説明

抗腫瘍活性を有する化合物

式(I)


[式中、X、Y、およびZは明細書にて定義された通りである]の化合物の、必要に応じて異なる生物学的に活性な物質と組合せた抗腫瘍薬の製造のための使用が開示される。


【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、抗腫瘍活性を有する新規種類の化合物に関するものである。具体的には、本発明は、一般式(I):
【化1】

[式中、
は、N+(R,R,R)およびP+(R,R,R)(R、R、およびRは、同じであるか、または異なっており、水素、およびC−C直鎖または分枝鎖アルキル基、−CH=NH(NH)、−NH、−OHからなる群より選択されるか;あるいは2個以上のR、R、およびRは、結合している窒素原子と一体となって、飽和または不飽和、単環式または二環式複素環系を形成する;但し、R、R、およびRの少なくとも1個は水素ではない)からなる群より選択され;
Zは、
−OR
−OCOOR
−OCONHR
−OCSNHR
−OCSOR
−NHR
−NHCOR
−NHCSR
−NHCOOR
−NHCSOR
−NHCONHR
−NHCSNHR
−NHSOR
−NHSONHR
−NHSO
−NHSONHR
−SR
(Rは、C−C20飽和または不飽和、直鎖または分枝鎖アルキル基である)から選択され;
は、−COO−、POH−、−OPOH−、テトラゾレート5−イルからなる群より選択される]
の化合物の、抗腫瘍薬の製造のための使用を提供する。
【0002】
好ましい化合物の第1の群は、式(I)[式中、Xは、N+(R,R,R)、より好ましくは、トリメチルアンモニウムである]の化合物を含むものである。好ましい化合物の第2の群は、式(I)[式中、2個以上のR、R、およびRは、結合している窒素原子と一体となって、複素環系を形成し、それは、好ましくは、モルホリニウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、キノリニウム、キヌクリジニウムから選択される]の化合物を含むものである。
【0003】
好ましい化合物の第3の群は、式(I)[式中、RおよびRは、水素であり、Rは、−CH=NH(NH)、−NH、および−OHからなる群より選択される]の化合物を含むものである。
【0004】
本発明の異なる実施態様において、R基は、好ましくは、C−C20飽和または不飽和、直鎖または分枝鎖アルキル基である。好ましいR基は、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、およびエイコシルからなる群より選択される。
【0005】
Z基の好ましい例は、ウレイド(−NHCONHR)、およびカルバメート(−NHCOOR,−OCONHR)である。
【0006】
式(I)[式中、X、R、R、Rは、上述の意味を有し、Zは、ウレイド(−NHCONHR)またはカルバメート(−NHCOOR,−OCONHR)であり、Rは、C−C20、好ましくは、C−C18飽和または不飽和、直鎖または分枝鎖アルキル基である]の化合物が特に好ましい。
【0007】
式(I)の化合物は、Z基と結合している炭素原子上に不斉中心を有する。本発明の目的上、式(I)の各化合物は、R、Sラセミ混合物、および分けられたR/S異性体形態の両方として存在し得る。
【0008】
式(I)の化合物は、第4アンモニウムまたはホスホニウム誘導体(X)であり、これは常にYアニオン性基を含有する。pHに依存して、式(I)の各化合物は、無関係に、両性イオン(内部塩)として、またはYがYH形態で存在する化合物として存在し得る。かかる場合、Xは、医薬的に許容される酸と共に塩となる。式(I)は、これらの異なる可能性全てをカバーする。
【0009】
特に好ましい化合物の群は:
1)R,S−4−トリメチルアンモニウム−3−(ノニルカルバモイル)−アミノブチレート;
2)R,S−4−キヌクリジニウム−3−(テトラデシルオキシカルボニル)−オキシブチレート;
3)R,S−4−トリメチルアンモニウム−3−(ノニルカルバモイル)−オキシブチレート;
4)R,S−4−トリメチルアンモニウム−3−(ノニルオキシカルボニル)−オキシ酪酸クロライド;
5)R,S−4−トリメチルホスホニウム−3−(ノニルカルバモイル)−オキシブチレート;
