説明

抗腫瘍剤としてのポリアミン配位子を有する新規ビス−プラチナ錯体

【課題】ビス−プラチナ(II)錯体の中間体を製造する方法を提供する。
【解決手段】式(III):NH2−(CH2n−A'−(CH2m−NH2(III)のポリアミンの製造方法であって、第一保護基でω−アミノ酸の窒素原子を保護し、その後無機酸で処理して遊離酸第一中間体を生成し;第一中間体を、第二保護基によってジアミンを一保護化することにより得られる第二中間体と反応させて、アミド中間体を生成し;アミド中間体から第一保護基及び第二保護基を除去して第四中間体を生成し;第四中間体のアミド部分を第二アミンに還元し;第一アミンを第三保護基で保護し、その後、第二アミンを第四保護基で保護して、第五中間体を生成し;第五中間体中の第一アミンから第三保護基を除去して、式(III)の化合物を生成する;工程を含むポリアミンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つのプラチナ核がポリアミン配位子により結合される新規ビスプラチナ錯体、及びそれを含有する製剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
癌の化学療法におけるプラチナ錯体の使用は、十分公知である。例えば、シスプラチン(CDDP)は、精巣、卵巣、頭部及び頸部、並びに小細胞肺癌を治療するための療法に用いられる。しかしながら、シスプラチンによる治療は、ひどい腎毒性を生じ得る。さらなる臨床的欠点は、薬剤による治療抵抗性になる腫瘍を引き起こす獲得薬剤耐性の問題である。
【0003】
シスプラチンの腎毒性作用を克服するために、第二世代アナログであるカルボプラチンが開発された。カルボプラチン、又は[Pt(NH32(CBDCA)](ここで、CBDCAは1,1'−シクロブタンジカルボキシレートを表す)は、シスプラチンと同一の癌スペクトルに対して臨床的に有効であるが、腎毒性作用の低減を示す。
【0004】
異なる腫瘍又は癌を治療しようとして、多数の異なるモノ−及びビス−プラチナ錯体が製造されてきた(米国特許第4,225,529号;米国特許第4,250,189号;第4,553,502号;米国特許第4,565,884号)。このような化合物はいずれも、現在は治療に用いられていない。
【0005】
さらに近年、ハロゲン化物、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、カルボン酸塩、置換カルボン酸塩又はジカルボン酸塩などのうち2つの異なる、又は同一の配位子と同時に、プラチナ錯体と結合した架橋ジアミン又はポリアミン配位子、及び第一又は第二アミン又はピリジン型の含窒素配位子を有する新規のビス−プラチナ(II)錯体が開示されている(米国特許第4,797,393号)。2つの陰イオンが各プラチナ核上の+2電荷を平衡させるため、錯体は中性である、と専門技術者は考える。
【0006】
WO91/03482はさらに、米国特許第4,797,393号に記載されているようなビス−プラチナ(II)錯体を開示するが、主な相違点は、各々のプラチナ核上に2つの含窒素中性配位子及び1つの荷電配位子を有することである。これにより錯体は+2の総電荷をもつ。これらの錯体は、鎖間架橋を形成するDNA複製を妨げ、これがDNA上の立体配座変化を引き起こし、結局は複製を阻害し、最終的細胞毒性作用を生じる。
【0007】
ポリアミン架橋配位子は、概してこのような錯体において考え得る配位子であると記述されているが、実例は示されていない。
【0008】
このような化合物がシスプラチン耐性細胞系のシスプラチン耐性を部分的に克服し、シスプラチンよりも広範囲の活性を有し得る場合でも、それらの付随的感受性は、シスプラチンと比較して低いと思われる(表1参照)。
【0009】
その一方で、ポリアミンは細胞増殖に不可欠であると考えられる。哺乳類細胞中の天然ポリアミンは、プトレシン、スペルミジン及びスペルミンである。広範囲な種類の関連アミンがその他の生物中に見出され、その生理機能に重要な役割を演じる。それにもかかわらず、陽イオンポリアミンと負に荷電したDNAとの会合がDNAの有意な構造的変化を誘発する、ということも公知である。スペルミジン及びスペルミンはDNAを凝縮及び凝集させて、あるDNA配列における可逆的なBからZへの遷移を誘発する(Marton,L.J
.et al,Annu.Rev.Pharmacol.Toxicol.,1995,35:55-91)。これは、抗腫瘍薬としてのポリアミンの可能性のある使用に研究者の注意を集中させた(Basu,H.S.et al.,Biochem.J.,1990,269:329-334;Yanlong Li et al.,J.Med.Chem.,1996,39:339-341)。
【0010】
スペルミンとのモノ−プラチナ錯体は、J.Clin.Hematol.Oncol.,7(1),322-9(1977)及びProc.Int.Congr.Chemother.13th,17,286/100-286/102(1983)に記載されているが、いずれの場合も、スペルミンとのキレートが得られる。最初に述べた論文では、特に、スペルミンがプラチナ(II)核の全配位面に配位した錯体が記載されている。ポリアミンとのモノ−プラチナ錯体もCan.J.Chem.,72,1225-9(1994)に開示されているが、しかし構造が示されていなくても、それらもキレートであると推定される。
【0011】
J.Inorganic Biochem.,53,177-190(1994)は、2つのスペルミジン分子が結合したトリプラチナ錯体を開示する。さらに外部ブラチナ部分は、2つのスペルミジン窒素原子とのキレート配位子に包含される。
【0012】
錯体形成の場合と同様にポリアミンを用いて、2つ又はそれ以上の窒素原子がプラチナ配位面とのキレート形成に包含されるのを避け得ない、と理解される。
【0013】
ポリアミン架橋配位子を有するWO91/03482の選定数のビス−プラチナ(II)錯体が、耐性及び非耐性細胞系の両方に対して特に活性である、ということを、我々はここに見出した。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
式(I):
【0015】
【化1】

【0016】
(式中、X、Y及びZ配位子は、アンモニア、塩化物、臭化物、ヨウ化物又は式R−COO-のカルボキシレート(ここで、Rは(C1〜C4)アルキル基である)から成る群から選択されるが、但し、X、Y及びZのうちの2つがアンモニアの場合、他は、塩化物、臭化物、ヨウ化物、及びカルボキシレートR−COO-の中から選択され;
n及びmは、同一であっても異なってもよく、2〜8の整数であり;
pは整数1又は2であり;
式H2N−(CH2n−A−(CH2m−NH2の二官能配位子はポリアミン配位子であり;
-pは適切な対イオンである)
のビス−プラチナ(II)錯体あるいはそのエナンチオマー又はジアステレオマーを提供することが本発明の目的である。
【0017】
プラチナ配位面とのキレートの形成を回避する式(I)の化合物の製造方法を提供することは、本発明のさらなる目的である。
【0018】
本発明の別の目的は、式(I)の化合物を製薬上許容可能な賦形剤とともに含有する製剤組成物と同時に、式(I)の1つ又はそれ以上の化合物でのプラチナ錯体治療可能な腫瘍を治療する方法を提供することである。
【0019】
本発明のさらに別の目的は、式(VIIc):
【0020】
【化2】

【0021】
の化合物をポリアミンの合成のための中間体として提供することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
式(I):
【0023】
【化3】

