説明

抗腫瘍及び抗寄生虫性を有するペンタ−1,4−ジエン−3−オン及び置換シクロヘキサノン、及び誘導体の調製方法、その化合物並びにその使用

【課題】本発明は、ヒト及び動物の新生物、寄生虫症を治療する上記薬剤の使用、各種の疾患に対する適切な治療療法の決定、該化合物から2つ以上を組み合わせることによる相乗効果の決定、並びに活性化合物の作用様式、毒性、及び上記疾患、及び他の相関性のある疾患に対して現在治療に用いられている薬剤よりも好ましい結果が表れる上記化合物族に対する他の薬理学的要因の決定に関する。
【解決手段】本発明は、ペンタ−1,4−ジエン−3−オンの新規の誘導体、及びその調製方法に関する。これらの化合物は、ラボラトリーアッセイ及び組織病理学研究によりほぼ無毒である強力な抗腫瘍作用及び有望な抗寄生虫作用を示す。本発明は、また、癌及び寄生虫性疾患を治療する上記化合物からなる医薬組成物、及び方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗腫瘍剤として生体内生物学的用途、及び抗寄生虫薬としてインビトロ用途等に用いるための調製及び精製を含む合成方法を含む1,5‐ビス(アリール)ペンタ‐1,4‐ジエン‐3‐オン誘導体の調製方法に関する。
また、本発明は癌及び寄生虫感染症を治療する上記化合物を含む薬剤適用性を示す化学組成に関する。
【背景技術】
【0002】
H.van der Goot等(非特許文献1)は、抗酸化特性を示す1,5‐ジアリール‐1,4‐ペンタジエン‐3‐オン及びその環式類似体を得た。環式化合物は、塩酸の存在下でシクロヘキサノン及び/又はシクロペンタノンによる置換アルデヒドの反応により合成された。
【0003】
M.Artico等は、非特許文献2に刊行された論文で、MT‐4細胞で行う研究において抗HIV‐1特性がある2,6‐ビス(3,4‐ジヒドロキシ‐ベンジリデン)シクロヘキサノン、3,5‐ビス(3,4‐ジヒドロキシ‐ベンジリデン)ピペリジン‐4‐オン、及び3,5‐ビス(3,4‐ジヒドロキシ‐ベンジリデン)テトラヒドロ‐ピラン‐4‐オンの調製を報告している。
【0004】
その後、Buolomwini及びAssefaは非特許文献3に刊行された論文で、2,5‐ビス(3,4−ジヒドロキシ‐ベンジリデン)シクロペンタノン及び3,5‐ビス(3,4‐ジヒドロキシ‐ベンジリデン)テトラヒドロ−チオピラン‐4‐オンの抗HIV作用を証明した。
【0005】
2004年及び2005年に、Youssef等は(非特許文献4及び非特許文献5)対応する置換アルデヒド及びシクロヘプタノン、又は酸性媒体における4‐ピペリジドン(piperididone)の反応から置換2,7‐ビス(ベンジリデン)シクロヘプタノン、及び3,5−ビス(ベンジリデン)‐N‐アルキル‐4‐ピペリドンの合成を開発し、これらの化合物は抗酸化特性及び化学抗癌剤作用を示した。
【0006】
2004年に非特許文献6に刊行された論文には、2,6‐ビス((4‐ヒドロキシ‐3‐メトキシ‐フェニル)‐メチリデン)‐シクロヘキサノン由来の抗腫瘍・抗血管新生特性が評価された製品リストを含む。3,5‐ビス(2‐フルオロ‐ベンジリデン)‐4‐オキソ‐ピペリジンアセテート化合物が最も活性の高い化合物として際立つ。
【0007】
最近、超音波技術による1,5‐ビス(4‐ヒドロキシ‐3‐メトキシ‐フェニル)ペンタ‐1,4‐ジエン‐3‐オン及びその誘導体、及びそれらのインビトロでの抗腫瘍性を得る新規な方法(非特許文献7)が刊行された。本発明の請求項で保護される抗腫瘍性を有する1,5‐ビス(4‐ヒドロキシ‐3‐メトキシ‐フェニル)ペンタ‐1,4‐ジエン‐3‐オンの合成誘導体を下記の化学式に示す。
【化1】

更に、本発明の請求項において、そのような化合物の生体内毒物学的な結果、例えばLD50(50%致死量)の値が保護された。
【0008】
また、フェノール性ヒドロキシル基の存在により、該化合物が単塩及び複塩として扱われてもよいと考えるべきである。これらの誘導体は、これまで合成的又は生物学的に文献に記載されなかった。
【0009】
前記の類似体のO‐アルキル化由来の生成物の合成又は生物学的特性評価は、これまで文献で報告されなかった。
【0010】
2002年に、Thayumanavanと共同研究者によって、α,β−不飽和ケトンとニトロジエノフィル(nitrodienophiles)とのアミノ触媒によるディールス・アルダー反応により置換4‐ニトロ‐35‐ジアリール‐シクロヘキサノンが得られた(非特許文献8)。この研究によって、該化合物は高収率で生成された(最大収率87%)が、エナンチオ選択性は低い。しかしながら、用いた方法は中間体である2‐アミノ‐1,3‐ブタジエンの分離を必要としない利点があり、in situで生成できるため、置換4‐ニトロ‐3,5‐ジアリール‐シクロヘキサノンが一工程で調製される。
【0011】
Crawshawと共同研究者(非特許文献9)は、4−ニトロ−3,5−ジアリール−シクロヘキサノンが固相で行われるマレイミドとニトロスチレンとの反応により得られることを示す。この方法により、適度な収率(37〜87%)だが、高純度(〜90%)な生成物が得られる。
【0012】
この10年間で、Padmavathiと共同研究者が二重結合に対するマイケル付加により、環状付加物、例えば、1,1‐ジシアノ‐3‐メチル‐6‐アリール‐4‐オキソシクロヘキサン誘導体等を得る研究に励んでいる(非特許文献10)。V.Padmavathi等は、非特許文献11に刊行された論文で、トリトンBの存在下でマロノニトリルを1,5‐ジアリール‐2‐メチル‐1,4‐ペンタ‐ジエン‐3‐オンにマイケル付加することで1,1‐ジシアノ‐3‐メチル‐2‐フェニル‐6‐アリール‐4‐オキソシクロヘキサンを合成し、スピロヘテロ環を得るプロセスにおいてこれらの化合物は中間体として使用されることを報告した。
【0013】
1998年に、Rowland等は、ジアリール置換シクロヘキサノンに対するC−1及びC−2位置の立体化学を研究し、塩基性条件下でトランス異性体からシス異性体への相互変換能力を示した。(非特許文献12)。
【0014】
上記化合物の生物学的用途及び本願に関する生物学的用途は、抗腫瘍及び抗寄生虫用途を含む。
【0015】
癌又は新生物は、体のほぼすべての組織に影響を及ぼす異常細胞の制御されない増殖により特徴づけられる100を超える疾患の総称である。毎年、1千百万人を超える人々に影響を及ぼし、毎年7百万人が死に至り、統計的には世界中の死者の12.5%を占める(非特許文献13から入手可能)。
【0016】
メラノーマは、皮膚に生じる新生物である。しかし、粘膜表面から、又は神経堤細胞が移動する他の部位からも発生し、目(眼内メラノーマ)、髄膜、胃腸管、リンパ節等の他の場所にも発生しうる。腫瘍は、半数を超える場合が成人に生じ、通常の肌、及び太陽光に曝される肌の位置に明らかに生じる。男性は、体幹、頭、又は首に生じることが多い。女性は、下肢の遠位側三分の一により多く現れる。暗色皮膚の人々は、一般的にメラノーマが爪下領域、手のひら又は足底等にある。最も一般的な症状は、かゆみ、表面組織の変化、局所出血、均一な痛みである。メラノーマは、深刻な皮膚腫瘍である。悪性癌の進行は、一連のイベントによる。これらのイベントは、腫瘍細胞の継続的な成長、アポトーシスを避ける、及び増殖阻害シグナルを克服する、更に反応を発達させる、血管形成反応を維持する、隣接する組織へ浸潤する、遠隔臓器へ移動(転移)する能力である。浸潤及び転移は、腫瘍進行の重要な態様である。両プロセスとも、細胞外基質及び調節分子を退化させる接着分子、細胞骨格要素、プロテアーゼ間の連携によるレギュレーターとエフェクターとの局所的平衡から生じるようである。
【0017】
最も使用されている治療薬はドキソルビシン、パクリタキセル、及びエトポシドである。下記表は、最も使用されている抗腫瘍剤の中の数種の薬量、50%致死量、及びいくつかの副作用の値を示す。
【0018】
下記表で分かるように、これらの薬剤は、患者の状態を損なう、又は患者の生活の質を非常に低下させる入院を必要とする不快で起こりがちな悪影響に加えて、有効量が比較的多く、治療指数が低い等の欠点がある。
【0019】
寄生虫症に関しては、例えば、リーシュマニア症は、リーシュマニア(Leishmania)属の原生動物感染によって起こる病状であり、今日まで社会的経済的に重要な疾患であり、原生動物による寄生虫感染症では二番目にランクし、おそらくマラリアの次に重要である。世界保健機関 国連開発計画/世界銀行/WHO−非特許文献14の報告(インターネットで入手可能)によると、1996年には、88カ国で患者が該疾患に冒され、1千2百万人が感染し、約3億5千万人が発症する恐れがあった。
【表1】

【0020】
該疾患を治療するために最も用いられている薬剤は、N−メチルグルカミンアンチモン酸塩、及びスチボグルコン酸ナトリウム等の五価アンチモン剤である。概して、両薬剤は、皮膚と内臓と両方のリーシュマニア症に対して良好な治療指数を示す。しかし、非経口投与経路により、該薬剤を用いる治療における主な問題として、寄生抵抗性及び薬物毒性が挙げられる(非特許文献15)。
【0021】
他の薬剤、例えば、アムホテリシンB、ペンタミジン、メフロキン、及びミルテホシンもまた、これらの寄生虫症の治療に用いられるが、アンチモン剤よりも薬効が低く、実際には、寄生抵抗性、又は不耐性患者の場合に用いられる(非特許文献16)。
【0022】
下記表は、リーシュマニア症の治療に用いられるいくつかの薬剤、その薬量、副作用、及び使用制限に関するコメントを示す。
【表2】

