説明

把持装置及びロボット装置

【課題】一対のフィンガーの把持動作に用いられる回転駆動源を、一対のフィンガーの回転駆動に兼用する。
【解決手段】モータ5は、フレーム6から回転軸5bが突出するようにフレーム6に収容されている。回転軸5bには、ピニオン7が固定されている。また、フレーム6に対してグリッパ基台12が回転可能に設けられている。一対のラック10,10が、グリッパ基台12に支持されて、ピニオン7を間に挟んでピニオン7に噛み合っている。一対のラック10,10には、フィンガー4,4が固定されている。フレーム6には、グリッパ基台12の回転を規制するロック機構14が設けられている。ロック機構14は、一対のラック10,10の移動が規制されると、グリッパ基台12への係止が解除され、グリッパ基台12の回転が許容される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持対象物を把持する把持装置及び把持装置を備えたロボット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボットにおいては、6軸多関節アームが考案、製品化されており、多関節アームの先端における先端リンクに把持装置を装着して構成されるロボット装置が提案されている(特許文献1参照)。把持装置は、一対のフィンガーを有し、一対のフィンガーにより把持対象物を把持するように構成されている。把持装置も、用途あるいは把持対象物の形状、形態によって各種製品化、考案されており、これらが支障なく取付け可能なようにアームと把持装置との取付けに関してはJISにより標準化もされている。
【0003】
6軸多関節アームは、自由度が6の多関節アームであり、X軸、Y軸、Z軸まわりの回転と各軸の振り動作が可能であり、人間の腕の動作と同じ動作が行なえる。特に、把持装置の一対のフィンガーの姿勢を変える場合は、多関節アームの先端リンクを回転させることにより行われる。
【0004】
把持対象物に対する作業が限定される場合は自由度を減らした4軸、5軸の多関節アームを使用することもあるが、作業の工程・内容の変更が一般的な産業用ロボットにおいては6軸の多関節アームが主流となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−226506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の把持装置は、多関節アームが作業に必要な自由度を全て備えているという前提に立っているため、多関節アームの回転軸の代替機能は持っていない。つまり、把持装置の一対のフィンガーの姿勢を変更する回転動作は、多関節アームの先端リンクの回転によって実現されている。従って、このような多関節アームと把持装置とが組み合わされたロボット装置は、大型でコストパフォーマンスの低いものになりがちである。
【0007】
そこで、本発明は、一対のフィンガーの把持動作に用いられる回転駆動源を、一対のフィンガーの回転駆動に兼用した把持装置及びロボット装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、多関節アームの先端リンクに固定されるフレームと、前記フレームから回転軸が突出するように前記フレームに収容された回転駆動源と、前記回転駆動源の回転軸に固定されたピニオンと、前記フレームに対して回転可能に設けられた基台と、前記基台に支持され、前記ピニオンを間に挟んで前記ピニオンに噛み合い、前記ピニオンが回転することにより、互いに反対方向に直線移動する一対のラックと、前記一対のラックに固定され、前記一対のラックの直線移動により開閉動作して把持対象物を把持する一対のフィンガーと、前記フレームに固定され、前記一対のラックが移動する際には、前記基台に係止して前記フレームに対する前記基台の回転を規制し、前記一対のラックの移動が規制された際には、前記基台への係止が解除され、前記ピニオンと共に前記一対のラックを介して前記基台が回転するのを許容するロック機構と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、一対のフィンガーを開閉駆動する回転駆動源により、基台を回転させて一対のフィンガーの姿勢を変更し、一対のフィンガーの開閉方向を変更することが可能となる。したがって、把持装置を回転駆動する機構を多関節アームにおいて省略することが可能となり、多関節アームの小型化及びコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態に係るロボット装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る把持装置の断面図である。
