説明

把手装置

【課題】回動式の把持部材のロック機構やロック解除機構を簡単な構成で実現し、把持部材の使用状態へのセット、収納及び運搬時の操作性を向上させる。
【解決手段】把持部材23を水平状態に突出させた状態で把持部材23から手を離しても、干渉部29aが開口25の上辺部25aに干渉して、把持部材23は落下せずに破線位置で保持される。把持部材23を収納する際は、把持部材23の他端部を下方に回動させて溝29から開口25の上辺部25aを抜け出させれば、干渉は解除されるため、後は把持部材23の自重で収納部22内に収納される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ、スキャナー、或いはこれらの機能を併有する複合機等の画像形成装置に関し、特にこのような画像形成装置を持ち上げて運搬や移動を行うために装着される把持部材(把手手段)の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印字装置、画像通信装置、複写機等の画像形成装置は、比較的重量が重い機器であるため、階段を登りながら運搬するのは困難であった。一方、画像形成装置を納品する事務所が常にエレベータを備えているとは限らないため、運搬者が手で画像形成装置を持って階段を運搬する必要性が存在する。そのため、この種の機器には、機器本体に運搬用レバー(把持部材)を取り付けたものがある。
【0003】
このような運搬用レバーとして、画像形成装置の水平方向に引き出し可能に設けられたものがある(例えば、特許文献1及び2参照)。この運搬用レバーは、特許文献1の図2や特許文献2の図7に示すように、非運搬時には機器内部に収納される一方、運搬時には機器外部に引き出して使用される。そして、運搬途中で運搬用レバーが機器内部に戻るのを防止するため、運搬用レバーにはロック機構が設けられていた。このロック機構の働きにより運搬用レバーは機器外部に突き出た状態に維持される。運搬作業が終了すると、このロック機構を解除して、コイルスプリングの弾性力により運搬用レバーを機器内部に収納していた。
【0004】
しかしながら、運搬用レバーを水平方向にスライドさせて、機器内部に収納したり、機器外部に出したりする構成の場合には、画像形成装置には正面の開閉カバーや給紙カセット段が存在するため、その邪魔にならない位置に設けなければならない。そのため、運搬用レバーの取付位置が大幅に制約されるという問題があった。特に、上記制約下で運搬に適した位置に太い運搬用レバーを設けた場合には、太い運搬用レバーを格納するためのスペースが必要となり、画像形成装置全体を大型化しなければならず、小型化の要請に反するという問題が生ずる。
【0005】
そこで、運搬用レバーを画像形成装置の垂直方向に回動可能に設け、装置の側面付近に沿って運搬用レバーの格納スペースを形成することにより、格納スペースの省スペース化を図ったものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この運搬用レバーは、特許文献1の図7に示すように、非運搬時には機器内部に収納される一方、運搬時には垂直方向に回動させることにより機器外部に引き出して使用される。運搬作業が終了すると、運搬用レバーを離すことにより自重で落下し機器内部に収納されるようになっている。
【0006】
しかしながら、運搬用レバーを垂直方向に回動させて、機器内部に収納したり機器外部に出したりする構成の場合には、運搬時に運搬用レバーの一端を把持して垂直方向に回動させることにより機器外部に引き出し、引き続き運搬用レバーの一端を把持して水平状態にして使用するので、運搬途中で運搬用レバーの一端を把持するのを止めると、運搬用レバーが自重により機器内部に収納されてしまうという問題が発生する。
【0007】
そこで、特許文献3には、運搬用レバーを水平状態まで回動させたとき、運搬用レバー上面に設けられた嵌合溝に、下方に付勢され上下方向に移動可能なロック部材を嵌合させて運搬用レバーの回動を規制(ロック)することにより、運搬用レバーが自重により機器内部に収納されてしまうことを防止することが提案されている(特許文献3参照)。この特許文献3に提案された従来技術では、運搬後に運搬用レバーを機器内部に収納するため、運搬用レバー内部にスライド式のロック解除部を別途設け、このロック解除部をロック部材側に水平移動させることにより、ロック部材を上方に押し上げ、嵌合溝との嵌合を解除させるようにしている。
【特許文献1】特開2000−258969号公報(図2、図3及び図7)
