説明

投射型表示装置

【課題】3色合成クロスダイクロイックプリズムと各色光用の三角柱状支持部材とをベース台に取り付ける。
【解決手段】RGB3原色光に対応して各色光用の三角柱状支持部材(直角三角柱)31を各色光ごとに用意し、この三角柱状支持部材31の第1面31cにワイヤグリッド偏光子32を、第2面31dに反射型液晶パネル33を、第3面31eに透過性偏光板35をそれぞれ取り付けると共に、ベース台25は光学ガラスを用いて直方体に形成した3色合成クロスダイクロイックプリズム40の線膨張係数に近い線膨張係数6〜10×10−6/°Cを有する材料を用いており、このベース台25に固定した3色合成クロスダイクロイックプリズム40の各入射面40a〜40cに対向して各色光用の三角柱状支持部材31を近接配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RGB3原色光に対応して各色光ごとに用意した3つの反射型空間光変調素子に表示された各色の変調画像光を光学的に合成して、カラー画像光を投射レンズによりスクリーン上に拡大して表示する投射型表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、映像情報の多様化・高画質化が進み、ハイビジョン放送規格やコンピータ・グラフィクスのSVGA規格に代表される高品質画像データが増加し、これに伴って高品質画像データを拡大表示するために投射型表示装置が盛んに利用されている。
【0003】
この種の投射型表示装置のうちで3板式の投射型表示装置では、RGB3原色光と対応して各色光ごとに用意した3つの空間光変調素子に表示された各色の変調画像光を光学的に合成して、カラー画像光を投射レンズによりスクリーン上に拡大して表示している。
【0004】
この際、投射型表示装置は、これに適用される空間光変調素子の種類によって、透過型空間光変調素子を適用したもの、反射型空間光変調素子を適用したもの、DMD(Digital Mirror Device)を適用したものがある。
【0005】
透過型空間光変調素子及びDMDは、光学構成が比較的簡単にできるために小型化が容易であるが高解像度化に難がある。一方、反射型空間光変調素子は高解像度化に有利であるが光学構成が複雑となるために小型化に難がある。
【0006】
とくに、反射型空間光変調素子を適用した投射型表示装置は、反射型空間光変調素子に照射される入射光と当該反射型空間光変調素子で光変調・反射された反射光とを分離するために偏光ビームスプリッタを必要とする。高コントラストを実現するためには一つの反射型空間光変調素子に対して、通常2つ以上の偏光ビームスプリッタを作用させるために、これが投射型表示装置の光学構成を複雑にしていたが、最近、複数の偏光ビームスプリッタを至近距離に配置してセラミックスベース等に接着固定し、光学系を構成することにより小型化を達成している。
【0007】
この投射型表示装置において、RGB3原色光に対応した3つの反射型空間光変調素子に表示された各色の変調画像光を光学的に合成する際、各色光用の反射型空間光変調素子の光学的画像合成手段に対する位置がずれれば、スクリーン上に拡大して表示したカラー画像光のレジストレーションがずれて画質を損なうことになる。
【0008】
一方、近年高精細化によって表示画素数が多い反射型空間光変調素子が使われるようになり、一つの画素の大きさが10μmを切るようになってきており、反射型空間光変調素子中の一つの画素の大きさが数十μmと大きい場合には数μmの取り付け誤差は問題とならないが、一つの画素の大きさが10μm以下になると、数μmの取り付け誤差はレジストレーションずれとなって色ずれが発生してしまう。
【0009】
そこで、本出願人は、反射型空間光変調素子の脱着作業を行ってもレジストレーション調整の精度が維持でき、且つ、反射型空間光変調素子を上下に配置したセラミックスベース材にしっかりと固定できる光学デバイスの製造方法及び投射表示装置を先に提案した(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−325917号公報
【0010】