【0024】
(式中、X、Y及びZ配位子は、アンモニア、塩化物、臭化物、ヨウ化物、又は式R−COO-のカルボキシレート(ここで、Rは(C1〜C4)アルキル基である)から成る群から選択されるが、但し、X、Y及びZのうちの2つがアンモニアの場合、他は、塩化物、臭化物、ヨウ化物、及びカルボキシレートR−COO-の中から選択され;
n及びmは、同一であっても異なってもよく、2〜8の整数であり;
pは整数1又は2であり;
Aは、−B−、−B−(CH2r−B−、−B−(CH2r−B−(CH2z−B−(ここで、r及びzは2〜8の範囲の整数であり、Bは−NR1−又は−N(R22+.1/pQ-p基(ここで、R1は水素、(C1〜C4)アルキル、(C1〜C4)アシル,tert−ブチルオキシカルボニルから成る群から選択され、R2は水素、(C1〜C4)アルキルから成る群から選択される)である)から成る群から選択され;
-pは、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸、硫酸、硫酸水素、過塩素酸から選択される陰イオンである)
のビスプラチナ(II)錯体を提供することが本発明の目的である。
【0025】
式(I)の化合物のエナンチオマー及びジアステレオマーも本発明の範囲に包含される。
【0026】
式(I)の好ましい化合物は、式H2N−(CH2n−A−(CH2m−NH2であるポ
リアミン配位子が、スペルミン又はスペルミジンであるものである。
【0027】
式(I)の特に好ましい化合物は、ポリアミンがスペルミン又はスペルミジンであり、そしてX、Y又はZ配位子のうちの2つがアンモニアであり、他がクロル基であるものである。
【0028】
式(I)のさらに好ましい化合物は、前記の制限にさらに加えて、2つのプラチナ核がトランス配置で配位子を有するものである。
【0029】
式(I)の化合物の特に好ましい塩は、塩素及び硝酸の塩である。
【0030】
式(I)の化合物においての「トランス配置」とは、2つのアンモニア基がトランス位にあり、即ちX及びZがアンモニアであり、他が前記で定義されるものであることを意味する。
【0031】
式(I)の錯体は、以下の工程を包含する手順にしたがって製造し得る:
(a)式(II):
[Pt(X)(Y)(Z)(DMF)]+NO3- (II)
の活性化中間体を生じる;
式[Pt(X)(Y)(Z)Cl]の前駆体の反応(ここで、X、Y及びZは上記で定義されるものであり、2つのアンモニア基は等モル量のAgNO3の存在下、ジメチルホルムアミド中でシス又はトランス配置である)。
(b)2モル量の中間体(II)と式(III):
2N−(CH2n−A'−(CH2m−NH2 (III)
(式中、A'はAの意味を有するが、但し、Bは−NH−又は−NH2+−基であり得ないか、あるいは適切な保護基の除去によりAに変換される基であり、式(I'):
【0032】
【化4】

【0033】
(式中、変数はすべて、前記で定義されるものである)のpt錯体を生成する)
のポリアミンとの縮合。
(c)任意に存在する保護基の除去;
(d)化学量論的量の適切な塩基で、好ましくはアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物の無水有機溶液で処理することにより、式(I)の他の化合物(式中、Bは−NH−又は−N(C1〜C4)アルキル基である)を生成するための式(I)の化合物の任意の中和;
(e)従来のクロマトグラフィー法によっての、生成された可能性のあるジアステレオマーの分離。
式[Pt(X)(Y)(Z)Cl]の前駆体は公知の化合物であって、そのいくつかは市販されている。
【0034】
配位面外側の硝酸塩対イオンは他の陰イオンと任意に交換されて、式(I)の他の化合物を生成し得る。
【0035】
工程(a)は、0℃〜50℃の範囲の温度で、優先的には室温で実行される。
【0036】
工程(b)は、−40℃〜室温の範囲の温度で、優先的には−20℃で実行される。式(II)のプラチナ中間体の10%〜100%モル過剰が、用いられうる。
【0037】
本発明に用い得る適切な保護基は、全て第二アミンの保護基である。特に好ましい保護基は,tert−ブチルオキシカルボニル基である。前記のように、Bが−N(BOC)基である化合物も、本発明の範囲に包含される。それらはさらに、工程(c)にしたがってBOC基の除去により、式(I)の他の化合物(式中、Bは−NH2+−である)に変換され得る。
【0038】
工程(c)は、第二アミンの保護基の除去の従来法にしたがって実行される。例えば,tert−ブチルオキシカルボニル保護基を用いる場合、その除去は、水性又は水/メタノール溶液中での塩酸による処理のような、有機又は無機酸で処理することにより実行される。
【0039】
工程(d)は、−10℃から室温の範囲の温度で実行される。アルコール溶液中で水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが優先的に用いられる。
【0040】
式(III)のポリアミン(式中、Bは−N(BOC)基である)は、スキームI、II及びIIIにしたがって製造されうる。
【0041】
スキームI〜IIIに示した方法は、以下の工程を含む:
(f)適切な保護基、優先的にはtert−ブチルオキシカルボニル基によるω−アミノ酸の窒素原子の保護と、その後の無機酸による処理で遊離酸を得る;
(g)適切な保護基、優先的にはtert−ブチルオキシカルボニル基によるジアミンの一保護;
(h)工程(f)で得られた中間体と工程(g)で得られたものとの反応で中間体(IV)を生成(スキームI);あるいはその代わりとして、工程(f)で得られた中間体とジアミンと反応で中間体(V)を生成(スキームII);あるいは、工程(f)で得られた中間体とスキーム(I)で報告された式(III)の最終生成物(この場合、Aは−N(BOC)−基である)との反応で、中間体(VI)を生成;
(i)中間体(IV)、(V)又は(VI)中のそれぞれに存在する保護基の除去;
(l)アミド部分の第二アミンへの還元;
(m)適切な保護基、優先的にはトリフルオロアセチル基による第一アミンの保護と、その後の特定の保護基、優先的にはtert−ブチルオキシカルボニル基による第二アミンの保護;
(n)第一アミンの保護基の選択的除去で、式(III)の化合物(この場合、Bは−N(BOC)−基である)を生成。
【0042】
工程(g)は、ジアミン1モル当たり0.3〜0.5モルの範囲の量の保護試薬を用いて実行される。適切な保護基は、例えばGreen,T.W.,Wuts,P.G.M.,"Protective Groups in Organic Synthesis",Second Edition,John Wiley & Sons,1991で報告されたような専門技術者には明らかである、アミノ酸の第一アミンのための保護基である。
【0043】
工程(h)の縮合反応は、当業者に公知の方法によりカルボン酸官能基を活性化し、例えばSOCl2で処理して塩化アシルを生成し、又はN,N−カルボニルジイミダゾールで処理して、実行し得る;あるいは、2つの中間体は、適切な縮合剤、例えばジクロロヘキシルカルボジイミド等を用いて縮合される。
【0044】
工程(i)における保護基の除去は、用いられた保護基と関連している。特に、tert−ブチルオキシカルボニル基を用いた場合には、その除去は、酸、優先的には有機溶液中のトリフルオロ酢酸による処理によって実行し得る。
【0045】
工程(l)は、アルカリ金属の水素化物、優先的には水素化アルミニウムリチウムを用いることにより実行される。アミド官能基の還元に通常用いられるその他の試薬も、同様に用い得る。
【0046】
工程(m)による第一及び第二アミンの保護に適した保護基は、例えばGreen,T.W.,Wuts,P.G.M.,"Protective Groups in Organic Synthesis",Second Edition,John Wiley & Sons,1991に記載されているものである。
【0047】
工程(n)における保護基の除去は、用いた保護基と関連している。特に、トリフルオロアセチル基を用いる場合には、その除去は、水溶液中のアルカリ金属、又はアルカリ土類金属の水酸化物でそれを処理することにより実行される。
【0048】
図示したように、スキームIIでは、式(III):
2N−(CH2n−A'−(CH2m−NH2 (III)
(式中、A'は−N(BOC)−(CH2r−N(BOC)−基であり、n及びmは同一である)
のポリアミンが得られる。スキームIIの工程(h)において、2つの異なるアミノ酸(即ち、この場合、nは同一でない)が2モル量の同一アミノ酸の代わりに用いられる場合には、式(III)のポリアミン(この場合、n及びmは異なる)が得られる、ということは明らかである。反応は、2工程で、任意に最初の工程で一保護化ジアミンを用いて、その後それを選択的に脱保護化し、第二アミノ酸を縮合して、実行される。同様に、略図IIIは、式(III)のポリアミン(この場合、A'は−N(BOC)−(CH2r−N(BOC)−(CH2z−N(BOC)−基であり、n及びmは同一である)を生成させる。
【0049】
n及びmが異なるポリアミンは、前記のように工程(h)で2つの異なるアミノ酸を用いて、得られる。
【0050】
式(III)のポリアミン(この場合、Bは−N(C1〜C4)アルキル又は−N[(C1〜C4)アルキル]2+基である)は、スキームI〜IIIの工程(m)で得られる中間体から出発し、それぞれ第二アミンのBOC保護基の除去、その後1等量または2等量のアルキル化剤で処理により得られる。適切なアルキル化剤は、ヨウ化アルキルである。
【0051】
あるいは、式(III)のポリアミン(この場合、A'は−N(C1〜C4)アルキル−(CH2r−N(C1〜C4)アルキル−部分である)は、工程(h)(スキームII)においてN,N'−(ジアルキル)ジアミンを用いて簡便に製造し得る。この場合、工程(m)及び(n)のそれぞれにおける第二アミンの保護及び脱保護化は、回避される。
【0052】
工程(i)で得られる式(VIIa)、(VIIb)及び(VIIc)の中間体は、容易に製造され、アミド官能基の還元によりボリアミンに変換される。したがって、それらはポリアミンの有益な前駆体である。
【0053】
式(VIIc)の化合物は新規である。したがって、本発明のさらなる目的は、式(VIIc):
【0054】
【化5】