【特許文献2】特開2004−240444号公報(図3及び図7)
【特許文献3】特開2004−262202号公報(図2及び図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、この特許文献3に提案された従来技術では、運搬用レバーのロック機構やロック解除機構を多数の部品を用いて構成しているため、コストが掛かるという問題がある。また、ロック解除部の操作にある程度の力が必要であり、運搬用レバーの操作性が悪いという問題があった。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、回動式の把持部材のロック機構やロック解除機構を簡単な構成で実現し、把持部材の使用状態へのセット、収納及び運搬時の操作性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明は、機器本体内に収納された状態から回動して水平に突出した状態に引き出される把持部材を有する把手装置において、把持部材を突出する方向に回動操作することにより把持部材を水平に突出した状態で維持するロック手段が自動的に設定される一方、把持部材を収納する方向に回動操作するとロックが解除されることを特徴とする。
【0011】
そして、本発明の把手装置は、回動式の把持部材のロック機構やロック解除機構を、干渉、係合、摩擦等を利用した簡単な構成で実現するため、具体的には次のように構成されるものである。
【0012】
すなわち、本発明の把手装置は、機器本体内に設けられ前記把持部材を回動自在に支持して収納する囲い形状の収納部と、前記収納部の一つの壁に貫通して設けられ前記把持部材が回動して突出される矩形の開口と、を備え、前記ロック手段が、前記開口の上辺部と、前記把持部材の水平状態の上面の回動支点の近傍に設けられ前記開口の上辺部と係合する溝と、該溝に設けられ前記把持部材の回動中に前記開口の上辺部と干渉する干渉部と、前記開口が設けられた壁に対向する前記収納部の奥壁の上辺部と、前記把持部材の一端部に設けられ前記把持部材を水平に突出させた状態で前記奥壁の上辺部と係合する係合片と、から構成されるものである。
【0013】
或いは、本発明の把手装置は、機器本体内に設けられ前記把持部材を回動自在に支持して収納する囲い形状の収納部と、前記収納部の一つの壁に貫通して設けられ前記把持部材が回動して突出される矩形の開口と、を備え、前記収納部の対向する一対の支持壁に支点ピンを介して前記把持部材を支持し、前記ロック手段が、前記把持部材の一方の側壁に突設された係合突起と、前記収納部の一対の支持壁の一方に設けられ前記把持部材を水平に突出させた状態で前記係合突起が係合する係合穴と、前記支点ピンが挿通され前記把持部材を前記支持壁の一方に付勢するコイルバネと、から構成されるものである。
【0014】
或いは、本発明の把手装置は、機器本体内に設けられ前記把持部材を回動自在に支持して収納する囲い形状の収納部と、前記収納部の一つの壁に貫通して設けられ前記把持部材が回動して突出される矩形の開口と、を備え、前記収納部の対向する一対の支持壁に支点ピンを介して前記把持部材を支持し、前記ロック手段が、前記支点ピンが挿通され前記把持部材を前記支持壁の一方に付勢するコイルバネと、前記把持部材の一方の側壁に取り付けられ前記コイルバネの付勢によって前記把持部材の回動方向に対して前記支持壁の一方との間で摩擦力を付与する摩擦パッドと、から構成されるものである。
【0015】
また、前記収納部は、本体フレームの側板の端部を直角に折り返して形成した折り返し部と、折り返し部の裏面と該折り返し部と直角をなす本体フレームの側板の外面とに跨って取り付けられた屈曲板とで囲まれる領域に構成され、前記開口を折り返し部に設けることにより、本体フレームの強度を維持することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、把持部材の一端側を回動支点に回動可能に支持し、他端側を引き出して略水平まで回動すると自動的にロック手段が設定され、把持部材の落下を規制して水平状態に維持する。把持部材を収納する際も、回動させるとロック手段が解除される。これにより、把持部材の使用状態へのセット、収納及び運搬時の操作性を向上させることができる。また、把持部材は、本体フレームの側板の折り返し部に対して屈曲板を固定した矩形状に囲まれた部分に収納されており、囲む壁で把持部材を支持する構成とすることで、本体フレームの強度を低下させることもなく、装置を搬送するのに充分な強度が得られる把手装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の把手装置が設けられる画像形成装置の主要な構成要素を示す断面図である。
