説明

抗老化剤

【課題】レスベラトロールより強力なサーチュイン活性化作用を持ち、老化を抑制する抗老化剤、並びに抗老化剤を含む医薬組成物、食品を提供。
【解決手段】カロリー制限が延命・抗老化を実現するための有効な処理で、その延命の実現に関与するNAD依存性脱アセチル化酵素活性を有するサーチュインの活性化作用を有する、グネツム科植物であるメリンジョの実または種子の抽出物またはグネチンCを有効成分とする活性化剤、医薬組成物及び食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗老化剤に関する。より具体的には、本発明はサーチュインを活性化することにより老化を抑制する抗老化剤、または抗老化剤を含む医薬組成物、食品に関する。
【背景技術】
【0002】
老化・寿命制御に関するこれまでの研究で、酵母、線虫、ショウジョウバエ等においてはカロリー制限が延命・抗老化を実現するための有効な処理であることが知られている。そして、それらのカロリー制限による延命の実現には、NAD依存性脱アセチル化酵素活性を有するSir2が関与していることが明らかになっており(非特許文献1)、Sir2の哺乳類ホモログとしてはサーチュイン1〜7が知られている。
【0003】
従来から、このようなサーチュインを増強あるいは活性化する因子としては、赤ワイン中のポリフェノールであるレスベラトロールをはじめとした植物性ポリフェノール類が知られている(非特許文献2)。
【0004】
一方、グネツム科植物の一種であるメリンジョの種子にはポリフェノールの一種であるグネチンC、グネモノシドA、グネモノシドDが含まれており、抗菌作用、抗酸化作用を有すること(特許文献1)、インターロイキン-2やインターフェロン-γを増強することで免疫賦活作用を有することが記されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際特願PCT/JP2005-016824
【特許文献2】特開2009-046446
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】PLoS ONE 3: e1759, 2008
【非特許文献2】Nature, 425:191-196 (2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は抗老化剤、より具体的には、本発明はサーチュインを活性化することにより老化を抑制する抗老化剤を提供することを目的とする。さらに、本発明は、老化を抑制するための医薬組成物、食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題の下、本発明者らが鋭意検討を重ねたところ、グネツム科植物の抽出物およびグネチンCに、従来からサーチュイン活性化作用が知られているレスベラトロールに比べて顕著に高いサーチュイン活性化作用を有し、老化を抑制する作用があることを見出し、抗老化剤の有効成分として使用できることを確認した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものであり、下記の実施形態を有するものである。
【0009】
(I)グネツム科植物の抽出物およびグネチンCからなる群から選択される少なくとも1種を有効成分とするサーチュイン活性化剤。
(II)グネツム科植物の抽出物がメリンジョ抽出物である上記(I)記載のサーチュイン活性化剤。
(III)グネツム科植物の抽出物がメリンジョの実又は種子の抽出物である上記(I)記載のサーチュイン活性化剤。
(IV)グネツム科植物の抽出物がメリンジョの実又は種子の水、低級アルコール又はそれら混合物による抽出物である上記(I)記載のサーチュイン活性化剤。
(V)上記(I)〜(IV)記載のサーチュイン活性化剤を含む抗老化剤。
(VI)上記(V)記載の抗老化剤を含む医薬組成物。
(VII)上記(V)記載の抗老化剤を含む食品。
【発明の効果】
【0010】
本発明のサーチュイン活性化剤は、サーチュインを活性化することで老化を抑制することができる。また、抗老化剤を含む医薬組成物および食品の摂取により、老化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】試験例2において、各検体(メリンジョエキス、グネチンC、グネモノシドA、グネモノシドD、レスベラトロールおよびサーチュイン阻害剤であるスラミン(Suramin))を用いてサーチュイン活性化作用を調べた結果を図1に示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のサーチュイン活性化剤、抗老化剤、抗老化剤を含む医薬組成物および食品(以下、「本発明の製剤」と総称する)は、いずれもグネツム科植物の抽出物およびグネチンCからなる群から選択される少なくとも1種を有効成分とする。
