説明

抗菌ペプチド多量体

本発明は、例えばディフェンシンペプチドなどの抗菌ペプチドの多量体に関する。ディフェンシンペプチドの多量体は、抗菌活性を有し、抗菌組成物、医薬組成物、点眼用組成物、コンタクトレンズ用液剤、医療器具をコーティングするための組成物などに製剤化することができる。また本発明は、宿主内を含めて、微生物全般の増殖を阻害および/または抑制するためのペプチド多量体(例えばディフェンシンペプチドの多量体)の使用に関する。さらに本発明は、ディフェンシン(例えばhBD3)由来ペプチドの多量体を製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性を有するペプチドの新規多量体に関する。また本発明は、前記多量体の製造方法に関する。本発明は、広範囲の微生物の増殖を阻害するための、前記多量体の使用に関する。さらに本発明は、前記ペプチドを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ディフェンシンは、カチオン性の抗菌ペプチドで、自然免疫系の構成要素である。ヒトでは、アルファディフェンシンは好中球または消化管のパネート細胞によって、ベータディフェンシンは上皮細胞によって産生される。ディフェンシンは、グラム陰性菌、グラム陽性菌、一部の真菌類やエンベロープウイルスなどの広範囲の微生物に対して抗菌性を有する。
【0003】
この抗菌性の正確なメカニズムは完全にはわかっていないが、このペプチドの持つ疎水性や正味の正電荷が、微生物の細胞壁や細胞膜の相互作用やそれらの破壊に重要であると思われる。
【0004】
複数の研究から、細菌の細胞膜において、全長型のディフェンシンが非共有結合の形態でダイマーを形成する可能性が示唆されている(Hoover et al.,2000;Hoover et al.,2001;Schibili et al.,2002)。またある研究では、ディフェンシンの二量体化が抗菌性に影響を与える可能性が示唆されている(Campopiano et al.,2004)。しかしながら、このダイマーの特性についての詳細な検討や解析は行われていない。
【0005】
抗生物質に対する耐性の出現は、抗生物質の開発における障害の1つである。ディフェンシンの抗菌活性は完全には理解されていないが、現在考えられるディフェンシンの作用機序からすると、耐性が現れるまでに相当時間がかかるか、または極めて弱い耐性しか現れない可能性が示唆されており、ディフェンシンの抗菌剤としての使用は有望であると言える。しかし、ディフェンシンは、哺乳動物細胞などの宿主細胞に対して毒性を示すことも知られているため、抗菌剤としての適用は制限される可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、抗菌活性が高くかつ宿主細胞に対する毒性が低い、ディフェンシンの新たなペプチド誘導体の開発が切望されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、hBD3由来の単離多量体(配列番号1)に関する。
hBD3(配列番号1)
GIINTLQKYYCRVRGGRCAVLSCLPKEEQIGKCSTRGRKCCRRKK
【0008】
第1の態様において、本発明は、式(U)(式中、Uは、配列番号2を含むペプチド、またはそのフラグメントもしくは変異体であり、nは2以上である)で表されるディフェンシンペプチドの単離多量体に関する。
配列番号2
GIINTLQKYYXRVRGGRXAVLSXLPKEEQIGKXSTRGRKXXRRZZ
Xは任意のアミノ酸を包含し;Zは任意のアミノ酸を包含するか、または存在しなくてもよい。例えば、Zとしては、リジン、オルニチンまたはアルギニンが挙げられるが、これらに限定されない。具体的には、Zはリジンであってよい。
【0009】
別の態様において、本発明は、ペプチドUを少なくとも2つ含む単離多量体に関する。ただし、前記ペプチドUは、配列番号2またはそのフラグメントもしくは変異体を含む。
前記多量体には、ペプチドUの繰り返しが存在する。具体的には、繰り返し単位であるペプチドU同士は共有結合により連結している。さらに、ペプチドU同士は、少なくとも1つのアミノ酸Bを介して連結していてもよい。Bはそれぞれ、アミン基を少なくとも2つ有するアミノ酸であってよい。例えば、Bとしては、リジン、オルニチンまたはアルギニンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0010】
本発明の任意の多量体における繰り返し単位、すなわちペプチドUは、WO2007/126392に記載のいずれのペプチドであってもよい。
ペプチドUとしては、配列番号2に由来するペプチドフラグメントなどが挙げられる。このフラグメントは、配列番号2に由来するものであれば、いかなる長さのフラグメントであってもよい。具体的には、ペプチドUは、配列番号3またはそのフラグメントもしくは変異体を含んでもよい。
配列番号3
GIINTLQKYYXRVRGGRXAVLSXLPKEEQIGKXSTRGRKXXRR
Xは任意のアミノ酸を包含する。
多量体のペプチドUは、+1〜+11の電荷を有してもよい。
【0011】
別の態様において、本発明は、式(U)(式中、Uは、配列番号3またはそのフラグメントもしくは変異体を含み、Bはそれぞれ、アミン基を少なくとも2つ有するアミノ酸残基を少なくとも1つ包含し、Zは任意のアミノ酸を包含し、nは2以上であり、mは1以上であり、jは0以上である)で表される単離多量体に関する。Bは、アミン基を少なくとも2つ有するアミノ酸を包含してもよい。具体的には、Bとしては、リジン、オルニチンまたはアルギニンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0012】
本発明の一態様において、(U)のBとZはいずれもリジン(K)を包含してもよい。このとき、上記の式は(U)で表される。また、さらなる態様において、mがn−1と等しくてもよく、jが1であってもよい。このとき、上記の多量体の式は(U)n−1K(すなわち(UK))で表される。式(U)または(U)n−1KにおけるペプチドUは、配列番号3またはそのフラグメントもしくは変異体を含んでもよい。
【0013】
本発明の多量体は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよい。多量体(U)が直鎖状である場合、n回繰り返されるペプチドUは、配列番号2またはその任意のフラグメントもしくは変異体を含んでもよい。
分岐状の多量体、例えば多量体(U)に関しては、末端の残基Bで分岐していてもよい。
【0014】
本発明の多量体は、繰り返し単位であるペプチドUを任意の数含んでもよい。例えば、前記多量体は、繰り返し単位であるペプチドUを2〜10個、2〜20個、または2〜30個含んでもよい。さらに前記多量体は、ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、ヘキサマー、ヘプタマー、オクタマー、ノナマー、デカマーのいずれであってもよい。具体的には、nは偶数であってもよい。さらに具体的には、nは、2から始まる2の累乗倍に相当する値のいずれを包含してもよい。
【0015】
さらに、本発明の多量体の任意のアミノ酸残基は、保護基を少なくとも1つ有するアミノ酸を包含してもよい。前記保護基は、Boc、But、Fmoc、Pbfなどを包含してもよい。
【0016】
また本発明は、本発明の少なくとも1つの多量体を製造する方法に関する。
従って、本発明は、式(U)(式中、Uは、配列番号2を含むペプチド、またはそのフラグメントもしくは変異体である)で表される少なくとも1つの多量体を製造する方法であって、少なくとも2つのUを連結することを含む方法に関する。
【0017】
また、本発明の多量体は、組換えDNA技術により作製してもよい。本発明の多量体の全長またはその任意の一部を、組換えDNA技術により作製してもよい。例えば、複数のペプチドモノマーをそれぞれ組換えDNA法により作製し、これらを化学的手法により連結して多量体を形成させてもよい。
【0018】
従って、本発明は、本発明の多量体の全長またはその任意の一部をコードする単離核酸分子にも関する。前記核酸分子は、ベクターに挿入してもよい。さらに、本発明の多量体の全長または任意の一部を発現させるために、前記核酸分子または該核酸分子を含むベクターを宿主細胞に導入してもよい。
【0019】
また本発明の多量体は、化学合成法により新規合成(de novo合成)してもよい。例えば、本発明の多量体を、本発明の固相ペプチド合成(SPPS)法により合成してもよい。
【0020】
また本発明は、式:(U)(式中、Uは、配列番号3またはそのフラグメントもしくは変異体を含み、Bはそれぞれ、アミン基を少なくとも2つ有するアミノ酸を包含し、Zは任意のアミノ酸を包含し、nは2以上であり、mは1以上であり、jは0以上である)で表される少なくとも1つの多量体を製造する方法であって、
(i)少なくとも1つの固相を準備する工程;
(ii)固相に少なくとも1つの1番目のアミノ酸Zを結合させる工程;
(iii)固相に結合させた1番目のアミノ酸残基に、保護基を有するアミノ酸残基Bを少なくとも1つ連結する工程;
(iv)連結させた残基Bから保護基を除去する工程;
(v)ペプチドUの配列に従って、保護基を有するアミノ酸残基をC末端からN末端の方向へ順に連結し、連結の都度、次の連結のために保護基を除去することによって、さらなる鎖の伸長を行う工程;および
(vi)加える残基の数に応じて、アミノ酸残基の連結を終了する工程
を含む方法に関する。
【0021】
保護基を有するアミノ酸Bは、保護基で保護されている側鎖を少なくとも2つ含む。具体的には、Bとしては、リジン、オルニチンまたはアルギニンが挙げられるが、これらに限定されない。固相に結合させた1番目のアミノ酸Zとしても、同様に、リジン、オルニチンまたはアルギニンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
上記の方法を拡張し、さらなる多量体を合成してもよい。例えば、さらなる多量体を合成するために拡張した方法は、工程(iv)の後に、
(iv)(a)連結させた残基Bに、保護基を有する残基Bをさらに連結する工程;
(iv)(b)(iv)(a)で連結させた残基Bから保護基を除去する工程;および
(iv)(c)工程(iv)(a)および(iv)(b)を繰り返し行う工程、または
(iv)(d)工程(v)および(vi)に進む工程
