抗癌化合物の使用
本発明は、式(I)で表わされる化合物、その製造方法、前記化合物を含む医薬製剤、及び子宮頸部及び卵巣の癌細胞の増殖を阻害することによる癌の予防と治療のための医薬製剤の製造に於ける前記化合物の使用に関する。
【化1】
【化1】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然の治療用化合物及びその医療上の使用に関する。より詳細には、本発明は、子宮頚癌及び卵巣癌の治療用の医薬製剤の製造に用いる活性薬剤、ゼルンボン(zerumbone)として知られる天然化合物に関する。また、本発明は、前記化合物の抽出方法及び前記化合物を含有する医薬組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
癌とは、主に細胞増殖の非制御から始まり、隣接する正常な組織又は器官に浸潤し、その場所で新たな増殖の基盤を確立し、最終的には死を招く恐れのある疾患の種類の総称である。近年において、細胞周期若しくはアポトーシスの制御並びに癌遺伝子及び腫瘍抑制遺伝子を含む新たな標的の開発において著しい進歩が得られた。しかしながら、これらの尽力にもかかわらず、癌の発症率は増加し続けている。
【0003】
最も典型的な3種類の抗癌治療は、外科手術、放射線療法及び化学療法である。治療は、薬物又は他の因子を用いて体内の癌細胞を除去するか又は破壊することを目的とする。
【0004】
外科手術は、癌の種類によっては非常に成功率の高い治療法となりうるが、全ての者がこの治療法を選択できるわけではない。癌が悪性の腫瘍の状態にあるか、腫瘍が一ヶ所に存在する(局在する)場合、腫瘍と周辺の患部組織を安全に「切り取る」ことは可能であろう。癌が身体の他の領域に広がってしまっている場合又は肝臓又は脳等の生命維持に不可欠な器官を損傷することなく腫瘍を取り出せない場合には、外科手術は不可能になるであろう。
【0005】
癌治療は、特別な種類のX線、γ線又は電子の形態にある放射線を用いて、癌細胞が増殖できなくなるようにこれらを破壊する。通常は、治療において痛みを感じることはない。放射線治療は、場合によっては、この治療法のみで有用な場合もあれば、外科手術等の他の治療法と共に用いられる場合もある。外科手術と放射線療法両方の組合せは、一ヶ所で増殖する腫瘍の治療に用いられる場合がある。
【0006】
化学療法では薬物を用いて癌細胞を攻撃する。単に「化学療法」という文字を見ただけでも、副作用の負担が大きな場合もあることから、大変な不安を引き起こす場合がある。しかしながら、全ての者が激しい副作用を被るわけではない。化学療法による副作用は、しばしば他の薬物を用いることで軽減できる。通常、化学療法は、癌が身体の他の領域に広がってしまっている場合に用いられる。化学療法は、外科手術及び放射線療法との組み合わせで用いられる場合もある。場合によっては、外科手術で腫瘍を取り除いて、その後に化学療法により全ての癌細胞を確実に死滅させることになる。化学療法の欠点の一つとしては、乳癌、大腸癌及び肺癌等の一般的な上皮由来腫瘍の治療において効果を奏しない場合があることが挙げられる。これは、主に、複数種類の抗癌剤に対する癌細胞の耐性によるものであり、抗ガン剤の適用が非常に限定されることになる。
【0007】
最新の抗癌剤は、癌細胞が正常細胞よりも速く分裂するという事実に基づいて開発されており、DNA複製又は合成を阻害する化合物、代謝阻害剤、細胞分裂阻害剤、ヌクレオチド類似体及びトポイソメラーゼ阻害剤に代表される。従って、抗ガン剤は、典型的に癌細胞の分裂と生存に対する効果を有する。従来の抗癌剤は、癌細胞の迅速な分裂に焦点を当てていたことから、これらの抗癌剤は、毒性を有していたり(例えば、体毛が抜け落ちる)や通常の条件下でも分裂速度の速い正常細胞(例えば、骨髄細胞)にも作用するといった不都合を有している。
【0008】
別の種類の治療法としては、生物療法が挙げられる。この治療法では、身体の免疫系を誘起させるタンパク質を用いてより多くの白血球(又はリンパ球)を生産する。癌細胞を攻撃して死滅させることのできる2種類のリンパ球は、T細胞及びB細胞である。タンパク質によりT細胞及びB細胞のリンパ球が癌を死滅させる能力が増大される。生物療法は、外科手術、放射線療法又は化学療法との組み合わせで用いることも可能である。
【0009】
ホルモン療法を用いて乳癌又は前立腺癌を治療する場合もある。エストロゲンというホルモンは、乳癌の腫瘍の増殖を加速させることができる。同様に、テストステロンというホルモンは、前立腺内の癌性腫瘍の増殖を加速させることができる。別のホルモンを含有する薬物を用いてエストロゲンとテストステロンの作用を遮断することができる。別のケースでは、卵巣又は精巣を取り除く外科手術を採用する場合もある。これらの器官と取り除くことにより、体内のエストロゲン又はテストステロン量が減少する。ホルモン療法は、しばしば、化学療法又は放射線療法に追加して用いられる。
【0010】
植物抽出物は、種々の疾患の治療及び予防において治療の潜在的能力を有すると信じられている。Zingiber zerumbetの根茎は、抗炎症性の民間医薬として使用される、よく知られた生薬である(Elliot et al., 1987)。Z. zerumbetは、Zingiberaceae(ショウガ科)に属しており、パインコーンジンジャー(pinecone ginger)、シャンプージンジャー(shampoo ginger)、アワプヒクアヒウィ(Awapuhi kuahiwi)(ハワイ名)及び「レンポヤン(lempoyang)」(マレーシア名)という一般的名称を有する。一般的に、東南アジア地域においては、複数種のZingiberaceaeが、スパイス、薬物、香料及び特定の色素の原料として用いられている(Burkill, 1966)。
【0011】
野生種のショウガであるZingiber zerumbetの精油の主成分であるゼルンボンは、架橋結合したジエノン系を含有する単環式セスキテルペンである(Kitayama et al., 2002)(図1)。一部地域で抗炎症薬として用いられる根茎中に大量のアキラル性セスキテルペンであるゼルンボンが検出された(D'Odorico et al., 2001)。この化合物は、この植物の食用部分、特に、伝統料理で用いられる若い茎と花序中に存在する(Kankuri et al., 1999)。
【0012】
Matthes et al.(1980)では、ゼルンボンが細胞毒性を示すことが報告され、一方で、Murakami et al.(1999)には、ゼルンボンが、12-O-テトラデコニル-13-アセテート誘導性のエプスタイン‐バーウイルスの活性化に対する有力な阻害剤であることが記載されている。興味深いことに、リポ多糖(LPS)及びインターフェロン(IFN)-□で処理したRAW264.7マクロファージ内での誘導性の一酸化窒素合成酵素(iNOS)とCOX-2の発現、並びに白血球内での一酸化窒素(NO)/O2生成をゼルンボンが阻害することが判明した(Tanaka et al., 2001)。また、ゼルンボンは、TNF-□の放出を抑制し、種々のヒト由来大腸腺癌セルラインのアポトーシスを誘導することも示されている(Murakami et al., 2002)。Murakami et al.(2003a)では、ゼルンボンが、マウスのDSS誘導性大腸炎に対して顕著な抑制効果を示すことが実証されている。また、最近では、ゼルンボンが腫瘍プロモーターの12-O-テトラデカノイルフォルボール-13-アセテート(TPA)に誘導されるエプスタイン‐バーウイルスの活性化を強力に抑制することも判明している。
【0013】
大腸のクリプト細胞核内のAgNOR数がゼルンボンにより低下している。これらの知見から、発癌物質誘導性AFCの発達におけるCOX-2発現、大腸粘膜の細胞増殖活性及びフェーズII解毒酵素の誘起の抑制を通じた、ZIIの潜在的な化学的予防能力が示唆されるであろう(Tanaka et al., 2001)。
【0014】
大部分の西側諸国における広範囲な集団スクリーニングにより、子宮頸癌の発症率と死亡率は大幅に低下したが、しかしながら、子宮頸癌は、依然として世界規模で女性に対して甚大な影響を有している(Segnan, 1994)。毎年、約400,000名の女性が子宮頸癌を発症し、このうち250,000名がこの癌由来の原因で死亡していることが報告されている(Parkin et al., 1999)。
【0015】
一方で、卵巣癌は、西側諸国において婦人科関連死因の第1位となっており、女性では4番目に高頻度な悪性腫瘍である(Greenlee et al, 2000)。先進諸国では約75人に1人が卵巣癌を患い、具体的な症状がなく、多くの場合診断が遅れることから、患者の少なくとも3分の2に当たる女性が末期症状を示す(Quinn, 2003)。
【0016】
シスプラチンは、一貫して、進行した子宮頸癌又は再発した子宮頸癌の治療に最も有効な単一の細胞毒性薬剤としての能力を証明し続けている。しかしながら、この薬物に応答性を示す患者の比率は、23%〜50%であり、子宮頸癌を患う患者の転帰を向上させる新たな活性薬物が必要である(Savarese and Cognetti, 2003)。これに加え、白金系化学療法は、上皮性卵巣癌の最も効果的な治療法である(Piccart et al. 2000)。
【0017】
先行技術では、ヒトの子宮頸部及び卵巣内の癌を阻害する天然の植物性化合物について未だ報告がなされていない。更にまた、先行技術では、病理/生理学的状態の効果的な治療方法が見つかっておらず、種々の有害な薬物反応を伴う。
【0018】
上記及び種々の疾患を患う患者数の増加を鑑みるに、全ての者が、より副作用が少なく、より良好な薬物を望んでいる。従って、癌細胞のアポトーシスを誘導して癌の転移を阻害する効果を有し、加えて、癌細胞の増殖をより効果的に阻害する天然化合物を提供することは有益なこととなるであろう。また、前記化合物は毒性を有していないため、癌を予防して治療するための機能性食品として用いることも可能である。
【0019】
癌、特に、子宮頸癌及び卵巣癌の治療用の新たな薬物を提供することが本発明の目的である。本発明は、現在の技術水準の癌の治療方法の不都合を克服する、強力な抗癌特性を有する天然化合物を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の第1の局面によれば、以下の式を有する化合物の、癌の予防及び治療用の医薬製剤の製造における使用が提供される。
【0021】
【化1】
【0022】
従って、本発明に係る化合物は、アポトーシス機構によって子宮頸部及び卵巣の癌細胞の増殖を阻害する所望の効果を提供する。
【0023】
本発明の別の局面によれば、Zingiber属の植物から非極性抽出物を調製すること、前記非極性抽出物を、シリカゲルカラムを通して、1種類の有機溶媒及び複数の有機溶媒の混合物で順に溶離する分画化に付することで、Zingiber属の植物由来の非極性抽出物の分画を得ること、そして再結晶法、分配法及びクロマトグラフィー法により前記化合物を精製することを含む、上記化合物の抽出及び精製方法が提供される。
【0024】
前記植物は、Zingiber zerumbet及びZingiber aromaticumからなる群から選択される。
【0025】
前記有機溶媒は、ヘキサン及び/又は酢酸エチルからなる群から選択可能である。
【0026】
本発明の更なる別の局面では、有効成分として上記化合物を強力な抗ガン特性を示すのに有効であり、それによって、子宮頸癌及び卵巣癌を伴う状態の予防及び治療に有用な量で含む医薬製剤が提供される。
【0027】
前記化合物は、アポトーシス機構による癌細胞に対する選択的な細胞毒性を誘導する、化学療法剤として作用することができる。本発明の医薬製剤は、許容可能な担体に含まれて提供され、粉末、顆粒、錠剤、カプセル、水性薬物又は注射液等、当業者に知られるいずれの方法でも投与可能である。