【0013】
本発明の製剤の有効成分であるグネツム科植物の抽出物は、グネツム科に属する植物から抽出をすることで得られる。グネツム科に属する植物は特に制限されないが、Gnetum
latifolium、Gnetum
africanumおよびGnetum gnemon(メリンジョ)を例示することができる。好ましくはメリンジョである。使用する植物の部位についてもグネチンCを多く含む部位であれば、実(または種子)、花及び葉など、部位に制限されないが、好ましくは実(または種子)、より好ましくは実の胚乳である。
【0014】
グネツム科植物から抽出する場合、その方法は特に制限されないが、極性溶媒を用いて抽出する方法や二酸化炭素等による超臨界抽出法を用いて抽出する方法が挙げられる。極性溶媒で抽出する場合、使用する抽出溶媒としては、例えば、水、低級アルコール(メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノールなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトンなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチルなど)、グリコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール)、グリセリン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸、プロピオン酸、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドを挙げることができる。
【0015】
これらの抽出溶媒は1種で使用しても、また2種以上を任意に組み合わせて混合液として用いることもできる。好ましくは、水、低級アルコール(好ましくはエタノール)またはこれらの混合液(含水アルコール、好ましくは含水エタノール)である。なお、抽出溶媒として含水アルコール(好ましくは含水エタノール)を使用する場合、アルコール濃度としては、制限されないものの、20〜90容量%、特に40〜80容量%を好適に挙げることができる。
【0016】
抽出は、溶媒に上記植物体の一部または全部を加え、0℃〜溶媒が沸騰する温度、通常100℃以下の温度で、30分から3日程度、浸漬静置または浸漬振盪抽出し、次いで不溶物を除去することなどにより、容易に行うことができる。得られた溶媒抽出物はそのまま用いてもよいが、減圧、加温または自然乾燥などの方法を用いて濃縮し、固形分量または有効成分の濃度を調製することができる。固形分量は以降の加工のしやすさなどから、1〜99重量%、好ましくは20〜80重量%、さらに好ましくは30〜70重量%を挙げることができる。
【0017】
ここで有効成分の濃度は、グネツム科植物の抽出物中に含まれるグネチンC、グネモノシドA、グネモノシドDおよびレスベラトロール(以下、「レスベラトロール類」と総称する)の総量と表されるものとする。以下、特別の理由がない限り、グネツム科植物の抽出物の有効成分の濃度はレスベラトロール類の総量をモル濃度で表すこととする。
【0018】
かくして得られたグネツム科植物の抽出物は、そのまま医薬及び食品用途に供することができるが、更に加工したうえで当該用途に供することもできる。加工方法は特に制限されないが、上記抽出物を液剤、半液体形態、固体形態に調製する方法が挙げられる。具体的には、液剤の形態としてドリンクやシロップ、半液体形態としてはペースト状およびゼリー状、固体形態としては凍結乾燥物(例えば凍結乾燥粉末)、顆粒などを挙げることができる。なお、凍結乾燥物は、上記溶媒抽出物を凍結乾燥処理することによって製造することができる。凍結乾燥処理は定法に従って行うことができる。
【0019】
一方、グネチンCは、自家調製品または市販品を問わず用いることができる。ここでグネチンCを自家調製する方法としては、特に制限されず、グネチンCを含む植物から抽出し単離する方法、微生物に産生させて単離する方法(例えばAdil E Bala et al., “Antifungal activity of
resveratrol oligomers from Cyphostemma crotalarioides”, Pesticide Science,
Vol.55, Issue 2, Pages 206-208, 1998など参照)、および化学的に合成する方法を挙げることができる。
【0020】
