投射型表示装置
【課題】本発明は、映像信号に応じてライトバルブに照射される光の照度むらを発生させない連続的な光量調整が容易であって、コントラストの十分な映像を常に表示することが可能な投射型表示装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明による投射型表示装置は、ライトバルブ2と、ライトバルブ2に照射する光を発生する光源3aと、光源3aとライトバルブ2との間の光路上に配置され、光源3aからライトバルブ2に照射する光の照度分布を均一化させるインテグレータレンズ4と、光路上に配置され、光源3aからライトバルブ2に照射する光の光量を調整するための、一対の観音扉状に回動する回動機構9aを有する光量調整系9とを備え、回動機構9aは光量を減少させる(遮光する)方向にくの字状に折れ曲がって形成されていることを特徴とする。
【解決手段】本発明による投射型表示装置は、ライトバルブ2と、ライトバルブ2に照射する光を発生する光源3aと、光源3aとライトバルブ2との間の光路上に配置され、光源3aからライトバルブ2に照射する光の照度分布を均一化させるインテグレータレンズ4と、光路上に配置され、光源3aからライトバルブ2に照射する光の光量を調整するための、一対の観音扉状に回動する回動機構9aを有する光量調整系9とを備え、回動機構9aは光量を減少させる(遮光する)方向にくの字状に折れ曲がって形成されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像信号に応じてライトバルブに照射される光の光量を調整する光量調整機構を備えた投射型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
投射型表示装置においては、誘導光学系や投射レンズなどの光学系を構成する様々な光学要素から漏れた光および光学要素で発生する迷光(不要光)が原因となって、暗い映像が十分に暗く表示されず、高いコントラストを得ることが難しい傾向がある。特に、暗い室内でスクリーン上に映像を投射する場合には、暗い映像を十分に暗く表示しなければ、視聴者にコントラスト不足の印象を与えてしまう。特に液晶ライトバルブを用いた投射型表示装置では、液晶ライトバルブが光の偏光特性に応じて透過光を遮断するが、透過光を完全に遮断することができずに映像信号処理による対応にも限界があるため、コントラストの向上が要求されている。
【0003】
このような問題の対策として、遮光板を第1のレンズアレイと第2のレンズアレイとの間に配置し、映像信号に応じて平板状の遮光板を回動させることによってライトバルブに照射される光の光量を制御して、スクリーンなどに投射される映像のコントラストを向上させている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2005−026835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、遮光板の先端の形状が遮光板に対して鉛直方向に矩形面を有しているとき、第1のレンズアレイ付近であって、遮光板の回動方向での第2のレンズアレイの曲率中心の位置に遮光板の先端が存在すると遮光板の矩形面がライトバルブ上に結像するため、ライトバルブ上の回動方向および光軸方向に対して垂直方向にライン状の照度むらが生じる問題がある。さらに、遮光体の先端の形状によっては、十分なコントラストが得られないという問題がある。
【0006】
本発明は、これらの問題を解決するためになされたもので、映像信号に応じてライトバルブに照射される光の照度むらを発生させない連続的な光量調整が容易であって、コントラストの十分な映像を常に表示することが可能な投射型表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明による投射型表示装置は、ライトバルブと、ライトバルブに照射する光を発生する光源と、光源とライトバルブとの間の光路上に配置され、光源からライトバルブに照射する光の照度分布を均一化させるインテグレータレンズと、光路上に配置され、光源からライトバルブに照射する光の光量を調整するための、一対の観音扉状に回動する遮光体を有する光量調整機構とを備え、遮光体は、先端部が凹状曲線形状の凹状部に切り欠いて形成され、凹状部は、面積が異なる2つの凹状部を含み、該2つの凹状部は遮光体を閉じたときに光軸に対して点対称の位置で遮光体に形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光源とライトバルブとの間の光路上に配置され、光源からライトバルブに照射する光の照度分布を均一化させるインテグレータレンズと、光路上に配置され、光源からライトバルブに照射する光の光量を調整するための、一対の観音扉状に回動する遮光体を有する光量調整機構とを備え、遮光体は、先端部が凹状曲線形状の凹状部に切り欠いて形成され、凹状部は、面積が異なる2つの凹状部を含み、該2つの凹状部は遮光体を閉じたときに光軸に対して点対称の位置で遮光体に形成されるので、映像信号に応じてライトバルブに照射される光の照度むらを発生させない連続的な光量調整が容易であって、コントラストの十分な映像を常に表示することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態1による投射型表示装置の照明光学系の構成図である。
【図2】本発明の実施形態1による偏光変換素子の構成図である。
【図3】本発明の実施形態1による回動機構の形状の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態1による回動機構の回動動作を示す図である。
【図5】本発明の実施形態1による回動機構が図3の形状のときの回動角度と相対光量比との関係を示す図である。
【図6】本発明の実施形態1による相対光量比が20%のときにおける回動機構の先端のz方向の位置を示す図である。
【図7】本発明の実施形態1による回動機構が図3(b)の形状で完全に遮光したときのライトバルブに照射される光の照度分布を示す図である。
【図8】本発明の実施形態による遮光体に凹状部を形成しないときの回動角度と相対光量比との関係を示す図である。
【図9】本発明の実施形態1による第2のレンズアレイ近傍の光源像を示す図である。
【図10】本発明の実施形態1による回動機構の形状の一例を示す図である。
【図11】本発明の実施形態1による回動機構が図10の形状のときの回動角度と相対光量比との関係を示す図である。
【図12】本発明の実施形態1による回動機構の形状に対する光の軌跡を示す図である。
【図13】本発明の実施形態1による回動機構の寸法がレンズアレイよりも小さいときの光の軌跡を示す図である。
【図14】本発明の実施形態1によるライトバルブの中心から逆光線追跡を行なったときの光の軌跡を示した図である。
【図15】本発明の実施形態1によるライトバルブに結像が生じるときにおける回動機構の回動位置を示す図である。
【図16】本発明の実施形態1によるライトバルブに結像が生じるときにおける回動機構の回動位置を示す図である。
【図17】本発明の実施形態1によるライトバルブに照射された光の照度分布を示した図である。
【図18】本発明の実施形態1によるライトバルブに照射された光の照度分布を示した図である。
【図19】本発明の実施形態1による図17および図18の各y軸上における相対光量比を示した図である。
【図20】本発明の実施形態2による投射型表示装置の照明光学系の構成図である。
【図21】本発明の実施形態2によるライトバルブに結像が生じるときの回動機構の回動位置を示す図である。
【図22】本発明の実施形態2によるライトバルブに結像が生じるときの回動機構の回動位置を示す図である。
【図23】本発明の実施形態2によるライトバルブに照射された光の照度分布を示した図である。
【図24】本発明の実施形態2による図23の各y軸上における相対光量比を示した図である。
【図25】本発明の実施形態2による回動機構の先端形状を示す図である。
【図26】本発明の実施形態3による投射型表示装置の照明光学系の構成図である。
【図27】本発明の実施形態3によるライトバルブに入射する光の光路を示した図である。
【図28】本発明の実施携帯3による第2のレンズアレイと偏光変換素子とを通過する光の軌跡を示した図である。
【図29】本発明の実施形態3によるライトバルブへの光の入射角度とコントラストとの関係図である。
【図30】本発明の実施形態3による回動機構の形状の一例を示す図である。
【図31】本発明の実施形態3による第2のレンズアレイ4bの各セルを通過する光の光量を示す図である。
【図32】本発明の実施形態3による光源3から射出された光の軌跡を示す図である。
【図33】本発明の実施形態3によるライトバルブに照射された光の照度分布を示した図である。
【図34】本発明の実施形態3による回動機構の形状の一例を示す図である。
【図35】本発明の実施形態3による回動機構が図30の形状のときの回動角度と相対光量比との関係を示す図である。
【図36】本発明の実施形態3による回動機構の形状の一例を示す図である。
【図37】本発明の実施形態3による回動機構が図35の形状のときの回動角度と相対光量比との関係を示す図である。
【図38】本発明の実施形態3による回動機構の形状の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について、図面を用いて以下に説明する。
【0011】
〈実施形態1〉
図1は、本発明の実施形態1による投射型表示装置の照明光学系1の構成図である。図1に示すように、照明光学系1は、光源系3とライトバルブ2との間にインテグレータレンズ4、偏光変換素子5、コンデンサレンズ6、フィールドレンズ7、偏光板8から構成される。なお、本発明の実施形態1による投射型表示装置は、ライトバルブ2から出た光をスクリーンに投射するために投射レンズ(図示せず)を備えている。また、ライトバルブ2は、RGBのそれぞれの光路上に備えられており、図1に示す照明光学系1はRGBのそれぞれの光路のうちの1つを代表的に示したものである。
【0012】
ライトバルブ2は、本発明の実施形態では液晶ライトバルブを用いているが、レンズアレイを用いる場合は、DMD(Digital Micro−Mirror Device)や反射型液晶表示素子などであってもよい。
【0013】
光源系3は、ライトバルブ2に光を照射するために備えられ、光源3aと光源3aから射出された光を反射によってインテグレータレンズ4に照射させる反射鏡3bとから構成される。光源3aは、一般的に、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプが用いられるが、LED(Light Emitting Diode)、レーザ、無電極放電ランプなど、発光デバイスであればいかなるものであってもよい。反射鏡3bは、放物面や楕円面に形成されているが、光が偏光変換素子5に集光すればどのような形状、構造であってもよく、特に限定されるものではない。例えば、インテグレータ4に入射させる光を光軸Cとほぼ平行にする場合、反射鏡3bの形状を放物面にするか、または楕円面にするときは光をほぼ平行にするために、光源系3とインテグレータレンズ4との間に凹レンズを配置するなどすればよい(図32参照)。
