の欠けている部分を通ることで、その前進が許容される。
【0038】
案内レール30に関し、或る停止階に着目すると、切断部Sよりも上方に位置する部分を上側案内レールということもでき、切断部Sよりも下方に位置する部分を下側案内レールということもできる。この場合、或る停止階における上側案内レールは1つ上の停止階における下側案内レールと繋がり、或る停止階における下側案内レールは1つ下の停止階における上側案内レールと繋がる。
【0039】
そして、案内レール30の切断部Sに対応して開閉案内部32が設けられる。この開閉案内部32は、カゴ側扉部材12の開閉時において案内子144を案内するものである。すなわち、開閉案内部32は、カゴ側扉部材12の開方向の移動や閉方向の移動に伴う案内子144の移動は許容し、昇降カゴ10の上下方向の移動は規制する。従って、この開閉案内部32は、案内レール30とともに規制面形成部材を構成するものであり、他の規制面を形成する。本実施形態における開閉案内部32は、上側開閉案内部321と下側開閉案内部322とを有する。上側開閉案内部321及び下側開閉案内部322は、それぞれ細長い矩形板状の鋼鉄材によって構成されている。そして、上側開閉案内部321及び下側開閉案内部322は、躯体42の表面から、この表面に対して垂直方向に突出された状態であって、長辺が水平方向に向いた状態に取り付けられる。
【0040】
上側開閉案内部321は、その先端が案内レール30(上側案内レール)の下端に接合され、前方側へ延びている。上側開閉案内部321における躯体42からの突出量(上側開閉案内部321の板幅)は、案内レール30における躯体42からの突出量(案内レール30の板幅)よりも小さく定められている。これは、案内レール30に嵌った状態の案内溝形成部15が、上側開閉案内部321と接触しないようにするためである(図6A,図6Bを参照。)。下側開閉案内部322は、その先端が案内レール30(下側案内レール)の上端に接合され、前方側へ延びている。下側開閉案内部322における躯体42からの突出量もまた、上側開閉案内部321と同様な理由で、案内レール30における躯体42からの突出量よりも小さく定められている。そして、上側開閉案内部321と下側開閉案内部322の上下方向の間隔は、案内子144の直径よりも大きく定められている(図6Bを参照。)。これは、上側開閉案内部321と下側開閉案内部322とによって、案内子144を案内するための案内空間を区画するためである。また、上側開閉案内部321及び下側開閉案内部322の前後方向の長さは、カゴ側扉部材12における開閉時の移動量に応じて定められる。これは、カゴ側扉部材12が開放状態になっても、案内子144を案内空間に位置付けるためである。
【0041】
<カゴ側扉部材12の開閉時の動作について>
次に、このエレベータにおけるカゴ側扉部材12の開閉時の動作について説明する。エレベータが或る停止階と他の停止階の途中に位置する場合、カゴ側扉部材12は閉じられている。このため、案内子144は退避位置に位置付けられる。本実施形態における退避位置は、規制面31よりも後方側であって、規制面31の近傍に定められる。
【0042】
この状態において、何らかの要因でカゴ側扉部材12に開方向への移動力が加えられた場合、例えば、扉駆動モータ131が誤って動作してしまったり、カゴ側扉部材12が開方向へ押されたりした場合には、加えられた移動力によって、伝達ワイヤー132の第1部分132aは左方向へ移動し、第2部分132bは前方側へ移動する。これにより、ストッパー部材としての案内子144が、規制面31に向かって前進する。そして、前進した案内子144が規制面31に当接すると、図6A及び図7Aに示すように、伝達ワイヤー132の移動が阻止される。具体的には、伝達ワイヤー132の第1部分132aの左方向への移動が阻止され、第3部分132cの右方向への移動が阻止される。これに伴い、第1部分132aと連動して移動する左側のカゴ側扉部材12L、及び、第3部分132cと連動して移動する右側のカゴ側扉部材12Rについて、開方向への移動が阻止される。その結果、或る停止階と他の停止階の間を昇降カゴ10が移動している最中において、カゴ側扉部材12が開いてしまう不具合を構造的に防止できる。
【0043】
昇降カゴ10が所定の停止位置で停止した場合(すなわち、或る停止階で停止した場合)、図6B及び図7Bに示すように、案内子144の前方には、上側案内レールと下側案内レールの間に形成される切断部Sが臨む。このため、カゴ側扉部材12が開方向へ移動して案内子144が前進しても、案内子144は規制面31と当接せず前進が許容される。そして、前進によって案内子144は、上側開閉案内部321と下側開閉案内部322とによって区画される案内空間に進入する。ここで、案内子144は連結部143に取り付けられ、連結部143はスライダ142に取り付けられている。また、スライダ142はガイド部材141に嵌っており、ガイド部材141はカゴ本体11に接合されている。このため、案内子144は、昇降カゴ10(カゴ本体11)の上下方向への移動に伴って上下方向へ移動する。