【0018】
この画像形成装置は、いわゆるタンデム型のカラー複写機であり、装置本体1の下部に多数枚の用紙が積載収納可能な給紙カセット2が配置され、その上方にレーザ露光装置(LSUユニット)3が配置され、その上方に無端状の中間転写ベルト4が配置されている。また、露光装置3によって書き込まれる画像データをY、M、C、Kの各色に対応するトナー像として中間転写ベルト4上に一次転写するための第1〜第4作像ユニット5〜8が中間転写ベルト4に沿って配置されている。装置本体1の一方の側壁付近を垂直方向に延びて搬送路9が形成されている。画像形成動作が開始されると、給紙カセット2内の用紙は搬送路9に沿って搬送される。この過程で各作像ユニット5〜8によって中間転写ベルト4上に一次転写されたトナー像を、二次転写ローラ10によって用紙上に二次転写した後、定着装置11により加熱定着して装置上部に排出する。なお、装置本体1の下には、新たな給紙カセットがオプションとして追加可能になっている。
【0019】
この画像形成装置は非常に重量があるため、運搬時には、二人の運搬者が協力して装置本体1を片側ずつ持って運搬することになるが、特に、搬送路9が形成された側(図1の紙面左側)は、反対側(図1の紙面右側)よりも本体重量が重くなるため、そちら側を持つ運搬者の負担を軽減するための回動式の把持部材を有する把手装置が設けられる。なお、反対側を持つ運搬者は、本体外装部の二箇所に設けられる図示しない窪みに手を差し入れて装置本体を保持する。
【0020】
以下、その把手装置について具体的な実施形態をいくつか挙げて説明する。
【0021】
まず、本発明の把手装置の第1の実施形態について説明する。図2は第1の実施形態に係る把手装置を備えた画像形成装置の内部構造を示す斜視図であり、図3は第1の実施形態に係る把手装置の前側把持部材の周辺を示す図2の拡大図であり、図4は第1の実施形態に係る把手装置の把持部材の収納状態(a)及び水平位置まで回動して突出させた状態(b)を示す縦断面図であり、図5は第1の実施形態に係る把手装置の把持部材を水平位置まで回動して突出させた状態を示す横断面図であり、図6は第1の実施形態に係る把手装置の把持部材を水平に突出した状態で維持するロック手段の動作を説明するための要部縦断面図であり、図7は第1の実施形態に係る把手装置の把持部材の斜視図である。
【0022】
画像形成装置は、図2に示すように、フレーム12と、その外側を覆う、例えば樹脂等からなる図示しない外装部とを有し、このフレーム12は、ベース部材13の前後に上に立設された前側の側板14および背面側の側板15と、両側板14および15の間に掛け渡して配設された複数(図2には一つのみを図示する)のステー16とを備える。また、図2に示すように前側の側板14には開口17が設けられており、この開口17の下縁位置には背面側の側板15との間において上記各作像ユニット5〜8(図1参照)を装着するための装着部材18〜21がそれぞれ取り付けられている。
【0023】
前側の側板14は、左端部に前側に直角に折り返された折り返し部14aを有している。折り返し部14aの下部には、把持部材23を回動自在に支持して収納する囲い形状の収納部22が設けられている。収納部22は、図3に示すように、折り返し部14aと、折り返し部14aの裏面と該折り返し部14aと直角をなす側板14の外面とに跨って取り付けられた二段L字形状の屈曲板24とで囲まれる領域に構成されている。屈曲板24の下端は、図4(a)に示すように、ベース部材13の上面に当接している。屈曲板24の上端部は、図3及び図5に示すように、収納部22の奥壁となる部分を含む略半分が所定の高さでL字形状に切り欠かれている。切り欠かれた屈曲板24の上辺部24aの高さ位置は、図4(b)に示すように、水平状態の把持部材23の底壁の外面と面一となる高さに設定されている。
【0024】
