説明

抗生物質製剤、単位用量、キットおよび方法

水性または粉末組成物には、約100mg/mlから約200mg/mlの量で存在する、抗グラム陰性菌抗生物質またはその塩が含まれる。別の水性または粉末組成物には、25℃、1.0気圧における抗グラム陽性菌またはその塩の溶解限度の約0.6から約0.9倍の濃度で存在する、抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩が含まれる。別の実施形態には、単位用量、キットおよび方法が含まれる。本発明は特に、約100mg/mlから約200mg/mlの量で存在する、抗グラム陰性菌抗生物質、またはその塩を含有するエアロゾル化用水性組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
本出願は、平成17年9月29日に出願された米国仮出願第60/722、564号の35U.S.C.§119(e)による優先権を請求する。参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、抗生物質製剤、単位用量、キット、および方法などの抗感染薬、特にアミノグリコシド抗生物質製剤、単位用量、キット、および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
技術背景
患者の効果的な治療法の必要性は、様々な医薬製剤投与手技の開発につながった。従来の手技のひとつには、錠剤、カプセル、エリキシル、などの形状の医薬製剤の経口投与がある。しかし、経口投与は、症例によっては好ましくない場合もある。例えば、医薬製剤の多くは、効果的に体に吸収される前に、消化管で分解されることがある。患者が、エアロゾル化された医薬製剤を患者自身の呼吸器へ送るために、経口または経鼻で吸入する吸入可能な薬物投与も、効果的および/または望ましい。1つの吸入手技では、エアロゾル化された医薬製剤は、喘息および肺気腫などの呼吸器疾患を治療、および/または、真菌感染症および嚢胞性線維症などの局部的肺感染症を治療するための、肺など呼吸器の一部の局部治療および/または予防になる。別の吸入手技では、医薬製剤は、患者の肺内深くに投与され、そこで、血流に吸収されて、体全体にわたり、製剤が全身的に送達される。医薬製剤が収納された機器または高圧ガス入り機器、粉末を噴霧する機器、液体医薬製剤を噴霧するために、圧縮ガスまたは別の装置を使用する機器、および同様の機器などを含む、多くの種類のエアロゾル化機器が存在する。
【0004】
周知のエアロゾル機器の1つは、一般的に、ネブライザーと言われる。ネブライザーは、液体を噴霧し、患者の呼吸器(例えば、肺)へ供給できるように、エネルギーを液体医薬製剤へ吸収させる。ネブライザーは、液体医薬製剤の入ったタンクを備える容器などの、液体供給システムを有する。液体医薬製剤は、一般的に、溶液内に存在する、または液体培地内に浮遊する活性剤を有する。通常ジェットネブライザーと言われる、ネブライザーの一種では、圧縮ガスが容器の穴から押し出される。圧縮ガスは、液体をノズルから引き出し、引き出された液体は、流動ガスと混合されてエアロゾル飛沫を生成する。そして、無数の飛沫が患者の呼吸器に投与される。通常、振動メッシュ式ネブライザーといわれる、ネブライザーの別の種類では、機械エネルギーなどのエネルギーがメッシュを振動する。このメッシュの振動は、患者の肺に投与されるエアロゾル雲を形成するために、液体医薬製剤を噴霧する。ネブライザーのまた別の種類では、直接振動するため、また医薬製剤を噴霧するために、超音波が生成される。
【0005】
ネブライザーは、(1)エアロゾル化された医薬製剤を、入院患者または歩行不能患者へ、(2)大量のエアロゾル化活性剤、および/または(3)エアロゾル化された医薬製剤を、小児または乾燥粉末および噴射剤の医薬製剤を受け入れられない患者へ供給するために使用される場合が多い。
【0006】
ネブライザーは、エアロゾル化された医薬製剤を、人工呼吸器の助けを借りて呼吸している患者の呼吸器へ供給するのに有用である。しかし、人工呼吸器回路のエアロゾル化された医薬製剤の導入に伴う問題がある。例えば、エアロゾル化された医薬製剤を人工呼吸器の吸気ラインに導入すると、大きな滞留容積が、導入点と患者の肺の間に存在する。それにより、大量のエアロゾル化された医薬製剤が必要となり、製剤のほとんどが呼気ラインで失われる。この問題は、ネブライザーが連続したバイアス流を有する人工呼吸器と併用されると、悪化する。また、人工呼吸器内の大きな滞留容積は、患者へ供給される量を常に再現性よく生成することが難しくなる程、エアロゾル化された医薬製剤が希釈される。
【0007】
参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる、特許文献1、特許文献2、および特許文献3は、対象気管支内治療の方法、機器、および製剤を開示する。エアロゾル化された抗生物質は、人工呼吸器回路へ送達される。ネブライザーなどのエアロゾル発生器は、患者の気管および/または気管内の管の近位になるように、Yピースの下部(例えば、Yの遠位)に設置される。
【0008】
参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる、特許文献4および特許文献5は、噴霧化用アミノグリコシド溶液を開示する。特許文献4は、溶液がトブラマイシンの溶解度、160mg/mlに近づくと、貯蔵の沈殿が予想されると開示している。また、特許文献4は、トブラマイシンの濃度が、臨床的に必要な濃度より高くなると、経済的に不都合であると開示している。さらに、特許文献4は、さらに凝縮された溶液により、溶液のオスモル濃度が高まり、従って、ジェットネブライザーおよび超音波ネブライザーによる製剤の出力が減少すると開示している。特許文献4には、別の、より少ない総容積にさらに凝縮した溶液もまた、不都合であると開示している。さらに、特許文献4は、ほとんどのネブライザーは、1mlの、すなわち、ネブライザーが機能していないために、その最後の1mlの溶液が無効になる、死腔量を有すると開示する。従って、例えば、2mlの溶液の50%が消耗する一方で、5mlの溶液(ネブライザーの最大容積)は、20%のみが消耗する。さらに、特許文献4は、小粒子に変える十分なエアロゾル化薬がないため、粒子の大きい薬または溶液としての薬が、上気道に堆積し、咳を引き起こし、また、気管支けいれんを生じる場合もあると開示する。特許文献4によると、大きなエアロゾル粒子は、薬の伝達も制限する。
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0011358号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0035490号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2004/0035413号明細書
【特許文献4】米国特許第5,508,269号明細書
【特許文献5】米国特許第6,890,907号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、噴霧用抗生物質製剤など、抗生物質製剤の改善に対する必要性が依然残っている。また、抗生物質製剤の単位用量およびキットの必要性も依然残っている。従って、そのような抗生物質製剤の製造方法および/または使用方法の改善に対する必要性も残っている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の開示
本発明の1つ以上の実施形態は、これらの必要性の1つ以上を満たす。従って、本発明は、噴霧用抗生物質製剤などの抗生物質製剤を提供する。また、本発明は、抗生物質製剤の単位用量およびキットを提供する。さらに、本発明は、そのような抗生物質製剤の製造方法、および/または使用方法を提供する。本発明の別の特徴および利点は、以下に続く発明の説明に示され、ある程度前記説明により明らかであり、または、本発明の実施により教示される。本発明は、特に書面による説明および本明細書の請求項で示される機器および方法により、成立および実現される。
【0011】
一側面において、1つ以上の実施形態は、治療有効(予防有効など)量で存在する、抗生物質またはその塩を含む、水性組成物を対象とする。1つ以上の実施形態において、治療有効量は、肺系統への噴霧投与に基づく。
【0012】
一側面において、1つ以上の実施形態は、約90mg/mlから約300mg/mlの量で存在する、抗グラム陰性菌抗生物質またはその塩を含む水性組成物を対象とする。
【0013】
別の側面において、水性組成物は、抗グラム陰性菌抗生物質またはその塩、および任意に気管支拡張剤を含む。
【0014】
さらに別の側面において、水性組成物は、25℃、1.0気圧における抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩の溶解限度の約0.6から約0.9倍の濃度で存在する、抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩を含む。
【0015】
さらに別の側面において、単位用量は、約100mg/mlから約200mg/mlの濃度で存在する、抗グラム陰性菌抗生物質または塩を含む、容器および水性組成物を含む。
【0016】
さらに別の側面において、キットは、抗グラム陰性菌抗生物質またはその塩を含有する第一水性溶液を含む第一容器、および抗グラム陰性菌抗生物質およびその塩を含有する第二水性溶液を含む第二容器を含む。前記第一溶液の濃度および量、またはその両方は、前記第二溶液の濃度および量、またはその両方と異なる。
【0017】
さらに別の側面において、キットは、抗グラム陰性菌抗生物質またはその塩を含有する、第一水性溶液を含む第一容器、および抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩を含有する、第二水性溶液を含む第二容器を含む。
【0018】
別の側面において、単位用量は、容器および、抗生物質とその塩を含む粉末を含み、前記粉末は、約550mgから約900mgの量で存在する。
【0019】
さらに別の側面において、単位用量は、容器および、抗生物質またはその塩を含む粉末を含み、前記粉末は、約150mgから約450mgの量で存在する。
【0020】
さらに別の側面において、キットは、抗グラム陽性菌または抗グラム陰性菌抗生物質、またはその塩から成る第一組成物を含む第一容器、および 水から成る第二組成物を含む第二容器を含む。前記第一組成物および/または前記第二組成物は、浸透圧調整剤を含む。
【0021】
別の側面において、キットは、抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩を含む粉末を含む第一容器、および抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩を含む粉末を含む第二容器を有する。前記第一容器に含まれる、抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩の濃度または量、またはその両方は、前記第二容器に含まれる抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩の濃度または量、またはその両方と異なる。
【0022】
さらなる側面において、キットは、抗グラム陰性菌抗生物質またはその塩を含む溶液を含む第一容器、および抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩を含む粉末を含む第二容器を有する。
【0023】
さらに別の側面において、抗生物質製剤を必要とする患者へ投与する方法は、抗生物質製剤を噴霧し、前記抗生物質製剤を患者の肺へ投与するステップが含まれる。前記抗生物質製剤は、 抗生物質またはその塩を 約90mg/mlから約300mg/mlの 濃度で含む。
【0024】
別の側面において、抗生物質製剤を、それを必要とする患者へ投与する方法は、患者の気管へ管を挿入するステップを含む。前記方法は、患者の肺へ抗生物質製剤を投与するために、抗生物質製剤を噴霧するステップも含む。前記抗生物質製剤は、本質的に、抗グラム陰性菌抗生物質またはその塩、および水から成る。
【0025】
さらに別の側面において、抗生物質製剤を、それを必要とする患者へ投与する方法は、患者の肺へ抗生物質製剤を投与するために、抗生物質製剤を噴霧するステップを含む。前記抗生物質製剤は、25℃、1.0気圧における抗生物質またはその塩の溶解限度の約0.7から約0.9倍の濃度で存在する抗生物質またはその塩から成る。
【0026】
さらなる側面において、抗生物質製剤を、それを必要とする患者へ投与する方法は、抗生物質製剤を製造するために、抗生物質またはその塩を溶液中に溶解するステップを含み、前記抗生物質またはその塩は、25℃、1.0気圧における前記抗生物質またはその塩の溶解限度の約0.6から約0.9倍の濃度で存在する。前記方法は、前記抗生物質製剤を患者の肺へ投与するために、前記抗生物質製剤を噴霧するステップを含む。
【0027】
さらに別の側面において、抗生物質製剤を、それを必要とする患者へ投与する方法は、抗生物質製剤を製造するために、抗生物質またはその塩を溶剤中に溶解するステップを含む。前記方法は、前記抗生物質製剤を患者の肺へ投与するために、前記抗生物質製剤を噴霧するステップも含み、前記噴霧するステップは、溶解後約16時間以内に行われる。
【0028】
別の側面において、方法には、抗生物質またはその塩を含む粉末を製造するステップが含まれる。前記方法は、約60mg/mlから約120mg/mlの濃度を有する溶液を製造するために、抗生物質またはその塩を溶剤中に溶解するステップを含む。前記方法は、粉末を製造するために、前記溶液を凍結乾燥するステップも含む。
【0029】
別の側面において、方法には、抗生物質またはその塩を含む粉末を製造するステップが含まれる。前記方法は、約4.5mlから約5.5mlの容積の溶液を製造するために、抗生物質またはその塩を溶剤中に溶解するステップを含む。前記方法は、乾燥粉末を製造するために、前記溶液を凍結乾燥するステップも含む。
【0030】
別の側面において、粉末を製造するステップを含むいかなる方法は、液体を製造するために、前記粉末を再構成する方法を含んでもよい。同様に、抗生物質(溶液など)を含む液体を製造するステップを含むいかなる方法は、粉末を製造するために、前記液体を除去する方法を含んでもよい。
【0031】
別の側面において、前述のいずれの特徴、側面の説明、または実施形態のうちの二つ以上が組み合わされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
発明の説明
特に明記されない限り、化合物または成分とは、化合物または成分そのもの、および、化合物の混合物など、他の化合物または成分と混合したものが含まれる。
【0033】
本明細書に使用される単数形は、内容が明白に指示されていない限り、複数形を含む。
【0034】
本明細書でいう「一実施形態」、「一バージョン」または「一側面」は、内容から明白な場合を除き、1つ以上のそのような実施形態、バージョンまたは側面を含むものとする。
【0035】
「質量中央粒子径」または「MMD」は、本発明の粉末が一般的に多分散(一連の粒径から成る)であるため、平均粒子径の尺度である。一般的に用いられる多くの技法は、粒子径中央値の測定に使用することが出来るが、本明細書に報告されるMMD値は、遠心沈降により決定される。
【0036】
「空気動力学的中央粒子径」または「MMAD」は、分散粒子の空気動力学的直径の尺度である。前記空気動力学的直径は、エアロゾル化された粉末の沈殿挙動に関する説明に使用され、一般的に空中にある、粒子として同様の沈降速度を有する単位密度領域の直径である。空気動力学的直径は、粒子形態、密度および、粒子の物理的な大きさを含む。本明細書に使用されるとおり、MMADは、カスケードインパクタにより決定されるエアロゾル化された粉末の空気動力学的粒度分布の中点または中央値をいう。
【0037】
抗グラム陰性菌およびグラム陽性菌抗生物質は、グラム陰性菌に対し効力のある抗生物質活性剤(およびそのような活性剤を含む製剤)として交互に使用される。同様に、抗グラム陽性菌およびグラム陽性菌抗生物質は、グラム陽性菌に対し効力のある抗生物質活性剤(およびそのような活性剤を含む製剤)として交互に使用される。
【0038】
さらに「抗生物質」は、文中に示されない限り、抗ウイルス薬および抗真菌薬などの抗感染薬、および抗生物質を含む。
【0039】
「医薬製剤」および「組成物」は、抗生物質を含む製剤として、時々交互に使用される場合もある。
【0040】
総括として、1つ以上の実施形態において、水性組成物は、約100mg/mlから約200mg/mlの量で存在する、抗グラム陰性および/または抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩から成る。
【0041】
1つ以上の実施形態において、水性組成物は、抗生物質またはその 塩、および気管支拡張剤から成る。
【0042】
1つ以上の実施形態において、水性組成物は、25℃、1.0気圧における抗生物質またはその塩の溶解限度の約0.6から約0.9倍の濃度で存在する抗生物質またはその塩から成る。
【0043】
1つ以上の実施形態において、単位用量は、容器および、約100mg/mlから約200mg/mlの濃度で抗グラム陰性菌抗生物質またはその塩を含む水性組成物を含む。
【0044】
1つ以上の実施形態において、キットは、抗グラム陰性菌抗生物質またはその塩を含む第一水性溶液を含む第一容器、および抗グラム陰性菌抗生物質またはその塩を含む第二水性溶液を含む第二容器を有する。前記第一溶液の濃度または量、またはその両方は、前記第二溶液の濃度または量、またはその両方と異なる。
【0045】
1つ以上の実施形態において、キットは、抗グラム陰性菌抗生物質またはその塩を含む第一水性溶液を含む第一容器、および抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩を含む第二水性溶液を含む第二容器を有する。
【0046】
1つ以上の実施形態において、単位用量は、容器および抗生物質またはその塩を含む粉末を含み、前記粉末は、約550mgから約900mgの量で存在する。
【0047】
1つ以上の実施形態において、単位用量は、容器および抗生物質またはその塩を含む粉末を含み、前記粉末は、約150mgから約450mgの量で存在する。
【0048】
1つ以上の実施形態において、キットは、抗グラム陽性菌または抗グラム陰性菌抗生物質またはその塩から成る第一組成物を含む第一容器、および水から成る第二組成物を含む第二容器を有する。前記第一組成物および/または前記第二組成物は、浸透圧調整剤を有する。
【0049】
1つ以上の実施形態において、キットは、抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩を含む粉末を含む第一容器、および抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩を含む粉末を含む第二容器を有する。前記第一容器中の、抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩の濃度または量、またはその両方は、 前記第二容器中の抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩の濃度または量、またはその両方と異なる。
【0050】
1つ以上の実施形態において、キットは、抗グラム陰性菌抗生物質またはその塩を含む溶液を含む第一容器、および抗グラム陰性菌抗生物質またはその塩を含む粉末を含む第二容器を有する。
【0051】
1つ以上の実施形態において、抗生物質製剤を、それを必要とする患者へ投与する方法は、患者の肺系統へ、前記抗生物質製剤を投与するために、抗生物質製剤を噴霧するステップを含む。前記抗生物質製剤は、約100mg/mlから約200mg/mlの濃度で抗グラム陰性菌抗生物質またはその塩を含む。
【0052】
1つ以上の実施形態において、抗生物質製剤を、それを必要とする患者へ投与する方法は、患者の気管へ管を挿入するステップを含む。方法は、抗生物質製剤を患者の肺系統へ投与するために、抗生物質製剤を噴霧するステップも含む。前記抗生物質製剤は、本質的に、抗グラム陰性菌抗生物質またはその塩、および水から成る。
【0053】
1つ以上の実施形態において、抗生物質製剤を、それを必要とする患者へ投与する方法は、患者の肺系統へ抗生物質製剤を投与するために、抗生物質製剤を噴霧するステップを含む。抗生物質製剤は、25℃、1.0気圧における抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩の溶解限度の約0.7から約0.9倍の濃度の抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩から成る。
【0054】
1つ以上の実施形態において、抗生物質製剤を、それを必要とする患者へ投与する方法は、振動メッシュ式ネブライザーを使用して抗生物質製剤を噴霧するステップおよび、抗生物質製剤を、気管内の管を介して患者の肺系統へ投与するステップを含み、ネブライザーは、気管内の管に近接して設置される。
【0055】
1つ以上の実施形態において、抗生物質製剤を、それを必要とする患者へ投与する方法は、抗生物質製剤を製造するために、抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩を溶剤中に溶解するステップを含み、抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩は、25℃、1.0気圧における抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩の溶解限度の約0.6から0.9倍の濃度で存在する。方法は、抗生物質製剤を患者の肺系統へ投与するために、抗生物質製剤を噴霧するステップも含む。
【0056】
1つ以上の実施形態において、抗生物質製剤を、それを必要とする患者へ投与する方法は、抗生物質製剤を製造するために、抗生物質またはその塩を溶剤中に溶解するステップを含む。方法は、抗生物質製剤を患者の肺系統へ投与するために、抗生物質製剤を噴霧するステップも含み、噴霧するステップは、溶解後約16時間以内に行われる。
【0057】
1つ以上の実施形態において、方法は、抗生物質またはその塩を含む粉末を製造するステップを含む。約60mg/mlから約120mg/mlの濃度の溶液を製造するために、抗生物質またはその塩を溶剤中に溶解するステップを含む。方法は、粉末を製造するために、溶液を凍結乾燥するステップを含む。
【0058】
1つ以上の実施形態において、方法は、抗生物質またはその塩を含む粉末を製造するステップを含む。約4.5mlから約5.5mlの容積の溶液を製造するために、抗生物質またはその塩を溶剤中に溶解するステップを含む。方法は、乾燥粉末を製造するために、溶液を凍結乾燥するステップを含む。
【0059】
従って、1つ以上の実施形態のおいて、本発明は、濃縮抗生物質製剤に関する。抗生物質製剤は、25℃、1.0気圧における抗生物質またはその塩の溶解限度の約0.7から約0.8倍など、約0.6から0.9倍の濃度範囲で存在する、抗生物質またはその塩から成る水性組成物を含んでもよい。
【0060】
1つ以上の実施形態における、有効性に補正された抗生物質の濃度は、約60mg/mlから約140mg/mlまたは約80mg/mlから約120mg/mlなど、約40mg/mlから約200mg/mlの範囲である。例えば、抗グラム陰性菌抗生物質またはその塩の場合、有効性に補正された濃度は、約90mg/mlから約200mg/ml、約110mg/mlから約150mg/mlまたは約120mg/mlから約140mg/mlなど、約40mg/mlから約200mg/mlの範囲である。別の例として、抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩の場合、有効性に補正された濃度は、約80mg/mlから約120mg/mlなど、約60mg/mlから約140mg/mlの範囲である。
【0061】
水性組成物は、本質的に、経肺投与などの生理的投与に適合するpHを有する。例えば、水性組成物は、約4から6など、約3から約7のpHを有してもよい。
【0062】
また、水性組成物は、本質的に、経肺投与などの生理的投与に適合するオスモル濃度を有する。1つ以上の実施形態において、水性組成物は、約120mOsmol/kgから約500mOsmol/kgまたは約150mOsmol/kgから約300mOsmol/kgなど、約90mOsmol/kgから約500mOsmol/kgの範囲のオスモル濃度を有してもよい。
【0063】
1つ以上の実施形態において、水性組成物は、安定である。例えば、水性組成物が25℃で一年間あるいは二年間保存されても、水性組成物中に沈殿物が生じない場合もある。
【0064】
抗生物質またはその塩の薬効力は、約500μg/mgから約1100μg/mgである。1つ以上の実施形態において、ゲンタマイシンなどの抗グラム陰性菌抗生物質またはその塩の薬効力は、約600μg/mgから約1000μg/mgなど、一般的に約500μg/mgから約1100μg/mgである。バンコマイシンなどの抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩の薬効力は、約950μg/mgから約1050μg/mgなど、一般的に約900μg/mgから約1100μg/mgである。
【0065】
抗生物質またはその塩のクロマトグラフの純度水準は、約85%を超える、約90%を超える、または約95%超えるなど、本質的に約80%を超える。この点において、本質的に、約5%を超えない、または約2%超えないなど、約10%を超えない不要不純物は存在しない。例えば、重金属の重量は、約0.004wt%より少ない、約0.003wt%より少ない、約0.002wt%より少ない、あるいは約0.001wt%より少ないなど、本質的に約0.005wt%より少ない。
【0066】
ゲンタマイシンの場合、組成物は、ゲンタマイシンの総量に対して約30%から約55%、約35%から約50%または約40%から約45%など、本質的に、約25%から約50%のゲンタマイシンCを含有する。組成物は、ゲンタマイシンの総量に対して約15%から約30%、約20%から約25%など、本質的に、約10%から約35%のゲンタマイシンC1aを有する。組成物は、ゲンタマイシンの総量に対して約30%から約50%、約30%から約45%または約30%から約40%など、本質的に、約25wt%から約55wt% のゲンタマイシンC2およびC2aを含有する。
【0067】
アミカシンを含む、本発明の実施形態において、組成物は、アミカシンの総量に対して約30%から約55%、約35%から約50%または約40%から約45%など、本質的に約25%から約50%のアミカシンを含有する。
【0068】
ほとんどすべての抗グラム陽性菌抗生物質、抗グラム陽性菌抗生物質またはその組み合わせを使用してもよい。また、抗生物質は、広範スペクトルの効力または混合スペクトルの効力を有するそれらの抗生物質を含んでもよい。ポリエン物質、特にアンフォテリシンBなどの抗真菌剤も、本明細書の使用に適している。抗グラム陰性菌抗生物質またはその塩の例は、アミノグリコシドまたはその塩を含むがそれらに限定されない。アミノグリコシドまたはその塩の例は、ゲンタマイシン、アミカシン、カナマイシン、ストレプトマイシン、ネオマイシン、ネチルミシン、パラメシン、トブラマイシン、それらの塩、およびそれらの組み合わせを含む。例えば、硫酸ゲンタマイシンは、ミクロモノスポラ・パープレア(Micromonospora purpurea)の成長により生成される抗生物質の硫酸塩またはその塩の混合物である。硫酸ゲンタマイシン、USPは中国福建省福州市にある

