抗−TSG101抗体およびウイルス感染の処置に対するそれらの用法
この発明は、TSG101タンパク質に結合する抗体を用いてウイルス生成を阻害または減少させる方法を提供する。この発明はまた、HIV感染を含むウイルス感染の処置のためにTSG101抗体を用いる方法を提供する。この発明はさらに、TSG101抗体を用いてウイルス感染細胞を検出する方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、全体にわたってここに引用により援用する2002年10月1日に提出された米国特許仮出願番号第60/415,299号の米国特許法第119条(e)による利益を主張する。
【0002】
1.発明の分野
この発明は、TSG101タンパク質に結合してウイルス生成を阻害または減少させる抗体に関する。この発明はまた、TSG101抗体を用いて、HIV感染を含むウイルス感染の処置を行なう方法に関する。この発明はさらに、TSG101抗体を用いてウイルス感染細胞を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
2.発明の背景
AIDSなどのウイルス性疾患の病因において、病原体と宿主細胞の相互作用は重要な役割を演じる。典型的なウイルス感染のためには、ウイルスは細胞表面受容体を通じて宿主細胞に付着し、宿主細胞膜と融合し、細胞膜を横切って移動し、ウイルス粒子を脱外被し、宿主タンパク質合成機構を用いてウイルスタンパク質を合成および集合し、宿主の輸送機構を通じて宿主細胞から放出する必要がある。ウイルスと宿主細胞との相互作用は、ウイルス病因の、ウイルスの除去から寄生または致命的な感染までにわたる結果を定める。たとえば、HIVはヒト細胞に生産的に感染するためにさまざまな戦略を用いる。レトロウイルスの生活環は、宿主細胞に付着することによって始まるが、その最初の標的はCD4+Tヘルパー細胞であり、特定の受容体を介して侵入する。細胞内で、RNAゲノムは「逆」転写されて相補DNAとなり、核に輸送されて宿主ゲノムに組込まれる。この組込まれた「プロウイルス」は新たなウイルスRNAおよびタンパク質の生成を指示し、それらは自己集合して、形質膜に包まれた成熟した感染性のウイルス粒子として細胞から「出芽」する。すべてのウイルスと同様、HIVは寄生性であり、出芽過程を行なう膜分裂事象を触媒できない。代わりに、新生ウイルスは細胞の膜選別機構を用いて感染のこの最終段階を完了する。こうした宿主とウイルスとの相互作用は、欠損細胞表面受容体(CCR5)を有する個体がHIV感染に対して完全に耐性であることによってよく実証されており、ウイルス病因における宿主遺伝子および遺伝子経路の重要な役割が解明されている。
【0004】
腫瘍感受性遺伝子(Tumor Susceptibility Gene)101(TSG101、リ(Li)ら、1996, Cell 85, 319-29)は、細胞生育(ゾン(Zhong)ら、1998, Cancer Res 58, 2699-702; オー(Oh)ら、2002, Proc Natl Acad Sci USA 99, 5430-5; クレンプラー(Krempler)ら、2002, J Biol Chem 277, 43216-23; ワグナー(Wagner)ら、2003, Mol Cell Biol 23, 150-62; リら、1996, Cell 85, 319-29)、細胞タンパク質トラフィッキング(バブスト(Babst)ら、2000, Traffic 1, 248-58; ビショップ(Bishop)ら、2002, J Cell Biol 157, 91-101)、およびp53の分解(リら、2001, Proc Natl Acad Sci USA 98, 1619-24; ルランド(Ruland)ら、2001, Proc Natl Acad Sci USA 98, 1859-64; モイレット−ラーレ(Moyret-Lalle)ら、2001, Cancer Res 61, 486-8)において重要な役割を行なう。TSG101はまた、この最終段階における重要な役割を持つものとして広く認識されており、細胞内TSG101の阻害はHIVの出芽過程を妨げる。TSG101は他の細胞内因子と協力して作用することにより、HIVウイルスの出芽または展開における重要な役割を演じる。ウイルスの集合および出芽を調整することが以前に示されていたHIV Gagタンパク質は、TSG101と高い親和性で結合し、このGag/TSG101相互作用は効率的なHIVウイルス集合および出芽に欠かせないものであり、
Gag/TSG101相互作用の分断はHIVウイルス出芽を防止し、HIVウイルスの広がりを大きく制限する。
【0005】
エンベロープウイルス集合の集合における最終ステップは、細胞膜からの出芽粒子の分離を必要とする。Gagにおける3つの別個の機能ドメイン、すなわち、HIV−1におけるPTAP(ゴットリンガー(Gottlinger)ら、1991, Proc Natl Acad Sci USA 88, 3195-9; ホワン(Huang)ら、1995, J Virol 69, 6810-8)と、RSV(ペアレント(Parent)ら、1995, J Virol 69, 5455-60)、MuLV(ユエン(Yuan)ら、1999, Embo J 18, 4700-10)およびM−PMV(ヤスダ(Yasuda)ら、1998, J Virol 72, 4095-103)におけるPPPYと、EIAVにおけるYXXL(パファー(Puffer)ら、1997, J Virol 71, 6541-6)とが、この機能に必要とされるとして異なるレトロウイルスにおいて同定され、後期(late)またはLドメインと名付けられた(ウィルズ(Wills)ら、1991, Aids 5, 639-54)。HIV−1において、LドメインはPTAPモチーフを含み、効率的なHIV−1の放出に必要とされる(たとえば、ウィルズら、1994, J. Virol. 68, 6605-6618; ゴットリンガーら、1991, Proc Natl Acad Sci USA 88, 3195-3199; ホワンら、1995,
J Virol 69, 6810-6818を参照)。HIV−1p6のLドメイン、特にPTAPモチーフが細胞タンパク質TSG101に結合し、それをウイルス集合の部位に入れてウイルス出芽を行なう(バープランク(VerPlank)ら、2001, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98:7724-7729; ガルス(Garrus)ら、2001, Cell 107:55-65; マーティン−セラーノ(Martin-Serrano)ら、2001, Nature Medicine 7:1313-19; ポルニロス(Pornillos)ら、2002, EMBO J. 21:2397-2406; デミロフ(Demirov)ら、2002, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:955-960; PCT公開第WO02/072790号; 米国特許出願第US2002/0177207号)。TSG101のUEVドメインはPTAPモチーフおよびモノユビキチンに結合し(ポルニロスら、2002, EMBO J. 21:2397-406; ポルニロスら、2002, Nat Struct Biol 9, 812-7)、このモノユビキチンもまたHIV−1出芽に関わっている(パトナイク(Patnaik)ら、2000, Proc Natl Acad Sci USA 97, 13069-74; シューベルト(Schubert)ら、2000, Proc Natl Acad Sci USA 97, 13057-62; ストラック(Strack)ら、2000, Proc Natl Acad Sci USA 97, 13063-8)。細胞内TSG101の枯渇(ガルスら、2001, Cell 107:55-65)または短くした形のTSG101の過剰発現は、HIV−1の放出を阻害する(デミロフら、2002, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:955-960)。特定の状況下では、TSG101はウイルス放出を促進するためにHIV−1のLドメインの代わりになることすらできる(マーティン−セラーノら、2001, Nature Medicine 7:1313-19)。
【0006】
酵母においては、Tsg101オーソログのVps23がVps28およびVps37と相互作用して、多胞体経路へのエンドソームタンパク質選別に対して重要なESCRT−Iと呼ばれるタンパク質複合体を形成することが示されている(カッツマン(Katzmann)ら、2001, Cell 106, 145-55)。この細胞内での多胞体形成が、形質膜におけるHIV−1の放出に似ているのではないかという仮説が立てられている(ガルスら、2001, Cell
107:55-65; パトナイクら、2000, Proc Natl Acad Sci USA 97, 13069-74)。哺乳動物細胞において、TSG101はVps28と相互作用して、ESCRT−I様の複合体を形成する(バブストら、2000, Traffic 1, 248-58; ビショップら、2002, J Cell Biol 157, 91-101; ビショップら、2001, J Biol Chem 276, 11735-42)が、Vps37の哺乳動物の相同体はまだ同定されていない。
【0007】
最近の調査(ブロウアー(Blower)ら、2003, AIDS Rev. 5:113-25; バルディセリ(Valdiserri)ら、2003, Nat Med. 9:881-6)では、世界中で4200万人もの人がHIVに感染していると見積もられている。この疾患で既に300万人を超える人が死亡している。先進国においては、高度に効き目が高いターゲッティングされた組合せ療法の出現によりAIDSの進行が遅らされているが、発展途上国、特に2100万人より多くのアフリカ人が感染しているアフリカにおいては、AIDSの汎流行が「人間発展カタストロフィ
(human development catastrophe)」をもたらしている。南アフリカだけでも、死者は2015年までに1000万人に上ると予測されている。関連する統計はアジア太平洋領域においても同様の危険性があることを警告しており、ここには国連の見積りによると、700万人より多くのHIV感染個体が存在する。AIDS汎流行の影響は、最近感染した患者の増加数を処置するための資源を持たない診療所の限度を大きく上回っている(南アフリカの成人人口の20%近くが感染している)。HIV感染した患者および深刻な病状のAIDS患者の処置が、アフリカおよびその他の発展途上国の既に過負担の健康管理システムを圧迫している。さらに悪いことに、HIVに対する現在の処置は、当初はウイルス負荷を減少させることに成功していたにもかかわらず、その効力を失い始めている。新たに感染した個体において薬剤耐性HIV株が単離されることが増えているためである。HIV疾患の治療技術をさらに複雑にしているのは、現在の抗レトロウイルス摂生の毒性であり、その大きさのために、医師が処置を開始および持続するための判断が複雑になっている。HIV疾患の処置に対する新たな治療範例の同定、特に耐性の発達を遅らせる保証のある作用機構を有するものの同定は、生物薬剤産業に対する世界的な挑戦である。
【0008】
また、多くのウイルスは非常に突然変異を起こしやすい。こうしたウイルスを直接ターゲッティングすることに依存する方法および組成物は通常、こうしたウイルスによる感染の処置において十分でない。たとえば、HIV−1は非常に突然変異を起こしやすいウイルスであり、HIV−1感染の過程において、感染個体において生成される抗体は永続的な保護効果を与えない。それは一部には、中和回避変異体(ターリ(Thali)ら、1992, J. Acquired Immune Deficiency Syndromes 5:591-599)の迅速な出現のためである。HIV感染個体の処置に対する現在の療法は主に、HIV感染の2つの別個の段階、すなわちウイルスゲノムの複製とウイルスタンパク質の成熟とにかかわるウイルス酵素に焦点を当てている。ウイルスは頻繁に突然変異を起こすため、薬物の最初の治療効果にかかわらず、抗ウイルス阻害剤に耐性の株が迅速に発達する。最近の研究の1つにおいては、薬剤耐性HIV株に新たに感染した個体のパーセンテージが5年間で6倍増加した(リトル(Little)ら、2002, N Engl J Med. 347:385-94)。さらに、現在の手当の標準である、逆転写酵素およびプロテアーゼの両方の阻害剤によってHIVを攻撃する組合せ療法は、多重薬剤耐性HIV株の発達をもたらしている。新たなHIVに基づく標的に向けられた抗レトロウイルス薬はかなりの価値があるが、この徐々に重要になってきている問題に対処していない。たとえば、抗−HIV装備に最も新しく加わったフューゼオン(登録商標)(エンフュービルタイド)に耐性のHIV株が患者から既に単離されている。したがって、その抗ウイルス効力および新たな作用機構にもかかわらず、薬剤耐性がフューゼオン(登録商標)などのウイルス融合阻害剤の治療の可能性を揺るがしているようである。したがって、HIV感染などのウイルス感染に立ち向かう新たな治療および防止策を開発する必要がある。
【0009】
ここでの考察または参考文献の引用は、こうした参考文献がこの発明に対する先行技術であると容認するものであると解釈されるべきではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
3.発明の概要
この発明は、TSG101タンパク質に結合する抗体を用いてウイルス生成を阻害または減少させる方法を提供する。この発明はまた、TSG101抗体を用いてウイルス感染を処置する方法を提供する。この発明はまた、感染細胞の表面においてTSG101をターゲッティングし、たとえばこうした感染細胞に治療用および/または診断用薬剤を送達するなどによって、ウイルス感染を処置するための方法および組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
局面の1つにおいて、この発明はエンベロープウイルスに感染した哺乳動物細胞からのウイルス出芽を減少させる方法を提供する。この方法は、哺乳動物細胞をTSG101タンパク質に結合する抗体の十分量と接触させるステップを含む。別の局面において、この発明は、エンベロープウイルスに感染した哺乳動物細胞に治療用分子を送達する方法を提供し、この方法は、哺乳動物細胞を、治療用分子とコンジュゲートされたTSG101タンパク質に結合する抗体を含む抗体コンジュゲートに接触させるステップを含む。好ましい態様において、抗体はTSG101タンパク質のN−末端またはC−末端領域に結合する。好ましい態様において、哺乳動物細胞はヒト細胞である。別の好ましい態様において、抗体は、VRETVNVITLYKDLKPVL(SEQ ID NO:2)およびQLRALMQKARKTAGLSDLY(SEQ ID NO:3)からなる群より選択されるアミノ酸領域に含まれるエピトープに結合する。好ましくは、抗体はモノクローナル抗体である。さらに別の好ましい態様において、エンベロープウイルスは、ヒト免疫不全ウイルスI型(HIV−I)、ヒト免疫不全ウイルスII型(HIV−II)、マールブルグウイルスおよびエボラウイルスからなる群より選択される。
【0012】
別の局面において、この発明は哺乳動物におけるエンベロープウイルスによる感染を処置する方法を提供し、この方法は哺乳動物に、TSG101タンパク質に結合する抗体を治療上有効な量投与するステップを含む。さらに別の局面において、この発明は哺乳動物におけるエンベロープウイルスによる感染を処置するための方法を提供し、この方法は哺乳動物に、治療薬剤とコンジュゲートされたTSG101タンパク質に結合する抗体を含む抗体コンジュゲートを治療上有効な量投与するステップを含む。好ましい態様において、抗体はTSG101タンパク質のN−末端またはC−末端領域に結合する。好ましい態様において、哺乳動物はヒトである。別の好ましい態様において、抗体は、VRETVNVITLYKDLKPVL(SEQ ID NO:2)およびQLRALMQKARKTAGLSDLY(SEQ ID NO:3)からなる群より選択されるアミノ酸領域に含まれるエピトープに結合する。好ましくは、抗体はモノクローナル抗体である。さらに別の好ましい態様において、エンベロープウイルスは、ヒト免疫不全ウイルスI型(HIV−I)、ヒト免疫不全ウイルスII型(HIV−II)、マールブルグウイルス、およびエボラウイルスからなる群より選択される。態様の1つにおいて、この方法は、哺乳動物に1つまたはそれ以上の他の治療薬剤を治療上有効な量投与するステップをさらに含む。
【0013】
さらに別の局面において、この発明は、エンベロープウイルスに感染した哺乳動物細胞を同定する方法を提供し、この方法は、(a)哺乳動物の細胞を、ラベルとコンジュゲートされたTSG101タンパク質に結合する抗体を含む抗体コンジュゲートに接触させるステップと、(b)付着されたラベルを有する細胞を検出することによってエンベロープウイルスに感染した細胞を同定するステップとを含む。好ましい態様において、抗体はTSG101タンパク質のN−末端またはC−末端領域に結合する。好ましい態様において、哺乳動物細胞はヒト細胞である。別の好ましい態様において、抗体は、VRETVNVITLYKDLKPVL(SEQ ID NO:2)およびQLRALMQKARKTAGLSDLY(SEQ ID NO:3)からなる群より選択されるアミノ酸領域に含まれるエピトープに結合する。好ましくは、抗体はモノクローナル抗体である。別の好ましい態様において、エンベロープウイルスは、ヒト免疫不全ウイルスI型(HIV−I)、ヒト免疫不全ウイルスII型(HIV−II)、マールブルグウイルスおよびエボラウイルスからなる群より選択される。態様の1つにおいて、ラベルは蛍光ラベルであり、付着されたラベルを有する細胞は蛍光活性化細胞選別器を用いて検出される。
【0014】
この発明はまた、哺乳動物由来の流体からの、エンベロープウイルスに感染した細胞のエクスビボ(ex vivo)除去の方法を提供する。この方法は、(a)流体を、TSG101タンパク質に結合するTSG101抗体の十分量とともにインキュベートするステップと、(b)TSG101抗体に結合された細胞を流体から除去するステップとを含む。流
体は血液または血清であってもよい。好ましい態様において、抗体はTSG101タンパク質のN−末端またはC−末端領域に結合する。好ましい態様において、哺乳動物はヒトである。別の好ましい態様において、抗体は、VRETVNVITLYKDLKPVL(SEQ ID NO:2)およびQLRALMQKARKTAGLSDLY(SEQ ID NO:3)からなる群より選択されるアミノ酸領域に含まれるエピトープに結合する。好ましくは、抗体はモノクローナル抗体である。別の好ましい態様において、エンベロープウイルスは、ヒト免疫不全ウイルスI型(HIV−I)、ヒト免疫不全ウイルスII型(HIV−II)、マールブルグウイルス、およびエボラウイルスからなる群より選択される。態様の1つにおいて、TSG101抗体に結合された細胞は、TSG101抗体に結合する抗体を含むカラムを用いて除去される。
【0015】
この発明はまた、哺乳動物におけるエンベロープウイルスによる感染を処置または防止する方法を提供し、この方法は、哺乳動物に治療上または予防上十分な量のワクチン組成物を投与するステップを含み、ワクチン組成物はTSG101タンパク質を含むポリペプチドを含む。好ましい態様において、ポリペプチドはTSG101タンパク質のN−末端またはC−末端領域を含む。好ましい態様において、哺乳動物はヒトである。別の好ましい態様において、ポリペプチドはVRETVNVITLYKDLKPVL(SEQ ID NO:2)およびQLRALMQKARKTAGLSDLY(SEQ ID NO:3)からなる群より選択されるアミノ酸領域を含む。さらに別の好ましい態様において、エンベロープウイルスは、ヒト免疫不全ウイルスI型(HIV−I)、ヒト免疫不全ウイルスII型(HIV−II)、マールブルグウイルス、およびエボラウイルスからなる群より選択される。態様の1つにおいて、この方法は、哺乳動物に、1つまたはそれ以上の他の治療薬剤を治療上有効な量投与するステップをさらに含む。
【0016】
この発明はまた、哺乳動物におけるエンベロープウイルスによる感染を処置または防止する方法を提供し、この方法は、哺乳動物に、治療上または予防上十分な量のDNAワクチン組成物を投与するステップを含み、DNAワクチン組成物は、TSG101タンパク質の断片を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド分子を含む。態様の1つにおいて、ポリヌクレオチド分子は、TSG101タンパク質のN−末端またはC−末端領域を含むポリペプチドをコードする。好ましい態様において、哺乳動物はヒトである。さらに別の好ましい態様において、ポリヌクレオチド分子は、VRETVNVITLYKDLKPVL(SEQ ID NO:2)およびQLRALMQKARKTAGLSDLY(SEQ ID NO:3)からなる群より選択されるアミノ酸配列、またはその少なくとも5アミノ酸の断片を含むポリペプチドをコードする。さらに別の好ましい態様において、エンベロープウイルスは、ヒト免疫不全ウイルスI型(HIV−I)、ヒト免疫不全ウイルスII型(HIV−II)、マールブルグウイルス、およびエボラウイルスからなる群より選択される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
5.発明の詳細な説明
この発明は、TSG101タンパク質に結合する抗体を用いてウイルス生成を阻害または減少させる方法を提供する。この発明はまた、TSG101抗体を用いてウイルス感染を処置する方法を提供する。この発明はまた、感染細胞の表面においてTSG101をターゲッティングし、たとえばこうした感染細胞に治療用および/または診断用薬剤を送達するなどによって、ウイルス感染を処置するための方法および組成物を提供する。
【0018】
治療の合理的な設計のためには、HIV病因の進歩した理解が必要である。最近の研究により、HIVおよびエボラウイルスなどのさまざまなウイルスの病因に宿主タンパク質TSG101が重要な役割を演じていることが示されている。特に、TSG101はウイルス粒子が感染細胞から脱出または出芽する過程に関係しており、したがって抗ウイルス
薬発見に対する新たな標的を表わすものである。感染細胞からのエンベロープRNAウイルスの集合および放出の下には、ウイルスおよび宿主タンパク質の緊密な協力が存在する(ペレス(Perez)ら、2001, Immunity 15(5): 687-90; フリード(Freed), 2002, J Virol 76(10): 4679-87; ポルニロスら、2002, Trends Cell Biol 12(12): 569-79)。感染の最終段階を支配するタンパク質:タンパク質およびタンパク質:膜相互作用の多くはまだ同定されていないが、細胞のTSG101タンパク質は重要な役割をしていることが示されている(ガルスら、2001, Cell 107:55-65; カーター(Carter) 2002; ポルニロスら、2002, Trends Cell Biol 12(12): 569-79; ポルニロスら、2002, Nat Struct Biol 9, 812-7)。遺伝子的分析、生化学的分析および顕微鏡分析により、TSG101は、レトロウイルス、ラブドウイルスおよびフィロウイルス族のメンバーを含む複数のエンベロープRNAウイルスと相互作用することが示されている。
【0019】
かなりの進化上の相違にもかかわらず、多くのエンベロープRNAウイルスは類似した戦略を用いて感染の最終段階を完了する(マーティン−セラーノら、2001, Nature Medicine 7:1313-19; フリード、2002 J Virol 76(10):4679-87)。ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV−1)、水疱性口炎ウイルス(VSV)、エボラウイルス(EBOV)、マールブルグウイルス(MARV)などにとって特に重要なのは、細胞の経路をウイルス粒子集合および出芽を行なうために一意に割当てる配列モチーフである後期(Late)またはLドメインである。Lドメイン活性を有する3つの配列モチーフが特徴付けされている。すなわち、PPxY、YxxLおよびPTAP(“x”はあらゆるアミノ酸を示す)である。HIV−1出芽は、p6Gagタンパク質のアミノ末端に見られるPTAPモチーフを必要とする。VSVに代表されるようなラブドウイルスは、マトリックス(M)タンパク質内のPPxYモチーフを利用する。複数のウイルス族のLドメインは、エンドソームの膜選別に対して重要な細胞タンパク質であるTSG101を用いる(バープランクら、2001, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98:7724-7729; ポルニロスら、2002, Nat Struct Biol 9, 812-7)。哺乳動物細胞におけるランダムノックアウトスクリーニングによって最初に同定されたTSG101は43KDaの多機能タンパク質であり、膜トラフィッキング、細胞周期調節、微小管集合およびタンパク質分解にかかわる(リら、1996, Cell 85, 319-29; ビショップら、2001, J Biol Chem 276:11735-42; カッツマンら、2001,Cell 106, 145-55; リら、2001, Proc Natl Acad Sci USA 98, 1619-24)。TSG101のC−末端はコイルドコイルドメインおよびその細胞内レベルを自動調節するドメインを有するのに対し、WWおよびSH3ドメインに構造的および機能的に似ている結合ポケットを介して複数のウイルスLドメインと相互作用するTSG101アミノ末端は、ユビキチンコンジュゲートした(UBC)E2酵素と顕著な相同性を有する(ポルニロスら、2002, Nat Struct Biol 9, 812-7)。TSG101のUBC様ドメインは、タンパク質の回転および選別の制御の中心である76アミノ酸タンパク質のユビキチンに強く結合するが、それは標的タンパク質のユビキチン化にかかわる触媒システイン残基を持たない(ヒッケ(Hicke)、2001, Cell 106(5): 527-30)。
【0020】
真核細胞において、TSG101はESCRT1(輸送に必要なエンドソーム選別複合体)の成分であり、このESCRT1は約350kDaの細胞質複合体であって、Vps28およびVps37も含む(カッツマンら、2001, Cell 106, 145-55; ビショップら、2002, J Cell Biol 157, 91-101)。これら3つのタンパク質の相互作用および膜トラフィッキングにおけるそれぞれの役割は現在調査中である。TSG101の酵母相同体であるVps23は、タンパク質選別欠損を機能的に相補することによって同定された(バブストら、2000, Traffic 1, 248-58)。TSG101レベルを減少させた線維芽細胞および酵母Vps23完全欠失(null)変異体は、どちらもエンドソーム/MVB経路における欠陥を示す。たとえば、通常はリソソーム分解のためにMBV系に入る受容体が、代わりに表面に再循環され、細胞シグナリングに大きな障害をもたらす。カッツマンらは最近の実験的分析に基づき、TSG101/Vps23は初期エンドソームの表面においてユ
ビキチン化されたタンパク質に結合し、それらがMVB小胞に入るのを助けることを示唆した(カッツマンら、2001, Cell 106, 145-55)。
【0021】
TSG101に加えて、WWドメインを有する細胞タンパク質がエンベロープRNAウイルスのLドメイン配列モチーフと相互作用することが示された(ハーティ(Harty)ら、2000, Proc Natl Acad Sci USA 97(25): 13871-6; キコニョゴ(Kikonyogo)ら、2001,
Proc Natl Acad Sci USA 98(20): 11199-204)。たとえば、ファーウェスタン結合アッセイによって、哺乳動物ユビキチンリガーゼNedd4のWWドメインおよびその酵母相同体Rsp5とEBOVのVP40Lドメインとの特定的な相互作用が示された(ハーティら、2000, Proc Natl Acad Sci USA 97(25): 13871-6; キコニョゴら、2001, Proc Natl Acad Sci USA 98(20): 11199-204)。そのデータは、ウイルス出芽におけるユビキチンの重要な役割をも示している(パトナイクら、2000, Proc Natl Acad Sci USA 97, 13069-74; カーター、2002, Trends Microbiol 10(5): 203-5; マイヤーズ(Myers)ら、2002,
J Virol 76(22): 11226-35)。Nedd4とTSG101との間にも構成的相互作用があるかもしれない。HIV−1は、エンドソーム/MVB経路に全く関係しない態様で感染細胞から逃れるためにNedd4およびTSG101を用いているのかもしれないことが示唆されている。しかし、TSG101はウイルス放出を行なうためにウイルスによって使われる主要な宿主因子として広く認められている。提案されるTSG101/MVB結合は部分的に、MVB形成の生物物理的過程に基づいており、それはエンドソーム脂質二重層の細胞質から内腔に向けての陥入を含むことが知られている(パトナイクら、2000, Proc Natl Acad Sci USA 97, 13069-74; ジャゼノスキ(Jasenosky)ら、2001, J Virol 75(11): 5205-14)。エンベロープRNAウイルスも同様の位相要因に面する。すなわち、膜の内部小葉におけるウイルス集合に続き、二重層はやはり細胞質から離れて細胞外環境に向けてめくれる必要がある。熱力学的に安定な二重層を分割するいかなる触媒能力も有さないウイルスは明らかにエンドソーム膜因子を助けに用いている。したがって、TSG101:Lドメイン相互作用は、新生ビリオンと膜分裂および出芽を行なうエンドソーム機構との間の極めて重要な連結体を提供しているだろう。前述のとおり、ESCRT−1の構成要素のTSG101は、ユビキチン化されたタンパク質を選別してMVB経路に含ませる。しかしこの選別は、HIVおよび関連のエンベロープRNAウイルスに感染した細胞においては覆されるかも知れない。すなわち、ユビキチン化されたタンパク質をMVB経路に導く代わりに、TSG101およびそのエンドソーム対応物は形質膜およびその関連ウイルス粒子がめくれるよう指示し、形質膜から摘み取られるエンベロープ粒子を形成するかも知れない。
【0022】
ビリオンの集合および放出を行なう分子決定子はまだ活発な調査領域であるが、いくつかの一般的な結合が出ている。第1に、ビリオン成熟の際にTSG101が形質膜に加入することが完全に要求される。中心的なTSG101の役割を支持するデータは強力である。すなわち、(i)TSG101UBCドメインの過剰発現は、HIV−1Gag発現細胞におけるVLP形成をトランスドミナントに妨害する(デミロフら、2002, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:955-960)。(ii)RNA干渉を介したTSG101発現の除去は、HIV−1出芽を損なう(ガルスら、2001, Cell 107:55-65)。また、(iii)これら両方の場合において、電子顕微鏡分析により、Lドメイン欠損ウイルスを発現する細胞において見られるものと構造的に類似した、膜性柄を介して形質膜につながれたウイルス粒子が示された。マーティン−セラーノらによって示された通り、TSG101のフィロウイルスVP40またはHIV−1 p6Gagとの結合を妨げるようなLドメイン点突然変異は、ヒト細胞からのウイルス粒子放出をかなり減少させ、この効果はTSG101が脂質二重層においてウイルスタンパク質と共局在できなくなることと一致する(マーティン−セラーノら、2001, Nature Medicine 7:1313-19)。関連実験は、EBOVのLドメインが、VLP放出に対する識別可能な影響なしにp6GagのLドメインと置換可能であることを示しており、これはエンベロープRNAウイルスの出芽機構の保存された性
質を強調する。重要なことに、一旦TSG101がHIV−1のGagに融合されると、HIV−1のLドメインは重要でなくなる。したがって、Lドメインの主要な役割はTSG101を形質膜に加えることである。このTSG101とウイルスLドメインとの間の相互作用は、HIV、EBOVおよびMARV感染の防止および処置に対する新たな標的を表わす(ルバン(Luban)、2001, Nat Med 7(12): 1278-80; シニア(Senior)、2001,
Drug Discov Today 6(23):1184-1186)。
【0023】
発明者は、ウイルス感染を阻害または減少させるために抗−TSG101抗体を用い得ることを発見した。
【0024】
5.1.抗−TSG101抗体
この発明は、ウイルス感染を阻害または減少させるための、TSG101タンパク質に特異的に結合する結合部位を含む抗体の用法を含む。したがって、こうした抗−TSG101抗体は広範囲の抗ウイルス剤として用いられ得る。ここで用いられる「抗体」という用語は免疫グロブリン分子を示す。態様の1つにおいて、抗体はTSG101タンパク質のC−末端領域に結合する。好ましい態様において、抗体はアミノ酸領域QLRALMQKARKTAGLSDLY(SEQ ID NO:3)に含まれるエピトープに結合する。別の態様において、抗体はTSG101タンパク質のN−末端領域に結合する。好ましい態様において、抗体はアミノ酸領域VRETVNVITLYKDLKPVL(SEQ ID NO:2)に含まれるエピトープに結合する。
【0025】
ここで用いられる「エピトープ」は抗原決定基、すなわち宿主における免疫応答を誘発するか、または抗体によって結合される分子の領域を示す。この領域は連続的なアミノ酸を含んでもよいが必ずしも含まなくてもよい。エピトープという用語は当該技術分野において「抗原決定基」としても公知である。エピトープは、宿主の免疫系に対して一意である空間的コンフォメーションにおいてたった3個のアミノ酸を含んでいてもよい。一般的に、エピトープは少なくとも5個のこうしたアミノ酸からなり、より一般的には少なくとも8−10個のこうしたアミノ酸からなる。こうしたアミノ酸の空間的コンフォメーションを決定する方法は当該技術分野において公知である。
【0026】
この発明はまた、TSG101タンパク質に特異的に結合する結合部位を含む抗体断片の用法も想定している。免疫グロブリン分子の免疫活性断片の例としては、抗体をペプシンまたはパパインなどの酵素で処理することによって生成できるF(ab)およびF(ab′)2断片がある。抗体の免疫活性断片を生成および発現する方法の例は、ここに全体にわたり引用により援用する米国特許第5,648,237号に見出すことができる。
【0027】
免疫グロブリン分子は、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロンおよびミュー定常領域ならびに無数の免疫グロブリン可変領域を含む遺伝子によってコードされる。軽鎖(L鎖)はカッパまたはラムダのいずれかに分類される。軽鎖は可変軽(VL)および定常軽(CL)ドメインを含む。重鎖(H鎖)はガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロンに分類され、それらは順に免疫グロブリンクラスIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEを定める。重鎖は、可変重(VH)、定常重1(CH1)、ヒンジ、定常重2(CH2)、および定常重3(CH3)ドメインを含む。IgG重鎖はさらにその配列の変化に基づいてサブクラス化され、そのサブクラスはIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4と呼ばれる。
【0028】
抗体はさらに2組の軽および重ドメインに分けることができる。対になったVLおよびVHドメインの各々は一連の7つのサブドメインを含む。すなわち、フレームワーク領域1(FR1)、相補性決定領域1(CDR1)、フレームワーク領域2(FR2)、相補性決定領域2(CDR2)、フレームワーク領域3(FR3)、相補性決定領域3(CD
R3)、およびフレームワーク領域4(FR4)であり、これらが抗体−抗原認識ドメインを構成する。
【0029】
適切な抗原特異性のモノクローナル抗体からの遺伝子を適切な生物活性の第2のヒト抗体からの遺伝子とともにスプライシングすることによってキメラ抗体を作成してもよい。より特定的には、抗体の可変領域をコードする遺伝子を第2の抗体分子からの定常領域遺伝子とともにスプライシングすることによってキメラ抗体が作成されてもよい。この方法は、相補性決定領域がマウスでありフレームワーク領域がヒトであることによってその抗体で処置されたヒト患者の免疫応答の可能性を減少させるヒト化モノクローナル抗体を生成するのに用いられる(全体にわたりここに引用により援用する米国特許第4,816,567号、第4,816,397号、第5,693,762号、第5,585,089号、第5,565,332号および第5,821,337号)。
【0030】
この発明において用いるために好適な抗体は天然供給源から得ても、または遺伝子工学技術による定常領域機能の変更を含む、ハイブリドーマ、組換えもしくは化学合成法によって生成されてもよい(米国特許第5,624,821号)。この発明の抗体はいずれのアイソタイプであってもよいが、ヒトIgG1であることが好ましい。
【0031】
抗体はたとえば完全な免疫グロブリンとして存在しても、またはパパインもしくはペプシンなどのさまざまなペプチダーゼによる消化によって生成されるいくつかのよく特徴付けされた断片に切断されてもよい。ペプシンは抗体をヒンジ領域中のジスルフィド結合の下で消化して、軽鎖がジスルフィド結合によってVH−CH1につながれてなるFabの二量体である、抗体のF(ab)′2断片を生成する。ヒンジ領域中のジスルフィド結合を切断することによってF(ab)′2二量体をFab′単量体に変えるための穏やかな条件下で、F(ab)′2を減少させてもよい。Fab′単量体は本質的にヒンジ領域の部分を有するFabである。エピトープ、抗体および抗体断片の詳細な説明については、ポール(Paul)編、1993年「基礎免疫学(Fundamental Immunology)」第3版(ニューヨーク: Raven Press)を参照されたい。こうしたFab′断片を、化学的に、または組換DNA技術を用いて、新規に(de novo)合成してもよいことを当業者は認識するだろう。よってここで用いられる抗体断片という用語は、抗体全体の変形によって生成された抗体断片または新規に合成されたものを含む。
【0032】
ここで用いられる抗体はまた単一鎖抗体(scFv)であってもよく、これは一般的に、軽鎖の可変ドメインがポリペプチドリンカを介して重鎖の可変ドメインに融合されてなる融合ポリペプチドを含む。
【0033】
この発明はまた、ウイルス感染を阻害または減少させるための抗−TSG101抗体のポリクローナル集団の用法も含む。ここで用いられる、この発明の抗−TSG101抗体のポリクローナル集団とは、抗−TSG101抗体の集団を示し、それは各々が異なる結合特異性を有する複数の異なる抗−TSG101抗体を含む。態様の1つにおいて、抗−TSG101抗体の集団は、TSG101タンパク質のC−末端領域に結合する抗体を含む。好ましい態様において、抗−TSG101抗体の集団は、アミノ酸領域QLRALMQKARKTAGLSDLY(SEQ ID NO:3)に含まれる1つまたはそれ以上のエピトープに結合する抗体を含む。別の態様において、抗−TSG101抗体の集団は、TSG101タンパク質のN−末端領域に結合する抗体を含む。特定の態様において、抗−TSG101抗体の集団は、アミノ酸領域VRETVNVITLYKDLKPVL(SEQ ID NO:2)に含まれる1つまたはそれ以上のエピトープに結合する抗体を含む。
【0034】
好ましくは、ポリクローナル集団の複数の抗−TSG101抗体は、TSG101タンパク質の異なるエピトープに対する特異性を含む。好ましい態様において、ポリクローナ
ル集団中の抗−TSG101抗体の少なくとも90%、75%、50%、20%、10%、5%、または1%が所望のエピトープを標的にする。別の好ましい態様においては、ポリクローナル集団中のあらゆる単一の抗−TSG101抗体の割合は、集団の90%、50%または10%を超えない。ポリクローナル集団は異なる特異性を有する少なくとも2つの異なる抗−TSG101抗体を含む。より好ましくは、ポリクローナル集団は少なくとも10種の異なる抗−TSG101抗体を含む。最も好ましくは、ポリクローナル集団は異なる特異性を有する少なくとも100種の異なる抗−TSG101抗体を含む。
【0035】
5.2.抗−TSG101抗体の生成
TSG101タンパク質に結合する抗体を増やすためにTSG101タンパク質またはその断片が用いられてもよい。こうした抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、単一鎖、Fab断片、およびFab発現ライブラリを含むがそれに制限されない。好ましい態様において、抗C−末端TSG101抗体は、TSG101タンパク質の好適なC−末端断片を用いて増やされる。こうした抗体はウイルス生成の阻害に有用である。
【0036】
5.2.1 モノクローナル抗−TSG101抗体の生成
抗体は、免疫原としてのTSG101タンパク質またはその断片によって好適な対象を免疫化することによって調製できる。免疫化した対象における抗体力価は、固定化ポリペプチドを用いる酵素結合免疫吸着剤検定法(ELISA)などの標準的な技術によって時間を追ってモニタできる。所望であれば、哺乳動物(たとえば血液)から抗体分子を単離し、IgG画分を得るためのプロテインAクロマトグラフィなどの周知の技術によってさらに精製できる。態様の1つにおいて、抗−N末端TSG101抗体(抗−TSG101抗体“C”とも呼ばれる)は、ヒトTSG101タンパク質のN−末端断片VRETVNVITLYKDLKPVL(SEQ ID NO:2)を用いて増やされる。別の態様において、抗−C末端TSG101抗体(抗−TSG101抗体“E”とも呼ばれる)は、ヒトTSG101タンパク質のC−末端断片QLRALMQKARKTAGLSDLY(SEQ ID NO:3)を用いて増やされる。
【0037】
免疫化から適切な時間が経った後、たとえば特定の抗体力価が最も高いときに、対象から抗体生成細胞を得て、コーラー(Kohler)およびミルスタイン(Milstein)(1975, Nature 256:495-497)によって最初に記載されたハイブリドーマ技術、コツボル(Kozbor)ら(1983, Immunol. Today 4:72)によるヒトB細胞ハイブリドーマ技術、コール(Cole)ら(1985, モノクローナル抗体と癌治療法(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy)、Alan R. Liss Inc., pp. 77-96)によるEBV−ハイブリドーマ技術、またはトリオーマ技術などの標準的な技術によってモノクローナル抗体を調製するために用いてもよい。ハイブリドーマを生成するための技術は周知である(免疫学の最新プロトコル(Current Protocols in Immunology)、1994, John Wiley & Sons, Inc., ニューヨーク、NYを参照)。この発明のモノクローナル抗体を生成するハイブリドーマ細胞は、たとえば標準ELISAアッセイを用いて,目的のポリペプチドに結合する抗体に対してハイブリドーマ培養上清をスクリーニングすることにより検出される。
【0038】
