説明

投影装置

【課題】装置を大型化することなく低速走査方向の点像のずれを小さくすることができる投影装置を提供する。
【解決手段】R,G,Bレーザ光の点像SPR,SPG,SPBは楕円形状とされている。点像SPR,SPBは長軸LZR,LZBが低速走査方向と平行にされている。これにより、点像SPR,SPBの低速走査方向の幅を高速走査方向の幅よりも広くする。こうすることで、点像SPR,SPG,SPBの低速走査方向へのずれが小さくなり、低速走査方向において点像SPR,SPG,SPBの重なる領域が増大する結果、階調性の高い画像を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の光源から射出された光を走査する投影装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、発光効率の優れたレーザダイオードの開発や、二次元走査可能なMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーの開発等によって、小型プロジェクターの開発が進んでいる。こうした小型プロジェクターにおいては、小型化を図るために各光学部品の調整機構をできる限り排除し、装置自体で公差や誤差を解消することが望まれている。例えば、特許文献1では、装置の小型化を図ることを目的として、プリズムを使用して3色の光を合成する構成が開示されている。
【0003】
ところで、MEMSミラーを用いた小型のプロジェクターにおいては、指向性のよい光源からの光が平行化された後、MEMSミラーによって2次元に走査され、スクリーン上に点像が投影されている。MEMSミラーは、例えば水平査方向と垂直査方向との2つの方向に光を走査し、スクリーンに二次元の静止画像又は動画を再生する。ここで、水平走査は、垂直走査よりも高速であるため、水平走査方向を高速走査方向、垂直走査方向を低速走査方向と呼ぶ。
【特許文献1】US7167315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、複数の光を合成してスクリーンに投影する場合、各光の点像がずれると階調性が劣化するという問題が発生する。この場合、高速走査方向の点像のずれは、各光源を駆動するための駆動信号を位相制御することによって解消することが可能である。
【0005】
一方、垂直走査には水平帰線期間が含まれているため、位相制御によって低速走査方向の点像のずれを解消することは困難であった。
【0006】
本発明の目的は、装置を大型化することなく低速走査方向の点像のずれを小さくすることができる投影装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一局面による投影装置は、複数の光源を含む射出部と、各光源から射出される光を合成する合成部と、前記合成部により合成された合成光を所定の高速走査方向に走査すると共に、前記合成光を前記高速走査方向と交差する所定の低速走査方向に走査する走査部とを備え、前記射出部は、前記合成光を構成する少なくとも1つの光である注目光の投影面上の点像の低速走査方向の幅を、前記点像の高速走査方向の幅よりも広くすることを特徴とする。
【0008】
この投影装置においては、複数の光源から射出された各光のうち少なくとも1つの光の点像は、低速走査方向の幅が、高速走査方向の幅より広くされているため、装置を大型化することなく低速走査方向の各光の点像のずれを小さくすることができる。これにより、低速走査方向において各光の点像の重なる領域が増大する結果、階調性の高い画像を得ることができる。
【0009】
(2)前記注目光の点像は、楕円形状であり、長軸と前記低速走査方向とのなす角θが以下の条件式を満足することが好ましい。
【0010】
この投影装置においては、注目光の点像の長軸と低速走査方向とのなす角θが45度以下であることを規定している。θが45度を超えると高速走査方向の点像の幅が広くなり、低速走査方向の点像のずれが大きくなってしまう。また、θが45度を超えると注目光のいずれかの点像が低速走査方向へシフトした場合、低速走査方向へシフトした点像と他の光の点像との重なる領域が高速走査方向へも同時にシフトしてしまい、各光の点像は互いに重なりにくくなってしまう。
【0011】
ここで、θが小さければ点像の長軸と短軸との比を小さく保ちつつも低速走査方向の点像の幅を確保することができる。例えば、θが30度であればθが45度の場合に比べてcos30/cos45(およそ1.22倍)程度、低速走査方向の点像の幅を広くすることができる。よって、θは30度以下であることが好ましい。また、θが20度であればθが45度の場合に比べておよそ1.33倍程度、低速走査方向の点像の幅が広くなる。よって、θは20度以下であることがより好ましい。