【図3】把持装置の平面図であり、(a)は一対のフィンガーが全閉状態の図、(b)は一対のフィンガーが全開状態の図である。
【図4】把持装置の平面図であり、(a)はグリッパユニットを左回転させている途中を示す図、(b)はグリッパユニットを左回りに90度回転させた状態を示す図である。
【図5】把持装置の平面図であり、(a)はグリッパユニットを右回転させている途中を示す図、(b)はグリッパユニットを右回りに90度回転させた状態を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る把持装置の斜視図である。
【図7】把持装置の平面図であり、(a)はブレーキパッドをグリッパ基台に圧接させている状態を示す図、(b)はブレーキパッドをグリッパ基台から圧接が解除されている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るロボット装置の概略構成を示す斜視図である。図1に示すように、ロボット装置100は、先端リンク20aを有する多関節アーム20と、多関節アーム20の先端リンク20aに固定された把持装置1と、先端リンク20aに固定された視覚センサであるカメラ2と、を備えている。多関節アーム20は5軸多関節アームである。つまり、先端リンク20aは、回転不能に支持されている。
【0013】
カメラ2はレンズ部2aがグリッパユニット3のフィンガー4の把持部4a(つまり、把持対象物)を撮像するように多関節アーム20の先端リンク20aに固定されている。
【0014】
図2は、本発明の第1実施形態に係る把持装置1の断面図である。把持装置1は、回転駆動源であるモータ5と、モータ5を収容して先端リンク20aに固定される箱形状のフレーム6と、を備えている。フレーム6は、モータ5の外周を覆う筒状の側壁部6aと、側壁部6aの一端に設けられ、先端リンク20aのアダプタ部13に固定されるフランジ部6bと、側壁部6aの他端に設けられ、モータ5が固定されるモータ基台部6cと、からなる。
【0015】
モータ基台部6cの外表面は、平面状になっており、このモータ基台部6cの外表面には、基台である円盤形状のグリッパ基台12が、フレーム6に対して回転可能に配置されている。なお、把持装置1は、モータ5を駆動制御する制御装置30を備えている。
【0016】
モータ5は、不図示の固定子と回転子とを有しており、フレーム6の内部に配置され、フレーム6のモータ基台部6cに固定されている。そして、モータ5の回転子の回転軸5bがフレーム6のモータ基台部6c及びグリッパ基台12を貫通して外部に突出している。また、モータ5は回転型エンコーダ5aを有しており、回転型エンコーダ5aがモータ5(回転子)の回転位置を示す位置信号を出力する。グリッパ基台12の貫通部には、ベアリング11が設けられている。そして、モータ5の回転軸5bには、グリッパ基台12がベアリング11を介して回転可能に支持されている。
【0017】
また、把持装置1は、モータ5の回転軸5bの先端に固定されたピニオン7と、グリッパ基台12に一対のリニアガイド9,9を介して支持され、ピニオン7を間に挟んでピニオン7に噛み合う一対のラック10,10と、を備えている。つまり、一対のラック10,10の歯10aがピニオン7の歯に噛み合っている。一対のラック10,10のそれぞれには、一対のフィンガー4,4のそれぞれが固定して設けられている。
【0018】
図3は把持装置1の平面図であり、図3(a)は一対のフィンガー4,4が全閉状態の図、図3(b)は一対のフィンガー4,4が全開状態の図である。図3(a)及び図3(b)に示すように、一対のリニアガイド9,9は、グリッパ基台12に互いに平行に固定されている。そして、一対のラック10,10は、モータ5の回転軸5bの回転によってピニオン7が回転することにより、互いに反対方向(図2中、紙面に垂直な前後方向)にリニアガイド9,9に沿って直線移動する。これによりピニオン7の回転動作がラック10,10の直線動作に変換される。
【0019】
一対のラック10,10に固定されている一対のフィンガー4,4は、対向して配置されており、ピニオン7の回転により一対のラック10,10が直線移動し、一対のフィンガー4,4が開閉動作して、把持対象物を把持する。一対のラック10,10及び一対のリニアガイド9,9は筒状の枠体8で覆われている。
【0020】
これら一対のリニアガイド9,9、一対のラック10,10、一対のフィンガー4,4及び枠体8によりグリッパユニット3が構成されている。以上の構成により、グリッパ基台12が回転すると、グリッパユニット3がグリッパ基台12とともに回転するので、一対のフィンガー4,4の姿勢が変更される。