モノクローナル抗体は実質的に均質な抗体の集団から得られる。すなわち、集団を含む個々の抗体は、少量存在し得る自然に起り得る突然変異を除いては同一である。よって、「モノクローナル」という修飾語は、別個の抗体の混合物ではないという抗体の特徴を示す。たとえば、モノクローナル抗体はコーラーら(1975, Nature 256:495)によって最初に記載されたハイブリドーマ法を用いて作成されても、または組換えDNA法(米国特許第4,816,567号)によって作成されてもよい。ここで用いられる「モノクローナル抗体」という用語はまた、その抗体が免疫グロブリンであることを示す。
【0039】
モノクローナル抗体を生成するハイブリドーマ法において、マウスまたはハムスターな
どその他の適切な宿主動物は、前述のように免疫化されて、免疫化に用いられたタンパク質に特異的に結合する抗体を生成するかまたは生成できるリンパ球を誘発する(たとえば、ここに全体にわたり引用により援用する米国特許第5,914,112号を参照)。
【0040】
代替的に、リンパ球がインビトロで免疫化されてもよい。リンパ球は次いでポリエチレングリコールなどの好適な融合剤を用いて骨髄腫細胞と融合され、ハイブリドーマ細胞を形成する(ゴーディング(Goding)、モノクローナル抗体:原理と実際(Monoclonal Antibodies: Principles and Practice)、pp. 59-103 (Academic Press, 1986))。こうして調製されたハイブリドーマ細胞は、融合していない親骨髄腫細胞の生育または生存を阻害する1つまたはそれ以上の物質を含有することが好ましい好適な培養液中に接種して生育される。たとえば、親骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を持たないとき、そのハイブリドーマに対する培養液は典型的にヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含み(HAT培地)、これらの物質はHGPRT欠失細胞の生育を防止する。
【0041】
好ましい骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体生成細胞による抗体の安定した高レベル生成を支持し、HAT培地などの培地に感受性の細胞である。これらの中でも好ましい骨髄腫細胞系は、ソーク研究所細胞配布センター(Salk Institute Cell Distribution Center)(サンディエゴ、カリフォルニア、USA)より入手可能なMOPC−21およびMPC−11マウス腫瘍由来のものなどのネズミ骨髄腫系、ならびにアメリカンタイプカルチャーコレクション(ロックビル、Md、USA)より入手可能なSP−2細胞である。
【0042】
ヒト骨髄腫およびマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞系もまた、ヒトモノクローナル抗体の生成に対して記載されている(コツボル、1984, J. Immunol., 133:3001; ブロデュール(Brodeur)ら、モノクローナル抗体生成技術と応用(Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications)、pp. 51-63 (Marcel Dekker, Inc., ニューヨーク、1987))。ハイブリドーマ細胞が生育する培養液は、抗原に対して向けられたモノクローナル抗体の生成に対してアッセイされる。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって生成されるモノクローナル抗体の結合特異性が、免疫沈降法によって、またはラジオイムノアッセイ(RIA)もしくは酵素結合免疫吸着剤検定法(ELISA)などのインビトロ結合アッセイによって定められる。モノクローナル抗体の結合親和性は、たとえばムンソン(Munson)ら(1980, Anal. Biochem., 107:220)のスキャッチャード分析によって定めることができる。
【0043】
所望の特異性、親和性および/または活性の抗体を生成するハイブリドーマ細胞が同定された後、そのクローンは限界希釈手順によってサブクローニングされ、標準的な方法によって生育されてもよい(ゴーディング、モノクローナル抗体:原理と実際、pp. 59-103, Academic Press, 1986)。この目的に好適な培養液はたとえば、D−MEMまたはRPMI−1640培地などである。また、ハイブリドーマ細胞は動物における腹水腫瘍としてインビボで生育されてもよい。サブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体は、たとえばプロテインA−セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィ、ゲル電気泳動、透析、またはアフィニティクロマトグラフィなどの従来の免疫グロブリン精製手順によって、培養液、腹水または血清から好適に分離される。
【0044】
モノクローナル抗体分泌ハイブリドーマの調製の代わりに、組換え組合せ免疫グロブリンライブラリ(たとえば、抗体ファージディスプレイライブラリ)をTSG101タンパク質または断片によってスクリーニングすることによって、TSG101タンパク質またはその断片に向けられたモノクローナル抗体を同定および単離できる。ファージディスプレイライブラリを生成およびスクリーニングするためのキットは商業的に入手可能である
(たとえば、ファルマシア組換えファージ抗体システム、カタログ番号第27−9400−01号、およびストラタジーン抗原SurfZAP(商標)ファージディスプレイキット、カタログ番号第240612号)。加えて、抗体ディスプレイライブラリの生成およびスクリーニングに用いるために特に適した方法および試薬の例はたとえば、米国特許第5,223,409号および第5,514,548号、PCT公報第WO92/18619号、PCT公報第WO91/17271号、PCT公報第WO92/20791号、PCT公報第WO92/15679号、PCT公報第WO93/01288号、PCT公報第WO92/01047号、PCT公報第WO92/09690号、PCT公報第WO90/02809号;フックス(Fuchs)ら、1991, Bio/Technology 9: 1370-1372; ハイ(Hay)ら、1992, Hum. Antibod. Hybridomas 3:81-85; ヒューズ(Huse)ら、1989, Science 246:1275-1281; グリフィズ(Griffiths)ら、1993, EMBOJ. 12:725-734などに見出すことができる。
【0045】
また、適切な生物的活性のヒト抗体分子からの遺伝子とともに適切な抗原特異性のマウス抗体分子からの遺伝子をスプライシングすることによって「キメラ抗体」を生成するために開発された技術(モリソン(Morrison)ら、1984 Proc. Natl. Acad. Sci., 81, 6851-6855; ニューバーガー(Neuberger)ら、1984, Nature 312, 604-608; タケダ(Takeda)ら、1985, Nature, 314, 452-454)を用いてもよい。キメラ抗体とは、ネズミmAb由来の可変領域とヒト免疫グロブリン定常領域とを有するものなど、異なる部分が異なる動物種に由来する分子のことである(たとえば、ここに全体にわたり引用により援用するキャビリー(Cabilly)らの米国特許第4,816,567号およびボス(Boss)らの米国特許第4,816,397号を参照)。
【0046】
ヒト化抗体とは、ヒト以外の種からの1つまたはそれ以上の相補性決定領域(CDR)と、ヒト免疫グロブリン分子からのフレームワーク領域とを有するヒト以外の種からの抗体分子である(たとえば、ここに全体にわたり引用により援用する米国特許第5,585,089号を参照)。こうしたキメラおよびヒト化モノクローナル抗体は、たとえばPCT公報第WO87/02671号、欧州特許出願第184,187号、欧州特許出願第171,496号、欧州特許出願第173,494号、PCT公報第WO86/01533号、米国特許第4,816,567号および第5,225,539号、欧州特許出願第125,023号;ベター(Better)ら、1988, Science 240:1041-1043; リウ(Liu)ら、1987, Proc, Natl. Acad. Sci. USA 84: 3439-3443; リウら、1987, J. Immunol. 139:3521-3526; サン(Sun)ら、1987, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:214-218; ニシムラ(Nishimura)ら、1987, Canc. Res. 47:999-1005; ウッド(Wood)ら、1985, Nature 314:446-449; ショー(Shaw)ら、1988, J. Natl. Cancer Inst. 80:1553-1559; モリソン、1985, Science 229:1202-1207; オイ(Oi)ら、1986, Bio/Techniques 4:214; ジョーンズ(Jones)ら、1986, Nature 321:552-525; バーヘイアン(Verhoeyan)ら、1988, Science 239:1534; ならびに、ベイドラー(Beidler)ら、1988, J. Immunol. 141:4053-4060に記載される方法を用いて、当該技術分野において公知の組換えDNA技術によって生成できる。
【0047】
相補性決定領域(CDR)移植(グラフティング)は、抗体をヒト化する別の方法である。それはヒトのフレームワークに完全な抗原特異性および結合親和性を移すためにネズミ抗体を再構築するステップを含む(ウインター(Winter)ら、米国特許第5,225,539号)。CDR移植抗体はさまざまな抗原に対してうまく構築されている。たとえば、クイーン(Queen)ら、1989年(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:10029)に記載されるようなIL−2受容体に対する抗体、リーヒマン(Riechmann)ら(1988, Nature, 332:323)に記載されるような細胞表面受容体CAMPATHに対する抗体、コールら(1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:2869)におけるB型肝炎に対する抗体、およびテンペスト(Tempest)ら(1991, Bio-Technology, 9:267)におけるウイルス抗原すなわち呼
吸器系合胞体ウイルスに対する抗体などである。CDR移植抗体は、ネズミモノクローナル抗体のCDRがヒト抗体に移植されて生成される。移植後、ほとんどの抗体は親和性を維持するためにフレームワーク領域における付加的なアミノ酸変更による利益を受ける。これはおそらく、フレームワーク残基がCDRコンフォメーションを維持するために必要だからであり、いくつかのフレームワーク残基は抗原結合部位の一部であることが示されている。しかし、抗原部位を導入しないようにフレームワーク領域を保存するために、その配列は確立された生殖細胞系配列と比較された後、コンピュータモデリングされる。
【0048】
ヒト患者の治療的処置に対しては、完全にヒトの(completely human)抗体が特に望ましい。こうした抗体は、内因性の免疫グロブリン重鎖および軽鎖遺伝子を発現できないがヒトの重鎖および軽鎖遺伝子を発現できるトランスジェニックマウスを用いて生成できる。このトランスジェニックマウスは、TSG101タンパク質によって通常の態様で免疫化されている。
【0049】
TSG101タンパク質に向けられたモノクローナル抗体は従来のハイブリドーマ技術を用いて得ることができる。トランスジェニックマウスに含まれるヒト免疫グロブリントランスジーンはB細胞分化の際に再配列し、その後クラススイッチおよび体細胞変異を受ける。よってこうした技術を用いることにより、治療に有用なIgG、IgAおよびIgE抗体を生成することができる。ヒト抗体を生成するためのこの技術の概要については、ロンバーグ(Lonberg)およびハッサー(Huszar)(1995, Int. Rev. Immunol. 13:65-93)を参照されたい。ヒト抗体およびヒトモノクローナル抗体を生成するためのこの技術の詳細な考察、およびこうした抗体を生成するための手順については、たとえば米国特許第5,625,126号、米国特許第5,633,425号、米国特許第5,569,825号、米国特許第5,661,016号、および米国特許第5,545,806号を参照されたい。また、アブジェニクス社(フリーモント、CA、たとえば米国特許第5,985,615号を参照)およびメダレックス社(プリンストン、NJ)などの会社は、前述と同様の技術を用いたTSG101タンパク質またはその断片に向けられたヒト抗体の提供に従事できる。
【0050】
選択されたエピトープを認識して結合する完全にヒトの抗体は、「誘導選択(guided selection)」と呼ばれる技術を用いて生成できる。このアプローチでは、選択された非ヒトモノクローナル抗体、たとえばマウス抗体を用いて、同じエピトープを認識する完全にヒトの抗体の選択を誘導する(ジェスパーズ(Jespers)ら、1994, Bio/technology 12:899-903)。
【0051】
免疫原として用いるために、アフィニティクロマトグラフィまたは免疫沈降などの標準的な技術によって、既存の抗−TSG101抗体を用いて病原体の付加的な抗原を単離してもよい。さらに、こうした抗体を用いて(たとえば細胞溶解物または細胞上清中の)タンパク質を検出して、TSG101タンパク質の発生量および発現のパターンを評価してもよい。抗体を検出可能な物質と結合させることによって、検出を容易にできる。検出可能な物質の例にはさまざまな酵素、補欠分子族、蛍光材料、発光材料、生物発光材料、および放射性材料が含まれる。好適な酵素の例としてはセイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータガラクトシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼがあり、好適な補欠分子族複合体の例としてはストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンがあり、好適な蛍光材料の例としてはウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンがあり、発光材料の例としてはルミノールがあり、生物発光材料の例としてはルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンがあり、好適な放射性材料の例としては125I、131I、35Sまたは3Hがある。
【0052】
5.2.2.ポリクローナル抗−TSG101抗体の生成
抗−TSG101抗体は、マウス、ウサギおよびウマなどであるがそれに制限されない好適な動物を免疫化することによって生成できる。
【0053】
TSG101タンパク質またはその断片を含む免疫原調製物を用いて、好適な対象(たとえば、ウサギ、ヤギ、マウスまたはその他の哺乳動物)を免疫化することによって抗体を調製する。適切な免疫原調製物はたとえば、組換えにより発現されるかまたは化学的に合成されたTSG101ペプチドまたはポリペプチドを含んでもよい。調製物は、フロイントの完全または不完全アジュバントなどのアジュバント(補助薬)、または類似の免疫刺激剤をさらに含んでもよい。
【0054】
免疫原として用いるのに好適なTSG101タンパク質の断片は、8アミノ酸、より好ましくは10アミノ酸、およびさらに好ましくは15アミノ酸の長さの、TSG101タンパク質の少なくとも一部を含む。
【0055】
この発明はまた、免疫原として用いるためのキメラまたは融合TSG101ポリペプチドを提供する。ここで用いられる「キメラ」または「融合」TSG101ポリペプチドは、異種ポリペプチドに動作可能に結合されたTSG101ポリペプチドのすべてまたは一部を含む。融合TSG101ポリペプチドにおいて、「動作可能に結合される」という用語は、TSG101ポリペプチドと異種ポリペプチドとが互いにフレームを合せて融合されていることを示すことが意図される。異種ポリペプチドは、TSG101ポリペプチドのN−末端またはC−末端に融合できる。
【0056】
有用な融合TSG101ポリペプチドの1つは、TSG101ポリペプチドがGST配列のC−末端に融合されたGST融合TSG101ポリペプチドである。こうした融合TSG101ポリペプチドは、組替えTSG101ポリペプチドの精製を容易にできる。
【0057】
別の態様において、融合TSG101ポリペプチドはN−末端に異種シグナル配列を含むことによって、TSG101ポリペプチドが分泌され、高親和性抗体を生成するために高い均質性に精製され得るようにする。たとえば、免疫原の本来のシグナル配列を除去し、別のタンパク質からのシグナル配列で置換してもよい。たとえば、バキュロウイルスエンベロープタンパク質のgp67分泌配列を異種シグナル配列として用い得る(分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)、アウズベル(Ausubel)ら編、John Wiley & Sons、1992)。真核生物異種シグナル配列の他の例には、メリチンおよびヒト胎盤アルカリホスファターゼ(ストラタジーン、ラホーヤ、カリフォルニア)の分泌配列がある。さらに別の例においては、有用な原核生物異種シグナル配列はphoA分泌シグナルおよびプロテインA分泌シグナル(ファルマシアバイオテク、ピスカタウェイ、ニュージャージー)を含む。
【0058】
さらに別の態様において、融合TSG101ポリペプチドは、免疫グロブリンタンパク質族のメンバーに由来する配列にTSG101ポリペプチドのすべてまたは一部が融合された免疫グロブリン融合タンパク質である。免疫グロブリン融合タンパク質は、対象におけるTSG101ポリペプチドに対して向けられる抗体を生成するための免疫原として用い得る。
【0059】
キメラおよび融合TSG101ポリペプチドは、標準的な組換えDNA技術によって生成できる。態様の1つにおいて、融合遺伝子は、自動DNA合成装置を含む従来の技術によって合成できる。代替的には、2つの連続する遺伝子断片間の相補的なオーバーハングを起こさせるアンカープライマを用いて遺伝子断片のPCR増幅を行なうことができ、その後アニーリングおよび再増幅を行なうことによってキメラ遺伝子配列を生成できる(例
、アウズベルら、前出)。さらに、融合ドメイン(例、GSTポリペプチド)を既にコードしている多くの発現ベクターが商業的に入手可能である。免疫原をコードする核酸を、融合ドメインがポリペプチドにフレームを合せて結合されるようにして、こうした発現ベクターにクローニングできる。
【0060】
次に、TSG101免疫原調製物を用いて好適な動物を免疫化する。その動物はヒト抗体を分泌できる特定化されたトランスジェニック動物であることが好ましい。制限的でない例としては、特定の病原体に向けられた抗体のポリクローナル集団を生成するために用い得るトランスジェニックマウス系統がある(フィッシュウィルド(Fishwild)ら、1996, Nature Biotechnology 14:845-851; メンデス(Mendez)ら、1997, Nature Genetics 15:146-156)。この発明の態様の1つにおいては、再配列されていないヒト免疫グロブリン遺伝子を有するトランスジェニックマウスが標的免疫原によって免疫化される。マウスにおいて免疫原調製物に対する活発な免疫応答が誘発された後、マウスの血液が回収されて、血漿または血清からヒトIgG分子の精製調製物を生成できる。ヒトIgG分子の精製調製物を得るために当該技術分野において公知のあらゆる方法が用いられてもよく、その方法は好適なカラムマトリックスに結合された抗−ヒトIgG抗体を用いるアフィニティカラムクロマトグラフィを含むがそれに制限されない。抗−ヒトIgG抗体は当該技術分野において公知のあらゆる供給源から得ることができ、たとえばダコ(Dako)社およびICNなどの商業的供給源から得てもよい。生成されたIgG分子の調製物は、異なる程度の親和性で免疫原に結合するIgG分子のポリクローナル集団を含む。調製物のかなりの部分が免疫原に特異的なIgG分子であることが好ましい。IgG分子のポリクローナル調製物が記載されるが、免疫グロブリン分子のあらゆる1種、または異なる種類のあらゆる組合せを含むポリクローナル調製物も想定されており、この発明の範囲に含まれることが意図されることが理解される。
【0061】
TSG101タンパク質に向けられた抗体の集団は、ファージディスプレイライブラリから生成できる。ポリクローナル抗体は、TSG101タンパク質またはその断片との特異性の十分に大きくて多様な集団を有するファージディスプレイライブラリのアフィニティスクリーニングによって得ることができる。抗体ディスプレイライブラリの生成およびスクリーニングに用いるために特に適した方法および試薬の例はたとえば、米国特許第5,223,409号および第5,514,548号、PCT公報第WO92/18619号、PCT公報第WO91/17271号、PCT公報第WO92/20791号、PCT公報第WO92/15679号、PCT公報第WO93/01288号、PCT公報第WO92/01047号、PCT公報第WO92/09690号、PCT公報第WO90/02809号;フックスら、1991, Bio/Technology 9: 1370-1372; ハイら、1992, Hum. Antibod. Hybridomas 3:81-85; ヒューズら、1989, Science 246:1275-1281; グリフィズら、1993, EMBOJ. 12:725-734などに見出すことができる。ファージディスプレイライブラリは、特異性の非常に大きな集団からの所望の抗体の選択を可能にする。ファージディスプレイライブラリの付加的な利点は、選択された抗体をコードする核酸を便利に得られることであり、それによってその後の発現ベクターの構築が容易になる。
【0062】
別の好ましい態様においては、ここに全体にわたり引用により援用する米国特許第6,057,098号に記載されるように、個別のメンバーのクローニング単離なしに選択され提示された抗体すべての集合を用いる方法によって、TSG101タンパク質またはその断片に向けられた抗体の集団が生成される。ポリクローナル抗体は、好ましくは複数の抗体を提示する提示ライブラリメンバーの濃縮後に、たとえば複数のエピトープを有する抗原分子との特異性の十分に大きなレパートリーを有するファージディスプレイライブラリのアフィニティスクリーニングによって得られる。選択された提示抗体をコードする核酸が除去されて好適なPCRプライマを用いて増幅される。核酸はゲル電気泳動によって精製されることにより、核酸の全長が単離されるようにできる。次いで各々の核酸が好適
な発現ベクターに挿入されることにより、異なる挿入物を有する発現ベクターの集団が得られる。発現ベクターの集団は次いで好適な宿主において発現される。
【0063】
5.2.3.ウイルス生成を阻害する抗−TSG101抗体の同定
この発明は、ウイルス出芽を阻害または減少させるために用い得る抗−TSG101抗体を同定する方法を提供する。態様の1つにおいて、この発明はレトロウイルス感染アッセイを用いて抗−TSG101抗体のウイルス感染に対する影響を定める方法を提供する。末端反復配列(LTR)プロモータから発現される大腸菌lacZ遺伝子を含むネズミ白血病ウイルス(MLV)由来ベクター(pBMN−Z−I−Neo)が、293細胞(フェニックス(Phoenix)A、ATCC)由来の両栄養性ネズミ白血病レトロウイルスパッケージング細胞系にトランスフェクションされる。フェニックスAヘルパー細胞によって生成されるレトロウイルスが回収されて、マウスN2A細胞(ATCC)の感染に用いられる。MLVベクターのトランスフェクションの24時間後に、抗−TSG101抗体が293ヘルパー細胞に加えられる。TSG101抗体のウイルス生成に対する効果は、ウイルス上清が標的細胞(N2A)に感染する効率によって定められる。次いで、β−ガラクトシダーゼ活性の細胞染色(正の細胞は青く染色され、図2における暗い点のように示される)によってN2A細胞の感染が定められる。
【0064】
典型的には、フェニックスA細胞はトランスフェクションの1日前にポリ−D−リジン被覆6ウェルプレートに接種される。次に4マイクログラムのpBMN−Z−I−Neoが12ulのリポフェクタミン2000(インビトロジェン(Invitrogen))の存在下で各ウェルにトランスフェクションされる。トランスフェクションの24時間後に、培地がトリコスタチンA(3uM)および5または10ugの適切な抗−TSG101抗体を含む1ml/ウェルの新鮮な培地と交換される。24から48時間後にウイルス上清が回収され、0.2umフィルタでフィルタリングされ、1mlのウイルス上清がポリブレン(10ug/ml)を含む1mlの新鮮な培地と混合されて、N2a細胞の1ウェルの感染に用いられる。感染の48時間後にN2a細胞は固定され、β−Gal染色キット(インビトロジェン)に記載されるとおりにX−Galで染色される。結果をデジタル画像で記録する。好ましくは、ウイルス生成を少なくとも10%、20%、50%、70%または90%減少させる抗−TSG101抗体が同定される。
【0065】
以下の例示的な実験においては、2つの抗−TSG101抗体“C”および“E”のウイルス感染に対する影響がテストされる。非特異的抗体対照としてウサギIgGが用いられる。10回を超える独立した実験が行なわれ、代表的な結果が図2に示される。抗体処理していないフェニックスヘルパー細胞(正の対照)は、効率的なレトロウイルスの生成およびN2A標的細胞の感染を示した(左上パネル)。ウサギIgGは影響しなかった(左中パネル)。抗−TSG101抗体“C”はウイルス生成を約20%−60%減少させた(左下パネル)。抗−TSG101抗体“E”はウイルス生成を約50−70%減少させた(右上パネル)。抗−C末端および抗−N末端抗体の混合物は、抗−C末端抗体のみのときと同様の結果を与えた(右中パネル)。ウイルス感染していないN2a細胞は最小限のバックグラウンド染色のみを示した(右下パネル)。
【0066】
別の態様において、ウイルス出芽を阻害または減少させるために用い得る抗−TSG101抗体は、たとえばHIVでトランスフェクションされたヒトCD4+ヒトT細胞系H9(H9ΔBglと示される)における、それらの細胞表面TSG101への結合に基づいて同定される。H9ΔBgl細胞は、エンベロープ欠損HIV構成(HIVゲノムのBglII断片の削除)によってトランスフェクションされたヒトCD4+Tリンパ球である。安定にトランスフェクションされたH9ΔBgl細胞は、欠損HIVエンベロープのために非感染型のHIVを生成し、よってそれは培養物中の他のH9ΔBgl細胞に感染できない。態様の1つにおいて、非トランスフェクションH9細胞が対照として用いられ
る。H9ΔBglに結合するが非トランスフェクションH9細胞に結合しない抗−TSG101抗体が、ウイルス出芽を阻害または減少させるために用い得る抗体として同定される。
【0067】
好ましい態様において、HIV生成細胞(例、H9ΔBgl)および対照H9細胞における細胞表面TSG101に対する抗−TSG101抗体の結合は、蛍光活性化細胞選別(FACS)によって同定される。態様の1つにおいて、H9ΔBglおよびH9細胞はどちらも固定され、抗−TSG101抗体とともにインキュベートされ、蛍光ラベルされた二次抗体で染色される。免疫染色された細胞は次にFACSによって分析される。
【0068】
別の態様において、レトロウイルス生成に対するTSG101の阻害的効果をさらに調べるためにHIV−1ウイルス生成アッセイが用いられる。HIV−1ベクターpNL4−3が293T細胞にトランスフェクションされる。トランスフェクションの24時間後に、抗−TSG101抗体および任意に非特異的対照抗体が細胞培養物にそれぞれ加えられる。さらに24時間のインキュベーションの後、細胞溶解物が抽出され、細胞培養上清が集められて、たとえばスクロース勾配などによってHIV−1ビリオンが精製される。細胞溶解物および精製されたビリオンの両方が、たとえば抗−p55および/または抗−p24抗体などの抗−HIV−1抗体を用いたウェスタンブロットにより分析される。HIV−1ビリオン放出の顕著な阻害(たとえば、ウェスタンブロットの密度トレーシングによって、40%、50%、60%、70%、または80%を超える阻害など)を示す抗−TSG101抗体を同定できる。
【0069】
さらに別の態様において、抗−TSG101抗体のHIV放出に対する影響が、H9ΔBgl細胞に基づくHIV放出アッセイを用いて評価される。H9ΔBgl細胞からのHIV放出は、細胞培養上清のHIVp24ELISAによって直接測定できる。態様の1つにおいて、複数の異なる濃度の抗−TSG101抗体がそれぞれH9ΔBgl細胞とともにインキュベートされる。態様の1つにおいて、対照抗体(例、同じ濃度のウサギIgG)もそれぞれH9ΔBgl細胞とともにインキュベートされる。抗体を加えてから48時間後に培養上清が回収されてHIVp24ELISAに供される。抗−TSG101抗体のデータを対応する対照抗体のデータと比較することによって、抗−TSG101抗体のウイルス放出の阻害に対する効果が定められる。
【0070】
さらに別の態様において、ウイルス放出に続くHIV伝染性に対する抗−TSG101抗体の影響が定められる。態様の1つにおいて、ジャーカット(Jurkat)細胞からのHIV上清を用いて、抗−TSG101抗体の存在下でMAGI細胞に感染させる。ウサギIgGを対照として用い得る。抗−TSG101抗体のHIV伝染性に対する効果は、対照との比較によって定められる。
【0071】
5.3.ウイルス感染の処置のための抗−TSG101抗体の用法
TSG101抗体は、ウイルス生成の阻害に効果的である。したがってこの発明は、たとえば抗−C末端TSG101抗体などのTSG101抗体を用いてHIV感染を含むウイルス感染を処置する方法を提供する。
【0072】
5.3.1.ウイルス感染
この発明の抗−TSG101抗体を用いることによって処置または防止できる疾患または障害は、レトロウイルス、ラブドウイルスまたはフィロウイルス、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、インフルエンザ、水痘、アデノウイルス、I型単純ヘルペス(HSV−I)、II型単純ヘルペス(HSV−II)、牛疫、ライノウイルス、エコーウイルス、ロタウイルス、呼吸器系合胞体(RS)ウイルス、乳頭腫ウイルス、パポバウイルス、サイトメガロウイルス、エキノウイルス、アルボウイルス、ハンタウイルス、コクサッキーウイ
ルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、ポリオウイルス、ヒト免疫不全ウイルスI型(HIV−I)、およびヒト免疫不全ウイルスII型(HIV−II)、あらゆるピコルナウイルス科、エンテロウイルス、カリチウイルス科、ウイルスのあらゆるノーウォーク群、トガウイルス、アルファウイルス、デング熱ウイルスなどのフラビウイルス、コロナウイルス、狂犬病ウイルス、マールブルグウイルス、エボラウイルス、パラインフルエンザウイルス、オルソミクソウイルス、ブニヤウイルス、アレナウイルス、レオウイルス、ロタウイルス、オルビウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルスI型、ヒトT細胞白血病ウイルスII型、サル免疫不全ウイルス、レンチウイルス、ポリオーマウイルス、パルボウイルス、エプスタイン−バーウイルス、ヒトヘルペスウイルス−6、サルヘルペスウイルス1(Bウイルス)、およびポックスウイルスによりもたらされるものを含むが、それに制限されない。
【0073】
この発明の抗−TSG101抗体を用いることによって処置または防止できる付加的な疾患または障害は、インフルエンザウイルス、ヒト呼吸器系合胞体ウイルス、仮性狂犬病ウイルス、仮性狂犬病ウイルスII、ブタロタウイルス、ブタパルボウイルス、ウシウイルス性下痢ウイルス、ニューカッスル病ウイルスh、ブタ流感ウイルス、ブタ流感ウイルス、口蹄疫ウイルス、ブタコレラ(hog colera)ウイルス、ブタインフルエンザウイルス、豚コレラ(African swine fever)ウイルス、ウシ伝染性鼻気管炎ウイルス、伝染性喉頭気管炎ウイルス、ラクロスウイルス、新生仔ウシ下痢ウイルス、ベネズエラウマ脳脊髄炎ウイルス、プンタトロ(punta toro)ウイルス、ネズミ白血病ウイルス、マウス乳癌ウイルス、ウマインフルエンザウイルスまたはウマヘルペスウイルス、ウシ呼吸器系合胞体ウイルスまたはウシパラインフルエンザウイルスによりもたらされるものを含むが、それに制限されない。
【0074】
5.3.2.ウイルス放出を阻害するために抗−TSG101抗体を用いる方法
態様の1つにおいて、この発明は、感染哺乳動物細胞からのHIV−1出芽などのウイルス出芽を阻害または減少させるために抗−TSG101抗体、好ましくは抗−C末端TSG101抗体を用いる方法を提供する。この発明の方法においては、1つまたはそれ以上の抗−TSG101抗体が感染細胞に接触させられる。抗−TSG101抗体は感染細胞の表面上のTSG101タンパク質に結合する。この抗−TSG101抗体の結合が、細胞からのウイルス粒子の放出または出芽を阻害または減少させる。
【0075】
別の態様において、この発明はまた、たとえばヒトなどの哺乳動物におけるたとえばHIV−1などのエンベロープウイルスによる感染を処置するために抗−TSG101抗体、好ましくは抗−C末端TSG101抗体を用いる方法を提供する。この発明の方法においては、ウイルスに感染したたとえばヒトなどの哺乳動物に、1つまたはそれ以上の抗−TSG101抗体を投与できる。投与後、抗−TSG101抗体は感染細胞の表面上のTSG101タンパク質に結合して感染細胞からのウイルス出芽を阻害する。
【0076】
この発明のさらに別の態様において、抗−TSG101抗体、好ましくは抗−C末端TSG101抗体は、1つまたはそれ以上の他の治療用抗ウイルス薬とともに用いられる。こうした組合せ療法において、抗−TSG101抗体は、治療薬の投与の前、同時または後に投与できる。抗−TSG101抗体と治療薬との投与の時間間隔は、当業者の熟知するルーチン実験により定めることができる。
【0077】
さらに別の態様において、この発明は、抗−TSG101抗体が結合した感染細胞の溶解に介在し得るアイソタイプに属する抗−TSG101抗体、たとえば抗−C末端TSG101抗体を用いてウイルス感染を処置する方法を提供する。好ましい態様において、抗−TSG101抗体は、成長因子受容体に結合して血清補体を活性化するか、および/または、たとえばマクロファージなどのエフェクタ細胞を活性化することによって抗体依存
性細胞傷害(ADCC)に介在するアイソタイプに属する。別の好ましい態様において、アイソタイプはIgG1、IgG2a、IgG3またはIgMである。
【0078】
抗−TSG101抗体の用量は、当業者の熟知するルーチン実験により定めることができる。抗−TSG101抗体の投与の効果または利益は、当該技術分野において公知のあらゆる方法によって評価できる。
【0079】
5.3.3.治療および/または診断用薬剤を送達するために抗−TSG101抗体を用いる方法
この発明は、ウイルス感染細胞に治療および/または診断用薬剤を送達するために抗−TSG101抗体を用いるための方法および組成物を提供する。
【0080】
感染細胞は、抗−TSG101抗体−薬物コンジュゲートを用いてターゲッティングされ殺されてもよい。たとえば、抗−TSG101抗体は、たとえば細胞増殖抑制もしくは細胞破壊剤などの細胞毒、または放射性金属イオンなどの治療的部分とコンジュゲートされてもよい。抗体−薬物コンジュゲートは、当該技術分野において公知の方法によって調製できる(たとえば、免疫コンジュゲート(Immunoconjugates)、ボーゲル(Vogel)編、1987; ターゲッティング薬(Targeted Drugs)、ゴールドバーグ(Goldberg)編、1983; 抗体介在送達系(Antibody Mediated Delivery Systems)、ロッドウェル(Rodwell)編、1988を参照)。パクリタキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン(dihydroxy anthracin dione)、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシンならびにそれらの類似体または同族体などであるがそれに制限されない治療薬を、この発明の抗−TSG101抗体にコンジュゲートできる。この発明の抗−TSG101抗体にコンジュゲートできるその他の治療薬剤は、代謝拮抗物質、たとえばメトトレキセート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルデカルバジン;アルキル化剤、たとえばメクロレタミン、チオエパクロラムブシル(thioepa chlorambucil)、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびシス−ジクロロジアミンプラチナ(II)(DDP)シスプラチン;アントラサイクリン、たとえばダウノルビシン(ダウノマイシン)およびドキソルビシン;抗生物質、たとえばダクチノマイシン(アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、アンスラマイシン(AMC);ならびに抗−有糸分裂剤、たとえばビンクリスチンおよびビンブラスチンを含むがそれに制限されない。この発明の抗−TSG101抗体にコンジュゲートできる治療薬剤はまた、所望の生物活性を有するタンパク質またはポリペプチドであってもよい。こうしたタンパク質はたとえば、アブリン、リシンA、シュードモナス菌体外毒素、またはジフテリア毒素などの毒素を含んでもよい。
【0081】
薬物分子はリンカーを介して抗−TSG101抗体に結合されてもよい。こうしたコンジュゲートの調製のためにあらゆる好適なリンカーを用いることができる。いくつかの態様において、リンカーは、標的部位において非修飾の形の薬分子をコンジュゲートから放出できるリンカーであってもよい。
【0082】
たとえば、所与の処置摂生の効力を定めるためなどの臨床検査手順の一部としてウイルス感染の進行をモニタするために、抗体を診断的に用いることもできる。抗体を検出可能な物質と結合させることによって、検出を容易にできる。検出可能な物質の例にはさまざまな酵素、補欠分子族、蛍光材料、発光材料、生物発光材料、放射性材料、さまざまな陽
電子放射断層撮影法を用いる陽電子放射金属、および非放射性常磁性金属イオンが含まれる。この発明に従った診断法として用いるための、抗体にコンジュゲートできる金属イオンについては、一般的に米国特許第4,741,900号を参照されたい。好適な酵素の例としてはセイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータガラクトシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼがあり、好適な補欠分子族複合体の例としてはストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンがあり、好適な蛍光材料の例としてはたとえば緑色蛍光タンパク質(GFP)などの蛍光タンパク質、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンがあり、発光材料の例としてはルミノールがあり、生物発光材料の例としてはルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンがあり、好適な放射性材料の例としては125I、131I、111In、177Lu、90Yまたは99Tcがある。
【0083】
抗体に治療用部分をコンジュゲートする技術は周知であり、たとえば、その各々がここに引用により援用される、アーノン(Arnon)ら、「癌治療における薬物の免疫ターゲッティングのためのモノクローナル抗体」(“Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy”)、モノクローナル抗体と癌治療(Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy)より、ライスフェルド(Reisfeld)ら編、pp. 243-56 (Alan R. Liss, Inc. 1985); ヘルストロム(Hellstrom)ら、「薬物送達のための抗体」(“Antibodies for Drug Delivery”)、調節薬物送達(Controlled Drug Delivery)(第2版)より、ロビンソン(Robinson)ら編、pp. 623-53 (Marcel Dekker, Inc. 1987); ソルペ(Thorpe)、「癌治療における細胞毒性薬剤の抗体担体:概説」(“Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review”)、モノクローナル抗体’84:生物学的および臨床的適用(Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications)より、ピンチェラ(Pinchera)ら編、pp. 475-506 (1985); 「癌治療における放射ラベル抗体の治療的用法の分析、結果および将来の予想」(“Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy”)、癌検出および治療のためのモノクローナル抗体(Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy)より、バルドウィン(Baldwin)ら編、pp. 303-16 (Academic press 1985)、およびソルペら「抗体−毒素コンジュゲートの調製および細胞毒特性」(“The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin Conjugates”)Immunol. Rev., 62:119-58 (1982)を参照されたい。
【0084】
代替的には、ここに引用により援用するセガール(Segal)らの米国特許第4,676,980号に記載されるように、抗体を第2の抗体とコンジュゲートして抗体ヘテロコンジュゲートを形成してもよい。
【0085】
5.3.4.ウイルス感染細胞の検出
Tsg101タンパク質、たとえばTSG101タンパク質のN−末端領域またはC−末端領域に対して向けられた抗体またはラベル抗体は、たとえば細胞表面上のTSG101タンパク質の存在を検出することによって、ウイルス感染の診断および予後に用いられてもよい。こうした診断法はまた、Tsg101遺伝子発現のレベルの異常、またはTsg101タンパク質の構造および/または一時的、組織、細胞、もしくは亜細胞内の所在の異常を検出するために用いられてもよい。
【0086】
分析される組織または細胞型は、ウイルスによって感染されることが知られているかまたはその疑いがあるものを含んでもよい。ここで用いられるタンパク質単離法はたとえば、ここに全体にわたり引用により援用する、ハーロウおよびレーン(ハーロウ(Harlow), E.およびレーン(Lane), D., 1988,「抗体:実験室マニュアル」(“Antibodies: A Laboratory Manual”), Cold Spring Harbor Laboratory Press.,コールドスプリングハ
ーバー、ニューヨーク)に記載されるものなどであってもよい。単離される細胞は細胞培養物由来であっても、または患者由来であってもよい。培養物から取られた細胞の分析は、細胞に基づく遺伝子治療技術の一部として用いられる細胞、または代替的にTsg101遺伝子の発現に対する化合物の効果をテストするための細胞の評価における必要なステップであり得る。
