抗血管内皮増殖因子受容体−2キメラ抗原受容体及び癌の治療のためのその使用
本発明は、KDR−1121抗体若しくはDC101抗体の抗原結合ドメイン、細胞外ヒンジドメイン、T細胞受容体膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインT細胞受容体シグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。CARに関連する核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、抗体又はその抗原結合部分、及び医薬組成物が開示される。宿主における癌の存在を検出する方法及び宿主における癌の治療又は予防方法もまた開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2009年10月1日出願の米国仮特許出願第61/247,625号(その内容は参照によって組み込まれる)の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
固形腫瘍は、癌による死亡率の85%より多くを占める(Jain,R.K.Science 307:58−62(2005))。多くの癌(固形腫瘍など)の増殖及び転移は、血管新生としても知られる新規血管の形成によって促進される。従って、腫瘍血管新生を標的とする癌の治療又は予防のための組成物及び方法が、当該分野で必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の1実施形態は、KDR−1121抗体若しくはDC101抗体の抗原結合ドメイン、細胞外ヒンジドメイン、T細胞受容体膜貫通ドメイン及び細胞内T細胞受容体シグナル伝達ドメインを含む、キメラ抗原受容体(CAR)を提供する。
【0004】
本発明のさらなる実施形態は、本発明のCARに関連する、関連の核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、抗体又はその抗原結合部分及び医薬組成物を提供する。
【0005】
本発明のさらなる実施形態は、宿主における癌の存在を検出する方法及び宿主における癌の治療又は予防方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、抗原が結合していない(なし)又はBSA、VEGFR−2若しくは抗CD3が結合したプレート上で培養した時の増殖の測定としての、空ベクター(斜線縞)、SP6−CD828BBZ(ヘリンボーン)、DC101−CD8(市松模様)、DC101−CD828BBZ(灰色)又はDC101−CD828Z(黒)で形質導入された細胞による3[H]−チミジンの取り込み(CPM)のグラフである。
【図2】図2は、抗原が結合していない(なし)又はBSA、VEGFR−2若しくは抗CD3が結合したプレート上で培養した時の、空ベクター(斜線縞)、SP6−CD828BBZ(ヘリンボーン)、DC101−CD8(市松模様)、DC101−CD828BBZ(灰色)又はDC101−CD828Z(黒)で形質導入された細胞によるIFN−γ分泌(pg/ml)のグラフである。
【図3】図3は、単独で培養した又はSVEC4−10EHR1、bEnd.3、MS1、SVR、4T1、MC38、MCA−205、MC17−51、P815、EL4、C1498、B16、MB49、MB49−FLK−1、3T3若しくは3T3−FLK−1細胞と共培養した場合の、形質導入されていない(右斜線(right slanting line))又は空ベクター(点描)、SP6−CD828BBZ(左斜線(left slanting line))、DC101−CD8(縞模様)、DC101−CD828BBZ(灰色)若しくはDC101−CD828Z(黒)で形質導入された細胞によるIFN−γ分泌(pg/ml)のグラフである。
【図4】図4Aは、未処置(黒丸)、rhIL−2単独で処置(黒菱形)、又はDC101 CAR(黒三角)若しくは空ベクター(黒四角)を形質導入したT細胞で処置したB16−F10腫瘍保持マウスの、T細胞移入後の日数での腫瘍面積(mm2)のグラフである。図4Bは、未処置(黒丸)、rhIL−2単独で処置(黒菱形)、又はDC101 CAR(黒三角)若しくは空ベクター(黒四角)を形質導入したT細胞で処置したMC38腫瘍保持マウスの、T細胞移入後の日数での腫瘍面積(mm2)のグラフである。
【図5】図5Aは、未処置(黒丸)、rhIL−2単独で処置(黒菱形)、又はDC101 CAR(黒三角)若しくは空ベクター(黒四角)を形質導入したT細胞で処置したB16−F10腫瘍保持マウスの、T細胞移入後の日数でのパーセント生存のグラフである。図5Bは、未処置(黒丸)、rhIL−2単独で処置(黒菱形)、又はDC101 CAR(黒三角)若しくは空ベクター(黒四角)を形質導入したT細胞で処置したMC38腫瘍保持マウスの、T細胞移入後の日数でのパーセント生存のグラフである。
【図6】図6Aは、未処置(黒丸)、rhIL−2単独で処置(黒菱形)、DC101抗体で処置(白三角)、ラットIgG1抗体で処置(白菱形)、又はDC101 CAR(黒三角)若しくは空ベクター(黒四角)を形質導入したT細胞で処置したB16−F10腫瘍保持マウスの、T細胞移入後の日数での腫瘍面積(mm2)のグラフである。図6Bは、未処置(黒丸)、又はDC101−CD828BBZ CARベクター(黒三角)、SP6−CD8S8BBZ CARベクター(白菱形)、DC101−CD8ベクター(白三角)若しくは空ベクター(黒四角)を形質導入したT細胞で処置したB16−F10腫瘍保持マウスの、T細胞移入後の日数での腫瘍面積(mm2)のグラフである。
【図7】図7は、DC101−mCD828BBZ(菱形)、DC101−CD828Z(三角)又は空ベクター(四角)を形質導入したT細胞で処置したB16−F10腫瘍保持マウスの、T細胞移入後の日数での腫瘍面積(mm2)のグラフである。コントロール群は、T細胞治療を受けなかった(丸)。黒塗り記号は、外因性rhIL−2投与を示し、中抜きの記号はrhIL−2投与なしを示す。
【図8】図8は、抗原が結合していない(なし)又はBSA、VEGFR−2若しくは抗CD3が結合したプレート上で培養した時の増殖の測定としての、モック形質導入した(市松模様)、又はKDR−CD28Z(黒)若しくはKDR−CD28BBZ(灰色)で形質導入した細胞による3[H]−チミジン取り込み(CPM)のグラフである。
【図9】図9は、抗原が結合していない(なし)又はBSA、VEGFR−2若しくは抗CD3が結合したプレート上で培養した時の、モック形質導入した(市松模様)、又はKDR−CD28Z(黒)若しくはKDR−CD28BBZ(灰色)で形質導入した細胞によるIFN−γ分泌(pg/ml)のグラフである。
【図10】図10は、ドナー番号1〜3のそれぞれについて、単独培養(なし)又は293細胞若しくは293−KDR細胞と共培養した時の、形質導入なし(暗灰色)、モック形質導入(白)又はKDR1121−hCD28Z(黒)若しくはKDR1121−hCD828BBZ(明灰色)で形質導入した細胞によるIFN−γ分泌(pg/ml)のグラフである。
【図11】図11は、単独培養(なし)又は標的細胞293A2、293A2−KDR、HMVEC−真皮、HMVEC−肺、HUVEC、皮膚繊維芽細胞、SAEC、HBEC、HRE、HMEC、PrEC若しくはHSMM細胞と共培養した時の、形質導入なし(白)、モック形質導入(灰色)又はKDR−CD28Z(黒)で形質導入したT細胞によるIFN−γ分泌(pg/ml)のグラフである。
【図12】図12は、細胞なし(なし)又は標的細胞(bEnd.3、MB49若しくはMB49−FLK−1)を単独で(下線付きのなし)又は10μg/mlのラットIgG1、抗マウスVEGFR−1抗体若しくは抗マウスVEGFR−2抗体(DC101)と共にインキュベートし、次いで、モック形質導入(白棒)或いは空ベクター(灰色棒)又はSP6−CD828BBZ CAR(斜線棒)若しくはDC101−CD828BBZ(黒棒)をコードするレトロウイルスベクターで形質導入した初代マウスT細胞と共に共培養したときの、IFN−γ分泌(ng/ml)のグラフである。
【図13】図13は、モック形質導入(*)又は空ベクター(四角)、SP6−CD828BBZ(丸)、DC101−CD8(菱形)、DC101−CD828Z(黒三角)若しくはDC101−CD828BBZ(白三角)で形質導入した初代マウスT細胞と共にインキュベートしたVEGFR−2発現標的マウス細胞(SVEC4−10EHR1、4T1、RENCA、MB49、bEND.3、MC38、MC17−51、MB49−Flk1、MS1、CT26、B16−F10、3T3、SVR、MCA205、C1498、3T3−Flk1)の、種々のエフェクター対標的比(x軸)での、特異的溶解(%)(y軸)のグラフを示す。各データポイントは三連の平均を反映する。
【図14】図14Aは、未処理(黒丸)、rhIL−2単独で処理(黒菱形)、又はDC101−CD828BBZ CAR(黒三角)若しくは空ベクター(黒四角)で形質導入したT細胞で処理したMCA205腫瘍保持マウスの、T細胞移入後の日数での腫瘍面積(mm2)のグラフである。図14Bは、未処理(黒丸)、rhIL−2単独で処理(黒菱形)、又はDC101−CD828BBZ CAR(黒三角)若しくは空ベクター(黒四角)で形質導入したT細胞で処理したMCA205腫瘍保持マウスの、T細胞移入後の日数でのパーセント生存のグラフである。図14Cは、未処理(黒丸)、rhIL−2単独で処理(黒菱形)、又はDC101−CD828BBZ CAR(黒三角)若しくは空ベクター(黒四角)で形質導入したT細胞で処理したCT26腫瘍保持マウスの、T細胞移入後の日数での腫瘍面積(mm2)のグラフである。図14Dは、未処理(黒丸)、rhIL−2単独で処理(黒菱形)、又はDC101−CD828BBZ CAR(黒三角)若しくは空ベクター(黒四角)で形質導入したT細胞で処理したCT26腫瘍保持マウスの、T細胞移入後の日数でのパーセント生存のグラフである。図14Eは、未処理(黒丸)、rhIL−2単独で処理(黒菱形)、又はDC101−CD828BBZ CAR(黒三角)若しくは空ベクター(黒四角)で形質導入したT細胞で処理したRENCA腫瘍保持マウスの、T細胞移入後の日数での腫瘍面積(mm2)のグラフである。図14Fは、未処理(黒丸)、rhIL−2単独で処理(黒菱形)、又はDC101−CD828BBZ CAR(黒三角)若しくは空ベクター(黒四角)で形質導入したT細胞で処理したRENCA腫瘍保持マウスの、T細胞移入後の日数でのパーセント生存のグラフである。
【図15】図15は、DC101−CD828BBZ+rhIL−2で形質導入した2x107(実線上の黒三角)、1x107(実線上の白三角)、5x106(点線上の黒三角)若しくは2x106(点線上の白三角)の同系T細胞で処置した、未処置(黒丸)、rhIL−2単独で処置した(黒菱形)、又は空ベクター+rhIL−2(黒四角)で形質導入した2x107T細胞で処置した、B16−F10腫瘍保持マウスの、T細胞移入後の日数での腫瘍面積(mm2)のグラフである。各処置群は、最低5匹のマウスを含んだ。一連の盲検腫瘍測定値を取得し、直交する直径の積を±SEMでプロットした。
【図16】図16Aは、5Gy TBIで致死未満に照射し、T細胞もrhIL−2も受けていない(黒丸)か、又はDC101−CD28BBZ(黒三角)若しくは空ベクター(黒四角)で形質導入した同系マウスT細胞2x107の単一用量をrhIL−2と合わせて注射した;或いは7〜10日間隔で、DC101−CAR(白三角)又は空ベクター(白四角)で形質導入したT細胞5x106の3連続用量、及びT細胞移入の0〜63日後に、細胞移入と付随して、rhIL−2の1日2回用量を3日間、を注射した、皮下B16−F10腫瘍保持マウスの腫瘍面積(mm2)のグラフである。各処置群は、最低5匹のマウスを含んだ。一連の盲検腫瘍測定値を取得し、直交する直径の積を±SEMでプロットした。図16Bは、5Gy TBIで致死未満に照射し、T細胞もrhIL−2も受けていない(黒丸)か、又はDC101−CD28BBZ(黒三角)若しくは空ベクター(黒四角)で形質導入した同系マウスT細胞2x107の単一用量をrhIL−2と合わせて注射した;或いは7〜10日間隔で、DC101−CAR(白三角)又は空ベクター(白四角)で形質導入したT細胞5x106の3連続用量、及びT細胞移入の0〜63日後に、細胞移入と付随して、rhIL−2の1日2回用量を3日間、を注射した、皮下MCA205腫瘍保持マウスの腫瘍面積(mm2)のグラフである。各処置群は、最低5匹のマウスを含んだ。一連の盲検腫瘍測定値を取得し、直交する直径の積を±SEMでプロットした。図16Cは、5Gy TBIで致死未満に照射し、T細胞もrhIL−2も受けていない(黒丸)か、又はDC101−CD28BBZ(黒三角)若しくは空ベクター(黒四角)で形質導入した同系マウスT細胞2x107の単一用量をrhIL−2と合わせて注射した;或いは7〜10日間隔で、DC101−CAR(白三角)又は空ベクター(白四角)で形質導入したT細胞5x106の3連続用量、及びT細胞移入の0〜120日後に、細胞移入と付随して、rhIL−2の1日2回用量を3日間、を注射した、皮下B16−F10腫瘍保持マウスの生存(%)のグラフである。各処置群は、最低5匹のマウスを含んだ。一連の盲検腫瘍測定値を取得し、直交する直径の積を±SEMでプロットした。図16Dは、5Gy TBIで致死未満に照射し、T細胞もrhIL−2も受けていない(黒丸)か、又はDC101−CD28BBZ(黒三角)若しくは空ベクター(黒四角)で形質導入した同系マウスT細胞2x107の単一用量をrhIL−2と合わせて注射した;或いは7〜10日間隔で、DC101−CAR(白三角)又は空ベクター(白四角)で形質導入したT細胞5x106の3連続用量、及びT細胞移入の0〜150日後に、細胞移入と付随して、rhIL−2の1日2回用量を3日間、を注射した、皮下MCA205腫瘍保持マウスの生存(%)のグラフである。各処置群は、最低5匹のマウスを含んだ。一連の盲検腫瘍測定値を取得し、直交する直径の積を±SEMでプロットした。
【図17】図17は、DC101−CAR(白三角)、SP6−CAR(白菱形)若しくは空ベクター(白四角)+rhIL−2で形質導入した同系T細胞2x107の移入前に5Gy TBIを受けなかった、又はT細胞で処理していない(白丸)、B16−F10腫瘍保持マウスの腫瘍面積(mm2)のグラフである。黒塗り記号で示される群中のマウスは、T細胞移入前に5Gy TBIを受けた。
【図18】図18Aは、T細胞移入の0〜50日後に、DC101−CD828BBZ(黒三角)若しくは空ベクター(黒四角)で形質導入した未分離CD3+T細胞5x106の単一用量又はDC101−CD828BBZ(白三角)若しくは空ベクター(白四角)のいずれかで形質導入した精製CD8+T細胞2x107の単一用量で処置したCT26腫瘍保持BALB/cマウスの腫瘍面積(mm2)のグラフである。全てのT細胞処置群は、3日間にわたりrhIL−2の1日2回用量を受けた。コントロール群は、rhIL−2単独を受けた(菱形)か処置を受けなかった(丸)。図18Bは、T細胞移入の0〜32日後に、DC101−CD828BBZ(黒三角)若しくは空ベクター(黒四角)で形質導入した未分離CD3+T細胞5x106の単一用量又はDC101−CD828BBZ(白三角)若しくは空ベクター(白四角)のいずれかで形質導入した精製CD8+T細胞2x107の単一用量で処置したRENCA腫瘍保持BALB/cマウスの腫瘍面積(mm2)のグラフである。全てのT細胞処置群は、3日間にわたりrhIL−2の1日2回用量を受けた。コントロール群は、rhIL−2単独を受けた(菱形)か処置を受けなかった(丸)。図18Cは、T細胞移入の0〜25日後に、DC101−CD828BBZ(実線上の黒三角)若しくは空ベクター(黒四角)で形質導入した未分離CD3+T細胞2x107の単一用量又はDC101−CD828BBZ(実線上の白三角)若しくは空ベクター(白四角)のいずれかで形質導入した精製CD8+T細胞2x107の単一用量で処置したB16−F10腫瘍保持C57BL/6マウスの腫瘍面積(mm2)のグラフである。いくつかの群は、DC101−CD828BBZ(点線上の黒三角)若しくは空ベクター(白丸)で形質導入した1x107のCD4+T細胞及び1x107のCD8+T細胞の混合物を受けた。全てのT細胞処置群は、3日間にわたりrhIL−2の1日2回用量を受けた。コントロール群は、rhIL−2単独を受けた(黒菱形)か処置を受けなかった(黒丸)。
【図19】図19は、モック形質導入(*)又はSP6−CD828BBZ(四角)、KDR1121−CD828Z(黒三角)若しくはKDR1121−CD828BBZ(白三角)で形質導入した初代ヒトT細胞と共にインキュベートした標的ヒト細胞(293、293−KDR、HMVEC−D、HMVEC−L、SAEC、NHBE、HSMM及び繊維芽細胞)の、種々のエフェクター対標的比(x軸)での、特異的溶解(%)(y軸)のグラフを示す。各データポイントは三連の平均を反映する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の1実施形態は、KDR−1121抗体若しくはDC101抗体の抗原結合ドメイン、細胞外ヒンジドメイン、T細胞受容体膜貫通ドメイン及び細胞内T細胞受容体シグナル伝達ドメインを含む、キメラ抗原受容体(CAR)を提供する。
【0008】
キメラ抗原受容体(CAR)は、T細胞シグナル伝達ドメインに連結された抗体の抗原結合ドメイン(scFv)を含む、人工的に構築されたハイブリッドタンパク質又はポリペプチドである。CARの特徴には、モノクローナル抗体の抗原結合特性を利用して、選択された標的に対し非MHC拘束的様式でT細胞の特異性及び反応性を再指示(redirect)する能力が挙げられる。非MHC拘束的抗原認識は、CARを発現するT細胞に、抗原プロセシングと無関係に抗原を認識する能力を与え、それにより、腫瘍エスケープの主要な機構を迂回する。さらに、T細胞中で発現されると、CARは、有利なことに、内在性T細胞受容体(TCR)α鎖及びβ鎖と二量体化しない。
【0009】
本明細書中で使用する場合、語句「抗原特異性を有する」及び「抗原特異的応答を惹起する」とは、CARが、抗原に特異的に結合できかつ抗原を免疫特異的に認識でき、その結果抗原へのCARの結合が免疫応答を惹起することを意味する。
【0010】
本発明のCARは、血管内皮増殖因子受容体−2(VEGFR−2)(ヒトではキナーゼドメイン領域(KDR)及びマウスでは胎仔肝臓キナーゼ−1(Flk−1)としても公知)に対する抗原特異性を有する。VEGFR−2は、血管内皮増殖因子(VEGF)の受容体であり、7つの細胞外ドメインを有し、血管内皮細胞により選択的に発現される。VEGFR−2は、腫瘍血管中の腫瘍内皮細胞によって過剰発現される。VEGFR−2はさらに、正常細胞、非腫瘍細胞又は非癌性細胞によって発現され得る。しかし、かかる状況では、正常細胞、非腫瘍細胞又は非癌性細胞によるVEGFR−2の発現は、腫瘍又は癌細胞による発現ほど強くはない。これに関して、腫瘍又は癌細胞は、正常細胞、非腫瘍細胞又は非癌性細胞によるVEGFR−2の発現と比較して、顕著に高いレベルでVEGFR−2を過剰発現できるかVEGFR−2を発現できる。VEGFR−2は、腫瘍の血管新生(vascularization)、増殖及び転移を増強する。特定の理論に束縛されないが、VEGFR−2に対する抗原特異的応答を惹起することによって、本発明のCARは、腫瘍脈管構造中のVEGFR−2発現内皮細胞を標的化及び破壊し、腫瘍脈管構造を攻撃し、腫瘍を減少又は排除し、腫瘍部位への免疫細胞の浸潤を促進し、かつ抗腫瘍応答を増強/拡大すると考えられる。
【0011】
血管新生抑制腫瘍療法は、多くの利点を提供する。例えば、内皮細胞は遺伝的に安定なので、薬物耐性の可能性が低いと考えられる。さらに、血流は脈管内皮への容易なアクセスを提供し、正常組織に対する副作用及び毒性が限定的であると考えられる。さらに、腫瘍血管の破壊は、腫瘍細胞死を加速させると考えられる。また、血管新生内皮細胞は、抗原(例えばVEGFR−2)発現を均一に上方制御すると考えられている。さらに、血管新生抑制(antioangiogenic)腫瘍療法は、脈管供給を含む多くの癌(例えば固形腫瘍)に適用可能である。
【0012】
本発明は、KDR−1121抗体又はDC101抗体の抗原結合ドメインを含むCARを提供する。KDR−1121(IMC−1121Bとしても知られる)は、ヒトの抗VEGFR−2抗体である。KDR−1121は、VEGFR−2ドメイン3に結合し、VEGF/KDR相互作用を遮断する。DC101は、ラット抗マウスVEGFR−2抗体である。例示的な適切なKDR−1121抗体及びDC101抗体は、米国特許第7,498,414号;同第5,840,301号;同第5,861,499号並びにWO2007/095337(これらはそれぞれ、本明細書中に参照により組み込まれる)に開示されている。これに関して、本発明の好ましい実施形態は、KDR−1121(配列番号1)又はDC101(配列番号2)の一本鎖可変断片(scFv)を含むか、これからなるか又は本質的にこれからなる抗原結合ドメインを含むCARを提供する。
【0013】
本発明の1実施形態において、CARは、細胞外ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、並びに任意選択で、CD8を含む細胞内ヒンジドメイン並びにCD28、4−1BB及びCD3ζを含む細胞内T細胞受容体シグナル伝達ドメインを含む。CD28は、T細胞補助刺激(co−stimulation)に重要なT細胞マーカーである。CD8もT細胞マーカーである。4−1BBは、T細胞に強い補助刺激シグナルを伝達し、Tリンパ球の分化を促進し、長期生存を増強する。CD3ζは、TCRと会合してシグナルを生じ、免疫受容体活性化チロシンモチーフ(immunoreceptor tyrosine−based activation motif;ITAM)を含む。これに関して、本発明の好ましい実施形態は、細胞外ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン及び任意選択の細胞内ヒンジドメインを提供し、この細胞内ヒンジドメインは、配列番号3(ヒトCD8の細胞外ヒンジ配列、膜貫通配列及び細胞内ヒンジ配列)又は配列番号4(マウスCD8の細胞外ヒンジ及び膜貫通配列)を含むか、本質的にこれからなるか、これからなる。細胞内T細胞受容体シグナル伝達ドメインは、配列番号5(ヒトCD28、4−1BB及びCD3ζの細胞内T細胞受容体シグナル伝達配列)又は配列番号6(マウスCD28、4−1BB及びCD3ζの細胞内T細胞受容体シグナル伝達配列)を含むか、本質的にこれからなるか、又はこれからなる。
【0014】
本発明の別の実施形態において、CARは、細胞外ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、並びにCD28及びCD3ζを含む細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを含む。これに関して、本発明の好ましい実施形態は、細胞外ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを提供し、この細胞内T細胞シグナル伝達ドメインは、配列番号7(ヒトCD28の細胞外ヒンジ、膜貫通及び細胞内T細胞シグナル伝達配列)及び配列番号8(ヒトCD3ζの細胞内T細胞受容体シグナル伝達配列)を含むか、本質的にこれらからなるか、又はこれらからなる。
【0015】
本発明の別の実施形態において、CARは、細胞外ヒンジドメインと、CD8を含む膜貫通ドメインと、CD28及びCD3ζを含む細胞内T細胞受容体シグナル伝達ドメインとを含む。これに関して、本発明の好ましい実施形態は、配列番号4(マウスCD8細胞外ヒンジ及び膜貫通配列)を含む、本質的に配列番号4からなるか、又は配列番号4からなるか、細胞外ヒンジドメイン及び膜貫通ドメインを提供する。細胞内T細胞受容体シグナル伝達ドメインは、配列番号9(マウスCD28及びCD3ζの配列)を含むか、配列番号9からなるか、又は本質的に配列番号9からなる。
【0016】
本発明のさらなる実施形態は、表1に示されるアミノ酸配列のいずれかを含むか、それからなるか、又は本質的にそれからなる、CARを提供する。
【0017】
【表1】
【0018】
本発明はまた、本発明のCARに関する、関連する核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、抗体又はその抗原結合部分、及び医薬組成物を提供する。
【0019】
本発明の別の実施形態は、宿主における癌の存在を検出する方法を提供し、この方法は以下を含む:(a)宿主由来の1以上の細胞を含むサンプルを、本発明のCAR、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、抗体及び/又はその抗原結合部分と接触させることによって、複合体を形成する工程、及び(b)複合体を検出する工程であって、該複合体の検出が宿主における癌の存在を示す、工程。
【0020】
本発明の別の実施形態は、本発明のCAR、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、抗体及び/又はその抗原結合部分を、宿主における癌の治療又は予防に有効な量で宿主に投与することを含む、宿主における疾患の治療又は予防方法を提供する。
【0021】
本明細書中で言及する宿主は任意の宿主であり得る。宿主は哺乳動物であり得る。本明細書中で使用する場合、用語「哺乳動物」とは、任意の哺乳動物をいい、Rodentia目の哺乳動物(例えば、マウス及びハムスター)並びにLogomorpha目の哺乳動物(例えばウサギ)が挙げられるが、これらに限定されない。哺乳動物は、Carnivora目(Felines(ネコ)及びCanines(イヌ)を含む)由来であり得る。哺乳動物は、Artiodactyla目(Bovines(ウシ)及びSwines(ブタ)を含む)由来又はPerssodactyla目(Equines(ウマ)を含む)由来であり得る。哺乳動物は、Primates目、Ceboids目若しくはSimoids目(サル)又はAnthropoids目(ヒト及び類人猿)のものであり得る。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0022】
本明細書中で使用する場合、CARに関して用語「機能的部分」とは、本発明のCARの任意の一部又は断片をいい、この一部又は断片は、CAR(この一部又は断片はこれの一部である)(親CAR)の生物活性を保持する。機能的部分は、例えば、標的細胞を認識する能力又は疾患を検出、治療若しくは予防する能力を、親CARと類似の程度まで、同程度まで、又はより高い程度まで保持する、CARの一部を包含する。親CARを参照すると、機能的部分は、親CARの例えば約10%、25%、30%、50%、68%、80%、90%、95%又はそれ以上を含み得る。
【0023】
機能的部分は、当該部分のアミノ末端若しくはカルボキシ末端又は両端にさらなるアミノ酸を含み得、このさらなるアミノ酸は、親CARのアミノ酸配列中には見出されないものである。望ましくは、さらなるアミノ酸は、機能的部分の生物機能(例えば、標的細胞の認識、癌の検出、癌の治療若しくは予防など)を妨害しない。より望ましくは、さらなるアミノ酸は、親CARの生物活性と比較して、生物活性を増強する。
【0024】
本発明の範囲内には、本明細書中に記載される本発明のCAR、ポリペプチド及びタンパク質の機能的変異体が含まれる。本明細書中で使用する場合、用語「機能的変異体」とは、親CAR、ポリペプチド又はタンパク質に対して、実質的又は研著な配列同一性又は類似性を有するCAR、ポリペプチド又はタンパク質をいい、この機能的変異体は、CAR、ポリペプチド又はタンパク質(これの変異体である)の生物活性を保持する。機能的変異体は、例えば、親CAR、ポリペプチド又はタンパク質と類似の程度まで、同程度まで、又はより高い程度まで、標的細胞を認識する能力を保持した、本明細書中に記載されるCAR、ポリペプチド又はタンパク質(親CAR、ポリペプチド又はタンパク質)の変異体を包含する。親CAR、ポリペプチド又はタンパク質を参照すると、機能的変異体は、親CAR、ポリペプチド又はタンパク質に対して、例えば、少なくとも約30%、50%、75%、80%、90%、98%又はそれ以上、アミノ酸配列が同一であり得る。
【0025】
機能的変異体は、例えば、少なくとも1つの保存的アミノ酸置換を有する、親CAR、ポリペプチド又はタンパク質を含み得る。或いは又はさらに、機能的変異体は、少なくとも1つの非保存的アミノ酸置換を有する、親CAR、ポリペプチド又はタンパク質のアミノ酸配列を含み得る。この場合、非保存的アミノ酸置換は、機能的変異体の生物活性を妨害も阻害もしないことが好ましい。非保存的アミノ酸置換は、機能的変異体の生物活性を増強し得、その結果、親CAR、ポリペプチド又はタンパク質と比較して機能的変異体の生物活性が増加する。
【0026】
本発明のCARのアミノ酸置換は、好ましくは保存的アミノ酸置換である。保存的アミノ酸置換は当該分野で公知であり、特定の物理的及び/又は化学的特性を有する1つのアミノ酸が、同じ又は類似の化学的又は物理的特性を有する別のアミノ酸と交換されるアミノ酸置換が含まれる。例えば、保存的アミノ酸置換は、酸性アミノ酸の別の酸性アミノ酸での置換(例えば、Asp又はGlu)、非極性側鎖を有するアミノ酸の、非極性側鎖を有する別のアミノ酸での置換(例えば、Ala、Gly、Val、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Trp、Valなど)、塩基性アミノ酸の別の塩基性アミノ酸での置換(Lys、Argなど)、極性側鎖を有するアミノ酸の、極性側鎖を有する別のアミノ酸での置換(Asn、Cys、Gln、Ser、Thr、Tyrなど)などであり得る。
【0027】
CAR、ポリペプチド又はタンパク質は、特定のアミノ酸配列又は本明細書中に記載される配列から本質的になり得、その結果、他の成分(例えば他のアミノ酸)は、機能的変異体の生物活性を物質的に変化させない。
【0028】
本発明の実施形態のCAR、ポリペプチド又はタンパク質(機能的部分及び機能的変異体を含む)は、CAR、ポリペプチド又はタンパク質(又はその機能的部分及び機能的変異体)がその生物活性(例えば、抗原に特異的に結合する能力、宿主中の罹患細胞を検出する能力、又は宿主中の疾患を治療若しくは予防する能力など)を保持することを条件として、任意の長さのものであり得る、即ち、任意の数のアミノ酸を含み得る。例えば、ポリペプチドは、約50〜約5000アミノ酸長、例えば、50、70、75、100、125、150、175、200、300、400、500、600、700、800、900、1000又はそれ以上のアミノ酸長であり得る。これに関して、本発明のポリペプチドには、オリゴペプチドも含まれる。
【0029】
本発明の実施形態のCAR、ポリペプチド及びタンパク質(本発明の機能的部分及び機能的変異体を含む)は、1つ以上の天然に存在するアミノ酸の代わりに合成アミノ酸を含み得る。かかる合成アミノ酸は当該分野で公知であり、例えば、アミノシクロヘキサンカルボン酸、ノルロイシン、α−アミノn−デカン酸、ホモセリン、S−アセチルアミノメチル−システイン、トランス−3−及びトランス−4−ヒドロキシプロリン、4−アミノフェニルアラニン、4−ニトロフェニルアラニン、4−クロロフェニルアラニン、4−カルボキシフェニルアラニン、β−フェニルセリン β−ヒドロキシフェニルアラニン、フェニルグリシン、α−ナフチルアラニン、シクロヘキシルアラニン、シクロヘキシルグリシン、インドリン−2−カルボン酸、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸、アミノマロン酸、アミノマロン酸モノアミド、N’−ベンジル−N’−メチル−リジン、N’,N’−ジベンジル−リジン、6−ヒドロキシリジン、オルニチン、α−アミノシクロペンタンカルボン酸、α−アミノシクロヘキサンカルボン酸、α−アミノシクロヘプタンカルボン酸、α−(2−アミノ−2−ノルボルナン)−カルボン酸、α,γ−ジアミノ酪酸、α,β−ジアミノプロピオン酸、ホモフェニルアラニン及びα−tert−ブチルグリシンが挙げられる。
【0030】
本発明の実施形態のCAR、ポリペプチド及びタンパク質(機能的部分及び機能的変異体を含む)は、グリコシル化、アミド化、カルボキシル化、リン酸化、エステル化、N−アクリル化、環化(例えばジスルフィド結合を介して)、又は酸付加塩に変換され、かつ/或いは任意選択で二量体化若しくは重合、又はコンジュゲート化され得る。
【0031】
本発明の実施形態のCAR、ポリペプチド及び/又はタンパク質(その機能的部分及び機能的変異体を含む)は、当該分野で公知の方法で得ることができる。ポリペプチド及びタンパク質を新規合成する適切な方法は、例えば以下の参考文献に記載されている:Chanら,Fmoc Solid Phase Peptide Synthesis,Oxford University Press,Oxford,United Kingdom,2000;Peptide and Protein Drug Analysis,Reid,R.編,Marcel Dekker,Inc.,2000;Epitope Mapping,Westwoodら編,Oxford University Press,Oxford,United Kingdom,2001;及び米国特許第5,449,752号。また、ポリペプチド及びタンパク質は、標準的な組換え法を使用して、本明細書中に記載される核酸を使用して組換え産生され得る。例えば、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第3版,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY 2001;及びAusubelら,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates and John Wiley&Sons,NY,1994を参照。さらに、本発明のCAR、ポリペプチド及びタンパク質(その機能的部分及び機能的変異体を含む)のあるものは、植物、細菌、昆虫、哺乳動物(例えば、ラット、ヒトなど)などの供給源から、単離及び/又は精製され得る。単離及び精製の方法は当該分野で周知である。或いは、本明細書中に記載されるCAR、ポリペプチド及び/又はタンパク質(その機能的部分及び機能的変異体を含む)は、Synpep(Dublin,CA)、Peptide Technologies Corp.(Gaithersburg,MD)及びMultiple Peptide Systems(San Diego,CA)などの企業によって商業的に合成され得る。これに関して、本発明のCAR、ポリペプチド及びタンパク質は、合成、組換え、単離及び/又は精製であり得る。
【0032】
本発明の1実施形態はさらに、本発明のCARのエピトープに特異的に結合する、抗体又はその抗原結合部分を提供する。抗体は、当該分野で公知の任意の型の免疫グロブリンであり得る。例えば、抗体は、任意のアイソタイプ(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG、IgMなど)のものであり得る。抗体は、モノクローナル又はポリクローナルであり得る。抗体は、天然に存在する抗体、例えば、哺乳動物(例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、ウマ、ニワトリ、ハムスター、ヒトなど)から単離及び/又は精製された抗体であり得る。或いは、抗体は、遺伝子操作された抗体、例えば、ヒト化抗体又はキメラ抗体であり得る。抗体は、モノマー形態でもポリマー形態でもあり得る。また、抗体は、本発明のCARの機能的部分に対し、任意のレベルの親和性又は結合活性を有し得る。
【0033】
本発明のCARの任意の機能的部分に結合する能力について抗体を試験する方法は、当該分野で公知であり、以下が挙げられる:任意の抗体−抗原結合アッセイ、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ELISA、ウエスタンブロット、免疫沈降及び競合阻害アッセイ(例えば、Janewayら(下記)及び米国特許出願公開2002/0197266A1を参照)。
【0034】
抗体の製造に適した方法は、当該分野で公知である。例えば、標準的なハイブリドーマ法は、例えば、Koehler及びMilstein,Eur.J.Immunol.,5,511−519(1976)、Harlow及びLane(編),Antibodies:A Laboratory Manual,CSH Press(1988)、並びにC.A.Janewayら(編),Immunobiology,第5版,Garland Publishing,New York,NY(2001))に記載されている。或いは、他の方法が当該分野で公知である(例えば、EBV−ハイブリドーマ法(Haskard及びArcher,J.Immunol.Methods,74(2),361−67(1984)、並びにRoderら,Methods Enzymol.,121,140−67(1986))、及びバクテリオファージベクター発現系(例えば、Huseら,Science,246,1275−81(1989)を参照))。さらに、非ヒト動物において抗体を産生する方法が、例えば、米国特許第5,545,806号,同第5,569,825号及び同第5,714,352号、並びに米国特許出願公開2002/0197266A1に記載されている。
【0035】
さらにファージディスプレイが、抗体を産生するために使用され得る。これに関して、抗体の抗原結合可変(V)ドメインをコードするファージライブラリーが、標準的な分子生物学技術及び組換えDNA技術を使用して生成され得る(例えば、Sambrookら(上記)及びAusubelら(上記)を参照)。所望の特異性を有する可変領域をコードするファージが、所望の抗原への特異的結合について選択され、選択された可変ドメインを含む完全又は部分抗体が再構成される。再構成された抗体をコードする核酸配列は、適切な細胞株(例えば、ハイブリドーマ産生に使用される骨髄腫細胞)中に導入され、その結果、モノクローナル抗体の特徴を有する抗体がこの細胞によって分泌される(例えば、Janewayら(上記)、Huseら(上記)及び米国特許第6,265,150号を参照)。
【0036】
抗体は、特定の重鎖及び軽鎖免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックであるトランスジェニックマウスにより産生され得る。かかる方法は当該分野で公知であり、例えば、米国特許第5,545,806号及び同第5,569,825号、並びにJanewayら(上記)に記載されている。
【0037】
ヒト化抗体を産生する方法は当該分野で周知であり、例えば、Janewayら(上記)、米国特許第5,225,539号、同第5,585,089号及び同第5,693,761号、欧州特許0239400B1、並びに英国特許第2188638号に詳細に記載されている。ヒト化抗体はまた、米国特許第5,639,641号及びPedersenら,J.Mol.Biol.,235,959−973(1994)に記載された抗体再浮上(resurfacing)技術を使用して生成され得る。
【0038】
本発明の1実施形態はまた、本明細書中に記載される抗体のいずれかの抗原結合部分を提供する。抗原結合部分は、少なくとも1つの抗原結合部位を有する任意の部分(例えば、Fab、F(ab’)2、dsFv、sFv、ディアボディ(diabody)及びトリアボディ(triabody))であり得る。
【0039】
一本鎖可変領域断片(sFv)抗体断片(これは、合成ペプチドを介して抗体軽鎖の可変(V)ドメインに連結された抗体重鎖のVドメインを含む、切断型Fab断片である)は、慣用的な組換えDNA技術の技術を使用して生成され得る(例えば、Janewayら(上記)を参照)。同様に、ジスルフィド安定化可変領域断片(dsFv)は、組換えDNA技術によって調製され得る(例えば、Reiterら,Protein Engineering,7,697−704(1994)を参照)。しかし、本発明の抗体断片は、これらの例示的な抗体断片の型に限定されない。
【0040】
また、抗体又はその抗原結合部分は、検出可能な標識(例えば、放射性同位体、フルオロフォア(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE))、酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ)及び元素粒子(例えば、金粒子)など)を含むように改変され得る。
【0041】
本発明の1実施形態はさらに、本明細書中に記載されるCAR、ポリペプチド又はタンパク質(その機能的部分及び機能的変異体を含む)のいずれかをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。これに関して、本発明の1実施形態は、表2のヌクレオチド配列を含むか、これからなるか又は本質的にこれからなる核酸を提供する。
【0042】
【表2】
【0043】
本明細書中で使用する場合、「核酸」とは、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」及び「核酸分子」を含み、一般にDNA又はRNAのポリマーを意味し、これは、一本鎖又は二本鎖であり得、合成されても天然供給源から得てもよく(例えば、単離及び/又は精製)、天然、非天然若しくは変更されたヌクレオチドを含み得、未修飾のオリゴヌクレオチドのヌクレオチド間に見出されるホスホジエステル結合の代わりに、天然、非天然若しくは変更されたヌクレオチド間結合(例えば、ホスホロアミダート(phosphoroamidate)結合又はホスホロチオエート結合)を含み得る。いくつかの実施形態において、核酸は、挿入、欠失、逆位及び/又は置換を何れも含まない。しかし、本明細書で議論するように、ある場合には、核酸が1以上の挿入、欠失、逆位及び/又は置換を含むことが適切であり得る。
【0044】
本発明の1実施形態の核酸は組換えであり得る。本明細書中で使用する場合、用語「組換え」とは、(i)天然又は合成の核酸セグメントを、生きた細胞中で複製できる核酸分子に連結することによって、生きた細胞の外側で構築された分子、或いは(ii)上記(i)に記載した分子の複製から生じる分子、をいう。本明細書の目的のために、複製は、in vitro複製又はin vivo複製であり得る。
【0045】