(Fujian Fukang Pharmaceutical Co.,LTD)より入手することが出来る。アミカシンは、一般的に硫酸塩として提供され、例えば、ブリストル・マイヤーズスクイブより入手することができる。アミカシンは、カナマイシンなどの関連物質を含んでよい。
【0069】
抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩の例は、マクロライドまたはその塩を含むが、それらに限定されない。マクロライドまたはその塩の例は、バンコマイシン、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、それらの塩、およびそれらの混合物を含むが、それらに限定されない。例えば、塩酸バンコマイシンは、以前に指定されたストレプマイセス・オリエンタリス(Streptomyces orientalis)である、アミコラトプシスオリエンタリス(Amycolatopsis orientalis)の特定の株により生成される抗生物質、バンコマイシンの塩酸塩である。塩酸バンコマイシンは、主にバンコマイシンBの一塩酸塩を含む関連物質の混合物である。 全ての糖ペプチド抗生物質のように、塩酸バンコマイシンは、中核ヘプタペプチドを含む。塩酸バンコマイシンであるUSPは、デンマーク・コッペンハーゲンにあるアルファーマ社より入手することができる。
【0070】
一部の実施形態において、組成物は、抗生物質および1つ以上の付加活性剤から成る。本明細書に記載の付加活性剤は、時に効果的な、薬理効果を提供する、薬剤、薬または化合物を含む。これは、食品、補助食品、 栄養物、薬物、ワクチン、ビタミン、およびその他の効果的薬剤を含む。本明細書では、これらの用語は、患者の局部的あるいは全身的作用を発現する、いかなる生理的または薬理学的活性物質を含む。本明細書に記載の医薬製剤へ取り込む活性剤は、末梢神経、アドレナリン受容体、コリン作動性受容体、骨格筋、循環系、平滑筋、血液循環系、シナプス部位、神経効果器接合部位、内分泌系およびホルモン系、免疫系、生殖器系、骨格系、オータコイド系、消化器系および排せつ系、ヒスタミン系、および中枢神経系に作用する薬を含むが、それらに限定されない、無機または有機化合物でよい。
【0071】
付加活性剤の例は、抗炎症剤、気管支拡張剤、およびその混合物を含むが、それらに限定されない。
【0072】
気管支拡張剤の例は、βアゴニスト、抗ムスカリン性剤、ステロイド、およびその混合物を含むが、それらに限定されない。例えば、ステロイドは、硫酸アルブテロールなどのアルブテロールを含んでよい。
【0073】
活性剤は、例えば、睡眠薬および鎮静剤、精神賦活剤、精神安定剤、呼吸器官薬、抗けいれん剤、筋肉弛緩剤、抗パーキンソン剤(ドーパミンアンタゴニスト)、鎮痛剤、抗炎症剤、抗不安剤(抗不安薬)、食欲抑制剤、抗偏頭痛剤、筋肉収縮剤、付加抗感染剤(抗ウイルス、抗真菌、ワクチン)、抗関節炎剤、抗マラリア薬、制吐薬、抗てんかん剤、サイトカイン、増殖因子、抗癌剤、抗血栓剤、抗高血圧薬、心臓血管薬、抗不整脈薬、抗酸化剤、抗ぜんそく剤、避妊薬を含むホルモン剤、交感神経様作用薬、利尿薬、脂質抑制剤、抗アンドロゲン剤、抗寄生虫薬、抗凝固剤、組織形成剤、抗新生物薬、血糖降下剤、栄養剤および栄養補足剤、成長補助剤、抗腸炎剤、ワクチン、抗体、診断用薬、および造影剤を含む。活性剤は、吸入により投与された場合、局部的または全身に作用する。
【0074】
活性剤は、小分子、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、多糖、ステロイド、生理的効果を引き出すことが出来るタンパク質、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、脂質、電解質などを含むが、それらに限定されない、多くの構造的分類の1つに該当する。
【0075】
本発明の使用に適した活性剤の例は、1つ以上の、カルシトニン,アンフォテリシンB、エリスロポエチン(EPO)、VIII因子、IX因子、セレデース、セレゼイム、シクロスポリン、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、トロンボポエチン(TPO)、アルファ−1プロティナーゼ阻害剤、エルカトニン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)、成長ホルモン、ヒト成長ホルモン(HGH)、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、ヘパリン、低分子量ヘパリン(LMWH)、インターフェロン・アルファ、インターフェロン・ベータ、インターフェロン・ガンマ、インターロイキン−1受容体、インターロイキン−2、インターロイキン−1受容体拮抗薬、インターロイキン−3、インターロイキン−4、インターロイキン−6、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、IX因子、インスリン、プロインスリン、インスリン類似体(例えば、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第5、922、675号に記載のモノ−アシル化インスリン)、アミリン、C−ペプチド、ソマトスタチン、オクトレオチドを含むソマトスタチン類似体、バソプレッシン、卵胞刺激ホルモン(FSH)、インスリン様成長因子(IGF)、インスリントロピン、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、神経成長因子(NGF)、組織成長因子、ケラチノサイト成長因子(KGF)、グリア成長因子(GGF)、腫瘍壊死因子(TNF)、内皮成長因子、上皮小体ホルモン(PTH)、グルカゴン様ペプチドサイモシンアルファ1、I1b/IIIa阻害剤、アルファ−1抗トリプシン、ホスホジエステラーゼ(PDE)化合物、VLA−4阻害剤、ビスフォスフォネート、呼吸器合胞体ウイルス抗体、嚢胞性線維性膜貫通調節因子(CFTR)遺伝子、デオキシリボヌクレアーゼ(Dnase)、殺菌性/透過性増強タンパク質(BPI)、抗サイトメガロ・ウイルス抗体 13−シスレチノイン酸、オレアンドマイシン、トロレアンドマイシン、ロキシスロマイシン、クラリスロマイシン、ダベルシン、アジスロマイシン、フルリスロマイシン、ディリスロマイシン、ジョサマイシン、スピラマイシン、ミデカマイシン、ロイコマイシン、ミオカマイシン、ロキタマイシン、アンダジスロマイシン、およびスウィノライドA;シプロフロキサシン、オフロキサシン、レボフロキサシン、トロバフロキサシン、アラトロフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、エノキサシン、グレパフロキサシン、ガチフロキサシン、ロメフロキサシン、スパルフロキサシン、テマフロキサシン、ペフロキサシン、アミフロキサシン、フレロキサシン、トスフロキサシン、プルリフロキサシン、イルロキサシン、パズフロキサシン、クリナフロキサシン、およびシタフロキサシンなどのフルオロキノロン類、テイコプラニン、ランポラニン、ミデプラニン、コリスチン、ダプトマイシン、グラミシジン、コリスチンメタンコリスチメタン、ポリミキシンBなどのポリミキシン、カプレオマイシン、バシトラシン、ペネム;ペニシリンG、ペニシリンVなどのペニシリナーゼ感受剤、メチシリンなどのペニシリン耐性剤、オキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フロサシリン、ナフシリンを含むペニシリン類;アンピシリン、アモキシシリン、およびヘタシリン、シリン、および、ガランピシリンなどのグラム陰性菌活性剤;カルベニシリン、チカルシリン、アズロシリン、メズロシリン、およびピペラシリンなどの抗緑膿菌性ペニシリン;セフポドキシム、セスプロジル、セフトブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セファロチン、セファピリン、セファレキシン、セファラドリン、セフォキシチン、セファマンドール、セファゾリン、セファロリジン、セファクロール、セファドロキシル、セファログリシン、セフロキシム、セフォラナイド、セフォタキシム、セファトリジン、セファセトリル、セフェピム、セフィキシム、セフォニシド、セフォペラゾン、セフォテタン、セフメタゾール、セフタジジム、ロラカベフ、およびモキサラクタムなどのセファロスポリン類、アズトレオナムなどのモノバクタム;および、イミペネムなどのカルバペネム、メロペネム、イセチオ酸ペンタミジン、リドカイン、硫酸メタプロテレノール、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、トリアムシノロン・アセトアミド、ブデソニド・アセトニド、フルチカゾン、臭化イプラトロピウム、フルニソリド、クロモグリク酸ナトリウム、酒石酸エルゴタミン、および適用できる、類似体、作動薬、拮抗薬、阻害剤、および、上記のその薬剤として許容される塩形態を含むがそれらに限定されない。ペプチドおよびタンパク質に関し、本発明は、合成型、天然型、グリコシル化型、PEG化型、および、生物学的に活性グラグメント、誘導体、およびその類似体を含むことを目的とする。
【0076】
本発明で使用する活性剤は、さらに、多くの核酸分子として、核酸、ベクター、関連ウイルス粒子、プラスミドDNAまたはRNA、または、細胞のトランスフェクションまたは転換に適した、つまり、アンチセンスを含む遺伝子治療に適した他の核酸構造を含む。さらに、活性剤は、ワクチンとしての使用に適した弱毒化生ウイルスまたは死滅ウイルスを含む。他の有用な薬剤は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる、医師用卓上参考書(最新版)に列挙される薬剤を含む。
【0077】
抗生物質または医薬製剤の別の活性剤の量は、望ましい結果を得るための、一回の単位用量における活性剤の治療的または予防的有効量を供給するために必要な量である。実際には、特定の薬剤、その活性、治療される症状の重症度、患者集団、投与条件、および望ましい治療効果により、この量は大幅に異なる。組成物は、約2wt%から約95wt%または約5wt%から約85wt%など、一般的に約1wt%から約99wt%の範囲の活性剤を含み、組成物に含まれる添加剤の相対量により決まる。特に、本発明の組成物は、0.01mg/日から75mg/日または0.10mg/日から50mg/日の用量など、0.001mg/日から100mg/日の用量で供給される活性剤に有用である。1つ以上の活性剤は、本明細書に記載の製剤に取り込まれる場合もあり、「薬剤」の用語の使用は、二つ以上のそのような薬剤を決して除外しないものであると理解されるものである。
【0078】
一般的に、組成物は、過剰な賦形剤を持たない。1つ以上の実施例において、水性組成物は、本質的に、アミカシンまたはゲンタマイシン、またはその両方などの抗グラム陰性菌抗生物質、および/またはその塩、および水から成る。
【0079】
さらに、1つ以上の実施例において、水性組成物は、保存剤を含まない。この場合、水性組成物は、メチルパラベンおよび/またはプロピルパラベンを含まない。さらに、水性組成物は、生理的食塩水を含まない。
【0080】
1つ以上の実施例において、組成物は、抗感染薬および賦形剤を含む。組成物は、対象に毒性的副作用を及ぼさず肺に取り込まれる、薬剤として許容される賦形剤またはキャリアを含んでもよい。活性剤のほかに、医薬製剤も、1つ以上の経肺投与に適した医薬賦形剤を任意に含んでもよい。存在する場合、一般的に、これらの賦形剤は、安定性、表面改質、効力増強または組成物などの供給等を含む所望の機能を行うための十分な量の組成物内に存在する。従って、存在する場合、賦形剤は、約0.5wt%から約80wt%、約1wt%から約60wt%など、約0.01wt%から約95wt%の範囲である。望ましくは、そのような賦形剤は、例えば活性剤の、さらに効果的および再現性の送達をある程度行うことにより、および/または製造を促進することにより、活性剤組成物の特性をさらに向上させる働きをする。1つ以上の賦形剤は、製剤に含まれる活性剤の濃度を低減することが望ましい場合に、増量剤として機能するために供給される。
【0081】
例えば、組成物は、塩化ナトリウムなどの、1つ以上のオスモル濃度調整剤を含んでよい。例えば、塩化ナトリウムは、溶液のオスモル濃度を調節するために、塩酸バンコマイシンの溶液中に添加される。1つ以上の実施形態において、水性組成物は、本質的に、塩酸バンコマイシンなどの抗グラム陽性菌抗生物質、オスモル濃度調整剤、および水から成る。
【0082】
本発明の医薬製剤に有用な薬剤賦形剤および添加剤は、単独または混合で存在する、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、非生体高分子、生体高分子、糖類などの炭水化物、アルジトールなどの誘導体化糖類、アルドン酸、エステル化糖類、およびポリマー糖を含むがそれらに限定されない。
【0083】
典型的なタンパク質賦形剤は、ヒト血清アルブミン(HSA)などのアルブミン、組み換えヒトアルブミン(rHA)、ゼラチン、カゼイン、ヘモグロビン、などを含む。緩衝能力にも機能する適切なアミノ酸(本発明のdileucyl−ペプチドを除く)は、アラニン、グリシン、アルギニン、ベタイン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、システイン、リジン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、フェニルアラニン、アスパルテーム、チロシン、トリプトファンなどを含む。望ましいのは、分散剤として機能するアミノ酸およびポリペプチドである。この分類に該当するアミノ酸は、ロイシン、バリン、イソロイシン,トリプトファン、アラニン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、ヒスチジン、およびプロリンなどの疎水性アミノ酸を含む。
【0084】
本発明における使用に適した炭水化物賦形剤は、例えば、フルクトース, マルトース,ガラクトース,グルコース,D−マンノース、ソルボースなどを含む単糖類;ラクトース,スクロース、トレハロース、セロビオースなどを含む二糖類;ラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、でんぷんなどを含む多糖類;およびマンニトール、キリシトール、マルチトール、ラクチトール、キリシトール・ソルビトール(グルシトール)、ピラノシル・ソルビトール、ミオイノシトールなどを含むアルジトール類を含む。
【0085】
医薬製剤は、バッファまたはpH調節剤、本質的に、有機酸または有機塩基から製造された塩も含む。典型的なバッファは、クエン酸、アスコルビン酸、グルコン酸、炭酸、酒石酸、コハク酸、酢酸、またはフタル酸の有機酸塩、トリスバッファ、塩酸トロメタミンバッファまたはリン酸バッファを含む。
【0086】
医薬製剤は、高分子賦形剤/添加剤(例:ポリビニルピロリドン)、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロースおよび誘導体化セルロース、フィコール(ポリマー糖)、ハイドロキシルエチルスターチ、デキストレート類(例:2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンおよびスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリンなどの、シクロデキストリン)、ポリエチレン・グリコール、およびペクチンも含む。
【0087】
医薬製剤は、香料添加剤、味覚マスキング剤、無機塩(例:塩化ナトリウム)、抗菌剤(例:塩化ベンザルコニウム)、甘味料、抗酸化剤、静電防止剤、界面活性剤(例:「TWEEN20」および「TWEEN80」などのポリソルベート)、ソルビタンエステル、脂質(例:レシチンおよびホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンなどの他のリン脂質)、脂肪酸および脂肪エステル(例:コレステロール)、およびキレート剤(例:EDTA、亜鉛、その他の適切な陽イオン)をさらに含む。本発明により組成物への使用に適した別の医薬賦形剤および/または添加剤は、「Remington:The Science&Practice of Pharmacy」、第19版、Williams&Williams,(1995)および、「医師用卓上参考書」、第52版、Medical Economics、ニュージャージー州モントベール、(1998)に列挙され、その両方は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0088】
MDI使用では、医薬製剤は、高い安定性を有するために処理される。多くの実験は、HFA推進剤に含まれる界面活性剤の溶解度を向上し、懸濁安定性の向上に取り組んできた。そのために、米国特許第5,118、494号、WO91/11173およびWO92/00107は、懸濁安定性を向上するための、HFA溶解フッ素化界面活性剤の使用を開示する。HFA推進剤と他のペルフルオロ共溶剤の混合物も、WO91/04011に開示される。安定性の別の実験は、非フッ素化界面活性剤の添加を伴った。この点においては、米国特許第5、492、688号に、親水性界面活性剤(9.6より大きいまたは同等の親水性―親油性バランスを有する)は、HFA中に薬物懸濁を安定させるための、十分な溶解度を有すると開示される。標準非フッ化MDI界面活性剤(例:オレイン酸、レシチン)の溶解度の増加は、米国特許第5,683,677号および5,605,674号、およびWO95/17195に記載の、アルコールなどの共溶剤の使用により達成できると報告されている。MDIの特に有用な種類は、ハイドロフルオロアルカン(HFA)推進剤を使用するものである。HFA推進剤は、アミノグリコシド抗生物質の製剤および組成物などの活性剤の安定分散液と使用されることにさらに適している。適切な推進剤、製剤、分散液、方法、機器、およびシステムは、米国特許6,309,623号に開示されるものを含み、その開示は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。全ての、上記参照は、その全体に参照することにより、本明細書に一部を構成する。
【0089】
1つ以上の実施形態において、組成物は、約10μmより小さい、約7.5μmより小さい、約5μmより小さい、および通常約0.1μmから約5μmの空気動力学的中央粒子径など、肺胞への浸透を可能にするために選択される粒子径または液滴直径を有するエアロゾルを含む。
【0090】
本発明の組成物は、当業者に周知および入手可能な様々な方法および手技のいずれかにより製造される。この点において、粉末を製造するために抗生物質を凍結乾燥する方法、および/または抗生物質を溶剤中に溶解する方法などの手順は、当業者に周知である。
【0091】
例えば、塩酸アミカシンまたはゲンタマイシンなどの抗生物質の溶液は、以下の手順を用いて製造される。基本的に、製造装置は、使用前に消毒される。例えば注射液などの最終容積(例:溶剤の70%)の一部は、適切な容器中に加えられる。それから、抗生物質またはその塩が加えられる。抗生物質またはその塩は、溶解するまで混ぜ合わせられる。付加溶剤は、最終バッチ容積になるように加えられる。バッチは、0.2μmのフィルターを通り、消毒済受入容器にろ過される。充填器具は、バッチをバイアル(例:10mlバイアル)に充填する前に消毒される。
【0092】
例として、上記記載の殺菌消毒は、以下を含む。5リットル型1ガラス瓶および蓋は、オートクレーブバックに置かれ、オートクレーブを使用して、高温(例:121℃)で15分間殺菌される。同様に、バイアルは、適切な台に置かれ、オートクレーブバック内に挿入され、オートクレーブを使用して、高温(例:121℃)で15分間殺菌される。また、同様に、ストッパーはオートクレーブバックに置かれ、オートクレーブを使用して、高温(例:121℃)で15分間殺菌される。殺菌前に、殺菌フィルターを、チューブ(例えば、長さ2mmの7mmx13mmのシリコンチューブ)に取り付ける。充填ラインは、オートクレーブバックに置かれ、オートクレーブを使用して、高温(例:121℃)で15分間殺菌することで処理される。
【0093】
上記記載のろ過は、層流ワークエリア内のろ過を含む。受取ボトルおよびフィルターは、層流ワークエリア内に設置する。
【0094】
上記記載の充填も、層流制御下で行われる。充填ラインは、開封されたまま受入ボトル内に設置される。無菌バイアルおよびストッパーは層流制御下で、開封される。各バイアルは、例えば、目標充填量まで充填され、栓がされる。フリップオフカラーが各バイアルに取り付けられる。密閉バイアルは、バイアル漏れ、正しい密閉度、ひび割れに関して検査される。
【0095】
別の例では、1つ以上の抗生物質(例:バンコマイシン、ゲンタマイシンまたはアミカシン)および/またはその塩は、保管用の粉末を製造するために、抗生物質を凍結乾燥することにより製造される。それから粉末は、使用前に再構成される。この手技は、抗生物質が溶液中で不安定の場合に使用される。
【0096】
1つ以上の実施形態において、粉末製造過程は、凍結乾燥される溶液の製造から開始される。例えば、アミカシン、ゲンタマイシンまたはバンコマイシンなどの抗生物質またはその塩は、約90mg/mlから約130mg/mlまたは約100mg/mlから約124mg/mlなど、約80mg/mlから約150mg/mlの範囲の抗生物質濃度を有する溶液を製造するために、溶剤中に溶解される。凍結乾燥される溶液は、約5mlなど、約4.5mlから約5.5mlの容積範囲を有する。
【0097】
別の実施形態において、粉末製造過程は、アミカシンまたはその塩など、 抗グラム陰性菌抗生物質またはその塩の溶液の製造から開始される。抗生物質および/または塩は、溶液を製造するために、約90mg/mlから約120mg/mlまたは約100mg/mlから約110mg/mlなど、約80mg/mlから約130mg/mlの範囲の抗生物質濃度を有する溶液中に溶解される。凍結乾燥される溶液は、約5mlなど、約4.5mlから約5.5mlの容積範囲を有する。
【0098】
凍結乾燥される溶液用の溶剤は水から成る。溶液は、賦形剤を含まない。例えば、溶液は、抗凍結剤を含まない。
【0099】
1つ以上の実施形態において、医薬製剤(例えば、塩酸バンコマイシン)の適切量(例:最終溶液 1リットルあたり120g)は、窒素気泡下で、例えば、注射液の理論的総量の約75%に溶解される。溶解時間は記録され、その状態が測定される。
【0100】
それから、WFIで最終容積へと希釈され、最終容積が確認される。密度、pH、内毒素、バイオ負荷、およびUV内容は、殺菌濾過前後共に測定される。
【0101】
溶液は、凍結乾燥前にろ過される。例えば、0.22μmの2重ろ過は、充填前に行われる。フィルターは、ろ過前後に、完全性および沸点の検査が行われる。
【0102】
事前洗浄され、加熱滅菌されたバイアルは、自動充填ラインを使用して、無菌で、バイアルあたり5mlの目標容量まで充填され、それから軽く蓋がしめられる。充填量の過程検査は、15分毎に、充填重量を確認して行われる。
【0103】
凍結乾燥は、一般的に、溶解後約8時間以内または約4時間以内など、約72時間以内に行われる。
【0104】
1つ以上の実施形態において、凍結乾燥は、凍結溶液を製造するために、溶液を凍結するステップを有する。凍結溶液は、約−45℃など、一般的に、約−40℃から約−50℃の初期温度で保たれる。初期温度期間中、凍結溶液周辺の圧力は一般的に大気圧である。初期温度期間は、約1.5時間から約3時間または約2時間など、通常約1時間から約4時間の範囲である。
【0105】
凍結乾燥は、さらに凍結溶液の温度を、約15℃など、約10℃から約20℃におよぶ、第一設定温度まで上げるステップを含む。初期温度から第一設定温度まで熱ランプの時間は、約7時間から約9時間など、通常約6時間から約10時間の範囲におよぶ。
【0106】
第一設定温度期間中、溶液周辺の圧力は、 約150μbarから約225μbarなど、通常約100μbarから約250μbarの範囲におよぶ。溶液は、約24時間以上、約20時間から約30時間におよび第一設定温度で保たれる。
【0107】
凍結乾燥は、溶液を約30℃など、約25℃から約35℃の第二設定温度まで上昇させるステップをさらに含む。第二設定温度期間中、凍結溶液周辺の圧力は、 約150μbarから約225μbarなど、 一般的に約100μbarから約250μbarの範囲におよぶ。溶液は、約10時間から約20時間におよび第二設定温度で保たれる。
【0108】
上記を考慮して、凍結乾燥サイクルは、例えば、約20℃から−45℃の65分間の凍結ランプに続き、例えば−45℃で2時間液体窒素に浸すことを含む。 一時乾燥は、例えば約−45℃から15℃で8時間の熱ランプに続き、例えば15℃で24時間、200μbarで保たれた温度により達成される。二次乾燥は、例えば15℃から30℃で15分間の熱ランプ続き、例えば30℃で15時間、200μbarで保たれた温度により達成される。凍結乾燥サイクル完了後、真空状態が無菌窒素により破壊され、バイアルが自動的に密閉される。
【0109】
バンコマイシン粉末またはアミカシン粉末などの粉末の含水量は、一般的に約7wt%以下であり、例えば、約5wt%より少ない、約4wt%より少ない、約3wt%より少ないまたは約2wt%または1wt%より少ない量である。
【0110】
バンコマイシン粉末またはアミカシン粉末などの粉末のクロマトグラフ純度レベルは、通常約80%以上であり、例えば、約90%以上、約95%以上、または約97%以上である。これに関して、一般的に、約7%以上または 約 5%以上の不純物など、約10%以上の主要不純物は存在しない。例えば、重金属の質量は、通常約0.005wt%以下であり、例えば、約0.004wt%以下、約0.003wt%以下、約0.002wt%以下、または約0.001wt%以下である 。
【0111】
粉末は、手動での撹拌により約60秒より短い時間で、例えば、約30秒より短い、15秒より短い、または10秒より短い時間で、25℃で1.0気圧における水で再構成できる能力を有する。
【0112】
通常粉末は、再構されうる大きい比表面積を有する。比表面積は、約8m/gから約15m/gまたは約10m/gから約12m/gなど、一般的に、約5m/gから約20m/gの範囲である。
【0113】
水で再構成の際、抗生物質溶液(バンコマイシンまたはアミカシンなど)は、 pH が約3から6など、一般的に、 pH は約2.5から約7の範囲にある。特に、アミカシンは、 pH が約5.5から約6.3の 範囲にある。
【0114】
噴霧用製剤の使用以外に、本発明の製剤は、非経口投与など別の経路で投与されることもできる。
【0115】
1つ以上の実施形態は、特にヒトなど、生物における、院内感染を含む肺感染の治療または予防方法に関する。方法は、一般的に対象動物または必要としているヒト患者に、抗生物質またはその塩の治療的または予防的効果量を、エアロゾルとして投与するステップを含む。様々な抗生物質は、本発明による組み合わせで、順次に供給される。1つ以上の実施形態において、気道に供給される量は、そのような量が全身的に供給された場合、治療的に効果となるためには不十分であり、毒性を誘発するためには、もちろん不十分である。同時に、そのような実施形態において、そのような量は、最小抑制濃度(「MIC」)の約10−100倍より高い抗生物質の喀痰レベルが検出される。
【0116】
1つの特定の実施形態において、医薬製剤は、人工呼吸器関連の肺炎(VAP)および/または院内感染の肺炎(HAP)および/または地域感染型の肺炎(CAP)および別種の肺炎、および別の呼吸器感染または症状を治療または予防するために,人工呼吸器をつけている患者に投与するための抗生物質を有する。そのような投与方法は、米国特許出願第10/430、658;10/430、765;および10/991、092号、および米国特許仮出願第60/378、475;60/380、783;60/420、429;60/439、894;60/442、785;60/682、099号、および米国公開特許広報第2005/021766号に記載されており、これら全ては参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0117】
一側面において、水中に含有する粒子は内壁に凝結する傾向があるため、噴霧された粒子は有意な吸湿拡張を受けることから阻止される。例えば、方法は、噴霧開始前の所定量による人工呼吸器回路内の湿度を低減するステップを含む。本実施形態において、湿度は約3μm以下または約1.5μm以下のMMADを促進する。別の実施形態において、各エアロゾル粒子は、実質的に不吸湿性エンベロープに包まれて送達される。
【0118】