【0028】
Zingiber属の植物由来の非極性有機抽出物から得られる上記の化合物の分画は、標準的な方法により、ソフトゲルカプセルを含むカプセル、錠剤、ガレヌス製剤、粉末、顆粒、水性薬物、注射液等の臨床使用用の種々の医薬製剤へと製剤することが可能であり、この場合、前記化合物は、その効能及び毒性に基づく治療有効量で有効成分として、単体又は他の化学物質との組み合わせで存在し、そして経口、舌下、静脈内、筋肉内等の様々な投与経路を通じて投与される。有効量とは、アポトーシス機構によって、癌細胞、特に、子宮頸癌及び卵巣癌に対する細胞毒性を増大及び/又は誘導するのに十分な量である。
【0029】
細胞毒性を増大及び/又は誘導する有効量は、以下に依存するであろう:治療する状態の重症度;年齢、生理条件、大きさ及び体重等の患者個人のパラメーター;併用される治療及び薬物との相互作用;治療頻度;及び投与方法。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1には、本発明に係るゼルンボン抽出物の高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)分析が例示されている。
【図2】図2には、本発明に係るゼルンボン抽出物の液体カラム質量分析(Liquid Column Mass Spectrometry:LCMS)分析が例示されている。
【図3】図3には、ゼルンボンの子宮頸癌細胞(HeLa)に対する細胞毒性効果が例示されている。
【図4】図4には、シスプラチンの子宮頸癌細胞(HeLa)に対する細胞毒性効果が例示されている。
【図5】図5には、ゼルンボン及びシスプラチンをIC50値で用いて処理した72時間後の卵巣癌細胞(Caov-3)の形態変化が例示されている(倍率20x10)。(A)コントロール、(B)ゼルンボン及び(C)シスプラチン。
【図6】図6には、ゼルンボン及びシスプラチンをIC50値で用いて処理した72時間後の子宮頸癌細胞(HeLa)の形態変化が例示されている(倍率20x10)。(A)コントロール、(B)ゼルンボン及び(C)シスプラチン。
【図7】図7には、未処理(コントロール)のヒト卵巣癌細胞(Caov-3)の(A)24時間後;(B)72時間後の共焦点形態試験が例示されている。
【図8】図8には、18.5 mMのゼルンボンによるヒト卵巣癌細胞(Caov-3)の(A)24時間後;(B)48時間後の形態試験が例示されている。
【図9】図9には、18.5 mMのゼルンボンによるヒト卵巣癌細胞(Caov-3)の(A)48時間後;(B)72時間後の形態試験が例示されている。
【図10】図10には、ゼルンボン及びシスプラチンでの治療の48時間後にAO/PIで染色し、レーザー走査性共焦点顕微鏡で観察した子宮頸癌細胞(HeLa)の形態変化が示されている。倍率は、100x10:(A)コントロール、(B)ゼルンボン及び(C)シスプラチン。矢印B:細胞膜の小疱形成、N:辺縁趨向及び核損傷を伴う核凝縮。
【図11】図11には、0〜45 μmの濃度範囲のゼルンボンで処置した後の子宮頸癌細胞(HeLa細胞)の細胞周期の進行が例示されている。
【図12】図12には、IC50値でそれぞれ24時間及び48時間処理した卵巣癌細胞(Caov-3細胞)のゼルンボン及びシスプラチン誘導性アポトーシスが例示されている。アポトーシス細胞は、TUNELアッセイ後に手作業で定量した。データは、2つの重複するサンプルから得た平均値±標準偏差で示されている。シングルダガーは、コントロールと比較した場合にp<0.05であることを示す;ダブルダガーは、コントロールと比較した場合にp<0.01であることを示す(One-Way ANOVAにより解析)。
【図13】図13には、IC50値でそれぞれ24時間及び48時間処理した子宮頸癌細胞(HeLa細胞)のゼルンボン及びシスプラチン誘導性アポトーシスが例示されている。アポトーシスは、TUNELアッセイ後に手作業で定量した。データは、2つの重複するサンプルから得た平均値±標準偏差で示されている。ダブルダガーは、コントロールと比較した場合にp<0.01であることを示す(One-Way ANOVAにより解析)。
【図14】図14には、正常マウスの、明確な脈管形成が認められず、細胞質に対する核の比率が低い子宮頸部上皮細胞を示す顕微鏡写真である。
【図15】図15は、メスのbalb/cマウスの誘導性子宮頸癌に対する10mg/kgのシスプラチンを用いた治療を示す顕微鏡写真である。上皮層の3分の1に限定される軽度の核異型を伴う軽度の形成異常(CIN I)(倍率10x20)。
【図16】図16は、メスのbalb/cマウスの誘導性子宮頸癌に対する16mg/kgのゼルンボンを用いた治療を示す顕微鏡写真である。上皮層の3分の1(黒色矢印)に限定される軽度の形成異常(CIN I)及び軽度の核異型、並びに脈管形成(青色矢印)(倍率10x20)。
【図17】図17は、メスのbalb/cマウスの誘導性子宮頸癌に対する通常の生理食塩水を用いた治療を示す顕微鏡写真である。上皮の全層に限定される重度の核異型を伴う重度の形成異常(CIN III)及び重度の脈管形成(倍率10x20)。
【図18】図18は、マウスの治療群の血清IL-6濃度を示すヒストグラムである。各値は、P<0.01の有意性を有する(SPSSバージョン12を用いたOne-Way ANOVAにより解析)。
【発明を実施するための形態】
【0031】
Zingiber zerumbetの植物は、茎に沿って反対に並ぶ長くて細い葉を特徴とし、約7フィートの高さにまで成長する。この植物種は、東南アジアが原産であるが、世界中の熱帯地方及び亜熱帯地方で広く栽培されており、いくつかの地方では帰化している。東南アジア地方では、一般的に、複数種のZingiberceaeが、スパイス、薬物、香料及び特定の色素の供給源として用いられる。
【0032】
未加工の植物性材料の加工に関しては、有効成分又はセスキテルペンであるゼルンボンは、植物の1部分に局在していると判断された。有効成分が抽出される植物部分は、根茎であり、この部分は肉厚の茎として特徴付けられ、地面に沿って又は地中に伸び、根茎からは根と芽が伸びる。本発明の実施においては、前記植物の根茎部分が取り出され、その後に、個別に又はまとめて利用される。
【0033】
本発明の種々の特徴及び局面は、以下の実施例に更に例示されている。これらの実施例は、本発明の範囲内で実施する方法を当業者に示すために提示されるものではあるが、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は、請求項のみによって定義される。
【実施例1】
【0034】
(粗抽出物の調製)
5 kgのZingiber zerumbetを小片(1〜2mm)にカットし、37℃のオーブンで3週間乾燥させた。乾燥したZingiber zerumbetの小片を粉砕し、粉砕されたZingiber zerumbetサンプル432 gを100%メタノールに3日間浸漬した。次いで、ろ紙を用いてサンプルをろ過した。ゼルンボン等の複数種類の化合物を含むメタノールをコニカルフラスコに回収し、残ったサンプルについては、再度100%メタノールで2回目の浸漬を行い、このメタノール及び抽出物は、ロータリー式蒸発装置を用いて40℃で蒸発させた。この工程を2回繰り返し、最後にろ過した後のサンプルと抽出物を先のサンプル(メタノール+抽出物)と混合して蒸発させると、濃褐色のゴム状に見える粗抽出物が40.3 g得られた。
【実施例2】
【0035】
(非極性抽出物の調製)
粗抽出物をメタノール及び蒸留水と混合し、その後、分液漏斗に注いだ。100%ヘキサンを分液漏斗に加え、漏斗を激しく振って確実に溶液を十分に混和させ、溶液を2層(上層が極性化合物を含有する水層であり、下層が非極性化合物、即ち、ゼルンボンを含有する非極性層)に分離させるために5分間放置した。次に、水層と非水層を別々のコニカルフラスコに回収して分離に付した。再度水層を分液漏斗に注いで100%ヘキサンを添加し、この分離工程を再度3回繰り返した。次に、分離工程で得た非極性層の全てを一つにまとめて丸底フラスコに注ぎ、ロータリー式蒸発装置を用いた蒸発を行うと、ゼルンボンを含む非極性抽出物が20.6グラム得られた。
【実施例3】
【0036】
(非極性抽出物分画の調製)
分画工程は、カラムクロマトグラフィープロセスにより行った。2種類の主な充填剤が含まれ、これらは乾燥充填剤とカラム充填剤であった。乾燥充填剤では、ロータリー式蒸発で得た抽出物(20.6 g)をシリカゲルと共に加え、乾燥粉末(20.Og)が形成されるまで再度ロータリー式蒸発をおこなった。カラム充填物では、シリカゲルをヘキサンと混合し、クロマトグラフィー用カラムに注いだ。
【0037】
次に、20.0グラムの量の粉末化サンプルを吸着剤としての機能を有するシリカゲルカラム(3.5cm x 30.0cm)に注いだ。100%ヘキサンをシリカゲルカラムに添加し、次に、溶離液として、ヘキサンと酢酸エチルの混合物を9:1及び最終的に8:2の比率で添加した。8:2の比率を維持し、ゼルンボンを含む非極性分画がカラムから単離されるまで繰り返した。カラムクロマトグラフィーで単離された分画を少量用(10ml)のバイアルに回収した。
【実施例4】
【0038】
(精製ゼルンボンの単離)
バイアルに回収した分画を乾燥させて結晶を得た。得られた結晶を再結晶させて精製ゼルンボン結晶を得た。次に、結晶をヘキサンで洗浄して不所望の化合物を除去してバイアル中に純粋なゼルンボン結晶を残した。再結晶は約3回繰り返した。再結晶の後、純粋ゼルンボン結晶を乾燥させ、清潔なバイアル中に回収した。5kgの新しいZingiber zerumbetから単離された純粋なゼルンボン結晶の量は、約3.1gであった。
【0039】
上記分画に回収された成分は、薄層クロマトグラフィー(TLC)を用いて測定した。分画のTLCを純粋なゼルンボンのTLCと比較して、いずれの分画にゼルンボンが回収されたのかを決定した。得られたゼルンボンの収率を以下の表に示す。
【0040】
オートサンプラー及び四連溶媒ポンプ(quaternary solvent pump)を用いて高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を行った。分析用逆相カラム(C-18カラム)を用いて分離を行った。40%の水と60%のアセトニトリルからなる混合物を移動相として用いて0.2ml/分の流速で化合物を分離した。
【0041】
図1を参照するに、サンプル溶液のHPLC分析では、16分の保持時間を有する単一高ピークが1つだけ示された。この単一ピークにより、純粋な化合物が単離されたことが確認され、これによって、更に、粗植物抽出物から抽出及び単離された化合物が、主に1種類の単一の化合物から構成されていたことが例証される。HPLC分析で単一ピークが得られたが、単離された化合物の分子量を同定するために、液体クロマトグラフィー質量分析器(LCMS)を用いた更なる分析が必要であった。
【0042】
オートサンプラー及び四連溶媒ポンプを用いて液体クロマトグラフィーLCMSを行った。分析逆相カラム(C-18カラム)を用いて分離を行った。40%(v/v)の1OmM酢酸アンモニウムと60%(v/v)のアセトニトリルからなる混合物を移動相として用いて0.2ml/分の流速で化合物を分離した。データ獲得/プロセッシングソフトウェアシステムを有するコンピューターに連結され、陽イオンモードでインターフェースした大気圧化学イオン化(ACPI)からなるイオントラップ型質量分析器に液体クロマトグラフィーシステムを連結した。
【0043】