ここで、案内子144の少なくとも一部が案内空間に進入した状態(詳しくは、連結部143が案内空間に進入している状態)では、昇降カゴ10の上下方向への移動が、案内子144と上側開閉案内部321及び下側開閉案内部322とによって規制される。すなわち、昇降カゴ10が上方向へ移動すると案内子144が上側開閉案内部321の下面に下側から当接し、それ以上の移動を阻止する。同様に、昇降カゴ10が下方向へ移動すると、案内子144が下側開閉案内部322の上面に上側から当接し、それ以上の移動を阻止する。ここで、下側開閉案内部322の上面は、昇降カゴ10の下方向への移動を規制する他の規制面となる。また、上側開閉案内部321の下面は、昇降カゴ10の上方向への移動を規制する他の規制面となる。このように、昇降カゴ10の上下方向への移動は、案内子144が案内空間内を上下方向に移動できる限りにおいて許容される。そして、それ以上の移動は阻止される。なお、案内子144(昇降カゴ10)は、必ずしも上下方向に固定されている必要はない。例えば、躯体側の床面とカゴ本体11の床面との間の段差に関し、車いすで乗り越えられる程度の大きさであれば許容される。このため、上側開閉案内部321の下面と下側開閉案内部322の上面との間隔(上下方向の間隔)は、案内子144の直径よりも多少広めに定められる。
【0044】
ところで、カゴ側扉部材12の閉状態において、案内子144は、規制面31の近傍に配置されている。このため、閉状態のカゴ側扉部材12が所定度合い以上に開放されることで、案内子144が案内空間内に進入し、昇降カゴ10の上下方向への移動を規制する。本実施形態において、案内子144が案内空間内に進入するために必要なカゴ側扉部材12の開放度合いは、人の手足や運搬物の一部が昇降カゴ10よりも外側に出ない程度の幅を基準にして定められている。すなわち、エレベータを使用する使用対象の一部が、万一、カゴ側扉部材12に挟まってしまった場合において、案内子144は、昇降カゴ10の上下方向への移動が規制されるよう、案内空間内に存在する。なお、案内子144の案内空間内への進入タイミングは、案内子144の位置で定めている。そして、人の手足や運搬物の一部が昇降カゴ10の外側に出る程度までカゴ側扉部材12が開放された場合、既に案内子144が案内空間に進入しているので、昇降カゴ10の上下方向への移動が規制される。その結果、昇降カゴ10が上下方向へ大きく移動しまう不具合を構造的に防止できる。
【0045】
<まとめ>
以上説明した第1実施形態のエレベータでは、所定の停止位置(すなわち停止階に対応する高さの位置)以外の位置に昇降カゴ10がある場合、ストッパー部材としての案内子144が規制面31に当接することで、カゴ側扉部材12の開放を規制する。一方、所定の停止位置に昇降カゴ10が到達した場合、案内子144が規制面31に当接しないので、カゴ側扉部材12の開放が許容される。この構成により、カゴ側扉部材12の開放が許容される昇降カゴ10の高さ位置を、所定の停止位置に限定することができる。その結果、昇降カゴ10の移動中においてカゴ側扉部材12が不意に開放されてしまう不具合を防止できる。そして、規制面31は、案内レール30の正面側の側面によって構成されている。このように、案内レール30に対して、昇降カゴ10を上下方向に案内する機能と、カゴ側扉部材12の開放を規制する機能とを付与している。その結果、案内レール30を多用途に用いることができ、構成の簡素化が図れる。
【0046】
この案内子144は、カゴ側扉部材12の閉方向への移動に伴って後退する。すなわち、カゴ側扉部材12の移動がブラケット135を介して伝達ワイヤー132に伝達され、伝達ワイヤー132の第2部分132bがスライダ142を後方側に引っ張る。これにより、案内子144が規制面31よりも後方側へ移動される。そして、案内子144は、カゴ側扉部材12が閉じられた閉状態において、規制面31と接触しない退避位置に位置付けられる。また、退避位置において、案内子144は規制面31に接触しないので、昇降カゴ10の上下方向への移動時において、案内子144が摩耗してしまう等の不具合を防止できる。
【0047】
また、第1実施形態のエレベータでは、所定の停止位置に対応させて開閉案内部32が設けられている。この開閉案内部32は、上下方向に所定間隔(案内子144の直径よりも広い間隔)を隔てて配置された上側開閉案内部321と下側開閉案内部322とを有する。そして、カゴ側扉部材12が開放され始めると、案内子144は、開閉案内部32が形成する案内空間に進入する。案内子144が案内空間に進入した状態では、上側開閉案内部321の下面や下側開閉案内部322の上面が他の規制面として機能し、昇降カゴ10の上下方向への移動を規制する。これにより、停止位置の昇降カゴ10が、上方向や下方向へ大きく移動してしまう不具合を防止できる。
【0048】
加えて、第1実施形態のエレベータでは、伝達ワイヤー132を介して扉駆動モータ131の回転を、カゴ側扉部材12へ伝達し、かつ、案内子144にも伝達している。このため、カゴ側扉部材12用の駆動源と、案内子144用の駆動源とを、扉駆動モータ131によって共通化でき、構成の簡素化が図れる。