【0012】
また、θが5度以下であればθが45度の場合に比べて1.41倍程、低速走査方向への点像の幅を広くすることができる。よって、θは5度以下が更に好ましく、最も好ましくはθ=0度である。
【0013】
(3)前記走査部は、2次元走査ミラーにより構成されていることが好ましい。
【0014】
この投影装置においては、2次元走査ミラーを備えているため、コンパクトでありながら高速走査と低速走査との2次元走査を容易に行うことができる。
【0015】
(4)前記注目光の点像は、楕円形状であり、長軸が前記低速走査方向に平行であることが好ましい。
【0016】
この投影装置においては、注目光の点像は楕円形であり、点像の長軸は低速走査方向に平行であることを規定している。楕円形の点像の長軸と低速走査方向とを平行にすることで、低速走査方向の点像の幅を最も広くすることができ、より階調性の高い画像を得ることができる。
【0017】
(5)前記複数の光源は、それぞれ、赤、緑、及び青の光を射出する3つの光源により構成されていることが好ましい。
【0018】
この投影装置においては、複数の光源が赤、緑、青の光を射出する3つの光源であることを規定している。赤、緑、青の3色を光源とすることで、フルカラーの画像を得ることが可能となる。
【0019】
(6)前記赤、緑、及び青の光の各点像の前記低速走査方向の幅は、前記青の光の点像が最も広いことが好ましい。
【0020】
この投影装置においては、赤、緑、青の3つの光のうち、青の光の点像の低速走査方向の幅を最も広くしたことを規定している。人の目は緑色の感度が高いため、緑の低速走査方向の幅を最も広くすると緑の点像が目立ってしまい、画質が低下する。また、赤よりも青の方が暗色であるため、青の点像は赤の光の点像よりも目立ちにくい。つまり、赤、緑、青のうち青の光の点像が最も目立たない。よって、青の光の点像の低速走査方向の幅を広くすることで、画質の低下を防止すると同時に各光の点像のずれを小さくすることができる。
【0021】
(7)前記赤、緑、及び青の光の各点像は、前記低速走査方向の幅が前記高速走査方向の幅より広いことが好ましい。
【0022】
この投影装置においては、赤、緑、青の光の各点像において、高速走査方向の幅よりも低速走査方向の幅が広くされている。そのため、低速走査方向の点像のずれをより小さくすることができる。
【0023】
(8)前記注目光の点像は、前記注目光以外の点像よりも長軸が長いことが好ましい。
【0024】
この投影装置においては、注目光の点像として、注目光以外の光の点像よりも低速走査方向の幅の広い点像が採用されている。これにより、各光の点像のずれを小さくすることができる。そして、色ずれの小さな点像を走査することによって、階調性の高い画像を得ることが可能となる。
【0025】
(9)前記注目光の点像は、長軸が前記注目光以外の少なくとも1つの光の点像の長軸と直交していることが好ましい。
【0026】
この場合、注目光の点像の長軸と注目光以外の光の点像の長軸とを直行させることによって、注目光以外の光の高速走査方向の幅が広くなり、高速走査方向の点像のずれを小さくすることができる。特に、赤、緑、青の3色を用いてフルカラー画像を再生する場合、低速走査方向と高速走査方向とのずれが同時に起きると3色の光の点像のずれが増大し、白色の再現性が低下し、階調性の高い画像を得ることができなくなる。そこで、上記構成を採用することで、階調性の高い画像を得ることができる。
【0027】
(10)前記射出部は、各光源から射出された光を平行化する平行化部を含み、前記平行化部は、非球面レンズと前記非球面レンズを固定するレンズ固定部とを備え、前記レンズ固定部は、前記非球面レンズの位置が調節可能であることが好ましい。
【0028】
この投影装置においては、非球面レンズを用いることによって像点への収差を少なくすることが可能となり、像点をより最適な楕円形状とすることが可能である。また、レンズ固定部は、非球面レンズの位置が調節可能な形状を有している。そのため、非球面レンズの位置を調整して、像点の向きを調節することが可能となり、より階調性の高い画像を得ることができる。
【0029】
(11)前記レンズ固定部は、前記非球面レンズが載置される凹部を備え、前記非球面レンズは、前記凹部に接着剤を介して接着されていることが好ましい。
【0030】
この場合、レンズ固定部には非球面レンズを固定するための凹部が設けられ、非球面レンズはこの凹部に接着剤を介して取り付けられるため、点像の収差を少なくすることが可能となり、点像をより最適な楕円形状とすることが可能となる。また非球面レンズを接着剤で凹部に固定することにより、種々の非球面レンズを配置することができる。特に、赤、緑、青の3色を用いてフルカラー画像を再生する場合、3色の光源の光を合成させる必要がある。この場合、非球面レンズの光源に対する位置を任意に調節することによって3色の光の光軸を合せることが容易となる。
