説明

手持ち式レーザスキャナ

【課題】複数のバーコードが混在するバーコード面であったとしてもターゲットとするバーコードを的確に読み取る。
【解決手段】デコード処理の対象となるバーコードを規定することのできる基準としてバーコードシンボルのバーの並び方向を横断する一つの基準STを設定する。そして、この基準STに従うバーコードをターゲットのバーコードTcとして抽出し、このバーコードに限定してデコードを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は手持ち式レーザスキャナに関する。
【背景技術】
【0002】
手持ち式レーザスキャナの典型例としてバーコードハンディターミナルが知られている(特許文献1)。このバーコードハンディターミナルは、工場、倉庫などにおいて商品やその梱包箱に付されたバーコードを読み取るのに用いられる。バーコードハンディターミナルはレーザ光をスキャンさせながらバーコード面を照射し、その反射光を光センサで検知する。この種の手持ち式のレーザスキャナは比較的大きな読取深度が設定されていることからバーコード面までの離間距離が自在である、という利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−63802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
手持ち式レーザスキャナはバーコード面までの離間距離が自在であるため、例えばレーザ光を照射するバーコード面のなかに複数のバーコードが混在してしまう場合があり、その場合にターゲットとするバーコードに狙いを付けるのが難しいという問題がある。例えば、ワークに複数のバーコードが直列に印字され、それらのバーコードの大きさが小さい場合には、(レーザ光の走査範囲を狭くするため)手持ち式レーザスキャナを所望の一のバーコードに相当近づけなければならず、バーコードの数が多い場合にはユーザに煩雑な作業を強いることになり、使い勝手の面で改善の余地がある。
【0005】
特に、レーザ光を走査するスキャナ機構としてガルバノスキャナを採用した手持ち式スキャナの場合には、図11に示すようにスキャン回数毎にレーザ光のスキャン方向が入れ替わる。仮に、最も先にデコードが成功したバーコードを読取結果として採用するとなると、各スキャン回数の読み取り毎に、ターゲットとするバーコードTcとは異なるバーコードBcを読み取ってしまう可能性がある。すなわち、レーザ光が左から右へスキャンしたときには左側のバーコードBcを読取結果として採用し、レーザ光が右から左へスキャンしたときには右側のバーコードBcを読取結果として採用してしまう。そのため、ユーザが本当に読み取りたい中央のバーコードTcを上手く読み取ることができない、読取速度が低下し易いという問題を有している。なお、図11の矢印はレーザ光のスキャン方向を示す。
【0006】
本発明は、複数のバーコードが混在するバーコード面であったとしてもターゲットとするバーコードを的確に読み取ることのできる手持ち式レーザスキャナを提供することにある。
【0007】
本発明の更なる目的は、複数のバーコードが混在するバーコード面でのバーコードの読取速度を向上することのできる手持ち式レーザスキャナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の概念構成図である図5を参照して、本発明の手持ち式レーザスキャナ200は、
レーザ光を投光する投光部202と、
バーコードのバーの並び方向に沿ってレーザ光をスキャニングするスキャナ制御部204と、
バーコードからの反射光を受光する受光部206と、
該受光部が受光したバーコード信号を記憶するメモリ部208と、
該メモリ部208のバーコード信号をデコードして読取結果を生成するコード読取部210と、
デコードを実行対象とすべきバーコードを抽出する基準を設定する抽出基準設定手段212と、
該抽出基準設定手段212によって設定された基準に従って規定されるバーコードを抽出するターゲット抽出手段214とを有し、
前記コード読取部210が、前記ターゲット抽出手段214により抽出されたバーコードの読取結果を出力する。
【0009】
本発明によれば、バーコード面に複数のバーコードが混在していても、ターゲットのバーコードを抽出して、この抽出したバーコードに限定してバーコードの読取結果を出力する。したがって、手持ち式レーザスキャナの利点であるバーコード面までの離間距離の自在性をそのまま生かしながら、ターゲットとするバーコードを的確に抽出することができると共に、このバーコードに限定した読取結果が出力される。
【0010】
本発明の好ましい実施形態では、前記コード読取部は、前記ターゲット抽出手段により抽出された前記バーコードに限定してデコードを実行する。これにより無駄なデコードを行うことなくターゲットとするバーコードにデコードを行うことでレーザスキャナの読取速度を向上させることができる。