【0055】
の化合物を、鎖の中に3個のアザ基を有するポリアミンの合成のための中間体として提供することである。
【0056】
式(I)の化合物を、種々の腫瘍細胞系、その中でも、ネズミ白血病L1210、ヒト卵巣癌A2780及びそれぞれのシスプラチン耐性亜系L1210/CDDP及びA2780/CDDPに対するインビトロ(in vitro)でのその細胞毒作用を試験した。表(1)は、本発明のいくつかの代表的化合物に関する薬理学的データを、シスブラチン、並びに国際出願WO91/03482に記載されている従来技術の化合物[トランス−(PtCl(NH3222N−(CH26−NH2](NO32と比較して示す。
【0057】
表1−L1210、A2780及びL1210/CDDP、A2780/CDDP細胞系に対するシスブラチン、従来技術の化合物[トランス−(PtCl(NH3222N−(CH26−NH2](NO32、[トランス−(PtCl(NH322μ−スペルミジン]Cl3及び[トランス−(PtCl(NH322μ−スペルミン]Cl4の細胞毒性活性
【0058】
【表1】

【0059】
1:[トランス−(PtCl(NH322μ−スペルミジン]Cl3
2:[トランス−(PtCl(NH322μ−スペルミン]Cl4
3:[トランス−(PtCl(NH3222N−(CH26−NH2](NO32
【0060】
a)薬剤曝露から2時間後に測定したIC50(細胞増殖の50%阻害を引き起こす薬剤の濃度(g/mlで表される))。
b),c)非耐性及び耐性細胞系それぞれにおいて薬剤曝露から72時間後に測定したIC50
d),e)非耐性及び耐性細胞系それぞれにおいて薬剤曝露から1時間後に測定したIC50
【0061】
表から分かるように、本発明の化合物は、シスプラチンの使用を制限する耐性メカニズムを克服し得る。これは、疑いなく、本発明の化合物の重要な特徴である。
【0062】
さらに最も重要なのは、それらは、従来技術の化合物[トランス−(PtCl(NH3222N−(CH26−NH2](NO32と比較すると、処理から2時間後に、シスプラチンと同様か、あるいはそれより効果のある、非常に高い活性を示す。おそらくは細胞および/またはDNAに対する親和性増大のために活性が迅速に起こることを意味するので、この特徴は非常に有益である。さらに、L1210及びL1210/CDDP腫瘍細胞がマウスの腹腔内(ip)に接種され、腫瘍接種後24、120及び216時間目に化合物が腹腔内(ip)投与されるインビボ(in vivo)試験で、本発明の化合物は試験された。化合物は、このような実験モデルにおいても高い抗腫瘍作用を明示した。例えば、[トランス−(PtCl(NH322−スペルミン]Cl2は、L1210/CDDPモデルにおいて2mg/kgの用量で172のT/C%を示したが、これに対してシスプラチン6mg/kg容量ではT/C%が110であった。%T/Cは、次式にしたがって各群に関する平均生存時間(MST)を用いて確定された:
%T/C=[(処置群MST)/(対照MST)]x100
【0063】
シスプラチンで処置し得るか又はそれに耐性である腫瘍を保有するヒト及び動物に、身体面積1m2当たり0.1mg〜1.2gの範囲の用量で投与すると、式(I)の化合物は、前記の腫瘍の退縮を誘導し得る。
【0064】
さらに一般的には、本発明の化合物は、シスプラチンが用いられるのと同じ病状の治療に用い得る。これには、腫瘍、感作、又は照射の増強の治療[Douple et al.,Cisplatin
Current Status and Developments,Ed.A.W.Prestayk et al.,Academic Press,125(1980);Douple et al.,Platinum Metals Res,29,118(1985)]、並びにアフリカ睡眠病[Farrell et al.,Biochem.Phamlacol,33,961(1984)]のような寄生性疾患の治療が含まれる。
【0065】
したがって、本発明の別の目的は、シスプラチンで処置し得るか又はそれに耐性である腫瘍を保有する哺乳類を、有効抗腫瘍量の式(I)の少なくとも1つの化合物で治療する方法である。
【0066】
本発明の化合物の有効投与量は、従来の方法にしたがって、専門臨床医により確定される。種々の種及びサイズの動物に用いられる投与量とヒトに用いられる投与量との関係(mg/身体面積1m2を基準)は、Freirech et al.,Quantitative Comparison of Toxicity of Anticancer Agents in Mouse,Rat,Hamster,Dog,Monkey and Man,Cancer Chemother.Rep.,50,N.4,219-244(1966)に記載されている。
【0067】
しかしながら、通常は、患者は0.1〜1200mg/kg(体重)の用量の錯体を、
専門臨床医には十分公知の種々の因子により変化する投与療法で投与される。
【0068】
時としては、本発明のプラチナ錯体を、抗腫瘍活性を増強する又はプラチナ錯体療法に関連し得る望ましくない副作用を軽減する1つ又はそれ以上の薬剤と共に投与するのが有益となりうる。
【0069】
例えば、本発明のプラチナ錯体は、英国特許第2174905号及び米国特許第4,871,528号に開示されているように、還元型グルタチオンと一緒に投与し得る。
【0070】
さらに、本発明のプラチナ錯体を、抗腫瘍活性を有するその他のプラチナ錯体と組合せて投与するのが有益となりうる。
【0071】
抗腫瘍活性を有するプラチナ錯体と組合わさった、式(I)の少なくとも1つの化合物を含有する製剤組成物は、本発明のさらなる目的である。
【0072】
治療療法は、専門臨床医には十分公知であるように、治療される腫瘍の型及び患者の症状によって、適切に変え得る。
【0073】
本発明の化合物は、好ましくは、任意に塩化ナトリウムを適切な濃度(0.1〜0.9mg/ml)で含有する滅菌水溶液として投与される。溶液は、特別の場合にその他の投与形態が用いられるとしても、好ましくは静脈内(iv)又は動脈内(ia)経路で投与される。
【0074】
非経口投与用の製剤組成物は、筋肉内(im)又は腹腔内(ip)投与用の油性製剤と同時に、前記のような滅菌食塩溶液、又は溶液の臨機調製用の滅菌粉末を包含する。
【0075】
その他の有用な製剤組成物は、経口投与(os)に有用な錠剤、カプセル等のような固体形態と同時に、シロップ又は同様の液体形態である。
【0076】
本発明の製剤組成物は、Remington's Pharmaceutical Sciences Handbook,XVII Ed.,Mack Pub.,N.Y.,U.S.A.に報告されているような公知の方法にしたがって調製される。
【0077】
本発明のさらなる目的は、従来の担体及び賦形剤を添加して、治療的有効量の式(I)の少なくとも1つの化合物を含有する製剤組成物である。