【0031】
(12)前記光源を固定する光源固定部と、前記光源固定部に一体形成された平面部と、前記平面部に一体形成されたミラー固定部とを更に備え、前記合成部は、前記ミラー固定部に固定されたミラーにより構成されていることが好ましい。
【0032】
この場合、合成部がミラーにより構成されているため、波長の異なる光の光路をミラーによって曲げることで、これらの光の光軸を容易に一致させることができる。また、平面部は、光源固定部に一体に形成されているため、光源から射出される光の光軸に対する平面部の傾きを公差程度以下にすることが可能となる。そして、平面部と一体形成されたミラー固定部に合成部を構成するミラーが取り付けられているため、波長の異なる光の光軸を精度良く一致させることができる。
【0033】
(13)前記複数の光源のうち、少なくとも1つの光源は、直交する2方向における発散角度が異なることが好ましい。
【0034】
この場合、光源の直行する二方向の発散角度に差を持たせることによって、像点を容易に楕円形状とすることができる。
【0035】
(14)前記注目光の点像は、楕円形状であり、長軸の長さRと、短軸の長さrとが以下の条件式を満足することが好ましい。
【0036】
1.5≦R/r≦6
R/rが6を超えると、注目光の点像が隣接画素の点像と干渉するおそれがある。そのため、R/r≦6とすることで、この干渉を抑制することができる。また、R/rが1.5を下回ると、注目光の低速走査方向の点像の幅が確保することが困難になり、低速走査方向の点像のずれを小さくすることが困難になる。そのため、R/r≧1.5とすることで注目光の低速走査方向の点像のずれを小さくすることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、装置を大型化することなく低速走査方向の点像のずれを小さくすることができる投影装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1による投射装置について説明する。図1は本発明の実施の形態1による投射装置の上面視からの内部構成図である。図2は図1に示す投射装置の側面視からの内部構成図を示している。図3は図1に示す投射装置の内部構成の斜視図を示している。
【0039】
図1〜図3に示すように本投射装置は、例えばR,G,Bの3色のレーザ光を二次元走査することでスクリーンに出力画像を投影するプロジェクタであり、ベース部材BS(平面部の一例)、Rレーザ光源61、Gレーザ光源62、Bレーザ光源63、レンズ81〜83(射出部に含まれ平行化部の一例)、ミラー71〜75(ミラー71〜73は合成部の一例)、走査部50等を備えている。なお、図1〜図3においてx方向は縦方向を示し、y方向は横方向を示し、z方向は上方向を示している。また、図3において、Rレーザ光源61〜Bレーザ光源63及びレンズ81〜83は図示が省略されている。なお、R,G,Bレーザ光源61〜63を総称するときは、レーザ光源60とする。
【0040】
ベース部材BSは、平板状であり、例えば樹脂等により構成されている。ベース部材BSの上面には、光源固定部64、レンズ固定部84、ミラー固定部101〜105及び走査部50が設けられている。なお、光源固定部64、レンズ固定部84、ミラー固定部101〜105は、ベース部材BSと一体形成されている。
【0041】
光源固定部64は、x方向を長手方向とする実質的に直方体状の形状を有しており、内部にy方向を長手方向とする円柱状の3つの孔641,642,643がx方向の上流側から順番に形成されている。孔641,642,643には、それぞれ、Rレーザ光源61、Gレーザ光源62、及びBレーザ光源63が、レーザ光の射出面がy方向を向くように埋め込まれている。なお、Rレーザ光源61、Gレーザ光源62、及びBレーザ光源63の配列順序は上記の順番に限定されず、適宜他の順番を採用してもよい。
【0042】
レンズ固定部84は、光源固定部64に対してy方向の下流側に設けられ、x方向を長手方向とする形状を有している。レンズ固定部84には、y方向を長手方向とする3つの凹部841,841,841がx方向の上流側から順番に形成されている。3つの凹部841,841,841には、x方向の上流側から順に、y方向が射出面となるようにレンズ81,82,83が固定されている。レンズ81〜83としては、レーザ光源60からのレーザ光のスクリーン90における点像を楕円形にする例えばダイクロックレンズ等の非球面レンズが採用されている。
【0043】