従来の投射表示装置は上記した特許文献1(特開2004−325917号公報)に開示されており、ここでの図示を省略するものの、RGB3原色光と対応して各色光ごとに用意した3つの反射型空間光変調素子と、複数の偏光ビームスプリッタと、複数のカラー偏光フィルタとを上下方向からセラミックスベース材に固定し、且つ、上下のセラミックスベース材に複数の素子固定金具をセラミックス接着剤により接着して固定すると共に、反射型空間光変調素子を固定している素子パッケージをさらにレジストレーション調整を実施しながら複数の素子固定金具に半田付けにより固定している。こうすることにより、反射型空間光変調素子の脱着作業を行ってもセラミックスベース材及び素子パッケージに引き剥がし応力や熱の影響がおよばないのでレジストレーション調整の精度が維持でき、且つ、反射型空間光変調素子を上下に配置したセラミックスベース材にしっかりと固定できる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上記した従来の投射型表示装置では、複数の偏光ビームスプリッタと、複数のカラー偏光フィルタとを上下方向からセラミックスベース材に固定しているものの、RGB3原色光と対応して設けた各色光用の反射型空間光変調素子に照射される入射光と当該反射型空間光変調素子で光変調・反射された反射光とを分離するために、複数の偏光ビームスプリッタに代えて複数のワイヤグリッド偏光子を用いて新たに投射型表示装置を開発した場合に、光源からの熱による各種の光学部材の熱変形を考慮する必要がある。
【0012】
そこで、複数のワイヤグリッド偏光子を用いた場合に、高いコントラス性能が得られ、且つ、各種の光学部材の熱変形を考慮しながらこれらの光学部材を固定できる投射型表示装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、請求項1記載の発明は、ベース台と、前記ベース台上に固定され、光源から出射された3原色光が各色光用の反射型空間光変調素子でそれぞれ光変調されて、所定の偏光光のみを反射するワイヤグリッド偏光子が取り付けられた支持部材と、前記ベース台上に固定され、前記ワイヤグリッド偏光子で反射された前記所定の偏光光の各色光を合成してカラー画像光として出射する合成光学系と、を備えた投射表示装置において、
前記合成光学系で合成される前記各色光のレジストレーションずれを抑えるように、前記ベース台及び前記合成光学系の線膨張係数を所定範囲内にしたことを特徴とする投射表示装置である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の投射型表示装置によると、とくに、合成光学系で合成される各色光のレジストレーションずれを抑えるように、ベース台及び合成光学系の線膨張係数を所定範囲内にしたために、ベース台及び色合成光学系に生じる熱膨張、熱収縮による寸法変化を略等しくすることができるので、各色光用の反射型空間光変調素子からの各色光を色合成光学系で色合成したカラーが像光はレジストレーションずれが生じにくくなり、スクリーン上に良好なカラー画像光を投射することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明に係る投射型表示装置の一実施例について図1〜図5を参照して詳細に説明する。
【実施例】
【0016】
図1は本発明に係る実施例の投射型表示装置を説明するための平面図、
図2は本発明に係る実施例の投射型表示装置において、R,G,B光用の各反射型液晶パネル組立体を拡大して示した斜視図、
図3(a)〜(c)は本発明に係る実施例の投射型表示装置において、反射型液晶パネル組立体内のワイヤグリッド偏光子を説明するための図である。
【0017】
図1に示した如く、本発明に係る実施例の投射型表示装置10は、後述するようにR光,G光,B光にそれぞれ対応した空間光変調素子として光を反射する反射型を用いて構成されている。
【0018】
この実施例の投射型表示装置10では、無偏光の白色光を出射する光源11と、光源11からの白色光をR光(赤色光),G光(緑色光),B光(青色光)に色分解する色分解光学系17〜19と、R,G,B光用の各反射型空間光変調素子(以下、反射型液晶パネルと記す)33と、R,G,B光用の各反射型液晶パネル33でそれぞれ光変調された各色の変調画像光を色合成する3色合成クロスダイクロイックプリズム40と、この3色合成クロスダイクロイックプリズム40で得られた色合成画像光を投射する投射レンズ42とが同一平面上に配置されている。