【0014】
インテグレータレンズ4は、光源系3とライトバルブ2との間の光路上に配置され、光源系3からライトバルブ2に照射する光の照度分布を均一化させるために備えられ、第1のレンズアレイ4aと第1のレンズアレイ4aから離間配置された第2のレンズアレイ4bとから構成される。第1のレンズアレイ4aおよび第2のレンズアレイ4bは、複数の凸レンズが縦横に配置された構成であって、第1のレンズアレイ4aの凸レンズと第2のレンズアレイ4bの凸レンズとはお互いに対応しており、相対して配置される。
【0015】
偏光変換素子5は、偏光変換素子5に入射した光束を1種類の直線偏光光に変換して射出するものであり、x軸方向に適当な間隔をあけて配置されている。図2は、本発明の実施形態1による偏光変換素子5の構成図である。図2に示すように、偏光変換素子5は、光軸C方向(z方向)に対して傾斜(例えば、45度)させて配置した複数の偏光分離膜5aと、偏光分離膜5a間であって光軸C方向(z方向)に対して傾斜(例えば、45度)させて配置した複数の反射膜5bと、偏光変換素子5のライトバルブ2側の面上であって偏光分離膜5aを透過した光が照射される部分にλ/2位相差板5cとから構成されている。偏光変換素子5に入射した光は、偏光分離膜5aによってs偏光光とp偏光光とに分離される。p偏光光は偏光分離膜5aを透過し、λ/2位相差板5cにてs偏光光に変換されて偏光変換素子5から射出される。一方、s偏光光は偏光分離膜5aを反射し、反射膜5bを反射した後に偏光変換素子5から射出される。従って、偏光変換素子5から射出される光束は、ほぼ全てがs偏光光となる。
【0016】
光量調整系9(光量調整機構)は、光路上に配置され、光源系3からライトバルブ2に照射する光の光量を調整するための、一対の観音扉状に回動する遮光体である回動機構9aを有し、第1のレンズアレイ4aと第2のレンズアレイ4bとの間に配置された回動機構9aと、ライトバルブ2に入力される映像信号を検知し、検知結果からライトバルブ2に照射される光量の相対光量比を算出する信号検知部9bと、信号検知部9bによって算出された相対光量比に基づいて回動機構9aの回動を制御する回動制御部9cとから構成されている。図3(b)に示すように、回動機構9aは遮光体9Tおよび9Bから構成され、遮光体9Tおよび9Bは、光量を減少させる(遮光する)方向にくの字状に折れ曲がって形成されている。また、遮光体9Tおよび9Bの先端部は、光の通過を制限する凹状部9gに切り欠いて形成されている。凹状部9aは、凹状曲線形状、放物線形状、半楕円形状、三角形状など、いかなる形状であってもよい。
【0017】
次にコントラストの向上について説明する。映像信号の相対光量比が100%の場合は、回動機構9aによって遮光せずに100%の相対光量で調整を行なう。例えば、映像信号の相対光量比が20%の場合は、回動機構9aによって相対光量比を20%まで遮光することにより、約5倍の細やかな映像信号の調整が可能となる。また、回動機構9aの遮光によって相対光量比を低くすることで、映像信号の相対光量比が0%の信号のときの黒色を遮光しない場合よりもさらに暗い黒にすることが可能である。すなわち、ライトバルブ2の透過率は概ね一定であることから、ライトバルブ2に照射する光量を回動機構9aによって少なくすることにより、スクリーンに投射する映像を暗くすることが可能となってコントラストの向上が図れる。
【0018】
図4(a)は図3(a)の遮光体9Tおよび9Bの回動動作を、図4(b)は図3(b)の遮光体9Tおよび9Bの回動動作を、それぞれ15度ごとに回動させたときの回動動作示す図である。図4(a)および図4(b)に示すように、遮光体9Tおよび9Bの先端のz方向の移動量は、図4(a)の移動量Zaより図4(b)の移動量Zbの方が小さい(Za>Zb)ため、図4(b)の方が回動角度あたりのy方向への遮光体9Tおよび9Bの移動量が大きいことが分かる。従って、図4(b)に示すような遮光体9Tおよび9Bの形状の方が少ない回動角度で相対光量比が100%の照度となる。
【0019】
図5は、回動機構9aが図3の形状のときの回動角度と相対光量比との関係を示す図である。図3(b)におけるγTおよびγBは20度とし、それぞれの回動機構9aの回動角度を2度ごととした。また、回動角度が0度とは、遮光体9Tおよび9Bが完全に閉じたとき、つまり各遮光体9Tおよび9Bが図4の41aおよび41bの状態のときである。曲線50は図3(a)の形状の回動機構9a、曲線51は図3(b)の形状の回動機構9aの、それぞれのシミュレーション結果を示している。図5に示すように、曲線51は曲線50よりも相対光量比が低いときの立ち上がりが早く、回動角度が約75度で相対光量比が100%となっている。動作角度範囲が狭いことから、図3(b)の形状は図3(a)の形状と比較して応答性の高い制御が可能となる。また、曲線50および曲線51より、相対光量比が低いところ以外における回動角度に対する相対光量比の変化は概ね等しいことが分かる。以上のことから、図14に後述するように、相対光量比が低い場合では、遮光体9Tおよび9Bの先端を回動半径方向にくの字状に折れ曲げて形成することによって、照度むらを軽減することが可能となる。また、図5より、図3のように遮光体9Tおよび9Bのそれぞれの先端部に凹状部9gを2つ形成することによって、連続的に光量調整を行なうことが可能であることが分かる。なお、本発明の実施形態では、γTおよびγBを20度としたが任意の角度でもよく、γT=γBの関係でなくとも同様の効果が得られる。また、本発明の実施形態に示される回動機構9aの回動角度とライトバルブ2上の相対光量比との関係は、相対光量比は100%の信号が入力されたときを示しており、回動機構9aの特性のみを示している。
【0020】
図6は、図5における相対光量比が20%のときの遮光体9Tおよび9Bの先端のz方向の位置を示している。図6(a)に示すように、図3(a)の形状のときの回動角度は約24度となりα1≒24度、図3(b)の形状のときの回動角度は約14度となりα2≒34度である。また、図6(b)のα3=γTであり20度である。図6(a)の遮光体9Tおよび9Bの長さをd1、図6(b)の遮光体9Tおよび9Bの回動軸から折れ曲げ部までの長さをd2、折れ曲げ部から先端までの長さをd3とする。以上の条件に基づいて、図3(b)の遮光体9Tおよび9Bの先端のz方向の位置を算出する。
【0021】
図6(a)および(b)より、遮光体9Tおよび9Bのz方向の移動量ZcおよびZdは以下の式(1)および式(2)によって表される。
【0022】
Zc=d1×sin(α1)≒d1×0.41・・・(1)
Zd=d2×sin(α2)+d3×sin(α2−α3)
≒d2×0.56+d3×0.24 ・・・(2)
図4(b)より、d1は式(3)で表される。
【0023】
d1=d2×cos(α3)+d3≒d2×0.94+d3・・・(3)
従って、Zcは式(4)で表されるので、Zc>Zdの条件は式(5)によって満たされる。
【0024】
Zc≒d2×0.39+d3×0.41 ・・・(4)
1>d2/d3 ・・・(5)
従って、d2の長さをd3より短くすることにより、図3(b)の形状は図3(a)の形状よりも照度むらを軽減することが可能となる。照度むらの原因は、遮光体9Tおよび9Bの先端の移動距離だけではないため、式(5)の条件は好ましいが、必ずしも満たす必要はない。
【0025】
図7は、図3(b)の形状で完全に遮光したときのライトバルブ2に照射される光の照度分布を示す図である。完全遮光時において、第2のレンズアレイ4bに入射した光は、ライトバルブ2の概ね全体(7aの領域)とx方向の両端周辺部(7bの領域)を均一に重畳して照射されているため、照度むらは生じない。7aの領域は、第2のレンズアレイ4bのセルの開口部の全体が概ね開口しているときのセル(図3(b)の30の領域)からライトバルブ2に照射された光の照度分布を示し、7bの領域は、第2のレンズアレイ4bのセルの開口部が約半分開口となっているときのセル(図3(b)の31の領域)からライトバルブ2に照射された光の照度分布を示している。
【0026】
図8は、折れ曲げ部がない遮光体9Tおよび9Bに凹状部を形成しないときの回動角度と相対光量比との関係を示す図である。回動角度を2度ごとにシミュレーションを行なった。曲線80より、回動角度に対する相対光量比の変化は連続的ではなく、平坦部が4箇所(8a、8b、8c、8d)存在していることが分かる。
【0027】
図9は、第2のレンズアレイ4bの近傍の光源像を示す図である。図9は256階調のグレースケールで表している。図9より、9a、9b、9c、9dのそれぞれは+y方向の光源像間の暗部を示している。図8における4箇所8a、8b、8c、8dの平坦部は、図9に示す4箇所の光源像間の暗部9a、9b、9c、9dに対応しており、光源像間の暗部が図8の平坦部の影響であることが確認できる。従って、光量の変化を連続的にするためには、光源像間の明暗部を同時に遮光する必要がある。図3に示すように、遮光体9Tおよび9Bに凹状部を形成すると図5のように光量を連続的に変化させることが可能であることから、遮光体9Tおよび9Bに凹状部を形成することによって、光源像間の明暗部を同時に遮光することが可能となる。
【0028】
図10は、遮光体9Tおよび9Bの形状の一例を示す図であり、1つの凹状部9gを光軸Cに対して対称に形成している。このような形状で完全に遮光したときは、ライトバルブ2上の照射分布は概ね均一である。
【0029】
図11は、遮光体9Tおよび9Bが図10の形状のときの回動角度と相対光量比との関係を示す図である。図10における遮光体9Tおよび9BのγTおよびγBを20度とする。曲線110は図10の形状の回動機構9aのシミュレーション結果である。曲線80は図8の凹状部を形成しない形状の回動機構9aのシミュレーション結果を示しており、凹状部9gの形成の有無による効果を比較している。比較の容易のために、曲線80は曲線110と重なり合うようにシフトしている。図11より、遮光体9Tおよび9Bに凹状部9gを1つ形成した場合であっても、凹状部を形成していない遮光体9Tおよび9Bよりも連続的に光量調整することができる。すなわち、遮光体9Tおよび9Bに少なくとも1つの凹状部9gを形成することは、連続的な光量調整に効果がある。ただし、図5の曲線51および図11の曲線110より、凹状部を2つ形成した場合の方が、凹状部を1つ形成した場合より、光量が滑らかに変化しており、より滑らかな光量調整を行うためには複数の凹状部を形成することが好ましい。
【0030】