図4は、レンズ81を固定する凹部841を拡大して示した図である。なお、レンズ82,83は、レンズ81と同様にして凹部841に取り付けられるため、詳細な説明は省略する。図4に示すように凹部841は、y方向視が谷状の形状を有している。レンズ81の外周の全域には円形のレンズ枠811が取り付けられている。レンズ81は、レンズ枠811及び接着剤842を介して凹部841に取り付けられる。接着剤842としては、例えば紫外線を照射することで硬化するUV硬化樹脂が用いられている。
【0044】
図5(A)〜(C)はレンズ81のレンズ固定部84への取り付け工程を示した図である。まず、図5(A)に示すレンズ固定部84の凹部841に、図5(B)に示すように接着剤842を塗布する。次に、図5(C)に示すように、作業者がレンズ81を把持し、レンズ81を接着剤842の上に載せる。そして、作業者は、例えば、レンズ81のx、y、z方向上の位置をずらし、レーザ光源60から射出されたレーザ光のスクリーン90における点像の向き及び形状が所望の向き及び形状となるように調節する。そして、点像の向きが所望する向き及び形状になったとき、接着剤842に紫外線を照射する。これにより、レンズ81がレンズ固定部84に位置決めさて固定される。
【0045】
なお、楕円形のレーザ光の点像の長軸及び短軸の長さは、点像を所望する長軸及び短軸の長さにすることができる非球面レンズをレンズ81として採用することで容易に実現することができる。
【0046】
図1に戻り、レンズ固定部84に対してy方向の下流側には、3個のミラー固定部101,102,103がx方向の上流側から順番に設けられている。ここで、ミラー固定部101,102,103は、長手方向がベース部材BSからz方向に向かうように立設された断面が例えば直角二等辺三角形状の三角柱状の形状を有している。ミラー71は、例えば全反射ミラーにより構成され、レンズ81の射出面と対向するミラー固定部101の側面101sに取り付けられている。そして、ミラー71は、Rレーザ光源61からy方向に向けて射出されたRレーザ光をx方向に全反射する。
【0047】
ミラー固定部102は、ミラー71によりx方向に向けて反射されたRレーザ光を通過させるための、x方向を長手方向とする孔102hが形成されている。ミラー72は、例えばダイクロックミラーにより構成され、レンズ82の射出面と対向するミラー固定部102の側面102sに取り付けられている。そして、ミラー72は、孔102hを通過するRレーザ光を透過させ、かつ、y方向に向けて射出されたGレーザ光をx方向に反射させることで、Rレーザ光とGレーザ光とを合成する。
【0048】
ミラー固定部103は、Bレーザ光を通過させるための、y方向を長手方向とする孔103hが形成されている。ミラー73は、ダイクロックミラーにより構成され、ミラー固定部102の側面102sに対向するミラー固定部103の側面103sに取り付けられている。そして、ミラー72からx方向に向けて射出されたRレーザ光とGレーザ光とをy方向に反射し、かつ、レンズ83から射出されたBレーザ光を透過させ、Rレーザ光、Gレーザ光、及びBレーザ光との合成光をミラー74に射出する。
【0049】
ミラー固定部104はミラー固定部103に対してy方向の下流側に設けられている。ミラー74は、全反射ミラーにより構成され、ミラー固定部103と対向するミラー固定部104の側面104sに取り付けられている。そして、ミラー74は、ミラー73から射出された合成光を全反射してミラー75に導く。
【0050】
ミラー固定部105は、ミラー固定部102と走査部50とのy方向のおよそ中間に設けられ、ミラー75を固定する。ミラー75は、例えば、全反射ミラーにより構成され、図2に示すように、ミラー74により多少上方向に傾けて反射された合成光を走査部50に向けて反射する。走査部50は、ベース部材BSの上面に設けられ、ミラー75から射出された合成光をスクリーン90に導く。
【0051】
図6は、本発明の実施の形態1による投射装置の全体構成を示すブロック図である。図6に示すように投射装置は、画像処理部10、レーザ駆動部20、走査駆動部40、走査部50、R,G,Bレーザ光源61〜63、ミラー71〜75、スクリーン90、制御部100、及び画像取得部110を備えている。
【0052】
R,G,Bレーザ光源61〜63は、例えばレーザダイオードにより構成され、それぞれ、R(赤),G(緑),B(青)のレーザ光を射出する。本実施の形態では、Rレーザ光としては波長が例えば645nm、Gレーザ光としては波長が例えば530nm、Bレーザ光としては波長が例えば445nmのものを採用することができる。
【0053】
また、本実施の形態では、レーザ光源60として、R,G,Bレーザ光源61〜63を採用したが、これに限定されず、2種類、又は4種類以上というように波長の異なる複数種類のレーザ光源を採用することができる。
【0054】
