説明

抗菌コンクリート

【課題】抗菌性を有するとともに、耐久性及び断熱性に優れるコンクリートを提供する。
【解決手段】コンクリートにセラミックス製骨材を配合し、前記セラミックス製骨材に、アルカリ性殺菌剤を含浸するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、抗菌性を有するとともに、耐久性及び断熱性に優れたコンクリートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時、牛、豚、鶏等の畜産物は輸入品との厳しい価格競争にさらされており、コストを削減しつつ生産の効率化を図り、低価格化を実現することにより競争力を強化することが至上命題とされている。このため、衛生管理の省力化を図る目的で、安易に薬剤に頼る風潮が横行している。しかしながら、このような薬剤を多用した畜産物は、食品の安全性に対する消費者の意識の高まりとともに市場に受け入れられにくくなってきている。
【0003】
一般的に、家畜の畜舎の床面は掃除が容易な鉄筋コンクリートにより形成されている(特許文献1)。コンクリートの結合材であるセメントはアルカリ性であるので、鉄筋コンクリート中の鉄筋は錆から守られているが、家畜の糞・尿が床面に存在する細菌により酸化されると、セメントが中和され、鉄筋が錆び易くなる。更に鉄筋コンクリート中の鉄筋は錆びると膨張してコンクリートにクラックを生ぜしめるので、更に鉄筋が酸化し易くなるという悪循環に陥る。
【0004】
従来、このような畜舎の床面の清掃としては、洗剤や逆性石鹸による洗浄と石灰散布が行われてきたが、衛生面からも、また、コンクリートの耐久性の面からも、より抜本的な対策が求められている。
【0005】
また、防疫の観点から外部との接触を遮断した閉鎖型畜舎では、温度調節が必要であるが、このコストを削減することも求められている。
【特許文献1】特開2003−199452
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、抗菌性を有するとともに、耐久性及び断熱性に優れるコンクリートを提供すべく図ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る抗菌コンクリートは、セラミックス製骨材を含有しているコンクリートであって、前記セラミックス製骨材は、アルカリ性殺菌剤が含浸してあることを特徴とする。
【0008】
一般的にコンクリートは、約30%のセメント、約60%の骨材及びその他の添加剤とから構成されているが、ポルトランドセメント等のセメントは強アルカリ性であるので、それ自体抗菌性を有する。本発明では、コンクリートの主成分である骨材に殺菌剤が含浸されており、また、セラミックス製骨材は多孔質であり、砂や砂利等の一般的な骨材の含水率が約2%であるのに対して、前記セラミックス製骨材の含水率は約19%であるので、多量の水溶性殺菌剤をコンクリートに保有させることができる。このため、本発明によれば、前記セラミックス製骨材を使用することにより、コンクリート全体に強力な抗菌性を付与することができる。
【0009】
更に前記セラミックス製骨材は、高温での熱処理によって焼き固められ、この過程で無菌化されたものであるので、本発明によれば、このようなセラミックス製骨材を使用することにより、コンクリートへの細菌の混入を低減することもできる。
【0010】
また本発明によれば、セメントだけでなくコンクリートの主成分である骨材もアルカリ性となるため、コンクリート全体を均一にアルカリ性とすることができ、鉄筋の錆及びそれに伴うコンクリートのクラックを有効に防止することができ、コンクリートの耐久性を高めることができる。
【0011】
更に前記セラミックス製骨材は、多孔質であり、断熱性に優れたものであるので、本発明によれば、このような骨材を用いることにより、コンクリートの断熱性を高めることができる。
【発明の効果】
【0012】
このような本発明に係る抗菌コンクリートによれば、コンクリート全体に強力な抗菌性を付与することができ、かつ、コンクリート全体を均一にアルカリ性とすることができる。このため、例えば本発明に係る抗菌コンクリートを畜舎の建材として使用した場合、畜舎の衛生環境を改善し、薬剤投与に依存しなくとも、畜産物の生産性向上と安全性とを両立させることができるとともに、畜舎の床面の劣化を防ぎ、その耐久性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明を更に詳述する。前記セラミックス製骨材としては特に限定されないが、例えば、瓦を粉砕してなるものを使用することができる。これまで日本瓦は、高温多湿な気候のわが国で防水・断熱材として欠かせない建築材料であったが、近年の住宅のプレハブ化や建築技術・材料の変化によって、その使用量が減少している。更に、廃棄された日本瓦は産業廃棄物として埋め立て処分されており、年々増える処分量に各自治体とも苦慮している。本発明によれば、このような優れた機能を有する瓦の新たな用途を提供することもできる。なお、本発明者らが調べたところ、瓦の熱伝導率は0.40±0.1W/(m・K)であり極めて高い断熱性を有しているのに対して、セメントコンクリートの熱伝導率は1.6W/(m・K)、セメントモルタルの熱伝導率は1.5W/(m・K)であり、いずれも断熱性に乏しい建築材料であった。