もちろん、実施形態は、直径が大きい場合にも使用することができる。また、場合によっては、本発明は粒子または内壁の表面電荷の調節を意図とする。例えば、機器の表面電荷が重要であると想定する場合、本発明は、機器コネクタの部品が金属性である(または少なくとも金属でコーティングされている)実施形態を意図する。あるいは、表面電荷を調節するために、部品は、薬剤(例:湿潤剤、洗剤、石鹸)により処理される。
【0119】
一側面において、方法は、定置機器を設置するために、機器のエアロゾル送出端部を前記患者の気管内に挿入するステップを含む。抗生物質の組成物は、組成物が、機器の前記エアロゾル送出端部を介し、患者へ供給される条件化で噴霧され、エアロゾルは、まず患者の気管に接触する(従って、中咽頭を通過する)。方法は、抗生物質の混合物を投与するステップを有し、特に挿管された患者に適している。
【0120】
別の側面において、投与する方法は、エアロゾル発生器、および/または、米国公開特許広報第20050235987、20050211253、20050211245、20040035413、および20040011358に開示されているような、エアロゾル化された薬剤の投与システムを経て自由に呼吸する患者へ投与するステップを含み、それらの開示は参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0121】
そのような機器は、相動的または非相動的に薬剤を供給する。それに加えまたはその代わりに、そのような機器は、エアロゾル化薬剤を蓄積および定期的に放出するために、室または容器を内蔵する。1つ以上の実施形態において、エアロゾル化された薬剤は、アミカシンを有する。
【0122】
1つ以上の実施形態において、抗生物質薬剤を投与する方法は、抗生物質製剤を製造するために、抗生物質またはその塩を溶剤中に溶解するステップを有する。噴霧は、溶解後約12時間以内または8時間以内など、通常約16時間以内に行われる。
【0123】
別の側面において、特に「一定流量」の呼吸器に対し、本発明は、出来れば低減された流速で、供給事象を人工呼吸器周期の吸息相に制限することを意図する。したがって、一実施形態において、噴霧は、呼吸周期の吸息相中(または固定関係中)に作動する。
【0124】
本発明は、特定容量に限定されるものではない。一方、本明細書に記載されるエアロゾルシステムの有効性および方法は、全身に投与された場合には一般に有効となるためには少量すぎるが、とはいえ、適切且つ薬剤として許容される製剤で直接気道へ投与された場合には効果的である量の供給に適用される。重要なことには、有効性が増大されるとはいえ、ある実施形態においては、用量の制御を重要視して有効性を増大しないこともある。従って、供給がより再現的である場合には、より低い有効性が望ましいものと示唆される。
【0125】
本発明は、特定の有機体のみを殺す抗菌剤に制限するものではない。本発明は、多種多様な有機体を扱う薬品および混合薬を意図する。1つ以上の実施形態において、本発明は、特にP.緑膿菌(P. aeruginosa)、S.ブドウ球菌(S. Aureus)、Hインフルエンザ(H. Influenza)、およびS肺炎(S. pneumoniae) および/または、メチシリン耐性Sブドウ球菌(methicillin-resisatant S. Aureus)などの抗生物質耐性細菌、アセチノバクター種による感染症の治療に効果的な薬品または混合薬を意図する。
【0126】
さらに、本発明の特定実施形態が、挿管された患者に関連して提示されるとはいえ、感染症の危険のある別の患者は、本発明の組成物、方法、および機器により治療可能であると意図する。例えば、高齢者(特に老人ホームにいる高齢者)、競技する馬、犬、および猫(ショーまたは競技動物)、頻繁に移動する動物(例:サーカスの動物)、狭い場所にいる動物(例:動物園または農場)、一般のヒトおよび動物は、肺感染の危険がある。本発明は、そのような個体の気管および/または肺の奥深くへエアロゾルを供給することを意図し(予防的(例:症状発現前)および急性症状(例:症状出現後))、前記エアロゾルは抗菌剤、特に上記記載の抗生物質混合薬を有することを特徴とする。
【0127】
一実施形態において、本発明は、適切な薬剤を、ARDSまたは慢性閉塞性肺疾患(COPD)と診断された患者へ投与する方法を意図する。
【0128】
1つ以上の実施形態は、容器および組成物を含む単位用量を対象とする。
【0129】
容器の例は、バイアル、注射器、アンプル、およびブローフィルシールを含むがそれらに限定されない。例えば、バイアルは、クロロブチルゴムシリコン処理ストッパー付、無色タイプIホウケイ酸ガラスISO6R10mLおよび有色プラスチックカバー付、剥ぎ取り式アルミニウム・キャップである。
【0130】
単位用量の組成物量は、約3mlから約10ml、約4mlから約8ml、または約5mlから約6mlなど、一般的に約2mlから約15mlの範囲である。
【0131】
薬効力に調節された単位用量の抗生物質量は、約400mgから約750mgなど、一般的に約150mgから約900mgの範囲である。例えば、抗グラム陰性菌抗生物質またはその塩の量は、約400mgから約750mgの範囲である。別の例として、抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩の量は、約150mgから約450mgまたは約550mgから約900mgの範囲である。
【0132】
1つ以上の実施形態はキットを対象とする。例えば、キットは、抗グラム陰性菌抗生物質またはその塩を有する第一水性溶液を含む第一容器、および抗グラム陰性菌抗生物質またはその塩を有する第二水性溶液を含む第二容器を含む。第一水性溶液の濃度または量、またはその両方は、第二水性溶液の濃度または量、またはその両方と異なる。例えば、第一水性溶液の量は、約2mlから約5mlであり、第二水性溶液の量は、約5mlから約8mlである。
【0133】
1つ以上の実施形態において、キットは、抗グラム陰性菌抗生物質またはその塩を有する第一水性溶液を含む第一容器を含む。第二容器は、抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩を有する第二水性溶液を含む。抗グラム陰性菌抗生物質または塩および抗グラム陽性菌抗生物質または塩の濃度および/または量は、同じかまたは異なる。
【0134】
1つ以上の実施形態において、キットは、抗生物質またはその塩から成る第一組成物を含む第一容器を含む。第二容器は、水から成る第二組成物を含む。第一組成物および/または第二組成物は、オスモル濃度調整剤を有する。
【0135】
1つ以上の実施形態において、キットは、抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩を有する粉末を含む容器を含む。第二容器は、抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩を有する粉末を含む。第一容器の抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩の濃度または量、またはその両方は、第二容器の抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩の濃度または量、またはその両方と異なる。
【0136】
例えば、第一容器の抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩の量は、約400mgから600mgである。第二容器の抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩の量は、約600mgから800mgである。
【0137】
別の側面において、キットは、抗グラム陰性菌抗生物質またはその塩から成る溶液を含む第一容器を含む。第二容器は、抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩を含む粉末を含む。あるいは、抗グラム陰性菌抗生物質またはその塩は、粉末であってもよく、抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩は、溶液または分散であってもよい。抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩の量は、一般的に約150mgから約900mgである。
【0138】
キットは、バックなど、第一容器および第二容器を含むパッケージをさらに含む。
【0139】
キットは、噴霧装置をさらに含む。噴霧装置は、呼吸に適した粒子または液滴の形成に適した種類のものである。さらに、抗生物質は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる、全ての米国特許第5、225,183;5,681,545;5,683,677;5,474、759;5,508,023;または5、655,520号に記載の通り、液体推進薬中に溶解される、または浮遊する。そのような場合、噴霧装置は定量噴霧器(MDI)を備える。
【0140】
それの代わり、または、それに加え、医薬製剤は、液状であり、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる、WO2004/071368および、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる、米国公開特許広報第2004/0011358および2004/0035413に記載の通り、ネブライザーを使用して噴霧される。ネブライザーの別の例は、カリフォルニア州マウンテンビューにあるAerogen社のAeroneb(R)GoまたはAeroneb(R)Proネブライザー;バージニア州ミッドロジアンにあるPARI Respiratory Equipment社のPARIeFlowおよび他のPARIネブライザー;ニュージャージー州イーストブランズウィックにあるLumiscope社のLumiscope(R)ネブライザー6600または6610;および日本国京都府にあるオムロンヘルスケア社のオムロンNE−U22を含むがそれらに限定されない。
【0141】
Aeroneb(R)Proなど、圧縮ガスを使用しないで液滴を形成するものなどの振動メッシュ式のネブライザーは、投薬効果および均質性において予想外の向上を提供することが分かっている。圧縮空気を導入するのではなく、振動穴あき、または穴なし部材を使用して、非有孔微細液滴を生成することにより、エアロゾル化された医薬製剤は、回路内の実質上流量特性に影響を及ぼさず、人工呼吸器設定の実質上の再選択を必要とせずに、人工呼吸器回路内に導入される。また、この種のネブライザーを使用した際に生成された液滴は、低速で導入され、それにより人工呼吸器回路の不要領域に移動する液滴の可能性が低減される。さらに、記載の通り、ネブライザーを形成する液滴およびエアロゾル発生器の組み合わせは、人工呼吸器が異なる一回喚起量を使用した際、多様な投薬において低減がある場合に有益であり、それによりシステムをさらに一般化させる。
【0142】
参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる、米国出願第10/991、092および/または米国仮出願第60/682、099、および/または米国公開特許広報第2005/0217666に開示されるアダプタ、機器またはシステムの使用は、エアロゾル化された抗生物質の投与に関連し、多くの効果を提供する。例えば、そのようなアダプタを使用すると、かなり少ない医薬製剤が環境に失われ、それにより抗生物質に対する耐性菌の低減につながる。また、アダプタ、機器またはシステムは、抗生物質療法に特に有用な、さらに均一な投与量を供給することができる。
【0143】
図1Aは、本発明での使用に適した肺の薬物送達システム(「PDDS」)100を含む、薬剤の噴霧供給用アダプタまたはシステムの実施形態を示す。PDDS100は、容器104に貯蔵される液体製剤を噴霧する、ネブライザー102(エアロゾルライザーともいう)を含む。ネブライザー102に存在するエアロゾルは、まず、ネブライザー102と人工呼吸器回路を連結するT−アダプタ106に入る。T−アダプタ106は、分岐した人工呼吸器部110および112を有するY字形回路108にも連結される。
【0144】
人工呼吸器枝部110または112のいずれかに連結するのは、制御モジュール118に連結する空気圧フィードバック管116により、枝部内の圧力を均一にする、空気圧フィードバック部114である。図示された実施形態において、フィードバック部114は、人工呼吸器枝部112を受けることができる雌接合端(例:ISO22mm雌接続具)および、人工呼吸器内に挿入することができる、反対に向き合った雄接合端(例:ISO22mm雄接続具)を備える。フィードバック部は、人工呼吸器回路および管116間を移動しようとする粒子および細菌を閉じ込めるフィルター115を受けるように操作できる。
【0145】
制御モジュールは118、管116を介し、人工呼吸器枝部内の圧力を監視し、 情報を使用してシステムケーブル120を介し、ネブライザー102を制御する。別の実施形態において(明示なし)、制御モジュール118は、ワイヤレス信号をネブライザー102上のワイヤレス制御モジュールへ送信し、エアロゾル生成を制御する。
【0146】
患者の呼吸周期の吸入期中に、T−アダプタ106に入ったエアロゾル化された薬剤は、患者の鼻および/または肺へ流れる吸気性人工呼吸器枝部112から出る呼吸ガスと混ざりあう。図示された実施形態において、エアロゾルおよび呼吸ガスは、前金具から流れ、患者の気道の鼻腔へ流れる。
【0147】
図1Aに示されるY字形回路108の別の実施形態は、本発明の実施形態に企図される。
【0148】
図1Bを参照に、液体が供給される上部93を有するネブライザー85は、人工呼吸器をつけている患者の人工呼吸器呼吸回路へ取り込まれる。呼吸回路は、吸入部89、気管内の管部90および吐出部91を順に有する「Y」コネクタ88を備える。吸入部89は、人工呼吸器92から提供される空気を患者へと運ぶ。Yコネクタ88の気管内の管部90は、流入空気を患者の気道へ運び、この方向は、矢印「a」により示される。気管内の管部90は、患者の呼気をYコネクタ88の吐出部91へ運び、矢印「b」により示される吐出部91は、システムから患者の呼気を取り除くために、排出へつながる。本発明のエアロゾル成分のネブライザー85は、吸気部を通る吸気流がない場合、上記記載の通り、エアロゾル成分によりYコネクタ88の吸入部89内に実質的に残存するエアロゾル雲94を生成し、低速の霧を生成する。この場合、供給される吸気空気がない場合に生成されるエアロゾルは、Yコネクタの吐出部91を通過して運ばれず、周囲環境に失われる。したがって、エアロゾル化製剤の投薬量は、予め組み込まれている。つまり、人工呼吸器92から送られる吸気期前に、実質的に吸気部89内で製造され、収められている。この場合、そのような製剤は、吸気周期の当初に患者の呼吸器系に浸透する。これは、新生児患者の症例において、また吸気期の最初の一吹きのみが、呼吸器系の対象部に到達する別の例において特に有益である。別の実施例において、人工呼吸器は、人工呼吸器回路を通るガスの継続的なバイアス流を生成する。バイアス流は、エアロゾル化製剤の一部を押し吐出部91を通過させるが、それでも、人工呼吸器回路に予め組み込まれたエアロゾル化製剤を保持することは総合的に有益である。
【0149】
ここでは図2Aを参照し、肺送達用アダプタおよび/またはシステムの人工呼吸器を外した形態の実施形態が示される。図2Aでは、アダプタ400は、人工呼吸器を外した使用を目的とし、ネブライザー404およびY字型406に連結した末端部402を含む。ネブライザー404は、エアロゾル化された液体製剤をコネクタ410へ供給する容器408を含む。コネクタ410はエアロゾル化製剤およびガスがY字型406から末端部402へ移動し、それから患者の口および/鼻へ移動できるような導管を提供する。第一Y字型枝部412は、Y字型枝部412から末端部402に流れる加圧型呼吸ガス(提示なし)のポンプまたは起点に接続される。一方向弁413は、呼吸ガスが、ポンプまたはガス源へ逆流するのを防ぐために、枝部412内に設置される。枝部412は、ガス圧力フィードバック部(図示しない)に接続される圧力フィードバックポート414を有する。図示された実施形態において、フィードバックフィルター416は、ポート414およびフィードバック部の間に連結される。
【0150】
人工呼吸器を外したアダプタ400は、フィルター422および、ガスが呼気周期に通過する一方向弁424を備える第二Y字型枝部420も含む。フィルター422は、患者が吸引したエアロゾル化製剤および感染物質が周囲の外気への流出を防ぐために、これらをろ過して取り除く。一方向弁424は、周囲空気がアダプタ400に逆流するのを防ぐ。
【0151】
エアロゾル化された組成物送達システム1100の一般的な形態を、図2Bに示す。エアロゾル化された組成物送達システム1100は、エアロゾル化された組成物を使用者の肺などの呼吸器へ送達する。エアロゾル化された組成物送達システム1100は、エアロゾル化された組成物を、呼吸器1105により補助され呼吸をする患者に送達する上で有用であるが、組成物を人工呼吸器をつけていない患者へ送達するために使用されるようにも設定されている。人工呼吸器回路1110は、図2Bに図示される。人工呼吸器1105から延長するものは、吸入ライン1115および呼気ライン1120である。吸入ライン1115および呼気ライン1120は、共に、そこから延長するエアフロー管腔を有する管を構成する。吸入ライン1115および呼気ライン1120は、人工呼吸器1105より離れたアダプタ1145で交わる。アダプタ1145では、吸入ライン1115の管腔は、呼気ライン1120からの管腔と連通し、両管腔は、患者ライン1130と連通する。患者ライン1130は、患者に挿入される気管内または気管切開チューブ1135から伸びる管腔を有する。チューブ1135は、使用者の肺内または肺近くに伸びる、反対端を有する。さらに、使用中は、含酸素空気は、人工呼吸器1105により、吸入ラインへ導入される。含酸素空気は、吸入ライン1115の管腔を通り、患者ライン1130へ移行し、チューブ1135の管腔を通り、患者の肺へ移行する。それから患者は、自然または人工呼吸器からの陰圧を利用して呼気し、呼気された空気は、チューブ1135を通り、患者ライン1130を通り、そして呼気ライン1120を通り、人工呼吸器1105へ移行する。サイクルは、患者の呼吸を補助するため、あるいは完全に制御するために、継続的に繰り返される。
【0152】
アダプタ1145は、エアロゾル化された組成物を人工呼吸器1110に導入する。アダプタ1145により導入されたエアロゾルは、組成物を含むための容器を備える噴霧装置により生成される。従って、1つ以上の実施例において、噴霧エネルギーは、エアロゾル化された組成物を生成するために、エネルギー源1160により、噴霧器に供給される。エアロゾル化された医薬製剤は、経路1165を通過し、人工呼吸器回路1110へと導入され、アダプタ1145へ移行する。例えば、噴霧機器1150は、エネルギー源が圧縮空気であるジェットネブライザー、エネルギー源が波エネルギーである振動メッシュ式ネブライザー、超音波ネブライザー、またはエネルギー源が常温条件下で沸騰する推進剤である定用量吸入器である。
【0153】
エアロゾル化された医薬製剤を導入するためのアダプタ1145の例は、平成16年11月17日に申請された米国申請第10/991、092および米国仮申請第60/682、099に開示され、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0154】
アダプタ1145におけるエアロゾル化された医薬製剤の導入は、エアロゾルが吸入ライン1115内にまたは人工呼吸器1105内に導入されるシステムにおいて多様な面で有利である。例えば、エアロゾル化された医薬製剤をアダプタ1145に導入することにより、患者の肺に導入された地点からのエアロゾル化された人工呼吸器回路のボリュームは、大幅に減少する。従って、エアロゾル化された医薬製剤は、より濃縮しており、人工呼吸器回路1110中に拡散する量はより少ない。また、製剤が吸入ライン1115に加わると、ほとんどの製剤は、呼気ライン1120に導かれ、投与効果がさらに制限される。この分散および低下した効果により、投薬の均質性は、周知のシステムにおいて制御が難しくなる。また、患者の肺に投与されない、多くのエアロゾル化された医薬製剤の存在は、ほとんどのエアロゾルが医療従事者または別の人たちに吸入される環境に導入される場合は、望ましくない。
【0155】
したがって、本発明のアダプタ1145は、投薬の有効性および/または均質性を向上するために、改善されたエアロゾル化医薬製剤を導入するために設計された。アダプタ1145は、人工呼吸器回路1120の呼気ライン1120に吸い込まれたエアロゾル化医薬製剤の量を減少する役割をする。
【0156】
人工呼吸器回路使用の際の本発明のアダプタは、多くの場合、医薬製剤を再現性よくまた効率よく供給することができる。例えば、本発明は、一般的に、総対象用量の約±10%、±8%、±6%、±4%、±2%、または±1%内に供給された投薬量を再現することができる。本発明は、多くの場合、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%など、少なくとも約30%の供給効率を達成することができる。
【0157】
本発明のアダプタは、人工呼吸器に接触する患者にわずかな影響を及ぼす。このわずかな影響により、人工呼吸器は、患者により効果的に反応することが可能になる。アダプタおよび弁は、60L/分の空気流速で、アダプタの第一端および第二端間の圧力低下が、約30cmHOより少ない、約5cmHOより少ない、約4cmHOより少ない、約3cmHOより少ない、約2cmHOより少ない、約1cmHOより少ない、約0.5cmHOより少ない、または約0.1cmHOより少ないなど、多くの場合約50cmHOより少なく、約0.05cmHOから約10cmHO、約1cmHOから約5cmHO、または約2cmHOから約4cmHOの範囲であるように配置されている。30L/分の空気流速でアダプタの第一端および第二端間の圧力低下は通常約1cmHOから約2cmHOの範囲である。
【0158】
アダプタは、透明、半透明または不透明な材料から成る。透明材料は、使用者がアダプタの機能を視覚的に調べることができるため、有利である。アダプタ用材料の例は、ポリプロピレン、SAN(スチレンアクリロニトリル共重合体)ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)、ポリカーボネート、アクリルポリスルフォン、K−resin(R)スチレンブタジエン共重合体(Chevron Phillips Chemicalにて入手可能)、ポリエチレン、PVC(ポリ塩化ビニル)、ポリスチレンなどを含む、ポリマーを含むがそれらに限定されない。
【0159】
Aeroneb ProおよびPARIeFlowなどの振動メッシュ式ネブライザーにおいて、 より少ない第一チャンネル容量が再現性のよい投与を可能にする。例えば、振動メッシュ式ネブライザーと使用されるアダプタ1145の第一チャンネル容量は、約10mlから約1000ml、約50mlから約200ml、または約90mlなど、約10mlより多い量であると決定されている。貯蔵量および弁が共に本発明の性能に影響を及ぼす。
【0160】
機器および方法のさらなる例は、平成18年5月18日に申請された、米国申請第11/436、329、「Valves,Devices,and Methods for Endobronchial Therapy」に開示され、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0161】
本発明は、上記記載の組成物、機器および方法を使用した場合の詳細な好ましい結果に限定されるものではない。しかし、本発明の組成物、機器、および方法は、挿管された患者の死亡率の減少、 全身の抗生物質暴露減少による耐性の発生率の減少(または少なくとも耐性の増加なし)および局所投与により生じた肺の対象粘膜表皮における暴露の上昇をもたらすと考えられている。上記記載の通り、本発明の組成物、機器、および方法は、肺炎の治療に有用である(および全身治療より効果的であるーまたは少なくとも有用な補助である)と期待されている。関連感染も、予防または減少する(例:敗血症の予防、尿路感染の抑制など)と考えられている。
【0162】
もちろん、本発明の組成物、機器、および方法の有効性による抗生物質の全身投与の使用減少は、費用の削減、IVラインの時間の短縮、および/または中枢ラインの時間の短縮になる。また、そのような減少は、抗生物質の毒性を減少するはずである(下痢およびクロストリジウムディフィシレ感染の発症の低下、栄養の改善により判断されるように)。
【0163】
本発明の組成物、機器、および方法は、部分的に気管内/気管切開チューブ生物膜の減少をもたらすと考えられている。言い換えると、これは、分泌物を除去、気道抵抗を低減、および/または呼吸仕事量を減少する。後者は、人工呼吸器を外す患者の回復過程を緩和する。
【0164】
本発明は、人工呼吸器システムの一般的に使用される成分を置換する特定の実施形態を企図する。1つ以上の実施形態において、本発明は、人工呼吸器回路および気管内チューブに取り付け可能な、エアロゾル発生器を備えるアダプタを検討する。詳細な好ましい結果に限定せず、アダプタは、インテグラル発生器付き人工呼吸器が、従来のエアロゾルシステム全て(ジェット、超音波およびMDI)に及ぼす効果を低減し、同時にAerogenTMProのような機器の好ましい性質を強化すると示唆される。また、詳細な好ましい結果に限定せず、インテグラル発生器付き人工呼吸器は、(1)同様の送達(どの商業用人工呼吸器システムを使用しても)を得るために送達変動を低減する(加湿効果、バイアスの流れ、継続的または呼吸作動の低減)、(2)呼吸作動の最大限の効果を可能にする、および(3)死容積のないネブライザーを使用して、強化されたネブライザーの効力の最大限の効果を可能にすると企図される。
【0165】
本発明は、回路の詳細な構成または性質に限定するものではない。1つの実施形態において、前記回路は、閉回路である。別の実施形態において、前記回路は、開回路である。
【0166】
また、本発明は、特定の通気孔構成に限定するものではない。1つの実施形態において、前記吸入および呼気ラインは、機械的人工呼吸器に連結する。1つの実施形態において、前記機械的人工呼吸器は、呼吸周期を制御し、前記周期は、吸気期を含む。1つの実施形態において、エアロゾルは、呼吸周期の吸気期に投与される。
【0167】
本発明は、その特定のバージョンについて、詳細に明記されるが、別のバージョンも可能であり、提示するバージョンの変更、置換および対応は、明細書を読み、図を検討すると、当業者に明らかになる。例えば、エアロゾル機器の相対位置は、変更される場合があり、可撓性部分の作用を再現するために、可撓性部分は、ヒンジで動く、あるいは本来なら可動の、より固定部分により置換される。また、図に示されたとおり、通路は、実質的に直線である必要性はなく、例えば、湾曲または傾斜であってもよい。また、本明細書のバージョンの様々な特性は、本発明の別のバージョンを提供するために、様々な方法に取り込むことができる。さらに、特定の専門用語は、説明を明瞭にする目的で使用され、本発明を制限するものではない。したがって、いかなる添付請求項は、本明細書に含まれる好ましいバージョンの説明に限定せず、本発明の真の精神と範囲内である、そのような変更、置換、および対応全てを含むものである。
【0168】
前述の説明は、以下の例を参照して、十分理解されるものである。しかし、そのような例は、本発明における1つ以上の実施形態を行う方法の単なる典例であり、本発明の範囲を制限しないものと理解されるものである。
【実施例】
【0169】
例1
この例は、水および生理食塩水中の硫酸ゲンタマイシンの溶解度を決定することに関する。必要濃度は、まず20mg/ml、40mg/ml、および最大200mg/mlに設定された。
【0170】
水溶性の決定
水への溶解度は、目視評価によって決定された。オスモル濃度およびpHも決定した。
【0171】
溶解度決定の研究のために製造されたすべての溶液のバッチサイズは10mlであった。製造方法は、硫酸ゲンタマイシンの適切な量を測るステップ、および次に水との最終容積を出すステップから構成された。特に高濃度の場合、溶液を初め手動で撹拌し、次に完全溶解を確実にするために電磁撹拌機に設置するようにした。
【0172】
表1は、20mg/mlから400mg/mlの濃度の注射用蒸留水(WFI)中の硫酸ゲンタマイシンの溶液に関して得られたpHおよびオスモル濃度値 を記載している。
【0173】
表1.WFI中ゲンタマイシン溶液の試験マトリックス
【0174】
【化1】