【0011】
本発明の好ましい実施形態では、前記抽出基準設定手段は、前記抽出する基準をユーザによって設定可能であり、更に好ましくは、前記抽出基準設定手段は、デコードの実行対象とすべきバーコードを抽出する基準として、レーザ光のスキャニング回数に応じた複数の異なる基準が設定可能である。例えば、例えば、直列に並んだ2個のバーコードに対し、1回目のスキャンでは左側のバーコード、2回目のスキャンでは右側のバーコードをデコードする、といったことが可能になる。その結果、直列に並んだ複数のバーコードを読み取る際の作業性を向上させることができる。
【0012】
本発明の他の目的、作用効果は、以下の本発明の好ましい実施例の詳しい説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用した手持ち式レーザスキャナであるバーコードハンディターミナルを斜め上方から見た斜視図である。
【図2】本発明を適用したバーコードハンディターミナルの分解斜視図である。
【図3】本発明を適用したバーコードハンディターミナルの全体システムの説明図である。
【図4】本発明を適用したバーコードハンディターミナルの全体システムのブロック図である。
【図5】本発明の概念構成図である。
【図6】デコード処理の第1例を説明するための図である。
【図7】図6のデコード処理の具体的な手順を説明するためのフローチャートである。
【図8】デコード処理の第2例を説明するための図である。
【図9】図8のデコード処理の具体的な手順を説明するためのフローチャートである。
【図10】デコード指定範囲の設定画面を示す図である。
【図11】手持ち式スキャナの問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0014】
以下に、添付の図面に基づいて本発明の好ましい実施例を説明する。
【0015】
図1は実施例の手持ち式レーザスキャナであるバーコードハンディターミナルを斜め前方から見た斜視図である。この図1を参照して、実施例のバーコードハンディターミナル100は、その上部の前面に表示部10を有し、表示部10は液晶ディスプレイ(LCD)で構成されている。バーコードハンディターミナル100は、その前面において、上記LCDで構成された表示部10の下方に位置する入力部11を有する。入力部11は、メニューキー12、バーコードのスキャンの開始を指示するトリガーキー13、4方向キー14、ENTキー15、キャンセルキー16、テンキー群17、テンキー群17の下方に横並びに配置されたファンクションキー群18、電源スイッチ19で構成されている。他方、バーコードハンディターミナル100の後面には、その上端部にバーコード読み取り窓が従来と同様に形成され、また、下端に、従来と同様に接続端子が配列されている。また、バーコードハンディターミナル100の入力部11の後側にバッテリが脱着可能に取り付けられる。
【0016】
図2は実施例のバーコードハンディターミナル100の分解斜視図である。図3はバーコードハンディターミナルの全体システムを示す図である。図4はバーコードハンディターミナルのブロック図である。
【0017】
図2を参照して、バーコードハンディターミナル100の部品を説明すると、図中、参照符号20は合成樹脂成型品の表示窓20aを備えたフロントケースであり、21は合成樹脂成型品のリヤケースであり、22はメインパッキンを示す。メインパッキン22は、フロントケース20とリヤケース21との突き合わせ面に沿って連続する形状を有し、このメインパッキン22を介在した状態でフロントケース20とリヤケース21は合体されてバーコードハンディターミナル100の筐体を構成し、フロントケース20とリヤケース21とで囲まれた内部空間に種々の部品が位置決めした状態で収容される。
【0018】
リヤケース21には、その上端部つまりLCD10の上方の端部に横長の矩形の読み取り窓25が形成されている。リヤケース21には、また、上下の中間部分に電池端子窓26が形成され、この電池端子窓26に臨んで電池端子基板27が取り付けられる。リヤケース21の下部にはバッテリパック28を受け入れる凹部29が形成されており、バッテリ28は、その容量によって、比較的大容量のバッテリ28Aと比較的小容量のバッテリ28Bを選択でき(図3)、これに対応したバッテリカバー30A、30Bが用意され、バッテリカバー30A、30Bはリヤケース21に対して脱着自在である。図2の参照符号31はバッテリカバー用のパッキンを示す。
【0019】
バッテリパック28には、その上端面に給電端子28aが設置されており、バッテリパック28をリヤケース21のバッテリ受け凹所29に設置することでバッテリパック28がバーコードハンディターミナル100の電池端子基板27の受電端子(図示せず)と電気的に接続され、このバッテリパック28の電気エネルギーによってバーコードハンディターミナル100が駆動される。