【0049】
===第2実施形態===
前述した第1実施形態のエレベータでは、非常時における対策は特に施されていなかった。以下、非常時における対策を施した第2実施形態について説明する。
【0050】
<構成について>
この第2実施形態のエレベータでは、カゴ側扉部材12に外力を付与するための外力付与機構として、外力を付与するための外力付与部、及び、外力を付与する際に操作される非常操作部を設けた点に特徴を有する。そこで、以下の説明は、外力付与部(押圧部材50)、及び、非常操作部(操作レバー60)を中心に行い、第1実施形態と同じ部分については、同じ符号を付して説明は省略する。
【0051】
まず、外力付与部と非常操作部について説明する。外力付与部は、昇降カゴ10が或る階と他の階の途中で停止した場合等の非常状態において、カゴ側扉部材12に開方向の外力を付与する。外力を付与する目的は、大きく2つある。第1の目的は、異常停止位置から直近の所定の停止位置(例えば、或る階の停止位置)で、昇降カゴ10を停止させることである。第2の目的は、所定の停止位置で停止した後に、カゴ側扉部材12を開放させることである。非常操作部は、非常時においてカゴ本体11の内側(エレベータ室112)から操作されるものである。この非常操作部は、外力付与部による外力をカゴ側扉部材12に付与する際に操作される。図8から図10Bの各図に示すように、第2実施形態のエレベータでは、外力付与部として押圧部材50が設けられ、非常操作部として操作レバー60が設けられている。
【0052】
押圧部材50は、ロッド51と外筒52とを有する。ロッド51は、一部が外筒52内に配置され、残りの部分が外筒52の先端から外部に突出している。そして、ロッド51は、外筒52に対して進退可能に取り付けられている。このロッド51は、外筒52の内部に設けられたスプリング又はガススプリング(図示せず)によって、突出方向に押圧されている。外筒52とは反対側となるロッド51の先端には、ヘッド部53が設けられている。このヘッド部53は、平常状態において、操作レバー60が有する保持部63に嵌り、位置が固定される。また、ヘッド部53は、非常状態において、右側ブラケット135Rに設けられた受け部135aに嵌る。そして、スプリングによってロッド51が外筒52から突出すると、右側ブラケット135Rはヘッド部53に押され、右側に移動される。外筒52におけるロッド51と反対側の取り付け端部は、カゴ本体11の上面に取り付けられている。この実施形態では、回動軸を中心にして上下方向へ回動可能な状態で取り付けられている。この押圧部材50では、スプリングによる押圧力よりも強い力でロッド51を外筒52側に押し込むと、押し込む力に応じてロッド51は外筒52の内部に進入する。そして、ロッド51の大部分が外筒52の内部に入り込んだ収縮状態では、ロッド51にはスプリングからの強い押圧力が加わる。
【0053】
操作レバー60は、レバー部61と、回動軸62と、保持部63とを有する。レバー部61は、昇降カゴ10に乗っている利用者によって操作される棒状部分である。このレバー部61は、カゴ本体11の天井部に設けられた貫通口113を通じて、室112内に臨んでいる。そして、回動軸62を中心に回動し、平常操作位置、或いは、非常操作位置に位置付けられる。ここで、平常操作位置とは、平常状態におけるレバー部61の位置を意味する。図9,図10Aの場合、回動軸62から右斜め下方の位置である。なお、図11Aの場合、回動軸62から、図における左斜め下方の位置となる。一方、非常操作位置とは、非常状態におけるレバー部61の位置である。平常操作位置が、図10Aのように回動軸62から右斜め下方の位置である場合、非常操作位置は、回動軸62から左斜め下方の位置となる。保持部63は、平常状態においてヘッド部53を保持する部分である。このため、保持部63には、ヘッド部53を保持するための凹部が形成されている。保持部63は、レバー部61の操作に伴って回動し、平常状態において、回動軸62よりも下方に配置される。この状態でヘッド部53からの押圧力が保持部63に作用すると、この押圧力によってレバー部61は平常操作位置に向けて押し付けられる。これは、ヘッド部53からの押圧力が、レバー部61を平常操作位置側に回動させるように作用することによる。ヘッド部53からの押圧力に抗してレバー部61を非常操作位置側へ回動させると、保持部63が回動し、ヘッド部53は次第に上昇する。ヘッド部53がある高さ以上に達すると、ヘッド部53からの押圧力は、レバー部61を非常操作位置側へ回動させるように作用する。その後、レバー部61は、ヘッド部53からの押圧力によっても回動されることになる。レバー部61が非常操作位置まで回動されると、ヘッド部53は、保持部63による固定状態が解かれる。このとき、ヘッド部53は、右側ブラケット135Rに設けられた受け部135aに嵌る。従って、ロッド51の伸張に伴って、ヘッド部53は右側ブラケット135Rを押す。