【0023】
上記表に示すように、リーシュマニア症の治療に有効な薬剤の使用制限は高毒性に関連し、いくつかの重度の副作用、及び広範囲な強度及び重症度の有害反応を生じるため、ときには治療を中止することになる。クラシック・ドラッグの利用が困難、又は実用的でない要因としては、投与経路が常に非経口である不便性によって、患者のコミットメントが妨げられる、あるいは入院が避けられない、治療に対する抵抗性、ある種又は寄生虫分離株により発展した薬剤耐性、患者により頻繁に中止される長期の治療期間が挙げられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】H.van der Goot等 Eur.J.Med.Chem.32,625−630,1997
【非特許文献2】M.Artico等 J.Med.Chem.(v.41,3948−3960,1998)
【非特許文献3】Buolomwini及びAssefa J.Med.Chem.(45,841−852,2002)
【非特許文献4】Youssef等 Arch.Pharm.Med.Chem.337,42−54,2004
【非特許文献5】Youssef等 Arch.Pharm.Chem.Life Sci.338,181−189,2005
【非特許文献6】journal Bioorganic & Medicinal Chemistry (12, 3871−3883, 2005)
【非特許文献7】J. Quincoces等“New Method for the Preparation of 1,5−bis(4−Hydroxy−3−methoxy−phenyl)penta−1,4−dien−3−one and Derivatives with antitumoral properties”:PI 0207141−0;PCT:05.28.2005)
【非特許文献8】Thayumanavanと共同研究者 Tetrahedron Letters 43,3817−3820,2002
【非特許文献9】Crawshawと共同研究者 Tetrahedron Letters,38,7115−7118,1997
【非特許文献10】Padmavathiと共同研究者 Indian Journal of Chemistry, 3 IB,1,407−410,1992
【非特許文献11】V.Padmavathi等 Journal Heterocyclic Chem.,42,797−802,2005,
【非特許文献12】Rowland等 Journal of Organic Chemistry,63,4359−4365,1998
【非特許文献13】世界保健機関、癌、http://www.who.int/cancer/en,アクセス日22/09/2005
【非特許文献14】Special program for research and training in tropical diseases (http://who.ch/programmes/tdr/workplan/leishman.htm,アクセス日09/22/2005
【非特許文献15】Rev.Soc.Bras.Med.Trop.33(6),535−543,2000
【非特許文献16】Trop.Dis.Hyg.8,319−342,2002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明は、ヒト及び動物の新生物、寄生虫症を治療する上記薬剤の使用、各種の疾患に対する適切な治療療法の決定、該化合物から2つ以上を組み合わせることによる相乗効果の決定、並びに活性化合物の作用様式、毒性、及び上記疾患、及び他の相関性のある疾患に対して現在治療に用いられている薬剤よりも好ましい結果が表れる上記化合物族に対する他の薬理学的要因の決定に関する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、HB−1で処置した後のB16F10マウスメラノーマ成長(体積)の評価を示す。
【図2】図2は、HB−1で処置した後のB16F10マウスメラノーマ成長(面積)の評価を示す。
【図3】図3は、対照群:ミグリオール(Miglyol)810(登録商標)を示す。Aは色素沈着した背部結節性腫瘍を示す。
【図4】図4は、対照群:ミグリオール(Miglyol)810(登録商標)を示す。Aは色素沈着した背部結節性腫瘍を示す。
【図5】図5は、対照群:ミグリオール(Miglyol)810(登録商標)を示す。Aは背部腫瘍を示す。広範囲で周辺への浸潤が観察される。
【図6】図6は、ミグリオール(Miglyol)810(登録商標)で希釈したHB−1化合物を用いる処置群の背部腫瘍を示す。Aは、HB−1化合物で処置した背部腫瘍を示す。Bは、ネクローシスを示す。
【図7】図7は、ミグリオール(Miglyol)810(登録商標)で希釈したHB−1化合物を用いる処置群の背部腫瘍を示す。
【図8】図8は、ミグリオール(Miglyol)810(登録商標)で希釈したHB−1化合物を用いる処置群の背部腫瘍を示す。Aは、背部腫瘍を示す。腫瘍周辺に滲出液が観察される。
【図9】図9は、ミグリオール(Miglyol)810(登録商標)で希釈したHB−1化合物を用いる処置群の背部腫瘍を示す。広範囲で周辺の潅注が観察される。Aは、腫瘍周辺の滲出液を示す。Bは、血管系及びネクローシスを示す。
【図10】図10は、HB−1 15mg/kgで処理したBl6F10メラノーマの細胞周期の分析を示す。
【図11】図11は、Bl6F10マウスメラノーマ細胞における毒性アッセイ(HB−1)を示す。
【図12】図12は、Bl6F10マウスメラノーマ細胞に対するミグリオール(Miglyol)810(登録商標)で希釈したHB−1化合物の細胞毒性増殖抑制効果を示す。
【図13】図13は、正常な腹膜マクロファージに対するミグリオール(Miglyol)810(登録商標)で希釈したHB−1化合物の細胞毒性増殖抑制効果を示す。
【図14】図14は、B16F10メラノーマ腫瘍を有する動物の悪液質指数の評価を示す。
【図15】図15は、メラノーマBl6F10を注入したC57BL/6Jマウスに対するHB−2化合物、HB−1+HB−2(併用)、及びミグリオール(Miglyol)(対照)の評価を示す。
【図16】図16は、メラノーマBl6F10を注入したC57BL/6Jマウスに対するHB−2化合物、HB−1+HB2(併用)の評価(面積)を示す。
【図17】図17は、Bl6F10メラノーマ細胞に対するミグリオール(Miglyol)810(登録商標)で希釈したHB−1化合物の細胞毒性増殖抑制効果を示す。
【図18】図18は、正常ヒト皮膚線維芽細胞に対するミグリオール(Miglyol)810(登録商標)で希釈したHB−2化合物、及びミグリオール(Miglyol)810(登録商標)(対照)の増殖抑制及び細胞毒性効果のMTT方法による評価を示す。
【図19】図19は、Bl6F10メラノーマ細胞に対する一ナトリウム化合物の増殖抑制及び細胞毒性効果の評価を示す。
【図20】図20は、Bl6F10メラノーマ細胞に対する二ナトリウム化合物の増殖抑制及び細胞毒性効果の評価を示す。
【図21】図21は、Tリンパ球に対するDM−2化合物の増殖抑制及び細胞毒性効果の評価を示す。
【図22】図22は、静脈内注射によりBalb−cマウスに投与された一ナトリウム化合物の毒性を示す。
【図23】図23は、背部メラノーマ腫瘍の顕微鏡写真を示す。Aは、色素沈着した背部結節性腫瘍の存在を示す。Cは、炎症性白血球浸潤がない、色素沈着した背部結節性腫瘍の存在を示す。
【図24】図24は、背部メラノーマ腫瘍の顕微鏡写真を示す。Bは、広範囲にネクローシスがある色素沈着した背部結節性腫瘍の存在を示す。Cは、炎症性白血球浸潤がない、色素沈着した背部結節性腫瘍の存在を示す。
【図25】図25は、ミメラノーマ背部腫瘍を注入したC57BL/6Jマウスにミグリオール(Miglyol)810(登録商標)で希釈したHB−1化合物を腹腔内投与により処置した14日間後の顕微鏡写真である。Aは、腫瘍内及び腫瘍周辺部分の炎症性白血球浸潤が集中的に存在することを示す。
【図26】図26は、メラノーマ背部腫瘍を注入したC57BL/6Jマウスにミグリオール(Miglyol)810(登録商標)で希釈したHB−1化合物を腹腔内投与により処置した14日後の顕微鏡写真である。Bは、広範囲のネクローシス領域を伴う浸潤した結節性腫瘍塊を示す。
【図27】図27は、メラノーマ背部腫瘍を注入したC57BL/6Jマウスにミグリオール(Miglyol)810(登録商標)を腹腔内投与した14日後の顕微鏡写真である。Aは、色素沈着した背部結節性腫瘍を示し、Bは広範囲のネクローシスを伴う色素沈着した背部結節性腫瘍血管新生(*)を示す。
【図28】図28は、メラノーマ背部腫瘍を注入したC57BL/6Jマウスにミグリオール(Miglyol)810(登録商標)希釈剤を腹腔内投与した14日後の顕微鏡写真である。Aは、色素沈着した背部結節性腫瘍を示し、Cは、腫瘍内及び腫瘍周辺部分の炎症性浸潤白血球がない色素沈着した背部結節性腫瘍を示す。Dは、広範囲のネクローシスを伴う色素沈着した背部結節性腫瘍血管新生(*)を示す。
【図29】図29は、ミグリオール(Miglyol)810(登録商標)で希釈したHB−1化合物処置群の背部メラノーマ腫瘍を有するC57BL/6Jマウスの肺実質の顕微鏡写真である。
【図30】図30は、ミグリオール(Miglyol)810(登録商標)処置群の背部メラノーマ腫瘍を有する57BL/6Jマウスの肺実質の顕微鏡写真である。
【図31】図31は、保存状態の良い肝実質細胞、良好に確定された小葉、及び放射状の小柱を示す肝実質切片の顕微鏡写真である。
【図32】図32は、一般的な良好に保存された腎小体、良好に保存された遠位及び近位尿細管を示す構造的変化のない腎実質の顕微鏡写真である。
【図33】図33は、ウォーレン(Warren)培地で培養した前鞭毛型アマゾンリーシュマニア(Leishmania amazonensis)に対するHB−1化合物の効果を示す。
【図34】図34は、RPMI培地で培養した前鞭毛型アマゾンリーシュマニアに対するHB−1化合物の効果を示す。
【図35】図35は、RPMI培地においてHB−1で処理した前鞭毛型アマゾンリーシュマニア(L)の生存能力を示す。
【図36】図36は、HB−1の存在下ウォーレン培地で培養された前鞭毛型リーシュマニア(L.C.L.分離株)に対するHB−1化合物の効果を示す。
【図37】図37は、HB−1の存在下ウォーレン培地で培養された前鞭毛型リーシュマニア(D.C.D.分離株)に対するHB−1化合物の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
パート1:誘導体の合成、分離、及び特性解析
本発明は、1,5−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシ−フェニル)ペンタ−1,4−ジエン−3−オンから、1:1及び1:2(モル比)の金属アルコキシドの存在下でそれぞれ、4−[5−(4−ヒドロキシ−3−メトキシ−フェニル)−3−オキソ−ペンタ−1,4−ジエニル]−2−メトキシ−フェノラート及び3−オキソ−ペンタ−1,4−ジエニル−ビス(2−メトキシ−フェノラート)を調製することに関する。好ましくは、1,5−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシ−フェニル)ペンタ−1,4−ジエン−3−オンを各アルコキシドのアルコール溶液と接触させ、その後、固体になるまで溶液を回転蒸発(rotoevaporation)させる。構造中に2つのフェノール基が存在するため単塩及び複塩誘導体が得られ、その割合は試薬のモル比によって調整される。得られたフェノラートは、水により容易に溶解する微細な粉末を得るためにふるいにかけられ、本明細書に後に記載する生物学的試験に使用される。抗寄生虫及び抗腫瘍性を有する1,5−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシ−フェニル)ペンタ−1,4−ジエン−3−オンの他の単塩及び複塩誘導体を下記式で表す。
【化2】

式中、Xは、酸素原子、マロノニトリル基、又はアルキルシアノアセテートでもよい;Yは、水素、又はフェノキシドイオンの形態として化合物を安定させる金属カチオンである;Zは、ニトロ及びアミノ基、又は該位置に関しては無置換となる化合物を与える基(Z=H);Mは、化合物をフェノキシドイオンの形態として安定化する金属カチオンを表す。
【0028】
また、本発明は、抗寄生虫及び抗腫瘍性を有する他の1,5−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシ−フェニル)ペンタ−1,4−ジエン−3−オン誘導体を調製する新規の方法に関する。
【0029】
下記式は、抗寄生虫及び抗腫瘍性を有する1,5−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシ−フェニル)ペンタ−1,4−ジエン−3−オンの新規に合成された誘導体を表す。
【化3】

式中、Xは、酸素及びマロノニトリルから変わり;Zはニトロ基または水素基からなり;Yはベンゾイル、メチル、クロロエチル、アセチル、カルボキシメチレン等の基、及び非置換化合物を構成する水素原子からなる。
【0030】
同じアシル化又はアルキル化ペンタジエノンは、下記式に示すように、対応する置換アシル化又はアルキル化アルデヒド、及びケトンを酸性培地で、温度を25〜60℃に変化させ、25〜40KHzの範囲で超音波照射して1〜7日間放置することで得られる。
【化4】

式中、Xは、酸素及びマロノニトリルを表し、Zは、ニトロ基又は水素原子を表し、Yは、ベンゾイル、メチル、クロロエチル、アセチル、カルボキシメチレン基、及び無置換化合物を形成する水素原子を表し、前記そのコードにより同定された1,5−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシ−フェニル)ペンタ−1,4−ジエン−3−オンから合成されるのと同じ誘導体化合物となる。
【0031】
本発明は、また、マイケル付加反応条件化で、それぞれ置換1,5−ビス(アリール)ペンタ−1,4−ジエン−3−オン、及びニトロアルカン、又はマロン酸誘導体を混合してなる置換4−ニトロ−3,5−ジアリール−シクロヘキサノン、又は置換2,6−ジアリール−シクロヘキサノンを調製するための新規の方法に関する。好ましくは、置換1,5−ビス(アリール)ペンタ−1,4−ジエン−3−オン及びニトロアルカン、又はマロン酸誘導体を、モル比1:1で、温度20〜60℃、1〜8時間、25〜40KHzの範囲で超音波照射して反応させる。
【0032】
下記式は、抗腫瘍及び抗寄生虫性を示す合成された新規なシクロヘキサノン誘導体(置換4−ニトロ−3,5−ジアリール−シクロヘキサノン、及び置換2,6−ジアリール−シクロヘキサノン)を表す。
【化5】

C17:Ar=3,5−ジ(フル−2−イル);Y=NO;Z=H
C18:Ar=3,5−ジ(フル−2−イル);Y=NO;Z=Me
C19:Ar=3,5−ジフェニル;Y=NO;Z=Me
C20:Ar=3,5−ビス[4−(2クロロ−エトキシ)−3−メトキシ−フェニル];Y=NO;Z=H
C21:Ar=3,5−ビス[3,4−ジメトキシ−フェニル];Y=NO;Z=H
C22:Ar=3,5−ビス[4−カルボキシメトキシ−3−メトキシ−フェニル];Y=NO;Z=H
C23:Ar=3,5−ビス[4−アセトキシ−3−メトキシ−フェニル];Y=NO;Z=H
C24:Ar=3,5−ビス[4−ベンゾイルオキシ−3−メトキシ−フェニル];Y=NO;Z=H
C25:Ar=3,5−ビス[3−メトキシ−4−(3−メチル−ブタ−2−エニルオキシ)−フェニル];Y=NO;Z=H
C26:Ar=3,5−ビス[3−メトキシ−4−(3−メチル−ブタ−2−エニルオキシ)−フェニル];Y=CN;Z=CN
塩基=金属アルコキシド又はトリトンB
R=アルキル基;X=CN又はCOOR
式中、Arは、3,4−ジメトキシフェニル;4−カルボキシメトキシ−3−メトキシ−フェニル;4−アセトキシ−3−メトキシ−フェニル;3−メトキシ−4−(3−メチル−ブタ−2−エニルオキシ)−フェニル;4−(2−クロロ−エトキシ)−3−メトキシ−フェニル;4−ベンゾイルオキシ−3−メトキシ−フェニル、(即ちアリール)等の芳香族基、又はフラン及びチオフェン等の複素環式芳香族を含み、Yは、ニトロ基又はシアノ基であり、Zは水素原子、及びメチル基及びシアノ基を含む。試薬としては、Rはアルキルであり、Xはアルコキシカルボニル基又はシアノ基である。
【0033】
置換4−ニトロ−3,5−ジアリール−シクロヘキサノン、又は置換2,6−ジアリール−シクロヘキサノンは、置換アルデヒド触媒の存在下、酸性又は塩基性媒質中において、それぞれ、置換2,6−ジベンジリデン−4−ニトロ−3,5−ジアリール−シクロヘキサノン、又は置換3,5−ジベンジリデン−2,6−ジアリール−シクロヘキサノンに変換される。
【化6】