レーザ駆動部20は、制御部100の制御の下、画像処理部10により画像処理された入力画像の各画素のR,G,Bの色成分を示すR,G,B画素値に応じたパワーのR,G,Bレーザ光が射出されるように、R,G,Bレーザ光源61〜63を駆動する。
【0055】
レンズ81〜83は、R,G,Bレーザ光源61〜63から射出されるR,G,Bレーザ光を平行化する。
【0056】
ミラー71は、Rレーザ光源61から射出されたRレーザ光を反射する。ミラー72は、Gレーザ光とBレーザ光とを合成する。ミラー73は、Rレーザ光とGレーザ光とBレーザ光とを合成し、合成光を射出する。
【0057】
ミラー74は、ミラー73から射出された合成光をミラー75に導く。ミラー75は、ミラー74により反射された合成光を走査部50に導く。
【0058】
走査駆動部40は、例えばモータにより構成され、制御部100の制御の下、走査部50を駆動する。走査部50は、例えば、合成光を2次元走査するMEMSミラーにより構成され、合成光をスクリーン90上にラスタ走査することで、スクリーン90に入力画像を投影する。
【0059】
本実施の形態では、走査部50は、ミラー75により反射された合成光を所定の高速走査方向で走査すると共に、当該合成光を高速走査方向と交差する所定の低速走査方向に走査する。
【0060】
ここで、走査部50は、合成光の高速走査方向への1行分の走査が終了すると、次の1行分の合成光の高速走査方向への走査を開始するというようにして、合成光をラスタ走査する。そのため、高速走査方向の走査速度は、低速走査方向の走査速度よりも速くなる。また、高速走査方向は水平走査方向となり、低速走査方向は垂直走査方向となる。
【0061】
そして、走査部50は、合成光を構成する少なくとも1つの光である注目光のスクリーン90上の点像の低速走査方向の幅が、前記点像の高速走査方向の幅よりも広くなるように注目光を走査する。
【0062】
本実施の形態では、注目光として、R及びBレーザ光を採用する。図7は、R,G,Bレーザ光のスクリーン90上の点像を示した図である。図7において、紙面内の縦方向は低速走査方向を示し、紙面内の横方向は高速走査方向を示している。図7に示すように、R,G,Bレーザ光の点像SPR,SPG,SPBは、楕円形状であることが分かる。また、R,Bレーザ光が注目光であるため、点像SPR,SPBは長軸LZR,LZBが低速走査方向と平行にされ、低速走査方向の幅が高速走査方向の幅よりも広くなっていることが分かる。こうすることで、点像SPR,SPG,SPBの低速走査方向へのずれが小さくなり、低速走査方向において点像SPR,SPG,SPBの重なる領域が増大する結果、階調性の高い画像を得ることができる。
【0063】
以下、点像SPR,SPG,SPBを総称する場合は、点像SPとする。また、長軸LZR,LZG,LZBを総称する場合は、長軸LZとする。なお、長軸LZR,LZG,LZBのそれぞれの長さは、現状市販されているレーザダイオードの特性から、LZB>LZG>LZRの関係を有している。
【0064】
また、Gレーザ光は注目光ではないため、点像SPGは長軸LZGが長軸LZR,LZBと直交しており、高速走査方向の幅が、低速走査方向の幅より広くなっていることが分かる。これにより、高速走査方向における点像SPR,SPG,SPBのずれを小さくすることができ、より階調性の高い画像を得ることができる。
【0065】
また、図7においては、青の点像SPBの長軸LZBは他の長軸LZR,LZGよりも長くされている。人の目は緑色の感度が高いため、例えば、点像SPGの長軸LZGを最大にすると点像SPGが目立ってしまい、画質が低下する。また、赤よりも青の方が暗色であるため、点像SPBは点像SPRよりも目立ちにくい。つまり、点像SPR,SPG,SPBのうち点像SPBが最も目立たない。よって、点像SPBの長軸LZBを最大にすることで、画質の低下を防止すると同時に各光の点像のずれを小さくすることができる。
【0066】
このような点像SPR,SPG,SPBを実現するには、図4及び図5で説明したように、レンズ81〜83の取り付け位置を調節する、及び/又は、R〜Bレーザ光源61〜63のそれぞれの射出窓の向きを調節すればよい。図8は、レーザ光源60の射出窓OWと点像SPとの関係を示した模式図である。
【0067】
図8に示すように、レーザ光源60は、長方形状の射出窓OW有し、射出窓OWの長辺H1と、射出窓OWの短辺H2とを二軸とする直行する二軸方向で発散角度が異なる光源である。具体的には、長辺H1の発散角度θ1と短辺H2の発散角度θ2とが異なる。
【0068】
このように構成されたレーザ光源60をレンズによって結像すると、長辺H1が短軸SZに対応し、短辺H2が長軸LZに対応する楕円形状の点像SPが得られる。したがって、発散角度θ1,θ2を任意に選ぶことによって長軸LZと短軸SZの比を選ぶことができる。なお、発散角度θ1,θ2の調節は、例えば射出窓OWのサイズを変更することで容易に実現することができる。