6)R,S−4−トリメチルアンモニウム−3−(オクチルオキシカルボニル)−アルニノブチレート;
7)R,S−4−トリメチルアンモニウム−3−(ノニルオキシカルボニル)−アミノブチレート;
8)R,S−4−トリメチルアンモニウム−3−オクチルオキシブチレート;
9)R,S−4−トリメチルアンモニウム−3−テトラデシルオキシブチレート;
10)R,S−1−グアニジニウム−2−テトラデシルオキシ−3−(テトラゾレート5−イル)−プロパン;
11)R,S−1−トリメチルアンモニウム−2−テトラデシルオキシ−3−(テトラゾレート5−イル)−プロパン;
12)一塩基性R,S−3−キヌクリジニウム−2−(テトラデシルオキシカルボニル)−オキシ−1−プロパンホスホネート;
13)一塩基性R,S−3−トリメチルアンモニウム−2−(ノニルアミノカルボニル)−オキシ−1−プロパンホスホネート;
14)R,S−3−ピリジニウム−2−(ノニルアミノカルボニル)−オキシ−1プロパンホスホン酸クロライド;
15)R−4−トリメチルアンモニウム−3−(テトラデシルカルバモイル)−アミノブチレート;
16)R−4−トリメチルアンモニウム−3−(ウンデシルカルバモイル)−アミノブチレート;
17)R−4−トリメチルアンモニウム−3−(ヘプチルカルバモイル)−アミノブチレート;
18)R,S−4−トリメチルアンモニウム−3−(ノニルチオカルバモイル)−アミノブチレート;
19)R−4−トリメチルアンモニウム−3−(ノニルカルバモイル)−アミノブチレート;
20)S−4−トリメチルアンモニウム−3−(ノニルカルバモイル)−アミノブチレート;
21)S−4−トリメチルアンモニウム−3−(テトラデシルカルバモイル)−アミノブチレート;
22)R,S−4−トリメチルアンモニウム−3−テトラデシルアミノブチレート;
23)R,S−4−トリメチルアンモニウム−3−オクチルアミノブチレート;
24)R,S−4−トリメチルアンモニウム−3−(デカンスルホニル)アミノブチレート;
25)R,S−4−トリメチルアンモニウム−3−(ノニルスルファモイル)アミノブチレート;
26)S−4−トリメチルアンモニウム−3−(ドデカンスルホニル)アミノブチレート;
27)R−4−トリメチルアンモニウム−3−(ドデカンスルホニル)アミノブチレート;
28)S−4−トリメチルアンモニウム−3−(ウンデシルスルファモイル)アミノブチレート;
29)R−4−トリメチルアンモニウム−3−(ウンデシルスルファモイル)アミノブチレート;
30)R−4−トリメチルアンモニウム−3−(ドデシルカルバモイル)アミノブチレート;
31)R−4−トリメチルアンモニウム−3−(10−フェノキシデシルカルバモイル)アミノブチレート;
32)R−4−トリメチルアンモニウム−3−(trans−b−スチレンスルホニル)アミノブチレート
を含む。
【0010】
式(I)の化合物の製造は、番号WO99/59957の下、同じ出願人名で公開された国際特許出願(引用により本明細書に取り込まれる)において開示されている。そこでは、糖尿病のような高血糖状態、およびそれと関連する病理を処置するための化合物(I)の使用が開示される。化合物(I)の治療活性は、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ(CPT)阻害効果に起因するものである。
【0011】
異なる腫瘍細胞株におけるインビトロの研究において、驚くべきことに、化合物(I)は、顕著な抗増殖効果および殺腫瘍効果を発揮し、これはCPT阻害から独立したものであることが見出された。これは、既知のCPT−1阻害剤であるエトモキシルが、化合物(I)について用いられたのと同じ実験条件下でアッセイされた場合、抗増殖活性および殺腫瘍活性のいずれも示さないという知見により、確かめられた。インビトロの結果は、次に、腫瘍の動物モデルを用いてインビボで確かめられた。これらの条件下においても、少ない投薬量の化合物(I)が、腫瘍塊の低減において有効であり、関連する副作用がないことが示された。
【0012】
従って、本発明の対象は、抗腫瘍薬の製造のための化合物(I)の使用である。
【0013】
次の腫瘍:白血病、癌腫、リンパ腫、肉腫、乳癌、肺癌、頭頚部癌、直腸癌、および膀胱癌、特に、白血病および肝細胞癌が本発明により好ましく処置される。治療上の処置は、種々のステージの腫瘍成長、増殖、および伝播において適用され得る。