組換え核酸は、天然に存在しない配列を有するものであっても、配列の2つの他の分離されたセグメントの人工的な組み合わせによって製造された配列を有するものであってもよい。この人工的な組合わせは、化学合成によって達成される場合が多く、又はより一般的には、例えば、Sambrookら(上記)に記載されたような遺伝子操作技術による、核酸の単離されたセグメントの人工的な操作によって達成される。核酸は、当業者に公知の手順を使用して、化学合成及び/又は酵素ライゲーション反応に基づいて構築され得る。例えば、Sambrookら(上記)及びAusubelら(上記)を参照。例えば、核酸は、天然に存在するヌクレオチド或いは分子の生物学的安定性を増加させるように、又はハイブリダイゼーションの際に形成される二重鎖の物理的安定性を増加させるように設計された多様な修飾ヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート誘導体及びアクリジン置換ヌクレオチド)を使用して、化学的に合成され得る。核酸を生成するために使用され得る修飾ヌクレオチドの例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルキューオシン(β−D−galactosylqueosine)、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−置換アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルキューオシン(β−D−mannosylqueosine)、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン(wybutoxosine)、シュードウラシル(pseudouracil)、キューオシン(queosine)、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル及び2,6−ジアミノプリン。或いは、本発明の核酸の1以上は、Macromolecular Resources(Fort Collins,CO)及びSynthegen(Houston,TX)などの企業から購入できる。
【0046】
核酸は、CAR、ポリペプチド若しくはタンパク質、又はそれらの機能的部分若しくは機能的変異体のいずれかをコードする、任意の単離又は精製されたヌクレオチド配列を含み得る。或いは、ヌクレオチド配列は、任意の配列へと縮重したヌクレオチド配列、又は縮重配列の組み合わせを含み得る。
【0047】
本発明の1実施形態は、本明細書中に記載される核酸のいずれかのヌクレオチド配列に対して相補的なヌクレオチド配列、又は本明細書中に記載される核酸のいずれかのヌクレオチド配列に対し、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む、単離又は精製された核酸も提供する。
【0048】
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列は、高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズし得る。「高ストリンジェンシー条件」とは、ヌクレオチド配列が、非特異的ハイブリダイゼーションよりも検出可能に強い量で標的配列(本明細書中に記載される核酸のいずれかのヌクレオチド配列)に特異的にハイブリダイズすることを意味する。高ストリンジェンシー条件には、正確に相補的な配列を有するポリヌクレオチド、又はヌクレオチド配列にマッチした数塩基の小領域(例えば3〜10塩基)を偶然有するランダム配列からの数個の散らばったミスマッチのみを含むポリヌクレオチドを、識別する条件が含まれる。かかる小領域の相補性は、14〜17又はそれ以上の塩基の全長相補体よりも容易に融解され、高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーションは、それらを容易に識別できるようにする。比較的高ストリンジェンシーの条件には、例えば、低塩及び/又は高温条件(例えば、約0.02〜0.1MのNaCl又は等価物、約50〜70℃の温度により提供される)が含まれる。かかる高ストリンジェンシー条件は、存在したとしても、ヌクレオチド配列とテンプレート鎖若しくは標的鎖との間のミスマッチをほとんど許容せず、本発明のCARのいずれかの発現を検出するのに特に適している。条件は、漸増量のホルムアミドの添加によって、よりストリンジェントになり得ることが一般に理解される。
【0049】
1実施形態において、本発明の核酸は、組換え発現ベクター中に組み込まれ得る。これに関して、本発明の1実施形態は、本発明の核酸のいずれかを含む組換え発現ベクターを提供する。本明細書中の目的のために、用語「組換え発現ベクター」とは、宿主細胞によるmRNA、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドの発現を可能にする遺伝子改変オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドコンストラクトを意味し、ここで、コンストラクトは、mRNA、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、ベクターは、細胞内でmRNA、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドを発現させるのに十分な条件下で細胞と接触させられる。本発明のベクターは、全体としては天然に存在するものではない。しかし、ベクターの一部は天然に存在するものであり得る。本発明の組換え発現ベクターは、DNA及びRNA(一本鎖又は二本鎖であり得、合成されても一部を天然供給源から得てもよく、天然、非天然若しくは変更されたヌクレオチドを含み得る)が挙げられるがそれらに限定されない任意の型のヌクレオチドを含み得る。組換え発現ベクターは、天然に存在するヌクレオチド間結合若しくは天然に存在しないヌクレオチド間結合、又は両方の型の結合を含み得る。好ましくは、天然に存在しない又は変更されたヌクレオチド又はヌクレオチド間結合は、ベクターの転写も複製も妨害しない。
【0050】
1実施形態において、本発明の組換え発現ベクターは、任意の適切な組換え発現ベクターであり得、任意の適切な宿主を形質転換又はトランスフェクトするために使用され得る。適切なベクターとしては、増殖(propagation)及び増大(expansion)のため、発現のため、又はそれら両方のために設計されたベクター(例えば、プラスミド及びウイルス)が挙げられる。ベクターは、以下からなる群より選択され得る:pUCシリーズ(Fermentas Life Sciences,Glen Burnie,MD)、pBluescriptシリーズ(Stratagene,LaJolla,CA)、pETシリーズ(Novagen,Madison,WI)、pGEXシリーズ(Pharmacia Biotech,Uppsala,Sweden)及びpEXシリーズ(Clontech,Palo Alto,CA)。バクテリオファージベクター(例えば、λGT10、λGT11、λZapII(Stratagene)、λEMBL4及びλNM1149)もまた使用され得る。植物発現ベクターの例としては、pBI01、pBI101.2、pBI101.3、pBI121及びpBIN19(Clontech)が挙げられる。動物発現ベクターの例としては、pEUK−Cl、pMAM及びpMAMneo(Clontech)が挙げられる。組換え発現ベクターは、ウイルスベクター(例えば、レトロウイルスベクター)であり得る。
【0051】
1実施形態において、本発明の組換え発現ベクターは、例えばSambrookら(上記)及びAusubelら(上記)に記載された、標準的な組換えDNA技術を使用して調製できる。環状又は線状の発現ベクターのコンストラクトは、原核生物又は真核生物の宿主細胞において機能的な複製系を含むように調製され得る。複製系は、例えば、ColEl、2μプラスミド、λ、SV40、ウシパピローマウイルスなどに由来し得る。
【0052】
組換え発現ベクターは、必要に応じてそのベクターがDNAベースであるかRNAベースであるかを考慮して、ベクターが導入される宿主の型(例えば、細菌、真菌、植物又は動物)に特異的な調節配列(例えば、転写及び翻訳の開始及び終止コドン)を含み得る。
【0053】
組換え発現ベクターは、形質転換又はトランスフェクトされた宿主の選択を可能にする、1以上のマーカー遺伝子を含み得る。マーカー遺伝子には、殺生物剤耐性(例えば、抗生物質、重金属などに対する耐性)、原栄養性を提供するための栄養要求性宿主における補完などが挙げられる。本発明の発現ベクターに適したマーカー遺伝子には、例えば、ネオマイシン/G418耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ヒスチジノール耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子及びアンピシリン耐性遺伝子が挙げられる。
【0054】
組換え発現ベクターは、CAR、ポリペプチド又はタンパク質(その機能的部分及び機能的変異体を含む)をコードするヌクレオチド配列或いはCAR、ポリペプチド又はタンパク質をコードするヌクレオチド配列と相補的であるか又はそれにハイブリダイズするヌクレオチド配列に作動可能に連結された、天然又は非天然のプロモーターを含み得る。プロモーター(例えば、強い、弱い、誘導性、組織特異的及び発生特異的)の選択は、当業者の技術範囲内である。同様に、ヌクレオチド配列とプロモーターとの組み合わせもまた、当業者の技術範囲内である。プロモーターは、非ウイルスプロモーター若しくはウイルスプロモーター(例えば、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、SV40プロモーター、RSVプロモーター、又はマウス幹細胞ウイルスの末端反復配列中に見出されるプロモーター)であり得る。
【0055】
本発明の組換え発現ベクターは、一過性の発現のため、安定な発現のため、又はその両方のために設計され得る。また、組換え発現ベクターは、構成的発現又は誘導性発現のために製造され得る。
【0056】
さらに、組換え発現ベクターは、自殺遺伝子を含むように製造され得る。本明細書中で使用する場合、用語「自殺遺伝子」とは、その自殺遺伝子を発現する細胞を死に至らしめる遺伝子をいう。自殺遺伝子は、その遺伝子が発現される細胞に対し薬剤(例えば薬物)に対する感受性を付与し、細胞がその薬剤と接触したとき又はその薬剤に曝露されたときに細胞を死に至らしめる遺伝子であり得る。自殺遺伝子は当該分野で公知であり(例えば、Suicide Gene Therapy:Methods and Reviews,Springer,Caroline J.(Cancer Research UK Centre for Cancer Therapeutics at the Institute of Cancer Research,Sutton,Surrey,UK),Humana Press,2004を参照)、例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、シトシンデアミナーゼ、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ及びニトロレダクターゼが挙げられる。
【0057】
本発明の範囲内には、本発明のCAR、ポリペプチド又はタンパク質(その機能的部分又は変異体のいずれかを含む)、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、宿主細胞集団、又は抗体若しくはその抗原結合部分のいずれかを含む、コンジュゲート(例えば、バイオコンジュゲート)が含まれる。コンジュゲート並びにコンジュゲートの合成方法は一般に、当該分野で公知である(例えば、Hudecz,F.,Methods Mol.Biol.298:209−223(2005)及びKirinら,Inorg Chem.44(15):5405−5415(2005)を参照)。
【0058】
本発明の1実施形態はさらに、本明細書中に記載される組換え発現ベクターのいずれかを含む宿主細胞を提供する。本明細書中で使用する場合、用語「宿主細胞」とは、本発明の組換え発現ベクターを含み得る任意の型の細胞をいう。宿主細胞は、真核生物細胞(例えば、植物、動物、真菌又は藻類)であってもよく、原核生物細胞(例えば、細菌又は原生生物)であってもよい。宿主細胞は、培養細胞又は初代細胞(即ち、ヒトなどの生物から直接単離された)であり得る。宿主細胞は、接着細胞又は浮遊細胞(即ち、懸濁物中で増殖する細胞)であり得る。適切な宿主細胞は当該分野で公知であり、例えば、DH5α E.coli細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、サルVERO細胞、COS細胞、HEK293細胞などが挙げられる。組換え発現ベクターを増幅又は複製する目的のために、宿主細胞は、DH5α細胞などの原核生物細胞であり得る。組換えCAR、ポリペプチド又はタンパク質を産生する目的のために、宿主細胞は哺乳動物細胞であり得る。宿主細胞はヒト細胞であり得る。宿主細胞は任意の細胞型のものであり得、任意の組織型に由来し得、任意の発生段階のものであり得るが、宿主細胞は、末梢血リンパ球(PBL)であり得る。宿主細胞はT細胞であり得る。
【0059】
本明細書中の目的のために、T細胞は、任意のT細胞(例えば培養T細胞(例えば初代T細胞)、又は培養T細胞株(例えば、Jurkat、SupT1など)由来のT細胞、又は哺乳動物から得られたT細胞)であり得る。哺乳動物から得られる場合、T細胞は、多数の供給源(血液、骨髄、リンパ節、胸腺又は他の組織若しくは体液が挙げられるが、これらに限定されない)から得ることができる。T細胞はまた、富化又は精製され得る。T細胞はヒトT細胞であり得る。T細胞は、ヒトから単離されたT細胞であり得る。T細胞は、任意の型のT細胞であり得、任意の発生段階のものであり得る(CD4+/CD8+二重ポジティブT細胞、CD4+ヘルパーT細胞(例えば、Th1及びTh2細胞)、CD8+T細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)、末梢血単核球(PBMC)、末梢血白血球(PBL)、腫瘍浸潤細胞、メモリーT細胞、ナイーブT細胞などが含まれるが、これらに限定されない)。T細胞は、CD8+T細胞又はCD4+T細胞であり得る。
【0060】
本発明の1実施形態は、本明細書中に記載される少なくとも1つの宿主細胞を含む細胞集団も提供する。細胞集団は、少なくとも1つの他の細胞(例えば、記載された組換え発現ベクターをいずれも含まない宿主細胞(例えばT細胞)又はT細胞以外の細胞(例えば、B細胞、マクロファージ、好中球、赤血球、肝細胞、内皮細胞、上皮細胞、筋細胞、脳細胞など))に加えて、この組換え発現ベクターのいずれかを含む宿主細胞を含む、不均質な集団であり得る。或いは、細胞集団は、実質的に均質な集団であり得、このとき、集団は、組換え発現ベクターを含む宿主細胞から主に構成される(例えば、組換え発現ベクターを含む宿主細胞から本質的になる)。集団は細胞のクローン集団でもあり得、このとき、集団の全ての細胞は、組換え発現ベクターを含む単一の宿主細胞のクローンであり、その結果、集団の全ての細胞が組換え発現ベクターを含む。本発明の1実施形態において、細胞集団は、本明細書中に記載される組換え発現ベクターを含む宿主細胞を含むクローン集団である。
【0061】
CAR、ポリペプチド、タンパク質(その機能的部分及び変異体を含む)、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞(その集団を含む)及び抗体(その抗原結合部分を含む)(これらは全て、本明細書中以下、集合的に「本発明のCAR材料」と呼ぶ)は、単離及び/又は精製され得る。本明細書中で使用する場合、用語「単離された」は、その天然の環境から取り出されたことを意味する。用語「精製された」又は「単離された」は、絶対的な純度又は単離を必要としない。むしろ、相対的な用語として意図される。従って、例えば、精製された(又は単離された)宿主細胞調製物は、宿主細胞が、身体内のその天然の環境中の細胞よりも純粋である調製物である。かかる宿主細胞は、例えば、標準的な精製技術によって生成され得る。いくつかの実施形態において、宿主細胞の調製物は、その調製物の総細胞含量の少なくとも約50%、例えば少なくとも約70%を宿主細胞が占めるように、精製される。例えば、純度は、少なくとも約50%であり得、約60%、約70%又は約80%より高くてもよく、或いは約100%であり得る。
【0062】
本発明のCAR材料は、医薬組成物などの組成物へと製剤化され得る。これに関して、本発明の1実施形態は、CAR、ポリペプチド、タンパク質、機能的部分、機能的変異体、核酸、発現ベクター、宿主細胞(その集団を含む)及び抗体(その抗原結合部分を含む)のいずれかと、医薬上許容される担体とを含む、医薬組成物を提供する。本発明のCAR材料のいずれかを含む本発明の医薬組成物は、1種より多い本発明のCAR材料(例えば、ポリペプチド及び核酸)又は2種以上の異なるCARを含み得る。或いは、医薬組成物は、他の医薬上活性な薬剤又は薬物(例えば、化学療法剤、例:アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メトトレキサート、パクリタキセル、リツキシマブ、ビンブラスチン、ビンクリスチンなど)と組合わせて、本発明のCAR材料を含み得る。好ましい実施形態において、医薬組成物は、本発明の宿主細胞又はその集団を含む。
【0063】
本発明のCAR材料は、塩(例えば、医薬上許容される塩)の形態で提供され得る。適切な医薬上許容される酸付加塩には、鉱酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸及び硫酸)由来の塩、及び有機酸(例えば、酒石酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、グリコール酸、コハク酸、及びp−トルエンスルホン酸などのアリールスルホン酸)由来の塩が含まれる。
【0064】
医薬組成物に関して、医薬上許容される担体は、従来使用されるいずれの担体であってもよく、化学−物理的考慮事項(例えば、溶解度、及び活性薬剤に対する反応性の欠如)及び投与経路のみによって限定される。本明細書中に記載される医薬上許容される担体(例えば、ビヒクル、アジュバント、賦形剤及び希釈剤)は、当業者に周知であり、公に容易に入手可能である。医薬上許容される担体は、活性薬剤に対し化学的に不活性な担体及び使用条件下で有害な副作用も毒性もない担体であることが好ましい。
【0065】
担体の選択は、本発明の特定のCAR材料によって、並びに本発明のCAR材料を投与するために使用される特定の方法によって、一部決定されよう。従って、本発明の医薬組成物の適切な製剤は多様である。保存剤が使用され得る。適切な保存剤としては、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム及び塩化ベンザルコニウムが挙げられ得る。2種以上の保存剤の混合物が、任意選択で使用され得る。保存剤又はその混合物は、典型的には、総組成物の約0.0001重量%〜約2重量%の量で存在する。
【0066】
適切な緩衝剤としては、例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸、リン酸カリウム並びに種々の他の酸及び塩が挙げられ得る。2種以上の緩衝剤の混合物が、任意選択で使用され得る。緩衝剤又はその混合物は、典型的には、総組成物の約0.001重量%〜約4重量%の量で存在する。
【0067】
医薬製剤中の本発明のCAR材料の濃度は、例えば、約1重量%未満、通常約10重量%又は少なくとも約10重量%から、約20重量%〜約50重量%以上まで変動し得、選択される特定の投与様式に従って、流体の体積及び粘度によって主に選択され得る。
【0068】
投与可能な(例えば、非経口投与可能な)組成物を調製するための方法は、当業者に公知又は明らかであり、例えば以下においてより詳細に記載されている:Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Lippincott Williams&Wilkins;第21版(2005年5月1日)。
【0069】
経口、エアロゾル、非経口(例えば、皮下、静脈内、動脈内、筋内、皮内、腹腔内(interperitoneal)及び髄腔内)及び局所投与のための以下の製剤は、単なる例示であり、何ら限定ではない。本発明のCAR材料を投与するために1より多い経路が使用され得、ある場合には、特定の経路が、別の経路よりも迅速かつ有効な応答を提供し得る。
【0070】
経口投与に適した製剤は、以下を含むか又は以下からなり得る:(a)希釈剤(例えば、水、生理食塩水又はオレンジジュース)中に溶解させた有効量の本発明のCAR材料などの、液体溶液;(b)カプセル、サシェ剤(sachet)、錠剤、ロゼンジ及びトローチ(それぞれ、固体又は顆粒として所定量の活性成分を含む);(c)粉末;(d)適切な液体中の懸濁物;及び(e)適切な乳濁物。液体製剤は、医薬上許容される界面活性剤の添加あり又はなしのいずれかの、水及びアルコール(例えば、エタノール、ベンジルアルコール及びポリエチレンアルコール)などの希釈剤を含み得る。カプセル形態は、例えば、界面活性剤、滑沢剤及び不活性フィラー(例えば、ラクトース、スクロース、リン酸カルシウム及びコーンスターチ)を含む、通常の硬ゼラチン型及び軟ゼラチン型のものであり得る。錠剤形態は、以下の1以上を含み得る:ラクトース、スクロース、マンニトール、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸、結晶セルロース、アラビアゴム、ゼラチン、グアーガム、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、並びに他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、崩壊剤、加湿剤、保存剤、香味料及び他の薬理学的に適合性の賦形剤。ロゼンジ形態は、香料(通常、スクロース及びアラビアゴム又はトラガント)中に本発明のCAR材料を含み得、アメ(pastille)は、当該分野で公知のかかる賦形剤に加えて、不活性基剤(例えば、ゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアラビアゴム)、乳濁物、ゲルなどを含む中に、本発明のCAR材料を含む。
【0071】
非経口投与に適した製剤には、水性又は非水性の等張無菌注射溶液(抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、及び製剤を意図したレシピエントの血液と等張にする溶質を含み得る)並びに水性及び非水性の無菌懸濁物(懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤及び保存剤を含み得る)が挙げられる。本発明のCAR材料は、医薬上許容される界面活性剤(例えば、石鹸又は洗剤)、懸濁剤(例えば、ペクチン、カルボマー、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はカルボキシメチルセルロース)又は乳化剤及び他の医薬的アジュバントの添加あり又はなしの、医薬的担体(例えば、無菌の液体又は液体混合物(水、生理食塩水、水性デキストロース及び関連の等溶液、アルコール(例えば、エタノール又はヘキサデシルアルコール)、グリコール(例えば、プロピレングリコール又はポリエチレングリコール)、ジメチルスルホキシド、グリセロール、ケタール(例えば、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール)、エーテル、ポリ(エチレングリコール)400、油、脂肪酸、脂肪酸エステル若しくはグリセリド、又はアセチル化脂肪酸グリセリドを含む))中の生理学的に許容される希釈剤中で投与され得る。
【0072】
非経口製剤で使用され得る油には、石油、動物油、植物油又は合成油が挙げられる。油の具体的例としては、落花生油、大豆油、ゴマ油、綿実油、コーン油、オリーブ油、ペトロラタム及び鉱油が挙げられる。非経口製剤での使用に適切な脂肪酸には、オレイン酸、ステアリン酸及びイソステアリン酸が挙げられる。オレイン酸エチル及びミリスチン酸イソプロピルが、適切な脂肪酸エステルの例である。
【0073】
非経口製剤での使用に適した石鹸には、脂肪酸のアルカリ金属、アンモニウム及びトリエタノールアミン塩が挙げられ、適切な洗剤には以下が挙げられる:(a)カチオン性洗剤(例えば、ジメチルジアルキルアンモニウムハライド及びアルキルピリジニウムハライド)、(b)アニオン性洗剤(例えば、アルキル、アリール及びオレフィンスルホン酸塩、アルキル、オレフィン、エーテル及びモノグリセリド硫酸塩及びスルホコハク酸塩)、(c)非イオン性洗剤(例えば、脂肪アミンオキシド、脂肪酸アルカノールアミド及びポリオキシエチレンポリプロピレンコポリマー)、(d)両性洗剤(例えば、アルキル−β−アミノプロピオン酸塩及び2−アルキル−イミダゾリン第4級アンモニウム塩)、並びに(e)それらの混合物。
【0074】
非経口製剤は典型的に、例えば、溶液中に約0.5重量%〜約25重量%の本発明のCAR材料を含むであろう。保存剤及び緩衝液が使用され得る。注射部位での刺激を最小化又は排除するために、かかる組成物は、例えば、約12〜約17の親水性−親油性バランス(HLB)を有する1種以上の非イオン性界面活性剤を含み得る。かかる製剤中の界面活性剤の量は、典型的には、例えば、約5重量%〜約15重量%の範囲であろう。適切な界面活性剤としては、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ソルビタンモノオレエート)、及びプロピレンオキシドとプロピレングリコールとの縮合によって形成される、疎水性塩基とエチレンオキシドとの高分子量付加物が挙げられる。非経口製剤は、単一用量又は複数用量の密封容器(例えば、アンプル及びバイアル)中に提示され得、使用直前の無菌液体賦形剤(例えば注射用水)の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存され得る。即時注射溶液及び懸濁物は、以前に記載された種類の無菌の粉末、顆粒及び錠剤から調製できる。
【0075】
注射可能な製剤は、本発明の1実施形態に従う。注射可能な組成物のための有効な医薬的担体の要件は、当業者に周知である(例えば、Pharmaceutics and Pharmacy Practice,J.B.Lippincott Company,Philadelphia,PA,Banker及びChalmers編,頁238−250(1982)、及びASHP Handbook on Injectable Drugs,Toissel,第4版,頁622−630(1986)を参照)。
【0076】
局所製剤(経皮薬物放出に有用なものを含む)は、当業者に周知であり、本発明の実施形態の皮膚への適用に関して適切である。本発明のCAR材料は、単独で又は他の適切な成分と組み合わせて、吸入を介して投与されるエアロゾル製剤にされ得る。これらのエアロゾル製剤は、加圧された許容可能な噴霧剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素など)中に入れられ得る。これらはまた、例えばネブライザー又はアトマイザー中の非加圧製剤のための医薬として製剤化され得る。かかるスプレー製剤は、粘膜にスプレーするためにも使用され得る。
【0077】
「有効量」又は「治療に有効な量」とは、個体における癌を予防又は治療するのに適切な用量をいう。治療的使用又は予防的使用に有効な量は、例えば、治療される疾患又は障害の病期及び重篤度、患者の年齢、体重及び全般的健康状態、並びに処方医師の判断に依存するであろう。用量のサイズもまた、選択された活性剤、投与方法、投与のタイミング及び頻度、特定の活性剤の投与に伴い得る任意の有害な副作用の存在、性質及び程度、並びに所望の生理学的効果によって決定されよう。種々の疾患又は障害が、おそらく各投与経路又は種々の投与経路で本発明のCAR材料を使用する、複数の投与を含む長期治療を必要とし得ることが、当業者に理解されよう。本発明の限定を意図しない例として、本発明のCAR材料の用量は、約0.001〜約1000mg/治療される対象の体重kg/日、約0.01〜約10mg/kg体重/日、約0.01mg〜約1mg/kg体重/日であり得る。
【0078】
本発明の目的のために、投与される本発明のCAR材料の量又は用量は、合理的な時間枠にわたって対象又は動物において治療応答又は予防応答をもたらすのに十分でなければならない。例えば、本発明のCAR材料の用量は、投与時点から約2時間以上の期間(例えば、約12時間〜約24時間又はそれ以上)において、抗原に結合するため、又は疾患を検出、治療若しくは予防するために、十分でなければならない。特定の実施形態において、この期間はさらに長くてもよい。用量は、本発明の特定のCAR材料の効力及び動物(例えば、ヒト)の状態、並びに治療する動物(例えば、ヒト)の体重によって決定されるであろう。
【0079】
本発明の目的のために、例えば、本発明のCAR、ポリペプチド又はタンパク質を発現するT細胞の所与の用量を哺乳動物に投与した際に、かかるT細胞によって標的細胞が溶解される又はIFN−γが分泌される程度を、種々の用量のT細胞をそれぞれ与えた哺乳動物のセット間で比較することを含むアッセイが、哺乳動物に投与される出発用量を決定するために使用され得る。特定の用量の投与の際に標的細胞が溶解される又はIFN−γが分泌される程度は、当該分野で公知の方法によってアッセイできる。
【0080】
本発明のCAR材料を1種以上のさらなる治療剤と共に投与する場合、1種以上のさらなる治療剤は、哺乳動物に共投与され得る。「共投与(coadministering)」とは、本発明のCAR材料が1種以上のさらなる治療剤の効果を増強でき、また1種以上のさらなる治療剤が本発明のCAR材料の効果を増強できるように十分に近接した時間で、1種以上のさらなる治療剤及び本発明のCAR材料を投与することを意味する。これに関して、本発明のCAR材料が最初に投与されかつ1種以上のさらなる治療剤が2番目に投与され得、1種以上のさらなる治療剤が最初に投与されかつ本発明のCAR材料が2番目に投与され得る。或いは、本発明のCAR材料及び1種以上のさらなる治療剤は、同時に投与され得る。CAR材料と共投与され得る例示的な治療剤は、IL−2である。IL−2は、本発明のCAR材料の治療効果を増強すると考えられる。宿主細胞又は細胞集団が宿主に投与される本発明の方法の目的のために、細胞は、宿主に対して同種又は自己の細胞であり得る。
【0081】
本発明の医薬組成物、CAR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞又は細胞集団は、宿主における疾患を治療又は予防する方法で使用され得ることが企図される。特定の理論に束縛されないが、細胞によって発現された場合に、CAR(又は関連の本発明のポリペプチド若しくはタンパク質)が、CARが特異的な抗原(例えばVEGFR−2)を発現する細胞に対する免疫応答を媒介できるように、本発明のCARは、生物活性(例えば、抗原(例えばVEGFR−2)を認識する能力)を有する。これに関して、本発明の1実施形態は、宿主における疾患を治療又は予防するのに有効な量で、本発明のCAR材料のいずれかを宿主に投与することを含む、宿主における疾患の治療又は予防方法を提供する。
【0082】
本発明の1実施形態は、本発明のCAR材料を投与する前に宿主をリンパ枯渇させる(lymphodeplete)ことをさらに含む。
【0083】
本発明の方法に関して、癌は、以下のいずれかを含む任意の癌であり得る:急性リンパ球性癌、急性骨髄性白血病、胞巣状横紋筋肉腫、膀胱癌、骨癌、脳癌、乳癌、肛門、肛門管若しくは肛門直腸(anorectum)の癌、眼の癌、肝内胆管の癌、関節の癌、頸部、胆嚢若しくは胸膜の癌、鼻、鼻腔若しくは中耳の癌、口腔の癌、外陰部の癌、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性癌、結腸癌、食道癌、子宮頸癌、線維肉腫、消化管カルチノイド腫瘍、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、腎臓癌、喉頭癌、白血病、液性腫瘍、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、悪性中皮腫、肥満細胞腫、黒色腫、多発性骨髄腫、上咽頭癌、非ホジキンリンパ腫、卵巣癌、膵臓癌、腹膜、網及び腸間膜の癌、咽頭癌、前立腺癌、直腸癌、腎癌、皮膚癌、小腸癌、軟組織癌、固形腫瘍、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、尿管癌、並びに膀胱癌。好ましくは、癌は、血管新生表現型によって特徴付けられる癌、例えば、固形腫瘍又は血液悪性腫瘍である。
【0084】
用語「治療」及び「予防」並びにそれらの派生語は、本明細書中で使用する場合、100%又は完全な治療又は予防を必ずしも意味しない。むしろ、当業者が潜在的な有益効果又は治療効果を有すると認識する、変動する程度の治療又は予防が存在する。これに関して、本発明の方法は、哺乳動物中の癌の任意のレベルの治療又は予防の任意の量を提供し得る。さらに、本発明の方法が提供する治療又は予防は、治療又は予防される疾患(例えば癌)の1以上の状態又は症状の治療又は予防を含み得る。また、本明細書の目的のために、「予防」は、疾患又はその症状若しくは状態の発症を遅延させることを包含し得る。
【0085】
標的細胞を認識する能力及び抗原特異性についてCARを試験する方法は、当該分野で公知である。例えば、Clayら,J.Immunol.,163:507−513(1999)は、サイトカイン(例えば、インターフェロン−γ、顆粒球/単球コロニー刺激因子(GM−CSF)、腫瘍壊死因子a(TNF−α)又はインターロイキン2(IL−2))の放出を測定する方法を教示している。さらに、CAR機能は、Zhaoら,J.Immunol.,174:4415−4423(2005)に記載されるように、細胞毒性(cellular cytoxicity)の測定によって評価できる。標的細胞を認識する能力及び抗原特異性についてCARを試験する方法は、実施例の項目で本明細書中に記載される。
【0086】
生検は、個体からの組織及び/又は細胞の取り出しである。かかる取り出しは、取り出された組織及び/又は細胞に対して実験法を行なうために、個体から組織及び/又は細胞を収集するためのものであり得る。この実験法は、個体が特定の状態又は疾患状態(disease−state)を有する及び/又はそれらに罹患しているか否かを決定するための実験を含み得る。状態又は疾患は、例えば癌であり得る。
【0087】
宿主における癌の存在を検出する本発明の方法の1実施形態に関して、宿主の細胞を含有するサンプルは、全細胞、その溶解物、又は全細胞溶解物の画分(例えば、核画分若しくは細胞質画分、全タンパク質画分、又は核酸画分)を含むサンプルであり得る。サンプルが全細胞を含む場合、細胞は、宿主の任意の細胞、例えば、任意の臓器又は組織の細胞(血球又は内皮細胞を含む)であり得る。
【0088】
上記医薬組成物に加えて、本発明のCAR材料は、包接錯体(例えば、シクロデキストリン包接錯体)又はリポソームとして製剤化され得る。リポソームは、特定の組織に本発明のCAR材料を標的化するために機能し得る。リポソームは、本発明のCAR材料の半減期を増加させるためにも使用され得る。例えば、Szokaら,Ann.Rev.Biophys.Bioeng.,9,467(1980)並びに米国特許第4,235,871号、同第4,501,728号、同第4,837,028号及び同第5,019,369号に記載されるように、リポソームを調製するための多くの方法が利用可能である。
【0089】
本発明の実施形態に関連して有用な送達系には、本発明の組成物の送達が、治療される部位の感作の前に、及び感作を引き起こすのに十分な時間で生じるような、時限放出(time−released)、遅延放出(delayed release)及び徐放(sustained release)送達系が挙げられ得る。本発明の組成物は、他の治療剤又は療法と合わせて使用され得る。かかる系は、本発明の組成物の反復投与を回避することにより、対象及び医師の利便性を向上させることができ、本発明の特定の組成物実施形態に特に適したものであり得る。
【0090】
多くの型の放出送達系が利用可能であり、当業者に公知である。これらには、ポリ(ラクチド−グリコリド)、コポリオキサラート(copolyoxalate)、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシ酪酸及びポリ無水物などの、ポリマーベースの系が挙げられる。上記ポリマーの薬物含有マイクロカプセルは、例えば米国特許第5,075,109号に記載されている。送達系には、ステロール(例えば、コレステロール、コレステロールエステル)及び脂肪酸又は中性脂肪(例えば、モノグリセリド、ジグリセリド及びトリグリセリド)を含む脂質;ヒドロゲル放出系;シラスティック(sylastic)系;ペプチドベースの系;ワックスコーティング;従来の結合剤及び賦形剤を使用した圧縮錠剤;部分融合移植物(partially fused implant)などの、非ポリマー系も含まれる。具体例としては以下が挙げられるがこれらに限定されない:(a)米国特許第4,452,775号、同第4,667,014号、同第4,748,034号及び同第5,239,660号に記載されるような、活性組成物がマトリックス内にある形態で含まれる、侵食性(erosional)の系、及び(b)米国特許第3,832,253号及び同第3,854,480号に記載されるような、活性成分が制御された速度でポリマーから浸透する拡散系。さらに、ポンプベースのハードウェア送達系も使用され得、そのうちいくつかは、移植のために適合している。
【0091】
多数のトランスフェクション技術が、当該分野で一般に公知である(例えば、Grahamら,Virology,52:456−467(1973);Sambrookら(上記);Davisら,Basic Methods in Molecular Biology,Elsevier(1986);及びChuら,Gene,13:97(1981)を参照)。トランスフェクション法には、リン酸カルシウム共沈殿(例えば、Grahamら(上記)を参照)、培養細胞への直接的マイクロインジェクション(例えば、Capecchi,Cell,22:479−488(1980)を参照)、エレクトロポレーション(例えば、Shigekawaら,BioTechniques,6:742−751(1988)を参照)、リポソーム媒介性の遺伝子移入(例えば、Manninoら,BioTechniques,6:682−690(1988)を参照)、脂質媒介性の形質導入(例えば、Felgnerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84:7413−7417(1987)を参照)及び高速微粒子(microprojectile)を使用する核酸送達(例えば、Kleinら,Nature,327:70−73(1987)を参照)が挙げられる。
【0092】
当業者は、本発明の本発明のCAR材料が、本発明のCAR材料の治療効力又は予防効力を改変によって増加させるために、多数の方法で改変され得ることを容易に理解するであろう。例えば、本発明のCAR材料は、直接的又はリンカーを介して間接的に、標的化部分にコンジュゲート化され得る。化合物(例えば、本発明のCAR材料)を標的化部分にンジュゲート化する実務は、当該分野で公知である。例えば、Wadwaら,J.Drug Targeting 3:111(1995)及び米国特許第5,087,616号を参照。
【0093】
或いは、本発明のCAR材料は、デポー(depot)形態に改変され得、その結果、投与される身体中に本発明のCAR材料が放出される様式は、時間及び身体内の位置に関して制御される(例えば、米国特許第4,450,150号を参照)。本発明のCAR材料のデポー形態は、例えば、本発明のCAR材料及び多孔性又は非多孔性の材料(例えばポリマー)を含む移植可能な組成物であり得、ここで本発明のCAR材料は、材料に封入されるか又は材料を通して拡散され、及び/又は非多孔性材料の分解によって拡散される。次いでデポーは、身体内の所望の位置に移植され、本発明のCAR材料は、所定の速度で移植物から放出される。
【0094】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するが、その範囲を限定するものであると決して解釈すべきではないことは当然である。
【実施例】
【0095】
マウス
純系メスC57BL/6(B6)マウスは、National Cancer Institute−Frederick Cancer Research and Development Center(Frederick,MD)から購入した。BALB/cマウスは、Jackson Laboratory(Bar Harbor,ME)から購入した。全ての動物は、National Institutes of Healthの動物施設,Bethesda,MDにおいて、病原体なしの特定の条件で収容した。7〜9週齢のマウスを全ての実験で使用し、それらの実験は、National Institutes of Health,Bethesda,MDの動物実験倫理委員会の指針に従って実施した。
【0096】
細胞培養
これらの実施例で使用したマウス腫瘍株は、B16−F10(黒色腫)、MCA−205(肉腫)、MC38(結腸腺癌)、MB49(膀胱癌腫)、MC17−51(肉腫)、CT−26(結腸癌腫)、Renca(腎癌腫)、4T1(乳腺腺癌)、C−1498(骨髄性白血病)、P815(肥満細胞腫)、EL−4(リンパ腫)及びNIH−3T3(マウス胚繊維芽細胞)であった。B16−F10、MCA−205、MC38及びNIH−3T3細胞は、Surgery Branch,National Cancer Institute,National Institutes of Health(Bethesda,MD)の細胞培養物寄託機関から得た。CT26及びRenca細胞は、Weiss博士(NCI−Frederick,Frederick,MD)から得た。SVEC4−10EHR1、MS1及びSVRは、American Type Culture Collection(ATCC,Manassas,VA)から購入した、形質転換されたマウス内皮細胞株であった。eBEND.3も、形質転換されたマウス内皮細胞株である(Frank Cuttita博士,Angiogenesis Core Facility at NCI,NIH,Gaithersburg,MDのご厚意による提供)。マウスVEGF−2タンパク質を安定して発現するMB49−Flk1及びNIH3T3−Flk1細胞は、全長マウスVEGFR−2をコードするVSV−G偽型レンチウイルスベクターで、MB49及びNIH−3T3細胞株を形質導入することによって作製された(X.Liら,Stem Cells 25:2987(2007))(Lena Claesson−Welsh教授,Uppsala University,Swedenのご厚意による提供)。