また、グネチンCの単離精製処理に、上記で得られた抽出物を使用することができる。かかる単離精製処理は、慣用の方法を1または2種以上組み合わせて行うことができる。このような処理としては、例えば、析出法、液−液向流分配法、活性炭や樹脂などによる吸着処理、カラムクロマトグラフィー、およびイオン交換クロマトグラフィーなどによる精製処理等が挙げられる。なお、グネチンCの単離精製は、グネチンCの分子量(454)および極大吸収波長(320nm)のほか、下記の挙動を指標として行うことができる。
【0021】
<薄層クロマトグラフィー(TLC)>
下記条件で分析した際のRf値が0.61。シリカゲル60F254、展開溶媒:20容量%メタノールを含むクロロホルム、検出波長:254 nm。
【0022】
<高速液体クロマトグラフィー(HPLC)>
下記条件で分析した際の保持時間が33.5分。
カラム:東ソー製 TSKgel ODS-100V、5
μm, 4.6×150 mm、
移動層: A液:1.0容量%酢酸含有水、B液:1.0容量%酢酸含有メタノール、
グラジェント条件:0分→10分:A:B=65:35(v/v)→63:37(v/v)、10分→20分:A:B=63:37(v/v)→56:44(v/v)、20分→40分:A:B=48:52 (v/v)、
検出波長:320 nm、
流速: 0.8 mL/min。
【0023】
なお、精製は純度100%まで行う必要はない。本発明で使用するグネチンCは、純度が通常50%以上のものであればよく、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上のものを挙げることできる。
【0024】
また、グネチンCを、微生物を用いて産生する場合、また化学合成によって取得する場合も、上記と同様に精製処理を施すことが好ましい。
【0025】
後述する試験例に示すように、これらグネツム科植物の抽出物およびグネチンCはいずれも、サーチュインを活性化することで老化を抑制する作用を持つ。よって、グネツム科植物の抽出物およびグネチンCはいずれも、1種単独または組み合わせて、老化を抑制する抗老化剤の有効成分として利用することができる。
【0026】
かくして得られた抗老化剤を含有する本発明の医薬組成物又は食品はこれらグネツム科植物の抽出物またはグネチンC 100%からなるものであってもよいし、またそうでなくてもサーチュイン活性化作用を発揮する有効量を含有するものであってもよい。
【0027】
本発明の抗老化剤を医薬用途に供する場合、当該医薬組成物は、通常、有効量のグネツム科植物の抽出物およびグネチンCに加えて、薬学的に許容される担体または添加剤を配合して調製することができる。
【0028】
また、当該医薬組成物の投与方法として、特に制限されないが、経口投与、ならびに静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、経粘膜投与、経皮投与、および直腸内投与等の非経口投与を挙げることができる。好ましくは、経口投与、静脈内若しくは筋肉内投与、経粘膜投与、および経皮投与である。
【0029】
当該医薬組成物は、かかる投与方法に応じて、種々の形態の製剤(剤型)に調製することができる。以下に、各製剤(剤型)について説明するが、本発明において用いられる剤型はこれらに限定されるものではなく、医薬製剤分野において通常用いられる各種剤型を用いることができる。
【0030】
経口投与を行う場合の剤型として、散剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、錠剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤およびシロップ剤を挙げることができ、これらの中から適宜選択することができる。また、それらの製剤について徐放化、安定化、易崩壊化、難崩壊化、腸溶性化、易吸収化等の修飾を施すことができる。
【0031】
また、静脈内投与、筋肉内投与、または皮下投与を行う場合の剤型として、注射剤または点滴剤(用時調製の乾燥品を含む)等があり、適宜選択することができる。
【0032】
また、経粘膜投与や経皮投与を行う場合の剤型として、咀嚼剤、舌下剤、パッカル剤、トローチ剤、外用剤(軟膏剤、クリーム剤、貼布剤、液剤)等が、また直腸内投与を行う場合の剤型として軟膏剤があり、適応場所に応じて適宜選択することができる。また、それらの製剤について徐放化、安定化、易崩壊化、難崩壊化、易吸収化等の修飾を施すことができる。
【0033】