【0087】
Tsg101断片またはその保存された変異体もしくはペプチド断片を検出するための好ましい診断法はたとえば、それらの抗−Tsg101断片特異的抗体との相互作用によってTsg101断片または保存変異体もしくはペプチド断片を検出する免疫アッセイを含んでもよい。
【0088】
たとえば、この発明において有用である前述のものなどの抗体または抗体の断片を用いて、細胞の表面におけるTsg101断片またはその保存変異体もしくはペプチド断片の存在によって、感染細胞を定量的または定性的に検出してもよい。これはたとえば、光学顕微鏡、フローサイトメトリー、または蛍光測定検出と組合された、蛍光ラベルされた抗体(この節の下記を参照)を用いる免疫蛍光技術によって成し遂げることができる。こうした技術は、ウイルス出芽過程においてTsg101断片が細胞表面に加えられるウイルス感染において特に有用である。
【0089】
この発明において有用な抗体(またはその断片)は付加的に、Tsg101断片またはその保存変異体もしくはペプチド断片のインサイチュー(in situ)検出のために、免疫蛍光または免疫電子顕微鏡法などにおいて組織学的に用いられてもよい。インサイチュー検出は、患者から組織学的検体を除去し、そこにこの発明のラベルされた抗体を適用することによって成し遂げられてもよい。抗体(または断片)は、生物サンプルにラベル抗体(または断片)を被せることによって適用されることが好ましい。こうした手順を用いることにより、Tsg101断片または保存変異体もしくはペプチド断片の存在だけでなく、検査される組織内でのその分布をも定めることができる。通常の当業者は、この発明を用いてこうしたインサイチュー検出を達成するためにあらゆる広範囲の組織学法(染色手順など)を変更できることを容易に認めるであろう。
【0090】
Tsg101断片またはその保存変異体もしくはペプチド断片に対する免疫アッセイは典型的に、生物流体、組織抽出物、採取されたばかりの細胞、または細胞培養物中でインキュベートされていた細胞の溶解物などのサンプルを、Tsg101断片またはその保存変異体もしくはペプチド断片を識別可能な検出可能にラベルされた抗体の存在下でインキュベートするステップと、当該技術分野において周知のいくつかの技術のいずれかによって、結合された抗体を検出するステップとを含む。
【0091】
生物サンプルは、ニトロセルロースなどの固相支持体もしくは担体、または細胞、細胞粒子もしくは可溶性タンパク質を固定できるその他の固体支持体に接触させてその上に固定してもよい。次いでその支持体を好適な緩衝液で洗浄し、検出可能にラベルされたTsg101タンパク質特異的抗体によって処理する。次いで緩衝液で固相支持体の2度目の洗浄を行なって、非結合抗体を除去してもよい。次いで、固体支持体上の結合したラベルの量が従来の手段によって検出される。
【0092】
「固相支持体または担体」によって、抗原または抗体に結合できるあらゆる支持体が意図される。周知の支持体または担体は、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然および修飾セルロース、ポリアクリルアミド、斑レイ岩および磁鉄鉱を含む。この発明の目的のために、担体の性質はある程度可溶性であっても、または不溶性であってもよい。支持体材料は、結合された分子が抗原または抗体に結合できれば、事実上あらゆる可能な構造的構成を有してもよい。よって
支持体構成はビーズなどのように球状であっても、または試験管の内表面もしくは棒の外表面のように円筒状であってもよい。代替的には、表面はシート、テストストリップなどのように平らであってもよい。好ましい支持体はポリスチレンビーズを含む。当業者は抗体または抗原を結合するための多くの他の好適な担体を知るか、またはそれをルーチン実験法を用いることによって確認できるだろう。
【0093】
抗−Tsg101断片抗体の所与のロットの結合活性が周知の方法に従って定められてもよい。当業者は、ルーチン実験法を用いることによって各決定に対する動作的かつ最適なアッセイ条件を定められるだろう。
【0094】
Tsg101遺伝子ペプチド特異的抗体を検出可能にラベルできる態様の1つは、それを酵素と結合させて酵素免疫アッセイ(EIA)において用いることによる(ボラー(Voller), A., 「酵素結合免疫吸着剤検定法(ELISA)」(“The Enzyme Linked Immunosorbent Assay (ELISA)”), 1978, Diagnostic Horizons 2:1-7, Microbiological Associates Quarterly Publication, Walkersville, MD); ボラー, Aら、1978, J.Clin.Pathol. 31:507-520; バトラー(Butler), J.E., 1981., Meth. Enzymol. 73:482-523; マジオ(Maggio), E.編, 1980, 酵素免疫アッセイ(Enzyme Immunoassay), CRC Press, ボカラトン, FL,; イシカワ(Ishikawa), E.ら編, 1981, 酵素免疫アッセイ(Enzyme Immunoassay), Kgaku Shoin, 東京)。抗体に結合させた酵素は、適切な基質、好ましくは色素生成基質と反応し、たとえば分光光度、蛍光測定または視覚的手段によって検出可能な化学的部分を生成する。抗体を検出可能にラベルするために用い得る酵素は、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、デルタ−5−ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、アルファ−グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ、およびアセチルコリンエステラーゼを含むがそれに制限されない。検出は、酵素に対する色素生成基質を用いる比色法によって成し遂げられ得る。また、基質の酵素反応の程度を同様に調製した基準と比較する視覚的比較によって検出がなされてもよい。
【0095】
さまざまなその他の免疫アッセイのいずれかを用いて検出がなされてもよい。たとえば、抗体または抗体断片を放射ラベルすることにより、ラジオイムノアッセイ(RIA)(たとえば、ここに引用により援用するワイントラウブ(Weintraub), B., ラジオイムノアッセイの原理(Principles of Radioimmunoassays)、放射リガンドアッセイ技術の第7訓練コース(Seventh Training Course on Radioligand Assay Techniques)、The Endocrine Society, 1986年3月を参照)を用いてTsg101ペプチドを検出できる。放射性アイソトープは、ガンマカウンタもしくはシンチレーションカウンタの使用などの手段によって、またはオートラジオグラフィによって検出できる。
【0096】
抗体を蛍光性の化合物でラベルすることも可能である。蛍光ラベルされた抗体が適切な波長の光に露出されると、その存在が蛍光によって検出できる。最も一般的に用いられる蛍光ラベル化合物には、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルアルデヒド、およびフルオレサミンがある。
【0097】
152Euまたはその他のランタン系列などの蛍光発光金属を用いても抗体を検出可能にラベルできる。これらの金属は、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)またはエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)などの金属キレート基を用いて抗体に付着できる。
【0098】
化学発光化合物と結合させることによっても抗体を検出可能にラベルできる。化学発光標識抗体の存在は、化学反応の経路において生じる発光の存在を検出することによって定められる。特に有用な化学発光ラベル化合物の例は、ルミノール、イソルミノール、セロマチック(theromatic)アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩およびシュウ酸エステルである。
【0099】
同様に、この発明の抗体をラベルするために生物発光化合物が用いられてもよい。生物発光は生物系において見出される化学発光の一種で、触媒タンパク質が化学発光反応の効率を高めている。生物発光タンパク質の存在は、発光の存在を検出することによって定められる。ラベリングの目的に対する重要な生物発光化合物は、ルシフェリン、ルシフェラーゼおよびエクオリンである。
【0100】
5.3.5.インビトロにおけるウイルス感染細胞の枯渇
この発明は、インビトロ(またはエクスビボ)において非感染組織および/または細胞からウイルス感染細胞を枯渇させる方法を提供する。たとえば、非感染細胞からのウイルス感染細胞のインビトロ枯渇のために哺乳動物から得られる組織は、血液もしくは血清またはその他の体液であってもよい。特に、この発明は、ウイルス感染細胞を殺すかまたはそれらを感染細胞から分離することによって枯渇させる方法を提供する。態様の1つにおいて、抗−TSG101抗体は、たとえばヒトなどの哺乳動物から得られた組織および/または細胞と、インビトロでたとえばインキュベートされるなどして組合せられる。
【0101】
態様の1つにおいて、固体マトリックスに結合されたTSG101抗体、たとえばTSG101タンパク質のN−末端またはC−末端領域を結合する抗体を含むカラムが用いられて、たとえば血液もしくは血清またはその他の体液などの生物サンプルからウイルス感染細胞が除去される。
【0102】
組織からのウイルス感染細胞のインビトロ枯渇に用いられる抗−TSG101抗体は、第5.3.2.節で開示した検出可能なラベル(たとえば、さまざまな酵素、蛍光材料、発光材料、生物発光材料、および放射性材料)または治療用薬剤(たとえば、細胞増殖抑制および細胞破壊剤)とコンジュゲートされてもよい。
【0103】
検出可能な物質とコンジュゲートされた抗−TSG101抗体は、当業者に公知の方法によってウイルス感染細胞を非感染細胞から選別するために用いることができる。態様の1つにおいて、ウイルス感染細胞は蛍光活性化細胞選別器(FACS)を用いて選別される。蛍光活性化細胞選別(FACS)は、粒子の蛍光特性に基づいて細胞を含む粒子を分離するための周知の方法である(カマーチ(Kamarch)、1987, Methods Enzymol, 151:150-165)。個々の粒子における蛍光部分のレーザ励起によって小さな電荷がもたらされ、混合物からの正および負の粒子の電磁的分離を可能にする。
【0104】
態様の1つにおいて、たとえばヒトなどの哺乳動物から得られたたとえば血液細胞などの細胞が、蛍光ラベルされたTSG101特異的抗体と共に、ラベルされた抗体を細胞に結合させるために十分な時間インキュベートされる。代替的な態様において、こうした細胞はTSG101特異的抗体と共にインキュベートされ、細胞は洗浄され、細胞はTSG101特異的抗体を認識する第2のラベル抗体と共にインキュベートされる。これらの態様に従うと、細胞は洗浄されて細胞選別器を通じて処理されることにより、分離される両方の抗体に結合する細胞の、両方の抗体に結合しない混成細胞からの分離を可能にする。FACS選別された粒子は、96ウェルまたは384ウェルプレートの個々のウェルに直接堆積されることによって分離を容易にしてもよい。
【0105】
別の態様においては、磁気ビーズを用いてウイルス感染細胞を非感染細胞から分離でき
る。ウイルス感染細胞は、その磁気ビーズ(直径0.5−100nm)に結合する能力に基づいて粒子を分離する方法である磁気活性化細胞選別(MACS)技術を用いて選別されてもよい(ディナル(Dynal)、1995)。磁気ミクロスフェアには、TSG101を免疫特異的に認識する抗体の共有付加を含むさまざまな有用な変更が行なわれてもよい。次いで磁界が印加されることによって、選択されたビーズが物理的に操作される。ビーズは次いで細胞と混合されて結合可能にされる。細胞は次いで磁界を通されることにより、ウイルス感染細胞が分離される。
【0106】
5.3.6.抗−TSG101抗体の用量
用量は、医師がルーチンテストを行なうことによって定め得る。ヒトへの投与の前に、動物モデルにおいて効力が示されることが好ましい。当該技術分野において公知の感染性疾患に対するあらゆる動物モデルを用いることができる。
【0107】
一般的に、抗体については、好ましい用量は0.1mg/kgから100mg/kg体重(一般的に10mg/kgから20mg/kg)である。抗体が脳内で作用するものであるときには、50mg/kgから100mg/kgの用量が通常適切である。一般的に、部分的にヒトの抗体および完全にヒトの抗体は、他の抗体よりもヒト体内における半減期が長い。したがって、より低い用量およびより少ない頻度の投与が可能であることが多い。抗体を安定化し、(たとえば脳への)摂取および組織浸透を高めるために脂質化などの修飾が用いられてもよい。抗体の脂質化の方法は、クルイクシャンク(Cruikshank)ら、1997, J. Acquired Immune Deficiency Syndromes and Human Retrovirology 14:193に記載されている。
【0108】
ここに定められるとおり、抗−TSG101抗体の治療上有効な量(すなわち有効用量)は約0.001から30mg/kg体重、好ましくは約0.01から25mg/kg体重、より好ましくは約0.1から20mg/kg体重、およびさらに好ましくは約1から10mg/kg、2から9mg/kg、3から8mg/kg、4から7mg/kg、または5から6mg/kg体重である。
【0109】
疾患もしくは障害の深刻度、以前の処置、被験者の一般的な健康および/もしくは年齢、ならびに存在する他の疾患を含むがそれに制限されない特定の因子が、被験者を効果的に処置するために要求される用量に影響し得ることを当業者は認めるであろう。さらに、治療上有効な量の抗−TSG101抗体による被験者の処置は、単一の処置を含んでも、または好ましくは一連の処置を含んでもよい。好ましい態様において、被験者は約0.1から20mg/kg体重の範囲の抗−TSG101抗体によって週1回、約1から10週間、好ましくは2から8週間、より好ましくは約3から7週間、さらに好ましくは約4、5または6週間にわたって処置される。また、処置に用いられる抗−TSG101抗体の有効用量は、特定の処置の経過とともに増加または減少し得ることが認識されるであろう。用量の変化は、ここに記載されるような診断アッセイの結果からもたらされ、かつ明らかになってもよい。
【0110】
抗−TSG101抗体薬剤の適切な用量は、通常の医師、獣医師、または研究者の知識の範囲内のいくつかの因子に依存することが理解される。抗−TSG101抗体の用量は、たとえば被験者または処理されるサンプルの個性、大きさおよび状態に依存し、さらに適用可能であれば組成物が投与される経路、および感染性病原体に対して抗−TSG101抗体が有することを作業者が所望する効果に依存して変化する。
【0111】
5.3.7.医薬配合および投与
この発明の抗−TSG101抗体は、投与に適した医薬組成物に取込まれてもよい。こうした組成物は典型的に、抗−TSG101抗体と医薬的に受容可能な担体とを含む。こ
こで用いられる「医薬的に受容可能な担体」という言葉は、医薬投与に適合するあらゆるすべての溶剤、分散媒、被覆、抗バクテリアおよび抗真菌剤、等張および吸収遅延剤などを含むことが意図される。医薬的活性物質に対してこうした媒質および薬剤を用いることは当該技術分野において周知である。あらゆる従来の媒質または薬剤が抗−TSG101抗体に適合しない場合を除き、組成物におけるその使用が予期される。組成物に追加の抗−TSG101抗体が取込まれてもよい。
【0112】
この発明の医薬組成物は、その投与の意図される経路に適合するように配合される。投与の好ましい経路は、皮下および静脈内投与を含む。投与の経路の他の例には、非経口、皮内、経皮(局所)および経粘膜投与がある。非経口、皮内または皮下適用に用いられる溶液または懸濁液は以下の成分を含み得る。すなわち、注射のための水などの滅菌希釈液、食塩溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたはその他の合成溶剤、ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤、アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウムなどの酸化防止剤、エチレンジアミンテトラ酢酸などのキレート剤、酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩などの緩衝液、および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの張性の調整のための薬剤である。塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基によってpHを調整できる。非経口調製物は、ガラスまたはプラスチックでできたアンプル、使い捨て注射器または複数用量バイアル中に封入されてもよい。
【0113】
注射可能な使用に好適な医薬組成物は、滅菌水溶液(水溶性のとき)または分散物、および滅菌注射可能溶液または分散物の即時調製のための滅菌粉末を含む。静脈内投与に対して、好適な担体は生理食塩水、静菌水、クレモフォール(Cremophor)EL(商標)(BASF、パーシッパニー、NJ)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)を含む。すべての場合において、組成物は滅菌される必要があり、また粘性が低く抗−TSG101抗体が注射可能である程度に流動性であるべきである。それは製造および貯蔵の条件下で安定である必要があり、またバクテリアおよび真菌などの微生物の混入作用に対抗して保存される必要がある。
【0114】
担体は、たとえば、水、エタノール、ポリオール(たとえば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、およびその好適な混合物を含む溶剤または分散媒質であってもよい。たとえば、レシチンなどの被覆剤の使用、分散の場合には必要とされる粒子の大きさの維持、および界面活性剤の使用などによって、適切な流動性を維持できる。微生物作用の防止は、たとえばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどのさまざまな抗バクテリアおよび抗真菌剤によって達成できる。多くの場合、組成物にたとえば糖、マンニトールなどの多価アルコール、ソルビトール、塩化ナトリウムなどの等張性の薬剤を含むことが好ましい。注射可能組成物の持続性の吸収は、たとえばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅らせる薬剤を組成物中に含ませることによってもたらされ得る。
【0115】
滅菌注射可能溶液は、必要に応じて上に挙げた成分の1つまたは組合せを有する適切な溶剤中に必要量の抗−TSG101抗体(たとえば1つまたはそれ以上の抗−TSG101抗体)を取込み、その後フィルタ滅菌することによって調製できる。分散物は一般的に、基本の分散媒および上に挙げたうちの必要な他の成分を含む滅菌賦形剤に抗−TSG101抗体を取込むことによって調製される。滅菌注射可能溶液の調製のための滅菌粉末の場合には、調製の好ましい方法は真空乾燥および凍結乾燥であり、これは予め滅菌フィルタ処理された溶液から、活性成分とあらゆる付加的な所望の成分との粉末を得るものである。
【0116】
態様の1つにおいて、抗−TSG101抗体は、インプラントおよびマイクロカプセル送達系を含む徐放性配合物など、体内からの迅速な除去に対して化合物を保護する担体と
共に調製される。エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ酢酸などの生物分解性、生体適合性重合体が用いられ得る。こうした配合物の調製方法は当業者に明らかになるだろう。また、アルザ社(Alza Corporation)およびノバファーマスーティカルス社(Nova Pharmaceuticals, Inc.)より材料を商業的に得ることができる。(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体と共に感染細胞にターゲッティングされたリポソームを含む)リポソーム懸濁物が医薬的に受容可能な担体として用いられてもよい。これらは、たとえばここに全体にわたって引用により援用する米国特許第4,522,811号に記載されるような当業者に公知の方法に従って調製できる。
【0117】
投与の簡便性および用量の均一性のために、用量単位形の非経口組成物を配合することが有利である。ここで用いられる用量単位形とは、処置される被験者に対する単位用量として好適な物理的に別個の単位を示す。すなわち、各単位は、必要とされる医薬担体に関連して所望の治療効果をもたらすために算出された予め定められた量の抗−TSG101抗体を含む。この発明の用量単位形に対する仕様は、抗−TSG101抗体の一意の特徴および達成すべき特定の治療効果、ならびに個体の処置に対する抗−TSG101抗体などの調合の技術分野において固有の制限によって規定され、かつそれに直接依存する。
【0118】
医薬組成物は、キット、容器、パックまたはディスペンサ中に、投与に対する指示と共に含まれてもよい。
【0119】
5.4.ウイルス感染の処置および防止のためのTSG101ワクチンおよびDNAワクチン
この発明は、抗−TSG101抗体を生成するためのワクチンとして用い得るTSG101タンパク質の断片を提供する。TSG101タンパク質断片またはポリペプチドは、当該技術分野において公知の標準的な方法により調製できる。態様の1つにおいて、この発明はTSG101タンパク質のUEVドメインを含まないTSG101タンパク質の断片を提供する。特定的な態様において、この発明は、UEVドメインを含まないヒトTSG101タンパク質の断片またはそのネズミ相同体を提供する。好ましい態様において、この発明はTSG101タンパク質のC−末端領域を含む断片を提供する。別の態様において、この発明は、TSG101タンパク質のコイルドコイルドメインを含むTSG101タンパク質の断片を提供する。さらに別の態様において、この発明は、SEQ ID NO:3として記載したTSG101タンパク質のC−末端ドメインを含むTSG101タンパク質の断片を提供する。この発明はまた、TSG101タンパク質のこうした断片と少なくとも30%、50%、70%、90%または95%相同であるあらゆる配列を提供する。この発明のいくつかの態様において、TSG101タンパク質断片またはポリペプチドの長さは少なくとも5、10、20、50、100アミノ酸である。
【0120】
この発明はまた、前述のあらゆるTSG101断片と機能的に同等であるTSG101タンパク質の断片を提供する。こうした同等TSG101断片は、TSG101タンパク質をコードするTSG101タンパク質遺伝子配列によってコードされるアミノ酸配列内のアミノ酸残基の削除、付加または置換を含んでもよいが、それはサイレント変化をもたらすため、機能的に同等のTSG101タンパク質断片を生成する。アミノ酸置換は、関係する残基の極性、電荷、可溶性、疎水性、親水性、および/または両親媒性の性質の類似性に基づいて行なわれてもよい。たとえば、無極性(疎水性)アミノ酸は、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびメチオニンを含む。極性の中性アミノ酸は、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンを含む。正に帯電した(塩基性)アミノ酸は、アルギニン、リジンおよびヒスチジンを含む。また、負に帯電した(酸性)アミノ酸は、アスパラギン酸およびグルタミン酸を含む。ここで用いられる「機能的に同等」と
は、内因性TSG101タンパク質断片と実質的に類似のインビボ活性を示すことができるタンパク質断片を示す。
【0121】
この発明のTSG101ペプチド断片は、当該技術分野において周知の技術を用いる組換えDNA技術によって生成されてもよい。つまり、TSG101ポリペプチドまたはペプチドをコードするTSG101遺伝子配列を含む核酸を発現することによってこの発明のTSG101ポリペプチドおよびペプチドを調製する方法である。当業者に周知の方法を用いて、TSG101ポリペプチドをコードする配列ならびに適切な転写および翻訳調節シグナルを含む発現ベクターを構築できる。これらの方法はたとえば、インビトロ組換えDNA技術、合成技術、およびインビボ遺伝子組換えを含む。たとえば、前出の1989年のサンブルック(Sambrook)ら、および前出の1989年のアウズベルらに記載される技術を参照されたい。代替的には、たとえば合成装置を用いてTSG101ポリペプチド配列をコードできるRNAを化学的に合成してもよい。たとえば、ここに全体にわたって引用により援用する「オリゴヌクレオチド合成」(“Oligonucleotide Synthesis”)、1984、ガイト(Gait), M.J.編集、IRL Press、オックスフォードに記載される技術を参照されたい。
【0122】
TSG101ペプチドは、フロイントの完全もしくは不完全アジュバントまたは類似の免疫刺激剤などの好適な担体および/またはアジュバントと共に用いることができる。不完全セピックアジュバント(Incomplete Seppic Adjuvant)(セピック、パリ、フランス)などの、1つまたはそれ以上の非代謝性鉱油または代謝可能な油と組合された1つまたはそれ以上の界面活性剤を含む、油/界面活性剤ベースのアジュバントが用いられてもよい。不完全セピックアジュバントは、抗体生成に対して不完全フロイントアジュバントに匹敵する効果を有するが、より低い炎症反応を誘導する。
【0123】
この発明はまた、DNAまたはRNAワクチンとして用いるためのtsg101遺伝子の部分を提供する。tsg101遺伝子断片はまた、前述のこの発明のTSG101タンパク質断片のいずれかを生成するために用いることができる。好ましい態様において、この発明は、TSG101タンパク質のUEVドメインを含まない断片をコードするヌクレオチド領域を含むtsg101遺伝子の断片を提供する。特定的な態様において、TSG101遺伝子の断片はヒトtsg101遺伝子の断片、またはそのネズミ相同体である。この発明はまた、tsg101遺伝子のこうした断片と少なくとも30%、50%、70%、90%または95%相同であるあらゆる配列を提供する。この発明のいくつかの態様において、tsg101遺伝子の断片の長さは少なくとも20、25、40、60、80、100、500、1000塩基である。こうした配列はTSG101ペプチドの生成に有用であり得る。
【0124】
この発明はまた、(a)前述のtsg101コード配列および/またはそれらの相補(すなわちアンチセンス)のいずれかを含むDNAベクター、(b)コード配列の発現を指示する調節因子に動作可能に関連付けられた前述のtsg101コード配列のいずれかを含むDNA発現ベクター、および(c)この発明のTSG101タンパク質断片を生成するために用いられる宿主細胞中でコード配列の発現を指示する調節因子に動作可能に関連付けられた前述のTSG101コード配列のいずれかを含む、遺伝子工学により処理された宿主細胞を提供する。ここで用いられる調節因子は、誘導性および非誘導性プロモータ、エンハンサ、オペレータ、ならびに発現を行ないかつ調節することが当業者に公知のその他の因子を含むがそれに制限されない。こうした調節因子は、サイトメガロウイルスhCMV極初期遺伝子、SV40アデノウイルスの初期または後期プロモータ、lac系、trp系、TAC系、TRC系、ファージAの主要オペレータおよびプロモータ領域、fdコートタンパク質の調節領域、3−ホスホグリセリン酸キナーゼのプロモータ、酸性ホスファターゼのプロモータ、ならびに酵母α−接合因子のプロモータを含むがそれに制限
されない。
【0125】
別の態様において、この発明は、裸のDNAまたはRNAワクチンおよびその用法を提供する。前述のこの発明のtsg101DNA断片は、この発明の抗−TSG101抗体を誘発することによってウイルス性疾患を阻害するためのワクチンとして投与できる。たとえば、DNAをプラスミドベクターのpGEM族などの転写ベクターにサブクローニングすることによって、またはワクシニアなどのウイルスの転写プロモータの制御下で、DNAをRNAに転換することができ、そのRNAが裸のRNAワクチンとして用いられる。裸のDNAもしくはRNAワクチンは単独で注射されても、またはウイルスに向けられた1つもしくはそれ以上のDNAもしくはRNAワクチンと組合されてもよい。
【0126】
この発明の裸のDNAもしくはRNAワクチンは、たとえば筋間投与されても、または代替的に点鼻薬中に用いられてもよい。DNAもしくはRNA断片またはその部分は、裸のDNAもしくはRNAとして、リポソームに包まれたDNAもしくはRNAとして、ウイルスエンベロープ受容体タンパク質を含むプロテオリポソームに閉じ込められたDNAもしくはRNAとして、注射されてもよい(ニコラウ(Nicolau), C.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 1983, 80, 1068; カノダ(Kanoda), Y. ら、Science 1989, 243, 375; マンニーノ(Mannino), R. J.ら、Biotechniques 1988, 6, 682)。代替的には、DNAは担体と共に注射できる。担体はタンパク質、またはたとえばインターロイキン2などのサイトカイン、またはポリリシン−糖タンパク質担体(ウー(Wu), G. Y. およびウー, C.H.、J. Biol. Chem. 1988, 263, 14621)、またはたとえばラウス肉腫ウイルスもしくはサイトメガロウイルスプロモータのいずれかを含む発現ベクターなどの複製しないベクターであってもよい。こうした担体タンパク質およびベクターならびにその用法は当業者に公知である(たとえば、アクサディ(Acsadi), G.ら、Nature 1991, 352, 815-818を参照)。加えて、DNAまたはRNAで小さな金のビーズを被覆し、そのビーズがたとえば遺伝子銃によって皮膚内に導入されてもよい(コーエン(Cohen)、J.Science 1993,
259, 1691-1692; ウルマー(Ulmer), J.B.ら、Science 1993, 259, 1745-1749)。
【0127】
この発明はまた、遺伝子療法によって動物におけるHIV感染などのウイルス感染を処置する方法を提供する。さまざまな遺伝子療法アプローチを用いて、Tsg101抗体を生成させるために細胞にインビボでTsg101タンパク質の断片をコードする核酸を導入し得る。
【0128】
この発明に従って、当該技術分野において入手可能な遺伝子療法のためのあらゆる方法を用いることができる。例示的な方法を以下に述べる。遺伝子療法の一般的な概説としては、ゴールドスピール(Goldspiel)ら、1993, Clinical Pharmacy 12:488-505; ウーおよびウー, 1991, Biotherapy 3:87-95; トルストシェフ(Tolstoshev)、1993, Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 32:573-596; ムリガン(Mulligan)、1993, Science 260:926-932; ならびに、モーガン(Morgan)およびアンダーソン(Anderson)、1993, Ann. Rev. Biochem. 62:191-217; 1993年5月、TIBTECH 11(5):155-215を参照されたい。用い得る組換えDNA技術の当該技術分野において一般的に公知の方法は、アウズベルら編、1993、分子生物学の最新プロトコル、John Wiley & Sons, ニューヨーク; および、クリーグラー(Kriegler), 1990, 遺伝子転移および発現、実験室マニュアル(Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual), Stockton Press, ニューヨーク、に記載されている。
【0129】
好ましい局面において、その治療は、好適な宿主中でTsg101またはその断片もしくはキメラタンパク質を発現する発現ベクターの一部であるTsg101核酸を含む。特に、こうした核酸はTsg101コード領域に動作可能に繋がれたプロモータを有し、このプロモータは誘導性または構成性であり、任意には組織特異的である。別の特定の態様
においては、Tsg101コード配列およびあらゆるその他の所望の配列が、ゲノム中の所望の部位で相同組換えを起こす領域によってフランクにされることにより、Tsg101核酸の染色体内発現を与えるような核酸分子が用いられる(たとえば、コラー(Koller)およびスミジーズ(Smithies), 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86:8932-8935; ゼイルストラ(Zijlstra)ら、1989, Nature 342:435-438を参照)。
【0130】
患者への核酸の送達は、患者が核酸または核酸を有するベクターに直接露出される直接的なものであっても、または細胞をまずインビトロで核酸によって形質転換し、次いで患者に移植する間接的なものであってもよい。これら2つのアプローチはそれぞれ、インビボまたはエクスビボ遺伝子療法として公知である。
【0131】
特定の態様において、核酸はインビボで直接投与され、そこで発現されることによってコードされる産物を生成する。これは当該技術分野において公知の多数の方法、たとえば、それを適切な核酸発現ベクターの一部として構築し、それをたとえば欠損もしくは弱毒レトロウイルスまたはその他のウイルスベクターを用いた感染などによって、細胞内に入るように投与すること(米国特許第4,980,286号を参照)、または裸のDNAの直接注射、または微粒子ボンバードメント(たとえば遺伝子銃、バイオリスティック(Biolistic)、デュポン)の使用、または脂質もしくは細胞表面受容体もしくはトランスフェクティング剤による被覆、リポソーム、微粒子もしくはマイクロカプセル中への被包、または核に入ることが公知のペプチドへの結合による投与、受容体介在エンドサイトーシスを受けるリガンドへの結合による投与(たとえば、ウーおよびウー、1987, J.Biol. Chem. 262:4429-4432を参照)(受容体を特定的に発現する細胞系をターゲッティングするために用い得る)などのいずれかによって、達成できる。別の態様においては、核酸−リガンド複合体が形成されてもよく、ここでリガンドはフソジェニック(fusogenic)ウイルスペプチドを含むことによってエンドソームを妨害し、核酸がリソソーム分解を避けられるようにする。さらに別の態様では、特定の受容体をターゲッティングすることによって、核酸を細胞特異的吸収および発現に対してインビボでターゲッティングできる(たとえば、1992年4月16日付のPCT公報WO92/06180(ウーら)、1992年12月23日付のWO92/22635号(ウイルソン(Wilson)ら)、1992年11月26日付のWO92/20316号(フィンダイス(Findeis)ら)、1993年7月22日付のWO93/14188号(クラーケ(Clarke)ら)、1993年10月14日付のWO93/20221号(ヤング(Young))を参照)。代替的には、核酸を細胞内に導入し、相同組換えによって発現のために宿主細胞DNA内に取込んでもよい(コラーおよびスミジーズ, 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86:8932-8935; ゼイルストラら、1989, Nature 342:435-438)。
【0132】
特定の態様においては、Tsg101核酸を含むウイルスベクターが用いられる。たとえば、レトロウイルスベクターが用いられてもよい(ミラー(Miller)ら、1993, Meth. Enzymol. 217:581-599を参照)。これらのレトロウイルスベクターは、ウイルスゲノムのパッケージングおよび宿主細胞DNAへの組込みに必要でないレトロウイルス配列を削除するように変更されている。遺伝子療法に用いられるTsg101核酸は、患者への遺伝子の送達を容易にするベクターにクローニングされる。レトロウイルスベクターに関するさらなる詳細は、ボーセン(Boesen)ら、1994, Biotherapy 6:291-302に見出すことができ、これは幹細胞を化学療法に対してより耐性にするために造血幹細胞にmdr1遺伝子を送達するためのレトロウイルスベクターの用法を記載している。遺伝子療法におけるレトロウイルスベクターの用法を例示するその他の参考文献は以下のとおりである。クラウス(Clowes)ら、1994, J.Clin. Invest. 93:644-651; キエム(Kiem)ら、1994, Blood 83:1467-1473; サーモンズ(Salmons)およびグンズバーグ(Gunzberg), 1993, Human Gene Therapy 4:129-141; ならびにグロスマン(Grossman)およびウイルソン, 1993, Curr. Opin. Genet. and Devel. 3:110-114。
【0133】
アデノウイルスは、遺伝子療法に用い得る別のウイルスベクターである。アデノウイルスは、遺伝子を呼吸上皮に送達するための特に魅力的な媒体である。アデノウイルスは本来呼吸上皮に感染し、そこで軽い疾患をもたらす。アデノウイルスに基づく送達系のその他の標的は、肝臓、中枢神経系、内皮細胞、および筋肉である。アデノウイルスは、非分裂細胞に感染できるという利点を有する。コザルスキ(Kozarsky)およびウイルソン (1993, Current Opinion in Genetics and Development 3:499-503)は、アデノウイルスに基づく遺伝子療法の概説を示す。ボウト(Bout)ら (1994, Human Gene Therapy 5:3-10)は、アカゲザルの呼吸上皮に遺伝子を転移するためのアデノウイルスベクターの用法を示している。遺伝子療法におけるアデノウイルスの用法のその他の事例は、ローゼンフェルド(Rozenfeld)ら、1991, Science 252:431-434; ローゼンフェルドら、1992, Cell 68:143-155; およびマストランジェリ(Mastrangeli)ら、1993, J. Clin. Invest. 91:225-234に見出すことができる。
【0134】
アデノ関連ウイルス(AAV)を遺伝子療法に用いることも提案されている(ワルシュ(Walsh)ら、1993, Proc. Soc. Exp. Biol. Med. 204:289-300)。
【0135】
遺伝子療法への別のアプローチは、エレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウム介在トランスフェクション、またはウイルス感染などの方法によって遺伝子を組織培養物中の細胞に転移することを含む。通常、転移の方法は、細胞への選択可能なマーカの転移を含む。細胞は次いで選択を受けることにより、転移された遺伝子を吸収して発現している細胞が単離される。それらの細胞は次に患者に送達される。
【0136】
この態様において、核酸は、結果的に得られる組換え細胞のインビボでの投与に先立って、細胞に導入される。こうした導入は当該技術分野において公知のあらゆる方法によって行なうことができ、それはトランスフェクション、エレクトロポレーション、微量注射、核酸配列を含むウイルスまたはバクテリオファージベクターによる感染、細胞融合、染色体介在遺伝子転移、マイクロセル介在遺伝子転移、スフェロプラスト融合などを含むがそれに制限されない。細胞への外来遺伝子の導入のための多数の技術が当該技術分野において公知であり(たとえば、レフラー(Loeffler)およびベール(Behr), 1993, Meth. Enzymol. 217:599-618; コーエンら、1993, Meth. Enzymol. 217:618-644; クライン(Cline)、1985, Pharmac. Ther. 29:69-92を参照)、受容細胞の必要な発達および生理機能が妨害されなければ、この発明に従って用いられ得る。その技術は核酸の細胞への安定した転移を与えるべきであり、それによって核酸は細胞によって発現可能となり、また好ましくは遺伝性であってその細胞後代によって発現可能となる。
【0137】
結果的に得られる組換え細胞は、当該技術分野において公知のさまざまな方法によって患者に送達できる。好ましい態様において、上皮細胞はたとえば皮下的に注射される。別の態様では、組換え皮膚細胞が皮膚移植片として患者に適用されてもよい。組換え血液細胞(たとえば造血幹細胞または始原細胞)は、静脈内に投与されることが好ましい。使用に想定される細胞の量は、所望の効果、患者の状態などに依存し、当業者によって定めることができる。
【0138】
遺伝子療法の目的のために核酸を導入できる細胞は、あらゆる所望の入手可能な細胞系を含み、上皮細胞、内皮細胞、ケラチノサイト、繊維芽細胞、筋細胞、肝細胞;Tリンパ球、Bリンパ球、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、巨核球、顆粒球などの血液細胞;たとえば骨髄、臍帯血、末梢血、胎児肝臓などから得られるようなさまざまな幹細胞または始原細胞、特に造血幹細胞または始原細胞を含むがそれに制限されない。
【0139】
好ましい態様において、遺伝子療法に用いられる細胞は患者の自己由来のものである。
【0140】
遺伝子療法において組換え細胞が用いられる態様において、Tsg101核酸が細胞に導入されることにより、それが細胞またはその後代によって発現可能となり、その組換え細胞が次いで治療効果のためにインビボで投与される。特定的な態様においては、幹細胞または始原細胞が用いられる。単離してインビトロで維持可能なあらゆる幹細胞および/または始原細胞が、この発明のこの態様に従って用いられ得る。こうした幹細胞は、造血幹細胞(HSC)、皮膚および腸の内側などの上皮組織の幹細胞、胎芽心筋細胞、肝臓幹細胞(PCT公報第WO94/08598号)、および神経幹細胞(ステンプル(Stemple)およびアンダーソン、1992、Cell 71:973-985)を含むがそれに制限されない。
【0141】
上皮幹細胞(ESC)またはケラチノサイトは、皮膚および腸の内側などの組織から公知の手順によって得ることができる(ラインワルド(Rheinwald)、1980, Meth. Cell Bio. 21A:229)。皮膚などの層状の上皮組織においては、基底板に最も近い層である胚層内の幹細胞の有糸分裂によって再生が起こる。腸の内側の幹細胞は、この組織の迅速な再生速度を与える。患者またはドナーの皮膚または腸の内側から得られたESCまたはケラチノサイトは、組織培養物中で生育できる(ラインワルド、1980, Meth. Cell Bio. 21A:229; ピッテルコウ(Pittelkow)およびスコット(Scott), 1986, Mayo Clinic Proc. 61:771)。ESCがドナーから提供されたものであるとき、宿主対移植片の反応性を抑制するための方法(たとえば穏やかな免疫抑制を起こすための照射、薬物または抗体投与)が用いられてもよい。
【0142】