【実施例】
【0078】
以下の実施例により本発明をさらに説明する。
【0079】
調製1:N−BOC−6−アミノヘキサン酸
6−アミノヘキサン酸(10g)を、室温で、炭酸カリウムの水溶液(水80ml中に7.85g)中に溶解した。ジ−tert−ブチルジカーボネート(19.4g)のエチレングリコールジメチルエーテル(65ml)溶液を室温で加え、反応混合物を一晩攪拌した。次に、0〜5℃に冷却後、6N塩酸をpH=2となるように混合物中に滴下した。
【0080】
濁った懸濁液を酢酸エチル(2x100ml)で抽出した。合わせた有機抽出物をブライン(2x50ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥して、小容量に濃縮した。油性残渣(約20g)をジイソプロピルエーテル(20ml)に溶解し、n−ヘキサン(100ml)で希釈した。約1時間の冷却攪拌後、白色固体を濾過により収集し、無水リン酸上室温で乾燥して、生成物14.9gを得た(融点 42〜44℃)。
【0081】
調製2:N−BOC−1,6−ジアミノヘキサン
窒素雰囲気中で、ジ−tert−ブチルジカーボネート(123.6g)の無水テトラヒドロフラン(600ml)溶液を、冷却(0〜5℃)され攪拌されている1,6−ジアミノヘキサン(200g)のTHF(600ml)溶液中に、約3時間かけてゆっくりと添加した。10℃で3時間及び室温で16時間後、真空下で溶媒をほぼ完全に除去した。残留濃縮溶液(約300ml)をtert−ブチルメチルエーテル(460ml)に溶解し、2N水酸化ナトリウム溶液(300ml)で洗浄した。水相をtert−ブチルメチルエーテル(2x300ml)でさらに抽出した。合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウム(50g)で乾燥した後、小容量に濃縮し、減圧下で蒸留(0.8torr、122〜124℃)して、N−tert−ブチルオキシカルボニル−1,6−ジアミノヘキサン(72g)を得た。初蒸留部分は余分なヘキサンジアミンを含有しているが、これは別の反応のために回収し得る。
【0082】
実施例1:(N−BOC−6−アミノヘキシル)−N'−BOC−6−アミノカプロンアミド
窒素雰囲気中で、1,1'−カルボニルジイミダゾール(1.7g)をN−BOC−6−アミノヘキサン酸(2g)のテトラヒドロフラン(20ml)の0〜5℃に冷却された攪拌されている溶液中に、約30分かけて滴下した。滴下終了時に温度を25℃にして、攪拌をさらに1時間続けた。次に、N−BOC−1,6−ジアミノヘキサン(1.87g)のテトラヒドロフラン(5ml)溶液を反応混合物に添加し、これを室温で一晩攪拌した。溶媒除去後、残渣をクロロホルム(50ml)中に溶解し、ブラインで洗浄して、硫酸ナトリウムで乾燥し、真空濃縮した。油性残渣(4.5g)をジエチルエーテル(10ml)中に溶解し、n−ヘキサン(50ml)で希釈して、結晶化させた。室温で1時間攪拌後、白色固体を濾過により収集し、乾燥後に、生成物3.5gを得た(融点 83〜85℃)。
【0083】
実施例2:N−(6−アミノヘキシル)−6−アミノカプロンアミド(構造式VIIa)
塩化メチレン(50ml)及びトリフルオロ酢酸(9.5ml)に溶解した(N−BOC−6−アミノヘキシル)−N'−BOC−6−アミノカプロンアミド(5.3g)の溶液を室温で一晩攪拌した。反応混合物を注意深く冷6N水酸化ナトリウム(100ml)に添加し、塩素化溶媒を分離し、水層を塩化メチレン(6x50ml)でさらに抽出した。合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥し、真空濃縮して、生成物2.34gを無色油として得たが、これは放置すると固体になる傾向がある。
【0084】
実施例3:N−(6−アミノヘキシル)ヘキサンジアミン
10mlの無水テトラヒドロフラン中の0.1gの水素化アルミニウムリチウムの懸濁液に、攪拌しながら、窒素雰囲気中で、N−(6−アミノヘキシル)6−アミノカプロンアミド2.9gを滴下した。添加終了時に、反応混合物を約24時間加熱還流した後、5℃に冷却して、先ず水を、次に15%水酸化ナトリウムを、そして再び水を注意深く添加して、過剰の水素化アルミニウムリチウムを壊した。攪拌しながらさらに1時間後、混合物をセライト濾過し、濾液を硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧下でエバポレートし、2.2gの生成物を得た。
【0085】
実施例4.
調製1及び2、並びに実施例1〜3に記載した手順にしたがって、以下のポリアミンを得た:
N−(7−アミノヘプチル)オクタンジアミン;
N−(3−アミノプロピル)ブタンジアミン(スペルミジン);
N−(2−アミノエチル)エタンジアミン;
N−(2−アミノエチル)ペンタンジアミン;
N−(4−アミノブチル)ヘキサンジアミン。
【0086】
実施例5:N4−(tertブチルオキシカルボニル)−N1,N8−(ビストリフルオロアセチル)スペルミジン
アセトニトリル(60ml)に溶解した市販のN−(3−アミノプロピル)ブタンジアミン(スペルミジン;4g)の溶液にトリフルオロ酢酸エチル(11.4ml)及び水(0.6ml)を添加し、反応混合物を3時間加熱還流した。溶媒を一部真空除去して、最終容量を約20mlとした。白色固体の結晶化が起こり、塩化メチレン(5ml)の添加後、沈殿物を濾し取って、塩化メチレンで洗浄した。N1,N8−(ビストリフルオロアセチル)スペルミジントリフルオロアセテート10.87gを白色固体(融点 144〜146℃)として収集した。
【0087】
窒素雰囲気中に保持したトリエチルアミン67ml中の10gのN1,N8−(ビストリフルオロアセチル)スペルミジントリフルオロアセテートの懸濁液を0℃に冷却し、テトラヒドロフラン10mlに溶解したジ−tert−ブチルジカーボネート(5.3g)の溶液を添加した。付加後、フラスコの底に少量のゴム状白色固体が存在する透明黄色溶液を得、混合物を室温にした。約3時間後、黄色溶液を水(200ml)中でクエンチし、酢酸エチル(3x100ml)で抽出した。合わせた有機抽出物を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を真空下で除去し、残留油(10g)をジエチルエーテル:ヘキサン 1:3(40ml)から結晶化して、9.5gの生成物を白色固体(融点 73〜75℃)
として得た。
【0088】
実施例6:N4−(tertブチルオキシカルボニル)スペルミジン
