説明

手押し車

【課題】着座機能を備え、しかも荷物の出し入れを姿勢を変更することなく安定した状態で簡単に行う。
【解決手段】下端部に車輪15を備え、上端部を把持して手押し可能な主フレーム部1と、下端部に車輪12を備え、主フレームを支持する副フレーム部2と、上方開口部を蓋体24によって開閉可能な収納部3と、収納部3を主フレームに沿って昇降可能に支持するガイド部4と、収納部3を前記ガイド部4に沿って昇降させ、上方側の荷物出入れ位置と、下方側の着座位置とにそれぞれ位置決めする位置決め機構5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手押し車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、手押し車として、荷物を入れる収納部を備え、この収納部が着座するのにも利用することができるように構成したものが公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特許第3831376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の手押し車では、収納部が着座にも利用できるように、下方側に配置されているため、荷物を出し入れする際、腰を屈めたり、しゃがんだりする必要がある。お年寄りにとって、このような一連の動作は中々大変であり、荷物が重い場合には腰を痛める等の恐れもある。このため、収納部からの荷物の出し入れを姿勢を変更することなく簡単に行うことができるようにしてほしいとの要望がなされていた。
【0005】
そこで、本発明は、着座機能を備え、しかも荷物の出し入れを姿勢を変更することなく安定した状態で簡単に行うことのできる手押し車を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、
手押し車を、
下端部に車輪を備え、上端部を把持して手押し可能な主フレーム部と、
下端部に車輪を備え、前記主フレームを支持する副フレーム部と、
上方開口部を蓋体によって開閉可能な収納部と、
前記収納部を前記主フレームに沿って昇降可能に支持するガイド部と、
前記収納部を前記ガイド部に沿って昇降させ、上方側の荷物出入れ位置と、下方側の着座位置とにそれぞれ位置決めする位置決め機構と、
を備えた構成としたものである。
【0007】
この構成により、収納部に荷物を出し入れする場合には、収納部をガイド部に沿って上昇させ、上方側の荷物出し入れ位置に位置決めすればよい。これにより、ユーザは無理な姿勢を取ることなく、スムーズに荷物を出し入れすることができる。また、収納部に着座する場合には、収納部をガイド部に沿って降下させ、着座位置に位置決めすればよい。
【0008】
前記荷物取出位置は、前記構成部材全体の重心位置が前記両車輪の中心位置と合致する位置とするのが好ましい。
【0009】
この構成により、収納部を荷物出し入れ位置に位置決めした状態で、全体のバランスを安定させることができ、その状態でスムーズに手押しすることが可能となる。
【0010】
前記収納部は、少なくとも上下一対のガイド突部を有する支持部材を備え、
前記ガイド部は、前記ガイド突部が摺動可能に配置されるガイド受部を備えるようにすればよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ガイド部に沿って収納部を昇降させることができるようにしたので、着座機能を保持しつつ、荷物の出し入れを、無理な姿勢を取ることなくスムーズに行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。
【0013】
図1及び図2は、本実施形態に係る手押し車を示す。この手押し車は、大略、主フレーム部1、副フレーム部2、収納部3、ガイド部4、及び、位置決め機構5を備える。
【0014】
主フレーム部1は、右前脚部6と左前脚部7とを上端のハンドル部8で連続させた略逆U字形をしており、ハンドル部8から所定寸法下方の2箇所と、下方側の1箇所とにそれぞれ設けた連結バー9a,9b,9cによってそれぞれ連結されている。
【0015】
ハンドル部8の近傍には、ハンドル部8と平行に棒状の駐車ブレーキ10が設けられ、この駐車ブレーキ10を支軸部11を中心として下方側に回動することにより車輪(後輪12)をロックすることができるようになっている。