【0019】
まず、光源11はメタルハライドランプ,キセノンランプ,ハロゲンランプなどを用いてR光,G光,B光を含んだ無偏光の白色光を出射しており、この光源11から出射した白色光が放物面鏡12で反射されることにより、略々平行光となって放物面鏡12の前面に取り付けた第1のフライアイレンズアレイ13と、この第1のフライアイレンズアレイ13の前方に設けた第2のフライアイレンズアレイ14とに順に入射される。これら第1,第2のフライアイレンズアレイ13,14は、対をなして白色光の光束内の照度分布を均一化するためのインテグレータを構成している。尚、光源11の前方に、紫外光及び赤外光をカットする図示しない可視外光除去フィルタを配置しても良い。
【0020】
この後、第1,第2のフライアイレンズアレイ13,14により照度分布を均一化された無偏光の白色光は、偏光変換光学素子となる偏光変換プリズムアレイ15に入射される。この偏光変換プリズムアレイ15は、偏光分離プリズムアレイと、λ/2位相差板とを有して、全体として平板状に構成されている。即ち、この偏光変換プリズムアレイ15に入射した光は、まず、偏光分離プリズムアレイが有する偏光ビームスプリッタ膜面により、この偏光ビームスプリッタ膜面に対するP偏光成分とS偏光成分とに分離される。
【0021】
この際、偏光変換プリズムアレイ15の偏光ビームスプリッタ膜面は、平行なストライプ状に複数設けられており、それぞれが偏光変換プリズムアレイ15の主面に対して45°の傾斜を有している。この偏光ビームスプリッタ膜面において、P偏光成分は透過して偏光変換プリズムアレイ15の前面側に出射され、S偏光成分は反射される。一つの偏光ビームスプリッタ膜面によって反射されたS偏光成分は、光路を90°曲げられ、隣接する他の偏光ビームスプリッタ膜面によって再び反射されて光路を90°曲げられて、偏光変換プリズムアレイ15の前面側に出射される。
【0022】
そして、このようなS偏光成分が出射される領域には、λ/2位相差板が設けられている。このλ/2位相差板を透過したS偏光成分は、偏光方向を90°回転され、偏光ビームスプリッタ膜面を透過したP偏光成分(または、偏光ビームスプリッタ膜面に2回反射されたS偏光成分)と同一の偏光方向となされる。このようにして、光源11からの無偏光の白色光が偏光変換プリズムアレイ15を透過した後に、所定の一方向の偏光光となされている。
【0023】
この実施例の形態においては、偏光変換プリズムアレイ15を透過した光は、図1中の符号で示すように、所定の一方向の偏光光として例えばP偏光光に変換されている。ただし、偏光変換プリズムアレイ15における偏光変換効率は100%ではなく、この偏光変換プリズムアレイ15からの出射光には、数%乃至数十%のS偏光成分が混入している。
【0024】
尚、以下では、偏光変換プリズムアレイ15によって得られる所定の一方向の偏光光を第1偏光成分光であるP偏光光として説明するが、これに限られるわけではなく、光源11からの白色光を偏光変換プリズムアレイ15でS偏光光に偏光変換する方法も可能である。
【0025】
この後、偏光変換プリズムアレイ15を透過したP偏光光(第1偏光成分光)の白色光は、フィールドレンズ16を経て、第1のダイクロイックミラー17に入射する。この第1のダイクロイックミラー17では、R光,G光,B光を含んだ白色光からR光及びG光の2色の成分を反射させて90°方向を変え、残りのB光を透過させてそのまま直進させている。
【0026】
そして、第1のダイクロイックミラー17で反射されたR光及びG光は、第1の金属膜反射ミラー18に入射し、この第1の金属膜反射ミラー18で反射されて90°方向を変えた後に第2のダイクロイックミラー19に入射する。この第2のダイクロイックミラー19では、R光を透過させてそのまま直進させて、R光をR光用反射型液晶パネル組立体30Rに入射させる一方、G光を反射させて90°方向を変えて、G光をG光用反射型液晶パネル組立体30Gに入射させている。