当該医薬組成物にはその剤形(経口投与または各種の非経口投与の剤形)に応じて、薬学的に許容される担体および添加剤を配合することができる。薬学的に許容される担体及び添加剤としては、溶剤、賦形剤、コーティング剤、基剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、溶解補助剤、懸濁化剤、粘稠剤、乳化剤、安定剤、緩衝剤、等張化剤、無痛化剤、保存剤、矯味剤、芳香剤、着色剤が挙げられる。以下に、医薬上許容される担体および添加剤の具体例を列挙するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0034】
溶剤としては、精製水、滅菌精製水、注射用水、生理食塩液、ラッカセイ油、エタノール、グリセリン等を挙げることができる。賦形剤としては、デンプン類(例えばバレイショデンプン、コムギデンプン、トウモロコシデンプン)、乳糖、ブドウ糖、白糖、結晶セルロース、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、タルク、酸化チタン、トレハロース、キシリトール等を挙げることができる。
【0035】
結合剤としては、デンプンおよびその誘導体、セルロースおよびその誘導体(たとえばメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース)、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、トラガント、アラビアゴム等の天然高分子化合物、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等の合成高分子化合物、デキストリン、ヒドロキシプロピルスターチ等を挙げることができる。
【0036】
滑沢剤としては、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸およびその塩類(たとえばステアリン酸マグネシウム)、タルク、ワックス類、コムギデンブン、マクロゴール、水素添加植物油、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、シリコン油等を挙げることができる。
【0037】
崩壊剤としては、デンプンおよびその誘導体、寒天、ゼラチン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、セルロースおよびその誘導体、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルセルロースおよびその塩類ならびにその架橋体、低置換型ヒドロキシプロピルセルロース等を挙げることができる。
【0038】
溶解補助剤としては、シクロデキストリン、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等を挙げることができる。懸濁化剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、トラガント、アルギン酸ナトリウム、モノステアリン酸アルミニウム、クエン酸、各種界面活性剤等を挙げることができる。
【0039】
粘稠剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、トラガント、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0040】
乳化剤は、アラビアゴム、コレステロール、トラガント、メチルセルロース、レシチン、各種界面活性剤(たとえば、ステアリン酸ポリオキシル40、セスキオレイン酸ソルビタン、ポリソルベート80、ラウリル硫酸ナトリウム)等を挙げることができる。
【0041】
安定剤としては、トコフェロール、キレート剤(たとえばEDTA、チオグリコール酸)、不活性ガス(たとえば窒素、二酸化炭素)、還元性物質(たとえば亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、ロンガリット)等を挙げることができる。
【0042】
緩衝剤としては、リン酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ホウ酸等を挙げることができる。
【0043】
等張化剤としては、塩化ナトリウム、ブドウ糖等を挙げることができる。無痛化剤としては、局所麻酔剤(塩酸プロカイン、リドカイン)、ペンジルアルコール、ブドウ糖、ソルビトール、アミノ酸等を挙げることができる。
【0044】
矯味剤としては、白糖、サッカリン、カンゾウエキス、ソルビトール、キシリトール、グリセリン等を挙げることができる。芳香剤としては、トウヒチンキ、ローズ油等を挙げることができる。着色剤としては、水溶性食用色素、レーキ色素等を挙げることができる。
【0045】