をさらに含む。
【0023】
形成される多量体は、Bのアミン基の数に依存する。Bのアミン基の数が2である場合、例えば、Bがリジン(K)またはオルニチンである場合、上記の拡張した方法により、先の方法で合成される多量体から繰り返し単位数が2の累乗倍に増加した多量体を合成できる。この拡張した方法により、4量体、8量体、16量体、32量体、64量体などが形成される。
【0024】
Bが、3つのアミン基(2つは第一アミン基で、1つは第二アミン基である)を有するアルギニン(R)である場合、最初に形成される多量体はトリマーである。続いて形成される多量体は、アルギニンを用いる場合、繰り返し単位数が3の累乗倍に増加する。
【0025】
多量体化する過程において、Bとして、リジンまたはオルニチンとアルギニンとの組み合わせ、またはその逆の順序での組み合わせを用いてもよく、このようにして繰り返し単位数の異なる多量体を合成することができる。
【0026】
合成が終了した後、固相から多量体を遊離させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】保護基を有するリジン残基、すなわちLys(Fmoc)、ならびにV2モノマーおよびV2ダイマーの構造を示す。太字で示すリジン(K)残基は、合成時にLys(Fmoc)が組み込まれた位置を示す。
【図2】固相ペプチド合成(SPPS)法によるV2ダイマーの合成を示す。工程(i)は、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)中、20%ピペリジンを用いて保護基を除去する工程を示す。工程(ii)は、NMP(N−メチルピロリドン)中、0.5M HBTU((N−[1H−ベンゾトリアゾール−1−イル]−(ジメチルアミノ)メチレン)−N−メチルメタンアミニウム)、0.5M HOBT(N−ヒドロキシベンゾトリアゾール)、および2M DIEA(ジイソプロピルエチルアミン)を用いて行うカップリング反応の工程を示す。樹脂に結合しているリジン残基にFmoc(Lys)を結合させて、工程(i)を再度行う。次いで、各鎖にアルギニン残基(R)を2個ずつ加える。工程(iii)は、0.5M HBTU/0.5M HOBT/2M DIEAを用いて、SPPS法のサイクルを6回繰り返すことを含む鎖の伸長工程を示す。この工程により、V2ダイマーの残りのアミノ酸が組み込まれる。工程(iv)は、TFA(トリフルオロ酢酸)90%、フェノール5.0%、水1.5%、TIS(トリイソプロピルシラン)1.0%およびEDT(エタンジチオール)2.5%からなる切断試薬を用いて、樹脂からダイマーを遊離させる切断工程を示す。このダイマーには、RGRKVVRR(配列番号44)の繰り返しが存在する。
【図3】本発明のSPPS法を用いて繰り返し単位数が2の累乗倍に増加した多量体を形成できることを示す。例えばダイマー、テトラマー、オクタマーなどといったようにモノマー単位数が2の累乗倍に増加する多量体を製造することができる。イタリック太字で示すリジン(K)残基は、合成時にLys(Fmoc)が組み込まれた位置を示す。図3の配列は、RGRKVVRRKK(配列番号45)およびRGRKVVRR(配列番号46)である。
【図4】V2ダイマーがヒト結膜上皮細胞に対する毒性を持たないことを、天然のhBD3と比較して示すグラフである。この結果は、独立で行った4回の試験により得られたものであり、各データポイントは平均と標準偏差を示す。X軸はペプチド濃度(μg/ml)を示し、Y軸は細胞の生存率(%)を示す。
【図5】野生型hBD3とそのC末端ペプチドのウサギ赤血球に対する溶血作用を示す。
【図6】野生型hBFD3とそのC末端ペプチドのヒト結膜上皮細胞に対する細胞毒性作用を示す。
【図7】ヘテロダイマーの製造方法の一例を示す。図7の配列は、RGRKVVRR(配列番号44)およびRGRKVVRRVV(配列番号46)である。
【図8】ヘテロテトラマーの製造方法の一例を示す。図8の配列は、RRVVKRGRK(配列番号58) RGRKVVRR(配列番号44)およびRGRKVVRRVV(配列番号46)である。
【図9】ホモテトラマーの製造方法の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
定義
ペプチド配列中または式中にXが存在する場合、Xは任意のアミノ酸を示す。任意のアミノ酸には、保護基を有するシステイン残基が含まれ、例えばC(Acm)、C(But)、C(Cam)、C(t−Buthio)、C(Bzl)、C(4−MeO−Bzl)、C(Mmt)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
ペプチドまたは多量体の変異体とは、多量体のペプチド配列が変異したものを意味し、このペプチド配列においては、1以上のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されていてもよい。この置換は、通常、類似の特性を有するアミノ酸による保存的置換である。この変異体は、通常、+1〜+11の正味電荷を保持しており、通常、活性を有し、十分な抗菌性と低い細胞毒性を示す。
【0030】
保護基を有するアミノ酸とは、反応基の化学反応を抑制および/または阻止するために、1以上の反応基が不活性分子で修飾されているアミノ酸を意味する。
【0031】
第1の態様において、本発明は、式(U)(式中、Uは、配列番号2を含むペプチド、またはそのフラグメントもしくは変異体であり、nは2以上である)で表されるディフェンシンペプチドの単離多量体に関する。
配列番号2
GIINTLQKYYXRVRGGRXAVLSXLPKEEQIGKXSTRGRKXXRRZZ
Xは任意のアミノ酸を包含してよく;Zは任意のアミノ酸を包含するか、または存在しなくてもよい。例えば、Zとしては、リジン、オルニチンまたはアルギニンが挙げられるが、これらに限定されない。具体的には、Zはリジンであってよい。
【0032】
別の態様において、本発明は、ペプチドUを少なくとも2つ含む単離多量体を提供する。ただし、前記ペプチドUは、配列番号2またはそのフラグメントもしくは変異体を含む。
前記多量体には、ペプチドUの繰り返しが存在する。具体的には、繰り返し単位であるペプチドU同士は共有結合により連結している。ペプチドU同士は、少なくとも1つのアミノ酸Bを介して連結していてもよい。Bは、アミン基を少なくとも2つ有するアミノ酸を包含してもよい。例えば、Bとしては、リジン、オルニチンまたはアルギニンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
本発明の任意の多量体における繰り返し単位、すなわちペプチドUは、WO2007/126392に記載のいずれのペプチドであってもよい。
ペプチドUとしては、配列番号2に由来するペプチドフラグメントなどが挙げられる。このフラグメントは、配列番号2に由来するものであれば、いかなる長さのフラグメントであってもよい。具体的には、ペプチドUは、配列番号3またはそのフラグメントもしくは変異体を含んでもよい。
配列番号3
GIINTLQKYYXRVRGGRXAVLSXLPKEEQIGKXSTRGRKXXRR
Xは任意のアミノ酸を包含する。
多量体のペプチドUは、+1〜+11の電荷を有してもよい。
【0034】
またペプチドUは、配列番号4〜58のいずれかまたはそのフラグメントもしくは変異体を含んでもよい。
配列番号4(hBD3のC末端38アミノ酸由来のペプチド)
KYYXRVRGGRXAVLSXLPKEEQIGKXSTRGRKXXRRZZ
Xは任意のアミノ酸を包含し;Zは任意のアミノ酸を包含するか、または存在しなくてもよい。
配列番号5(hBD3のC末端36アミノ酸由来のペプチド)
YXRVRGGRXAVLSXLPKEEQIGKXSTRGRKXXRRZZ
Xは任意のアミノ酸を包含し;Zは任意のアミノ酸を包含するか、または存在しなくてもよい。
配列番号6(hBD3のC末端40アミノ酸由来のペプチド)
LQKYYXRVRGGRXAVLSXLPKEEQIGKXSTRGRKXXRRZZ
Xは任意のアミノ酸を包含し;Zは任意のアミノ酸を包含するか、または存在しなくてもよい。
配列番号7(hBD3のC末端29アミノ酸由来のペプチド)
RXAVLSXLPKEEQIGKXSTRGRKXXRRZZ
Xは任意のアミノ酸を包含し;Zは任意のアミノ酸を包含するか、または存在しなくてもよい。
配列番号8
KEEQIGKXSTRGRKXXRRZZ(hBD3のC末端20アミノ酸由来のペプチド)
Xは任意のアミノ酸を包含し;Zは任意のアミノ酸を包含するか、または存在しなくてもよい。
配列番号9
KXSTRGRKXXRRZZ(hBD3のC末端14アミノ酸由来のペプチド)
Xは任意のアミノ酸を包含し;Zは任意のアミノ酸を包含するか、または存在しなくてもよい。
【0035】
配列番号10(hBD3の第8〜26番目のアミノ酸に相当する19アミノ酸由来のペプチド)
KYYXRVRGGRXAVLSXLPK
Xは任意のアミノ酸を包含する。
配列番号11
GIINTLQKYYXRVRGGR(hBD3のN末端17アミノ酸由来のペプチド)
Xは任意のアミノ酸を包含する。
配列番号12(CがWで置換された全長型hBD3由来のペプチド)
GIINTLQKYYWRVRGGRWAVLSWLPKEEQIGKWSTRGRKWWRRZZ
Zは任意のアミノ酸を包含するか、または存在しなくてもよい。
配列番号13(CがFで置換された全長型hBD3由来のペプチド)
GIINTLQKYYFRVRGGRFAVLSFLPKEEQIGKFSTRGRKFFRRZZ
Zは任意のアミノ酸を包含するか、または存在しなくてもよい。
配列番号14(CがYで置換された全長型hBD3由来のペプチド)
GIINTLQKYYYRVRGGRYAVLSYLPKEEQIGKYSTRGRKYYRRZZ
Zは任意のアミノ酸を包含するか、または存在しなくてもよい。
配列番号15(CがSで置換された全長型hBD3由来のペプチド)
GIINTLQKYYSRVRGGRSAVLSSLPKEEQIGKSSTRGRKSSRRZZ
Zは任意のアミノ酸を包含するか、または存在しなくてもよい。
配列番号16(CがAで置換された全長型hBD3由来のペプチド)
GIINTLQKYYARVRGGRAAVLSALPKEEQIGKASTRGRKAARRZZ
Zは任意のアミノ酸を包含するか、または存在しなくてもよい。
配列番号17(CがC(Acm)で置換された全長型hBD3由来のペプチド)