【0027】
また、第1のダイクロイックミラー17を透過したB光は、第2,第3の金属膜反射ミラー20,21で順に反射されてB光用反射型液晶パネル組立体30Bに入射される。
【0028】
上記から第1,第2のダイクロイックミラー17,19が光源11からの白色光をR光,G光,B光に色分解する色分解光学系を構成しており、且つ、光源11から色分解光学系17,19までの各構成部材が、R光,G光,B光を、各色光用の反射型液晶パネル(反射型空間光変調素子)33にそれぞれ照明するための各色光照明手段となっている。
【0029】
尚、この実施例では、光源11からの白色光を色分解光学系17,19によりR光,G光,B光に色分解させた例を用いて説明しているが、これに限ることなく、例えば、R光,G光,B光をそれぞれ出射するR光用,G光用,B光用の各LED光源を用いれば、色分解光学系17,19を設ける必要がなくなるので、各色光照明手段となる各色光用のLED光源からそれぞれ出射したR光,G光,B光の各一方向の偏光成分(第1偏光成分)を、各色光に対応した各色光用の反射型液晶パネル33にそれぞれ直接照明しても良いものである。
【0030】
ここで、R光用反射型液晶パネル組立体30R及びG光用反射型液晶パネル組立体30G並びにB光用反射型液晶パネル組立体30Bは全て同一に構成されており、且つ、R光用反射型液晶パネル組立体30R及びG光用反射型液晶パネル組立体30G並びにB光用反射型液晶パネル組立体30Bは、直方体形状に形成された色合成光学系となる3色合成クロスダイクロイックプリズム40の各入射面40a〜40cに対向して近接配置されている。
【0031】
更に、図2に拡大して示した如く、R光用反射型液晶パネル組立体30R及びG光用反射型液晶パネル組立体30G並びにB光用反射型液晶パネル組立体30Bのそれぞれは、アルミ材とかステンレス材などを用いて直角三角形状の下面31a及び上面31bとの間に、各色光照明手段による各色光の光軸に対して45°傾けた第1面31cと、この第1面31cを挟んで互いに直交した第2面31d及び第3面31eとをそれぞれ枠状に形成して、各面31a〜31eで囲まれた内部を中空状の空洞に形成した三角柱状支持部材(直角三角柱)31を各色光ごとに用意している。
【0032】
そして、各色光用の三角柱状支持部材31内で各色光照明手段による各色光の光軸に対して45°傾けて配置した第1面31cに各色光照明手段からの各色光中に含まれる第1偏光成分の各色光を透過させた後に各色光用の反射型液晶パネル33に入射して光変調・反射された第2偏光成分の各色光を反射させる各色光用のワイヤグリッド偏光子32が接着剤などを用いて取り付けられ、且つ、各色光用のワイヤグリッド偏光子32を透過させた各透過光の光軸に対して直交して配置した第2面31dに各色光用の反射型液晶パネル33が不図示の液晶パネル取り付け調整機構部を介して取り付けられている。
【0033】
更に、各色光用の反射型液晶パネル33からの反射光を各色光用のワイヤグリッド偏光子32で反射させた各反射光の光軸に対して直交して配置した第3面31eに各色光用のワイヤグリッド偏光子32で反射された第2偏光成分の各色光から不要な第1偏光成分の各色光を除去して出射させる各色光用の透過型偏光板35が接着剤を用いて取り付けられている。
【0034】
尚、各色光用の三角柱状支持部材31の第3面に、各色光用の透過型偏光板35に代えて光透過性光学ガラス板(図示せず)を取り付けても良く、この場合には、不要な偏光成分を除去する各色光用の透過型偏光板(図示せず)を3色合成クロスダイクロイックプリズム40の各入射面40a〜40cに接着剤を用いて固着させれば良い。従って、各色光用の三角柱状支持部材31の第3面には、透過型偏光板35又は光透過性光学ガラス板(図示せず)などの光透過性光学板を取り付ければ良い。
【0035】
尚、上記した三角柱状支持部材31は、直角三角柱に限定されるものでもなく、即ち、各色光用のワイヤグリッド偏光子32を接着した第1面31cと各色光用の反射型液晶パネル33を接着した第2面31dとのなす角度が45°であることが必要であるものの、第1面31cに接着した各色光用のワイヤグリッド偏光子32で反射させた第2偏光成分の各色光を第3面31eから透過できれば良いので、第2面31dと第3面31eのなす角度は90°に限定されるものではない。
