説明

扉用錠装置

【課題】扉用錠装置に関し、解錠操作時の不用意な扉の開放を確実に防止することのできることを目的とする。
【解決手段】扉1からの突出姿勢で扉枠2に係止し、開扉操作に伴って扉1に没入して扉枠2との係止状態を解除するラッチ3、およびアクチュエータ4により駆動され、ロック位置においてラッチ3の没入動作を規制して閉扉状態を維持して施錠するラッチストッパ5を備えたラッチ部6と、
扉操作ハンドル7に配置され、扉操作ハンドル7の操作者による操作を検出する接触センサ8と、
操作者のラッチ部6におけるラッチストッパ解除権限に対する認証成立を条件にラッチストッパ5を駆動する錠制御部9とを有し、
前記錠制御部9は、認証成立に加え、認証成立から所定時間内での接触センサ8による操作者の検出をラッチストッパ5の解除駆動の条件とする解錠条件判定部10を備えることにより構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉用錠装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
扉枠に係止して閉扉状態を維持するためのラッチ装置を施錠体として使用する扉用錠装置としては、特許文献1に記載のものが知られている。この従来例において、扉用錠装置は、反転ラッチと、施錠状態において反転ラッチの反転動作を規制して扉を施錠状態とするロック部と、ロック部を施解錠状態に移行させる電気駆動部とを有し、所定権限を有する利用者による施解錠命令に基づいて電気駆動部を駆動させることにより施解錠操作が行われる。
【特許文献1】特開2008-179997号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、反転ラッチを施錠体としてアクチュエータにより駆動すると、以下の問題がある。すなわち、反転ラッチは、ロック部の解除により開扉操作だけで扉が開放可能な状態となるために、風圧等で扉が不要に開放されてしまうことを完全に防止できない。
【0004】
本発明は、以上の問題を解決すべくなされたものであって、解錠操作時の不用意な扉の開放を確実に防止することのできる扉用錠装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
扉用錠装置はラッチ部6と、扉操作ハンドル7に配置される接触センサ8と、錠制御部9とを有する。ラッチ部6は、扉1から突出して扉枠2に係止可能であるが、開扉操作力が与えられた場合には、扉1に没入して係止状態を解除するラッチ3と、ロック位置においてラッチ3の扉1内への没入を規制するラッチストッパ5とを有し、ラッチストッパ5の駆動は、錠制御部9により制御されるソレノイド、あるいはモータ等のアクチュエータ4により行われる。ラッチストッパ5がロック位置にあるセット状態のとき、扉1から突出して扉枠2に係止したラッチ3は扉1内への没入が規制されるために、閉扉状態が維持される。同時に、この状態ではラッチ3の没入動作を伴う開扉操作も規制されるために、ラッチ部6を施錠要素として利用することができる。
【0006】
錠制御部9は、認証部16において認証部16扉用錠装置に対する真正な操作者であることの認証をラッチストッパ5の駆動条件とする。認証部16における認証用情報には、暗証番号、指紋等の生体情報等に加え、利用者が所持する携帯器11の認証用ID信号を利用することができる。後述するように、認証部16を携帯器11に対する認証手段として構成すると、扉1に達するまでに認証動作を完了させることができるために、開扉操作までの待ち時間がなくなり、使い勝手が向上する。
【0007】
また、錠制御部9は解錠条件判定部10を有し、解錠操作、すなわち、ラッチストッパ5のセット解除のための条件を付加する。解錠条件判定部10によりラッチストッパ5の解除条件として認証部16での認証に加えて扉操作ハンドル7への接触検知を加えることにより、扉1に手を触れていない状態でラッチ3が解除され、風等によって不用意に扉1が開くのを防止することができる。
【0008】