GIINTLQKYYC(Acm)RVRGGRC(Acm)C(Acm)VLSALPKEEQIGKC(Acm)STRGRKC(Acm)C(Acm)RRZZ
Zは任意のアミノ酸を包含するか、または存在しなくてもよい。
配列番号18(CがC(But)で置換された全長型hBD3由来のペプチド)
GIINTLQKYYC(But)RVRGGRC(But)C(But)VLSALPKEEQIGKC(But)STRGRKC(But)C(But)RRZZ
Zは任意のアミノ酸を包含するか、または存在しなくてもよい。
配列番号19(CがC(t−Buthio)で置換された全長型hBD3由来のペプチド)
GIINTLQKYYC(t−Buthio)RVRGGRC(t−Buthio)C(t−Buthio)VLSALPKEEQIGKC(t−Buthio)STRGRKC(t−Buthio)C(t−Buthio)RRZZ
Zは任意のアミノ酸を包含するか、または存在しなくてもよい。
【0036】
配列番号20(CがC(Bzl)で置換された全長型hBD3由来のペプチド)
GIINTLQKYYC(Bzl)RVRGGRC(Bzl)C(Bzl)VLSALPKEEQIGKC(Bzl)STRGRKC(Bzl)C(Bzl)RRZZ
Zは任意のアミノ酸を包含するか、または存在しなくてもよい。
配列番号21(CがC(4−MeBzl)で置換された全長型hBD3由来のペプチド)
GIINTLQKYYC(4−MeBzl)RVRGGRC(4−MeBzl)C(4−MeBzl)VLSALPKEEQIGKC(4−MeBzl)STRGRKC(4−MeBzl)C(4−MeBzl)RRZZ
Zは任意のアミノ酸を包含するか、または存在しなくてもよい。
配列番号22(CがC(4−MeOBzl)で置換された全長型hBD3由来のペプチド)
GIINTLQKYYC(4−MeOBzl)RVRGGRC(4−MeOBzl)C(4−MeOBzl)VLSALPKEEQIGKC(4−MeOBzl)STRGRKC(4−MeOBzl)C(4−MeOBzl)RRZZ
Zは任意のアミノ酸を包含するか、または存在しなくてもよい。
配列番号23(CがC(Mmt)で置換された全長型hBD3由来のペプチド)
GIINTLQKYYC(Mmt)RVRGGRC(Mmt)C(Mmt)VLSALPKEEQIGKC(Mmt)STRGRKC(Mmt)C(Mmt)RRZZ
Zは任意のアミノ酸を包含するか、または存在しなくてもよい。
配列番号24(Cが修飾を受けたCで置換された全長型hBD3由来のペプチド)
GIINTLQKYYXRVRGGRXXVLSALPKEEQIGKXSTRGRKXXRRZZ
XはC(Acm)、C(But)、C(t−Buthio)、C(Bzl)、C(4−MeBzl)、C(4−MeOBzl)またはC(Mmt)を包含し;Zは任意のアミノ酸を包含するか、または存在しなくてもよい。
配列番号25(Cが任意のアミノ酸Xで置換されたhBD3のC末端10アミノ酸由来のフラグメント)
RGRKXXRRZZ
Xは任意のアミノ酸を包含し;Zは任意のアミノ酸を包含するか、または存在しなくてもよい。
配列番号26(CがWで置換されたhBD3のC末端10アミノ酸由来のフラグメント)
RGRKWWRRZZ
Zは任意のアミノ酸を包含するか、または存在しなくてもよい。
配列番号27(CがFで置換されたhBD3のC末端10アミノ酸由来のフラグメント)
RGRKFFRRZZ
Zは任意のアミノ酸を包含するか、または存在しなくてもよい。
配列番号28(CがYで置換されたhBD3のC末端10アミノ酸由来のフラグメント)
RGRKYYRRZZ
Zは任意のアミノ酸を包含するか、または存在しなくてもよい。
配列番号29(CがLで置換されたhBD3のC末端10アミノ酸由来のフラグメント)
RGRKLLRRZZ
Zは任意のアミノ酸を包含するか、または存在しなくてもよい。
【0037】
配列番号30(CがIで置換されたhBD3のC末端10アミノ酸由来のフラグメント)
RGRKIIRRZZ
Zは任意のアミノ酸を包含するか、または存在しなくてもよい。
配列番号31(CがHで置換されたhBD3のC末端10アミノ酸由来のフラグメント)
RGRKHHRRZZ
Zは任意のアミノ酸を包含するか、または存在しなくてもよい。
配列番号32(CがC(Acm)、C(But)、C(t−Buthio)、C(Bzl)、C(4−MeBzl)、C(4−MeOBzl)またはC(Mmt)で置換されたhBD3のC末端10アミノ酸由来のフラグメント)
RGRKXXRRZZ
XはC(Acm)、C(But)、C(t−Buthio)、C(Bzl)、C(4−MeBzl)、C(4−MeOBzl)またはC(Mmt)を包含し;Zは任意のアミノ酸を包含するか、または存在しなくてもよい。
配列番号33(CがVで置換されたhBD3のC末端10アミノ酸由来のフラグメント)
RGRKVVRRZZ
Zは任意のアミノ酸を包含するか、または存在しなくてもよい。
配列番号34(hBD3のC末端10アミノ酸由来のペプチド)
RGRKCCRRZZ
Zは任意のアミノ酸を包含するか、または存在しなくてもよい。
配列番号35(CがC(Acm)、C(But)、C(t−Buthio)、C(Bzl)、C(4−MeBzl)、C(4−MeOBzl)またはC(Mmt)で置換されたhBD3のC末端10アミノ酸由来のペプチド)
RGRKXXRRKK
XはC(Acm)、C(But)、C(t−Buthio)、C(Bzl)、C(4−MeBzl)、C(4−MeOBzl)またはC(Mmt)を包含する。
配列番号36(Cが任意のアミノ酸で置換されたhBD3のC末端由来のペプチド。ただし、hBD3のC末端のKKは含まない。)
RGRKXXRR
配列番号37(W2−8AA:CがWで置換されたhBD3のC末端由来のペプチド。ただし、hBD3のC末端のKKは含まない。)
RGRKWWRR
配列番号38(CがFで置換されたhBD3のC末端由来のペプチド。ただし、hBD3のC末端のKKは含まない。)
RGRKFFRR
配列番号39(Y2−8AA:CがYで置換されたhBD3のC末端由来のペプチド。ただし、hBD3のC末端のKKは含まない。)
RGRKYYRR
【0038】
配列番号40(CがLで置換されたhBD3のC末端由来のペプチド。ただし、hBD3のC末端のKKは含まない。)
RGRKLLRR
配列番号41(CがIで置換されたhBD3のC末端由来のペプチド。ただし、hBD3のC末端のKKは含まない。)
RGRKIIRR
配列番号42(CがHで置換されたhBD3のC末端由来のペプチド。ただし、hBD3のC末端のKKは含まない。)
RGRKHHRR
配列番号43(CがC(Acm)、C(But)、C(t−Buthio)、C(Bzl)、C(4−MeBzl)、C(4−MeOBzl)またはC(Mmt)で置換されたhBD3のC末端由来のペプチド。ただし、hBD3のC末端のKKは含まない。)
RGRKCXXRR
XはC(Acm)、C(But)、C(t−Buthio)、C(Bzl)、C(4−MeBzl)、C(4−MeOBzl)またはC(Mmt)を包含する。
配列番号44(V2−8AA:CがVで置換されたhBD3のC末端由来のペプチド。ただし、hBD3のC末端のKKは含まない。)
RGRKVVRR
配列番号45(V2モノマー)
RGRKVVRRKK
配列番号46(V4モノマー、V4−10 AA)
RGRKVVRRVV
配列番号47(Y4モノマー、Y4−10 AA)
RGRKYYRRYY
配列番号48(W4モノマー、W4−10 AA)
RGRKWWRRWW
配列番号49(V3モノマー)
RVRKVVRR
【0039】
配列番号50(V2Rモノマー)
RRRKVVRR
配列番号51(V2Dモノマー)
RDRKVVRR
配列番号52(E2モノマー)
RGRKEERR
配列番号53(K2モノマー)
RGRKKKRR
配列番号54
RRRRRRRRRR
配列番号55
VVVV
配列番号56
YYYY
配列番号57
RRVVKRGR
配列番号58
RRVVKRGRK
【0040】
別の態様において、本発明は、式(U)(式中、Uは、配列番号3またはそのフラグメントもしくは変異体を含み、Bは、アミン基を少なくとも2つ有するアミノ酸を包含し、Zは任意のアミノ酸を包含し、nは2以上であり、mは1以上であり、jは0以上である)で表される単離多量体に関する。具体的には、Bとしては、リジン、オルニチンまたはアルギニンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
本発明の一態様において、(U)のBとZはいずれもリジン(K)を包含してもよい。このとき、上記の式は(U)で表される。また、さらなる態様において、mがn−1と等しくてもよく、jが1であってもよい。このとき、上記の多量体の式は(U)n−1K(すなわち(UK))で表される。式(U)または(U)n−1KにおけるペプチドUは、配列番号3またはそのフラグメントもしくは変異体を含んでもよい。
【0042】
式(U)、(U)または(U)n−1KにおけるペプチドUは、配列番号3またはそのフラグメントもしくは変異体を含んでもよく、前記フラグメントまたは変異体としては、例えばRGRKXXRR(配列番号36)または配列番号37〜44のいずれかが挙げられる。
例えば、m=n−1、j=1、B=Z=Kであり、かつUが配列番号44を含む場合、多量体は式(配列番号44)n−1Kを有する。n=2である場合、多量体は式(配列番号44)KKを有する。
【0043】
本発明の多量体は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよい。多量体(U)が直鎖状である場合、n回繰り返されるペプチドUは、配列番号2またはその任意のフラグメントもしくは変異体を含んでもよい。配列番号2の任意のフラグメントまたは変異体としては、配列番号3〜58のいずれかが挙げられる。例えば、多量体は、(配列番号35)、(配列番号36)、または(配列番号45)を含んでもよい。
分岐状の多量体、例えば多量体(U)に関しては、末端の残基Bで分岐していてもよい。
【0044】
本発明の多量体は、繰り返し単位を任意の数含んでもよい。例えば、前記多量体は、繰り返しサブユニットを2〜10個、2〜20個、または2〜30個含んでもよい。さらに前記多量体は、ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、ヘキサマー、ヘプタマー、オクタマー、ノナマー、デカマーのいずれであってもよい。
【0045】
例えば、式(配列番号36)BZで表される分岐状ダイマーに関しては、該ダイマーは下記の構造を含んでもよい。
【化1】