【0036】
更に、三角柱状支持部材31の下面31a及び上面31bと第1面31c〜第3面31eとで直角三角柱状に囲まれた内部空間に窒素又はアルゴンなどの不活性ガスを1気圧以上の気圧状態で封入させて塵埃などに対して密閉させた状態で、各色光用の透過型偏光板35側を3色合成クロスダイクロイックプリズム40の各入射面40a〜40cに対してそれぞれ隙間を隔てて対向させている。
【0037】
また、各色光用の三角柱状支持部材31にそれぞれ取り付けたワイヤグリッド偏光子32及び反射型液晶パネル33並びに透過型偏光板35は、後述するベース台25(図4)に対して垂設されている。
【0038】
また、反射型液晶パネル33は、この反射型液晶パネル33を冷却するためのヒートシンク34が裏面に取り付けられている。尚、反射型液晶パネル33の前面に波長板(図示せず)を必要に応じて取り付けても良い。
【0039】
そして、例えば、R光用反射型液晶パネル組立体30RにP偏光成分(第1偏光成分)のR光を入射させる時に、このP偏光成分のR光を三角柱状支持部材31に取り付けたワイヤグリッド偏光子32を透過させて、R光用の反射型液晶パネル33に入射させている。
【0040】
上記したワイヤグリッド偏光子32は、従来技術で説明したような偏光ビームスプリッタと同じ偏光分離機能を備えているものの、偏光ビームスプリッタは熱応力によるシェーディングを発生させないために透明なガラスの中に鉛が混入されているのに対してワイヤグリッド偏光子32は地球環境問題上で有害である鉛は使用されていなので公害問題の発生がない。
【0041】
また、上記したワイヤグリッド偏光子23は、図3(a)に示した如く、光学ガラス板32a上に、アルミニウムなどの金属線32bを例えば140nmのピッチで規則正しくストライプ状に多数本並べて形成したものであり、金属線32bに垂直な偏光成分(例えば、P偏光光)をそのまま透過させ、且つ、金属線32bに平行な偏光成分(例えば、S偏光光)は反射する機能を有している。
【0042】
そして、図3(b)に示した如く、ワイヤグリッド偏光子32へのP偏光光による入射光の入射角θをパラメータとした時に、P偏光成分の透過率の波長依存性を図3(c)に示している。この図3(c)において、aはワイヤグリッド偏光子32へのP偏光光による入射光の入射角θが0°、bは入射角θが−15°、cは入射角θが+15°の場合を示している。尚、入射角θは、ワイヤグリッド偏光子32への入射光が光軸に対してなす角度であり、ワイヤグリッド偏光子32の入射面は光軸に対して45°傾斜されている。このワイヤグリッド偏光子32においては、入射角θが±15°に達しても、P偏光光の透過率の波長依存性は、可視波長領域で極めて小さく、安定している。
【0043】
このため、ワイヤグリッド偏光子32を用いると、明るく、色再現性の良好な表示画像が得られることがわかる。また、ワイヤグリッド偏光子32は、一枚の板状の偏光分離板であるので、軽量である。また、ワイヤグリッド偏光子32は、光源11(図1)から発せられる光を吸収しにくいため、複屈折による表示画像の品質低下を抑えることができる。
【0044】
再び図1に戻り、R光用のワイヤグリッド偏光子32を透過したP偏光光によるR光がR光用の反射型液晶パネル33に入射すると、R光用の反射型液晶パネル33内でR光の画像信号に応じて光変調された後に反射された光束は再びR光用のワイヤグリッド偏光子32に戻る。ここで、R光用のワイヤグリッド偏光子32においては、R光用の反射型液晶パネル33を照明する第1偏光成分のR光であるP偏光光とは異なって、反射型液晶パネル33で光変調・反射された第2偏光成分のR光であるS偏光光(第2偏光成分光)の光束のみを反射する。
【0045】