10℃に冷却したメタノール60ml中に溶解した2gのN4−(tertブチルオキシカルボニル)−N1,N8−(ビストリフルオロアヤチル)スペルミジンの溶液に、0.2N水酸化ナトリウム50mlを滴下し、混合物を室温にして、一晩攪拌した。メタノールを真空除去後、水性懸濁液をクロロホルム:メタノール9:1(5x20ml)の混合液で抽出した。合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥し、乾燥状態まで濃縮し、1gの生成物を黄色油として得た。
【0089】
実施例7:N1,N12−(ビストリフルオロアセチル)スペルミジン ビス−トリフルオロアセテート
アセトニトリル(50ml)に溶解したスペルミジン(3.2g)の溶液に、トリフルオロ酢酸エチル(9.4ml)及び水(0.64ml)を添加し、反応混合物を3時間加熱還流した。次に、反応混合物を室温にして、塩化メチレン15mlを添加した。白色固体の結晶化が起こり、沈殿物を濾し取って、塩化メチレンで洗浄した。8.67gの生成物を白色固体(融点203〜206℃)として収集した。
【0090】
実施例8:N1,N12−(ビストリフルオロアセチル)−N4,N9−(ビス−tertブチルオキシカルボニル)スペルミン
窒素雰囲気中に保持したトリエチルアミン43ml中の実施例7の生成物(8.67g)の懸濁液を0℃に冷却し、テトラヒドロフラン15mlに溶解したジ−tertブチルジカーボネート(6.25g)の溶液を添加した。約3時間後、透明黄色溶液を水(150ml)中でクエンチし、酢酸エチル(3x50ml)で抽出した。合わせた有機抽出物を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を真空除去し、残留油(9g)をジエチルエーテル(45ml)から結晶化して、7.6gの生成物を白色固体(融点104〜106℃)として得た。
【0091】
実施例9:N4,N9−(ビス−tertブチルオキシカルボニル)スペルミン 10℃
に冷却したメタノール(105ml)中に溶解したN1,N12−(ビストリフルオロアセチル)−N4,N9−(ビス−tertブチルオキシカルボニル)スペルミン(3.3g)の溶液に、0.2N水酸化ナトリウム60mlを滴下し、混合物を室温にして、一晩攪拌した。メタノールを真空除去後、水性懸濁液をクロロホルム:メタノール 9:1(6x50ml)の混合液で抽出した。合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥し、乾燥状態まで濃縮して1.33gの生成物を淡黄色油として得た。
【0092】
実施例10.
実施例3及び4のポリアミンに関して、実施例5及び6の手順を繰り返して、以下の中間体を得た:
N−(6−アミノヘキシル)−N−(tertブチルオキシカルボニル)ヘキサンジアミン;
N−(7−アミノヘプチル)−N−(tertブチルオキシカルボニル)オクタンジアミン;
N−(2−アミノエチル)−N−(tertブチルオキシカルボニル)エタンジアミン;
N−(2−アミノエチル)−N−(tertブチルオキシカルボニル)ペンタンジアミン;
N−(4−アミノブチル)−N−(tertブチルオキシカルボニル)ヘキサンジアミン。
【0093】
実施例11:式(VIIb)及び(VIIc)の化合物
調製1、並びに実施例1及び2の手順にしたがって、適当な無保護ジアミン、あるいは代わりに実施例6及び9の化合物を用いて、以下の化合物を得た:
N,N'−(ビス−(6−アミノヘキサノイル))ヘキサンジアミン;
N,N'−(ビス−(7−アミノヘプタノイル)オクタンジアミン;
N,N'−(ビス−(2−アミノアセチル))エタンジアミン;
N,N'−(ビス−(2−アミノアセチル))ペンタンジアミン;
N,N'−(ビス−(4−アミノブタノイル))ヘキサンジアミン;
N,N'−(ビス−(3−アミノプロパノイル))ブタンジアミン;
N,N'−(ビス−(8−アミノオクタノイル)オクタンジアミン;
N,N'−(ビス−(5−アミノペンタノイル))ヘプタンジアミン;
1,N13−(ビス−(6−アミノヘキサノイル))−1,13−ジアミノ−7−アザトリデカン;
1,N16−(ビス−(2−アミノアセチル))−1,16−ジアミノ−8−アザヘキサデカン;
1,N5−(ビス−(4−アミノブタノイル))−1,5−ジアミノ−3−アザペンタン;
1,N8−(ビス−(3−アミノプロパノイル))−1,8−ジアミノ−3−アザオクタン;
1,N11−(ビス−(2−アミノアセチル))−1,11−ジアミノ−5−アザウンデカン;
1,N13−(ビス−(4−アミノブタノイル))−1,13−ジアミノ−7−アザトリデカン;
1,N16−(ビス−(5−アミノペンタノイル))−1,16−ジアミノ−8−アザヘキサデカン;
1,N5−(ビス−(7−アミノヘプタノイル))−1,5−ジアミノ−3−アザペンタン;
1,N8−(ビス−(6−アミノヘキサノイル))−1,8−ジアミノ−3−アザオクタン;
1,N11−(ビス−(8−アミノオクタノイル))−1,11−ジアミノ−5−アザウンデカン;
1,N17−(ビス−(8−アミノオクタノイル))−1,17−ジアミノ−9−アザヘプタデカン;
【0094】
実施例12.
実施例3及び7〜9に記載した手順を反復して、実施例11の中間体から出発して、以下の保護ポリアミンを得た:
7,N14−(ビス−tertブチルオキシカルボニル)−1,20−ジアミノ−7,14−ジアザイコサン;
8,N17−(ビス−tertブチルオキシカルボニル)−1,25−ジアミノ−8,17−ジアザペンタコサン;
3,N6−(ビス−tertブチルオキシカルボニル)−1,8−ジアミノ−3,6−ジアザオクタン;
3,N9−(ビス−tertブチルオキシカルボニル)−1,11−ジアミノ−3,9−ジアザウンデカン;
5,N12−(ビス−tertブチルオキシカルボニル)−1,16−ジアミノ−5,12−ジアザヘキサデカン;
4,N9−(ビス−tertブチルオキシカルボニル)−1,12−ジアミノ−4,9−ジアザドデカン;
9,N18−(ビス−tertブチルオキシカルボニル)−1,26−ジアミノ−9,18−ジアザヘキサコサン;
6,N14−(ビス−tertブチルオキシカルボニル)−1,19−ジアミノ−6,14−ジアザノナデカン;
7,N14,N21−(トリ−tertブチルオキシカルボニル)−1,27−ジアミノ−7,14,21−トリアザヘプタコサン;
3,N11,N20−(トリ−tertブチルオキシカルボニル)−1,22−ジアミノ−3,11,20−トリアザドコサン;
5,N8,N11−(トリ−tertブチルオキシカルボニル)−1,15−ジアミノ−5,8,11−トリアザペンタデカン;
4,N7,N13−(トリ−tertブチルオキシカルボニル)−1,16−ジアミノ−4,7,13−トリアザヘキサデカン;
3,N8,N15−(トリ−tertブチルオキシカルボニル)−1,17−ジアミノ−3,8,15−トリアザヘプタデカン;
5,N12,N19−(トリ−tertブチルオキシカルボニル)−1,23−ジアミノ−5,12,19−トリアザトリコサン;