【0014】
治療における使用のため、化合物(I)は、医薬上許容されるビークルおよび賦形剤と共に製剤されてもよい。本発明による組成物は、経口投与、非経腸投与、直腸投与、経皮投与、および病巣内投与に適している。経口形態および非経腸形態の例は、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、粉剤、シロップ剤、および液剤、および懸濁剤それぞれを含む。
【0015】
化合物(I)の投薬量は、用いられる具体的な生成物、投与経路、および疾患の進行度に依存じて変わり得る。活性物質の血漿濃度0.1から0.50μM、好ましくは、0.5から30μMを生じる投薬量が一般的には耐容される。
【0016】
本発明のさらなる態様は、腫瘍患者に同時、別々、または連続して投与するための、化合物(I)を異なる抗腫瘍剤と組合せて含有する医薬製剤に関する。化合物(I)と組み合わせて用いられ得る抗腫瘍剤の例は、細胞障害性または細胞増殖抑制性化合物、代謝拮抗物質、ホルモンアンタゴニスト、アルカロイド、抗生物質、特に、アントラサイクリン、アルキル化剤、ペプチド、生物学的応答を修飾する因子、サイトカインを含む。
【0017】
活性物質の具体的な組合せ、それらの投薬量、または投与経路の選択は、腫瘍の種類、薬理学的処置に対する腫瘍の抵抗性、処置自体に対する患者の寛容性、およびケースバイケースの原則により評価されるであろう種々の変数に依存する。
【0018】
次の非限定的な実施例により、本発明はさらに詳細に説明される。
実施例1
ヒト肝細胞癌細胞(HepG2)における化合物R−4−トリメチルアンモニウム−3−(テトラデシルカルバモイル)−アミノブチレート(ST1326)のインビトロでの増殖阻害効果、およびアポトーシス促進活性
腫瘍細胞株HepG2は、ATCC(American Type Cell Culture - Mannas, Virginia、受託番号HB−8065)より提供され、続いて、本発明者等の研究室で発展させた。細胞を、完全培地、すなわち、10% FCS、1mM ピルピン酸ナトリウム、2mM L−グルタミン、0.1mM 非必須アミノ酸、および抗生物質(ペニシリン/ストレプトマイシン)を添加したMEMにて培養した。培地、培養産物、および試薬は、Hyclone-Celbio(Milan, Italy)から購入した。細胞を直径60mmのペトリディッシュに播種した。播種後、細胞を24時間成長させてから処置を行った。
【0019】
この実験において、漸増量の試験化合物を、セミコンフルエント(hemiconfluent)なHepG2細胞に添加し(Kogure et al., Cancer Chemother. Pharmacol., 2003; DOI. 10.1007/s);細胞播種後の異なる時間で、抗増殖性効果およびアポトーシス促進効果を測定した。
【0020】
実験の設定は、ある場合では、細胞培養物を調製した時点で試験化合物を添加するものであり、他の場合では、適当には、条件培地を除去し、次に、細胞を新しい(完全)培地で洗浄した後、培養物を化合物に24時間毎に曝露させるものであった。生きている細胞を視覚化する生体染色色素で適当に希釈した後、ビュルケルチャンバーにて細胞をカウントした。具体的には、トリパンブルー排除法を、細胞カウントのため0、24、および48時間の処置で用いた。各実験について少なくとも10細胞カウントを行い、かつ各処置を4重で行った。
【0021】
さらなる分析は、生存細胞のマーカーとしてヨウ化プロピジウムを利用したサイトフルオロメトリーに関するものである。殺腫瘍効果がCPT−1阻害または関連する新規メカニズムに起因するものであるかどうかを示すために、試験化合物をCTP阻害剤であるエトモキシル対してアッセイした。有意なデータを図にて示す。
【0022】
驚くべきことに、結果は、化合物ST1326のみが、有意な殺腫瘍活性と関連するインビトロの抗増殖効果を発揮し得ることを示す。
【0023】
加えて、細胞生存についてのアッセイを、フローサイトフルオロメトリー技術を用いて行った。表1で報告するデータは、1回(時間0)のみ処置した細胞に言及するものであり;細胞死亡率(24時間、48時間、および72時間)を、得られた事象10,000における百分率(平均±標準偏差)として計算した。
【0024】
表1
【表1】