この際、反射型液晶パネル33は、シリコン基板上にスイッチング素子をマトリックス状に設けると共にこの上方に絶縁層を介してアルミニウムなどの金属からなる画素電極をマトリックス状に複数設け、この複数の画素電極と透明基板に設けた共通電極との間に液晶を封入して、複数の画素電極と共通電極との間に電圧を印加して、透明基板側から入射させた入射光に各色光の画像信号に応じて光変調し、この入射光を複数の画素電極で反射させた変調画像光を出射するように反射型として構成されている。このような反射型液晶パネル33は、画素集積度が高いので高解像度画像に適しており、また、複数の画素電極の下方に回路構造を積層できるので、開口率を90%程度に高めることができ、明るく滑らかで細密な画像を表示できるという長所がある。
【0046】
この後、R光用のワイヤグリッド偏光子32で反射されたS偏光光(第2偏光成分光)によるR光は、R光用の三角柱状支持部材31内で3色合成クロスダイクロイックプリズム40の入射面40aと対向して配置されたR光用の不要偏光光除去手段となる透過型偏光板35に入射され、この透過型偏光板35で不要な第1偏光成分のR光であるP偏光光(第1偏光成分光)を除去しながら透過型偏光板35を透過したS偏光成分のR光を3色合成クロスダイクロイックプリズム40の入射面40aから入射させている。
【0047】
この際、上記した不要偏光光除去手段となる透過型偏光板35は、ワイヤグリッド偏光子32で反射された反射光に不要偏光光であるP偏光光が混入されている場合に、このままでは表示画像のコントラスト比が低下する要因となるので、不要なP偏光光を除去するために設けられている。
【0048】
そして、透過型偏光板35としては、基材フィルム(ポリビニルアルコール;PVA)にヨウ素や有機染料などの二色性の材料を染色、吸着させ、高度に延伸、配向させることで、吸収二色性を発現させているものである。このPVA偏光層をTAC(トリアセチルセルロース)層で挟んだ偏光フィルムを、ガラス基板上に粘着材、または、接着剤で貼り付けた構成である。このような吸収二色性を基本原理とした透過型偏光板35は、入射する光束の直交する偏光成分のうち、二色性染料の配列と同方向の偏光成分を吸収し、他方の偏光成分を透過する。
【0049】
この透過型偏光板35は光吸収型であるので、耐熱性、放熱性を考慮し、水晶やサファイアなどの熱伝導性に優れた基板を用いて構成することが望ましい。光利用率の向上のためと、界面での不要反射光による表示画像の品位低下を防止するため、透過型偏光板35の空気界面には、減反射コートを施す必要がある。これらの偏光特性、反射防止膜特性は、R,G,B各色について最適化されることが望ましい。
【0050】
また、透過型偏光板35は、片面フィルムで構成しても良いが、フィルムの表面を波長オーダで平坦化するのは困難であるので、このフィルム表面の非平面性が波面収差となり、解像度を劣化させる要因となる。そこで、より高い解像度を実現するためには、この偏光フィルムを平坦な光学研磨の施された基板(白板ガラス、光学ガラス、水晶、石英、サファイアなど)で挟み、接着剤、または、粘着材でフィルムの凹凸を埋めることで、解像度劣化を防ぐことができる。
【0051】
以下、上記したR光と同様に、G光及びB光をG光用反射型液晶パネル組立体30G及びB光用反射型液晶パネル組立体30Bに入射させた時に、G光用及びB光用の反射型液晶パネル33,33で光変調されて反射されたS偏光光のG光及びB光を3色合成クロスダイクロイックプリズム40の入射面40b及び入射面40cから入射させている。
【0052】
この後、3色合成クロスダイクロイックプリズム40の各入射面40a〜40cから入射されたR光,G光,B光の各変調画像光は、3色合成クロスダイクロイックプリズム40内に形成した第1,第2ダイクロイック膜40e,40fによって色合成され、この色合成クロスダイクロイックプリズム40で得られた色合成画像光が出射面40dから出射されて1/4波長板41を介して投射レンズ42に入射され、この投射レンズ42によって図示しないスクリーン上に拡大投射されて実像を結像し、色合成画像光を表示している。
【0053】
上記した3色合成クロスダイクロイックプリズム40は、光学ガラスを用いて直方体(立方体も含む)に形成されており、上面から見た時に第1,第2ダイクロイック膜40e,40fがX字状にクロスしている。
【0054】