保存剤としては、安息香酸およびその塩類、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、逆性石けん、ベンジルアルコール、フェノール、チロメサール、デヒドロ酢酸、ホウ酸等を挙げることができる。
【0046】
コーティング剤としては、白糖、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、セラック、ゼラチン、グリセリン、ソルビトール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、セルロースアセテートフタレート(CAP)、メチルメタアクリレート−メタアクリル酸共重合体および上記記載した高分子等を挙げることができる。
【0047】
基剤としては、ワセリン、流動パラフィン、カルナウバロウ、牛脂、硬化油、パラフィン、ミツロウ、植物油、マクロゴール、マクロゴール脂肪酸エステル、ステアリン酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ベントナイト、カカオ脂、ウイテップゾール、ゼラチン、ステアリルアルコール、加水ラノリン、セタノール、軽質流動パラフィン、親水ワセリン、単軟膏、白色軟膏、親水軟膏、マクロゴール軟膏、ハードファット、水中油型乳剤性基剤、油中水型乳剤性碁剤等を挙げることができる。
【0048】
なお、上記の各剤型について、公知のドラッグデリバリーシステム(DDS)の技術を採用することができる。本明細書にいうDDS製剤とは、徐放化製剤、局所適用製剤(トローチ、バッカル錠、舌下錠等)、薬物放出制御製剤、腸溶性製剤および胃溶性製剤等、投与経路、バイオアベイラビリティー、副作用等を勘案した上で、最適の製剤形態にした製剤である。
【0049】
当該医薬組成物の1回あたりの投与量は、グネツム科植物の抽出物の総量に換算して0.1〜5000 mg/kgの範囲が好ましく、より好ましくは1〜500
mg/kg、またはグネチンCの総量に換算して0.002〜100 mg/kgの範囲が好ましく、より好ましくは0.02〜10 mg/kgである。また、本発明の抗老化医薬組成物の一日投与量としては、グネツム科植物の抽出物の総量に換算して、通常
5 mg〜250 g、またはグネチンCの総量に換算して0.1 mg〜5000 mgを挙げることができる。なお、これらの投与量は、年齢、性別、体型等により変動し得る。
【0050】
一方、本発明の抗老化剤を食品成分として使用する場合は、グネツム科植物の抽出物およびグネチンCをそのまま当該食品の用に供することができ、あるいは、例えば水、アルコール、ビタミン、ミネラル、デンプン、蛋白質、繊維質、脂質、脂肪酸、着香料、着色料、甘味料、調味料、香辛料、乳化剤、防腐剤、保存料、防かび剤、殺菌剤または酸化防止剤のように通常食品に用いられる原料及び、または素材の1つまたは複数とともに使用することもできる。
【0051】
グネツム科植物の抽出物およびグネチンCの食品への配合割合は、特に限定されず、当該食品の使用目的、使用形態および使用量に応じて適宜選択することができる。当該グネツム科植物の抽出物およびグネチンCがサーチュイン活性化作用を有する量を含有するようにするには、通常、グネツム科植物の抽出物においては本発明の食品中に有効成分が1〜1000μM(約0.00025〜0.25重量%)、好ましくは30〜300
μM(約0.0075〜0.075重量%)、グネチンCにおいては1〜1000 μM(約0.00005〜0.05重量%)、好ましくは30〜300 μM(約0.0015〜0.015重量%)であるのが好ましい。
【0052】
さらに、本発明の食品は保健、健康維持、増進等を目的とする食品、例えば健康食品、機能性食品、栄養補助食品、サプリメント、あるいは厚生労働省の定める特別用途食品(例えば、特定保健用食品、栄養機能食品、病者用食品、病者用組合せ食品、高齢者用食品など)として提供することも可能である。
【0053】
また、本発明の食品の種類としては特に制限されず、例えば、ヨーグルト、ドリンクヨーグルト、ジュース、牛乳、豆乳、酒類、コーヒー、紅茶、煎茶、ウーロン茶、スポーツ飲料等の各種飲料や、プリン、クッキー、パン、ケーキ、ゼリー、煎餅などの焼き菓子、羊羹などの和菓子、冷菓、チューインガム等のパン・菓子類や、うどん、そば等の麺類や、かまぼこ、ハム、魚肉ソーセージ等の魚肉練り製品や、みそ、しょう油、ドレッシング、マヨネーズ、甘味料等の調味類や、チーズ、バター等の乳製品や、豆腐、こんにゃく、その他佃煮、餃子、コロッケ、サラダ等の各種総菜を挙げることができる。これら食品や食品素材には、カルシウム、マグネシウム、リン等のミネラルを併用してもよく、食品や食品素材とした場合のグネツム科植物の抽出物の摂取量は成人1人1日あたり、好ましくは5 mg〜250 g、より好ましくは50 mg〜25 g、グネチンCの摂取量は成人1人1日あたり、好ましくは0.1 mg〜5000