上記式は抗腫瘍及び抗寄生虫性を示す置換2,6−ジベンジリデン−4−ニトロ−3,5−ジアリール−シクロヘキサノン、及び置換3,5−ジベンジリデン−2,6−ジアリール−シクロヘキサノンの新規に合成された誘導体を示す。
C27:X=O;Y=NO;Z=Me;R=2,6−ビス−フラン−2−イル−メチレン;Ar=3,5−ビス(フル−2−イル)
C28:X=O;Y=NO;Z=Me;R=2,6−ビス−フラン−2−イル−メチレン;Ar=3,5−ジフェニル
C29:X=O;Y=NO;Z=Me;R=2,6−ビス(5−ブロモ(bromum)−フル−2−イル)メチレン]Ar=3,5−ジフェニル
C30:X=O;Y=NO;Z=H;R=2,6−ビス−フラン−2−イル−メチレン;Ar=3,5−ビス(3,4−ジメトキシ−フェニル)
C31:X=O;Y=NO;Z=H;R=2,6−ビス(3,4−ジメトキシ−フェニル);Ar=3,5−ビス(3,4−ジメトキシ−フェニル)
C32:X=O;Y=NO;Z=H;R=2,6−ビス−フラン−2−イル)メチレン;Ar=3,5−ビス−[3−メトキシ−4−(3−メチル−ブタ−エニルオキシ)−フェニル]
C33:X=O;Z=H;Y=NO;R=2,6−ビス(3,4−ジメトキシ−フェニル);Ar=3,5−ビス−[3−メトキシ−4−(3−メトキシ−ブタ−2−エニルオキシ)−フェニル]
C34:X=C(CN);Z=H;Y=NO;R=2,6−ビス(3,4−ジメトキシ−フェニル);Ar=3,5−ビス−[3−メトキシ−4−(3−メチル−ブタ−2−エニルオキシ−フェニル]
C35:X=C(CN);Z=H;Y=NO;R=2,6−ビス−フラン−2−イル−メチレン;Ar=3,5−ビス−[3−メトキシ−4−(3−メチル−ブタ−2−エニルオキシ)−フェニル]
式中、Xは、酸素原子又はC(CN)若しくはC(CN)COOR基であり、Zは、メチル、水素、又はシアノ基であり、Yは、ニトロ基又はシアノ基等一定であり、Rは、3,4−ジメトキシフェニル;4−カルボキシメトキシ−3−メトキシ−フェニル;4−アセトキシ−3−メトキシ−フェニル;3−メトキシ−4−(3−メチル−ブタ−2−エニルオキシ)−フェニル;4−(2−クロロ−エトキシ)−3−メトキシ−フェニル;4−ベンゾイルオキシ−3−メトキシ−フェニル、(即ちアリール)、並びにフラン及びチオフェン等の複素環式芳香族である。
【0034】
これらの発明は、下記実施例の実施により説明される。
実施例1:ナトリウム4−[5−(4−ヒドロキシ−3−メトキシ−フェニル)−3−オキソ−ペンタ−1,4−ジエニル]−2−メトキシ−フェノレートの調製(DM2)
【化7】

モル比1:1の金属アルコキシド存在下、1,5−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシ−フェニル)ペンタ−1,4−ジエン−3−オンから調製する。好ましくは、1,5−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシ−フェニル)ペンタ−1,4−ジエン−3−オンを、各アルコキシドのアルコール溶液と混合し、次に、固体が生成するまで溶液を回転蒸発(rotoevaporation)させる。単塩を高収率で得ても良い。得られたフェノラートは、水により容易に溶解する微粉末を得るために篩過され、本明細書に後に記載する生物学的試験に使用される。
生成物は黒赤色を示す。
一般式:C1917Na 分子量:348
収率:90%
構造的特徴の結果:
UV‐VIS:水中での最大吸収388nm
【0035】
塩酸による酸性化により、単塩が対応する1,5−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシ−フェニル)ペンタ−1,4−ジエン−3−オンに変換され、エチルエーテル、又はクロロホルム、又はエチルアセテートで抽出される。分離された化合物の構造的特徴の結果は以下の通りである。
1,5−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メトキシ−フェニル)−ペンタ−1,4−ジエン−3−オン。これは、またHB−1と表される。
【化8】

一般式:C1918 分子量=326
融点:140℃ 収率:92%
定量元素分析の結果
計算値 実測値
C 69.94% C 69.91%
H 5.52% H 5.49%
分光分析
H−NMR(CDCl):7.7(d,2H,H−1’,H−5’);7.19(m,H−2,H−5,H−6);4.0(s,6H,MeO)ppm.
13C−NMR(CDCl):188(C−3’);148(C−1’,C−5’);146(C−3);143(C−4);128(C−2’,C−4’);122.9(C−1);116.5(C−6);110(C−2,C−5);56(メトキシ基の炭素)ppm.
IV(film):3396(OH band);2962(CspH);2841(CspH);1587(C=O結合体)cm−1
MS(70eV):327(MH);CO基に対応する28(327.3−299.3)、メトキシ基に対応する32(M−295)、メチル基に対応する15(203−188)。
【0036】
実施例2:二ナトリウム3−オキソ−ペンタ−1,4−ジエニル−ビス(2−メトキシ−フェノラート)の調製(DM1)
【化9】

モル比1:2の金属アルコキシド存在下、1,5−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシ−フェニル)ペンタ−1,4−ジエン−3−オンから調製する。好ましくは、1,5−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシ−フェニル)ペンタ−1,4−ジエン−3−オンを、各アルコキシドのアルコール溶液と混合し、次に、固体になるまで溶液を回転蒸発(rotoevaporation)させる。複塩を高収率で得ることができる。得られたフェノラートは、水により容易に溶解する微細な粉末を得るためにふるいにかけられ、本明細書に後に記載する生物学的試験に使用される。
生成物は黒赤色を示す。
一般式:C1916Na 分子量:370
収率:95%
構造的特徴の結果
UV‐VIS:水中での最大吸収370nm
【0037】
塩酸酸性化により、対応する複塩が対応する1,5−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシ−フェニル)ペンタ−1,4−ジエン−3−オンに変換され、エチルエーテル、又はクロロホルム、又はエチルアセテートにより抽出される。化合物の特徴は上記と同じ結果である。
【0038】
実施例3:3,5−ビス−[3−メトキシ−4−(3−メチル−ブタ−2−エニルオキシ)−フェニル]−4−ニトロ−シクロヘキサノン(C−25)の調製
【化10】

調製手順A
事前に、ジメチルホルムアミド5〜20mL、無水炭酸カリウム1.38g(0.01mol)、及びニトロメタン0.01mol(0.54mL)を含む混合物を調製し、還流下、20〜70℃で30〜60分間撹拌しながら加熱する。その後、適量のジメチルホルムアミドに溶解した1,5−ビス[3−メトキシ−4−(3−メチル−ブタ−2−エニルオキシ)−フェニル]ペンタ−1,4−ジエン−3−オン化合物0.001mol(540mg)を加え、撹拌しながら5〜15時間加熱する。その後、混合物を水及び氷に滴下し、酸化して、必要に応じてエチルアセテートで抽出し、有機相を蒸留水で洗う。無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を回転蒸発(rotoevaporate)させて反応生成物を得る。
【0039】
調製手順B
この調製手順では、超音波技術が使用され、1,5−ビス[3−メトキシ−4−(3−メチル−ブタ−2−エニルオキシ)−フェニル]ペンタ−1,4−ジエン−3−オン0.001mol(540mg)をジメチルホルムアミド5〜20mL、無水炭酸カリウム0.01mol(1.38g)、及びニトロメタン0.01mol(0.54mL)と混合し、30〜70℃で3〜10時間反応させる。反応の終了後、前記調製手順1と同様にプロセスを進める。
生成物は茶色がかっている。
一般式:C3037NO分子量:523
収率:95%
定量分析の結果
計算値 実測値
C 68.83% C 68.79%
H 7.07% H 7.10%
N 2.68% N 2.65%
分光分析
H−NMR(CDCl):6.9〜6.6(m,3H,H−2,H−5,H−6);5.5(m,2H,H−2’);5.2(t,1H,H−4”);4.59(d,4H,H−1’);3.80及び3.88(s,6H,2MeO基);3.0〜2.8(m,6H,H−6”,H−2”,H−3”,H−5”);1.78(s,6H,Me),1.73(s,6H,Me)ppm.
13C−NMR(CDCl):208.0(CO);149,0(C−3);148.0(C−4);138.0(C−3’);132.7(C−1);129.1(C−6);120.7(C−2’);113,1(C−2);111.2(C−5);92.2(C−4”);66.8(C−1’);56.1(MeO);43.0(C−2”,C−6”);42.0(C−3”,C−5”);26.0(C−4’);19.3(C−4’)ppm.
IV(film):2970(Csp−H);2933,2916(Csp−H);1712(C=O非共役),1514e1381(NO)cm−1
【0040】
実施例4:3,5−ビス−(フル−2−イル)−4−ニトロ−1−シクロヘキサノンの調製
ジビニルケトンに対するニトロアルカンのマイケル付加による置換環式γ−ニトロケトンの合成
【化11】

調製手順A
無水MeOH 5〜20mL中のナトリウム溶液30mmol(0.69g)に対してニトロアルカン40mmolを加えて得たニトロアルカンナトリウム塩のペースト状溶液を、無水MeOH 20〜40mL中の対応するジビニルケトン混合物20mmolに加える。混合物を4〜8時間激しく撹拌し、氷で外部冷却して激しくゆっくりと撹拌し、氷酢酸で酸性化する。生成物が結晶化するまで、混合物を5〜12時間冷却し、濾過してMeOHで洗浄する。残留水相は、ジエチルエーテルで抽出し、水洗して無水硫酸ナトリウムで乾燥する。エーテル抽出物は、回転蒸発器(rotoevaporator)で濃縮され、得られたオイルは熱いMeOHで結晶化する。
【0041】
調製手順B
ジビニルケトン1mmol、ニトロアルカン5mmol、無水炭酸カリウム1.4mmol(0.2g)をEtOH 5〜20mLに混ぜる。混合物を5〜10時間還流する。反応の最後に、試薬混合物に水20〜40mLを加え、クロロホルムで抽出する(3×10mL)。クロロホルム抽出物は、十分な量の蒸留水で洗浄され、無水硫酸ナトリウムで乾燥され、オイル構造体になるまで溶媒を回転蒸発(rotoevaporate)させる。このオイルは、熱いEtOH及び活性木炭で処理され、減圧下で濾過することで分離する固体を生成する。
【0042】
調製手順C
この合成変異体を得るために手順Aと同様に反応が行われるが、エネルギー源として超音波照射30〜70kHzを1〜4時間間隔で使用する。生成物は、手順Aと同様に分離され、精製される。
【0043】
3RS−(3α,4β,5β)−3,5−ジ(フル−2−イル)−4−ニトロ−1−シクロヘキサノン
白色結晶 収率:手順A:60%;手順B:47%;手順C:75%
融解温度:92℃
分子式C1413NO(M=275.26)
【表3】

EM:IE(70eV),[M]=275(12),245(H),228(76),200(53),161(40),107(100),94(41),65(30).
IR:(KBr)1720cm−1(CO),1550,1372.5cm−1(NO).
H−NMR:(CDCl),δ(ppm):7.34(2H,m,H−5Fur),6.29(2H,dd,H−4Fur),6.14(2H,d,H−3Fur),5.44(1H,dd,J4−3a=13.23Hz,J4−5e=6.6Hz,H−4),4.07(1H,dd,J3a−4=13.2Hz,J3−2=6.6Hz,H−3ax),3.8(1H,m,J5−6e=3.9Hz,J5−4=5.53Hz,J5−6a=9.3Hz,H−5ec),3.05(2H,m,H−2ax,H−6ax),2.8(2H,m,H−2ec,H−6ec).
13C−NMR:(CDCl),δ(ppm):204.61(CO),151.32,150.48,142.91,142.75,110.70,110.55,108.26,108.12,(2 C−2,2 C−5,2 C−4,2 C−3,CO),86.06(C−4),40.96,40.89(C−2,C−6),37.30,37.18(C−3,C−5).
【0044】
3RS−(3α,4β,5α)]−3,5−ジ(フル−2−イル)−4−メチル−4−ニトロ−1−シクロヘキサノン
白色スケール収率:手順A:28%;手順C:40%
融解温度130〜131℃
分子式:C1515NO(M=289.29)
【表4】

EM:IE(70eV),[M]=289(2.5),242(80),227(50),199(30),121(100),94(80),81(75),65(48),39(63).
IR:(KBr)1728cm−1(CO),1552,1352cm−1(NO).
H−NMR:(DMSO−d),δ(ppm):7.6(2H,m,J5−4=1.8Hz,H−5Fur),6.4(2H,dd,J4−3=3.2Hz,J4−5=1.87Hz,H−4Fur),6.2(2H,d,H−3Fur),4.35(2H,c,J3−2e=4.5Hz,J3−2a=14.17Hz,H−3,H−5),3.02(2H,dd,J2a−3=14.1Hz,J2a−2e=16.4Hz,H−2ax,H−6ax),2.6(2H,m,J2e−3=4.58Hz,H−2ec,H−6ec),1.4(3H,s,Me).
13C−NMR:(DMSO−d),δ(ppm):203.73(CO),150.83,143.10,110.42,108.27(2 C−2,2 C−5,2 C−4,2 C−3,CO),94.21(C−4),42.75(C−3,C−5),40.62(C−2,C−6),11.86(Me).
【0045】
3RS−(3α,4β,5α)]−3,5−ジフェニル−4−メチル,4−ニトロ−1−シクロヘキサノン
白色針状結晶 収率:手順C85%(Lit.40%)
融解温度187〜188℃(Lit.188℃)
分子式:C1919NO(M=309.36)
【表5】