折り返し部14aの収納部22が形成される部分には、把持部材23が回動して突出される縦長の矩形の開口25が形成されている。開口25は、把持部材23の長手方向の寸法に合わせた縦に長い矩形となるため、装置本体1の捩れなどに対する側板14の強度が低下するおそれがある。本発明では、開口25の設けられた側板14に対して屈曲部材24を固定して囲い形状の構成を作ることにより、捩れに対する側板14の強度低下を抑制することができる。開口25は折り返し部14aの型抜きによって設けられるものであるが、その際開口25の片側の縦の辺縁部を開口幅より若干短い長さで残し、これを収納部22の内部方向に直角に折曲げることにより、図5に示すように、収納部22の内部に収納される把持部材23の水平位置を規制する位置規制片26を形成している。同時に、この位置規制片26は、収納部22の囲い形状の構成と相まって開口25による側板14の強度低下を抑制する役割も果たしている。
【0025】
把持部材23は、図7に示すように、板金をコの字状に折り曲げて製作される棒状の部材である。把持部材23の両側壁の長手方向における一端側には、支点穴27が対向位置に貫通して設けられており、図4(a)および図4(b)に示すように、収納部22の上部において、把持部材23は、この支点穴27に挿通される支点ピン28によって回動可能に支持して収納される。
【0026】
また、把持部材23の両側壁の上面には、長手方向において支点穴27の近傍であって他端寄りの位置には、略水平状態で、折り返し部14aの開口25の上辺部25aと係合する溝29が切り欠き形成されている。そして、この溝29の一端面には、前記係合位置で、把持部材23の回動中に折り返し部14aの開口25の上辺部25aと干渉する曲面形状の干渉部29aが形成されている。
【0027】
また、把持部材23の底壁の長手方向における一端部には突出片が一体成形されており、これを下向きに略直角に折曲げることにより、図4(b)に示すように、把持部材23の水平状態で、屈曲板24の奥壁の上辺部24aと係合する係合片23aを形成している。
【0028】
また、背面側の側板15は、左端部に後側に直角に折り返された折り返し部15aを有し、ここにも上記と同様の把手装置が設けられている。
【0029】
次に、上記のように構成された装置本体1の運搬時の動作について説明する。把持部材23を引き出す際は、回動支点から遠い方の他端部を指で引き出し、手に掴んでほぼ支点ピン28を回動支点として図4(a)の矢印Aのように、水平まで回動させる。水平付近まで回動させると、把持部材23の側壁上面に設けられた溝29の干渉部29aが開口25の上辺部25aのエッジ部と干渉して負荷が発生するが、干渉部29aが回動支点の近くにあるため、操作の支障にはならず、若干力を入れてさらに回動させることで干渉は解消され、図4(b)に示すように、開口25の上辺部25aが把持部材23の溝29と嵌合するとともに、把持部材23の一端部に設けられた係合片23aが屈曲板24の奥壁の上辺部24aと係合し、把持部材23を水平状態に突出させることができる。
【0030】
この状態で把持部材23から手を離しても、図6に示すように、干渉部29aが開口25の上辺部25aに干渉して、把持部材23は落下せずに破線位置で保持される。把持部材23を収納する際は、図4(b)の矢印Bのように、把持部材23の他端部を下方に回動させて溝29から開口25の上辺部25aを抜け出させれば、干渉は解除されるため、後は把持部材23の自重で収納部22内に収納される。
【0031】
画像形成装置を運搬するときは、二人の運搬者が装置本体1を挟んで向かい合ってしゃがみ、一方の運搬者が、両手で2つの把持部材23を片方ずつ持ち、他方の運搬者が、本体外装部の二箇所に設けられる図示しない窪みに手を差し入れて装置本体1を保持し、持ち上げて搬送する。
【0032】
このとき、図4(b)に示すように、本体重量の何割かの負荷がF0として把持部材23を把持する運搬者に作用する。把持部材23は、折り返し部14a(又は15a)の開口25の上辺部25aの縁面が把持部材23の溝29の底面に当接するとともに、把持部材23の一端部の底壁外面が屈曲板24の奥壁の上辺部24aの縁面に当接して保持される。すなわち、F0の力が作用した際に、把持部材23の上面の当接部を支点にした回転モーメントが釣り合うようにF2に力が屈曲板24の奥壁の上辺部24aに作用し、上下方向の力のバランスからF0とF2を足した力F1が折り返し部14a(又は15a)の開口25の上辺部25aに作用する。このため、装置本体1を持ち上げた際には、把持部材23を側板14(又は15)の折り返し部14a(又は15a)と屈曲板24で保持して支点ピン28には力が作用しないこととなる。支点ピン28はカシメ加工で側板14に固定するのが一般的であり、装置本体1の転倒などに対する強度はあまり強くないが、本発明によると、支点ピン28に大きな強度を持たせることが不要となる。