【0097】
これらの実施例で使用した末梢血リンパ球(PBL)は、Surgery Branch,National Cancer Institute,NIH,Bethesda,MDにおいて治療された転移性黒色腫患者の白血球アフェレーシスによって得られた凍結保存PBMCであった。これらの実施例で使用した以下の正常初代ヒト細胞は、LONZA Walkersville,Inc.(Walkersville,MD)から調達した:微小血管内皮細胞(HMVEC)(肺由来(HMVEC−L)又は真皮由来(HMVEC−D))、臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)、小気道上皮細胞(SAEC)、気管支上皮細胞(HBEC)、腎上皮細胞(HRE)、乳腺上皮細胞(HMEC)、前立腺上皮細胞(PrEC)、平滑筋筋芽細胞(HSMM)、ヒト初代皮膚繊維芽細胞。使用した他の細胞株は、ヒト胎児胚腎臓繊維芽細胞細胞株293及びKDRを発現する安定な形質転換体である293−KDRであった(Maria Parkhurst博士,Surgery Branch,National Cancer Institute,NIH,Bethesda,MDのご厚意による提供)。レトロウイルスパッケージング細胞株293GP及びPG13は、CTAAから得た。ヒトエコトロピックパッケージング細胞株PhoenixTM Ecoは、Gary Nolan,Stanford University,Stanford,CAの厚意により提供された(Orbigen Inc.,San Diego,CAからも入手可能)。
【0098】
上記全てのマウス腫瘍株は、R10(10%熱不活化ウシ胎仔血清(FBS)、100U/mlペニシリン及び100μg/mlストレプトマイシン(全てInvitrogenTMCorporation,Grand Isle,NYから)を補充したRPMI1640培地)中で維持した。マウス内皮細胞株、NIH−3T3細胞、293、293−KDR、293GP、PG13及びPhoenixTMEco細胞は全て、D10(10%熱不活化FBS、100U/mlペニシリン及び100μg/mlストレプトマイシンを補充したDMEM(InvitrogenTMCorporation))中で維持した。全ての初代ヒト細胞は、その製造業者(Lonza Walkersville,Inc.)から購入したそれぞれの培養培地中で維持した。マウスT細胞は、10%熱不活化FBS、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、0.05mM 2−メルカプトエタノール、0.1mM MEM非必須アミノ酸、1mMピルビン酸塩、2nM L−グルタミン(全てInvitrogenTM Corporationから)を含み、30IU/mlの組換えヒトインターロイキン(rhIL)−2(Chiron,Emeryville,CA)を補充したRPMI1640(本明細書中以下CM−Mと呼ぶ)中で培養した。初代ヒトリンパ球は、50%RPMI1640、50%AIM−V培地、0.05mMメルカプトエタノール(全てInvitrogenTM Corporationから)、300IU/ml rhIL−2及び10%熱不活化ヒトAB血清(Gemini Bio−Products,WestSacramento,CA)を含む培養培地(CM−H)中で培養した。全ての細胞は、5%CO2及び95%湿度下、37℃で培養した。
【0099】
実施例1
この実施例は、DC101抗体の抗原結合ドメイン、細胞外ヒンジドメイン、T細胞受容体膜貫通ドメイン及び細胞内T細胞受容体シグナル伝達ドメインを含むCARをコードするヌクレオチド配列を作製する方法を実証する。
【0100】
全てのコンストラクトは、以前に記載された(Hughes,MS.ら、Hum.Gene Ther.16:457−472(2005))ベクターのMFG設計のスプライシング及び最適化開始コドンを組み込む、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)末端反復配列(LTR)(in vivoサイレンシングに対し比較的抵抗性であることが知られる)を含むレトロウイルスベクター(MSGV)中にクローニングした。
【0101】
DC101−CD828BBZ CARは、マウスVEGFR−2に対する一本鎖抗体(ScFv)(以下、DC101 ScFvと呼ぶ)を含む。DC101 ScFvは、218bpリンカーによって融合された、マウスVEGFR−2に特異的なラットIgG(DC101;Imclone Systems Inc.)の重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む。DC101−CD828BBZ CARは、マウスCD8α鎖のヒンジ及び膜貫通(TM)領域(Genbank識別子NM001081110のヌクレオチド580〜795に対応)にインフレームで連結させ、次いでこれを、CD28(Genbank識別子NM007642のヌクレオチド618〜740に対応)、4−1BB(Genbank識別子J04492のヌクレオチド779〜913に対応)及びCD3ζ(Genbank識別子NM001113391のヌクレオチド313〜635に対応)分子由来のマウス細胞内シグナル伝達配列に融合させる。
【0102】
DC101−CD828Zコンストラクトは、4−1BBシグナル伝達ドメインを欠くことを除き、類似の配置及び順序で、DC101−CD828BBZ CARと同じ成分を有する。
【0103】
全長の806bp scFv cDNA(DC101 ScFvと称する)を、以下のようなポリメラーゼ連鎖(PCR)増幅及びアセンブリ技術を使用して構築した。重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)のコード配列を、別々に増幅し、続くPCR反応によってリンカーを用いて組換えた。第一セットのPCR反応を実施して、リーダー配列(LS)及び重鎖可変領域(VH)、並びにまた軽鎖可変領域(VL)を増幅した。プラスミドDC101 HC(クローン8.6)pCR2.1−TOPO及びDC101 LC(クローン3.2)pCR2.1−TOPO(それぞれ、DC101抗体(Dale Ludwig,Imclone Systems Inc.の厚意による提供)の重鎖コード配列及び軽鎖コード配列を含む)をテンプレートとして第一のPCR反応で使用して、DC101 ScFvのLS+VH、及びVL成分を作製した。重鎖フォワードプライマーHeavy−F(配列番号22)を、重鎖リーダー配列の5’末端に及ぶように設計した。これは、その5’末端にXhoI部位を含む。軽鎖リバースプライマーVL−R(配列番号23)は、その3’末端にNotI部位を含む。軽鎖フォワードプライマーVL−F(配列番号24)は、218bpのリンカー配列の一部を含むように設計した。これは、重鎖リバースプライマーVH−R(配列番号25)と対応する。
【0104】
第二のPCR反応において、第一のPCR産物(即ち、重鎖LS+VH断片及びVL断片)を、最終DC101 ScFv断片を生じるHeavy−F及びVL−Rプライマーセットを使用してアセンブル及び増幅した。合成したDC101 ScFv DNA断片を配列確認した。
【0105】
以前に記載したマウスCD8αヒンジのヌクレオチド配列並びにマウスCD28、4−1BB及びCD3ζの膜貫通ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインを、2つの異なる配置(即ち、CD828BBZ又はCD828Z)の順に、インフレームでアセンブルした。これらの断片両方を、5’末端にNotI部位並びに3’末端にSalI及びBamH1部位を有するように設計し、GeneArt AG(Regensburg,Germany)で合成した。これらの配列をコードするプラスミドを、NotI及びBamHI制限酵素(New England Biolabs(登録商標),Ipswich,MA)で消化し、同様に消化したMSGVベクタープラスミド(Zhaoら 2009(近刊)により記載)中に個々にライゲーションした。このサブクローニング工程により、2つの暫定レトロウイルスコンストラクト:即ち、MSGV−4D5−CD828BBZ及びMSGV−4D5−CD828Zが作製された。DC101 CARをコードするレトロウイルスベクターMSGV−DC101−CD828BBZ(DC101−CD828BBZとも呼ぶ)及びMSGV−DC101−CD828Z(DC101−CD828Zとも呼ぶ)を作製するために、XhoI及びNotI消化したDC101 ScFv断片を、MSGV−4D5−CD828BBZ及びMSGV−4D5−CD828Zプラスミド中に直接ライゲーションして、4D5断片を置換した。
【0106】
この実施例は、DC101 ScFvセグメント、マウスCD8αヒンジ及び膜貫通セグメント、並びに細胞内マウスT細胞シグナル伝達CD28、4−1BB及びCD3ζセグメントを含むCARをコードするヌクレオチド配列を作製する方法を実証した。この実施例は、DC101 ScFvセグメント、マウスCD8αヒンジ及び膜貫通セグメント、並びに細胞内マウスT細胞シグナル伝達CD28及びCD3ζセグメントを含むCARをコードするヌクレオチド配列を作製する方法も実証した。
【0107】
実施例2
この実施例は、KDR−1121抗体の抗原結合ドメイン、細胞外ヒンジドメイン、T細胞受容体膜貫通ドメイン及び細胞内T細胞受容体シグナル伝達ドメインを含むCARをコードするヌクレオチド配列を作製する方法を実証する。
【0108】
ヒトVEGFR−2(KDR)特異的scFvは、KDR−1121抗体(ヒトKDRタンパク質に対する完全にヒトのIgG)に由来した(本明細書中、以下KDR1121−ScFvと呼ぶ)。KDR−1121 VL及びVHのアミノ酸配列は、刊行された報告に由来した(D.Luら,J.Biol.Chem.278:43496(2003))。218bpリンカーによって連結されたVL配列及びVH配列を含むコドン最適化KDR ScFvを設計し、webベースのDNAコドン最適化アルゴリズム(Gao,W.ら、Biotechnol.Prog.20,443−448(2004))を使用し、ソフトウェアによって生成されたプライマー(配列番号29〜72)を使用して合成した。合成されたKDR1121 ScFv DNA断片を配列確認し、以前に記載されたヒトCD28及びCD3ζ細胞内シグナル伝達部分(J.Maherら,Nat.Biotechnol.20:70(2002))に連結されたヒトCD28ヒンジ及び膜貫通配列を含むMSGVベースのベクター中にインフレームでサブクローニングして、MSGV−KDR1121CD28Zベクターを得た。
【0109】
MSGV−KDR1121CD28BBZベクターを得るために、KDR1121 ScFvを、標準的な分子生物学的技術を使用して、ヒトCD28、4−1BB及びCD3ζ分子の細胞質シグナル伝達ドメインに連結されたヒトCD8α鎖のヒンジ及び膜貫通配列を含む類似のMSGVベクター(Zhaoら、J.Immunol.2009近刊)中にインフレームでクローニングした。本書に記載した全てのベクターの配列の完全性は、DNAシークエンシングで確認した。
【0110】
この実施例は、KDR−1121 ScFvセグメント、ヒトCD8αヒンジ及び膜貫通セグメント、並びに細胞内ヒトT細胞シグナル伝達CD28、4−1BB及びCD3ζセグメントを含むCARをコードするヌクレオチド配列を作製する方法を実証した。この実施例は、KDR−1121 ScFvセグメント、ヒトCD8αヒンジ及び膜貫通セグメント、並びに細胞内ヒトT細胞シグナル伝達CD28及びCD3ζセグメントを含むCARをコードするヌクレオチド配列を作製する方法も実証した。
【0111】
実施例3
この実施例は、DC101抗体の抗原結合ドメイン、細胞外ヒンジドメイン、T細胞受容体膜貫通ドメイン及び細胞内T細胞受容体シグナル伝達ドメインを含むCARをコードする組換え発現ベクターを含むウイルスを作製する方法を実証する。
【0112】
PG13細胞に、9mgのプラスミドDNA(実施例1に記載したように調製したMSGV−DC101CD828BBZ又はMSGV−DC101CD828Z)を、LipofectamineTM 2000トランスフェクション試薬(InvitrogenTM)を使用してトランスフェクトした。これらのトランスフェクト細胞からの上清を、24時間後に回収し、0.45mm孔サイズのマイクロフィルタ(MiUex−Ha;MiUipore,Bedford,MA)で濾過し、8mg/ml硫酸プロタミン(Sigma)の存在下でPhoenixTM Eco細胞の形質導入に使用した。形質導入を次の日に繰り返した。16時間後、MSGV−DC101CD828BBZ又はMSGV−DC101CD828Z CARを形質導入したPhoenixTM Eco細胞を回収し、限界希釈クローニングに供した。クローンを増殖させ、高力価のクローンを、以前に記載されたようなドットブロット力価決定法(M.Onoderaら,Hum.Gene Ther.8:1189(1997))によって選択した。6つの最も高い力価のクローンからレトロウイルス上清を作製した。簡潔に述べると、10cm2の組織培養プレート(Nunc(登録商標),Cole−Parmer(登録商標),VernonHills,IL)に、10mlのD10中5x106細胞を播種した。次の日に培地交換(10ml)を行った。各クローンから24時間後に上清を回収し、以下の実施例5に記載するようにマウスT細胞を形質導入し、以下の実施例6に記載されるように、形質導入されたT細胞の表面上のCAR発現を測定することによって評価した。高頻度でマウスT細胞を形質導入しかつ高レベルでCARを発現する能力を有する2つのコンストラクトのそれぞれについて、PhoenixTM Ecoプロデューサークローンを、続く実験でマウスT細胞を形質導入するためのレトロウイルス上清の産生のために選択した。
【0113】
この実施例は、DC101 ScFvセグメント、マウスCD8αヒンジ及び膜貫通セグメント、並びに細胞内マウスT細胞シグナル伝達CD28、4−1BB及びCD3ζセグメントを含むCARをコードする組換え発現ベクターを含むウイルスを作製する方法を実証した。この実施例は、DC101 ScFvセグメント、マウスCD8αヒンジ及び膜貫通セグメント、並びに細胞内マウスT細胞シグナル伝達CD28及びCD3ζセグメントを含むCARをコードする組換え発現ベクターを含むウイルスを作製する方法も実証した。
【0114】
実施例4
この実施例は、KDR−1121抗体の抗原結合ドメイン、細胞外ヒンジドメイン、T細胞受容体膜貫通ドメイン及び細胞内T細胞受容体シグナル伝達ドメインを含むCARをコードする組換え発現ベクターを含むウイルスを作製する方法を実証する。
【0115】
ヒトVEGFR−2(KDR)に特異的なCARを発現する組換えレトロウイルスベクターのセットを構築した。KDR1121−hCD828BBZと称するKDR CARベクターは、完全にヒトの抗体KDR1121(D.Luら,J.Biol.Chem.278:43496(2003))(これは、ヒトKDR抗原に対して特異的である)由来のScFvを含んだ。KDR1121 ScFvを、ヒトCD8α由来のヒンジ及び膜貫通配列に連結し、次いでこれを、TCRのヒトCD28、4−1BB及びCD3ζドメイン由来の細胞内配列に融合させた。
【0116】
KDR1121−hCD28Zと称する第二のベクターは、ヒトCD28分子のヒンジ及び膜貫通配列並びに細胞内シグナル伝達ドメインに連結され、次いでTCRのCD3ζドメインの細胞質配列に連結されたKDR1121 ScFvを含んだ。
【0117】
MSGV−KDR1121−CD828BBZ及びMSGV−KDR1121−CD828Zレトロウイルスベクターを産生する安定なPG13プロデューサー細胞クローンを、以下の変更を伴い、実質的には実施例3に記載したとおりに作製した。PhoenixTM Eco細胞に、LipofectamineTM 2000トランスフェクション試薬(InvitrogenTM)を使用して、9mgのプラスミドDNA(MSGV−KDR1121−CD828BBZ又はMSGV−KDR1121−CD828Z)をトランスフェクトした。これらのトランスフェクト細胞から上清を24時間後に回収し、PG13細胞の形質導入に使用した。形質導入を次の日に繰り返した。16時間後、形質導入したPG13細胞を限界希釈クローニングに供した。2つのコンストラクトのそれぞれについて6つの高力価ウイルス産生PG13クローンを、ドットブロット力価決定法によって同定した(M.Onoderaら,Hum.Gene Ther.8:1189(1997))。これらのクローンのそれぞれから実施例3に記載したように上清を取得し、以下の実施例5に記載されるようにヒトT細胞を形質導入し、以下の実施例15に記載されるように形質導入されたT細胞の表面上のCAR発現を測定することによって評価した。高頻度でマウスT細胞を形質導入しかつ高レベルでKDR CARを発現する能力を有するコンストラクトのそれぞれについて、PG13プロデューサークローンを、続く実験でヒトT細胞を形質導入するためのレトロウイルス上清の産生のために選択した。
【0118】
この実施例は、KDR−1121 ScFvセグメント、ヒトCD8αヒンジ及び膜貫通セグメント、並びに細胞内ヒトT細胞シグナル伝達CD28、4−1BB及びCD3ζセグメントを含むCARをコードする組換え発現ベクターを含むウイルスを作製する方法を実証した。この実施例は、KDR−1121 ScFvセグメント、ヒトCD8αヒンジ及び膜貫通セグメント、並びに細胞内ヒトT細胞シグナル伝達CD28及びCD3ζセグメントを含むCARをコードする組換え発現ベクターを含むウイルスを作製する方法も実証した。
【0119】
比較例1
この例は、DC101抗体の抗原結合ドメイン、細胞外ヒンジドメイン及びT細胞受容体膜貫通ドメインをコードするが細胞内T細胞受容体シグナル伝達ドメインを欠く組換え発現ベクターを含むウイルスを作製する方法を実証する。この例は、SP6抗体の抗原結合ドメイン、細胞外ヒンジドメイン、T細胞受容体膜貫通ドメイン及び細胞内T細胞受容体シグナル伝達ドメインを含むCARをコードする組換え発現ベクターを含むウイルスを作製する方法も実証する。
【0120】
MSGV−DC101−CD8(DC101−CD8とも呼ぶ)を作製するために、DC101−CD8ヌクレオチド配列を、プライマーセットHeavy F(配列番号22)及びリバースプライマー(配列番号26)(これらは、TAA終止コドンとその後のSalI制限部位を含む)を使用するPCR反応によってMSGV−DC101−CD828Zプラスミドから増幅した。PCR産物をXhoI及びSalIで消化し、同様に消化したMSGV−DC101−CD828Zプラスミド中にライゲーションして、DC101−CD828Z断片を置換した。DC101−CD8コンストラクトは、細胞内T細胞シグナル伝達配列を欠き、DC101 ScFv、マウスCD8αヒンジ及びマウスCD8αTM配列のみを含む。
【0121】
MSGV−SP6−CD828BBZ CAR(SP6−CD828BBZ又はSP6 CARと称する)を以下のように作製した。SP6 ScFv断片を、プライマー:SP6フォワード(配列番号27)(XhoI部位を含む)及びSP6リバース(配列番号28)(NotI部位を含む)を使用して、SP6−ScFvをコードするプラスミド(G.Gross,T.Waks,Z.Eshhar,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A 86:10024(1989))からPCRにより増幅した。SP6 ScFvをコードするプラスミドは、Z.Eshhar教授(The Weizmann Institute of Science,Israel)のご厚意により提供された。次いで、PCR産物をXhoI及びNotI酵素で消化し、同様に消化したMSGV−DC101CD828BBZプラスミド中にクローニングして、DC101 ScFvを置換した。SP6 ScFvは、ハプテン2,4,6−トリニトロフェニル(TNP)を認識する。SP6−CD828BBZ(SP6 CAR)コンストラクトは、SP6 ScFv並びにマウスCD8αヒンジ及び膜貫通セグメント、並びに細胞内マウスT細胞シグナル伝達CD28、4−1BB及びCD3ζセグメントを含む。
【0122】
DC101−CD8及びSP6−28Z CARをコードするレトロウイルスを、一過的に産生させた。簡潔に述べると、293GP細胞を、ポリ−D−リジン被覆ディッシュ(BD Biosciences,San Jose,CA)に、10mlのD10中5x106細胞の密度でプレートした。次の日、培養培地を、抗生物質なしの10mlのD10で置換し、細胞に、LipofectamineTM 2000(InvitrogenTM Corp.)を使用して、RD114エンベロープタンパク質をコードするプラスミド(C.D.Porterら,Hum.Gene Ther.7:913(1996))と共に、MSGV−DC101−CD8又はMSGV−SP6−CD828BBZプラスミドのいずれかをトランスフェクトした。トランスフェクト細胞を37℃でインキュベートし、6〜8時間後、培養培地をD10で置換した。細胞を、さらに36〜48時間37℃でインキュベートした。レトロウイルスを含む上清をディッシュから回収し、遠心分離して細胞デブリを除去し、マウスT細胞を形質導入するために使用した。
【0123】
この例は、DC101 ScFvセグメント並びにヒトCD8αヒンジ及び膜貫通セグメントをコードするが細胞内ヒトT細胞シグナル伝達CD28、4−1BB及びCD3ζセグメントを欠く組換え発現ベクターを含むウイルスを作製する方法を実証した。この例は、SP6 ScFvセグメント、ヒトCD8αヒンジ及び膜貫通セグメント、並びに細胞内ヒトT細胞シグナル伝達CD28、4−1BB及びCD3ζセグメントを含むCARをコードする組換え発現ベクターを含むウイルスを作製する方法も実証した。
【0124】
実施例5
この実施例は、DC101抗体又はKDR−1121抗体の抗原結合ドメイン、細胞外ヒンジドメイン、T細胞受容体膜貫通ドメイン及び細胞内T細胞受容体シグナル伝達ドメインを含むCARをコードする組換え発現ベクターを含む宿主細胞を作製する方法を実証する。
【0125】
脾臓を回収し、40μmナイロンフィルターを通して破砕した。赤血球溶解後、CD3+脾細胞を、マウスT細胞ネガティブ単離キット(Dynal(登録商標),InvitrogenTM)を使用して精製し、2μg/ml ConA(Sigma−Aldrich(登録商標),St Louis,MO)及び1ng/ml組換えマウス(rm)IL−7(R&D Systems(登録商標),Minneapolis,MN)の存在下CM−M中で培養した。24時間後、細胞を回収し、1200rpmで5分間室温で遠心分離し、新たなCM−M中に1x106細胞/mlで再縣濁した。凍結保存ヒトPBLをCM−H中37℃で解凍し、洗浄し、50ng/mlマウス抗ヒトCD3抗体(Orthoclone OKT(登録商標)3,Ortho Biotech,Horsham,PA)を補充したCM−H中1x106/mlの濃度で再縣濁した。2日間の培養後、細胞を回収し、OKT3なしの新たなT細胞培養培地中に1x106細胞/mlで再縣濁した。
【0126】
マウス及びヒトのリンパ球を、以前に記載されたように(H.Hanenbergら,Nat.Med.2:876(1996))レトロウイルスベクターで予め被覆した培養ディッシュ上で、同様の形質導入プロトコルを用いて実施例3又は実施例4に記載したように産生されたレトロウイルスを使用して形質導入した。培養プレートをベクターで被覆するために、組織培養物処理なしの6ウェルプレート(BD Biosciences)を、25μg/ml組換えフィブロネクチン断片(RetroNectin(登録商標);Takara Bio.Inc,Japan)でまず処理した。次いで、4〜5mlのレトロウイルスベクター上清をこれらのプレートに添加し、プレートを32℃で2000gで2時間スピンした。次いで、上清を除去し、刺激したマウスT細胞又はヒトリンパ球を各ウェルに1x106細胞/ml(2〜3ml/ウェル)で添加し、プレートを室温で1500rpmで10分間スピンした。次いで、細胞を37℃で一晩インキュベートし、この手順を次の日に繰り返し(合計2回の形質導入)、その後、細胞を5%CO2インキュベータ中37℃で増殖させ、必要に応じて分割して、0.5x106細胞/mlと2x106細胞/mlとの間の細胞密度を維持した。形質導入の4日後又は5日後、リンパ球を、導入遺伝子産物の存在についてフローサイトメトリーでアッセイし、活性について抗原特異的増殖及びサイトカイン放出アッセイでアッセイした。
【0127】
この実施例は、KDR−1121又はDC101のScFvセグメント、CD8αヒンジ及び膜貫通セグメント、並びに細胞内T細胞シグナル伝達CD28、4−1BB及びCD3ζセグメントを含むCARをコードする組換え発現ベクターを含む宿主細胞を作製する方法を実証した。この実施例は、KDR−1121又はDC101のScFvセグメント、CD8αヒンジ及び膜貫通セグメント、並びに細胞内T細胞シグナル伝達CD28及びCD3ζセグメントを含むCARをコードする組換え発現ベクターを含むウイルスを作製する方法も実証した。
【0128】
実施例6
この実施例は、実施例1の核酸で形質導入した宿主細胞が、DC101 ScFvセグメント、ヒンジ及び膜貫通セグメント、並びに細胞内T細胞シグナル伝達セグメントを含むCARを発現したことを実証する。
【0129】
マウスT細胞を、実施例5に記載したように、レトロウイルスベクターDC101−CD828Z又はDC101−CD828BBZ CARを用いてレトロウイルスにより形質導入したか、或いは、比較例1に記載したようにDC101−CD8又はSP6−CD828BBZベクターで形質導入したか、又は空のMSGVベクター(CAR配列をいずれも欠く)で形質導入した。形質導入されたCD3+初代マウスT細胞上のレトロウイルスによりコードされる導入遺伝子産物の表面発現を、可溶性マウスVEGFR−2−ヒトIgG−FC融合タンパク質及びPEコンジュゲート化抗ヒトIgG−FCを使用してフローサイトメトリーにより決定した。
【0130】
形質導入の4日後に、細胞を、抗マウスCD8抗体及びCAR特異的試薬で共染色し、FACS分析して、CD8+及びCD8−T細胞サブセット中の導入遺伝子産物の発現を決定した。形質導入の4日後の、レトロウイルスにより形質導入されたマウスT細胞上のDC101 CARの検出は、可溶性マウス(m)VEGFR2−hIgG.FC融合タンパク質(R&D Systems(登録商標),Minneapolis,MD)による間接的免疫蛍光法と、その後のフィコエリトリン(PE)標識ヤギ抗ヒトIgG−FC抗体(eBioscienceTM,San Diego,CA)での染色とによって達成した。簡潔に述べると、5x105細胞を、2μgのウシ血清アルブミン(BSA;Sigma−Aldrich(登録商標))又は種特異的可溶性mVEGFR2−hIgG.FCタンパク質と共に、4℃で45分間インキュベートした。次いで、細胞をFACS緩衝液(リン酸緩衝化生理食塩水、1%FBS含有)で洗浄し、PEコンジュゲート化抗ヒトIgG−FC(αhIgG.FC)で染色した。この工程で、マウスT細胞を、製造業者が推奨する適切な濃度でペリジニンクロロフィル(PerCP)標識した抗マウスCD8(BD Pharmingen,San Diego,CA)で4℃で20〜30分間共染色し、次いでFACS緩衝液中で洗浄し再縣濁した。2μgウシ血清アルブミン(BSA)と共にインキュベートし、次いでPEコンジュゲート化抗ヒトIgG−FC(αhIgG−FC)及びPerCP標識抗マウスCD8で染色した細胞は、コントロールとして機能した。
【0131】
SP6 CARの発現を決定するために、形質導入したマウスT細胞をFACs緩衝液中で洗浄し再縣濁した。5x105細胞のアリコートを、ビオチン標識ポリクローナルヤギ抗マウスF(ab)2抗体(抗Fab,Jackson Immunoresearch,West Grove,PA)又はビオチン標識正常ポリクローナルヤギIgG抗体(Jackson Immunoresearch)と共に4℃で30分間インキュベートした。細胞をFACS緩衝液で1回洗浄し、再縣濁して、フルオレセインイソチオシアネート(fluorescein isothocyanate)(FITC)標識ストレプトアビジン(BD Pharmingen)及びAPC標識抗マウスCD8(BD Pharmingen)で4℃で25分間共染色し、次いでFACS緩衝液で洗浄し、FACS緩衝液中に再縣濁した。CD4+細胞及びCD8+細胞は共に、同様のCAR発現プロフィールを示した。
【0132】
結果を表3及び表4A〜4Bに示す。
【0133】
【表3】
【0134】
表3において、形質導入されたマウスT細胞中の形質導入効率及びCAR発現レベルは、パーセント導入遺伝子ポジティブ細胞(%形質導入)及び発現の平均蛍光強度(MFI)によってそれぞれ示される。データは、5つの異なる実験由来の平均±SEMで示される。表3に示すように、DC101 CAR発現ベクターは、ConA/IL−7活性化マウスT細胞を、効率的にかつ一貫して形質導入し(約79〜約86%の範囲)、この細胞は、形質導入の5日後にほぼ(約90%)CD8+であった。
【0135】
【表4−1】
【0136】
【表4−2】
【0137】
表4Aに示されるように、4−1BBシグナル伝達部分を含むDC101 CAR由来のCAR発現の強度は、全ての形質導入実験(n=5)において、4−1BB配列を欠くベクター由来の発現強度よりも一貫して低かった。
【0138】
この実施例は、DC101 ScFvセグメント、細胞外ヒンジ及び膜貫通セグメント、並びに細胞内T細胞シグナル伝達セグメントを含むCARを発現する実施例1の核酸で宿主細胞を形質導入する際の形質導入効率を実証した。
【0139】
実施例7
この実施例は、DC101−CD828Z及びDC101−CD828BBZ CARで改変されたT細胞が、増殖によって測定されるin vitroの抗原特異的応答を生じるのに有効であることを実証する。
【0140】
固定化されたVEGFR−2タンパク質に応答して増殖するDC101−CAR操作されたT細胞の能力を測定した。未処理のマイクロタイタープレートを、PBS中に希釈した5μg/mlのウシ血清アルブミン(BSA,Sigma−Aldrich(登録商標))、5μg/ml可溶性マウスVEGFR2−hIgG.FC融合タンパク質(R&D Systems(登録商標))、5μg/ml可溶性マウスVEGFR2−hIgG.FC融合タンパク質(R&D Systems(登録商標))、2μg/mlの精製抗マウスCD3抗体(クローン145−2C11,BD Pharmingen)、又は2μg/ml精製マウス抗ヒトCD3抗体(Orthoclone OKT(登録商標)3)を用いて、37℃で3時間個々に被覆した。マウスT細胞を、実施例5に記載したように、以下のレトロウイルスベクターで形質導入した:SP6−CD828BBZ、DC101−CD8、DC101−CD828BBZ、DC101−CD828Z又は空ベクター。
【0141】
形質導入の4日後、細胞を洗浄し、そのそれぞれのCM中に再縣濁し、抗原被覆したマイクロタイタープレート上200μlCM中にウェル当たり105細胞でプレートした。細胞を3日間培養し、1μCi(0.037MBq)[メチル−3H]チミジン/ウェル((PerkinElmer(登録商標)Life Sciences,Boston,MA)で、培養の最後の18時間にわたりパルスした。細胞をTomtec(登録商標)細胞ハーベスター(PerkinElmer(登録商標),Wallac,Turku,Finland)で回収し、Wallac MicroBeta(登録商標)液体シンチレーションカウンター(PerkinElmer(登録商標),Waltham,MA)で分析して、取り込まれた放射性チミジンの量を決定した。このアッセイを3連のウェルで実施した。結果を図1に示す(値は平均±SEMで示す)。
【0142】
図1に示されるように、種々のベクターで形質導入されたT細胞間では、固定化された抗マウスCD3抗体に対する応答に差異はなかったが、インタクトな細胞内シグナル伝達配列を含むDC101−CAR(DC101−CD828Z及びDC101−CD828BBZ)で操作されたT細胞だけが、増殖によって測定されるように、プレート結合標的VEGFR−2タンパク質に特異的に応答した。さらに、DC101−CARで形質導入された細胞は、4−1BBシグナル伝達配列あり又はなしの両方で、プレート結合標的VEGFR−2に応答して、in vitroで増殖した。
【0143】
この実施例は、DC101−CD828Z及びDC101−CD828BBZ CAR改変されたT細胞が、VEGFR−2タンパク質による刺激に応答してin vitroで増殖することを実証した。
【0144】
実施例8
この実施例は、DC101−CD828Z及びDC101−CD828BBZ CAR改変されたT細胞が、IFN−γ分泌によって測定される抗原特異的なin vitro応答を生じるのに有効であることを実証する。
【0145】
形質導入されたマウス細胞を、IFN−γ放出アッセイにおいて、プレート結合VEGFR−2タンパク質に対する特異的反応性について試験した。ヒトPBLを、実施例5に記載したように、以下のレトロウイルスベクターで形質導入した:SP6−CD828BBZ、DC101−CD8、DC101−CD828BBZ、DC101−CD828Z又は空ベクター。形質導入された細胞を、実施例7に記載されたように、200μlCM中で、抗原被覆したマイクロタイタープレート上で培養した。細胞培養物上清を、1日後又は2日後に回収し、市販のELISAキット(Endogen,Rockford,IL)を使用して、IFN−γについて酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)で分析した。アッセイは三連のウェルで実施した。結果を図2に示す(値は平均±SEMで示す)。
【0146】
図2に示されるように、種々のベクターで形質導入されたT細胞間では、固定化された抗マウスCD3抗体に対する応答に差異はなかったが、インタクトな細胞内シグナル伝達配列を含むDC101−CAR(DC101−CD828Z及びDC101−CD828BBZ)で操作されたT細胞だけが、IFN−γ分泌によって測定されるように、プレート結合標的VEGFR−2タンパク質に特異的に応答した。さらに、DC101−CARは、4−1BBシグナル伝達配列あり又はなしの両方で、プレート結合標的VEGFR−2に応答してIFN−γを分泌した。
【0147】
この実施例は、DC101−CD828Z及びDC101−CD828BBZ CAR改変されたT細胞が、VEGFR−2タンパク質による刺激に応答してin vitroでIFN−γを分泌することを実証した。
【0148】
実施例9
【0149】
この実施例は、DC101−CD828Z及びDC101−CD828BBZ CAR改変されたT細胞が、VEGFR−2を発現するマウス細胞株をin vitroで特異的に認識することを実証する。
【0150】
マウス内皮細胞株及び種々の組織起源の腫瘍株を、フローサイトメトリーによってVEGFR−2の細胞表面発現について試験した。簡潔に述べると、細胞を回収し(接着細胞を、細胞スクレイパー(Corning Incorporated,Corning,NY)を使用して回収した)、FACS緩衝液中で洗浄し、FACS緩衝液中に再縣濁した。5x105細胞のアリコートを、2μgの組換えDC101抗体と共に4℃で45分間インキュベートした。次いで、細胞をFACS緩衝液中で2回洗浄し、2μgの可溶性mVEGFR2−hIgG.FCタンパク質及びPE標識ヤギ抗ヒトIgG.FC抗体と共に、4℃でそれぞれ30分間連続してインキュベートした。次いで、細胞を洗浄し、フローサイトメトリーで分析した。前記プロトコルの第一インキュベーション工程においてDC101抗体の代わりにラットIgG1アイソタイプコントロール抗体を用いたこと以外同様に染色した細胞は、コントロールとして機能した。フローサイトメトリー取得を、FACS CaliburTMフローサイトメータ(BD Biosciences)を用いて実施した。データを取得し、CellQuestTMソフトウェア(Becton Dickson)を使用して分析した。前方小角度光散乱(forward angle light scatter)及びヨウ化プロピジウム染色の組み合わせを使用して、死細胞を除外した(gate out)。種々の細胞型におけるVEGFR−2染色の特異性及び発現の平均蛍光強度(MFI)を、アイソタイプコントロール抗体で染色したそれぞれの細胞型を使用して決定した。
【0151】
VEGFR−2レベルは試験した細胞株間で異なっていた。形質転換された全てのマウス内皮細胞株(SVEC4−10EHR1、bEND.3、SVR及びMS1)は、高レベルのVEGFR−2発現を示したが、細胞株のほとんどは、低レベル(MC38、CT26、4T1及びMCA205)、又は検出不能なレベル(MC17−51、B16−F10、RENCA、C4198、MB49及びNIH−3T3)の細胞表面VEGFR−2タンパク質のいずれかを示した。2つのVEGFR−2ネガティブ細胞株MB49及びNIH−3T3に、VEGFR−2を発現するレンチウイルスベクターを安定に形質導入し(MB49−Flk1及び3T3−Flk1)、次のin vitro T細胞機能アッセイにおいてポジティブコントロールとして使用した。
【0152】
初代マウスT細胞を、形質導入しなかったか、又は実施例5に記載されたように以下のレトロウイルスベクターで形質導入した:SP6−CD828BBZ、DC101−CD8、DC101−CD828BBZ、DC101−CD828Z又は空ベクター。4日後、細胞を、単独で培養したか、又は200μlCM中の以下のマウス細胞のうち1つと共に共培養した:SVEC4−10EHR1、bEND−3、SVR、MS1、MC38、4T1、P815、MCA205、MC17−51、EL−4、C1498、B16−F10、MB49、NIH−3T3、並びにFLK−1を発現するように形質導入した細胞株:MB49−FLK−1及び3T3−FLK−1。IFN−γ分泌を、実施例8に記載のようにアッセイした。結果を図3に示す(三連のウェルの平均値±SEMで示す)。
【0153】
図3に示されるように、IFN−γ応答は、VEGFR−2ポジティブ細胞株3T3−Flk1、MB49−Flk1、SVEC4−10EHR1、bEND−3、SVR、MS1、4T1及びMC38に応答して特異的に検出された。IFN−γ分泌の量は、標的細胞上に発現されたVEGFR−2のレベルと高度に相関した(DC101−CD828BBZについてR2=0.9652;DC101−CD828ZについてR2=0.9584)。反応性は、インタクトなT細胞シグナル伝達ドメインを含むDC101−CARを発現するT細胞に限定された。4−1BBシグナル伝達配列あり又はなしで、DC101−CARの性能に有意な差はなかった。
【0154】
さらに、標的抗原認識の特異性を、抗体遮断実験によって確認した。標的細胞(bEnd.3、MB49又はMB49−FLK−1)を、10μg/mlのラットIgG1、抗マウスVEGFR−1抗体又は抗マウスVEGFR−2抗体(DC101)のいずれかと共に、37℃で1時間インキュベートし、次いで、モック形質導入したか或いは空ベクター又はSP6−CD828BBZ CAR若しくはDC101−CD828BBZをコードするレトロウイルスベクターで形質導入した初代マウスT細胞と共に共培養した。上清を24時間後に回収し、ELISAによってIFN−γを評価した。図12に示されるように、抗VEGFR−2抗体DC101は、VEGFR−2+内皮bEND.3及びMB49−Flk−1腫瘍細胞株に対するDC101−CAR形質導入T細胞の認識を遮断したが、抗マウスVEGFR−1又はアイソタイプコントロール抗体のいずれでも、遮断は観察されなかった。
【0155】
この実施例は、DC101−CD828Z及びDC101−CD828BBZ CAR改変されたT細胞が、VEGFR−2発現細胞によるin vitro刺激に応答してin vitroでIFN−γを分泌すること、及びIFN−γの分泌量が、標的細胞により発現されるVEGFR−2のレベルと高度に相関することを実証した。
【0156】
実施例10
この実施例は、養子移入されたDC101 CAR発現T細胞が、in vivoで樹立された腫瘍の増殖を阻害できることを実証する。
【0157】
治療の効力を決定するために、DC101 CAR形質導入した細胞を使用して、樹立された血管新生化した皮下(s.c.)腫瘍を保持するマウスを処置した。
【0158】
500000の腫瘍(B16−F10、MC38、MCA205、CT26又はRenca)細胞を、5匹のマウス(6〜7週齢)の群にs.c.注射した。10日目と12日目との間に、腫瘍面積が約50mm2の平均サイズに達した時点で、マウスに5Gy TBIを致死未満で照射し、DC101−CD828BBZ CAR又は空ベクターで形質導入した20x107の同系マウスT細胞を、rhIL−2と合わせて注射した。コントロール群は、rhIL−2単独を受けたか処置を受けなかった。
【0159】
腫瘍の開始量は40〜80mm2の範囲であった。特記しないかぎり、養子移入の当日に、腫瘍保持マウスの骨髄非破壊的な(5Gy)全身放射線照射(TBI)によって、リンパ球減少症を誘導した。付随して、マウスを、特記しない限り3日間にわたり少なくとも6〜8時間の間隔で、1日2回、6用量のrhIL−2(100,000CU/0.5mL/用量/マウス)の腹腔内(i.p.)注射によって、静脈内(i.v.)処置した。必要な場合、5匹のB16−F10腫瘍保持マウスに、単一用量の組換えDC101抗体又はラットIgG1(両方とも、500mlPBS中800mg/用量/マウス)をi.p.注射した。全ての実験は二重盲検無作為化様式で実施し、独立して少なくとも2回、類似の結果を有した。各処置群は5匹のマウスを含んだ。一連の盲検腫瘍測定値を得、直交する直径の積を、±SEMでプロットした。腫瘍治療に関する統計を、各データポイントにおける腫瘍増殖曲線の線形の傾きに基づくWilcoxon Rank Sum Testを使用して計算した。累積生存時間は、Kaplan−Meier法によって計算し、ログランク検定によって分析した。0.05未満のP値を、統計的に有意とみなした。
【0160】
結果を図4A〜4B、5A〜5B及び14A〜14Fに示す。DC101−CD828BBZ CARを発現するT細胞(黒三角)は、同系マウス中の免疫原性の低いいくつかの腫瘍(B16−F10(図4A;P=0.009)、MC38(図4B;P=0.009)、MCA205(図14A、P=0.025)、CT26(図14C、P=0.009)及びRENCA(図14E、P=0.008)腫瘍が含まれる)に対する顕著な増殖阻害効果を媒介できた。DC101−CD828BBZ CARを発現するT細胞はまた、B16−F10(図5A)、MC38(図5B)、MCA205(図14B)、CT26(図14D)及びRENCA(図14F)腫瘍保持マウスの生存率を増加させた。未処置のマウス(黒丸)、空ベクターを形質導入したT細胞で処置したマウス(黒四角)、又はIL−2単独で処置したマウス(黒菱形)において、抗腫瘍効果は見られなかった。