【0020】
リヤケース21の下端には、端子窓31が形成されており、この端子窓31に臨んで、端子ホルダ32に組み込まれた端子基板33がリヤケース21の下端に取り付けられる。この端子基板33に設けられた端子(作図上の理由で図面には現れていない)は端子窓31を通じて外部に露出し、この端子窓31を通じて、後に説明するクレードル34(図3)を通じて外部と交信することができると共に、充電ユニット73〜75(図3)によってバッテリパック28の充電が可能である。図2の参照符号36は端子ホルダテープを示す。
【0021】
リヤケース21には、上記の電池端子基板27に関連して電池保護テープ40、電池端子クッション41を介して電池端子押さえ部材42が設置され、この電池端子押さえ部材42がリヤケース21にネジ止めされることにより、電池端子基板27の端子部27aがリヤケース21から遠ざかる方向へ変位するのが電池端子押さえ部材42によって規制される。この電池端子基板27の側方にバイブレータ44が配置され、このバイブレータ44はリヤケース21に取り付けられる。
【0022】
リヤケース21の上記の読み取り窓25には、リヤケース21の外側からスキャナフィルタ46が取り付けられ、他方、リヤケース21の内側には、リヤクッション47を介してスキャナホルダ48がリヤケース21にO-リング49を介してネジ止めされる。
【0023】
スキャナホルダ48にはスキャナモジュール50が搭載されており、このスキャナモジュール50が発するレーザ光を読み取り窓25に導き及び対象物に付されたバーコードから戻ってくる反射光をスキャナモジュール50に導くための反射ミラー51がスキャナホルダ48に組み付けられている。
【0024】
スキャナモジュール50は、従来と同様に、半導体レーザ発光素子、受光素子であるフォトダイオード、ガルバノミラー、スキャナ基板などを含んでおり、半導体レーザ発光素子が発したレーザ光を所定の周期で揺動するガルバノミラーで反射して読み取り窓25を通じてバーコードに向けて出射すると共にバーコードを走査し、バーコードから戻ってくる光をスキャナモジュール50に取り込んでフォトダイオードで受光する。フォトダイオードが受光すると、その受光信号がスキャナ基板の受光回路及び増幅回路で増幅される。なお、スキャナ基板にはミラー駆動回路が設けられており、このミラー駆動回路によってガルバノミラーが駆動され、ガルバノミラーは上述した揺動運動を行う。
【0025】
図2の参照符号53は第1のスキャナクッションを示す。このスキャナクッション53はスキャナホルダ48の前方に配置され、その前方に位置するスキャナクッション板金54はスキャナホルダ48にネジ止めされる。
【0026】
このスキャナクッション板金54の前方には第2のスキャナクッション55が位置し、更に、その前方にメイン基板57が配置される。メイン基板57は上述したLCD10とほぼ同じ大きさを有し、このメイン基板57には制御用CPU101(図4)やメモリ(図4の参照符号58)を含む比較的大きな回路規模を有するメイン回路が設けられており、バーコードハンディターミナル100の全体制御や取得したバーコードの読み取り処理を行うと共にその読み取り結果をメモリ58(図4)に保存し、また、LCD10に表示するための信号を生成する。
【0027】
メイン基板57は、その前方に位置するLCDホルダ60と共通のネジを使ってスキャナホルダ48に固定される。すなわち、LCDホルダ60はメイン基板57を挟み込んだ状態でスキャナホルダ48にネジ止めされる。LCDホルダ60にはLCD10がきつく嵌合される。
【0028】
メイン基板57の下方にはキー基板61が配設され、このキー基板61には、その前方のメインキートップ62がネジ止めされる。メインキートップ62には、上述した操作部11つまりメニューキー12、トリガーキー13、テンキー群17などが設けられている(図1)。例えばトリガーキー13は、これを押し下げることによりスキャンを行わせることができる。
【0029】
上述した部品を組み込んだリヤケース21に対してフロントケース20が上述したメインパッキン22を介して組み付けられることになるが、それに先立ってLCD10の周辺部にLCDフロントクッション63が配置され、このLCDフロントクッション63によってLCD10はフロントケース20によって押さえ付けられた状態となる。フロントケース20には、その前面に光透過性のフロントパネル64やフロントシート65が組み付けられる。
【0030】
図3を参照して、実施例のバーコードハンディターミナル100はメインフレームサーバー70とRS−232ケーブル71やUSBケーブル72を介して交信可能であり、また、クレードル34に置くことでメインフレームサーバー70と交信可能であり、蓄積したバーコードのデータをメインフレームサーバー70に供給する。なお、クレードル34は充電機能を有しており、バッテリパック28を搭載した状態のバーコードハンディターミナル100をクレードル34に置くことで、このバーコードハンディターミナル100のバッテリパック28を充電することができる。