あるいは、Zは存在しなくてもよく、このとき、上記ダイマーは下記の構造を有する。
【化2】

具体的には、本発明の任意の多量体において、XはVであってもよい。このV2モノマーは、配列RGRKVVRR(配列番号44)を有する。
【0046】
また本発明は、さらなる態様において、式:(U)(式中、Uは、配列番号3またはそのフラグメントもしくは変異体を含み、Zは任意のアミノ酸を包含し、nは2以上であり、mは1以上であり、jは1である)で表される少なくとも1つの多量体を製造する方法であって、
(i)少なくとも1つの固相を準備する工程;
(ii)固相に少なくとも1つの1番目のアミノ酸残基Zを結合させる工程;
(iii)固相に結合させた1番目のアミノ酸残基に、保護基を有するK残基を少なくとも1つ連結する工程;
(iv)連結させたK残基から保護基を除去する工程;
(v)ペプチドUの配列に従って、保護基を有するアミノ酸残基をC末端からN末端の方向へ順に連結し、連結の都度、次の連結のために保護基を除去することによって、さらなる鎖の伸長を行う工程;および
(vi)加える残基の数に応じて、アミノ酸残基の連結を終了する工程
を含む方法に関する。
【0047】
固相に結合させた1番目のアミノ酸Zは、任意のアミノ酸であってよい。例えば、Zとしては、リジン、オルニチンまたはアルギニンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
合成が終了した後、固相から多量体を遊離させてもよい。
【0049】
例えば、ペプチド配列RGRKKXXRR(配列番号36)を作製するために、上記の工程を実施すると、下記のダイマーが合成される。イタリック太字で示すリジン(K)残基は、合成時にLys(Fmoc)が組み込まれた位置を示す。
【化3】

この合成方法では、残基Zおよびリジン残基を2つのモノマー単位が共有している。
具体的には、XがVで、ZがKである場合、下記のダイマーが合成される。このダイマーは、(配列番号44)KKで表されるV2ダイマーである。
【化4】

【0050】
上記の方法を拡張し、さらなる多量体を合成してもよい。例えば、さらなる多量体を合成するために拡張した方法は、工程(iv)の後に、
(iv)(a)連結させた2番目のリジン残基に、保護基を有するリジン残基をさらに連結する工程;
(iv)(b)(iv)(a)で連結させたリジン残基から保護基を除去する工程;および
(iv)(c)工程(iv)(a)および(iv)(b)を繰り返し行う工程、または
(iv)(d)工程(v)および(vi)に進む工程
をさらに含む。
【0051】
この拡張した方法により、先の方法で合成される多量体から繰り返し単位数が2の累乗倍に増加した多量体を合成できる。この拡張した方法により、4量体、8量体、16量体、32量体、64量体などが形成される。この拡張した方法において追加された工程を1回実施することによって、下記に示すようなテトラマーが合成される。XがVで、BおよびZがKである場合、得られるテトラマーはV2−テトラマーとして公知である。このV2テトラマーの繰り返し単位はRGRKVVRR(配列番号44)である。
【化5】

【0052】
さらに、この拡張した方法において追加された工程を2回繰り返すことによって、オクタマーが合成される。本発明の多量体は、末端のK残基を含まなくてもよい。
【0053】
上記のように製造される多量体は、多量体内で1種類のペプチドモノマー単位が繰り返されているホモ多量体である。本発明のペプチド多量体は、ホモダイマー、ホモテトラマーなど、いかなるホモ多量体であってもよい。
【0054】
さらに、上記の製造方法を拡張して、多量体内に異なるペプチド単位が存在するヘテロ多量体を製造してもよい。ホモ多量体を製造する場合、保護基を有するアミノ酸Bは、同一の保護基で保護されている側鎖を少なくとも2つ有する。しかし、ヘテロ多量体(例えばヘテロダイマー)を製造する際には、異なる保護基を有するアミノ酸Cを用いてもよい。アミノ酸Cにおいては、鎖の伸長に利用できる側鎖が、少なくとも2種類の異なる保護基で保護されている。この場合、第1の保護基を除去して、少なくとも1つの第1の反応側鎖からペプチド鎖を伸長させてもよい。第1のペプチド鎖を伸長させた後、別の保護基を除去して、少なくとも1つの第2の反応側鎖から続けて鎖を伸長させてもよい。このようにして、第1のペプチド鎖と第2のペプチド鎖が異なるアミノ酸配列を有していてもよい。
【0055】
本発明は、別の態様において、式[(U)(U)]n/2(C)n/2Z(式中、UおよびUはそれぞれペプチドを含み、U≠Uかつn=2であり、x=0または正の整数であり、m=1または0である)で表されるペプチド多量体を製造する方法であって、
(i)少なくとも1つの固相を準備する工程;
(ii)固相に少なくとも1つの1番目のアミノ酸Zを結合させる工程;
(iii)必要に応じて、固相に結合させたZにアミノ酸Bを少なくとも1つ連結する工程;
(iv)ZまたはBに、異なる保護基で保護された基を少なくとも2つ含むアミノ酸Cを少なくとも1つ連結する工程;
(v)連結させたアミノ酸Cから第1の保護基を除去して、第1の反応側鎖を露出させる工程;
(vi)Cの第1の反応側鎖から、第1のペプチドUの鎖を伸長させる工程;
(vii)連結させたアミノ酸Bから第2の保護基を除去して、少なくとも1つの第2の反応側鎖を露出させる工程;および
(viii)Cの第2の反応側鎖から、第2のペプチドUの鎖を伸長させる工程
を含む方法に関する。
【0056】
このようにして、ヘテロペプチド多量体を製造してもよい。
任意で実施できる工程(ii)を省略すると、ヘテロダイマーが形成される。任意で実施できる工程(ii)を1回行うと、ヘテロテトラマーを製造することができる。工程(ii)を適宜繰り返すことにより、その他のヘテロ多量体を製造することができる。
【0057】
本発明は、別の態様において、式[(U)(U)]n/2(C)n/2Z(式中、UおよびUはペプチド配列を含み、U≠Uであり、CおよびBはそれぞれ、アミン基を少なくとも2つ有するアミノ酸を包含し、Zは任意のアミノ酸を包含し、n=2であり、x=0または正の整数であり、m=1または0である)で表される単離ペプチド多量体に関する。
C、BおよびZとしては、リジン(K)、オルニチンまたはアルギニン(R)が挙げられるが、これらに限定されない。
具体的には、UまたはUはそれぞれ、配列番号2を含むペプチド、またはそのフラグメントもしくは変異体であってよい。
は、配列番号1〜58のいずれかを含んでもよいが、これらに限定されない。
は、配列番号1〜58のいずれかを含んでもよいが、これらに限定されない。
n=2かつm=1である場合、多量体は、式[(U)(U)]CZで表されるヘテロダイマーである。
【0058】
例えば、UはRGRKVVRR(配列番号44)を含んでもよく、UはRGRKVVRRVV(配列番号46)を含んでもよく、CおよびZはKであり、m=0、かつn=2である。このとき、上記ヘテロダイマーは、下記の構造を含む。
【化6】

例えば、UはRRRRRRRRRR(配列番号54)を含んでもよく、UはVVVV(配列番号55)を含んでもよく、CおよびZはKであり、m=0、かつn=2である。このとき、上記ヘテロダイマーは、以下の構造を含む。
【化7】