図12は、遮光体9Tおよび9Bが遮光時に、第1のレンズアレイ4a側に回動するときにおける光の軌跡、特に第1のレンズアレイ4aの最も+y方向に位置するレンズセルを通過する光の軌跡を示す図である。ここでは遮光体9Tのみについて説明するが、遮光体9Bについても同様である。120aはレンズセルの中心より+y側を通過する光の軌跡、120bはレンズセルの中心を通過する光の軌跡、120cはレンズセルの中心より−y側を通過する光の軌跡を示している。図12に示すように、遮光体9Tの折り曲げ角度が小さいか、または折り曲げ位置が回動軸から遠い場合は、遮光体9Tを反射した不要な光が第2のレンズアレイ4bを通過して、照明光学系1の筐体(図示せず)内を多重反射することにより、スクリーン上に現れる可能性がある。よって、図12に示すような遮光体9Tおよび9Bの開閉方向ではなく、遮光時に、第2のレンズアレイ4b側に回動する遮光体9Tおよび9Bの方が好ましい。
【0031】
図13(a)は、遮光体9Tおよび9Bのx方向およびy方向の寸法が第1のレンズアレイ4aおよび第2のレンズアレイ4bよりも小さいときの光の軌跡を示す図である。また、図13(b)は、各遮光体9Tおよび9Bのx方向およびy方向の寸法と第2のレンズアレイ4bのx方向およびy方向の寸法を比較した図であり、各遮光体9Tおよび9Bのx方向およびy方向の寸法が、第2のレンズアレイ4bのx方向およびy方向の寸法より小さいことを示す。ここでは遮光体9Tのみについて説明するが、遮光体9Bについても同様である。130aは第1のレンズアレイ4aの光軸Cから+y方向に5つ目に位置するレンズセルの中心を通過する光の軌跡、130bは第1のレンズアレイ4aの光軸Cから+y方向に2つ目かつ+x方向に3つ目に位置するレンズセルの中心より+x方向側を通過する光の軌跡を示している。図13(a)に示すように、遮光体9Tおよび9Bの回動軸よりも+y側に位置する第1のレンズアレイ4aを通過した光は、遮光体9Tおよび9Bの当たることなく+y側を通過していくことが分かる。従って、第1のレンズアレイ4aから射出された光を遮光体9Tおよび9Bによって光量調整するためには、遮光体9Tおよび9Bのx方向およびy方向の寸法は第1のレンズアレイ4aおよび第2のレンズアレイ4bよりも大きいことが好ましい。第1のレンズアレイ4aよりも第2のレンズアレイ4bの方が寸法が大きいときは、遮光体9Tおよび9Bのx方向およびy方向の寸法は第2のレンズアレイ4bよりも大きくすることが好ましいが、第2のレンズアレイ4bと偏光変換素子5との間に遮光板を備えて第2のレンズアレイ4bを通過した不要光を遮光することが可能である。このことから、遮光体9Tおよび9Bのx方向およびy方向の寸法は、第1のレンズアレイ4aおよび第2のレンズアレイ4bよりも必ずしも大きい必要はない。
【0032】
図14は、ライトバルブ2の中心から逆光線追跡を行なったときの光の軌跡を示した図である。140は光の軌跡を示し、141の領域は140の光が集光する位置を示している。図14に示すように、第1のレンズアレイ4a近傍の像がライトバルブ2に結像することが確認できることから、ライトバルブ2と第1のレンズアレイ4aの入射面近傍は共役関係にある。よって、141の領域の近傍に遮光体9Tおよび9Bの先端が位置するときに、遮光体9Tおよび9Bの先端がライトバルブ2に結像し、ライトバルブ2上の中心付近であってx方向にライン状の照度むらが生じてしまう。従って、遮光体9Tおよび9Bの先端を第2のレンズアレイ4bに近づける、すなわち回動軸を第2のレンズアレイ4bの近傍に配置することが好ましい。
【0033】
また、遮光体9Tおよび9Bの先端部に注目すると、遮光体9Tおよび9Bを光量を減少させる(遮光する)方向にくの字状に折れ曲げて形成する方が折れ曲げないときよりもy方向に結像する幅(図15のdy1および図16のdy2参照)が狭くなるため、ライトバルブ2上に生じる照度むらを軽減することが可能となる。従って、遮光体9Tおよび9Bを光量を減少させる(遮光する)方向にくの字状に折れ曲がって形成することによって、ライトバルブ2上に生じる照度むらを軽減することが可能となる。
【0034】
図15および図16は、図3(a)および図3(b)の形状のときにおける、ライトバルブ2上に遮光体9Tおよび9Bの先端の結像が生じるときの遮光体9Tおよび9Bの回動位置を示す図である。ライトバルブ2上に結像が生じる条件として、遮光体9Tおよび9Bの先端は、第2のレンズアレイ4bの光軸Cから+または−y方向に2つ目のレンズセルの曲率中心位置と同じ位置であって、第1のレンズアレイ4aの近傍に位置する。150、151、160、161はいずれも、第2のレンズアレイの光軸Cから+または−y方向に2つ目のレンズセルの曲率中心を通る軸を示している。152、162はいずれも、遮光体9Tの先端部分を示している。
【0035】
遮光体9Tおよび9Bの先端を、第2のレンズアレイ4bの光軸Cから+または−y方向に2つ目のレンズセルの曲率中心位置と同じ位置にする理由について説明する。まず、第2のレンズアレイ4bの光軸Cから+または−y方向に1つ目のレンズセルの曲率中心位置と同じ位置では、照度が低いためにライトバルブ2上に生じた照度むらの確認が難しい。また、第2のレンズアレイ4bの光軸Cから+または−y方向に3つ目のレンズセルの曲率中心位置と同じ位置では、光軸Cから+または−y方向に1つ目のレンズセルと2つ目のレンズセルから照度むらのない光がライトバルブ2上に重畳されるため、3つ目のレンズセルによるライトバルブ2上の照度むらが相対的に低くなって確認が難しくなる。従って、遮光体9Tおよび9Bの先端の結像がライトバルブ2上に確認されやすい条件として、遮光体9Tおよび9Bの先端を、第2のレンズアレイ4bの光軸Cから+または−y方向に2つ目のレンズセルの曲率中心位置と同じ位置に配置した。
【0036】
図17(a)は、図3(a)の凹状部9gがない形状であって図15の状態のときのライトバルブ2上の照度分布のシミュレーション結果を示しており、図17(b)は、図3(b)の凹状部がない形状であって図16の状態のときのライトバルブ2上の照度分布のシミュレーション結果を示している。図17に示すように、170aおよび170bは照度が低い領域を示し、171aおよび171bはライトバルブ2の中心を通るy軸を示している。170aと170bとを比較すると、170bの方が照度むらが少ないことが確認できる。これは、図15のdy1と図16のdy2との関係がdy1>dy2となっているためである。従って、遮光体9Tおよび9Bを光量を減少させる(遮光する)方向にくの字状に折れ曲がって形成することによって、ライトバルブ2上に生じる照度むらを軽減することが可能となる。このことから、前述した式5の条件を満たさなくても、遮光体9Tおよび9Bを折れ曲げて形成すれば照度むらを軽減できる。
【0037】
図18は、図3(b)の形状であって図16の状態のときのライトバルブ2上の照度分布のシミュレーションの結果を示している。図18に示すように、ライトバルブ2の中心からx方向には照度が低い領域はほとんどない。180はライトバルブ2の中心からy方向の照度が低い領域を示し、181はライトバルブ2の中心を通るy軸を示している。遮光体9Tおよび9Bの凹状部9gが第2のレンズアレイ4bの集光位置となって180の領域に僅かな照度むらが確認できるが、ライトバルブ2の全体の照度分布は概ね均一であるため問題ない。従って、遮光体9Tおよび9Bを光量を減少させる(遮光する)方向にくの字状に折り曲げ、遮光体9Tおよび9Bの先端部に凹状部を少なくとも1つ形成し、さらに先端の凹状部以外の平坦部を少なくすることによって、ライトバルブ2上に結像される先端形状の重畳が減り、照度むらを大きく軽減することが可能となる。
【0038】
図19は、図17(a)、図17(b)、図18のそれぞれにおいて示したy軸である171a、171b、181上におけるy方向の相対光量比を示した図である。横軸は図18に示すライトバルブ2の縦軸に対応する。図19に示すように、190は171a上における相対光量比、191は171b上における相対光量比、192は181上における相対光量比をそれぞれ示している。図19より、ライトバルブ2のy方向の中心である0.5Yにおける相対光量比の値を比較すると、190<191<192となっており、照度むらも190、191、192の順に軽減していることが確認できる。従って、遮光体9Tおよび9Bを光量を減少させる(遮光する)方向にくの字状に折れ曲がって形成し、先端部を凹状部に形成することによって照度むらを軽減することができる。
【0039】
なお、本発明の実施形態では、図4(b)の41bの場合において、図6に示す角度をγT=α2=α3としているが、α3>α2=γTとすることによって、図16に示すdyの幅をさらに小さくすることが可能となるため、図4(b)に示す形状よりもさらに照度むらを軽減することができる。また、遮光体9Tおよび9Bの折り曲げは1箇所のみであるが、図16に示すdyの幅が小さくなるのであれば2箇所折り曲げてもよい。そうすることによって照度むらを軽減することができる。さらに、図3(b)では、折り曲げ位置を第2のレンズアレイ4bの光軸Cを中心としてy方向に2つ目のレンズセル近傍の位置としているが、いかなる位置で折り曲げてもよい。
【0040】
以上のことから、回動機構9aの遮光体9Tおよび9Bを光量を減少させる(遮光する)方向にくの字状に折れ曲がって形成し、先端部を少なくとも1つの凹状部に切り欠いて形成することによって、ライトバルブ2上に照度むらを生じさせることのない、連続的な光量調整が可能となる。
【0041】
〈実施形態2〉
図20は、本発明の実施形態2による投射型表示装置の照明光学系1bの構成図である。本発明の実施形態2では、回動機構9aの遮光体9Tおよび9Bの先端部が刃形状部に削いで形成されていることを特徴とする。それ以外の部分についての構成および動作については実施形態1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0042】
図21は図15と同図であり、図22は図15と遮光体9Tおよび9Bの配置位置は同様である。また、210、211、220、221はいずれも、第2のレンズアレイの光軸Cから+または−y方向に2つ目のレンズセルの曲率中心を通る軸を示している。図22に示すように、遮光体9Tおよび9Bの先端部は220より光軸C側が削られて刃形状部に形成されている。こうすることにより、dyの幅を小さくしている。なお、遮光体9Tおよび9Bの幅tは、回動機構9aの回動に対する遮光体の強度を考慮し、通常0.5mm程度である。212、222はいずれも、遮光体9Tの先端部分を示している。
【0043】
図23(a)は、図3(a)の凹状部9gがない形状であって図21の状態のときのライトバルブ2上の照度分布のシミュレーション結果を示しており、図23(b)は、図3(a)の凹状部がない形状であって図22の状態のときのライトバルブ2上の照度分布のシミュレーション結果を示している。ここで、t=0.5mmとする。図23に示すように、230aおよび230bは照度が低い領域示し、231aおよび231bはライトバルブ2の中心を通るy軸を示している。230aと230bとを比較すると、230bの方が照度むらが大きく改善していることが確認できる。従って、図22に示すように、遮光体9Tおよび9Bの先端部を第2のレンズアレイの光軸Cから+または−y方向に2つ目のレンズセルの曲率中心を通る軸より光軸C側を刃形状部に削いで形成することによって照度むらを大きく軽減することが可能である。