【0021】
本第1実施形態では、把持装置1は、グリッパ基台12のためのロック機構14を備えている。このロック機構14は、フレーム6に固定されており、一対のラック10,10が移動する際には、グリッパ基台12に係止してフレーム6に対するグリッパ基台12の回転を規制する。そして、ロック機構14は、一対のラック10,10の移動が規制された際には、グリッパ基台12への係止が解除され、ピニオン7と共に一対のラック10,10を介してグリッパ基台12が回転するのを許容する。
【0022】
一対のラック10,10の移動が規制される場合としては、一対のラック10,10が移動限界に達した場合、即ち、一対のフィンガー4,4が全開状態又は全閉状態の場合や一対のラック10,10が把持対象物を把持している場合がある。
【0023】
つまり、図3(a)に示すように一対のフィンガー4,4が全閉状態では、フィンガー4,4同士が当接しているので、これ以上各フィンガー4を閉じる方向に移動させようとしても対向するフィンガー4に移動が規制される。したがって、各ラック10はフィンガー4の移動規制により移動しない。一対のフィンガー4,4が把持対象物を把持している状態でも、各フィンガー4は把持対象物に当接しているので把持対象物に規制され、各ラック10は移動しない。
【0024】
また、図3(b)に示すように一対のフィンガー4,4が全開状態では、各ラック10が枠体8に当接しているので、これ以上フィンガー4,4を開く方向に移動させようとしても、各ラック10は対向する枠体8に規制されて移動しない。
【0025】
以下、ロック機構14について詳細に説明する。本第1実施形態では、円盤形状のグリッパ基台12の外周面12aには、複数(例えば4つ)の切欠部12bが周方向に沿って設けられている。複数の切欠部12bは、等間隔(例えば90度間隔)に配置されている。各切欠部12bは、V字形状に形成されている。ロック機構14は、フレーム6のモータ基台部6cの外表面に基端が固定され、撓み変形可能な棒状の弾性部14aと、弾性部14aの先端に設けられ、グリッパ基台12の切欠部12bに引掛り可能な突起部14bとからなる弾性部材である。
【0026】
弾性部14aの弾性力は、ピニオン7が回転して一対のラック10,10が移動する際には、突起部14bがグリッパ基台12の切欠部12bに引っ掛かった状態で保持されるように設定されている。さらに、弾性部14aの弾性力は、一対のラック10,10の移動が規制された際には、ピニオン7の回転駆動力により突起部14bがグリッパ基台12の切欠部12bから外れて撓み変形するように設定されている。
【0027】
以下、図3(a)及び図3(b)を参照しながら、フィンガー4,4の開閉動作について説明する。弾性部材であるロック機構14は、突起部14bが複数の切欠部12bのいずれか1つに弾性的に係止する(つまり、引っ掛かる)ことで、グリッパ基台12を位置決め保持する。そして、モータ5の回転軸5bを回転させて、ピニオン7を回転させることにより、一対のラック10,10が移動する。
【0028】
したがって、モータ5の回転軸5bの回転方向を変えることにより、一対のフィンガー4,4を図3(a)に示すように閉動作させることができ、図3(b)に示すように開動作させることができる。なお、図3では、回転軸5bが右回転すると、一対のフィンガー4,4が閉じる方向に移動し、回転軸5bが左回転すると、一対のフィンガー4,4が開く方向に移動する。
【0029】
一対のフィンガー4,4を開閉動作させる際は、ピニオン7の回転駆動力の大部分は、一対のラック10,10に伝達されるので、突起部14bが1つの切欠部12bに引っ掛かった状態が保持される。したがって、グリッパ基台12及びグリッパユニット3は、フレーム6に対して回転しないようにロック機構14によりロックされている。
【0030】
なお、把持対象物を把持する際には、図3(b)に示すように、一旦、一対のフィンガー4,4を全開状態となるまで移動させる。その後、一対のフィンガー4,4を閉じる方向に移動させて把持対象物を把持する。
【0031】
次に、グリッパユニット3を回転させる場合について説明する。まず、図3(b)の状態からモータ5の回転軸5bの左回転によりピニオン7が左回転する場合について説明する。図4は把持装置1の平面図であり、図4(a)はグリッパユニット3を左回転させている途中を示す図、図4(b)はグリッパユニット3を左回りに90度回転させた状態を示す図である。
【0032】
一対のラック10,10が枠体8に当接して一対のラック10,10の移動が規制されているので、ピニオン7の左回りの回転駆動力によりグリッパユニット3及びグリッパ基台12が左回りに回転する。