【0016】
右前脚部6及び左前脚部7は、中間部分が屈曲することにより、下方部6a,7aが前方に向かって傾斜し、水平面に対する上方部6b,7bの傾斜角度は、下方部に比べて大きくなるように設定されている。各下方部6a,7aの上方部分には対向方向に位置決めピン13が突出している。この位置決めピン13は、後述する収納部3が下方位置(着座位置)に位置した際、支持プレート25を支持する。右前脚部6及び左前脚部7の中間部分には、各前脚部6,7の上方部6b,7bに沿って延びる把手部14が形成されている。
【0017】
各前脚部6,7の下端部には一対の車輪(前輪15)からなる車輪部材16がそれぞれ回転及び旋回可能に設けられている。車輪部材16にはストッパ(図示せず)が設けられ、車輪(前輪15)をロック又はアンロック状態とすることができるようになっている。
【0018】
副フレーム部2は、右後脚部17と左脚後部18を所定間隔で配置し、中間部分を連結バー19で連結したものである。各後脚部17,18の上端部は、主フレーム部1を構成する各前脚部6,7の中間部分、詳しくは上方部6b,7bの下方側にヒンジ部20を中心として回動可能に連結されている。また、各後脚部17,18の下端部には車輪(後輪12)がそれぞれ回転自在に設けられている。
【0019】
前記主フレーム部1の各前脚部6,7の下方部6a,7aと副フレーム部2の各後脚部17,18とは、リンク部材21によって連結されている。リンク部材21は、第1リンクと第2リンクとを回動可能に連結したもので、主フレーム部1と副フレーム部2とを折り畳む際に利用する。
【0020】
収納部3は、略矩形状の収納フレーム部22に収納袋23を取り付け、形成される上方開口部を蓋体24で開閉可能としたものである。収納フレーム部22は金属製で、前方に向かって略U字形に突出するパイプ状の第1フレーム22aと、後方に向かって略U字形に突出し、第1フレーム22aにネジ止め固定される板状の第2フレーム22bとで構成されている。収納袋23は、上方が開口した箱状で、収納フレーム部22に取り付けられる。蓋体24は、図示しないリンク機構により、図1に示す閉鎖位置と、前方に突出する開放位置とに移動する(ここまでの収納部3の詳しい構成については、特許第3831376号公報参照)。
【0021】
また、前記第1フレーム22aの両側には、図3及び図4に示すように、金属製の支持プレート25がそれぞれ固定されている。支持プレート25は略三角形状で、上縁部の2箇所を第1フレームにネジ止め等によって固定されている。側縁部は、前記主フレーム部1の前脚部6,7の上方部6b,7bに沿って延びており、側面部分には後述するガイド部4のガイド穴28に、上下に所定間隔で摺動可能に支持される一対のガイド突部26が形成されている。下方傾斜縁部には位置決め凹部27が形成され、後述するように、収納部3を下方位置に位置決めした際、前記主フレーム部1に形成した位置決めピン13に当接する。またこのとき、下方側に位置するガイド突部26がガイド穴28の下方側内縁に当接する。これにより、収納部3は、片側の2箇所、両側の4箇所で支持される。
【0022】
ガイド部4は、前記主フレーム部1の各前脚部6,7(把手部14の近傍)に、上方部6b,7bに沿って取り付けられている。ここでは、ガイド部4には、金属製板材が使用され、そこにはガイド穴28(溝で構成してもよく、本発明のガイド受部を構成する。)が形成されている。ガイド穴28は、各前脚部6,7の上方部6b,7bに沿って形成され、上方部6b,7bの下端側から上方側に向かって延びている。ガイド穴28には、前記収納部3に設けた支持プレート25のガイド突部26が摺動可能に配置される。ガイド突部26は所定間隔で配置されているので、ガイド穴28に配置され、摺動する際でも、収納部3の位置を安定させることができ、上方開口部の開口位置が常に上方に向かい、変化することがない。下方側のガイド突部26は、前述の通り、ガイド穴28の下端内縁に当接する。このとき、収納部3が下方位置に位置する。一方、上方側のガイド突部26がガイド穴28の上端内縁に当接した時点で、収納部3が上方位置(荷物出し入れ位置)に位置する。
【0023】
位置決め機構5は、操作レバー29と、この操作レバー29に回動可能に取り付けた補助レバー30とを備える。
【0024】