図2に示すLCMS分析グラフでは、ゼルンボンのマススペクトルは、陽イオン化モードで試験した。全マススペクトルにおいて最も強度の強いイオンは、プロトン化([M + H]+)分子である。図2を参照するに、LCMS分析では、ポジティブスキャンモード下で化合物がm/z 219 の分子イオン[M + 1]+を有する高フラグメントを生じたことが示された。このフラグメントの分子量は、陽イオンから導き出せる(陽イオン:219.01 - 1 = 218.01)。この計算によれば、上記フラグメントの分子量は、218となり、これは化合物ゼルンボンの分子量である。このフラグメントが質量分析グラフ中に最も豊富に存在する。また、この化合物は、m/z 259でのポジティブプロダクトイオンスキャンモード(MS/MS)でフラグメントイオンを生じており、これは、前駆体イオンからの分子の喪失によるプロダクトイオンとして定めることができる。以下で行う分析では、スペクトル中に25%を超える相対量で存在するプロダクトイオンだけを考慮する。m/z 259でのフラグメントは、相対量が25%未満なので、考慮されない。この知見により、単離された化合物が実際に純粋なゼルンボン結晶であることが適切に確認される。
【0044】
【表1】
【実施例5】
【0045】
(ゼルンボン化合物の同定)
ゼルンボン化合物に対して1H-NMR及び13C-NMRによる分光学的分析を行った。出願人の知る限り、ゼルンボンのスペクトルデータを報告する文献は未だに存在していない。
【0046】
表2の1H-NMRスペクトルデータには、δ 5.968及び6.106でのメタ結合シグナルを示したダブルダブレット及びダブレットの2種類の遍在ピークが示されており、このうち一方は、トリプレットとして検出されたδ 2.43のシグナルを有する0.97 Hzの長距離結合を示していた。δ 3.22のメトキシ基、δ 1.086-1.573の長鎖アルキル側鎖(m, 16H, H-3'-H10')及びδ 1.770(s, 1H, H-2')に起因するシグナルが認められた。
【0047】
【表2】
【0048】
IR: vmax cm-1 : 1654.8 (共有結合C=O), 1386.7及び1341.7 (gem-ジメチル). 1H NMR (CDCl3): 1.04 (3H, s, H-14), 1.17 (3H, s, H-15), 1.51 (3H, s, H-12), 1.77 (3H, s, H-13), 1.87 (1H, d, J=12.8 Hz, H-11), 2.19-2.44 (5H, m, H-1, H-4及びH-5), 5.22 (1H, bd, J=14.8 Hz), 5.83 (1H, d, J=16.4 Hz), 5.95 (1H, d, J=16.4 Hz), 5.99 (1H, bd, J=12.4 Hz, H-6)。
【0049】
ゼルンボンの炭素配置を表3に示す。13C-NMRスペクトルでは、δ 39.210 (s, C-4), 42.142 (s, C-1), 124.905 (s, C-2), 149.271 (s, C-6), 24.261 (s, C-5) 及び136.457(s, C-3)にメトキシル化1,4-ベンゾキノンを示すシグナルが示されている。
【0050】
【表3】
【0051】
13C NMR (CDCI3): 11.76 (C13), 15.18 (C-12), 24.16 (C-14), 24.36 (C-5), 29.39 (C- 15), 37.83 (C-11), 39.40 (C-4), 42.36 (C-1), 124.94 (C-2), 127.11 (C-9), 136.25 (C-3), 137.9 (C-7), 148.84 (C-6), 160.75 (C-10), 204.37 (C-8)。
【0052】
ゼルンボン化合物の化学構造
【0053】
【化2】
【実施例6】
【0054】
(子宮頸癌細胞(HeLa)及び卵巣癌細胞(Caov-3)に対するゼルンボンの作用の評価)
(i)細胞培養
本試験で用いた癌セルラインは、ヒト由来の子宮頸癌セルラインのHeLa(ATCC番号:CCL-2)及び卵巣癌のCaov-3(ATCC番号:HTB-75)であった。HeLa及びCaov-3セルラインは、10% FCS、1%ペニシリン及び1%ストレプトマイシンが補充されたRPMI 1640並びにDMEM(高濃度グルコース)でそれぞれ維持した。細胞は、37℃で5%のCO2を含む湿潤大気下において、25 cm2及び75 cm2組織培養フラスコ中で単層培養系として増殖させた。
【0055】
(ii)細胞播種
血球計を用いてフラスコ内細胞密度を測定した。フラスコの表面から細胞を剥離するためコンフルエント状態の細胞をトリプシン処理した。10 mLの新しい培地をフラスコに加え、細胞を完全に懸濁した。次に、フラスコから10μlの培地をカバースリップを取り付けた血球計に移した。カウントは倒立顕微鏡下で行い、手作業でカウンターを用いて進めた。細胞密度(例えば、1 x 105 細胞/mL)を計算した。マルチチャンネルピペットを用いて100μlの細胞培養溶液を96ウェルマイクロタイタープレートの各ウェルに移した。代わりに、6ウェルマイクロタイタープレートには、2mlの細胞培養溶液をピペットで移した。プレートを5% CO2下で37℃で一晩インキュベートした。
【0056】
(iii)細胞の処理
両方の種類のヒト由来癌細胞を一晩インキュベートした後、細胞をゼルンボンで処理した。各実験におけるゼルンボンの濃度は、実施した実験の最適化に応じて変化させた。コントロール又は非処理細胞には、いずれの化合物での処理を施すこともなく、培地だけを与えた。処理細胞は、次いで5% CO2下で37℃でインキュベートした。
【0057】
(iv)マイクロテトラゾリウム細胞毒性アッセイ(MTTアッセイ)
本アッセイは、生存する癌細胞のミトコンドリアの酵素活性により、可溶性のMTTが不溶性の色素を帯びたホルマザン生成物へと代謝還元されることに基づいており、この生成物は、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した後に分光学的分析によって測定できる(Carmichale et al., 1987)。MTTアッセイは、Kumi-Diaka et al. (1998)に記載される方法に僅かな変更を加えて行った。使用したMMT溶液の濃度は、5 mg/mLであった。MTT溶液は、250 mgのMTT粉末を50 mLのリン酸緩衝食塩水(PBS)に溶解させて調製した。0.2ミクロンのシリンジフィルターを用いて溶解したMTTをろ過した。ろ過したMTT溶液を滅菌した50 mLの遠心用チューブに移してアルミホイルで包んだ。この溶液を4℃で保存したが、この時点で使用可能となる。MTTアッセイは以下の手順で行った。
【0058】
細胞培養溶液が入った96ウェルマイクロタイタープレートを72時間のインキュベーションの後にインキュベーターから取り出した。コントロール用のウェルを含む各ウェルに20 μlの5 mg/mL MTTを添加した。次に、プレートをアルミホイルで包み、更に5%のCO2下で37℃にて4時間インキュベートした。インキュベーション終了後、余分なMTT試薬をアスピレートし、100 μlのDMSOを添加して残存する紫色のホルマザン結晶を溶解させた。プレートを、プレートシェーカー上で約4分間穏やかに混和させた。マイクロプレートリーダーを用いて450 nmでのホルマザン溶液の吸光度を測定した。
【0059】
マイクロ-テトラゾリウム(MTT)細胞毒性アッセイを、ゼルンボン及びシスプラチンの化合物で処理したヒト子宮頸癌細胞のHeLaに対して行った。National Cancer Institute Chemotherapeutic Standard(アメリカ合衆国)(Geran et al., 1972)に基づき、≦4 μg/ml(≦18μM)のIC50を非常に有意性が高いものとして考慮し、4〜30 μg/ml(18-137.6μM)のIC50を有意性を有するものとして考慮する。
【0060】
図3及び4には、HeLa癌細胞に対するゼルンボンとシスプラチンによるそれぞれの細胞毒性作用が例示されている。図3には、5μM〜35μMの濃度のゼルンボンでヒト癌細胞HeLa を72時間処理した後の、ゼルンボンによる増殖阻害効果が示されている。図3を参照するに、ゼルンボンのIC50値(±標準誤差)は、11.3 μM(2.5 μg/ml)と決定された。
【0061】
図4には、2.5μM 〜100μMの濃度のシスプラチンでヒト癌細胞HeLa を72時間処理した後の、シスプラチンによる増殖阻害効果が示されている。図4を参照するに、シスプラチンのIC50値(±標準誤差)(P<0.01)は、7.5 μM ± 0.3(1.6 μg/ml)と決定された。
【0062】
これらの結果は、ゼルンボンと比較した際に、シスプラチンは、より低濃度(7.5 μM)でHeLa癌細胞に対してより良好な細胞毒性作用を発揮しており、ゼルンボンは、同様の効果を発揮するためにより高濃度(11.3 μM)を要していたことが示されている。しかしながら、独立サンプルのt検定により解析した結果、HeLa癌細胞に対するゼルンボンとシスプラチンの両者のIC50値には有意差(P<0.01)が認められる。シスプラチンはゼルンボンと比べてIC50値が低かったが、ゼルンボンとシスプラチンの両IC50値は、National Cancer Institute Standard(アメリカ合衆国)(1972年)が確立した非常に有意性の高い細胞毒性の範囲(≦4 μg/ml)にある。
【0063】
(v)通常の倒立顕微鏡を用いた形態検査
96ウェルプレート中のHeLa及びCaov-3の処理した癌細胞について、24、48及び72時間のインキュベーションの後に通常の倒立顕微鏡下で観察を行った。処理細胞のアポトーシスの特徴について検査し、同時に未処理細胞との比較観察を行った。細胞は、倒立顕微鏡下にて20x10の倍率で観察した。
【0064】
ゼルンボン及びシスプラチンでの処理過程において、添加から24時間後、48時間後及び72時間後にHeLa癌細胞とCaov-3癌細胞に顕著な形態変化が観察された。Caov-3癌細胞の形態変化を図5に示すが、図中、細胞は、(A)コントロール、(B)ゼルンボン及び(C)シスプラチンで処理されている。一方で、HeLa癌細胞の形態変化は、図6に示されており、図中、細胞は、(A)コントロール、(B)ゼルンボン及び(C)シスプラチンで処理されている。
【0065】
早い細胞増殖が観察された未処理のコントロール細胞と比べて、ゼルンボン及びシスプラチンで処理した後のCaov-3癌細胞(図5参照)及びHeLa癌細胞(図6参照)では、顕著な増殖低下が認められた。処理の24時間後では、ゼルンボン処理後の場合には、円形の癌細胞(細胞の収縮)は殆ど観察されなかった一方で、シスプラチンで処理した癌細胞では、新生の細胞膜を有する円形の癌細胞がより多く認められた。ゼルンボンでも処理後48時間の時点では円形癌細胞数の増加が観察された。しかしながら、同一の時刻においては、HeLa癌細胞でもCaov-3癌細胞でも、シスプラチン処理の場合の方が、ゼルンボンと比較してより多くの円形細胞が認められた。円形癌細胞の増加に伴う核収縮の進行は、ゼルンボン処理の72時間後にHeLa癌細胞及びCaov-3癌細胞でも認められたが、シスプラチン処理の72時間後では、より多くの円形細胞の増加が認められた。
【0066】
(vi)アクリジンオレンジ・ヨウ化プロピジウム(AO/PI)染色による共焦点顕微鏡検査
