把持具
【課題】 移動状態から停止した時の慣性による振動を抑制することで、振動消失までの時間を短縮して生産設備の生産能率の向上に寄与することができる把持具を提供する。
【解決手段】 生産設備2で生産されたワークまたはインモールドワークをワーク把持位置からワーク解放位置に搬送する搬送手段3に設けられる把持具1であり、この把持具1は、搬送手段3側の基部10と、この基部10に延設され、かつ複数の把持ヘッド4を備えた把持部11とからなり、把持部11は、複数の枝12〜19を分岐延出した枝群20によって構成し、基部10から最も離れている各枝12〜19それぞれの先端部側の重量を小さく(軽く)する。
【解決手段】 生産設備2で生産されたワークまたはインモールドワークをワーク把持位置からワーク解放位置に搬送する搬送手段3に設けられる把持具1であり、この把持具1は、搬送手段3側の基部10と、この基部10に延設され、かつ複数の把持ヘッド4を備えた把持部11とからなり、把持部11は、複数の枝12〜19を分岐延出した枝群20によって構成し、基部10から最も離れている各枝12〜19それぞれの先端部側の重量を小さく(軽く)する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持具に係り、たとえば、射出成形機で同時に成形した多数の小型成形品を一度に把持して取り出すための把持具、あるいは、薄物ワークと合成樹脂とを一体成形するインサート成形において、薄物ワークを把持して射出成形機の金型内にインモールドするための把持具として好適な把持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、合成樹脂成形において、同時に成形した多数の小型成形品を一度に把持して取り出す、所謂、多数個取りと称される成形品取出システムでは、図9,図10,図11に示す把持具50が用いられる(特許文献、特になし)。
【0003】
図9,図10,図11において、把持具50は、射出成形機(生産設備)51で同時に成形(生産)した多数の小型成形品(図示省略)を一度に把持して取り出すためのもので、射出成形機51の型開きした金型51aに対向するワーク把持位置(図11の実線参照)から射出成形機51外部のワーク解放位置(たとえば、図11の二点鎖線参照)に多数の小型成形品を搬送する成形品取出機(搬送手段)52の旋回アーム52a先端部に装着される。
【0004】
把持具50は、肉厚tが薄い金属製の板材または硬質合成樹脂製の板材からなる正面形状が四角枠形のもので、旋回アーム52aの先端部に装着される基部53と、この基部53に延設された把持部54とを備える。把持部54は、互いに平行して対向する上辺部54aと下辺部54b、上辺部54aと下辺部54bの基部53側の端部を繋ぐ鉛直方向の一方の縦辺部54c、上辺部54aと下辺部54bの先端部を繋ぐ鉛直方向の他方の縦辺部54dおよび各縦辺部54c,54dの間で上辺部54aと下辺部54bを繋ぐ鉛直方向の一対の縦桟部54eを有する。
【0005】
前記各辺部54a〜54dおよび一対の縦桟部54eには、射出成形機51で同時に成形された多数の小型成形品の成形位置に対応する所定の位置に分散して、多数の小型成形品を一度に把持するための多数の吸着パッド55が取付けられており、各吸着パッド55は、各辺部54a〜54dおよび一対の縦桟部54eそれぞれの体内に設けた吸・送気通路56を介して吸・送気管57に連通し、吸・送気管57は、図示されていない吸・送気切換弁を介して吸・送気手段(図示省略)に接続されている。
【0006】
前記構成の把持具50が図11の二点鎖線で示すワーク解放位置にある状態で、成形品取出機52の旋回アーム52aを旋回させて、把持具50を図11の実線で示す位置、つまり射出成形機51の型開きした金型51aに対向するワーク把持位置まで移動させ、さらに把持具50を金型51a、詳しくは可動金型51aに近接させ、ここで前記吸・送気切換弁を切り換えて吸気手段を吸・送気管57に連通させて、該吸・送気管57および吸・送気通路56を負圧化することにより、射出成形機51で同時に成形した多数の小型成形品を多数の吸着パッド55で一度に把持する。
【0007】
把持具50による多数の小型成形品の吸着把持を終えると、旋回アーム52aを逆方向に旋回させて、把持具50を図11の二点鎖線で示す位置、つまり射出成形機51外部のワーク解放位置まで移動させ、ここで、前記吸・送気切換弁を切り換えて送気手段を複数の吸・送気管57に連通させて、該吸・送気管57および吸・送気通路56を正圧化することで、多数の小型成形品を解放して適宜回収する。
【0008】
一方、薄物ワークと合成樹脂とを一体成形するインサート成形において、薄物ワークを把持して射出成形機の金型内にインモールドするシステムでは、図12,図13に示す把持具60が用いられる(特許文献1)。
【0009】
前記特許文献1に記載されている把持具60は、金属または硬質合成樹脂によって構成された正面形状がラベルなどの薄物ワークの形状とほぼ同一の長方形枠状のもので、その背面側に一体に取付けられた長方形のベース61と把持部62とを備え、長方形のベース61の一端部が直角座標系ロボット(搬送手段)63のアーム64に連結される。
【0010】
把持部62は、互いに平行して対向する上辺部62aと下辺部62b、上辺部62aと下辺部62bのアーム64側の端部、つまり基部側の端部を繋ぐ鉛直方向の一方の縦辺部62c、上辺部62aと下辺部62bの先端部を繋ぐ鉛直方向の他方の縦辺部62dおよび上辺部62aと下辺部62bの間で一方の縦辺部62cと他方の縦辺部62dを繋ぐ水平方向の一つの横桟部62eを有する。
【0011】
前記各辺部62a〜62dおよび横桟部62eには、所定の間隔を隔てて多数の吸引孔65が開口され、各吸引孔65は、ベース61と把持具62との取付け合わせ面においてベース61側に形成した空気室66に通じており、空気室66は吸・送気管67に連通し、吸・送気管67は、図示されていない吸・送気切換弁を介して吸・送気手段(図示省略)に接続されている。なお、前記多数の吸引孔65の開口部に図9で説明した吸着パッド55を取付けてもよい。