6,N14,N23−(トリ−tertブチルオキシカルボニル)−1,28−ジアミノ−6,14,23−トリアザオクタコサン;
8,N11,N14−(トリ−tertブチルオキシカルボニル)−1,21−ジアミノ−8,11,14−トリアザヘニコサン;
7,N10,N16−(トリ−tertブチルオキシカルボニル)−1,22−ジアミノ−7,10,16−トリアザドコサン;
9,N14,N21−(トリ−tertブチルオキシカルボニル)−1,29−ジアミノ−9,14,21−トリアザノナコサン;
9,N18,N27−(トリ−tertブチルオキシカルボニル)−1,35−ジアミノ−9,18,27−トリアザテトラトリアコンタン;
【0095】
実施例13:[トランス−(PtCl2(NH322(−N−BOC−スペルミジン)].NO3.Cl
ジメチルホルムアミド120ml中の[トランス−(PtCl(NH32](TDDP
;1.64g)及び硝酸銀(0.9g)の懸濁液を室温で18時間攪拌し、次に沈殿した塩化銀を濾去した。濾液を−20℃に冷却し、ジメチルホルムアミド28.8mlに溶解した0.65gのN4−(tertブチルオキシカルボニル)スペルミジンの溶液を10分以内に滴下した。反応混合物を−20℃で3時間、さらに室温で1時間攪拌した後、乾燥状態までエバポレートした。残渣をアセトン:ジエチルエーテル1:1の混合液100ml中で8時間攪拌し、黄色味がかった固体を濾し取った(約1.8g)。前記の固体をメタノール250ml中で6時間攪拌し、未反応TDDPを濾去した。黄色濾液に、80mgの塩化ナトリウムを添加し、次に混合物を1時間攪拌して、約80mlに濃縮した。溶液を白色固体が分離されるまで一晩−18℃にしておき、これを濾過して、アセトン:ジエチルエーテル 1:1で洗浄した。固体をメタノール75mlから再結晶化して、0.4gの生成物を得た。
【0096】
1H−NMR(200MHz)(D2O中)1.32ppm(s,9H);1.5ppm(m,4H);1.8ppm(br,2H);2.55ppm(m,4H);3.15ppm(m,4H);3.73ppm(br,4H).
元素分析(%)理論値/実測値:C 16.53/16.72;H 4.52/4.52;N 12.85/12.61;Cl 12.20/12.77;Pt 44.74/44.59.
【0097】
実施例14:[トランス−(PtCl(NH322(−スペルミジン)]Cl3
メタノール50ml中の0.56gの[トランス−(PtCl(NH322(−N−BOC−スペルミジン)].NO3.Clの懸濁液を、13mlの濃塩酸及び13mlの水で処理した。反応混合物を白色固体が沈殿するまで室温で3時間攪拌し、これを濾し取って、アセトン20mlで2回及びジエチルエーテル20mlで1回洗浄した。次に固体を80mlのジエチルエーテル:アセトン1:1中で一夜攪拌して、濾過により分離し、0.34gの生成物を得た。
【0098】
1H−NMR(200MHz)(D2O中)1.62ppm(m,4H);1.98ppm(m,2H);2.63ppm(m,4H);2.95ppm(m,4H);3.7ppm(br,4H).
元素分析(%)理論値/実測値:C 10.75/10.69;H 4.13/4.23;N 12.54/12.24;Cl 22.67/22.38;Pt 49.91/48.81.
【0099】
実施例15:[トランス−(PtCl(NH322(−N,N'−BOC−スペルミン)]−NO3.Cl
実施例13の手順にしたがって、表題化合物を製造した。先ず100mlのアセトンを、その後100mlのジエチルエーテルを添加し、反応混合物から、粗製生成物を沈殿させた。その結果生じた固体を分離し、塩化ナトリウム220mgを含有するメタノール100ml中で4時間攪拌した。溶液を2時間−18℃にしておくと、白色固体(0.87g)が分離した。固体をメタノール100mlに溶解し、0.5gの活性炭を添加した。30分間攪拌後、混合物を濾過し、約10mlに濃縮して、一晩−18℃にしておき、600mgの生成物を白色固体として得た。
【0100】
実施例16:[トランス−(PtCl(NH322(−スペルミン)]Cl4
メタノール25ml及び水10mlに溶解した0.39gの[トランス−(PtCl(NH322(−N,N'−BOC−スペルミン)]−NO3.Cl及び10mlの濃塩酸を含有する溶液を、室温で4時間攪拌すると、この間に白色固体が沈殿した。混合物を1時間−18℃にしておき、次に濾過して、固体をアセトン及びジエチルエーテル(各々20ml)で洗浄し、乾燥して、0.28gの生成物を得た。
【0101】
1H−NMR(200MHz)(D2O中)1.65ppm(m,4H);1.97ppm(m,4H);2.66ppm(m,4H);2.97ppm(m,8H).
元素分析(%)理論値/実測値:C 13.72/13.11;H 4.61/4.46;N 12.80/12.34;Cl 24.30/24.22;Pt 44.57/44.71.
【0102】
実施例17.
実施例13及び14に記載した手順により、シス−又はトランス−プラチナ及び適切なN−BOCポリアミンから出発して、以下のプラチナ錯体を製造した:
シス−[(PtCl(NH322−μスペルミジン]Cl3
[トランス−(PtCl(NH322(N−(6−アミノヘキシル)−ヘキサンジアミン)]Cl3
【0103】
1H−NMR(D2O中)3.0ppm(t,4H);2.65ppm(br t,4H);1.7ppm(br s,8H);1.35(m,8H).
元素分析(%)理論値/実測値:C 16.92/16.88;H 4.97/5.09;N 11.51/11.26;Cl 20.81/19.66;Pt 45.80/45.04.
[トランス−(PtCl(NH322(N−(7−アミノヘプチル)−オクタンジアミン)]Cl3
1H−NMR(D2O中)3.0ppm(t,4H);2.7ppm(br t,4H);1.7ppm(m,8H);1.35ppm(br s,14H)195Pt−NMR(D2O中):−2422ppm.
元素分析(%)理論値/実測値:C 20.15/20.37;H 5.41/5.42;N 10.97/10.67;Cl 19.83/19.66;Pt 43.64/42.96.
[トランス−(PtCl(NH322(N−(2−アミノエチル)−エタンジアミン)]Cl3
[シス−(PtCl(NH322(N−(2−アミノエチル)−ペンタンジアミン)]Cl3
[シス−(PtCl(NH322(N−(4−アミノブチル)−ヘキサンジアミン)]Cl3
[シス−(PtCl(NH322μ−スペルミン]Cl4
1H−NMR(D2O中)1.73ppm(m,4H);2.13ppm(m,4H);2.75ppm(m,4H);3.13ppm(m,8H).
元素分析(%)理論値/実測値:C 13.72/13.68;H 4.61/4.71;N 12.80/12.56;Cl 24.30/23.98;Pt 44.57/44.57.