【0054】
<動作について>
次に、第2実施形態のエレベータにおける動作について説明する。なお、このエレベータは、非常状態における動作に特徴を有している。このため、非常状態の動作を中心に説明する。
【0055】
前述したように、平常状態において、レバー部61は平常操作位置に位置付けられている。図11Aにも示すように、この平常状態において、ロッド51は、その大部分が外筒52の内部に入り込んでおり、スプリングによって突出方向へ押されている。この状態において、ロッド51が有するヘッド部53は、操作レバー60が有する保持部63を押す。ここで、ヘッド部53からの押圧力は、レバー部61を平常操作位置側に回動させるように作用する。この状態において、押圧部材50(ロッド51)による押圧力は、カゴ側扉部材12に作用しない。従って、カゴ側扉部材12は、扉駆動モータ131の回転に応じて開閉方向へ移動される。
【0056】
利用者は、昇降カゴ10が途中で停止した場合等の非常状態を認識すると、平常操作位置にあるレバー部61を、非常操作位置に向けて回動させる。レバー部61を回動させると、図11Bに示すように、ヘッド部53は保持部63に嵌った状態を維持しつつ上方へ移動する。ヘッド部53の上昇に伴い、ヘッド部53(ロッド51)からの押圧力は、レバー部61を非常操作位置側に回動させるように作用する。このため、それ以降におけるレバー部61の回動操作については、軽い力で行うことができる。レバー部61をさらに回動させると、図11Cに示すように、保持部63によるヘッド部53の保持状態が解かれる。これにより、ヘッド部53は、右側ブラケット135Rに設けられた受け部135aに嵌る。そして、ロッド51を通じて付与されるスプリングからの押圧力が、右側ブラケット135Rに作用する。
【0057】
その後、上下方向へ移動する昇降カゴ10が所定の停止位置に到達すると、規制面31による案内子145の規制が解かれ、前進が許容される。これにより、図11Dに示すように、ロッド51が伸張し、右側ブラケット135Rを正面側から見て右側に移動させる(なお、図11Dでは反対側から見ているので、左側に移動されている。)。これに伴い、伝達ワイヤー132の第3部分132cが右側に移動し、第1部分132aが左側に移動し、第2部分132bが奥側に移動する。そして、図12Bに示すように、案内子145は、ヘッド部53の押圧力によって案内空間に進入する。案内子145が案内空間に引っ掛かることで、昇降カゴ10の上下方向への移動は停止される。また、カゴ側扉部材12は開放状態とされる。
【0058】
このような昇降カゴ10の移動の停止、及び、カゴ側扉部材12の開放は、押圧部材50を駆動源としてなされるので、エレベータの制御系に何らかの支障が生じた場合であっても、確実に動作をさせることができる。
【0059】
なお、カゴ側扉部材12に外力を付与する外力付与部は、前述した押圧部材50に限定されない。この外力付与部は、通常状態においては外力を付与せず、非常状態においてはカゴ側扉部材12を開方向に移動させるための外力を付与するものであればよい。
【0060】
ところで、非常状態から通常状態に戻すためには、上記の手順を逆に行えばよい。まず、扉駆動モータ131を駆動して、カゴ側扉部材12を閉方向へ移動させる。これに伴い、伝達ワイヤー132が移動する。すなわち、第1部分132aは右方向へ移動し、第3部分132cは左方向へ移動する。第3部分132cの左方向への移動に伴い、押圧部材50のヘッド部53は、保持部63が有する溝に嵌る(図11Cの状態)。この状態からレバー部61を平常操作位置側に回動させると、ヘッド部53は、保持部63に嵌ったままの状態を維持しつつ、保持部63とともに斜め下方へと移動する(図11Bの状態)。レバー部61が平常操作位置に位置付けられると、ヘッド部53も初期位置に位置付けられる(図11Aの状態)。このように、本実施形態では、扉駆動モータ131の制御とレバー部61の操作とにより、作動後の外力付与部(押圧部材50)を、容易に作動前の状態に復帰させることができる。
【0061】
<その他>
この第2実施形態において、隣接階の高さに相当する長さの予備ワイヤーをドラムに巻回しておき、停電等によって各階の途中で昇降カゴ10が止まった場合には、予備ワイヤーを繰り出して昇降カゴ10を降下させるようにしてもよい。この場合、レバー部61の非常操作位置側への回動により、ドラムの回転を許容できるようにする。そして、遠心ブレーキ機構等によってドラムを緩やかに回転させる。このようにすると、自重によって昇降カゴ10が緩やかに下降し、安全に最寄りの階で停止させることができる。
【0062】
===第3実施形態===
前述した各実施形態のエレベータでは、カゴ側扉部材12の移動をストッパー部材としての案内子144,145に伝達する伝達部材を、伝達ワイヤー132(ワイヤー状の運動伝達部材)によって構成していた。しかし、伝達部材は、伝達ワイヤー132に限るものではない。以下、伝達部材をリンク機構70によって構成した第3実施形態について説明する。
【0063】
<構成について>