【0012】
前記構成の把持具60では、ロボット63によりワーク(ラベル)マガジンのエスケープ位置に把持具60を移動させてワークに把持部62を当接停止させる。ここで前記吸・送気切換弁を切り換えて吸気手段を吸・送気管67に連通させて吸・送気管67,空気室66および多数の吸引孔65を負圧化することにより、把持部62でワークを吸着把持する。
【0013】
つぎに、ロボット63により把持具60の把持部62を型開きしている射出成形機の金型における固定金型(ともに図示せず)に近接停止させ、ここで、前記吸・送気切換弁を切り換えて送気手段を複数の吸・送気管67に連通させて、吸・送気管67,空気室66および多数の吸引孔65を正圧化することで、ワークを解放して前記固定金型にインモールドする。
【0014】
【特許文献1】特許第2958989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、図9,図10,図11で説明した多数の小型成形品を一度に把持する把持具50では、図11の二点鎖線で示すワーク解放位置から実線で示すワーク把持位置まで移動させてここで停止した時の慣性により、把持具50の把持部54には、主として肉厚t方向の振動が生じる。この肉厚t方向の振動は、把持部54の先端部に他方の縦辺部54dが備わっていることで、基部53から最も離れている把持部54の先端部側の重量が大きいために増幅されると考えられる。
【0016】
このように、把持部54がその肉厚t方向に振動すると、多数の吸着パッド55による多数の小型成形品の正確な吸着把持、つまり把持部54による成形品の正確な吸着把持が損なわれて、把持具50の成形品把持精度が低下する。そのため、把持具50がワーク把持位置で停止した時点から前記の振動が減衰して消失するまでの間は小型成形品の把持を待機して、成形品把持精度の低下を回避しなければならない。したがって、把持具50による成形品把持サイクルタイムが長くなり、これが射出成形機の成形能率を低下させる一因になっている。
【0017】
一方、図12,図13で説明した薄物ワークを把持して射出成形機の金型内にインモールドする把持具60では、ロボット63によりワーク(ラベル)マガジンのエスケープ位置に把持具60を移動させてワークに把持部62を当接停止させた時の慣性と、ロボット63により把持具60の把持部62を型開きしている射出成形機の金型における固定金型に近接停止させた時の慣性により、把持具60には、主として肉厚方向の振動が生じる。この肉厚方向の振動は、把持部62の先端部に他方の縦辺部62dが備わっていることで、基部側の端部である一方の縦辺部62cから最も離れている把持部62の先端部側の重量が大きいために増幅されると考えられる。
【0018】
このように、把持具60がその肉厚方向に振動すると、多数の吸引孔65によるワークの正確な吸着把持が損なわれて、把持具60のワーク把持精度が低下するとともに、ワークのインモールド精度も低下することになる。そのため、把持具60がワーク(ラベル)マガジンのエスケープ位置で停止した時点から前記の振動が減衰して消失するまでの間はワークの把持を待機して、ワーク把持精度の低下を回避しなければならないばかりか、把持具60の把持部62が固定金型に近接停止した時点から前記の振動が減衰して消失するまでの間はワークの解放を待機して、ワークのインモールド精度の低下を回避しなければならない。したがって、把持具60によるワークのインモールドサイクルタイムが長くなり、これがインモールド成形機の成形能率を低下させる一因になっている。
【0019】
本発明は、このような問題を解決するものであって、その目的とするところは、移動状態から停止した時の慣性による振動を抑制することで、振動消失までの時間を短縮して生産設備の生産能率の向上に寄与することができる把持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記目的を達成するために、本発明に係る把持具は、生産設備で生産されたワークをワーク把持位置からワーク解放位置に搬送する搬送手段に設けられる把持具であって、
該把持具は、搬送手段側の基部と、この基部に延設され、かつ複数の把持ヘッドを備えた把持部とからなり、
この把持部は、複数の枝を分岐延出した枝群によって構成されていることを特徴としている。
【0021】
これによれば、把持部が基部から複数の枝を分岐延出した枝群によって構成されていることで、基部から最も離れている把持部の先端部側の重量が小さく(軽く)なるので、把持具が移動状態から停止した時の慣性による振動が抑制されて、振動消失までの時間を短縮することができる。
【0022】
また、前記枝群を構成する各枝の横断面積は、基部側から延出端にかけて縮小されていることが望ましい。これによると、基部から最も離れている把持部の先端部側の重量がさらに小さく(軽く)なるので、把持具が移動状態から停止した時の慣性による振動がさらに抑制されて、振動消失までの時間をより一層短縮することができる。
【0023】
さらに、本発明に係る把持具は、生産設備で生産されたワークをワーク把持位置からワーク解放位置に搬送する搬送手段に設けられる把持具であって、
この把持具は、搬送手段側の基部と、この基部に延設され、かつ把持ヘッドを備えた把持部とからなり、この把持部の横断面積は、基部側から延出端にかけて縮小されていることを特徴としている。
【0024】