各癌細胞セルラインを6ウェル組織培養プレートに播種してゼルンボン又はシスプラチンのいずれかで処理した。プレートは、24時間及び48時間のインキュベーション時間の後にインキュベーターから取り出した。細胞を含有する培地を、氷上に静置してラベルしたエッペンドルフチューブ(各処理サンプルのラベル)に移した。ウェルに残った細胞は、全ての細胞が各ウェルの表面から剥離するまでトリプシン処理した。エッペンドルフチューブ中の細胞を含む培地は、次に、(同一のサンプルの)前記組織培養プレートのウェルに移してトリプシンを中和した。その後にウェル内の培地を(同一のサンプルの)エッペンドルフチューブに戻し、4℃で3000 rpmにて5分間遠心した。上清を捨てて、70%の冷却アルコールを1 mL添加した。ペレットを再懸濁して、細胞固定のため氷上に15分間静置した。次に、サンプルを4℃で3000 rpmにて5分間遠心した。アルコールを含む上清を捨てた。次に、ペレットを1 mLのリン酸緩衝食塩水(PBS)に再懸濁して氷上に10分間静置した。サンプルを再度遠心して、1 mLのPBSに再懸濁して氷上に10分間静置した。この工程を再度繰り返した後に上清を捨てた。
【0067】
細胞を含むペレットを15 μlの10 μg/mL AO/PI混合物で再懸濁した。約10 μlの細胞懸濁液をガラススライド上に置き、フェーディング防止剤を細胞上に添加した。このスライドをカバースリップでカバーして、マニキュア液を用いてカバースリップの末端部分を密封した。スライドは、レーザー走査性共焦点顕微鏡の油浸レンズ下で100x10の倍率で観察した。漏出性の細胞膜を有する非生存(死滅)細胞の核は、ヨウ化プロピジウムで標識されていた。ヨウ化プロピジウムは、細胞膜が破壊された非完全細胞のみに進入する。
【0068】
図7、8及び9には、ゼルンボン及びシスプラチン処理の48時間後にAO/PI染色してレーザー走査性共焦点顕微鏡で観察したCaov-3癌細胞の形態変化が示されており、図10にはHeLa癌細胞の形態変化が示されている。100x10の倍率で、(A)コントロール、(B)ゼルンボン及び(C)シスプラチンである。(B)ゼルンボン及び(C)シスプラチンでは、細胞膜の小疱形成、辺縁趨向を伴う核凝縮及び核損傷が示されている。
【0069】
(vii)フローサイトメトリーによる細胞周期試験
15、25、35及び45 μMの濃度のゼルンボン及び15、25及び35 μMの濃度のシスプラチンと24時間インキュベーションした後に、HeLa細胞のフローサイトメトリー解析を行った。細胞を、0.5 x 105細胞/mLの細胞密度で25 cm2組織培養フラスコに播種した。一晩インキュベーションした後、細胞を上記に示した濃度のゼルンボンンの存在下で24時間培養した。細胞をトリプシン-EDTAを用いて回収した後、3000 rpmで5分間遠心した。細胞ペレットを2 mLのリン酸緩衝食塩水(PBS)に再懸濁した。再懸濁した細胞を3000 rpmで5分間遠心し、得られた細胞ペレットを1 mLの冷却PBSで再懸濁した。4 mLの冷却無水エタノール(使用時まで-20℃で維持)を添加して細胞を固定した。固定した細胞を-20℃で一晩保存した後に染色工程を再開した。
【0070】
HeLa細胞の観察
図11、12及び13を参照するに、細胞周期解析により、G2/M期にあるHeLa癌細胞とCaov-3癌細胞の数が増加し、G1 期とS期にある細胞が減少したことが示されている。データは、2つの別々の実験から得られた中央値±標準偏差で示されている。アスタリスク1つは、コントロールとの比較においてP<0.05を表す;アスタリスク2つは、コントロールとの比較においてP<0.01を表す;アスタリスク3つは、コントロールとの比較においてP<0.001を表す(oneway ANOVAにより解析)。
【0071】
(viii)マウスにおける子宮頸癌の誘導
実験開始前に1匹の雄マウスを3匹の雌マウスと共生させて、雌マウスの排卵を刺激した。48時間後、1匹の雄マウスを1匹の雌マウスと共生させた。翌朝、雌マウスの膣栓をチェックした。雌マウスの膣に膣栓を検出した時点を妊娠初日(G=0)として考慮した。雌マウスが妊娠したら、相手の雄マウスをケージから離した。各ケージには妊娠雌マウスを1匹だけ入れてマウス間のストレスを軽減させ、また、母親による子孫の共食いの機会を減らした。妊娠マウスには妊娠13日目から18日目にかけて、ゴマ油に溶解したジエチルスチルべストロール(DES)(DES調製の付属解説を参照)を体重1kg当たり67 μgで皮下注射した。生殖器官は上記の期間に発生することから、あまりにも早期のDES注射では、死産を生じる可能性がある。これらのマウスは、約妊娠19日目ないし22日目に出産した。子孫は、生後22日目に離乳させた。1匹の雌の子孫は、生後41日目に子宮頸部の形成異常の確認を行った。他の子孫については、シスプラチン、ゼルンボン及び生理食塩水による処理を行った。
【0072】
子宮内でDESに曝露された全ての雌の子孫をまとめて、各グループが3匹のマウスからなる4つのグループに分配した。5番目のグループは、DESに暴露されていない3匹のマウスからなる。マウスには、生後46日目から開始して52日目まで処置を行った。処置は2日に1回(46日目、48日目、50日目、52日目)行い、投与を4回行った。処置は、腹腔内注射により行った。グループ1のマウスは、0.9%の生理食塩水で処置し、このグループをポジティブコントロールグループとして用いた。グループ2のマウスには、8mg/kgのゼルンボンを与え、グループ3のマウスには、16mg/kgのゼルンボンを与えた。10mg/kgのシスプラチンをグループ4のマウスに与えた。最後に、グループ5のマウスについては、本試験でネガティブコントロール(正常マウス)として用いるので、何の処置も行わなかった。処置の後、生後54日目に全てのマウスを屠殺した。血液サンプルは心穿刺法により通常の試験管に回収して3000rpmで15分間遠心した。上清(血清)をエッペンドルフチューブに回収し、直ちに氷中に保存した(0℃‐一時的保存)。全てのサンプルから血清を回収した後、血清を‐20℃に保存した。次に、マウスを解剖した。マウスの生殖器官を回収して0.9%生理食塩水で洗浄した。洗浄した器官を10%ホルマリンに浸して室温で保存した。
【0073】
マウスを生後54日目に屠殺して子宮頸部組織を回収した。子宮頸部組織は10%ホルマリン中で4週間かけて固定した。子宮頸部組織は、組織加工装置(Leica社 TP 1020-1-1)を用いて加工した。次に、包埋用装置(Leica社 EG1160 TP 1020)を用いて加工した組織をパラフィンワックス中に包埋した。ミクロトーム(Leica社 RM 2145)を用いて包埋した組織ブロックを切片化した。ヘマトキシリン・エオジン染色法により切片を染色した。
【0074】
図14を参照するに、正常組織の組織切片では、細胞質に対する核の比率が低く、血管形成の兆候のない正常な上皮配置が示されている。生理食塩水で処置した雌マウスとは対照的に、図17に示すように、雌のbalb/cマウスの誘導した子宮頸癌の子宮頸部組織では、重度の異形成変化(CIN III)が認められる。これに加え、子宮頸部組織は、方向秩序の欠如した上皮細胞の配列(層全体に限定)、細胞質に対する高い核の比率(過染色性(hyperchromatism))並びに著しい血管形成を伴う細胞質の膨張及び透明化を示していた。子宮頸癌誘導した雌balb/cマウスの16 mg/kgのゼルンボン及び10 mg/kgのシスプラチンを用いた処置(それぞれ図16及び図15に示す)では、軽度の細胞質の透明化を伴う軽度の異形成変化(CIN I)、方向秩序の欠如した上皮細胞の配列及び子宮頸部切片に向かう軽度の脈管形成が示されていた。
【0075】
シスプラチン及びゼルンボンの両方について、軽度の異形成(CIN I)が増殖により、重症度の高い異形成(CIN III)に進行することを阻害する能力を有することが実証された。化合物ゼルンボンは、参照薬物シスプラチンと同様に、子宮頸部組織の異形成進行を軽減させることができる。
【0076】
(ix)マウスの子宮頸癌における抗癌剤としてのゼルンボンの評価
血清インターロイキン-6(IL-6)の測定及び定量
子宮頸癌誘導した雌マウス由来の血清血液IL-6濃度については、化合物ゼルンボン、シスプラチン及び生理食塩水(ポジティブコントロール)で処置した後に、市販の抗マウスIL-6 ELISAイムノアッセイキットを用いて測定と定量を行った。正常マウスの血清IL-6濃度をネガティブコントロールとして用いた。
【0077】
図18を参照するに、子宮頸癌誘導してゼルンボン及びシスプラチンで処置した雌マウスの血清IL-6濃度は、子宮頸癌誘導して生理食塩水で処置したマウスと比べて低かった(P<0.01、One-Way ANOVAで解析)。結果では、16 mg/kgのゼルンボンン及び10 mg/kgのシスプラチンで処置したマウスの血清IL-6レベルが、正常マウス(ネガティブコントロール)の血清レベルと最も近似していたことが示された。Post Hoc比較検定(One-Way ANOVA)により、生理食塩水で処置したマウスと他の4種類の処置グループの血清IL-6濃度の平均値が有意に異なっていることが示されている(P<0.01)。ゼルンボン及びシスプラチンで処置したマウスの血清IL-6濃度では、有意な低下が認められた(P<0.01)。結果は、ゼルンボンとシスプラチンが、殆ど同程度にIL-6の分泌を低下又は阻害できたことを示している。
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然の治療用化合物及びその医療上の使用に関する。より詳細には、本発明は、子宮頚癌及び卵巣癌の治療用の医薬製剤の製造に用いる活性薬剤、ゼルンボン(zerumbone)として知られる天然化合物に関する。また、本発明は、前記化合物の抽出方法及び前記化合物を含有する医薬組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
癌とは、主に細胞増殖の非制御から始まり、隣接する正常な組織又は器官に浸潤し、その場所で新たな増殖の基盤を確立し、最終的には死を招く恐れのある疾患の種類の総称である。近年において、細胞周期若しくはアポトーシスの制御並びに癌遺伝子及び腫瘍抑制遺伝子を含む新たな標的の開発において著しい進歩が得られた。しかしながら、これらの尽力にもかかわらず、癌の発症率は増加し続けている。
【0003】
最も典型的な3種類の抗癌治療は、外科手術、放射線療法及び化学療法である。治療は、薬物又は他の因子を用いて体内の癌細胞を除去するか又は破壊することを目的とする。
【0004】
外科手術は、癌の種類によっては非常に成功率の高い治療法となりうるが、全ての者がこの治療法を選択できるわけではない。癌が悪性の腫瘍の状態にあるか、腫瘍が一ヶ所に存在する(局在する)場合、腫瘍と周辺の患部組織を安全に「切り取る」ことは可能であろう。癌が身体の他の領域に広がってしまっている場合又は肝臓又は脳等の生命維持に不可欠な器官を損傷することなく腫瘍を取り出せない場合には、外科手術は不可能になるであろう。
【0005】
癌治療は、特別な種類のX線、γ線又は電子の形態にある放射線を用いて、癌細胞が増殖できなくなるようにこれらを破壊する。通常は、治療において痛みを感じることはない。放射線治療は、場合によっては、この治療法のみで有用な場合もあれば、外科手術等の他の治療法と共に用いられる場合もある。外科手術と放射線療法両方の組合せは、一ヶ所で増殖する腫瘍の治療に用いられる場合がある。
【0006】
化学療法では薬物を用いて癌細胞を攻撃する。単に「化学療法」という文字を見ただけでも、副作用の負担が大きな場合もあることから、大変な不安を引き起こす場合がある。しかしながら、全ての者が激しい副作用を被るわけではない。化学療法による副作用は、しばしば他の薬物を用いることで軽減できる。通常、化学療法は、癌が身体の他の領域に広がってしまっている場合に用いられる。化学療法は、外科手術及び放射線療法との組み合わせで用いられる場合もある。場合によっては、外科手術で腫瘍を取り除いて、その後に化学療法により全ての癌細胞を確実に死滅させることになる。化学療法の欠点の一つとしては、乳癌、大腸癌及び肺癌等の一般的な上皮由来腫瘍の治療において効果を奏しない場合があることが挙げられる。これは、主に、複数種類の抗癌剤に対する癌細胞の耐性によるものであり、抗ガン剤の適用が非常に限定されることになる。