この第3実施形態のエレベータでは、伝達部材をリンク機構70によって構成した点、ストッパー部材を閂(カンヌキ)部材146によって構成した点、及び、閂部材146が嵌る切り欠き部33を案内レール30に設けた点に特徴を有する。そこで、以下の説明は、リンク機構70、閂部材146、及び、切り欠き部33を中心に行い、前述した各実施形態と同じ部分については、同じ符号を付して説明は省略する。
【0064】
まず、リンク機構70について説明する。図13Aに示すリンク機構70は、左側のカゴ側扉部材12Lと閂部材146とを連結するための第1リンク71と、第1リンク71の中間部とカゴ本体11における左後方側の偶角部のそれぞれに接続された第2リンク72とを有する。
【0065】
第1リンク71は、細長い板状部材、例えば鋼鉄製の板状部材によって構成されている。第1リンク71の一端は、左側のカゴ側扉部材12Lに対してブラケット73を介して接続されている。そして、第1リンク71の一端とブラケット73とは、図14Bにも示すように、回動軸74aを介して回動可能な状態で接続されている。第1リンク71の他端は、図14Aにも示すように、閂部材146に対し、回動軸74bを介して回動可能な状態で接続されている。そして、ブラケット73と閂部材146は、それぞれ移動可能な状態で取り付けられている。なお、ブラケット73は、左側のカゴ側扉部材12Lに接合されている。このため、第1リンク71の一端は、左側のカゴ側扉部材12Lとともに移動する。また、閂部材146は、第1リンク71の他端とともに移動する。
【0066】
第2リンク72もまた、第1リンク71と同様に、細長い板状部材、例えば鋼鉄製の板状部材によって構成されている。第2リンク72に関し、その幅は第1リンク71とほぼ同じである。一方、その長さは、第1リンク71のほぼ半分に定められている。第2リンク72の一端は、図13に示すように、カゴ本体11の隅角部、詳しくは、正面側からみて左後方側の隅角部に取り付けられている。また、図14Bに示すように、第2リンク72の一端も、回動軸74cによって回動可能な状態で取り付けられている。なお、第2リンク72の一端は、第1リンク71の両端部と異なり、取り付け位置が固定されている。第2リンク72の他端は、第1リンク71の長手方向のほぼ中間に取り付けられている。第2リンク72の他端も、回動軸74dによって回動可能な状態で取り付けられている。第2リンク72の他端は、移動可能な状態で、第1リンク71に取り付けられている。
【0067】
第1リンク71の一端を取り付けるための回動軸74aと、第2リンク72の一端を取り付けるための回動軸74cとは、カゴ本体11の正面と平行な位置関係に配置されている。また、第1リンク71の他端を取り付けるための回動軸74bと、第2リンク72の一端を取り付けるための回動軸74cとは、カゴ本体11の左側面と平行な位置関係に配置されている。このリンク機構70では、第1リンク71の一端が左右方向に移動するとき、第2リンク72が第1リンク71の他端の移動方向を定める。すなわち、第2リンク72の他端は、第1リンク71の長手方向のほぼ中間で、回動軸74dを介して回動可能に接続されているので、この中間部分を第2リンク72の他端の移動軌跡(円弧軌跡)に沿って移動させる。その結果、第1リンク71の他端は前後方向に移動する。従って、このリンク機構70では、左右方向の運動を前後方向の運動に変換できる。要するに、カゴ側扉部材12における左右方向の運動によって、閂部材146を前後方向へ移動させることができる。
【0068】
次に、閂部材146、及び、切り欠き部33について説明する。閂部材146は、図13Aに示すように、広幅部146aと狭幅部146bとを有する所定厚さの板状部材である。広幅部146aは、規制面31に当接するための当接面146cを形成するとともに、昇降カゴ10が所定高さに位置付けられた際において、切り欠き部33に嵌る嵌合部となる部分である。狭幅部146bは、閂部材146の強度を増したり、案内レール30用の逃げ部を形成したりする等のため、広幅部146aと一体に設けられる部分である。例示した閂部材146では、広幅部146aと狭幅部146bとの接合部に面取り加工を施すことで強度を高めている。
【0069】
この閂部材146は、カゴ本体11の上面に、カゴ本体11の左側縁に沿って取り付けられたレール部材147によって前後方向に案内される。そして、広幅部146aは、カゴ側扉部材12の閉状態において、規制面31よりも後方側の位置まで退避される。このため、広幅部146aにおける側面であって狭幅部146b側の面が、規制面31に当接するための当接面146cとなる。また、この閂部材146は、非常状態において昇降カゴ10を支える(後述する。)。このため、閂部材146は、昇降カゴ10を支え得る厚さのものが用いられる。
【0070】