これによれば、基部から最も離れている把持部の先端部側の重量が小さく(軽く)なるので、把持具が移動状態から停止した時の慣性による振動が抑制されて、振動消失までの時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、基部から最も離れている把持部の先端部側の重量が小さくなることで、把持具が移動状態から停止した時の慣性による振動が抑制されて、振動消失までの時間が短縮されるので、生産設備の生産能率の向上に寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、第1の発明に係る把持具の第1実施形態を示す正面図、図2は、図1のII−II矢視図、図3は、図1の把持具の使用例を示す正面図である。
【0027】
図1,図2,図3において、把持具1は射出成形機(生産設備)2で同時に成形(生産)した16個の小型成形品[ワーク(図示省略)]を一度に把持して取り出すためのもので、射出成形機2の型開きした金型2aに対向するワーク把持位置(図3の実線参照)から射出成形機2外部のワーク解放位置(たとえば、図3の二点鎖線参照)に前記16個の小型成形品を搬送する成形品取出機(搬送手段)3の旋回アーム3a先端部に装着される。
【0028】
把持具1は、肉厚tが薄い金属製の板材または硬質合成樹脂製の板材からなり、旋回アーム3aの先端部に装着される基部10と、この基部10に延設された把持部11とを備える。把持部11は、基部10から三つの経路に分岐延出した第1〜第3の枝12,13,14と、第3の枝14からさらに分岐延出した第4〜第6の枝15,16,17および第3の枝14の先端部から二股に分岐延出した第7,第8の枝18,19からなる枝群20によって構成されており、各枝12〜19の横断面形状は長方形に設定されている。
【0029】
枝群20を構成している第1〜第8の枝12〜19には、射出成形機2で同時に成形された16個の小型成形品の成形位置に対応する所定の位置に分散して、16個の小型成形品を一度に把持するための16個の吸着パッド4が取付けられており、各吸着パッド4は、第1〜第8の枝12〜19の体内に設けた吸・送気通路5を介して吸・送気管6に連通し、吸・送気管6は、図示されていない吸・送気切換弁を介して吸・送気手段(図示省略)に接続されている。
【0030】
前記構成の把持具1が図3の二点鎖線で示すワーク解放位置にある状態で、成形品取出機3の旋回アーム3aを旋回させて、把持具1を図3の実線で示す位置、つまり射出成形機2の型開きした金型2aに対向するワーク把持位置まで移動させ、さらに把持具1を金型2a、詳しくは可動金型2aに近接させ、ここで前記吸・送気切換弁を切り換えて吸気手段を吸・送気管6に連通させて、該吸・送気管6および吸・送気通路5を負圧化することにより、射出成形機2で同時に成形した16個の小型成形品を16個の吸着パッド4で一度に把持する。
【0031】
把持具1による16個の小型成形品の吸着把持を終えると、旋回アーム3aを逆方向に旋回させて、把持具1を図3の二点鎖線で示す位置、つまり射出成形機2外部のワーク解放位置まで移動させ、ここで、前記吸・送気切換弁を切り換えて送気手段を吸・送気管6に連通させて、該吸・送気管6および吸・送気通路5を正圧化することで、16個の小型成形品を解放して適宜回収する。
【0032】
把持具1の把持部11が基部10から三つの経路に分岐延出した第1〜第3の枝12,13,14と、第3の枝14からさらに分岐延出した第4〜第6の枝15,16,16および第3の枝14の先端部から二股に分岐延出した第7,第8の枝18,19からなる枝群20によって構成されているので、基部10から最も離れている把持部11の先端部側の重量、つまり、第1〜第8の枝12〜19それぞれの先端部側の重量が小さく(軽く)なる。そのため、把持具1が図3の二点鎖線で示すワーク解放位置から実線で示すワーク把持位置まで移動してここで停止した時の慣性による主として肉厚t方向の振動が抑制されて、振動消失までの時間を短縮することができるので、射出成形機2による小型成形品の成形能率(生産能率)の向上に寄与することができる。
【0033】
本発明に係る把持具1では、前記枝群20を構成している第1〜第8の枝12〜19の長方形横断面積を、基部10側から各枝12〜19の先端部にかけて縮小することで、基部10から最も離れている各枝12〜19の先端部側の重量をさらに小さく(軽く)できる。これにより、把持具1が移動状態から停止した時の慣性による振動をさらに抑制して、振動消失までの時間をより一層短縮することができる。各枝12〜19の横断面積の基部10側から各枝12〜19の先端部にかけての縮小は、各枝12〜19の肉厚tと幅寸法の少なくともいずれか一方を、基部10側から各枝12〜19の先端部にかけて小さく設定することによって実現できる。
【0034】
把持具1において、基部10から分岐延出して枝群20を構成する各枝の分岐経路および分岐形態は、射出成形機2で同時に成形される小型成形品の数量および成形位置に対応して任意に設定することができ、分岐経路および分岐形態が任意に設定された各枝の所定位置に小型成形品の数量と同数の吸着パッド4を取付ければよい。
【0035】
把持具1の第2実施形態を図4に示す。なお、図1の第1実施形態の把持具1と同一部分には同一符号を付して説明する。図4において、把持具1の把持部11は、基部10から五つの経路に分岐延出した第1〜第5の枝12〜16からなる熊手状の枝群20によって構成されている。このような把持具1であっても、基部10から最も離れている把持部11の先端部側の重量、つまり、第1〜第5の枝12〜16それぞれの先端部側の重量が小さく(軽く)なるので、把持具1が図3の二点鎖線で示すワーク解放位置から実線で示すワーク把持位置まで移動してここで停止した時の慣性による主として肉厚方向の振動が抑制されて、振動消失までの時間を短縮し、射出成形機2による小型成形品の成形能率(生産能率)の向上に寄与することができる。
【0036】
図1で説明したの第1実施形態の把持具1は、図5のように、たとえば、第5の枝16と第6の枝17それぞれの先端部を横桟7で連結してもよい。また、図4で説明したの第2実施形態の把持具1は、たとえば、図6のように、第2の枝13と第3の枝14それぞれの先端部および第4の枝15と第5の枝16それぞれの先端部を縦桟8で連結してもよい。