【0033】
具体的に説明すると、一対のラック10,10の直線移動が規制されているので、ピニオン7の歯と各ラック10,10の歯との噛み合い位置が固定される。従って、ピニオン7とともに一対のラック10,10を介して一対のフィンガー4,4及びグリッパ基台12が左回りに回転する。
【0034】
このとき、弾性部材であるロック機構14の突起部14bは、V字形状の切欠部12bの面に案内されながら弾性部14aが撓んで切欠部12bを乗り越え、グリッパ基台12への係止が解除される。このように、ロック機構14によるロックが解除されて、グリッパ基台12の回転が許容され、図4(a)に示すように、突起部14bがグリッパ基台12の外周面12aに当接しながらグリッパユニット3及びグリッパ基台12が左回りに回転する。
【0035】
さらに、ピニオン7による左回転駆動が続行され、グリッパユニット3が所定の角度(図4(b)では90度)回転すると、ロック機構14の突起部14bがグリッパ基台12の次の切欠部12bに引っ掛かる。そして、同時に、制御装置30が、モータ5の回転型エンコーダ5aからのパルス出力のカウントにより左回りに所定の角度(90度)回転したことを検出することで、不図示の駆動回路によりモータ5への通電を停止することができる。
【0036】
次に、図3(a)の状態からモータ5の回転軸5bの右回転によりピニオン7が右回転する場合について説明する。図5は把持装置1の平面図であり、図5(a)はグリッパユニット3を右回転させている途中を示す図、図5(b)はグリッパユニット3を右回りに90度回転させた状態を示す図である。
【0037】
一対のフィンガー4,4同士が当接して一対のラック10,10の移動が規制されているので、ピニオン7の右回りの回転駆動力によりグリッパユニット3及びグリッパ基台12が右回りに回転する。
【0038】
具体的に説明すると、一対のラック10,10の直線移動が規制されているので、ピニオン7の歯と各ラック10,10の歯との噛み合い位置が固定される。従って、ピニオン7とともに一対のラック10,10を介して一対のフィンガー4,4及びグリッパ基台12が右回りに回転する。
【0039】
このとき、弾性部材であるロック機構14の突起部14bは、V字形状の切欠部12bの面に案内されながら弾性部14aが撓んで切欠部12bを乗り越え、グリッパ基台12への係止が解除される。このように、ロック機構14によるロックが解除されて、グリッパ基台12の回転が許容され、図5(a)に示すように、突起部14bがグリッパ基台12の外周面12aに当接しながらグリッパユニット3及びグリッパ基台12が右回りに回転する。
【0040】
さらに、ピニオン7による右回転駆動が続行され、グリッパユニット3が所定の角度(図5(b)では90度)回転すると、ロック機構14の突起部14bがグリッパ基台12の次の切欠部12bに引っ掛かる。そして、同時に、制御装置30が、モータ5の回転型エンコーダ5aからのパルス出力のカウントにより右回りに所定の角度(90度)回転したことを検出することで、不図示の駆動回路によりモータ5への通電を停止することができる。
【0041】
ここで、一対のフィンガー4,4が把持対象物を把持した状態で一対のフィンガー4,4の回転位置を変更する際には、一対のフィンガー4,4の閉じる方向の移動が規制されている。したがって、ピニオン7の右回りの回転駆動力によりグリッパユニット3及びグリッパ基台12が右回りに回転する。
【0042】
以上の動作により、グリッパ基台12を回転させることによってカメラ2(図1)に対する回転軸5bを回転中心とする一対のフィンガー4,4の回転方向の姿勢が変更される。したがって、一対のフィンガー4,4の開閉方向を変更することが可能となり、また、カメラ2によりあらゆる方向からフィンガー4の把持部4a(把持対象物)を撮像することが可能となる。
【0043】
そして、制御装置30は、カメラ2に要求される観測角度位置を計算し、エンコーダ5aのパルス信号をカウントしてモータ5を回転させ、ロック機構14の係止位置で停止させることにより、グリッパユニット3を観測角度位置に回転移動させることができる。
【0044】
以上説明したように、把持装置1の一対のフィンガー4,4を、モータ5の回転軸5bを回転中心とする回転方向に回転させることができるので、多関節アーム20を、自由度が5の5軸多関節アームで構成することが可能である。
【0045】