【0161】
この実施例は、養子移入されたDC101−CD828BBZ CAR発現T細胞が、in vivoでB16−F10及びMC38腫瘍の増殖を阻害し、腫瘍保持マウスの生存を改善することを実証した。
【0162】
実施例11
この実施例は、DC101 CARを形質導入したT細胞の抗腫瘍効果が、細胞媒介性であることを実証する。
【0163】
樹立されたB16−F10腫瘍を保持するマウスを、5Gy TBIで致死未満に照射し、実施例10に記載したのと類似の処置を受けさせた:DC101−CD828BBZ CAR(黒三角)又は空ベクター(黒四角)を形質導入した細胞(図6A)。この実験で示される5匹のマウスのさらなる群に、rhIL−2と合わせて、単一用量の800μg/マウス組換えDC101抗体(白三角)又はラットIgG1コントロール抗体(白菱形)を受けさせた(図6A)。コントロール群は、図6Aに示すように、rhIL−2単独(黒菱形)を受けたか、未処置のままにした(黒丸)。
【0164】
図6Aに示されるように、DC101−CD828BBZ CARを発現するT細胞(黒三角)は、腫瘍増殖を阻害できた。しかし、他の処置群(組換えDC101抗体での処置を含む)は、樹立されたB16腫瘍の増殖の制御に対し影響を有さなかった。
【0165】
B16−F10腫瘍保持マウスを、DC101−CD828BBZを形質導入した同系T細胞2x107、1x107、5x106若しくは2x106+rhIL−2で処置し、未処置にし、rhIL−2単独で処置し、又は空ベクターを形質導入したT細胞2x107+rhIL−2で処置した。B16−F10黒色腫に対するDC101−CAR形質導入T細胞の治療効果は、投与した細胞数の一次関数であった(図15)。腫瘍増殖の遅延は、2x106の低さのDC101−CAR形質導入T細胞で達成された(P=0.008)。
【0166】
2x107のDC101−CAR改変T細胞の単一用量による腫瘍治療研究のほとんどにおいて、2〜3週間にわたって腫瘍増殖の迅速な阻害が存在し、この寛解期間の間に、親腫瘍は壊死して繊維状になったが、生存腫瘍の小さい小結節が、親腫瘍の周辺で再出現し、多くのマウスにおいて最終的に再生した。
【0167】
しかし、有効な腫瘍治療及び腫瘍なし生存が、DC101−CARを形質導入したT細胞5x106及びrhIL−2による3回連続の毎週用量で処置した、樹立されたB16−F10又はMCA205腫瘍を保持するマウスで達成された(図16A〜16D)。樹立された皮下B16又はMCA205腫瘍を保持するマウスに、5Gy TBIを致死未満で照射し、rhIL−2と共に、DC101−CD28BBZ又は空ベクターで形質導入した同系マウスT細胞2x107の単一用量を注射した。いくつかの群には、7〜10日間間隔で、DC101−CAR又は空ベクターを形質導入したT細胞5x106の3連続用量を受けさせ、細胞移入と付随して、rhIL−2の1日2回用量を3日間受けさせた。処置なしの群は、T細胞もrhIL−2も受けなかった。腫瘍面積に関する結果を図16A(B16−F10)及び図16B(MCA205)に示し、生存に関する結果を図16C(B16−F10)及び図16D(MCA205)に示す。
【0168】
この実施例は、DC101−CD828BBZ CAR発現T細胞の養子移入は腫瘍増殖を阻害できたが、組換え抗体による処置が腫瘍増殖を阻害できなかったことを実証した。
【0169】
実施例12
この実施例は、細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを欠くDC101コンストラクトで形質導入したT細胞が、in vivoで抗腫瘍治療効果を誘導できないことを実証する。
【0170】
実施例10に記載したように、樹立された皮下B16−F10腫瘍を保持するマウスを、5Gy TBIで致死未満で照射し、以下で形質導入した同系マウスT細胞20x106で処置した:DC101−CD828BBZ CARベクター、SP6−CD8S8BBZ CARベクター、DC101−CD8ベクター(これはT細胞シグナル伝達ドメインを欠く)又は空ベクター。T細胞で処置した全てのマウス群は、実施例10に記載されるようにrhIL−2投与を受けた。コントロール群の動物は、T細胞でもrhIL−2でも処置しなかった。
【0171】
図6Bに示されるように、DC101 ScFvを発現するが細胞内T細胞シグナル伝達分子を欠くT細胞(白三角)は、樹立されたB16腫瘍の増殖制御に対し影響を有さなかった。さらに、未処置マウス(黒丸)及び無関係のCAR(SP6CAR)(白菱形)又は空ベクター(黒四角)で操作されたT細胞で処置したマウスは、腫瘍阻害を誘導できなかった(図6B)。しかし、DC101 CAR発現T細胞(黒三角)は、腫瘍増殖を阻害できた。
【0172】
この実施例は、DC101 CAR発現T細胞の養子移入は腫瘍増殖を阻害できたが、DC101を発現するが細胞内T細胞シグナル伝達分子を欠くT細胞及び無関係のCARを発現するT細胞での処置は、それぞれ腫瘍増殖を阻害できなかったことを実証した。
【0173】
実施例13
この実施例は、DC101 CARを形質導入した細胞が、4−1BB細胞内シグナル伝達ドメインあり及びなしの両方で、in vivo腫瘍増殖を阻害したことを実証する。
【0174】
図7に示されるように、実施例10に記載するように、樹立された皮下B16−F10腫瘍を保持する5匹のマウスの群を、5Gy TBIで致死未満で照射し、4−1BB細胞内シグナル伝達ドメインを含む(DC101−mCD828BBZ、菱形)若しくは4−1BB細胞内シグナル伝達ドメインなし(DC101−CD828Z;三角)のDC101 CAR又は空ベクター(四角)を形質導入した同系T細胞20x106をi.v.注射した。コントロール群はT細胞治療を受けなかった(丸)(図7)。黒塗りの記号で示される全てのT細胞処置群は、外因性rhIL−2投与を受け、白抜きの記号で示されるT細胞処置群は、rhIL−2を受けなかった(図7)。全てのin vivo腫瘍処置研究において、マウスを無作為化し、腫瘍サイズを盲検様式で測定した。腫瘍の直交する直径の積を平均±SEMで示す。実験は少なくとも2回独立して実施し、類似の結果であった。
【0175】
図7に示されるように、4−1BB細胞内シグナル伝達配列を含むDC101 CARベクター(DC101−CD828BBZ)及び4−1BB細胞内シグナル伝達配列を欠くDC101 CARベクター(DC101−CD28Z)を形質導入したT細胞は、同様に良好な性能を示し、樹立された嵩高い腫瘍の増殖遅延において、統計的に区別不能であった(P=0.1)。
【0176】
この実施例は、DC101−CD828BBZを発現するT細胞及びDC101−CD28Zを発現するT細胞の養子移入が、それぞれin vivoで腫瘍増殖を阻害できたことを実証した。
【0177】
実施例14
この実施例は、4−1BBシグナル伝達セグメントがDC101 CAR改変T細胞の持続をin vivoで増強することを実証する。
【0178】
実施例10に記載したようにDC101 CAR(DC101−CD828BBZ又はDC101−CD828Z)を形質導入したT細胞及び外因性rhIL−2を受けた処置群のそれぞれ由来の2匹のマウス由来の腫瘍サンプルのFACS分析を、T細胞移入の30日後に回収し、実施例6に記載したように、フローサイトメトリーによってDC101 CAR発現T細胞の存在について個々に分析した。腫瘍サンプルを機械的に壊して単細胞懸濁物にし、Ficollでの勾配遠心分離によって低密度細胞画分を調製した。DC101 CARの細胞表面発現を、BSA又は可溶性マウスVEGFR−2−ヒトIgG.FC融合タンパク質と、その後のPEコンジュゲート化ヤギ抗ヒトIgG.FC抗体と共に、細胞を連続的にインキュベートすることによって検出した。細胞は、APCコンジュゲート化ラット抗マウスCD3で共染色した。前方及び側方散乱プロフィールのリンパ球ゲート領域中のDC101 CAR発現CD3+T細胞のパーセントを、表5に示す。
【0179】
【表5】
【0180】
表5に示されるように、DC101−CD828BBZ CARベクター操作したT細胞で処置したマウスは、DC101 CARを保有するが4−1BBを欠くT細胞で処置したマウスと比較して、腫瘍腫瘍中のDC101 CAR発現CD3+細胞が4〜5倍多かった。
【0181】
この実施例は、4−1BBが、腫瘍部位での養子移入された抗原特異的T細胞の持続を増強することを実証した。
【0182】
実施例15
この実施例は、DC101−CARを形質導入したT細胞が、腫瘍部位に効率的に移動する(traffic)ことを実証する。
【0183】
C57BL/6マウスに、2×105のB16−F10腫瘍細胞を皮下注射した。実施例10に記載したように、10日目及び12日目に、マウスを5Gyで照射し、rhIL−2と合わせて、DC101 CAR(DC101−CD828BBZ)又は空ベクターを形質導入したThy1.1+同系T細胞20×106で静脈内処置した。
【0184】
表6Aに示した時点で、各群由来の個々のマウス由来の腫瘍及び脾臓を切り出し、単細胞懸濁物を得るために処理し、実施例6に記載したように、フローサイトメトリーで分析した。脾臓は、40μmナイロンフィルターを通して破砕した。赤血球溶解後、脾細胞を単離した。腫瘍の単細胞懸濁物を40μmナイロン細胞ストレイナー(BD Biosciences)を使用して作製し、Lympholyte(登録商標)−M(Cedarlane Laboratories,Burlington,Canada)を使用した密度勾配遠心分離によってリンパ球をさらに分離した。脾臓及び腫瘍サンプルから単離したマウスT細胞の表現型を、製造業者の推奨に従ってアロフィコシアニン(APC)コンジュゲート化ラット抗マウスCD3及びPE標識マウス抗ラットThy1.1抗体(共にBD Pharmingenから)を用いて細胞を直接染色することにより、決定した。細胞アリコートを、それぞれの蛍光色素標識したアイソタイプコントロール抗体で染色して、染色の特異性を決定した。リンパ球ゲートされた集団中のCD3+Thy1.1+細胞のパーセンテージを、フローサイトメトリーで決定した。細胞を取得し、CellQuestソフトウェア(BD Biosciences)を使用して分析した。腫瘍細胞調製物及び脾細胞の全細胞集団中のリンパ球ゲートされた領域中の細胞を、分析に含めた。四分円を、アイソタイプコントロール抗体染色に基づいて樹立した。代表的なFACSデータを表6Aに示し(CD3+Thy1.1+細胞のパーセンテージ)、独立した実験からの3匹の異なるマウスから得たプールしたデータを、表6Bに示す(CD3+Thy1.1+細胞のパーセンテージ)。
【0185】
【表6−1】
【0186】
【表6−2】
【0187】
3日目までに、養子移入したT細胞は、それらの遺伝的改変にかかわらず、脾臓及び腫瘍に同様に輸送された。しかし、6日目及び9日目には、腫瘍への輸送は、DC101 CARを付与したT細胞でかなり大きかった。VEGFR−2特異的T細胞の腫瘍部位への輸送及び腫瘍部位におけるホーミングの増加は、複数の実験で再現性よく観察された。これらの知見を、Thy1.1特異的抗体を用いて腫瘍切片を染色した後、共焦点顕微鏡を使用して、養子移入したThy1.1+T細胞を直接可視化することによってさらに確認した。
【0188】
腫瘍サンプルを、ACTの4日後にDC101−CD828BBZ CAR又は空ベクターを形質導入したT細胞及びrhIL−2で処置したB16−F10腫瘍保持C57BL/6マウスから得た。腫瘍切片を、核を示すための4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)と共に、移入されたT細胞上で発現されたThy1.1抗原又は内皮細胞マーカーCD31について染色し、蛍光顕微鏡を用いて分析した。細胞移入の4日後に、DC101−CARを形質導入したThy1.1+T細胞で処置したマウスから採取した腫瘍サンプルは、空ベクターを形質導入した細胞で処置したものよりもたくさんのThy1.1+T細胞を含んだ。この時点で、腫瘍血管は、腫瘍血管中の内皮細胞と密接に関連した、DC101−CAR形質導入T細胞を含んだ。さらに、内皮細胞マーカーCD31で染色した腫瘍切片は、空ベクターを形質導入したT細胞で処置したマウスと比較して、DC101−CARを形質導入したT細胞で処置したマウスの腫瘍において、血管数の減少を示した。
【0189】
輸送の増強及び腫瘍中のDC101−CAR形質導入T細胞数の増加が、CARを形質導入したT細胞と空ベクターを形質導入したT細胞との間のケモカイン受容体の発現における何らかの固有の差異の結果であるかどうか決定するため、富化した脾臓CD3+T細胞を、空ベクター又はDC101−CD828BBZ、DC101−CD828Z若しくはSP6−CD828BBZをコードするベクターで形質導入した。形質導入の5日後、細胞を、in vivoのT細胞のホーミング及び/又は効率的な輸送に関与することが知られているCD62L分子及びケモカイン受容体(CXCR4、CXCR3、CCR9及びCCR7)の細胞表面発現について、FACS分析した。
【0190】
T細胞の輸送に関与することが知られているケモカイン受容体CCR7、CCR9、CXCR−3及びCXCR−4、並びにホーミング分子L−セレクチン(CD62L)の発現レベルにおいて、DC101−CD828BBZ、DC101−CD828Z、SP6−CD828BBZを発現するレトロウイルスベクター又は空ベクターで形質導入したT細胞間には差異はなかった。従って、輸送の増強及び腫瘍中のDC101−CAR形質導入T細胞数の増加は、抗原非依存的機構における何らかの固有の差異(例えば、CARを形質導入したT細胞と空ベクターを形質導入したT細胞との間のケモカイン受容体の発現増加)の結果ではなく、in vivoの標的抗原結合の結果であると思われる。
【0191】
この実施例は、腫瘍への輸送が、養子移入の6日後及び9日後の時点で、空ベクターを形質導入した細胞よりも、DC101 CAR付与T細胞でかなり大きいことを実証した。
【0192】
実施例16
この実施例は、実施例2の核酸を形質導入した宿主細胞が、KDR1121 ScFvセグメント、細胞外ヒンジ及び膜貫通セグメント、並びに細胞内T細胞シグナル伝達セグメントを含むCARを発現することを実証する。
【0193】
形質導入されたヒトT細胞上のKDR CARの検出を、実施例6に記載したように、形質導入の5日後に実施した(ただし、可溶性ヒト(h)VEGFR2−hIgG.FC融合タンパク質を染色プロトコルで使用し、細胞はPerCP標識マウス抗ヒトCD3抗体(BD Pharmingen)で共染色した)。フローサイトメトリー取得は、FACS CaliburTMフローサイトメータ(BD Biosciences)を用いて実施した。データを取得し、CellQuestTMソフトウェア(Becton Dickson)を使用して分析した。前方小角度光散乱及びヨウ化プロピジウム染色の組み合わせを使用して、死細胞を排除した。形質導入したT細胞上のCAR特異的染色及びその発現の平均蛍光強度(MFI)を、アイソタイプコントロール抗体で染色したそれぞれの細胞型を使用して決定した。四分円を、関連するアイソタイプコントロールに基づいて樹立した。結果を表7に示す。
【0194】
【表7】
【0195】
表7に示されるように、実施例2のKDR CARコードレトロウイルスベクターを形質導入したヒトPBLは、高頻度で、細胞表面上にCARを発現するCD3+T細胞を約79〜約85%で生じる。
【0196】
両方のベクターがヒトPBLを同程度に形質導入できるものの、KDR−CD828BBZ CARベクター(4−1BB配列を有する)から指示されるCAR発現のMFIは、表8に示されるように、僅かに損なわれた。
【0197】
【表8】
【0198】
この実施例は、KDR1121 ScFvセグメント、細胞外ヒンジ及び膜貫通セグメント、並びに細胞内T細胞シグナル伝達セグメントを含むCARを発現する実施例2の核酸配列で宿主細胞を形質導入する際の形質導入効率を実証した。
【0199】
実施例17
この実施例は、KDR1121−CD28Z及びKDR1121−CD828BBZ CAR改変T細胞が、増殖によって測定されるin vitroでの抗原特異的応答を生じるのに有効であることを実証する。
【0200】
実施例7に記載したように、マイクロタイタープレートを、BSA、可溶性KDR−hIgG.FC融合タンパク質又は抗ヒトCD3 mAbで被覆した。OKT3刺激したヒトPBLを、実施例5に記載したように、レトロウイルスベクター:KDR−CD28Z若しくはKDR−CD28BBZで形質導入したか、又はモック形質導入した。7日後、細胞を、抗原被覆したマイクロタイタープレート上で3日間培養し、3[H]−チミジンを18時間パルスし、実施例7に記載したように、増殖の測定としてチミジン取り込みについて分析した。アッセイは三連で実施し、値は平均±SEMで示す。結果を図8に示す。
【0201】
図8に示されるように、種々のベクターで形質導入されたT細胞間では、固定化された抗マウスCD3抗体に対する応答に差異はなかったが、KDR1121−CARで操作されたT細胞のみが、増殖によって測定されるように、プレート結合標的VEGFR−2タンパク質に特異的に応答した。さらに、KDR1121 CARを形質導入した細胞は、4−1BBシグナル伝達配列あり又はなしの両方で、プレート結合標的VEGFR−2に応答して、in vitroで増殖した。
【0202】
この実施例は、KDR1121−CD28Z及びKDR1121−CD828BBZ CAR改変T細胞が、VEGFR−2タンパク質による刺激に応答してin vitroで増殖することを実証した。
【0203】
実施例18
この実施例は、KDR1121−CD28Z及びKDR1121−CD828BBZ CAR改変T細胞が、IFN−γ分泌によって測定される抗原特異的なin vitro応答を生じるのに有効であることを実証する。
【0204】
形質導入したヒトPBLを、IFN−γ放出アッセイにおいて、プレート結合VEGFR−2タンパク質並びにVEGFR−2発現標的細胞に対する特異的反応性について試験した。ヒトPBLを、実施例5に記載したように、レトロウイルスベクター:KDR1121−CD828BBZ若しくはKDR1121−CD28Zで形質導入し、又はモック形質導入した。形質導入された細胞を、実施例7に記載されたように、200μlCM中で、抗原被覆したマイクロタイタープレート上で培養した。細胞培養物上清を、1日後若しくは2日後(マウスT細胞)又は1日後(ヒトT細胞)に回収し、市販のELISAキット(Endogen,Rockford,IL)を使用して、IFN−γについて酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)で分析した。アッセイは三連のウェルで実施した。結果を図9に示す(値は平均±SEMで示す)。
【0205】
図9に示されるように、種々のベクターで形質導入されたT細胞間では、固定化された抗マウスCD3抗体に対する応答に差異はなかったが、KDR1121−CARで操作されたT細胞のみが、IFN−γ分泌によって測定されるように、プレート結合標的VEGFR−2タンパク質に特異的に応答した。さらに、KDR1121 CARを形質導入した細胞は、4−1BBシグナル伝達配列あり又はなしの両方で、プレート結合標的VEGFR−2に応答して、in vitroでIFN−γを分泌した。
【0206】
この実施例は、KDR1121−CD28Z及びKDR1121−CD828BBZ CAR改変T細胞が、VEGFR−2タンパク質による刺激に応答して、in vitroでIFN−γを分泌することを実証した。
【0207】
実施例19
この実施例は、KDR1121−CD828BBZ及びKDR1121−CD28Zを形質導入したヒトPBLが、IFN−γ分泌によって測定されるように、VEGFR−2(KDR)発現標的細胞と共培養したときに、in vitroの抗原特異的応答を生じることを実証する。
【0208】
KDRタンパク質発現細胞の認識におけるKDR CAR改変T細胞の能力を試験した。3つの異なるドナー由来のPBLに、実施例5に記載したように、KDR1121−CD828BBZ及びKDR1121−CD28Z CARを形質導入したか、又はモック形質導入した。形質導入の8日後に、実施例9に記載したように、形質導入細胞を単独で培養したか、又はKDRネガティブ293細胞若しくは293−KDR細胞(高レベルのKDRタンパク質を発現する安定な形質転換体)と共に24時間共培養した。培養物上清を、実施例8に記載したように、IFN−γ分泌について分析した。結果を図10に示す。
【0209】
図10に示されるように、KDR1121−CD828BBZベクター及びKDR1121−CD28Zベクターは共に、KDR発現293−KDR細胞のみを特異的に認識し、293細胞を認識しないそれらの能力から明らかなように、同様のレベルの特異性及び機能性を形質導入ヒトT細胞に付与した。
【0210】
この実施例は、KDR1121−CD28Z及びKDR1121−CD828BBZ CAR改変T細胞が、VEGFR−2(KDR)発現細胞による刺激に応答して、in vitroでIFN−γを分泌することを実証した。
【0211】
実施例20
この実施例は、KDR−1121 CAR改変T細胞が、in vitroのVEGFR−2発現細胞による刺激に応答して、in vitroでIFN−γを分泌することを実証する。
【0212】
in vitroで短期間培養した種々の組織起源の正常初代ヒト内皮細胞及び上皮細胞並びに筋肉筋芽細胞のパネル(293A2、HMVEC−真皮、HMVEC−肺、HUVEC、皮膚繊維芽細胞、SAEC、HBEC、HRE、HMEC、PrEC、HSMM)を、フローサイトメトリーによってKDR発現について試験した。KDRタンパク質は、形質導入細胞(293A2−KDR)及び培養初代内皮細胞(即ち、HMVEC−D、HMVEC−L及びHUVEC)でのみ容易に検出可能であり、試験した初代上皮細胞及び筋芽細胞のいずれでも検出不能であった。KDR発現の強度は、肺由来HMVEC(HMVEC−L)又はHUVECと比較して、皮膚由来ヒト真皮微小血管内皮細胞(HMVEC−D)でより高かった。
【0213】
ヒトPBLを、実施例5に記載したようにKDR1121−CD828BBZで形質導入したか、又はモック形質導入した。4日後に、標的細胞を単独で培養し、形質導入細胞を単独で培養し、又は形質導入細胞を200μlCM中以下の細胞株のうち1つと共に共培養した:293A2、HMVEC−真皮、HMVEC−肺、HUVEC、皮膚繊維芽細胞、SAEC、HBEC、HRE、HMEC、PrEC、HSMM又は293A2−KDR。IFN−γ分泌を、実施例8に記載したようにアッセイした。結果を図11に示す(三連のウェルの平均値±SEMとして示す)。
【0214】
図11に示されるように、KDR CARを形質導入した細胞は、その組織起源にかかわらずKDRポジティブ細胞(HMVEC−D、293−KDR細胞、HMVEC−L及びHUVEC)に応答してのみIFN−γを分泌し、試験した他の初代細胞の何れも認識できなかった。
【0215】
これらの結果と一致して、細胞毒性アッセイにおいて、KDR1121−hCD828BBZ及びKDR1121−hCD28Z CAR改変T細胞は、KDRポジティブ標的細胞を特異的に溶解させたがKDRネガティブ細胞型は溶解させず、一方でモック又はSP6−CARを形質導入したT細胞は、試験した標的細胞のいずれも溶解できなかった(図19)。
【0216】
この実施例は、KDR1121−CD28Z及びKDR1121−CD828BBZ CAR改変T細胞が、組織の起源にかかわらず、in vitroのVEGFR−2(KDR)発現細胞による刺激に応答して、in vitroでIFN−γを分泌することを実証した。
【0217】
実施例21
この実施例は、VEGFR−2 CARを発現するように改変された初代マウスT細胞が、VEGFR−2発現マウス細胞を特異的に溶解させることを実証する。
【0218】
モック形質導入或いは空ベクター又はSP6−CD828BBZ、DC101−CD8、DC101−CD828Z若しくはDC101−CD828BBZ発現レトロウイルスベクターを形質導入した初代マウスT細胞を、変動するエフェクター対標的比(50、17、5.6、1.9)で、標的細胞(SVEC4−10EHR1、4T1、RENCA、MB49、bEND.3、MC38、MC17−51、MB49−Flk1、MS1、CT26、B16−F10、3T3、SVR、MCA205、C1498、3T3−Flk1)と共にインキュベートし、細胞溶解を、標準的なCr51放出アッセイを使用して決定した。
【0219】
実施例9で得た結果及び図13に示した結果と一致して、細胞毒性アッセイにおいて、DC101−CAR改変T細胞は、VEGFR−2ポジティブ標的細胞を特異的に溶解させたが、VEGFR−2ネガティブ細胞型は溶解させなかった。対照的に、モック、空ベクター又はSP6−CARを形質導入したT細胞は、試験した標的細胞のいずれも溶解させられなかった(図13)。
【0220】
実施例22
この実施例は、DC101−CAR発現T細胞が、照射による宿主のプレコンディショニングの存在下又は非存在下で、抗腫瘍応答を生じることを実証する。
【0221】
養子細胞移入(ACT)前の宿主免疫細胞の枯渇は、免疫抑制細胞並びに恒常性維持サイトカインに関して移入細胞と競合するリンパ球を排除することによって、移入された抗原特異的T細胞の抗腫瘍効力を増強できる。従って、以前の養子T細胞治療実験において、マウスは細胞移入前に5Gyの全身放射線照射法(TBI)を受けた。しかし照射は、腫瘍脈管構造を有害に変更し又は損傷し、及び/又は標的抗原VEGFR−2の発現を歪める可能性がある。
【0222】
従って、DC101−CAR操作されたT細胞のin vivo抗腫瘍活性を、養子T細胞移入前に、宿主リンパ枯渇(lymphodepletion)あり又はなしでマウスにおいて試験した。皮下B16−F10腫瘍を保持するC57BL/6マウスに、T細胞移入前の5Gy TBIあり又はなしで、DC101−CAR、SP6−CAR又は空ベクターを形質導入した同系T細胞2x107+rhIL−2を受けさせたか、又はT細胞で処置しなかった。
【0223】
以前の実験からの知見と一致して、DC101−CAR発現T細胞は再び、SP6−CAR又は空ベクターで操作したものと比較して、リンパ枯渇マウスにおいて抗腫瘍応答を再現性よく生じさせた(図17、P=0.009)。腫瘍阻害効果は、照射による宿主プレコンディショニングの存在下又は非存在下のいずれかでDC101−CAR T細胞を受けた処置群間で統計的に区別できなかった(P=0.251)。
【0224】
この実施例は、DC101−CAR発現T細胞が、宿主リンパ枯渇あり又はなしで抗腫瘍応答を生じることを実証した。
【0225】
実施例23
この実施例は、養子移入したVEGFR−2 CAR形質導入T細胞で観察された毒性が、減少した数のT細胞又はDC101−CARを形質導入した精製CD8+T細胞を投与することによって低減され得ることを実証する。
【0226】
異なる組織学の樹立された皮下腫瘍を保持する合計135匹のC57BL/6マウスで実施した腫瘍治療研究において、養子移入した同系T細胞は、90%より多くのCD8+T細胞を含んだ。処置に関連した罹患及び死亡は、5Gyの全身放射線照射法、DC101−CD828BBZ若しくはDC101−CD828Z CARを形質導入した2x107までのT細胞、及び高用量のIL−2を受けたマウスにおいて報告されなかった。血管新生化した組織(例えば、腎臓、網膜及び膵臓)における低レベルのVEGFR−2発現の報告にもかかわらず、最大数(2x107)のVEGFR−2 CAR改変T細胞で処置したC57BL/6マウス中の種々の臓器の組織病理学的分析は、処置関連の毒性の証拠を示さなかった。
【0227】
対照的に、重篤な毒性が、DC101−CARを形質導入した同系T細胞2x107で同様に処置した腫瘍保持BALB/cマウスにおいて観察された。しかし、樹立されたCT26又はRENCA腫瘍を有するBALB/cマウスでは、投与したT細胞数を5x106まで減らした場合、又はDC101−CARを形質導入した精製同系CD8+T細胞2x107を投与することによって、治療関連のいずれの毒性もなしに、匹敵する抗腫瘍効果が達成された(図18A及び18B)。2x107のDC101−CAR形質導入T細胞及びIL−2で処置したBALB/cマウスの組織病理学的分析により、肝臓における多巣性の軽度の凝固壊死及び軽度の肝胆管周囲炎並びに肺血管周囲炎(perivasculitis)、小腸及び結腸の絨毛萎縮、絨毛鈍麻(blunting)及び陰窩上皮過形成を含むサイトカイン誘導性の低血圧に特徴的な知見が明らかとなった。心臓、肺、肝臓、腎臓、脾臓、膵臓、子宮、卵巣又は脳の巨視的外観には、異常は見られなかった。
【0228】
BALB/cマウスと比較してC57BL/6で見られた毒性の差異は、養子移入に使用した最終細胞産物中に存在するCD4+T細胞数の増加に起因したように見えた。BALB/c脾臓から得たCD3+T細胞は、C57BL/6マウスの脾臓から得たCD3+T細胞と同様に培養したが、最終BALB/c細胞産物(5〜6日間培養した)は、養子移入の時点で、約60%のCD8+T細胞及び40%のCD4+T細胞を含んでいた。減少した数(5x106)の未分離T細胞又はDC101−CARを形質導入した精製CD8+T細胞2x107で処置したBALB/cマウス(15匹の腫瘍保持マウスを含む3つの独立した実験における)では毒性は見られなかったが、CD8+T細胞(約60%)及びCD4+(約40%)T細胞の両方を含むDC101−CAR改変T細胞2x107を受けたマウスは、図18A及び18Bに示される同じ実験において、罹患及び死亡を示した。これらの知見をB16腫瘍保持C57BL/6マウスでさらに評価し、ここで、VEGFR−2 CARを形質導入した精製CD4+T細胞、又は1x107の精製CD8+及び1x107のCD4+T細胞(共にCARを形質導入した)の1:1混合物を含む2x107のT細胞でマウスを処置した場合に、罹患及び死亡が証明された。その一方、有効な腫瘍治療は、2x107の未分離CD3+T細胞(>90%がCD8+T細胞)又はVEGFR−2CARを形質導入した精製CD8+T細胞のいずれかで処置したマウスにおいて、有害な影響なしに達成された(図18C)。
【0229】
複数の実験において、等しい数のCD4+T細胞及びCD8+T細胞を含む2x107のCAR形質導入T細胞での非腫瘍保持BALB/c又はC57BL/6マウスの処置は、有害な影響も毒性もなしに十分に許容された。従って、養子移入されたVEGFR−2 CAR形質導入T細胞で観察された毒性の原因は、正常な血管又は組織に対する的外れの細胞媒介性の細胞毒性ではなく、腫瘍血管網における標的抗原VEGFR−2のCD4+T細胞認識及び引き続く下流の分子事象に限定されるようである。
【0230】
この実施例は、減少した数のT細胞又はDC101−CARで形質導入した精製CD8+T細胞を投与することは、養子移入したVEGFR−2 CAR形質導入T細胞で観察される毒性を低減し得ることを実証した。
【0231】
実施例24
この実施例は、転移性癌を有するヒト患者に抗VEGFR2 CAR発現細胞集団を投与する方法を実証する。
【0232】
細胞調製
【0233】
PBMCを、白血球アフェレーシス(約1X1010細胞)によって得る。全PBMCを、T細胞増殖を刺激するために抗CD3(OKT3)及びアルデスロイキンの存在下で培養する。形質導入は、抗VEGFR2 CARレトロウイルスベクター(KDR1121−hCD828BBZヌクレオチド配列(配列番号16)を含む)を含む上清に、約1X107〜5X108の細胞を曝露することによって開始する。これらの形質導入細胞を増殖させ、その抗腫瘍活性について試験する。首尾よいCAR遺伝子移入は、CARタンパク質に対するFACS分析で決定し、抗VEGFR2反応性は、トランスフェクト細胞で測定されるサイトカイン放出によって試験する。それぞれの形質導入したPBL集団についての首尾よいCAR遺伝子移入は、>10%のCARポジティブ細胞として規定し、生物活性については、γ−インターフェロン分泌は少なくとも200pg/mlである。
【0234】
第1相−用量漸増:
【0235】
このプロトコルの最初の部分は、1コホート当たり最少3人の患者の3つのコホートを用い、第1相用量漸増設計で進行する。各コホートについて移入した抗VEGFR2操作細胞の総数は以下のようにする:コホート1:108細胞;コホート2:109細胞;コホート3:1010細胞;及びコホート4:5x1010細胞。
【0236】
操作されたPBL細胞を受ける前に、患者は、シクロホスファミド及びフルダラビンの骨髄非破壊的なリンパ球枯渇前処置(preparative)レジメンを受け、その後、1〜4日間、in vitro腫瘍反応性の、CAR遺伝子を形質導入したPBL+IVアルデスロイキンの静脈内注入(720,000IU/kgq8hで最大15用量)を受ける。
【0237】
第2相部分
【0238】
第1相部分と同様に、操作されたPBL細胞を受ける前に、第2相部分の患者は、シクロホスファミド及びフルダラビンの骨髄非破壊的なリンパ球枯渇前処置レジメンを受け、その後、1〜4日間、in vitro腫瘍反応性の、CAR遺伝子を形質導入したPBL+IVアルデスロイキンの静脈内注入(720,000IU/kgq8hで最大15用量)を受ける。
【0239】
このプロトコルの第2相部分は、第1相部分で決定される抗VEGFR2操作された細胞の最大耐用量(MTD)を利用して進行する。患者は、組織像に基づいて2つのコホートに入れられる:コホート1は、転移性の黒色腫及び腎癌を有する患者を含み、コホート2は他の全ての癌の型を含む。
【0240】
薬物投与
表9に示すように薬物を投与する。0日目は細胞注入の当日である。
【0241】
【表9】
【0242】
細胞注入及びアルデスロイキン投与
【0243】
細胞は、Tumor Immunology Cell Processing Laboratoryの職員により、患者集中治療室へ届けられる。血液貯蔵プロトコルで行われるのと同様に、注入前に、細胞産物同定ラベルを、2人の権限のある職員(医師又は正看護師)によって二重に確認し、産物の正体及び投与の証拠書類を患者のカルテに書き込む。細胞は、細胞の凝集を防ぐために注入の間バッグを穏やかに撹拌しながら、非濾過チュービングを介して20〜30分間にわたり静脈内注入される。
【0244】
血液製剤のサポート
【0245】
指針として1日CBCを用いて、患者は、血小板及び濃厚赤血球(PRBC)を必要に応じて受ける。ヘモグロビンを>8.0gm/dlに維持し、血小板を>20,000/mm3に維持する試みが行われる。幹細胞産物(stem cell product)を除く全ての血液製剤に照射する。全血及び血小板輸血のために白血球フィルターを使用して、輸血されるWBCに対する感作を減少させ、CMV感染の危険性を低下させる。
【0246】
試験中の評価
細胞注入後の評価(450mL/6週間以下):
【0247】
総リンパ球数が200/mm3より多くなったところで、以下のサンプルを月曜、水曜及び金曜に引き抜き、TILラボに送る(患者は入院したまま):5つのCPTチューブ(各10ml)及び1つのSSTチューブ(10ml)。
【0248】
他の時点において、Ficollクッション上での遠心分離を使用した精製によって、全血から患者の末梢血リンパ球(PBL)を得る。これらのPBMCのアリコートを、1)細胞機能の免疫学的モニタリングのために凍結保存する、及び2)CARのPCR分析及びベクターコピー数評価のために、DNA及びRNA抽出に供する。
【0249】
生検
腫瘍組織又はリンパ節の生検を実施してもよいが、治療の過程の間には必要とされない。これらの生検は、実施された手順並びに顆粒球及び血小板数に基づいて最小の罹患率が予測される場合にのみ実施される。生検組織は、Pathology Laboratoryの病理学者の立会いのもとでSurgery Branch Cell Production Facilityで処理し、全ての生検組織はLaboratory of Pathologyに送られる。腫瘍による抗原発現を評価するため及びこれらの生検から増殖したリンパ球の反応性を評価するために、研究を実施する。さらに、形質導入細胞の存在を、ベクター配列に対するRT−PCRを使用して定量する。
【0250】
免疫学的試験:
アフェレーシスを、処置前及び処置の4〜6週間後に実施する。他の時点において、患者末梢血リンパ球(PBL)を、Ficollクッションでの遠心分離を使用する精製によって、全血から取得する。これらのPBMCのアリコートを、細胞機能の免疫学的モニタリングのために凍結保存し、CARのPCR分析及びベクターコピー数評価のためにDNA及びRNA抽出に供する。
【0251】
リンパ球を直接試験し、その後in vitro培養で試験する。直接的免疫学的モニタリングにより、テトラマー染色を使用するEACS分析によって、Her−2と反応性のT細胞を定量する。Ex vivo免疫学的アッセイには、十分なT細胞が入手可能な場合には、バルクPBL(+/−ペプチド刺激)によるサイトカイン放出及び他の実験的研究(例えば細胞溶解)が含まれる。細胞数が限定されている場合、免疫学的活性の直接的分析が好ましい。免疫学的アッセイは、1)予め注入したPBMC、及び2)注入の時点で凍結保存された、操作されたPBLのアリコートを含めることによって、標準化される。一般に、これらのアッセイにおける2〜3倍の差異は、真の生物学的差異を示す。Foxp3レベルを半定量的PCRによって分析し、細胞注入の前及び追跡の時点で取得したPBLサンプルにつきmRNAを評価する。
【0252】
遺伝子治療試験のモニタリング:持続性及び増殖性(replication−competent)レトロウイルス(RCR):
操作された細胞の生存:CAR及びベクターの存在を、樹立されたPCR技術を使用して、PBMCサンプル中で定量する。テトラマー分析及びCAR染色の両方を使用する免疫学的モニタリングを使用して、PCRベースの分析を補強する。これは、注入した細胞由来のリンパ球のin vivo生存を推定するためのデータを提供する。さらに、CD4及びCD8 T細胞の測定を実施し、循環におけるこれらのT細胞サブセットの研究を、レトロウイルスベクター操作されたT細胞のそれぞれについて独自のDNA配列を検出できる特異的PCRアッセイを使用して決定する。
【0253】
患者の血液サンプルを取得し、細胞注入の前にPCRによるRCRの検出のための分析を行い、RCR PCRを、細胞投与の3ヶ月後及び6ヵ月後、並びに1年後の時点で実施する。全ての以前の試験が短期間の臨床歴でネガティブであった場合には、その後血液サンプルを毎年アーカイブに保存する。患者がこの試験の間に死ぬか又は新生物を発症した場合、生検サンプルでRCRにつきアッセイする試みを行う。処置後サンプルのいずれかがポジティブであった場合、FDAと協議の上、RCRのさらなる分析及びより詳細な患者の追跡を行う。RCR PCRアッセイは、GaLVエンベロープ遺伝子を検出する。これは、Indiana UniversityのNational Gene Vector Laboratoryによる契約のもとで行う。これらの試験の結果は、RCR試験を実施する請負人及びSurgery Branch研究チームが保持する。
【0254】
これらの試験の性質に起因して、特異的T細胞クローンの増殖を、腫瘍抗原に応答して増殖する腫瘍反応性T細胞として観察することが可能である。従って、免疫学的かつ分子的にT細胞の持続性を追跡する配慮をする。CAR形質導入細胞の持続性についての血液サンプル(5〜10mL)を、細胞注入の1ヵ月後、次いで3ヵ月後、6ヵ月後、12ヵ月後に取得し、次いでその後年1回取得する。(ベクター配列に特異的なプライマーを使用する半定量的DNA−PCRにより)6ヶ月の時点でCAR遺伝子形質導入細胞の高レベルの持続性をいずれかの患者が示した場合、以前にアーカイブ化したサンプルを、生き残ったCAR遺伝子形質導入細胞のクローン性の同定を可能にする技術に供する。かかる技術には、T細胞クローニング又はLAM−PCR 30が含まれ得る。CAR遺伝子形質導入細胞由来の優勢な又はモノクローナルのT細胞クローンが追跡の間に同定された場合、組込み部位及び配列を同定し、続いて、ヒトゲノムデータベースに対して分析し、配列が任意の既知のヒト癌に関連するか否かを決定する。優勢な組込み部位が観察された場合、最初の観察の後3ヶ月以下の間隔で、T細胞クローニング又はLAM−PCR試験を使用して、クローンが持続性であるか一過性であるかを確認する。モノクローナル性が持続する全ての例において、及び特に、クローンの増殖が存在する例において、配列が既知のヒト癌と関連していることが既知であるか否かにかかわらず、対象は、利用可能であれば治療が早期に開始できるように、悪性度の兆候について綿密にモニタリングすべきである。
【0255】
研究後評価(追跡):
患者を、表10に従って、最初の治療レジメン(最後のアルデスロイキン用量の終了として規定する)の4〜6週間後に評価する。
【0256】
【表10】
【0257】
データを収集し、以下に詳述するように評価する。標的病変の評価は以下のとおりである:ベースラインにおいて、全ての関連臓器を代表する最大10病変までの全ての測定可能な病変を、標的病変として同定し、記録し、測定すべきである。標的病変は、それらのサイズ(最長の直径を有する病変)及び正確な反復測定(画像化技術による又は臨床的にのいずれか)へのそれらの適格性に基づいて選択すべきである。全ての標的病変に対する最長径(LD)の合計を計算し、ベースライン合計LDとして報告する。ベースライン合計LDを基準として使用して、疾患の測定可能な寸法の客観的腫瘍応答をさらに特徴付ける。標的病変評価の応答基準は表11に示すとおりである。
【0258】
【表11】
【0259】
非標的病変の評価は以下のとおりである:ベースラインにおいて、全ての他の病変(又は疾患部位)を非標的病変として同定すべきであり、また記録すべきである。測定値は必要なく、これらの病変は「存在」又は「非存在」として示すべきである。標的病変評価の応答基準は表12に示すとおりである。
【0260】
【表12】
【0261】
最良の全体応答の評価
最良の全体応答(表13)は、治療開始から疾患の進行/再発までに記録された最良の応答である(進行性の疾患について、治療開始以降記録された最小の測定値を基準とする)。患者の最良の応答割り当ては、測定値及び確証基準の両方の達成に依存する。
【0262】
【表13】
【0263】
確証的な測定値/応答の持続期間
確証:PR又はCRのステータスを割り当てるために、腫瘍測定値における変化を、応答基準が最初に満たされた少なくとも4週間後に実施すべき反復研究によって確証する。SDの場合、追跡測定値は、6〜8週間の最小間隔で、研究に入ったあと少なくとも1回、SD基準を満たしたものであろう。