表1に見られるように、すべての溶液は4より高いpHを有し、これは肺への薬物供給に使用できると考えられる。しかしながら、オスモル濃度の測定値に関しては、200mg/ml以上の投与量が目標範囲を超えた。
【0175】
0.9%の食塩溶液中の硫酸ゲンタマイシン
0.9%の食塩溶液で調製された硫酸ゲンタマイシン溶液の溶解度、pH、およびオスモル濃度を決定した。溶解度は目視評価によって決定された。ゲンタマイシンの3つの濃度のみに対して調査を行った(20、40、および80mg/ml)。
【0176】
表2は、ゲンタマイシン溶液に関して測定されたパラメータ、および製造中に記録された実測値を記載している。
【0177】
表2.0.9%の生理食塩水中の硫酸ゲンタマイシンのオスモル濃度およびpH
【0178】
【化2】

例2
この例は、塩酸バンコマイシン凍結乾燥物の臨床製造のための凍結乾燥サイクルを開発することに関連する。120mg、240mg、および480mの塩酸バンコマイシン/バイアルの濃度に対し調査した。
【0179】
材料/装置
材料
・塩酸バンコマイシン、USP、Alpharma−デンマーク
・ISO 6R透明タイプIガラスバイアル、Nuova Ompi−イタリア
・凍結乾燥ストッパー20mm、West Pharmaceutical Service−米国
・フリップオフキャップ20mm、Capsulit S.p.A.−イタリア
・凍結乾燥ストッパー13mm、West Pharmaceutical Service−米国
・フリップオフキャップ13mm、West Pharmaceutical Service−米国
装置
・ろ過前後のバンコマイシン溶液用のガラス容器(瓶)
・圧力容器、Sartorius−ドイツ
・充填重量を調べるための秤(検出感度10mg)、Sartorius−ドイツ
・デジタルpHメーター、Mettler Toledo−スイス
・カール・フィッシャー自動滴定装置DL38、Mettler Toledo−スイス
・殺菌PVDFフィルター0,22μm、Pall
・手動投与装置、Hirschmann
・アイソレーター、E.Co.Tec−イタリア
・以下の特性を持つ凍結乾燥機、BOC Edwards Lyoflex04(またはMinifast8000):棚表面0.4m(または0.8m);温度範囲−50℃から50℃;PT100温度プローブ;真空モニタリング用ピラニ真空計;氷収容容積8kgのコイル式コンデンサー;−60℃までのコンデンサー・コイル入り口温度、厚さ約2mmのステンレス製トレイ;半自動式圧着機(Flexseal−デンマーク)
・DSC Pyris Diamond−米国
組成
溶解度研究
薬剤形態としての利用に必要とされるすべての基準を満たす最終凍結乾燥生成物を得るための適切な調剤を確立するために、塩酸バンコマイシンの溶解度を評価した。
【0180】
凍結乾燥サイクルのよりよい開発に適切な最終調剤に焦点を当てるための最初のステップは、異なる濃度での塩酸バンコマイシン溶液のpHおよび溶解度評価であった。
【0181】
活性薬剤を溶媒に撹拌添加することにより、注射用蒸留水中の塩酸バンコマイシン飽和溶液を調製した。
【0182】
初めは、溶液は透明で、凝集体として浮遊する固体が存在した。固体が結晶化の核として働いた後、新たな沈殿が起こった。その結果、固体が部分的に膨張し、溶液は白色となり、またより粘性を持つようになった。
【0183】
懸濁液を、溶解の均衡条件に達するために、48時間撹拌した。
【0184】
懸濁液を、初めに紙フィルターで、次に0.45μmのPVDFフィルターでろ過し、生成物が膜に結合されたために希釈された可能性のある溶液の初めの液滴を廃棄した。
【0185】
2回のろ過後得られた溶液を、固体の沈殿が起こっているかを評価するために、2〜8℃で保管した。
【0186】
それぞれの飽和溶液からもたらされた水中の塩酸バンコマイシンのろ過溶液を、検量曲線に含まれるλ=280nmの絶対値をもたらす最終濃度に達するように希釈した。
【0187】
各希釈液は、λ=280nmのUVで、3回分析された。各溶液に対して、吸収度が調節され、濃度を計算するために、最終値がそれぞれの検量曲線の方程式において置換された。
【0188】
水中塩酸バンコマイシンの最大溶解度は、140.9mg/mLである。
水中塩酸バンコマイシン溶液のpH
溶解度評価に加えて、調剤および凍結乾燥サイクルの開発のために考慮の対象となり得る、異なる濃度での塩酸バンコマイシン溶液のpHおよび密度も測定された。
【0189】
【化3】