例えば、UはRRRRRRRRRR(配列番号54)を含んでもよく、UはYYYY(配列番号56)を含んでもよく、CおよびZはKであり、m=0、かつn=2である。このとき、上記ヘテロダイマーは、以下の構造を含む。
【化8】

n=4かつm=1である場合、上記ヘテロ多量体はヘテロテトラマーである。このヘテロマーは、式[(U)(U)](C)Zで表すことができる。
【0059】
本発明の方法を拡張し、トリマーなど他のペプチド多量体を合成してもよい。ホモトリマーおよびヘテロトリマーのいずれも合成できる。
【0060】
式UCUZ(式中、U、UおよびUはそれぞれペプチドを含み、Cは、アミン基を少なくとも2つ含むアミノ酸を包含し、Zは任意のアミノ酸を包含する)で表されるペプチドトリマーを製造する方法であって、
(i)少なくとも1つの固相を準備する工程;
(ii)固相に少なくとも1つの1番目のアミノ酸Zを結合させる工程;および
(iii)Zから、ペプチドUの鎖を伸長させる工程
を含む方法。
ただし、
(A)前記ペプチドトリマーが、式U(C)UZで表されるヘテロペプチドである場合、
前記方法は、
(iv)ペプチドUのアミノ酸に、異なる保護基を有するアミノ酸Cを連結する工程;
(v)連結させたアミノ酸Cから第1の保護基を除去する工程;
(vi)アミノ酸Cから、ペプチドUの鎖を伸長させる工程;
(vii)連結させたアミノ酸Cから第2の保護基を除去する工程;および
(viii)アミノ酸Cから、ペプチドUの鎖を伸長させる工程
をさらに含み、
(B)U=U=UかつC=Bであり、前記ペプチドトリマーが式(UBUZを含む場合、
前記方法は、
(iv)ペプチドUのアミノ酸に、保護基を有するアミノ酸Bを連結する工程;
(v)連結させたアミノ酸Bから保護基を除去する工程;および
(vi)アミノ酸Bから、2つのペプチドUの鎖を伸長させる工程
をさらに含み、
(C)U=U≠UかつC=Bであり、前記ペプチドトリマーが式(UB(U)Zを含む場合、
前記方法は、
(iv)ペプチドUのアミノ酸に、保護基を有するアミノ酸Bを連結する工程;
(v)連結させたアミノ酸Bから保護基を除去する工程;および
(vi)アミノ酸Bから、少なくとも2つのペプチドUの鎖を伸長させる工程
をさらに含む。
上記(A)および(C)の場合には、ヘテロペプチドトリマーを製造することができる。上記(B)の場合には、ホモペプチドトリマーを製造することができる。
【0061】
本発明は、別の態様において、式UCUZ(式中、U、UおよびUはそれぞれペプチド配列を含み、Cは、アミン基を少なくとも2つ有するアミノ酸を包含し、Zは任意のアミノ酸を包含する)で表される単離ペプチドトリマーに関する。具体的には、このペプチドはアミノ酸Cで分岐している。
このとき、上記単離ペプチドトリマーは、下記の構造を含む。
【化9】

C、BおよびZとしては、リジン(K)、オルニチンまたはアルギニン(R)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
具体的には、U、UまたはUはそれぞれ、配列番号2またはそのフラグメントもしくは変異体を含んでもよい。
例えば、U、UまたはUはそれぞれ、配列番号1〜58のいずれかを含んでもよい。ヘテロペプチドトリマーである場合、2つのペプチドが同一の配列を含み、第3のペプチドがそれとは異なる配列を有してもよい。
ヘテロペプチドトリマーUCUZにおいて、U、UおよびUはそれぞれ異なるペプチド配列であってもよいが、そうでなくてもよい。例えば、UおよびUが同一の配列を含み、Uがそれとは異なる配列を含んでいてもよい。また、UおよびUが同一の配列を含み、Uもそれと同一の配列を有してもよい。
=U≠UかつC=Bである場合、上記ペプチドは式(UBUZで表される。
=U≠Uである場合、上記ペプチドは式UCUZで表される。
=U≠Uである場合、上記ペプチドは式UCUZで表される。
ただし、U=U=UかつC=Bである場合、上記ペプチドは式(UBUZで表されるホモペプチドトリマーとなる。
ヘテロペプチドトリマーおよびその合成の一例を図8に示し、実施例1Dに記載する。
【0063】
従って、本発明は、式UKUK(式中、UはRRVVKRGR(配列番号57)を含み、UはRGRKVVRR(配列番号44)を含み、UはRGRKVVRRVV(配列番号46)を含む)で表される単離ペプチドトリマーに関する。このヘテロトリマーはV2V2V4−ヘテロトリマーであり、下記の構造を有する。
【化10】