さらに、上述したように、権限認証手段として携帯器11を使用するとともに、錠制御部9に、携帯器11に応答要求信号を所定時間間隔で出力する巡回動作部17を設けることができる。巡回動作部17は携帯器11に対して応答要求信号を所定時間間隔で出力し、応答要求信号に対する携帯器11からのレスポンスを受信する。レスポンスには、携帯器11毎に与えられた携帯器11固有の認証用ID信号が含まれ、認証用ID信号に対する認証が成立すると、所定時間の間、接触センサ8からの出力を監視し、出力があった場合にラッチストッパ5のセットを解除して解錠状態とする。
【0009】
このように、認証可能な携帯器11が交信可能範囲に進入したタイミングで携帯器11の認証動作を行うと、扉1の前で携帯器11に対する認証完了を待つ場合に比して、早く扉1の開放操作を行うことができるために、利便性が向上する。
【0010】
また、置き忘れの携帯器11による誤動作の防止のためにレスポンス信号の出力をモーション検出部等による動き検出を条件とする携帯器11を使用する場合、静止した状態で行われることの多い扉1の前での認証動作では、携帯器11がレスポンス信号を出力しない可能性がある。これに対し、携帯器交信開始時から扉1までの移動は携帯器11の動きを必然的に伴うために、この期間で認証動作を終了させる本構成においては、上述した問題の発生を確実に防止できる。
【0011】
さらに、ラッチ部6におけるラッチストッパ5の解除、すなわち、開扉可能状態への移行は、巡回動作時の携帯器11に対する認証成立から所定時間内での操作者検出を条件とするために、例えば、一旦交信可能エリアに進入した後、入室することなく再び交信可能エリアから退出しても、ラッチストッパ5が解除されて誰でも開扉操作が可能となることはない。巡回動作における認証不成立は、巡回動作部17における認証可否信号の書き替え動作時に認証可能携帯器11が交信範囲内に存在しない場合に発生し、上述したように、入室前の待避に加え、入室による交信遮断、あるいは入室後に携帯器11を置くことによるモーション停止等、種々の設定された条件の満足によりもたらされる。
【0012】
巡回動作の間隔は、固定したものであっても、あるいは巡回動作により認証可能な携帯器11が検出された場合には、携帯器11が検出されなくなるまで、巡回間隔を短くするように、可変のものであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、携帯器への認証は、携帯器が交信エリア内に進入したことによって開始され、利用者が扉の前に立ったときにはすでに認証動作は終了しているために、解錠動作の速度が早くなり、使い勝手を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1に示すように、扉用錠装置は、ラッチ部6と、ラッチ部6の動作を制御する錠制御部9とを有する。図1には、ラッチ部6、および錠制御部9を扉1に固定した場合を示すが、錠制御部9は、扉1以外に配置することもできる。
【0015】
また、扉1には、扉1の開放操作を行う際の手掛けとなる扉操作ハンドル7と、施解錠操作を行う際の施錠ボタン18、および解錠ボタン19が配置され、扉操作ハンドル7の適宜箇所には、静電容量センサからなる接触センサ8が配置される。
【0016】
ラッチ部6は、ラッチケース20内に収容されるラッチ3、ラッチストッパ5、およびアクチュエータ4とを有する。ラッチ3は後に詳述するように、反転ラッチであり、閉扉時の扉枠2との係止状態の維持、解除をアクチュエータ4により駆動されるラッチストッパ5のセット、セット解除操作により制御でき、閉扉状態でラッチストッパ5をロック位置に駆動してセットすると、ラッチ3の扉枠2内への没入が規制され、実質的に扉1を施錠したのと同様の状態となる。これに対し、ラッチストッパ5をロック解除位置に移動させたセット解除状態で扉1に開放操作力を与えると、ラッチ3が所定角度回転した後、扉1内に没入し、扉枠2との係止が解除される。
【0017】
錠制御部9は、携帯器11が発信する認証用IDの認証を条件としてラッチ部6の施解錠状態を遷移させる。図2に示すように、携帯器11は、制御部21(CPU)により制御されるRF送出部22、LF受信部23、携帯器固有の認証用IDが格納されるID記憶部24、施錠ボタン操作検出部25、および解錠ボタン操作検出部26を有する。
【0018】