造血幹細胞(HSC)に関して、HSCのインビトロでの単離、増殖および維持を与えるあらゆる技術をこの発明のこの態様において用いることができる。これを達成し得る技術は、(a)将来の宿主またはドナーから単離された骨髄細胞からのHSC培養物の単離および確立、または(b)同種または異種であってもよい以前に確立された長期HSC培養物の使用を含む。非自己由来HSCは、将来の宿主/患者の移植免疫反応を抑制する方法と共に用いられることが好ましい。この発明の特定の態様において、ヒト骨髄細胞は、針吸引によって臀部腸骨稜から得ることができる(たとえばコド(Kodo)ら、1984, J. Clin. Invest. 73:1377-1384を参照)。この発明の好ましい態様において、HSCは高度に濃縮または実質的に純粋な形にできる。この濃縮は長期培養の前、間または後に達成でき、また当該技術分野において公知のあらゆる技術によって行なわれ得る。骨髄細胞の長期培養物は、たとえば変形デクスター細胞培養技術(デクスター(Dexter)ら、1977, J.Cell Physiol. 91:335)またはウイットロック−ヴィッテ培養技術(ウイットロック(Witlock)およびヴィッテ(Witte), 1982, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 79:3608-3612)を用いることによって確立および維持できる。
【0143】
特定の態様において、遺伝子療法の目的のために導入される核酸は、コード領域に動作可能に結合された誘導可能プロモータを含むことにより、転写の適切な誘導因子の有無を制御することによって核酸の発現が調節可能になる。
【0144】
この発明のTsg101断片またはその機能的派生物をコードする核酸を送達するために用いるために適用可能な付加的な方法を以下に説明する。
【0145】
5.5.キット
この発明はまた、この発明の抗−TSG101抗体、または抗−TSG101抗体を増やすために用い得る1つまたはそれ以上のTSG101ポリペプチド、またはこの発明のポリペプチド抗−TSG101抗体をコードする1つまたはそれ以上の核酸、またはこうした核酸によって転換された細胞を1つまたはそれ以上の容器中に含むキットを提供する。核酸は染色体内に組込まれても、またはベクター(たとえばプラスミド、特にプラスミド発現ベクター)として存在してもよい。この発明の医薬組成物を含むキットも提供され
る。
【0146】
6.実施例
以下の実施例はこの発明の例示のために示されるものであり、いかなる態様においてもこの発明を制限することは意図されない。
【実施例1】
【0147】
6.1.実施例1:抗−TSG101抗体の調製および用法
ウイルス感染に対する抗−TSG101抗体の影響を定めるために、レトロウイルス感染アッセイが開発された。末端反復配列(LTR)プロモータから発現される大腸菌lacZ遺伝子を含むネズミ白血病ウイルス(MLV)由来ベクター(pBMN−Z−I−Neo)が、293細胞(フェニックスA、ATCC)由来の両栄養性ネズミ白血病レトロウイルスパッケージング細胞系にトランスフェクションされた。フェニックスAヘルパー細胞によって生成されるレトロウイルスが回収されて、マウスN2A細胞(ATCC)の感染に用いられた。MLVベクターのトランスフェクションの24時間後に、抗−TSG101抗体が293ヘルパー細胞に加えられた。ウイルス生成に対するTSG101抗体の効果は、ウイルス上清が標的細胞(N2A)に感染する効率によって定められた。次に、β−ガラクトシダーゼ活性の細胞染色(正の細胞は青く染色され、図2における暗い点のように示される)によってN2A細胞の感染が定められた。
【0148】
典型的に、フェニックスA細胞は、トランスフェクションの1日前にポリ−D−リジン被覆6−ウェルプレートに接種された。次に、4マイクログラムのpBMN−Z−I−Neoが、12ulのリポフェクタミン2000(インビトロジェン)の存在下で各ウェルにトランスフェクションされた。トランスフェクションの24時間後に、培地がトリコスタチンA(3uM)および5または10ugの適切な抗−TSG101抗体を含む1ml/ウェルの新鮮な培地と交換された。24から48時間後にウイルス上清が回収され、0.2umフィルタでフィルタリングされ、1mlのウイルス上清がポリブレン(10ug/ml)を含む1mlの新鮮な培地と混合されて、N2a細胞の1ウェルの感染に用いられた。感染の48時間後にN2a細胞は固定され、β−Gal染色キット(インビトロジェン)に記載されるとおりにX−Galで染色された。結果をデジタル画像で記録した。
【0149】
以下の実験では、N−末端TSG101タンパク質に対するウサギ抗体と、C−末端TSG101タンパク質に対するウサギ抗体との2つの抗−TSG101抗体のウイルス感染に対する影響がテストされた。抗−N末端TSG101抗体は、ヒトTSG101タンパク質のN−末端断片VRETVNVITLYKDLKPVL(SEQ ID NO:2)を用いて増やされた。抗−C末端TSG101抗体は、ヒトTSG101タンパク質のC−末端断片QLRALMQKARKTAGLSDLY(SEQ ID NO:3)を用いて増やされた。非特異的抗体対照としてウサギIgGが用いられた。10回を超える独立した実験が行なわれ、代表的な結果が図2に示される。抗体処理していないフェニックスヘルパー細胞(正の対照)は、効率的なレトロウイルスの生成およびN2A標的細胞の感染を示した(左上パネル)。ウサギIgGは影響しなかった(左中パネル)。N−末端TSG101に対するウサギ抗体は約20%−60%の阻害を示した(左下パネル)。しかし、C−末端TSG101に対するウサギ抗体はレトロウイルスの生成およびN2A標的細胞の感染を顕著に阻害した(50−70%阻害、右上パネル)。抗−C末端および抗−N末端抗体の混合物は、抗−C末端抗体のみの場合と同様の結果を与えた(右中パネル)。ウイルス感染していないN2a細胞は、最小限のバックグラウンド染色のみを示した(右下パネル)。
【0150】
HIVウイルス感染アッセイにおいても類似の結果が得られた。
【実施例2】
【0151】
6.2.実施例2:ウイルス出芽の際に細胞表面に局在化されるTSG101
この実施例は、HIV放出の際にTSG101のドメインが細胞表面に露出され、抗−TSG101抗体がHIV放出および感染を阻害したことを示す。
【0152】
1.ウイルス放出の際のTSG101局在性
TSG101が形質膜におけるウイルス放出に積極的にかかわっていることを示すために、GFP−TSG101融合タンパク質の発現ベクターが構築されて、M−MuLVウイルスを積極的に生成するフェニックス細胞(スタンフォード大学のノラン(Nolan)らにより開発されたレトロウイルスヘルパー細胞系)にトランスフェクションされた。トランスフェクションの24時間後、共焦点顕微鏡(ウルトラビュー(Ultraview)、パーキン−エルマー)の下でGFP−TSG101融合タンパク質のトラフィックが観察された。図3A−Eは、GFP−TSG101タンパク質が細胞質から細胞表面へ移動してウイルス生成細胞から「出芽」する画像の時間経過を示す。
【0153】
2.HIV出芽の際のTSG101の細胞表面局在性
TSG101がHIV出芽にも積極的にかかわっているかどうかを定めるために、抗−TSG101抗体を用いて、HIVでトランスフェクションされたヒトCD4+ヒトT細胞系H9(H9ΔBglと示す)における細胞表面TSG101を直接検出し、対照としてトランスフェクションしていないH9細胞を用いた。2つのウサギ抗−TSG101ポリクローナル抗体、1つはN−末端に対するもの(抗−TSG101“C”と示す)で、1つはC−末端TSG101に対するもの(抗−TSG101“E”と示す)、がこの研究に対して用いられた。どちらの抗体もよく特徴付けされたものである(リら、2001, Proc Natl Acad Sci USA 98(4): 1619-24)。どちらの抗体も、HIVを生成するH9ΔBgl細胞においてのみTSG101の細胞表面局在性を特異的に検出し、対照H9細胞においては細胞表面TSG101は検出されなかった(図4)。興味深いことに、抗−TSG101抗体は、抗−HIV抗体によって観察されるような「キャップ形成」様出芽構造を検出した(リー(Lee)ら、1999, J Virol. 73:5654-62)。
【0154】
3.HIV出芽の際のTSG101の細胞表面局在性のFACSプロファイル
次いで、HIV生成細胞(H9ΔBgl)および対照H9細胞におけるTSG101の細胞表面局在性が蛍光活性化細胞選別器(FACS)によって調べられた。H9ΔBglおよびH9細胞はいずれも固定され、抗−TSG101抗体で染色され、蛍光ラベルされた二次抗体によって検出された。免疫染色された細胞はFACSで分析された。6回を超える独立した実験により、約70−85%のH9ΔBgl細胞が表面TSG101に対して正に染色されたのに対し、約0.1%未満のH9対照細胞が表面TSG101に対して正に染色されたことが示された(図5)。これらの結果は、共焦点顕微鏡によるH9ΔBglおよびH9対照細胞の両方の直接調査によってさらに確認された。少数(0.1%未満)のH9対照細胞は、共焦点顕微鏡分析後の免疫染色手順に関連する弱いバックグラウンド蛍光シグナルによってもたらされた。H9ΔBgl細胞の正の集団は明るい蛍光を示した。
【0155】
4.トランスフェクションされた293細胞におけるHIV生成の抗−TSG101抗体阻害
HIV−1ウイルス生成アッセイを用いて、レトロウイルス生成に対するTSG101の阻害的効果をさらに調べた。HIV−1ベクターpNL4−3が293T細胞にトランスフェクションされた。トランスフェクションの24時間後、2つの抗−TSG101抗体(10ug/ml)、すなわち抗−TSG101抗体“E”および抗−TSG101抗体“B”、ならびに非特異的対照抗体(10ug/ml)がそれぞれ細胞培養物に加えられた。抗−TSG101抗体“B”はネズミTSG101N−末端断片に対して増やされ
たもので、ヒトTSG101タンパク質にあまり結合しない。抗−TSG101抗体“B”は対照として用いられた。追加の24時間インキュベーションの後、細胞溶解物が抽出され、細胞培養上清が回収されて、スクロース勾配によってHIV−1ビリオンが精製された。細胞溶解物および精製ビリオンの両方が、2つの抗−HIV−1抗体(抗−p55および抗−p24)を用いたウェスタンブロットにより分析された。図6に示されるとおり、抗−TSG101抗体“E”処理はHIV−1ビリオン放出の顕著な阻害を示した(ウェスタンブロットの密度追跡による70%を超える阻害、レーン8)のに対し、抗−TSG101抗体“B”(レーン7)および対照抗体(レーン6)はHIV−1放出の顕著な阻害を示さなかった。
【0156】
5.ヒトCD4+Tリンパ球(H9ΔBgl細胞)からのHIV放出の抗体阻害
HIV放出に対する抗体の効果を特定的に調べるために、H9ΔBgl細胞に基づくHIV放出アッセイが開発された。H9ΔBgl細胞は、エンベロープ欠損HIV構成(HIVゲノムのBglII断片の削除)によってトランスフェクションされたヒトCD4+Tリンパ球である。安定にトランスフェクションされたH9ΔBgl細胞は、非感染性の形のHIV(HIVエンベロープ欠損のために培養物中の他のH9ΔBgl細胞に感染できない)を生成し、H9ΔBgl細胞からのHIV放出は細胞培養上清のHIVp24ELISAによって直接測定できる。いくつかの濃度のTSG101抗体“E”および対照抗体(同じ濃度のウサギIgG)を用いて、H9ΔBgl細胞とともにインキュベートした。抗体を加えて48時間後に、培養上清を回収してHIVp24ELISAに供した。80ug/mlにおいてウイルス放出の顕著な抗体阻害が観察された(図7)。
【0157】
6.HIV伝染性の抗体阻害
抗−TSG101抗体がウイルス放出に続くHIV伝染性に対する付加的な影響を有するかどうかを定めるために、ジャーカット細胞からのHIV上清を用いて、抗−TSG101抗体“E”および対照としてのウサギIgG(40ug/ml)の存在下でMAGI細胞を感染した。抗−TSG101抗体はHIV伝染性の顕著な阻害を示し(図8)、TSG101がウイルス放出に続く標的細胞のHIV成熟および/または感染における役割を有することを示唆した。
【実施例3】
【0158】
6.3.実施例3:抗−TSG101抗体はエボラウイルスの放出を阻害する
この実施例は、TSG101がEBOV VP40と相互作用し、TSG101がEBOV VLPに取込まれ、また抗−TSG101抗体がEBOVウイルス様粒子(VLP)の放出を阻害することを示す。
【0159】
フィロウイルス科族の唯一のメンバーであるEBOVおよびMARVはマイナス鎖非分節の19KbのRNAゲノムを有し、そのゲノムは7つの遺伝子、すなわち核タンパク質(NP)、ウイルスタンパク質VP35、VP40、糖タンパク質(GP)、VP30、VP24、およびRNAポリメラーゼ(L)を含み、それらはMARVにおいては7つのタンパク質を、EBOVにおいては8つのタンパク質をコードしている。近年の研究により、326アミノ酸マトリックス(M)タンパク質であるVP40の細胞局在性および役割に対するいくつかの洞察がもたらされた(ジャゼノスキら、2001, J Virol 75(11): 5205-14; コレスニコバ(Kolesnikova)ら、2002, J Virol 76(4): 1825-38)。EBOVまたはMARVのいずれかに感染した細胞においては、VP40の大部分が形質膜の細胞質面に疎水性相互作用を介して末梢的に会合する。重要なことに、本物のウイルスに類似したいくつかの形態特性を有する非感染性粒子であるウイルス様粒子(VLP)の生成には、トランスフェクションされた細胞中のEBOVおよびMARV VP40の発現が必要である。VP40が感染細胞からの自身の放出を指示する能力は、他のエンベロープRNAウイルスと共通のプロリンに富む配列モチーフにマッピングされた(ハーティら、2000
, Proc Natl Acad Sci USA 97(25): 13871-6)。
【0160】
1.エボラ集合および放出の代理モデルとしてのウイルス様粒子の生成
いくつかのウイルス様粒子は、ウイルスマトリックスタンパク質の単なる発現によって生成できる(ジョンソン(Johnson)ら、2000, Curr Opin Struct Biol 10, 229-235)。EBOVおよびMARVマトリックスタンパク質(VP40)は形質膜およびウイルス封入体の両方に局在化することが示されており(コレスニコバら、2002, J Virol 76(4): 1825-38; マーティン−セラーノら、2001, Nature Medicine 7:1313-19)、VP40は成熟ビリオンの集合および放出を行なうことが示唆されている。しかし、VP40のみの発現によってVLPを効率的に生成する試みは全く実を結ばず、アモルファスVP40含有材料の非効率的な放出が示された(ババリ(Bavari)ら、2002, J Exp Med 195, 593-602)。レトロウイルスにおいて、集合複合体のラフト(raft)局在化はN−末端アシル化Gagタンパク質の会合によって制御される(キャンベル(Campbell)ら、2001, J Clin Virol 22, 217-227)のに対し、VP40などのフィロウイルスタンパク質のラフトターゲッティングは主にウイルス糖タンパク質(GP)によって制御されているようである(ババリら、2002, J Exp Med 195, 593-602)。したがって、フィロウイルスVLPの生成にはGPおよびVP40の両方の共発現が必要なのではないかという仮説が立てられた。GPおよびVP40が培養上清に放出されるかどうかがまず調べられた。GPまたはVP40のいずれかのみを発現する細胞においては、いずれのタンパク質も細胞と上清との両方において検出された(図9A)。しかし、両方のタンパク質の共発現によって、細胞からの放出がかなり増加した(図9A)。もし放出されたGPおよびVP40が粒子中で会合しているなら、VP40は抗−GPmAbによって共免疫沈降するはずだと推論された。図9Bに示されるとおり、EBOVのGPおよびVP40の両方でトランスフェクションした細胞の上清からの抗GP−免疫沈降物からVP40は容易に検出された。VP40のみを発現する細胞の上清からはVP40は落とされず、この共免疫沈降(co-IP)が特異的であることを示した。
【0161】
2.EBOV GPおよびVP40により形成される粒子はエボラウイルスの形態特性を示す
共免疫沈降実験は、上清に放出されたGPおよびVP40が何らかの形で互いに会合していることを示した。これらの複合体がウイルス様粒子(VLP)を表わすかどうかを確認するために、培養上清からの粒状材料がスクロース勾配超遠心分離によって精製され(ババリら、2002, J Exp Med 195, 593-602)、電子顕微鏡を用いて分析された。興味深いことに、GPおよびVP40によって共トランスフェクションされた細胞の上清から得られた粒子のほとんどは、フィロウイルスに著しく類似した線状形態を示した(図10AおよびB)(ゲイスバート(Geisbert)ら、1995, Virus Res 39,129-150; マーフィ(Murphy)ら、1978, エボラおよびマールブルグウイルス形態および分類(Ebola and Marburg virus morphology and taxonomy), 初版(アムステルダム、Elsvier))。これに対し、単独でトランスフェクションされた細胞から得られた材料は、細胞死の際に放出されたと思われる少量の膜断片しか含んでいなかった。VLPは直径が50−70nmであり、長さが1−2μmである(図10)。これは、インビトロ感染後の細胞培養上清において見られるエボラビリオンの長さの範囲に類似している(ゲイスバートら、1995, Virus Res 39,129-150)。VLPの直径が(EBOVの80nmに比べて)より小さいのは、おそらくリボ核タンパク質複合物の欠如によるものであろう。分岐形、棒形、U形および6形など、フィロウイルスに対して記載されるあらゆる種類の形態(フェルドマン(Feldmann)ら、1996, Adv Virus Res 47, 1-52; ゲイスバートら、1995, Virus Res 39,129-150)がこれらの粒子において観察された(図10)。また、VLPは5−10nmの表面突起または「スパイク」で覆われており(図10)、これはEBOVの特徴である(フェルドマンら、1996, Adv Virus Res 47, 1-52; ゲイスバートら、1995, Virus Res 39,129-150)。抗−エボラGP抗体によるVLPの免疫金染色は、粒子の表面上のスパイクのエボラ糖
タンパク質としての同一性を示した(図10B)。マールブルグウイルスに対するVLPも類似の態様で生成された。
【0162】
要約すると、生物学的封じ込め(biocontainment)実験室の制限なしに行なわれ得るエボラウイルスの集合および放出に対する代理アッセイを確立した。このアッセイは、エボラウイルス出芽を阻害し得る薬剤の初期スクリーニングに用いることができる。
【0163】
3.エボラウイルス生活環におけるTSG101の役割に関する研究
我々は、EBOV集合および放出における液胞タンパク質選別(vps)タンパク質TSG101のVP40の後期ドメインとの相互作用のかかわりを調べるために一連の生化学的研究を行なった。これらの研究には、C−末端がMycエピトープで標識された1組の短くしたTSG101が用いられた。全長TSG101ならびに140、250および300の位置で短くされた変異体と、EBOV VP40とによって293T細胞がトランスフェクションされた。48時間後に細胞が溶解され、抗−Myc抗体による免疫沈降を受けた。図11に示されるとおり、VP40は、1−140の短くされた変異体を除くすべてのTSG101タンパク質とともに共沈した。この変異体と会合しないことは、残基141−145がHIV Gag由来PTAPペプチドとの重要な接触を行なうことを示す構造的データ(ポルニロスら、2002, Nat Struct Biol 9, 812-7)に一致している。興味深いことに、TSG101の1−300変異体とのVP40の会合は、全長または1−250変異体とのものよりも顕著に強かった(図11)。全長TSG101の会合の方が低かったのは、TSG101のUEVドメインとの分子間または分子内会合を形成し得る、この分子のC−末端領域中のPTAPモチーフの存在のためだろう。アミノ酸250−300の削除による相互作用の劇的な減少は、この領域における残基がウイルスマトリックスタンパク質との結合に寄与している可能性を示唆する。
【0164】
TSG101およびVP40がPTAPモチーフを通じて直接会合していることを確かめるために、ファーウェスタン分析を行なった。エボラVP40(1−326)および短くした(31−326)エボラVP40タンパク質、ならびにTSG101のHAタグUEVドメインをバクテリアで生成した。これらのタンパク質を4−20%勾配ゲルで電気泳動し、ニトロセルロース膜への電気泳動的転写(electroblotted)を行なった。ブロッキングの後、ブロットを精製TSG101タンパク質(UEV)とともにインキュベートし、洗浄し、抗TSG101抗体および二次抗体としてのHRPラベルヤギ抗ウサギ抗体を用いた増強化学発光によってタンパク質−タンパク質相互作用を検出した。図12に示されるとおり、TSG101は全長エボラVP40と相互作用したが、短くしたエボラVP40とは相互作用せず、VP40のN末端におけるPTAPモチーフがVP40−TSG101(UEV)相互作用に重要な役割を果たしていることが確認された。エボラVP40抗体によって展開した同じウェスタンブロットによって、全長および短くしたVP40の両方を検出でき、ブロット上の両方のタンパク質の存在が示された。
【0165】
4.エボラVP40−TSG101相互作用の表面プラズモン共鳴バイオセンサ(SPR)分析
SPR測定を用いて、TSG101と相互作用するエボラVP40の定量分析を行なった。エボラVP40のN末端からの11アミノ酸残基を含むビオチン化ペプチド(Bio−ILPTAPPEYME)をストレプトアビジンチップ上に固定した。UEVドメインのみを含む精製TSG101タンパク質を異なる濃度(1、2、5、20uM)で連続的に注入した。図13に示されるように、ペプチドおよびタンパク質間の中程度の親和性の相互作用が検出できる。このSPRデータに基づいて、我々はこの相互作用に対する約2μMのKD値を算出した。
【0166】
5.エボラVLPおよびビリオンへのTSG101の取込み
TSG101がEBOV VLPに取込まれているかどうかを定めるために、TSG101(1−312)をGPまたはGP+VP40とともに293T細胞中で発現した。抗GP抗体を用いてVLPを上清から免疫沈降した。TSG101(1−312)の発現の結果、VLP放出が顕著に増加し、VLP出芽におけるTSG101の正の役割が示唆された(図14A、レーン4)。加えて、TSG101(1−312)は、GPおよびVP40とともに発現されたときに培養上清から抗−GP抗体によって共免疫沈降した(図14A、レーン4)。VP40不在下で発現されたときにはGPと会合したTSG101は見出されず(図14A、レーン3)、そのGPとの会合はVLPの形成に依存することが示唆された。全長TSG101についても同様の結果が得られた。これらのデータはTSG101がVLPに取込まれることを強く示唆するものであり、TSG101がウイルス集合および/または出芽における役割を果たすという仮説を支持するものである。この結果をさらに実証するために、我々はまた、TSG101の存在について、不活性化しバンド精製したEBOV(iEBOV)を分析した。TSG101の存在について、5μgのiEBOVを免疫ブロットにより分析した。図6Bに示されるとおり、我々はiEBOV中に容易に検出可能なレベルのTSG101を見出し、エボラウイルス中へのTSG101の取込みを明らかに示した。
【0167】
6.エボラウイルス放出に対するポリクローナル抗TSG101抗体の影響
生化学的データおよびVLP放出データは、エボラウイルスの出現にTSG101が重要であることを示唆した。したがって、エボラザイール−95ウイルスに感染したヒーラ細胞におけるウイルス生成に対するポリクローナル抗−TSG101抗体“C”および“E”(HIVに対する阻害的影響を示した、実施例1および2を参照)の影響をテストした。ヒーラ細胞の単分子層を1MOIのウイルスとともに50分間インキュベートし、洗浄し、抗−TSG101抗体または対照ウサギ抗マウス抗体を含む培地を5μg/mlにて加えた。24時間後に上清を集め、放出されたウイルスを以前に述べたように(ババリら、2002, J Exp Med 195, 593-602)プラークアッセイによって数えた。図15に示すとおり、これらの抗体はヒーラ細胞上清へのビリオンの放出を部分的に阻害した。
【0168】
7.引用した参考文献
ここに引用されるすべての参考文献は、個々の出版物または特許または特許出願の各々がすべての目的に対して全体にわたって引用により援用されると特定的かつ個別に示された場合と同程度に、ここに全体にわたってかつすべての目的に対して引用により援用される。
【0169】
当業者に明らかになるとおり、この発明の趣旨および範囲から逸脱することなく多くの変更および修正を行ない得る。ここに記載される特定の実施例は例示のためにのみ提供されるものであり、この発明は添付のクレームおよびこうしたクレームが与える同等物の全体の範囲によってのみ制限される。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】ヒトTSG101タンパク質の390アミノ酸配列(SEQ ID NO:1)。(ジーンバンク登録番号(GenBank Accession No.)U82130.1/GI:1772663)。
【図2】MLVウイルス生成に対する抗−TSG101抗体の影響。左上パネル:抗体処理していないフェニックスヘルパー細胞(正の対照)は効率的なレトロウイルスの生成およびN2A標的細胞の感染を示した。左中パネル:ウサギIgGは影響しなかった。左下パネル:N−末端TSG101に対するウサギ抗体は20%未満の阻害の影響を有した。右上パネル:C−末端TSG101に対するウサギ抗体はレトロウイルスの生成およびN2A標的細胞の感染を顕著に阻害した(50−70%阻害)。右中パネル:抗−C末端および抗−N末端抗体の混合物は抗−C末端抗体のみのときと同様の結果を与えた。右下パネル:ウイルス感染していないN2a細胞は最小限のバックグラウンド染色のみを示した。
【図3】ウイルス放出の際にGFP−TSG101は細胞表面に局在化する。GFP−TSG101のトランスフェクションの24時間後の活性ウイルス放出を伴うフェニックスヘルパー細胞のライブ共焦点画像。図3A、4つの細胞の明視野画像。図3B−E、同じ視野の異なる区画のライブ共焦点蛍光画像。白矢印は、GFP−TSG101の細胞表面局在性を示す。
【図4】HIV出芽の際のTSG101の細胞表面局在化。H9ΔBgl細胞(HIVウイルス組込みを有するCD4+ヒトTリンパ球)は、欠損エンベロープタンパク質を有するHIVビリオン(この非感染性の形のHIVウイルスは他の細胞に感染せず、よってウイルス放出の研究を特定的に可能にする)を積極的に生成および放出した。HIVを有さない親H9細胞を対照として用いた。H9ΔBglおよびH9細胞はいずれも2%パラホルムアルデヒドで室温にて10分間固定した(この表面固定は細胞を易透化しない)。抗−TSG101抗体を両方の細胞系とともに20分間インキュベートし、蛍光ラベルした二次抗体で検出した。上パネル:蛍光画像、下パネル:明視野画像。
【図5】HIV出芽の際のTSG101の細胞表面局在化のFACSプロファイル。H9ΔBglおよびH9細胞はいずれも2%パラホルムアルデヒドで室温にて10分間固定した(この表面固定は細胞を易透化しない)。抗−TSG101抗体を両方の細胞系とともに20分間インキュベートし、蛍光ラベルした二次抗体で検出した。免疫染色細胞をFACSで分析した。上パネル:H9ΔBgl細胞、85%の細胞が表面TSG101に対して正に染色される。下パネル:H9対照細胞、0.1%未満の細胞が表面TSG101に対して正に染色される。
【図6】抗−TSG101抗体によるHIV−1生成の阻害。レーン1および5、偽トランスフェクション。レーン2および6、pNL4−3および対照抗体(ウサギIgG)。レーン3および7、pNL4−3および抗−TSG101抗体“B”。レーン4および8、pNL4−3および抗−TSG101抗体“E”。
【図7】H9ΔBgl細胞からのHIV放出の抗体阻害。HIVを生成するH9ΔBgl細胞を異なる濃度の抗−TSG101抗体“E”とともにインキュベートし、48時間後にウイルス上清を回収してHIVp34ELISAキットによりアッセイした。3回の独立した実験(各々3組)の平均を示した。80ug/mlにおいてウイルス放出の顕著な抗体阻害(*P<0.05)が観察された。
【図8】HIV伝染性の抗体阻害。(野生型HIV−1に感染した)HIV生成ジャーカット細胞を40ug/mlの抗−TSG101抗体“E”とともにインキュベートし、48時間後にウイルス上清を回収して、MAGI細胞の感染に用いた。HIVp24ELISAキットによりアッセイした。3回の独立した実験(各々3組)の平均を示した。40ug/mlにおいてウイルス放出の顕著な抗体阻害が観察された。
【図9】培養上清へのエボラGPおよびVP40の放出。図9A、示されるプラスミドで293T細胞をトランスフェクションし、上清の浮遊物を取除き、粒状材料を超遠心分離によって20%スクロースを通じて沈殿させた。免疫ブロット(IB)によって、細胞溶解物および上清からの粒状材料における個々のタンパク質を検出した。図9B、エボラVP40のみまたはGP+VP40でトランスフェクションした細胞からの上清を抗−GPmAbで免疫沈降し、免疫ブロットにより分析した。下パネルは全細胞溶解物中のVP40の発現を示す。IgH:免疫沈降に用いた抗体からの免疫グロブリン重鎖。
【図10】EBOV GPおよびVP40によって生成されるウイルス様粒子の電子顕微鏡分析。エボラGP+VP40でトランスフェクションした293T細胞の上清の超遠心分離によって得られた粒子を、酢酸ウラニルでネガティブ染色して超微細構造を示し(図10A)、または抗−Ebo−GPmAbに続く免疫金ウサギ抗マウスAbによって染色し(図10B)、電子顕微鏡法によって分析した。
【図11】293T細胞におけるVP40とTSG101との会合。Myc標識TSG101の全長(FL)または示される短くしたものとVP40とで細胞をトランスフェクションした。48時間後に細胞を溶解し、抗Mycによる免疫沈降に供した。
【図12】エボラVP40とTSG101UEVドメインとの会合のファーウェスタン分析。
【図13】エボラVP40のTSG101との相互作用のSPR分析。
【図14】TSG101のエボラVLPおよび不活性化エボラウイルスとの会合。図14Aは、293細胞を示されるプラスミドによってトランスフェクションし、上清を抗−GPmAbによって免疫沈降し、右側に示す抗体による免疫ブロットによって分析した。下側の3つのパネルは、全細胞溶解物中のトランスフェクションされたタンパク質の発現を示す。図14Bは、5μg不活性化エボラウイルス(iEBOV)をSBS−PAGEおよびウサギ抗−TSG101抗体によるウェスタンブロット解析に供した。分子量マーカーおよびTSG101の位置が示される。
【図15】抗TSG101抗体によるヒーラ細胞におけるエボラウイルス放出の阻害の結果。
【技術分野】
【0001】
この出願は、全体にわたってここに引用により援用する2002年10月1日に提出された米国特許仮出願番号第60/415,299号の米国特許法第119条(e)による利益を主張する。
【0002】
1.発明の分野
この発明は、TSG101タンパク質に結合してウイルス生成を阻害または減少させる抗体に関する。この発明はまた、TSG101抗体を用いて、HIV感染を含むウイルス感染の処置を行なう方法に関する。この発明はさらに、TSG101抗体を用いてウイルス感染細胞を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
2.発明の背景
AIDSなどのウイルス性疾患の病因において、病原体と宿主細胞の相互作用は重要な役割を演じる。典型的なウイルス感染のためには、ウイルスは細胞表面受容体を通じて宿主細胞に付着し、宿主細胞膜と融合し、細胞膜を横切って移動し、ウイルス粒子を脱外被し、宿主タンパク質合成機構を用いてウイルスタンパク質を合成および集合し、宿主の輸送機構を通じて宿主細胞から放出する必要がある。ウイルスと宿主細胞との相互作用は、ウイルス病因の、ウイルスの除去から寄生または致命的な感染までにわたる結果を定める。たとえば、HIVはヒト細胞に生産的に感染するためにさまざまな戦略を用いる。レトロウイルスの生活環は、宿主細胞に付着することによって始まるが、その最初の標的はCD4+Tヘルパー細胞であり、特定の受容体を介して侵入する。細胞内で、RNAゲノムは「逆」転写されて相補DNAとなり、核に輸送されて宿主ゲノムに組込まれる。この組込まれた「プロウイルス」は新たなウイルスRNAおよびタンパク質の生成を指示し、それらは自己集合して、形質膜に包まれた成熟した感染性のウイルス粒子として細胞から「出芽」する。すべてのウイルスと同様、HIVは寄生性であり、出芽過程を行なう膜分裂事象を触媒できない。代わりに、新生ウイルスは細胞の膜選別機構を用いて感染のこの最終段階を完了する。こうした宿主とウイルスとの相互作用は、欠損細胞表面受容体(CCR5)を有する個体がHIV感染に対して完全に耐性であることによってよく実証されており、ウイルス病因における宿主遺伝子および遺伝子経路の重要な役割が解明されている。
【0004】
腫瘍感受性遺伝子(Tumor Susceptibility Gene)101(TSG101、リ(Li)ら、1996, Cell 85, 319-29)は、細胞生育(ゾン(Zhong)ら、1998, Cancer Res 58, 2699-702; オー(Oh)ら、2002, Proc Natl Acad Sci USA 99, 5430-5; クレンプラー(Krempler)ら、2002, J Biol Chem 277, 43216-23; ワグナー(Wagner)ら、2003, Mol Cell Biol 23, 150-62; リら、1996, Cell 85, 319-29)、細胞タンパク質トラフィッキング(バブスト(Babst)ら、2000, Traffic 1, 248-58; ビショップ(Bishop)ら、2002, J Cell Biol 157, 91-101)、およびp53の分解(リら、2001, Proc Natl Acad Sci USA 98, 1619-24; ルランド(Ruland)ら、2001, Proc Natl Acad Sci USA 98, 1859-64; モイレット−ラーレ(Moyret-Lalle)ら、2001, Cancer Res 61, 486-8)において重要な役割を行なう。TSG101はまた、この最終段階における重要な役割を持つものとして広く認識されており、細胞内TSG101の阻害はHIVの出芽過程を妨げる。TSG101は他の細胞内因子と協力して作用することにより、HIVウイルスの出芽または展開における重要な役割を演じる。ウイルスの集合および出芽を調整することが以前に示されていたHIV Gagタンパク質は、TSG101と高い親和性で結合し、このGag/TSG101相互作用は効率的なHIVウイルス集合および出芽に欠かせないものであり、
Gag/TSG101相互作用の分断はHIVウイルス出芽を防止し、HIVウイルスの広がりを大きく制限する。
【0005】
エンベロープウイルス集合の集合における最終ステップは、細胞膜からの出芽粒子の分離を必要とする。Gagにおける3つの別個の機能ドメイン、すなわち、HIV−1におけるPTAP(ゴットリンガー(Gottlinger)ら、1991, Proc Natl Acad Sci USA 88, 3195-9; ホワン(Huang)ら、1995, J Virol 69, 6810-8)と、RSV(ペアレント(Parent)ら、1995, J Virol 69, 5455-60)、MuLV(ユエン(Yuan)ら、1999, Embo J 18, 4700-10)およびM−PMV(ヤスダ(Yasuda)ら、1998, J Virol 72, 4095-103)におけるPPPYと、EIAVにおけるYXXL(パファー(Puffer)ら、1997, J Virol 71, 6541-6)とが、この機能に必要とされるとして異なるレトロウイルスにおいて同定され、後期(late)またはLドメインと名付けられた(ウィルズ(Wills)ら、1991, Aids 5, 639-54)。HIV−1において、LドメインはPTAPモチーフを含み、効率的なHIV−1の放出に必要とされる(たとえば、ウィルズら、1994, J. Virol. 68, 6605-6618; ゴットリンガーら、1991, Proc Natl Acad Sci USA 88, 3195-3199; ホワンら、1995,
J Virol 69, 6810-6818を参照)。HIV−1p6のLドメイン、特にPTAPモチーフが細胞タンパク質TSG101に結合し、それをウイルス集合の部位に入れてウイルス出芽を行なう(バープランク(VerPlank)ら、2001, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98:7724-7729; ガルス(Garrus)ら、2001, Cell 107:55-65; マーティン−セラーノ(Martin-Serrano)ら、2001, Nature Medicine 7:1313-19; ポルニロス(Pornillos)ら、2002, EMBO J. 21:2397-2406; デミロフ(Demirov)ら、2002, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:955-960; PCT公開第WO02/072790号; 米国特許出願第US2002/0177207号)。TSG101のUEVドメインはPTAPモチーフおよびモノユビキチンに結合し(ポルニロスら、2002, EMBO J. 21:2397-406; ポルニロスら、2002, Nat Struct Biol 9, 812-7)、このモノユビキチンもまたHIV−1出芽に関わっている(パトナイク(Patnaik)ら、2000, Proc Natl Acad Sci USA 97, 13069-74; シューベルト(Schubert)ら、2000, Proc Natl Acad Sci USA 97, 13057-62; ストラック(Strack)ら、2000, Proc Natl Acad Sci USA 97, 13063-8)。細胞内TSG101の枯渇(ガルスら、2001, Cell 107:55-65)または短くした形のTSG101の過剰発現は、HIV−1の放出を阻害する(デミロフら、2002, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:955-960)。特定の状況下では、TSG101はウイルス放出を促進するためにHIV−1のLドメインの代わりになることすらできる(マーティン−セラーノら、2001, Nature Medicine 7:1313-19)。
【0006】
酵母においては、Tsg101オーソログのVps23がVps28およびVps37と相互作用して、多胞体経路へのエンドソームタンパク質選別に対して重要なESCRT−Iと呼ばれるタンパク質複合体を形成することが示されている(カッツマン(Katzmann)ら、2001, Cell 106, 145-55)。この細胞内での多胞体形成が、形質膜におけるHIV−1の放出に似ているのではないかという仮説が立てられている(ガルスら、2001, Cell
107:55-65; パトナイクら、2000, Proc Natl Acad Sci USA 97, 13069-74)。哺乳動物細胞において、TSG101はVps28と相互作用して、ESCRT−I様の複合体を形成する(バブストら、2000, Traffic 1, 248-58; ビショップら、2002, J Cell Biol 157, 91-101; ビショップら、2001, J Biol Chem 276, 11735-42)が、Vps37の哺乳動物の相同体はまだ同定されていない。
【0007】
最近の調査(ブロウアー(Blower)ら、2003, AIDS Rev. 5:113-25; バルディセリ(Valdiserri)ら、2003, Nat Med. 9:881-6)では、世界中で4200万人もの人がHIVに感染していると見積もられている。この疾患で既に300万人を超える人が死亡している。先進国においては、高度に効き目が高いターゲッティングされた組合せ療法の出現によりAIDSの進行が遅らされているが、発展途上国、特に2100万人より多くのアフリカ人が感染しているアフリカにおいては、AIDSの汎流行が「人間発展カタストロフィ
(human development catastrophe)」をもたらしている。南アフリカだけでも、死者は2015年までに1000万人に上ると予測されている。関連する統計はアジア太平洋領域においても同様の危険性があることを警告しており、ここには国連の見積りによると、700万人より多くのHIV感染個体が存在する。AIDS汎流行の影響は、最近感染した患者の増加数を処置するための資源を持たない診療所の限度を大きく上回っている(南アフリカの成人人口の20%近くが感染している)。HIV感染した患者および深刻な病状のAIDS患者の処置が、アフリカおよびその他の発展途上国の既に過負担の健康管理システムを圧迫している。さらに悪いことに、HIVに対する現在の処置は、当初はウイルス負荷を減少させることに成功していたにもかかわらず、その効力を失い始めている。新たに感染した個体において薬剤耐性HIV株が単離されることが増えているためである。HIV疾患の治療技術をさらに複雑にしているのは、現在の抗レトロウイルス摂生の毒性であり、その大きさのために、医師が処置を開始および持続するための判断が複雑になっている。HIV疾患の処置に対する新たな治療範例の同定、特に耐性の発達を遅らせる保証のある作用機構を有するものの同定は、生物薬剤産業に対する世界的な挑戦である。
【0008】
また、多くのウイルスは非常に突然変異を起こしやすい。こうしたウイルスを直接ターゲッティングすることに依存する方法および組成物は通常、こうしたウイルスによる感染の処置において十分でない。たとえば、HIV−1は非常に突然変異を起こしやすいウイルスであり、HIV−1感染の過程において、感染個体において生成される抗体は永続的な保護効果を与えない。それは一部には、中和回避変異体(ターリ(Thali)ら、1992, J. Acquired Immune Deficiency Syndromes 5:591-599)の迅速な出現のためである。HIV感染個体の処置に対する現在の療法は主に、HIV感染の2つの別個の段階、すなわちウイルスゲノムの複製とウイルスタンパク質の成熟とにかかわるウイルス酵素に焦点を当てている。ウイルスは頻繁に突然変異を起こすため、薬物の最初の治療効果にかかわらず、抗ウイルス阻害剤に耐性の株が迅速に発達する。最近の研究の1つにおいては、薬剤耐性HIV株に新たに感染した個体のパーセンテージが5年間で6倍増加した(リトル(Little)ら、2002, N Engl J Med. 347:385-94)。さらに、現在の手当の標準である、逆転写酵素およびプロテアーゼの両方の阻害剤によってHIVを攻撃する組合せ療法は、多重薬剤耐性HIV株の発達をもたらしている。新たなHIVに基づく標的に向けられた抗レトロウイルス薬はかなりの価値があるが、この徐々に重要になってきている問題に対処していない。たとえば、抗−HIV装備に最も新しく加わったフューゼオン(登録商標)(エンフュービルタイド)に耐性のHIV株が患者から既に単離されている。したがって、その抗ウイルス効力および新たな作用機構にもかかわらず、薬剤耐性がフューゼオン(登録商標)などのウイルス融合阻害剤の治療の可能性を揺るがしているようである。したがって、HIV感染などのウイルス感染に立ち向かう新たな治療および防止策を開発する必要がある。
【0009】
ここでの考察または参考文献の引用は、こうした参考文献がこの発明に対する先行技術であると容認するものであると解釈されるべきではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
3.発明の概要