【0044】
図24は、図23(a)、図23(b)のそれぞれにおいて示したy軸である231a、231b上におけるy方向の相対光量比を示した図である。図24に示すように、240は231a上における相対光量比、241は231b上における相対光量比をそれぞれ示している。図24より、ライトバルブ2のy方向の中心である0.5Yにおける相対光量比の値を比較すると、241の方が240よりも高くて照度むらが大きく軽減していることが分かる。従って、遮光体9Tおよび9Bの先端部を第2のレンズアレイの光軸Cから+または−y方向に2つ目のレンズセルの曲率中心を通る軸より光軸C側を刃形状部に削いで形成することによって照度むらを大きく軽減することが可能である。
【0045】
図25は、遮光体9Tおよび9Bの先端部の形状を示した図である。250、251はいずれも、第2のレンズアレイの光軸Cから+または−y方向に2つ目のレンズセルの曲率中心を通る軸を示している。図25より、遮光体9Tおよび9Bの先端部の角度がβよりも小さいことが好ましい。
【0046】
以上のことから、遮光体9Tおよび9Bの先端部に少なくとも1つの凹状部を切り欠いて形成し、さらに先端部を刃形状部に削いで形成することによって、ライトバルブ2上に照度むらを発生させることなく連続的な光量調整を行なうことが可能となる。
【0047】
〈実施形態3〉
図26は、本発明の実施形態3による投射型表示装置の照明光学系1cの構成図である。本発明の実施形態3では、遮光体9Tおよび9Bの先端部の形状が、小さい開口面積で、ライトバルブ2上の照度むらを発生させずにかつコントラストを十分高くすることが可能であることを特徴としている。それ以外の部分についての構成および動作については実施形態1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0048】
第2のレンズアレイ4bから射出した光270は、大きな入射角度でライトバルブ2に入射する。このとき、ライトバルブの特性上、ライトバルブ2に入射する光の角度が大きくなるに従ってコントラストが低下する(図29参照)ので、遮光体9Tおよび9Bの形状は、ライトバルブ2に対する入射角が大きい光、特にx方向の入射光を遮光することが好ましい。
【0049】
図28に第2のレンズアレイ4bと偏光変換素子5のxy平面の正面図(a)および側面図(b)の一例を示す。図28(c)は、図2をさらに詳細に図示した図である。また、図28(c)には、第2のレンズアレイ4bに入射する光の軌跡を示す。ここで、点線部は偏光変換素子5を示し、グレー色はλ/2位相差板5cを示す。通常、偏光変換はλ/2位相差板5cの領域のみに光を集光させることにより、効率よく偏光変換を行なう。従って、光線270、271、272、273、274、275が偏光変換される光線となる。図28(c)より、入射したp+sの直線偏光は、p偏光光は偏光変換素子5に入射後、λ/2位相差板5cによりs偏光光に変換されるため、入射位置と等しいx方向位置にて偏光変換素子5を射出されるが、s偏光光と比較して光軸からdx(275a−275b間距離)離れた位置に射出することとなる。従って、光軸からx方向に離れた光の入射を遮光することがコントラストの向上には不可欠となる。つまり、光線270、275がコントラストに影響を及ぼす光となる。つまり、光軸Cに近いx方向の位置に光線を入射させることがコントラスト向上の条件となる。
【0050】
図30は、遮光体9Tおよび9Bの形状を示している。遮光体9Tおよび9Bの先端の凹状部は面積が異なる2つの凹状部である9gおよび9hを含み、9gは9hより開口面積が小さい。また、9gおよび9hは、遮光体9Tおよび9Bを閉じたときに光軸Cに対して点対称の位置で遮光体9Tおよび9Bに形成されている。
【0051】
図31は、第2のレンズアレイ4bの各セルを通過する光の光量をシミュレーションによって算出し、算出結果を各セルごとに数値として示した図である。図30のような形状にすることによって、x方向のコントラストの差異を軽減させている。なお、図31では、第2のレンズアレイ4bは上下左右が対称であるため第1象限部分を代表させている。
【0052】
図32は、光源3aから射出した光が反射鏡3bで反射されている様子をシミュレーションで示した図である。反射鏡3bは楕円面とし、光源系3から射出した光を凹レンズ310によって平行にしている。通常、光軸C付近には光源のバルブが存在し、311はその開口部を示している。
【0053】
図32に示すように開口部が311となっているため、図31に示すV1H1のセルは光源系3から射出される光の量が少なくなっている。図30の形状で完全に遮光しているとき、凹状部9gはライトバルブ2のx方向の両端部を照射し、凹状部9hはライトバルブ2の中央部を照射している。すなわち、ライトバルブ2のx方向の両端部および中央部に照射される光の相対光量を等しくして重ね合わせることによって、均一な照度分布となる。例えば、凹状部9gと凹状部9hの形状が同一の場合では、図33に示すように、ライトバルブ2の中央部の照度が低くなって照度むらが生じる。従って、凹状部9hは凹状部9gよりも開口面積が大きい必要がある。図33において、凹状部9gから射出した光はライトバルブ2上の32bの領域を照射し、凹状部9hから射出した光はライトバルブ2上の32aの領域を照射する。
【0054】
図34にコントラストを考慮した遮光体9Tおよび遮光体9Bの形状を示す。凹状部9iは、直角三角形形状に開口部を有してセル(V1H1)内に形成され、ライトバルブ2上の照度分布は均一となる。しかし、図31によりセル(V1H1)を通過する光量が少ないことから、100%の映像信号をスクリーン上に表示した場合に、光量が少ないため、スクリーン上に投影される映像のコントラスト感が十分に得られなくなる。
【0055】
以上より、通常、ライトバルブ2上で照度むらを発生させないためには、開口部が8セル程度必要となる。しかし、形状および開口に入射する相対光量比を考慮することにより、約4セルでライトバルブ2上に照度むらを発生させないことが可能となる。つまり、開口面積が大きい凹状部9hのx方向の頂点を、光軸Cに最も近いセル(V1H1)のx方向中心とし、開口面積が小さい凹状部9gの頂点を、光軸Cに最も近いセル(V1H1)と光軸Cの逆に隣接するセル(V2H1)との接合部とすることにより、約4セルでライトバルブ2上に照度むらを発生させずにコントラストを向上させることが可能となる。
【0056】
図35は、遮光体9Tおよび9Bが図30の形状のときの回動角度と相対光量比との関係を示す図である。曲線331は図30の形状の回動機構9aのシミュレーション結果である。曲線330は図8の凹状部を形成しない形状の回動機構9aのシミュレーション結果を示している。比較の容易のために、曲線330は曲線331と重なり合うようにシフトしている。図35より、遮光体9Tおよび9Bを図30のような形状にすることによって、回動角度に対して概ね連続的にライトバルブ2への光量調整が可能であることが確認できる。従って、遮光体9Tおよび9Bの先端部の形状を図30のようにすることによって、ライトバルブ2上に照度むらを発生させることなく連続的に光量調整が可能であり、コントラストを向上させることができる。
【0057】
本実施形態では、楕円形状を示したが、本実施形態と同様に開口面積および頂点位置を考慮すれば、三角形状に関しても同様の効果が得られる。
【0058】
図36は、遮光体9Tおよび9Bの形状を示している。遮光体9Tおよび9Bの先端の凹状部は三角形状に形成されている。図36の形状は、相対光量比が30%以下のときに光量調整を細かく行なうことが可能であることを特徴とする。凹状部9gを第2のレンズアレイ4bのx方向の両側に配置することによって、相対光量比の低い部分を細かく制御することが可能となる。また、完全に遮光したときの第2のレンズアレイ4bの使用セル数は少ないが、図36のような三角形の形状にすることによって照射領域の重ね合わせによってライトバルブ2上の照度分布は均一となるため、照度むらは生じない。
【0059】
図37は、遮光体9Tおよび9Bが図36の形状のときの回動角度と相対光量比との関係を示す図である。曲線351は図36の形状の回動機構9aのシミュレーション結果である。曲線350は図38の形状の回動機構9aのシミュレーション結果を示している。比較の容易のために、曲線350は曲線351と重なり合うようにシフトしている。図37より、遮光体9Tおよび9Bを図36のような形状にすることによって、相対光量比が10%〜30%付近では傾きが緩やかな曲線となっている。このように緩やかな曲線になる理由としては、回動機構9aの回動角度が低いときにおいて、図31に示すV1H1のレンズセルが遮光されていくので、照度変化を小さくすることが可能だからである。相対光量比が10%〜30%の低い領域では、人間の目視による相対光量比の変化の感度が特に高いため、回動機構9aによる細かい光量調整は重要である。従って、図36のような形状にすることによって、30%よりも低い相対光量比での光量調整を細かく制御することが可能となる。
【0060】
以上のことから、遮光体9Tおよび9Bを図36に示すような形状にすることによって、相対光量比が低い場合において細かく光量調整をすることが可能となる。
【符号の説明】
【0061】
1 照明光学系、2 ライトバルブ、3 光源系、3a 光源、3b 反射鏡、4 インテグレータレンズ、4a 第1のレンズアレイ、4b 第2のレンズアレイ、5 偏光変換素子、5a 偏光分離膜、5b 反射膜、6 コンデンサレンズ、7 フィールドレンズ、8 偏光板、9 光量調整系、9a 回動機構、9b 信号検知部、9c 回動制御部、9B 遮光体、9T 遮光体。
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像信号に応じてライトバルブに照射される光の光量を調整する光量調整機構を備えた投射型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
投射型表示装置においては、誘導光学系や投射レンズなどの光学系を構成する様々な光学要素から漏れた光および光学要素で発生する迷光(不要光)が原因となって、暗い映像が十分に暗く表示されず、高いコントラストを得ることが難しい傾向がある。特に、暗い室内でスクリーン上に映像を投射する場合には、暗い映像を十分に暗く表示しなければ、視聴者にコントラスト不足の印象を与えてしまう。特に液晶ライトバルブを用いた投射型表示装置では、液晶ライトバルブが光の偏光特性に応じて透過光を遮断するが、透過光を完全に遮断することができずに映像信号処理による対応にも限界があるため、コントラストの向上が要求されている。
【0003】