【0064】
本発明の多量体は、抗菌性を有する。従って、本発明の多量体は、微生物の増殖を阻害および/または抑制するために用いることができる。
【0065】
また本発明は、微生物を本発明の少なくとも1つの多量体と接触させることを含む、微生物の増殖を阻害および/または抑制する方法を提供する。
【0066】
また本発明は、対象に本発明の少なくとも1つの多量体を投与することを含む、少なくとも1つの微生物感染症を治療する方法を提供する。さらに本発明は、対象に本発明の少なくとも1つの多量体を投与することを含む、対象における少なくとも1種の微生物の増殖を阻害および/または抑制することを提供する。
前記微生物は、ウイルス、真菌、細菌のいずれであってもよい。
【0067】
従って、本発明は、抗菌組成物の製造のための、本発明の任意の態様による多量体の使用にも関する。前記抗菌組成物は、例えば対象における、少なくとも1種の微生物の増殖を阻害および/または抑制するために用いることができる。
【0068】
また本発明は、少なくとも1つの微生物感染症を治療する医薬品を製造するための、本発明の任意の態様による多量体の使用を包含する。
【0069】
従って、本発明の多量体は、抗菌組成物および/または医薬組成物としてもよい。本発明の抗菌組成物および/または医薬組成物は、外用、経口投与用、非経口投与用または吸入用の製剤にすることができる。また本発明の多量体は、点眼用の組成物および/もしくは液剤ならびに/またはコンタクトレンズ用液剤に製剤化することができる。
【0070】
また本発明の多量体は、器具のコーティングのための組成物としてもよい。前記器具としては、カテーテル、針、シース、ステント、包帯などの医療器具が挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
また本発明は、キットも包含するが、このキットとは、本発明の少なくとも1つの多量体、本発明の少なくとも1つの多量体を含む少なくとも1つの抗菌組成物および/または医薬組成物を含むものを言う。
【0072】
これまで、本発明について一般的な説明をしてきたが、下記の実施例を参照することにより同じ内容をより容易に理解できるであろう。ただし、下記の実施例は、例示の目的で記載されているものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【実施例】
【0073】
具体的記載のない、当技術分野において公知の標準的な分子生物学手法については、概してSambrook and Russel,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Springs Harbor Laboratory,New York(2001)に記載の手法に従った。
【0074】
実施例1:多量体の固相ペプチド合成(SPPS)法
(A)ホモダイマーの合成
以下のペプチドの合成方法は、Krajewskiら(2004)の方法を改変したものである。フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)基で保護されたL−アミノ酸および樹脂は、Advanced Automated Peptide Protein TECHNOLOGIES社(AAPPTEC社)(ケンタッキー州、米国)から購入し、側鎖保護基、すなわちLys(Fmoc)、Arg(pbf)、Lys(Boc)、Tyr(But)、Trp(Boc)およびFmoc−Lys(Boc)−Wang樹脂(置換率0.72mmol/g)と共に使用した。ただしLys(Fmoc)は、ダイマーの合成において、C末端から2番目の残基としてのみ組み込んだ。ダイマーの合成は、Apex 396(Advanced ChemTech社)を用いてFmoc法により行った。
【0075】
市販のFmoc−Boc−Lys−Wang樹脂を出発点として用いた。あるいは、0.5M DIC(N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド)を用いて、1番目のアミノ酸をWang樹脂へ結合させた。続くカップリング反応(またはアシル化反応)は、NMP中、0.5M HBTU/0.5M HOBT/2M DIEAを用いて行った。別法として、DMF中、HBTU−HOBTを用いて、合成スケール0.08mmolでカップリング反応を行ってもよい。Fmoc基の除去は、DMF中、20%ピペリジンを用いて行った。
【0076】
反応に用いた樹脂を、TFA(トリフルオロ酢酸)90%、フェノール5.0%、水1.5%、TIS(トリイソプロピルシラン)1.0%、EDT(エタンジオール)2.5%を含む試薬で処理し、多量体を遊離させた。別法として、TFA/TIS/フェノール/チオアニソール(Thionisole)/水(90/1/2.5/5/1.5(容量パーセント比))からなる混合液を新たに調製し、これを用いて、反応で得られたペプチド結合樹脂を室温で2〜3時間処理してもよい。
【0077】
次いで、このペプチド粗生成物をろ過した後、氷冷したジエチルエーテルに注いで沈殿させ、沈殿物を遠心分離して氷冷したエーテルで3回洗浄し、真空下室温で乾燥させた、または固形の粗生成物中に含まれるエーテルや他の残存溶媒をドラフト内で自然に蒸発させて乾燥させた。沈殿物をエーテルから直接乾燥させることにより、TFA(トリフルオロ酢酸)塩が得られた。TFA塩は、ペプチド溶液のpHや培養中の細胞の生存率に影響を与える可能性がある。TFA塩は、2%酢酸を2ml加えて凍結乾燥させると酢酸塩に変換されるため、これにより、他のペプチドの取扱いが容易になり、極微量のスカベンジャーを除去することができる。
この合成方法のスキームを図2に示す。
【0078】
上記のSPPS法によって、ダイマーの粗生成物および精製ダイマーが高収率で得られるだろう。例えば、V2ダイマーの粗生成物および精製V2ダイマーの収率は、それぞれ90%および27%である。0.08mmolの合成スケールでは、50mgの精製V2ダイマーが得られるだろう。
【0079】
上述した方法は合成方法の一例であって、これに変更を加えてもよい。例えば、このSPPS法では、アミノ酸残基の保護や脱保護にいかなる方法を用いてもよい。
【0080】
(B)ホモテトラマーの合成
上記の合成方法を拡張して、図9に示すようなホモテトラマーを合成してもよい。
【0081】
固相化NH−Lys(Boc)に連結したFmoc−Lysを脱保護した後、このリジンに2つのFmoc−Lys残基を連結した。アミノ酸鎖のさらなる伸長を行うことにより、図に示すようなホモテトラマー(V2テトラマー)を合成した。脱保護反応(工程i)、カップリング反応(工程ii)および鎖の伸長反応の各条件は、ホモダイマーの合成と同様であった。
【0082】
(C)ヘテロダイマーの合成
図7に示すヘテロダイマーの合成においては、異なる保護基で保護されたアミノ酸Fmoc−Lys(Aloc)−OHを分岐点として用いてヘテロダイマーを合成した。Fmoc基とAloc基の反応性は異なり、Fmoc基の除去に用いられる塩基条件下では、Aloc基は安定である。
【0083】
固相化Fmoc−NH−Lys(Boc)−Wang樹脂の脱保護は、上記と同様にして行った。
【0084】
次いで、図7に示すように、Wang樹脂に結合しているリジン残基にFmoc−Lys(Aloc)−OHを連結した(カップリング工程ii)。Fmoc−Lys(Aloc)からFmoc基のみを除去し(Fmoc脱保護)、第1の鎖の伸長を行った(工程iii)。第1の鎖のアミノ酸残基がすべて連結した(すなわち、第1の鎖が完成した)ところで、Lys(Aloc)のAloc基をパラジウム触媒を用いて除去し(Aloc脱保護)、第2の鎖の伸長を行った。第2の鎖のアミノ酸残基がすべて連結した(すなわち、第2の鎖も完成した)後、酸分解により生成物を遊離させた。アミノ酸残基の反応基を保護するために合成時に必要に応じて使用した保護基(例えば、Boc、pbf、Mtr)が残っている場合は、それらをすべて除去した。
【0085】
(D)ヘテロペプチドトリマーの合成
ヘテロペプチドトリマーの合成例を図8に示す。固相化リジン(K)残基から、まずRGRKVVRR(配列番号57)で表される第1のペプチド(U)を伸長させる。次いで、ペプチドRGRKVVRRのN末端にあるR残基にFmoc−Lys(Aloc)−OHを連結する。次いで、Fmoc基を除去して、Lys(Aloc)残基の第1のアミン基に、鎖の伸長反応により、RGRKVVRR(配列番号44)で表される第2のペプチド(U)を加える。第2の鎖を伸長させた後、Aloc基を除去して、リジン残基の第2のアミン基に、鎖の伸長反応により、RGRKVVRRVV(配列番号46)で表される第3のペプチド(U)を加える。
【0086】
あるいは、第1のペプチドUを伸長させた後、Fmoc−Lys(Fmoc)−OHを加えて、ペプチドUを2つ同時に伸長させ、ヘテロトリマーU(K)UKを形成させることもできる。
【0087】
ホモペプチドトリマーに関しては、ペプチドUを伸長させた後、Fmoc−Lys(Fmoc)−OHを用いて、同一のペプチドUを2つ同時に伸長させ、ホモトリマーを形成させることもできる。
【0088】
実施例2:抗菌アッセイ
抗菌ペプチドの抗菌活性の試験方法として、以下に示す絶対的殺菌の手法を用いた。
【0089】
試験微生物の調製
試験微生物として、米国培養菌保存施設(ATCC)から入手した基準培養菌、またはシンガポール総合病院病理部(the Department of Pathology,Singapore General Hospital)から入手した臨床分離株を用いた。試験に使用する培養菌はすべて、ストックからの継代数が5代以下のものとした。
【0090】
細菌はトリプチケースソイ寒天(TSA)斜面培地で、酵母はサブローデキストロース寒天(SDA)斜面培地で、35℃で16時間培養して増殖させた。増殖した微生物を遠心分離により回収し、20℃にて、米国薬局方(USP)規格リン酸緩衝液(pH7.2)で2回洗浄した。
【0091】
試験微生物
以下の微生物を試験に使用した。
1.セレウス菌(Bacillus cereus)ATCC 11778
2.カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)ATCC 10231
3.緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)臨床分離株
PAE230 DR4877/07、唾液由来
4.緑膿菌臨床分離株PAE239 DM5790/07、創傷由来
5.緑膿菌臨床分離株PAE240 DU14476/07、尿由来
6.緑膿菌臨床分離株PAE249 DM15013、創傷由来
7.緑膿菌臨床分離株07DM023257、眼由来
8.緑膿菌臨床分離株07DM023376、眼由来
9.緑膿菌臨床分離株07DM023155、眼由来
10.緑膿菌臨床分離株07DM023104、眼由来
11.緑膿菌ATCC 9027
12.緑膿菌ATCC 27853
13.大腸菌(Escherichia coli)ATCC 25922
14.大腸菌臨床分離株DB16027、血液由来
15.大腸菌臨床分離株DU46381R、尿由来
16.メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)DM09808R、眼由来
17.黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)臨床分離株
DM4001、眼由来
18.カンジダ・アルビカンス臨床分離株DF2672R、尿由来
19.フザリウム・ソラニ(Fusarium solani)ATCC 36031
【0092】
化合物試験液の調製
凍結乾燥した抗菌化合物を精製水に溶解し、1,000μg/mlの濃度に調製してスクリューキャップ付プラスチックチューブに分注した。これをストック液として−20℃で保存した。
【0093】
試験当日、ストック液のチューブを1本解凍し、精製水で希釈して500μg/mlの濃度に調製した。次いで、USP規格リン酸緩衝液(pH7.2)またはその他の溶液(例えば10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)、10mMカリウム緩衝液(pH7.2)または155.2mM NaClが挙げられるが、これらに限定されない)を用いてさらに希釈を行い、必要な試験濃度に調製した。試験濃度は通常6.25〜50μg/mlである。
【0094】
標準的な濃度に調製した10μlの試験微生物液を、所定の試験濃度に調製した1mlの化合物試験液に接種し、最終的な微生物数が可能な限り1×10〜1×10cfu/mlとなるようにした。次いで、菌を接種した試験液を35℃で4時間インキュベートした。インキュベーションの温度および時間は必要に応じて変更してよい。
【0095】
インキュベーション後、試験液をD/E Neutralising Broth(NB)で10倍に希釈して、抗菌作用を失わせた。さらにNBで希釈して、この希釈液を、細菌の場合はTSAプレート培地に、酵母の場合はSDAプレート培地に塗布した。これらのプレートを35℃で72時間インキュベートした後、各微生物の生菌数を求めた。
【0096】
上記試験と並行して、試験液の代わりに、試験液の調製に使用した緩衝液に試験微生物を接種して接種コントロールとし、上記試験と同様の条件でインキュベーションを行った。接種コントロールの生菌数も上記試験と同様にして求めた。
【0097】
化合物の抗菌活性は、試験微生物の接種コントロールにおけるコロニー形成単位(cfu)の対数値から、35℃で4時間化合物と接触した後に生存している試験微生物のcfuの対数値を減算して得られる対数減少値で表した。
【0098】
実施例3〜7にも上記の方法を用いた。具体的には、実施例6におけるゲンタマイシンに対するアッセイ方法は、抗菌化合物の代わりにゲンタマイシンを用いたという点を除いて上記の方法と同様である。
【0099】
実施例3:緑膿菌ATCC 9027に対するV2ダイマーの抗菌活性
V2ダイマーの抗菌性を緑膿菌ATCC 9027を用いて調べた。
【0100】
V2ダイマーは、USP規格リン酸緩衝液(米国薬局方に従い調製したもの)中、生理的pH値であるpH7.2において、緑膿菌ATCC 9027に対する抗菌活性を示す。この抗菌活性は効果が高く、細菌数の大幅な減少が見られた(表1を参照)。接種した細菌の量は〜10個であったが、12.5μg/mlのV2ダイマーと4時間接触させることにより、溶液はほぼ殺菌された。
【表1】

【0101】
上記で使用したUSP規格緩衝液の塩溶液は生理的条件に比べて薄いため、10mMリン酸緩衝液(pH7.2)を使用して、生理的な塩条件におけるV2ダイマーの抗菌活性も調べた。V2ダイマーは、生理的な塩濃度においても、緑膿菌ATCC 9027に対して高い抗菌活性を維持していた(表2)。
【表2】

【0102】
さらに、155.2mM NaClを用いて、高塩濃度条件下におけるV2ダイマーの抗菌活性も調べた。その結果、12.5〜50μg/mlのV2ダイマーは、高塩濃度において抗菌活性を示すことが分かった。
【表3】

【0103】
実施例4:hBD3由来ペプチドモノマーとV2ダイマーとの比較
上述したhBD3由来の10アミノ酸からなるペプチドモノマー(WO2007/126392)の緑膿菌ATCC 9027に対する抗菌活性も調べた。
USP規格リン酸緩衝液を用いてV2、L2、C2、F2およびH2モノマーの抗菌性を調べたものを表4に示す。
【表4】

注:対数減少値0.5は、68%の細菌が死滅したことを示す;対数減少値1は、90%の細菌が死滅したことを示す;対数減少値2は、99%の細菌が死滅したことを示す;対数減少値3は、99.9%の細菌が死滅したことを示す。
【0104】
表1のV2ダイマーの結果と表4のV2モノマーの結果とを比較すると、V2ダイマーはV2モノマーよりはるかに高い殺菌効率を示すことがわかる。V2ダイマーは、12.5μg/mlの濃度で4時間菌に接触させた場合、対数減少値が6を超えていたが(表1)、これに対してV2モノマーは、12.5μg/mlの濃度での対数減少値が3.23であり、50μg/mlの濃度でも3.97に過ぎなかった(表4)。
【0105】
実施例5:緑膿菌の臨床分離株に対するV2ダイマーの抗菌活性
唾液、創傷、尿および眼に由来する複数の緑膿菌の臨床分離株に対しても、V2ダイマーの抗菌活性を調べた。V2ダイマーは、これらの臨床分離株に対しても抗菌活性を示す(表5〜8を参照)ことから、実際の臨床試料に対してもV2ダイマーを効果的に使用できることが示唆される。
【表5】