mg、さらに好ましくは1〜500 mgを挙げることができる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明をより詳細に説明するために試験例及び実施例を挙げるが、本発明はこれらの記載に限定されるものではない。
【0055】
調製例
以下の方法に従い、グネツム科植物の抽出物、グネチンC、グネモノシドA、グネモノシドDを得た。
【0056】
(1)グネツム科植物の抽出物(メリンジョエキス)の調製
特開2009-013123号公報の段落[0024]の記載に従ってメリンジョの乾燥果実の破砕物を室温下で含水エタノールに浸漬し、得られた抽出液を減圧濃縮して、固形分を63.2重量%含むメリンジョエキスを得た。
【0057】
(2)グネチンCの調製
上記で得られたメリンジョエキス2.5gをカラムクロマトグラフィー(ゲルの種類:Cosmosil
75C18-PREP(ナカライテスク製)、カラムサイズ:φ3×26.5 cm)に付し、溶離液としてメタノール含量が10容量%、25容量%、40容量%、80容量%および100容量%の含水メタノールを用いて順次ステップワイズ溶出した(各溶離液600 mLを流し、100 mLずつ分取)。得られた各成分を下記条件のHPLCで確認したところ、グネチンCは、保持時間33.5分(1容量%酢酸および80容量%メタノールを含有する含水メタノール溶出フラクション)に溶出することが確認された。
【0058】
<HPLC条件>
カラム:東ソー製 TSKgel ODS-100V、5
μm, 4.6×150 mm、
移動層: A液:1.0容量%酢酸含有水、B液:1.0容量%酢酸含有メタノール、
グラジェント条件:0分→10分:A:B=65:35(v/v)→63:37(v/v)、10分→20分:A:B=63:37(v/v)→56:44(v/v)、20分→40分:A:B=48:52 (v/v)
検出波長:320 nm、
流速: 0.8 mL/min。
【0059】
上記フラクションを濃縮後、下記条件の中圧カラムクロマトグラフィーで順次溶出した。
【0060】
<中圧カラムクロマトグラフィー条件>
ゲルの種類:シリカゲル、Daisogel
IR-60-40/63-W、
カラムサイズ:φ2×7.48 cm、
検出波長:320 nm
移動層:A液:メタノール、B液:クロロホルム、
グラジェント条件:0分→2分:A:B=11:89(v/v)、2分→8分:A:B=11:89(v/v)→18:82(v/v)、8分→12分:A:B=18:82(v/v)、12分→14分:A:B=21:79(v/v)、14分→20分:A:B=21:79(v/v)→29:71(v/v)、20分→24分:A:B=29:71(v/v)、24分→30分:A:B=29:71(v/v)→36:64(v/v)、30分→34分:36:64(v/v)、
流速: 60 ml/min。
【0061】
溶出液を60mLずつ分取し、検出波長:320 nmで吸収ピークを示した29番目から30番目のフラクションをエバポレーターで濃縮し、グネチンC(35.2 mg、純度97%)を得た。
【0062】
(3)グネモノシドAの調製
以下の方法に従い、グネモノシドAを単離した。
【0063】
(i) メリンジョエキスペースト2.5gをカラムクロマトグラフィー(ゲルの種類:Cosmosil 75C18-PREP ナカライテスク、カラムサイズ:φ3×26.5
cm)に付し、10%,25%,40%,80%,100%メタノール水(各3 Lを流し、1 Lずつ分取)で順次溶出した。得られた各成分をHPLCで確認したところ、グネモノシドA
(保持時間 10.3分)は40%メタノール水溶出フラクション中にあった。
【0064】
(ii) 上記の40%フラクションを分取用カラムクロマトグラフィー[カラム:Cosmosil 5C18-AR-II ナカライテスクφ20×250
mm、移動層:A液:0.1% トリフルオロ酢酸(TFA)、B液:メタノール、A:B=67:33 (v/v)で60分間アイソクラテック、検出波長:320nm、流速
10 mL/min、注入量:5 mg(100 mg/mL×50 μL)、溶出時間:45分]で分取を行い、グネモノシドA
130 mg (純度99.4%)を得た。
【0065】
(4)グネモノシドDの調製
以下の方法に従い、グネモノシドDを単離した。
【0066】
(i)メリンジョエキスペースト2.5gをカラムクロマトグラフィー(ゲルの種類:Cosmosil 75C18-PREP ナカライテスク、カラムサイズ:φ3×26.5