【0033】
本発明の把手装置の第2の実施形態について説明する。図8及び図9は、それぞれ第2の実施形態に係る把手装置の把持部材を水平位置まで回動して突出させた状態を示す縦断面図及び横断面図である。これらの図において、上記第1の実施形態に係る把手装置と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0034】
把持部材23の一方の側壁外面には、図8及び図9に示すように、支点穴27(図4(b)参照)よりも他端寄りに、半球面形状の係合突起32が突設されている。一方、収納部22の支持壁となる屈曲板24の側壁の所定の位置には、把持部材23を水平に突出させた状態で前記係合突起32が係合する係合穴33が貫通して設けられている。支点ピン28には、図9に示すように、側板14の外面と把持部材23の他方の側壁の外面との間に圧縮コイルバネ31が挿通され、把持部材23は常時屈曲板24の側壁の方へ付勢されている。
【0035】
この構成によると、把持部材23を水平に突出させた状態(図4(b)参照)で、手を離しても、コイルバネ31の付勢力により把持部材23の他方の側壁外面が屈曲板24の側壁内面に押しつけられ、さらに係合突起32が係合穴33に係合し、垂れ下がりなく保持される。把持部材23を収納する際は、把持部材23の他端部を下方に回動させて係合突起32と係合穴33の係合を解除すれば、後は把持部材23の自重で収納部22内に収納される。
【0036】
本発明の把手装置の第3の実施形態について説明する。図10は、第3の実施形態に係る把手装置の把持部材を水平位置まで回動して突出させた状態を示す横断面図である。この図において、上記第1の実施形態に係る把手装置と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0037】
支点ピン28には、図10に示すように、把持部材23の一方の側壁外面と屈曲板24の側壁内面との間には摩擦パッド34が挿通されている。また、支点ピン28には、側板14の外面と把持部材23の他方の側壁の外面との間に圧縮コイルバネ31が挿通され、把持部材23は常時屈曲板24の側壁の方へ付勢されている。
【0038】
この構成によると、把持部材23を水平に突出させた状態(図4(b)参照)で、手を離しても、コイルバネ31の付勢力により把持部材23の他方の側壁外面が屈曲板24の側壁内面に押しつけられ、さらに摩擦パッド34の摩擦力により、垂れ下がりなく保持される。しかも、この摩擦力の強さは把持部材23の回動位置に依存しないため、把持部材23を水平状態だけでなく任意の位置で保持することができる。また、この摩擦力の働きは把持部材23を緩やかな力で少し動かした程度ではなくならないので、収納位置に落下することがなく、操作性が良好となる。把持部材23を収納する際は、把持部材23の他端部を摩擦力に打ち勝つだけの勢いを付けて下方に回動させれば、後は把持部材23の自重で収納部22内に収納される。
【0039】
以上説明したように、本発明の把手装置によると、回動式の把持部材のロック機構やロック解除機構を、干渉、係合、摩擦等を利用した簡単な構成で実現し、把持部材の使用状態へのセット、収納及び運搬時の操作性を向上させることができる。
【0040】
また、上述した実施形態では棒状把持部材の断面形状を角筒状に形成しているが、本発明はこれに限らない。例えば、三角形や五角形等の多角形の筒状にしてもよく、或いは円筒状にしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ、スキャナー、或いはこれらの機能を併有する複合機等の画像形成装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】は、本発明の把手装置が設けられる画像形成装置の主要な構成要素を示す断面図である。
【図2】は、第1の実施形態に係る把手装置を備えた画像形成装置の内部構造を示す斜視図である。
【図3】は、第1の実施形態に係る把手装置の前側把持部材の周辺を示す図2の拡大図である。
【図4】は、第1の実施形態に係る把手装置の把持部材の収納状態(a)及び水平位置まで回動して突出させた状態(b)を示す縦断面図である。
【図5】は、第1の実施形態に係る把手装置の把持部材を水平位置まで回動して突出させた状態を示す横断面図である。
【図6】は、第1の実施形態に係る把手装置の把持部材を水平に突出した状態で維持するロック手段の動作を説明するための要部縦断面図である。