【0264】
全体応答の持続期間:全体応答の持続期間は、測定値基準がCR/PR(いずれか最初に記録された方)を満たす時点から、再発性又は進行性の疾患が客観的に記録される最初の日付まで、測定される(進行性の疾患について、治療開始以降記録された最小の測定値を基準とする)。全完全奏功の持続期間は、測定基準がCRを最初に満たす時点から、再発性の疾患が客観的に記録される最初の日付まで、測定される。
【0265】
安定(Stable Disease)の持続期間:安定は、処置の開始から、進行の基準が満たされるまで、治療開始以降記録された最小の測定値を基準として、測定される。
【0266】
この実施例は、ヒト癌患者に対する抗VEGFR2 CAR発現細胞集団の投与方法を実証した。
【0267】
刊行物、特許出願及び特許を含む、本明細書中に引用した全ての参考文献は、それぞれの参考文献が参照によって組み込まれることが個々にかつ具体的に示されているのと同程度又はその全体が本明細書中に記載されているのと同程度まで、参照によって本明細書中に組み込まれる。
【0268】
本発明の説明に関して(特に、以下の特許請求の範囲に関して)、用語「a」及び「an」及び「the」並びに同様の指示対象の使用は、本明細書中に特記しないか文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方をカバーすると解釈すべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含む(containing)」は、特記しない限り、オープンエンドの用語(即ち、「〜を含むがそれらに限定されない」を意味する)と解釈すべきである。本明細書中の値の範囲の記述は、本明細書中に特記しない限り、その範囲内に入る各個別の値に個々に言及する省略方法として働くことのみを意図しており、各個別の値は、それが本明細書中に個々に記述されているかのように本明細書中に組み込まれる。本明細書中に記載される全ての方法は、本明細書中に特記しない又は文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施できる。本明細書中に提供される任意の及び全ての例又は例示的語句(例えば、「など(such as)」)の使用は、本発明をよりよく説明することのみを意図しており、特段特許請求されない限り、本発明の範囲に限定を課すものではない。本明細書中の全ての語句は、特許請求されていない任意の要素を本発明の実施に必須のものとして示していると解釈すべきではない。
【0269】
発明を実施するための発明者が知る最良の形態を含む、本発明の好ましい実施形態が本明細書中に記載されている。これらの好ましい実施形態のバリエーションは、上述の説明を読めば当業者に明らかとなり得る。本発明者らは、当業者がかかるバリエーションを適宜使用することを予期しており、本発明者らは、本明細書中に具体的に記載されたのとは異なる方法で本発明が実施されることを意図している。従って、本発明は、適用法によって許容されるとおり、本明細書中に添付した特許請求の範囲に記載される対象の全ての改変及び等価物を含む。さらに、その全ての可能なバリエーションでの上記要素の任意の組合わせが、本明細書中に特記しない又は文脈と明らかに矛盾しない限り、本発明によって包含される。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2009年10月1日出願の米国仮特許出願第61/247,625号(その内容は参照によって組み込まれる)の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
固形腫瘍は、癌による死亡率の85%より多くを占める(Jain,R.K.Science 307:58−62(2005))。多くの癌(固形腫瘍など)の増殖及び転移は、血管新生としても知られる新規血管の形成によって促進される。従って、腫瘍血管新生を標的とする癌の治療又は予防のための組成物及び方法が、当該分野で必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の1実施形態は、KDR−1121抗体若しくはDC101抗体の抗原結合ドメイン、細胞外ヒンジドメイン、T細胞受容体膜貫通ドメイン及び細胞内T細胞受容体シグナル伝達ドメインを含む、キメラ抗原受容体(CAR)を提供する。
【0004】
本発明のさらなる実施形態は、本発明のCARに関連する、関連の核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、抗体又はその抗原結合部分及び医薬組成物を提供する。
【0005】
本発明のさらなる実施形態は、宿主における癌の存在を検出する方法及び宿主における癌の治療又は予防方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、抗原が結合していない(なし)又はBSA、VEGFR−2若しくは抗CD3が結合したプレート上で培養した時の増殖の測定としての、空ベクター(斜線縞)、SP6−CD828BBZ(ヘリンボーン)、DC101−CD8(市松模様)、DC101−CD828BBZ(灰色)又はDC101−CD828Z(黒)で形質導入された細胞による3[H]−チミジンの取り込み(CPM)のグラフである。
【図2】図2は、抗原が結合していない(なし)又はBSA、VEGFR−2若しくは抗CD3が結合したプレート上で培養した時の、空ベクター(斜線縞)、SP6−CD828BBZ(ヘリンボーン)、DC101−CD8(市松模様)、DC101−CD828BBZ(灰色)又はDC101−CD828Z(黒)で形質導入された細胞によるIFN−γ分泌(pg/ml)のグラフである。
【図3】図3は、単独で培養した又はSVEC4−10EHR1、bEnd.3、MS1、SVR、4T1、MC38、MCA−205、MC17−51、P815、EL4、C1498、B16、MB49、MB49−FLK−1、3T3若しくは3T3−FLK−1細胞と共培養した場合の、形質導入されていない(右斜線(right slanting line))又は空ベクター(点描)、SP6−CD828BBZ(左斜線(left slanting line))、DC101−CD8(縞模様)、DC101−CD828BBZ(灰色)若しくはDC101−CD828Z(黒)で形質導入された細胞によるIFN−γ分泌(pg/ml)のグラフである。
【図4】図4Aは、未処置(黒丸)、rhIL−2単独で処置(黒菱形)、又はDC101 CAR(黒三角)若しくは空ベクター(黒四角)を形質導入したT細胞で処置したB16−F10腫瘍保持マウスの、T細胞移入後の日数での腫瘍面積(mm2)のグラフである。図4Bは、未処置(黒丸)、rhIL−2単独で処置(黒菱形)、又はDC101 CAR(黒三角)若しくは空ベクター(黒四角)を形質導入したT細胞で処置したMC38腫瘍保持マウスの、T細胞移入後の日数での腫瘍面積(mm2)のグラフである。
【図5】図5Aは、未処置(黒丸)、rhIL−2単独で処置(黒菱形)、又はDC101 CAR(黒三角)若しくは空ベクター(黒四角)を形質導入したT細胞で処置したB16−F10腫瘍保持マウスの、T細胞移入後の日数でのパーセント生存のグラフである。図5Bは、未処置(黒丸)、rhIL−2単独で処置(黒菱形)、又はDC101 CAR(黒三角)若しくは空ベクター(黒四角)を形質導入したT細胞で処置したMC38腫瘍保持マウスの、T細胞移入後の日数でのパーセント生存のグラフである。
【図6】図6Aは、未処置(黒丸)、rhIL−2単独で処置(黒菱形)、DC101抗体で処置(白三角)、ラットIgG1抗体で処置(白菱形)、又はDC101 CAR(黒三角)若しくは空ベクター(黒四角)を形質導入したT細胞で処置したB16−F10腫瘍保持マウスの、T細胞移入後の日数での腫瘍面積(mm2)のグラフである。図6Bは、未処置(黒丸)、又はDC101−CD828BBZ CARベクター(黒三角)、SP6−CD8S8BBZ CARベクター(白菱形)、DC101−CD8ベクター(白三角)若しくは空ベクター(黒四角)を形質導入したT細胞で処置したB16−F10腫瘍保持マウスの、T細胞移入後の日数での腫瘍面積(mm2)のグラフである。
【図7】図7は、DC101−mCD828BBZ(菱形)、DC101−CD828Z(三角)又は空ベクター(四角)を形質導入したT細胞で処置したB16−F10腫瘍保持マウスの、T細胞移入後の日数での腫瘍面積(mm2)のグラフである。コントロール群は、T細胞治療を受けなかった(丸)。黒塗り記号は、外因性rhIL−2投与を示し、中抜きの記号はrhIL−2投与なしを示す。
【図8】図8は、抗原が結合していない(なし)又はBSA、VEGFR−2若しくは抗CD3が結合したプレート上で培養した時の増殖の測定としての、モック形質導入した(市松模様)、又はKDR−CD28Z(黒)若しくはKDR−CD28BBZ(灰色)で形質導入した細胞による3[H]−チミジン取り込み(CPM)のグラフである。
【図9】図9は、抗原が結合していない(なし)又はBSA、VEGFR−2若しくは抗CD3が結合したプレート上で培養した時の、モック形質導入した(市松模様)、又はKDR−CD28Z(黒)若しくはKDR−CD28BBZ(灰色)で形質導入した細胞によるIFN−γ分泌(pg/ml)のグラフである。
【図10】図10は、ドナー番号1〜3のそれぞれについて、単独培養(なし)又は293細胞若しくは293−KDR細胞と共培養した時の、形質導入なし(暗灰色)、モック形質導入(白)又はKDR1121−hCD28Z(黒)若しくはKDR1121−hCD828BBZ(明灰色)で形質導入した細胞によるIFN−γ分泌(pg/ml)のグラフである。
【図11】図11は、単独培養(なし)又は標的細胞293A2、293A2−KDR、HMVEC−真皮、HMVEC−肺、HUVEC、皮膚繊維芽細胞、SAEC、HBEC、HRE、HMEC、PrEC若しくはHSMM細胞と共培養した時の、形質導入なし(白)、モック形質導入(灰色)又はKDR−CD28Z(黒)で形質導入したT細胞によるIFN−γ分泌(pg/ml)のグラフである。
【図12】図12は、細胞なし(なし)又は標的細胞(bEnd.3、MB49若しくはMB49−FLK−1)を単独で(下線付きのなし)又は10μg/mlのラットIgG1、抗マウスVEGFR−1抗体若しくは抗マウスVEGFR−2抗体(DC101)と共にインキュベートし、次いで、モック形質導入(白棒)或いは空ベクター(灰色棒)又はSP6−CD828BBZ CAR(斜線棒)若しくはDC101−CD828BBZ(黒棒)をコードするレトロウイルスベクターで形質導入した初代マウスT細胞と共に共培養したときの、IFN−γ分泌(ng/ml)のグラフである。
【図13】図13は、モック形質導入(*)又は空ベクター(四角)、SP6−CD828BBZ(丸)、DC101−CD8(菱形)、DC101−CD828Z(黒三角)若しくはDC101−CD828BBZ(白三角)で形質導入した初代マウスT細胞と共にインキュベートしたVEGFR−2発現標的マウス細胞(SVEC4−10EHR1、4T1、RENCA、MB49、bEND.3、MC38、MC17−51、MB49−Flk1、MS1、CT26、B16−F10、3T3、SVR、MCA205、C1498、3T3−Flk1)の、種々のエフェクター対標的比(x軸)での、特異的溶解(%)(y軸)のグラフを示す。各データポイントは三連の平均を反映する。
【図14】図14Aは、未処理(黒丸)、rhIL−2単独で処理(黒菱形)、又はDC101−CD828BBZ CAR(黒三角)若しくは空ベクター(黒四角)で形質導入したT細胞で処理したMCA205腫瘍保持マウスの、T細胞移入後の日数での腫瘍面積(mm2)のグラフである。図14Bは、未処理(黒丸)、rhIL−2単独で処理(黒菱形)、又はDC101−CD828BBZ CAR(黒三角)若しくは空ベクター(黒四角)で形質導入したT細胞で処理したMCA205腫瘍保持マウスの、T細胞移入後の日数でのパーセント生存のグラフである。図14Cは、未処理(黒丸)、rhIL−2単独で処理(黒菱形)、又はDC101−CD828BBZ CAR(黒三角)若しくは空ベクター(黒四角)で形質導入したT細胞で処理したCT26腫瘍保持マウスの、T細胞移入後の日数での腫瘍面積(mm2)のグラフである。図14Dは、未処理(黒丸)、rhIL−2単独で処理(黒菱形)、又はDC101−CD828BBZ CAR(黒三角)若しくは空ベクター(黒四角)で形質導入したT細胞で処理したCT26腫瘍保持マウスの、T細胞移入後の日数でのパーセント生存のグラフである。図14Eは、未処理(黒丸)、rhIL−2単独で処理(黒菱形)、又はDC101−CD828BBZ CAR(黒三角)若しくは空ベクター(黒四角)で形質導入したT細胞で処理したRENCA腫瘍保持マウスの、T細胞移入後の日数での腫瘍面積(mm2)のグラフである。図14Fは、未処理(黒丸)、rhIL−2単独で処理(黒菱形)、又はDC101−CD828BBZ CAR(黒三角)若しくは空ベクター(黒四角)で形質導入したT細胞で処理したRENCA腫瘍保持マウスの、T細胞移入後の日数でのパーセント生存のグラフである。
【図15】図15は、DC101−CD828BBZ+rhIL−2で形質導入した2x107(実線上の黒三角)、1x107(実線上の白三角)、5x106(点線上の黒三角)若しくは2x106(点線上の白三角)の同系T細胞で処置した、未処置(黒丸)、rhIL−2単独で処置した(黒菱形)、又は空ベクター+rhIL−2(黒四角)で形質導入した2x107T細胞で処置した、B16−F10腫瘍保持マウスの、T細胞移入後の日数での腫瘍面積(mm2)のグラフである。各処置群は、最低5匹のマウスを含んだ。一連の盲検腫瘍測定値を取得し、直交する直径の積を±SEMでプロットした。
【図16】図16Aは、5Gy TBIで致死未満に照射し、T細胞もrhIL−2も受けていない(黒丸)か、又はDC101−CD28BBZ(黒三角)若しくは空ベクター(黒四角)で形質導入した同系マウスT細胞2x107の単一用量をrhIL−2と合わせて注射した;或いは7〜10日間隔で、DC101−CAR(白三角)又は空ベクター(白四角)で形質導入したT細胞5x106の3連続用量、及びT細胞移入の0〜63日後に、細胞移入と付随して、rhIL−2の1日2回用量を3日間、を注射した、皮下B16−F10腫瘍保持マウスの腫瘍面積(mm2)のグラフである。各処置群は、最低5匹のマウスを含んだ。一連の盲検腫瘍測定値を取得し、直交する直径の積を±SEMでプロットした。図16Bは、5Gy TBIで致死未満に照射し、T細胞もrhIL−2も受けていない(黒丸)か、又はDC101−CD28BBZ(黒三角)若しくは空ベクター(黒四角)で形質導入した同系マウスT細胞2x107の単一用量をrhIL−2と合わせて注射した;或いは7〜10日間隔で、DC101−CAR(白三角)又は空ベクター(白四角)で形質導入したT細胞5x106の3連続用量、及びT細胞移入の0〜63日後に、細胞移入と付随して、rhIL−2の1日2回用量を3日間、を注射した、皮下MCA205腫瘍保持マウスの腫瘍面積(mm2)のグラフである。各処置群は、最低5匹のマウスを含んだ。一連の盲検腫瘍測定値を取得し、直交する直径の積を±SEMでプロットした。図16Cは、5Gy TBIで致死未満に照射し、T細胞もrhIL−2も受けていない(黒丸)か、又はDC101−CD28BBZ(黒三角)若しくは空ベクター(黒四角)で形質導入した同系マウスT細胞2x107の単一用量をrhIL−2と合わせて注射した;或いは7〜10日間隔で、DC101−CAR(白三角)又は空ベクター(白四角)で形質導入したT細胞5x106の3連続用量、及びT細胞移入の0〜120日後に、細胞移入と付随して、rhIL−2の1日2回用量を3日間、を注射した、皮下B16−F10腫瘍保持マウスの生存(%)のグラフである。各処置群は、最低5匹のマウスを含んだ。一連の盲検腫瘍測定値を取得し、直交する直径の積を±SEMでプロットした。図16Dは、5Gy TBIで致死未満に照射し、T細胞もrhIL−2も受けていない(黒丸)か、又はDC101−CD28BBZ(黒三角)若しくは空ベクター(黒四角)で形質導入した同系マウスT細胞2x107の単一用量をrhIL−2と合わせて注射した;或いは7〜10日間隔で、DC101−CAR(白三角)又は空ベクター(白四角)で形質導入したT細胞5x106の3連続用量、及びT細胞移入の0〜150日後に、細胞移入と付随して、rhIL−2の1日2回用量を3日間、を注射した、皮下MCA205腫瘍保持マウスの生存(%)のグラフである。各処置群は、最低5匹のマウスを含んだ。一連の盲検腫瘍測定値を取得し、直交する直径の積を±SEMでプロットした。
【図17】図17は、DC101−CAR(白三角)、SP6−CAR(白菱形)若しくは空ベクター(白四角)+rhIL−2で形質導入した同系T細胞2x107の移入前に5Gy TBIを受けなかった、又はT細胞で処理していない(白丸)、B16−F10腫瘍保持マウスの腫瘍面積(mm2)のグラフである。黒塗り記号で示される群中のマウスは、T細胞移入前に5Gy TBIを受けた。
【図18】図18Aは、T細胞移入の0〜50日後に、DC101−CD828BBZ(黒三角)若しくは空ベクター(黒四角)で形質導入した未分離CD3+T細胞5x106の単一用量又はDC101−CD828BBZ(白三角)若しくは空ベクター(白四角)のいずれかで形質導入した精製CD8+T細胞2x107の単一用量で処置したCT26腫瘍保持BALB/cマウスの腫瘍面積(mm2)のグラフである。全てのT細胞処置群は、3日間にわたりrhIL−2の1日2回用量を受けた。コントロール群は、rhIL−2単独を受けた(菱形)か処置を受けなかった(丸)。図18Bは、T細胞移入の0〜32日後に、DC101−CD828BBZ(黒三角)若しくは空ベクター(黒四角)で形質導入した未分離CD3+T細胞5x106の単一用量又はDC101−CD828BBZ(白三角)若しくは空ベクター(白四角)のいずれかで形質導入した精製CD8+T細胞2x107の単一用量で処置したRENCA腫瘍保持BALB/cマウスの腫瘍面積(mm2)のグラフである。全てのT細胞処置群は、3日間にわたりrhIL−2の1日2回用量を受けた。コントロール群は、rhIL−2単独を受けた(菱形)か処置を受けなかった(丸)。図18Cは、T細胞移入の0〜25日後に、DC101−CD828BBZ(実線上の黒三角)若しくは空ベクター(黒四角)で形質導入した未分離CD3+T細胞2x107の単一用量又はDC101−CD828BBZ(実線上の白三角)若しくは空ベクター(白四角)のいずれかで形質導入した精製CD8+T細胞2x107の単一用量で処置したB16−F10腫瘍保持C57BL/6マウスの腫瘍面積(mm2)のグラフである。いくつかの群は、DC101−CD828BBZ(点線上の黒三角)若しくは空ベクター(白丸)で形質導入した1x107のCD4+T細胞及び1x107のCD8+T細胞の混合物を受けた。全てのT細胞処置群は、3日間にわたりrhIL−2の1日2回用量を受けた。コントロール群は、rhIL−2単独を受けた(黒菱形)か処置を受けなかった(黒丸)。
【図19】図19は、モック形質導入(*)又はSP6−CD828BBZ(四角)、KDR1121−CD828Z(黒三角)若しくはKDR1121−CD828BBZ(白三角)で形質導入した初代ヒトT細胞と共にインキュベートした標的ヒト細胞(293、293−KDR、HMVEC−D、HMVEC−L、SAEC、NHBE、HSMM及び繊維芽細胞)の、種々のエフェクター対標的比(x軸)での、特異的溶解(%)(y軸)のグラフを示す。各データポイントは三連の平均を反映する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の1実施形態は、KDR−1121抗体若しくはDC101抗体の抗原結合ドメイン、細胞外ヒンジドメイン、T細胞受容体膜貫通ドメイン及び細胞内T細胞受容体シグナル伝達ドメインを含む、キメラ抗原受容体(CAR)を提供する。
【0008】
キメラ抗原受容体(CAR)は、T細胞シグナル伝達ドメインに連結された抗体の抗原結合ドメイン(scFv)を含む、人工的に構築されたハイブリッドタンパク質又はポリペプチドである。CARの特徴には、モノクローナル抗体の抗原結合特性を利用して、選択された標的に対し非MHC拘束的様式でT細胞の特異性及び反応性を再指示(redirect)する能力が挙げられる。非MHC拘束的抗原認識は、CARを発現するT細胞に、抗原プロセシングと無関係に抗原を認識する能力を与え、それにより、腫瘍エスケープの主要な機構を迂回する。さらに、T細胞中で発現されると、CARは、有利なことに、内在性T細胞受容体(TCR)α鎖及びβ鎖と二量体化しない。
【0009】
本明細書中で使用する場合、語句「抗原特異性を有する」及び「抗原特異的応答を惹起する」とは、CARが、抗原に特異的に結合できかつ抗原を免疫特異的に認識でき、その結果抗原へのCARの結合が免疫応答を惹起することを意味する。
【0010】
本発明のCARは、血管内皮増殖因子受容体−2(VEGFR−2)(ヒトではキナーゼドメイン領域(KDR)及びマウスでは胎仔肝臓キナーゼ−1(Flk−1)としても公知)に対する抗原特異性を有する。VEGFR−2は、血管内皮増殖因子(VEGF)の受容体であり、7つの細胞外ドメインを有し、血管内皮細胞により選択的に発現される。VEGFR−2は、腫瘍血管中の腫瘍内皮細胞によって過剰発現される。VEGFR−2はさらに、正常細胞、非腫瘍細胞又は非癌性細胞によって発現され得る。しかし、かかる状況では、正常細胞、非腫瘍細胞又は非癌性細胞によるVEGFR−2の発現は、腫瘍又は癌細胞による発現ほど強くはない。これに関して、腫瘍又は癌細胞は、正常細胞、非腫瘍細胞又は非癌性細胞によるVEGFR−2の発現と比較して、顕著に高いレベルでVEGFR−2を過剰発現できるかVEGFR−2を発現できる。VEGFR−2は、腫瘍の血管新生(vascularization)、増殖及び転移を増強する。特定の理論に束縛されないが、VEGFR−2に対する抗原特異的応答を惹起することによって、本発明のCARは、腫瘍脈管構造中のVEGFR−2発現内皮細胞を標的化及び破壊し、腫瘍脈管構造を攻撃し、腫瘍を減少又は排除し、腫瘍部位への免疫細胞の浸潤を促進し、かつ抗腫瘍応答を増強/拡大すると考えられる。
【0011】
血管新生抑制腫瘍療法は、多くの利点を提供する。例えば、内皮細胞は遺伝的に安定なので、薬物耐性の可能性が低いと考えられる。さらに、血流は脈管内皮への容易なアクセスを提供し、正常組織に対する副作用及び毒性が限定的であると考えられる。さらに、腫瘍血管の破壊は、腫瘍細胞死を加速させると考えられる。また、血管新生内皮細胞は、抗原(例えばVEGFR−2)発現を均一に上方制御すると考えられている。さらに、血管新生抑制(antioangiogenic)腫瘍療法は、脈管供給を含む多くの癌(例えば固形腫瘍)に適用可能である。
【0012】
本発明は、KDR−1121抗体又はDC101抗体の抗原結合ドメインを含むCARを提供する。KDR−1121(IMC−1121Bとしても知られる)は、ヒトの抗VEGFR−2抗体である。KDR−1121は、VEGFR−2ドメイン3に結合し、VEGF/KDR相互作用を遮断する。DC101は、ラット抗マウスVEGFR−2抗体である。例示的な適切なKDR−1121抗体及びDC101抗体は、米国特許第7,498,414号;同第5,840,301号;同第5,861,499号並びにWO2007/095337(これらはそれぞれ、本明細書中に参照により組み込まれる)に開示されている。これに関して、本発明の好ましい実施形態は、KDR−1121(配列番号1)又はDC101(配列番号2)の一本鎖可変断片(scFv)を含むか、これからなるか又は本質的にこれからなる抗原結合ドメインを含むCARを提供する。
【0013】
本発明の1実施形態において、CARは、細胞外ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、並びに任意選択で、CD8を含む細胞内ヒンジドメイン並びにCD28、4−1BB及びCD3ζを含む細胞内T細胞受容体シグナル伝達ドメインを含む。CD28は、T細胞補助刺激(co−stimulation)に重要なT細胞マーカーである。CD8もT細胞マーカーである。4−1BBは、T細胞に強い補助刺激シグナルを伝達し、Tリンパ球の分化を促進し、長期生存を増強する。CD3ζは、TCRと会合してシグナルを生じ、免疫受容体活性化チロシンモチーフ(immunoreceptor tyrosine−based activation motif;ITAM)を含む。これに関して、本発明の好ましい実施形態は、細胞外ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン及び任意選択の細胞内ヒンジドメインを提供し、この細胞内ヒンジドメインは、配列番号3(ヒトCD8の細胞外ヒンジ配列、膜貫通配列及び細胞内ヒンジ配列)又は配列番号4(マウスCD8の細胞外ヒンジ及び膜貫通配列)を含むか、本質的にこれからなるか、これからなる。細胞内T細胞受容体シグナル伝達ドメインは、配列番号5(ヒトCD28、4−1BB及びCD3ζの細胞内T細胞受容体シグナル伝達配列)又は配列番号6(マウスCD28、4−1BB及びCD3ζの細胞内T細胞受容体シグナル伝達配列)を含むか、本質的にこれからなるか、又はこれからなる。
【0014】
本発明の別の実施形態において、CARは、細胞外ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、並びにCD28及びCD3ζを含む細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを含む。これに関して、本発明の好ましい実施形態は、細胞外ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを提供し、この細胞内T細胞シグナル伝達ドメインは、配列番号7(ヒトCD28の細胞外ヒンジ、膜貫通及び細胞内T細胞シグナル伝達配列)及び配列番号8(ヒトCD3ζの細胞内T細胞受容体シグナル伝達配列)を含むか、本質的にこれらからなるか、又はこれらからなる。
【0015】
本発明の別の実施形態において、CARは、細胞外ヒンジドメインと、CD8を含む膜貫通ドメインと、CD28及びCD3ζを含む細胞内T細胞受容体シグナル伝達ドメインとを含む。これに関して、本発明の好ましい実施形態は、配列番号4(マウスCD8細胞外ヒンジ及び膜貫通配列)を含む、本質的に配列番号4からなるか、又は配列番号4からなるか、細胞外ヒンジドメイン及び膜貫通ドメインを提供する。細胞内T細胞受容体シグナル伝達ドメインは、配列番号9(マウスCD28及びCD3ζの配列)を含むか、配列番号9からなるか、又は本質的に配列番号9からなる。
【0016】
本発明のさらなる実施形態は、表1に示されるアミノ酸配列のいずれかを含むか、それからなるか、又は本質的にそれからなる、CARを提供する。
【0017】
【表1】
【0018】
本発明はまた、本発明のCARに関する、関連する核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、抗体又はその抗原結合部分、及び医薬組成物を提供する。
【0019】
本発明の別の実施形態は、宿主における癌の存在を検出する方法を提供し、この方法は以下を含む:(a)宿主由来の1以上の細胞を含むサンプルを、本発明のCAR、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、抗体及び/又はその抗原結合部分と接触させることによって、複合体を形成する工程、及び(b)複合体を検出する工程であって、該複合体の検出が宿主における癌の存在を示す、工程。
【0020】
本発明の別の実施形態は、本発明のCAR、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、抗体及び/又はその抗原結合部分を、宿主における癌の治療又は予防に有効な量で宿主に投与することを含む、宿主における疾患の治療又は予防方法を提供する。
【0021】
本明細書中で言及する宿主は任意の宿主であり得る。宿主は哺乳動物であり得る。本明細書中で使用する場合、用語「哺乳動物」とは、任意の哺乳動物をいい、Rodentia目の哺乳動物(例えば、マウス及びハムスター)並びにLogomorpha目の哺乳動物(例えばウサギ)が挙げられるが、これらに限定されない。哺乳動物は、Carnivora目(Felines(ネコ)及びCanines(イヌ)を含む)由来であり得る。哺乳動物は、Artiodactyla目(Bovines(ウシ)及びSwines(ブタ)を含む)由来又はPerssodactyla目(Equines(ウマ)を含む)由来であり得る。哺乳動物は、Primates目、Ceboids目若しくはSimoids目(サル)又はAnthropoids目(ヒト及び類人猿)のものであり得る。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0022】
本明細書中で使用する場合、CARに関して用語「機能的部分」とは、本発明のCARの任意の一部又は断片をいい、この一部又は断片は、CAR(この一部又は断片はこれの一部である)(親CAR)の生物活性を保持する。機能的部分は、例えば、標的細胞を認識する能力又は疾患を検出、治療若しくは予防する能力を、親CARと類似の程度まで、同程度まで、又はより高い程度まで保持する、CARの一部を包含する。親CARを参照すると、機能的部分は、親CARの例えば約10%、25%、30%、50%、68%、80%、90%、95%又はそれ以上を含み得る。
【0023】
機能的部分は、当該部分のアミノ末端若しくはカルボキシ末端又は両端にさらなるアミノ酸を含み得、このさらなるアミノ酸は、親CARのアミノ酸配列中には見出されないものである。望ましくは、さらなるアミノ酸は、機能的部分の生物機能(例えば、標的細胞の認識、癌の検出、癌の治療若しくは予防など)を妨害しない。より望ましくは、さらなるアミノ酸は、親CARの生物活性と比較して、生物活性を増強する。
【0024】
本発明の範囲内には、本明細書中に記載される本発明のCAR、ポリペプチド及びタンパク質の機能的変異体が含まれる。本明細書中で使用する場合、用語「機能的変異体」とは、親CAR、ポリペプチド又はタンパク質に対して、実質的又は研著な配列同一性又は類似性を有するCAR、ポリペプチド又はタンパク質をいい、この機能的変異体は、CAR、ポリペプチド又はタンパク質(これの変異体である)の生物活性を保持する。機能的変異体は、例えば、親CAR、ポリペプチド又はタンパク質と類似の程度まで、同程度まで、又はより高い程度まで、標的細胞を認識する能力を保持した、本明細書中に記載されるCAR、ポリペプチド又はタンパク質(親CAR、ポリペプチド又はタンパク質)の変異体を包含する。親CAR、ポリペプチド又はタンパク質を参照すると、機能的変異体は、親CAR、ポリペプチド又はタンパク質に対して、例えば、少なくとも約30%、50%、75%、80%、90%、98%又はそれ以上、アミノ酸配列が同一であり得る。
【0025】
機能的変異体は、例えば、少なくとも1つの保存的アミノ酸置換を有する、親CAR、ポリペプチド又はタンパク質を含み得る。或いは又はさらに、機能的変異体は、少なくとも1つの非保存的アミノ酸置換を有する、親CAR、ポリペプチド又はタンパク質のアミノ酸配列を含み得る。この場合、非保存的アミノ酸置換は、機能的変異体の生物活性を妨害も阻害もしないことが好ましい。非保存的アミノ酸置換は、機能的変異体の生物活性を増強し得、その結果、親CAR、ポリペプチド又はタンパク質と比較して機能的変異体の生物活性が増加する。
【0026】
本発明のCARのアミノ酸置換は、好ましくは保存的アミノ酸置換である。保存的アミノ酸置換は当該分野で公知であり、特定の物理的及び/又は化学的特性を有する1つのアミノ酸が、同じ又は類似の化学的又は物理的特性を有する別のアミノ酸と交換されるアミノ酸置換が含まれる。例えば、保存的アミノ酸置換は、酸性アミノ酸の別の酸性アミノ酸での置換(例えば、Asp又はGlu)、非極性側鎖を有するアミノ酸の、非極性側鎖を有する別のアミノ酸での置換(例えば、Ala、Gly、Val、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Trp、Valなど)、塩基性アミノ酸の別の塩基性アミノ酸での置換(Lys、Argなど)、極性側鎖を有するアミノ酸の、極性側鎖を有する別のアミノ酸での置換(Asn、Cys、Gln、Ser、Thr、Tyrなど)などであり得る。
【0027】
CAR、ポリペプチド又はタンパク質は、特定のアミノ酸配列又は本明細書中に記載される配列から本質的になり得、その結果、他の成分(例えば他のアミノ酸)は、機能的変異体の生物活性を物質的に変化させない。
【0028】
本発明の実施形態のCAR、ポリペプチド又はタンパク質(機能的部分及び機能的変異体を含む)は、CAR、ポリペプチド又はタンパク質(又はその機能的部分及び機能的変異体)がその生物活性(例えば、抗原に特異的に結合する能力、宿主中の罹患細胞を検出する能力、又は宿主中の疾患を治療若しくは予防する能力など)を保持することを条件として、任意の長さのものであり得る、即ち、任意の数のアミノ酸を含み得る。例えば、ポリペプチドは、約50〜約5000アミノ酸長、例えば、50、70、75、100、125、150、175、200、300、400、500、600、700、800、900、1000又はそれ以上のアミノ酸長であり得る。これに関して、本発明のポリペプチドには、オリゴペプチドも含まれる。
【0029】
本発明の実施形態のCAR、ポリペプチド及びタンパク質(本発明の機能的部分及び機能的変異体を含む)は、1つ以上の天然に存在するアミノ酸の代わりに合成アミノ酸を含み得る。かかる合成アミノ酸は当該分野で公知であり、例えば、アミノシクロヘキサンカルボン酸、ノルロイシン、α−アミノn−デカン酸、ホモセリン、S−アセチルアミノメチル−システイン、トランス−3−及びトランス−4−ヒドロキシプロリン、4−アミノフェニルアラニン、4−ニトロフェニルアラニン、4−クロロフェニルアラニン、4−カルボキシフェニルアラニン、β−フェニルセリン β−ヒドロキシフェニルアラニン、フェニルグリシン、α−ナフチルアラニン、シクロヘキシルアラニン、シクロヘキシルグリシン、インドリン−2−カルボン酸、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸、アミノマロン酸、アミノマロン酸モノアミド、N’−ベンジル−N’−メチル−リジン、N’,N’−ジベンジル−リジン、6−ヒドロキシリジン、オルニチン、α−アミノシクロペンタンカルボン酸、α−アミノシクロヘキサンカルボン酸、α−アミノシクロヘプタンカルボン酸、α−(2−アミノ−2−ノルボルナン)−カルボン酸、α,γ−ジアミノ酪酸、α,β−ジアミノプロピオン酸、ホモフェニルアラニン及びα−tert−ブチルグリシンが挙げられる。
【0030】
本発明の実施形態のCAR、ポリペプチド及びタンパク質(機能的部分及び機能的変異体を含む)は、グリコシル化、アミド化、カルボキシル化、リン酸化、エステル化、N−アクリル化、環化(例えばジスルフィド結合を介して)、又は酸付加塩に変換され、かつ/或いは任意選択で二量体化若しくは重合、又はコンジュゲート化され得る。
【0031】
本発明の実施形態のCAR、ポリペプチド及び/又はタンパク質(その機能的部分及び機能的変異体を含む)は、当該分野で公知の方法で得ることができる。ポリペプチド及びタンパク質を新規合成する適切な方法は、例えば以下の参考文献に記載されている:Chanら,Fmoc Solid Phase Peptide Synthesis,Oxford University Press,Oxford,United Kingdom,2000;Peptide and Protein Drug Analysis,Reid,R.編,Marcel Dekker,Inc.,2000;Epitope Mapping,Westwoodら編,Oxford University Press,Oxford,United Kingdom,2001;及び米国特許第5,449,752号。また、ポリペプチド及びタンパク質は、標準的な組換え法を使用して、本明細書中に記載される核酸を使用して組換え産生され得る。例えば、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第3版,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY 2001;及びAusubelら,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates and John Wiley&Sons,NY,1994を参照。さらに、本発明のCAR、ポリペプチド及びタンパク質(その機能的部分及び機能的変異体を含む)のあるものは、植物、細菌、昆虫、哺乳動物(例えば、ラット、ヒトなど)などの供給源から、単離及び/又は精製され得る。単離及び精製の方法は当該分野で周知である。或いは、本明細書中に記載されるCAR、ポリペプチド及び/又はタンパク質(その機能的部分及び機能的変異体を含む)は、Synpep(Dublin,CA)、Peptide Technologies Corp.(Gaithersburg,MD)及びMultiple Peptide Systems(San Diego,CA)などの企業によって商業的に合成され得る。これに関して、本発明のCAR、ポリペプチド及びタンパク質は、合成、組換え、単離及び/又は精製であり得る。
【0032】
本発明の1実施形態はさらに、本発明のCARのエピトープに特異的に結合する、抗体又はその抗原結合部分を提供する。抗体は、当該分野で公知の任意の型の免疫グロブリンであり得る。例えば、抗体は、任意のアイソタイプ(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG、IgMなど)のものであり得る。抗体は、モノクローナル又はポリクローナルであり得る。抗体は、天然に存在する抗体、例えば、哺乳動物(例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、ウマ、ニワトリ、ハムスター、ヒトなど)から単離及び/又は精製された抗体であり得る。或いは、抗体は、遺伝子操作された抗体、例えば、ヒト化抗体又はキメラ抗体であり得る。抗体は、モノマー形態でもポリマー形態でもあり得る。また、抗体は、本発明のCARの機能的部分に対し、任意のレベルの親和性又は結合活性を有し得る。
【0033】
本発明のCARの任意の機能的部分に結合する能力について抗体を試験する方法は、当該分野で公知であり、以下が挙げられる:任意の抗体−抗原結合アッセイ、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ELISA、ウエスタンブロット、免疫沈降及び競合阻害アッセイ(例えば、Janewayら(下記)及び米国特許出願公開2002/0197266A1を参照)。
【0034】
抗体の製造に適した方法は、当該分野で公知である。例えば、標準的なハイブリドーマ法は、例えば、Koehler及びMilstein,Eur.J.Immunol.,5,511−519(1976)、Harlow及びLane(編),Antibodies:A Laboratory Manual,CSH Press(1988)、並びにC.A.Janewayら(編),Immunobiology,第5版,Garland Publishing,New York,NY(2001))に記載されている。或いは、他の方法が当該分野で公知である(例えば、EBV−ハイブリドーマ法(Haskard及びArcher,J.Immunol.Methods,74(2),361−67(1984)、並びにRoderら,Methods Enzymol.,121,140−67(1986))、及びバクテリオファージベクター発現系(例えば、Huseら,Science,246,1275−81(1989)を参照))。さらに、非ヒト動物において抗体を産生する方法が、例えば、米国特許第5,545,806号,同第5,569,825号及び同第5,714,352号、並びに米国特許出願公開2002/0197266A1に記載されている。
【0035】
さらにファージディスプレイが、抗体を産生するために使用され得る。これに関して、抗体の抗原結合可変(V)ドメインをコードするファージライブラリーが、標準的な分子生物学技術及び組換えDNA技術を使用して生成され得る(例えば、Sambrookら(上記)及びAusubelら(上記)を参照)。所望の特異性を有する可変領域をコードするファージが、所望の抗原への特異的結合について選択され、選択された可変ドメインを含む完全又は部分抗体が再構成される。再構成された抗体をコードする核酸配列は、適切な細胞株(例えば、ハイブリドーマ産生に使用される骨髄腫細胞)中に導入され、その結果、モノクローナル抗体の特徴を有する抗体がこの細胞によって分泌される(例えば、Janewayら(上記)、Huseら(上記)及び米国特許第6,265,150号を参照)。
【0036】
抗体は、特定の重鎖及び軽鎖免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックであるトランスジェニックマウスにより産生され得る。かかる方法は当該分野で公知であり、例えば、米国特許第5,545,806号及び同第5,569,825号、並びにJanewayら(上記)に記載されている。
【0037】
ヒト化抗体を産生する方法は当該分野で周知であり、例えば、Janewayら(上記)、米国特許第5,225,539号、同第5,585,089号及び同第5,693,761号、欧州特許0239400B1、並びに英国特許第2188638号に詳細に記載されている。ヒト化抗体はまた、米国特許第5,639,641号及びPedersenら,J.Mol.Biol.,235,959−973(1994)に記載された抗体再浮上(resurfacing)技術を使用して生成され得る。
【0038】
本発明の1実施形態はまた、本明細書中に記載される抗体のいずれかの抗原結合部分を提供する。抗原結合部分は、少なくとも1つの抗原結合部位を有する任意の部分(例えば、Fab、F(ab’)2、dsFv、sFv、ディアボディ(diabody)及びトリアボディ(triabody))であり得る。
【0039】
一本鎖可変領域断片(sFv)抗体断片(これは、合成ペプチドを介して抗体軽鎖の可変(V)ドメインに連結された抗体重鎖のVドメインを含む、切断型Fab断片である)は、慣用的な組換えDNA技術の技術を使用して生成され得る(例えば、Janewayら(上記)を参照)。同様に、ジスルフィド安定化可変領域断片(dsFv)は、組換えDNA技術によって調製され得る(例えば、Reiterら,Protein Engineering,7,697−704(1994)を参照)。しかし、本発明の抗体断片は、これらの例示的な抗体断片の型に限定されない。
【0040】