cm)に付し、10%,25%,40%,80%および100%メタノール水(各3 Lを流し、1 Lずつ分取)で順次溶出した。得られた各成分をHPLCで確認したところ、グネモノシドD
(保持時間 24.7分)は80%メタノール水溶出フラクション中にあった。
【0067】
(ii)上記80%フラクションをセライト(933 mg)に吸着後、中圧カラムクロマトグラフィー(ゲルの種類:シリカゲル、Daisogel
IR-60-40/63-W、カラムサイズφ2×7.48 cm、検出波長:320 nm)に付し、メタノールを含有するクロロホルム(移動層 A液:メタノール、B液:クロロホルム、A:B=11:89(v/v)2分保持後18:82(v/v)6分のリニアグラジエント、18:82(v/v)4分保持、21:79(v/v)2分保持後29:71(v/v)6分のリニアグラジエント、29:71(v/v)4分保持後36:64(v/v)6分間のリニアグラジエント、36:64(v/v)4分間保持、流速:
60 mL/min、60mLずつ分取)で順次溶出した。
【0068】
(iii) 上記のフラクション16-21を分取用カラムクロマトグラフィー[カラム:Cosmosil
5C18-AR-II 20×250 mm、移動層:A液:0.1% TFA、B液:メタノール、A:B=60:40(v/v)で80分アイソクラテック、検出波長:320nm、流速
10 mL/min、注入量:5 mg(100 mg/mL×50 μL)、溶出時間:62分]で分取を行い、グネモノシドD
40 mg(純度99.1%)を得た。
【0069】
試験例1 メリンジョエキス中のグネチンC、グネモノシドA、グネモノシドD、レスベラトロールの定量
(1)試験方法
(i)サンプル調製
メリンジョエキスを30.00 mg量り取る。30%アセトニトリル水で50
mLにメスアップした。0.2μmメンブランフィルター(ADVANTEC製 DISMIC-13HP、PTFE、0.2μm)でろ過した。
【0070】
(ii)検量線の作成
標準品のレスベラトロール及びグネチンCを各2.00
mg量り取り、メタノールで10 mLにメスアップした。レスベラトロール及びグネチンCをそれぞれ0.1、0.25、0.5、1.0 mL量り取り、30%アセトニトリル水で10
mLにメスアップした。これを用いて検量線とした。
【0071】
(i)で調製した検体を用い、下記条件に従って高速液体クロマトグラフィー(HPLC, 島津製 Prominence)により分析を行った。
【0072】
(iii)HPLC条件
カラム:東ソー製
TSKgel ODS-100V 5μm 4.6×150 mm、移動層: A液:1%酢酸水、B液:アセトニトリル、A:B=80:20(v/v)から78:22(v/v)10分、78:22(v/v)から70:30(v/v)10分のリニアグラジエント後、63:37
(v/v)で15分保持、検出波長:320 nm、流速: 0.8 mL/min、注入量 20 μLで分析(保持時間:グネモノシドA 8.6分、グネモノシドD 23.5分、グネチンC 33.8分、レスベラトロール 21.3分)。
【0073】
(2)試験結果
調製例(1)で調製したメリンジョエキスにはグネモノシドA 12 mM、グネモノシドD 4.6 mM、グネチンC 4.7 mM、レスベラトロール0.059 mMが含まれていた。以下の試験においてはメリンジョエキス中に含まれるこれらレスベラトロール類の総和をメリンジョエキスの濃度として扱うこととする。
【0074】
試験例2 サーチュイン活性化の測定
(1)試験方法
サーチュインの活性測定には、SIRT1/Sir2 Deacetylase Fluorometric Assay
Kit (CycLex, Nagano, Japan)を用いた。使用方法は取り扱い説明書に記載の方法に従った。試験検体としてメリンジョエキス、グネチンC、グネモノシドA、グネモノシドD、レスベラトロール(シグマ社)またはサーチュイン阻害剤のスラミン(Suramin sodium、BIOMOL社)を各々100μMで用いた。また、試験検体にDMSOを用いた場合をコントロールとした。蛍光の測定にはマイクロプレートリーダー(FLUOStar OPTIMA, BMG LABTECH, Germany)を使用した。
【0075】
(2)試験結果
結果を図1に示す。コントロールの値よりも、メリンジョエキス、グネチンC、グネモノシドA、グネモノシドDまたはレスベラトロールを添加したときの値の方が高くなっており、これらの試験検体によってサーチュインの活性が高まることが明らかとなった。特にメリンジョエキスおよびグネチンCによるサーチュインの活性化はそれぞれ、レスベラトロールによる活性の2倍および3倍高かった。