【0007】
最新の抗癌剤は、癌細胞が正常細胞よりも速く分裂するという事実に基づいて開発されており、DNA複製又は合成を阻害する化合物、代謝阻害剤、細胞分裂阻害剤、ヌクレオチド類似体及びトポイソメラーゼ阻害剤に代表される。従って、抗ガン剤は、典型的に癌細胞の分裂と生存に対する効果を有する。従来の抗癌剤は、癌細胞の迅速な分裂に焦点を当てていたことから、これらの抗癌剤は、毒性を有していたり(例えば、体毛が抜け落ちる)や通常の条件下でも分裂速度の速い正常細胞(例えば、骨髄細胞)にも作用するといった不都合を有している。
【0008】
別の種類の治療法としては、生物療法が挙げられる。この治療法では、身体の免疫系を誘起させるタンパク質を用いてより多くの白血球(又はリンパ球)を生産する。癌細胞を攻撃して死滅させることのできる2種類のリンパ球は、T細胞及びB細胞である。タンパク質によりT細胞及びB細胞のリンパ球が癌を死滅させる能力が増大される。生物療法は、外科手術、放射線療法又は化学療法との組み合わせで用いることも可能である。
【0009】
ホルモン療法を用いて乳癌又は前立腺癌を治療する場合もある。エストロゲンというホルモンは、乳癌の腫瘍の増殖を加速させることができる。同様に、テストステロンというホルモンは、前立腺内の癌性腫瘍の増殖を加速させることができる。別のホルモンを含有する薬物を用いてエストロゲンとテストステロンの作用を遮断することができる。別のケースでは、卵巣又は精巣を取り除く外科手術を採用する場合もある。これらの器官と取り除くことにより、体内のエストロゲン又はテストステロン量が減少する。ホルモン療法は、しばしば、化学療法又は放射線療法に追加して用いられる。
【0010】
植物抽出物は、種々の疾患の治療及び予防において治療の潜在的能力を有すると信じられている。Zingiber zerumbetの根茎は、抗炎症性の民間医薬として使用される、よく知られた生薬である(Elliot et al., 1987)。Z. zerumbetは、Zingiberaceae(ショウガ科)に属しており、パインコーンジンジャー(pinecone ginger)、シャンプージンジャー(shampoo ginger)、アワプヒクアヒウィ(Awapuhi kuahiwi)(ハワイ名)及び「レンポヤン(lempoyang)」(マレーシア名)という一般的名称を有する。一般的に、東南アジア地域においては、複数種のZingiberaceaeが、スパイス、薬物、香料及び特定の色素の原料として用いられている(Burkill, 1966)。
【0011】
野生種のショウガであるZingiber zerumbetの精油の主成分であるゼルンボンは、架橋結合したジエノン系を含有する単環式セスキテルペンである(Kitayama et al., 2002)(図1)。一部地域で抗炎症薬として用いられる根茎中に大量のアキラル性セスキテルペンであるゼルンボンが検出された(D'Odorico et al., 2001)。この化合物は、この植物の食用部分、特に、伝統料理で用いられる若い茎と花序中に存在する(Kankuri et al., 1999)。
【0012】
Matthes et al.(1980)では、ゼルンボンが細胞毒性を示すことが報告され、一方で、Murakami et al.(1999)には、ゼルンボンが、12-O-テトラデコニル-13-アセテート誘導性のエプスタイン‐バーウイルスの活性化に対する有力な阻害剤であることが記載されている。興味深いことに、リポ多糖(LPS)及びインターフェロン(IFN)-□で処理したRAW264.7マクロファージ内での誘導性の一酸化窒素合成酵素(iNOS)とCOX-2の発現、並びに白血球内での一酸化窒素(NO)/O2生成をゼルンボンが阻害することが判明した(Tanaka et al., 2001)。また、ゼルンボンは、TNF-□の放出を抑制し、種々のヒト由来大腸腺癌セルラインのアポトーシスを誘導することも示されている(Murakami et al., 2002)。Murakami et al.(2003a)では、ゼルンボンが、マウスのDSS誘導性大腸炎に対して顕著な抑制効果を示すことが実証されている。また、最近では、ゼルンボンが腫瘍プロモーターの12-O-テトラデカノイルフォルボール-13-アセテート(TPA)に誘導されるエプスタイン‐バーウイルスの活性化を強力に抑制することも判明している。
【0013】
大腸のクリプト細胞核内のAgNOR数がゼルンボンにより低下している。これらの知見から、発癌物質誘導性AFCの発達におけるCOX-2発現、大腸粘膜の細胞増殖活性及びフェーズII解毒酵素の誘起の抑制を通じた、ZIIの潜在的な化学的予防能力が示唆されるであろう(Tanaka et al., 2001)。
【0014】
大部分の西側諸国における広範囲な集団スクリーニングにより、子宮頸癌の発症率と死亡率は大幅に低下したが、しかしながら、子宮頸癌は、依然として世界規模で女性に対して甚大な影響を有している(Segnan, 1994)。毎年、約400,000名の女性が子宮頸癌を発症し、このうち250,000名がこの癌由来の原因で死亡していることが報告されている(Parkin et al., 1999)。
【0015】
一方で、卵巣癌は、西側諸国において婦人科関連死因の第1位となっており、女性では4番目に高頻度な悪性腫瘍である(Greenlee et al, 2000)。先進諸国では約75人に1人が卵巣癌を患い、具体的な症状がなく、多くの場合診断が遅れることから、患者の少なくとも3分の2に当たる女性が末期症状を示す(Quinn, 2003)。
【0016】
シスプラチンは、一貫して、進行した子宮頸癌又は再発した子宮頸癌の治療に最も有効な単一の細胞毒性薬剤としての能力を証明し続けている。しかしながら、この薬物に応答性を示す患者の比率は、23%〜50%であり、子宮頸癌を患う患者の転帰を向上させる新たな活性薬物が必要である(Savarese and Cognetti, 2003)。これに加え、白金系化学療法は、上皮性卵巣癌の最も効果的な治療法である(Piccart et al. 2000)。
【0017】
先行技術では、ヒトの子宮頸部及び卵巣内の癌を阻害する天然の植物性化合物について未だ報告がなされていない。更にまた、先行技術では、病理/生理学的状態の効果的な治療方法が見つかっておらず、種々の有害な薬物反応を伴う。
【0018】
上記及び種々の疾患を患う患者数の増加を鑑みるに、全ての者が、より副作用が少なく、より良好な薬物を望んでいる。従って、癌細胞のアポトーシスを誘導して癌の転移を阻害する効果を有し、加えて、癌細胞の増殖をより効果的に阻害する天然化合物を提供することは有益なこととなるであろう。また、前記化合物は毒性を有していないため、癌を予防して治療するための機能性食品として用いることも可能である。
【0019】
癌、特に、子宮頸癌及び卵巣癌の治療用の新たな薬物を提供することが本発明の目的である。本発明は、現在の技術水準の癌の治療方法の不都合を克服する、強力な抗癌特性を有する天然化合物を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の第1の局面によれば、以下の式を有する化合物の、癌の予防及び治療用の医薬製剤の製造における使用が提供される。
【0021】
【化1】
【0022】
従って、本発明に係る化合物は、アポトーシス機構によって子宮頸部及び卵巣の癌細胞の増殖を阻害する所望の効果を提供する。
【0023】
本発明の別の局面によれば、Zingiber属の植物から非極性抽出物を調製すること、前記非極性抽出物を、シリカゲルカラムを通して、1種類の有機溶媒及び複数の有機溶媒の混合物で順に溶離する分画化に付することで、Zingiber属の植物由来の非極性抽出物の分画を得ること、そして再結晶法、分配法及びクロマトグラフィー法により前記化合物を精製することを含む、上記化合物の抽出及び精製方法が提供される。
【0024】
前記植物は、Zingiber zerumbet及びZingiber aromaticumからなる群から選択される。
【0025】
前記有機溶媒は、ヘキサン及び/又は酢酸エチルからなる群から選択可能である。
【0026】
本発明の更なる別の局面では、有効成分として上記化合物を強力な抗ガン特性を示すのに有効であり、それによって、子宮頸癌及び卵巣癌を伴う状態の予防及び治療に有用な量で含む医薬製剤が提供される。
【0027】
前記化合物は、アポトーシス機構による癌細胞に対する選択的な細胞毒性を誘導する、化学療法剤として作用することができる。本発明の医薬製剤は、許容可能な担体に含まれて提供され、粉末、顆粒、錠剤、カプセル、水性薬物又は注射液等、当業者に知られるいずれの方法でも投与可能である。
【0028】
Zingiber属の植物由来の非極性有機抽出物から得られる上記の化合物の分画は、標準的な方法により、ソフトゲルカプセルを含むカプセル、錠剤、ガレヌス製剤、粉末、顆粒、水性薬物、注射液等の臨床使用用の種々の医薬製剤へと製剤することが可能であり、この場合、前記化合物は、その効能及び毒性に基づく治療有効量で有効成分として、単体又は他の化学物質との組み合わせで存在し、そして経口、舌下、静脈内、筋肉内等の様々な投与経路を通じて投与される。有効量とは、アポトーシス機構によって、癌細胞、特に、子宮頸癌及び卵巣癌に対する細胞毒性を増大及び/又は誘導するのに十分な量である。
【0029】
細胞毒性を増大及び/又は誘導する有効量は、以下に依存するであろう:治療する状態の重症度;年齢、生理条件、大きさ及び体重等の患者個人のパラメーター;併用される治療及び薬物との相互作用;治療頻度;及び投与方法。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1には、本発明に係るゼルンボン抽出物の高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)分析が例示されている。
【図2】図2には、本発明に係るゼルンボン抽出物の液体カラム質量分析(Liquid Column Mass Spectrometry:LCMS)分析が例示されている。
【図3】図3には、ゼルンボンの子宮頸癌細胞(HeLa)に対する細胞毒性効果が例示されている。
【図4】図4には、シスプラチンの子宮頸癌細胞(HeLa)に対する細胞毒性効果が例示されている。
【図5】図5には、ゼルンボン及びシスプラチンをIC50値で用いて処理した72時間後の卵巣癌細胞(Caov-3)の形態変化が例示されている(倍率20x10)。(A)コントロール、(B)ゼルンボン及び(C)シスプラチン。
【図6】図6には、ゼルンボン及びシスプラチンをIC50値で用いて処理した72時間後の子宮頸癌細胞(HeLa)の形態変化が例示されている(倍率20x10)。(A)コントロール、(B)ゼルンボン及び(C)シスプラチン。
【図7】図7には、未処理(コントロール)のヒト卵巣癌細胞(Caov-3)の(A)24時間後;(B)72時間後の共焦点形態試験が例示されている。
【図8】図8には、18.5 mMのゼルンボンによるヒト卵巣癌細胞(Caov-3)の(A)24時間後;(B)48時間後の形態試験が例示されている。
【図9】図9には、18.5 mMのゼルンボンによるヒト卵巣癌細胞(Caov-3)の(A)48時間後;(B)72時間後の形態試験が例示されている。
【図10】図10には、ゼルンボン及びシスプラチンでの治療の48時間後にAO/PIで染色し、レーザー走査性共焦点顕微鏡で観察した子宮頸癌細胞(HeLa)の形態変化が示されている。倍率は、100x10:(A)コントロール、(B)ゼルンボン及び(C)シスプラチン。矢印B:細胞膜の小疱形成、N:辺縁趨向及び核損傷を伴う核凝縮。