操作レバー29は、パイプ状で、操作部31の両端から腕部32が延びる、略U字形に形成されている。そして、両腕部32の先端部分が、前記収納部3の支持プレート25に第1支軸33を中心として回動可能に取り付けられている。また、両腕部32の先端側が屈曲されており、屈曲領域の中間位置には第1係止突部34が形成されている。なお、図示しないが、操作レバー29を図7(a),(b)に示す位置まで回動させた状態で、それ以上の回動を阻止する係止部と係止受部とが、操作レバー29と主フレーム部1とにそれぞれ形成されている。但し、操作レバーや補助レバーの一部を主フレーム等に直接当接させるようにしてもよい。
【0025】
補助レバー30は、屈曲開始位置の第2支軸35と、前記ガイド部4の下端側の第3支軸36とに回動可能に取り付けられている。補助レバー30には、屈曲開始位置での回動中心の近傍に第2係止突部37が形成されている。そして、第1係止突部34と第2係止突部37との間には、コイルスプリング等の付勢手段(図示せず)が架け渡されている。これにより、操作レバー29と補助レバー30とは、図4に示す状態、又は、図7(b)に示す状態のいずれかに位置規制されるようになっている。
【0026】
次に、前記構成からなる手押し車の動作について説明する。
【0027】
通常の使用状態では、収納部3を上方位置に移動させて位置決めしておく。図1に示すように、収納部3が下方位置にあれば、操作レバー29を操作し、支軸を中心として操作部31が下方側に位置するように回動させる。このとき、操作レバー29には体重をかけて回動させることができるので、収納部3をスムーズに上動させることができる。特に、既に収納部3に荷物が収容されている場合であっても、問題なく上動させることが可能である。
【0028】
前記操作により、操作レバー29は、図3,図4から図5(a),(b)に示すように、第2支軸35を支点として回動し、作用点である第1支軸33を介して支持プレート25を上方へと移動させる。支持プレート25は、ガイド突部26がガイド部4のガイド穴28に沿って上方へと摺動し、これに一体化した収納部3が上動する。
【0029】
第1係止突部34と第2係止突部37との間には付勢手段が設けられ、収納部3が下方位置から上方位置の近傍まで上昇した時点で、付勢方向が変化する。すなわち、支点である第2支軸35の位置が、作用点である第1支軸33と、第3支軸36とを結ぶ直線に対し、図6(b)から図7(b)に示すように、右側から左側に移動する。このため、操作レバー29の操作に必要な力が変化し(小さくなり)、ユーザは収納部3が上方位置に位置したことを感覚的に理解することができる。
【0030】
収納部3が上方位置に位置した状態では、支持プレート25のガイド突部26がガイド穴28の上端内縁に当接し、それ以上の上昇が阻止される。また、操作レバー29のそれ以上の回動が、図示しない係止部及び係止受部により阻止される。したがって、収納部3に荷物が収容される等、収納部3に対して下方側に向かって力が作用したとしても、上方位置での位置決め状態が維持され、下動することはない。
【0031】
収納部3を上方位置に位置決めした状態では、収納部3(荷物を収容しているか否かに拘わらず。)の重心位置が前輪15及び後輪12の丁度中間位置に位置している。また、収納部3を除く他の構成部品(主フレーム部1、副フレーム部2、ガイド部4。位置決め機構5を含めても良い。)の重心位置も、前輪15及び後輪12の丁度中間位置となるように設計されている。したがって、収納部3を上方に位置させているにも拘わらず、手押し車の状態を安定させることができ、安心して利用することができる。しかも、収納部3への荷物の出し入れを、腰を屈める等、無理な姿勢を取ることなくスムーズに行うことができる。
【0032】
また、収納部3に着座する場合には、操作レバー29を回動させ、操作部31を上方側に位置させればよい。この場合、操作レバー29の回動に必要とされる主要な力は、付勢手段の付勢力に抗して、第2支軸35の位置を第1支軸33と第3支軸36を結ぶ直線に対し、図7(b)から図6(b)に示すように、左側から右側に移動させるまでの間だけである。この位置まで回動させた後は、収納部3はそれ自身の自重によりスムーズに下方位置へと移動する。下方位置では、収納部3は、支持プレート25の位置決め凹部27を主フレーム部1に形成した位置決めピン13によって支持され、支持プレート25のガイド突部26がガイド穴28の下方内縁によって支持される。つまり、両側2箇所ずつで支持されるので、収納部3に安心して着座することができる。