EM:IE(70eV),[M]=309(1.5),[M+1]=310(1),280(2),260(65),247(8),219(8),205(12),175(17),159(38),131(100),104(77),91(73),77(23).
IR:(KBr)1725cm−1(CO),1538,1341cm−1(NO).
H−NMR:(CDCl),δ(ppm):7.30−7.26(6H,m,C),7.20−7.05(4H,m,C),4.43(1H,dd,H−5),3.65(1H,ddd,H−3),2.95(2H,dd,H−2ax,H−6ax),2.7(2H,dd,H−2ec,H−ec),1.4(3H,s,Me).
13C−NMR:(CDCl),δ(ppm):208.56(CO),137.68,136.29(2 C−1,C),129.10,128.92,128.81,128.65,128.56,128.44,128.35,128.20,128.11(10CH,C),93.89,(C−4),48.55,46.45(C−3,C−5),42.16,41.80(C−2,C−6),21.44(Me).
【0046】
実施例5:2,6−ジ−(アリールアルキリデン)−3,5−ジ−(フル−2−イル)−4−メチル−4−ニトロ−1−シクロヘキサノンの調製
無水MeOH 5mL内で、対応するシクロヘキサノンA 1mmolをアルデヒド4mmolと反応させ、撹拌しながらゆっくりとソジウムメタノラート4mmolの混合物を無水MeOH 10mLに滴下する。12時間撹拌し続け、固体沈殿物を濾過し、生成物をクロマトグラフィーカラムで分離し、再結晶化する。
【0047】
3RS−(3α,4β,5α)]−2,6−ジ[1−(フル−2−イル)メチリデン]−3,5−ジ(フル−2−イル)−4−メチル−4−ニトロ−1−シクロヘキサノン
黄色固体 R:0.3(n−へプタン/エチルアセテート 3:1) 収率:51%
融解温度:195〜196℃(MeOH−水) 分子式:C2519NO(M=445.43)
【表6】

EM:IE(70eV),[M]=445(3),399(29),398(80),383(24),315(18),171(18),143(23),128(70),115(100),81(52),55(45),39(55).
IR:(KBr)1664cm−1(CO),1604(C=C),1536,1344cm−1(NO).
H−NMR:(DMSO−d6),δ(ppm):7.87(2H,d,J5−4=1.5Hz,2H−5Fur in R),7.71(2H,s,H−7,H−8),7.40(2H,d,J5−4=1.4Hz,2H−5Fur em R),6.88(2H,d,J4−3=3.4Hz,2H−3Fur em R),6.64(2H,m,2H−4Fur em R),6.14(2H,m,J4−3=3.25Hz,2H−4Fur em R),5.86(2H,d,2H−3Fur em R),5.60(2H,s,H−3,H−5),2.0(3H,s,Me).
13C−NMR:(CDCl),δ(ppm):183.68(CO),150.45,149.37(2 C−2,CO),147.27,142.06(2 C−5,CO),127.27(C−2,C−6),126.50(2CHolef.),119.63,113.11(2 C−3,CO),110.57,109.80(2 C−4,CO),92.87(C−4),48.55,43.27(C−3,C−5),25.22(Me).
【0048】
3RS−(3α,4β,5α)]−3,5−ジフェニル−2,6−ジ−[1−(フル−2−イル)メチリデン]−4−メチル−4−ニトロ−1−シクロヘキサノン
黄色結晶 R:0.34(n−へプタン/エチルアセテート 3:1) 収率:60% 融解温度:216〜218℃(DMF−水) 分子式:C2923NO(M=465.51)
【表7】

EM:IE(70eV),[M]=465.1(100),419(37),418(41),403(13),335(14),208(11),194(12),165(39),153(26),105(22),81(14),77(13).
IR:(KBr)1665.8cm−1(CO),1600(C=C),1540,1351cm−1(NO).
H−NMR:(CDCl),δ(ppm):7.91(1H,s,H−7),7.8(1H,s,H−8),7.58−7.47(2H,d,H−5Fur),7.4−7.26(10H,m,C),6.7−6.6(2H,d,H−3Fur),6.5−6.4(2H,dd,H−4Fur),5.6(1H,s,H−3),5.13(1H,s,H−5),1.67(3H,s,Me).
13C−NMR:(CDCl),δ(ppm):189.19(CO),151.33,151.17,146.10,145.82(2 C−2,2 C−5,CO),139.49,137.82(2 C−1,C),132.84,130.37(C−2,C−6),130.18,129.60,128.77,128.26,127.76(10 CH,C),127.04,126.48(2CHolef.),93.99(C−4),53.67,48.33(C−3,C−5),25.21(Me).
【0049】
3RS−(3α,4β,5α)]−2,6−ジ−[1−(5−ブロモ−フル−2−イル)メチリデン]−3,5−ジフェニル−4−メチル−4−ニトロ−1−シクロヘキサノン
黄色固体 R:0.3(n−へプタン/エチルアセテート 3:1) 収率:65%
融解温度:226〜227℃(MeOH−水) 分子式:C2921BrNO(M=543.39)
【表8】

IR:(KBr)1668.3cm−1(CO),1611.4(C=C),1542,1361cm−1(NO).
H−NMR:(CDCl),δ(ppm):7.6(1H,s,H−8),7.52(1H,s,H−7),7.25−7.1(10H,m,C),6.42(2H,m,H−3Fur),6.19(2H,m,H−4Fur),5.26(1H,s,H−3),4.78(1H,s,H−5),1.5(3H,s,Me).
13C−NMR:(CDCl),δ(ppm)187.12(CO),151.59,151.54,137.38,136.04,131.36,130.04,129.22,128.81(2 C−2,CO,2 C−1,C,2 C−5,CO,C−2,C−6),127.40,127.35,126.86,126.53,125.73,125.57,123.98,123.78(10 CH,C,2 CHolef.),92.03(C−4),51.75,47.99(C−2,C−5),23.54(Me).
【0050】
実施例6:2−(3,5−ジアリール−4−ニトロシクロヘキシリデン)マロノニトリルの調製
【化12】

乾燥トルエン60mL中で、対応する4−ニトロシクロヘキサノン 10mmolを、マロノニトリル20mmol、酢酸アンモニウム12.9mmol(1g)、氷酢酸1mLと反応させる。ディーン・スターク装置を使用して混合物を3〜10時間還流する。その後、反応物を炭酸ナトリウム(10%)水溶液、続いて蒸留水で冷却する。有機物分画を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、熱いメタノールでオイル構造体が結晶化するまで真空回転蒸発(rotoevaporation)により濃縮する。
【0051】
3RS−(3α,4β,5β)]−[3,5−ジ(フル−2−イル)−4−ニトロシクロヘキシリデン]マロノニトリル
薄緑結晶
収率:80%
融解温度:141〜142℃(MeOH) 分子式:C1713(M=323.30)
【表9】

EM:IE,(70eV),[M]=323(7),293(28),276(100),247(26),209(96),173(15),115(14),94(19),83(65).
IR:(KBr)2232cm−1(2 CN),1600,1500(C=C),1548,1356cm−1(NO).
H−NMR:(CDCl),δ(ppm):7.40(2H,dd,H−5Fur),6.38(2H,m,H−4Fur),6.28(IH,d,H−3Fur),6.20(IH,d,H−3’Fur),5.35(IH,dd,J=12.8Hz,J4−5=5.8Hz,H−4),4.0(1H,dd,J3−2=11.1Hz,J3−2e=6.3Hz,H−3ax),3.8(1H,m,J5−6=3.1Hz,H−5ec),3.44(2H,m,H−2ax,H−ax),3.16(2H,m,H−2e,H−6e).
13C−NMR:(CDCl),δ(ppm):175.71(C=C),150.09,149.34,143.4,143.01,110.94,110.72,108.74,108.44(2 C−2,2 C−5,2 C−3,2 C−4,CO),111.12(2CN),86.66(=C(CN)),85.93(C−4),37.17,37.11(C−3,C−5),34.17,33.96(C−2,C−6).
【0052】
3RS−(3α,4β,5β)]−[3,5−ジ(フル−2−イル)−4−メチル−4−ニトロシクロヘキシリデン]マロノニトリル
ライトグレー結晶
収率:85%
融解温度:192℃(MeOH)
分子式:C1815M=337.33)
【表10】