この発明は、TSG101タンパク質に結合する抗体を用いてウイルス生成を阻害または減少させる方法を提供する。この発明はまた、TSG101抗体を用いてウイルス感染を処置する方法を提供する。この発明はまた、感染細胞の表面においてTSG101をターゲッティングし、たとえばこうした感染細胞に治療用および/または診断用薬剤を送達するなどによって、ウイルス感染を処置するための方法および組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
局面の1つにおいて、この発明はエンベロープウイルスに感染した哺乳動物細胞からのウイルス出芽を減少させる方法を提供する。この方法は、哺乳動物細胞をTSG101タンパク質に結合する抗体の十分量と接触させるステップを含む。別の局面において、この発明は、エンベロープウイルスに感染した哺乳動物細胞に治療用分子を送達する方法を提供し、この方法は、哺乳動物細胞を、治療用分子とコンジュゲートされたTSG101タンパク質に結合する抗体を含む抗体コンジュゲートに接触させるステップを含む。好ましい態様において、抗体はTSG101タンパク質のN−末端またはC−末端領域に結合する。好ましい態様において、哺乳動物細胞はヒト細胞である。別の好ましい態様において、抗体は、VRETVNVITLYKDLKPVL(SEQ ID NO:2)およびQLRALMQKARKTAGLSDLY(SEQ ID NO:3)からなる群より選択されるアミノ酸領域に含まれるエピトープに結合する。好ましくは、抗体はモノクローナル抗体である。さらに別の好ましい態様において、エンベロープウイルスは、ヒト免疫不全ウイルスI型(HIV−I)、ヒト免疫不全ウイルスII型(HIV−II)、マールブルグウイルスおよびエボラウイルスからなる群より選択される。
【0012】
別の局面において、この発明は哺乳動物におけるエンベロープウイルスによる感染を処置する方法を提供し、この方法は哺乳動物に、TSG101タンパク質に結合する抗体を治療上有効な量投与するステップを含む。さらに別の局面において、この発明は哺乳動物におけるエンベロープウイルスによる感染を処置するための方法を提供し、この方法は哺乳動物に、治療薬剤とコンジュゲートされたTSG101タンパク質に結合する抗体を含む抗体コンジュゲートを治療上有効な量投与するステップを含む。好ましい態様において、抗体はTSG101タンパク質のN−末端またはC−末端領域に結合する。好ましい態様において、哺乳動物はヒトである。別の好ましい態様において、抗体は、VRETVNVITLYKDLKPVL(SEQ ID NO:2)およびQLRALMQKARKTAGLSDLY(SEQ ID NO:3)からなる群より選択されるアミノ酸領域に含まれるエピトープに結合する。好ましくは、抗体はモノクローナル抗体である。さらに別の好ましい態様において、エンベロープウイルスは、ヒト免疫不全ウイルスI型(HIV−I)、ヒト免疫不全ウイルスII型(HIV−II)、マールブルグウイルス、およびエボラウイルスからなる群より選択される。態様の1つにおいて、この方法は、哺乳動物に1つまたはそれ以上の他の治療薬剤を治療上有効な量投与するステップをさらに含む。
【0013】
さらに別の局面において、この発明は、エンベロープウイルスに感染した哺乳動物細胞を同定する方法を提供し、この方法は、(a)哺乳動物の細胞を、ラベルとコンジュゲートされたTSG101タンパク質に結合する抗体を含む抗体コンジュゲートに接触させるステップと、(b)付着されたラベルを有する細胞を検出することによってエンベロープウイルスに感染した細胞を同定するステップとを含む。好ましい態様において、抗体はTSG101タンパク質のN−末端またはC−末端領域に結合する。好ましい態様において、哺乳動物細胞はヒト細胞である。別の好ましい態様において、抗体は、VRETVNVITLYKDLKPVL(SEQ ID NO:2)およびQLRALMQKARKTAGLSDLY(SEQ ID NO:3)からなる群より選択されるアミノ酸領域に含まれるエピトープに結合する。好ましくは、抗体はモノクローナル抗体である。別の好ましい態様において、エンベロープウイルスは、ヒト免疫不全ウイルスI型(HIV−I)、ヒト免疫不全ウイルスII型(HIV−II)、マールブルグウイルスおよびエボラウイルスからなる群より選択される。態様の1つにおいて、ラベルは蛍光ラベルであり、付着されたラベルを有する細胞は蛍光活性化細胞選別器を用いて検出される。
【0014】
この発明はまた、哺乳動物由来の流体からの、エンベロープウイルスに感染した細胞のエクスビボ(ex vivo)除去の方法を提供する。この方法は、(a)流体を、TSG101タンパク質に結合するTSG101抗体の十分量とともにインキュベートするステップと、(b)TSG101抗体に結合された細胞を流体から除去するステップとを含む。流
体は血液または血清であってもよい。好ましい態様において、抗体はTSG101タンパク質のN−末端またはC−末端領域に結合する。好ましい態様において、哺乳動物はヒトである。別の好ましい態様において、抗体は、VRETVNVITLYKDLKPVL(SEQ ID NO:2)およびQLRALMQKARKTAGLSDLY(SEQ ID NO:3)からなる群より選択されるアミノ酸領域に含まれるエピトープに結合する。好ましくは、抗体はモノクローナル抗体である。別の好ましい態様において、エンベロープウイルスは、ヒト免疫不全ウイルスI型(HIV−I)、ヒト免疫不全ウイルスII型(HIV−II)、マールブルグウイルス、およびエボラウイルスからなる群より選択される。態様の1つにおいて、TSG101抗体に結合された細胞は、TSG101抗体に結合する抗体を含むカラムを用いて除去される。
【0015】
この発明はまた、哺乳動物におけるエンベロープウイルスによる感染を処置または防止する方法を提供し、この方法は、哺乳動物に治療上または予防上十分な量のワクチン組成物を投与するステップを含み、ワクチン組成物はTSG101タンパク質を含むポリペプチドを含む。好ましい態様において、ポリペプチドはTSG101タンパク質のN−末端またはC−末端領域を含む。好ましい態様において、哺乳動物はヒトである。別の好ましい態様において、ポリペプチドはVRETVNVITLYKDLKPVL(SEQ ID NO:2)およびQLRALMQKARKTAGLSDLY(SEQ ID NO:3)からなる群より選択されるアミノ酸領域を含む。さらに別の好ましい態様において、エンベロープウイルスは、ヒト免疫不全ウイルスI型(HIV−I)、ヒト免疫不全ウイルスII型(HIV−II)、マールブルグウイルス、およびエボラウイルスからなる群より選択される。態様の1つにおいて、この方法は、哺乳動物に、1つまたはそれ以上の他の治療薬剤を治療上有効な量投与するステップをさらに含む。
【0016】
この発明はまた、哺乳動物におけるエンベロープウイルスによる感染を処置または防止する方法を提供し、この方法は、哺乳動物に、治療上または予防上十分な量のDNAワクチン組成物を投与するステップを含み、DNAワクチン組成物は、TSG101タンパク質の断片を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド分子を含む。態様の1つにおいて、ポリヌクレオチド分子は、TSG101タンパク質のN−末端またはC−末端領域を含むポリペプチドをコードする。好ましい態様において、哺乳動物はヒトである。さらに別の好ましい態様において、ポリヌクレオチド分子は、VRETVNVITLYKDLKPVL(SEQ ID NO:2)およびQLRALMQKARKTAGLSDLY(SEQ ID NO:3)からなる群より選択されるアミノ酸配列、またはその少なくとも5アミノ酸の断片を含むポリペプチドをコードする。さらに別の好ましい態様において、エンベロープウイルスは、ヒト免疫不全ウイルスI型(HIV−I)、ヒト免疫不全ウイルスII型(HIV−II)、マールブルグウイルス、およびエボラウイルスからなる群より選択される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
5.発明の詳細な説明
この発明は、TSG101タンパク質に結合する抗体を用いてウイルス生成を阻害または減少させる方法を提供する。この発明はまた、TSG101抗体を用いてウイルス感染を処置する方法を提供する。この発明はまた、感染細胞の表面においてTSG101をターゲッティングし、たとえばこうした感染細胞に治療用および/または診断用薬剤を送達するなどによって、ウイルス感染を処置するための方法および組成物を提供する。
【0018】
治療の合理的な設計のためには、HIV病因の進歩した理解が必要である。最近の研究により、HIVおよびエボラウイルスなどのさまざまなウイルスの病因に宿主タンパク質TSG101が重要な役割を演じていることが示されている。特に、TSG101はウイルス粒子が感染細胞から脱出または出芽する過程に関係しており、したがって抗ウイルス
薬発見に対する新たな標的を表わすものである。感染細胞からのエンベロープRNAウイルスの集合および放出の下には、ウイルスおよび宿主タンパク質の緊密な協力が存在する(ペレス(Perez)ら、2001, Immunity 15(5): 687-90; フリード(Freed), 2002, J Virol 76(10): 4679-87; ポルニロスら、2002, Trends Cell Biol 12(12): 569-79)。感染の最終段階を支配するタンパク質:タンパク質およびタンパク質:膜相互作用の多くはまだ同定されていないが、細胞のTSG101タンパク質は重要な役割をしていることが示されている(ガルスら、2001, Cell 107:55-65; カーター(Carter) 2002; ポルニロスら、2002, Trends Cell Biol 12(12): 569-79; ポルニロスら、2002, Nat Struct Biol 9, 812-7)。遺伝子的分析、生化学的分析および顕微鏡分析により、TSG101は、レトロウイルス、ラブドウイルスおよびフィロウイルス族のメンバーを含む複数のエンベロープRNAウイルスと相互作用することが示されている。
【0019】
かなりの進化上の相違にもかかわらず、多くのエンベロープRNAウイルスは類似した戦略を用いて感染の最終段階を完了する(マーティン−セラーノら、2001, Nature Medicine 7:1313-19; フリード、2002 J Virol 76(10):4679-87)。ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV−1)、水疱性口炎ウイルス(VSV)、エボラウイルス(EBOV)、マールブルグウイルス(MARV)などにとって特に重要なのは、細胞の経路をウイルス粒子集合および出芽を行なうために一意に割当てる配列モチーフである後期(Late)またはLドメインである。Lドメイン活性を有する3つの配列モチーフが特徴付けされている。すなわち、PPxY、YxxLおよびPTAP(“x”はあらゆるアミノ酸を示す)である。HIV−1出芽は、p6Gagタンパク質のアミノ末端に見られるPTAPモチーフを必要とする。VSVに代表されるようなラブドウイルスは、マトリックス(M)タンパク質内のPPxYモチーフを利用する。複数のウイルス族のLドメインは、エンドソームの膜選別に対して重要な細胞タンパク質であるTSG101を用いる(バープランクら、2001, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98:7724-7729; ポルニロスら、2002, Nat Struct Biol 9, 812-7)。哺乳動物細胞におけるランダムノックアウトスクリーニングによって最初に同定されたTSG101は43KDaの多機能タンパク質であり、膜トラフィッキング、細胞周期調節、微小管集合およびタンパク質分解にかかわる(リら、1996, Cell 85, 319-29; ビショップら、2001, J Biol Chem 276:11735-42; カッツマンら、2001,Cell 106, 145-55; リら、2001, Proc Natl Acad Sci USA 98, 1619-24)。TSG101のC−末端はコイルドコイルドメインおよびその細胞内レベルを自動調節するドメインを有するのに対し、WWおよびSH3ドメインに構造的および機能的に似ている結合ポケットを介して複数のウイルスLドメインと相互作用するTSG101アミノ末端は、ユビキチンコンジュゲートした(UBC)E2酵素と顕著な相同性を有する(ポルニロスら、2002, Nat Struct Biol 9, 812-7)。TSG101のUBC様ドメインは、タンパク質の回転および選別の制御の中心である76アミノ酸タンパク質のユビキチンに強く結合するが、それは標的タンパク質のユビキチン化にかかわる触媒システイン残基を持たない(ヒッケ(Hicke)、2001, Cell 106(5): 527-30)。
【0020】
真核細胞において、TSG101はESCRT1(輸送に必要なエンドソーム選別複合体)の成分であり、このESCRT1は約350kDaの細胞質複合体であって、Vps28およびVps37も含む(カッツマンら、2001, Cell 106, 145-55; ビショップら、2002, J Cell Biol 157, 91-101)。これら3つのタンパク質の相互作用および膜トラフィッキングにおけるそれぞれの役割は現在調査中である。TSG101の酵母相同体であるVps23は、タンパク質選別欠損を機能的に相補することによって同定された(バブストら、2000, Traffic 1, 248-58)。TSG101レベルを減少させた線維芽細胞および酵母Vps23完全欠失(null)変異体は、どちらもエンドソーム/MVB経路における欠陥を示す。たとえば、通常はリソソーム分解のためにMBV系に入る受容体が、代わりに表面に再循環され、細胞シグナリングに大きな障害をもたらす。カッツマンらは最近の実験的分析に基づき、TSG101/Vps23は初期エンドソームの表面においてユ
ビキチン化されたタンパク質に結合し、それらがMVB小胞に入るのを助けることを示唆した(カッツマンら、2001, Cell 106, 145-55)。
【0021】
TSG101に加えて、WWドメインを有する細胞タンパク質がエンベロープRNAウイルスのLドメイン配列モチーフと相互作用することが示された(ハーティ(Harty)ら、2000, Proc Natl Acad Sci USA 97(25): 13871-6; キコニョゴ(Kikonyogo)ら、2001,
Proc Natl Acad Sci USA 98(20): 11199-204)。たとえば、ファーウェスタン結合アッセイによって、哺乳動物ユビキチンリガーゼNedd4のWWドメインおよびその酵母相同体Rsp5とEBOVのVP40Lドメインとの特定的な相互作用が示された(ハーティら、2000, Proc Natl Acad Sci USA 97(25): 13871-6; キコニョゴら、2001, Proc Natl Acad Sci USA 98(20): 11199-204)。そのデータは、ウイルス出芽におけるユビキチンの重要な役割をも示している(パトナイクら、2000, Proc Natl Acad Sci USA 97, 13069-74; カーター、2002, Trends Microbiol 10(5): 203-5; マイヤーズ(Myers)ら、2002,
J Virol 76(22): 11226-35)。Nedd4とTSG101との間にも構成的相互作用があるかもしれない。HIV−1は、エンドソーム/MVB経路に全く関係しない態様で感染細胞から逃れるためにNedd4およびTSG101を用いているのかもしれないことが示唆されている。しかし、TSG101はウイルス放出を行なうためにウイルスによって使われる主要な宿主因子として広く認められている。提案されるTSG101/MVB結合は部分的に、MVB形成の生物物理的過程に基づいており、それはエンドソーム脂質二重層の細胞質から内腔に向けての陥入を含むことが知られている(パトナイクら、2000, Proc Natl Acad Sci USA 97, 13069-74; ジャゼノスキ(Jasenosky)ら、2001, J Virol 75(11): 5205-14)。エンベロープRNAウイルスも同様の位相要因に面する。すなわち、膜の内部小葉におけるウイルス集合に続き、二重層はやはり細胞質から離れて細胞外環境に向けてめくれる必要がある。熱力学的に安定な二重層を分割するいかなる触媒能力も有さないウイルスは明らかにエンドソーム膜因子を助けに用いている。したがって、TSG101:Lドメイン相互作用は、新生ビリオンと膜分裂および出芽を行なうエンドソーム機構との間の極めて重要な連結体を提供しているだろう。前述のとおり、ESCRT−1の構成要素のTSG101は、ユビキチン化されたタンパク質を選別してMVB経路に含ませる。しかしこの選別は、HIVおよび関連のエンベロープRNAウイルスに感染した細胞においては覆されるかも知れない。すなわち、ユビキチン化されたタンパク質をMVB経路に導く代わりに、TSG101およびそのエンドソーム対応物は形質膜およびその関連ウイルス粒子がめくれるよう指示し、形質膜から摘み取られるエンベロープ粒子を形成するかも知れない。
【0022】
ビリオンの集合および放出を行なう分子決定子はまだ活発な調査領域であるが、いくつかの一般的な結合が出ている。第1に、ビリオン成熟の際にTSG101が形質膜に加入することが完全に要求される。中心的なTSG101の役割を支持するデータは強力である。すなわち、(i)TSG101UBCドメインの過剰発現は、HIV−1Gag発現細胞におけるVLP形成をトランスドミナントに妨害する(デミロフら、2002, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:955-960)。(ii)RNA干渉を介したTSG101発現の除去は、HIV−1出芽を損なう(ガルスら、2001, Cell 107:55-65)。また、(iii)これら両方の場合において、電子顕微鏡分析により、Lドメイン欠損ウイルスを発現する細胞において見られるものと構造的に類似した、膜性柄を介して形質膜につながれたウイルス粒子が示された。マーティン−セラーノらによって示された通り、TSG101のフィロウイルスVP40またはHIV−1 p6Gagとの結合を妨げるようなLドメイン点突然変異は、ヒト細胞からのウイルス粒子放出をかなり減少させ、この効果はTSG101が脂質二重層においてウイルスタンパク質と共局在できなくなることと一致する(マーティン−セラーノら、2001, Nature Medicine 7:1313-19)。関連実験は、EBOVのLドメインが、VLP放出に対する識別可能な影響なしにp6GagのLドメインと置換可能であることを示しており、これはエンベロープRNAウイルスの出芽機構の保存された性
質を強調する。重要なことに、一旦TSG101がHIV−1のGagに融合されると、HIV−1のLドメインは重要でなくなる。したがって、Lドメインの主要な役割はTSG101を形質膜に加えることである。このTSG101とウイルスLドメインとの間の相互作用は、HIV、EBOVおよびMARV感染の防止および処置に対する新たな標的を表わす(ルバン(Luban)、2001, Nat Med 7(12): 1278-80; シニア(Senior)、2001,
Drug Discov Today 6(23):1184-1186)。
【0023】
発明者は、ウイルス感染を阻害または減少させるために抗−TSG101抗体を用い得ることを発見した。
【0024】
5.1.抗−TSG101抗体
この発明は、ウイルス感染を阻害または減少させるための、TSG101タンパク質に特異的に結合する結合部位を含む抗体の用法を含む。したがって、こうした抗−TSG101抗体は広範囲の抗ウイルス剤として用いられ得る。ここで用いられる「抗体」という用語は免疫グロブリン分子を示す。態様の1つにおいて、抗体はTSG101タンパク質のC−末端領域に結合する。好ましい態様において、抗体はアミノ酸領域QLRALMQKARKTAGLSDLY(SEQ ID NO:3)に含まれるエピトープに結合する。別の態様において、抗体はTSG101タンパク質のN−末端領域に結合する。好ましい態様において、抗体はアミノ酸領域VRETVNVITLYKDLKPVL(SEQ ID NO:2)に含まれるエピトープに結合する。
【0025】
ここで用いられる「エピトープ」は抗原決定基、すなわち宿主における免疫応答を誘発するか、または抗体によって結合される分子の領域を示す。この領域は連続的なアミノ酸を含んでもよいが必ずしも含まなくてもよい。エピトープという用語は当該技術分野において「抗原決定基」としても公知である。エピトープは、宿主の免疫系に対して一意である空間的コンフォメーションにおいてたった3個のアミノ酸を含んでいてもよい。一般的に、エピトープは少なくとも5個のこうしたアミノ酸からなり、より一般的には少なくとも8−10個のこうしたアミノ酸からなる。こうしたアミノ酸の空間的コンフォメーションを決定する方法は当該技術分野において公知である。
【0026】
この発明はまた、TSG101タンパク質に特異的に結合する結合部位を含む抗体断片の用法も想定している。免疫グロブリン分子の免疫活性断片の例としては、抗体をペプシンまたはパパインなどの酵素で処理することによって生成できるF(ab)およびF(ab′)2断片がある。抗体の免疫活性断片を生成および発現する方法の例は、ここに全体にわたり引用により援用する米国特許第5,648,237号に見出すことができる。
【0027】
免疫グロブリン分子は、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロンおよびミュー定常領域ならびに無数の免疫グロブリン可変領域を含む遺伝子によってコードされる。軽鎖(L鎖)はカッパまたはラムダのいずれかに分類される。軽鎖は可変軽(VL)および定常軽(CL)ドメインを含む。重鎖(H鎖)はガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロンに分類され、それらは順に免疫グロブリンクラスIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEを定める。重鎖は、可変重(VH)、定常重1(CH1)、ヒンジ、定常重2(CH2)、および定常重3(CH3)ドメインを含む。IgG重鎖はさらにその配列の変化に基づいてサブクラス化され、そのサブクラスはIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4と呼ばれる。
【0028】
抗体はさらに2組の軽および重ドメインに分けることができる。対になったVLおよびVHドメインの各々は一連の7つのサブドメインを含む。すなわち、フレームワーク領域1(FR1)、相補性決定領域1(CDR1)、フレームワーク領域2(FR2)、相補性決定領域2(CDR2)、フレームワーク領域3(FR3)、相補性決定領域3(CD
R3)、およびフレームワーク領域4(FR4)であり、これらが抗体−抗原認識ドメインを構成する。
【0029】
適切な抗原特異性のモノクローナル抗体からの遺伝子を適切な生物活性の第2のヒト抗体からの遺伝子とともにスプライシングすることによってキメラ抗体を作成してもよい。より特定的には、抗体の可変領域をコードする遺伝子を第2の抗体分子からの定常領域遺伝子とともにスプライシングすることによってキメラ抗体が作成されてもよい。この方法は、相補性決定領域がマウスでありフレームワーク領域がヒトであることによってその抗体で処置されたヒト患者の免疫応答の可能性を減少させるヒト化モノクローナル抗体を生成するのに用いられる(全体にわたりここに引用により援用する米国特許第4,816,567号、第4,816,397号、第5,693,762号、第5,585,089号、第5,565,332号および第5,821,337号)。
【0030】
この発明において用いるために好適な抗体は天然供給源から得ても、または遺伝子工学技術による定常領域機能の変更を含む、ハイブリドーマ、組換えもしくは化学合成法によって生成されてもよい(米国特許第5,624,821号)。この発明の抗体はいずれのアイソタイプであってもよいが、ヒトIgG1であることが好ましい。
【0031】
抗体はたとえば完全な免疫グロブリンとして存在しても、またはパパインもしくはペプシンなどのさまざまなペプチダーゼによる消化によって生成されるいくつかのよく特徴付けされた断片に切断されてもよい。ペプシンは抗体をヒンジ領域中のジスルフィド結合の下で消化して、軽鎖がジスルフィド結合によってVH−CH1につながれてなるFabの二量体である、抗体のF(ab)′2断片を生成する。ヒンジ領域中のジスルフィド結合を切断することによってF(ab)′2二量体をFab′単量体に変えるための穏やかな条件下で、F(ab)′2を減少させてもよい。Fab′単量体は本質的にヒンジ領域の部分を有するFabである。エピトープ、抗体および抗体断片の詳細な説明については、ポール(Paul)編、1993年「基礎免疫学(Fundamental Immunology)」第3版(ニューヨーク: Raven Press)を参照されたい。こうしたFab′断片を、化学的に、または組換DNA技術を用いて、新規に(de novo)合成してもよいことを当業者は認識するだろう。よってここで用いられる抗体断片という用語は、抗体全体の変形によって生成された抗体断片または新規に合成されたものを含む。
【0032】
ここで用いられる抗体はまた単一鎖抗体(scFv)であってもよく、これは一般的に、軽鎖の可変ドメインがポリペプチドリンカを介して重鎖の可変ドメインに融合されてなる融合ポリペプチドを含む。
【0033】
この発明はまた、ウイルス感染を阻害または減少させるための抗−TSG101抗体のポリクローナル集団の用法も含む。ここで用いられる、この発明の抗−TSG101抗体のポリクローナル集団とは、抗−TSG101抗体の集団を示し、それは各々が異なる結合特異性を有する複数の異なる抗−TSG101抗体を含む。態様の1つにおいて、抗−TSG101抗体の集団は、TSG101タンパク質のC−末端領域に結合する抗体を含む。好ましい態様において、抗−TSG101抗体の集団は、アミノ酸領域QLRALMQKARKTAGLSDLY(SEQ ID NO:3)に含まれる1つまたはそれ以上のエピトープに結合する抗体を含む。別の態様において、抗−TSG101抗体の集団は、TSG101タンパク質のN−末端領域に結合する抗体を含む。特定の態様において、抗−TSG101抗体の集団は、アミノ酸領域VRETVNVITLYKDLKPVL(SEQ ID NO:2)に含まれる1つまたはそれ以上のエピトープに結合する抗体を含む。
【0034】
好ましくは、ポリクローナル集団の複数の抗−TSG101抗体は、TSG101タンパク質の異なるエピトープに対する特異性を含む。好ましい態様において、ポリクローナ
ル集団中の抗−TSG101抗体の少なくとも90%、75%、50%、20%、10%、5%、または1%が所望のエピトープを標的にする。別の好ましい態様においては、ポリクローナル集団中のあらゆる単一の抗−TSG101抗体の割合は、集団の90%、50%または10%を超えない。ポリクローナル集団は異なる特異性を有する少なくとも2つの異なる抗−TSG101抗体を含む。より好ましくは、ポリクローナル集団は少なくとも10種の異なる抗−TSG101抗体を含む。最も好ましくは、ポリクローナル集団は異なる特異性を有する少なくとも100種の異なる抗−TSG101抗体を含む。
【0035】
5.2.抗−TSG101抗体の生成
TSG101タンパク質に結合する抗体を増やすためにTSG101タンパク質またはその断片が用いられてもよい。こうした抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、単一鎖、Fab断片、およびFab発現ライブラリを含むがそれに制限されない。好ましい態様において、抗C−末端TSG101抗体は、TSG101タンパク質の好適なC−末端断片を用いて増やされる。こうした抗体はウイルス生成の阻害に有用である。
【0036】
5.2.1 モノクローナル抗−TSG101抗体の生成
抗体は、免疫原としてのTSG101タンパク質またはその断片によって好適な対象を免疫化することによって調製できる。免疫化した対象における抗体力価は、固定化ポリペプチドを用いる酵素結合免疫吸着剤検定法(ELISA)などの標準的な技術によって時間を追ってモニタできる。所望であれば、哺乳動物(たとえば血液)から抗体分子を単離し、IgG画分を得るためのプロテインAクロマトグラフィなどの周知の技術によってさらに精製できる。態様の1つにおいて、抗−N末端TSG101抗体(抗−TSG101抗体“C”とも呼ばれる)は、ヒトTSG101タンパク質のN−末端断片VRETVNVITLYKDLKPVL(SEQ ID NO:2)を用いて増やされる。別の態様において、抗−C末端TSG101抗体(抗−TSG101抗体“E”とも呼ばれる)は、ヒトTSG101タンパク質のC−末端断片QLRALMQKARKTAGLSDLY(SEQ ID NO:3)を用いて増やされる。
【0037】
免疫化から適切な時間が経った後、たとえば特定の抗体力価が最も高いときに、対象から抗体生成細胞を得て、コーラー(Kohler)およびミルスタイン(Milstein)(1975, Nature 256:495-497)によって最初に記載されたハイブリドーマ技術、コツボル(Kozbor)ら(1983, Immunol. Today 4:72)によるヒトB細胞ハイブリドーマ技術、コール(Cole)ら(1985, モノクローナル抗体と癌治療法(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy)、Alan R. Liss Inc., pp. 77-96)によるEBV−ハイブリドーマ技術、またはトリオーマ技術などの標準的な技術によってモノクローナル抗体を調製するために用いてもよい。ハイブリドーマを生成するための技術は周知である(免疫学の最新プロトコル(Current Protocols in Immunology)、1994, John Wiley & Sons, Inc., ニューヨーク、NYを参照)。この発明のモノクローナル抗体を生成するハイブリドーマ細胞は、たとえば標準ELISAアッセイを用いて,目的のポリペプチドに結合する抗体に対してハイブリドーマ培養上清をスクリーニングすることにより検出される。
【0038】
モノクローナル抗体は実質的に均質な抗体の集団から得られる。すなわち、集団を含む個々の抗体は、少量存在し得る自然に起り得る突然変異を除いては同一である。よって、「モノクローナル」という修飾語は、別個の抗体の混合物ではないという抗体の特徴を示す。たとえば、モノクローナル抗体はコーラーら(1975, Nature 256:495)によって最初に記載されたハイブリドーマ法を用いて作成されても、または組換えDNA法(米国特許第4,816,567号)によって作成されてもよい。ここで用いられる「モノクローナル抗体」という用語はまた、その抗体が免疫グロブリンであることを示す。
【0039】
モノクローナル抗体を生成するハイブリドーマ法において、マウスまたはハムスターな
どその他の適切な宿主動物は、前述のように免疫化されて、免疫化に用いられたタンパク質に特異的に結合する抗体を生成するかまたは生成できるリンパ球を誘発する(たとえば、ここに全体にわたり引用により援用する米国特許第5,914,112号を参照)。
【0040】
代替的に、リンパ球がインビトロで免疫化されてもよい。リンパ球は次いでポリエチレングリコールなどの好適な融合剤を用いて骨髄腫細胞と融合され、ハイブリドーマ細胞を形成する(ゴーディング(Goding)、モノクローナル抗体:原理と実際(Monoclonal Antibodies: Principles and Practice)、pp. 59-103 (Academic Press, 1986))。こうして調製されたハイブリドーマ細胞は、融合していない親骨髄腫細胞の生育または生存を阻害する1つまたはそれ以上の物質を含有することが好ましい好適な培養液中に接種して生育される。たとえば、親骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を持たないとき、そのハイブリドーマに対する培養液は典型的にヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含み(HAT培地)、これらの物質はHGPRT欠失細胞の生育を防止する。
【0041】
好ましい骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体生成細胞による抗体の安定した高レベル生成を支持し、HAT培地などの培地に感受性の細胞である。これらの中でも好ましい骨髄腫細胞系は、ソーク研究所細胞配布センター(Salk Institute Cell Distribution Center)(サンディエゴ、カリフォルニア、USA)より入手可能なMOPC−21およびMPC−11マウス腫瘍由来のものなどのネズミ骨髄腫系、ならびにアメリカンタイプカルチャーコレクション(ロックビル、Md、USA)より入手可能なSP−2細胞である。
【0042】
ヒト骨髄腫およびマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞系もまた、ヒトモノクローナル抗体の生成に対して記載されている(コツボル、1984, J. Immunol., 133:3001; ブロデュール(Brodeur)ら、モノクローナル抗体生成技術と応用(Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications)、pp. 51-63 (Marcel Dekker, Inc., ニューヨーク、1987))。ハイブリドーマ細胞が生育する培養液は、抗原に対して向けられたモノクローナル抗体の生成に対してアッセイされる。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって生成されるモノクローナル抗体の結合特異性が、免疫沈降法によって、またはラジオイムノアッセイ(RIA)もしくは酵素結合免疫吸着剤検定法(ELISA)などのインビトロ結合アッセイによって定められる。モノクローナル抗体の結合親和性は、たとえばムンソン(Munson)ら(1980, Anal. Biochem., 107:220)のスキャッチャード分析によって定めることができる。
【0043】
所望の特異性、親和性および/または活性の抗体を生成するハイブリドーマ細胞が同定された後、そのクローンは限界希釈手順によってサブクローニングされ、標準的な方法によって生育されてもよい(ゴーディング、モノクローナル抗体:原理と実際、pp. 59-103, Academic Press, 1986)。この目的に好適な培養液はたとえば、D−MEMまたはRPMI−1640培地などである。また、ハイブリドーマ細胞は動物における腹水腫瘍としてインビボで生育されてもよい。サブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体は、たとえばプロテインA−セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィ、ゲル電気泳動、透析、またはアフィニティクロマトグラフィなどの従来の免疫グロブリン精製手順によって、培養液、腹水または血清から好適に分離される。
【0044】
モノクローナル抗体分泌ハイブリドーマの調製の代わりに、組換え組合せ免疫グロブリンライブラリ(たとえば、抗体ファージディスプレイライブラリ)をTSG101タンパク質または断片によってスクリーニングすることによって、TSG101タンパク質またはその断片に向けられたモノクローナル抗体を同定および単離できる。ファージディスプレイライブラリを生成およびスクリーニングするためのキットは商業的に入手可能である
(たとえば、ファルマシア組換えファージ抗体システム、カタログ番号第27−9400−01号、およびストラタジーン抗原SurfZAP(商標)ファージディスプレイキット、カタログ番号第240612号)。加えて、抗体ディスプレイライブラリの生成およびスクリーニングに用いるために特に適した方法および試薬の例はたとえば、米国特許第5,223,409号および第5,514,548号、PCT公報第WO92/18619号、PCT公報第WO91/17271号、PCT公報第WO92/20791号、PCT公報第WO92/15679号、PCT公報第WO93/01288号、PCT公報第WO92/01047号、PCT公報第WO92/09690号、PCT公報第WO90/02809号;フックス(Fuchs)ら、1991, Bio/Technology 9: 1370-1372; ハイ(Hay)ら、1992, Hum. Antibod. Hybridomas 3:81-85; ヒューズ(Huse)ら、1989, Science 246:1275-1281; グリフィズ(Griffiths)ら、1993, EMBOJ. 12:725-734などに見出すことができる。
【0045】
また、適切な生物的活性のヒト抗体分子からの遺伝子とともに適切な抗原特異性のマウス抗体分子からの遺伝子をスプライシングすることによって「キメラ抗体」を生成するために開発された技術(モリソン(Morrison)ら、1984 Proc. Natl. Acad. Sci., 81, 6851-6855; ニューバーガー(Neuberger)ら、1984, Nature 312, 604-608; タケダ(Takeda)ら、1985, Nature, 314, 452-454)を用いてもよい。キメラ抗体とは、ネズミmAb由来の可変領域とヒト免疫グロブリン定常領域とを有するものなど、異なる部分が異なる動物種に由来する分子のことである(たとえば、ここに全体にわたり引用により援用するキャビリー(Cabilly)らの米国特許第4,816,567号およびボス(Boss)らの米国特許第4,816,397号を参照)。
【0046】
ヒト化抗体とは、ヒト以外の種からの1つまたはそれ以上の相補性決定領域(CDR)と、ヒト免疫グロブリン分子からのフレームワーク領域とを有するヒト以外の種からの抗体分子である(たとえば、ここに全体にわたり引用により援用する米国特許第5,585,089号を参照)。こうしたキメラおよびヒト化モノクローナル抗体は、たとえばPCT公報第WO87/02671号、欧州特許出願第184,187号、欧州特許出願第171,496号、欧州特許出願第173,494号、PCT公報第WO86/01533号、米国特許第4,816,567号および第5,225,539号、欧州特許出願第125,023号;ベター(Better)ら、1988, Science 240:1041-1043; リウ(Liu)ら、1987, Proc, Natl. Acad. Sci. USA 84: 3439-3443; リウら、1987, J. Immunol. 139:3521-3526; サン(Sun)ら、1987, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:214-218; ニシムラ(Nishimura)ら、1987, Canc. Res. 47:999-1005; ウッド(Wood)ら、1985, Nature 314:446-449; ショー(Shaw)ら、1988, J. Natl. Cancer Inst. 80:1553-1559; モリソン、1985, Science 229:1202-1207; オイ(Oi)ら、1986, Bio/Techniques 4:214; ジョーンズ(Jones)ら、1986, Nature 321:552-525; バーヘイアン(Verhoeyan)ら、1988, Science 239:1534; ならびに、ベイドラー(Beidler)ら、1988, J. Immunol. 141:4053-4060に記載される方法を用いて、当該技術分野において公知の組換えDNA技術によって生成できる。
【0047】
相補性決定領域(CDR)移植(グラフティング)は、抗体をヒト化する別の方法である。それはヒトのフレームワークに完全な抗原特異性および結合親和性を移すためにネズミ抗体を再構築するステップを含む(ウインター(Winter)ら、米国特許第5,225,539号)。CDR移植抗体はさまざまな抗原に対してうまく構築されている。たとえば、クイーン(Queen)ら、1989年(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:10029)に記載されるようなIL−2受容体に対する抗体、リーヒマン(Riechmann)ら(1988, Nature, 332:323)に記載されるような細胞表面受容体CAMPATHに対する抗体、コールら(1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:2869)におけるB型肝炎に対する抗体、およびテンペスト(Tempest)ら(1991, Bio-Technology, 9:267)におけるウイルス抗原すなわち呼
吸器系合胞体ウイルスに対する抗体などである。CDR移植抗体は、ネズミモノクローナル抗体のCDRがヒト抗体に移植されて生成される。移植後、ほとんどの抗体は親和性を維持するためにフレームワーク領域における付加的なアミノ酸変更による利益を受ける。これはおそらく、フレームワーク残基がCDRコンフォメーションを維持するために必要だからであり、いくつかのフレームワーク残基は抗原結合部位の一部であることが示されている。しかし、抗原部位を導入しないようにフレームワーク領域を保存するために、その配列は確立された生殖細胞系配列と比較された後、コンピュータモデリングされる。
【0048】
ヒト患者の治療的処置に対しては、完全にヒトの(completely human)抗体が特に望ましい。こうした抗体は、内因性の免疫グロブリン重鎖および軽鎖遺伝子を発現できないがヒトの重鎖および軽鎖遺伝子を発現できるトランスジェニックマウスを用いて生成できる。このトランスジェニックマウスは、TSG101タンパク質によって通常の態様で免疫化されている。
【0049】
TSG101タンパク質に向けられたモノクローナル抗体は従来のハイブリドーマ技術を用いて得ることができる。トランスジェニックマウスに含まれるヒト免疫グロブリントランスジーンはB細胞分化の際に再配列し、その後クラススイッチおよび体細胞変異を受ける。よってこうした技術を用いることにより、治療に有用なIgG、IgAおよびIgE抗体を生成することができる。ヒト抗体を生成するためのこの技術の概要については、ロンバーグ(Lonberg)およびハッサー(Huszar)(1995, Int. Rev. Immunol. 13:65-93)を参照されたい。ヒト抗体およびヒトモノクローナル抗体を生成するためのこの技術の詳細な考察、およびこうした抗体を生成するための手順については、たとえば米国特許第5,625,126号、米国特許第5,633,425号、米国特許第5,569,825号、米国特許第5,661,016号、および米国特許第5,545,806号を参照されたい。また、アブジェニクス社(フリーモント、CA、たとえば米国特許第5,985,615号を参照)およびメダレックス社(プリンストン、NJ)などの会社は、前述と同様の技術を用いたTSG101タンパク質またはその断片に向けられたヒト抗体の提供に従事できる。
【0050】
選択されたエピトープを認識して結合する完全にヒトの抗体は、「誘導選択(guided selection)」と呼ばれる技術を用いて生成できる。このアプローチでは、選択された非ヒトモノクローナル抗体、たとえばマウス抗体を用いて、同じエピトープを認識する完全にヒトの抗体の選択を誘導する(ジェスパーズ(Jespers)ら、1994, Bio/technology 12:899-903)。
【0051】