【0033】
このように、操作レバー29は、てこの原理により、小さな力でスムーズに回動させることができる。しかも、回動途中で付勢手段による付勢方向が変化し、操作感が得られるので、所定位置まで操作できたことを認識できる。しかも、各停止位置では、収納部3を安定した状態に支持することが可能である。このため、収納部3を上方位置に位置決めした状態での、荷物の出し入れ、手押し車による歩行、及び、収納部3を下方位置に位置決めした状態での着座を安心して行うことができる。
【0034】
なお、前記実施形態では、位置決め機構5としてリンク機構を利用するようにしたが、上方位置と下方位置でそれぞれ位置決めできれば、他の構成を採用することも可能である。例えば、支持プレート25のガイド突部26をガイド部4のガイド穴28で摺動させ、上方位置でガイド突部26をガイド穴28でロックする機構を備えただけの構成としてもよい。また、収納部3の上下動作は、前記位置決め機構5のような操作レバー29及び補助レバー30によるものではなく、モータ等を使用した電動式としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施形態に係る手押し車の収納部を下方位置に位置決めした状態を示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係る手押し車の収納部を上方位置に位置決めした状態を示す斜視図である。
【図3】図1中、本発明の特徴部分を示す部分拡大斜視図である。
【図4】図3の側面図である。
【図5】(a)は図3からさらに操作レバーを回動させた状態を示す図、(b)はその側面図である。
【図6】(a)は図5(a)からさらに操作レバーを回動させた状態を示す図、(b)はその側面図である。
【図7】(a)は図6(a)あらさらに操作レバーを回動させ、収納部を上方位置に位置させた状態を示す図、(b)はその側面図である。
【符号の説明】
【0036】
1…主フレーム部
2…副フレーム部
3…収納部
4…ガイド部
5…位置決め機構
6…右前脚部
7…左前脚部
6a,7a…下方部
6b,7b…上方部
8…ハンドル部
9a,9b,9c…連結バー
10…駐車ブレーキ
11…支軸部
12…後輪
13…位置決めピン
14…把手部
15…前輪
16…車輪部材
17…右後脚部
18…左脚後部
19…連結バー
20…ヒンジ部
21…リンク部材
22…収納フレーム部
22a…第1フレーム
22b…第2フレーム
23…収納袋
24…蓋体
25…支持プレート
26…ガイド突部
27…位置決め凹部
28…ガイド穴
29…操作レバー
30…補助レバー
31…操作部
32…腕部
33…第1支軸
34…第1係止突部
35…第2支軸
36…第3支軸
37…第2係止突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端部に車輪を備え、上端部を把持して手押し可能な主フレーム部と、
下端部に車輪を備え、前記主フレームを支持する副フレーム部と、
上方開口部を蓋体によって開閉可能な収納部と、
前記収納部を前記主フレームに沿って昇降可能に支持するガイド部と、
前記収納部を前記ガイド部に沿って昇降させ、上方側の荷物出入れ位置と、下方側の着座位置とにそれぞれ位置決めする位置決め機構と、
を備えたことを特徴とする手押し車。
【請求項2】
前記荷物取出位置は、前記構成部材全体の重心位置が前記両車輪の中心位置と合致する位置としたことを特徴とする請求項1に記載の手押し車。
【請求項3】
前記収納部は、少なくとも上下一対のガイド突部を有する支持部材を備え、
前記ガイド部は、前記ガイド突部が摺動可能に配置されるガイド受部を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の手押し車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−83778(P2009−83778A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−258843(P2007−258843)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【出願人】(598087841)株式会社幸和製作所 (10)
【Fターム(参考)】