【0037】
このように、第1実施形態の把持具1では、たとえば、第5の枝16と第6の枝17それぞれの先端部を横桟7で連結しても、また、第2実施形態の把持具1では、たとえば、第2の枝13と第3の枝14それぞれの先端部および第4の枝15と第5の枝16それぞれの先端部を縦桟8で連結しても、横桟7および縦桟8自体の重量は軽量であるので、把持部11の延出端の重量増加に影響を及ぼすことはない。そのため、前記第1,第2実施形態と同様の作用効果を奏することができるとともに、横桟7および縦桟8により把持部11の補強効果を高めることができる。
【0038】
図7は、第2の発明に係る把持具の一実施形態を示す正面図、図8は、図7のVIII−VIII矢視図である。なお、前述の第1の発明に係る把持具と同一もしくは相当部分には、同一符号を付して説明する。
【0039】
図7.図8において、第2の発明に係る把持具1は、たとえば、図3の射出成形機(生産設備)2で同時に成形(生産)した8個の小型成形品[ワーク(図示省略)]を一度に把持して取り出すためのもので、第1の発明に係る把持具1と同様に、射出成形機2の型開きした金型2aに対向するワーク把持位置(図3の実線参照)から射出成形機2外部のワーク解放位置(たとえば、図3の二点鎖線参照)に前記17個の小型成形品を搬送する図3の成形品取出機(搬送手段)3の旋回アーム3a先端部に装着される。この第2の発明に係る把持具1にも、第1の発明に係る把持具1と同様に、吸・送気通路5および吸・送気管6(ともに図1参照)が設けられるが、これらの図示は省略する。
【0040】
図7.図8の把持具1は、肉厚tが薄い金属製の板材または硬質合成樹脂製の板材からなる正面形状が先細包丁形(先細包丁枠形でもよい)のもので、図3の旋回アーム3aの先端部に装着される基部10と、この基部10に延設された把持部11とを備える。把持部11は、その正面形状が先細包丁形であること、つまり、横断面積が基部10側から先端部にかけて縮小されていることで、基部10から最も離れている先端部側の重量が小さく(軽く)なる。これにより、把持具1が移動状態から停止した時の慣性による振動を抑制して、振動消失までの時間を短縮することができる。把持部11の横断面積の基部10側から先端部にかけての縮小は、図7のように先細包丁形にするか、あるいは把持部11の肉厚tを基部10側から先端部にかけて小さく設定することによって実現できる。
【0041】
第1の発明の第1,第2実施形態および第2の発明の一実施形態では、把持具1を、射出成形機2で同時に成形した多数の小型成形品を一度に把持して取り出すためのものとして説明しているが、薄物ワークと合成樹脂とを一体成形するインサート成形において、薄物ワークを把持して射出成形機2の金型内にインモールドするための把持具1としても適用することができる。
【0042】
また、前記各実施形態では、旋回アーム3aを備えた旋回アーム型の成形品取出機(搬送手段)3に把持具1を装着した構成で説明しているが、サイドエントリー型の成形品取出機(搬送手段)3に把持具1を装着することもできる。
【0043】
さらに、第1の発明の第1,第2実施形態では、各枝12〜19の横断面形状を長方形に設定しているが、各枝12〜19の横断面形状は長方形にのみ限定されるものではなく、円形,長方形、楕円形など任意の横断面形状を採用できる。
【0044】
また、前記各実施形態では、把持部11の所定位置に吸着パッド4を取付けた構成で説明しているが、吸着パッド4に代えて射出成形機に成形される成形品の挟持が可能な挟持ヘッドを取付けてもよい。挟持ヘッドを取付けた構成であると、吸・送気通路5および吸・送気管6は、図示されていない吸・送気切換弁を介して吸・送気手段(図示省略)に接続することで、挟持ヘッド開閉作動用空気の吸・送気経路として機能することになる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】第1の発明に係る把持具の第1実施形態を示す正面図である。
【図2】図1のII−II矢視図である。
【図3】図1の把持具の使用例を示す正面図である。
【図4】第1の発明に係る把持具の第2実施形態を示す正面図である。
【図5】第1の発明に係る把持具の第1実施形態の変形例を示す正面図である。
【図6】第1の発明に係る把持具の第2実施形態の変形例を示す正面図である。
【図7】第2の発明に係る把持具の一実施形態を示す正面図である。
【図8】図7のVIII−VIII矢視図である。
【図9】従来の把持具の一例を示す正面図である。
【図10】図9のX−X矢視図である。
【図11】図9の把持具の使用例を示す正面図である。
【図12】従来の他の把持具の使用例を示す斜視図である。
【図13】図12の他の把持具の拡大縦断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 把持具
2 射出成形機(生産設備)
3 成形品取出機(搬送手段)
4 吸着パッド(把持ヘッド)
6 昇降ユニット(移動体)
10 基部
11 把持部
12〜19 複数の枝
20 枝群
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持具に係り、たとえば、射出成形機で同時に成形した多数の小型成形品を一度に把持して取り出すための把持具、あるいは、薄物ワークと合成樹脂とを一体成形するインサート成形において、薄物ワークを把持して射出成形機の金型内にインモールドするための把持具として好適な把持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、合成樹脂成形において、同時に成形した多数の小型成形品を一度に把持して取り出す、所謂、多数個取りと称される成形品取出システムでは、図9,図10,図11に示す把持具50が用いられる(特許文献、特になし)。