EM:IE(70eV),[M−47]=290(20),[M−46]=291(60),275(100),222(20),147(18),128(20),115(27),95(52),81(98),65(41),53(54),39(88).
IR:(KBr)2240cm−1(2CN),1608,1504(C=C),1548,1352cm(NO).
H−NMR:(CDCl),δ(ppm):7.62(2H,d,H−5Fur),6.44(2H,dd,H−4Fur),6.32(2H,d,H−3Fur),4.18(2H,dd,J3−e=5.0Hz,J3−a=14.4Hz,H−3ax,H−5ax),3.28(2H,m,Ja−3=14.2Hz,H−2ax,H−6ax),3.10(2H,m,Je−3=5.1Hz,H−2ec,H−6ec),1.3(3H,s,Me).
13C−NMR:(CDCl),δ(ppm):177.35(C=C),150.17,143.32,110.49,108.59(2 C−2,2 C−5,2 C−4,2 C−3,CO),111.73(2 CN),93.91(C−4),84.01(=C(CN)),43.12(C−3,C−5),33.38(C−2,C−6),11.93(Me).
【0053】
パート2:抗腫瘍活性、及び関連する前臨床アッセイ
本発明は、また、上記誘導体とその前駆体1,5−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシ−フェニル)ペンタ−1,4−ジエン−3−オンに対する生体内抗腫瘍活性に関する。
【0054】
本発明は、また、1,5−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシ−フェニル)ペンタ−1,4−ジエン−3−オン(HB−1)及び4−[5−(4−アセトキシ−3−メトキシ−フェニル)−3−オキソ−ペンタ−1,4−ジエニル]−2−メトキシ−フェニルアセテート(HB−2)を適切なモル比、適切な溶剤で調製される複合物の生体内抗腫瘍活性に関する。
【0055】
本明細書中の化合物は、生体内で行われる実験において細胞増殖抑制作用及び細胞毒性作用を含む有効な増殖抑制作用を示し、また、ほぼ無毒として示され、後者の特性が非常に有利である。
【0056】
観察された作用を下記実施例により説明する。
実施例7:阻害能力分析(57BL/6Jマウスに移植したメラノーマ腫瘍における腹腔内投与された(1,15μg/kg日)HB−1化合物に対しての体積及び腫瘍面積)。図1及び図2にこの分析を示す。
腫瘍細胞(2×10腫瘍細胞/mL)を移植して4日後、動物を2つの群に分けた。ミグリオール(Miglyol)810(登録商標)で希釈したHB−1化合物で処置した試験群と、試験群と同量の希釈剤(ミグリオール(Miglyol)810(登録商標))のみを投与した対照群とに分けた。動物は、毎日腹腔内投与により処置された。同時に、動物の重量及び腫瘍の大きさ(2つの測度:長さ×幅)が測定され、腫瘍の状況を写真撮影して登録した。
【0057】
14日後、動物は頚椎脱臼により屠殺され、腫瘍が取り除かれ、解剖して全ての内臓器官及び肉眼的病変を取り除き、病理組織学的分析を行った。
【0058】
腫瘍パラメータとしては、下記式で計算して平均腫瘍面積(A)及び体積(V)を得た。
A=πR、及びV=4/3πR
(R=平均腫瘍半径)
【0059】
ミグリオール(Miglyol)810(登録商標)で希釈したHB−1化合物で処置した結果、腫瘍パラメータ(体積及び面積)が非常に著しく低減した。処置の間、ミグリオール(Miglyol)810(登録商標)で希釈したHB−1化合物を投与した動物は、背部腫瘍の指数増殖を全く示さず、ミグリオール(Miglyol)810(登録商標)だけを投与した対照群には背部腫瘍の指数増殖が観察された。Bl6F10メラノーマに対する抑制処理の割合は、98%よりも高く、腫瘍増殖を低減及び阻止する効果が明らかに示される。
【0060】
実施例8:肉眼所見
・対照群−背部腫瘍の肉眼所見→メラノーマ
対照群の色素沈着した背部結節性腫瘍は、動物の体の体積の3/4を占める(図3及び図4)。図5は、同じ対照群の腫瘍解剖後の肉眼所見を示す。図5において、背部腫瘍(メラノーマ)周辺の潅流系(血管形成)が観察できる。
・処置群−背部腫瘍の肉眼所見→メラノーマ
処置群の色素沈着した背部腫瘍を図6及び図7に示す。色素沈着した小さな背部腫瘍が観察でき、小結節又は潰瘍がない。ネクローシス領域は腫瘍成長がないと観察される。
処置群の血管系、及び背部腫瘍(メラノーマ)の腫瘍周辺滲出液の肉眼所見を図8及び図9に示す。)腫瘍潅流系及び細胞の発達及び/又は腫瘍の周りの浸潤の低減が観察される。
【0061】
・HB−1化合物を腹腔内投与で14日間処置したメラノーマ背部腫瘍のフローサイトメトリーによる細胞周期相の測定
HB−1 15mg/kgで処理したBl6F10メラノーマの細胞周期の分析を図10に示す。ミグリオール(Miglyol)810(登録商標)賦形剤を投与した対照群に対する腫瘍細胞懸濁液(10cells/mL)のアリコート、及びHB−1化合物を腹腔内投与で14日間処置した動物のアリコートを、直ぐにクエン酸塩(2mM)、スクロース(25mM)、0.05%ジメチルスルホキシド(DMSO)緩衝液で氷冷し、使用時まで液体窒素中に保存した。試料を氷浴で溶かした後、細胞を10分間、室温で、375μLトリプシン0.03g/L(シグマ社)で培養し、トリプシン阻害剤(シグマ社)0.5g/L、リボヌクレアーゼA(シグマ社)0.1g/L、スペルミン1.2g/L(シグマ社)で中和した。試料は、フローサイトメーター(ベクトン・ディッキンソンアンドカンパニー社)で分析され、細胞周期の異相、細胞消滅レベル(Sub−G1)、S相におけるDNA含有率、静止細胞(G0/G1)、及び前有糸分裂細胞(G2/M)に対して細胞の割合が評価された。
【0062】
ミグリオール(Miglyol)810(登録商標)で希釈したHB−1化合物は、細胞周期のG0/G1段階における腫瘍細胞個体数を著しく減らす結果を示す(図11)。この結果は、ドキソルビシン、メトトレキサートナトリウム、又は、パクリタキセル及びエトポシドの誘導体である前世代の薬剤等のヒト悪性新生物の治療に対して日常使用される化学療法薬と同じ特性でHB−1化合物が腫瘍細胞の増殖を妨げることが可能であることを示す。
【0063】
・HB−1化合物及び対照として用いたミグリオール(Miglyol)810(登録商標)のBl6F10メラノーマ細胞に対する細胞毒性及び増殖抑制効果のMTT比色法による分析
損傷細胞、及び正常細胞に対する細胞毒性及び増殖抑制効果を、ミグリオール(Miglyol)810(登録商標)で希釈した異なる濃度のHB−1化合物、および対照として希釈液のみにて検討した。なお、ミグリオール(Miglyol)810は、全ての希釈溶液に使用される希釈剤であり、市販の化学療法薬(パクリタキセル,エトポシド)の希釈にも用いられる。MOSMANN(1983)によって記されたMTT(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロマイド)によるミトコンドリアの呼吸経路の比色定量法を使用した。この方法は、生体細胞によるMTTからホルマザンへの還元に基づいている。正常細胞及び腫瘍細胞を充満するまで増殖させた後、ミグリオール(Miglyol)810(登録商標)で希釈した異なる濃度のHB−1化合物及び対照である希釈剤ミグリオール(Miglyol)810(登録商標)が接着細胞に加えられ、24時間培養された。その後、MTT(5mg/mL)10μlが加えられ、培養器内にて37℃、5%COで3時間培養された。次に、培養プレートの内容物が2分間、1800rpm、4℃で遠心分離され、上清を取り除き、形成及び析出したホルマザン結晶を溶解するためにジメチルスルホキシド(DMSO)100μLを加えた。ELISAリーダー(Multiskan TiterTek社)により波長540nmで、図12に示す吸光度を得た。
【0064】
・一次方程式によって得たB16F10メラノーマ細胞のIC50の評価
IC50=ミグリオール(Miglyol)810(登録商標)で希釈したHB−1化合物7.0μg/mL
・MTT方法により評価した正常腹腔マクロファージに対するHB−1化合物の細胞毒性効果
腹腔マクロファージを以下の手順により正常Balb−Cマウスから得た。動物の腹腔は、無菌状態、層流下で開かれ、露出された。粉末状ヘパリン(Liquemine ロシュ社)5000Uを含む食塩水2mLが腹腔に注入され、マッサージし、腹腔洗浄液を採取して、2000rpm、4℃で、10分間遠心分離した。
懸濁液が10%ウシ胎仔血清を含むRPMI−1640培地で再懸濁され、ノイバウアー血球計算板(Neubauer chamber)で細胞数を10/mLに調整した。マクロファージを96ウエル平底プレートに分注し、ミグリオール(Miglyol)810(登録商標)で希釈したHB−1化合物の存在下及び不在下で培養した。24時間後、プレートをMTT比色法で細胞毒性及び増殖抑制効果を評価した。結果を図13に示す。
IC50=ミグリオール(Miglyol)810(登録商標)で希釈したHB−1化合物に対して16.89μg/mL
【0065】
・背部メラノーマを有する動物に対し、HB−2及び(HB−1+HB−2)複合物を、14日間腹腔内投与した場合の、悪液質(体重減少合計)指数による毒性作用評価
背部メラノーマ腫瘍を有する対照群の動物は、同量の(ミグリオール(Miglyol)810(登録商標)100μl)希釈剤を同じ経路で投与された。
HB−2及びHB−1+HB−2複合物を投与する前に、動物は、毎日重量測定され、肉眼的変化(抜け毛−脱毛)又は行動の変化(運動、興奮性、陶酔感)を明らかに示さなかった。結果として(図14)、ミグリオール(Miglyol)810(登録商標)で希釈したHB−2化合物で処置した動物、及び対照群は、重量減少に関して同様の反応を示したが、これは、腫瘍を有する動物に予測されたことであった。一方で、HB−1+HB−2複合物を投与した動物群は、投与期間中には顕著な重量減少を示さず、HB−2処置群及び対照群と比較して、重量減少は観察されなかった。結果的に、HB−1+HB−2複合物は、腫瘍体積又は面積の制御に効果的でないにもかかわらず、生体内低毒性を示す。
【0066】
・HB−2化合物及びHB−1+HB−2複合物でのB16F10メラノーマ処置に対する生体内抗腫瘍パラメータ(体積)の分析
HB−2化合物及びHB−1+HB−2併複合物でのB16F10メラノーマ処置に対する生体内抗腫瘍パラメータ(体積)の分析を図15に示す。
【0067】
・HB−2化合物及びHB−1+HB−2複合物でのB16F10メラノーマ処置に対する生体内抗腫瘍パラメータ(面積及び体積)の分析
腫瘍細胞を注入後、ミグリオール(Miglyol)810(登録商標)で希釈したHB−2化合物、及びHB−1+HB−2複合物で動物を処置し、対照群には同量の希釈剤を同じ投与経路(腹腔内−100μl)で投与した。毎日、動物に化合物(100μl)を投与し、対照群にはミグリオール(Miglyol)810(登録商標)を投与し、動物を重量測定し、腫瘍を測定し(長さ×幅)、写真撮影した。14日後、動物を頚椎脱臼により屠殺し、腫瘍を切除し、死後解析を行い、内臓器官及び肉眼的病変を切除し、病理組織学的分析を行った。
【0068】
腫瘍のパラメータは、下記式で計算して平均腫瘍面積(A)及び体積(V)を得た。
A=πR、及びV=4/3πR
結果を表16に示す。
【0069】
Bl6F10背部メラノーマの処置による抗腫瘍効果に関して、HB−2化合物及び(HB−2+HB−1)複合物は重要な抗増殖因子であることを示し、腫瘍面積及び体積に関して、腫瘍負荷を著しく減らし、それぞれ、HB−2化合物による処置では60%、(HB−2+HB−1)複合物による処置では80%減少した。
【0070】
・B16F10メラノーマ細胞に対して、ミグリオール(Miglyol)810(登録商標)で希釈したHB−2化合物及び対照としてミグリオール(Miglyol)810(登録商標)を処理したときの、細胞毒性及び増殖抑制効果のMTT比色法による分析
IC50=ミグリオール(Miglyol)810(登録商標)で希釈したHB−2化合物90.28μg/mL
ミグリオール(Miglyol)810(登録商標)で希釈したHB−2化合物でB16F10メラノーマのインビトロ処理は、図17に示すように、他の化合物と比較して、低い細胞毒性効果を示し、一次方程式によりIC50約90.3μg/mLであった。しかしながら、HB−1化合物と複合物として用いる場合は、腫瘍面積及び体積が80%低減する生体内抗腫瘍処理効果を示した。
【0071】
・正常ヒト皮膚線維芽細胞に対するミグリオール(Miglyol)810(登録商標)(対照)、及びミグリオール(Miglyol)810(登録商標)で希釈したHB−2化合物の増殖抑制及び細胞毒性効果のMTT方法による分析
皮膚片は、美容手術の組織剥離処置中に無菌的に採取され、20%ウシ胎仔血清を含むHAM F−12培地(ギブコ社)を含む無菌バイアル50mL中に迅速に移された。皮膚片は断辺化され、きれいにしたあとに、小さめの断片を10%ウシ胎仔血清を含むHam−F12培地でペトリ皿にて培養し、加湿培養器内で37℃、5%COに保持した。
【0072】
ほぼいっぱいに細胞が増えた後に、細胞は、5分間トリプシン処理され、10%ウシ胎仔血清で不活性化し、10分間、2000rpm、4℃で遠心分離され、96ウエル平底プレートに移され、CO5%培養器中で24時間培養された。線維芽細胞を、ミグリオール(Miglyol)810(登録商標)で希釈した異なる濃度のHB−2化合物、及び同量のミグリオール(Miglyol)810(登録商標)だけを投与した対照群で24時間処理した。細胞毒性及び増殖抑制効果をMTT比色法で評価した。
図18に示すように、ミグリオール(Miglyol)810(登録商標)で希釈したHB−2化合物で処理した後の正常ヒト線維芽細胞に細胞毒性効果は観察されなかった。
【0073】
・B16F10マウスメラノーマに対する一ナトリウムHB−1化合物、及び対照の増殖抑制効果、並びに細胞毒性効果のMTT法による分析
IC50=DM−2化合物 1.9μg/mL
結果として、(図19)HB−1化合物の一ナトリウム薬剤組成は、B16F10メラノーマ細胞に対する細胞毒性反応を著しく増加させ、CI50%=1.9μg/mLを示した。インビトロ効果は、細胞毒性効果を7.0倍増加させた。
【0074】
・B16F10マウスメラノーマ細胞に対するDM−1化合物、及び対照の増殖抑制効果、並びに細胞毒性効果のMTT法による分析
IC50=DM−1化合物 7.95μg/mL
結果として、(図20)DM−1化合物の薬剤組成は、B16F10メラノーマ細胞における細胞毒性反応を著しく増加させ、IC50=7.95μg/mLを示した。インビトロ効果は、一ナトリウムDM−2化合物に対して約6.0倍小さい。
従って、一ナトリウム誘導体は、二ナトリウム誘導体よりも優れる。
IC50%=DM−1化合物 7.95μg/mL
【0075】
・Tリンパ球に対するDM−2化合物の評価
実施例9:Tリンパ球の調製
生後2ヶ月の5 C57BL/6Jマウス群を頚椎脱臼により屠殺し、腋窩、膝窩、腸間膜領域のリンパ節鎖を無菌状態で切除した。リンパ節は、56℃で不活性化したウシ胎仔血清10%を含むRPMI−1640培地で抗生物質の存在下に維持され、柳葉刀で細切された。得られた細胞懸濁液を30μm透析膜を介して濾過され、10分間、1800rpm、4℃で遠心分離を行った。沈殿した細胞がRPMI完全培地に再懸濁され、その後、ウシ胎仔血清10mLを含むペトリ皿で37℃、5%CO培養器内で1時間培養した。その後、非接着細胞、Tリンパ球、が採取され、50mL円錐チューブに移され、遠心分離され、RPMI−1640完全培地に再懸濁された。細胞濃度は、マラッセチャンバ(Mallassez chamber)内で計算した後に、5×10cells/mL濃度に調整され、トリパンブルー除去法で細胞の生存率が決定された。
細胞毒性及び増殖活性がフィトヘマグルチニン(PHA)のマイトジェン活性と比較して96ウエルプレートで決定され、MTT比色法で評価された。得られた値は、パーセンテージで表された。
各実験データは、分散分析試験で、統計的に分析され、危険率p<0.05で有意であった。
結果は(図21)、異なる濃度のDM−2化合物でリンパ球を処理すると、陽性対照として用いた最適濃度が2.5及び5.0μgであるフィトヘムアグルチニン(PHA)と比較して、これらの細胞の増殖活性が誘導されなかったことを示す。これらの結果は、正常細胞に毒性作用を示さない化合物であることを示し、免疫複合体産生、アレルギー、過敏症、又は自己免疫反応等の副作用を起こしうる特異的な免疫応答としての増殖活性を誘導することができないことを示す。
【0076】
・Balb−cマウスにおけるDM−2の静脈内接種による急性及び亜慢性毒性
LD50=14mg/Kg/動物〜700mg/体重
Balb−cマウスを計量し、動物実験室に収容し、かご毎に5匹をいれグループ化し、2週間後、異なる濃度のDM−2化合物を静脈経路で投与した。全ての濃度に対して化合物0.2mL(容積)をマイクロシリンジで、眼窩静脈叢を介して投与した。投与後、運動性の減少、疲労、呼吸頻度低下、低容量性ショック等の行動の変化は見られなかった。
24時間後、最大耐量(MTD)を決めるため、処置した動物の致死率及び体重減少合計を観察した。この群の動物を60日間観察した。
結果として、(図22)、14mg/Kgの量が、50%致死量(DL50)に相当し、これが同じ投与経路での、最大耐量に相当する。30日目に解剖後、内臓器官に顕著な肉眼的及び組織病理学的変化は見られなかった。
データ分析後、上記生体内抗腫瘍活性及び毒性に関して、ペンタ−1,4−ジエン−3−オン及びその誘導体の作用と、ドキソルビシン、タキソール、及びエトポシド等の治療で現在使用される薬剤の作用との間で簡単な比較ができる。下記表はこれらの比較を示す。
【表11】