免疫原として用いるために、アフィニティクロマトグラフィまたは免疫沈降などの標準的な技術によって、既存の抗−TSG101抗体を用いて病原体の付加的な抗原を単離してもよい。さらに、こうした抗体を用いて(たとえば細胞溶解物または細胞上清中の)タンパク質を検出して、TSG101タンパク質の発生量および発現のパターンを評価してもよい。抗体を検出可能な物質と結合させることによって、検出を容易にできる。検出可能な物質の例にはさまざまな酵素、補欠分子族、蛍光材料、発光材料、生物発光材料、および放射性材料が含まれる。好適な酵素の例としてはセイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータガラクトシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼがあり、好適な補欠分子族複合体の例としてはストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンがあり、好適な蛍光材料の例としてはウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンがあり、発光材料の例としてはルミノールがあり、生物発光材料の例としてはルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンがあり、好適な放射性材料の例としては125I、131I、35Sまたは3Hがある。
【0052】
5.2.2.ポリクローナル抗−TSG101抗体の生成
抗−TSG101抗体は、マウス、ウサギおよびウマなどであるがそれに制限されない好適な動物を免疫化することによって生成できる。
【0053】
TSG101タンパク質またはその断片を含む免疫原調製物を用いて、好適な対象(たとえば、ウサギ、ヤギ、マウスまたはその他の哺乳動物)を免疫化することによって抗体を調製する。適切な免疫原調製物はたとえば、組換えにより発現されるかまたは化学的に合成されたTSG101ペプチドまたはポリペプチドを含んでもよい。調製物は、フロイントの完全または不完全アジュバントなどのアジュバント(補助薬)、または類似の免疫刺激剤をさらに含んでもよい。
【0054】
免疫原として用いるのに好適なTSG101タンパク質の断片は、8アミノ酸、より好ましくは10アミノ酸、およびさらに好ましくは15アミノ酸の長さの、TSG101タンパク質の少なくとも一部を含む。
【0055】
この発明はまた、免疫原として用いるためのキメラまたは融合TSG101ポリペプチドを提供する。ここで用いられる「キメラ」または「融合」TSG101ポリペプチドは、異種ポリペプチドに動作可能に結合されたTSG101ポリペプチドのすべてまたは一部を含む。融合TSG101ポリペプチドにおいて、「動作可能に結合される」という用語は、TSG101ポリペプチドと異種ポリペプチドとが互いにフレームを合せて融合されていることを示すことが意図される。異種ポリペプチドは、TSG101ポリペプチドのN−末端またはC−末端に融合できる。
【0056】
有用な融合TSG101ポリペプチドの1つは、TSG101ポリペプチドがGST配列のC−末端に融合されたGST融合TSG101ポリペプチドである。こうした融合TSG101ポリペプチドは、組替えTSG101ポリペプチドの精製を容易にできる。
【0057】
別の態様において、融合TSG101ポリペプチドはN−末端に異種シグナル配列を含むことによって、TSG101ポリペプチドが分泌され、高親和性抗体を生成するために高い均質性に精製され得るようにする。たとえば、免疫原の本来のシグナル配列を除去し、別のタンパク質からのシグナル配列で置換してもよい。たとえば、バキュロウイルスエンベロープタンパク質のgp67分泌配列を異種シグナル配列として用い得る(分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)、アウズベル(Ausubel)ら編、John Wiley & Sons、1992)。真核生物異種シグナル配列の他の例には、メリチンおよびヒト胎盤アルカリホスファターゼ(ストラタジーン、ラホーヤ、カリフォルニア)の分泌配列がある。さらに別の例においては、有用な原核生物異種シグナル配列はphoA分泌シグナルおよびプロテインA分泌シグナル(ファルマシアバイオテク、ピスカタウェイ、ニュージャージー)を含む。
【0058】
さらに別の態様において、融合TSG101ポリペプチドは、免疫グロブリンタンパク質族のメンバーに由来する配列にTSG101ポリペプチドのすべてまたは一部が融合された免疫グロブリン融合タンパク質である。免疫グロブリン融合タンパク質は、対象におけるTSG101ポリペプチドに対して向けられる抗体を生成するための免疫原として用い得る。
【0059】
キメラおよび融合TSG101ポリペプチドは、標準的な組換えDNA技術によって生成できる。態様の1つにおいて、融合遺伝子は、自動DNA合成装置を含む従来の技術によって合成できる。代替的には、2つの連続する遺伝子断片間の相補的なオーバーハングを起こさせるアンカープライマを用いて遺伝子断片のPCR増幅を行なうことができ、その後アニーリングおよび再増幅を行なうことによってキメラ遺伝子配列を生成できる(例
、アウズベルら、前出)。さらに、融合ドメイン(例、GSTポリペプチド)を既にコードしている多くの発現ベクターが商業的に入手可能である。免疫原をコードする核酸を、融合ドメインがポリペプチドにフレームを合せて結合されるようにして、こうした発現ベクターにクローニングできる。
【0060】
次に、TSG101免疫原調製物を用いて好適な動物を免疫化する。その動物はヒト抗体を分泌できる特定化されたトランスジェニック動物であることが好ましい。制限的でない例としては、特定の病原体に向けられた抗体のポリクローナル集団を生成するために用い得るトランスジェニックマウス系統がある(フィッシュウィルド(Fishwild)ら、1996, Nature Biotechnology 14:845-851; メンデス(Mendez)ら、1997, Nature Genetics 15:146-156)。この発明の態様の1つにおいては、再配列されていないヒト免疫グロブリン遺伝子を有するトランスジェニックマウスが標的免疫原によって免疫化される。マウスにおいて免疫原調製物に対する活発な免疫応答が誘発された後、マウスの血液が回収されて、血漿または血清からヒトIgG分子の精製調製物を生成できる。ヒトIgG分子の精製調製物を得るために当該技術分野において公知のあらゆる方法が用いられてもよく、その方法は好適なカラムマトリックスに結合された抗−ヒトIgG抗体を用いるアフィニティカラムクロマトグラフィを含むがそれに制限されない。抗−ヒトIgG抗体は当該技術分野において公知のあらゆる供給源から得ることができ、たとえばダコ(Dako)社およびICNなどの商業的供給源から得てもよい。生成されたIgG分子の調製物は、異なる程度の親和性で免疫原に結合するIgG分子のポリクローナル集団を含む。調製物のかなりの部分が免疫原に特異的なIgG分子であることが好ましい。IgG分子のポリクローナル調製物が記載されるが、免疫グロブリン分子のあらゆる1種、または異なる種類のあらゆる組合せを含むポリクローナル調製物も想定されており、この発明の範囲に含まれることが意図されることが理解される。
【0061】
TSG101タンパク質に向けられた抗体の集団は、ファージディスプレイライブラリから生成できる。ポリクローナル抗体は、TSG101タンパク質またはその断片との特異性の十分に大きくて多様な集団を有するファージディスプレイライブラリのアフィニティスクリーニングによって得ることができる。抗体ディスプレイライブラリの生成およびスクリーニングに用いるために特に適した方法および試薬の例はたとえば、米国特許第5,223,409号および第5,514,548号、PCT公報第WO92/18619号、PCT公報第WO91/17271号、PCT公報第WO92/20791号、PCT公報第WO92/15679号、PCT公報第WO93/01288号、PCT公報第WO92/01047号、PCT公報第WO92/09690号、PCT公報第WO90/02809号;フックスら、1991, Bio/Technology 9: 1370-1372; ハイら、1992, Hum. Antibod. Hybridomas 3:81-85; ヒューズら、1989, Science 246:1275-1281; グリフィズら、1993, EMBOJ. 12:725-734などに見出すことができる。ファージディスプレイライブラリは、特異性の非常に大きな集団からの所望の抗体の選択を可能にする。ファージディスプレイライブラリの付加的な利点は、選択された抗体をコードする核酸を便利に得られることであり、それによってその後の発現ベクターの構築が容易になる。
【0062】
別の好ましい態様においては、ここに全体にわたり引用により援用する米国特許第6,057,098号に記載されるように、個別のメンバーのクローニング単離なしに選択され提示された抗体すべての集合を用いる方法によって、TSG101タンパク質またはその断片に向けられた抗体の集団が生成される。ポリクローナル抗体は、好ましくは複数の抗体を提示する提示ライブラリメンバーの濃縮後に、たとえば複数のエピトープを有する抗原分子との特異性の十分に大きなレパートリーを有するファージディスプレイライブラリのアフィニティスクリーニングによって得られる。選択された提示抗体をコードする核酸が除去されて好適なPCRプライマを用いて増幅される。核酸はゲル電気泳動によって精製されることにより、核酸の全長が単離されるようにできる。次いで各々の核酸が好適
な発現ベクターに挿入されることにより、異なる挿入物を有する発現ベクターの集団が得られる。発現ベクターの集団は次いで好適な宿主において発現される。
【0063】
5.2.3.ウイルス生成を阻害する抗−TSG101抗体の同定
この発明は、ウイルス出芽を阻害または減少させるために用い得る抗−TSG101抗体を同定する方法を提供する。態様の1つにおいて、この発明はレトロウイルス感染アッセイを用いて抗−TSG101抗体のウイルス感染に対する影響を定める方法を提供する。末端反復配列(LTR)プロモータから発現される大腸菌lacZ遺伝子を含むネズミ白血病ウイルス(MLV)由来ベクター(pBMN−Z−I−Neo)が、293細胞(フェニックス(Phoenix)A、ATCC)由来の両栄養性ネズミ白血病レトロウイルスパッケージング細胞系にトランスフェクションされる。フェニックスAヘルパー細胞によって生成されるレトロウイルスが回収されて、マウスN2A細胞(ATCC)の感染に用いられる。MLVベクターのトランスフェクションの24時間後に、抗−TSG101抗体が293ヘルパー細胞に加えられる。TSG101抗体のウイルス生成に対する効果は、ウイルス上清が標的細胞(N2A)に感染する効率によって定められる。次いで、β−ガラクトシダーゼ活性の細胞染色(正の細胞は青く染色され、図2における暗い点のように示される)によってN2A細胞の感染が定められる。
【0064】
典型的には、フェニックスA細胞はトランスフェクションの1日前にポリ−D−リジン被覆6ウェルプレートに接種される。次に4マイクログラムのpBMN−Z−I−Neoが12ulのリポフェクタミン2000(インビトロジェン(Invitrogen))の存在下で各ウェルにトランスフェクションされる。トランスフェクションの24時間後に、培地がトリコスタチンA(3uM)および5または10ugの適切な抗−TSG101抗体を含む1ml/ウェルの新鮮な培地と交換される。24から48時間後にウイルス上清が回収され、0.2umフィルタでフィルタリングされ、1mlのウイルス上清がポリブレン(10ug/ml)を含む1mlの新鮮な培地と混合されて、N2a細胞の1ウェルの感染に用いられる。感染の48時間後にN2a細胞は固定され、β−Gal染色キット(インビトロジェン)に記載されるとおりにX−Galで染色される。結果をデジタル画像で記録する。好ましくは、ウイルス生成を少なくとも10%、20%、50%、70%または90%減少させる抗−TSG101抗体が同定される。
【0065】
以下の例示的な実験においては、2つの抗−TSG101抗体“C”および“E”のウイルス感染に対する影響がテストされる。非特異的抗体対照としてウサギIgGが用いられる。10回を超える独立した実験が行なわれ、代表的な結果が図2に示される。抗体処理していないフェニックスヘルパー細胞(正の対照)は、効率的なレトロウイルスの生成およびN2A標的細胞の感染を示した(左上パネル)。ウサギIgGは影響しなかった(左中パネル)。抗−TSG101抗体“C”はウイルス生成を約20%−60%減少させた(左下パネル)。抗−TSG101抗体“E”はウイルス生成を約50−70%減少させた(右上パネル)。抗−C末端および抗−N末端抗体の混合物は、抗−C末端抗体のみのときと同様の結果を与えた(右中パネル)。ウイルス感染していないN2a細胞は最小限のバックグラウンド染色のみを示した(右下パネル)。
【0066】
別の態様において、ウイルス出芽を阻害または減少させるために用い得る抗−TSG101抗体は、たとえばHIVでトランスフェクションされたヒトCD4+ヒトT細胞系H9(H9ΔBglと示される)における、それらの細胞表面TSG101への結合に基づいて同定される。H9ΔBgl細胞は、エンベロープ欠損HIV構成(HIVゲノムのBglII断片の削除)によってトランスフェクションされたヒトCD4+Tリンパ球である。安定にトランスフェクションされたH9ΔBgl細胞は、欠損HIVエンベロープのために非感染型のHIVを生成し、よってそれは培養物中の他のH9ΔBgl細胞に感染できない。態様の1つにおいて、非トランスフェクションH9細胞が対照として用いられ
る。H9ΔBglに結合するが非トランスフェクションH9細胞に結合しない抗−TSG101抗体が、ウイルス出芽を阻害または減少させるために用い得る抗体として同定される。
【0067】
好ましい態様において、HIV生成細胞(例、H9ΔBgl)および対照H9細胞における細胞表面TSG101に対する抗−TSG101抗体の結合は、蛍光活性化細胞選別(FACS)によって同定される。態様の1つにおいて、H9ΔBglおよびH9細胞はどちらも固定され、抗−TSG101抗体とともにインキュベートされ、蛍光ラベルされた二次抗体で染色される。免疫染色された細胞は次にFACSによって分析される。
【0068】
別の態様において、レトロウイルス生成に対するTSG101の阻害的効果をさらに調べるためにHIV−1ウイルス生成アッセイが用いられる。HIV−1ベクターpNL4−3が293T細胞にトランスフェクションされる。トランスフェクションの24時間後に、抗−TSG101抗体および任意に非特異的対照抗体が細胞培養物にそれぞれ加えられる。さらに24時間のインキュベーションの後、細胞溶解物が抽出され、細胞培養上清が集められて、たとえばスクロース勾配などによってHIV−1ビリオンが精製される。細胞溶解物および精製されたビリオンの両方が、たとえば抗−p55および/または抗−p24抗体などの抗−HIV−1抗体を用いたウェスタンブロットにより分析される。HIV−1ビリオン放出の顕著な阻害(たとえば、ウェスタンブロットの密度トレーシングによって、40%、50%、60%、70%、または80%を超える阻害など)を示す抗−TSG101抗体を同定できる。
【0069】
さらに別の態様において、抗−TSG101抗体のHIV放出に対する影響が、H9ΔBgl細胞に基づくHIV放出アッセイを用いて評価される。H9ΔBgl細胞からのHIV放出は、細胞培養上清のHIVp24ELISAによって直接測定できる。態様の1つにおいて、複数の異なる濃度の抗−TSG101抗体がそれぞれH9ΔBgl細胞とともにインキュベートされる。態様の1つにおいて、対照抗体(例、同じ濃度のウサギIgG)もそれぞれH9ΔBgl細胞とともにインキュベートされる。抗体を加えてから48時間後に培養上清が回収されてHIVp24ELISAに供される。抗−TSG101抗体のデータを対応する対照抗体のデータと比較することによって、抗−TSG101抗体のウイルス放出の阻害に対する効果が定められる。
【0070】
さらに別の態様において、ウイルス放出に続くHIV伝染性に対する抗−TSG101抗体の影響が定められる。態様の1つにおいて、ジャーカット(Jurkat)細胞からのHIV上清を用いて、抗−TSG101抗体の存在下でMAGI細胞に感染させる。ウサギIgGを対照として用い得る。抗−TSG101抗体のHIV伝染性に対する効果は、対照との比較によって定められる。
【0071】
5.3.ウイルス感染の処置のための抗−TSG101抗体の用法
TSG101抗体は、ウイルス生成の阻害に効果的である。したがってこの発明は、たとえば抗−C末端TSG101抗体などのTSG101抗体を用いてHIV感染を含むウイルス感染を処置する方法を提供する。
【0072】
5.3.1.ウイルス感染
この発明の抗−TSG101抗体を用いることによって処置または防止できる疾患または障害は、レトロウイルス、ラブドウイルスまたはフィロウイルス、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、インフルエンザ、水痘、アデノウイルス、I型単純ヘルペス(HSV−I)、II型単純ヘルペス(HSV−II)、牛疫、ライノウイルス、エコーウイルス、ロタウイルス、呼吸器系合胞体(RS)ウイルス、乳頭腫ウイルス、パポバウイルス、サイトメガロウイルス、エキノウイルス、アルボウイルス、ハンタウイルス、コクサッキーウイ
ルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、ポリオウイルス、ヒト免疫不全ウイルスI型(HIV−I)、およびヒト免疫不全ウイルスII型(HIV−II)、あらゆるピコルナウイルス科、エンテロウイルス、カリチウイルス科、ウイルスのあらゆるノーウォーク群、トガウイルス、アルファウイルス、デング熱ウイルスなどのフラビウイルス、コロナウイルス、狂犬病ウイルス、マールブルグウイルス、エボラウイルス、パラインフルエンザウイルス、オルソミクソウイルス、ブニヤウイルス、アレナウイルス、レオウイルス、ロタウイルス、オルビウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルスI型、ヒトT細胞白血病ウイルスII型、サル免疫不全ウイルス、レンチウイルス、ポリオーマウイルス、パルボウイルス、エプスタイン−バーウイルス、ヒトヘルペスウイルス−6、サルヘルペスウイルス1(Bウイルス)、およびポックスウイルスによりもたらされるものを含むが、それに制限されない。
【0073】
この発明の抗−TSG101抗体を用いることによって処置または防止できる付加的な疾患または障害は、インフルエンザウイルス、ヒト呼吸器系合胞体ウイルス、仮性狂犬病ウイルス、仮性狂犬病ウイルスII、ブタロタウイルス、ブタパルボウイルス、ウシウイルス性下痢ウイルス、ニューカッスル病ウイルスh、ブタ流感ウイルス、ブタ流感ウイルス、口蹄疫ウイルス、ブタコレラ(hog colera)ウイルス、ブタインフルエンザウイルス、豚コレラ(African swine fever)ウイルス、ウシ伝染性鼻気管炎ウイルス、伝染性喉頭気管炎ウイルス、ラクロスウイルス、新生仔ウシ下痢ウイルス、ベネズエラウマ脳脊髄炎ウイルス、プンタトロ(punta toro)ウイルス、ネズミ白血病ウイルス、マウス乳癌ウイルス、ウマインフルエンザウイルスまたはウマヘルペスウイルス、ウシ呼吸器系合胞体ウイルスまたはウシパラインフルエンザウイルスによりもたらされるものを含むが、それに制限されない。
【0074】
5.3.2.ウイルス放出を阻害するために抗−TSG101抗体を用いる方法
態様の1つにおいて、この発明は、感染哺乳動物細胞からのHIV−1出芽などのウイルス出芽を阻害または減少させるために抗−TSG101抗体、好ましくは抗−C末端TSG101抗体を用いる方法を提供する。この発明の方法においては、1つまたはそれ以上の抗−TSG101抗体が感染細胞に接触させられる。抗−TSG101抗体は感染細胞の表面上のTSG101タンパク質に結合する。この抗−TSG101抗体の結合が、細胞からのウイルス粒子の放出または出芽を阻害または減少させる。
【0075】
別の態様において、この発明はまた、たとえばヒトなどの哺乳動物におけるたとえばHIV−1などのエンベロープウイルスによる感染を処置するために抗−TSG101抗体、好ましくは抗−C末端TSG101抗体を用いる方法を提供する。この発明の方法においては、ウイルスに感染したたとえばヒトなどの哺乳動物に、1つまたはそれ以上の抗−TSG101抗体を投与できる。投与後、抗−TSG101抗体は感染細胞の表面上のTSG101タンパク質に結合して感染細胞からのウイルス出芽を阻害する。
【0076】
この発明のさらに別の態様において、抗−TSG101抗体、好ましくは抗−C末端TSG101抗体は、1つまたはそれ以上の他の治療用抗ウイルス薬とともに用いられる。こうした組合せ療法において、抗−TSG101抗体は、治療薬の投与の前、同時または後に投与できる。抗−TSG101抗体と治療薬との投与の時間間隔は、当業者の熟知するルーチン実験により定めることができる。
【0077】
さらに別の態様において、この発明は、抗−TSG101抗体が結合した感染細胞の溶解に介在し得るアイソタイプに属する抗−TSG101抗体、たとえば抗−C末端TSG101抗体を用いてウイルス感染を処置する方法を提供する。好ましい態様において、抗−TSG101抗体は、成長因子受容体に結合して血清補体を活性化するか、および/または、たとえばマクロファージなどのエフェクタ細胞を活性化することによって抗体依存
性細胞傷害(ADCC)に介在するアイソタイプに属する。別の好ましい態様において、アイソタイプはIgG1、IgG2a、IgG3またはIgMである。
【0078】
抗−TSG101抗体の用量は、当業者の熟知するルーチン実験により定めることができる。抗−TSG101抗体の投与の効果または利益は、当該技術分野において公知のあらゆる方法によって評価できる。
【0079】
5.3.3.治療および/または診断用薬剤を送達するために抗−TSG101抗体を用いる方法
この発明は、ウイルス感染細胞に治療および/または診断用薬剤を送達するために抗−TSG101抗体を用いるための方法および組成物を提供する。
【0080】
感染細胞は、抗−TSG101抗体−薬物コンジュゲートを用いてターゲッティングされ殺されてもよい。たとえば、抗−TSG101抗体は、たとえば細胞増殖抑制もしくは細胞破壊剤などの細胞毒、または放射性金属イオンなどの治療的部分とコンジュゲートされてもよい。抗体−薬物コンジュゲートは、当該技術分野において公知の方法によって調製できる(たとえば、免疫コンジュゲート(Immunoconjugates)、ボーゲル(Vogel)編、1987; ターゲッティング薬(Targeted Drugs)、ゴールドバーグ(Goldberg)編、1983; 抗体介在送達系(Antibody Mediated Delivery Systems)、ロッドウェル(Rodwell)編、1988を参照)。パクリタキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン(dihydroxy anthracin dione)、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシンならびにそれらの類似体または同族体などであるがそれに制限されない治療薬を、この発明の抗−TSG101抗体にコンジュゲートできる。この発明の抗−TSG101抗体にコンジュゲートできるその他の治療薬剤は、代謝拮抗物質、たとえばメトトレキセート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルデカルバジン;アルキル化剤、たとえばメクロレタミン、チオエパクロラムブシル(thioepa chlorambucil)、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびシス−ジクロロジアミンプラチナ(II)(DDP)シスプラチン;アントラサイクリン、たとえばダウノルビシン(ダウノマイシン)およびドキソルビシン;抗生物質、たとえばダクチノマイシン(アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、アンスラマイシン(AMC);ならびに抗−有糸分裂剤、たとえばビンクリスチンおよびビンブラスチンを含むがそれに制限されない。この発明の抗−TSG101抗体にコンジュゲートできる治療薬剤はまた、所望の生物活性を有するタンパク質またはポリペプチドであってもよい。こうしたタンパク質はたとえば、アブリン、リシンA、シュードモナス菌体外毒素、またはジフテリア毒素などの毒素を含んでもよい。
【0081】
薬物分子はリンカーを介して抗−TSG101抗体に結合されてもよい。こうしたコンジュゲートの調製のためにあらゆる好適なリンカーを用いることができる。いくつかの態様において、リンカーは、標的部位において非修飾の形の薬分子をコンジュゲートから放出できるリンカーであってもよい。
【0082】
たとえば、所与の処置摂生の効力を定めるためなどの臨床検査手順の一部としてウイルス感染の進行をモニタするために、抗体を診断的に用いることもできる。抗体を検出可能な物質と結合させることによって、検出を容易にできる。検出可能な物質の例にはさまざまな酵素、補欠分子族、蛍光材料、発光材料、生物発光材料、放射性材料、さまざまな陽
電子放射断層撮影法を用いる陽電子放射金属、および非放射性常磁性金属イオンが含まれる。この発明に従った診断法として用いるための、抗体にコンジュゲートできる金属イオンについては、一般的に米国特許第4,741,900号を参照されたい。好適な酵素の例としてはセイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータガラクトシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼがあり、好適な補欠分子族複合体の例としてはストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンがあり、好適な蛍光材料の例としてはたとえば緑色蛍光タンパク質(GFP)などの蛍光タンパク質、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンがあり、発光材料の例としてはルミノールがあり、生物発光材料の例としてはルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンがあり、好適な放射性材料の例としては125I、131I、111In、177Lu、90Yまたは99Tcがある。
【0083】
抗体に治療用部分をコンジュゲートする技術は周知であり、たとえば、その各々がここに引用により援用される、アーノン(Arnon)ら、「癌治療における薬物の免疫ターゲッティングのためのモノクローナル抗体」(“Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy”)、モノクローナル抗体と癌治療(Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy)より、ライスフェルド(Reisfeld)ら編、pp. 243-56 (Alan R. Liss, Inc. 1985); ヘルストロム(Hellstrom)ら、「薬物送達のための抗体」(“Antibodies for Drug Delivery”)、調節薬物送達(Controlled Drug Delivery)(第2版)より、ロビンソン(Robinson)ら編、pp. 623-53 (Marcel Dekker, Inc. 1987); ソルペ(Thorpe)、「癌治療における細胞毒性薬剤の抗体担体:概説」(“Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review”)、モノクローナル抗体’84:生物学的および臨床的適用(Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications)より、ピンチェラ(Pinchera)ら編、pp. 475-506 (1985); 「癌治療における放射ラベル抗体の治療的用法の分析、結果および将来の予想」(“Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy”)、癌検出および治療のためのモノクローナル抗体(Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy)より、バルドウィン(Baldwin)ら編、pp. 303-16 (Academic press 1985)、およびソルペら「抗体−毒素コンジュゲートの調製および細胞毒特性」(“The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin Conjugates”)Immunol. Rev., 62:119-58 (1982)を参照されたい。
【0084】
代替的には、ここに引用により援用するセガール(Segal)らの米国特許第4,676,980号に記載されるように、抗体を第2の抗体とコンジュゲートして抗体ヘテロコンジュゲートを形成してもよい。
【0085】
5.3.4.ウイルス感染細胞の検出
Tsg101タンパク質、たとえばTSG101タンパク質のN−末端領域またはC−末端領域に対して向けられた抗体またはラベル抗体は、たとえば細胞表面上のTSG101タンパク質の存在を検出することによって、ウイルス感染の診断および予後に用いられてもよい。こうした診断法はまた、Tsg101遺伝子発現のレベルの異常、またはTsg101タンパク質の構造および/または一時的、組織、細胞、もしくは亜細胞内の所在の異常を検出するために用いられてもよい。
【0086】
分析される組織または細胞型は、ウイルスによって感染されることが知られているかまたはその疑いがあるものを含んでもよい。ここで用いられるタンパク質単離法はたとえば、ここに全体にわたり引用により援用する、ハーロウおよびレーン(ハーロウ(Harlow), E.およびレーン(Lane), D., 1988,「抗体:実験室マニュアル」(“Antibodies: A Laboratory Manual”), Cold Spring Harbor Laboratory Press.,コールドスプリングハ
ーバー、ニューヨーク)に記載されるものなどであってもよい。単離される細胞は細胞培養物由来であっても、または患者由来であってもよい。培養物から取られた細胞の分析は、細胞に基づく遺伝子治療技術の一部として用いられる細胞、または代替的にTsg101遺伝子の発現に対する化合物の効果をテストするための細胞の評価における必要なステップであり得る。
【0087】
Tsg101断片またはその保存された変異体もしくはペプチド断片を検出するための好ましい診断法はたとえば、それらの抗−Tsg101断片特異的抗体との相互作用によってTsg101断片または保存変異体もしくはペプチド断片を検出する免疫アッセイを含んでもよい。
【0088】
たとえば、この発明において有用である前述のものなどの抗体または抗体の断片を用いて、細胞の表面におけるTsg101断片またはその保存変異体もしくはペプチド断片の存在によって、感染細胞を定量的または定性的に検出してもよい。これはたとえば、光学顕微鏡、フローサイトメトリー、または蛍光測定検出と組合された、蛍光ラベルされた抗体(この節の下記を参照)を用いる免疫蛍光技術によって成し遂げることができる。こうした技術は、ウイルス出芽過程においてTsg101断片が細胞表面に加えられるウイルス感染において特に有用である。
【0089】
この発明において有用な抗体(またはその断片)は付加的に、Tsg101断片またはその保存変異体もしくはペプチド断片のインサイチュー(in situ)検出のために、免疫蛍光または免疫電子顕微鏡法などにおいて組織学的に用いられてもよい。インサイチュー検出は、患者から組織学的検体を除去し、そこにこの発明のラベルされた抗体を適用することによって成し遂げられてもよい。抗体(または断片)は、生物サンプルにラベル抗体(または断片)を被せることによって適用されることが好ましい。こうした手順を用いることにより、Tsg101断片または保存変異体もしくはペプチド断片の存在だけでなく、検査される組織内でのその分布をも定めることができる。通常の当業者は、この発明を用いてこうしたインサイチュー検出を達成するためにあらゆる広範囲の組織学法(染色手順など)を変更できることを容易に認めるであろう。
【0090】
Tsg101断片またはその保存変異体もしくはペプチド断片に対する免疫アッセイは典型的に、生物流体、組織抽出物、採取されたばかりの細胞、または細胞培養物中でインキュベートされていた細胞の溶解物などのサンプルを、Tsg101断片またはその保存変異体もしくはペプチド断片を識別可能な検出可能にラベルされた抗体の存在下でインキュベートするステップと、当該技術分野において周知のいくつかの技術のいずれかによって、結合された抗体を検出するステップとを含む。
【0091】
生物サンプルは、ニトロセルロースなどの固相支持体もしくは担体、または細胞、細胞粒子もしくは可溶性タンパク質を固定できるその他の固体支持体に接触させてその上に固定してもよい。次いでその支持体を好適な緩衝液で洗浄し、検出可能にラベルされたTsg101タンパク質特異的抗体によって処理する。次いで緩衝液で固相支持体の2度目の洗浄を行なって、非結合抗体を除去してもよい。次いで、固体支持体上の結合したラベルの量が従来の手段によって検出される。
【0092】
「固相支持体または担体」によって、抗原または抗体に結合できるあらゆる支持体が意図される。周知の支持体または担体は、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然および修飾セルロース、ポリアクリルアミド、斑レイ岩および磁鉄鉱を含む。この発明の目的のために、担体の性質はある程度可溶性であっても、または不溶性であってもよい。支持体材料は、結合された分子が抗原または抗体に結合できれば、事実上あらゆる可能な構造的構成を有してもよい。よって
支持体構成はビーズなどのように球状であっても、または試験管の内表面もしくは棒の外表面のように円筒状であってもよい。代替的には、表面はシート、テストストリップなどのように平らであってもよい。好ましい支持体はポリスチレンビーズを含む。当業者は抗体または抗原を結合するための多くの他の好適な担体を知るか、またはそれをルーチン実験法を用いることによって確認できるだろう。
【0093】
抗−Tsg101断片抗体の所与のロットの結合活性が周知の方法に従って定められてもよい。当業者は、ルーチン実験法を用いることによって各決定に対する動作的かつ最適なアッセイ条件を定められるだろう。
【0094】
Tsg101遺伝子ペプチド特異的抗体を検出可能にラベルできる態様の1つは、それを酵素と結合させて酵素免疫アッセイ(EIA)において用いることによる(ボラー(Voller), A., 「酵素結合免疫吸着剤検定法(ELISA)」(“The Enzyme Linked Immunosorbent Assay (ELISA)”), 1978, Diagnostic Horizons 2:1-7, Microbiological Associates Quarterly Publication, Walkersville, MD); ボラー, Aら、1978, J.Clin.Pathol. 31:507-520; バトラー(Butler), J.E., 1981., Meth. Enzymol. 73:482-523; マジオ(Maggio), E.編, 1980, 酵素免疫アッセイ(Enzyme Immunoassay), CRC Press, ボカラトン, FL,; イシカワ(Ishikawa), E.ら編, 1981, 酵素免疫アッセイ(Enzyme Immunoassay), Kgaku Shoin, 東京)。抗体に結合させた酵素は、適切な基質、好ましくは色素生成基質と反応し、たとえば分光光度、蛍光測定または視覚的手段によって検出可能な化学的部分を生成する。抗体を検出可能にラベルするために用い得る酵素は、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、デルタ−5−ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、アルファ−グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ、およびアセチルコリンエステラーゼを含むがそれに制限されない。検出は、酵素に対する色素生成基質を用いる比色法によって成し遂げられ得る。また、基質の酵素反応の程度を同様に調製した基準と比較する視覚的比較によって検出がなされてもよい。
【0095】
さまざまなその他の免疫アッセイのいずれかを用いて検出がなされてもよい。たとえば、抗体または抗体断片を放射ラベルすることにより、ラジオイムノアッセイ(RIA)(たとえば、ここに引用により援用するワイントラウブ(Weintraub), B., ラジオイムノアッセイの原理(Principles of Radioimmunoassays)、放射リガンドアッセイ技術の第7訓練コース(Seventh Training Course on Radioligand Assay Techniques)、The Endocrine Society, 1986年3月を参照)を用いてTsg101ペプチドを検出できる。放射性アイソトープは、ガンマカウンタもしくはシンチレーションカウンタの使用などの手段によって、またはオートラジオグラフィによって検出できる。
【0096】
抗体を蛍光性の化合物でラベルすることも可能である。蛍光ラベルされた抗体が適切な波長の光に露出されると、その存在が蛍光によって検出できる。最も一般的に用いられる蛍光ラベル化合物には、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルアルデヒド、およびフルオレサミンがある。
【0097】
152Euまたはその他のランタン系列などの蛍光発光金属を用いても抗体を検出可能にラベルできる。これらの金属は、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)またはエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)などの金属キレート基を用いて抗体に付着できる。
【0098】
化学発光化合物と結合させることによっても抗体を検出可能にラベルできる。化学発光標識抗体の存在は、化学反応の経路において生じる発光の存在を検出することによって定められる。特に有用な化学発光ラベル化合物の例は、ルミノール、イソルミノール、セロマチック(theromatic)アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩およびシュウ酸エステルである。
【0099】
同様に、この発明の抗体をラベルするために生物発光化合物が用いられてもよい。生物発光は生物系において見出される化学発光の一種で、触媒タンパク質が化学発光反応の効率を高めている。生物発光タンパク質の存在は、発光の存在を検出することによって定められる。ラベリングの目的に対する重要な生物発光化合物は、ルシフェリン、ルシフェラーゼおよびエクオリンである。
【0100】
5.3.5.インビトロにおけるウイルス感染細胞の枯渇
この発明は、インビトロ(またはエクスビボ)において非感染組織および/または細胞からウイルス感染細胞を枯渇させる方法を提供する。たとえば、非感染細胞からのウイルス感染細胞のインビトロ枯渇のために哺乳動物から得られる組織は、血液もしくは血清またはその他の体液であってもよい。特に、この発明は、ウイルス感染細胞を殺すかまたはそれらを感染細胞から分離することによって枯渇させる方法を提供する。態様の1つにおいて、抗−TSG101抗体は、たとえばヒトなどの哺乳動物から得られた組織および/または細胞と、インビトロでたとえばインキュベートされるなどして組合せられる。
【0101】
態様の1つにおいて、固体マトリックスに結合されたTSG101抗体、たとえばTSG101タンパク質のN−末端またはC−末端領域を結合する抗体を含むカラムが用いられて、たとえば血液もしくは血清またはその他の体液などの生物サンプルからウイルス感染細胞が除去される。
【0102】
組織からのウイルス感染細胞のインビトロ枯渇に用いられる抗−TSG101抗体は、第5.3.2.節で開示した検出可能なラベル(たとえば、さまざまな酵素、蛍光材料、発光材料、生物発光材料、および放射性材料)または治療用薬剤(たとえば、細胞増殖抑制および細胞破壊剤)とコンジュゲートされてもよい。
【0103】
検出可能な物質とコンジュゲートされた抗−TSG101抗体は、当業者に公知の方法によってウイルス感染細胞を非感染細胞から選別するために用いることができる。態様の1つにおいて、ウイルス感染細胞は蛍光活性化細胞選別器(FACS)を用いて選別される。蛍光活性化細胞選別(FACS)は、粒子の蛍光特性に基づいて細胞を含む粒子を分離するための周知の方法である(カマーチ(Kamarch)、1987, Methods Enzymol, 151:150-165)。個々の粒子における蛍光部分のレーザ励起によって小さな電荷がもたらされ、混合物からの正および負の粒子の電磁的分離を可能にする。
【0104】
態様の1つにおいて、たとえばヒトなどの哺乳動物から得られたたとえば血液細胞などの細胞が、蛍光ラベルされたTSG101特異的抗体と共に、ラベルされた抗体を細胞に結合させるために十分な時間インキュベートされる。代替的な態様において、こうした細胞はTSG101特異的抗体と共にインキュベートされ、細胞は洗浄され、細胞はTSG101特異的抗体を認識する第2のラベル抗体と共にインキュベートされる。これらの態様に従うと、細胞は洗浄されて細胞選別器を通じて処理されることにより、分離される両方の抗体に結合する細胞の、両方の抗体に結合しない混成細胞からの分離を可能にする。FACS選別された粒子は、96ウェルまたは384ウェルプレートの個々のウェルに直接堆積されることによって分離を容易にしてもよい。
【0105】
別の態様においては、磁気ビーズを用いてウイルス感染細胞を非感染細胞から分離でき
る。ウイルス感染細胞は、その磁気ビーズ(直径0.5−100nm)に結合する能力に基づいて粒子を分離する方法である磁気活性化細胞選別(MACS)技術を用いて選別されてもよい(ディナル(Dynal)、1995)。磁気ミクロスフェアには、TSG101を免疫特異的に認識する抗体の共有付加を含むさまざまな有用な変更が行なわれてもよい。次いで磁界が印加されることによって、選択されたビーズが物理的に操作される。ビーズは次いで細胞と混合されて結合可能にされる。細胞は次いで磁界を通されることにより、ウイルス感染細胞が分離される。
【0106】
5.3.6.抗−TSG101抗体の用量
用量は、医師がルーチンテストを行なうことによって定め得る。ヒトへの投与の前に、動物モデルにおいて効力が示されることが好ましい。当該技術分野において公知の感染性疾患に対するあらゆる動物モデルを用いることができる。
【0107】
一般的に、抗体については、好ましい用量は0.1mg/kgから100mg/kg体重(一般的に10mg/kgから20mg/kg)である。抗体が脳内で作用するものであるときには、50mg/kgから100mg/kgの用量が通常適切である。一般的に、部分的にヒトの抗体および完全にヒトの抗体は、他の抗体よりもヒト体内における半減期が長い。したがって、より低い用量およびより少ない頻度の投与が可能であることが多い。抗体を安定化し、(たとえば脳への)摂取および組織浸透を高めるために脂質化などの修飾が用いられてもよい。抗体の脂質化の方法は、クルイクシャンク(Cruikshank)ら、1997, J. Acquired Immune Deficiency Syndromes and Human Retrovirology 14:193に記載されている。
【0108】
ここに定められるとおり、抗−TSG101抗体の治療上有効な量(すなわち有効用量)は約0.001から30mg/kg体重、好ましくは約0.01から25mg/kg体重、より好ましくは約0.1から20mg/kg体重、およびさらに好ましくは約1から10mg/kg、2から9mg/kg、3から8mg/kg、4から7mg/kg、または5から6mg/kg体重である。