【0003】
図9,図10,図11において、把持具50は、射出成形機(生産設備)51で同時に成形(生産)した多数の小型成形品(図示省略)を一度に把持して取り出すためのもので、射出成形機51の型開きした金型51aに対向するワーク把持位置(図11の実線参照)から射出成形機51外部のワーク解放位置(たとえば、図11の二点鎖線参照)に多数の小型成形品を搬送する成形品取出機(搬送手段)52の旋回アーム52a先端部に装着される。
【0004】
把持具50は、肉厚tが薄い金属製の板材または硬質合成樹脂製の板材からなる正面形状が四角枠形のもので、旋回アーム52aの先端部に装着される基部53と、この基部53に延設された把持部54とを備える。把持部54は、互いに平行して対向する上辺部54aと下辺部54b、上辺部54aと下辺部54bの基部53側の端部を繋ぐ鉛直方向の一方の縦辺部54c、上辺部54aと下辺部54bの先端部を繋ぐ鉛直方向の他方の縦辺部54dおよび各縦辺部54c,54dの間で上辺部54aと下辺部54bを繋ぐ鉛直方向の一対の縦桟部54eを有する。
【0005】
前記各辺部54a〜54dおよび一対の縦桟部54eには、射出成形機51で同時に成形された多数の小型成形品の成形位置に対応する所定の位置に分散して、多数の小型成形品を一度に把持するための多数の吸着パッド55が取付けられており、各吸着パッド55は、各辺部54a〜54dおよび一対の縦桟部54eそれぞれの体内に設けた吸・送気通路56を介して吸・送気管57に連通し、吸・送気管57は、図示されていない吸・送気切換弁を介して吸・送気手段(図示省略)に接続されている。
【0006】
前記構成の把持具50が図11の二点鎖線で示すワーク解放位置にある状態で、成形品取出機52の旋回アーム52aを旋回させて、把持具50を図11の実線で示す位置、つまり射出成形機51の型開きした金型51aに対向するワーク把持位置まで移動させ、さらに把持具50を金型51a、詳しくは可動金型51aに近接させ、ここで前記吸・送気切換弁を切り換えて吸気手段を吸・送気管57に連通させて、該吸・送気管57および吸・送気通路56を負圧化することにより、射出成形機51で同時に成形した多数の小型成形品を多数の吸着パッド55で一度に把持する。
【0007】
把持具50による多数の小型成形品の吸着把持を終えると、旋回アーム52aを逆方向に旋回させて、把持具50を図11の二点鎖線で示す位置、つまり射出成形機51外部のワーク解放位置まで移動させ、ここで、前記吸・送気切換弁を切り換えて送気手段を複数の吸・送気管57に連通させて、該吸・送気管57および吸・送気通路56を正圧化することで、多数の小型成形品を解放して適宜回収する。
【0008】
一方、薄物ワークと合成樹脂とを一体成形するインサート成形において、薄物ワークを把持して射出成形機の金型内にインモールドするシステムでは、図12,図13に示す把持具60が用いられる(特許文献1)。
【0009】
前記特許文献1に記載されている把持具60は、金属または硬質合成樹脂によって構成された正面形状がラベルなどの薄物ワークの形状とほぼ同一の長方形枠状のもので、その背面側に一体に取付けられた長方形のベース61と把持部62とを備え、長方形のベース61の一端部が直角座標系ロボット(搬送手段)63のアーム64に連結される。
【0010】
把持部62は、互いに平行して対向する上辺部62aと下辺部62b、上辺部62aと下辺部62bのアーム64側の端部、つまり基部側の端部を繋ぐ鉛直方向の一方の縦辺部62c、上辺部62aと下辺部62bの先端部を繋ぐ鉛直方向の他方の縦辺部62dおよび上辺部62aと下辺部62bの間で一方の縦辺部62cと他方の縦辺部62dを繋ぐ水平方向の一つの横桟部62eを有する。
【0011】
前記各辺部62a〜62dおよび横桟部62eには、所定の間隔を隔てて多数の吸引孔65が開口され、各吸引孔65は、ベース61と把持具62との取付け合わせ面においてベース61側に形成した空気室66に通じており、空気室66は吸・送気管67に連通し、吸・送気管67は、図示されていない吸・送気切換弁を介して吸・送気手段(図示省略)に接続されている。なお、前記多数の吸引孔65の開口部に図9で説明した吸着パッド55を取付けてもよい。
【0012】
前記構成の把持具60では、ロボット63によりワーク(ラベル)マガジンのエスケープ位置に把持具60を移動させてワークに把持部62を当接停止させる。ここで前記吸・送気切換弁を切り換えて吸気手段を吸・送気管67に連通させて吸・送気管67,空気室66および多数の吸引孔65を負圧化することにより、把持部62でワークを吸着把持する。
【0013】
つぎに、ロボット63により把持具60の把持部62を型開きしている射出成形機の金型における固定金型(ともに図示せず)に近接停止させ、ここで、前記吸・送気切換弁を切り換えて送気手段を複数の吸・送気管67に連通させて、吸・送気管67,空気室66および多数の吸引孔65を正圧化することで、ワークを解放して前記固定金型にインモールドする。
【0014】
【特許文献1】特許第2958989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、図9,図10,図11で説明した多数の小型成形品を一度に把持する把持具50では、図11の二点鎖線で示すワーク解放位置から実線で示すワーク把持位置まで移動させてここで停止した時の慣性により、把持具50の把持部54には、主として肉厚t方向の振動が生じる。この肉厚t方向の振動は、把持部54の先端部に他方の縦辺部54dが備わっていることで、基部53から最も離れている把持部54の先端部側の重量が大きいために増幅されると考えられる。
【0016】