【0031】
バーコードハンディターミナル100は、従来と同様に、スキャンしたバーコードのスキャン信号をメモリ58に記憶し、そしてデコード処理において、バーコードシンボルの左端部に位置するスタートコードを探索してこのスタートコードから順にキャラクタ単位にバーとスペースの信号を区分してキャラクタに変換してデコードを行う。
【0032】
バーコードハンディターミナル100では、デコード処理の対象となるバーコードを規定することのできる基準としてバーコードシンボルのバーの並び方向を横断する一つの基準STを設定する手段及びこれを受け付ける手段を有している(図6)。この基準STは後に説明するようにユーザによって設定することができる。このことを前提として、デコード処理手順の一例を図7に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0033】
メモリ58から取り出したスキャン信号からバーコードの左端位置を検索し(S10)、検索した左端位置が、ユーザが指定した基準位置STよりも右側に位置しているか否かを判断し(S11)、NOつまり検索したコードの左端位置が基準位置STよりも左側に位置しているコードを抽出してステップS12に進む。
【0034】
このステップS12では、上記の抽出したコードの右端位置を検索し、次いで、この右端位置がユーザが指定した基準位置STよりも右側に位置しているか否かを判断して(S13)、YESつまりコードの右端位置が基準位置STよりも右側に位置しているコードを抽出する。上記の処理によりターゲットとするバーコードTcを抽出することができ、この抽出したバーコードに対してデコード処理を実行する(S14)。なお、ステップS13でNOつまりコードの左端位置が基準位置STよりも左側に位置しているもののコードの右端位置が基準位置STよりも左側に位置しているときには、確認のためステップS10に戻って再度メモリ58に記憶されているバーコードの左端位置の検索が行われる。
【0035】
なお、上述したステップS11でYESと判定されたときには、ターゲットとするバーコードTcは存在しないとしてデコード失敗の処理を行う(S15)。
【0036】
以上、図7を用いて説明した処理を、図6を用いて、より具体的に説明する。まず、左側のバーコードBcの左端位置が検索され(ステップS10)、この左端位置は指定位置よりも右側でないと判断され(ステップS11:NO)、左側のバーコードBcの右端位置が検索され(ステップS12)、この右端位置は指定位置よりも右側でないと判断されるため(ステップS13:NO)、ステップS10の処理に戻る。そして、残っている線幅データ、つまり、左側のバーコードBcのデータを除いた、中央のバーコードTcと右側のバーコードBcのデータから左端位置を検索する。その結果、中央バーコードTcの左端位置が抽出される(ステップS10)。その後、この左端位置は指定位置よりも右側であり(ステップS11:NO)、残っている線幅データからコードの右端位置を検索すると中央のバーコードTcの右端位置が抽出され(ステップS12)、この右端位置は指定位置よりも右側であるため(ステップS13:YES)、中央のバーコードTcに対してデコード処理が実行される(ステップS14)。つまり、図6に示す3個のバーコードのうち、中央のバーコードTcに限定してデコード処理が行われる。換言すれば、中央のバーコードTcのみに対してデコード処理が行われる。これにより、不必要なバーコード(左側及び右側のバーコードBc)のデコード処理を避けることができ、ひいては読取速度を向上させることができる。
【0037】
なお、本実施例では、上述したように読取速度向上の観点から、左側及び右側のバーコードBcのデコード処理を実行しないこととしたが、本発明はこれに限られず、例えば全てのバーコードのデコード処理を実行した後、ユーザ所望の一のバーコード(中央のバーコードTc)のデコード結果を読取結果とするようにしてもよい。
【0038】
また、ステップS10,12の検索処理、ステップS11、S13の判断処理、ステップS14のデコード処理は、CPU101(図4)によって実行される。また、ステップS11において用いられる基準位置STは、予めメモリ58に記憶されており、バーコードハンディターミナル100の出荷時に予めメモリ58に記憶されていてもよいし(つまりユーザが設定しなくてもよいし)、図10を用いて後述するように、ユーザが設定した基準位置STがメモリ58に記憶されていてもよい。
【0039】
図8、図9はデコード処理の変形例を説明するための図である。この変形例のデコード処理では、ターゲットとするバーコードTcを挟む2つの基準位置ST1、ST2によってデコード指定範囲がユーザによって設定される(図8)。