【0109】
疾患もしくは障害の深刻度、以前の処置、被験者の一般的な健康および/もしくは年齢、ならびに存在する他の疾患を含むがそれに制限されない特定の因子が、被験者を効果的に処置するために要求される用量に影響し得ることを当業者は認めるであろう。さらに、治療上有効な量の抗−TSG101抗体による被験者の処置は、単一の処置を含んでも、または好ましくは一連の処置を含んでもよい。好ましい態様において、被験者は約0.1から20mg/kg体重の範囲の抗−TSG101抗体によって週1回、約1から10週間、好ましくは2から8週間、より好ましくは約3から7週間、さらに好ましくは約4、5または6週間にわたって処置される。また、処置に用いられる抗−TSG101抗体の有効用量は、特定の処置の経過とともに増加または減少し得ることが認識されるであろう。用量の変化は、ここに記載されるような診断アッセイの結果からもたらされ、かつ明らかになってもよい。
【0110】
抗−TSG101抗体薬剤の適切な用量は、通常の医師、獣医師、または研究者の知識の範囲内のいくつかの因子に依存することが理解される。抗−TSG101抗体の用量は、たとえば被験者または処理されるサンプルの個性、大きさおよび状態に依存し、さらに適用可能であれば組成物が投与される経路、および感染性病原体に対して抗−TSG101抗体が有することを作業者が所望する効果に依存して変化する。
【0111】
5.3.7.医薬配合および投与
この発明の抗−TSG101抗体は、投与に適した医薬組成物に取込まれてもよい。こうした組成物は典型的に、抗−TSG101抗体と医薬的に受容可能な担体とを含む。こ
こで用いられる「医薬的に受容可能な担体」という言葉は、医薬投与に適合するあらゆるすべての溶剤、分散媒、被覆、抗バクテリアおよび抗真菌剤、等張および吸収遅延剤などを含むことが意図される。医薬的活性物質に対してこうした媒質および薬剤を用いることは当該技術分野において周知である。あらゆる従来の媒質または薬剤が抗−TSG101抗体に適合しない場合を除き、組成物におけるその使用が予期される。組成物に追加の抗−TSG101抗体が取込まれてもよい。
【0112】
この発明の医薬組成物は、その投与の意図される経路に適合するように配合される。投与の好ましい経路は、皮下および静脈内投与を含む。投与の経路の他の例には、非経口、皮内、経皮(局所)および経粘膜投与がある。非経口、皮内または皮下適用に用いられる溶液または懸濁液は以下の成分を含み得る。すなわち、注射のための水などの滅菌希釈液、食塩溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたはその他の合成溶剤、ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤、アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウムなどの酸化防止剤、エチレンジアミンテトラ酢酸などのキレート剤、酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩などの緩衝液、および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの張性の調整のための薬剤である。塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基によってpHを調整できる。非経口調製物は、ガラスまたはプラスチックでできたアンプル、使い捨て注射器または複数用量バイアル中に封入されてもよい。
【0113】
注射可能な使用に好適な医薬組成物は、滅菌水溶液(水溶性のとき)または分散物、および滅菌注射可能溶液または分散物の即時調製のための滅菌粉末を含む。静脈内投与に対して、好適な担体は生理食塩水、静菌水、クレモフォール(Cremophor)EL(商標)(BASF、パーシッパニー、NJ)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)を含む。すべての場合において、組成物は滅菌される必要があり、また粘性が低く抗−TSG101抗体が注射可能である程度に流動性であるべきである。それは製造および貯蔵の条件下で安定である必要があり、またバクテリアおよび真菌などの微生物の混入作用に対抗して保存される必要がある。
【0114】
担体は、たとえば、水、エタノール、ポリオール(たとえば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、およびその好適な混合物を含む溶剤または分散媒質であってもよい。たとえば、レシチンなどの被覆剤の使用、分散の場合には必要とされる粒子の大きさの維持、および界面活性剤の使用などによって、適切な流動性を維持できる。微生物作用の防止は、たとえばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどのさまざまな抗バクテリアおよび抗真菌剤によって達成できる。多くの場合、組成物にたとえば糖、マンニトールなどの多価アルコール、ソルビトール、塩化ナトリウムなどの等張性の薬剤を含むことが好ましい。注射可能組成物の持続性の吸収は、たとえばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅らせる薬剤を組成物中に含ませることによってもたらされ得る。
【0115】
滅菌注射可能溶液は、必要に応じて上に挙げた成分の1つまたは組合せを有する適切な溶剤中に必要量の抗−TSG101抗体(たとえば1つまたはそれ以上の抗−TSG101抗体)を取込み、その後フィルタ滅菌することによって調製できる。分散物は一般的に、基本の分散媒および上に挙げたうちの必要な他の成分を含む滅菌賦形剤に抗−TSG101抗体を取込むことによって調製される。滅菌注射可能溶液の調製のための滅菌粉末の場合には、調製の好ましい方法は真空乾燥および凍結乾燥であり、これは予め滅菌フィルタ処理された溶液から、活性成分とあらゆる付加的な所望の成分との粉末を得るものである。
【0116】
態様の1つにおいて、抗−TSG101抗体は、インプラントおよびマイクロカプセル送達系を含む徐放性配合物など、体内からの迅速な除去に対して化合物を保護する担体と
共に調製される。エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ酢酸などの生物分解性、生体適合性重合体が用いられ得る。こうした配合物の調製方法は当業者に明らかになるだろう。また、アルザ社(Alza Corporation)およびノバファーマスーティカルス社(Nova Pharmaceuticals, Inc.)より材料を商業的に得ることができる。(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体と共に感染細胞にターゲッティングされたリポソームを含む)リポソーム懸濁物が医薬的に受容可能な担体として用いられてもよい。これらは、たとえばここに全体にわたって引用により援用する米国特許第4,522,811号に記載されるような当業者に公知の方法に従って調製できる。
【0117】
投与の簡便性および用量の均一性のために、用量単位形の非経口組成物を配合することが有利である。ここで用いられる用量単位形とは、処置される被験者に対する単位用量として好適な物理的に別個の単位を示す。すなわち、各単位は、必要とされる医薬担体に関連して所望の治療効果をもたらすために算出された予め定められた量の抗−TSG101抗体を含む。この発明の用量単位形に対する仕様は、抗−TSG101抗体の一意の特徴および達成すべき特定の治療効果、ならびに個体の処置に対する抗−TSG101抗体などの調合の技術分野において固有の制限によって規定され、かつそれに直接依存する。
【0118】
医薬組成物は、キット、容器、パックまたはディスペンサ中に、投与に対する指示と共に含まれてもよい。
【0119】
5.4.ウイルス感染の処置および防止のためのTSG101ワクチンおよびDNAワクチン
この発明は、抗−TSG101抗体を生成するためのワクチンとして用い得るTSG101タンパク質の断片を提供する。TSG101タンパク質断片またはポリペプチドは、当該技術分野において公知の標準的な方法により調製できる。態様の1つにおいて、この発明はTSG101タンパク質のUEVドメインを含まないTSG101タンパク質の断片を提供する。特定的な態様において、この発明は、UEVドメインを含まないヒトTSG101タンパク質の断片またはそのネズミ相同体を提供する。好ましい態様において、この発明はTSG101タンパク質のC−末端領域を含む断片を提供する。別の態様において、この発明は、TSG101タンパク質のコイルドコイルドメインを含むTSG101タンパク質の断片を提供する。さらに別の態様において、この発明は、SEQ ID NO:3として記載したTSG101タンパク質のC−末端ドメインを含むTSG101タンパク質の断片を提供する。この発明はまた、TSG101タンパク質のこうした断片と少なくとも30%、50%、70%、90%または95%相同であるあらゆる配列を提供する。この発明のいくつかの態様において、TSG101タンパク質断片またはポリペプチドの長さは少なくとも5、10、20、50、100アミノ酸である。
【0120】
この発明はまた、前述のあらゆるTSG101断片と機能的に同等であるTSG101タンパク質の断片を提供する。こうした同等TSG101断片は、TSG101タンパク質をコードするTSG101タンパク質遺伝子配列によってコードされるアミノ酸配列内のアミノ酸残基の削除、付加または置換を含んでもよいが、それはサイレント変化をもたらすため、機能的に同等のTSG101タンパク質断片を生成する。アミノ酸置換は、関係する残基の極性、電荷、可溶性、疎水性、親水性、および/または両親媒性の性質の類似性に基づいて行なわれてもよい。たとえば、無極性(疎水性)アミノ酸は、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびメチオニンを含む。極性の中性アミノ酸は、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンを含む。正に帯電した(塩基性)アミノ酸は、アルギニン、リジンおよびヒスチジンを含む。また、負に帯電した(酸性)アミノ酸は、アスパラギン酸およびグルタミン酸を含む。ここで用いられる「機能的に同等」と
は、内因性TSG101タンパク質断片と実質的に類似のインビボ活性を示すことができるタンパク質断片を示す。
【0121】
この発明のTSG101ペプチド断片は、当該技術分野において周知の技術を用いる組換えDNA技術によって生成されてもよい。つまり、TSG101ポリペプチドまたはペプチドをコードするTSG101遺伝子配列を含む核酸を発現することによってこの発明のTSG101ポリペプチドおよびペプチドを調製する方法である。当業者に周知の方法を用いて、TSG101ポリペプチドをコードする配列ならびに適切な転写および翻訳調節シグナルを含む発現ベクターを構築できる。これらの方法はたとえば、インビトロ組換えDNA技術、合成技術、およびインビボ遺伝子組換えを含む。たとえば、前出の1989年のサンブルック(Sambrook)ら、および前出の1989年のアウズベルらに記載される技術を参照されたい。代替的には、たとえば合成装置を用いてTSG101ポリペプチド配列をコードできるRNAを化学的に合成してもよい。たとえば、ここに全体にわたって引用により援用する「オリゴヌクレオチド合成」(“Oligonucleotide Synthesis”)、1984、ガイト(Gait), M.J.編集、IRL Press、オックスフォードに記載される技術を参照されたい。
【0122】
TSG101ペプチドは、フロイントの完全もしくは不完全アジュバントまたは類似の免疫刺激剤などの好適な担体および/またはアジュバントと共に用いることができる。不完全セピックアジュバント(Incomplete Seppic Adjuvant)(セピック、パリ、フランス)などの、1つまたはそれ以上の非代謝性鉱油または代謝可能な油と組合された1つまたはそれ以上の界面活性剤を含む、油/界面活性剤ベースのアジュバントが用いられてもよい。不完全セピックアジュバントは、抗体生成に対して不完全フロイントアジュバントに匹敵する効果を有するが、より低い炎症反応を誘導する。
【0123】
この発明はまた、DNAまたはRNAワクチンとして用いるためのtsg101遺伝子の部分を提供する。tsg101遺伝子断片はまた、前述のこの発明のTSG101タンパク質断片のいずれかを生成するために用いることができる。好ましい態様において、この発明は、TSG101タンパク質のUEVドメインを含まない断片をコードするヌクレオチド領域を含むtsg101遺伝子の断片を提供する。特定的な態様において、TSG101遺伝子の断片はヒトtsg101遺伝子の断片、またはそのネズミ相同体である。この発明はまた、tsg101遺伝子のこうした断片と少なくとも30%、50%、70%、90%または95%相同であるあらゆる配列を提供する。この発明のいくつかの態様において、tsg101遺伝子の断片の長さは少なくとも20、25、40、60、80、100、500、1000塩基である。こうした配列はTSG101ペプチドの生成に有用であり得る。
【0124】
この発明はまた、(a)前述のtsg101コード配列および/またはそれらの相補(すなわちアンチセンス)のいずれかを含むDNAベクター、(b)コード配列の発現を指示する調節因子に動作可能に関連付けられた前述のtsg101コード配列のいずれかを含むDNA発現ベクター、および(c)この発明のTSG101タンパク質断片を生成するために用いられる宿主細胞中でコード配列の発現を指示する調節因子に動作可能に関連付けられた前述のTSG101コード配列のいずれかを含む、遺伝子工学により処理された宿主細胞を提供する。ここで用いられる調節因子は、誘導性および非誘導性プロモータ、エンハンサ、オペレータ、ならびに発現を行ないかつ調節することが当業者に公知のその他の因子を含むがそれに制限されない。こうした調節因子は、サイトメガロウイルスhCMV極初期遺伝子、SV40アデノウイルスの初期または後期プロモータ、lac系、trp系、TAC系、TRC系、ファージAの主要オペレータおよびプロモータ領域、fdコートタンパク質の調節領域、3−ホスホグリセリン酸キナーゼのプロモータ、酸性ホスファターゼのプロモータ、ならびに酵母α−接合因子のプロモータを含むがそれに制限
されない。
【0125】
別の態様において、この発明は、裸のDNAまたはRNAワクチンおよびその用法を提供する。前述のこの発明のtsg101DNA断片は、この発明の抗−TSG101抗体を誘発することによってウイルス性疾患を阻害するためのワクチンとして投与できる。たとえば、DNAをプラスミドベクターのpGEM族などの転写ベクターにサブクローニングすることによって、またはワクシニアなどのウイルスの転写プロモータの制御下で、DNAをRNAに転換することができ、そのRNAが裸のRNAワクチンとして用いられる。裸のDNAもしくはRNAワクチンは単独で注射されても、またはウイルスに向けられた1つもしくはそれ以上のDNAもしくはRNAワクチンと組合されてもよい。
【0126】
この発明の裸のDNAもしくはRNAワクチンは、たとえば筋間投与されても、または代替的に点鼻薬中に用いられてもよい。DNAもしくはRNA断片またはその部分は、裸のDNAもしくはRNAとして、リポソームに包まれたDNAもしくはRNAとして、ウイルスエンベロープ受容体タンパク質を含むプロテオリポソームに閉じ込められたDNAもしくはRNAとして、注射されてもよい(ニコラウ(Nicolau), C.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 1983, 80, 1068; カノダ(Kanoda), Y. ら、Science 1989, 243, 375; マンニーノ(Mannino), R. J.ら、Biotechniques 1988, 6, 682)。代替的には、DNAは担体と共に注射できる。担体はタンパク質、またはたとえばインターロイキン2などのサイトカイン、またはポリリシン−糖タンパク質担体(ウー(Wu), G. Y. およびウー, C.H.、J. Biol. Chem. 1988, 263, 14621)、またはたとえばラウス肉腫ウイルスもしくはサイトメガロウイルスプロモータのいずれかを含む発現ベクターなどの複製しないベクターであってもよい。こうした担体タンパク質およびベクターならびにその用法は当業者に公知である(たとえば、アクサディ(Acsadi), G.ら、Nature 1991, 352, 815-818を参照)。加えて、DNAまたはRNAで小さな金のビーズを被覆し、そのビーズがたとえば遺伝子銃によって皮膚内に導入されてもよい(コーエン(Cohen)、J.Science 1993,
259, 1691-1692; ウルマー(Ulmer), J.B.ら、Science 1993, 259, 1745-1749)。
【0127】
この発明はまた、遺伝子療法によって動物におけるHIV感染などのウイルス感染を処置する方法を提供する。さまざまな遺伝子療法アプローチを用いて、Tsg101抗体を生成させるために細胞にインビボでTsg101タンパク質の断片をコードする核酸を導入し得る。
【0128】
この発明に従って、当該技術分野において入手可能な遺伝子療法のためのあらゆる方法を用いることができる。例示的な方法を以下に述べる。遺伝子療法の一般的な概説としては、ゴールドスピール(Goldspiel)ら、1993, Clinical Pharmacy 12:488-505; ウーおよびウー, 1991, Biotherapy 3:87-95; トルストシェフ(Tolstoshev)、1993, Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 32:573-596; ムリガン(Mulligan)、1993, Science 260:926-932; ならびに、モーガン(Morgan)およびアンダーソン(Anderson)、1993, Ann. Rev. Biochem. 62:191-217; 1993年5月、TIBTECH 11(5):155-215を参照されたい。用い得る組換えDNA技術の当該技術分野において一般的に公知の方法は、アウズベルら編、1993、分子生物学の最新プロトコル、John Wiley & Sons, ニューヨーク; および、クリーグラー(Kriegler), 1990, 遺伝子転移および発現、実験室マニュアル(Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual), Stockton Press, ニューヨーク、に記載されている。
【0129】
好ましい局面において、その治療は、好適な宿主中でTsg101またはその断片もしくはキメラタンパク質を発現する発現ベクターの一部であるTsg101核酸を含む。特に、こうした核酸はTsg101コード領域に動作可能に繋がれたプロモータを有し、このプロモータは誘導性または構成性であり、任意には組織特異的である。別の特定の態様
においては、Tsg101コード配列およびあらゆるその他の所望の配列が、ゲノム中の所望の部位で相同組換えを起こす領域によってフランクにされることにより、Tsg101核酸の染色体内発現を与えるような核酸分子が用いられる(たとえば、コラー(Koller)およびスミジーズ(Smithies), 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86:8932-8935; ゼイルストラ(Zijlstra)ら、1989, Nature 342:435-438を参照)。
【0130】
患者への核酸の送達は、患者が核酸または核酸を有するベクターに直接露出される直接的なものであっても、または細胞をまずインビトロで核酸によって形質転換し、次いで患者に移植する間接的なものであってもよい。これら2つのアプローチはそれぞれ、インビボまたはエクスビボ遺伝子療法として公知である。
【0131】
特定の態様において、核酸はインビボで直接投与され、そこで発現されることによってコードされる産物を生成する。これは当該技術分野において公知の多数の方法、たとえば、それを適切な核酸発現ベクターの一部として構築し、それをたとえば欠損もしくは弱毒レトロウイルスまたはその他のウイルスベクターを用いた感染などによって、細胞内に入るように投与すること(米国特許第4,980,286号を参照)、または裸のDNAの直接注射、または微粒子ボンバードメント(たとえば遺伝子銃、バイオリスティック(Biolistic)、デュポン)の使用、または脂質もしくは細胞表面受容体もしくはトランスフェクティング剤による被覆、リポソーム、微粒子もしくはマイクロカプセル中への被包、または核に入ることが公知のペプチドへの結合による投与、受容体介在エンドサイトーシスを受けるリガンドへの結合による投与(たとえば、ウーおよびウー、1987, J.Biol. Chem. 262:4429-4432を参照)(受容体を特定的に発現する細胞系をターゲッティングするために用い得る)などのいずれかによって、達成できる。別の態様においては、核酸−リガンド複合体が形成されてもよく、ここでリガンドはフソジェニック(fusogenic)ウイルスペプチドを含むことによってエンドソームを妨害し、核酸がリソソーム分解を避けられるようにする。さらに別の態様では、特定の受容体をターゲッティングすることによって、核酸を細胞特異的吸収および発現に対してインビボでターゲッティングできる(たとえば、1992年4月16日付のPCT公報WO92/06180(ウーら)、1992年12月23日付のWO92/22635号(ウイルソン(Wilson)ら)、1992年11月26日付のWO92/20316号(フィンダイス(Findeis)ら)、1993年7月22日付のWO93/14188号(クラーケ(Clarke)ら)、1993年10月14日付のWO93/20221号(ヤング(Young))を参照)。代替的には、核酸を細胞内に導入し、相同組換えによって発現のために宿主細胞DNA内に取込んでもよい(コラーおよびスミジーズ, 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86:8932-8935; ゼイルストラら、1989, Nature 342:435-438)。
【0132】
特定の態様においては、Tsg101核酸を含むウイルスベクターが用いられる。たとえば、レトロウイルスベクターが用いられてもよい(ミラー(Miller)ら、1993, Meth. Enzymol. 217:581-599を参照)。これらのレトロウイルスベクターは、ウイルスゲノムのパッケージングおよび宿主細胞DNAへの組込みに必要でないレトロウイルス配列を削除するように変更されている。遺伝子療法に用いられるTsg101核酸は、患者への遺伝子の送達を容易にするベクターにクローニングされる。レトロウイルスベクターに関するさらなる詳細は、ボーセン(Boesen)ら、1994, Biotherapy 6:291-302に見出すことができ、これは幹細胞を化学療法に対してより耐性にするために造血幹細胞にmdr1遺伝子を送達するためのレトロウイルスベクターの用法を記載している。遺伝子療法におけるレトロウイルスベクターの用法を例示するその他の参考文献は以下のとおりである。クラウス(Clowes)ら、1994, J.Clin. Invest. 93:644-651; キエム(Kiem)ら、1994, Blood 83:1467-1473; サーモンズ(Salmons)およびグンズバーグ(Gunzberg), 1993, Human Gene Therapy 4:129-141; ならびにグロスマン(Grossman)およびウイルソン, 1993, Curr. Opin. Genet. and Devel. 3:110-114。
【0133】
アデノウイルスは、遺伝子療法に用い得る別のウイルスベクターである。アデノウイルスは、遺伝子を呼吸上皮に送達するための特に魅力的な媒体である。アデノウイルスは本来呼吸上皮に感染し、そこで軽い疾患をもたらす。アデノウイルスに基づく送達系のその他の標的は、肝臓、中枢神経系、内皮細胞、および筋肉である。アデノウイルスは、非分裂細胞に感染できるという利点を有する。コザルスキ(Kozarsky)およびウイルソン (1993, Current Opinion in Genetics and Development 3:499-503)は、アデノウイルスに基づく遺伝子療法の概説を示す。ボウト(Bout)ら (1994, Human Gene Therapy 5:3-10)は、アカゲザルの呼吸上皮に遺伝子を転移するためのアデノウイルスベクターの用法を示している。遺伝子療法におけるアデノウイルスの用法のその他の事例は、ローゼンフェルド(Rozenfeld)ら、1991, Science 252:431-434; ローゼンフェルドら、1992, Cell 68:143-155; およびマストランジェリ(Mastrangeli)ら、1993, J. Clin. Invest. 91:225-234に見出すことができる。
【0134】
アデノ関連ウイルス(AAV)を遺伝子療法に用いることも提案されている(ワルシュ(Walsh)ら、1993, Proc. Soc. Exp. Biol. Med. 204:289-300)。
【0135】
遺伝子療法への別のアプローチは、エレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウム介在トランスフェクション、またはウイルス感染などの方法によって遺伝子を組織培養物中の細胞に転移することを含む。通常、転移の方法は、細胞への選択可能なマーカの転移を含む。細胞は次いで選択を受けることにより、転移された遺伝子を吸収して発現している細胞が単離される。それらの細胞は次に患者に送達される。
【0136】
この態様において、核酸は、結果的に得られる組換え細胞のインビボでの投与に先立って、細胞に導入される。こうした導入は当該技術分野において公知のあらゆる方法によって行なうことができ、それはトランスフェクション、エレクトロポレーション、微量注射、核酸配列を含むウイルスまたはバクテリオファージベクターによる感染、細胞融合、染色体介在遺伝子転移、マイクロセル介在遺伝子転移、スフェロプラスト融合などを含むがそれに制限されない。細胞への外来遺伝子の導入のための多数の技術が当該技術分野において公知であり(たとえば、レフラー(Loeffler)およびベール(Behr), 1993, Meth. Enzymol. 217:599-618; コーエンら、1993, Meth. Enzymol. 217:618-644; クライン(Cline)、1985, Pharmac. Ther. 29:69-92を参照)、受容細胞の必要な発達および生理機能が妨害されなければ、この発明に従って用いられ得る。その技術は核酸の細胞への安定した転移を与えるべきであり、それによって核酸は細胞によって発現可能となり、また好ましくは遺伝性であってその細胞後代によって発現可能となる。
【0137】
結果的に得られる組換え細胞は、当該技術分野において公知のさまざまな方法によって患者に送達できる。好ましい態様において、上皮細胞はたとえば皮下的に注射される。別の態様では、組換え皮膚細胞が皮膚移植片として患者に適用されてもよい。組換え血液細胞(たとえば造血幹細胞または始原細胞)は、静脈内に投与されることが好ましい。使用に想定される細胞の量は、所望の効果、患者の状態などに依存し、当業者によって定めることができる。
【0138】
遺伝子療法の目的のために核酸を導入できる細胞は、あらゆる所望の入手可能な細胞系を含み、上皮細胞、内皮細胞、ケラチノサイト、繊維芽細胞、筋細胞、肝細胞;Tリンパ球、Bリンパ球、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、巨核球、顆粒球などの血液細胞;たとえば骨髄、臍帯血、末梢血、胎児肝臓などから得られるようなさまざまな幹細胞または始原細胞、特に造血幹細胞または始原細胞を含むがそれに制限されない。
【0139】
好ましい態様において、遺伝子療法に用いられる細胞は患者の自己由来のものである。
【0140】
遺伝子療法において組換え細胞が用いられる態様において、Tsg101核酸が細胞に導入されることにより、それが細胞またはその後代によって発現可能となり、その組換え細胞が次いで治療効果のためにインビボで投与される。特定的な態様においては、幹細胞または始原細胞が用いられる。単離してインビトロで維持可能なあらゆる幹細胞および/または始原細胞が、この発明のこの態様に従って用いられ得る。こうした幹細胞は、造血幹細胞(HSC)、皮膚および腸の内側などの上皮組織の幹細胞、胎芽心筋細胞、肝臓幹細胞(PCT公報第WO94/08598号)、および神経幹細胞(ステンプル(Stemple)およびアンダーソン、1992、Cell 71:973-985)を含むがそれに制限されない。
【0141】
上皮幹細胞(ESC)またはケラチノサイトは、皮膚および腸の内側などの組織から公知の手順によって得ることができる(ラインワルド(Rheinwald)、1980, Meth. Cell Bio. 21A:229)。皮膚などの層状の上皮組織においては、基底板に最も近い層である胚層内の幹細胞の有糸分裂によって再生が起こる。腸の内側の幹細胞は、この組織の迅速な再生速度を与える。患者またはドナーの皮膚または腸の内側から得られたESCまたはケラチノサイトは、組織培養物中で生育できる(ラインワルド、1980, Meth. Cell Bio. 21A:229; ピッテルコウ(Pittelkow)およびスコット(Scott), 1986, Mayo Clinic Proc. 61:771)。ESCがドナーから提供されたものであるとき、宿主対移植片の反応性を抑制するための方法(たとえば穏やかな免疫抑制を起こすための照射、薬物または抗体投与)が用いられてもよい。
【0142】
造血幹細胞(HSC)に関して、HSCのインビトロでの単離、増殖および維持を与えるあらゆる技術をこの発明のこの態様において用いることができる。これを達成し得る技術は、(a)将来の宿主またはドナーから単離された骨髄細胞からのHSC培養物の単離および確立、または(b)同種または異種であってもよい以前に確立された長期HSC培養物の使用を含む。非自己由来HSCは、将来の宿主/患者の移植免疫反応を抑制する方法と共に用いられることが好ましい。この発明の特定の態様において、ヒト骨髄細胞は、針吸引によって臀部腸骨稜から得ることができる(たとえばコド(Kodo)ら、1984, J. Clin. Invest. 73:1377-1384を参照)。この発明の好ましい態様において、HSCは高度に濃縮または実質的に純粋な形にできる。この濃縮は長期培養の前、間または後に達成でき、また当該技術分野において公知のあらゆる技術によって行なわれ得る。骨髄細胞の長期培養物は、たとえば変形デクスター細胞培養技術(デクスター(Dexter)ら、1977, J.Cell Physiol. 91:335)またはウイットロック−ヴィッテ培養技術(ウイットロック(Witlock)およびヴィッテ(Witte), 1982, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 79:3608-3612)を用いることによって確立および維持できる。
【0143】
特定の態様において、遺伝子療法の目的のために導入される核酸は、コード領域に動作可能に結合された誘導可能プロモータを含むことにより、転写の適切な誘導因子の有無を制御することによって核酸の発現が調節可能になる。
【0144】
この発明のTsg101断片またはその機能的派生物をコードする核酸を送達するために用いるために適用可能な付加的な方法を以下に説明する。
【0145】
5.5.キット
この発明はまた、この発明の抗−TSG101抗体、または抗−TSG101抗体を増やすために用い得る1つまたはそれ以上のTSG101ポリペプチド、またはこの発明のポリペプチド抗−TSG101抗体をコードする1つまたはそれ以上の核酸、またはこうした核酸によって転換された細胞を1つまたはそれ以上の容器中に含むキットを提供する。核酸は染色体内に組込まれても、またはベクター(たとえばプラスミド、特にプラスミド発現ベクター)として存在してもよい。この発明の医薬組成物を含むキットも提供され
る。
【0146】
6.実施例
以下の実施例はこの発明の例示のために示されるものであり、いかなる態様においてもこの発明を制限することは意図されない。
【実施例1】
【0147】
6.1.実施例1:抗−TSG101抗体の調製および用法
ウイルス感染に対する抗−TSG101抗体の影響を定めるために、レトロウイルス感染アッセイが開発された。末端反復配列(LTR)プロモータから発現される大腸菌lacZ遺伝子を含むネズミ白血病ウイルス(MLV)由来ベクター(pBMN−Z−I−Neo)が、293細胞(フェニックスA、ATCC)由来の両栄養性ネズミ白血病レトロウイルスパッケージング細胞系にトランスフェクションされた。フェニックスAヘルパー細胞によって生成されるレトロウイルスが回収されて、マウスN2A細胞(ATCC)の感染に用いられた。MLVベクターのトランスフェクションの24時間後に、抗−TSG101抗体が293ヘルパー細胞に加えられた。ウイルス生成に対するTSG101抗体の効果は、ウイルス上清が標的細胞(N2A)に感染する効率によって定められた。次に、β−ガラクトシダーゼ活性の細胞染色(正の細胞は青く染色され、図2における暗い点のように示される)によってN2A細胞の感染が定められた。
【0148】
典型的に、フェニックスA細胞は、トランスフェクションの1日前にポリ−D−リジン被覆6−ウェルプレートに接種された。次に、4マイクログラムのpBMN−Z−I−Neoが、12ulのリポフェクタミン2000(インビトロジェン)の存在下で各ウェルにトランスフェクションされた。トランスフェクションの24時間後に、培地がトリコスタチンA(3uM)および5または10ugの適切な抗−TSG101抗体を含む1ml/ウェルの新鮮な培地と交換された。24から48時間後にウイルス上清が回収され、0.2umフィルタでフィルタリングされ、1mlのウイルス上清がポリブレン(10ug/ml)を含む1mlの新鮮な培地と混合されて、N2a細胞の1ウェルの感染に用いられた。感染の48時間後にN2a細胞は固定され、β−Gal染色キット(インビトロジェン)に記載されるとおりにX−Galで染色された。結果をデジタル画像で記録した。
【0149】
以下の実験では、N−末端TSG101タンパク質に対するウサギ抗体と、C−末端TSG101タンパク質に対するウサギ抗体との2つの抗−TSG101抗体のウイルス感染に対する影響がテストされた。抗−N末端TSG101抗体は、ヒトTSG101タンパク質のN−末端断片VRETVNVITLYKDLKPVL(SEQ ID NO:2)を用いて増やされた。抗−C末端TSG101抗体は、ヒトTSG101タンパク質のC−末端断片QLRALMQKARKTAGLSDLY(SEQ ID NO:3)を用いて増やされた。非特異的抗体対照としてウサギIgGが用いられた。10回を超える独立した実験が行なわれ、代表的な結果が図2に示される。抗体処理していないフェニックスヘルパー細胞(正の対照)は、効率的なレトロウイルスの生成およびN2A標的細胞の感染を示した(左上パネル)。ウサギIgGは影響しなかった(左中パネル)。N−末端TSG101に対するウサギ抗体は約20%−60%の阻害を示した(左下パネル)。しかし、C−末端TSG101に対するウサギ抗体はレトロウイルスの生成およびN2A標的細胞の感染を顕著に阻害した(50−70%阻害、右上パネル)。抗−C末端および抗−N末端抗体の混合物は、抗−C末端抗体のみの場合と同様の結果を与えた(右中パネル)。ウイルス感染していないN2a細胞は、最小限のバックグラウンド染色のみを示した(右下パネル)。
【0150】
HIVウイルス感染アッセイにおいても類似の結果が得られた。
【実施例2】
【0151】
6.2.実施例2:ウイルス出芽の際に細胞表面に局在化されるTSG101
この実施例は、HIV放出の際にTSG101のドメインが細胞表面に露出され、抗−TSG101抗体がHIV放出および感染を阻害したことを示す。
【0152】
1.ウイルス放出の際のTSG101局在性
TSG101が形質膜におけるウイルス放出に積極的にかかわっていることを示すために、GFP−TSG101融合タンパク質の発現ベクターが構築されて、M−MuLVウイルスを積極的に生成するフェニックス細胞(スタンフォード大学のノラン(Nolan)らにより開発されたレトロウイルスヘルパー細胞系)にトランスフェクションされた。トランスフェクションの24時間後、共焦点顕微鏡(ウルトラビュー(Ultraview)、パーキン−エルマー)の下でGFP−TSG101融合タンパク質のトラフィックが観察された。図3A−Eは、GFP−TSG101タンパク質が細胞質から細胞表面へ移動してウイルス生成細胞から「出芽」する画像の時間経過を示す。
【0153】
2.HIV出芽の際のTSG101の細胞表面局在性
TSG101がHIV出芽にも積極的にかかわっているかどうかを定めるために、抗−TSG101抗体を用いて、HIVでトランスフェクションされたヒトCD4+ヒトT細胞系H9(H9ΔBglと示す)における細胞表面TSG101を直接検出し、対照としてトランスフェクションしていないH9細胞を用いた。2つのウサギ抗−TSG101ポリクローナル抗体、1つはN−末端に対するもの(抗−TSG101“C”と示す)で、1つはC−末端TSG101に対するもの(抗−TSG101“E”と示す)、がこの研究に対して用いられた。どちらの抗体もよく特徴付けされたものである(リら、2001, Proc Natl Acad Sci USA 98(4): 1619-24)。どちらの抗体も、HIVを生成するH9ΔBgl細胞においてのみTSG101の細胞表面局在性を特異的に検出し、対照H9細胞においては細胞表面TSG101は検出されなかった(図4)。興味深いことに、抗−TSG101抗体は、抗−HIV抗体によって観察されるような「キャップ形成」様出芽構造を検出した(リー(Lee)ら、1999, J Virol. 73:5654-62)。
【0154】
3.HIV出芽の際のTSG101の細胞表面局在性のFACSプロファイル
次いで、HIV生成細胞(H9ΔBgl)および対照H9細胞におけるTSG101の細胞表面局在性が蛍光活性化細胞選別器(FACS)によって調べられた。H9ΔBglおよびH9細胞はいずれも固定され、抗−TSG101抗体で染色され、蛍光ラベルされた二次抗体によって検出された。免疫染色された細胞はFACSで分析された。6回を超える独立した実験により、約70−85%のH9ΔBgl細胞が表面TSG101に対して正に染色されたのに対し、約0.1%未満のH9対照細胞が表面TSG101に対して正に染色されたことが示された(図5)。これらの結果は、共焦点顕微鏡によるH9ΔBglおよびH9対照細胞の両方の直接調査によってさらに確認された。少数(0.1%未満)のH9対照細胞は、共焦点顕微鏡分析後の免疫染色手順に関連する弱いバックグラウンド蛍光シグナルによってもたらされた。H9ΔBgl細胞の正の集団は明るい蛍光を示した。
【0155】
4.トランスフェクションされた293細胞におけるHIV生成の抗−TSG101抗体阻害
HIV−1ウイルス生成アッセイを用いて、レトロウイルス生成に対するTSG101の阻害的効果をさらに調べた。HIV−1ベクターpNL4−3が293T細胞にトランスフェクションされた。トランスフェクションの24時間後、2つの抗−TSG101抗体(10ug/ml)、すなわち抗−TSG101抗体“E”および抗−TSG101抗体“B”、ならびに非特異的対照抗体(10ug/ml)がそれぞれ細胞培養物に加えられた。抗−TSG101抗体“B”はネズミTSG101N−末端断片に対して増やされ
たもので、ヒトTSG101タンパク質にあまり結合しない。抗−TSG101抗体“B”は対照として用いられた。追加の24時間インキュベーションの後、細胞溶解物が抽出され、細胞培養上清が回収されて、スクロース勾配によってHIV−1ビリオンが精製された。細胞溶解物および精製ビリオンの両方が、2つの抗−HIV−1抗体(抗−p55および抗−p24)を用いたウェスタンブロットにより分析された。図6に示されるとおり、抗−TSG101抗体“E”処理はHIV−1ビリオン放出の顕著な阻害を示した(ウェスタンブロットの密度追跡による70%を超える阻害、レーン8)のに対し、抗−TSG101抗体“B”(レーン7)および対照抗体(レーン6)はHIV−1放出の顕著な阻害を示さなかった。
【0156】
5.ヒトCD4+Tリンパ球(H9ΔBgl細胞)からのHIV放出の抗体阻害
HIV放出に対する抗体の効果を特定的に調べるために、H9ΔBgl細胞に基づくHIV放出アッセイが開発された。H9ΔBgl細胞は、エンベロープ欠損HIV構成(HIVゲノムのBglII断片の削除)によってトランスフェクションされたヒトCD4+Tリンパ球である。安定にトランスフェクションされたH9ΔBgl細胞は、非感染性の形のHIV(HIVエンベロープ欠損のために培養物中の他のH9ΔBgl細胞に感染できない)を生成し、H9ΔBgl細胞からのHIV放出は細胞培養上清のHIVp24ELISAによって直接測定できる。いくつかの濃度のTSG101抗体“E”および対照抗体(同じ濃度のウサギIgG)を用いて、H9ΔBgl細胞とともにインキュベートした。抗体を加えて48時間後に、培養上清を回収してHIVp24ELISAに供した。80ug/mlにおいてウイルス放出の顕著な抗体阻害が観察された(図7)。
【0157】
6.HIV伝染性の抗体阻害
抗−TSG101抗体がウイルス放出に続くHIV伝染性に対する付加的な影響を有するかどうかを定めるために、ジャーカット細胞からのHIV上清を用いて、抗−TSG101抗体“E”および対照としてのウサギIgG(40ug/ml)の存在下でMAGI細胞を感染した。抗−TSG101抗体はHIV伝染性の顕著な阻害を示し(図8)、TSG101がウイルス放出に続く標的細胞のHIV成熟および/または感染における役割を有することを示唆した。
【実施例3】
【0158】
6.3.実施例3:抗−TSG101抗体はエボラウイルスの放出を阻害する
この実施例は、TSG101がEBOV VP40と相互作用し、TSG101がEBOV VLPに取込まれ、また抗−TSG101抗体がEBOVウイルス様粒子(VLP)の放出を阻害することを示す。
【0159】
フィロウイルス科族の唯一のメンバーであるEBOVおよびMARVはマイナス鎖非分節の19KbのRNAゲノムを有し、そのゲノムは7つの遺伝子、すなわち核タンパク質(NP)、ウイルスタンパク質VP35、VP40、糖タンパク質(GP)、VP30、VP24、およびRNAポリメラーゼ(L)を含み、それらはMARVにおいては7つのタンパク質を、EBOVにおいては8つのタンパク質をコードしている。近年の研究により、326アミノ酸マトリックス(M)タンパク質であるVP40の細胞局在性および役割に対するいくつかの洞察がもたらされた(ジャゼノスキら、2001, J Virol 75(11): 5205-14; コレスニコバ(Kolesnikova)ら、2002, J Virol 76(4): 1825-38)。EBOVまたはMARVのいずれかに感染した細胞においては、VP40の大部分が形質膜の細胞質面に疎水性相互作用を介して末梢的に会合する。重要なことに、本物のウイルスに類似したいくつかの形態特性を有する非感染性粒子であるウイルス様粒子(VLP)の生成には、トランスフェクションされた細胞中のEBOVおよびMARV VP40の発現が必要である。VP40が感染細胞からの自身の放出を指示する能力は、他のエンベロープRNAウイルスと共通のプロリンに富む配列モチーフにマッピングされた(ハーティら、2000
, Proc Natl Acad Sci USA 97(25): 13871-6)。
【0160】
1.エボラ集合および放出の代理モデルとしてのウイルス様粒子の生成