【0069】
そして、長軸LZR,LZBの向きが低速走査方向と平行になり、かつ長軸LZGの向きが高速走査方向と平行になるようになるように、R,G,Bレーザ光源61〜63のそれぞれの射出窓OWの向きを調節する。これにより、図7に示す点像SPR〜SPBを得ることができる。
【0070】
また、レーザ光源60として、発散角度θ1とθ2とが等しい、等方的な発散角度を持つ光源を採用した場合であっても、レンズ81〜83を設けることにより楕円形状の点像SPを得ることが可能である。
【0071】
図7においては、長軸LZR,LZBの向きを低速走査方向と平行にしたが、長軸LZR,LZBの向きを低速走査方向から多少ずらしてもよい。図9,図10(A)、図10(B)は、長軸LZの向きを低速走査方向からずらした場合の点像SPを示した図である。なお、図9,図10(A),図10(B)では、点像SPR,SPBを点像SPとして説明している。図9に示す点像SPは長軸LZと低速走査方向とのなす角はθであることが分かる。
【0072】
ここで、θとしては、θ≦45度を採用することが好ましい。これは、θが45度を超えると高速走査方向の点像の幅が広くなり、低速走査方向の点像のずれが大きくなってしまうからである。また、θが45度を超えると点像SPが低速走査方向へシフトした場合、低速走査方向へシフトした点像SPと他の光の点像との重なる領域が高速走査方向へも同時にシフトしてしまい、各光の点像は互いに重なりにくくなってしまうからである。
【0073】
また、θが小さければ点像SPの長軸LZと短軸SZとの比を小さく保ちつつも低速走査方向の点像SPの幅を確保することができる。例えば、θが30度であればθが45度の場合に比べてcos30/cos45(およそ1.22倍)程度、低速走査方向への点像SPの幅を広くすることができる。そのため、θ≦30度であることがより好ましい。また、θが20度であればθが45度の場合に比べておよそ1.33倍程度、低速走査方向の点像の幅を広くすることができる。そのため、θ≦20度であることがより好ましい。
【0074】
また、θが5度以下であればθが45度の場合に比べて1.41倍程、低速走査方向への点像の幅を広くすることができ、更に好ましい。
【0075】
また、図10(A)に示すようにθが大きいと点像SPが隣の点像SPまではみ出てしまい、隣の点像SPと干渉するため、解像度が劣化する。この場合、干渉を避けるために、図10(B)に示すように点像SPの間隔を図10(A)よりも広げると同様に解像度が劣化する。よって、θは、小さい方が好ましく、最も好ましくはθ=0度である。
【0076】
また、注目光の点像SPの長軸LZの長さRと短軸LSの長さrは、1.5≦R/r≦6の条件式を満足することが好ましい。R/rが6を超えると、注目光の点像SPが隣接画素の点像と干渉するおそれがある。そのため、R/r≦6とすることで、この干渉を抑制することができる。また、R/rが1.5を下回ると、注目光の低速走査方向の点像の幅を確保することが困難となり、点像SPの低速走査方向のずれを小さくすることが困難となる。そのため、R/r≧1.5とすることで点像SPの低速走査方向のずれを小さくすることができる。
【0077】
図6に戻り、制御部100は、例えば、CPU、ROM等により構成され、CPUがROMに格納された制御プログラムを実行することでレーザ投射装置の全体制御を司る。画像取得部110は、例えば動画像を記録するコンピュータ読取可能な記録媒体から動画像を読み取る記録媒体駆動装置により構成され、記録媒体から読み取った動画像を画像処理部10に出力する。ここで、記録媒体としては、DVD、CD−ROM、ハードディスク、及びビデオ等を採用することができる。
【0078】
画像処理部10は、画像取得部110から出力された動画像の各フレームを入力画像として取得し、取得した入力画像に対して画像処理を行う。ここで、入力画像は複数の画素がマトリックス状に配列されて構成されたデジタルの画像データであり、各画素はR,G,Bの色成分を示すR,G,B画素値から構成され、各R,G,B画素値は、例えば0〜255の階調値によって表される。
【0079】
このように、本投影装置によれば、R,Bレーザ光の点像SPR,SPBの低速走査方向の幅を、高速走査方向の幅より広くしているため、装置を大型化することなく低速走査方向のR,G,Bレーザ光の点像SPのずれを小さくすることができる。これにより、低速走査方向においてR,G,Bレーザ光の点像SPR,SPG,SPBの重なる領域が増大する結果、階調性の高い画像を得ることができる。
【0080】