*異なる単位は、治療薬が示すヒトから得た標準用量計算ではなく前臨床実験モデルで得たデータである。
DM−1化合物はタキソール及びドキソルビシンと比べてLD50値が劣り、タキソールでは、1.75倍少なく、ドキソルビシンでは35倍少ない。
前臨床実験の間、DM−1は、急性呼吸器病、及び心毒性に対していかなる効果も示さない。このことは、抗腫瘍副作用がより小さい可能性のある抗腫瘍薬として一連の化合物を調べる利点を示唆する。
【0077】
上記の化合物は、また、肺癌、乳癌、多剤耐性乳癌、非メラノーマ皮膚癌、リンパ性白血病、急性及び慢性骨髄性白血病、赤白血病、脊髄異形成症、結腸癌、卵巣癌、頸癌、腎癌、膵癌、前立腺癌、軟部組織肉腫、肝癌、骨肉腫、中枢神経系腫瘍、神経芽腫、星状細胞腫、口腔咽頭部,甲状腺、胃、男性生殖器の癌によって引き起こされる腫瘍性疾患の治療及び予防にも使用してもよいことを重視すべきである。
【0078】
実施例10:組織学的説明
動物は、頚椎脱臼により屠殺され、腫瘍領域に隣接する領域から器官片が採取され、10%ホルムアルデヒドを含むバイアルに保存され、所定の組織学的処理を施すために固定された(PARDI,PC;SIMOES,MJ,BINIVIGNAT,G.O−Ultrastructural study of the remodeling of the stroma of persistent−estrous rats−Rev.Chil.Cienc.Med.Biol 3(2):61−65,1993)。
メラノーマB16F10細胞株が、動物あたり5×10細胞、接種された。この量は、選択した種類の動物に対して既に示した所望の結果を得るための理想的な容量である。
全ての動物が腫瘍注入後14日後に処置され、結果として、15日目に解剖が始まる。
HB−1投与の結果を視覚化するために、動物を下記群に割り当てる。
1 対照群:動物は、1〜6に同定され、ミグリオール(Miglyol)810(登録商標)で処置し、不断給餌及び不断給水される。
2 HB−1群:ミグリオール(Miglyol)810(登録商標)で希釈したHB−1化合物で処置し、不断給餌及び不断給水される。
両群とも、標準投与用量1.15μg/kgが、誘導投与経路として腹腔内投与される。
【0079】
動物は頚椎脱臼により屠殺され、解剖を行い、材料を迅速に採取して10%ホルムアルデヒドを含むバイアルに写して、1〜2日後、所定の組織学的技術、組織学的技術マニュアル(Manual De Tecnicas Para Histologia−Normal E Patologica: Castro De Tolosa, Rodrigues, Behmer E Freitas Neto, Editora Manole 2003)で処理された。
【0080】
この技術は、アルコール濃度を増やすことにより、試験片を脱水させ、ついでキシロールで組織片を透徹し、57℃恒温槽中で液状パラフィンを注入し、最後に、室温でパラフィンにブロックを埋め込む。
ブロック切片は、半自動ライカミクロトームで最大厚さ7μmの標本にされる。
切断後、切片が水浴で維持され、事前にアルブミンで覆ったガラスの薄板に移され、材料が固定される。
【0081】
薄板に固定後、ヘマトキシリン/エオシン染色方法−組織学的技術マニュアル(Manual(Manual De Tecnicas Para Histologia − Normal E Patologica: Castro De Tolosa, Rodrigues, Behmer E Freitas Neto, Editora Manole 2003)が各ブロックにおける成分に対して主に用いられ、組織及び細胞の形態評価に良い結果を示す。
【0082】
染色は、以下の通りに行われる:
薄板を、恒温器で57℃、約20分間乾燥する。
2つのキシロール浴内で組織片を透徹する。
アルコール量を減らして(100%,96%,70%,50%)水和する。
蒸留水で30分間洗浄する。
30秒間ヘマトキシリン染色を行い、水道水を流しながら洗浄し、過剰な染料を取り除く。
1分間エオシン染色。
アルコール量を増やして(96%,100%)脱水する。
キシロール内で組織片を透徹する。(2つの浴)。
染色後、薄板を載せ、AXIOCAM−MRC3(商標)デジタルカメラを使用してツァイス顕微鏡で分析する。得られた写真をAXIOVISON REL 4.2(カールツァイス社)ソフトウエアで処理し、コンピュータに保存する。
組織学的観察及び結果は以下の通りである。
【0083】
結果A:対照群−ミグリオール(Miglyol)810(登録商標)投与
図23及び図24は、対照群の腫瘍組織片を示す。背部腫瘍を注入したC57BL/6Jマウスがミグリオール(Miglyol)810(登録商標)で腹腔内投与により処置され、処置14日目に屠殺された。
図23及び図24の顕微鏡写真から、色素沈着した背部結節性腫瘍(A)、及び広範囲の壊死(B)が存在するが、炎症性白血球浸潤(C)がないことが観察できる。
【0084】
結果B:HB−1群 ミグリオール(Miglyol)810(登録商標)で希釈
ミグリオール(Miglyol)810(登録商標)で希釈したHB−1化合物で処置されたメラノーマを有する動物の背部腫瘍の組織病理分析を図25及び図26に示す。
腫瘍内及び腫瘍周辺部分に高度の炎症性白血球浸潤(A)、広範囲のネクローシスを伴う浸潤した結節性腫瘍塊(B)が観察できる。
腫瘍内及び腫瘍周辺部分の白血球浸潤は、HB−1化合物で14日間の処置することで、化合物と腫瘍細胞との間の相互作用により、又は間接的に他の種類の細胞との相互作用により特異的な免疫応答を誘導できることを示す。HB−1化合物で処置したメラノーマ腫瘍に存在する炎症細胞浸潤は、同じ実験条件及び同じ投与経路で化合物の賦形剤ミグリオール(Miglyol)810(登録商標)を投与した対照群には見られなかった。一方で、これらの知見は、腫瘍細胞成長及び播種を阻止するHB−1化合物の抗腫瘍効果を確証する:処置動物群には転移病巣が見られず、一方、対照群には肺及びリンパ神経節にいくつか病巣、又は結節性腫瘍が見られた。
【0085】
結果C:対照群−ミグリオール(Miglyol)810(登録商標)で希釈
ミグリオール(Miglyol)810(登録商標)で処置したメラノーマを有する動物の背部腫瘍の病理組織学的分析を図27及び図28に示す。
色素沈着した背部結節性腫瘍(A)には血管新生(*)や広範囲のネクローシス(B及びD)が存在するが、腫瘍内及び腫瘍周辺部分には炎症性白血球浸潤(C)が観察されない。
【0086】
結果D:肺実質転移
肺実質転移の病理組織学的分析を図29及び図30に示す。
対照群(図30)と比較して、HB−1化合物で処置した動物(図29)には気管支上皮の厚さの変化や剥離脱落、うっ血性変化、フィブリン沈着、及び色素沈着がなく、炎症性細胞などにおいて、変化はなかった。転移塊又は小結節の存在が観察されなかった(図29)。一方で、対照群の動物は、肺の被膜に接して、いくつかの転移病巣を示し、この細胞にはメラニン色素が認められる。炎症性浸潤は観察されない(A)。
【0087】
結果E:内臓器官の病理組織学的分析
肝臓、及び腎臓等の内臓器官の病理組織学的結果をそれぞれ図31及び図32に示す。
結果は、顕著な病変あるいは炎症所見がない保存された正常な実質組織を示す。図31において、良好に保存された肝実質細胞、及び良好に確定された放射状の小葉、及び小柱が観察できる。中心静脈は標準的な類洞と共に良好に保存されることも観察できる。図32は、構造的変化のない一般的な良好に保存された腎小体、良好に保存された遠位及び近位尿細管を明らかに示す。
背部メラノーマを有しミグリオール(Miglyol)810(登録商標)希釈剤で処置した動物の内臓器官は、全ての切断面で正常であり、隣接領域もしくは潰瘍塊の炎症過程もしくは浸潤、又は毒性作用もしくは希釈剤沈着に関係しうる他の変化がない。
【0088】
パート3:抗寄生虫活性
本発明は、また、この項目のパート1の式に示した上記誘導体の抗寄生虫作用にも関する。
ここで示す化合物は、アメリカ外皮リーシュマニアの原因となるリーシュマニア(Leishmania spp)から分離する異なる分離株である前鞭毛型の増殖及び/又は生存度、及び無鞭毛型アマゾンリーシュマニアの増殖及び/又は生存度に対するインビトロ効果として評価されている。
【0089】
実験に必要とされる培養物の量に応じて、異なる濃度の化合物100.00〜3.12μg/mL、及び培地1ミリリットル毎の寄生虫数1.0×10〜2.0×10を2〜20mLに培養することで増殖の抑制を測定するアッセイが行われる。化合物は、ジメチルスルホキシド(DMSO)で溶かされてストック溶液とする。異なる濃度の試料を得るために、まず、第1の所望の濃度を得るために必要とされる十分な量の培地を加え、他の濃度は第1の濃度を倍々希釈することで得ることが出来る。培養物は、前鞭毛型及び無鞭毛型に対して、それぞれ22℃又は24℃で培養される。
【0090】
寄生虫の生存能力評価に対する陽性対照として、他に何も加えずに培地及び寄生虫だけを使用した。化合物組成中の溶剤に対する毒性対照として、寄生虫をDMSOで希釈した培地で培養した。
【0091】
前鞭毛型を定量化するためにはノイバウアー血球計算板を使用した。各実験において培養期間を通して、24時間毎に前鞭毛型を定量した。試料は、培養物20μLの最初の希釈液を食塩水(PBS+2%ホルムアルデヒド)180μLに配合して1/10希釈溶液を得ることで調製される。必要であれば、連続希釈法が第1希釈から行われてもよい。全ての実験で、HB−1のいくつかの濃度、それらの各DMSO対照(最初のHB−1原液がDMSOで調製され、寄生虫に関する毒性が評価されたことに留意すべきである)、及び規定の培養物で、培地に他の成分を加えずに寄生虫が培養されるべきである。集計は2人で二重に行い、最終結果が2つの集計から算術平均として表される。いくつかの手順を用いて無鞭毛型を定量化する。
【0092】
最初の24時間から、また、異なる培地においても、化合物は、前鞭毛型増殖に対して良好な抑制分布を示した。
化合物もまた、化合物に対して極めて感受性が高い無鞭毛型様の増殖能抑制に対して、非常に有望である。全ての評価した化合物濃度によって、培養の最初の48時間で100%の寄生虫が生存不可能な形態に変わり、既に最初の24時間で濃度が10μg/mL及び20μg/mLで100%の無鞭毛型細胞活性を阻止する。
人の感染症の治療において、この細胞内形態が抗寄生虫薬の標的として確立しているので、この結果は、非常に重要である。
【0093】
前鞭毛型及び無鞭毛型の生存度及び/又は細胞増殖評価は、Moreira等が示す(Moreira,M.E.C, Del Portillo,H.A.,Milder,R.V.,Balanco,J.M.F.and Barcinski,M.A.Heat shock induction of apoptosis in promastigotes of the unicellular organism Leishmania(Leishmania)amazonensis, J. Cell Physiol. 167,305−313,1996)MTT(ジフェニルテトラゾリウム3−[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]2,5−ブロミド)方法でも行われ、修正される。
【0094】
寄生型を化合物で処理した後、上記に示すように、各実験に対して所定の時間(24,48,72時間等)に、細胞懸濁液の1.0mLが各培養管又はバイアルから採取され、微小遠心管に移され、14.000rpm、3分間で遠心分離され、培地は吸引除去される。沈降細胞にPBS 200μLを加える。その後、沈降細胞を含むPBSを、96ウエル培養プレート2つのウエルに分注する(各複製100μL)。各々に対して、MTT20μL(5mg/mL原液、最終濃度1,0mg/mL)を加える。室温22℃(前鞭毛型)又は34℃(無鞭毛)で、1時間又は1時間30分処理した後、各ウエルに10%SDS 100μLを加え、反応を中断し、細胞を溶解し、ホルマザン結晶を溶解し、均質な青い溶液を得る。試験波長として595nm、基準波長として690nmを用いて培養マイクロプレート用分光光度計(モデル3550 バイオラッド社、カリフォルニア州リッチモンド)により吸光度を測定する。
【0095】
光学濃度(O.D.)値は、代謝活性のある細胞によってMTTが酵素還元されることに対応する。結果的に、O.D.は、細胞懸濁液中の生存可能な細胞の数に直接比例する。O.D.の漸進的増加は、細胞増殖を示す。結果は、光学濃度複製の算術平均として表される。
ブランク反応は、MTT、及び異なるHB−1濃度に加えて、各アッセイで用いられる特性の培地の培養により得られる。黄褐色のHB−1は、培地及びHB−1濃度により異なる規模の比色分析に特定の干渉を与える。概して、O.D.ブランクは、分析範囲中0.002〜0.020である。
観察された活性及び結果を下記に示す。
【0096】
実施例11:ウォーレン培地におけるアマゾンリーシュマニア(L)(Leishmania(L)amazonensis)の前鞭毛型増殖に対するHB−1化合物の効果
前鞭毛型アマゾンリーシュマニア(L)(分離株LV79、培地で8回継代、7日目の培養、静止期)が、10前鞭毛型/mLの割合でウォーレン培地で培養される。最終体積は3.0mLであり、HB−1の異なる濃度、及び増殖及び生存度に対する陽性対照としてその各対照を同量のDMSO及び培地で用いる。ウォーレン培地で培養した前鞭毛型アマゾンリーシュマニアに対するHB−1の効果を下記表及び図33に示す。
EV:それぞれ、最終濃度の異なるHB−1を得るために用いたDMSOと同量であるDMSOを含む培地で寄生虫を培養する場合の各HB−1濃度に対応する個々の対照を表す。
【0097】
下記表及び図33から分かるように、全てのHB−1(100μg/mL〜3.12μg/mL)濃度が、程度差は異なるものの、最初の24時間培養で前鞭毛型増殖を阻止する。72時間培養後、濃度が25μg/mL,50μg/mL,及び100μg/mLの場合は、それぞれ、寄生虫増殖を81%、95.8%、及び100%阻止し、120時間培養では100%阻止する。
【表12】