【図11】図11には、0〜45 μmの濃度範囲のゼルンボンで処置した後の子宮頸癌細胞(HeLa細胞)の細胞周期の進行が例示されている。
【図12】図12には、IC50値でそれぞれ24時間及び48時間処理した卵巣癌細胞(Caov-3細胞)のゼルンボン及びシスプラチン誘導性アポトーシスが例示されている。アポトーシス細胞は、TUNELアッセイ後に手作業で定量した。データは、2つの重複するサンプルから得た平均値±標準偏差で示されている。シングルダガーは、コントロールと比較した場合にp<0.05であることを示す;ダブルダガーは、コントロールと比較した場合にp<0.01であることを示す(One-Way ANOVAにより解析)。
【図13】図13には、IC50値でそれぞれ24時間及び48時間処理した子宮頸癌細胞(HeLa細胞)のゼルンボン及びシスプラチン誘導性アポトーシスが例示されている。アポトーシスは、TUNELアッセイ後に手作業で定量した。データは、2つの重複するサンプルから得た平均値±標準偏差で示されている。ダブルダガーは、コントロールと比較した場合にp<0.01であることを示す(One-Way ANOVAにより解析)。
【図14】図14には、正常マウスの、明確な脈管形成が認められず、細胞質に対する核の比率が低い子宮頸部上皮細胞を示す顕微鏡写真である。
【図15】図15は、メスのbalb/cマウスの誘導性子宮頸癌に対する10mg/kgのシスプラチンを用いた治療を示す顕微鏡写真である。上皮層の3分の1に限定される軽度の核異型を伴う軽度の形成異常(CIN I)(倍率10x20)。
【図16】図16は、メスのbalb/cマウスの誘導性子宮頸癌に対する16mg/kgのゼルンボンを用いた治療を示す顕微鏡写真である。上皮層の3分の1(黒色矢印)に限定される軽度の形成異常(CIN I)及び軽度の核異型、並びに脈管形成(青色矢印)(倍率10x20)。
【図17】図17は、メスのbalb/cマウスの誘導性子宮頸癌に対する通常の生理食塩水を用いた治療を示す顕微鏡写真である。上皮の全層に限定される重度の核異型を伴う重度の形成異常(CIN III)及び重度の脈管形成(倍率10x20)。
【図18】図18は、マウスの治療群の血清IL-6濃度を示すヒストグラムである。各値は、P<0.01の有意性を有する(SPSSバージョン12を用いたOne-Way ANOVAにより解析)。
【発明を実施するための形態】
【0031】
Zingiber zerumbetの植物は、茎に沿って反対に並ぶ長くて細い葉を特徴とし、約7フィートの高さにまで成長する。この植物種は、東南アジアが原産であるが、世界中の熱帯地方及び亜熱帯地方で広く栽培されており、いくつかの地方では帰化している。東南アジア地方では、一般的に、複数種のZingiberceaeが、スパイス、薬物、香料及び特定の色素の供給源として用いられる。
【0032】
未加工の植物性材料の加工に関しては、有効成分又はセスキテルペンであるゼルンボンは、植物の1部分に局在していると判断された。有効成分が抽出される植物部分は、根茎であり、この部分は肉厚の茎として特徴付けられ、地面に沿って又は地中に伸び、根茎からは根と芽が伸びる。本発明の実施においては、前記植物の根茎部分が取り出され、その後に、個別に又はまとめて利用される。
【0033】
本発明の種々の特徴及び局面は、以下の実施例に更に例示されている。これらの実施例は、本発明の範囲内で実施する方法を当業者に示すために提示されるものではあるが、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は、請求項のみによって定義される。
【実施例1】
【0034】
(粗抽出物の調製)
5 kgのZingiber zerumbetを小片(1〜2mm)にカットし、37℃のオーブンで3週間乾燥させた。乾燥したZingiber zerumbetの小片を粉砕し、粉砕されたZingiber zerumbetサンプル432 gを100%メタノールに3日間浸漬した。次いで、ろ紙を用いてサンプルをろ過した。ゼルンボン等の複数種類の化合物を含むメタノールをコニカルフラスコに回収し、残ったサンプルについては、再度100%メタノールで2回目の浸漬を行い、このメタノール及び抽出物は、ロータリー式蒸発装置を用いて40℃で蒸発させた。この工程を2回繰り返し、最後にろ過した後のサンプルと抽出物を先のサンプル(メタノール+抽出物)と混合して蒸発させると、濃褐色のゴム状に見える粗抽出物が40.3 g得られた。
【実施例2】
【0035】
(非極性抽出物の調製)
粗抽出物をメタノール及び蒸留水と混合し、その後、分液漏斗に注いだ。100%ヘキサンを分液漏斗に加え、漏斗を激しく振って確実に溶液を十分に混和させ、溶液を2層(上層が極性化合物を含有する水層であり、下層が非極性化合物、即ち、ゼルンボンを含有する非極性層)に分離させるために5分間放置した。次に、水層と非水層を別々のコニカルフラスコに回収して分離に付した。再度水層を分液漏斗に注いで100%ヘキサンを添加し、この分離工程を再度3回繰り返した。次に、分離工程で得た非極性層の全てを一つにまとめて丸底フラスコに注ぎ、ロータリー式蒸発装置を用いた蒸発を行うと、ゼルンボンを含む非極性抽出物が20.6グラム得られた。
【実施例3】
【0036】
(非極性抽出物分画の調製)
分画工程は、カラムクロマトグラフィープロセスにより行った。2種類の主な充填剤が含まれ、これらは乾燥充填剤とカラム充填剤であった。乾燥充填剤では、ロータリー式蒸発で得た抽出物(20.6 g)をシリカゲルと共に加え、乾燥粉末(20.Og)が形成されるまで再度ロータリー式蒸発をおこなった。カラム充填物では、シリカゲルをヘキサンと混合し、クロマトグラフィー用カラムに注いだ。
【0037】
次に、20.0グラムの量の粉末化サンプルを吸着剤としての機能を有するシリカゲルカラム(3.5cm x 30.0cm)に注いだ。100%ヘキサンをシリカゲルカラムに添加し、次に、溶離液として、ヘキサンと酢酸エチルの混合物を9:1及び最終的に8:2の比率で添加した。8:2の比率を維持し、ゼルンボンを含む非極性分画がカラムから単離されるまで繰り返した。カラムクロマトグラフィーで単離された分画を少量用(10ml)のバイアルに回収した。
【実施例4】
【0038】
(精製ゼルンボンの単離)
バイアルに回収した分画を乾燥させて結晶を得た。得られた結晶を再結晶させて精製ゼルンボン結晶を得た。次に、結晶をヘキサンで洗浄して不所望の化合物を除去してバイアル中に純粋なゼルンボン結晶を残した。再結晶は約3回繰り返した。再結晶の後、純粋ゼルンボン結晶を乾燥させ、清潔なバイアル中に回収した。5kgの新しいZingiber zerumbetから単離された純粋なゼルンボン結晶の量は、約3.1gであった。
【0039】
上記分画に回収された成分は、薄層クロマトグラフィー(TLC)を用いて測定した。分画のTLCを純粋なゼルンボンのTLCと比較して、いずれの分画にゼルンボンが回収されたのかを決定した。得られたゼルンボンの収率を以下の表に示す。
【0040】
オートサンプラー及び四連溶媒ポンプ(quaternary solvent pump)を用いて高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を行った。分析用逆相カラム(C-18カラム)を用いて分離を行った。40%の水と60%のアセトニトリルからなる混合物を移動相として用いて0.2ml/分の流速で化合物を分離した。
【0041】
図1を参照するに、サンプル溶液のHPLC分析では、16分の保持時間を有する単一高ピークが1つだけ示された。この単一ピークにより、純粋な化合物が単離されたことが確認され、これによって、更に、粗植物抽出物から抽出及び単離された化合物が、主に1種類の単一の化合物から構成されていたことが例証される。HPLC分析で単一ピークが得られたが、単離された化合物の分子量を同定するために、液体クロマトグラフィー質量分析器(LCMS)を用いた更なる分析が必要であった。
【0042】
オートサンプラー及び四連溶媒ポンプを用いて液体クロマトグラフィーLCMSを行った。分析逆相カラム(C-18カラム)を用いて分離を行った。40%(v/v)の1OmM酢酸アンモニウムと60%(v/v)のアセトニトリルからなる混合物を移動相として用いて0.2ml/分の流速で化合物を分離した。データ獲得/プロセッシングソフトウェアシステムを有するコンピューターに連結され、陽イオンモードでインターフェースした大気圧化学イオン化(ACPI)からなるイオントラップ型質量分析器に液体クロマトグラフィーシステムを連結した。
【0043】
図2に示すLCMS分析グラフでは、ゼルンボンのマススペクトルは、陽イオン化モードで試験した。全マススペクトルにおいて最も強度の強いイオンは、プロトン化([M + H]+)分子である。図2を参照するに、LCMS分析では、ポジティブスキャンモード下で化合物がm/z 219 の分子イオン[M + 1]+を有する高フラグメントを生じたことが示された。このフラグメントの分子量は、陽イオンから導き出せる(陽イオン:219.01 - 1 = 218.01)。この計算によれば、上記フラグメントの分子量は、218となり、これは化合物ゼルンボンの分子量である。このフラグメントが質量分析グラフ中に最も豊富に存在する。また、この化合物は、m/z 259でのポジティブプロダクトイオンスキャンモード(MS/MS)でフラグメントイオンを生じており、これは、前駆体イオンからの分子の喪失によるプロダクトイオンとして定めることができる。以下で行う分析では、スペクトル中に25%を超える相対量で存在するプロダクトイオンだけを考慮する。m/z 259でのフラグメントは、相対量が25%未満なので、考慮されない。この知見により、単離された化合物が実際に純粋なゼルンボン結晶であることが適切に確認される。
【0044】
【表1】
【実施例5】
【0045】
(ゼルンボン化合物の同定)
ゼルンボン化合物に対して1H-NMR及び13C-NMRによる分光学的分析を行った。出願人の知る限り、ゼルンボンのスペクトルデータを報告する文献は未だに存在していない。
【0046】
表2の1H-NMRスペクトルデータには、δ 5.968及び6.106でのメタ結合シグナルを示したダブルダブレット及びダブレットの2種類の遍在ピークが示されており、このうち一方は、トリプレットとして検出されたδ 2.43のシグナルを有する0.97 Hzの長距離結合を示していた。δ 3.22のメトキシ基、δ 1.086-1.573の長鎖アルキル側鎖(m, 16H, H-3'-H10')及びδ 1.770(s, 1H, H-2')に起因するシグナルが認められた。
【0047】
【表2】
【0048】
IR: vmax cm-1 : 1654.8 (共有結合C=O), 1386.7及び1341.7 (gem-ジメチル). 1H NMR (CDCl3): 1.04 (3H, s, H-14), 1.17 (3H, s, H-15), 1.51 (3H, s, H-12), 1.77 (3H, s, H-13), 1.87 (1H, d, J=12.8 Hz, H-11), 2.19-2.44 (5H, m, H-1, H-4及びH-5), 5.22 (1H, bd, J=14.8 Hz), 5.83 (1H, d, J=16.4 Hz), 5.95 (1H, d, J=16.4 Hz), 5.99 (1H, bd, J=12.4 Hz, H-6)。
【0049】
ゼルンボンの炭素配置を表3に示す。13C-NMRスペクトルでは、δ 39.210 (s, C-4), 42.142 (s, C-1), 124.905 (s, C-2), 149.271 (s, C-6), 24.261 (s, C-5) 及び136.457(s, C-3)にメトキシル化1,4-ベンゾキノンを示すシグナルが示されている。