[トランス−(PtCl(NH322(1,20−ジアミノ−7,14−ジアザイコサン)]Cl4
[トランス−(PtCl(NH322(1,25−ジアミノ−8,17−ジアザペンタコサン)]Cl4
[トランス−(PtCl(NH322(1,8−ジアミノ−3,6−ジアザオクタン)]Cl4
[トランス−(PtCl(NH322(1,11−ジアミノ−3,9−ジアザウンデカン)]Cl4
[シス−(PtCl(NH322(1,16−ジアミノ−5,12−ジアザヘキサデカン)]Cl4
[トランス−(PtCl(NH322(1,12−ジアミノ−4,9−ジァザドデカ
ン)]Cl4
[トランス−(PtCl(NH322(1,26−ジアミノ−9,18−ジアザヘキサコサン)]Cl4
[シス−(PtCl(NH322(1,19−ジアミノ−6,14−ジアザノナデカン)]Cl4
[トランス−(PtCl(NH322(1,27−ジアミノ−7,14,21−トリアザヘプタコサン)]Cl5
[トランス−(PtCl(NH322(1,22−ジアミノ−3,11,20−トリアザドコサン)]Cl5
[トランス−(PtCl(NH322(1,15−ジアミノ−5,8,11−トリアザペンタデカン)]Cl5
[トランス−(PtCl(NH322(1,16−ジアミノ−4,7,13−トリアザヘキサデカン)]Cl5
[トランス−(PtCl(NH322(1,17−ジアミノ−3,8,15−トリアザヘプタデカン)]Cl5
[シス−(PtCl(NH322(1,23−ジアミノ−5,12,19−トリアザトリコサン)]Cl5
[トランス−(PtCl(NH322(1,28−ジアミノ−6,14,23−トリアザオクタコサン)]Cl5
[トランス−(PtCl(NH322(1,21−ジアミノ−8,11,14−トリアザヘニコサン)]Cl5
[シス−(PtCl(NH322(1,22−ジアミノ−7,10,16−トリアザドコサン)]Cl5
[トランス−(PtCl(NH322(1,29−ジアミノ−9,14,21−トリアザノナコサン)]Cl5
[シス−(PtCl(NH322(1,35−ジアミノ−9,18,27−トリアザテトラトリアコンタン)]Cl5
新規化合物:[トランス−(PtCl(NH322(1,16−ジアミノ−7,10−ジアザヘキサデカン)].4NO3-
1H−NMR(D2O中):3.1ppm(t,8H);2.7ppm(m,4H);1.57ppm(m,12H);1.45ppm(dt,4H).
195Pt−NMR(D2O中):−2424ppm.
元素分析(%)理論値/実測値:C 16.20/16.49;H 4.66/4.81;N 16.20/15.68;Cl 6.83/7.22;Pt 37.60/36.93.
[トランス−(PtCl(NH322(1,16−ジアミノ−6,11−ジアザヘキサデカン)].4NO3-
1H−NMR(D2O中):3.45ppm(br s,4H);3.15ppm(t,4H);2.7ppm(br s,4H);1.75ppm(br s,8H);1.45ppm(br s,8H).
195Pt−NMR(D2O中):−2433ppm.
元素分析(%)理論値/実測値:C 16.20/16.30;H 4.66/4.88;N 16.20/15.94;Cl 6.83/6.58;Pt 37.60/36.28.
【0104】
実施例18.
実施例13に記載した手順により、適当なポリアミン誘導体から出発して、以下のビス−プラチナ錯体を得た:
[トランス−(PtCl(NH322(1,13−ジアミノ−N7−tert−ブトキシカルボニル−7−アザトリデカン)]二硝酸塩.
1H−NMR(DMSO中):3.1ppm(br t,4H);2.5ppm(m,4H);1.15〜1.6ppm(m+s,16−9H)
元素分析(%)理論値/実測値:C 21.08/20.60;H 5.10/5.13;N 13.01/12.98;Cl 7.32/7.59;Pt 40.28/41.03.
[トランス−(PtCl(NH322(N4,N9−ビス(tert−ブトキシカルボニル)−N1,N12−スペルミン)]二硝酸塩.
1H−NMR(DMSO中):3.1ppm(br s,8H);2.5ppm(br m,4H);1.7ppm(m,4H);1.4ppm(brs,22H).
195Pt−NMR(DMSO中):−2424ppm.
元素分析(%)理論値/実測値:C 22.75/22.63;H 5.16/5.12;N 13.27/12.97;Cl 6.72/6.47;Pt 36.96/36.11.
[トランス−(PtCl(NH322(1.16−ジアミノ−N6,N11−ビス(tert−ブトキシカルボニル)−6,11−ジアザヘキサデカン)]二硝酸塩.
1H−NMR(MeOD中):3.8ppm(m,8H);2.7ppm(m,4H);1.3−1.8ppm(m,34H).
195Pt−NMR(MeOD中):−2433ppm.
元素分析(%)理論値/実測値:C 25.92/26.96;H 5.62/5.91;N 12.60/12.43;Cl 6.38/5.96;Pt 35.09/34. 12.
[トランス−(PtCl(NH322(1.16−ジアミノ−N7,N10−ビス(tert−ブトキシカルボニル)−7,10−ジアザヘキサデカン)]二硝酸塩.
1H−NMR(MeOD中):3.35ppm(br s,4H);3.2ppm(t,4H);2.7ppm(m,4H);1.45ppm(m,34H).
195Pt−NMR(MeOD中):−2435ppm.
元素分析(%)理論値/実測値:C 25.92/26.57;H 5.62/5.76;N 12.60/12.45;Cl 6.38/6.10;Pt 35.09/34.64.
[トランス−(PtCl(NH322(1.16−ジアミノ−N8,N8−ジメチル−8−アザヘキサデカン)]硝酸塩二塩化物.
1H−NMR(D2O/DCl):3.2ppm(m,4H);3.0ppm(s,6H);2.6ppm(m,4H);1.6ppm(m,8H);1.3ppm(br s,14H).
195Pt−NMR(D2O):−2419ppm.
元素分析(%)理論値/実測値:C 21.52/21.66;H 5.53/5.81;N 11.81/10.18;Cl 14.95/13.59;Pt 41.13/40.75.
[トランス−(PtCl(NH322(1.13−ジアミノ−N7,N7−ジメチル−7−アザトリデカン)]三硝酸塩.
1H−NMR(D2O):3.0ppm(s,6H);3.35ppm(m,4H);2.5−2.7ppm(m,4H);1.75ppm(m,8H);1.4ppm(m,8H).
195Pt−NMR(D2O):−2420ppm.
元素分析(%)理論値/実測値:C 17.52/17.88;H 4.83/4.93;N 14.59/14.37;Cl 7.39/7.25;Pt 40.66/40.12.
【0105】
【化6】