切り欠き部33は、規制面31が形成されない部分を形成する。また、切り欠き部33は、閂部材146が嵌った状態で昇降カゴ10が落下しようとした際に、閂部材146(昇降カゴ10)を支える。このため、切り欠き部33は、案内レール30の板厚方向を貫通するように設けられる。また、切り欠き部33の高さは、閂部材146の厚さよりも大きめに定められる(図14Aを参照。)。これにより、閂部材146は切り欠き部33内に嵌ることができる。そして、切り欠き部33に嵌った状態では、閂部材146が上下方向へ移動しようとしても、切り欠き部33の上面や下面と当接することで、移動可能範囲は規制される。すなわち、閂部材146の上面が切り欠き部33の上面に下側から接触している場合、閂部材146の上方への移動は、切り欠き部33の上面(案内レール30の一部)によって阻止される。同様に、閂部材146の下面が切り欠き部33の下面に上側から接触している場合、閂部材146の下方への移動は、切り欠き部33の下面によって阻止される。このため、切り欠き部33の上面や下面は、昇降カゴ10の下方向への移動や上方向への移動を規制する他の規制面に相当する。
【0071】
この切り欠き部33は、案内レール30を部分的に切り欠くことで形成できる。そして、リンク機構70や閂部材146も、既設のカゴ本体11に容易に追加できる。すなわち、既設のエレベータに対する追加工によって、カゴ側扉部材12の開放規制や、カゴ側扉部材12の開放状態における昇降カゴ10の上下方向の移動規制が行える。従って、既存のエレベータの改良に適する。
【0072】
<動作について>
次に、第3実施形態のエレベータにおける動作について説明する。なお、このエレベータは、カゴ側扉部材12の開閉時における閂部材146の動きに特徴を有している。このため、カゴ側扉部材12の開閉動作と閂部材146の動きとの関係を中心に説明する。
【0073】
カゴ側扉部材12が閉状態にあるとき、図13Aに示すように、閂部材146が有する作用面は、規制面31から離れた場所に位置付けられている。この閉状態で或る階と他の階との間を昇降カゴ10が移動しているとき、開方向への力が加わってカゴ側扉部材12が移動すると、閂部材146が前進する。すなわち、規制面31の側へ移動する。閂部材146の前進によって当接面146cが規制面31に当接すると、閂部材146のそれ以上の前進が阻止される。このため、カゴ側扉部材12のそれ以上の開放が阻止される。従って、カゴ側扉部材12が過度に開放されてしまう不具合を確実に防止できる。ここで、本実施形態では、左側のカゴ側扉部材12Lと閂部材146とを、鋼鉄製の板状部材によって作製された第1リンク71を介して連結している。このため、カゴ側扉部材12の開方向への移動の規制を確実に行うことができる。すなわち、第1リンク71の剛性により、閂部材146の当接面146cが規制面31に当接した以降において、カゴ側扉部材12の開方向への移動を確実に防止できる。
【0074】
また、カゴ側扉部材12に開方向の力が加わったまま昇降カゴ10が上下方向へ移動し、所定の停止位置に到達すると、図15Aや図15Bに実線で示すように、閂部材146の広幅部146aは、案内レール30に設けられた切り欠き部33に嵌る。広幅部146aが切り欠き部33に嵌ると、昇降カゴ10の上下方向の移動が規制される。すなわち、昇降カゴ10が下方向へ移動しようとしても、切り欠き部33の下面(他の規制面)が広幅部146aの下面に下側から接するので、昇降カゴ10の移動を阻止する。反対に、昇降カゴ10が上方向へ移動しようとしても、切り欠き部33の上面(他の規制面)が広幅部146aの上面に上側から接するので、昇降カゴ10の移動を阻止する。従って、昇降カゴ10を所定の停止位置に位置づけることができる。ここで、広幅部146aは、カゴ側扉部材12が開き始めてから完全に開くまで切り欠き部33に嵌っている。そして、広幅部146aが切り欠き部33に嵌るのは、カゴ側扉部材12の開放度合いが、所定度合いのときである。すなわち、カゴ側扉部材12が開き始めた時点で、広幅部146aが切り欠き部33に嵌るように、広幅部146aの退避位置が定められている。このため、利用者の身体の一等が開口部111に万一挟まってしまっても、昇降カゴ10が上下方向へ大きく移動してしまう不具合を防止できる。
【0075】
===その他の実施形態===
上記の各実施形態は、主として、昇降システムの一例であるエレベータについて記載されているが、その中には、昇降カゴ10の停止位置の規制構造や規制方法、昇降カゴ10の上下方向への移動時における速度規制構造や規制方法などの開示が含まれている。また、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。例えば、各実施形態に記載された構成を組み合わせてもよい。そして、以下に述べる実施形態についても、本発明に含まれるものである。
【0076】
<昇降システムについて>
エレベータに関し、人間用の他に物用のものも含まれる。すなわち、人や物を載せて上下方向に移動される昇降カゴ10を備えていればよい。
【0077】
<ストッパー部材等について>