【0025】
さらなる実験において、適当には、上清を除去し、次に、培養物を完全培地で洗浄した後、試験物質を上述の通り24時間毎に添加した。この場合では、試験物質の連続する添加による細胞生存に対する相加効果が示された(表2)。対照では、上清を排除し、完全培地のみを培養物に添加した。細胞死亡率(48時間および72時間におけるもの)を、得られた事象10,000における百分率(平均±標準偏差)として計算した。
【0026】
表2
【表2】

:上清除去後、試験物質を2回添加
**:上清除去後、試験物質を3回添加
【0027】
実施例2
急性白血病T細胞(Jurkat)における化合物ST1326のインビトロでのアポトーシス促進活性
腫瘍細胞株Jurkatは、ATCC(American Type Cell Culture - Mannas, Virginia、受託番号TIB−152)から供給され、続いて、本発明者らの研究室で発展させた。細胞を、10% FCS(ウシ胎児血清)、1mM ピルビン酸ナトリウム、2mM L−グルタミン、4.5g/L グルコース、10mM HEPES、および抗生物質(ペニシリン/ストレプトマイシン)を添加したRPMI 1640含有完全培地にて培養した。培地、培養産物、および試薬は、Hyclone-Celbio(Milan, Italy)から購入した。細胞を25mm フラスコに播種した。播種後、細胞を24時間成長させてから処置した。
【0028】
漸増量の試験物質をセミコンフルエントなJurkat細胞に添加して、実験を行い;アポトーシス促進効果を異なる時間点で培養調製物から決定した。
【0029】
実験の設定は、細胞培養の開始時でのみ試験化合物を添加し、所定の時間で効果を決定するものであった。ヨウ化プロピジウムフローサイトフルオロメトリー技術のみを用いて、細胞死亡率についてのデータを得た。それらの細胞は培養物中に懸濁されて生きているとうい事実により、これらのアッセイを行うのは極めて容易になる。
【0030】
表3は、Jurkat細胞が、HepG2細胞より化合物の殺腫瘍活性に対して極めて感受性があることを示す。この理由のため、処置のちょうど2時間後、および24、48、および72時間後に、細胞死亡率を決定した。
【0031】
得られた標準的事象10,000における百分率として、死亡率を計算した。結果は、それぞれの単独の実験の全測定値が非常に低い偏差を有し、ほぼ正確に重複するものであるので、5回のサイトフルオロメトリーの測定値の平均値を標準偏差なしで次の表にて報告する。
【0032】
表3
【表3】

【0033】
加えて、正常PBMCにおける試験分子による毒性の導入を排除するために、生死判別試験をまた、健常個体より採取し、試験化合物と接触させたリンパ球で行った。
【0034】
表4にて報告する結果は、72時間後の試験化合物が、Jurkat細胞を殺傷できることが示されたのと同じ用量で、PBMCに対して毒性がないことを示す。
【0035】
表4
【表4】