いくつかのウイルス様粒子は、ウイルスマトリックスタンパク質の単なる発現によって生成できる(ジョンソン(Johnson)ら、2000, Curr Opin Struct Biol 10, 229-235)。EBOVおよびMARVマトリックスタンパク質(VP40)は形質膜およびウイルス封入体の両方に局在化することが示されており(コレスニコバら、2002, J Virol 76(4): 1825-38; マーティン−セラーノら、2001, Nature Medicine 7:1313-19)、VP40は成熟ビリオンの集合および放出を行なうことが示唆されている。しかし、VP40のみの発現によってVLPを効率的に生成する試みは全く実を結ばず、アモルファスVP40含有材料の非効率的な放出が示された(ババリ(Bavari)ら、2002, J Exp Med 195, 593-602)。レトロウイルスにおいて、集合複合体のラフト(raft)局在化はN−末端アシル化Gagタンパク質の会合によって制御される(キャンベル(Campbell)ら、2001, J Clin Virol 22, 217-227)のに対し、VP40などのフィロウイルスタンパク質のラフトターゲッティングは主にウイルス糖タンパク質(GP)によって制御されているようである(ババリら、2002, J Exp Med 195, 593-602)。したがって、フィロウイルスVLPの生成にはGPおよびVP40の両方の共発現が必要なのではないかという仮説が立てられた。GPおよびVP40が培養上清に放出されるかどうかがまず調べられた。GPまたはVP40のいずれかのみを発現する細胞においては、いずれのタンパク質も細胞と上清との両方において検出された(図9A)。しかし、両方のタンパク質の共発現によって、細胞からの放出がかなり増加した(図9A)。もし放出されたGPおよびVP40が粒子中で会合しているなら、VP40は抗−GPmAbによって共免疫沈降するはずだと推論された。図9Bに示されるとおり、EBOVのGPおよびVP40の両方でトランスフェクションした細胞の上清からの抗GP−免疫沈降物からVP40は容易に検出された。VP40のみを発現する細胞の上清からはVP40は落とされず、この共免疫沈降(co-IP)が特異的であることを示した。
【0161】
2.EBOV GPおよびVP40により形成される粒子はエボラウイルスの形態特性を示す
共免疫沈降実験は、上清に放出されたGPおよびVP40が何らかの形で互いに会合していることを示した。これらの複合体がウイルス様粒子(VLP)を表わすかどうかを確認するために、培養上清からの粒状材料がスクロース勾配超遠心分離によって精製され(ババリら、2002, J Exp Med 195, 593-602)、電子顕微鏡を用いて分析された。興味深いことに、GPおよびVP40によって共トランスフェクションされた細胞の上清から得られた粒子のほとんどは、フィロウイルスに著しく類似した線状形態を示した(図10AおよびB)(ゲイスバート(Geisbert)ら、1995, Virus Res 39,129-150; マーフィ(Murphy)ら、1978, エボラおよびマールブルグウイルス形態および分類(Ebola and Marburg virus morphology and taxonomy), 初版(アムステルダム、Elsvier))。これに対し、単独でトランスフェクションされた細胞から得られた材料は、細胞死の際に放出されたと思われる少量の膜断片しか含んでいなかった。VLPは直径が50−70nmであり、長さが1−2μmである(図10)。これは、インビトロ感染後の細胞培養上清において見られるエボラビリオンの長さの範囲に類似している(ゲイスバートら、1995, Virus Res 39,129-150)。VLPの直径が(EBOVの80nmに比べて)より小さいのは、おそらくリボ核タンパク質複合物の欠如によるものであろう。分岐形、棒形、U形および6形など、フィロウイルスに対して記載されるあらゆる種類の形態(フェルドマン(Feldmann)ら、1996, Adv Virus Res 47, 1-52; ゲイスバートら、1995, Virus Res 39,129-150)がこれらの粒子において観察された(図10)。また、VLPは5−10nmの表面突起または「スパイク」で覆われており(図10)、これはEBOVの特徴である(フェルドマンら、1996, Adv Virus Res 47, 1-52; ゲイスバートら、1995, Virus Res 39,129-150)。抗−エボラGP抗体によるVLPの免疫金染色は、粒子の表面上のスパイクのエボラ糖
タンパク質としての同一性を示した(図10B)。マールブルグウイルスに対するVLPも類似の態様で生成された。
【0162】
要約すると、生物学的封じ込め(biocontainment)実験室の制限なしに行なわれ得るエボラウイルスの集合および放出に対する代理アッセイを確立した。このアッセイは、エボラウイルス出芽を阻害し得る薬剤の初期スクリーニングに用いることができる。
【0163】
3.エボラウイルス生活環におけるTSG101の役割に関する研究
我々は、EBOV集合および放出における液胞タンパク質選別(vps)タンパク質TSG101のVP40の後期ドメインとの相互作用のかかわりを調べるために一連の生化学的研究を行なった。これらの研究には、C−末端がMycエピトープで標識された1組の短くしたTSG101が用いられた。全長TSG101ならびに140、250および300の位置で短くされた変異体と、EBOV VP40とによって293T細胞がトランスフェクションされた。48時間後に細胞が溶解され、抗−Myc抗体による免疫沈降を受けた。図11に示されるとおり、VP40は、1−140の短くされた変異体を除くすべてのTSG101タンパク質とともに共沈した。この変異体と会合しないことは、残基141−145がHIV Gag由来PTAPペプチドとの重要な接触を行なうことを示す構造的データ(ポルニロスら、2002, Nat Struct Biol 9, 812-7)に一致している。興味深いことに、TSG101の1−300変異体とのVP40の会合は、全長または1−250変異体とのものよりも顕著に強かった(図11)。全長TSG101の会合の方が低かったのは、TSG101のUEVドメインとの分子間または分子内会合を形成し得る、この分子のC−末端領域中のPTAPモチーフの存在のためだろう。アミノ酸250−300の削除による相互作用の劇的な減少は、この領域における残基がウイルスマトリックスタンパク質との結合に寄与している可能性を示唆する。
【0164】
TSG101およびVP40がPTAPモチーフを通じて直接会合していることを確かめるために、ファーウェスタン分析を行なった。エボラVP40(1−326)および短くした(31−326)エボラVP40タンパク質、ならびにTSG101のHAタグUEVドメインをバクテリアで生成した。これらのタンパク質を4−20%勾配ゲルで電気泳動し、ニトロセルロース膜への電気泳動的転写(electroblotted)を行なった。ブロッキングの後、ブロットを精製TSG101タンパク質(UEV)とともにインキュベートし、洗浄し、抗TSG101抗体および二次抗体としてのHRPラベルヤギ抗ウサギ抗体を用いた増強化学発光によってタンパク質−タンパク質相互作用を検出した。図12に示されるとおり、TSG101は全長エボラVP40と相互作用したが、短くしたエボラVP40とは相互作用せず、VP40のN末端におけるPTAPモチーフがVP40−TSG101(UEV)相互作用に重要な役割を果たしていることが確認された。エボラVP40抗体によって展開した同じウェスタンブロットによって、全長および短くしたVP40の両方を検出でき、ブロット上の両方のタンパク質の存在が示された。
【0165】
4.エボラVP40−TSG101相互作用の表面プラズモン共鳴バイオセンサ(SPR)分析
SPR測定を用いて、TSG101と相互作用するエボラVP40の定量分析を行なった。エボラVP40のN末端からの11アミノ酸残基を含むビオチン化ペプチド(Bio−ILPTAPPEYME)をストレプトアビジンチップ上に固定した。UEVドメインのみを含む精製TSG101タンパク質を異なる濃度(1、2、5、20uM)で連続的に注入した。図13に示されるように、ペプチドおよびタンパク質間の中程度の親和性の相互作用が検出できる。このSPRデータに基づいて、我々はこの相互作用に対する約2μMのKD値を算出した。
【0166】
5.エボラVLPおよびビリオンへのTSG101の取込み
TSG101がEBOV VLPに取込まれているかどうかを定めるために、TSG101(1−312)をGPまたはGP+VP40とともに293T細胞中で発現した。抗GP抗体を用いてVLPを上清から免疫沈降した。TSG101(1−312)の発現の結果、VLP放出が顕著に増加し、VLP出芽におけるTSG101の正の役割が示唆された(図14A、レーン4)。加えて、TSG101(1−312)は、GPおよびVP40とともに発現されたときに培養上清から抗−GP抗体によって共免疫沈降した(図14A、レーン4)。VP40不在下で発現されたときにはGPと会合したTSG101は見出されず(図14A、レーン3)、そのGPとの会合はVLPの形成に依存することが示唆された。全長TSG101についても同様の結果が得られた。これらのデータはTSG101がVLPに取込まれることを強く示唆するものであり、TSG101がウイルス集合および/または出芽における役割を果たすという仮説を支持するものである。この結果をさらに実証するために、我々はまた、TSG101の存在について、不活性化しバンド精製したEBOV(iEBOV)を分析した。TSG101の存在について、5μgのiEBOVを免疫ブロットにより分析した。図6Bに示されるとおり、我々はiEBOV中に容易に検出可能なレベルのTSG101を見出し、エボラウイルス中へのTSG101の取込みを明らかに示した。
【0167】
6.エボラウイルス放出に対するポリクローナル抗TSG101抗体の影響
生化学的データおよびVLP放出データは、エボラウイルスの出現にTSG101が重要であることを示唆した。したがって、エボラザイール−95ウイルスに感染したヒーラ細胞におけるウイルス生成に対するポリクローナル抗−TSG101抗体“C”および“E”(HIVに対する阻害的影響を示した、実施例1および2を参照)の影響をテストした。ヒーラ細胞の単分子層を1MOIのウイルスとともに50分間インキュベートし、洗浄し、抗−TSG101抗体または対照ウサギ抗マウス抗体を含む培地を5μg/mlにて加えた。24時間後に上清を集め、放出されたウイルスを以前に述べたように(ババリら、2002, J Exp Med 195, 593-602)プラークアッセイによって数えた。図15に示すとおり、これらの抗体はヒーラ細胞上清へのビリオンの放出を部分的に阻害した。
【0168】
7.引用した参考文献
ここに引用されるすべての参考文献は、個々の出版物または特許または特許出願の各々がすべての目的に対して全体にわたって引用により援用されると特定的かつ個別に示された場合と同程度に、ここに全体にわたってかつすべての目的に対して引用により援用される。
【0169】
当業者に明らかになるとおり、この発明の趣旨および範囲から逸脱することなく多くの変更および修正を行ない得る。ここに記載される特定の実施例は例示のためにのみ提供されるものであり、この発明は添付のクレームおよびこうしたクレームが与える同等物の全体の範囲によってのみ制限される。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】ヒトTSG101タンパク質の390アミノ酸配列(SEQ ID NO:1)。(ジーンバンク登録番号(GenBank Accession No.)U82130.1/GI:1772663)。
【図2】MLVウイルス生成に対する抗−TSG101抗体の影響。左上パネル:抗体処理していないフェニックスヘルパー細胞(正の対照)は効率的なレトロウイルスの生成およびN2A標的細胞の感染を示した。左中パネル:ウサギIgGは影響しなかった。左下パネル:N−末端TSG101に対するウサギ抗体は20%未満の阻害の影響を有した。右上パネル:C−末端TSG101に対するウサギ抗体はレトロウイルスの生成およびN2A標的細胞の感染を顕著に阻害した(50−70%阻害)。右中パネル:抗−C末端および抗−N末端抗体の混合物は抗−C末端抗体のみのときと同様の結果を与えた。右下パネル:ウイルス感染していないN2a細胞は最小限のバックグラウンド染色のみを示した。
【図3】ウイルス放出の際にGFP−TSG101は細胞表面に局在化する。GFP−TSG101のトランスフェクションの24時間後の活性ウイルス放出を伴うフェニックスヘルパー細胞のライブ共焦点画像。図3A、4つの細胞の明視野画像。図3B−E、同じ視野の異なる区画のライブ共焦点蛍光画像。白矢印は、GFP−TSG101の細胞表面局在性を示す。
【図4】HIV出芽の際のTSG101の細胞表面局在化。H9ΔBgl細胞(HIVウイルス組込みを有するCD4+ヒトTリンパ球)は、欠損エンベロープタンパク質を有するHIVビリオン(この非感染性の形のHIVウイルスは他の細胞に感染せず、よってウイルス放出の研究を特定的に可能にする)を積極的に生成および放出した。HIVを有さない親H9細胞を対照として用いた。H9ΔBglおよびH9細胞はいずれも2%パラホルムアルデヒドで室温にて10分間固定した(この表面固定は細胞を易透化しない)。抗−TSG101抗体を両方の細胞系とともに20分間インキュベートし、蛍光ラベルした二次抗体で検出した。上パネル:蛍光画像、下パネル:明視野画像。
【図5】HIV出芽の際のTSG101の細胞表面局在化のFACSプロファイル。H9ΔBglおよびH9細胞はいずれも2%パラホルムアルデヒドで室温にて10分間固定した(この表面固定は細胞を易透化しない)。抗−TSG101抗体を両方の細胞系とともに20分間インキュベートし、蛍光ラベルした二次抗体で検出した。免疫染色細胞をFACSで分析した。上パネル:H9ΔBgl細胞、85%の細胞が表面TSG101に対して正に染色される。下パネル:H9対照細胞、0.1%未満の細胞が表面TSG101に対して正に染色される。
【図6】抗−TSG101抗体によるHIV−1生成の阻害。レーン1および5、偽トランスフェクション。レーン2および6、pNL4−3および対照抗体(ウサギIgG)。レーン3および7、pNL4−3および抗−TSG101抗体“B”。レーン4および8、pNL4−3および抗−TSG101抗体“E”。
【図7】H9ΔBgl細胞からのHIV放出の抗体阻害。HIVを生成するH9ΔBgl細胞を異なる濃度の抗−TSG101抗体“E”とともにインキュベートし、48時間後にウイルス上清を回収してHIVp34ELISAキットによりアッセイした。3回の独立した実験(各々3組)の平均を示した。80ug/mlにおいてウイルス放出の顕著な抗体阻害(*P<0.05)が観察された。
【図8】HIV伝染性の抗体阻害。(野生型HIV−1に感染した)HIV生成ジャーカット細胞を40ug/mlの抗−TSG101抗体“E”とともにインキュベートし、48時間後にウイルス上清を回収して、MAGI細胞の感染に用いた。HIVp24ELISAキットによりアッセイした。3回の独立した実験(各々3組)の平均を示した。40ug/mlにおいてウイルス放出の顕著な抗体阻害が観察された。
【図9】培養上清へのエボラGPおよびVP40の放出。図9A、示されるプラスミドで293T細胞をトランスフェクションし、上清の浮遊物を取除き、粒状材料を超遠心分離によって20%スクロースを通じて沈殿させた。免疫ブロット(IB)によって、細胞溶解物および上清からの粒状材料における個々のタンパク質を検出した。図9B、エボラVP40のみまたはGP+VP40でトランスフェクションした細胞からの上清を抗−GPmAbで免疫沈降し、免疫ブロットにより分析した。下パネルは全細胞溶解物中のVP40の発現を示す。IgH:免疫沈降に用いた抗体からの免疫グロブリン重鎖。
【図10】EBOV GPおよびVP40によって生成されるウイルス様粒子の電子顕微鏡分析。エボラGP+VP40でトランスフェクションした293T細胞の上清の超遠心分離によって得られた粒子を、酢酸ウラニルでネガティブ染色して超微細構造を示し(図10A)、または抗−Ebo−GPmAbに続く免疫金ウサギ抗マウスAbによって染色し(図10B)、電子顕微鏡法によって分析した。
【図11】293T細胞におけるVP40とTSG101との会合。Myc標識TSG101の全長(FL)または示される短くしたものとVP40とで細胞をトランスフェクションした。48時間後に細胞を溶解し、抗Mycによる免疫沈降に供した。
【図12】エボラVP40とTSG101UEVドメインとの会合のファーウェスタン分析。
【図13】エボラVP40のTSG101との相互作用のSPR分析。
【図14】TSG101のエボラVLPおよび不活性化エボラウイルスとの会合。図14Aは、293細胞を示されるプラスミドによってトランスフェクションし、上清を抗−GPmAbによって免疫沈降し、右側に示す抗体による免疫ブロットによって分析した。下側の3つのパネルは、全細胞溶解物中のトランスフェクションされたタンパク質の発現を示す。図14Bは、5μg不活性化エボラウイルス(iEBOV)をSBS−PAGEおよびウサギ抗−TSG101抗体によるウェスタンブロット解析に供した。分子量マーカーおよびTSG101の位置が示される。
【図15】抗TSG101抗体によるヒーラ細胞におけるエボラウイルス放出の阻害の結果。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンベロープウイルスに感染した哺乳動物細胞からのウイルス出芽を減少させる方法であって、前記哺乳動物細胞をTSG101タンパク質に結合する抗体の十分量と接触させるステップを含む、方法。
【請求項2】
前記抗体は前記TSG101タンパク質のN−末端またはC−末端領域に結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記哺乳動物細胞はヒト細胞である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗体は、VRETVNVITLYKDLKPVL(SEQ ID NO:2)およびQLRALMQKARKTAGLSDLY(SEQ ID NO:3)からなる群より選択されるアミノ酸領域に含まれるエピトープに結合する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記エンベロープウイルスは、ヒト免疫不全ウイルスI型(HIV−I)、ヒト免疫不全ウイルスII型(HIV−II)、マールブルグウイルス、およびエボラウイルスからなる群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体はモノクローナル抗体である、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
哺乳動物におけるエンベロープウイルスによる感染を処置する方法であって、前記哺乳動物に、TSG101タンパク質に結合する抗体を治療上有効な量投与するステップを含む、方法。
【請求項8】
前記抗体は前記TSG101タンパク質のN−末端またはC−末端領域に結合する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記哺乳動物はヒトである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記抗体は、VRETVNVITLYKDLKPVL(SEQ ID NO:2)およびQLRALMQKARKTAGLSDLY(SEQ ID NO:3)からなる群より選択されるアミノ酸領域に含まれるエピトープに結合する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記エンベロープウイルスは、ヒト免疫不全ウイルスI型(HIV−I)、ヒト免疫不全ウイルスII型(HIV−II)、マールブルグウイルス、およびエボラウイルスからなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記抗体はモノクローナル抗体である、請求項7から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記哺乳動物に、1つまたはそれ以上の他の治療薬剤を治療上有効な量投与するステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
エンベロープウイルスに感染した哺乳動物細胞に治療用分子を送達する方法であって、前記哺乳動物細胞を抗体コンジュゲートと接触させるステップを含み、前記抗体コンジュゲートは、前記治療用分子とコンジュゲートされたTSG101タンパク質に結合する抗体を含む、方法。
【請求項15】
前記抗体は前記TSG101タンパク質のN−末端またはC−末端領域に結合する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記哺乳動物細胞はヒト細胞である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記抗体は、VRETVNVITLYKDLKPVL(SEQ ID NO:2)およびQLRALMQKARKTAGLSDLY(SEQ ID NO:3)からなる群より選択されるアミノ酸領域に含まれるエピトープに結合する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記エンベロープウイルスは、ヒト免疫不全ウイルスI型(HIV−I)、ヒト免疫不全ウイルスII型(HIV−II)、マールブルグウイルス、およびエボラウイルスからなる群より選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記抗体はモノクローナル抗体である、請求項14から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
哺乳動物におけるエンベロープウイルスによる感染を処置する方法であって、前記哺乳動物に、抗体コンジュゲートを治療上有効な量投与するステップを含み、前記抗体コンジュゲートは、治療薬剤とコンジュゲートされたTSG101タンパク質に結合する抗体を含む、方法。
【請求項21】
前記抗体は前記TSG101タンパク質のN−末端またはC−末端領域に結合する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記哺乳動物はヒトである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記抗体は、VRETVNVITLYKDLKPVL(SEQ ID NO:2)およびQLRALMQKARKTAGLSDLY(SEQ ID NO:3)からなる群より選択されるアミノ酸領域に含まれるエピトープに結合する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記エンベロープウイルスは、ヒト免疫不全ウイルスI型(HIV−I)、ヒト免疫不全ウイルスII型(HIV−II)、マールブルグウイルス、およびエボラウイルスからなる群より選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記抗体はモノクローナル抗体である、請求項20から24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記哺乳動物に、1つまたはそれ以上の他の治療薬剤を治療上有効な量投与するステップをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
エンベロープウイルスに感染した哺乳動物細胞を同定する方法であって、
(a)哺乳動物の細胞を抗体コンジュゲートと接触させるステップを含み、前記抗体コンジュゲートはラベルとコンジュゲートされたTSG101タンパク質に結合する抗体を含み、前記方法はさらに
(b)付着された前記ラベルを有する細胞を検出することによって前記エンベロープウイルスに感染した前記細胞を同定するステップを含む、方法。
【請求項28】
前記抗体は前記TSG101タンパク質のN−末端またはC−末端領域に結合する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記哺乳動物はヒトであり、前記抗体は、VRETVNVITLYKDLKPVL(SEQ ID NO:2)およびQLRALMQKARKTAGLSDLY(SEQ ID NO:3)からなる群より選択されるアミノ酸領域に含まれるエピトープに結合する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記エンベロープウイルスは、ヒト免疫不全ウイルスI型(HIV−I)、ヒト免疫不全ウイルスII型(HIV−II)、マールブルグウイルス、およびエボラウイルスからなる群より選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記抗体はモノクローナル抗体である、請求項27から30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記ラベルは蛍光ラベルであり、付着された前記ラベルを有する前記細胞は蛍光活性化細胞選別器を用いて検出される、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
哺乳動物由来の流体からの、エンベロープウイルスに感染した細胞のエクスビボ除去の方法であって、
(a)前記流体を、TSG101タンパク質に結合するTSG101抗体の十分量とともにインキュベートするステップと、
(b)前記TSG101抗体に結合された細胞を前記流体から除去するステップとを含む、方法。
【請求項34】
前記抗体は前記TSG101タンパク質のN−末端またはC−末端領域に結合する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記流体は血液または血清である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記哺乳動物はヒトである、請求項34または35に記載の方法。
【請求項37】
前記TSG101抗体は、VRETVNVITLYKDLKPVL(SEQ ID NO:2)およびQLRALMQKARKTAGLSDLY(SEQ ID NO:3)からなる群より選択されるアミノ酸領域に含まれるエピトープに結合する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記エンベロープウイルスは、ヒト免疫不全ウイルスI型(HIV−I)、ヒト免疫不全ウイルスII型(HIV−II)、マールブルグウイルス、およびエボラウイルスからなる群より選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記TSG101抗体はモノクローナル抗体である、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記TSG101抗体に結合された前記細胞は、前記TSG101抗体に結合する抗体を含むカラムを用いて除去される、請求項34または35に記載の方法。
【請求項41】
哺乳動物におけるエンベロープウイルスによる感染を処置または防止する方法であって、前記哺乳動物に治療上または予防上十分な量のワクチン組成物を投与するステップを含み、前記ワクチン組成物はTSG101タンパク質を含むポリペプチドを含む、方法。
【請求項42】
前記ポリペプチドは前記TSG101タンパク質のN−末端またはC−末端領域を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記哺乳動物はヒトである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記ポリペプチドは、VRETVNVITLYKDLKPVL(SEQ ID NO:2)およびQLRALMQKARKTAGLSDLY(SEQ ID NO:3)からなる群より選択されるアミノ酸配列、またはその少なくとも5アミノ酸の断片を含む、請求項43に
記載の方法。
【請求項45】
前記エンベロープウイルスは、ヒト免疫不全ウイルスI型(HIV−I)、ヒト免疫不全ウイルスII型(HIV−II)、マールブルグウイルス、およびエボラウイルスからなる群より選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
哺乳動物におけるエンベロープウイルスによる感染を処置または防止する方法であって、前記哺乳動物に治療上または予防上十分な量のDNAワクチン組成物を投与するステップを含み、前記DNAワクチン組成物はTSG101タンパク質の断片を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド分子を含む、方法。
【請求項47】
前記ポリヌクレオチド分子は、前記TSG101タンパク質のN−末端またはC−末端領域を含むポリペプチドをコードする、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記哺乳動物はヒトである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記ポリペプチドは、VRETVNVITLYKDLKPVL(SEQ ID NO:2)およびQLRALMQKARKTAGLSDLY(SEQ ID NO:3)からなる群より選択されるアミノ酸配列、またはその少なくとも5アミノ酸の断片を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記エンベロープウイルスは、ヒト免疫不全ウイルスI型(HIV−I)、ヒト免疫不全ウイルスII型(HIV−II)、マールブルグウイルス、およびエボラウイルスからなる群より選択される、請求項49に記載の方法。
【請求項1】
エンベロープウイルスに感染した哺乳動物細胞からのウイルス出芽を減少させる方法であって、前記哺乳動物細胞をTSG101タンパク質に結合する抗体の十分量と接触させるステップを含む、方法。
【請求項2】
前記抗体は前記TSG101タンパク質のN−末端またはC−末端領域に結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記哺乳動物細胞はヒト細胞である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗体は、VRETVNVITLYKDLKPVL(SEQ ID NO:2)およびQLRALMQKARKTAGLSDLY(SEQ ID NO:3)からなる群より選択されるアミノ酸領域に含まれるエピトープに結合する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記エンベロープウイルスは、ヒト免疫不全ウイルスI型(HIV−I)、ヒト免疫不全ウイルスII型(HIV−II)、マールブルグウイルス、およびエボラウイルスからなる群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体はモノクローナル抗体である、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
哺乳動物におけるエンベロープウイルスによる感染を処置する方法であって、前記哺乳動物に、TSG101タンパク質に結合する抗体を治療上有効な量投与するステップを含む、方法。
【請求項8】
前記抗体は前記TSG101タンパク質のN−末端またはC−末端領域に結合する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記哺乳動物はヒトである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記抗体は、VRETVNVITLYKDLKPVL(SEQ ID NO:2)およびQLRALMQKARKTAGLSDLY(SEQ ID NO:3)からなる群より選択されるアミノ酸領域に含まれるエピトープに結合する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記エンベロープウイルスは、ヒト免疫不全ウイルスI型(HIV−I)、ヒト免疫不全ウイルスII型(HIV−II)、マールブルグウイルス、およびエボラウイルスからなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記抗体はモノクローナル抗体である、請求項7から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記哺乳動物に、1つまたはそれ以上の他の治療薬剤を治療上有効な量投与するステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
エンベロープウイルスに感染した哺乳動物細胞に治療用分子を送達する方法であって、前記哺乳動物細胞を抗体コンジュゲートと接触させるステップを含み、前記抗体コンジュゲートは、前記治療用分子とコンジュゲートされたTSG101タンパク質に結合する抗体を含む、方法。
【請求項15】
前記抗体は前記TSG101タンパク質のN−末端またはC−末端領域に結合する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記哺乳動物細胞はヒト細胞である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記抗体は、VRETVNVITLYKDLKPVL(SEQ ID NO:2)およびQLRALMQKARKTAGLSDLY(SEQ ID NO:3)からなる群より選択されるアミノ酸領域に含まれるエピトープに結合する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記エンベロープウイルスは、ヒト免疫不全ウイルスI型(HIV−I)、ヒト免疫不全ウイルスII型(HIV−II)、マールブルグウイルス、およびエボラウイルスからなる群より選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記抗体はモノクローナル抗体である、請求項14から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
哺乳動物におけるエンベロープウイルスによる感染を処置する方法であって、前記哺乳動物に、抗体コンジュゲートを治療上有効な量投与するステップを含み、前記抗体コンジュゲートは、治療薬剤とコンジュゲートされたTSG101タンパク質に結合する抗体を含む、方法。
【請求項21】
前記抗体は前記TSG101タンパク質のN−末端またはC−末端領域に結合する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記哺乳動物はヒトである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記抗体は、VRETVNVITLYKDLKPVL(SEQ ID NO:2)およびQLRALMQKARKTAGLSDLY(SEQ ID NO:3)からなる群より選択されるアミノ酸領域に含まれるエピトープに結合する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記エンベロープウイルスは、ヒト免疫不全ウイルスI型(HIV−I)、ヒト免疫不全ウイルスII型(HIV−II)、マールブルグウイルス、およびエボラウイルスからなる群より選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記抗体はモノクローナル抗体である、請求項20から24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記哺乳動物に、1つまたはそれ以上の他の治療薬剤を治療上有効な量投与するステップをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
エンベロープウイルスに感染した哺乳動物細胞を同定する方法であって、
(a)哺乳動物の細胞を抗体コンジュゲートと接触させるステップを含み、前記抗体コンジュゲートはラベルとコンジュゲートされたTSG101タンパク質に結合する抗体を含み、前記方法はさらに
(b)付着された前記ラベルを有する細胞を検出することによって前記エンベロープウイルスに感染した前記細胞を同定するステップを含む、方法。
【請求項28】
前記抗体は前記TSG101タンパク質のN−末端またはC−末端領域に結合する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記哺乳動物はヒトであり、前記抗体は、VRETVNVITLYKDLKPVL(SEQ ID NO:2)およびQLRALMQKARKTAGLSDLY(SEQ ID NO:3)からなる群より選択されるアミノ酸領域に含まれるエピトープに結合する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記エンベロープウイルスは、ヒト免疫不全ウイルスI型(HIV−I)、ヒト免疫不全ウイルスII型(HIV−II)、マールブルグウイルス、およびエボラウイルスからなる群より選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記抗体はモノクローナル抗体である、請求項27から30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記ラベルは蛍光ラベルであり、付着された前記ラベルを有する前記細胞は蛍光活性化細胞選別器を用いて検出される、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
哺乳動物由来の流体からの、エンベロープウイルスに感染した細胞のエクスビボ除去の方法であって、
(a)前記流体を、TSG101タンパク質に結合するTSG101抗体の十分量とともにインキュベートするステップと、
(b)前記TSG101抗体に結合された細胞を前記流体から除去するステップとを含む、方法。
【請求項34】
前記抗体は前記TSG101タンパク質のN−末端またはC−末端領域に結合する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記流体は血液または血清である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記哺乳動物はヒトである、請求項34または35に記載の方法。
【請求項37】
前記TSG101抗体は、VRETVNVITLYKDLKPVL(SEQ ID NO:2)およびQLRALMQKARKTAGLSDLY(SEQ ID NO:3)からなる群より選択されるアミノ酸領域に含まれるエピトープに結合する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記エンベロープウイルスは、ヒト免疫不全ウイルスI型(HIV−I)、ヒト免疫不全ウイルスII型(HIV−II)、マールブルグウイルス、およびエボラウイルスからなる群より選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記TSG101抗体はモノクローナル抗体である、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記TSG101抗体に結合された前記細胞は、前記TSG101抗体に結合する抗体を含むカラムを用いて除去される、請求項34または35に記載の方法。
【請求項41】
哺乳動物におけるエンベロープウイルスによる感染を処置または防止する方法であって、前記哺乳動物に治療上または予防上十分な量のワクチン組成物を投与するステップを含み、前記ワクチン組成物はTSG101タンパク質を含むポリペプチドを含む、方法。
【請求項42】
前記ポリペプチドは前記TSG101タンパク質のN−末端またはC−末端領域を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記哺乳動物はヒトである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記ポリペプチドは、VRETVNVITLYKDLKPVL(SEQ ID NO:2)およびQLRALMQKARKTAGLSDLY(SEQ ID NO:3)からなる群より選択されるアミノ酸配列、またはその少なくとも5アミノ酸の断片を含む、請求項43に
記載の方法。
【請求項45】
前記エンベロープウイルスは、ヒト免疫不全ウイルスI型(HIV−I)、ヒト免疫不全ウイルスII型(HIV−II)、マールブルグウイルス、およびエボラウイルスからなる群より選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
哺乳動物におけるエンベロープウイルスによる感染を処置または防止する方法であって、前記哺乳動物に治療上または予防上十分な量のDNAワクチン組成物を投与するステップを含み、前記DNAワクチン組成物はTSG101タンパク質の断片を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド分子を含む、方法。
【請求項47】
前記ポリヌクレオチド分子は、前記TSG101タンパク質のN−末端またはC−末端領域を含むポリペプチドをコードする、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記哺乳動物はヒトである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記ポリペプチドは、VRETVNVITLYKDLKPVL(SEQ ID NO:2)およびQLRALMQKARKTAGLSDLY(SEQ ID NO:3)からなる群より選択されるアミノ酸配列、またはその少なくとも5アミノ酸の断片を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記エンベロープウイルスは、ヒト免疫不全ウイルスI型(HIV−I)、ヒト免疫不全ウイルスII型(HIV−II)、マールブルグウイルス、およびエボラウイルスからなる群より選択される、請求項49に記載の方法。
【図1】
【図3】
【図7】
【図8】
【図13】
【図15】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図3】
【図7】
【図8】
【図13】
【図15】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【公表番号】特表2006−514921(P2006−514921A)
【公表日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−542046(P2004−542046)
【出願日】平成15年10月1日(2003.10.1)
【国際出願番号】PCT/US2003/031233
【国際公開番号】WO2004/031209
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【出願人】(505117917)ファンクショナル・ジェネティクス・インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】FUNCTIONAL GENETICS, INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年10月1日(2003.10.1)
【国際出願番号】PCT/US2003/031233
【国際公開番号】WO2004/031209
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【出願人】(505117917)ファンクショナル・ジェネティクス・インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】FUNCTIONAL GENETICS, INC.
【Fターム(参考)】
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