携帯器11には、利用者により操作可能な施錠ボタン27と解錠ボタン28とが配置されており、いずれかへの操作が施解錠ボタン操作検出部26により検出されると、CPU21は、ID記憶部24内の認証用ID、および施解錠の区別を含む認証用無線信号(認証用ID信号)を生成してRF送出部22に出力し、アンテナ29から発信する。
【0019】
また、携帯器11は、扉用錠装置から出力される応答要求信号を受信するLF受信部23を有しており、LF受信部23が応答要求信号を受信すると、CPU21は、携帯器11側の施解錠ボタン操作による交信開始時と同様に認証用ID信号をセットし、RF送出部22から出力する。
【0020】
上記錠制御部9は、アクティブモード、パッシブモード、および巡回動作部17において実行される巡回モードにより電気錠部、ラッチ部6を制御する。アクティブモードは、利用者が携帯器11に配置された施解錠ボタン27、28を操作することによる施解錠操作モードであり、携帯器11から出力された認証用ID信号に対する認証が成立すると、操作されたボタン種に応じて施解錠操作が行われる。各モードにおいて、指定された操作が解錠操作である場合には、解錠条件判定部10において解錠可能と判定された場合のみ解錠動作が行われる。
【0021】
パッシブモードは、扉1側に配置された施解錠ボタン18、19を操作することによる施解錠操作モードであり、施解錠ボタン18、19を操作すると、錠制御部9は携帯器11に応答要求信号を出力し、これに応答した携帯器11から出力される認証用ID信号に対する認証成立を条件に施解錠操作が行われる。
【0022】
これに対し、巡回モードは、利用者による明示的な操作を要することなく解錠操作が開始される点でアクティブモード、およびパッシブモードと相違し、モードが重合した場合、利用者による明示的な操作、すなわち、アクティブ、あるいはパッシブモードによる動作が優先される。
【0023】
図3に錠制御部9の機能ブロック図を示す。錠制御部9は、制御部30(CPU)に接続されるID記憶部31、RF受信部32、認証部16、施錠ボタン操作検出部33、解錠ボタン操作検出部34、およびセンサ検出部35を有する。扉1に配置された施解錠ボタン18、19への操作が施錠ボタン操作検出部33、あるいは解錠ボタン操作検出部34により検出されると、パッシブ動作が開始される。パッシブ動作が開始されると、CPU30は応答要求信号をLF送出部36にセットし、アンテナ37を経由して携帯器11に送信する。応答要求信号には、操作された施解錠ボタン18、19に対応する施解錠識別信号が付与され、応答要求信号出力後、CPU30は所定時間、RF受信部32からの出力を監視して携帯器11からのレスポンスを待ち、携帯器11からの認証用ID信号を受信すると、認証部16に出力する。
【0024】
認証用ID信号を受領した認証部16は、認証用IDがID記憶部31内に存在するか否かを判定し、存在する場合に認証成立信号をCPU30に出力する。認証成立信号を受領したCPU30は、上記施解錠種信号から施解錠種別を判定し、施錠命令である場合には、ラッチ駆動部38に施錠信号をセットし、ラッチストッパ5をセット状態に移行させる。これに対し、施解錠種別が解錠要求である場合には、解錠条件判定部10においてタイマーをスタートさせるとともに、センサ検出部35の出力を監視し、タイマーにより設定された時間内にセンサ検出部35が扉操作ハンドル7の操作を検出した場合にのみラッチ駆動部38に解錠信号をセットしてラッチストッパ5をセット解除状態に移行させ、解錠状態とする。
【0025】
また、錠制御部9は、携帯器11から応答要求信号に対するレスポンス以外の交信可能な信号をRF受信部32が受信することによりアクティブ動作を開始され、認証用ID信号を受信すると、上述したパッシブ動作と同様の手順でラッチストッパ5の操作が行われる。
【0026】
さらに、巡回モードは、所定時間間隔の応答要求信号の出力により開始される。巡回動作部17から出力される信号出力タイミング信号をCPU30が受けると、応答要求信号をセットしてLF送出部36から出力し、パッシブ動作と同様に、認証用ID信号の認証に備える。
【0027】
図4、5に上記錠制御部9の動作を示す。まず、運用開始によりCPU30は扉開閉検出部39の出力を監視する(ステップS1)。ステップS1で扉閉信号が検出されると、利用者による操作があるか否かが検出され(ステップS2)、これらの要求がない場合、巡回モードに対する応答携帯器11があるか否かを検出する(ステップS3)。