また、抗体又はその抗原結合部分は、検出可能な標識(例えば、放射性同位体、フルオロフォア(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE))、酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ)及び元素粒子(例えば、金粒子)など)を含むように改変され得る。
【0041】
本発明の1実施形態はさらに、本明細書中に記載されるCAR、ポリペプチド又はタンパク質(その機能的部分及び機能的変異体を含む)のいずれかをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。これに関して、本発明の1実施形態は、表2のヌクレオチド配列を含むか、これからなるか又は本質的にこれからなる核酸を提供する。
【0042】
【表2】
【0043】
本明細書中で使用する場合、「核酸」とは、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」及び「核酸分子」を含み、一般にDNA又はRNAのポリマーを意味し、これは、一本鎖又は二本鎖であり得、合成されても天然供給源から得てもよく(例えば、単離及び/又は精製)、天然、非天然若しくは変更されたヌクレオチドを含み得、未修飾のオリゴヌクレオチドのヌクレオチド間に見出されるホスホジエステル結合の代わりに、天然、非天然若しくは変更されたヌクレオチド間結合(例えば、ホスホロアミダート(phosphoroamidate)結合又はホスホロチオエート結合)を含み得る。いくつかの実施形態において、核酸は、挿入、欠失、逆位及び/又は置換を何れも含まない。しかし、本明細書で議論するように、ある場合には、核酸が1以上の挿入、欠失、逆位及び/又は置換を含むことが適切であり得る。
【0044】
本発明の1実施形態の核酸は組換えであり得る。本明細書中で使用する場合、用語「組換え」とは、(i)天然又は合成の核酸セグメントを、生きた細胞中で複製できる核酸分子に連結することによって、生きた細胞の外側で構築された分子、或いは(ii)上記(i)に記載した分子の複製から生じる分子、をいう。本明細書の目的のために、複製は、in vitro複製又はin vivo複製であり得る。
【0045】
組換え核酸は、天然に存在しない配列を有するものであっても、配列の2つの他の分離されたセグメントの人工的な組み合わせによって製造された配列を有するものであってもよい。この人工的な組合わせは、化学合成によって達成される場合が多く、又はより一般的には、例えば、Sambrookら(上記)に記載されたような遺伝子操作技術による、核酸の単離されたセグメントの人工的な操作によって達成される。核酸は、当業者に公知の手順を使用して、化学合成及び/又は酵素ライゲーション反応に基づいて構築され得る。例えば、Sambrookら(上記)及びAusubelら(上記)を参照。例えば、核酸は、天然に存在するヌクレオチド或いは分子の生物学的安定性を増加させるように、又はハイブリダイゼーションの際に形成される二重鎖の物理的安定性を増加させるように設計された多様な修飾ヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート誘導体及びアクリジン置換ヌクレオチド)を使用して、化学的に合成され得る。核酸を生成するために使用され得る修飾ヌクレオチドの例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルキューオシン(β−D−galactosylqueosine)、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−置換アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルキューオシン(β−D−mannosylqueosine)、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン(wybutoxosine)、シュードウラシル(pseudouracil)、キューオシン(queosine)、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル及び2,6−ジアミノプリン。或いは、本発明の核酸の1以上は、Macromolecular Resources(Fort Collins,CO)及びSynthegen(Houston,TX)などの企業から購入できる。
【0046】
核酸は、CAR、ポリペプチド若しくはタンパク質、又はそれらの機能的部分若しくは機能的変異体のいずれかをコードする、任意の単離又は精製されたヌクレオチド配列を含み得る。或いは、ヌクレオチド配列は、任意の配列へと縮重したヌクレオチド配列、又は縮重配列の組み合わせを含み得る。
【0047】
本発明の1実施形態は、本明細書中に記載される核酸のいずれかのヌクレオチド配列に対して相補的なヌクレオチド配列、又は本明細書中に記載される核酸のいずれかのヌクレオチド配列に対し、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む、単離又は精製された核酸も提供する。
【0048】
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列は、高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズし得る。「高ストリンジェンシー条件」とは、ヌクレオチド配列が、非特異的ハイブリダイゼーションよりも検出可能に強い量で標的配列(本明細書中に記載される核酸のいずれかのヌクレオチド配列)に特異的にハイブリダイズすることを意味する。高ストリンジェンシー条件には、正確に相補的な配列を有するポリヌクレオチド、又はヌクレオチド配列にマッチした数塩基の小領域(例えば3〜10塩基)を偶然有するランダム配列からの数個の散らばったミスマッチのみを含むポリヌクレオチドを、識別する条件が含まれる。かかる小領域の相補性は、14〜17又はそれ以上の塩基の全長相補体よりも容易に融解され、高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーションは、それらを容易に識別できるようにする。比較的高ストリンジェンシーの条件には、例えば、低塩及び/又は高温条件(例えば、約0.02〜0.1MのNaCl又は等価物、約50〜70℃の温度により提供される)が含まれる。かかる高ストリンジェンシー条件は、存在したとしても、ヌクレオチド配列とテンプレート鎖若しくは標的鎖との間のミスマッチをほとんど許容せず、本発明のCARのいずれかの発現を検出するのに特に適している。条件は、漸増量のホルムアミドの添加によって、よりストリンジェントになり得ることが一般に理解される。
【0049】
1実施形態において、本発明の核酸は、組換え発現ベクター中に組み込まれ得る。これに関して、本発明の1実施形態は、本発明の核酸のいずれかを含む組換え発現ベクターを提供する。本明細書中の目的のために、用語「組換え発現ベクター」とは、宿主細胞によるmRNA、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドの発現を可能にする遺伝子改変オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドコンストラクトを意味し、ここで、コンストラクトは、mRNA、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、ベクターは、細胞内でmRNA、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドを発現させるのに十分な条件下で細胞と接触させられる。本発明のベクターは、全体としては天然に存在するものではない。しかし、ベクターの一部は天然に存在するものであり得る。本発明の組換え発現ベクターは、DNA及びRNA(一本鎖又は二本鎖であり得、合成されても一部を天然供給源から得てもよく、天然、非天然若しくは変更されたヌクレオチドを含み得る)が挙げられるがそれらに限定されない任意の型のヌクレオチドを含み得る。組換え発現ベクターは、天然に存在するヌクレオチド間結合若しくは天然に存在しないヌクレオチド間結合、又は両方の型の結合を含み得る。好ましくは、天然に存在しない又は変更されたヌクレオチド又はヌクレオチド間結合は、ベクターの転写も複製も妨害しない。
【0050】
1実施形態において、本発明の組換え発現ベクターは、任意の適切な組換え発現ベクターであり得、任意の適切な宿主を形質転換又はトランスフェクトするために使用され得る。適切なベクターとしては、増殖(propagation)及び増大(expansion)のため、発現のため、又はそれら両方のために設計されたベクター(例えば、プラスミド及びウイルス)が挙げられる。ベクターは、以下からなる群より選択され得る:pUCシリーズ(Fermentas Life Sciences,Glen Burnie,MD)、pBluescriptシリーズ(Stratagene,LaJolla,CA)、pETシリーズ(Novagen,Madison,WI)、pGEXシリーズ(Pharmacia Biotech,Uppsala,Sweden)及びpEXシリーズ(Clontech,Palo Alto,CA)。バクテリオファージベクター(例えば、λGT10、λGT11、λZapII(Stratagene)、λEMBL4及びλNM1149)もまた使用され得る。植物発現ベクターの例としては、pBI01、pBI101.2、pBI101.3、pBI121及びpBIN19(Clontech)が挙げられる。動物発現ベクターの例としては、pEUK−Cl、pMAM及びpMAMneo(Clontech)が挙げられる。組換え発現ベクターは、ウイルスベクター(例えば、レトロウイルスベクター)であり得る。
【0051】
1実施形態において、本発明の組換え発現ベクターは、例えばSambrookら(上記)及びAusubelら(上記)に記載された、標準的な組換えDNA技術を使用して調製できる。環状又は線状の発現ベクターのコンストラクトは、原核生物又は真核生物の宿主細胞において機能的な複製系を含むように調製され得る。複製系は、例えば、ColEl、2μプラスミド、λ、SV40、ウシパピローマウイルスなどに由来し得る。
【0052】
組換え発現ベクターは、必要に応じてそのベクターがDNAベースであるかRNAベースであるかを考慮して、ベクターが導入される宿主の型(例えば、細菌、真菌、植物又は動物)に特異的な調節配列(例えば、転写及び翻訳の開始及び終止コドン)を含み得る。
【0053】
組換え発現ベクターは、形質転換又はトランスフェクトされた宿主の選択を可能にする、1以上のマーカー遺伝子を含み得る。マーカー遺伝子には、殺生物剤耐性(例えば、抗生物質、重金属などに対する耐性)、原栄養性を提供するための栄養要求性宿主における補完などが挙げられる。本発明の発現ベクターに適したマーカー遺伝子には、例えば、ネオマイシン/G418耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ヒスチジノール耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子及びアンピシリン耐性遺伝子が挙げられる。
【0054】
組換え発現ベクターは、CAR、ポリペプチド又はタンパク質(その機能的部分及び機能的変異体を含む)をコードするヌクレオチド配列或いはCAR、ポリペプチド又はタンパク質をコードするヌクレオチド配列と相補的であるか又はそれにハイブリダイズするヌクレオチド配列に作動可能に連結された、天然又は非天然のプロモーターを含み得る。プロモーター(例えば、強い、弱い、誘導性、組織特異的及び発生特異的)の選択は、当業者の技術範囲内である。同様に、ヌクレオチド配列とプロモーターとの組み合わせもまた、当業者の技術範囲内である。プロモーターは、非ウイルスプロモーター若しくはウイルスプロモーター(例えば、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、SV40プロモーター、RSVプロモーター、又はマウス幹細胞ウイルスの末端反復配列中に見出されるプロモーター)であり得る。
【0055】
本発明の組換え発現ベクターは、一過性の発現のため、安定な発現のため、又はその両方のために設計され得る。また、組換え発現ベクターは、構成的発現又は誘導性発現のために製造され得る。
【0056】
さらに、組換え発現ベクターは、自殺遺伝子を含むように製造され得る。本明細書中で使用する場合、用語「自殺遺伝子」とは、その自殺遺伝子を発現する細胞を死に至らしめる遺伝子をいう。自殺遺伝子は、その遺伝子が発現される細胞に対し薬剤(例えば薬物)に対する感受性を付与し、細胞がその薬剤と接触したとき又はその薬剤に曝露されたときに細胞を死に至らしめる遺伝子であり得る。自殺遺伝子は当該分野で公知であり(例えば、Suicide Gene Therapy:Methods and Reviews,Springer,Caroline J.(Cancer Research UK Centre for Cancer Therapeutics at the Institute of Cancer Research,Sutton,Surrey,UK),Humana Press,2004を参照)、例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、シトシンデアミナーゼ、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ及びニトロレダクターゼが挙げられる。
【0057】
本発明の範囲内には、本発明のCAR、ポリペプチド又はタンパク質(その機能的部分又は変異体のいずれかを含む)、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、宿主細胞集団、又は抗体若しくはその抗原結合部分のいずれかを含む、コンジュゲート(例えば、バイオコンジュゲート)が含まれる。コンジュゲート並びにコンジュゲートの合成方法は一般に、当該分野で公知である(例えば、Hudecz,F.,Methods Mol.Biol.298:209−223(2005)及びKirinら,Inorg Chem.44(15):5405−5415(2005)を参照)。
【0058】
本発明の1実施形態はさらに、本明細書中に記載される組換え発現ベクターのいずれかを含む宿主細胞を提供する。本明細書中で使用する場合、用語「宿主細胞」とは、本発明の組換え発現ベクターを含み得る任意の型の細胞をいう。宿主細胞は、真核生物細胞(例えば、植物、動物、真菌又は藻類)であってもよく、原核生物細胞(例えば、細菌又は原生生物)であってもよい。宿主細胞は、培養細胞又は初代細胞(即ち、ヒトなどの生物から直接単離された)であり得る。宿主細胞は、接着細胞又は浮遊細胞(即ち、懸濁物中で増殖する細胞)であり得る。適切な宿主細胞は当該分野で公知であり、例えば、DH5α E.coli細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、サルVERO細胞、COS細胞、HEK293細胞などが挙げられる。組換え発現ベクターを増幅又は複製する目的のために、宿主細胞は、DH5α細胞などの原核生物細胞であり得る。組換えCAR、ポリペプチド又はタンパク質を産生する目的のために、宿主細胞は哺乳動物細胞であり得る。宿主細胞はヒト細胞であり得る。宿主細胞は任意の細胞型のものであり得、任意の組織型に由来し得、任意の発生段階のものであり得るが、宿主細胞は、末梢血リンパ球(PBL)であり得る。宿主細胞はT細胞であり得る。
【0059】
本明細書中の目的のために、T細胞は、任意のT細胞(例えば培養T細胞(例えば初代T細胞)、又は培養T細胞株(例えば、Jurkat、SupT1など)由来のT細胞、又は哺乳動物から得られたT細胞)であり得る。哺乳動物から得られる場合、T細胞は、多数の供給源(血液、骨髄、リンパ節、胸腺又は他の組織若しくは体液が挙げられるが、これらに限定されない)から得ることができる。T細胞はまた、富化又は精製され得る。T細胞はヒトT細胞であり得る。T細胞は、ヒトから単離されたT細胞であり得る。T細胞は、任意の型のT細胞であり得、任意の発生段階のものであり得る(CD4+/CD8+二重ポジティブT細胞、CD4+ヘルパーT細胞(例えば、Th1及びTh2細胞)、CD8+T細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)、末梢血単核球(PBMC)、末梢血白血球(PBL)、腫瘍浸潤細胞、メモリーT細胞、ナイーブT細胞などが含まれるが、これらに限定されない)。T細胞は、CD8+T細胞又はCD4+T細胞であり得る。
【0060】
本発明の1実施形態は、本明細書中に記載される少なくとも1つの宿主細胞を含む細胞集団も提供する。細胞集団は、少なくとも1つの他の細胞(例えば、記載された組換え発現ベクターをいずれも含まない宿主細胞(例えばT細胞)又はT細胞以外の細胞(例えば、B細胞、マクロファージ、好中球、赤血球、肝細胞、内皮細胞、上皮細胞、筋細胞、脳細胞など))に加えて、この組換え発現ベクターのいずれかを含む宿主細胞を含む、不均質な集団であり得る。或いは、細胞集団は、実質的に均質な集団であり得、このとき、集団は、組換え発現ベクターを含む宿主細胞から主に構成される(例えば、組換え発現ベクターを含む宿主細胞から本質的になる)。集団は細胞のクローン集団でもあり得、このとき、集団の全ての細胞は、組換え発現ベクターを含む単一の宿主細胞のクローンであり、その結果、集団の全ての細胞が組換え発現ベクターを含む。本発明の1実施形態において、細胞集団は、本明細書中に記載される組換え発現ベクターを含む宿主細胞を含むクローン集団である。
【0061】
CAR、ポリペプチド、タンパク質(その機能的部分及び変異体を含む)、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞(その集団を含む)及び抗体(その抗原結合部分を含む)(これらは全て、本明細書中以下、集合的に「本発明のCAR材料」と呼ぶ)は、単離及び/又は精製され得る。本明細書中で使用する場合、用語「単離された」は、その天然の環境から取り出されたことを意味する。用語「精製された」又は「単離された」は、絶対的な純度又は単離を必要としない。むしろ、相対的な用語として意図される。従って、例えば、精製された(又は単離された)宿主細胞調製物は、宿主細胞が、身体内のその天然の環境中の細胞よりも純粋である調製物である。かかる宿主細胞は、例えば、標準的な精製技術によって生成され得る。いくつかの実施形態において、宿主細胞の調製物は、その調製物の総細胞含量の少なくとも約50%、例えば少なくとも約70%を宿主細胞が占めるように、精製される。例えば、純度は、少なくとも約50%であり得、約60%、約70%又は約80%より高くてもよく、或いは約100%であり得る。
【0062】
本発明のCAR材料は、医薬組成物などの組成物へと製剤化され得る。これに関して、本発明の1実施形態は、CAR、ポリペプチド、タンパク質、機能的部分、機能的変異体、核酸、発現ベクター、宿主細胞(その集団を含む)及び抗体(その抗原結合部分を含む)のいずれかと、医薬上許容される担体とを含む、医薬組成物を提供する。本発明のCAR材料のいずれかを含む本発明の医薬組成物は、1種より多い本発明のCAR材料(例えば、ポリペプチド及び核酸)又は2種以上の異なるCARを含み得る。或いは、医薬組成物は、他の医薬上活性な薬剤又は薬物(例えば、化学療法剤、例:アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メトトレキサート、パクリタキセル、リツキシマブ、ビンブラスチン、ビンクリスチンなど)と組合わせて、本発明のCAR材料を含み得る。好ましい実施形態において、医薬組成物は、本発明の宿主細胞又はその集団を含む。
【0063】
本発明のCAR材料は、塩(例えば、医薬上許容される塩)の形態で提供され得る。適切な医薬上許容される酸付加塩には、鉱酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸及び硫酸)由来の塩、及び有機酸(例えば、酒石酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、グリコール酸、コハク酸、及びp−トルエンスルホン酸などのアリールスルホン酸)由来の塩が含まれる。
【0064】
医薬組成物に関して、医薬上許容される担体は、従来使用されるいずれの担体であってもよく、化学−物理的考慮事項(例えば、溶解度、及び活性薬剤に対する反応性の欠如)及び投与経路のみによって限定される。本明細書中に記載される医薬上許容される担体(例えば、ビヒクル、アジュバント、賦形剤及び希釈剤)は、当業者に周知であり、公に容易に入手可能である。医薬上許容される担体は、活性薬剤に対し化学的に不活性な担体及び使用条件下で有害な副作用も毒性もない担体であることが好ましい。
【0065】
担体の選択は、本発明の特定のCAR材料によって、並びに本発明のCAR材料を投与するために使用される特定の方法によって、一部決定されよう。従って、本発明の医薬組成物の適切な製剤は多様である。保存剤が使用され得る。適切な保存剤としては、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム及び塩化ベンザルコニウムが挙げられ得る。2種以上の保存剤の混合物が、任意選択で使用され得る。保存剤又はその混合物は、典型的には、総組成物の約0.0001重量%〜約2重量%の量で存在する。
【0066】
適切な緩衝剤としては、例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸、リン酸カリウム並びに種々の他の酸及び塩が挙げられ得る。2種以上の緩衝剤の混合物が、任意選択で使用され得る。緩衝剤又はその混合物は、典型的には、総組成物の約0.001重量%〜約4重量%の量で存在する。
【0067】
医薬製剤中の本発明のCAR材料の濃度は、例えば、約1重量%未満、通常約10重量%又は少なくとも約10重量%から、約20重量%〜約50重量%以上まで変動し得、選択される特定の投与様式に従って、流体の体積及び粘度によって主に選択され得る。
【0068】
投与可能な(例えば、非経口投与可能な)組成物を調製するための方法は、当業者に公知又は明らかであり、例えば以下においてより詳細に記載されている:Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Lippincott Williams&Wilkins;第21版(2005年5月1日)。
【0069】
経口、エアロゾル、非経口(例えば、皮下、静脈内、動脈内、筋内、皮内、腹腔内(interperitoneal)及び髄腔内)及び局所投与のための以下の製剤は、単なる例示であり、何ら限定ではない。本発明のCAR材料を投与するために1より多い経路が使用され得、ある場合には、特定の経路が、別の経路よりも迅速かつ有効な応答を提供し得る。
【0070】
経口投与に適した製剤は、以下を含むか又は以下からなり得る:(a)希釈剤(例えば、水、生理食塩水又はオレンジジュース)中に溶解させた有効量の本発明のCAR材料などの、液体溶液;(b)カプセル、サシェ剤(sachet)、錠剤、ロゼンジ及びトローチ(それぞれ、固体又は顆粒として所定量の活性成分を含む);(c)粉末;(d)適切な液体中の懸濁物;及び(e)適切な乳濁物。液体製剤は、医薬上許容される界面活性剤の添加あり又はなしのいずれかの、水及びアルコール(例えば、エタノール、ベンジルアルコール及びポリエチレンアルコール)などの希釈剤を含み得る。カプセル形態は、例えば、界面活性剤、滑沢剤及び不活性フィラー(例えば、ラクトース、スクロース、リン酸カルシウム及びコーンスターチ)を含む、通常の硬ゼラチン型及び軟ゼラチン型のものであり得る。錠剤形態は、以下の1以上を含み得る:ラクトース、スクロース、マンニトール、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸、結晶セルロース、アラビアゴム、ゼラチン、グアーガム、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、並びに他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、崩壊剤、加湿剤、保存剤、香味料及び他の薬理学的に適合性の賦形剤。ロゼンジ形態は、香料(通常、スクロース及びアラビアゴム又はトラガント)中に本発明のCAR材料を含み得、アメ(pastille)は、当該分野で公知のかかる賦形剤に加えて、不活性基剤(例えば、ゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアラビアゴム)、乳濁物、ゲルなどを含む中に、本発明のCAR材料を含む。
【0071】
非経口投与に適した製剤には、水性又は非水性の等張無菌注射溶液(抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、及び製剤を意図したレシピエントの血液と等張にする溶質を含み得る)並びに水性及び非水性の無菌懸濁物(懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤及び保存剤を含み得る)が挙げられる。本発明のCAR材料は、医薬上許容される界面活性剤(例えば、石鹸又は洗剤)、懸濁剤(例えば、ペクチン、カルボマー、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はカルボキシメチルセルロース)又は乳化剤及び他の医薬的アジュバントの添加あり又はなしの、医薬的担体(例えば、無菌の液体又は液体混合物(水、生理食塩水、水性デキストロース及び関連の等溶液、アルコール(例えば、エタノール又はヘキサデシルアルコール)、グリコール(例えば、プロピレングリコール又はポリエチレングリコール)、ジメチルスルホキシド、グリセロール、ケタール(例えば、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール)、エーテル、ポリ(エチレングリコール)400、油、脂肪酸、脂肪酸エステル若しくはグリセリド、又はアセチル化脂肪酸グリセリドを含む))中の生理学的に許容される希釈剤中で投与され得る。
【0072】
非経口製剤で使用され得る油には、石油、動物油、植物油又は合成油が挙げられる。油の具体的例としては、落花生油、大豆油、ゴマ油、綿実油、コーン油、オリーブ油、ペトロラタム及び鉱油が挙げられる。非経口製剤での使用に適切な脂肪酸には、オレイン酸、ステアリン酸及びイソステアリン酸が挙げられる。オレイン酸エチル及びミリスチン酸イソプロピルが、適切な脂肪酸エステルの例である。
【0073】
非経口製剤での使用に適した石鹸には、脂肪酸のアルカリ金属、アンモニウム及びトリエタノールアミン塩が挙げられ、適切な洗剤には以下が挙げられる:(a)カチオン性洗剤(例えば、ジメチルジアルキルアンモニウムハライド及びアルキルピリジニウムハライド)、(b)アニオン性洗剤(例えば、アルキル、アリール及びオレフィンスルホン酸塩、アルキル、オレフィン、エーテル及びモノグリセリド硫酸塩及びスルホコハク酸塩)、(c)非イオン性洗剤(例えば、脂肪アミンオキシド、脂肪酸アルカノールアミド及びポリオキシエチレンポリプロピレンコポリマー)、(d)両性洗剤(例えば、アルキル−β−アミノプロピオン酸塩及び2−アルキル−イミダゾリン第4級アンモニウム塩)、並びに(e)それらの混合物。
【0074】
非経口製剤は典型的に、例えば、溶液中に約0.5重量%〜約25重量%の本発明のCAR材料を含むであろう。保存剤及び緩衝液が使用され得る。注射部位での刺激を最小化又は排除するために、かかる組成物は、例えば、約12〜約17の親水性−親油性バランス(HLB)を有する1種以上の非イオン性界面活性剤を含み得る。かかる製剤中の界面活性剤の量は、典型的には、例えば、約5重量%〜約15重量%の範囲であろう。適切な界面活性剤としては、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ソルビタンモノオレエート)、及びプロピレンオキシドとプロピレングリコールとの縮合によって形成される、疎水性塩基とエチレンオキシドとの高分子量付加物が挙げられる。非経口製剤は、単一用量又は複数用量の密封容器(例えば、アンプル及びバイアル)中に提示され得、使用直前の無菌液体賦形剤(例えば注射用水)の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存され得る。即時注射溶液及び懸濁物は、以前に記載された種類の無菌の粉末、顆粒及び錠剤から調製できる。
【0075】
注射可能な製剤は、本発明の1実施形態に従う。注射可能な組成物のための有効な医薬的担体の要件は、当業者に周知である(例えば、Pharmaceutics and Pharmacy Practice,J.B.Lippincott Company,Philadelphia,PA,Banker及びChalmers編,頁238−250(1982)、及びASHP Handbook on Injectable Drugs,Toissel,第4版,頁622−630(1986)を参照)。
【0076】
局所製剤(経皮薬物放出に有用なものを含む)は、当業者に周知であり、本発明の実施形態の皮膚への適用に関して適切である。本発明のCAR材料は、単独で又は他の適切な成分と組み合わせて、吸入を介して投与されるエアロゾル製剤にされ得る。これらのエアロゾル製剤は、加圧された許容可能な噴霧剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素など)中に入れられ得る。これらはまた、例えばネブライザー又はアトマイザー中の非加圧製剤のための医薬として製剤化され得る。かかるスプレー製剤は、粘膜にスプレーするためにも使用され得る。
【0077】
「有効量」又は「治療に有効な量」とは、個体における癌を予防又は治療するのに適切な用量をいう。治療的使用又は予防的使用に有効な量は、例えば、治療される疾患又は障害の病期及び重篤度、患者の年齢、体重及び全般的健康状態、並びに処方医師の判断に依存するであろう。用量のサイズもまた、選択された活性剤、投与方法、投与のタイミング及び頻度、特定の活性剤の投与に伴い得る任意の有害な副作用の存在、性質及び程度、並びに所望の生理学的効果によって決定されよう。種々の疾患又は障害が、おそらく各投与経路又は種々の投与経路で本発明のCAR材料を使用する、複数の投与を含む長期治療を必要とし得ることが、当業者に理解されよう。本発明の限定を意図しない例として、本発明のCAR材料の用量は、約0.001〜約1000mg/治療される対象の体重kg/日、約0.01〜約10mg/kg体重/日、約0.01mg〜約1mg/kg体重/日であり得る。
【0078】
本発明の目的のために、投与される本発明のCAR材料の量又は用量は、合理的な時間枠にわたって対象又は動物において治療応答又は予防応答をもたらすのに十分でなければならない。例えば、本発明のCAR材料の用量は、投与時点から約2時間以上の期間(例えば、約12時間〜約24時間又はそれ以上)において、抗原に結合するため、又は疾患を検出、治療若しくは予防するために、十分でなければならない。特定の実施形態において、この期間はさらに長くてもよい。用量は、本発明の特定のCAR材料の効力及び動物(例えば、ヒト)の状態、並びに治療する動物(例えば、ヒト)の体重によって決定されるであろう。
【0079】
本発明の目的のために、例えば、本発明のCAR、ポリペプチド又はタンパク質を発現するT細胞の所与の用量を哺乳動物に投与した際に、かかるT細胞によって標的細胞が溶解される又はIFN−γが分泌される程度を、種々の用量のT細胞をそれぞれ与えた哺乳動物のセット間で比較することを含むアッセイが、哺乳動物に投与される出発用量を決定するために使用され得る。特定の用量の投与の際に標的細胞が溶解される又はIFN−γが分泌される程度は、当該分野で公知の方法によってアッセイできる。
【0080】
本発明のCAR材料を1種以上のさらなる治療剤と共に投与する場合、1種以上のさらなる治療剤は、哺乳動物に共投与され得る。「共投与(coadministering)」とは、本発明のCAR材料が1種以上のさらなる治療剤の効果を増強でき、また1種以上のさらなる治療剤が本発明のCAR材料の効果を増強できるように十分に近接した時間で、1種以上のさらなる治療剤及び本発明のCAR材料を投与することを意味する。これに関して、本発明のCAR材料が最初に投与されかつ1種以上のさらなる治療剤が2番目に投与され得、1種以上のさらなる治療剤が最初に投与されかつ本発明のCAR材料が2番目に投与され得る。或いは、本発明のCAR材料及び1種以上のさらなる治療剤は、同時に投与され得る。CAR材料と共投与され得る例示的な治療剤は、IL−2である。IL−2は、本発明のCAR材料の治療効果を増強すると考えられる。宿主細胞又は細胞集団が宿主に投与される本発明の方法の目的のために、細胞は、宿主に対して同種又は自己の細胞であり得る。
【0081】
本発明の医薬組成物、CAR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞又は細胞集団は、宿主における疾患を治療又は予防する方法で使用され得ることが企図される。特定の理論に束縛されないが、細胞によって発現された場合に、CAR(又は関連の本発明のポリペプチド若しくはタンパク質)が、CARが特異的な抗原(例えばVEGFR−2)を発現する細胞に対する免疫応答を媒介できるように、本発明のCARは、生物活性(例えば、抗原(例えばVEGFR−2)を認識する能力)を有する。これに関して、本発明の1実施形態は、宿主における疾患を治療又は予防するのに有効な量で、本発明のCAR材料のいずれかを宿主に投与することを含む、宿主における疾患の治療又は予防方法を提供する。
【0082】
本発明の1実施形態は、本発明のCAR材料を投与する前に宿主をリンパ枯渇させる(lymphodeplete)ことをさらに含む。
【0083】
本発明の方法に関して、癌は、以下のいずれかを含む任意の癌であり得る:急性リンパ球性癌、急性骨髄性白血病、胞巣状横紋筋肉腫、膀胱癌、骨癌、脳癌、乳癌、肛門、肛門管若しくは肛門直腸(anorectum)の癌、眼の癌、肝内胆管の癌、関節の癌、頸部、胆嚢若しくは胸膜の癌、鼻、鼻腔若しくは中耳の癌、口腔の癌、外陰部の癌、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性癌、結腸癌、食道癌、子宮頸癌、線維肉腫、消化管カルチノイド腫瘍、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、腎臓癌、喉頭癌、白血病、液性腫瘍、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、悪性中皮腫、肥満細胞腫、黒色腫、多発性骨髄腫、上咽頭癌、非ホジキンリンパ腫、卵巣癌、膵臓癌、腹膜、網及び腸間膜の癌、咽頭癌、前立腺癌、直腸癌、腎癌、皮膚癌、小腸癌、軟組織癌、固形腫瘍、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、尿管癌、並びに膀胱癌。好ましくは、癌は、血管新生表現型によって特徴付けられる癌、例えば、固形腫瘍又は血液悪性腫瘍である。
【0084】
用語「治療」及び「予防」並びにそれらの派生語は、本明細書中で使用する場合、100%又は完全な治療又は予防を必ずしも意味しない。むしろ、当業者が潜在的な有益効果又は治療効果を有すると認識する、変動する程度の治療又は予防が存在する。これに関して、本発明の方法は、哺乳動物中の癌の任意のレベルの治療又は予防の任意の量を提供し得る。さらに、本発明の方法が提供する治療又は予防は、治療又は予防される疾患(例えば癌)の1以上の状態又は症状の治療又は予防を含み得る。また、本明細書の目的のために、「予防」は、疾患又はその症状若しくは状態の発症を遅延させることを包含し得る。
【0085】
標的細胞を認識する能力及び抗原特異性についてCARを試験する方法は、当該分野で公知である。例えば、Clayら,J.Immunol.,163:507−513(1999)は、サイトカイン(例えば、インターフェロン−γ、顆粒球/単球コロニー刺激因子(GM−CSF)、腫瘍壊死因子a(TNF−α)又はインターロイキン2(IL−2))の放出を測定する方法を教示している。さらに、CAR機能は、Zhaoら,J.Immunol.,174:4415−4423(2005)に記載されるように、細胞毒性(cellular cytoxicity)の測定によって評価できる。標的細胞を認識する能力及び抗原特異性についてCARを試験する方法は、実施例の項目で本明細書中に記載される。
【0086】
生検は、個体からの組織及び/又は細胞の取り出しである。かかる取り出しは、取り出された組織及び/又は細胞に対して実験法を行なうために、個体から組織及び/又は細胞を収集するためのものであり得る。この実験法は、個体が特定の状態又は疾患状態(disease−state)を有する及び/又はそれらに罹患しているか否かを決定するための実験を含み得る。状態又は疾患は、例えば癌であり得る。
【0087】
宿主における癌の存在を検出する本発明の方法の1実施形態に関して、宿主の細胞を含有するサンプルは、全細胞、その溶解物、又は全細胞溶解物の画分(例えば、核画分若しくは細胞質画分、全タンパク質画分、又は核酸画分)を含むサンプルであり得る。サンプルが全細胞を含む場合、細胞は、宿主の任意の細胞、例えば、任意の臓器又は組織の細胞(血球又は内皮細胞を含む)であり得る。
【0088】
上記医薬組成物に加えて、本発明のCAR材料は、包接錯体(例えば、シクロデキストリン包接錯体)又はリポソームとして製剤化され得る。リポソームは、特定の組織に本発明のCAR材料を標的化するために機能し得る。リポソームは、本発明のCAR材料の半減期を増加させるためにも使用され得る。例えば、Szokaら,Ann.Rev.Biophys.Bioeng.,9,467(1980)並びに米国特許第4,235,871号、同第4,501,728号、同第4,837,028号及び同第5,019,369号に記載されるように、リポソームを調製するための多くの方法が利用可能である。
【0089】
本発明の実施形態に関連して有用な送達系には、本発明の組成物の送達が、治療される部位の感作の前に、及び感作を引き起こすのに十分な時間で生じるような、時限放出(time−released)、遅延放出(delayed release)及び徐放(sustained release)送達系が挙げられ得る。本発明の組成物は、他の治療剤又は療法と合わせて使用され得る。かかる系は、本発明の組成物の反復投与を回避することにより、対象及び医師の利便性を向上させることができ、本発明の特定の組成物実施形態に特に適したものであり得る。
【0090】
多くの型の放出送達系が利用可能であり、当業者に公知である。これらには、ポリ(ラクチド−グリコリド)、コポリオキサラート(copolyoxalate)、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシ酪酸及びポリ無水物などの、ポリマーベースの系が挙げられる。上記ポリマーの薬物含有マイクロカプセルは、例えば米国特許第5,075,109号に記載されている。送達系には、ステロール(例えば、コレステロール、コレステロールエステル)及び脂肪酸又は中性脂肪(例えば、モノグリセリド、ジグリセリド及びトリグリセリド)を含む脂質;ヒドロゲル放出系;シラスティック(sylastic)系;ペプチドベースの系;ワックスコーティング;従来の結合剤及び賦形剤を使用した圧縮錠剤;部分融合移植物(partially fused implant)などの、非ポリマー系も含まれる。具体例としては以下が挙げられるがこれらに限定されない:(a)米国特許第4,452,775号、同第4,667,014号、同第4,748,034号及び同第5,239,660号に記載されるような、活性組成物がマトリックス内にある形態で含まれる、侵食性(erosional)の系、及び(b)米国特許第3,832,253号及び同第3,854,480号に記載されるような、活性成分が制御された速度でポリマーから浸透する拡散系。さらに、ポンプベースのハードウェア送達系も使用され得、そのうちいくつかは、移植のために適合している。
【0091】
多数のトランスフェクション技術が、当該分野で一般に公知である(例えば、Grahamら,Virology,52:456−467(1973);Sambrookら(上記);Davisら,Basic Methods in Molecular Biology,Elsevier(1986);及びChuら,Gene,13:97(1981)を参照)。トランスフェクション法には、リン酸カルシウム共沈殿(例えば、Grahamら(上記)を参照)、培養細胞への直接的マイクロインジェクション(例えば、Capecchi,Cell,22:479−488(1980)を参照)、エレクトロポレーション(例えば、Shigekawaら,BioTechniques,6:742−751(1988)を参照)、リポソーム媒介性の遺伝子移入(例えば、Manninoら,BioTechniques,6:682−690(1988)を参照)、脂質媒介性の形質導入(例えば、Felgnerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84:7413−7417(1987)を参照)及び高速微粒子(microprojectile)を使用する核酸送達(例えば、Kleinら,Nature,327:70−73(1987)を参照)が挙げられる。
【0092】
当業者は、本発明の本発明のCAR材料が、本発明のCAR材料の治療効力又は予防効力を改変によって増加させるために、多数の方法で改変され得ることを容易に理解するであろう。例えば、本発明のCAR材料は、直接的又はリンカーを介して間接的に、標的化部分にコンジュゲート化され得る。化合物(例えば、本発明のCAR材料)を標的化部分にンジュゲート化する実務は、当該分野で公知である。例えば、Wadwaら,J.Drug Targeting 3:111(1995)及び米国特許第5,087,616号を参照。
【0093】
或いは、本発明のCAR材料は、デポー(depot)形態に改変され得、その結果、投与される身体中に本発明のCAR材料が放出される様式は、時間及び身体内の位置に関して制御される(例えば、米国特許第4,450,150号を参照)。本発明のCAR材料のデポー形態は、例えば、本発明のCAR材料及び多孔性又は非多孔性の材料(例えばポリマー)を含む移植可能な組成物であり得、ここで本発明のCAR材料は、材料に封入されるか又は材料を通して拡散され、及び/又は非多孔性材料の分解によって拡散される。次いでデポーは、身体内の所望の位置に移植され、本発明のCAR材料は、所定の速度で移植物から放出される。
【0094】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するが、その範囲を限定するものであると決して解釈すべきではないことは当然である。