【0050】
【表3】
【0051】
13C NMR (CDCI3): 11.76 (C13), 15.18 (C-12), 24.16 (C-14), 24.36 (C-5), 29.39 (C- 15), 37.83 (C-11), 39.40 (C-4), 42.36 (C-1), 124.94 (C-2), 127.11 (C-9), 136.25 (C-3), 137.9 (C-7), 148.84 (C-6), 160.75 (C-10), 204.37 (C-8)。
【0052】
ゼルンボン化合物の化学構造
【0053】
【化2】
【実施例6】
【0054】
(子宮頸癌細胞(HeLa)及び卵巣癌細胞(Caov-3)に対するゼルンボンの作用の評価)
(i)細胞培養
本試験で用いた癌セルラインは、ヒト由来の子宮頸癌セルラインのHeLa(ATCC番号:CCL-2)及び卵巣癌のCaov-3(ATCC番号:HTB-75)であった。HeLa及びCaov-3セルラインは、10% FCS、1%ペニシリン及び1%ストレプトマイシンが補充されたRPMI 1640並びにDMEM(高濃度グルコース)でそれぞれ維持した。細胞は、37℃で5%のCO2を含む湿潤大気下において、25 cm2及び75 cm2組織培養フラスコ中で単層培養系として増殖させた。
【0055】
(ii)細胞播種
血球計を用いてフラスコ内細胞密度を測定した。フラスコの表面から細胞を剥離するためコンフルエント状態の細胞をトリプシン処理した。10 mLの新しい培地をフラスコに加え、細胞を完全に懸濁した。次に、フラスコから10μlの培地をカバースリップを取り付けた血球計に移した。カウントは倒立顕微鏡下で行い、手作業でカウンターを用いて進めた。細胞密度(例えば、1 x 105 細胞/mL)を計算した。マルチチャンネルピペットを用いて100μlの細胞培養溶液を96ウェルマイクロタイタープレートの各ウェルに移した。代わりに、6ウェルマイクロタイタープレートには、2mlの細胞培養溶液をピペットで移した。プレートを5% CO2下で37℃で一晩インキュベートした。
【0056】
(iii)細胞の処理
両方の種類のヒト由来癌細胞を一晩インキュベートした後、細胞をゼルンボンで処理した。各実験におけるゼルンボンの濃度は、実施した実験の最適化に応じて変化させた。コントロール又は非処理細胞には、いずれの化合物での処理を施すこともなく、培地だけを与えた。処理細胞は、次いで5% CO2下で37℃でインキュベートした。
【0057】
(iv)マイクロテトラゾリウム細胞毒性アッセイ(MTTアッセイ)
本アッセイは、生存する癌細胞のミトコンドリアの酵素活性により、可溶性のMTTが不溶性の色素を帯びたホルマザン生成物へと代謝還元されることに基づいており、この生成物は、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した後に分光学的分析によって測定できる(Carmichale et al., 1987)。MTTアッセイは、Kumi-Diaka et al. (1998)に記載される方法に僅かな変更を加えて行った。使用したMMT溶液の濃度は、5 mg/mLであった。MTT溶液は、250 mgのMTT粉末を50 mLのリン酸緩衝食塩水(PBS)に溶解させて調製した。0.2ミクロンのシリンジフィルターを用いて溶解したMTTをろ過した。ろ過したMTT溶液を滅菌した50 mLの遠心用チューブに移してアルミホイルで包んだ。この溶液を4℃で保存したが、この時点で使用可能となる。MTTアッセイは以下の手順で行った。
【0058】
細胞培養溶液が入った96ウェルマイクロタイタープレートを72時間のインキュベーションの後にインキュベーターから取り出した。コントロール用のウェルを含む各ウェルに20 μlの5 mg/mL MTTを添加した。次に、プレートをアルミホイルで包み、更に5%のCO2下で37℃にて4時間インキュベートした。インキュベーション終了後、余分なMTT試薬をアスピレートし、100 μlのDMSOを添加して残存する紫色のホルマザン結晶を溶解させた。プレートを、プレートシェーカー上で約4分間穏やかに混和させた。マイクロプレートリーダーを用いて450 nmでのホルマザン溶液の吸光度を測定した。
【0059】
マイクロ-テトラゾリウム(MTT)細胞毒性アッセイを、ゼルンボン及びシスプラチンの化合物で処理したヒト子宮頸癌細胞のHeLaに対して行った。National Cancer Institute Chemotherapeutic Standard(アメリカ合衆国)(Geran et al., 1972)に基づき、≦4 μg/ml(≦18μM)のIC50を非常に有意性が高いものとして考慮し、4〜30 μg/ml(18-137.6μM)のIC50を有意性を有するものとして考慮する。
【0060】
図3及び4には、HeLa癌細胞に対するゼルンボンとシスプラチンによるそれぞれの細胞毒性作用が例示されている。図3には、5μM〜35μMの濃度のゼルンボンでヒト癌細胞HeLa を72時間処理した後の、ゼルンボンによる増殖阻害効果が示されている。図3を参照するに、ゼルンボンのIC50値(±標準誤差)は、11.3 μM(2.5 μg/ml)と決定された。
【0061】
図4には、2.5μM 〜100μMの濃度のシスプラチンでヒト癌細胞HeLa を72時間処理した後の、シスプラチンによる増殖阻害効果が示されている。図4を参照するに、シスプラチンのIC50値(±標準誤差)(P<0.01)は、7.5 μM ± 0.3(1.6 μg/ml)と決定された。
【0062】
これらの結果は、ゼルンボンと比較した際に、シスプラチンは、より低濃度(7.5 μM)でHeLa癌細胞に対してより良好な細胞毒性作用を発揮しており、ゼルンボンは、同様の効果を発揮するためにより高濃度(11.3 μM)を要していたことが示されている。しかしながら、独立サンプルのt検定により解析した結果、HeLa癌細胞に対するゼルンボンとシスプラチンの両者のIC50値には有意差(P<0.01)が認められる。シスプラチンはゼルンボンと比べてIC50値が低かったが、ゼルンボンとシスプラチンの両IC50値は、National Cancer Institute Standard(アメリカ合衆国)(1972年)が確立した非常に有意性の高い細胞毒性の範囲(≦4 μg/ml)にある。
【0063】
(v)通常の倒立顕微鏡を用いた形態検査
96ウェルプレート中のHeLa及びCaov-3の処理した癌細胞について、24、48及び72時間のインキュベーションの後に通常の倒立顕微鏡下で観察を行った。処理細胞のアポトーシスの特徴について検査し、同時に未処理細胞との比較観察を行った。細胞は、倒立顕微鏡下にて20x10の倍率で観察した。
【0064】
ゼルンボン及びシスプラチンでの処理過程において、添加から24時間後、48時間後及び72時間後にHeLa癌細胞とCaov-3癌細胞に顕著な形態変化が観察された。Caov-3癌細胞の形態変化を図5に示すが、図中、細胞は、(A)コントロール、(B)ゼルンボン及び(C)シスプラチンで処理されている。一方で、HeLa癌細胞の形態変化は、図6に示されており、図中、細胞は、(A)コントロール、(B)ゼルンボン及び(C)シスプラチンで処理されている。
【0065】
早い細胞増殖が観察された未処理のコントロール細胞と比べて、ゼルンボン及びシスプラチンで処理した後のCaov-3癌細胞(図5参照)及びHeLa癌細胞(図6参照)では、顕著な増殖低下が認められた。処理の24時間後では、ゼルンボン処理後の場合には、円形の癌細胞(細胞の収縮)は殆ど観察されなかった一方で、シスプラチンで処理した癌細胞では、新生の細胞膜を有する円形の癌細胞がより多く認められた。ゼルンボンでも処理後48時間の時点では円形癌細胞数の増加が観察された。しかしながら、同一の時刻においては、HeLa癌細胞でもCaov-3癌細胞でも、シスプラチン処理の場合の方が、ゼルンボンと比較してより多くの円形細胞が認められた。円形癌細胞の増加に伴う核収縮の進行は、ゼルンボン処理の72時間後にHeLa癌細胞及びCaov-3癌細胞でも認められたが、シスプラチン処理の72時間後では、より多くの円形細胞の増加が認められた。
【0066】
(vi)アクリジンオレンジ・ヨウ化プロピジウム(AO/PI)染色による共焦点顕微鏡検査
各癌細胞セルラインを6ウェル組織培養プレートに播種してゼルンボン又はシスプラチンのいずれかで処理した。プレートは、24時間及び48時間のインキュベーション時間の後にインキュベーターから取り出した。細胞を含有する培地を、氷上に静置してラベルしたエッペンドルフチューブ(各処理サンプルのラベル)に移した。ウェルに残った細胞は、全ての細胞が各ウェルの表面から剥離するまでトリプシン処理した。エッペンドルフチューブ中の細胞を含む培地は、次に、(同一のサンプルの)前記組織培養プレートのウェルに移してトリプシンを中和した。その後にウェル内の培地を(同一のサンプルの)エッペンドルフチューブに戻し、4℃で3000 rpmにて5分間遠心した。上清を捨てて、70%の冷却アルコールを1 mL添加した。ペレットを再懸濁して、細胞固定のため氷上に15分間静置した。次に、サンプルを4℃で3000 rpmにて5分間遠心した。アルコールを含む上清を捨てた。次に、ペレットを1 mLのリン酸緩衝食塩水(PBS)に再懸濁して氷上に10分間静置した。サンプルを再度遠心して、1 mLのPBSに再懸濁して氷上に10分間静置した。この工程を再度繰り返した後に上清を捨てた。
【0067】
細胞を含むペレットを15 μlの10 μg/mL AO/PI混合物で再懸濁した。約10 μlの細胞懸濁液をガラススライド上に置き、フェーディング防止剤を細胞上に添加した。このスライドをカバースリップでカバーして、マニキュア液を用いてカバースリップの末端部分を密封した。スライドは、レーザー走査性共焦点顕微鏡の油浸レンズ下で100x10の倍率で観察した。漏出性の細胞膜を有する非生存(死滅)細胞の核は、ヨウ化プロピジウムで標識されていた。ヨウ化プロピジウムは、細胞膜が破壊された非完全細胞のみに進入する。
【0068】
図7、8及び9には、ゼルンボン及びシスプラチン処理の48時間後にAO/PI染色してレーザー走査性共焦点顕微鏡で観察したCaov-3癌細胞の形態変化が示されており、図10にはHeLa癌細胞の形態変化が示されている。100x10の倍率で、(A)コントロール、(B)ゼルンボン及び(C)シスプラチンである。(B)ゼルンボン及び(C)シスプラチンでは、細胞膜の小疱形成、辺縁趨向を伴う核凝縮及び核損傷が示されている。
【0069】
(vii)フローサイトメトリーによる細胞周期試験
15、25、35及び45 μMの濃度のゼルンボン及び15、25及び35 μMの濃度のシスプラチンと24時間インキュベーションした後に、HeLa細胞のフローサイトメトリー解析を行った。細胞を、0.5 x 105細胞/mLの細胞密度で25 cm2組織培養フラスコに播種した。一晩インキュベーションした後、細胞を上記に示した濃度のゼルンボンンの存在下で24時間培養した。細胞をトリプシン-EDTAを用いて回収した後、3000 rpmで5分間遠心した。細胞ペレットを2 mLのリン酸緩衝食塩水(PBS)に再懸濁した。再懸濁した細胞を3000 rpmで5分間遠心し、得られた細胞ペレットを1 mLの冷却PBSで再懸濁した。4 mLの冷却無水エタノール(使用時まで-20℃で維持)を添加して細胞を固定した。固定した細胞を-20℃で一晩保存した後に染色工程を再開した。
【0070】
HeLa細胞の観察
図11、12及び13を参照するに、細胞周期解析により、G2/M期にあるHeLa癌細胞とCaov-3癌細胞の数が増加し、G1 期とS期にある細胞が減少したことが示されている。データは、2つの別々の実験から得られた中央値±標準偏差で示されている。アスタリスク1つは、コントロールとの比較においてP<0.05を表す;アスタリスク2つは、コントロールとの比較においてP<0.01を表す;アスタリスク3つは、コントロールとの比較においてP<0.001を表す(oneway ANOVAにより解析)。