従って、この期間内に寄生虫は100%死滅する。結果的に、上記に示した実験条件で前鞭毛型増殖を100%阻止する(=死亡率100%)ためのHB−1の効果的な濃度は、培養時間に関連することを立証する。従って、死亡率100%は、HB−1濃度が25μg/mL,50μg/mL,又は100μg/mLの場合、それぞれ120時間、96時間又は72時間培養で達成される。濃度が12.5μg/mL〜3.12μg/mLの場合は、増殖阻止が最大72時間培養のため亜致死である。
【0098】
実施例12:RPMI培地での前鞭毛型アマゾンリーシュマニア(L)に対するHB−1化合物の効果
前鞭毛型アマゾンリーシュマニア(L)(分離株LV79、培地で1回継代、7日目の培養、静止期)が、HB−1の異なる濃度、その各対照のDMSOを用いて10前鞭毛型/mLの割合でRPMI培地で培養される。最終体積は3.0mLである。前鞭毛型アマゾンリーシュマニア(L)の増殖−RPMI培地に対するHB−1化合物の影響を下記表及び図34に示す。
【表13】

EV:それぞれ、最終濃度の異なるHB−1を得るために用いたDMSOと同量であるDMSOを含む培地で寄生虫を培養する場合の各HB−1濃度に対応する個々の対照を表す。
RPMI培地を使用する場合、HB−1化合物は、全ての濃度(100μg/mL〜3.12μg/mL)が前鞭毛型リーシュマニアの増殖を阻止することが出来る。阻止効果は、これらの実験条件で特に明らかである。前記表及び図34に示すように、最初の24時間培養で、全ての実験濃度のHB−1の重要な阻止効果が表れ、48時間培養では、濃度100μg/mL〜12.5μg/mLで100%の阻止効果(=致死量100%)が観察できる。
【0099】
実施例13 RPMI培地におけるHB−1で処理した前鞭毛型アマゾンリーシュマニア(L)の生存能力の測定
このアッセイでは、HB−1又はその対照のDMSOを用いて、RPMI培地で培養した場合の前鞭毛型リーシュマニアの生存能力を、MTT法によって評価する。増殖曲線の静止期においてHB−1の効果が検出できるかを確認することも可能である。
培養のために、前鞭毛型LV79分離株の、初期接種濃度1.0×10/mLから得られる1回継代の第7日目の培養を使用する。反応体の最終体積は3.0mLである。RPMI培地においてHB−1で処理した前鞭毛型アマゾンリーシュマニア(L)の生存能力測定の結果を、次の表及び図35に示す。
【表14】

*定量化誤差(技術的誤差)の可能性が大。
EV:それぞれ、最終濃度の異なるHB−1を得るために用いたDMSOと同量であるDMSOを含む培地で寄生虫を培養する場合の各HB−1濃度に対応する個々の対照を表す。
前記表及び図35に示す結果は、濃度が6.25μg/mL〜100μg/mLのHB−1処理が、最初の24時間培養で、細胞の生存能力を不可逆的に損傷させていることを示す。それは、その後の培養時間において回復の兆候が見られないからである。
培養144時間でのMTT法によって測定されるミトコンドリア活動の観察によって、対照の反応(HB−1なしの場合)とその他の反応との比較から、HB−1は、増殖曲線の対数期と静止期の両方で細胞を生存不可能にする作用があることを明示できた。
これらの分析は、ノイバウアー血球計算板を用いた定量法によって得られる結果を裏付ける。HB−1の濃度が12.5μg/mLを超える場合は、増殖曲線の全体にわたって細胞が回復しないので、明らかな殺リーシュマニア効果を有することが観察できる。HB−1の濃度が6.25μg/mLの場合は、リーシュマニア増殖静止化効果があることが明らかにされているが、100%の前鞭毛型を生存不可能にすることはできない。HB−1のミトコンドリア活性への効果は、寄生虫増殖の対数期及び静止期の両方において観察される。
【0100】
実施例14 限局性皮膚リーシュマニア症(L.C.L)及び汎発性皮膚リーシュマニア症(D.C.L.)の原因となるリーシュマニア分離株に対するHB−1の効果のMTT法による評価
この実験は、分離株の初期接種濃度が2.0×10/mLである培地を用いて、ウォーレン培地中で展開される。培養物は、7回継代であり最終対数期増殖(培養6日目)にあった。ウォーレン培地中、HB−1の存在下で培養した前鞭毛型リーシュマニア(L.C.L.からの分離株)の生存能力測定の結果を下記表及び図36に示す。培養物の最終体積は5mLで、MTT反応は、培養物1.0mLから開始して、1時間30分の培養で処置された。
【表15】

*O.D.=波長595/690nmでの光学濃度(2回の繰り返しの平均値)。
EV:同量のDMSOを含む培地で寄生虫を培養する場合の各HB−1濃度に対応する個々の対照を示す。
前記表及び図36に示すように、このL.C.L.分離株は、HB−1作用に対して極めて感受性が高い。この化合物のこれらの細胞に対する効果には、明らかに用量依存性が見られ、濃度が5μg/mLでは増殖を部分的に抑制するに留まり、濃度が10μg/mLではリーシュマニア増殖静止化効果を有し、そして濃度が20μg/mLでは殺リーシュマニア効果を有する。
【0101】
ウォーレン培地中、HB−1の存在下で培養した前鞭毛型のリーシュマニア(D.C.L.からの分離株)の生存能力測定の結果を下記表及び図37に示す。
【表16】

*O.D.=波長595/690nmでの光学濃度。
**方法論的エラーにより分析から除外されたデータ点。
EV:異なる濃度を得るために用いたDMSOと同量であるDMSOを含む培地で寄生虫を培養する場合の各HB−1濃度に対応する個々の対照を表す。
D.C.L.分離株に関しては、結果(前記表及び図37に示す)は同様で、前鞭毛型の生存能力に対する明白なHB−1の効果を示している。しかしこの場合、L.C.L.分離株に対する濃度10μg/mLの化合物の効果がリーシュマニア増殖静止化効果のみであったのに対して、D.C.L.分離株に対するこの濃度の効果として殺リーシュマニア効果を観察することができるので、この寄生虫は該化合物に対してより高い感受性を有するようである。
【0102】
実施例15 アマゾンリーシュマニア(L)の無鞭毛様型に対するHB−1効果の評価
無鞭毛型が脊椎動物宿主の体内で増殖し、結果的にこの病気の原因となる型であることを考慮すると、無鞭毛型リーシュマニアをHB−1存在下で培養する場合のその生存能力を評価することは必要不可欠である。
この評価は、前述の方法で、更に無菌培養から得られる無鞭毛型を利用することによって行われる。この結果を下記表に示す。
【表17】

*O.D.=光学濃度
EV:それぞれ、最終濃度の異なるHB−1を得るために用いたDMSOと同量であるDMSOを含む培地で寄生虫を培養する場合の各HB−1濃度に対応する個々の対照を表す。
前記表に示すように、無鞭毛型は、HB−1に対して極めて感受性が高いことが分かった。最初の48時間において、この寄生虫の100%が全てのアッセイされた濃度のHB−1によって生存不可能になり、そして最初の24時間で、10μg/mL及び20μg/mLの濃度のHB−1が100%の無鞭毛型の細胞活性を阻止する。
【0103】
記載された化合物が、リーシュマニア(Leishmania)属、プラスモジウム(Plasmodium)属、トリパノソーマ(Trypanosoma)属、トキソプラズマ(Toxoplasma)属、ジアルジア(Giardia)属、及びエンタモエバ(Entamoeba)属などの組織原虫、住血原虫又は腸内原虫によって引き起こされる寄生虫性疾患;並びにタエニア(Taenia)属、シストソーマ(Schistosoma)属、アンシロストーマ(Ancyhstoma)属、ネカトール(Necator)属、アスカリス(Ascaris)属、エンテロビウス(Enterobius)属、及びウケレリア(Wuchereria)属などの他のぜん虫寄生虫類によって引き起こされる、それぞれ異なる臨床上の兆候有するヒト及び/又は動物の寄生虫症の治療にも使用してもよいことを重視すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式IIで表されるモノフェノラート又はジフェノラートを調製するためのプロセスであって、構造式Iで表される化合物を、前記構造式Iで表される化合物に対してモル比が1:1〜1:2である金属アルコキシドROMと溶媒としてのアルコールROHに接触させることを含むことを特徴とするプロセス:
【化13】

式中、Xは水素原子、マロニトリル基又はアルキルシアノアセテート基であり、Yは水素又はフェノキシドイオンの形態として安定化させる金属カチオンであり、Zはニトロ基、アミン基又は該位置に関しては無置換となる化合物を与える基(Z=H)、及びMは前記化合物をフェノキシドイオンの形態として安定化させる金属カチオンを表す。
【請求項2】
1,5−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシ−フェニル)ペンタ−1,4−ジエン−3−オンをナトリウムエトキシドのエタノール溶液と混合した後、固体が生成するまで溶媒を回転蒸発させる(rotoevaporation)請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
水に易溶であって、後続の請求項に記載の生物学的試験に使用できる微粉末を得るために、得られたモノナトリウム塩及び/又はジナトリウム塩を篩過する請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
一般式IVで表されるアルキル化又はアシル化1,5−ビス−(アリール)−ペンタ−1,4−ジエン−3−オンを調製するためのプロセスであって、一般式IIIで表される対応する置換ペンタジエノンを、1,2−ジクロロエタン、ベンゾイルクロライド、モノクロロ酢酸又は酢酸無水物等のアルキル化剤又はアシル化剤と混合し、他のものと一緒に、構造式IVで表される対応する置換ペンタジエノンを得ることを含むことを特徴とするプロセス:
【化14】

式中、Xは酸素又はマロニトリルを表し、Zはニトロ基又は水素原子を表し、Yはベンゾイル基、メチル基、クロロエチル基、アセチル基、カルボキシメチレン基又は無置換化合物を形成する窒素原子を表す。
【請求項5】
一般式IVで表されるアシル化又はアルキル化ペンタジエノンを、一般式IIIで表される対応する置換アルキル化又はアシル化アルデヒドとアセトンから得るプロセスであって、前記アルデヒドとアセトンを酸性培地中、25℃〜60℃で25kHz〜40kHzの超音波を照射し、1日〜7日間放置する請求項4に記載のプロセス:
【化15】

一般式IVで表されるペンタジエノンにおいて、Xは酸素又はマロニトリルを表し、Zはニトロ基又は水素原子を表し、Yはベンゾイル基、メチル基、クロロエチル基、アセチル基、カルボキシメチレン基又は無置換化合物を形成する水素原子を表す。
【請求項6】
新規なペンタ−1,4−ジエン−3−オンを、シリカゲル充填クロマトグラフィーカラムと適切な溶離液を用いるか、又は再結晶することによって精製する請求項4又は5に記載のプロセス。
【請求項7】
一般式VIで表される置換4−ニトロ−3,5−ジアリール−シクロヘキサノンを調製するためのプロセスであって、一般式Vで表される置換1,5−ビス(アリール)ペンタ−1,4−ジエン−3−オンと、ニトロメタン若しくはニトロエタン又はマロン酸誘導体とを、モル比約1:1でマイケル付加条件下、20℃〜60℃にて塩基存在下に25kHz〜40kHzの超音波を照射した状態で1時間〜8時間接触させることを特徴とするプロセス:
【化16】

式中、Arは3,4−ジメトキシフェニル、4−カルボキシメトキシ−3−メトキシ−フェニル、4−アセトキシ−3−メトキシ−フェニル、3−メトキシ−4−(3−メチル−ブタ−2−エニルオキシ)−フェニル、4−(2−クロロ−エトキシ)−3−メトキシ−フェニル、4−ベンゾイルオキシ−3−メトキシ−フェニル(即ちアリール)等の芳香族基、又はフラン、チオフェン等の複素環式芳香族を表し、Yはニトロ基又はシアノ基であり、Zは水素原子、メチル基、シアノ基等であり;試薬としてRはアルキルでありXはアルコキシカルボニル基又はシアノ基である。
【請求項8】
塩基が、ナトリウムメトキシドの無水メタノール溶液又は無水ジメチルホルムアミドの存在下にある炭酸ナトリウムである請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
等モル量のニトロメタン若しくはニトロエタン又はマロノニトリルと、炭酸カリウムと、対応する置換ペンタ−1,4−ジエン−3−オンとをジメチルホルムアミド存在下に含む反応混合物を、定速攪拌下約40℃にて5時間〜10時間還流する請求項7又は8に記載のプロセス。
【請求項10】
使用する塩基がナトリウムメトキシドであり、置換ペンタ−1,4−ジエン−3−オンをメタノールに溶解させ、25℃〜40℃にて6時間〜10時間激しく攪拌させる請求項7、8又は9に記載のプロセス。
【請求項11】
反応混合物に25kHz〜40kHzの超音波を照射する請求項7、8、9又は10に記載のプロセス。
【請求項12】
構造式VIIで表される置換2,6−ジベンジリデン−4−ニトロ−3,5−ジアリール−シクロヘキサノン(構造式VII中、Y及びZはそれぞれ水素、メチル基又はニトロ基であり、Xは酸素である)、又は式VIIで表される化合物であって3,5−ジベンジリデン−2,6−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メトキシ−フェニル)−4−オキソ−シクロヘキサン−1,1−ジカルボニトリル(構造式VII中、Y及びZがシアノ基でありXが酸素である)を調製するためのプロセスであって、構造式VIで表される置換4−ニトロ−3,5−ジアリール−シクロヘキサノン又は2,6−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メトキシ−フェニル)−4−オキソ−シクロヘキサノン−1,1−ジカルボニトリルと置換アルデヒドとを塩基性又は酸性媒質中においてアルドール縮合反応条件下で混合することを含むことを特徴とするプロセス。
【化17】