【0040】
図9のフローチャートを参照して、メモリ58から取り出したスキャン信号からバーコードの左端位置を検索する(S20)。次いで、この検索した左端位置が、ユーザが指定した第1の基準位置つまり左側の基準位置ST1(デコード指定範囲)よりも左側に位置しているか否かを判断し(S21)、NOつまり検索したコードの左端位置が、デコード指定範囲の左端の基準位置ST1よりも右側に位置しているコードを抽出してステップS22に進む。
【0041】
このステップS22では、上記抽出したコードの左端位置がデコード指定範囲の右端よりも右側に位置しているか否かが判断される。このステップS22でNOつまりコードの左端位置がデコード指定範囲の右端よりも左側に位置しているときには、このコードがデコード指定範囲内にある可能性があるとして、ステップS23に進む。
【0042】
ステップS23では、上記ステップS22で抽出したコードの右端位置を検索する。次いで、この右端位置がデコード指定範囲よりも右側に位置しているか否かを判断し(S24)、NOであれば、検索したバーコードはデコード指定範囲にあり、このコードがターゲットとするバーコードTcであるとして、次のステップS25で、この抽出したバーコードに対してデコード処理を実行する。
【0043】
なお、上述したステップS22又はS23でYESと判定されたときには、ターゲットとするバーコードTcは存在しないとしてデコード失敗の処理を行う(S26)。また、上記ステップS21において、YESと判定されたときには、ステップS20に戻って再試行される。
【0044】
上記のように、バーコード面に複数のバーコードが混在しているときに、ターゲットとするバーコードを的確に抽出することができ、また、この抽出したバーコードに限定してデコード処理が実行されるためバーコードの読取速度を向上することができる。
【0045】
以上本発明の実施例を説明したが、図6、図7のデコード処理方法と図8、図9のデコード処理方法とを組み合わせてデコード処理を行うようにしてもよい。つまり、図6に示す唯一の基準位置STによる抽出と、図7に示すデコード指定範囲による抽出とを組み合わせてターゲットのバーコードTcを抽出するようにしてもよい。これによれば、例えば図8のデコード指定範囲を規定する2つの基準位置ST、STのいずれか一方の基準位置と干渉してターゲットバーコードTcが存在していても、これを的確に抽出することができる。
【0046】
図10は、外部PC(図示せず)を使ってデコード指定範囲をユーザが設定するための設定画面を示すものであるが、バーコードハンディターミナル100は表示部(LCD)10を使って実質的に同じデコード指定範囲の設定を行うことができる。したがって以下の説明はバーコードハンディターミナル100を使ったデコード指定範囲の設定を含むものとして理解されたい。
【0047】
ユーザは、図10の設定画面を使ってメモリ58から読み出したバーコード信号の読取回数毎のデコード処理に関する設定を行うことができる。設定画面には、2つのスライダ90、91を有し、このスライダ90、91をマウス(図示せず)を使って移動させることにより上述したデコード指定範囲を設定することができる。図示の例では、2つのスライダ90、91が互いに離れた位置に位置決めされることで第1回目のデコード指定範囲(図8)は左側に偏った位置に設定されており、第2回目のデコード指定範囲は中央に設定されており、第3回目のデコード指定範囲は左側に偏った位置に設定されているのが分かるであろう。また、第4回目のデコード指定範囲は、2つのスライダ90、91を重ねることで上述した一つの基準ST(図6)が設定される。
【0048】
以上説明したように、図10に例示する設定画面を通じて、ユーザは、所望の基準を設定することができる。換言すれば、バーコードハンディターミナル100は、デコードの実行対象とすべきバーコードを抽出する基準を表示する抽出基準表示手段の一例としてLED表示部10、ユーザから抽出基準表示手段に表示された基準の変更入力を受け付ける変更入力受付手段の一例としてキー入力部11、変更入力受付手段にて受け付けた変更入力に基づいて、デコードの実行対象とすべきバーコードを抽出する基準を変更する抽出基準変更手段の一例としてCPU101を備えている。
【0049】
なお、図10では、デコード指定範囲を左側に偏った位置に設定したり、デコード指定範囲を右側に偏った位置に設定したりしたが、本発明はこれに限られず、例えば、左から何番目のバーコードをデコードの実行対象とすべき一のバーコードとして抽出する、といった基準を設定してもよい。
【0050】