pHは、各濃度の制限範囲内で様々であり、140mg/mLおよび100mg/mL内の全pHは、酸性度指数付近で安定していた。
【0190】
調剤
また、以下に示すように、塩酸バンコマイシンを注射用蒸留水中に溶解し、1.00mlおよび1.20mlの量の100mg/mlの製剤を形成した。
【0191】
【化4】

また、以下に示すように、塩酸バンコマイシンを注射用蒸留水中に溶解し、1.00ml、2.00ml、および4.00mlの量の120mg/mlの製剤を形成した。
【0192】
【化5】

DSC研究
DSCが、100mg/mlおよび120mg/mlの濃度で溶液を充填できる状態で行われた。
【0193】
DSCの操作は、試料を1℃/分の冷却速度で−50℃まで冷却し、数分の等温ステップ後、異なる走査速度で加熱し20℃まで戻すことによって行われる。
【0194】
試料の量は、約1から3mgに及んだ。
【0195】
検出された熱事象に対応するすべてのピークが、開始温度として計算された。
【0196】
DSC研究は、凍結中にひとつの主要な結晶化の事象があったこと、そして小さい結晶化の事象の証拠はないことを示した。これらの現象は、すべての場合における加熱ステップ中のガラス転移事象の欠如によって立証されるように、凍結中の非晶相の欠如、およびバンコマイシンによる結晶構造の完全保持を示すと思われる。
【0197】
予想されたとおり、結晶化ピークは、試料の重量または溶液の濃度が増加した時、より低い温度へ移動した。
【0198】
しかしながら、異なる濃度間で有意差は検出されなかった。
【0199】
検出された差異は、試料の内部変動により関連している。
【0200】
−45℃の凍結終了温度および1℃/分の凍結速度が、凍結中の塩酸バンコマイシンの完全結晶状態を確実にするために選択された。
【0201】
最初の一次乾燥中の最大許容生成物が−25℃であったことから、一次乾燥中の圧力は、−25℃での氷の蒸気圧の1/4から1/2内であった。−25℃での氷の蒸気は、630μbarである。閾値平均230μbarが、一次乾燥の最大許容チャンバー圧力として選択された。
【0202】
製造工程
注射用蒸留水を、目盛り付き秤上のガラス容器内で検量した。
【0203】
塩酸バンコマイシンを撹拌添加した。バンコマイシンが完全に溶解するまで溶液を撹拌し、溶解時間を記録した。
【0204】
次に、注射用蒸留水を、必要な最終量に達するまで添加した。
【0205】
最終溶液に対し、pHおよび密度を測定し、外観を評価した。
【0206】
0.22μmのPVDF膜で溶液をろ過した。
【0207】
バイアルを蒸留水で洗浄し、120℃のオーブンで2時間乾燥した。
【0208】
充填を大量に行い、充填されたバイアルを20バイアルごとに計量することによって工程管理を行った。
【0209】
凍結乾燥後、最終生成物に対し以下の分析が行われた:
カール・フィッシャー滴定による含水率、ケーキの出現や再構成時間、外観/透明度、再構成後のpH。
【0210】
処理がバンコマイシンの透明度に影響を及ぼさなかったことを実証するために、RP−HPLCを行った。
【0211】
調剤の適合性を確認するために、20mlの再構成製剤を無菌テスト用膜に通した。
【0212】
例2A
DSC結果の評価後、次の凍結乾燥サイクルの仮パラメータを100mg/mlの溶液に対して使用するために計画した。
【0213】
【化6】

侵漬凍結および一次乾燥時間を、設定された凍結乾燥プログラムに対して短縮した。
【0214】
実際に、生成物は、80分の侵漬凍結ステップ後−45℃に達した。それを−45℃で1時間以上保持し、次に一次乾燥を開始するために真空をチャンバー内に入れた。
【0215】
ステップ6(一次乾燥)中、すべての生成物温度プローブが、450分後に棚温度(10℃)に達した。
【0216】
生成物を1時間10℃で放置した。その後、昇華速度を評価するために、いくつかの圧力上昇試験を行った。これらの試験の肯定的な結果により、二次乾燥の40℃への加熱が開始可能となった。ステップ6は、840分ではなく、510分続いた。
【0217】
サイクルの合計時間は29時間であった。
【0218】
ケーキは、昇華中の容器からの砕けやすい物質の損失を防いだ付着構造を有した。凍結乾燥生成物は、ケーキ中のいくつかのひびにより、あまり質がよくなかった(写真1を参照)。
【0219】
例2B
100mg/mlの溶液に関連するこの例において、6Rバイアルを使用した。この関連で、20mmのネックバイアルが、13mmのネックバイアルよりも速い昇華を可能にする。
【0220】
一次乾燥中の0℃での中間ステップが、昇華中により遅い水蒸気流を持つよう挿入された。この方法で、凍結乾燥ケーキ中のひびはそれほど認められなかった。
【0221】
クライアントの要望により、二次乾燥温度を40℃から30℃に下げた。
【0222】
サイクルの合計時間を約29時間に維持するために、最終一次乾燥温度を10℃から15℃に上げた。
【0223】
この例の仮凍結乾燥パラメータは以下のとおりである。
【0224】
【化7】

より低い二次乾燥温度では、生成物は比較的低い残留水分を維持することができなかった。全体の平均値が3.61wt%である一方で、前バッチの平均含水率は1.71wt%であった。
【0225】
例2C
100mg/mlの溶液に関連するこの例において、チャンバー内の圧力を100μbarから200μbarに増加した。より高い圧力は、ガス/生成物の界面における熱交換、および棚からトレイへの熱伝導率を促進する。生成物へ運ばれるより大きい量の熱は、生成物温度の上昇、およびその結果としてより速い氷昇華をもたらす。
【0226】
さらに、凍結乾燥の評価の印刷後、一次乾燥から4時間短縮し、二次乾燥ステップに追加した。
【0227】
この例は、以下の仮パラメータに関連する。
【0228】
【化8】

二次乾燥を計画された780分から450分に短縮した。実際に、生成物温度は、200μbarでの乾燥によるよりよい熱交換により、すぐに棚温度と一致した。
【0229】
サイクルの合計時間は24.5時間であった。
【0230】
平均含水率は1.82wt%であった。
【0231】
凍結乾燥生成物はなおも、ケーキ中のひびを示した。
【0232】
例2D
この例は、1つのバイアルにつき120mg、240mg、および480mgの投与量を可能にするための120mg/mlの充填溶液に関連する。
【0233】
より低い充填容積の試料の起こり得る過乾燥に注意を払うことなく、より大きい充填試料用のサイクルを使用して、3つ充填容積すべてを凍結乾燥した。
【0234】
バンコマイシンの120mg/mLの充填溶液を、異なる熱量計で韻律分析を行うことにより調査し、主要な熱の事象が、120mg/mLの充填溶液で検出されたものと非常に近いことが検証された。
【0235】
これは、100mg/mLで使用されたものと同じ凍結乾燥サイクルの条件が、120mg/mLに応用できることを意味した。
【0236】
新たな保持時間の研究を120mg/mLの濃度に対しても行った。新たなサイクルは、4mL/バイアルのより高い充填容積を持つ480mg/バイアルの提示に関して検査された。
【0237】
以下の仮パラメータを検査した。
【0238】
【化9】

【0239】
【化10】

0.97wt%の全体平均含水率を、カール・フィッシャー滴定によって求めた。
【0240】
例2E
生成物温度プロファイル対棚温度の評価に続き、次の操作を一次乾燥ステップにおいて3時間から4時間に、二次乾燥において4時間短縮した。
【0241】
過乾燥が120mgおよび240mgのバイアルの化学安定性に影響を与えるか調査するために、120mgおよび240mgのユニットを480mgサイクル中の凍結乾燥機に置いた。
【0242】
平均残留水分は、4mlの充填に対して0.97wt%、2mlの充填に対して1.23wt%、および1mlの充填に対して1.34wt%であった。
【0243】
凍結乾燥サイクルは、42時間近くの合計時間を有した。
【0244】
【化11】