このような問題の対策として、遮光板を第1のレンズアレイと第2のレンズアレイとの間に配置し、映像信号に応じて平板状の遮光板を回動させることによってライトバルブに照射される光の光量を制御して、スクリーンなどに投射される映像のコントラストを向上させている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2005−026835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、遮光板の先端の形状が遮光板に対して鉛直方向に矩形面を有しているとき、第1のレンズアレイ付近であって、遮光板の回動方向での第2のレンズアレイの曲率中心の位置に遮光板の先端が存在すると遮光板の矩形面がライトバルブ上に結像するため、ライトバルブ上の回動方向および光軸方向に対して垂直方向にライン状の照度むらが生じる問題がある。さらに、遮光体の先端の形状によっては、十分なコントラストが得られないという問題がある。
【0006】
本発明は、これらの問題を解決するためになされたもので、映像信号に応じてライトバルブに照射される光の照度むらを発生させない連続的な光量調整が容易であって、コントラストの十分な映像を常に表示することが可能な投射型表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明による投射型表示装置は、ライトバルブと、ライトバルブに照射する光を発生する光源と、光源とライトバルブとの間の光路上に配置され、光源からライトバルブに照射する光の照度分布を均一化させるインテグレータレンズと、光路上に配置され、光源からライトバルブに照射する光の光量を調整するための、一対の観音扉状に回動する遮光体を有する光量調整機構とを備え、遮光体は、先端部が凹状曲線形状の凹状部に切り欠いて形成され、凹状部は、面積が異なる2つの凹状部を含み、該2つの凹状部は遮光体を閉じたときに光軸に対して点対称の位置で遮光体に形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光源とライトバルブとの間の光路上に配置され、光源からライトバルブに照射する光の照度分布を均一化させるインテグレータレンズと、光路上に配置され、光源からライトバルブに照射する光の光量を調整するための、一対の観音扉状に回動する遮光体を有する光量調整機構とを備え、遮光体は、先端部が凹状曲線形状の凹状部に切り欠いて形成され、凹状部は、面積が異なる2つの凹状部を含み、該2つの凹状部は遮光体を閉じたときに光軸に対して点対称の位置で遮光体に形成されるので、映像信号に応じてライトバルブに照射される光の照度むらを発生させない連続的な光量調整が容易であって、コントラストの十分な映像を常に表示することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態1による投射型表示装置の照明光学系の構成図である。
【図2】本発明の実施形態1による偏光変換素子の構成図である。
【図3】本発明の実施形態1による回動機構の形状の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態1による回動機構の回動動作を示す図である。
【図5】本発明の実施形態1による回動機構が図3の形状のときの回動角度と相対光量比との関係を示す図である。
【図6】本発明の実施形態1による相対光量比が20%のときにおける回動機構の先端のz方向の位置を示す図である。
【図7】本発明の実施形態1による回動機構が図3(b)の形状で完全に遮光したときのライトバルブに照射される光の照度分布を示す図である。
【図8】本発明の実施形態による遮光体に凹状部を形成しないときの回動角度と相対光量比との関係を示す図である。
【図9】本発明の実施形態1による第2のレンズアレイ近傍の光源像を示す図である。
【図10】本発明の実施形態1による回動機構の形状の一例を示す図である。
【図11】本発明の実施形態1による回動機構が図10の形状のときの回動角度と相対光量比との関係を示す図である。
【図12】本発明の実施形態1による回動機構の形状に対する光の軌跡を示す図である。
【図13】本発明の実施形態1による回動機構の寸法がレンズアレイよりも小さいときの光の軌跡を示す図である。
【図14】本発明の実施形態1によるライトバルブの中心から逆光線追跡を行なったときの光の軌跡を示した図である。
【図15】本発明の実施形態1によるライトバルブに結像が生じるときにおける回動機構の回動位置を示す図である。
【図16】本発明の実施形態1によるライトバルブに結像が生じるときにおける回動機構の回動位置を示す図である。
【図17】本発明の実施形態1によるライトバルブに照射された光の照度分布を示した図である。
【図18】本発明の実施形態1によるライトバルブに照射された光の照度分布を示した図である。
【図19】本発明の実施形態1による図17および図18の各y軸上における相対光量比を示した図である。
【図20】本発明の実施形態2による投射型表示装置の照明光学系の構成図である。
【図21】本発明の実施形態2によるライトバルブに結像が生じるときの回動機構の回動位置を示す図である。
【図22】本発明の実施形態2によるライトバルブに結像が生じるときの回動機構の回動位置を示す図である。
【図23】本発明の実施形態2によるライトバルブに照射された光の照度分布を示した図である。
【図24】本発明の実施形態2による図23の各y軸上における相対光量比を示した図である。
【図25】本発明の実施形態2による回動機構の先端形状を示す図である。
【図26】本発明の実施形態3による投射型表示装置の照明光学系の構成図である。
【図27】本発明の実施形態3によるライトバルブに入射する光の光路を示した図である。
【図28】本発明の実施携帯3による第2のレンズアレイと偏光変換素子とを通過する光の軌跡を示した図である。
【図29】本発明の実施形態3によるライトバルブへの光の入射角度とコントラストとの関係図である。
【図30】本発明の実施形態3による回動機構の形状の一例を示す図である。
【図31】本発明の実施形態3による第2のレンズアレイ4bの各セルを通過する光の光量を示す図である。
【図32】本発明の実施形態3による光源3から射出された光の軌跡を示す図である。
【図33】本発明の実施形態3によるライトバルブに照射された光の照度分布を示した図である。
【図34】本発明の実施形態3による回動機構の形状の一例を示す図である。
【図35】本発明の実施形態3による回動機構が図30の形状のときの回動角度と相対光量比との関係を示す図である。
【図36】本発明の実施形態3による回動機構の形状の一例を示す図である。
【図37】本発明の実施形態3による回動機構が図35の形状のときの回動角度と相対光量比との関係を示す図である。
【図38】本発明の実施形態3による回動機構の形状の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について、図面を用いて以下に説明する。
【0011】
〈実施形態1〉
図1は、本発明の実施形態1による投射型表示装置の照明光学系1の構成図である。図1に示すように、照明光学系1は、光源系3とライトバルブ2との間にインテグレータレンズ4、偏光変換素子5、コンデンサレンズ6、フィールドレンズ7、偏光板8から構成される。なお、本発明の実施形態1による投射型表示装置は、ライトバルブ2から出た光をスクリーンに投射するために投射レンズ(図示せず)を備えている。また、ライトバルブ2は、RGBのそれぞれの光路上に備えられており、図1に示す照明光学系1はRGBのそれぞれの光路のうちの1つを代表的に示したものである。
【0012】
ライトバルブ2は、本発明の実施形態では液晶ライトバルブを用いているが、レンズアレイを用いる場合は、DMD(Digital Micro−Mirror Device)や反射型液晶表示素子などであってもよい。
【0013】
光源系3は、ライトバルブ2に光を照射するために備えられ、光源3aと光源3aから射出された光を反射によってインテグレータレンズ4に照射させる反射鏡3bとから構成される。光源3aは、一般的に、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプが用いられるが、LED(Light Emitting Diode)、レーザ、無電極放電ランプなど、発光デバイスであればいかなるものであってもよい。反射鏡3bは、放物面や楕円面に形成されているが、光が偏光変換素子5に集光すればどのような形状、構造であってもよく、特に限定されるものではない。例えば、インテグレータ4に入射させる光を光軸Cとほぼ平行にする場合、反射鏡3bの形状を放物面にするか、または楕円面にするときは光をほぼ平行にするために、光源系3とインテグレータレンズ4との間に凹レンズを配置するなどすればよい(図32参照)。
【0014】
インテグレータレンズ4は、光源系3とライトバルブ2との間の光路上に配置され、光源系3からライトバルブ2に照射する光の照度分布を均一化させるために備えられ、第1のレンズアレイ4aと第1のレンズアレイ4aから離間配置された第2のレンズアレイ4bとから構成される。第1のレンズアレイ4aおよび第2のレンズアレイ4bは、複数の凸レンズが縦横に配置された構成であって、第1のレンズアレイ4aの凸レンズと第2のレンズアレイ4bの凸レンズとはお互いに対応しており、相対して配置される。
【0015】
偏光変換素子5は、偏光変換素子5に入射した光束を1種類の直線偏光光に変換して射出するものであり、x軸方向に適当な間隔をあけて配置されている。図2は、本発明の実施形態1による偏光変換素子5の構成図である。図2に示すように、偏光変換素子5は、光軸C方向(z方向)に対して傾斜(例えば、45度)させて配置した複数の偏光分離膜5aと、偏光分離膜5a間であって光軸C方向(z方向)に対して傾斜(例えば、45度)させて配置した複数の反射膜5bと、偏光変換素子5のライトバルブ2側の面上であって偏光分離膜5aを透過した光が照射される部分にλ/2位相差板5cとから構成されている。偏光変換素子5に入射した光は、偏光分離膜5aによってs偏光光とp偏光光とに分離される。p偏光光は偏光分離膜5aを透過し、λ/2位相差板5cにてs偏光光に変換されて偏光変換素子5から射出される。一方、s偏光光は偏光分離膜5aを反射し、反射膜5bを反射した後に偏光変換素子5から射出される。従って、偏光変換素子5から射出される光束は、ほぼ全てがs偏光光となる。
【0016】
光量調整系9(光量調整機構)は、光路上に配置され、光源系3からライトバルブ2に照射する光の光量を調整するための、一対の観音扉状に回動する遮光体である回動機構9aを有し、第1のレンズアレイ4aと第2のレンズアレイ4bとの間に配置された回動機構9aと、ライトバルブ2に入力される映像信号を検知し、検知結果からライトバルブ2に照射される光量の相対光量比を算出する信号検知部9bと、信号検知部9bによって算出された相対光量比に基づいて回動機構9aの回動を制御する回動制御部9cとから構成されている。図3(b)に示すように、回動機構9aは遮光体9Tおよび9Bから構成され、遮光体9Tおよび9Bは、光量を減少させる(遮光する)方向にくの字状に折れ曲がって形成されている。また、遮光体9Tおよび9Bの先端部は、光の通過を制限する凹状部9gに切り欠いて形成されている。凹状部9aは、凹状曲線形状、放物線形状、半楕円形状、三角形状など、いかなる形状であってもよい。
【0017】