この際、3色合成クロスダイクロイックプリズム40内の第1ダイクロイック膜40eは、入射面40aから入射したR光を反射して90°方向を変えて出射面40dから出射させ、且つ、入射面40bから入射したG光をそのまま透過して出射面40dから出射させ、入射面40cから入射したB光も透過させる機能を備えている。
【0055】
また、3色合成クロスダイクロイックプリズム40内の第2ダイクロイック膜40fは、入射面40cから入射したB光を反射して90°方向を変えて出射面40dから出射させ、且つ、入射面40bから入射したG光をそのまま透過して出射面40dから出射させ、入射面40aから入射したR光も透過させる機能を備えている。
【0056】
従って、3色合成クロスダイクロイックプリズム40内に形成した第1,第2ダイクロイック膜40e,40fで3色合成が可能になっている。
【0057】
また、3色合成クロスダイクロイックプリズム40と投射レンズ42との間に配置した1/4波長板41は、投射レンズ42のレンズ表面からの微量な反射光が3色合成クロスダイクロイックプリズム40,透過型偏光板35,ワイヤグリッド偏光子32を介して反射型液晶パネル33側に戻り、再度反射されてスクリーンに達し、ゴースト状に不要光が現われるのを防ぐためのものであり、この1/4波長板41は必要に応じて設置すれば良いものである。
【0058】
ここで、各色光用の三角柱状支持部材31と3色合成クロスダイクロイックプリズム40とを少なくとも固定する構造形態について図4及び図5を用いて説明する。
【0059】
図4(a),(b)は本発明に係る実施例の投射型表示装置において、各色光用の三角柱状支持部材と3色合成クロスダイクロイックプリズムとをベース台の上面に固定する状態を示した斜視図,側面図、
図5(a),(b)は本発明に係る実施例の投射型表示装置において、各色光用の三角柱状支持部材と3色合成クロスダイクロイックプリズムとをベース台の上面に固定し、且つ、各色光用の三角柱状支持部材を天板の裏面に固定する状態を示した斜視図,側面図である。
【0060】
まず、図4(a),(b)に示した如く、ベース台25の上面25aには、3色合成クロスダイクロイックプリズム40の下面40gが接着剤を用いて固定され、且つ、3色合成クロスダイクロイックプリズム40の各入射面40a〜40cに対向して各色光用の三角柱状支持部材31が取り付けられている。具体的には、ベース台25の裏面25bから複数のネジ26をベース台25に穿設した複数の取り付け孔25c内に挿入して、これら複数のネジ26を各色光用の三角柱状支持部材31の下面31aに形成した各ネジ孔(図示せず)に締結することで、各色光用の三角柱状支持部材31の下面31aがベース台25の上面25aに固定されている。尚、各色光用の三角柱状支持部材31の下面31aをベース台25の上面25aに接着剤を用いて固定しても良い。
【0061】
この際、ベース台25は、光学ガラスを用いて直方体に形成した3色合成クロスダイクロイックプリズム40の素材となる光学ガラス材の線膨張係数に近い線膨張係数6〜10×10−6/°Cを有する材料を用いており、例えば、光学ガラスよりも安価に入手できるステンレスとか、ファインセラミックスや、バルクモールディングコンパウンド(BMC)などのプラスチック材料や、ニッケル合金材料などのいづれか一つを用いている。この際、ベース台に適用可能な上記各材料は線膨張係数6〜10×10−6/°Cを有するように材料成分を選定すれば良いものである。
【0062】
そして、ベース台25は3色合成クロスダイクロイックプリズム40の線膨張係数に近い線膨張係数6〜10×10−6/°Cを有しているため、照明光学系からの熱によりベース台25及び3色合成クロスダイクロイックプリズム40に生じる熱膨張、熱収縮による寸法変化を略等しくすることができるので、各色光用の反射型液晶パネル33に対してレジストレーション調整を行った後に各色光用の反射型液晶パネル33からの各色光を3色合成クロスダイクロイックプリズム40で色合成したカラー画像光はレジストレーションずれが生じにくくなり、不図示のスクリーン上に良好なカラー画像光を投射することができる。
【0063】