3つの提示すべてが、いくつかのひびがあったとしても、非常に付着力のある構造を持つケーキを有した。
【0245】
分析結果
工程管理
【0246】
【化12】

【0247】
【化13】

【0248】
【化14】

【0249】
【化15】

【0250】
【化16】

再構成時間
以下を追加して、再構成時間の測定を行った。
【0251】
・1.0mLのWFIを120mg/バイアルの濃度に
・2.0mLのWFIを240mg/バイアルの濃度に
・4.0mLのWFIを480mg/バイアルの濃度に
例2Eの生成物に認められた再構成時間は、検査されたすべてのバイアルと比較してかなり短かった。120mgの凍結乾燥製剤を完全に再構成するために、約10秒が必要であった。240mg/バイアルの提示を完全に再構成するために、10から15秒が必要であった一方、480mgのユニットを完全に再構成するために、約20秒が必要であった。
【0252】
再構成溶液は、澄んだ薄いピンクがかった外観で、粒子は含まれていなかった。
【0253】
無菌テスト用膜での適合性
製剤の適合性を確認するために、20mLの再構成製剤を無菌テスト用膜に通した。
【0254】
溶液をフィルター膜に通し、20mlのうち17mlを膜の下から回収した。
【0255】
例3
要約
この例は、600mgの塩酸バンコマイシン/バイアルの濃度の凍結乾燥サイクルに関連する。
【0256】
材料/装置
材料
・塩酸バンコマイシン、USP、Alpharma−デンマーク
・ISO 6R透明タイプIガラスバイアル、Nuova Ompi−イタリア
・凍結乾燥ストッパー20mm、West Pharmaceutical Service−米国
・フリップオフキャップ20mm、Capsulit S.p.A.−イタリア
・凍結乾燥ストッパー13mm、West Pharmaceutical Service−米国
・フリップオフキャップ13mm、West Pharmaceutical Service−米国
装置
・ろ過前後のバンコマイシン溶液用のガラス容器(瓶)
・圧力容器、Sartorius−ドイツ
・充填重量を調べるための秤(検出感度10mg)、Sartorius−ドイツ
・デジタルpHメーター、Mettler Toledo−スイス
・カール・フィッシャー自動滴定装置DL38、Mettler Toledo−スイス
・殺菌PVDFフィルター0,22μm、Pall
・半自動式充填機、Flexicon PF6−デンマーク
・アイソレーター、E.Co.Tec−イタリア
・以下の特性を持つ凍結乾燥機、BOC Edwards Lyoflex04(またはMinifast8000):棚表面0.4m(または0.8m)、棚温度範囲−50℃から+50℃、PT100温度プローブ、真空モニタリング用ピラニ真空計、氷収容容積8kgのコイル式コンデンサー、−60℃まで温度が達するコンデンサー・コイル入り口、厚さ約2mmのステンレス製トレイ
・半自動式圧着機、Flexseal−デンマーク
調剤
以下に示すように、塩酸バンコマイシンを注射用蒸留水に溶解し、120mg/mlの製剤を形成した。
【0257】
【化17】

製造工程
注射用蒸留水を目盛り付き秤上のガラス容器内で検量した。
【0258】
塩酸バンコマイシンを撹拌添加した。バンコマイシンが完全に溶解するまで溶液を撹拌し、溶解時間を記録した。
【0259】
次に、注射用蒸留水を、必要な最終量に達するまで添加した。
【0260】
最終溶液に対してpHおよび密度を測定し、外観を評価した。
【0261】
0.22μmのPVDF膜で、溶液をろ過した。
【0262】
バイアルを蒸留水で洗浄し、120℃のオーブンで2時間乾燥した。
【0263】
充填を大量に行い、充填されたバイアルを20バイアルごとに計量することによって、工程管理を行った。
【0264】
凍結乾燥後、次の分析が最終生成物に対して行われた:
・カール・フィッシャー滴定による含水率、
・ケーキの出現、
・再構成時間、
・外観/透明度、
・再構成後のpH。
【0265】
処理がバンコマイシンの透明度に影響を及ぼさなかったことを実証するために、RP−HPLCを行った。
【0266】
凍結乾燥サイクル
以下の仮凍結乾燥サイクルパラメーターに従って、生成物を凍結乾燥した。
【0267】
【化18】

結果
1.04wt%の全体平均含水率がカール・フィッシャー滴定によって認められた。
【0268】
ケーキは、いくつかのひびがあったとしても、非常に付着力のある構造を持つケーキを有した。
【0269】
分析結果
【0270】
【化19】

【0271】
【化20】

再構成時間
5.0mLのWFIで凍結乾燥製剤を完全に再構成するために、約30秒が必要であった。再構成溶液は無色透明の外観で粒子が含まれていなかった。
【0272】
例4
要約
ゲンタマイシンおよびバンコマイシン溶液の噴霧化の特性を、溶液濃度、ネブライザー充填容積、および生理食塩水の濃度の関数として評価した。評価された主要なエアロゾルの属性は、放出された投与量および粒径分布であった。8LPMで連続的に操作されたAerotech II ジェットネブライザーを使用して、すべての実験を行った。WFI中のゲンタマイシン溶液に関して、溶液濃度の範囲は、40から120mg/mlに及び、充填容積は2から4mlに及んだ。30分の噴霧化にわたり結果として放出されたエアロゾルの投与量は、増加する充填容積および溶液濃度と比例して増加する投与量により、40mgから300mgを超える量まで異なることが認められた。標準生理食塩水中、0.45%の生理食塩水、および注射用蒸留水中の溶液に対して、バンコマイシンの放出された投与量の測定を行った。検査された溶液濃度の範囲は、60mg/mlから140mg/mlに及んだ。30分の噴霧化の間放出されたエアロゾルの累積投与量は、充填容積および溶液濃度と比例して増加する投与量により、約50mgから300mgを超える量まで異なった。
【0273】
レーザー回折スペクトロメーターを使用して、上記の薬液に対して粒径分布を測定した。検査されたすべての溶液の中央粒径は2−3μmの範囲で、呼吸に適する粒径範囲にあった。これらの抗生物質の粒径分布は、溶液濃度および充填容積に比較的反応しにくいことが認められた。薬剤および標準生理食塩水の追加測定は、噴霧された抗生物質の粒度分布が標準生理食塩水のそれと同程度であることを示した。
【0274】
全体的に、上記の結果は、ネブライザー充填容積および溶液濃度を適切に選択することによって、噴霧されるバンコマイシンおよびゲンタマイシンに対して、呼吸に適する範囲内での幅広いエアロゾル投与量を実現する可能性があることを示す。
【0275】
目的
ネブライザー充填容積および溶液濃度の関数として、バンコマイシンおよびゲンタマイシン溶液の噴霧化の間放出される薬剤エアロゾルの量を決定すること。
【0276】
ネブライザー充填容積および溶液濃度の関数として、ゲンタマイシン、バンコマイシン、および食塩溶液の噴霧化の間生成されるエアロゾルの粒度分布を決定すること。
【0277】
序文
この例は、異なる濃度および異なるネブライザー充填容積での抗生物質に対する、放出された投与量および液滴粒度分布などの噴霧化の特性を評価することに関する。放出された投与量の情報は、選択された目標投与量を送達するために、溶液濃度および充填質量を選択するのに役立つ。粒径情報は、生成されたエアロゾルの空気力学的サイズが、効果的な肺沈着に必要とされる範囲(1−5μm)内にあるかどうか決定するのに役立つ。また、プラセボ溶液(すなわち、標準生理食塩水)の結果も比較のために報告する。8LPMの仮流速で連続的に操作されたAerotech IIジェットネブライザーを使用して、すべての実験を行った。ネブライザーによって生成されたエアロゾル出力を回収するためにフィルターを使用して、および沈着した薬剤の量を検査することによって、エアロゾルの放出された投与量を測定した。Sympatecレーザー回折スペクトロメーターを使用して、生成されたエアロゾルの粒径分布を測定した。
【0278】
研究デザイン
放出された投与量の特性化
水中のゲンタマイシン溶液の場合に対して、2つの要因、すなわちネブライザー充填容積および充填質量の関数として、エアロゾルの放出された質量を特性化するために、完全要因実験を行った。30分の噴霧化時間で達成できる幅広い目標投与量を提供するために、溶液濃度および充填容積の範囲を選択した。
【0279】
この実験の試験マトリックスを表1に示す。ゲンタマイシン溶液濃度(薬剤の質量に基づく)が40mg/mlから120mg/mlまで異なった一方で、ネブライザー充填容積は、2から4mlまで異なった。9つの処理の組み合わせのそれぞれを2回繰り返し、合計18回の操作とした。ゲンタマイシン溶液は、注射用蒸留水(WFI)中で調製され、保存剤は入っていなかった。
【0280】
バンコマイシンの場合に対して、エアロゾルの放出された質量を、以下の3つの場合に関して特性化した。
【0281】
・標準生理食塩水中のバンコマイシン、60mg/mlの溶液濃度、2−4mlの範囲のネブライザー充填容積。
【0282】
・0.45%生理食塩水中のバンコマイシン、60−90mg/mlの範囲の溶液濃度、2−4mlの範囲のネブライザー充填容積。
【0283】
・WFI中のバンコマイシン、60−140mg/mlの範囲の溶液濃度、2−4mlの範囲のネブライザー充填容積。
【0284】
バンコマイシンの場合において、調剤への塩の添加により、オスモル濃度などの溶液特性調整が可能となる。上記の3つの実験の試験マトリックスを、表2−4に示す。
【0285】
【化21】

【0286】
【化22】

【0287】
【化23】

上記の実験のすべてに対して測定された反応は、以下を含んだ。
【0288】
(i)15分で送達された薬剤の質量
(ii)30分で送達された薬剤の累積質量、および
(iii)30分の作動後のネブライザー内に残った薬剤の質量。
【0289】
【化24】

【0290】
【化25】

【0291】
【化26】

粒径分布の特性化
水中のゲンタマイシン溶液の場合に対して、2つの要因、すなわちネブライザー充填容積および充填質量の関数として、エアロゾルの粒径分布を特性化するために、完全要因実験を行った。この実験の試験マトリックスを表5に示す。ゲンタマイシン溶液濃度(薬剤の質量に基づく)が40mg/mlから120mg/mlまで異なった一方で、ネブライザー充填容積は、2から4mlまで異なった。9つの処理の組み合わせをランダムに操作した。未使用のネブライザーを各操作に使用した。試験結果における変動を最小限にするために、流速試験を用いて、この実験におけるネブライザーを事前に限定した。
【0292】
【化27】

バンコマイシンの場合に対して、エアロゾルの放出された質量を、以下の3つの場合に関して特性化した。
【0293】
・標準生理食塩水中のバンコマイシン、60mg/mlの溶液濃度、2−4mlの範囲のネブライザー充填容積。
【0294】
・0.45%生理食塩水中のバンコマイシン、60−90mg/mlの範囲の溶液濃度、2−4mlの範囲のネブライザー充填容積。
【0295】
・WFI中のバンコマイシン、60−140mg/mlの範囲の溶液濃度、2−4mlの範囲のネブライザー充填容積。
【0296】
上記の3つの実験の試験マトリックスを表6−8に示す。未使用のネブライザーを各操作に使用した。試験結果における変動を最小限にするために、流速試験を用いて、この実験におけるネブライザーを事前に選別した。
【0297】
【化28】

【0298】
【化29】

120mg/mlの固定溶液濃度および5mlの固定充填容積での水中のバンコマイシンおよびゲンタマイシン溶液を使用して生成された、エアロゾルの粒径分布を特性化するために、追加実験を行った。薬剤エアロゾルの粒径分布を、5mlの充填容積で標準生理食塩水を噴霧化することによって得られたものと比較した。この追加実験の試験マトリックスを表9に示す。各処理を3回繰り返した。
【0299】
【化30】