【0014】
前記セラミックス製骨材として瓦を粉砕してなるものを使用する場合は、粒径が30mm以下のものが好ましい。
【0015】
前記アルカリ性殺菌剤としては特に限定されず、例えば、次亜塩素酸ナトリウムや水酸化ナトリウム等を使用することができる。次亜塩素酸ナトリウムや水酸化ナトリウムを前記セラミックス製骨材に含浸させる場合は、水溶液として含浸させる。
【0016】
前記セラミックス製骨材には、更に耐アルカリ性菌が付着していてもよい。前記セラミックス製骨材に耐アルカリ性菌が付着していると、アルカリ性殺菌剤とともにコンクリートに抗菌性を付与することができ、より強い抗菌性をコンクリートに付与することができる。
【0017】
本発明に係る抗菌コンクリートは、水、ポルトランドセメント等のセメント、前記セラミックス製骨材及び前記アルカリ性殺菌剤、更に前記耐アルカリ性菌に加えて、例えば、起泡剤、AE剤、減水剤、凝結・硬化調節剤、防錆剤、繊維質補強材、ポリマー混和剤、シリカ質混和材料等のコンクリート添加剤や、砂・砂利等の他の骨材を適宜必要に応じて含有してもよい。例えば、高い断熱性が要求される場合は、起泡剤を含有していることが好ましい。
【0018】
本発明に係る抗菌コンクリートの各成分の配合比は、用途に応じて適宜決定されればよく、特に限定されない。
【0019】
本発明に係る抗菌コンクリートの用途としては特に限定されないが、例えば、畜舎の床材として好適に使用できる。近時の畜産業においては、生産性向上のために、家畜への薬剤の大量投与が横行しており、消費者からは畜産物の安全性が危惧されていたが、本発明に係る抗菌コンクリートを畜舎の床材として使用することにより、家畜への細菌感染を予防することができるので、薬剤の投与量を減らすことができ、畜産物の生産性向上と安全性との両立を図ることができる。また、畜舎への病原菌の浸入を防ぐために、畜舎内部が外部と遮断された構造をとる閉鎖型畜舎では、温度調節に多大なコストがかかっているが、断熱性に優れた本発明に係る抗菌コンクリートを畜舎の床材として用いることにより、温度調節のコストを低減することができる。
【0020】
本発明に係る抗菌コンクリートを畜舎の床材として使用する場合、含水率は14〜20%であることが好ましく、17%程度であることがより好ましい。
【0021】
本発明に係る抗菌コンクリートは更に畜舎の柱材の根巻きコンクリートや食品工場の建材として使用してもよい。
【0022】
本発明に係る抗菌コンクリートの製造方法としては特に限定されず、常法に従い製造すればよく、例えば、水、セメント、及び、必要に応じて起泡剤等のコンクリート添加剤を混合してセメントミルクを調製し、当該セメントミルクに、前記アルカリ性殺菌剤を含浸させ、更に必要に応じて前記耐アルカリ性菌を付置させた前記セラミックス製骨材を加えて、施工箇所に流し込むことにより本発明に係る抗菌コンクリートを製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明によって、抗菌性とともに、耐久性及び断熱性に優れ、畜舎の建材として好適なコンクリートを提供することができる。更に、セラミックス製骨材として瓦の粉砕物を使用することにより廃棄物として処分されている日本瓦の新たな用途も提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス製骨材を含有しているコンクリートであって、
前記セラミックス製骨材は、アルカリ性殺菌剤が含浸してあることを特徴とする抗菌コンクリート。
【請求項2】
前記セラミックス製骨材は、耐アルカリ性菌が付着していることを特徴とする請求項1記載の抗菌コンクリート。
【請求項3】
前記セラミックス製骨材は、瓦を粉砕してなるものである請求項1又は2記載の抗菌コンクリート。
【請求項4】
前記アルカリ性殺菌剤は、次亜塩素酸ナトリウム又は水酸化ナトリウムである請求項1、2又は3記載の抗菌コンクリート。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4記載の抗菌コンクリートからなる床面を備えていることを特徴とする畜舎。


【公開番号】特開2008−214160(P2008−214160A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−56616(P2007−56616)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(507075141)合同会社地域発展研究センター (2)
【Fターム(参考)】