前述した各実施形態において、ストッパー部材や伝達部材は、左右の一側に設けられていた。この点に関し、左右両側に設けるようにしてもよい。図16に示す実施形態は、案内レール30が左側案内レール30と右側案内レール30とから構成されている。これに対応して、リンク機構70は、左側リンク機構70Lと右側リンク機構70Rによって構成され、閂部材146は、左側閂部材146と右側閂部材146によって構成されている。この実施形態では、カゴ側扉部材12が開放された場合に、左右の両側で昇降カゴ10の上下方向への移動が規制される。このため、昇降カゴ10の規制を確実に行える。また、規制時における昇降カゴ10の姿勢を安定させることもできる。
【0078】
<規制面形成部材について>
前述した各実施形態において、規制面31は、案内レール30の側面によって構成されていた。これらの実施形態では、案内レール30が規制面形成部材を兼ねているので、構成の簡素化が図れるといった利点を有する。しかし、規制面形成部材を案内レール30とは別に設けてもよい。例えば、図17A,図17Bに示すように、昇降カゴ10の正面に臨む躯体42における、躯体側扉部材43に干渉しない位置に、規制面形成部を設けてもよい。この実施形態では、規制面形成部として、躯体42の表面にコンクリート等で作製されたパネル状の規制面形成パネル80を設けている。そして、案内子144を、連結部143及びブラケット148を介して左側のカゴ側扉部材12Lの上方に取り付けている。このように構成しても、前述した各実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0079】
<伝達部材について>
前述した各実施形態では、伝達部材として、伝達ワイヤー132やリンク機構70を例示した。伝達部材は、これらの部材に限定されるものではない。例えば、伝達部材を、プッシュプルワイヤーによって構成してもよい。また、2本のシリンダ(シリンダ対)を用いてもよい。例えば、一方のシリンダのヘッド側油圧室と他方のシリンダのヘッド側油圧室とをホースにより接続し、一方のシリンダのボトム側油圧室と他方のシリンダのボトム側油圧室とを他のホースにより接続したものを用いてもよい。このようなシリンダ対を用いると、一方のシリンダを運動させることで、他方のシリンダを運動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】エレベータ装置の構成を説明するための図である。
【図2】昇降カゴ、及び、建物の躯体を上方から見た図である。
【図3】図2におけるA−A断面図である。
【図4】図4Aは、開放規制機構及びその周辺部を斜め上方から見た図である。図4Bは、開放規制機構を上方から見た図である。
【図5】昇降カゴの停止位置に設けられる案内レール及びガイド部材を説明するための図である。
【図6】図6Aは、開放規制機構が有する案内子及びその周辺部を上方から見た図である。図6Bは、開放規制機構が有する案内子及びその周辺部を側方から見た図であり、図6AにおけるB−B断面図である。
【図7】図7Aは、開放規制機構が有する案内子の移動が許容されている状態を説明する図であり、図6BにおけるC−C断面図である。図7Bは、開放規制機構が有する案内子が案内レールに設けられた規制面に当接している状態を説明する図であり、図6BにおけるC−C断面図である。
【図8】第2実施形態を説明する図であり、昇降カゴ、及び、建物の躯体を上方から見た図である。
【図9】押圧部材と操作レバーの配置を説明する図であり、図8におけるD−D断面図である。
【図10】図10Aは、押圧部材の構成を説明する正面図である。図10Bは、押圧部材の構成を説明する平面図である。
【図11】図11Aは、平常操作位置にある場合の操作レバーと押圧部材を説明する図である。図11Bは、平常操作位置から少し回動した状態の操作レバーと押圧部材を説明する図である。図11Cは、非常操作位置にある場合の操作レバーと押圧部材を説明する図である。図11Dは、押圧部材のロッドが伸張した状態を説明する図である。
【図12】図12Aは、案内子が規制面に押し付けられている状態を説明する図である。図12Bは、案内子が案内空間に進入する様子を説明する図である。
【図13】図13Aは、リンク機構等を説明するための図である。図13Bは、案内レールに設けられた切り欠き部を説明するための図である。
【図14】図14Aは、閂部材等を説明するための図であり、図13AにおけるE−E断面図である。図14Bは、リンク機構等を説明するための図であり、図13AにおけるF−F断面図である。
【図15】図15Aは、リンク機構の動作を説明する図である。図15Bは閂部材の動作を説明する図である。
【図16】カゴ本体における左右両側に、リンク機構と閂部材を設けた実施形態を説明する図である。
【図17】図17Aは、昇降カゴの正面に臨む建物の躯体に規制面形成パネルを設けた実施形態の説明図である。図17Bは、規制面形成パネルと案内子の関係を説明する図であり、図17AにおけるG−G断面図である。
【符号の説明】
【0081】
10 昇降カゴ,
11 カゴ本体,111 開口部,112 室,113 貫通口,
12 カゴ側扉部材,12L 左側のカゴ側扉部材,
12R 右側のカゴ側扉部材,