実施例のバーコードハンディターミナル100は一次元コード(いわゆるバーコード)の読み取りに適用されているが、本発明は一次元コードに限定されるものではない。一次元バーコードを上下に複数重ねたスタックコードのようなスキャニングによって読み取ることのできる二次元コードにも本発明を好適に適用できる。したがって、この明細書において使用した「バーコード」は特に限定しない限り、当業者が認識する広義の意味つまり一次元コード、二次元コードを含む意味であると理解されるべきである。
【符号の説明】
【0051】
100 バーコードハンディターミナル(手持ち式レーザスキャナ)
10 表示部(LCD)
11 入力部
28 バッテリパック
34 クレードル
50 スキャナモジュール
58 メモリ
ST ターゲットのバーコードを抽出するためにユーザが設定した単一の基準位置
ST1 ターゲットのバーコードを抽出するためにユーザが設定したデコード指定範囲の左端を規定する基準位置
ST2 ターゲットのバーコードを抽出するためにユーザが設定したデコード指定範囲の右端を規定する基準位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を投光する投光部と、
バーコードのバーの並び方向に沿ってレーザ光をスキャニングするスキャナ制御部と、
バーコードからの反射光を受光する受光部と、
該受光部が受光したバーコード信号を記憶するメモリ部と、
該メモリ部のバーコード信号をデコードして読取結果を生成するコード読取部と、
デコードを実行対象とすべきバーコードを抽出する基準を設定する抽出基準設定手段と、
該抽出基準設定手段によって設定された基準に従って規定されるバーコードを抽出するターゲット抽出手段とを有し、
前記コード読取部が、前記ターゲット抽出手段により抽出されたバーコードの読取結果を出力することを特徴とする手持ち式レーザスキャナ。
【請求項2】
レーザ光を投光する投光部と、
バーコードのバーの並び方向に沿ってレーザ光を走査するスキャナ制御部と、
バーコードからの反射光を受光する受光部と、
該受光部が受光したバーコード信号を記憶するメモリ部と、
該メモリ部に記憶されたバーコード信号をデコードして読取結果を生成するコード読取部と、を有する手持ち式レーザスキャナであって、
デコードの実行対象とすべきバーコードを抽出する抽出基準として、レーザ光の走査範囲のうち読取対象とすべき読取箇所を設定する抽出基準設定手段と、
前記メモリに記憶されたバーコード信号に基づいて、該抽出基準設定手段によって設定された読取箇所にあるバーコードをターゲットとして抽出するターゲット抽出手段とを有し、
前記コード読取部は、前記ターゲット抽出手段により抽出されたバーコードの読取結果を出力することを特徴とする手持ち式レーザスキャナ。
【請求項3】
前記コード読取部は、前記ターゲット抽出手段により抽出された前記バーコードに限定してデコードを実行する、請求項1又は2に記載の手持ち式レーザスキャナ。
【請求項4】
前記抽出基準設定手段は、前記抽出する基準をユーザによって設定可能である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の手持ち式レーザスキャナ。
【請求項5】
前記抽出基準設定手段は、デコードの実行対象とすべきバーコードを抽出する基準として、レーザ光のスキャニング回数に応じた複数の異なる基準が設定可能である、請求項4に記載の手持ち式レーザスキャナ。
【請求項6】
前記抽出基準設定手段は、
デコードの実行対象とすべきバーコードを抽出する基準を表示する抽出基準表示手段と、
ユーザから前記抽出基準表示手段に表示された基準の変更入力を受け付ける変更入力受付手段と、
前記変更入力受付手段にて受け付けた変更入力に基づいて、デコードの実行対象とすべきバーコードを抽出する基準を変更する抽出基準変更手段と、を備えている、請求項5に記載の手持ち式レーザスキャナ。
【請求項7】
前記抽出する基準が、ターゲットとするバーコードのコードシンボルのバーの並び方向を横断する一つの基準からなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の手持ち式レーザスキャナ。
【請求項8】
前記抽出する基準が、ターゲットとするバーコードを挟んで位置する左側の第1の基準と、右側の第2の基準によって規定されるデコード範囲からなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の手持ち式レーザスキャナ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2013−88956(P2013−88956A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227479(P2011−227479)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000129253)株式会社キーエンス (681)
【Fターム(参考)】