なお、図7において、長軸LZG,LZBが低速走査方向と平行になるように、点像SPG,SPBを投影し、長軸LZRが高速走査方向と平行になるように、点像SPRを投影してもよい。
【0081】
この場合、注目光の点像である点像SPG,SPBが、注目光以外の点像である点像SPRよりも低速走査方向の幅が広いため、低速走査方向における点像SPR,SPG,SPBのずれをより確実に小さくすることができる。そして、色ずれの小さな点像SPR,SPG,SPBを走査することによって、階調性の高い画像を得ることが可能となる。
【0082】
また、図7において、長軸LZR,LZGが低速走査方向と平行になるように、点像SPR,SPGを投影し、長軸LZBが高速走査方向と平行になるように、点像SPBを投影してもよい。
【0083】
また、上記説明では、レンズ81〜83を接着剤842によりレンズ固定部84に固定していたが、これに限定されず、図4に示すレンズ81の位置をx,y,z軸の各々に沿って調節することができる調節機構をレンズ固定部84に設け、この調節機構によりレンズ81の位置を調節してもよい。
【0084】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2の投影装置は、1つのレーザ光を注目光としたことを特徴とする。図11は、本発明の実施の形態2による投影装置がスクリーン90に投影する点像SPR,SPG,SPBを示した図である。図11に示すように実施の形態2による投影装置は、点像SPR,SPBの長軸LZR,LZBを高速走査方向と平行にし、点像SPGの長軸LZGを低速走査方向と平行にしたことを特徴としている。
【0085】
実施の形態1においては長軸が最大である点像SPBの長軸LZBを低速走査方向と平行としていたが、本実施の形態においては点像SPBの長軸LZBを高速走査方向と平行にしている。また、長軸が中間の長さを有する点像SPGの長軸LZGを低速走査方向と平行にしている。また、長軸が最小である点像SPRの長軸LZRを低速走査方向と平行にしている。
【0086】
この場合、点像SPGの長軸LZGが低速走査方向と平行であるため、点像SPR,SPG,SPBの低速走査方向へのずれを小さくすることができる。また、点像SPR,SPBの長軸LZR,LZBが高速走査方向と平行であるため、点像SPR,SPBの高速走査方向にずれを小さくすることができる。これにより階調性の高い画像を得ることができる。
【0087】
なお、本実施の形態では、長軸LZR,LZBを高速走査方向と平行にしたが、高速走査方向に対してずらしてもよい。この場合、長軸LZR,LZBと高速走査方向との角度としては、図9に示すθと同様の値を採用すればよい。また、長軸LZGを低速走査方向に対して図9に示すようにθだけずらしてもよい。
【0088】
また、図11において、長軸LZR又はLZBが低速走査方向と平行になるように、点像SPR,SPGを投影し、長軸LZが高速走査方向と平行になるように残りの2つの点像SPを投影してもよい。
【0089】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3による投影装置は、全てのレーザ光を注目光としたことを特徴とする。図12は、本発明の実施の形態3による投影装置がスクリーン90に投影する点像SPR,SPG,SPBを示した図である。図12に示すように本実施の形態においては、点像SPR,SPG,SPBの全ての長軸LZR,LZG,LZBの方向が低速走査方向と平行にされている。
【0090】
本実施の形態においては、長軸の長さが最大である点像SPBの低速走査方向の幅と、点像SPGの低速走査方向の幅と、点像SPRの低速走査方向の幅とにより、点像SPR,SPG,SPBの低速走査方向へのずれが小さくされている。このため、より確実に点像SPR,SPG,SPBの低速走査方向のずれを小さくすることができ、階調性の高い画像を得ることができる。
【0091】
なお、実施の形態3では、長軸LZR,LZG,LZBを低速走査方向と平行にしたが、図9に示すように、低速走査方向に対してθだけずらしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の実施の形態1による投射装置の上面視からの内部構成図である。
【図2】図1に示す投射装置の側面視からの内部構成図を示している。
【図3】図1に示す投射装置の内部構成の斜視図を示している。
【図4】レンズを固定する凹部を拡大して示した図である。
【図5】レンズのレンズ固定部への取り付け工程を示した図である。
【図6】本発明の実施の形態1による投射装置の全体構成を示すブロック図である。
【図7】R,G,Bレーザ光のスクリーン上の点像を示した図である。
【図8】レーザ光源の射出窓と点像との関係を示した模式図である。
【図9】長軸の向きを低速走査方向からずらした場合の点像を示した図である。