【0036】
実施例3
ヒト肝細胞癌細胞(HepG2)におけるドキソルビシンの抗腫瘍効果に対する次善用量のST1326化合物のインビトロでのアンタゴニスト活性
腫瘍細胞株HepG2は、ATCC(American Type Cell Culture - Mannas, Virginia、番号HB−8065)から提供され、続いて、本発明者らの研究室で発展させた。細胞を、10% FCS(ウシ胎児血清)、1mM ピルビン酸ナトリウム、2mM L−グルタミン、0.1mM 非必須アミノ酸、および抗生物質(ペニシリン/ストレプトマイシン)を添加したMEM含有完全培地にて培養した。培地、培養産物、および試薬は、Hyclone-Celbio(Milan, Italy)から購入した。実験の設定は、化合物のアゴニスト作用を決定するために、ST1326、およびドキソルビシンのような既知の抗腫瘍薬(それに対して、HepG2細胞は高い抵抗性を示す)を使用するものであった。事前の実験において、殺腫瘍効果(0.1μM;細胞死亡率〜50%)を部分的にのみ誘導可能であることが示された濃度で、ST化合物を用いた。この実験において、次の化合物:
−0.25、0.5、5.0μg/mL ドキソルビシン;
−0.25μg/mL ドキソルビシンと組み合わせた0.1μM ST
を、96ウェルプレート中セミコンフルエントなHepG2細胞に添加した。
【0037】
24時間インキュベーションした後、異なる濃度のドキソルビシンおよびST/ドキソルビシン組合せを含有する培地を除去し、細胞を完全培地で洗浄した。処置の3日後、試験化合物の抗腫瘍効果を、同じ時間完全培地にてインキュベーションした対照細胞と比較して、決定した。
【0038】
表5は、最高用量のドキソルビシン(5.0μg/mL)のみが、有意な細胞死亡率を誘導できることを示す。それぞれ、濃度0.1μMおよび0.25μg/mLのSTおよびドキソルビシンの添加により、それらの組合せのアゴニスト殺腫瘍効果が示された。細胞死亡率を、得られた事象10,000における百分率(平均±標準偏差)として計算した。
【0039】
表5
【表5】

【0040】
実施例4
吉田腫瘍を有するラットにおけるST1326化合物のインビボ抗腫瘍活性
体重190〜200gのオスのウィスター系ラット(Morini s.r.l.)を、22±2℃、12時間の明暗サイクルで維持し、水および餌(標準的飼料)に自由にアクセスできるようにした。いく匹かのラットに、AH−130吉田腹水肝癌由来の細胞10×10個を腹腔内に接種した(Llovera et al., Int. J. Cancer 61:138-41 (1995); kind gift from Prof. JM Argiles)。接種の5〜7日後、ラットは、腹部の肉眼的分析により検出可能な腹水をきたした。穿刺により、平均15〜20×10/mlの腫瘍細胞を含有する約80〜100mlの腹水の存在が明らかとなり、そしてそれは時々出血性を呈した。
【0041】
実験のプロトコールは、腹水誘導の7日後、15匹の動物(処置群)にST(25mg/Kg 腹腔内)含有緩衝食塩水2mlを投与し、一方、別の15匹の動物(対照群)に緩衝食塩水のみを投与するものであった。別の日に1週間、各動物計4回まで同じ処置を行った。予備研究(ここで、腹腔内投与の5時間後に、STの血漿濃度が6.1μMとなった)に基づき、投薬量を選択した。続けて3週間(追跡調査)、腹水の侵出、接種部位における皮下新生物塊の存在、および死亡率を調べながら、動物を観察した。
【0042】
最も興味深い知見は、処置動物は3週間の追加期間中生きており、一方対照ラットは第1週と第2週の間で死亡したことであった。
【0043】
対照動物の検視は、腹腔における腫瘍細胞含有腹水の存在、腸のパイエル板の過形成、関連する腹部器官における腫瘍病巣の不存、および最終的には腫瘍病巣の発生が、新生細胞の接種部位における筋膜と関連することを示した。処置ラットを第3週の終わりに屠殺し、それらの検視を行ったところ、腹腔内の変化、または腹水または接種部位における腫瘍細胞の存在はいずれも示されなかった。
【0044】
実験データ/結果の概要を次の表6および表7に示す。
表6
【表6】