【請求項13】
ナトリウムメタノレートのメタノール混合物を用いて、構造式VIで表される置換シクロヘキサノンである4−オキソ−シクロヘキサン−1,1−ジカルボニトリルと置換アルデヒドとをモル比約1:4にて無水メタノール中で8時間〜12時間の攪拌下に接触させることを含む請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
得られた化合物の精製が再結晶法により行われるか、又はシリカゲル充填クロマトグラフィーカラムと溶離液として適切な有機溶媒とを用いて行われる請求項12又は13に記載のプロセス。
【請求項15】
インビトロ及び生体内での抗腫瘍及び抗寄生虫アッセイを行うための、HB−1(1,5−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシ−フェニル)ペンタ−1,4−ジエン−3−オン)化合物とHB−2(1,5−ビス(3−メトキシ−4−アセトキシ−フェニル)ペンタ−1,4−ジエン−3−オン)化合物のミグリオール(Miglyol)810(登録商標)混合物を調製するためのプロセス。
【請求項16】
ナトリウム4−[5−(4−ヒドロキシ−3−メトキシ−フェニル)−3−オキソ−ペンタ−1,4−ジエニル]−2−メトキシ−フェノラートであることを特徴とする化合物。
【請求項17】
3−オキソ−ペンタ−1,4−ジエニル−ビス(ナトリウム2−メトキシ−フェノラート)であることを特徴とする化合物。
【請求項18】
1,5−ビス−[4−(2−クロロ−エトキシ)−3−メトキシ−フェニルペンタ−1,4−ジエン−3−オンであることを特徴とする化合物。
【請求項19】
{4−[5−(4−カルボキシメトキシ−3−メトキシ−フェニル)−3−オキソ−ペンタ−1,4−ジエニル]−2−メトキシ−フェノキシ}−酢酸であることを特徴とする化合物。
【請求項20】
1,5−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メトキシ−5−ニトロ−フェニル)ペンタ−1,4−ジエン−3−オンであることを特徴とする化合物。
【請求項21】
1,5−ビス(4−ベンゾイルオキシ−3−メトキシ−フェニル)ペンタ−1,4−ジエン−3−オンであることを特徴とする化合物。
【請求項22】
2−(3−[4−(2−クロロ−エトキシ)−3−メトキシ−フェニル]−1−{2−[4−(2−クロロ−エトキシ)−3−メトキシ−フェニル]−ビニル}−アリリデン)−マロノニトリルであることを特徴とする化合物。
【請求項23】
3,5−ビス−[3−メトキシ−4−(3−メチル−ブタ−2−エニルオキシ)−フェニル]−4−ニトロ−シクロヘキサン−1−オンであることを特徴とする化合物。
【請求項24】
3,5−ビス−(フル−2−イル)−4−ニトロ−シクロヘキサン−1−オンであることを特徴とする化合物。
【請求項25】
3,5−ビス−(フル−2−イル)−4−メチル−4−ニトロ−シクロヘキサン−1−オンであることを特徴とする化合物。
【請求項26】
3,5−ビス−(フェニル)−4−メチル−4−ニトロ−シクロヘキサン−1−オンであることを特徴とする化合物。
【請求項27】
2,6−ビス[1−(フル−2−イル)メチリデン]−3,5−ビス(フル−2−イル)−4−メチル−4−ニトロ−シクロヘキサン−1−オンであることを特徴とする化合物。
【請求項28】
3,5−ジフェニル−2,6−ビス−[1−(フル−2−イル)メチリデン]−4−メチル−4−ニトロ−シクロヘキサン−1−オンであることを特徴とする化合物。
【請求項29】
2,6−ビス−[1−(5−ブロモ−フル−2−イル)メチリデン]−3,5−ジフェニル−4−メチル−4−ニトロ−シクロヘキサン−1−オンであることを特徴とする化合物。
【請求項30】
2−(3,5−ジ−フラン−2−イル−4−ニトロ−シクロヘキシリデン)−マロノニトリルであることを特徴とする化合物。
【請求項31】
2−(3,5−ジ−フラン−2−イル−4−メチル−4−ニトロ−シクロヘキシリデン)−マロノニトリルであることを特徴とする化合物。
【請求項32】
請求項1〜15のいずれかに記載のプロセスによって得られる化合物及び/又は請求項16〜31のいずれかに記載の化合物の使用であって、前記化合物が、ヒト及び動物における数種の腫瘍性疾患及び寄生虫性疾患を治療するための医薬組成物を調製するために使用されることを特徴とする使用。
【請求項33】
肺癌、乳癌、多剤耐性乳癌、非メラノーマ皮膚癌、メラノーマ、リンパ性白血病、急性及び慢性の骨髄性白血病、赤白血病、脊髄異形成症、結腸癌、卵巣癌、頸癌、腎癌、脾臓癌、前立腺癌、軟部組織肉腫、肝癌、骨肉腫、中枢神経系腫瘍、神経芽腫、星状細胞腫、口腔咽頭部、甲状腺、胃及び男性生殖器の癌によって引き起こされる腫瘍性疾患の治療及び予防のための請求項32に記載の化合物の使用。
【請求項34】
治療有効量の請求項1〜15のいずれかに記載のプロセスによって得られる化合物及び/又は請求項16〜31のいずれかに記載の化合物と、医薬的に許容される賦形剤とを含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項35】
治療有効量の請求項1〜15のいずれかに記載のプロセスによって得られる化合物及び/又は請求項16〜31のいずれかに記載の化合物を、腫瘍性疾患の治療を必要とする患者に投与することを特徴とする請求項33に記載の腫瘍性疾患を治療するための治療方法。
【請求項36】
投与が筋肉内投与、皮下投与、腹腔内投与、静脈内投与又は経口投与で行われる請求項35に記載の方法。
【請求項37】
ヒト及び/又は動物の寄生虫性疾患が、リーシュマニア(Leishmania)属、プラスモジウム(Plasmodium)属、トリパノソーマ(Trypanosoma)属、トキソプラズマ(Toxoplasma)属、ジアルジア(Giardia)属及びエンタモエバ(Entamoeba)属を含む組織原虫、住血原虫又は腸内原虫によって引き起こされる寄生虫性疾患;及びタエニア(Taenia)属、シストソーマ(Schistosoma)属、アンシロストーマ(Ancyhstoma)属、ネカトール(Necator)属、アスカリス(Ascaris)属、エンテロビウス(Enterobius)属又はウケレリア(Wuchereria)属によって引き起こされる寄生虫性感染症である請求項32に記載の使用。
【請求項38】
化合物がウォーレン(Warren)培地中における前鞭毛型アマゾンリーシュマニア(L)(Leishmania(L)amazonensis)の増殖に対して活性を示す請求項32に記載の使用。
【請求項39】
化合物が、RPMI培地中における前鞭毛型アマゾンリーシュマニア(L)の増殖に対して活性を示す請求項32に記載の使用。
【請求項40】
化合物が、RPMI培地中におけるHB−1で処理された前鞭毛型アマゾンリーシュマニア(L)の生存能力に対して作用する請求項32に記載の使用。
【請求項41】
化合物が、限局性皮膚リーシュマニア症(L.C.L.)及び汎発性皮膚リーシュマニア症(D.C.L.)の原因となるリーシュマニア分離株に対して、MTT法によって評価される作用をする請求項32に記載の使用。
【請求項42】
化合物が無鞭毛型アマゾンリーシュマニア(L)に対して作用する請求項32に記載の使用。
【請求項43】
癌疾患及び寄生虫性疾患に対する適用において、研究対象とした正常器官のいずれにおいても重篤な変化を引き起こさず、且つネクローシス領域、色素沈着又は細胞変性を引き起こさない医薬組成物であって、請求項1〜15のいずれかに記載するように製造された化合物及び/又は請求項16〜31のいずれかに記載の化合物を含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項44】
請求項16〜31のいずれかに記載の(1,5−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシ−フェニル)ペンタ−1,4−ジエン−3−オン)(HB−1)及び(1,5−ビス(3−メトキシ−4−アセトキシ−フェニル)ペンタ−1,4−ジエン−3−オン)(HB−2)と、医薬的に許容される賦形剤とを含むことを特徴とする相乗組成物。
【請求項45】
請求項1に記載のプロセスによって得られる生成物である、ナトリウム4−[5−(4−ヒドロキシ−3−メトキシ−フェニル)−3−オキソ−ペンタ−1,4−ジエニル]−2−メトキシ−フェノラート、3−オキソ−ペンタ−1,4−ジエニル−ビス(ナトリウム2−メトキシ−フェノラート)及びそれらの誘導体の使用であって、前記化合物がヒト及び動物の腫瘍性及び寄生虫性疾患の治療に使用されることを特徴とする使用。
【請求項46】
請求項15に記載するように調製される、腫瘍の増殖を阻害すると共に前記腫瘍に対して特異的な免疫応答を誘導するための組成物の使用であって、前記組成物がHB−1(1,5−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシ−フェニル)ペンタ−1,4−ジエン−3−オン)化合物とHB−2(1,5−ビス(3−メトキシ−4−アセトキシ−フェニル)ペンタ−1,4−ジエン−3−オン)化合物との、HB−1の比率がHB−2に対して20%〜80%で併用されているミグリオール(Miglyol)810(登録商標)中での混合物を含むことを特徴とする使用。
【請求項47】
請求項1〜15のいずれかに記載するように製造された化合物及び/又は請求項16〜31のいずれかに記載の化合物が線維芽細胞、リンパ球及びマクロファージ等のヒト及び動物の正常細胞に対して重篤な細胞毒性を示さないことを特徴とする使用。
【請求項48】
請求項1〜15のいずれかに記載するように製造された化合物及び/又は請求項16〜31のいずれかに記載の化合物が免疫細胞の特異的なインビトロ増殖活性を誘導しないことを特徴とする使用。
【請求項49】
請求項1〜15のいずれかに記載するように製造された化合物及び/又は請求項16〜31のいずれかに記載の化合物が、腫瘍細胞の内臓器官への播種及び遊走を防ぐと共に、二次性腫瘍或いは転移の発生を防ぐことを特徴とする使用。
【請求項50】
請求項1〜15のいずれかに記載するように製造された化合物及び/又は請求項16〜31のいずれかに記載の化合物が、ヒト及び動物の原発性腫瘍において特異的な炎症応答を生体内で誘導し、前記腫瘍の増殖及び播種を防ぐことを特徴とする使用。
【請求項51】
請求項1〜15のいずれかに記載するように製造された化合物及び/又は請求項16〜31のいずれかに記載の化合物が、ヒト及び動物の免疫抑制病態、免疫不全病態及び退行性病態に対して特異的な免疫刺激剤として機能することを特徴とする使用。
【請求項52】
DM−1化合物及びDM−2化合物の使用であって、DM−1化合物及びDM−2化合物が、ヒト及び動物の数種の腫瘍細胞株に対し生体内においてより高く、且つ、特異的な効果を発揮し、且つ他の被験化合物よりも低い50%阻害濃度(IC50値)を示すことを特徴とする使用。
【請求項53】
請求項1〜15のいずれかに記載するように製造された化合物及び/又は請求項16〜31のいずれかに記載の化合物が、生体内での処置後、内臓器官に肉眼的又は組織病理学的変化を示さず、急性又は慢性炎症変化、血管不全、腎不全、肝不全及び肺不全のいずれもが観察されないことを特徴とする使用。
【請求項54】
請求項1〜15のいずれかに記載するように製造された化合物及び/又は請求項16〜31のいずれかに記載の化合物が、プログラムされた細胞死(アポトーシス)により、ヒト及び動物の腫瘍の増殖を阻害すると共にその遊走を防ぐことを特徴とする使用。
【請求項55】
請求項1〜15のいずれかに記載するように製造された化合物及び/又は請求項16〜31のいずれかに記載の化合物が、ヒト及び動物の増殖性疾患のためにプログラムされた細胞死(アポトーシス)を誘導することを特徴とする使用。

【図1】
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【図2】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公表番号】特表2010−501473(P2010−501473A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−516829(P2009−516829)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【国際出願番号】PCT/BR2007/000175
【国際公開番号】WO2008/003155
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(509007447)ウニベルシダージ バンデイランテ デ サン パウロ−アカデミア パウリスタ アンシエタ エス/シー リミターダ−ユーエヌアイビーエーエヌ (2)
【出願人】(505429717)
【Fターム(参考)】