【0028】
ステップS3において巡回動作に応答した携帯器11が検出され、かつ、この携帯器11から出力される認証用ID信号に対する認証部16で認証が成立すると、解錠条件判定部10における解錠条件の判定が行われる。解錠条件の判定に際し、まず、扉操作ハンドル7への操作時間を制限するために、タイマーを起動し(ステップS4)、所定時間の間、センサ検出部35の出力を監視する(ステップS5、6)。
【0029】
計時ルーチンにおいて、明示的な利用者による施解錠要求が検出され(ステップS7、8、9)、要求の操作が行われる。また、計時ルーチン内で解錠要求があった場合には(ステップS9)、ステップS4に戻ってタイマーを新たにスタートさせ、計時時間を実質的に延長する。
【0030】
計時ルーチンにおけるタイムアップ前に扉操作ハンドル7への操作が検出されると、ラッチストッパ5を解除した後(ステップS10)、ラッチストッパ5の解除時間を制限するためにタイマーをセットする(ステップS11)。ラッチストッパ5の解除による施錠状態への復帰は、タイムアップ(ステップS12)に加え、扉開閉検出スイッチ61と接続される扉開閉検出部39における扉開状態の検出、すなわち、利用者による扉1の開放(ステップS14)、あるいは施錠要求によるもの(ステップS13、S16、S17)があり、長時間にわたる不要な解錠状態の継続が防止される。
【0031】
これに対し、ステップS2において利用者による明示的な操作要求があった場合、その種類が検出される。まず、この実施の形態において扉操作ハンドル7の接触センサ8(静電容量センサ)は、上記解錠条件判定部10における解錠判定要素として以外に、解錠ボタン27としての機能をも有しており、ステップS2-1で扉操作ハンドル7への操作が検出されると、携帯器11への応答要求信号を出力し(ステップS2-1-1)、認証が成立すると(ステップS2-1-2)、ステップS10から始まるラッチストッパ解除処理が行われる。
【0032】
扉操作ハンドル7を使用した解錠要求の場合、すでに扉操作ハンドル7への操作が行われているために、認証の完了を待って直ちにラッチストッパ5が解除される。
【0033】
これに対し、解錠ボタン27の操作が検出されて認証が成立すると(ステップS2-2-1、S2-2-2、)、ステップS4のタイマーセットに始まる操作期限付きのラッチストッパ5解除処理が実行され、施錠ボタン27の操作が検出されて認証が成立すると(ステップS2-3-1、S2-3-2)、ステップS2-7以下の施錠処理が実行される。
【0034】
また、アクティブ操作による携帯器11が認証されると施解錠種が検出され(ステップS2-4)、解錠要求の場合(ステップ2-5)、操作期限付きのラッチストッパ解除処理(ステップS4以下)が実行され、施錠指示である場合には(ステップS2-6)、施錠処理が実行される。
【0035】
施錠処理は、まず、ラッチストッパ5をセットした後(ステップS2-7)、扉1が開けられるか(ステップS2-11)、所定期間が経過することにより(ステップS2-8、S2-9)終了して初期制御に復帰する。施錠処理実行中に解錠操作が行われた場合には(ステップS2-10)、新たに解錠動作が行われる。
【0036】
図6以下にラッチ部6の詳細を示す。ラッチ部6は扉1の内部に挿入固定され、扉1の表裏にはラッチ部6を手動操作するためのシリンダ錠13と、サムターン装置40が固定される。これらシリンダ錠13とサムターン装置40の各々には回転操作に伴って回転する操作軸41が設けられる。
【0037】
図6、8に示すように、ラッチ部6のラッチケース20には、前方と上下側壁が開放されるともに、後端がバネ受け壁42により閉塞されたラッチ保持筒43が固定され、ラッチ3はこのラッチ保持筒43内に前後移動自在に収容される。ラッチ3は、前端部にラッチ3の移動方向に平行な係止面と、この係止面に鋭角で交差するストッパ面とを有し、上下が水平面からなる三角柱形状のブロック部3aを備え、ブロック部3aをラッチ保持筒43の前方開口43cから露出させた姿勢でラッチ保持筒43内に挿入される。
【0038】