このように、把持部54がその肉厚t方向に振動すると、多数の吸着パッド55による多数の小型成形品の正確な吸着把持、つまり把持部54による成形品の正確な吸着把持が損なわれて、把持具50の成形品把持精度が低下する。そのため、把持具50がワーク把持位置で停止した時点から前記の振動が減衰して消失するまでの間は小型成形品の把持を待機して、成形品把持精度の低下を回避しなければならない。したがって、把持具50による成形品把持サイクルタイムが長くなり、これが射出成形機の成形能率を低下させる一因になっている。
【0017】
一方、図12,図13で説明した薄物ワークを把持して射出成形機の金型内にインモールドする把持具60では、ロボット63によりワーク(ラベル)マガジンのエスケープ位置に把持具60を移動させてワークに把持部62を当接停止させた時の慣性と、ロボット63により把持具60の把持部62を型開きしている射出成形機の金型における固定金型に近接停止させた時の慣性により、把持具60には、主として肉厚方向の振動が生じる。この肉厚方向の振動は、把持部62の先端部に他方の縦辺部62dが備わっていることで、基部側の端部である一方の縦辺部62cから最も離れている把持部62の先端部側の重量が大きいために増幅されると考えられる。
【0018】
このように、把持具60がその肉厚方向に振動すると、多数の吸引孔65によるワークの正確な吸着把持が損なわれて、把持具60のワーク把持精度が低下するとともに、ワークのインモールド精度も低下することになる。そのため、把持具60がワーク(ラベル)マガジンのエスケープ位置で停止した時点から前記の振動が減衰して消失するまでの間はワークの把持を待機して、ワーク把持精度の低下を回避しなければならないばかりか、把持具60の把持部62が固定金型に近接停止した時点から前記の振動が減衰して消失するまでの間はワークの解放を待機して、ワークのインモールド精度の低下を回避しなければならない。したがって、把持具60によるワークのインモールドサイクルタイムが長くなり、これがインモールド成形機の成形能率を低下させる一因になっている。
【0019】
本発明は、このような問題を解決するものであって、その目的とするところは、移動状態から停止した時の慣性による振動を抑制することで、振動消失までの時間を短縮して生産設備の生産能率の向上に寄与することができる把持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記目的を達成するために、本発明に係る把持具は、生産設備で生産されたワークをワーク把持位置からワーク解放位置に搬送する搬送手段に設けられる把持具であって、
該把持具は、搬送手段側の基部と、この基部に延設され、かつ複数の把持ヘッドを備えた把持部とからなり、
この把持部は、複数の枝を分岐延出した枝群によって構成されていることを特徴としている。
【0021】
これによれば、把持部が基部から複数の枝を分岐延出した枝群によって構成されていることで、基部から最も離れている把持部の先端部側の重量が小さく(軽く)なるので、把持具が移動状態から停止した時の慣性による振動が抑制されて、振動消失までの時間を短縮することができる。
【0022】
また、前記枝群を構成する各枝の横断面積は、基部側から延出端にかけて縮小されていることが望ましい。これによると、基部から最も離れている把持部の先端部側の重量がさらに小さく(軽く)なるので、把持具が移動状態から停止した時の慣性による振動がさらに抑制されて、振動消失までの時間をより一層短縮することができる。
【0023】
さらに、本発明に係る把持具は、生産設備で生産されたワークをワーク把持位置からワーク解放位置に搬送する搬送手段に設けられる把持具であって、
この把持具は、搬送手段側の基部と、この基部に延設され、かつ把持ヘッドを備えた把持部とからなり、この把持部の横断面積は、基部側から延出端にかけて縮小されていることを特徴としている。
【0024】
これによれば、基部から最も離れている把持部の先端部側の重量が小さく(軽く)なるので、把持具が移動状態から停止した時の慣性による振動が抑制されて、振動消失までの時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、基部から最も離れている把持部の先端部側の重量が小さくなることで、把持具が移動状態から停止した時の慣性による振動が抑制されて、振動消失までの時間が短縮されるので、生産設備の生産能率の向上に寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、第1の発明に係る把持具の第1実施形態を示す正面図、図2は、図1のII−II矢視図、図3は、図1の把持具の使用例を示す正面図である。
【0027】
図1,図2,図3において、把持具1は射出成形機(生産設備)2で同時に成形(生産)した16個の小型成形品[ワーク(図示省略)]を一度に把持して取り出すためのもので、射出成形機2の型開きした金型2aに対向するワーク把持位置(図3の実線参照)から射出成形機2外部のワーク解放位置(たとえば、図3の二点鎖線参照)に前記16個の小型成形品を搬送する成形品取出機(搬送手段)3の旋回アーム3a先端部に装着される。
【0028】
把持具1は、肉厚tが薄い金属製の板材または硬質合成樹脂製の板材からなり、旋回アーム3aの先端部に装着される基部10と、この基部10に延設された把持部11とを備える。把持部11は、基部10から三つの経路に分岐延出した第1〜第3の枝12,13,14と、第3の枝14からさらに分岐延出した第4〜第6の枝15,16,17および第3の枝14の先端部から二股に分岐延出した第7,第8の枝18,19からなる枝群20によって構成されており、各枝12〜19の横断面形状は長方形に設定されている。
【0029】
枝群20を構成している第1〜第8の枝12〜19には、射出成形機2で同時に成形された16個の小型成形品の成形位置に対応する所定の位置に分散して、16個の小型成形品を一度に把持するための16個の吸着パッド4が取付けられており、各吸着パッド4は、第1〜第8の枝12〜19の体内に設けた吸・送気通路5を介して吸・送気管6に連通し、吸・送気管6は、図示されていない吸・送気切換弁を介して吸・送気手段(図示省略)に接続されている。