次にコントラストの向上について説明する。映像信号の相対光量比が100%の場合は、回動機構9aによって遮光せずに100%の相対光量で調整を行なう。例えば、映像信号の相対光量比が20%の場合は、回動機構9aによって相対光量比を20%まで遮光することにより、約5倍の細やかな映像信号の調整が可能となる。また、回動機構9aの遮光によって相対光量比を低くすることで、映像信号の相対光量比が0%の信号のときの黒色を遮光しない場合よりもさらに暗い黒にすることが可能である。すなわち、ライトバルブ2の透過率は概ね一定であることから、ライトバルブ2に照射する光量を回動機構9aによって少なくすることにより、スクリーンに投射する映像を暗くすることが可能となってコントラストの向上が図れる。
【0018】
図4(a)は図3(a)の遮光体9Tおよび9Bの回動動作を、図4(b)は図3(b)の遮光体9Tおよび9Bの回動動作を、それぞれ15度ごとに回動させたときの回動動作示す図である。図4(a)および図4(b)に示すように、遮光体9Tおよび9Bの先端のz方向の移動量は、図4(a)の移動量Zaより図4(b)の移動量Zbの方が小さい(Za>Zb)ため、図4(b)の方が回動角度あたりのy方向への遮光体9Tおよび9Bの移動量が大きいことが分かる。従って、図4(b)に示すような遮光体9Tおよび9Bの形状の方が少ない回動角度で相対光量比が100%の照度となる。
【0019】
図5は、回動機構9aが図3の形状のときの回動角度と相対光量比との関係を示す図である。図3(b)におけるγTおよびγBは20度とし、それぞれの回動機構9aの回動角度を2度ごととした。また、回動角度が0度とは、遮光体9Tおよび9Bが完全に閉じたとき、つまり各遮光体9Tおよび9Bが図4の41aおよび41bの状態のときである。曲線50は図3(a)の形状の回動機構9a、曲線51は図3(b)の形状の回動機構9aの、それぞれのシミュレーション結果を示している。図5に示すように、曲線51は曲線50よりも相対光量比が低いときの立ち上がりが早く、回動角度が約75度で相対光量比が100%となっている。動作角度範囲が狭いことから、図3(b)の形状は図3(a)の形状と比較して応答性の高い制御が可能となる。また、曲線50および曲線51より、相対光量比が低いところ以外における回動角度に対する相対光量比の変化は概ね等しいことが分かる。以上のことから、図14に後述するように、相対光量比が低い場合では、遮光体9Tおよび9Bの先端を回動半径方向にくの字状に折れ曲げて形成することによって、照度むらを軽減することが可能となる。また、図5より、図3のように遮光体9Tおよび9Bのそれぞれの先端部に凹状部9gを2つ形成することによって、連続的に光量調整を行なうことが可能であることが分かる。なお、本発明の実施形態では、γTおよびγBを20度としたが任意の角度でもよく、γT=γBの関係でなくとも同様の効果が得られる。また、本発明の実施形態に示される回動機構9aの回動角度とライトバルブ2上の相対光量比との関係は、相対光量比は100%の信号が入力されたときを示しており、回動機構9aの特性のみを示している。
【0020】
図6は、図5における相対光量比が20%のときの遮光体9Tおよび9Bの先端のz方向の位置を示している。図6(a)に示すように、図3(a)の形状のときの回動角度は約24度となりα1≒24度、図3(b)の形状のときの回動角度は約14度となりα2≒34度である。また、図6(b)のα3=γTであり20度である。図6(a)の遮光体9Tおよび9Bの長さをd1、図6(b)の遮光体9Tおよび9Bの回動軸から折れ曲げ部までの長さをd2、折れ曲げ部から先端までの長さをd3とする。以上の条件に基づいて、図3(b)の遮光体9Tおよび9Bの先端のz方向の位置を算出する。
【0021】
図6(a)および(b)より、遮光体9Tおよび9Bのz方向の移動量ZcおよびZdは以下の式(1)および式(2)によって表される。
【0022】
Zc=d1×sin(α1)≒d1×0.41・・・(1)
Zd=d2×sin(α2)+d3×sin(α2−α3)
≒d2×0.56+d3×0.24 ・・・(2)
図4(b)より、d1は式(3)で表される。
【0023】
d1=d2×cos(α3)+d3≒d2×0.94+d3・・・(3)
従って、Zcは式(4)で表されるので、Zc>Zdの条件は式(5)によって満たされる。
【0024】
Zc≒d2×0.39+d3×0.41 ・・・(4)
1>d2/d3 ・・・(5)
従って、d2の長さをd3より短くすることにより、図3(b)の形状は図3(a)の形状よりも照度むらを軽減することが可能となる。照度むらの原因は、遮光体9Tおよび9Bの先端の移動距離だけではないため、式(5)の条件は好ましいが、必ずしも満たす必要はない。
【0025】
図7は、図3(b)の形状で完全に遮光したときのライトバルブ2に照射される光の照度分布を示す図である。完全遮光時において、第2のレンズアレイ4bに入射した光は、ライトバルブ2の概ね全体(7aの領域)とx方向の両端周辺部(7bの領域)を均一に重畳して照射されているため、照度むらは生じない。7aの領域は、第2のレンズアレイ4bのセルの開口部の全体が概ね開口しているときのセル(図3(b)の30の領域)からライトバルブ2に照射された光の照度分布を示し、7bの領域は、第2のレンズアレイ4bのセルの開口部が約半分開口となっているときのセル(図3(b)の31の領域)からライトバルブ2に照射された光の照度分布を示している。
【0026】
図8は、折れ曲げ部がない遮光体9Tおよび9Bに凹状部を形成しないときの回動角度と相対光量比との関係を示す図である。回動角度を2度ごとにシミュレーションを行なった。曲線80より、回動角度に対する相対光量比の変化は連続的ではなく、平坦部が4箇所(8a、8b、8c、8d)存在していることが分かる。
【0027】
図9は、第2のレンズアレイ4bの近傍の光源像を示す図である。図9は256階調のグレースケールで表している。図9より、9a、9b、9c、9dのそれぞれは+y方向の光源像間の暗部を示している。図8における4箇所8a、8b、8c、8dの平坦部は、図9に示す4箇所の光源像間の暗部9a、9b、9c、9dに対応しており、光源像間の暗部が図8の平坦部の影響であることが確認できる。従って、光量の変化を連続的にするためには、光源像間の明暗部を同時に遮光する必要がある。図3に示すように、遮光体9Tおよび9Bに凹状部を形成すると図5のように光量を連続的に変化させることが可能であることから、遮光体9Tおよび9Bに凹状部を形成することによって、光源像間の明暗部を同時に遮光することが可能となる。
【0028】
図10は、遮光体9Tおよび9Bの形状の一例を示す図であり、1つの凹状部9gを光軸Cに対して対称に形成している。このような形状で完全に遮光したときは、ライトバルブ2上の照射分布は概ね均一である。
【0029】
図11は、遮光体9Tおよび9Bが図10の形状のときの回動角度と相対光量比との関係を示す図である。図10における遮光体9Tおよび9BのγTおよびγBを20度とする。曲線110は図10の形状の回動機構9aのシミュレーション結果である。曲線80は図8の凹状部を形成しない形状の回動機構9aのシミュレーション結果を示しており、凹状部9gの形成の有無による効果を比較している。比較の容易のために、曲線80は曲線110と重なり合うようにシフトしている。図11より、遮光体9Tおよび9Bに凹状部9gを1つ形成した場合であっても、凹状部を形成していない遮光体9Tおよび9Bよりも連続的に光量調整することができる。すなわち、遮光体9Tおよび9Bに少なくとも1つの凹状部9gを形成することは、連続的な光量調整に効果がある。ただし、図5の曲線51および図11の曲線110より、凹状部を2つ形成した場合の方が、凹状部を1つ形成した場合より、光量が滑らかに変化しており、より滑らかな光量調整を行うためには複数の凹状部を形成することが好ましい。
【0030】
図12は、遮光体9Tおよび9Bが遮光時に、第1のレンズアレイ4a側に回動するときにおける光の軌跡、特に第1のレンズアレイ4aの最も+y方向に位置するレンズセルを通過する光の軌跡を示す図である。ここでは遮光体9Tのみについて説明するが、遮光体9Bについても同様である。120aはレンズセルの中心より+y側を通過する光の軌跡、120bはレンズセルの中心を通過する光の軌跡、120cはレンズセルの中心より−y側を通過する光の軌跡を示している。図12に示すように、遮光体9Tの折り曲げ角度が小さいか、または折り曲げ位置が回動軸から遠い場合は、遮光体9Tを反射した不要な光が第2のレンズアレイ4bを通過して、照明光学系1の筐体(図示せず)内を多重反射することにより、スクリーン上に現れる可能性がある。よって、図12に示すような遮光体9Tおよび9Bの開閉方向ではなく、遮光時に、第2のレンズアレイ4b側に回動する遮光体9Tおよび9Bの方が好ましい。
【0031】
図13(a)は、遮光体9Tおよび9Bのx方向およびy方向の寸法が第1のレンズアレイ4aおよび第2のレンズアレイ4bよりも小さいときの光の軌跡を示す図である。また、図13(b)は、各遮光体9Tおよび9Bのx方向およびy方向の寸法と第2のレンズアレイ4bのx方向およびy方向の寸法を比較した図であり、各遮光体9Tおよび9Bのx方向およびy方向の寸法が、第2のレンズアレイ4bのx方向およびy方向の寸法より小さいことを示す。ここでは遮光体9Tのみについて説明するが、遮光体9Bについても同様である。130aは第1のレンズアレイ4aの光軸Cから+y方向に5つ目に位置するレンズセルの中心を通過する光の軌跡、130bは第1のレンズアレイ4aの光軸Cから+y方向に2つ目かつ+x方向に3つ目に位置するレンズセルの中心より+x方向側を通過する光の軌跡を示している。図13(a)に示すように、遮光体9Tおよび9Bの回動軸よりも+y側に位置する第1のレンズアレイ4aを通過した光は、遮光体9Tおよび9Bの当たることなく+y側を通過していくことが分かる。従って、第1のレンズアレイ4aから射出された光を遮光体9Tおよび9Bによって光量調整するためには、遮光体9Tおよび9Bのx方向およびy方向の寸法は第1のレンズアレイ4aおよび第2のレンズアレイ4bよりも大きいことが好ましい。第1のレンズアレイ4aよりも第2のレンズアレイ4bの方が寸法が大きいときは、遮光体9Tおよび9Bのx方向およびy方向の寸法は第2のレンズアレイ4bよりも大きくすることが好ましいが、第2のレンズアレイ4bと偏光変換素子5との間に遮光板を備えて第2のレンズアレイ4bを通過した不要光を遮光することが可能である。このことから、遮光体9Tおよび9Bのx方向およびy方向の寸法は、第1のレンズアレイ4aおよび第2のレンズアレイ4bよりも必ずしも大きい必要はない。
【0032】
図14は、ライトバルブ2の中心から逆光線追跡を行なったときの光の軌跡を示した図である。140は光の軌跡を示し、141の領域は140の光が集光する位置を示している。図14に示すように、第1のレンズアレイ4a近傍の像がライトバルブ2に結像することが確認できることから、ライトバルブ2と第1のレンズアレイ4aの入射面近傍は共役関係にある。よって、141の領域の近傍に遮光体9Tおよび9Bの先端が位置するときに、遮光体9Tおよび9Bの先端がライトバルブ2に結像し、ライトバルブ2上の中心付近であってx方向にライン状の照度むらが生じてしまう。従って、遮光体9Tおよび9Bの先端を第2のレンズアレイ4bに近づける、すなわち回動軸を第2のレンズアレイ4bの近傍に配置することが好ましい。