更に、図5(a),(b)に示した如く、各色光用の三角柱状支持部材31の下面31aと3色合成クロスダイクロイックプリズム40とを上記した材料を用いたベース台25上に固定した上で、各色光用の三角柱状支持部材31の上面31bをベース台25と同じ材料を用いた天板27の裏面27aに締結すれば、各色光用の三角柱状支持部材31がより一層強固に固定できるのでより好ましい。具体的には、天板27の上面27bから複数のネジ28を天板27に穿設した複数の取り付け孔27c内に挿入して、これら複数のネジ28を各色光用の三角柱状支持部材31の上面31bに形成した各ネジ孔31b1に締結することで、各色光用の三角柱状支持部材31の上面31bが天板27の裏面27aに固定されている。尚、各色光用の三角柱状支持部材31の上面31bを天板27の裏面27aに接着剤を用いて固定しても良い。
【0064】
この際、3色合成クロスダイクロイックプリズム40の上面40hは、天板27の裏面27aに接着されてなく、天板27の裏面27aと色合成クロスダイクロイックプリズム40の上面40hとの間に隙間Sを設けることにより、各色光用の三角柱状支持部材31と3色合成クロスダイクロイックプリズム40の材料が異なる時に生じる熱変形の違いの影響を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係る実施例の投射型表示装置を説明するための平面図である。
【図2】本発明に係る実施例の投射型表示装置において、R,G,B光用の各反射型液晶パネル組立体を拡大して示した斜視図である。
【図3】(a)〜(c)は本発明に係る実施例の投射型表示装置において、反射型液晶パネル組立体内のワイヤグリッド偏光子を説明するための図である。
【図4】(a),(b)は本発明に係る実施例の投射型表示装置において、各色光用の三角柱状支持部材と3色合成クロスダイクロイックプリズムとをベース台の上面に固定する状態を示した斜視図,側面図である。
【図5】(a),(b)は本発明に係る実施例の投射型表示装置において、各色光用の三角柱状支持部材と3色合成クロスダイクロイックプリズムとをベース台の上面に固定し、且つ、各色光用の三角柱状支持部材を天板の裏面に固定する状態を示した斜視図,側面図である。
【符号の説明】
【0066】
10…投射型表示装置、
11…光源、12…放物面鏡、
13…第1のフライアイレンズアレイ、14…第2のフライアイレンズアレイ、
15…偏光変換光学素子(偏光変換プリズムアレイ)、
17…第1のダイクロイックミラー、19…第2のダイクロイックミラー、
25…ベース台、25a…上面、25b…裏面、26…ネジ、
27…天板、27a…裏面、27b…上面、28…ネジ、
30R…R光用反射型液晶パネル組立体、
30G…G光用反射型液晶パネル組立体、
30B…B光用反射型液晶パネル組立体、
31…三角柱状支持部材、
31a…下面、31b…上面、31c〜31e…第1面〜第3面、
32…ワイヤグリッド偏光子、
33…反射型空間光変調素子(反射型液晶パネル)、
35…透過型偏光板、
40…3色合成クロスダイクロイックプリズム、
40a〜40c…入射面、40d…出射面、
40e,40f…第1,第2ダイクロイック膜、40g…下面、40h…上面、
42…投射レンズ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース台と、前記ベース台上に固定され、光源から出射された3原色光が各色光用の反射型空間光変調素子でそれぞれ光変調されて、所定の偏光光のみを反射するワイヤグリッド偏光子が取り付けられた支持部材と、前記ベース台上に固定され、前記ワイヤグリッド偏光子で反射された前記所定の偏光光の各色光を合成してカラー画像光として出射する合成光学系と、を備えた投射表示装置において、
前記合成光学系で合成される前記各色光のレジストレーションずれを抑えるように、前記ベース台及び前記合成光学系の線膨張係数を所定範囲内にしたことを特徴とする投射表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−199486(P2007−199486A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−18966(P2006−18966)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】