【図7】は、第1の実施形態に係る把手装置の把持部材の斜視図である。
【図8】は、第2の実施形態に係る把手装置の把持部材を水平位置まで回動して突出させた状態を示す縦断面図である。
【図9】は、第2の実施形態に係る把手装置の把持部材を水平位置まで回動して突出させた状態を示す横断面図である
【図10】は、第3の実施形態に係る把手装置の把持部材を水平位置まで回動して突出させた状態を示す横断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 装置本体
2 給紙カセット
3 露光装置
4 中間転写ベルト
5-8 作像ユニット
9 搬送路
10 二次転写ローラ
11 定着装置
12 フレーム
13 ベース部材
14 側板
14a 折り返し部
15 側板
15a 折り返し部
16 ステー
17 開口
18-21 装着部材
22 収納部
23 把持部材
23a 係合片
24 屈曲板
24a 上辺部
25 開口
25a 上辺部
26 位置規制片
27 支点穴
28 支点ピン
29 溝
29a 干渉部
31 コイルバネ
32 係合突起
33 係合穴
34 摩擦パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器本体内に収納された状態から回動して水平に突出した状態に引き出される把持部材を有する把手装置において、把持部材を突出する方向に回動操作することにより把持部材を水平に突出した状態で維持するロック手段が自動的に設定される一方、把持部材を収納する方向に回動操作するとロックが解除されることを特徴とする把手装置。
【請求項2】
機器本体内に設けられ前記把持部材を回動自在に支持して収納する囲い形状の収納部と、
前記収納部の一つの壁に貫通して設けられ前記把持部材が回動して突出される矩形の開口と、
を備え、
前記ロック手段が、
前記開口の上辺部と、
前記把持部材の水平状態の上面の回動支点の近傍に設けられ前記開口の上辺部と係合する溝と、
該溝に設けられ前記把持部材の回動中に前記開口の上辺部と干渉する干渉部と、
前記開口が設けられた壁に対向する前記収納部の奥壁の上辺部と、
前記把持部材の一端部に設けられ前記把持部材を水平に突出させた状態で前記奥壁の上辺部と係合する係合片と、
から構成されることを特徴とする請求項1に記載の把手装置。
【請求項3】
機器本体内に設けられ前記把持部材を回動自在に支持して収納する囲い形状の収納部と、
前記収納部の一つの壁に貫通して設けられ前記把持部材が回動して突出される矩形の開口と、
を備え、
前記収納部の対向する一対の支持壁に支点ピンを介して前記把持部材を支持し、
前記ロック手段が、
前記把持部材の一方の側壁に突設された係合突起と、
前記収納部の一対の支持壁の一方に設けられ前記把持部材を水平に突出させた状態で前記係合突起が係合する係合穴と、
前記支点ピンが挿通され前記把持部材を前記支持壁の一方に付勢するコイルバネと、
から構成されることを特徴とする請求項1に記載の把手装置。
【請求項4】
機器本体内に設けられ前記把持部材を回動自在に支持して収納する囲い形状の収納部と、
前記収納部の一つの壁に貫通して設けられ前記把持部材が回動して突出される矩形の開口と、
を備え、
前記収納部の対向する一対の支持壁に支点ピンを介して前記把持部材を支持し、
前記ロック手段が、
前記支点ピンが挿通され前記把持部材を前記支持壁の一方に付勢するコイルバネと、
前記把持部材の一方の側壁に取り付けられ前記コイルバネの付勢によって前記把持部材の回動方向に対して前記支持壁の一方との間で摩擦力を付与する摩擦パッドと、
から構成されることを特徴とする請求項1に記載の把手装置。
【請求項5】
前記収納部は、本体フレームの側板の端部を直角に折り返して形成した折り返し部と、折り返し部の裏面と該折り返し部と直角をなす本体フレームの側板の外面とに跨って取り付けられた屈曲板とで囲まれる領域に構成され、前記開口を折り返し部に設けたことを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の把手装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−133130(P2007−133130A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−325842(P2005−325842)
【出願日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】