【0033】
また、遮光体9Tおよび9Bの先端部に注目すると、遮光体9Tおよび9Bを光量を減少させる(遮光する)方向にくの字状に折れ曲げて形成する方が折れ曲げないときよりもy方向に結像する幅(図15のdy1および図16のdy2参照)が狭くなるため、ライトバルブ2上に生じる照度むらを軽減することが可能となる。従って、遮光体9Tおよび9Bを光量を減少させる(遮光する)方向にくの字状に折れ曲がって形成することによって、ライトバルブ2上に生じる照度むらを軽減することが可能となる。
【0034】
図15および図16は、図3(a)および図3(b)の形状のときにおける、ライトバルブ2上に遮光体9Tおよび9Bの先端の結像が生じるときの遮光体9Tおよび9Bの回動位置を示す図である。ライトバルブ2上に結像が生じる条件として、遮光体9Tおよび9Bの先端は、第2のレンズアレイ4bの光軸Cから+または−y方向に2つ目のレンズセルの曲率中心位置と同じ位置であって、第1のレンズアレイ4aの近傍に位置する。150、151、160、161はいずれも、第2のレンズアレイの光軸Cから+または−y方向に2つ目のレンズセルの曲率中心を通る軸を示している。152、162はいずれも、遮光体9Tの先端部分を示している。
【0035】
遮光体9Tおよび9Bの先端を、第2のレンズアレイ4bの光軸Cから+または−y方向に2つ目のレンズセルの曲率中心位置と同じ位置にする理由について説明する。まず、第2のレンズアレイ4bの光軸Cから+または−y方向に1つ目のレンズセルの曲率中心位置と同じ位置では、照度が低いためにライトバルブ2上に生じた照度むらの確認が難しい。また、第2のレンズアレイ4bの光軸Cから+または−y方向に3つ目のレンズセルの曲率中心位置と同じ位置では、光軸Cから+または−y方向に1つ目のレンズセルと2つ目のレンズセルから照度むらのない光がライトバルブ2上に重畳されるため、3つ目のレンズセルによるライトバルブ2上の照度むらが相対的に低くなって確認が難しくなる。従って、遮光体9Tおよび9Bの先端の結像がライトバルブ2上に確認されやすい条件として、遮光体9Tおよび9Bの先端を、第2のレンズアレイ4bの光軸Cから+または−y方向に2つ目のレンズセルの曲率中心位置と同じ位置に配置した。
【0036】
図17(a)は、図3(a)の凹状部9gがない形状であって図15の状態のときのライトバルブ2上の照度分布のシミュレーション結果を示しており、図17(b)は、図3(b)の凹状部がない形状であって図16の状態のときのライトバルブ2上の照度分布のシミュレーション結果を示している。図17に示すように、170aおよび170bは照度が低い領域を示し、171aおよび171bはライトバルブ2の中心を通るy軸を示している。170aと170bとを比較すると、170bの方が照度むらが少ないことが確認できる。これは、図15のdy1と図16のdy2との関係がdy1>dy2となっているためである。従って、遮光体9Tおよび9Bを光量を減少させる(遮光する)方向にくの字状に折れ曲がって形成することによって、ライトバルブ2上に生じる照度むらを軽減することが可能となる。このことから、前述した式5の条件を満たさなくても、遮光体9Tおよび9Bを折れ曲げて形成すれば照度むらを軽減できる。
【0037】
図18は、図3(b)の形状であって図16の状態のときのライトバルブ2上の照度分布のシミュレーションの結果を示している。図18に示すように、ライトバルブ2の中心からx方向には照度が低い領域はほとんどない。180はライトバルブ2の中心からy方向の照度が低い領域を示し、181はライトバルブ2の中心を通るy軸を示している。遮光体9Tおよび9Bの凹状部9gが第2のレンズアレイ4bの集光位置となって180の領域に僅かな照度むらが確認できるが、ライトバルブ2の全体の照度分布は概ね均一であるため問題ない。従って、遮光体9Tおよび9Bを光量を減少させる(遮光する)方向にくの字状に折り曲げ、遮光体9Tおよび9Bの先端部に凹状部を少なくとも1つ形成し、さらに先端の凹状部以外の平坦部を少なくすることによって、ライトバルブ2上に結像される先端形状の重畳が減り、照度むらを大きく軽減することが可能となる。
【0038】
図19は、図17(a)、図17(b)、図18のそれぞれにおいて示したy軸である171a、171b、181上におけるy方向の相対光量比を示した図である。横軸は図18に示すライトバルブ2の縦軸に対応する。図19に示すように、190は171a上における相対光量比、191は171b上における相対光量比、192は181上における相対光量比をそれぞれ示している。図19より、ライトバルブ2のy方向の中心である0.5Yにおける相対光量比の値を比較すると、190<191<192となっており、照度むらも190、191、192の順に軽減していることが確認できる。従って、遮光体9Tおよび9Bを光量を減少させる(遮光する)方向にくの字状に折れ曲がって形成し、先端部を凹状部に形成することによって照度むらを軽減することができる。
【0039】
なお、本発明の実施形態では、図4(b)の41bの場合において、図6に示す角度をγT=α2=α3としているが、α3>α2=γTとすることによって、図16に示すdyの幅をさらに小さくすることが可能となるため、図4(b)に示す形状よりもさらに照度むらを軽減することができる。また、遮光体9Tおよび9Bの折り曲げは1箇所のみであるが、図16に示すdyの幅が小さくなるのであれば2箇所折り曲げてもよい。そうすることによって照度むらを軽減することができる。さらに、図3(b)では、折り曲げ位置を第2のレンズアレイ4bの光軸Cを中心としてy方向に2つ目のレンズセル近傍の位置としているが、いかなる位置で折り曲げてもよい。
【0040】
以上のことから、回動機構9aの遮光体9Tおよび9Bを光量を減少させる(遮光する)方向にくの字状に折れ曲がって形成し、先端部を少なくとも1つの凹状部に切り欠いて形成することによって、ライトバルブ2上に照度むらを生じさせることのない、連続的な光量調整が可能となる。
【0041】
〈実施形態2〉
図20は、本発明の実施形態2による投射型表示装置の照明光学系1bの構成図である。本発明の実施形態2では、回動機構9aの遮光体9Tおよび9Bの先端部が刃形状部に削いで形成されていることを特徴とする。それ以外の部分についての構成および動作については実施形態1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0042】
図21は図15と同図であり、図22は図15と遮光体9Tおよび9Bの配置位置は同様である。また、210、211、220、221はいずれも、第2のレンズアレイの光軸Cから+または−y方向に2つ目のレンズセルの曲率中心を通る軸を示している。図22に示すように、遮光体9Tおよび9Bの先端部は220より光軸C側が削られて刃形状部に形成されている。こうすることにより、dyの幅を小さくしている。なお、遮光体9Tおよび9Bの幅tは、回動機構9aの回動に対する遮光体の強度を考慮し、通常0.5mm程度である。212、222はいずれも、遮光体9Tの先端部分を示している。
【0043】
図23(a)は、図3(a)の凹状部9gがない形状であって図21の状態のときのライトバルブ2上の照度分布のシミュレーション結果を示しており、図23(b)は、図3(a)の凹状部がない形状であって図22の状態のときのライトバルブ2上の照度分布のシミュレーション結果を示している。ここで、t=0.5mmとする。図23に示すように、230aおよび230bは照度が低い領域示し、231aおよび231bはライトバルブ2の中心を通るy軸を示している。230aと230bとを比較すると、230bの方が照度むらが大きく改善していることが確認できる。従って、図22に示すように、遮光体9Tおよび9Bの先端部を第2のレンズアレイの光軸Cから+または−y方向に2つ目のレンズセルの曲率中心を通る軸より光軸C側を刃形状部に削いで形成することによって照度むらを大きく軽減することが可能である。
【0044】
図24は、図23(a)、図23(b)のそれぞれにおいて示したy軸である231a、231b上におけるy方向の相対光量比を示した図である。図24に示すように、240は231a上における相対光量比、241は231b上における相対光量比をそれぞれ示している。図24より、ライトバルブ2のy方向の中心である0.5Yにおける相対光量比の値を比較すると、241の方が240よりも高くて照度むらが大きく軽減していることが分かる。従って、遮光体9Tおよび9Bの先端部を第2のレンズアレイの光軸Cから+または−y方向に2つ目のレンズセルの曲率中心を通る軸より光軸C側を刃形状部に削いで形成することによって照度むらを大きく軽減することが可能である。
【0045】
図25は、遮光体9Tおよび9Bの先端部の形状を示した図である。250、251はいずれも、第2のレンズアレイの光軸Cから+または−y方向に2つ目のレンズセルの曲率中心を通る軸を示している。図25より、遮光体9Tおよび9Bの先端部の角度がβよりも小さいことが好ましい。
【0046】
以上のことから、遮光体9Tおよび9Bの先端部に少なくとも1つの凹状部を切り欠いて形成し、さらに先端部を刃形状部に削いで形成することによって、ライトバルブ2上に照度むらを発生させることなく連続的な光量調整を行なうことが可能となる。
【0047】
〈実施形態3〉
図26は、本発明の実施形態3による投射型表示装置の照明光学系1cの構成図である。本発明の実施形態3では、遮光体9Tおよび9Bの先端部の形状が、小さい開口面積で、ライトバルブ2上の照度むらを発生させずにかつコントラストを十分高くすることが可能であることを特徴としている。それ以外の部分についての構成および動作については実施形態1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0048】
第2のレンズアレイ4bから射出した光270は、大きな入射角度でライトバルブ2に入射する。このとき、ライトバルブの特性上、ライトバルブ2に入射する光の角度が大きくなるに従ってコントラストが低下する(図29参照)ので、遮光体9Tおよび9Bの形状は、ライトバルブ2に対する入射角が大きい光、特にx方向の入射光を遮光することが好ましい。
【0049】