13 開閉機構,131 扉駆動モータ,132 伝達ワイヤー,
132a 伝達ワイヤーの第1部分,
132b 伝達ワイヤーの第2部分,
132c 伝達ワイヤーの第3部分,
133 扉用駆動プーリ,
134a 第1の扉用アイドラプーリ,
134b 第2の扉用アイドラプーリ,
134c 第3の扉用アイドラプーリ,
135 ブラケット,135L 左側ブラケット,
135R 右側ブラケット,135a 受け部,
14 開放規制機構,141 ガイド部材,
141a ガイド溝,142 スライダ,143 連結部,
144 案内子,145 案内子,146 閂(カンヌキ)部材,
146a 広幅部,146b 狭幅部,146c 当接面,
147 レール部材,148 ブラケット,
15 案内溝形成部,151 案内溝,
20 昇降機構,21 ケーブル,22 巻き上げ機,
221 巻き上げモータ,222 カゴ用駆動プーリ,
223 巻き上げモータの回転軸,23 カゴ用アイドラプーリ,
24 釣り合いおもり,
30 案内レール,31 規制面,32 開閉案内部,
321 上側開閉案内部,322 下側開閉案内部,
33 切り欠き部,
40 建物,41 昇降路,42 躯体,43 躯体側扉部材,
43L 左側の躯体側扉部材,43R 右側の躯体側扉部材,
50 押圧部材,51 ロッド,52 外筒,53 ヘッド部,
60 操作レバー,61 レバー部,62 回動軸,63 保持部,
70 リンク機構,70L 左側リンク機構,70R 右側リンク機構,
71 第1リンク,72 第2リンク,73 ブラケット,
74a 回動軸,74b 回動軸,74c 回動軸,74d 回動軸
S 切断部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)上下方向に移動可能な昇降カゴであって、
側面に開口部を有するカゴ本体と、
前記開口部を塞ぐ閉方向と前記開口部を臨ませる開方向とに移動可能な扉部材と、
伝達部材を介して前記扉部材に接続され、前記扉部材の前記開方向への移動に伴って前進し、前記閉方向への移動に伴って後退するストッパー部材と、
を有する昇降カゴと、
(B)予め定められた停止位置に前記昇降カゴが到達した場合には、前記ストッパー部材が当接されずに、前記扉部材の前記開方向又は前記閉方向への移動を許容し、前記停止位置以外の位置に前記昇降カゴがある場合には、前記ストッパー部材が当接されて前記扉部材の前記開方向への移動を規制する規制面を備えた規制面形成部材と、
(C)を有する昇降システム。
【請求項2】
請求項1に記載の昇降システムであって、
前記規制面形成部材は、
前記昇降カゴの上下方向への移動を規制する他の規制面であって、前記停止位置で前記扉部材が所定度合い以上に開放された場合に、前記ストッパー部材に対して上側又は下側から当接する他の規制面を備える、昇降システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の昇降システムであって、
前記規制面形成部材は、
建物の躯体側に設けられ、前記昇降カゴを上下方向に案内するための案内レールによって構成されている、昇降システム。
【請求項4】
請求項3に記載の昇降システムであって、
前記案内レールは、
前記停止位置に前記昇降カゴが位置付けられた状態における前記ストッパー部材に対応する高さの部位に、前記ストッパー部材の少なくとも一部が嵌る空間を備える、昇降システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れかに記載の昇降システムであって、
前記昇降カゴは、
前記扉部材を前記開方向へ移動させるための外力を付与する外力付与機構を備える、昇降システム。
【請求項6】
請求項5に記載の昇降システムであって、
前記外力付与機構は、
前記昇降カゴの内側から操作可能であって、操作によって平常操作状態と非常操作状態とに切り替え可能な非常操作部と、
前記開方向へ移動させるための外力を前記扉部材に付与する外力付与部であって、前記非常操作部が平常操作状態の場合には収縮状態とされて前記扉部材には作用せず、前記非常操作部が非常操作状態とされた場合には伸張状態となって前記外力を前記扉部材に付与する外力付与部とを備える、昇降システム。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れかに記載の昇降システムであって、
前記伝達部材は、
前記扉部材の移動方向への運動を、前記扉部材の移動方向とは交差する交差方向への運動に変換する伝達ワイヤーによって構成される、昇降システム。
【請求項8】
請求項1から請求項6の何れかに記載の昇降システムであって、
前記伝達部材は、
前記扉部材の移動方向への運動を、前記扉部材の移動方向とは交差する交差方向への運動に変換するリンク機構によって構成される、昇降システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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