【0106】
【表6】

【0107】
【表7】

【0108】
【表8−1】

【表8−2】

【0109】
10mMリン酸緩衝液を用いた生理的な塩条件下における、臨床分離株に対するV2ダイマーの抗菌活性も調べた。V2ダイマーは、反復試験において、眼由来の臨床分離株(表9A、9Bおよび9C)、ならびに創傷由来、唾液由来および尿由来の臨床分離株(表10Aおよび10B)に対して抗菌活性を示した。このことから、生理的条件下においてもV2ダイマーを臨床分離株に対して使用できることが示唆される。
【表9】

【0110】
【表10】

【0111】
実施例6:V2ダイマーとゲンタマイシンの抗菌活性の比較
緑膿菌の臨床分離株に対するV2ダイマーとゲンタマイシンの抗菌活性を比較した。
【0112】
第1の試験では、V2ダイマーとゲンタマイシンのいずれについても、創傷由来および唾液由来の臨床分離株に対してアッセイを行い、両者を比較した(表5を参照)。この試験から、創傷由来の分離株に対しては、V2ダイマーはゲンタマイシンと同等の活性を有することが分かった。唾液由来の分離株に対しては、V2ダイマーの方が高い抗菌活性を示した。
【表11】

【0113】
第2の試験では、V2ダイマーとゲンタマイシン双方の、尿由来および唾液由来の臨床分離株に対する抗菌活性を調べて、両者を比較した(表6を参照)。V2ダイマーは、これら2種の分離株に対してもゲンタマイシンと同等の活性を示した。
【表12】

【0114】
第3の試験では、V2ダイマーとゲンタマイシン双方の、眼由来の臨床分離株に対する抗菌活性を調べて、両者を比較した(表13を参照)。この試験から、V2ダイマーとゲンタマイシンは眼由来の緑膿菌臨床分離株に対して同等の活性を有することがわかる。
【表13】

【0115】
上記の試験結果をまとめると、V2ダイマーとゲンタマイシンは同等の抗菌活性を有しており、V2ダイマーは微生物に対してゲンタマイシンと同等の効果を発揮するものとして使用できることが示唆される。
【0116】
実施例7:その他の微生物に対するV2ダイマーの抗菌活性
(A)カンジダ・アルビカンスATCC 10231
カンジダ・アルビカンスATCC 10231に対するV2ダイマーの抗菌活性を調べた。7.2×10CFUのカンジダ・アルビカンスを含むUSP規格リン酸緩衝液を、種々の濃度に調製したV2ダイマーと混合し、35℃で4時間インキュベートした。その結果、50、25および12.5μg/mlの濃度におけるV2ダイマーのカンジダ・アルビカンスATCC 10231に対する対数減少値は3.6〜4であった(表14)。
【表14】

【0117】
(B)セレウス菌ATCC 11778
セレウス菌ATCC 11778に対するV2ダイマーの抗菌活性を調べた。V2ダイマーは、セレウス菌に対して抗菌活性を示した(表15)。
【表15】

【0118】
(C)大腸菌臨床分離株DB0016027R
さらに、V2ダイマーは、ゲンタマイシン、アンピシリンなどの抗生物質に対して耐性を有する薬剤感受性パターンを示す大腸菌の多剤耐性株DB0016027R(血液由来の臨床分離株)の菌数を減少させることが可能であった。
【表16】

【0119】
V2ダイマーがカンジダ・アルビカンスやその他の細菌に対する抗菌性を有することは、有効な広域スペクトル抗菌剤としてのV2ダイマーの可能性を示唆している。さらにV2ダイマーが大腸菌の多剤耐性株に対して効果を有することは、他の抗生物質が使用できない微生物に対する有効な治療薬としてのV2ダイマーの可能性を示唆している。
【0120】
実施例8:V2ダイマーの細胞毒性
WO2007/126392に記載の方法に従って、ヒト結膜細胞に対するV2ダイマーの毒性を調べ、野生型hBD3と比較した。図4から、V2ダイマーのヒト結膜細胞に対する毒性は野生型hBD3より低いことが分かる。野生型hBD3は、およそ15μg/mlの濃度で細胞毒性を示したが、V2ダイマーは100μg/mlの濃度でも細胞毒性を示さなかった。V2ダイマーの細胞毒性プロファイルは、WO2007/126392に記載のモノマーペプチドと同等であった。
【0121】
V2ダイマーはヒト結膜細胞に対する毒性が低く、抗菌活性が高いことから、宿主における微生物感染症の治療および/または微生物の増殖抑制の目的で、V2ダイマーを宿主に対して使用できることが示唆される。WO2007/126392に記載の他のペプチドダイマーも同様に、高い抗菌活性と低い細胞毒性を示すと考えられる。
【0122】
実施例9:マクロ液体希釈法による最小阻止濃度(MIC)の測定
米国臨床研究所規格委員会(NCCL)のマクロ液体希釈法を改変して、MICを求めた。希釈には、Ca2+とMg2+を加えず、1/6の濃度に希釈したミュラーヒントンブロス(Mueller Hinton Broth(MHB))を使用した。このMHB(1/6の濃度)を用いて、V2ダイマー溶液の2倍段階希釈系列を試験管に作製した。MHB(1/6の濃度)を用いて調製した試験微生物の接種液1mlを、V2ダイマーの各希釈液1mlに添加し、各試験管内の終濃度が10〜10コロニー形成単位/mlになるようにした。これらの試験管を35℃で16〜20時間インキュベートした。試験サンプルと平行して、培地と微生物のみを含むポジティブコントロールの試験管と、培地のみを含むネガティブコントロールの試験管もインキュベートした。上記の操作を、試験微生物ごとに独立した試験として繰り返した。それぞれの臨床分離株または基準微生物に対するV2ダイマーペプチドのMICは、試験微生物の視認可能な増殖を阻害するペプチドの最小濃度とした。
他のペプチドのMICも求めて、ゲンタマイシンと比較した。MICの結果を表17〜20に示す。
【0123】
【表17】

【0124】
【表18】

【0125】
【表19】

【0126】
【表20】

【0127】
参考資料
Campopiano D.J., Clarke, D. J., Polfer, N. C., Barran, P.E., Langley, R.J., Gvan. J. R., Maxwell, A., and Dorin, J. R. (2004) Structure-activity relationships in defensin dimers: a novel link between beta-defensin tertiary structure and antimicrobial activity. J. Biol. Chem 279(47):48671-9.

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National Committee for Clinical Laboratory Standards (1987) Methods for determining bactericidal activity of antimicrobial agents by National Committee for Clinical Laboratory Standards (Villanova, PA).