【実施例】
【0095】
マウス
純系メスC57BL/6(B6)マウスは、National Cancer Institute−Frederick Cancer Research and Development Center(Frederick,MD)から購入した。BALB/cマウスは、Jackson Laboratory(Bar Harbor,ME)から購入した。全ての動物は、National Institutes of Healthの動物施設,Bethesda,MDにおいて、病原体なしの特定の条件で収容した。7〜9週齢のマウスを全ての実験で使用し、それらの実験は、National Institutes of Health,Bethesda,MDの動物実験倫理委員会の指針に従って実施した。
【0096】
細胞培養
これらの実施例で使用したマウス腫瘍株は、B16−F10(黒色腫)、MCA−205(肉腫)、MC38(結腸腺癌)、MB49(膀胱癌腫)、MC17−51(肉腫)、CT−26(結腸癌腫)、Renca(腎癌腫)、4T1(乳腺腺癌)、C−1498(骨髄性白血病)、P815(肥満細胞腫)、EL−4(リンパ腫)及びNIH−3T3(マウス胚繊維芽細胞)であった。B16−F10、MCA−205、MC38及びNIH−3T3細胞は、Surgery Branch,National Cancer Institute,National Institutes of Health(Bethesda,MD)の細胞培養物寄託機関から得た。CT26及びRenca細胞は、Weiss博士(NCI−Frederick,Frederick,MD)から得た。SVEC4−10EHR1、MS1及びSVRは、American Type Culture Collection(ATCC,Manassas,VA)から購入した、形質転換されたマウス内皮細胞株であった。eBEND.3も、形質転換されたマウス内皮細胞株である(Frank Cuttita博士,Angiogenesis Core Facility at NCI,NIH,Gaithersburg,MDのご厚意による提供)。マウスVEGF−2タンパク質を安定して発現するMB49−Flk1及びNIH3T3−Flk1細胞は、全長マウスVEGFR−2をコードするVSV−G偽型レンチウイルスベクターで、MB49及びNIH−3T3細胞株を形質導入することによって作製された(X.Liら,Stem Cells 25:2987(2007))(Lena Claesson−Welsh教授,Uppsala University,Swedenのご厚意による提供)。
【0097】
これらの実施例で使用した末梢血リンパ球(PBL)は、Surgery Branch,National Cancer Institute,NIH,Bethesda,MDにおいて治療された転移性黒色腫患者の白血球アフェレーシスによって得られた凍結保存PBMCであった。これらの実施例で使用した以下の正常初代ヒト細胞は、LONZA Walkersville,Inc.(Walkersville,MD)から調達した:微小血管内皮細胞(HMVEC)(肺由来(HMVEC−L)又は真皮由来(HMVEC−D))、臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)、小気道上皮細胞(SAEC)、気管支上皮細胞(HBEC)、腎上皮細胞(HRE)、乳腺上皮細胞(HMEC)、前立腺上皮細胞(PrEC)、平滑筋筋芽細胞(HSMM)、ヒト初代皮膚繊維芽細胞。使用した他の細胞株は、ヒト胎児胚腎臓繊維芽細胞細胞株293及びKDRを発現する安定な形質転換体である293−KDRであった(Maria Parkhurst博士,Surgery Branch,National Cancer Institute,NIH,Bethesda,MDのご厚意による提供)。レトロウイルスパッケージング細胞株293GP及びPG13は、CTAAから得た。ヒトエコトロピックパッケージング細胞株PhoenixTM Ecoは、Gary Nolan,Stanford University,Stanford,CAの厚意により提供された(Orbigen Inc.,San Diego,CAからも入手可能)。
【0098】
上記全てのマウス腫瘍株は、R10(10%熱不活化ウシ胎仔血清(FBS)、100U/mlペニシリン及び100μg/mlストレプトマイシン(全てInvitrogenTMCorporation,Grand Isle,NYから)を補充したRPMI1640培地)中で維持した。マウス内皮細胞株、NIH−3T3細胞、293、293−KDR、293GP、PG13及びPhoenixTMEco細胞は全て、D10(10%熱不活化FBS、100U/mlペニシリン及び100μg/mlストレプトマイシンを補充したDMEM(InvitrogenTMCorporation))中で維持した。全ての初代ヒト細胞は、その製造業者(Lonza Walkersville,Inc.)から購入したそれぞれの培養培地中で維持した。マウスT細胞は、10%熱不活化FBS、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、0.05mM 2−メルカプトエタノール、0.1mM MEM非必須アミノ酸、1mMピルビン酸塩、2nM L−グルタミン(全てInvitrogenTM Corporationから)を含み、30IU/mlの組換えヒトインターロイキン(rhIL)−2(Chiron,Emeryville,CA)を補充したRPMI1640(本明細書中以下CM−Mと呼ぶ)中で培養した。初代ヒトリンパ球は、50%RPMI1640、50%AIM−V培地、0.05mMメルカプトエタノール(全てInvitrogenTM Corporationから)、300IU/ml rhIL−2及び10%熱不活化ヒトAB血清(Gemini Bio−Products,WestSacramento,CA)を含む培養培地(CM−H)中で培養した。全ての細胞は、5%CO2及び95%湿度下、37℃で培養した。
【0099】
実施例1
この実施例は、DC101抗体の抗原結合ドメイン、細胞外ヒンジドメイン、T細胞受容体膜貫通ドメイン及び細胞内T細胞受容体シグナル伝達ドメインを含むCARをコードするヌクレオチド配列を作製する方法を実証する。
【0100】
全てのコンストラクトは、以前に記載された(Hughes,MS.ら、Hum.Gene Ther.16:457−472(2005))ベクターのMFG設計のスプライシング及び最適化開始コドンを組み込む、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)末端反復配列(LTR)(in vivoサイレンシングに対し比較的抵抗性であることが知られる)を含むレトロウイルスベクター(MSGV)中にクローニングした。
【0101】
DC101−CD828BBZ CARは、マウスVEGFR−2に対する一本鎖抗体(ScFv)(以下、DC101 ScFvと呼ぶ)を含む。DC101 ScFvは、218bpリンカーによって融合された、マウスVEGFR−2に特異的なラットIgG(DC101;Imclone Systems Inc.)の重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む。DC101−CD828BBZ CARは、マウスCD8α鎖のヒンジ及び膜貫通(TM)領域(Genbank識別子NM001081110のヌクレオチド580〜795に対応)にインフレームで連結させ、次いでこれを、CD28(Genbank識別子NM007642のヌクレオチド618〜740に対応)、4−1BB(Genbank識別子J04492のヌクレオチド779〜913に対応)及びCD3ζ(Genbank識別子NM001113391のヌクレオチド313〜635に対応)分子由来のマウス細胞内シグナル伝達配列に融合させる。
【0102】
DC101−CD828Zコンストラクトは、4−1BBシグナル伝達ドメインを欠くことを除き、類似の配置及び順序で、DC101−CD828BBZ CARと同じ成分を有する。
【0103】
全長の806bp scFv cDNA(DC101 ScFvと称する)を、以下のようなポリメラーゼ連鎖(PCR)増幅及びアセンブリ技術を使用して構築した。重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)のコード配列を、別々に増幅し、続くPCR反応によってリンカーを用いて組換えた。第一セットのPCR反応を実施して、リーダー配列(LS)及び重鎖可変領域(VH)、並びにまた軽鎖可変領域(VL)を増幅した。プラスミドDC101 HC(クローン8.6)pCR2.1−TOPO及びDC101 LC(クローン3.2)pCR2.1−TOPO(それぞれ、DC101抗体(Dale Ludwig,Imclone Systems Inc.の厚意による提供)の重鎖コード配列及び軽鎖コード配列を含む)をテンプレートとして第一のPCR反応で使用して、DC101 ScFvのLS+VH、及びVL成分を作製した。重鎖フォワードプライマーHeavy−F(配列番号22)を、重鎖リーダー配列の5’末端に及ぶように設計した。これは、その5’末端にXhoI部位を含む。軽鎖リバースプライマーVL−R(配列番号23)は、その3’末端にNotI部位を含む。軽鎖フォワードプライマーVL−F(配列番号24)は、218bpのリンカー配列の一部を含むように設計した。これは、重鎖リバースプライマーVH−R(配列番号25)と対応する。
【0104】
第二のPCR反応において、第一のPCR産物(即ち、重鎖LS+VH断片及びVL断片)を、最終DC101 ScFv断片を生じるHeavy−F及びVL−Rプライマーセットを使用してアセンブル及び増幅した。合成したDC101 ScFv DNA断片を配列確認した。
【0105】
以前に記載したマウスCD8αヒンジのヌクレオチド配列並びにマウスCD28、4−1BB及びCD3ζの膜貫通ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインを、2つの異なる配置(即ち、CD828BBZ又はCD828Z)の順に、インフレームでアセンブルした。これらの断片両方を、5’末端にNotI部位並びに3’末端にSalI及びBamH1部位を有するように設計し、GeneArt AG(Regensburg,Germany)で合成した。これらの配列をコードするプラスミドを、NotI及びBamHI制限酵素(New England Biolabs(登録商標),Ipswich,MA)で消化し、同様に消化したMSGVベクタープラスミド(Zhaoら 2009(近刊)により記載)中に個々にライゲーションした。このサブクローニング工程により、2つの暫定レトロウイルスコンストラクト:即ち、MSGV−4D5−CD828BBZ及びMSGV−4D5−CD828Zが作製された。DC101 CARをコードするレトロウイルスベクターMSGV−DC101−CD828BBZ(DC101−CD828BBZとも呼ぶ)及びMSGV−DC101−CD828Z(DC101−CD828Zとも呼ぶ)を作製するために、XhoI及びNotI消化したDC101 ScFv断片を、MSGV−4D5−CD828BBZ及びMSGV−4D5−CD828Zプラスミド中に直接ライゲーションして、4D5断片を置換した。
【0106】
この実施例は、DC101 ScFvセグメント、マウスCD8αヒンジ及び膜貫通セグメント、並びに細胞内マウスT細胞シグナル伝達CD28、4−1BB及びCD3ζセグメントを含むCARをコードするヌクレオチド配列を作製する方法を実証した。この実施例は、DC101 ScFvセグメント、マウスCD8αヒンジ及び膜貫通セグメント、並びに細胞内マウスT細胞シグナル伝達CD28及びCD3ζセグメントを含むCARをコードするヌクレオチド配列を作製する方法も実証した。
【0107】
実施例2
この実施例は、KDR−1121抗体の抗原結合ドメイン、細胞外ヒンジドメイン、T細胞受容体膜貫通ドメイン及び細胞内T細胞受容体シグナル伝達ドメインを含むCARをコードするヌクレオチド配列を作製する方法を実証する。
【0108】
ヒトVEGFR−2(KDR)特異的scFvは、KDR−1121抗体(ヒトKDRタンパク質に対する完全にヒトのIgG)に由来した(本明細書中、以下KDR1121−ScFvと呼ぶ)。KDR−1121 VL及びVHのアミノ酸配列は、刊行された報告に由来した(D.Luら,J.Biol.Chem.278:43496(2003))。218bpリンカーによって連結されたVL配列及びVH配列を含むコドン最適化KDR ScFvを設計し、webベースのDNAコドン最適化アルゴリズム(Gao,W.ら、Biotechnol.Prog.20,443−448(2004))を使用し、ソフトウェアによって生成されたプライマー(配列番号29〜72)を使用して合成した。合成されたKDR1121 ScFv DNA断片を配列確認し、以前に記載されたヒトCD28及びCD3ζ細胞内シグナル伝達部分(J.Maherら,Nat.Biotechnol.20:70(2002))に連結されたヒトCD28ヒンジ及び膜貫通配列を含むMSGVベースのベクター中にインフレームでサブクローニングして、MSGV−KDR1121CD28Zベクターを得た。
【0109】
MSGV−KDR1121CD28BBZベクターを得るために、KDR1121 ScFvを、標準的な分子生物学的技術を使用して、ヒトCD28、4−1BB及びCD3ζ分子の細胞質シグナル伝達ドメインに連結されたヒトCD8α鎖のヒンジ及び膜貫通配列を含む類似のMSGVベクター(Zhaoら、J.Immunol.2009近刊)中にインフレームでクローニングした。本書に記載した全てのベクターの配列の完全性は、DNAシークエンシングで確認した。
【0110】
この実施例は、KDR−1121 ScFvセグメント、ヒトCD8αヒンジ及び膜貫通セグメント、並びに細胞内ヒトT細胞シグナル伝達CD28、4−1BB及びCD3ζセグメントを含むCARをコードするヌクレオチド配列を作製する方法を実証した。この実施例は、KDR−1121 ScFvセグメント、ヒトCD8αヒンジ及び膜貫通セグメント、並びに細胞内ヒトT細胞シグナル伝達CD28及びCD3ζセグメントを含むCARをコードするヌクレオチド配列を作製する方法も実証した。
【0111】
実施例3
この実施例は、DC101抗体の抗原結合ドメイン、細胞外ヒンジドメイン、T細胞受容体膜貫通ドメイン及び細胞内T細胞受容体シグナル伝達ドメインを含むCARをコードする組換え発現ベクターを含むウイルスを作製する方法を実証する。
【0112】
PG13細胞に、9mgのプラスミドDNA(実施例1に記載したように調製したMSGV−DC101CD828BBZ又はMSGV−DC101CD828Z)を、LipofectamineTM 2000トランスフェクション試薬(InvitrogenTM)を使用してトランスフェクトした。これらのトランスフェクト細胞からの上清を、24時間後に回収し、0.45mm孔サイズのマイクロフィルタ(MiUex−Ha;MiUipore,Bedford,MA)で濾過し、8mg/ml硫酸プロタミン(Sigma)の存在下でPhoenixTM Eco細胞の形質導入に使用した。形質導入を次の日に繰り返した。16時間後、MSGV−DC101CD828BBZ又はMSGV−DC101CD828Z CARを形質導入したPhoenixTM Eco細胞を回収し、限界希釈クローニングに供した。クローンを増殖させ、高力価のクローンを、以前に記載されたようなドットブロット力価決定法(M.Onoderaら,Hum.Gene Ther.8:1189(1997))によって選択した。6つの最も高い力価のクローンからレトロウイルス上清を作製した。簡潔に述べると、10cm2の組織培養プレート(Nunc(登録商標),Cole−Parmer(登録商標),VernonHills,IL)に、10mlのD10中5x106細胞を播種した。次の日に培地交換(10ml)を行った。各クローンから24時間後に上清を回収し、以下の実施例5に記載するようにマウスT細胞を形質導入し、以下の実施例6に記載されるように、形質導入されたT細胞の表面上のCAR発現を測定することによって評価した。高頻度でマウスT細胞を形質導入しかつ高レベルでCARを発現する能力を有する2つのコンストラクトのそれぞれについて、PhoenixTM Ecoプロデューサークローンを、続く実験でマウスT細胞を形質導入するためのレトロウイルス上清の産生のために選択した。
【0113】
この実施例は、DC101 ScFvセグメント、マウスCD8αヒンジ及び膜貫通セグメント、並びに細胞内マウスT細胞シグナル伝達CD28、4−1BB及びCD3ζセグメントを含むCARをコードする組換え発現ベクターを含むウイルスを作製する方法を実証した。この実施例は、DC101 ScFvセグメント、マウスCD8αヒンジ及び膜貫通セグメント、並びに細胞内マウスT細胞シグナル伝達CD28及びCD3ζセグメントを含むCARをコードする組換え発現ベクターを含むウイルスを作製する方法も実証した。
【0114】
実施例4
この実施例は、KDR−1121抗体の抗原結合ドメイン、細胞外ヒンジドメイン、T細胞受容体膜貫通ドメイン及び細胞内T細胞受容体シグナル伝達ドメインを含むCARをコードする組換え発現ベクターを含むウイルスを作製する方法を実証する。
【0115】
ヒトVEGFR−2(KDR)に特異的なCARを発現する組換えレトロウイルスベクターのセットを構築した。KDR1121−hCD828BBZと称するKDR CARベクターは、完全にヒトの抗体KDR1121(D.Luら,J.Biol.Chem.278:43496(2003))(これは、ヒトKDR抗原に対して特異的である)由来のScFvを含んだ。KDR1121 ScFvを、ヒトCD8α由来のヒンジ及び膜貫通配列に連結し、次いでこれを、TCRのヒトCD28、4−1BB及びCD3ζドメイン由来の細胞内配列に融合させた。
【0116】
KDR1121−hCD28Zと称する第二のベクターは、ヒトCD28分子のヒンジ及び膜貫通配列並びに細胞内シグナル伝達ドメインに連結され、次いでTCRのCD3ζドメインの細胞質配列に連結されたKDR1121 ScFvを含んだ。
【0117】
MSGV−KDR1121−CD828BBZ及びMSGV−KDR1121−CD828Zレトロウイルスベクターを産生する安定なPG13プロデューサー細胞クローンを、以下の変更を伴い、実質的には実施例3に記載したとおりに作製した。PhoenixTM Eco細胞に、LipofectamineTM 2000トランスフェクション試薬(InvitrogenTM)を使用して、9mgのプラスミドDNA(MSGV−KDR1121−CD828BBZ又はMSGV−KDR1121−CD828Z)をトランスフェクトした。これらのトランスフェクト細胞から上清を24時間後に回収し、PG13細胞の形質導入に使用した。形質導入を次の日に繰り返した。16時間後、形質導入したPG13細胞を限界希釈クローニングに供した。2つのコンストラクトのそれぞれについて6つの高力価ウイルス産生PG13クローンを、ドットブロット力価決定法によって同定した(M.Onoderaら,Hum.Gene Ther.8:1189(1997))。これらのクローンのそれぞれから実施例3に記載したように上清を取得し、以下の実施例5に記載されるようにヒトT細胞を形質導入し、以下の実施例15に記載されるように形質導入されたT細胞の表面上のCAR発現を測定することによって評価した。高頻度でマウスT細胞を形質導入しかつ高レベルでKDR CARを発現する能力を有するコンストラクトのそれぞれについて、PG13プロデューサークローンを、続く実験でヒトT細胞を形質導入するためのレトロウイルス上清の産生のために選択した。
【0118】
この実施例は、KDR−1121 ScFvセグメント、ヒトCD8αヒンジ及び膜貫通セグメント、並びに細胞内ヒトT細胞シグナル伝達CD28、4−1BB及びCD3ζセグメントを含むCARをコードする組換え発現ベクターを含むウイルスを作製する方法を実証した。この実施例は、KDR−1121 ScFvセグメント、ヒトCD8αヒンジ及び膜貫通セグメント、並びに細胞内ヒトT細胞シグナル伝達CD28及びCD3ζセグメントを含むCARをコードする組換え発現ベクターを含むウイルスを作製する方法も実証した。
【0119】
比較例1
この例は、DC101抗体の抗原結合ドメイン、細胞外ヒンジドメイン及びT細胞受容体膜貫通ドメインをコードするが細胞内T細胞受容体シグナル伝達ドメインを欠く組換え発現ベクターを含むウイルスを作製する方法を実証する。この例は、SP6抗体の抗原結合ドメイン、細胞外ヒンジドメイン、T細胞受容体膜貫通ドメイン及び細胞内T細胞受容体シグナル伝達ドメインを含むCARをコードする組換え発現ベクターを含むウイルスを作製する方法も実証する。
【0120】
MSGV−DC101−CD8(DC101−CD8とも呼ぶ)を作製するために、DC101−CD8ヌクレオチド配列を、プライマーセットHeavy F(配列番号22)及びリバースプライマー(配列番号26)(これらは、TAA終止コドンとその後のSalI制限部位を含む)を使用するPCR反応によってMSGV−DC101−CD828Zプラスミドから増幅した。PCR産物をXhoI及びSalIで消化し、同様に消化したMSGV−DC101−CD828Zプラスミド中にライゲーションして、DC101−CD828Z断片を置換した。DC101−CD8コンストラクトは、細胞内T細胞シグナル伝達配列を欠き、DC101 ScFv、マウスCD8αヒンジ及びマウスCD8αTM配列のみを含む。
【0121】
MSGV−SP6−CD828BBZ CAR(SP6−CD828BBZ又はSP6 CARと称する)を以下のように作製した。SP6 ScFv断片を、プライマー:SP6フォワード(配列番号27)(XhoI部位を含む)及びSP6リバース(配列番号28)(NotI部位を含む)を使用して、SP6−ScFvをコードするプラスミド(G.Gross,T.Waks,Z.Eshhar,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A 86:10024(1989))からPCRにより増幅した。SP6 ScFvをコードするプラスミドは、Z.Eshhar教授(The Weizmann Institute of Science,Israel)のご厚意により提供された。次いで、PCR産物をXhoI及びNotI酵素で消化し、同様に消化したMSGV−DC101CD828BBZプラスミド中にクローニングして、DC101 ScFvを置換した。SP6 ScFvは、ハプテン2,4,6−トリニトロフェニル(TNP)を認識する。SP6−CD828BBZ(SP6 CAR)コンストラクトは、SP6 ScFv並びにマウスCD8αヒンジ及び膜貫通セグメント、並びに細胞内マウスT細胞シグナル伝達CD28、4−1BB及びCD3ζセグメントを含む。
【0122】
DC101−CD8及びSP6−28Z CARをコードするレトロウイルスを、一過的に産生させた。簡潔に述べると、293GP細胞を、ポリ−D−リジン被覆ディッシュ(BD Biosciences,San Jose,CA)に、10mlのD10中5x106細胞の密度でプレートした。次の日、培養培地を、抗生物質なしの10mlのD10で置換し、細胞に、LipofectamineTM 2000(InvitrogenTM Corp.)を使用して、RD114エンベロープタンパク質をコードするプラスミド(C.D.Porterら,Hum.Gene Ther.7:913(1996))と共に、MSGV−DC101−CD8又はMSGV−SP6−CD828BBZプラスミドのいずれかをトランスフェクトした。トランスフェクト細胞を37℃でインキュベートし、6〜8時間後、培養培地をD10で置換した。細胞を、さらに36〜48時間37℃でインキュベートした。レトロウイルスを含む上清をディッシュから回収し、遠心分離して細胞デブリを除去し、マウスT細胞を形質導入するために使用した。
【0123】
この例は、DC101 ScFvセグメント並びにヒトCD8αヒンジ及び膜貫通セグメントをコードするが細胞内ヒトT細胞シグナル伝達CD28、4−1BB及びCD3ζセグメントを欠く組換え発現ベクターを含むウイルスを作製する方法を実証した。この例は、SP6 ScFvセグメント、ヒトCD8αヒンジ及び膜貫通セグメント、並びに細胞内ヒトT細胞シグナル伝達CD28、4−1BB及びCD3ζセグメントを含むCARをコードする組換え発現ベクターを含むウイルスを作製する方法も実証した。
【0124】
実施例5
この実施例は、DC101抗体又はKDR−1121抗体の抗原結合ドメイン、細胞外ヒンジドメイン、T細胞受容体膜貫通ドメイン及び細胞内T細胞受容体シグナル伝達ドメインを含むCARをコードする組換え発現ベクターを含む宿主細胞を作製する方法を実証する。
【0125】
脾臓を回収し、40μmナイロンフィルターを通して破砕した。赤血球溶解後、CD3+脾細胞を、マウスT細胞ネガティブ単離キット(Dynal(登録商標),InvitrogenTM)を使用して精製し、2μg/ml ConA(Sigma−Aldrich(登録商標),St Louis,MO)及び1ng/ml組換えマウス(rm)IL−7(R&D Systems(登録商標),Minneapolis,MN)の存在下CM−M中で培養した。24時間後、細胞を回収し、1200rpmで5分間室温で遠心分離し、新たなCM−M中に1x106細胞/mlで再縣濁した。凍結保存ヒトPBLをCM−H中37℃で解凍し、洗浄し、50ng/mlマウス抗ヒトCD3抗体(Orthoclone OKT(登録商標)3,Ortho Biotech,Horsham,PA)を補充したCM−H中1x106/mlの濃度で再縣濁した。2日間の培養後、細胞を回収し、OKT3なしの新たなT細胞培養培地中に1x106細胞/mlで再縣濁した。
【0126】
マウス及びヒトのリンパ球を、以前に記載されたように(H.Hanenbergら,Nat.Med.2:876(1996))レトロウイルスベクターで予め被覆した培養ディッシュ上で、同様の形質導入プロトコルを用いて実施例3又は実施例4に記載したように産生されたレトロウイルスを使用して形質導入した。培養プレートをベクターで被覆するために、組織培養物処理なしの6ウェルプレート(BD Biosciences)を、25μg/ml組換えフィブロネクチン断片(RetroNectin(登録商標);Takara Bio.Inc,Japan)でまず処理した。次いで、4〜5mlのレトロウイルスベクター上清をこれらのプレートに添加し、プレートを32℃で2000gで2時間スピンした。次いで、上清を除去し、刺激したマウスT細胞又はヒトリンパ球を各ウェルに1x106細胞/ml(2〜3ml/ウェル)で添加し、プレートを室温で1500rpmで10分間スピンした。次いで、細胞を37℃で一晩インキュベートし、この手順を次の日に繰り返し(合計2回の形質導入)、その後、細胞を5%CO2インキュベータ中37℃で増殖させ、必要に応じて分割して、0.5x106細胞/mlと2x106細胞/mlとの間の細胞密度を維持した。形質導入の4日後又は5日後、リンパ球を、導入遺伝子産物の存在についてフローサイトメトリーでアッセイし、活性について抗原特異的増殖及びサイトカイン放出アッセイでアッセイした。
【0127】
この実施例は、KDR−1121又はDC101のScFvセグメント、CD8αヒンジ及び膜貫通セグメント、並びに細胞内T細胞シグナル伝達CD28、4−1BB及びCD3ζセグメントを含むCARをコードする組換え発現ベクターを含む宿主細胞を作製する方法を実証した。この実施例は、KDR−1121又はDC101のScFvセグメント、CD8αヒンジ及び膜貫通セグメント、並びに細胞内T細胞シグナル伝達CD28及びCD3ζセグメントを含むCARをコードする組換え発現ベクターを含むウイルスを作製する方法も実証した。
【0128】
実施例6
この実施例は、実施例1の核酸で形質導入した宿主細胞が、DC101 ScFvセグメント、ヒンジ及び膜貫通セグメント、並びに細胞内T細胞シグナル伝達セグメントを含むCARを発現したことを実証する。
【0129】
マウスT細胞を、実施例5に記載したように、レトロウイルスベクターDC101−CD828Z又はDC101−CD828BBZ CARを用いてレトロウイルスにより形質導入したか、或いは、比較例1に記載したようにDC101−CD8又はSP6−CD828BBZベクターで形質導入したか、又は空のMSGVベクター(CAR配列をいずれも欠く)で形質導入した。形質導入されたCD3+初代マウスT細胞上のレトロウイルスによりコードされる導入遺伝子産物の表面発現を、可溶性マウスVEGFR−2−ヒトIgG−FC融合タンパク質及びPEコンジュゲート化抗ヒトIgG−FCを使用してフローサイトメトリーにより決定した。
【0130】
形質導入の4日後に、細胞を、抗マウスCD8抗体及びCAR特異的試薬で共染色し、FACS分析して、CD8+及びCD8−T細胞サブセット中の導入遺伝子産物の発現を決定した。形質導入の4日後の、レトロウイルスにより形質導入されたマウスT細胞上のDC101 CARの検出は、可溶性マウス(m)VEGFR2−hIgG.FC融合タンパク質(R&D Systems(登録商標),Minneapolis,MD)による間接的免疫蛍光法と、その後のフィコエリトリン(PE)標識ヤギ抗ヒトIgG−FC抗体(eBioscienceTM,San Diego,CA)での染色とによって達成した。簡潔に述べると、5x105細胞を、2μgのウシ血清アルブミン(BSA;Sigma−Aldrich(登録商標))又は種特異的可溶性mVEGFR2−hIgG.FCタンパク質と共に、4℃で45分間インキュベートした。次いで、細胞をFACS緩衝液(リン酸緩衝化生理食塩水、1%FBS含有)で洗浄し、PEコンジュゲート化抗ヒトIgG−FC(αhIgG.FC)で染色した。この工程で、マウスT細胞を、製造業者が推奨する適切な濃度でペリジニンクロロフィル(PerCP)標識した抗マウスCD8(BD Pharmingen,San Diego,CA)で4℃で20〜30分間共染色し、次いでFACS緩衝液中で洗浄し再縣濁した。2μgウシ血清アルブミン(BSA)と共にインキュベートし、次いでPEコンジュゲート化抗ヒトIgG−FC(αhIgG−FC)及びPerCP標識抗マウスCD8で染色した細胞は、コントロールとして機能した。
【0131】
SP6 CARの発現を決定するために、形質導入したマウスT細胞をFACs緩衝液中で洗浄し再縣濁した。5x105細胞のアリコートを、ビオチン標識ポリクローナルヤギ抗マウスF(ab)2抗体(抗Fab,Jackson Immunoresearch,West Grove,PA)又はビオチン標識正常ポリクローナルヤギIgG抗体(Jackson Immunoresearch)と共に4℃で30分間インキュベートした。細胞をFACS緩衝液で1回洗浄し、再縣濁して、フルオレセインイソチオシアネート(fluorescein isothocyanate)(FITC)標識ストレプトアビジン(BD Pharmingen)及びAPC標識抗マウスCD8(BD Pharmingen)で4℃で25分間共染色し、次いでFACS緩衝液で洗浄し、FACS緩衝液中に再縣濁した。CD4+細胞及びCD8+細胞は共に、同様のCAR発現プロフィールを示した。
【0132】
結果を表3及び表4A〜4Bに示す。
【0133】
【表3】
【0134】
表3において、形質導入されたマウスT細胞中の形質導入効率及びCAR発現レベルは、パーセント導入遺伝子ポジティブ細胞(%形質導入)及び発現の平均蛍光強度(MFI)によってそれぞれ示される。データは、5つの異なる実験由来の平均±SEMで示される。表3に示すように、DC101 CAR発現ベクターは、ConA/IL−7活性化マウスT細胞を、効率的にかつ一貫して形質導入し(約79〜約86%の範囲)、この細胞は、形質導入の5日後にほぼ(約90%)CD8+であった。
【0135】
【表4−1】
【0136】
【表4−2】
【0137】
表4Aに示されるように、4−1BBシグナル伝達部分を含むDC101 CAR由来のCAR発現の強度は、全ての形質導入実験(n=5)において、4−1BB配列を欠くベクター由来の発現強度よりも一貫して低かった。
【0138】
この実施例は、DC101 ScFvセグメント、細胞外ヒンジ及び膜貫通セグメント、並びに細胞内T細胞シグナル伝達セグメントを含むCARを発現する実施例1の核酸で宿主細胞を形質導入する際の形質導入効率を実証した。
【0139】
実施例7
この実施例は、DC101−CD828Z及びDC101−CD828BBZ CARで改変されたT細胞が、増殖によって測定されるin vitroの抗原特異的応答を生じるのに有効であることを実証する。
【0140】
固定化されたVEGFR−2タンパク質に応答して増殖するDC101−CAR操作されたT細胞の能力を測定した。未処理のマイクロタイタープレートを、PBS中に希釈した5μg/mlのウシ血清アルブミン(BSA,Sigma−Aldrich(登録商標))、5μg/ml可溶性マウスVEGFR2−hIgG.FC融合タンパク質(R&D Systems(登録商標))、5μg/ml可溶性マウスVEGFR2−hIgG.FC融合タンパク質(R&D Systems(登録商標))、2μg/mlの精製抗マウスCD3抗体(クローン145−2C11,BD Pharmingen)、又は2μg/ml精製マウス抗ヒトCD3抗体(Orthoclone OKT(登録商標)3)を用いて、37℃で3時間個々に被覆した。マウスT細胞を、実施例5に記載したように、以下のレトロウイルスベクターで形質導入した:SP6−CD828BBZ、DC101−CD8、DC101−CD828BBZ、DC101−CD828Z又は空ベクター。
【0141】
形質導入の4日後、細胞を洗浄し、そのそれぞれのCM中に再縣濁し、抗原被覆したマイクロタイタープレート上200μlCM中にウェル当たり105細胞でプレートした。細胞を3日間培養し、1μCi(0.037MBq)[メチル−3H]チミジン/ウェル((PerkinElmer(登録商標)Life Sciences,Boston,MA)で、培養の最後の18時間にわたりパルスした。細胞をTomtec(登録商標)細胞ハーベスター(PerkinElmer(登録商標),Wallac,Turku,Finland)で回収し、Wallac MicroBeta(登録商標)液体シンチレーションカウンター(PerkinElmer(登録商標),Waltham,MA)で分析して、取り込まれた放射性チミジンの量を決定した。このアッセイを3連のウェルで実施した。結果を図1に示す(値は平均±SEMで示す)。
【0142】
図1に示されるように、種々のベクターで形質導入されたT細胞間では、固定化された抗マウスCD3抗体に対する応答に差異はなかったが、インタクトな細胞内シグナル伝達配列を含むDC101−CAR(DC101−CD828Z及びDC101−CD828BBZ)で操作されたT細胞だけが、増殖によって測定されるように、プレート結合標的VEGFR−2タンパク質に特異的に応答した。さらに、DC101−CARで形質導入された細胞は、4−1BBシグナル伝達配列あり又はなしの両方で、プレート結合標的VEGFR−2に応答して、in vitroで増殖した。
【0143】
この実施例は、DC101−CD828Z及びDC101−CD828BBZ CAR改変されたT細胞が、VEGFR−2タンパク質による刺激に応答してin vitroで増殖することを実証した。
【0144】
実施例8
この実施例は、DC101−CD828Z及びDC101−CD828BBZ CAR改変されたT細胞が、IFN−γ分泌によって測定される抗原特異的なin vitro応答を生じるのに有効であることを実証する。
【0145】
形質導入されたマウス細胞を、IFN−γ放出アッセイにおいて、プレート結合VEGFR−2タンパク質に対する特異的反応性について試験した。ヒトPBLを、実施例5に記載したように、以下のレトロウイルスベクターで形質導入した:SP6−CD828BBZ、DC101−CD8、DC101−CD828BBZ、DC101−CD828Z又は空ベクター。形質導入された細胞を、実施例7に記載されたように、200μlCM中で、抗原被覆したマイクロタイタープレート上で培養した。細胞培養物上清を、1日後又は2日後に回収し、市販のELISAキット(Endogen,Rockford,IL)を使用して、IFN−γについて酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)で分析した。アッセイは三連のウェルで実施した。結果を図2に示す(値は平均±SEMで示す)。
【0146】
図2に示されるように、種々のベクターで形質導入されたT細胞間では、固定化された抗マウスCD3抗体に対する応答に差異はなかったが、インタクトな細胞内シグナル伝達配列を含むDC101−CAR(DC101−CD828Z及びDC101−CD828BBZ)で操作されたT細胞だけが、IFN−γ分泌によって測定されるように、プレート結合標的VEGFR−2タンパク質に特異的に応答した。さらに、DC101−CARは、4−1BBシグナル伝達配列あり又はなしの両方で、プレート結合標的VEGFR−2に応答してIFN−γを分泌した。
【0147】
この実施例は、DC101−CD828Z及びDC101−CD828BBZ CAR改変されたT細胞が、VEGFR−2タンパク質による刺激に応答してin vitroでIFN−γを分泌することを実証した。
【0148】
実施例9
【0149】
この実施例は、DC101−CD828Z及びDC101−CD828BBZ CAR改変されたT細胞が、VEGFR−2を発現するマウス細胞株をin vitroで特異的に認識することを実証する。
【0150】
マウス内皮細胞株及び種々の組織起源の腫瘍株を、フローサイトメトリーによってVEGFR−2の細胞表面発現について試験した。簡潔に述べると、細胞を回収し(接着細胞を、細胞スクレイパー(Corning Incorporated,Corning,NY)を使用して回収した)、FACS緩衝液中で洗浄し、FACS緩衝液中に再縣濁した。5x105細胞のアリコートを、2μgの組換えDC101抗体と共に4℃で45分間インキュベートした。次いで、細胞をFACS緩衝液中で2回洗浄し、2μgの可溶性mVEGFR2−hIgG.FCタンパク質及びPE標識ヤギ抗ヒトIgG.FC抗体と共に、4℃でそれぞれ30分間連続してインキュベートした。次いで、細胞を洗浄し、フローサイトメトリーで分析した。前記プロトコルの第一インキュベーション工程においてDC101抗体の代わりにラットIgG1アイソタイプコントロール抗体を用いたこと以外同様に染色した細胞は、コントロールとして機能した。フローサイトメトリー取得を、FACS CaliburTMフローサイトメータ(BD Biosciences)を用いて実施した。データを取得し、CellQuestTMソフトウェア(Becton Dickson)を使用して分析した。前方小角度光散乱(forward angle light scatter)及びヨウ化プロピジウム染色の組み合わせを使用して、死細胞を除外した(gate out)。種々の細胞型におけるVEGFR−2染色の特異性及び発現の平均蛍光強度(MFI)を、アイソタイプコントロール抗体で染色したそれぞれの細胞型を使用して決定した。
【0151】
VEGFR−2レベルは試験した細胞株間で異なっていた。形質転換された全てのマウス内皮細胞株(SVEC4−10EHR1、bEND.3、SVR及びMS1)は、高レベルのVEGFR−2発現を示したが、細胞株のほとんどは、低レベル(MC38、CT26、4T1及びMCA205)、又は検出不能なレベル(MC17−51、B16−F10、RENCA、C4198、MB49及びNIH−3T3)の細胞表面VEGFR−2タンパク質のいずれかを示した。2つのVEGFR−2ネガティブ細胞株MB49及びNIH−3T3に、VEGFR−2を発現するレンチウイルスベクターを安定に形質導入し(MB49−Flk1及び3T3−Flk1)、次のin vitro T細胞機能アッセイにおいてポジティブコントロールとして使用した。
【0152】
初代マウスT細胞を、形質導入しなかったか、又は実施例5に記載されたように以下のレトロウイルスベクターで形質導入した:SP6−CD828BBZ、DC101−CD8、DC101−CD828BBZ、DC101−CD828Z又は空ベクター。4日後、細胞を、単独で培養したか、又は200μlCM中の以下のマウス細胞のうち1つと共に共培養した:SVEC4−10EHR1、bEND−3、SVR、MS1、MC38、4T1、P815、MCA205、MC17−51、EL−4、C1498、B16−F10、MB49、NIH−3T3、並びにFLK−1を発現するように形質導入した細胞株:MB49−FLK−1及び3T3−FLK−1。IFN−γ分泌を、実施例8に記載のようにアッセイした。結果を図3に示す(三連のウェルの平均値±SEMで示す)。
【0153】
図3に示されるように、IFN−γ応答は、VEGFR−2ポジティブ細胞株3T3−Flk1、MB49−Flk1、SVEC4−10EHR1、bEND−3、SVR、MS1、4T1及びMC38に応答して特異的に検出された。IFN−γ分泌の量は、標的細胞上に発現されたVEGFR−2のレベルと高度に相関した(DC101−CD828BBZについてR2=0.9652;DC101−CD828ZについてR2=0.9584)。反応性は、インタクトなT細胞シグナル伝達ドメインを含むDC101−CARを発現するT細胞に限定された。4−1BBシグナル伝達配列あり又はなしで、DC101−CARの性能に有意な差はなかった。
【0154】
さらに、標的抗原認識の特異性を、抗体遮断実験によって確認した。標的細胞(bEnd.3、MB49又はMB49−FLK−1)を、10μg/mlのラットIgG1、抗マウスVEGFR−1抗体又は抗マウスVEGFR−2抗体(DC101)のいずれかと共に、37℃で1時間インキュベートし、次いで、モック形質導入したか或いは空ベクター又はSP6−CD828BBZ CAR若しくはDC101−CD828BBZをコードするレトロウイルスベクターで形質導入した初代マウスT細胞と共に共培養した。上清を24時間後に回収し、ELISAによってIFN−γを評価した。図12に示されるように、抗VEGFR−2抗体DC101は、VEGFR−2+内皮bEND.3及びMB49−Flk−1腫瘍細胞株に対するDC101−CAR形質導入T細胞の認識を遮断したが、抗マウスVEGFR−1又はアイソタイプコントロール抗体のいずれでも、遮断は観察されなかった。
【0155】
この実施例は、DC101−CD828Z及びDC101−CD828BBZ CAR改変されたT細胞が、VEGFR−2発現細胞によるin vitro刺激に応答してin vitroでIFN−γを分泌すること、及びIFN−γの分泌量が、標的細胞により発現されるVEGFR−2のレベルと高度に相関することを実証した。
【0156】
実施例10
この実施例は、養子移入されたDC101 CAR発現T細胞が、in vivoで樹立された腫瘍の増殖を阻害できることを実証する。