このように、一対のフィンガー4,4を開閉動作させるモータ5を兼用して、一対のフィンガー4,4を回転動作させることができるので、把持装置1を回転駆動する機構を多関節アーム20において省略することが可能となる。つまり、5軸の多関節アーム20を用いて6軸目の機能を把持装置1に持たせることにより、多関節アーム20の小型化及びコストダウンを図ることができる。
【0046】
また、一対のフィンガー4,4の閉鎖状態つまり把持対象物の把持状態でもグリッパユニット3を回転駆動できるので、嵌め込みなどの把持対象物を取り付けた後に回転させることが必要な作業やネジ締め等の回転作業が可能となる。
【0047】
また、グリッパユニット3の保持はエンコーダ5aのパルス信号からサーボ制御を行なうことで電気的に行なえるが、ロック機構14が弾性部材であるので、一定角度回転駆動し位置決めされた後、制御回路の通電を切ることができ、把持装置1の省電化が図れる。
【0048】
ここで、多関節アーム20は、自由度が6の6軸多関節アームであってもよい。この場合、カメラ2が固定された先端リンク20aが、モータ5の回転軸5bと平行な軸線を中心に回転可能である。したがって、先端リンク20aが回転することにより、カメラ2の回転方向の姿勢も変更することができる。
【0049】
このように、多関節アーム20を動作させる際に、先端リンク20aを回転させることでカメラ2の位置を変更できるので、カメラ2が載置台に載置された把持対象物等に接触するのを回避させる動作が容易となる。そして、先端リンク20aにカメラ2を取り付けても、カメラ2の位置決めの自由度を損なうことなく、任意の方向から観察することが可能となる。
【0050】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る把持装置について説明する。図6は、本発明の第2実施形態に係る把持装置の斜視図である。なお、上記第1実施形態と同様の構成については、同一符号を付して説明を省略する。本第2実施形態では、把持装置1Aは、上記第1実施形態のロック機構14とは異なるロック機構14Aを備えている。
【0051】
ロック機構14Aは、フレーム6のモータ基台部6cの外表面に固定されており、一対のラック10,10が移動する際には、グリッパ基台12に係止してフレーム6に対するグリッパ基台12の回転を規制する。そして、ロック機構14Aは、一対のラック10,10の移動が規制された際には、グリッパ基台12への係止が解除され、ピニオン7(図2参照)と共に一対のラック10,10を介してグリッパ基台12が回転するのを許容する。
【0052】
以下、ロック機構14Aについて具体的に説明する。ロック機構14Aは、ブレーキパッド16と、ソレノイド17と、ブレーキパッド16に固着されたスライドヨーク18と、スライドヨーク18の外周に設けられた圧縮コイルばね19とを有している。
【0053】
ブレーキパッド16は、グリッパ基台12の外周面12aに接離可能に配置されたパッドであり、グリッパ基台12の外周面12aに圧接することで、グリッパ基台12の回転を規制し、グリッパ基台12を位置決め保持する。圧縮コイルばね19は、圧縮状態でブレーキパッド16とソレノイド17との間に配置され、ブレーキパッド16を押圧して、ブレーキパッド16をグリッパ基台12の外周面12aに圧接(係止)させる付勢部材である。
【0054】
ソレノイド17は、スライドヨーク18をスライドガイドするとともに、通電により、スライドヨーク18を吸引し、ブレーキパッド16のグリッパ基台12への圧接(係止)を解除する。即ち、ソレノイド17は、通電により、圧縮コイルばね19の付勢力に抗してブレーキパッド16をグリッパ基台12の外周面12aから離間させる。なお、本第2実施形態では、グリッパ基台12に切欠部はない。また、ソレノイド17への通電/非通電は、制御装置30Aにより制御される。
【0055】
図7は把持装置1Aの平面図であり、図7(a)はブレーキパッド16をグリッパ基台12に圧接させている状態を示す図、図7(b)はブレーキパッド16をグリッパ基台12から圧接が解除されている状態を示す図である。
【0056】
一対のフィンガー4,4に開閉動作させる場合、制御装置30Aは、ソレノイド17を非通電状態に制御する。これにより、図7(a)に示すように、圧縮コイルばね19の付勢力によりブレーキパッド16がグリッパ基台12の外周面12aに圧接し、グリッパ基台12の回転、即ち一対のフィンガー4,4を有するグリッパユニット3の回転を規制する。したがって、一対のフィンガー4,4の開閉動作中は、グリッパ基台12の回転が規制されているので、把持対象物を良好に把持することができる。
【0057】
また、制御装置30Aは、エンコーダ5a(図2参照)のパルス信号をカウントしており、一対のラック10,10の移動が規制されたところで、ソレノイド17を通電状態に制御する。これにより、図7(b)に示すように、ブレーキパッド16によるグリッパ基台12の外周面12aへの圧接を解除することができる。