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WO 2007/126392

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(U)(式中、Uは、配列番号2を含むペプチド、またはそのフラグメントもしくは変異体であり、nは2以上である)で表されるディフェンシンペプチドの単離多量体。
【請求項2】
前記ペプチドU同士が、共有結合により連結している請求項1に記載の単離多量体。
【請求項3】
前記ペプチドU同士が、少なくとも1つのアミノ酸Bを介して連結している、先行する請求項のいずれか1項に記載の単離多量体。
【請求項4】
前記ペプチドUが、配列番号3〜58のいずれかまたはそのフラグメントもしくは変異体を含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の単離多量体。
【請求項5】
前記ペプチドUが、+1〜+11の電荷を有する、先行する請求項のいずれか1項に記載の単離多量体。
【請求項6】
式(U)(式中、Uは、配列番号3またはそのフラグメントもしくは変異体を含み、Bはそれぞれ、アミン基を少なくとも2つ有するアミノ酸を少なくとも1つ包含し、Zは任意のアミノ酸を包含し、mは1以上であり、jは0以上である)を有する、先行する請求項のいずれか1項に記載の単離多量体。
【請求項7】
前記ペプチドUが、配列番号36〜44のいずれかまたはそのフラグメントもしくは変異体を含む請求項6に記載の単離多量体。
【請求項8】
Bがそれぞれ、リジン、オルニチンまたはアルギニンを包含する請求項6または7に記載の単離多量体。
【請求項9】
m=n−1、j=1かつB=Z=Kであり、前記多量体が式(U)n−1Kを有し、Uが配列番号36〜44のいずれかを含む請求項6〜8のいずれか1項に記載の単離多量体。
【請求項10】
n=2であり、前記多量体が式(U)KKを有し、Uが配列番号36〜44のいずれかを含む請求項8に記載の単離多量体。
【請求項11】
m=n−1、j=1かつB=Z=Kであり、Uが配列番号44を含み、前記多量体が式(配列番号44)n−1Kを有する請求項6〜8のいずれか1項に記載の単離多量体。
【請求項12】
n=2であり、前記多量体が式(配列番号44)KKを有する請求項11に記載の単離多量体。
【請求項13】
分岐状である、先行する請求項のいずれか1項に記載の単離多量体。
【請求項14】
直鎖状である、先行する請求項のいずれか1項に記載の単離多量体。
【請求項15】
先行する請求項のいずれか1項に記載の多量体の全長または任意の一部をコードする単離核酸分子。
【請求項16】
請求項15に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項17】
請求項15に記載の核酸分子または請求項16に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項18】
少なくとも2つのペプチドUを連結することを含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の多量体を製造する方法。
【請求項19】
前記多量体が式(U)で表され、
(i)少なくとも1つの固相を準備する工程;
(ii)固相に少なくとも1つの1番目のアミノ酸Zを結合させる工程;
(iii)固相に結合させたZに、保護基を有するアミノ酸残基Bを少なくとも1つ連結する工程;
(iv)連結させたアミノ酸残基Bから保護基を除去する工程;
(v)ペプチドUの配列に従って、保護基を有するアミノ酸残基をC末端からN末端の方向へ順に連結し、連結の都度、次の連結のために保護基を除去することによって、さらなる鎖の伸長を行う工程;
(vi)加える残基の数に応じて、アミノ酸残基の連結を終了する工程;および
(vii)必要に応じて、得られた多量体を固相から遊離させる工程
を含む請求項18に記載の方法。
【請求項20】
工程(iv)の後に、
(iv)(a)連結させた残基Bに、保護基を有する残基Bをさらに連結する工程;
(iv)(b)(iv)(a)で連結させた残基Bから保護基を除去する工程;および
(iv)(c)工程(iv)(a)および(iv)(b)を繰り返し行う工程、または
(iv)(d)工程(v)および(vi)に進む工程
をさらに含む請求項19に記載の方法。
【請求項21】
Bがそれぞれ、リジン、アルギニンまたはオルニチンを包含する請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記ペプチドUが、配列番号3またはそのフラグメントもしくは変異体を含む請求項19〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記ペプチドUが、配列番号36〜44のいずれかを含む請求項19〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
少なくとも1種の微生物の増殖を阻害および/または抑制するための請求項1〜14、48〜49および51〜57のいずれか1項に記載の単離多量体。
【請求項25】
少なくとも1つの微生物感染症の治療に使用するための請求項1〜14、48〜49および51〜57のいずれか1項に記載の単離多量体。
【請求項26】
点眼用の組成物および/もしくは液剤ならびに/またはコンタクトレンズ用液剤に使用するための請求項1〜14、48〜49および51〜57のいずれか1項に記載の単離多量体。
【請求項27】
請求項1〜14、48〜49および51〜57のいずれか1項に記載の多量体を含む抗菌組成物。
【請求項28】
請求項1〜14、48〜49および51〜57のいずれか1項に記載の多量体を含む医薬組成物。
【請求項29】
外用、経口投与用、非経口投与用または吸入用に製剤化されている、請求項27に記載の抗菌組成物または請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
点眼剤および/またはコンタクトレンズ用液剤に適した、請求項27もしくは29に記載の抗菌組成物または請求項28もしくは29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
請求項1〜14、48〜49および51〜57のいずれか1項に記載の多量体ならびに/または請求項27もしくは29に記載の抗菌組成物を含むコンタクトレンズ用液剤。
【請求項32】
請求項1〜14、48〜49および51〜57のいずれか1項に記載の多量体を含む、器具をコーティングするための組成物。
【請求項33】
請求項32に記載の組成物でコーティングされた器具。
【請求項34】
医療器具を包含する請求項33に記載の器具。
【請求項35】
カテーテル、針、シース、ステントまたは包帯を包含する請求項33または34に記載の器具。
【請求項36】
少なくとも1つの適切な容器に、請求項1〜14、48〜49および51〜57のいずれか1項に記載の少なくとも1つの多量体、請求項27もしくは29に記載の少なくとも1つの抗菌組成物ならびに/または請求項28もしくは29に記載の少なくとも1つの医薬組成物を含むキット。
【請求項37】
少なくとも1種の微生物の増殖を阻害および/または抑制する方法であって、前記微生物を、請求項1〜14、48〜49および51〜57のいずれか1項に記載の少なくとも1つの多量体、ならびに/または請求項27もしくは29に記載の抗菌組成物と接触させることを含む方法。
【請求項38】
請求項1〜14、48〜49および51〜57のいずれか1項に記載の少なくとも1つの多量体、請求項27もしくは29に記載の少なくとも1つの抗菌組成物ならびに/または請求項28もしくは29に記載の少なくとも1つの医薬組成物を対象に投与することを含む、少なくとも1つの微生物感染症を治療する方法。
【請求項39】
対象における少なくとも1種の微生物の増殖を阻害および/または抑制する方法であって、請求項1〜14、48〜49および51〜57のいずれか1項に記載の少なくとも1つの多量体、請求項27もしくは29に記載の少なくとも1つの抗菌組成物ならびに/または請求項28もしくは29に記載の少なくとも1つの医薬組成物を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項40】
抗菌組成物の製造のための請求項1〜14、48〜49および51〜57のいずれか1項に記載の多量体の使用。
【請求項41】
前記抗菌組成物が、対象における少なくとも1種の微生物の増殖を阻害および/または抑制するために用いられる請求項40に記載の使用。
【請求項42】
微生物感染症の治療薬を製造するための請求項1〜14、48〜49および51〜57のいずれか1項に記載の多量体の使用。
【請求項43】
点眼用の組成物および/もしくは液剤ならびに/またはコンタクトレンズ用液剤の製造のための請求項1〜14、48〜49および51〜57のいずれか1項に記載の多量体の使用。
【請求項44】
器具をコーティングするための組成物を製造するための請求項1〜14、48〜49および51〜57のいずれか1項に記載の多量体の使用。
【請求項45】
前記器具が医療器具である請求項44に記載の使用。
【請求項46】
前記器具がカテーテル、針、シース、ステントまたは包帯である請求項44または45に記載の使用。
【請求項47】
式[(U)(U)]n/2(C)n/2Z(式中、UおよびUはそれぞれペプチドを含み、U≠Uかつn=2であり、x=0または正の整数であり、m=1または0である)で表されるペプチド多量体を製造する方法であって、
(i)少なくとも1つの固相を準備する工程;
(ii)固相に少なくとも1つの1番目のアミノ酸Zを結合させる工程;
(iii)必要に応じて、固相に結合させたZにアミノ酸Bを少なくとも1つ連結する工程;
(iv)ZまたはBに、異なる保護基で保護された基を少なくとも2つ含むアミノ酸Cを少なくとも1つ連結する工程;
(v)連結させたアミノ酸Cから第1の保護基を除去して、第1の反応側鎖を露出させる工程;
(vi)Cの第1の反応側鎖から、第1のペプチドUの鎖を伸長させる工程;
(vii)連結させたアミノ酸Bから第2の保護基を除去して、少なくとも1つの第2の反応側鎖を露出させる工程;および
(viii)Cの第2の反応側鎖から、第2のペプチドUの鎖を伸長させる工程
を含む方法。
【請求項48】
式[(U)(U)]n/2(C)n/2Z(式中、UおよびUはペプチド配列を含み、U≠Uであり、CおよびBはそれぞれ、アミン基を少なくとも2つ有するアミノ酸を包含し、Zは任意のアミノ酸を包含し、n=2であり、x=0または正の整数であり、m=1または0である)で表される単離ペプチド多量体。
【請求項49】
またはUが、配列番号2またはそのフラグメントもしくは変異体を含む請求項48に記載の単離ペプチド多量体。
【請求項50】
式UCUZ(式中、U、UおよびUはそれぞれペプチドを含み、Cは、アミン基を少なくとも2つ有するアミノ酸を包含し、Zは任意のアミノ酸を包含する)で表されるペプチドトリマーを製造する方法であって、
(i)少なくとも1つの固相を準備する工程;
(ii)固相に少なくとも1つの1番目のアミノ酸Zを結合させる工程;および
(iii)Zから、ペプチドUの鎖を伸長させる工程
を含み、
(A)前記ペプチドトリマーが、式U(C)UZで表されるヘテロペプチドである場合、
(iv)ペプチドUのアミノ酸に、異なる保護基を有するアミノ酸Cを連結する工程;
(v)連結させたアミノ酸Cから第1の保護基を除去する工程;
(vi)アミノ酸Cから、ペプチドUの鎖を伸長させる工程;
(vii)連結させたアミノ酸Cから第2の保護基を除去する工程;および
(viii)アミノ酸Cから、ペプチドUの鎖を伸長させる工程
をさらに含み、
(B)U=U=UかつC=Bであり、前記ペプチドトリマーが式(UBUZを含む場合、
(iv)ペプチドUのアミノ酸に、保護基を有するアミノ酸Bを連結する工程;
(v)連結させたアミノ酸Bから保護基を除去する工程;および
(vi)アミノ酸Bから、2つのペプチドUの鎖を伸長させる工程
をさらに含み、
(C)U=U≠UかつC=Bであり、前記ペプチドトリマーが式(UBUZを含む場合、
(iv)ペプチドUのアミノ酸に、保護基を有するアミノ酸Bを連結する工程;
(v)連結させたアミノ酸Bから保護基を除去する工程;および
(vi)アミノ酸Bから、少なくとも2つのペプチドUの鎖を伸長させる工程
をさらに含む方法。
【請求項51】
式UCUZ(式中、U、UおよびUはそれぞれペプチドを含み、Cは、アミン基を少なくとも2つ有するアミノ酸を包含し、Zは任意のアミノ酸を包含する)で表される単離ペプチドトリマー。
【請求項52】
アミノ酸Cで分岐している請求項51に記載の単離ペプチドトリマー。
【請求項53】
、UまたはUがそれぞれ、配列番号2またはそのフラグメントもしくは変異体を含む請求項51または52に記載の単離ペプチドトリマー。
【請求項54】
=U≠UかつC=Bであり、前記ペプチドが(UBUZを含む請求項51〜53のいずれか1項に記載の単離ペプチドトリマー。
【請求項55】
=U≠Uであり、前記ペプチドが式UCUZを含む請求項51〜53のいずれか1項に記載の単離ペプチドトリマー。
【請求項56】
=U≠Uであり、前記ペプチドが式UCUZを含む請求項51〜53のいずれか1項に記載の単離ペプチドトリマー。
【請求項57】
=U=UかつC=Bであり、前記ペプチドが式(UBUZを含む請求項51〜53のいずれか1項に記載の単離ペプチドトリマー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−521902(P2011−521902A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506235(P2011−506235)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【国際出願番号】PCT/SG2009/000144
【国際公開番号】WO2009/131548
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(508320723)シンガポール ヘルス サービシーズ ピーティーイー リミテッド (3)
【出願人】(508320734)エイジェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (7)
【Fターム(参考)】