また、ラッチ3にはラッチ保持筒43の上下側壁開口43a、43b内に張り出すストッパアーム3bが後方に向けて突設され、これら一対のストッパアーム3b、3bに挟まれるようにしてスライダ44がラッチ保持筒43内に前後移動自在に配置される。スライダ44と上記バネ受け壁42との間には圧縮スプリングが装着され、ラッチ3は、スライダ44により前方に付勢される。図8(b)に示すように、圧縮スプリング45は、ストッパ面寄りに偏位して配置される。
【0039】
さらに、ブロック部3aの上下面にはラッチ保持筒43の上下側壁開口43b内に突出するカム突起3cが突設され、このカム突起3cに正対するように、上下側壁開口43a、43bの前端面にはカム受け面43cが形成される。
【0040】
解錠状態において、図9(a)に示すストライク開口2aへの係止状態から扉1に開放方向の操作力が付与されると、ラッチ3の係止面はストライク開口2aから矢印Oと反対方向の力を受ける。この結果、ラッチ3は、図9(b)に示すように、ストッパ面がラッチ保持筒43の内壁面に当接するまで時計回りに回転して没入可能姿勢に移行する。この状態からさらに開扉操作を続けると、開扉方向線に対して斜めとなった係止面はストライク開口2aの周縁からラッチ没入方向の分力を受け、ラッチ3は圧縮スプリング45の反力に抗して扉1内に没入してストライク開口2aから脱離する(図9(c)参照)。
【0041】
この後、扉1が扉枠2から完全に離れると、圧縮スプリング45の復元力によりラッチ3は前方に押し出され、カム突起3cはカム受け面43cに当接する。図9(c)に示す姿勢で、ラッチ3とスライダ44との接触部は、カム受け面43cとカム突起3cとの接触部に対して開扉方向に偏位しているために、ラッチ3には反時計回りに回転力が作用し、ラッチ3は、自動的に係止姿勢に復帰する。
【0042】
開扉状態でラッチ3が係止姿勢にあるとき、ストッパ面が扉枠2に正対しているために、この状態から閉扉操作を行うと、ラッチ3はストッパ面からの没入分力により一旦没入した後、ストライク開口2aに係止する。
【0043】
図8に示すように、閉扉状態においてラッチ3を係止姿勢に維持し、ラッチ3の係止状態を維持するためのラッチストッパ5は、ラッチ3のストッパアーム3bの移動を拘束してラッチ3の回転を規制する。図6(b)に示すように、ラッチストッパ5はラッチケース20に連結されるストッパレバー46の一端に形成される。ストッパレバー46は枢軸47周りに回転自在であり、トーションスプリング48によりラッチストッパ5がラッチ3を拘束するストッパセット方向に付勢される。
【0044】
アクチュエータ4にはソレノイドが使用される。ソレノイド4は、図6(b)に示す非励磁状態がラッチストッパセット状態、図7(a)に示す励磁状態がストッパ解除状態に対応する。このソレノイド4の駆動力は、ソレノイド4の駆動軸4aに連結されるソレノイドレバー49、および中継レバー50を経由して上記ストッパレバー46に伝達される。
【0045】
ソレノイドレバー49は、枢軸51周りに、中継レバー50は枢軸52周りに各々回転自在であり、ソレノイドレバー49から中継レバー50への動力伝達は、ソレノイドレバー49に形成される突部49aにより中継レバー50の第1ピン50aを押し付けることにより行われる。また、中継レバー50とストッパレバー46とは、中継レバー50に立設した第2ピン50bをストッパレバー46の長孔46aに移動自在に挿通させて連結される。
【0046】
図6(a)に示すラッチストッパ5セット状態からソレノイド4を励磁すると、図7(a)に示すように、ソレノイドレバー49は反時計方向に回転し、突部49aが第1ピン50aを押圧する。この結果、中継レバー50は時計回りに回転し、ストッパレバー46は反時計回りに回転し、ラッチストッパ5とラッチ3のストッパアーム3bとの係止が解除される。
【0047】
このラッチストッパ解除状態からソレノイド4の励磁を停止すると、ソレノイドの駆動軸4aが図6(a)に示す突出位置に復帰してソレノイドレバー49を原位置に復帰させる。ソレノイドレバー49の復帰により、第1ピン50aへの押圧力が解除されて中継レバー50に対する反時計回りへの回転拘束が解除され、トーションスプリング48の復元力によりラッチストッパセット位置側に付勢されたストッパレバー46はラッチストッパセット位置に移動する。