【0030】
前記構成の把持具1が図3の二点鎖線で示すワーク解放位置にある状態で、成形品取出機3の旋回アーム3aを旋回させて、把持具1を図3の実線で示す位置、つまり射出成形機2の型開きした金型2aに対向するワーク把持位置まで移動させ、さらに把持具1を金型2a、詳しくは可動金型2aに近接させ、ここで前記吸・送気切換弁を切り換えて吸気手段を吸・送気管6に連通させて、該吸・送気管6および吸・送気通路5を負圧化することにより、射出成形機2で同時に成形した16個の小型成形品を16個の吸着パッド4で一度に把持する。
【0031】
把持具1による16個の小型成形品の吸着把持を終えると、旋回アーム3aを逆方向に旋回させて、把持具1を図3の二点鎖線で示す位置、つまり射出成形機2外部のワーク解放位置まで移動させ、ここで、前記吸・送気切換弁を切り換えて送気手段を吸・送気管6に連通させて、該吸・送気管6および吸・送気通路5を正圧化することで、16個の小型成形品を解放して適宜回収する。
【0032】
把持具1の把持部11が基部10から三つの経路に分岐延出した第1〜第3の枝12,13,14と、第3の枝14からさらに分岐延出した第4〜第6の枝15,16,16および第3の枝14の先端部から二股に分岐延出した第7,第8の枝18,19からなる枝群20によって構成されているので、基部10から最も離れている把持部11の先端部側の重量、つまり、第1〜第8の枝12〜19それぞれの先端部側の重量が小さく(軽く)なる。そのため、把持具1が図3の二点鎖線で示すワーク解放位置から実線で示すワーク把持位置まで移動してここで停止した時の慣性による主として肉厚t方向の振動が抑制されて、振動消失までの時間を短縮することができるので、射出成形機2による小型成形品の成形能率(生産能率)の向上に寄与することができる。
【0033】
本発明に係る把持具1では、前記枝群20を構成している第1〜第8の枝12〜19の長方形横断面積を、基部10側から各枝12〜19の先端部にかけて縮小することで、基部10から最も離れている各枝12〜19の先端部側の重量をさらに小さく(軽く)できる。これにより、把持具1が移動状態から停止した時の慣性による振動をさらに抑制して、振動消失までの時間をより一層短縮することができる。各枝12〜19の横断面積の基部10側から各枝12〜19の先端部にかけての縮小は、各枝12〜19の肉厚tと幅寸法の少なくともいずれか一方を、基部10側から各枝12〜19の先端部にかけて小さく設定することによって実現できる。
【0034】
把持具1において、基部10から分岐延出して枝群20を構成する各枝の分岐経路および分岐形態は、射出成形機2で同時に成形される小型成形品の数量および成形位置に対応して任意に設定することができ、分岐経路および分岐形態が任意に設定された各枝の所定位置に小型成形品の数量と同数の吸着パッド4を取付ければよい。
【0035】
把持具1の第2実施形態を図4に示す。なお、図1の第1実施形態の把持具1と同一部分には同一符号を付して説明する。図4において、把持具1の把持部11は、基部10から五つの経路に分岐延出した第1〜第5の枝12〜16からなる熊手状の枝群20によって構成されている。このような把持具1であっても、基部10から最も離れている把持部11の先端部側の重量、つまり、第1〜第5の枝12〜16それぞれの先端部側の重量が小さく(軽く)なるので、把持具1が図3の二点鎖線で示すワーク解放位置から実線で示すワーク把持位置まで移動してここで停止した時の慣性による主として肉厚方向の振動が抑制されて、振動消失までの時間を短縮し、射出成形機2による小型成形品の成形能率(生産能率)の向上に寄与することができる。
【0036】
図1で説明したの第1実施形態の把持具1は、図5のように、たとえば、第5の枝16と第6の枝17それぞれの先端部を横桟7で連結してもよい。また、図4で説明したの第2実施形態の把持具1は、たとえば、図6のように、第2の枝13と第3の枝14それぞれの先端部および第4の枝15と第5の枝16それぞれの先端部を縦桟8で連結してもよい。
【0037】
このように、第1実施形態の把持具1では、たとえば、第5の枝16と第6の枝17それぞれの先端部を横桟7で連結しても、また、第2実施形態の把持具1では、たとえば、第2の枝13と第3の枝14それぞれの先端部および第4の枝15と第5の枝16それぞれの先端部を縦桟8で連結しても、横桟7および縦桟8自体の重量は軽量であるので、把持部11の延出端の重量増加に影響を及ぼすことはない。そのため、前記第1,第2実施形態と同様の作用効果を奏することができるとともに、横桟7および縦桟8により把持部11の補強効果を高めることができる。
【0038】
図7は、第2の発明に係る把持具の一実施形態を示す正面図、図8は、図7のVIII−VIII矢視図である。なお、前述の第1の発明に係る把持具と同一もしくは相当部分には、同一符号を付して説明する。
【0039】
図7.図8において、第2の発明に係る把持具1は、たとえば、図3の射出成形機(生産設備)2で同時に成形(生産)した8個の小型成形品[ワーク(図示省略)]を一度に把持して取り出すためのもので、第1の発明に係る把持具1と同様に、射出成形機2の型開きした金型2aに対向するワーク把持位置(図3の実線参照)から射出成形機2外部のワーク解放位置(たとえば、図3の二点鎖線参照)に前記17個の小型成形品を搬送する図3の成形品取出機(搬送手段)3の旋回アーム3a先端部に装着される。この第2の発明に係る把持具1にも、第1の発明に係る把持具1と同様に、吸・送気通路5および吸・送気管6(ともに図1参照)が設けられるが、これらの図示は省略する。
【0040】