図28に第2のレンズアレイ4bと偏光変換素子5のxy平面の正面図(a)および側面図(b)の一例を示す。図28(c)は、図2をさらに詳細に図示した図である。また、図28(c)には、第2のレンズアレイ4bに入射する光の軌跡を示す。ここで、点線部は偏光変換素子5を示し、グレー色はλ/2位相差板5cを示す。通常、偏光変換はλ/2位相差板5cの領域のみに光を集光させることにより、効率よく偏光変換を行なう。従って、光線270、271、272、273、274、275が偏光変換される光線となる。図28(c)より、入射したp+sの直線偏光は、p偏光光は偏光変換素子5に入射後、λ/2位相差板5cによりs偏光光に変換されるため、入射位置と等しいx方向位置にて偏光変換素子5を射出されるが、s偏光光と比較して光軸からdx(275a−275b間距離)離れた位置に射出することとなる。従って、光軸からx方向に離れた光の入射を遮光することがコントラストの向上には不可欠となる。つまり、光線270、275がコントラストに影響を及ぼす光となる。つまり、光軸Cに近いx方向の位置に光線を入射させることがコントラスト向上の条件となる。
【0050】
図30は、遮光体9Tおよび9Bの形状を示している。遮光体9Tおよび9Bの先端の凹状部は面積が異なる2つの凹状部である9gおよび9hを含み、9gは9hより開口面積が小さい。また、9gおよび9hは、遮光体9Tおよび9Bを閉じたときに光軸Cに対して点対称の位置で遮光体9Tおよび9Bに形成されている。
【0051】
図31は、第2のレンズアレイ4bの各セルを通過する光の光量をシミュレーションによって算出し、算出結果を各セルごとに数値として示した図である。図30のような形状にすることによって、x方向のコントラストの差異を軽減させている。なお、図31では、第2のレンズアレイ4bは上下左右が対称であるため第1象限部分を代表させている。
【0052】
図32は、光源3aから射出した光が反射鏡3bで反射されている様子をシミュレーションで示した図である。反射鏡3bは楕円面とし、光源系3から射出した光を凹レンズ310によって平行にしている。通常、光軸C付近には光源のバルブが存在し、311はその開口部を示している。
【0053】
図32に示すように開口部が311となっているため、図31に示すV1H1のセルは光源系3から射出される光の量が少なくなっている。図30の形状で完全に遮光しているとき、凹状部9gはライトバルブ2のx方向の両端部を照射し、凹状部9hはライトバルブ2の中央部を照射している。すなわち、ライトバルブ2のx方向の両端部および中央部に照射される光の相対光量を等しくして重ね合わせることによって、均一な照度分布となる。例えば、凹状部9gと凹状部9hの形状が同一の場合では、図33に示すように、ライトバルブ2の中央部の照度が低くなって照度むらが生じる。従って、凹状部9hは凹状部9gよりも開口面積が大きい必要がある。図33において、凹状部9gから射出した光はライトバルブ2上の32bの領域を照射し、凹状部9hから射出した光はライトバルブ2上の32aの領域を照射する。
【0054】
図34にコントラストを考慮した遮光体9Tおよび遮光体9Bの形状を示す。凹状部9iは、直角三角形形状に開口部を有してセル(V1H1)内に形成され、ライトバルブ2上の照度分布は均一となる。しかし、図31によりセル(V1H1)を通過する光量が少ないことから、100%の映像信号をスクリーン上に表示した場合に、光量が少ないため、スクリーン上に投影される映像のコントラスト感が十分に得られなくなる。
【0055】
以上より、通常、ライトバルブ2上で照度むらを発生させないためには、開口部が8セル程度必要となる。しかし、形状および開口に入射する相対光量比を考慮することにより、約4セルでライトバルブ2上に照度むらを発生させないことが可能となる。つまり、開口面積が大きい凹状部9hのx方向の頂点を、光軸Cに最も近いセル(V1H1)のx方向中心とし、開口面積が小さい凹状部9gの頂点を、光軸Cに最も近いセル(V1H1)と光軸Cの逆に隣接するセル(V2H1)との接合部とすることにより、約4セルでライトバルブ2上に照度むらを発生させずにコントラストを向上させることが可能となる。
【0056】
図35は、遮光体9Tおよび9Bが図30の形状のときの回動角度と相対光量比との関係を示す図である。曲線331は図30の形状の回動機構9aのシミュレーション結果である。曲線330は図8の凹状部を形成しない形状の回動機構9aのシミュレーション結果を示している。比較の容易のために、曲線330は曲線331と重なり合うようにシフトしている。図35より、遮光体9Tおよび9Bを図30のような形状にすることによって、回動角度に対して概ね連続的にライトバルブ2への光量調整が可能であることが確認できる。従って、遮光体9Tおよび9Bの先端部の形状を図30のようにすることによって、ライトバルブ2上に照度むらを発生させることなく連続的に光量調整が可能であり、コントラストを向上させることができる。
【0057】
本実施形態では、楕円形状を示したが、本実施形態と同様に開口面積および頂点位置を考慮すれば、三角形状に関しても同様の効果が得られる。
【0058】
図36は、遮光体9Tおよび9Bの形状を示している。遮光体9Tおよび9Bの先端の凹状部は三角形状に形成されている。図36の形状は、相対光量比が30%以下のときに光量調整を細かく行なうことが可能であることを特徴とする。凹状部9gを第2のレンズアレイ4bのx方向の両側に配置することによって、相対光量比の低い部分を細かく制御することが可能となる。また、完全に遮光したときの第2のレンズアレイ4bの使用セル数は少ないが、図36のような三角形の形状にすることによって照射領域の重ね合わせによってライトバルブ2上の照度分布は均一となるため、照度むらは生じない。
【0059】
図37は、遮光体9Tおよび9Bが図36の形状のときの回動角度と相対光量比との関係を示す図である。曲線351は図36の形状の回動機構9aのシミュレーション結果である。曲線350は図38の形状の回動機構9aのシミュレーション結果を示している。比較の容易のために、曲線350は曲線351と重なり合うようにシフトしている。図37より、遮光体9Tおよび9Bを図36のような形状にすることによって、相対光量比が10%〜30%付近では傾きが緩やかな曲線となっている。このように緩やかな曲線になる理由としては、回動機構9aの回動角度が低いときにおいて、図31に示すV1H1のレンズセルが遮光されていくので、照度変化を小さくすることが可能だからである。相対光量比が10%〜30%の低い領域では、人間の目視による相対光量比の変化の感度が特に高いため、回動機構9aによる細かい光量調整は重要である。従って、図36のような形状にすることによって、30%よりも低い相対光量比での光量調整を細かく制御することが可能となる。
【0060】
以上のことから、遮光体9Tおよび9Bを図36に示すような形状にすることによって、相対光量比が低い場合において細かく光量調整をすることが可能となる。
【符号の説明】
【0061】
1 照明光学系、2 ライトバルブ、3 光源系、3a 光源、3b 反射鏡、4 インテグレータレンズ、4a 第1のレンズアレイ、4b 第2のレンズアレイ、5 偏光変換素子、5a 偏光分離膜、5b 反射膜、6 コンデンサレンズ、7 フィールドレンズ、8 偏光板、9 光量調整系、9a 回動機構、9b 信号検知部、9c 回動制御部、9B 遮光体、9T 遮光体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライトバルブと、
前記ライトバルブに照射する光を発生する光源と、
前記光源と前記ライトバルブとの間の光路上に配置され、前記光源から前記ライトバルブに照射する光の照度分布を均一化させるインテグレータレンズと、
前記光路上に配置され、前記光源から前記ライトバルブに照射する光の光量を調整するための、一対の観音扉状に回動する遮光体を有する光量調整機構と、
を備え、
前記遮光体は、先端部が凹状曲線形状の凹状部に切り欠いて形成され、前記凹状部は、面積が異なる2つの凹状部を含み、該2つの凹状部は前記遮光体を閉じたときに光軸に対して点対称の位置で前記遮光体に形成されることを特徴とする投射型表示装置。
【請求項2】
前記インテグレータレンズは、前記光源側に備えられた第1のレンズアレイと、前記ライトバルブ側に備えられた第2のレンズアレイとから構成され、
前記光軸方向であるz軸と、前記z軸に対して直交して水平方向であるx軸と、前記z軸と前記x軸とに対して直交して垂直方向であるy軸とからなるxyz座標系を想定したときの面積が異なる2つの前記凹状部において、
開口面積が大きい方の前記凹状部の頂点は、前記第2のレンズアレイの前記光軸に最も近いx軸方向のレンズセルの中心からy軸方向に位置し、開口面積が小さい方の前記凹状部の頂点は、前記レンズセルと、x軸上であって前記レンズセルの前記光軸側と相対する側のレンズセルとの接合部からy軸方向に位置することを特徴とする、請求項1に記載の投射型表示装置。
【請求項1】
ライトバルブと、
前記ライトバルブに照射する光を発生する光源と、
前記光源と前記ライトバルブとの間の光路上に配置され、前記光源から前記ライトバルブに照射する光の照度分布を均一化させるインテグレータレンズと、
前記光路上に配置され、前記光源から前記ライトバルブに照射する光の光量を調整するための、一対の観音扉状に回動する遮光体を有する光量調整機構と、
を備え、
前記遮光体は、先端部が凹状曲線形状の凹状部に切り欠いて形成され、前記凹状部は、面積が異なる2つの凹状部を含み、該2つの凹状部は前記遮光体を閉じたときに光軸に対して点対称の位置で前記遮光体に形成されることを特徴とする投射型表示装置。
【請求項2】
前記インテグレータレンズは、前記光源側に備えられた第1のレンズアレイと、前記ライトバルブ側に備えられた第2のレンズアレイとから構成され、
前記光軸方向であるz軸と、前記z軸に対して直交して水平方向であるx軸と、前記z軸と前記x軸とに対して直交して垂直方向であるy軸とからなるxyz座標系を想定したときの面積が異なる2つの前記凹状部において、
開口面積が大きい方の前記凹状部の頂点は、前記第2のレンズアレイの前記光軸に最も近いx軸方向のレンズセルの中心からy軸方向に位置し、開口面積が小さい方の前記凹状部の頂点は、前記レンズセルと、x軸上であって前記レンズセルの前記光軸側と相対する側のレンズセルとの接合部からy軸方向に位置することを特徴とする、請求項1に記載の投射型表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図17】
【図18】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図17】
【図18】
【図23】
【公開番号】特開2012−194578(P2012−194578A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−136731(P2012−136731)
【出願日】平成24年6月18日(2012.6.18)
【分割の表示】特願2008−32978(P2008−32978)の分割
【原出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年6月18日(2012.6.18)
【分割の表示】特願2008−32978(P2008−32978)の分割
【原出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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