【0076】
試験例3 線虫を用いた寿命延長測定試験
(1)試験方法
(i)線虫(Caenorhabditis elegans)の培養はNGM寒天培地(52
mM 塩化ナトリウム, 1.7% 寒天末, 0.25% bactopeptone, 0.001% コレステロール, 1 mM 硫酸マグネシウム, 1 mM 塩化カルシウム, 25 mM リン酸二水素カリウム)上に餌として大腸菌(Escherichia coli strain OP50)を播種した9 cm プレートを用いた。線虫の取り扱いは、「線虫ラボマニュアル」(シュプリンガーフェアラーク東京、三谷 昌平編、2003年)記載の方法を一部変更して行った。同一生育ステージの線虫を得るため、産卵期にある成虫から卵を回収した。すなわち、水酸化ナトリウムと次亜塩素酸ナトリウム溶液で成虫を溶解することで卵のみを得た。卵はM9バッファー(精製水1L中に3 g
リン酸二水素カリウム, 6 g リン酸水素二ナトリウム, 5 g 塩化ナトリウム,
1 ml 1 M 硫酸マグネシウム)中24.5℃で一晩孵化させた。このように生育ステージを合わせた第一期幼虫をNGM培地に移し、さらに2日間24.5℃で培養させることで得られた成虫を寿命解析に用いた。
【0077】
(ii)得られた成虫を、コントロールとして1%ジメチルスルフォキシド(DMSO)を含むNGM寒天培地、試験検体としてメリンジョエキスまたはグネチンCを含むNGM寒天培地へ移し24.5ºC で培養した。この日を寿命0日目とし、2 日毎に計3回、新しく作製した1%DMSOまたは試験検体を含むNGM寒天培地へ線虫を移すとともに、生死数をカウントした。5日目以降は生死数のカウントのみを行った。白金線で刺激を与え、何ら反応を返さなかった線虫を死と判断した。生死数のカウント結果より線虫の平均寿命を求めた。
【0078】
(2)試験結果
結果を表1に示す。メリンジョエキス、グネチンCの添加により、線虫の平均寿命はコントロールよりも延長したことから、これらの検体が寿命を延長させることが明らかとなった。
【0079】
【表1】

【0080】
実施例1 粉末
調製例(1)で得られたメリンジョエキス50 gにデキストリン10重量%含有水溶液2.3 g加えて均一になるまで撹拌した。その後凍結乾燥により、レスベラトロール類を227
mM(20重量%)含有するメリンジョ抽出物粉末を得た。
【0081】
実施例2 錠剤
上記実施例1で得られたメリンジョ抽出物粉末30 mgにショ糖脂肪酸エステル3 mg、結晶セルロース100 mg、デキストリン197 mgを混合・打錠し、錠剤を得た。
【0082】
実施例3 カプセル剤
上記実施例1で得られたメリンジョ抽出物粉末45 mgにショ糖脂肪酸エステル5 mg、デキストリン200 mgをカプセルに充填し、カプセル製剤を得た。
【0083】
実施例4 錠剤
下記処方に従って、1錠あたりグネチンCを10 mg含む錠剤を調製した。
1錠(300 mg)中
グネチンC 10 mg
乳糖 50 mg
結晶セルロース 100 mg
デンプン 100 mg
ヒドロキシプロピルセルロース 25 mg
ステアリン酸マグネシウム 10 mg
甘味料(ステビア) 5 mg


【特許請求の範囲】
【請求項1】
グネツム科植物の抽出物およびグネチンCからなる群から選択される少なくとも1種を有効成分とするサーチュイン活性化剤。
【請求項2】
グネツム科植物の抽出物がメリンジョ抽出物である請求項1記載のサーチュイン活性化剤。
【請求項3】
グネツム科植物の抽出物がメリンジョの実又は種子の抽出物である請求項1記載のサーチュイン活性化剤。
【請求項4】
グネツム科植物の抽出物がメリンジョの実又は種子の水、低級アルコール又はそれら混合物による抽出物である請求項1記載のサーチュイン活性化剤。
【請求項5】
請求項1〜4記載のサーチュイン活性化剤を含む抗老化剤。
【請求項6】
請求項5記載の抗老化剤を含む医薬組成物。
【請求項7】
請求項5記載の抗老化剤を含む食品。


【図1】
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【公開番号】特開2011−79797(P2011−79797A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−235386(P2009−235386)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(598162665)株式会社山田養蜂場本社 (32)
【Fターム(参考)】