【0106】
【化7】

【0107】
【化8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(III):
NH2−(CH2n−A'−(CH2m−NH2 (III)
(式中、n及びmはそれぞれ独立の2〜8の整数であり、そしてA'は−B"−、−B"−(CH2r−B"−及び−B"−(CH2r−B"−(CH2z−B"−(ここで、r及びzはそれぞれ独立の2〜8の整数であり、B"は−N(tert−ブチルオキシカルボニル)基である)から成る群から選択される)
のポリアミンの製造方法であって、
第一保護基でω−アミノ酸の窒素原子を保護し、その後無機酸で処理して遊離酸第一中間体を生成し;
第一中間体を、第二保護基によってジアミンを一保護化することにより得られる第二中間体と反応させて、中間体(IV):
【化1】

を生成し;
中間体(IV)から第一保護基及び第二保護基を除去して第四中間体を生成し;
第四中間体のアミド部分を第二アミンに還元し;
第一アミンを第三保護基で保護し、その後、第二アミンを第四保護基で保護して、第五中間体を生成し;
第五中間体中の第一アミンから第三保護基を除去して、式(III)の化合物を生成する;
工程を含むポリアミンの製造方法。
【請求項2】
第一保護基はtert−ブチルオキシカルボニル基である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第二保護基はtert−ブチルオキシカルボニル基である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
第二保護基はトリフルオロアセチル基である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
第三保護基はトリフルオロアセチル基である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
第四保護基はtert−ブチルオキシカルボニル基である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
アミド部分の還元はアルカリ金属の水素化物を用いて実行される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
アミド部分の還元工程は水素化アルミニウムリチウムを用いて実行される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
式(III):
NH2−(CH2n−A'−(CH2m−NH2 (III)
(式中、n及びmはそれぞれ独立の2〜8の整数であり、そしてA'は−B"−、−B"−(CH2r−B"−、及び−B"−(CH2r−B"−(CH2z−B"−(ここで、r及びzはそれぞれ独立の2〜8の整数であり、B"は−N(tert−ブチルオキシカルボニル)基である)から成る群から選択される)
のポリアミン誘導体の製造方法であって、
tert−ブチルオキシカルボニル基でω−アミノ酸の窒素原子を保護し、その後無機
酸で処理して遊離酸第一中間体を生成し;
第一中間体をジアミンと反応させて、中間体(V):
【化2】

を生成し;
中間体(V)からtert−ブチルオキシカルボニルを除去して、第三中間体を生成し;
第三中間体のアミド部分を第二アミンに還元し;
第一アミンをトリフルオロアセチル基で保護し、その後、第二アミンをtert−ブチルオキシカルボニル基で保護して;
第一アミンからトリフルオロアセチル基を除去して、式(III)の化合物を生成する;
工程を含むポリアミン誘導体の製造方法。
【請求項10】
式(III):
NH2−(CH2n−A'−(CH2m−NH2 (III)
(式中、n及びmはそれぞれ独立の2〜8の整数であり、そしてA'は−B"−、−B"−(CH2r−B"−、及び−B"−(CH2r−B"−(CH2z−B"−(ここで、r及びzはそれぞれ独立の2〜8の整数であり、B"は−N(tert−ブチルオキシカルボニル)−基である)から成る群から選択される)
のポリアミン誘導体の製造方法であって、
tert−ブチルオキシカルボニル基でω−アミノ酸の窒素原子を保護し、その後無機酸で処理して遊離酸第一中間体を生成し;
第一中間体を式(III)の最終生成物と反応させて、第二中間体を生成し:
第二中間体からtert−ブチルオキシカルボニルを除去して、式(VIIc):
【化3】

の中間体を生成し;
中間体(VIIc)のアミド部分を第二アミンに還元し;
第一アミンをトリフルオロアセチル基で保護し、その後、第二アミンをtert−ブチルオキシカルボニル基で保護して;
第一アミンからトリフルオロアセチル基を除去して、式(III)の化合物を生成する;
工程を含むポリアミン誘導体の製造方法。
【請求項11】
式(III):
NH2−(CH2n−A'−(CH2m−NH2 (III)
(式中、n及びmはそれぞれ独立の2〜8の整数であり、そしてA'は−B'''−、−B'''−(CH2r−B'''−、及び−B'''−(CH2r−B'''−(CH2Z−B'''−(ここで、r及びzはそれぞれ独立の2〜8の整数であり、B'''は−N(C1〜C4)アルキル、又は−N[(C1〜C4)アルキル]2+である)から成る群から選択される)
のポリアミン誘導体の製造方法であって、
tert−ブチルオキシカルボニル基でω−アミノ酸の窒素原子を保護し、その後無機酸で処理して遊離酸第一中間体を生成し;
第一中間体を、tert−ブチルオキシカルボニル基によってジアミンを一保護化することにより得られる第二中間体と反応させて、中間体(IV):
【化4】

を生成し;
中間体(IV)からtert−ブチルオキシカルボニルを除去して、第四中間体を生成し;
第四中間体のアミド部分を第二アミンに還元し;
第一アミンをトリフルオロアセチル基で保護し、その後、第二アミンをtert−ブチルオキシカルボニル基で保護して;
第二アミンからtert−ブチルオキシカルボニル基を除去して、第五中間体を生成し;そして
第五中間体を少なくとも1つのアルキル化剤で処理する;
工程を含むポリアミン誘導体の製造方法。
【請求項12】
アルキル化剤はヨウ化アルキルである、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
式(III):
NH2−(CH2n−A'−(CH2m−NH2 (III)
(式中、n及びmはそれぞれ独立の2〜8の整数であり、そしてA'は−N(C1〜C4)アルキル−(CH2r−N(C1〜C4)アルキル(ここで、rは2〜8の整数である)一部分である)
のポリアミン誘導体の製造方法であって、
tert−ブチルオキシカルボニル基でω−アミノ酸の窒素原子を保護し、その後無機酸で処理して遊離酸第一中間体を生成し;
第一中間体をN,N'−(ジアルキル)ジアミンと反応させて、第二中間体を生成し;
第二中間体からtert−ブチルオキシカルボニル基を除去して、第三中間体を生成し;
第三中間体のアミド部分を第二アミンに還元する;
工程を含むポリアミン誘導体の製造方法。

【公開番号】特開2009−7357(P2009−7357A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−156473(P2008−156473)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【分割の表示】特願平10−506313の分割
【原出願日】平成9年7月22日(1997.7.22)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【出願人】(508154494)ヴァージニア コモンウェルス ユニバーシティ (2)
【Fターム(参考)】