装置および材料
装置
・Sympatec HELOS Magic BFSレーザー回折スペクトロメーター、製造番号085
・質量流量計(TSI4000シリーズ)
・ロタメーター
・容積式流量計、Dry Cal
・圧力調整器
・流量調整弁
・流量遮断弁
・ピペット
材料
・Aerotech IIネブライザー
・Hudson RCI MicroMistネブライザーからのT字コネクタおよびマウスピース(カタログ番号1882)
・吸気フィルター(PARIエレクトレット・フィルター)
・フィルターホルダー
・一方向弁
・50mlの遠心分離管
・HPLC水
・HPLC水ディスペンサー
・塩酸バンコマイシン
・硫酸ゲンタマイシン
手順
放出された投与量の特性化
一端部がフィルターホルダーに、もう一方の端部が一方向弁を備える流入チャネルに連結している標準「T」ピースに、ネブライザーを接続した。フィルターホルダーは、ネブライザーによって放出されるエアロゾルの投与量を回収するために使用されるPARIエレクトレット・フィルターを支えた。
【0300】
約50psigの圧力に調整された源からの清浄で乾燥した圧縮空気を使用して、ネブライザーを操作した。ロタメーターを使用して、ネブライザーを通る空気の流速を抑制し、仮流速8LPMに設定した。ネブライザーからの薬剤を含んだ空気は、回収フィルターを通過し、バックアップフィルターおよび流量調節弁を備え、真空源に接続される排気ラインに入った。真空吸引流量がネブライザーの出力流量よりもやや高くなるように、流量調整弁を設定した。流量の不足を補うために、少量の清浄な補給空気が一方向弁を通して入るようにした。この配置はフィルターによるネブライザーの薬剤出力の効率的な回収を可能にした。合計で30分の噴霧化時間の間、8LPMで連続的に操作されたネブライザーで、放出された投与量の実験を行った。フィルター/フィルターホルダーを15分の時点で、未使用のフィルター/フィルターホルダーに取り替え、15分および30分での累積薬剤出力を評価できるようにした。フィルター試料を遠心分離管に入れ、所定の量のHPLC水(30−40mlの範囲)ですすいだ。また、各フィルターホルダーからの残留薬剤も、フィルター洗浄水の一部を使用して、対応する遠心分離管にすすがれた。また、ネブライザーからの残留薬剤も、所定の量のHPLC水(30−40mlの範囲)を使用して、50mlの遠心分離管にすすがれた。フィルターおよびネブライザー試料の薬剤含量を、薬剤特定的なHPLCアッセイによって評価した。フィルターおよびネブライザー試料の測定により、各操作に対して完全な質量バランスが実行可能となることに留意する。
【0301】
粒径分布の特性化
Sympatec HELOSレーザー回折スペクトロメーターを使用して、エアロゾル化薬剤およびプラセボ溶液の液滴粒度分布を測定した。操作に備えて、ネブライザーを圧縮空気ラインに接続し、フローを開け、圧力調整器を駆動圧に設定し、ネブライザーを通して8LPMの流速を生成した。次に、流量遮断弁を閉じることにより、フローを止めた。次に、1つのポートが栓をされ、もう一方のポートがマウスピースに連結している「T」ピースに、ネブライザーを接続した。次に、ネブライザーを薬液で満たし、ネブライザーのマウスピースが、スペクトロメーターにすでに取り付けられているRodosの乾燥粉末用分散器のノズルと平衡に配列されるように、取り付けられた。レーザー回折システムを、ネブライザーによって生成されたエアロゾルの存在を感知したときに自動的にトリガするよう設定した。ネブライザーを加圧し、エアロゾルを生成するために遮断弁を開くことによって、測定を開始した。各ネブライザー操作に対して、合計6回の粒径分布の走査を行い、次に典型的な粒度分布の結果を提供するために、平均化した。
【0302】
結果および考察
放出された投与量の特性化
ゲンタマイシン溶液の場合の要約された投与量送達の結果を図3−5に示す。図3は、ネブライザー充填容積および溶液濃度の関数として、ネブライザーから回収された薬剤の総量を示すグラフである。各回収値は、2回の反復操作の平均である(操作順序は表1に記載)。薬剤回収は、溶液濃度および充填容積全体で非常に一貫しており、97.1%−101.2%の充填質量の範囲で異なり、完全なマスバランスがこれらの測定から達成されたことを示す。
【0303】
図4aおよび4bは、充填容積および溶液濃度の関数として、15分および30分の時点のそれぞれにおける、ゲンタマイシンの放出された累積投与量を示す。ここでもまた、報告された各値は、2回の反復操作の平均である。送達される投与量は、充填容積および溶液濃度の両方の増加と共に増加することが認められ、予想と一致していた。これら2つの図の比較は、2および3mlの充填容積に対して、15分の時点で回収された投与量が、30分の時点でのそれと同程度であったことを示し、これらの充填容積での投与量放出が15分以内に起こったことを示唆する。4mlの充填容積に関して、30分の時点で回収された投与量は、15分の時点での値よりもわずかに大きいだけであり、噴霧化が15分の時間内に大部分完了していたことを示唆する。このことから、最大120mg/mlまでの濃度のゲンタマイシン溶液の最大4mlまでの充填容積を、30分の時間内に効果的に噴霧することができると結論づけることができる。また、図4bも、検査された範囲内で溶液濃度および充填容積を適切に調整することによって、最大7つまでの要因に及ぶゲンタマイシンのエアロゾル投与量を送達することができることを示唆する。
【0304】
図5は、溶液濃度および充填容積の関数して、30分の終わりにネブライザーによって保持されるゲンタマイシン投与量を示す。報告された値は、2回の反復操作の平均である。保持された投与量は、増加する溶液濃度および充填容積と共に増加することが認められ、増加する溶液濃度と共に急激な増加が認められた。
【0305】
溶液濃度および充填容積の関数としての放出された投与量における同様の傾向が、バンコマイシンの場合に得られた。バンコマイシンに対する実例となる放出された投与量の測定を図6−8に示す。
【0306】
標準生理食塩水中の60ml/mlの溶液の場合(表2参照)に関して、図6は、充填容積の関数として、30分の噴霧化後のバンコマイシン薬剤の分布をグラフに示す。グラフは、15分(フィルター1)および30分(フィルター2)の時点で回収されたネブライザー内に保持された投与量を示す。報告された値は、3回の反復操作に対して計算された平均である。ゲンタマイシンの場合と同様に、投与量放出は、15分以内で大部分完了することが認められ、30分の終わりにおける累積投与量(すなわち、フィルター1+フィルター2)は、充填容積と共に増加することが認められた。
【0307】
0.45%生理食塩水中のバンコマイシン溶液の場合(表3の試験マトリックス参照)に関して、図7は、溶液濃度および充填容積の関数として、30分の噴霧化後の放出された累積投与量をグラフに示す。送達される投与量は、予想されたとおり、増加する充填容積および溶液濃度と共に増加することが認められた。図8は、表4に示す試験マトリックスのために得られた、WFI中バンコマイシン溶液の結果に関する同様の結果をグラフに示す。
【0308】
図6−8から明らかなように、検査された範囲内で充填溶液および溶液濃度を適切に調整することによって、6倍の範囲に及ぶバンコマイシンのエアロゾル投与量を、ネブライザーから得ることができる。
【0309】
粒径分布の特性化
ゲンタマイシン溶液の場合に対する典型的なレーザー回折粒径測定(表5の試験マトリックス)を図9および10に要約する。図9は、充填容積および溶液濃度の関数として、エアロゾル化ゲンタマイシンの体積中央径をグラフに示す(表5の試験マトリックス5)。各噴霧化操作に対する6回の反復レーザー回折測定を平均化することにより、各報告値を得た。ゲンタマイシン溶液のすべてに対して測定された 中央粒径は、2−3μmの範囲でわずかに異なり、充填容積または溶液濃度に比較的反応しにくいと思われた。すべての場合において、中央粒径が、肺への薬剤送達に使用できると考えられる「呼吸に適する粒径範囲」内にあった(1−5μm)。図10は、検査された溶液濃度および充填容積のすべてに対する、ゲンタマイシンエアロゾルの累積容積加重を行った粒径分布をグラフに示す。これらの溶液に対して得られた粒度分布は、検査された充填容積および溶液濃度全体の狭い範囲で異なることが認められた。また、図10は、エアロゾルの粒度分布の広がりの測定も提供し、エアロゾルの主要画分が呼吸に適する粒径範囲内にあることが認められた。
【0310】
WFI中のバンコマイシン溶液に対する典型的な粒度測定(表8の試験マトリックス)が図11および12に示され、それはゲンタマイシン溶液に対して得られたものと大体同程度である。
【0311】
図11は、これらのバンコマイシン溶液に対する容積加重を行ったメジアン径の大部分が、2−3μmの範囲内であり、呼吸に適する範囲内にあったことも示す。図12に示すエアロゾルの粒度分布の広がりは、噴霧されたゲンタマイシンに対して得られたものと同様であった。
【0312】
図13および14は、異なる溶液濃度および充填容積で得られた、標準生理食塩水(表6の試験マトリックス)中、および0.45%生理食塩水(表7の試験マトリックス)中それぞれのバンコマイシンの場合に対する体積中央径のグラフである。粒度分布は、水中のバンコマイシン溶液に対して得られたものと同程度であることが認められた。一般に、バンコマイシン溶液の粒度分布は、充填容積、溶液濃度、および生理食塩水の濃度に概して無反応であった。
【0313】
最後に、表9に記載される試験マトリックスによる、追加の粒度測定研究の結果を図15に示す。この図は、バンコマイシン(120mg/ml)、ゲンタマイシン(120mg/ml)、および標準生理食塩水(すべて5mlのネブライザー充填容積に対して得られた)の溶液の体積中央径をグラフに示す。各溶液に対して、3回のネブライザー操作からの結果を提供する。このグラフから見られるように、3つすべての溶液の中央粒径は同程度であり、2−3μmの範囲にあり、呼吸に適する粒径範囲内にあった。
【0314】
結論
噴霧されたゲンタマイシンおよびバンコマイシンの放出された投与量を、溶液濃度、充填容積、および生理食塩水の濃度の関数として測定した。8LPMで連続的に操作されたAerotech IIジェットネブライザーを使用して、すべての実験を行った。WFI中のゲンタマイシン溶液に対して、溶液濃度の範囲は40から120mg/mlまで異なり、充填容積2から4mlに及んだ。30分の噴霧化にわたり結果として放出されたエアロゾルの投与量は、増加する充填容積および溶液濃度と共に増加する投与量により、40mgから300mgを超える量まで異なることが認められた。標準生理食塩水、0.45%生理食塩水、および注射用蒸留水中の溶液に対して、バンコマイシンの放出された投与量の測定を行った。検査された溶液の範囲は、60mg/mlから140mg/mlに及んだ。30分の噴霧化の時間にわたり放出されたエアロゾルの累積投与量は、溶液濃度および充填質量と共に増加する投与量によって、約50mgから300mgを超える量まで異なった。
【0315】
レーザー回折スペクトロメーターを使用して、上記の薬液に対して粒径分布を測定した。検査されたすべての溶液の中央粒径は、2−3μmの範囲にあり、呼吸に適する粒径範囲内にあった。これらの抗生物質の粒径分布は、溶液濃度および充填容積に対して比較的反応しにくいことが認められた。薬剤および標準食塩溶液の追加測定は、噴霧された抗生物質の粒度分布が、標準食塩溶液のものと同程度であったことを示した。
【0316】
全体的に、上記の結果は、ネブライザー充填容積および溶液濃度を適切に選択することによって、噴霧されるバンコマイシンおよびゲンタマイシンに対して、呼吸に適する範囲内での幅広いエアロゾル投与量を実現する可能性があることを示す。
【0317】
例5
この例は、CDラットへの塩酸バンコマイシン(バンコマイシン)の鼻からのみの吸入による14日連続投与によりもたらされた、潜在的毒性および回復を評価することに関連する。
【0318】
使用前2時間以内に、塩酸バンコマイシン(Alpharma(デンマーク、コペンハーゲン)より入手可能)を無菌注射用蒸留水USP(B.Braun Medical Inc.(ペンシルベニア州ベスレヘム)より入手可能)に溶解することによって、120mg/mlの濃度のバンコマイシンのネブライザー溶液(バルク材料のバンコマイシン効果に基づく)を形成した。すべてのバンコマイシン暴露群に対して、エアロゾル化バンコマイシンを生成するために、溶液を使用した。
【0319】
スチール製の縁のPlexiglas二次格納容器内に置かれた「flow−past」型円筒吸入チャンバーにおいて、鼻専用暴露を行った。チャンバーは48個の動物用ポートを含み、各ポートは、単一鼻専用暴露チューブ、エアロゾル濃度試料採取装置(例:フィルター)、または酸素モニターと互換性があった。
【0320】
最大500mL/分の個々の動物用ポートの流量(全体のチャンバーの流量に基づいて概算されたポートの流量)を達成するために、暴露システムを通る全体の空気流の平衡を保った。測定された流量は、試料の流速、ネブライザーの流速、希釈液の流速(チャンバー補給空気)、およびチャンバーの排気流量を含んだ。暴露チャンバーは、吸気流速よりもわずかに高い排気流速を有した。
【0321】
20psiの駆動圧で操作された2つのAerotech IIネブライザーで、バンコマイシン溶液をエアロゾル化した。すべての暴露レベルに対する、目標とされるエアロゾルのバンコマイシン濃度は、最大1.0mg/Lであった。
【0322】
30分間(低)、90分間(中)、および180分間(高)の間、雄および雌のCDラット(Charles River Laboratories(ニューヨーク州キングストン)より入手可能)の3群に、エアロゾル化バンコマイシンを投与した。対照群を、標準食塩溶液から生成されたエアロゾルに、180分間暴露した。対照および高レベル14日間暴露群からのラットの群も、14日間の回復期間に続いて研究した。評価項目は、臨床的観察、体重、臨床病理学(血液学、臨床化学)、尿検査、臓器重量、および組織病理学を含んだ。
【0323】
バンコマイシンのエアロゾル濃度は、低、中、および高の暴露レベルそれぞれに対して、1.23±0.16、1.25±0.12、および1.23±0.08mg/Lであった。平均粒径を、げっ歯類に対して吸入可能な粒径範囲内になるよう決定した(2.0−2.6μmの空気動力学的中央粒子径)。低、中、および高の暴露レベルそれぞれに対して、吸入された平均総投与量を23、71、および139mg/kgと予測し、肺中に沈着する平均投与量を3、9、および17mg/kgと予測した。
【0324】
ラットのすべての群がバンコマイシンの暴露に対して良好な耐容性を示した。すべてのラットが計画された検死まで生存し、臨床的観察上気付いたバンコマイシン関連の影響はなかった。また、バンコマイシン治療に関連した体重への影響もなかった。
【0325】
一貫したバンコマイシン関連の影響を示した唯一の臓器重量は、肺であった。肺重量は、低、中、および高の暴露レベルのそれぞれに対して、平均で対照の約8、20、19%と統計的に著しく増加した。
【0326】
暴露関連の組織病理学的所見は、気道に限られた。観察は、微細から軽度の鼻粘膜細胞異常増殖および肥大、明らかな投与量反応の影響による微細から軽度の間質性肺炎および肺胞マクロファージ過形成、気管支および縦隔リンパ節のリンパ過形成、および軽度の喉頭炎症を含んだ。高投与量群において持続的な間質性肺炎、肺胞マクロファージ過形成、および鼻粘膜細胞異常増殖に関する、14日間の回復後のこれらの所見の実質的な減少はあったが、暴露の終わりに見られたものより、全体として重症度が低かった。低投与量群における影響が概して微細であったにもかかわらず、反応の閾値は確定されなかった。
【0327】
臨床病理学的所見は、概して目立つものではなかった。血液学への唯一のバンコマイシン関連の影響は、中および高の暴露レベルでの好中球の統計的に著しい増加であった。臨床化学への唯一のバンコマイシン関連の影響は、中および高の暴露レベルでの、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)値の軽度であるが統計的に著しい増加(最大28−46%)であった。好中球の変化は、決定された回復期間の後減少した。AST観察は、回復期間後に消散した。両方の所見は、おそらく組織病理学的所見において明らかにされた微細から軽度の肺炎症に起因したであろう。腎臓機能または尿検査の血清指標の検査後、バンコマイシン関連の変化は見られなかった。
【0328】
結論として、所見は、中レベルおよび高レベルの暴露におけるバンコマイシンへの暴露が、微細から軽度の鼻の粘膜細胞の変化、および微細から軽度の肺の炎症およびマクロファージ過形成が現れる、気道における刺激性反応を主に引き起こしたことを示す。対応する好中球およびAST値の変化は、おそらく肺炎症の所見に起因したであろう。これらの影響からの回復は明白であったが、14日間の観察期間後、完全には消散しなかった。観察された影響レベルは確定されなかった。
【0329】
例6
この例は、ビーグル犬への塩酸バンコマイシンのフェイスマスク吸入による14日連続投与によりもたらされた、潜在的毒性および回復を評価することに関連した。
【0330】
使用前2時間以内に、塩酸バンコマイシン(Alpharma(デンマーク、コペンハーゲン)より入手可能)を無菌注射用蒸留水USP(B.Braun Medical Inc.(ペンシルベニア州ベスレヘム)より入手可能)に溶解することによって、120mg/mlの濃度のバンコマイシンのネブライザー溶液を形成した。すべてのバンコマイシン暴露群に対して、エアロゾル化バンコマイシンを生成するために、溶液を使用した。
【0331】
暴露システムは、単一円筒プレキシガラス吸入チャンバーで構成された(容積:最大23.7L、半径:14.61cm、高さ:35.56cm)。チャンバーには、最大40psiで操作される2つのAerotech IIネブライザーが備えられた。噴霧される被験物質およびネブライザーの給気を、最大10L/分のHEPAでろ過された希釈空気で希釈した。システムを通る流量は、最大36L/分であった。
【0332】
15分間(低)、30分間(中)、および60分間(高)の時間、雄および雌のビーグル犬の3つの群に、フェイスマスクを通してエアロゾル化バンコマイシンを投与した。標準生理食塩溶液、すなわち0.9%生食注射USP(B.Braun Medical Inc.から入手可能)から生成されたエアロゾルに、対照群を60分間暴露した。
【0333】
対照および高レベル14日間暴露群からの犬の群も、14日間の回復期間に続いて研究した。犬のすべての群に対する評価項目は、身体検査、臨床的観察、体重、眼科、循環器系EKG、臨床病理学(血液学、臨床化学)、尿検査、臓器重量、組織病理学、およびトキシコキネティクス(毒物動態学)を含んだ。
【0334】
バンコマイシンのエアロゾル濃度は、低、中、および高の暴露レベルそれぞれに対して、1.39±0.20、1.51±0.19、および1.49±0.15mg/Lであった。平均粒径を、犬に対して吸入可能な粒径範囲内になるよう決定した(1.9−2.6μmの空気動力学的中央粒子径)。低、中、および高の暴露レベルそれぞれに対して、吸入された平均総投与量を10、23、および45mg/kgと予測し、肺中に沈着する平均投与量を2、5、および9mg/kgと予測した。
【0335】
犬のすべての群がバンコマイシンの暴露に対して良好な耐容性を示した。すべての犬が計画された検死まで生存し、身体検査、臨床的観察、眼科、心臓ECG出力、血液学、臨床化学、尿検査、全体の検視観察、および臓器重量に関して気付いたバンコマイシン関連の影響はなかった。
【0336】
組織の組織病理学的検査は、気道以外で検査された臓器および組織におけるバンコマイシン暴露の影響を全く示さなかった。同様に、鼻腔/鼻甲介、喉頭、および気管における顕微鏡的変化の欠如があった。バンコマイシン暴露の影響は、肺における顕微鏡的所見に限られた。微細から軽度の慢性間質性炎症、肺胞組織球増殖症、および気管支リンパ節リンパ細網細胞増生の、治療に関連した発生の増加が認められた。回復群の対照および高レベルの動物の中で、肉眼的および顕微鏡的所見に、治療に関連した差異はなかった。
【0337】
最後に、バンコマイシン暴露の影響は、暴露の終わりにおける微細から軽度の肺疾患の組織病理学に限られた。組織病理学的影響の回復は、14日後に完了した。微細から軽度の慢性間質性炎症は、ビーグル犬の炎症性バックグラウンド変化と概して同程度であった。肺胞組織球増殖症は、肺胞の損傷なしで起こるクリアランスの増強に反射性を有した。リンパ細網細胞増生は、肺のクリアランス機構を促進する順応的反応と考えられた。対応する線維形成および肺胞上皮損傷が、観察された影響の特性ではなかったことから、肺の変化、および関連するリンパ節の変化は、悪影響と見なされなかった。これらの所見に基づいて、無影響量(NOAEL)は、45mg/kgの吸入された投与量および9mg/kgの肺沈着の投与量に対応する、高暴露レベルであった。
【0338】
例7
吸入用硫酸アミカシン滅菌溶液、125mg/mlを次のとおり製造し、特性化した。約13.5Lの無菌注射用蒸留水を、Lightning Labmasterミキサーが付いたガラスカーボイに添加した。硫酸アミカシンをカーボイに添加し、溶液を撹拌した。API全部が溶解されるまで、溶液を混合した。溶液の試料を採取しpHを測定した。連続的撹拌によりpHを1.0NのHClで調整し、5.9の目標pHで5.5−6.3以内にした。pH調整後、溶液の最終重量、21,328gに達するまで、十分な量の無菌注射用蒸留水を添加した。最終溶液のpHが許容範囲内にあることを確認した。次に、1.5L/分の速度で15分間、ろ過された窒素で溶液を散布した。次に、溶液を0.22ミクロンの無菌フィルターでろ過した。
【0339】
溶液の充填に先立って、各バイアルを窒素でパージした。4.27±0.08gの目標重量になるように、Cazzoliフィルター/ストッパー装置を使用して、5mlの琥珀色バイアルに、溶液を重量で充填した。20mmのテフロン(登録商標)加工のストッパーでバイアルに栓をし、アルミ製のフリップオフ蓋で固定した。充填されたバイアルを2−8℃で保管した。組成を以下の表5に要約する。
【0340】
【化31】

分解産物、外観、pH、微粒子および無菌のような全体のアミカシン活性、関連物質に関して、表Aに示すように、実質的に作られた製剤に対して、経時的安定性を評価した。したがって、試料を5℃(表B)で、25℃/60%の相対湿度(RH)(表C)、および40℃/75%RH(表D)で保管した。各場合において、20mmのテフロン(登録商標)製ストッパーおよび20mmのアルミ製オーバーシールの付いた5mLの琥珀色ガラスバイアルに試料を保管した。これらの保管条件それぞれの結果を、表B、C、およびDにそれぞれ示した。
【0341】
【化32】