【0045】
表7
【表7】

【0046】
経口および血管内投与により得られた実験結果により、試験化合物の異なる投薬量(経口経路:100mg/Kg;静脈内:2mg/Kg)での処置の有効性が示された。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】細胞生存に関するデータを、対照培養物由来の生存細胞数(=100%)についての百分率として表す(E=エトモキシル;ST1326=試験化合物)。10μM未満のST存在下で培養した細胞数の顕著な低減がちょうど24時間後に観察された。同じ濃度で、エトモキシルは効果が無かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】

[式中、Xは、N+(R,R,R)およびP+(R,R,R)(R、R、およびRは、同じであるか、または異なっており、水素、およびC−C直鎖または分枝鎖アルキル基、−CH=NH(NH)、−NH、−OHからなる群より選択されるか;あるいは2個以上のR、R、およびRが、結合している窒素原子と一体となって、飽和または不飽和、単環式または二環式複素環系を形成する;但し、R、R、およびRの少なくとも1個は水素ではない)からなる群より選択され;
Zは、
−OR
−OCOOR
−OCONHR
−OCSNHR
−OCSOR
−NHR
−NHCOR
−NHCSR
−NHCOOR
−NHCSOR
−NHCONHR
−NHCSNHR
−NHSOR
−NHSONHR
−NHSO
−NHSONHR
−SR
(Rは、C−C20飽和または不飽和、直鎖または分枝鎖アルキル基である)から選択され;
は、−COO−、POH−、−OPO3H−、テトラゾレート5−イルからなる群より選択される]
の化合物、それらの塩、光学異性体、およびラセミ混合物の、抗腫瘍薬を製造するための使用。
【請求項2】
化合物が、式(I)[式中、互いに独立して、
Xは、トリメチルアンモニウム、または基N+(R,R,R)(2個以上のR、R、およびRは、結合している窒素原子と一体となって、複素環系を形成し、そしてそれはモルホリニウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、キノリニウム、およびキヌクリジニウムから選択される)であり;
は、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、およびエイコシルから選択され;
Zは、ウレイド(−NHCONHR)またはカルバメート(−NHCOOR,−OCONHR)基である]のものである、請求項1記載の使用。
【請求項3】
化合物が、
R,S−4−トリメチルアンモニウム−3−(ノニルカルバモイル)−アミノブチレート;
R,S−4−キヌクリジニウム−3−(テトラデシルオキシカルボニル)−オキシブチレート;
R,S−4−トリメチルアンモニウム−3−(ノニルカルバモイル)−オキシブチレート;
R,S−4−トリメチルアンモニウム−3−(ノニルオキシカルボニル)−オキシ酪酸クロライド;
R,S−4−トリメチルホスホニウム−3−(ノニルカルバモイル)−オキシブチレート;
R,S−4−トリメチルアンモニウム−3−(オクチルオキシカルボニル)−アルニノブチレート;
R,S−4−トリメチルアンモニウム−3−(ノニルオキシカルボニル)−アミノブチレート;
R,S−4−トリメチルアンモニウム−3−オクチルオキシブチレート;
R,S−4−トリメチルアンモニウム−3−テトラデシルオキシブチレート;
R,S−1−グアニジニウム−2−テトラデシルオキシ−3−(テトラゾレート5−イル)−プロパン;
R,S−1−トリメチルアンモニウム−2−テトラデシルオキシ−3−(テトラゾレート5−イル)−プロパン;
一塩基性R,S−3−キヌクリジニウム−2−(テトラデシルオキシカルボニル)−オキシ−1−プロパンホスホネート;