【図10】長軸の向きを低速走査方向からずらした場合の点像を示した図である。
【図11】本発明の実施の形態2による投影装置がスクリーンに投影する点像を示した図である。
【図12】本発明の実施の形態3による投影装置がスクリーンに投影する点像を示した図である。
【符号の説明】
【0093】
50 走査部
60 レーザ光源
61 Rレーザ光源
62 Gレーザ光源
63 Bレーザ光源
71,72,73 ミラー
81 レンズ
90 スクリーン
100 制御部
110 画像取得部
LZ,LZR,LZG,LZB 長軸
OW 射出窓
SP,SPR,SPG,SPB 点像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光源を含む射出部と、
各光源から射出される光を合成する合成部と、
前記合成部により合成された合成光を所定の高速走査方向に走査すると共に、前記合成光を前記高速走査方向と交差する所定の低速走査方向に走査する走査部とを備え、
前記射出部は、前記合成光を構成する少なくとも1つの光である注目光の投影面上の点像の低速走査方向の幅を、前記点像の高速走査方向の幅よりも広くすることを特徴とする投影装置。
【請求項2】
前記注目光の点像は、楕円形状であり、長軸と前記低速走査方向とのなす角θが以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1記載の投影装置。
θ≦45 (度)
【請求項3】
前記走査部は、2次元走査ミラーにより構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の投影装置。
【請求項4】
前記注目光の点像は、楕円形状であり、長軸が前記低速走査方向に平行であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の投影装置。
【請求項5】
前記複数の光源は、それぞれ、赤、緑、及び青の光を射出する3つの光源により構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の投影装置。
【請求項6】
前記赤、緑、及び青の光の各点像の前記低速走査方向の幅は、前記青の光の点像が最も広いことを特徴とする請求項5記載の投影装置。
【請求項7】
前記赤、緑、及び青の光の各点像は、前記低速走査方向の幅が前記高速走査方向の幅より広いことを特徴とする請求項5又は6記載の投影装置。
【請求項8】
前記注目光の点像は、前記注目光以外の点像よりも長軸が長いことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の投影装置。
【請求項9】
前記注目光の点像は、長軸が前記注目光以外の少なくとも1つの光の点像の長軸と直交していることを特徴とする請求項1記載の投影装置。
【請求項10】
前記射出部は、各光源から射出された光を平行化する平行化部を含み、
前記平行化部は、非球面レンズと前記非球面レンズを固定するレンズ固定部とを備え、
前記レンズ固定部は、前記非球面レンズの位置が調節可能であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の投影装置。
【請求項11】
前記レンズ固定部は、前記非球面レンズが載置される凹部を備え、
前記非球面レンズは、前記凹部に接着剤を介して接着されていることを特徴とする請求項10記載の投影装置。
【請求項12】
前記光源を固定する光源固定部と、
前記光源固定部に一体形成された平面部と、
前記平面部に一体形成されたミラー固定部とを更に備え、
前記合成部は、前記ミラー固定部に固定されたミラーにより構成されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の投影装置。
【請求項13】
前記複数の光源のうち、少なくとも1つの光源は、直交する2方向における発散角度が異なることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の投影装置。
【請求項14】
前記注目光の点像は、楕円形状であり、長軸の長さRと、短軸の長さrとが以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の投影装置。
1.5≦R/r≦6

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−78749(P2010−78749A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245237(P2008−245237)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】