図7.図8の把持具1は、肉厚tが薄い金属製の板材または硬質合成樹脂製の板材からなる正面形状が先細包丁形(先細包丁枠形でもよい)のもので、図3の旋回アーム3aの先端部に装着される基部10と、この基部10に延設された把持部11とを備える。把持部11は、その正面形状が先細包丁形であること、つまり、横断面積が基部10側から先端部にかけて縮小されていることで、基部10から最も離れている先端部側の重量が小さく(軽く)なる。これにより、把持具1が移動状態から停止した時の慣性による振動を抑制して、振動消失までの時間を短縮することができる。把持部11の横断面積の基部10側から先端部にかけての縮小は、図7のように先細包丁形にするか、あるいは把持部11の肉厚tを基部10側から先端部にかけて小さく設定することによって実現できる。
【0041】
第1の発明の第1,第2実施形態および第2の発明の一実施形態では、把持具1を、射出成形機2で同時に成形した多数の小型成形品を一度に把持して取り出すためのものとして説明しているが、薄物ワークと合成樹脂とを一体成形するインサート成形において、薄物ワークを把持して射出成形機2の金型内にインモールドするための把持具1としても適用することができる。
【0042】
また、前記各実施形態では、旋回アーム3aを備えた旋回アーム型の成形品取出機(搬送手段)3に把持具1を装着した構成で説明しているが、サイドエントリー型の成形品取出機(搬送手段)3に把持具1を装着することもできる。
【0043】
さらに、第1の発明の第1,第2実施形態では、各枝12〜19の横断面形状を長方形に設定しているが、各枝12〜19の横断面形状は長方形にのみ限定されるものではなく、円形,長方形、楕円形など任意の横断面形状を採用できる。
【0044】
また、前記各実施形態では、把持部11の所定位置に吸着パッド4を取付けた構成で説明しているが、吸着パッド4に代えて射出成形機に成形される成形品の挟持が可能な挟持ヘッドを取付けてもよい。挟持ヘッドを取付けた構成であると、吸・送気通路5および吸・送気管6は、図示されていない吸・送気切換弁を介して吸・送気手段(図示省略)に接続することで、挟持ヘッド開閉作動用空気の吸・送気経路として機能することになる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】第1の発明に係る把持具の第1実施形態を示す正面図である。
【図2】図1のII−II矢視図である。
【図3】図1の把持具の使用例を示す正面図である。
【図4】第1の発明に係る把持具の第2実施形態を示す正面図である。
【図5】第1の発明に係る把持具の第1実施形態の変形例を示す正面図である。
【図6】第1の発明に係る把持具の第2実施形態の変形例を示す正面図である。
【図7】第2の発明に係る把持具の一実施形態を示す正面図である。
【図8】図7のVIII−VIII矢視図である。
【図9】従来の把持具の一例を示す正面図である。
【図10】図9のX−X矢視図である。
【図11】図9の把持具の使用例を示す正面図である。
【図12】従来の他の把持具の使用例を示す斜視図である。
【図13】図12の他の把持具の拡大縦断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 把持具
2 射出成形機(生産設備)
3 成形品取出機(搬送手段)
4 吸着パッド(把持ヘッド)
6 昇降ユニット(移動体)
10 基部
11 把持部
12〜19 複数の枝
20 枝群
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産設備で生産されたワークをワーク把持位置からワーク解放位置に搬送する搬送手段に設けられる把持具であって、
該把持具は、搬送手段側の基部と、この基部に延設され、かつ複数の把持ヘッドを備えた把持部とからなり、
この把持部は、複数の枝を分岐延出した枝群によって構成されていることを特徴とする把持具。
【請求項2】
請求項1に記載の把持具において、
前記枝群を構成する各枝の横断面積は、基部側から延出端にかけて縮小されていることを特徴とする把持具。
【請求項3】
生産設備で生産されたワークをワーク把持位置からワーク解放位置に搬送する搬送手段に設けられる把持具であって、
この把持具は、搬送手段側の基部と、この基部に延設され、かつ把持ヘッドを備えた把持部とからなり、この把持部の横断面積は、基部側から延出端にかけて縮小されていることを特徴とする把持具。
【請求項1】
生産設備で生産されたワークをワーク把持位置からワーク解放位置に搬送する搬送手段に設けられる把持具であって、
該把持具は、搬送手段側の基部と、この基部に延設され、かつ複数の把持ヘッドを備えた把持部とからなり、
この把持部は、複数の枝を分岐延出した枝群によって構成されていることを特徴とする把持具。
【請求項2】
請求項1に記載の把持具において、
前記枝群を構成する各枝の横断面積は、基部側から延出端にかけて縮小されていることを特徴とする把持具。
【請求項3】
生産設備で生産されたワークをワーク把持位置からワーク解放位置に搬送する搬送手段に設けられる把持具であって、
この把持具は、搬送手段側の基部と、この基部に延設され、かつ把持ヘッドを備えた把持部とからなり、この把持部の横断面積は、基部側から延出端にかけて縮小されていることを特徴とする把持具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−83037(P2009−83037A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−255673(P2007−255673)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000138473)株式会社ユーシン精機 (117)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000138473)株式会社ユーシン精機 (117)
【Fターム(参考)】
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