【0071】
(viii)マウスにおける子宮頸癌の誘導
実験開始前に1匹の雄マウスを3匹の雌マウスと共生させて、雌マウスの排卵を刺激した。48時間後、1匹の雄マウスを1匹の雌マウスと共生させた。翌朝、雌マウスの膣栓をチェックした。雌マウスの膣に膣栓を検出した時点を妊娠初日(G=0)として考慮した。雌マウスが妊娠したら、相手の雄マウスをケージから離した。各ケージには妊娠雌マウスを1匹だけ入れてマウス間のストレスを軽減させ、また、母親による子孫の共食いの機会を減らした。妊娠マウスには妊娠13日目から18日目にかけて、ゴマ油に溶解したジエチルスチルべストロール(DES)(DES調製の付属解説を参照)を体重1kg当たり67 μgで皮下注射した。生殖器官は上記の期間に発生することから、あまりにも早期のDES注射では、死産を生じる可能性がある。これらのマウスは、約妊娠19日目ないし22日目に出産した。子孫は、生後22日目に離乳させた。1匹の雌の子孫は、生後41日目に子宮頸部の形成異常の確認を行った。他の子孫については、シスプラチン、ゼルンボン及び生理食塩水による処理を行った。
【0072】
子宮内でDESに曝露された全ての雌の子孫をまとめて、各グループが3匹のマウスからなる4つのグループに分配した。5番目のグループは、DESに暴露されていない3匹のマウスからなる。マウスには、生後46日目から開始して52日目まで処置を行った。処置は2日に1回(46日目、48日目、50日目、52日目)行い、投与を4回行った。処置は、腹腔内注射により行った。グループ1のマウスは、0.9%の生理食塩水で処置し、このグループをポジティブコントロールグループとして用いた。グループ2のマウスには、8mg/kgのゼルンボンを与え、グループ3のマウスには、16mg/kgのゼルンボンを与えた。10mg/kgのシスプラチンをグループ4のマウスに与えた。最後に、グループ5のマウスについては、本試験でネガティブコントロール(正常マウス)として用いるので、何の処置も行わなかった。処置の後、生後54日目に全てのマウスを屠殺した。血液サンプルは心穿刺法により通常の試験管に回収して3000rpmで15分間遠心した。上清(血清)をエッペンドルフチューブに回収し、直ちに氷中に保存した(0℃‐一時的保存)。全てのサンプルから血清を回収した後、血清を‐20℃に保存した。次に、マウスを解剖した。マウスの生殖器官を回収して0.9%生理食塩水で洗浄した。洗浄した器官を10%ホルマリンに浸して室温で保存した。
【0073】
マウスを生後54日目に屠殺して子宮頸部組織を回収した。子宮頸部組織は10%ホルマリン中で4週間かけて固定した。子宮頸部組織は、組織加工装置(Leica社 TP 1020-1-1)を用いて加工した。次に、包埋用装置(Leica社 EG1160 TP 1020)を用いて加工した組織をパラフィンワックス中に包埋した。ミクロトーム(Leica社 RM 2145)を用いて包埋した組織ブロックを切片化した。ヘマトキシリン・エオジン染色法により切片を染色した。
【0074】
図14を参照するに、正常組織の組織切片では、細胞質に対する核の比率が低く、血管形成の兆候のない正常な上皮配置が示されている。生理食塩水で処置した雌マウスとは対照的に、図17に示すように、雌のbalb/cマウスの誘導した子宮頸癌の子宮頸部組織では、重度の異形成変化(CIN III)が認められる。これに加え、子宮頸部組織は、方向秩序の欠如した上皮細胞の配列(層全体に限定)、細胞質に対する高い核の比率(過染色性(hyperchromatism))並びに著しい血管形成を伴う細胞質の膨張及び透明化を示していた。子宮頸癌誘導した雌balb/cマウスの16 mg/kgのゼルンボン及び10 mg/kgのシスプラチンを用いた処置(それぞれ図16及び図15に示す)では、軽度の細胞質の透明化を伴う軽度の異形成変化(CIN I)、方向秩序の欠如した上皮細胞の配列及び子宮頸部切片に向かう軽度の脈管形成が示されていた。
【0075】
シスプラチン及びゼルンボンの両方について、軽度の異形成(CIN I)が増殖により、重症度の高い異形成(CIN III)に進行することを阻害する能力を有することが実証された。化合物ゼルンボンは、参照薬物シスプラチンと同様に、子宮頸部組織の異形成進行を軽減させることができる。
【0076】
(ix)マウスの子宮頸癌における抗癌剤としてのゼルンボンの評価
血清インターロイキン-6(IL-6)の測定及び定量
子宮頸癌誘導した雌マウス由来の血清血液IL-6濃度については、化合物ゼルンボン、シスプラチン及び生理食塩水(ポジティブコントロール)で処置した後に、市販の抗マウスIL-6 ELISAイムノアッセイキットを用いて測定と定量を行った。正常マウスの血清IL-6濃度をネガティブコントロールとして用いた。
【0077】
図18を参照するに、子宮頸癌誘導してゼルンボン及びシスプラチンで処置した雌マウスの血清IL-6濃度は、子宮頸癌誘導して生理食塩水で処置したマウスと比べて低かった(P<0.01、One-Way ANOVAで解析)。結果では、16 mg/kgのゼルンボンン及び10 mg/kgのシスプラチンで処置したマウスの血清IL-6レベルが、正常マウス(ネガティブコントロール)の血清レベルと最も近似していたことが示された。Post Hoc比較検定(One-Way ANOVA)により、生理食塩水で処置したマウスと他の4種類の処置グループの血清IL-6濃度の平均値が有意に異なっていることが示されている(P<0.01)。ゼルンボン及びシスプラチンで処置したマウスの血清IL-6濃度では、有意な低下が認められた(P<0.01)。結果は、ゼルンボンとシスプラチンが、殆ど同程度にIL-6の分泌を低下又は阻害できたことを示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Zingiber属の植物から得られ、以下の式を有することを特徴とする化合物(I)の、癌の予防及び治療用の医薬製剤の製造における使用。
【化1】
【請求項2】
前記化合物が、子宮頸部及び卵巣の癌細胞の増殖を阻害することにより、所望の治療効果を提供することを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記植物が、Zingiber zerumbet及びZingiber aromaticumからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項4】
前記化合物が、根茎、茎、根及び芽を含む植物材料から得られることを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項5】
(i)Zingiber属の植物材料から非極性有機抽出物を調製する工程;
(ii)工程(i)の生成物をシリカゲルカラムを通して、1種類の有機溶媒及び複数の有機溶媒の混合物で順に溶離する分画化に付することで、Zingiber属の植物由来の非極性有機抽出物の分画を得る工程;及び
(iii)再結晶法、分配法及びクロマトグラフィー法により前記化合物を単離及び精製する工程、
を含む、請求項1記載の化合物の抽出及び精製方法。
【請求項6】
Zingiber属の植物の根茎、茎、根及び/又は芽を、有機溶媒及び/又は水及び有機溶媒の混合溶液を用いた抽出に付することにより工程(i)が行われる、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記有機溶媒が、エタノール及び/又はヘキサンである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
工程(ii)記載の有機溶媒が、ヘキサン及び酢酸エチルからなる群から選択可能な、請求項5記載の方法。
【請求項9】
有効成分として請求項1に記載の前記化合物(I)を子宮頸部及び卵巣の癌の予防及び治療に有効な量で含む医薬製剤。
【請求項10】
前記医薬製剤が、粉末、顆粒、錠剤、カプセル、水性薬物又は注射液として、許容可能な担体に含まれて提供される、請求項9記載の医薬製剤。
【請求項1】
Zingiber属の植物から得られ、以下の式を有することを特徴とする化合物(I)の、癌の予防及び治療用の医薬製剤の製造における使用。
【化1】
【請求項2】
前記化合物が、子宮頸部及び卵巣の癌細胞の増殖を阻害することにより、所望の治療効果を提供することを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記植物が、Zingiber zerumbet及びZingiber aromaticumからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項4】
前記化合物が、根茎、茎、根及び芽を含む植物材料から得られることを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項5】
(i)Zingiber属の植物材料から非極性有機抽出物を調製する工程;
(ii)工程(i)の生成物をシリカゲルカラムを通して、1種類の有機溶媒及び複数の有機溶媒の混合物で順に溶離する分画化に付することで、Zingiber属の植物由来の非極性有機抽出物の分画を得る工程;及び
(iii)再結晶法、分配法及びクロマトグラフィー法により前記化合物を単離及び精製する工程、
を含む、請求項1記載の化合物の抽出及び精製方法。
【請求項6】
Zingiber属の植物の根茎、茎、根及び/又は芽を、有機溶媒及び/又は水及び有機溶媒の混合溶液を用いた抽出に付することにより工程(i)が行われる、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記有機溶媒が、エタノール及び/又はヘキサンである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
工程(ii)記載の有機溶媒が、ヘキサン及び酢酸エチルからなる群から選択可能な、請求項5記載の方法。
【請求項9】
有効成分として請求項1に記載の前記化合物(I)を子宮頸部及び卵巣の癌の予防及び治療に有効な量で含む医薬製剤。
【請求項10】
前記医薬製剤が、粉末、顆粒、錠剤、カプセル、水性薬物又は注射液として、許容可能な担体に含まれて提供される、請求項9記載の医薬製剤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2010−510207(P2010−510207A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537099(P2009−537099)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【国際出願番号】PCT/MY2007/000082
【国際公開番号】WO2008/063045
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(505291413)ユニバーシティー プトラ マレーシア (11)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【国際出願番号】PCT/MY2007/000082
【国際公開番号】WO2008/063045
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(505291413)ユニバーシティー プトラ マレーシア (11)
【Fターム(参考)】
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