【0058】
したがって、エンコーダ5aのパルス信号の任意のカウントでモータ5(図2参照)を停止させ、且つ、ブレーキパッド16をグリッパ基台12の外周面12aに圧接させることにより、位置決めを自由に行うことができる。そして、一対のフィンガー4,4を、無段階に位置決めでき、任意の角度位置で固定することができる。
【0059】
また、本第2実施形態においても、上記第1実施形態と同様に、把持装置を回転駆動する機構を多関節アームにおいて省略することが可能となり、多関節アームの小型化及びコストダウンを図ることができる。
【0060】
なお、上記実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。上記実施形態では、回転駆動源がモータ5である場合について説明するが、回転駆動源がモータ及び減速機で構成される場合であってもよい。この場合、減速機の回転軸がフレーム6のモータ基台部6cから外部に突出するように、モータ及び減速機がフレーム6の内部に配置されていればよい。
【0061】
また、本実施形態では、各フィンガーには関節が設けられていない場合について説明したが、各フィンガーに関節が設けられているものについても本願発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0062】
1,1A…把持装置、2…カメラ(視覚センサ)、4…フィンガー、5…モータ(回転駆動源)、5b…回転軸、6…フレーム、7…ピニオン、10…ラック、12…グリッパ基台(基台)、12a…外周面、12b…切欠部、14,14A…ロック機構、14a…弾性部、14b…突起部、16…ブレーキパッド、17…ソレノイド、20…多関節アーム、20a…先端リンク、100…ロボット装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多関節アームの先端リンクに固定されるフレームと、
前記フレームから回転軸が突出するように前記フレームに収容された回転駆動源と、
前記回転駆動源の回転軸に固定されたピニオンと、
前記フレームに対して回転可能に設けられた基台と、
前記基台に支持され、前記ピニオンを間に挟んで前記ピニオンに噛み合い、前記ピニオンが回転することにより、互いに反対方向に直線移動する一対のラックと、
前記一対のラックに固定され、前記一対のラックの直線移動により開閉動作して把持対象物を把持する一対のフィンガーと、
前記フレームに固定され、前記一対のラックが移動する際には、前記基台に係止して前記フレームに対する前記基台の回転を規制し、前記一対のラックの移動が規制された際には、前記基台への係止が解除され、前記ピニオンと共に前記一対のラックを介して前記基台が回転するのを許容するロック機構と、
を備えたことを特徴とする把持装置。
【請求項2】
前記基台の外周面には、周方向に沿って複数の切欠部が設けられ、
前記ロック機構は、前記フレームに固定され、撓み変形可能な弾性部と、前記弾性部に設けられ、前記切欠部に引掛り可能な突起部とを有する弾性部材であり、
前記弾性部は、前記一対のラックが移動する際には、前記突起部が前記基台の切欠部に引っ掛かった状態で保持され、前記一対のラックの移動が規制された際には、前記突起部が前記基台の切欠部から外れて撓み変形する弾性力に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の把持装置。
【請求項3】
前記ロック機構は、前記基台の外周面に接離可能に配置されたパッドと、前記パッドを前記基台の外周面に圧接させる付勢部材と、前記付勢部材の付勢力に抗して前記パッドを前記基台の外周面から離間させるソレノイドと、を有することを特徴とする請求項1に記載の把持装置。
【請求項4】
回転可能な先端リンクを有する多関節アームと、
前記多関節アームの先端リンクに固定された請求項1乃至3のいずれか1項に記載の把持装置と、
前記多関節アームの先端リンクに固定され、前記把持装置により把持される把持対象物を撮像する視覚センサと、を備えたことを特徴とするロボット装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−86334(P2012−86334A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237110(P2010−237110)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】