一塩基性R,S−3−トリメチルアンモニウム−2−(ノニルアミノカルボニル)−オキシ−1−プロパンホスホネート;
R,S−3−ピリジニウム−2−(ノニルアミノカルボニル)−オキシ−1−プロパンホスホン酸クロライド;
R−4−トリメチルアンモニウム−3−(テトラデシルカルバモイル)−アミノブチレート;
R−4−トリメチルアンモニウム−3−(ウンデシルカルバモイル)−アミノブチレート;
R−4−トリメチルアンモニウム−3−(ヘプチルカルバモイル)−アミノブチレート;
R,S−4−トリメチルアンモニウム−3−(ノニルチオカルバモイル)−アミノブチレート;
R−4−トリメチルアンモニウム−3−(ノニルカルバモイル)−アミノブチレート;
S−4−トリメチルアンモニウム−3−(ノニルカルバモイル)−アミノブチレート;
S−4−トリメチルアンモニウム−3−(テトラデシルカルバモイル)−アミノブチレート;
R,S−4−トリメチルアンモニウム−3−テトラデシルアミノブチレート;
R,S−4−トリメチルアンモニウム−3−オクチルアミノブチレート;
R,S−4−トリメチルアンモニウム−3−(デカンスルホニル)アミノブチレート;
R,S−4−トリメチルアンモニウム−3−(ノニルスルファモイル)アミノブチレート;
S−4−トリメチルアンモニウム−3−(ドデカンスルホニル)アミノブチレート;
R−4−トリメチルアンモニウム−3−(ドデカンスルホニル)アミノブチレート;
S−4−トリメチルアンモニウム−3−(ウンデシルスルファモイル)アミノブチレート;
R−4−トリメチルアンモニウム−3−(ウンデシルスルファモイル)アミノブチレート;
R−4−トリメチルアンモニウム−3−(ドデシルカルバモイル)アミノブチレート;
R−4−トリメチルアンモニウム−3−(10−フェノキシデシルカルバモイル)アミノブチレート;
R−4−トリメチルアンモニウム−3−(trans−b−スチレンスルホニル)アミノブチレート
からなる群より選択されるものである、請求項2記載の使用。
【請求項4】
化合物がR−4−トリメチルアンモニウム−3−(テトラデシルカルバモイル)−アミノブチレートである、請求項3記載の使用。
【請求項5】
白血病および肝細胞癌を処置するための抗腫瘍薬の製造のための、請求項1から4記載の化合物(I)の使用。
【請求項6】
腫瘍患者に同時、別々、または連続して投与するため、請求項1から4のいずれか1項記載の化合物を、細胞障害性または細胞増殖抑制性化合物、代謝拮抗物質、ホルモンアンタゴニスト、アルカロイド、抗生物質、特に、アントラサイクリン、アルキル化剤、ペプチド、生物学的応答を修飾する因子、サイトカインから選択される抗腫瘍剤と組み合わせて含有する、治療用製剤。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか1項記載の化合物とアントラサイクリンの組合せを含有するものである、請求項6記載の製剤。
【請求項8】
アントラサイクリンがドキソルビシンである、請求項7記載の製剤。

【図1】
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【公表番号】特表2007−522165(P2007−522165A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−552526(P2006−552526)
【出願日】平成17年2月8日(2005.2.8)
【国際出願番号】PCT/EP2005/001257
【国際公開番号】WO2005/077354
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(306020368)デフィアンテ・ファルマセウティカ・ソシエダデ・ポル・クオタス・デ・レスポンサビリダデ・リミターダ (4)
【氏名又は名称原語表記】DEFIANTE Farmaceutica Lda
【Fターム(参考)】