【0048】
また、上述したシリンダ錠13等を解錠操作した場合、図7(b)に示すように、操作軸41の回転により中継レバー50が時計回りに回転する。中継レバー50の時計回りの回転は、ソレノイドレバー49に影響を与えないために、ソレノイド4の非励磁状態での抵抗を受けることなく、中継レバー50を作動させることが可能であり、中継レバー50の回転によりストッパレバー46は時計回りに回転してラッチストッパ5はセット解除状態に移行する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明を示す機能ブロック図である。
【図2】携帯機の機能ブロック図である。
【図3】錠制御部の機能ブロック図である。
【図4】錠制御部の動作を示すフローである。
【図5】錠制御部の動作を示すフローである。
【図6】扉用錠装置を示す図で、(a)はラッチ部を示す図、(b)は断面図である。
【図7】扉用錠装置を示す図で、(a)はソレノイドの励磁状態を示す図6(b)に対応する図、(b)は操作軸を回転させた状態を示す図である。
【図8】ラッチを示す図で、(a)は図6(b)の8A方向矢視図、(b)の8B-8B線断面図である。
【図9】ラッチの動作を示す図で、(a)は扉枠への係止状態を示す図、(b)は反転状態を示す図、(c)は扉への没入状態を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1 扉
2 扉枠
3 ラッチ
4 アクチュエータ
5 ラッチストッパ
6 ラッチ部
7 扉操作ハンドル
8 接触センサ
9 錠制御部
10 解錠条件判定部
11 携帯器
12 リンク装置
13 シリンダ錠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉からの突出姿勢で扉枠に係止し、開扉操作に伴って扉に没入して扉枠との係止状態を解除するラッチ、およびアクチュエータにより駆動され、ロック位置においてラッチの没入動作を規制して閉扉状態を維持して施錠するラッチストッパを備えたラッチ部と、
扉操作ハンドルに配置され、扉操作ハンドルの操作者による操作を検出する接触センサと、
操作者のラッチ部におけるラッチストッパ解除権限に対する認証成立を条件にラッチストッパを駆動する錠制御部とを有し、
前記錠制御部は、認証成立に加え、認証成立から所定時間内での接触センサによる操作者の検出をラッチストッパの解除駆動の条件とする解錠条件判定部を備える扉用錠装置。
【請求項2】
前記錠制御部は、利用者が所持し、錠制御部から出力される応答要求信号に対して認証用ID信号を出力可能な携帯器の認証により権限認証を行うとともに、
錠制御部には、前記携帯器に応答要求信号を所定時間間隔で出力する巡回動作部が設けられる請求項1記載の扉用錠装置。
【請求項3】
前記ラッチストッパはロック解除駆動された後、所定時間経過後にロック位置に駆動される請求項1または2記載の扉用錠装置。
【請求項4】
前記ラッチ部は、扉枠との当接面が開扉軌跡に直交する係止姿勢と、開扉軌跡に対して斜行し、開扉操作による没入方向の分力が発生する没入可能姿勢との間を回転自在で、ラッチストッパにより係止姿勢から没入可能姿勢への移行が規制される反転ラッチ装置として形成される請求項1、2または3記載の扉用錠装置。
【請求項5】
前記ラッチストッパはロック位置側に付勢されて回転自在に軸支されるとともに、
アクチュエータとラッチストッパとの間には、ラッチストッパのロック解除位置側への相対移動を許容して該ラッチストッパをロック解除位置に押圧可能なリンク装置が介装され、
ロック位置においてリンク装置を扉外に固定したシリンダ錠により操作してロック解除位置に駆動可能な請求項1、2、3または4記載の扉用錠装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−101125(P2010−101125A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275470(P2008−275470)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(000170598)株式会社アルファ (433)
【Fターム(参考)】