【0342】
【化33】

【0343】
【化34】

【0344】
【化35】

図16は、表B、C、およびDに提供される安定性のデータのいくつかのグラフ表示である。図において、ひし形の印が付けられた線は、5℃の保管条件を表し、四角の印が付けられた線は、25℃/60%RHの保管条件を、そして三角の印が付けられた線は、40℃/75%RHの保管条件を表す。図は、関連物質、すなわち不純物が保管時間にわたって減少する割合を示す。これは、不純物の検出能の機能であると考えられる。しかしながら、組成物は、不純物に関して、長時間にわたって安定していたことが明らかである。
【0345】
ここで本発明について十分に説明したことで、本発明またはそのいかなる実施例の範囲から逸脱することなく、幅広く同等の範囲の条件、剤形、および他のパラメータによって本発明の方法を実行することができることを、当業者は理解するであろう。
【0346】
本明細書で引用されたすべての特許および出版物は、参照することにより、その全体が本明細書に組み込まれる。いかなる出版物の引用も、出願日前の開示のためであり、かかる出版物が先行技術である、または本発明が、先行発明に基づいてかかる出版物に先行する権利がないという承認と解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0347】
次の発明の説明において、示される複数の限定されない図面を参照しながら本発明をさらに説明する。ここで、
【図1A】図1Aは、本発明の実施例に従って、肺への薬物送達システムの構成要素を図示する。
【図1B】図1Bは、本発明の実施例に従って、肺への薬物送達システムにおいて使用可能な装置の実施例を示す。
【図2A】図2Aは、本発明の実施例に従って、肺への薬物送達システムの典型的なオフ・ベンチレーター構造を示す。
【図2B】図2Bは、エアロゾル化薬剤の送達に有用な、本発明の1つ以上の実施例の薬剤送達装置の概略図である。
【図3】図3は、充填質量および溶液濃度の関数として、ゲンタマイシンの回収された薬剤の総量(ネブライザー+フィルター)を示す。
【図4】図4a−bは、15分間(図4a)および30分間(図4b)の噴霧化後の溶液濃度および充填容積の関数として、ゲンタマイシンの放出された投与量を示す。
【図5】図5は、充填容積および溶液濃度の関数として、ネブライザー内に残ったゲンタマイシンの残留投与量を示す。
【図6】図6は、充填容積の関数として、噴霧されたバンコマイシンの分布を示す(標準生理食塩水中60mg/mlの溶液)。
【図7】図7は、0.45%の生理食塩水中のバンコマイシン溶液の場合の、溶液濃度および充填容積の関数として、放出された投与量を示す。
【図8】図8は、注射用蒸留水(WFI)中のバンコマイシン溶液の場合の、溶液濃度および充填容積の関数として、放出された投与量を示す。
【図9】図9は、溶液濃度および充填容積の関数として、噴霧されたゲンタマイシンの体積中央径を示す。
【図10】図10は、異なる溶液濃度およびネブライザー充填容積での、ゲンタマイシンの粒径の累積分布を示す。
【図11】図11は、溶液濃度および充填容積の関数として、噴霧されたバンコマイシン(WFI中の溶液)の体積中央径を示す。
【図12】図12は、異なる溶液濃度およびネブライザー充填容積での、噴霧されたバンコマイシン(WFI中の溶液)の粒径の累積分布を示す。
【図13】図13は、ネブライザー充填容積の関数として、噴霧されたバンコマイシン(標準生理食塩水中60mg/mlの溶液)の体積中央径を示す。
【図14】図14は、溶液濃度および充填容積の関数として、噴霧されたバンコマイシン(0.45%の生理食塩水中の溶液)の体積中央径を示す。
【図15】図15は、抗生物質およびプラセボ溶液の体積中央径を示す。
【図16】図16は、本発明の1つ以上の実施例に従った、製剤の経時的なアミカシンの安定性(%の関連物質として)を示すグラフであり、ここで前記製剤は、3つの異なる保管条件で保管された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約100mg/mlから約200mg/mlの量で存在する、抗グラム陰性菌抗生物質、またはその塩を含有するエアロゾル化用水性組成物。
【請求項2】
前記水性組成物が、本質的に前記抗グラム菌陰性抗生物質またはその塩と水から成る、請求項1の水性組成物。
【請求項3】
前記抗グラム菌陰性抗生物質、またはその塩の量が約110mg/mlから約150mg/mlである、または、薬効力が約500μg/mgから約1100μg/mgである、または、その両方である、請求項1の水性組成物。
【請求項4】
前記抗グラム陰性菌抗生物質またはその塩が、アミノグリコシド抗生物質またはその塩から成る、請求項1の水性組成物。
【請求項5】
前記抗グラム陰性菌抗生物質、またはその塩が、ゲンタマイシン、アミカシン、カナマイシン、ストレプトマイシン、ネオマイシン、ネチルミシン、パラメシン、トブラマイシン、およびその塩から選択される少なくともひとつの要素を有する、請求項1の水性組成物。
【請求項6】
前記抗グラム陰性菌抗生物質、またはその塩が、アミカシンまたはその塩を含有する、請求項1の水性組成物。
【請求項7】
前記水性組成物が、約4から約6のpHを有する、請求項1の水性組成物。
【請求項8】
前記水性組成物が、約90mOsmol/kgから約500mOsmol/kgのオスモル濃度を有する、請求項1の水性組成物。
【請求項9】
前記水性組成物が、保存剤を含有しない、請求項1の水性組成物。
【請求項10】
付加活性剤をさらに含有する、請求項1の水性組成物。
【請求項11】
抗炎症剤および気管支拡張剤から選択される付加活性剤をさらに含有する、請求項1の水性組成物。
【請求項12】
β―アゴニスト、抗ムスカリン剤、およびステロイドから選択される気管支拡張剤をさらに有する、請求項1の水性組成物。
【請求項13】
アルブテロールをさらに有する、請求項1の水性組成物。
【請求項14】
オスモル濃度調整剤をさらに含有する、請求項1の水性組成物。
【請求項15】
前記水性組成物が、25℃で1年間保存されても、水性組成物内に沈殿物を形成しない、請求項1の水性組成物。
【請求項16】
抗グラム陽性菌抗生物質をさらに含有する、請求項1の水性組成物。
【請求項17】
前記抗グラム陰性菌抗生物質、またはその塩が、ゲンタマイシン、アミカシンまたはその塩を含有し、前記水性組成物が、本質的にゲンタマイシンまたはその塩と水から成り、前記ゲンタマイシンまたはその塩が、約80mg/mlから約140mg/mlの量で存在し、前記水性組成物が約3から約7のpHを有し、前記水性組成物が約120mOsmol/kgから約300mOsmol/kgのオスモル濃度を有する、請求項1の水性組成物。
【請求項18】
本質的に、
抗グラム陰性菌抗生物質またはその塩と、
気管支拡張剤と、
水と、
から成る、水性組成物。
【請求項19】
前記抗グラム陰性菌抗生物質またはその塩が、約100mg/mlから約200mg/mlの量で存在する、請求項18の水性組成物。
【請求項20】
前記抗グラム陰性菌抗生物質またはその塩が、アミノグリコシド抗生物質、またはその塩を含有する、請求項18の水性組成物。
【請求項21】
前記水性組成物が、約3から約7のpHと、約90mOsmol/kgから約500mOsmol/kgのオスモル濃度とを有する、請求項18の水性組成物。
【請求項22】
前記気管支拡張剤が、少なくとも約1mg/mlの量で存在する、請求項18の水性組成物。
【請求項23】
前記気管支拡張剤が、β―アゴニスト、抗ムスカリン剤、およびステロイドから選択される、請求項22の水性組成物。
【請求項24】
前記気管支拡張剤が、アルブテロールまたはその塩を含有する、請求項23の水性組成物。
【請求項25】
25℃で、1.0雰囲気における、抗グラム陽性菌または、その塩の溶解限度の約0.6から約0.9倍の濃度で存在する、抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩を含有する、水性組成物。
【請求項26】
前記抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩が、約60mg/mlから約140mg/mlの量で、または90mOsmol/kgから約500mOsmol/kgのオスモル濃度で、またはその両方で存在する、請求項25の水性組成物。
【請求項27】
前記抗グラム陽性菌抗生物質、またはその塩が、マクロライドまたはその塩を含有する、請求項25の水性組成物。
【請求項28】
前記抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩が、バンコマイシン、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、およびその塩から選択される、請求項25の水性組成物。
【請求項29】
前記水性組成物が、保存剤を含有しない、請求項28の水性組成物。
【請求項30】
抗炎症剤、気管支拡張剤、オスモル濃度調整剤、およびその組み合わせから選択される付加活性剤をさらに含有する、請求項25の水性組成物。
【請求項31】
β−アゴニスト、抗ムスカリン剤、およびステロイドから選択される気管支拡張剤をさらに含有する、請求項30の水性組成物。
【請求項32】
アルブテロールまたはその塩をさらに含有する、請求項25の水性組成物。
【請求項33】
前記水性組成物は、粉末から作られており、その粉末は、25℃で一年間保存された後でも、900μg/mlを超える効力を有する、請求項25の水性組成物。
【請求項34】
前記抗グラム陽性菌抗生物質または、その塩は、バンコマイシンまたはその塩を含有し、前記オスモル濃度調整剤が塩化ナトリウムを含有し、前記水性組成物が、本質的にバンコマイシンまたはその塩と、塩化ナトリウムと、水から成り、前記バンコマイシンまたはその塩が、約60mg/mlから約140mg/mlの量で存在し、前記水性組成物が約3から約7のpHを有し、前記水性組成物が約120mOsmol/kgから約300mOsmol/kgのオスモル濃度を有する、請求項25の水性組成物。
【請求項35】
容器と、
抗生物質またはその塩を含有し、保存剤を含有しない、水性組成物と、
を有する単位用量。
【請求項36】
前記抗生物質が、抗グラム陰性菌を含有し、約90mg/mlから約200mg/mlの濃度で存在する、請求項35の単位用量。
【請求項37】
前記抗生物質が、アミカシンを含有する、請求項36の単位用量。
【請求項38】
前記抗生物質が、抗グラム陽性菌を含有し、約550mg/mlから約900mg/mlの濃度で存在する、請求項35の単位用量。
【請求項39】
前記抗グラム陽性菌またはその塩が、マクロライドまたはその塩を含有する、請求項38の単位用量。
【請求項40】
前記抗生物質が、アンフォテリシンBを含有する、請求項35の単位用量。
【請求項41】
第一抗生物質またはその塩を含有する第一水性溶液を含む第一容器と、
第二抗生物質またはその塩を含有する第二水性溶液を含む第二容器と、
を含み、
前記第一抗生物質と、前記第二抗生物質が同じか、または異なり、
前記第一抗生物質の濃度または量、またはその両方が、前記第二抗生物質の濃度または量、またはその両方と同じか、または異なる、
キット。
【請求項42】
前記第一水性溶液量が、約2mlから約5mlであり、前記第一水性溶液量が、約5mlから約8mlであり、第一抗生物質またはその塩の濃度が、100mg/mlから約120mg/mlであり、第二抗生物質またはその塩の濃度が、約120mg/mlから約140mg/mlである、請求項41のキット。
【請求項43】
前記抗グラム陰性菌抗生物質またはその塩が、アミノグリコシド抗生物質またはその塩を含む、請求項41のキット。
【請求項44】
前記抗グラム陰性菌抗生物質またはその塩が、アミカシンまたはその塩を含む、請求項43のキット。
【請求項45】
エアロゾル発生器をさらに含む、請求項41のキット。
【請求項46】
振動メッシュ式ネブライザーをさらに含む、請求項41のキット。
【請求項47】
抗グラム菌陰性抗生物質またはその塩を含有する第一水性溶液を含む第一容器と、
抗グラム菌陰性抗生物質またはその塩を含有する第二水性溶液を含む第二容器と、
を含み、前記第一溶液の前記抗グラム菌陰性抗生物質の濃度、量、またはその両方が、前記第二溶液の前記抗グラム菌陰性抗生物質の濃度、量、またはその両方と異なる、キット。
【請求項48】
エアロゾル発生器をさらに含む、請求項47のキット。
【請求項49】
振動メッシュ式ネブライザーをさらに含む、請求項48のキット。
【請求項50】
容器と、
抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩を含む粉末と、
を含み、前記粉末が、約550mgから約900mgの量で含まれる、
単位用量。
【請求項51】
前記抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩が、マクロライドまたはその塩を含有する、請求項50の単位用量。
【請求項52】
前記抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩が、バンコミシン、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、およびその塩から選択される請求項50の単位用量。
【請求項53】
前記粉末が約5m/gから約20m/gの比表面積を有する、請求項50の単位用量。
【請求項54】
抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩を含む第一組成物を含む、第一容器と、
水を有する第二組成物を含む第二容器と、
を含み、前記第一組成物および/または前記第二組成物が、オスモル濃度調節剤を有する、キット。
【請求項55】
前記第一組成物が、粉末を含む、請求項54のキット。
【請求項56】
第一組成物が、前記オスモル濃度調節剤調節剤を含む、請求項54のキット。
【請求項57】
前記第二組成物が、前記オスモル濃度調節剤調節剤を含む、請求項54のキット。
【請求項58】
エアロゾルイントロデューサーをさらに含む、請求項54のキット。
【請求項59】
振動メッシュ式ネブライザーをさらに含む、請求項58のキット。
【請求項60】
第一抗生物質またはその塩を含む第一容器と、
第二抗生物質またはその塩を含む第二容器と、
を含み、前記第一抗生物質と、前記第二抗生物質が、同じかまたは異なり、
前記第一容器の前記第一抗生物質の濃度または量、またはその両方が、前記第二容器の前記第二抗生物質またはその塩の、濃度または量、またはその両方と異なる、キット。
【請求項61】
前記第一抗生物質と、前記第二抗生物質のそれぞれが、粉末を含む、請求項60のキット。
【請求項62】
前記第一抗生物質と、前記第二抗生物質のそれぞれが、液体を含む、請求項60のキット。
【請求項63】
前記第一抗生物質、または前記第二抗生物質のいずれかが、粉末を含む、前記第一抗生物質、または前記第二抗生物質のもう一方が、液体を含む、請求項60のキット。
【請求項64】
前記溶液が、保存剤を含有しない、請求項60のキット。
【請求項65】
エアロゾル発生器をさらに含む、請求項60のキット。
【請求項66】
振動メッシュ式ネブライザーをさらに含む、請求項65のキット。
【請求項67】
抗生物質製剤を必要とする患者へ投与する方法であって、
前記抗生物質製剤を患者の肺系統へ投与するために、抗生物質製剤を噴霧するステップ、
を含み、前記抗生物質製剤は、約100mg/mlから約200mg/mlの抗グラム陰性菌抗生物質またはその塩を含有する、投与方法。
【請求項68】
前記抗生物質製剤が、本質的に抗グラム陰性菌抗生物質またはその塩、および水から成る、請求項67の方法。
【請求項69】
前記噴霧するステップが、約10μmより小さい空気動力学的中央粒子径を有する液滴を形成することを含む、請求項67の方法。
【請求項70】
前記噴霧するステップが、振動メッシュ式ネブライザー内の、前記抗生物質製剤を噴霧することを含む、請求項69の方法。
【請求項71】
経肺投与が、人工呼吸器関連肺炎の予防治療を含む、請求項67の方法。
【請求項72】
抗生物質製剤を必要とする患者へ投与する方法であって、
患者の器官に管を挿入するステップと、
患者の肺に前記抗生物質製剤を投与するために、抗生物質製剤を噴霧するステップと、
を含み、前記抗生物質製剤は、本質的に抗グラム陰性菌抗生物質またはその塩、および水から成る、
投与方法。
【請求項73】
前記経肺投与が、人工呼吸器関連肺炎、院内感染肺炎、地域感染型肺炎、またはその併発の予防治療を含む、請求項72の方法。
【請求項74】
前記噴霧するステップが、振動メッシュ式ネブライザー内の前記抗生物質製剤を噴霧することを含む、請求項72の方法。
【請求項75】
抗生物質製剤を必要とする患者へ投与する方法であって、
抗生物質製剤を形成するために、溶剤内の抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩を溶解するステップと、
前記抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩は、25℃、1.0気圧における前記抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩の溶解限度の約0.6から約0.9倍の濃度で存在し、
患者の肺に前記抗生物質を投与するために、抗生物質を噴霧するステップと、
を含む、投与方法。
【請求項76】
抗生物質製剤を必要とする患者へ投与する方法であって、
抗生物質製剤を形成するために、溶剤内の抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩を溶解するステップと、
患者の肺に前記抗生物質を投与するために、抗生物質を噴霧するステップと、
を含み、前記噴霧は、前記溶解の約16時間以内に行われる、
投与方法。
【請求項77】
抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩から成る粉末を製造する方法であって、
約60mg/mlから約120mg/mlの濃度の溶液を製造するために、溶剤内の抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩を溶解するステップと、
前記粉末を製造するために、前記溶液を凍結乾燥するステップと、
を含む、前記粉末を製造する方法。
【請求項78】
前記溶剤が水を含む、請求項77の方法。
【請求項79】
前記溶液が、賦形剤を含有しない、請求項77の方法。
【請求項80】
前記溶液が、抗凍結剤を含有しない、請求項77の方法。
【請求項81】
前記粉末が、約5wt%より少ない水分含量である、請求項77の方法。
【請求項82】
前記凍結乾燥が、溶解後約8時間以内に行われる、請求項77の方法。
【請求項83】
前記粉末が、25℃、1.0気圧において、手動での撹拌により、約60秒より少ない時間で、水に再構成することができる、請求項77の方法。
【請求項84】
抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩を含む、粉末を製造する方法であって、
約4.5mlから約5.5mlの体積の溶液を製造するために、抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩を溶剤中に溶解するステップと、
乾燥粉末を製造するために、前記溶液を凍結乾燥するステップと、
を含む、前記粉末を製造する方法。
【請求項85】
前記溶液中の前記抗グラム陽性菌抗生物質またはその塩の濃度が、約60mg/mlから約120mg/mlである、請求項84の方法。
【請求項86】
前記溶液が、賦形剤を含有しない、請求項84の方法。
【請求項87】
前記溶液が、抗凍結剤を含有しない、請求項84の方法。
【請求項88】
前記粉末が、約5wt%より少ない水分含量である、請求項84の方法
【請求項89】
前記凍結乾燥が、溶解後約8時間以内に行われる、請求項84の方法。
【請求項90】
前記粉末が、25℃、1.0気圧において、手動での撹拌により、約60秒より少ない時間で、水に再構成することができる、請求項84の方法。
【請求項91】
前記凍結乾燥が、凍結溶液を製造するために、前記溶液のろ過、および前記ろ過された溶液の凍結を含む、請求項84の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2009−510077(P2009−510077A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−533562(P2008−533562)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/037651
【国際公開番号】WO2007/041156
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(500138043)ネクター セラピューティックス (32)
【Fターム(参考)】