【0157】
治療の効力を決定するために、DC101 CAR形質導入した細胞を使用して、樹立された血管新生化した皮下(s.c.)腫瘍を保持するマウスを処置した。
【0158】
500000の腫瘍(B16−F10、MC38、MCA205、CT26又はRenca)細胞を、5匹のマウス(6〜7週齢)の群にs.c.注射した。10日目と12日目との間に、腫瘍面積が約50mm2の平均サイズに達した時点で、マウスに5Gy TBIを致死未満で照射し、DC101−CD828BBZ CAR又は空ベクターで形質導入した20x107の同系マウスT細胞を、rhIL−2と合わせて注射した。コントロール群は、rhIL−2単独を受けたか処置を受けなかった。
【0159】
腫瘍の開始量は40〜80mm2の範囲であった。特記しないかぎり、養子移入の当日に、腫瘍保持マウスの骨髄非破壊的な(5Gy)全身放射線照射(TBI)によって、リンパ球減少症を誘導した。付随して、マウスを、特記しない限り3日間にわたり少なくとも6〜8時間の間隔で、1日2回、6用量のrhIL−2(100,000CU/0.5mL/用量/マウス)の腹腔内(i.p.)注射によって、静脈内(i.v.)処置した。必要な場合、5匹のB16−F10腫瘍保持マウスに、単一用量の組換えDC101抗体又はラットIgG1(両方とも、500mlPBS中800mg/用量/マウス)をi.p.注射した。全ての実験は二重盲検無作為化様式で実施し、独立して少なくとも2回、類似の結果を有した。各処置群は5匹のマウスを含んだ。一連の盲検腫瘍測定値を得、直交する直径の積を、±SEMでプロットした。腫瘍治療に関する統計を、各データポイントにおける腫瘍増殖曲線の線形の傾きに基づくWilcoxon Rank Sum Testを使用して計算した。累積生存時間は、Kaplan−Meier法によって計算し、ログランク検定によって分析した。0.05未満のP値を、統計的に有意とみなした。
【0160】
結果を図4A〜4B、5A〜5B及び14A〜14Fに示す。DC101−CD828BBZ CARを発現するT細胞(黒三角)は、同系マウス中の免疫原性の低いいくつかの腫瘍(B16−F10(図4A;P=0.009)、MC38(図4B;P=0.009)、MCA205(図14A、P=0.025)、CT26(図14C、P=0.009)及びRENCA(図14E、P=0.008)腫瘍が含まれる)に対する顕著な増殖阻害効果を媒介できた。DC101−CD828BBZ CARを発現するT細胞はまた、B16−F10(図5A)、MC38(図5B)、MCA205(図14B)、CT26(図14D)及びRENCA(図14F)腫瘍保持マウスの生存率を増加させた。未処置のマウス(黒丸)、空ベクターを形質導入したT細胞で処置したマウス(黒四角)、又はIL−2単独で処置したマウス(黒菱形)において、抗腫瘍効果は見られなかった。
【0161】
この実施例は、養子移入されたDC101−CD828BBZ CAR発現T細胞が、in vivoでB16−F10及びMC38腫瘍の増殖を阻害し、腫瘍保持マウスの生存を改善することを実証した。
【0162】
実施例11
この実施例は、DC101 CARを形質導入したT細胞の抗腫瘍効果が、細胞媒介性であることを実証する。
【0163】
樹立されたB16−F10腫瘍を保持するマウスを、5Gy TBIで致死未満に照射し、実施例10に記載したのと類似の処置を受けさせた:DC101−CD828BBZ CAR(黒三角)又は空ベクター(黒四角)を形質導入した細胞(図6A)。この実験で示される5匹のマウスのさらなる群に、rhIL−2と合わせて、単一用量の800μg/マウス組換えDC101抗体(白三角)又はラットIgG1コントロール抗体(白菱形)を受けさせた(図6A)。コントロール群は、図6Aに示すように、rhIL−2単独(黒菱形)を受けたか、未処置のままにした(黒丸)。
【0164】
図6Aに示されるように、DC101−CD828BBZ CARを発現するT細胞(黒三角)は、腫瘍増殖を阻害できた。しかし、他の処置群(組換えDC101抗体での処置を含む)は、樹立されたB16腫瘍の増殖の制御に対し影響を有さなかった。
【0165】
B16−F10腫瘍保持マウスを、DC101−CD828BBZを形質導入した同系T細胞2x107、1x107、5x106若しくは2x106+rhIL−2で処置し、未処置にし、rhIL−2単独で処置し、又は空ベクターを形質導入したT細胞2x107+rhIL−2で処置した。B16−F10黒色腫に対するDC101−CAR形質導入T細胞の治療効果は、投与した細胞数の一次関数であった(図15)。腫瘍増殖の遅延は、2x106の低さのDC101−CAR形質導入T細胞で達成された(P=0.008)。
【0166】
2x107のDC101−CAR改変T細胞の単一用量による腫瘍治療研究のほとんどにおいて、2〜3週間にわたって腫瘍増殖の迅速な阻害が存在し、この寛解期間の間に、親腫瘍は壊死して繊維状になったが、生存腫瘍の小さい小結節が、親腫瘍の周辺で再出現し、多くのマウスにおいて最終的に再生した。
【0167】
しかし、有効な腫瘍治療及び腫瘍なし生存が、DC101−CARを形質導入したT細胞5x106及びrhIL−2による3回連続の毎週用量で処置した、樹立されたB16−F10又はMCA205腫瘍を保持するマウスで達成された(図16A〜16D)。樹立された皮下B16又はMCA205腫瘍を保持するマウスに、5Gy TBIを致死未満で照射し、rhIL−2と共に、DC101−CD28BBZ又は空ベクターで形質導入した同系マウスT細胞2x107の単一用量を注射した。いくつかの群には、7〜10日間間隔で、DC101−CAR又は空ベクターを形質導入したT細胞5x106の3連続用量を受けさせ、細胞移入と付随して、rhIL−2の1日2回用量を3日間受けさせた。処置なしの群は、T細胞もrhIL−2も受けなかった。腫瘍面積に関する結果を図16A(B16−F10)及び図16B(MCA205)に示し、生存に関する結果を図16C(B16−F10)及び図16D(MCA205)に示す。
【0168】
この実施例は、DC101−CD828BBZ CAR発現T細胞の養子移入は腫瘍増殖を阻害できたが、組換え抗体による処置が腫瘍増殖を阻害できなかったことを実証した。
【0169】
実施例12
この実施例は、細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを欠くDC101コンストラクトで形質導入したT細胞が、in vivoで抗腫瘍治療効果を誘導できないことを実証する。
【0170】
実施例10に記載したように、樹立された皮下B16−F10腫瘍を保持するマウスを、5Gy TBIで致死未満で照射し、以下で形質導入した同系マウスT細胞20x106で処置した:DC101−CD828BBZ CARベクター、SP6−CD8S8BBZ CARベクター、DC101−CD8ベクター(これはT細胞シグナル伝達ドメインを欠く)又は空ベクター。T細胞で処置した全てのマウス群は、実施例10に記載されるようにrhIL−2投与を受けた。コントロール群の動物は、T細胞でもrhIL−2でも処置しなかった。
【0171】
図6Bに示されるように、DC101 ScFvを発現するが細胞内T細胞シグナル伝達分子を欠くT細胞(白三角)は、樹立されたB16腫瘍の増殖制御に対し影響を有さなかった。さらに、未処置マウス(黒丸)及び無関係のCAR(SP6CAR)(白菱形)又は空ベクター(黒四角)で操作されたT細胞で処置したマウスは、腫瘍阻害を誘導できなかった(図6B)。しかし、DC101 CAR発現T細胞(黒三角)は、腫瘍増殖を阻害できた。
【0172】
この実施例は、DC101 CAR発現T細胞の養子移入は腫瘍増殖を阻害できたが、DC101を発現するが細胞内T細胞シグナル伝達分子を欠くT細胞及び無関係のCARを発現するT細胞での処置は、それぞれ腫瘍増殖を阻害できなかったことを実証した。
【0173】
実施例13
この実施例は、DC101 CARを形質導入した細胞が、4−1BB細胞内シグナル伝達ドメインあり及びなしの両方で、in vivo腫瘍増殖を阻害したことを実証する。
【0174】
図7に示されるように、実施例10に記載するように、樹立された皮下B16−F10腫瘍を保持する5匹のマウスの群を、5Gy TBIで致死未満で照射し、4−1BB細胞内シグナル伝達ドメインを含む(DC101−mCD828BBZ、菱形)若しくは4−1BB細胞内シグナル伝達ドメインなし(DC101−CD828Z;三角)のDC101 CAR又は空ベクター(四角)を形質導入した同系T細胞20x106をi.v.注射した。コントロール群はT細胞治療を受けなかった(丸)(図7)。黒塗りの記号で示される全てのT細胞処置群は、外因性rhIL−2投与を受け、白抜きの記号で示されるT細胞処置群は、rhIL−2を受けなかった(図7)。全てのin vivo腫瘍処置研究において、マウスを無作為化し、腫瘍サイズを盲検様式で測定した。腫瘍の直交する直径の積を平均±SEMで示す。実験は少なくとも2回独立して実施し、類似の結果であった。
【0175】
図7に示されるように、4−1BB細胞内シグナル伝達配列を含むDC101 CARベクター(DC101−CD828BBZ)及び4−1BB細胞内シグナル伝達配列を欠くDC101 CARベクター(DC101−CD28Z)を形質導入したT細胞は、同様に良好な性能を示し、樹立された嵩高い腫瘍の増殖遅延において、統計的に区別不能であった(P=0.1)。
【0176】
この実施例は、DC101−CD828BBZを発現するT細胞及びDC101−CD28Zを発現するT細胞の養子移入が、それぞれin vivoで腫瘍増殖を阻害できたことを実証した。
【0177】
実施例14
この実施例は、4−1BBシグナル伝達セグメントがDC101 CAR改変T細胞の持続をin vivoで増強することを実証する。
【0178】
実施例10に記載したようにDC101 CAR(DC101−CD828BBZ又はDC101−CD828Z)を形質導入したT細胞及び外因性rhIL−2を受けた処置群のそれぞれ由来の2匹のマウス由来の腫瘍サンプルのFACS分析を、T細胞移入の30日後に回収し、実施例6に記載したように、フローサイトメトリーによってDC101 CAR発現T細胞の存在について個々に分析した。腫瘍サンプルを機械的に壊して単細胞懸濁物にし、Ficollでの勾配遠心分離によって低密度細胞画分を調製した。DC101 CARの細胞表面発現を、BSA又は可溶性マウスVEGFR−2−ヒトIgG.FC融合タンパク質と、その後のPEコンジュゲート化ヤギ抗ヒトIgG.FC抗体と共に、細胞を連続的にインキュベートすることによって検出した。細胞は、APCコンジュゲート化ラット抗マウスCD3で共染色した。前方及び側方散乱プロフィールのリンパ球ゲート領域中のDC101 CAR発現CD3+T細胞のパーセントを、表5に示す。
【0179】
【表5】
【0180】
表5に示されるように、DC101−CD828BBZ CARベクター操作したT細胞で処置したマウスは、DC101 CARを保有するが4−1BBを欠くT細胞で処置したマウスと比較して、腫瘍腫瘍中のDC101 CAR発現CD3+細胞が4〜5倍多かった。
【0181】
この実施例は、4−1BBが、腫瘍部位での養子移入された抗原特異的T細胞の持続を増強することを実証した。
【0182】
実施例15
この実施例は、DC101−CARを形質導入したT細胞が、腫瘍部位に効率的に移動する(traffic)ことを実証する。
【0183】
C57BL/6マウスに、2×105のB16−F10腫瘍細胞を皮下注射した。実施例10に記載したように、10日目及び12日目に、マウスを5Gyで照射し、rhIL−2と合わせて、DC101 CAR(DC101−CD828BBZ)又は空ベクターを形質導入したThy1.1+同系T細胞20×106で静脈内処置した。
【0184】
表6Aに示した時点で、各群由来の個々のマウス由来の腫瘍及び脾臓を切り出し、単細胞懸濁物を得るために処理し、実施例6に記載したように、フローサイトメトリーで分析した。脾臓は、40μmナイロンフィルターを通して破砕した。赤血球溶解後、脾細胞を単離した。腫瘍の単細胞懸濁物を40μmナイロン細胞ストレイナー(BD Biosciences)を使用して作製し、Lympholyte(登録商標)−M(Cedarlane Laboratories,Burlington,Canada)を使用した密度勾配遠心分離によってリンパ球をさらに分離した。脾臓及び腫瘍サンプルから単離したマウスT細胞の表現型を、製造業者の推奨に従ってアロフィコシアニン(APC)コンジュゲート化ラット抗マウスCD3及びPE標識マウス抗ラットThy1.1抗体(共にBD Pharmingenから)を用いて細胞を直接染色することにより、決定した。細胞アリコートを、それぞれの蛍光色素標識したアイソタイプコントロール抗体で染色して、染色の特異性を決定した。リンパ球ゲートされた集団中のCD3+Thy1.1+細胞のパーセンテージを、フローサイトメトリーで決定した。細胞を取得し、CellQuestソフトウェア(BD Biosciences)を使用して分析した。腫瘍細胞調製物及び脾細胞の全細胞集団中のリンパ球ゲートされた領域中の細胞を、分析に含めた。四分円を、アイソタイプコントロール抗体染色に基づいて樹立した。代表的なFACSデータを表6Aに示し(CD3+Thy1.1+細胞のパーセンテージ)、独立した実験からの3匹の異なるマウスから得たプールしたデータを、表6Bに示す(CD3+Thy1.1+細胞のパーセンテージ)。
【0185】
【表6−1】
【0186】
【表6−2】
【0187】
3日目までに、養子移入したT細胞は、それらの遺伝的改変にかかわらず、脾臓及び腫瘍に同様に輸送された。しかし、6日目及び9日目には、腫瘍への輸送は、DC101 CARを付与したT細胞でかなり大きかった。VEGFR−2特異的T細胞の腫瘍部位への輸送及び腫瘍部位におけるホーミングの増加は、複数の実験で再現性よく観察された。これらの知見を、Thy1.1特異的抗体を用いて腫瘍切片を染色した後、共焦点顕微鏡を使用して、養子移入したThy1.1+T細胞を直接可視化することによってさらに確認した。
【0188】
腫瘍サンプルを、ACTの4日後にDC101−CD828BBZ CAR又は空ベクターを形質導入したT細胞及びrhIL−2で処置したB16−F10腫瘍保持C57BL/6マウスから得た。腫瘍切片を、核を示すための4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)と共に、移入されたT細胞上で発現されたThy1.1抗原又は内皮細胞マーカーCD31について染色し、蛍光顕微鏡を用いて分析した。細胞移入の4日後に、DC101−CARを形質導入したThy1.1+T細胞で処置したマウスから採取した腫瘍サンプルは、空ベクターを形質導入した細胞で処置したものよりもたくさんのThy1.1+T細胞を含んだ。この時点で、腫瘍血管は、腫瘍血管中の内皮細胞と密接に関連した、DC101−CAR形質導入T細胞を含んだ。さらに、内皮細胞マーカーCD31で染色した腫瘍切片は、空ベクターを形質導入したT細胞で処置したマウスと比較して、DC101−CARを形質導入したT細胞で処置したマウスの腫瘍において、血管数の減少を示した。
【0189】
輸送の増強及び腫瘍中のDC101−CAR形質導入T細胞数の増加が、CARを形質導入したT細胞と空ベクターを形質導入したT細胞との間のケモカイン受容体の発現における何らかの固有の差異の結果であるかどうか決定するため、富化した脾臓CD3+T細胞を、空ベクター又はDC101−CD828BBZ、DC101−CD828Z若しくはSP6−CD828BBZをコードするベクターで形質導入した。形質導入の5日後、細胞を、in vivoのT細胞のホーミング及び/又は効率的な輸送に関与することが知られているCD62L分子及びケモカイン受容体(CXCR4、CXCR3、CCR9及びCCR7)の細胞表面発現について、FACS分析した。
【0190】
T細胞の輸送に関与することが知られているケモカイン受容体CCR7、CCR9、CXCR−3及びCXCR−4、並びにホーミング分子L−セレクチン(CD62L)の発現レベルにおいて、DC101−CD828BBZ、DC101−CD828Z、SP6−CD828BBZを発現するレトロウイルスベクター又は空ベクターで形質導入したT細胞間には差異はなかった。従って、輸送の増強及び腫瘍中のDC101−CAR形質導入T細胞数の増加は、抗原非依存的機構における何らかの固有の差異(例えば、CARを形質導入したT細胞と空ベクターを形質導入したT細胞との間のケモカイン受容体の発現増加)の結果ではなく、in vivoの標的抗原結合の結果であると思われる。
【0191】
この実施例は、腫瘍への輸送が、養子移入の6日後及び9日後の時点で、空ベクターを形質導入した細胞よりも、DC101 CAR付与T細胞でかなり大きいことを実証した。
【0192】
実施例16
この実施例は、実施例2の核酸を形質導入した宿主細胞が、KDR1121 ScFvセグメント、細胞外ヒンジ及び膜貫通セグメント、並びに細胞内T細胞シグナル伝達セグメントを含むCARを発現することを実証する。
【0193】
形質導入されたヒトT細胞上のKDR CARの検出を、実施例6に記載したように、形質導入の5日後に実施した(ただし、可溶性ヒト(h)VEGFR2−hIgG.FC融合タンパク質を染色プロトコルで使用し、細胞はPerCP標識マウス抗ヒトCD3抗体(BD Pharmingen)で共染色した)。フローサイトメトリー取得は、FACS CaliburTMフローサイトメータ(BD Biosciences)を用いて実施した。データを取得し、CellQuestTMソフトウェア(Becton Dickson)を使用して分析した。前方小角度光散乱及びヨウ化プロピジウム染色の組み合わせを使用して、死細胞を排除した。形質導入したT細胞上のCAR特異的染色及びその発現の平均蛍光強度(MFI)を、アイソタイプコントロール抗体で染色したそれぞれの細胞型を使用して決定した。四分円を、関連するアイソタイプコントロールに基づいて樹立した。結果を表7に示す。
【0194】
【表7】
【0195】
表7に示されるように、実施例2のKDR CARコードレトロウイルスベクターを形質導入したヒトPBLは、高頻度で、細胞表面上にCARを発現するCD3+T細胞を約79〜約85%で生じる。
【0196】
両方のベクターがヒトPBLを同程度に形質導入できるものの、KDR−CD828BBZ CARベクター(4−1BB配列を有する)から指示されるCAR発現のMFIは、表8に示されるように、僅かに損なわれた。
【0197】
【表8】
【0198】
この実施例は、KDR1121 ScFvセグメント、細胞外ヒンジ及び膜貫通セグメント、並びに細胞内T細胞シグナル伝達セグメントを含むCARを発現する実施例2の核酸配列で宿主細胞を形質導入する際の形質導入効率を実証した。
【0199】
実施例17
この実施例は、KDR1121−CD28Z及びKDR1121−CD828BBZ CAR改変T細胞が、増殖によって測定されるin vitroでの抗原特異的応答を生じるのに有効であることを実証する。
【0200】
実施例7に記載したように、マイクロタイタープレートを、BSA、可溶性KDR−hIgG.FC融合タンパク質又は抗ヒトCD3 mAbで被覆した。OKT3刺激したヒトPBLを、実施例5に記載したように、レトロウイルスベクター:KDR−CD28Z若しくはKDR−CD28BBZで形質導入したか、又はモック形質導入した。7日後、細胞を、抗原被覆したマイクロタイタープレート上で3日間培養し、3[H]−チミジンを18時間パルスし、実施例7に記載したように、増殖の測定としてチミジン取り込みについて分析した。アッセイは三連で実施し、値は平均±SEMで示す。結果を図8に示す。
【0201】
図8に示されるように、種々のベクターで形質導入されたT細胞間では、固定化された抗マウスCD3抗体に対する応答に差異はなかったが、KDR1121−CARで操作されたT細胞のみが、増殖によって測定されるように、プレート結合標的VEGFR−2タンパク質に特異的に応答した。さらに、KDR1121 CARを形質導入した細胞は、4−1BBシグナル伝達配列あり又はなしの両方で、プレート結合標的VEGFR−2に応答して、in vitroで増殖した。
【0202】
この実施例は、KDR1121−CD28Z及びKDR1121−CD828BBZ CAR改変T細胞が、VEGFR−2タンパク質による刺激に応答してin vitroで増殖することを実証した。
【0203】
実施例18
この実施例は、KDR1121−CD28Z及びKDR1121−CD828BBZ CAR改変T細胞が、IFN−γ分泌によって測定される抗原特異的なin vitro応答を生じるのに有効であることを実証する。
【0204】
形質導入したヒトPBLを、IFN−γ放出アッセイにおいて、プレート結合VEGFR−2タンパク質並びにVEGFR−2発現標的細胞に対する特異的反応性について試験した。ヒトPBLを、実施例5に記載したように、レトロウイルスベクター:KDR1121−CD828BBZ若しくはKDR1121−CD28Zで形質導入し、又はモック形質導入した。形質導入された細胞を、実施例7に記載されたように、200μlCM中で、抗原被覆したマイクロタイタープレート上で培養した。細胞培養物上清を、1日後若しくは2日後(マウスT細胞)又は1日後(ヒトT細胞)に回収し、市販のELISAキット(Endogen,Rockford,IL)を使用して、IFN−γについて酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)で分析した。アッセイは三連のウェルで実施した。結果を図9に示す(値は平均±SEMで示す)。
【0205】
図9に示されるように、種々のベクターで形質導入されたT細胞間では、固定化された抗マウスCD3抗体に対する応答に差異はなかったが、KDR1121−CARで操作されたT細胞のみが、IFN−γ分泌によって測定されるように、プレート結合標的VEGFR−2タンパク質に特異的に応答した。さらに、KDR1121 CARを形質導入した細胞は、4−1BBシグナル伝達配列あり又はなしの両方で、プレート結合標的VEGFR−2に応答して、in vitroでIFN−γを分泌した。
【0206】
この実施例は、KDR1121−CD28Z及びKDR1121−CD828BBZ CAR改変T細胞が、VEGFR−2タンパク質による刺激に応答して、in vitroでIFN−γを分泌することを実証した。
【0207】
実施例19
この実施例は、KDR1121−CD828BBZ及びKDR1121−CD28Zを形質導入したヒトPBLが、IFN−γ分泌によって測定されるように、VEGFR−2(KDR)発現標的細胞と共培養したときに、in vitroの抗原特異的応答を生じることを実証する。
【0208】
KDRタンパク質発現細胞の認識におけるKDR CAR改変T細胞の能力を試験した。3つの異なるドナー由来のPBLに、実施例5に記載したように、KDR1121−CD828BBZ及びKDR1121−CD28Z CARを形質導入したか、又はモック形質導入した。形質導入の8日後に、実施例9に記載したように、形質導入細胞を単独で培養したか、又はKDRネガティブ293細胞若しくは293−KDR細胞(高レベルのKDRタンパク質を発現する安定な形質転換体)と共に24時間共培養した。培養物上清を、実施例8に記載したように、IFN−γ分泌について分析した。結果を図10に示す。
【0209】
図10に示されるように、KDR1121−CD828BBZベクター及びKDR1121−CD28Zベクターは共に、KDR発現293−KDR細胞のみを特異的に認識し、293細胞を認識しないそれらの能力から明らかなように、同様のレベルの特異性及び機能性を形質導入ヒトT細胞に付与した。
【0210】
この実施例は、KDR1121−CD28Z及びKDR1121−CD828BBZ CAR改変T細胞が、VEGFR−2(KDR)発現細胞による刺激に応答して、in vitroでIFN−γを分泌することを実証した。
【0211】
実施例20
この実施例は、KDR−1121 CAR改変T細胞が、in vitroのVEGFR−2発現細胞による刺激に応答して、in vitroでIFN−γを分泌することを実証する。
【0212】
in vitroで短期間培養した種々の組織起源の正常初代ヒト内皮細胞及び上皮細胞並びに筋肉筋芽細胞のパネル(293A2、HMVEC−真皮、HMVEC−肺、HUVEC、皮膚繊維芽細胞、SAEC、HBEC、HRE、HMEC、PrEC、HSMM)を、フローサイトメトリーによってKDR発現について試験した。KDRタンパク質は、形質導入細胞(293A2−KDR)及び培養初代内皮細胞(即ち、HMVEC−D、HMVEC−L及びHUVEC)でのみ容易に検出可能であり、試験した初代上皮細胞及び筋芽細胞のいずれでも検出不能であった。KDR発現の強度は、肺由来HMVEC(HMVEC−L)又はHUVECと比較して、皮膚由来ヒト真皮微小血管内皮細胞(HMVEC−D)でより高かった。
【0213】
ヒトPBLを、実施例5に記載したようにKDR1121−CD828BBZで形質導入したか、又はモック形質導入した。4日後に、標的細胞を単独で培養し、形質導入細胞を単独で培養し、又は形質導入細胞を200μlCM中以下の細胞株のうち1つと共に共培養した:293A2、HMVEC−真皮、HMVEC−肺、HUVEC、皮膚繊維芽細胞、SAEC、HBEC、HRE、HMEC、PrEC、HSMM又は293A2−KDR。IFN−γ分泌を、実施例8に記載したようにアッセイした。結果を図11に示す(三連のウェルの平均値±SEMとして示す)。
【0214】
図11に示されるように、KDR CARを形質導入した細胞は、その組織起源にかかわらずKDRポジティブ細胞(HMVEC−D、293−KDR細胞、HMVEC−L及びHUVEC)に応答してのみIFN−γを分泌し、試験した他の初代細胞の何れも認識できなかった。
【0215】
これらの結果と一致して、細胞毒性アッセイにおいて、KDR1121−hCD828BBZ及びKDR1121−hCD28Z CAR改変T細胞は、KDRポジティブ標的細胞を特異的に溶解させたがKDRネガティブ細胞型は溶解させず、一方でモック又はSP6−CARを形質導入したT細胞は、試験した標的細胞のいずれも溶解できなかった(図19)。
【0216】
この実施例は、KDR1121−CD28Z及びKDR1121−CD828BBZ CAR改変T細胞が、組織の起源にかかわらず、in vitroのVEGFR−2(KDR)発現細胞による刺激に応答して、in vitroでIFN−γを分泌することを実証した。
【0217】
実施例21
この実施例は、VEGFR−2 CARを発現するように改変された初代マウスT細胞が、VEGFR−2発現マウス細胞を特異的に溶解させることを実証する。
【0218】
モック形質導入或いは空ベクター又はSP6−CD828BBZ、DC101−CD8、DC101−CD828Z若しくはDC101−CD828BBZ発現レトロウイルスベクターを形質導入した初代マウスT細胞を、変動するエフェクター対標的比(50、17、5.6、1.9)で、標的細胞(SVEC4−10EHR1、4T1、RENCA、MB49、bEND.3、MC38、MC17−51、MB49−Flk1、MS1、CT26、B16−F10、3T3、SVR、MCA205、C1498、3T3−Flk1)と共にインキュベートし、細胞溶解を、標準的なCr51放出アッセイを使用して決定した。
【0219】
実施例9で得た結果及び図13に示した結果と一致して、細胞毒性アッセイにおいて、DC101−CAR改変T細胞は、VEGFR−2ポジティブ標的細胞を特異的に溶解させたが、VEGFR−2ネガティブ細胞型は溶解させなかった。対照的に、モック、空ベクター又はSP6−CARを形質導入したT細胞は、試験した標的細胞のいずれも溶解させられなかった(図13)。
【0220】
実施例22
この実施例は、DC101−CAR発現T細胞が、照射による宿主のプレコンディショニングの存在下又は非存在下で、抗腫瘍応答を生じることを実証する。
【0221】
養子細胞移入(ACT)前の宿主免疫細胞の枯渇は、免疫抑制細胞並びに恒常性維持サイトカインに関して移入細胞と競合するリンパ球を排除することによって、移入された抗原特異的T細胞の抗腫瘍効力を増強できる。従って、以前の養子T細胞治療実験において、マウスは細胞移入前に5Gyの全身放射線照射法(TBI)を受けた。しかし照射は、腫瘍脈管構造を有害に変更し又は損傷し、及び/又は標的抗原VEGFR−2の発現を歪める可能性がある。
【0222】
従って、DC101−CAR操作されたT細胞のin vivo抗腫瘍活性を、養子T細胞移入前に、宿主リンパ枯渇(lymphodepletion)あり又はなしでマウスにおいて試験した。皮下B16−F10腫瘍を保持するC57BL/6マウスに、T細胞移入前の5Gy TBIあり又はなしで、DC101−CAR、SP6−CAR又は空ベクターを形質導入した同系T細胞2x107+rhIL−2を受けさせたか、又はT細胞で処置しなかった。
【0223】
以前の実験からの知見と一致して、DC101−CAR発現T細胞は再び、SP6−CAR又は空ベクターで操作したものと比較して、リンパ枯渇マウスにおいて抗腫瘍応答を再現性よく生じさせた(図17、P=0.009)。腫瘍阻害効果は、照射による宿主プレコンディショニングの存在下又は非存在下のいずれかでDC101−CAR T細胞を受けた処置群間で統計的に区別できなかった(P=0.251)。
【0224】
この実施例は、DC101−CAR発現T細胞が、宿主リンパ枯渇あり又はなしで抗腫瘍応答を生じることを実証した。
【0225】
実施例23
この実施例は、養子移入したVEGFR−2 CAR形質導入T細胞で観察された毒性が、減少した数のT細胞又はDC101−CARを形質導入した精製CD8+T細胞を投与することによって低減され得ることを実証する。
【0226】
異なる組織学の樹立された皮下腫瘍を保持する合計135匹のC57BL/6マウスで実施した腫瘍治療研究において、養子移入した同系T細胞は、90%より多くのCD8+T細胞を含んだ。処置に関連した罹患及び死亡は、5Gyの全身放射線照射法、DC101−CD828BBZ若しくはDC101−CD828Z CARを形質導入した2x107までのT細胞、及び高用量のIL−2を受けたマウスにおいて報告されなかった。血管新生化した組織(例えば、腎臓、網膜及び膵臓)における低レベルのVEGFR−2発現の報告にもかかわらず、最大数(2x107)のVEGFR−2 CAR改変T細胞で処置したC57BL/6マウス中の種々の臓器の組織病理学的分析は、処置関連の毒性の証拠を示さなかった。
【0227】
対照的に、重篤な毒性が、DC101−CARを形質導入した同系T細胞2x107で同様に処置した腫瘍保持BALB/cマウスにおいて観察された。しかし、樹立されたCT26又はRENCA腫瘍を有するBALB/cマウスでは、投与したT細胞数を5x106まで減らした場合、又はDC101−CARを形質導入した精製同系CD8+T細胞2x107を投与することによって、治療関連のいずれの毒性もなしに、匹敵する抗腫瘍効果が達成された(図18A及び18B)。2x107のDC101−CAR形質導入T細胞及びIL−2で処置したBALB/cマウスの組織病理学的分析により、肝臓における多巣性の軽度の凝固壊死及び軽度の肝胆管周囲炎並びに肺血管周囲炎(perivasculitis)、小腸及び結腸の絨毛萎縮、絨毛鈍麻(blunting)及び陰窩上皮過形成を含むサイトカイン誘導性の低血圧に特徴的な知見が明らかとなった。心臓、肺、肝臓、腎臓、脾臓、膵臓、子宮、卵巣又は脳の巨視的外観には、異常は見られなかった。
【0228】
BALB/cマウスと比較してC57BL/6で見られた毒性の差異は、養子移入に使用した最終細胞産物中に存在するCD4+T細胞数の増加に起因したように見えた。BALB/c脾臓から得たCD3+T細胞は、C57BL/6マウスの脾臓から得たCD3+T細胞と同様に培養したが、最終BALB/c細胞産物(5〜6日間培養した)は、養子移入の時点で、約60%のCD8+T細胞及び40%のCD4+T細胞を含んでいた。減少した数(5x106)の未分離T細胞又はDC101−CARを形質導入した精製CD8+T細胞2x107で処置したBALB/cマウス(15匹の腫瘍保持マウスを含む3つの独立した実験における)では毒性は見られなかったが、CD8+T細胞(約60%)及びCD4+(約40%)T細胞の両方を含むDC101−CAR改変T細胞2x107を受けたマウスは、図18A及び18Bに示される同じ実験において、罹患及び死亡を示した。これらの知見をB16腫瘍保持C57BL/6マウスでさらに評価し、ここで、VEGFR−2 CARを形質導入した精製CD4+T細胞、又は1x107の精製CD8+及び1x107のCD4+T細胞(共にCARを形質導入した)の1:1混合物を含む2x107のT細胞でマウスを処置した場合に、罹患及び死亡が証明された。その一方、有効な腫瘍治療は、2x107の未分離CD3+T細胞(>90%がCD8+T細胞)又はVEGFR−2CARを形質導入した精製CD8+T細胞のいずれかで処置したマウスにおいて、有害な影響なしに達成された(図18C)。
【0229】
複数の実験において、等しい数のCD4+T細胞及びCD8+T細胞を含む2x107のCAR形質導入T細胞での非腫瘍保持BALB/c又はC57BL/6マウスの処置は、有害な影響も毒性もなしに十分に許容された。従って、養子移入されたVEGFR−2 CAR形質導入T細胞で観察された毒性の原因は、正常な血管又は組織に対する的外れの細胞媒介性の細胞毒性ではなく、腫瘍血管網における標的抗原VEGFR−2のCD4+T細胞認識及び引き続く下流の分子事象に限定されるようである。
【0230】
この実施例は、減少した数のT細胞又はDC101−CARで形質導入した精製CD8+T細胞を投与することは、養子移入したVEGFR−2 CAR形質導入T細胞で観察される毒性を低減し得ることを実証した。
【0231】
実施例24
この実施例は、転移性癌を有するヒト患者に抗VEGFR2 CAR発現細胞集団を投与する方法を実証する。
【0232】
細胞調製
【0233】
PBMCを、白血球アフェレーシス(約1X1010細胞)によって得る。全PBMCを、T細胞増殖を刺激するために抗CD3(OKT3)及びアルデスロイキンの存在下で培養する。形質導入は、抗VEGFR2 CARレトロウイルスベクター(KDR1121−hCD828BBZヌクレオチド配列(配列番号16)を含む)を含む上清に、約1X107〜5X108の細胞を曝露することによって開始する。これらの形質導入細胞を増殖させ、その抗腫瘍活性について試験する。首尾よいCAR遺伝子移入は、CARタンパク質に対するFACS分析で決定し、抗VEGFR2反応性は、トランスフェクト細胞で測定されるサイトカイン放出によって試験する。それぞれの形質導入したPBL集団についての首尾よいCAR遺伝子移入は、>10%のCARポジティブ細胞として規定し、生物活性については、γ−インターフェロン分泌は少なくとも200pg/mlである。
【0234】
第1相−用量漸増:
【0235】
このプロトコルの最初の部分は、1コホート当たり最少3人の患者の3つのコホートを用い、第1相用量漸増設計で進行する。各コホートについて移入した抗VEGFR2操作細胞の総数は以下のようにする:コホート1:108細胞;コホート2:109細胞;コホート3:1010細胞;及びコホート4:5x1010細胞。
【0236】
操作されたPBL細胞を受ける前に、患者は、シクロホスファミド及びフルダラビンの骨髄非破壊的なリンパ球枯渇前処置(preparative)レジメンを受け、その後、1〜4日間、in vitro腫瘍反応性の、CAR遺伝子を形質導入したPBL+IVアルデスロイキンの静脈内注入(720,000IU/kgq8hで最大15用量)を受ける。
【0237】
第2相部分
【0238】
第1相部分と同様に、操作されたPBL細胞を受ける前に、第2相部分の患者は、シクロホスファミド及びフルダラビンの骨髄非破壊的なリンパ球枯渇前処置レジメンを受け、その後、1〜4日間、in vitro腫瘍反応性の、CAR遺伝子を形質導入したPBL+IVアルデスロイキンの静脈内注入(720,000IU/kgq8hで最大15用量)を受ける。
【0239】
このプロトコルの第2相部分は、第1相部分で決定される抗VEGFR2操作された細胞の最大耐用量(MTD)を利用して進行する。患者は、組織像に基づいて2つのコホートに入れられる:コホート1は、転移性の黒色腫及び腎癌を有する患者を含み、コホート2は他の全ての癌の型を含む。
【0240】
薬物投与
表9に示すように薬物を投与する。0日目は細胞注入の当日である。
【0241】
【表9】
【0242】
細胞注入及びアルデスロイキン投与
【0243】
細胞は、Tumor Immunology Cell Processing Laboratoryの職員により、患者集中治療室へ届けられる。血液貯蔵プロトコルで行われるのと同様に、注入前に、細胞産物同定ラベルを、2人の権限のある職員(医師又は正看護師)によって二重に確認し、産物の正体及び投与の証拠書類を患者のカルテに書き込む。細胞は、細胞の凝集を防ぐために注入の間バッグを穏やかに撹拌しながら、非濾過チュービングを介して20〜30分間にわたり静脈内注入される。
【0244】
血液製剤のサポート
【0245】
指針として1日CBCを用いて、患者は、血小板及び濃厚赤血球(PRBC)を必要に応じて受ける。ヘモグロビンを>8.0gm/dlに維持し、血小板を>20,000/mm3に維持する試みが行われる。幹細胞産物(stem cell product)を除く全ての血液製剤に照射する。全血及び血小板輸血のために白血球フィルターを使用して、輸血されるWBCに対する感作を減少させ、CMV感染の危険性を低下させる。
【0246】
試験中の評価
細胞注入後の評価(450mL/6週間以下):
【0247】
総リンパ球数が200/mm3より多くなったところで、以下のサンプルを月曜、水曜及び金曜に引き抜き、TILラボに送る(患者は入院したまま):5つのCPTチューブ(各10ml)及び1つのSSTチューブ(10ml)。
【0248】
他の時点において、Ficollクッション上での遠心分離を使用した精製によって、全血から患者の末梢血リンパ球(PBL)を得る。これらのPBMCのアリコートを、1)細胞機能の免疫学的モニタリングのために凍結保存する、及び2)CARのPCR分析及びベクターコピー数評価のために、DNA及びRNA抽出に供する。
【0249】
生検
腫瘍組織又はリンパ節の生検を実施してもよいが、治療の過程の間には必要とされない。これらの生検は、実施された手順並びに顆粒球及び血小板数に基づいて最小の罹患率が予測される場合にのみ実施される。生検組織は、Pathology Laboratoryの病理学者の立会いのもとでSurgery Branch Cell Production Facilityで処理し、全ての生検組織はLaboratory of Pathologyに送られる。腫瘍による抗原発現を評価するため及びこれらの生検から増殖したリンパ球の反応性を評価するために、研究を実施する。さらに、形質導入細胞の存在を、ベクター配列に対するRT−PCRを使用して定量する。
【0250】
免疫学的試験:
アフェレーシスを、処置前及び処置の4〜6週間後に実施する。他の時点において、患者末梢血リンパ球(PBL)を、Ficollクッションでの遠心分離を使用する精製によって、全血から取得する。これらのPBMCのアリコートを、細胞機能の免疫学的モニタリングのために凍結保存し、CARのPCR分析及びベクターコピー数評価のためにDNA及びRNA抽出に供する。
【0251】
リンパ球を直接試験し、その後in vitro培養で試験する。直接的免疫学的モニタリングにより、テトラマー染色を使用するEACS分析によって、Her−2と反応性のT細胞を定量する。Ex vivo免疫学的アッセイには、十分なT細胞が入手可能な場合には、バルクPBL(+/−ペプチド刺激)によるサイトカイン放出及び他の実験的研究(例えば細胞溶解)が含まれる。細胞数が限定されている場合、免疫学的活性の直接的分析が好ましい。免疫学的アッセイは、1)予め注入したPBMC、及び2)注入の時点で凍結保存された、操作されたPBLのアリコートを含めることによって、標準化される。一般に、これらのアッセイにおける2〜3倍の差異は、真の生物学的差異を示す。Foxp3レベルを半定量的PCRによって分析し、細胞注入の前及び追跡の時点で取得したPBLサンプルにつきmRNAを評価する。
【0252】
遺伝子治療試験のモニタリング:持続性及び増殖性(replication−competent)レトロウイルス(RCR):
操作された細胞の生存:CAR及びベクターの存在を、樹立されたPCR技術を使用して、PBMCサンプル中で定量する。テトラマー分析及びCAR染色の両方を使用する免疫学的モニタリングを使用して、PCRベースの分析を補強する。これは、注入した細胞由来のリンパ球のin vivo生存を推定するためのデータを提供する。さらに、CD4及びCD8 T細胞の測定を実施し、循環におけるこれらのT細胞サブセットの研究を、レトロウイルスベクター操作されたT細胞のそれぞれについて独自のDNA配列を検出できる特異的PCRアッセイを使用して決定する。
【0253】
患者の血液サンプルを取得し、細胞注入の前にPCRによるRCRの検出のための分析を行い、RCR PCRを、細胞投与の3ヶ月後及び6ヵ月後、並びに1年後の時点で実施する。全ての以前の試験が短期間の臨床歴でネガティブであった場合には、その後血液サンプルを毎年アーカイブに保存する。患者がこの試験の間に死ぬか又は新生物を発症した場合、生検サンプルでRCRにつきアッセイする試みを行う。処置後サンプルのいずれかがポジティブであった場合、FDAと協議の上、RCRのさらなる分析及びより詳細な患者の追跡を行う。RCR PCRアッセイは、GaLVエンベロープ遺伝子を検出する。これは、Indiana UniversityのNational Gene Vector Laboratoryによる契約のもとで行う。これらの試験の結果は、RCR試験を実施する請負人及びSurgery Branch研究チームが保持する。
【0254】
これらの試験の性質に起因して、特異的T細胞クローンの増殖を、腫瘍抗原に応答して増殖する腫瘍反応性T細胞として観察することが可能である。従って、免疫学的かつ分子的にT細胞の持続性を追跡する配慮をする。CAR形質導入細胞の持続性についての血液サンプル(5〜10mL)を、細胞注入の1ヵ月後、次いで3ヵ月後、6ヵ月後、12ヵ月後に取得し、次いでその後年1回取得する。(ベクター配列に特異的なプライマーを使用する半定量的DNA−PCRにより)6ヶ月の時点でCAR遺伝子形質導入細胞の高レベルの持続性をいずれかの患者が示した場合、以前にアーカイブ化したサンプルを、生き残ったCAR遺伝子形質導入細胞のクローン性の同定を可能にする技術に供する。かかる技術には、T細胞クローニング又はLAM−PCR 30が含まれ得る。CAR遺伝子形質導入細胞由来の優勢な又はモノクローナルのT細胞クローンが追跡の間に同定された場合、組込み部位及び配列を同定し、続いて、ヒトゲノムデータベースに対して分析し、配列が任意の既知のヒト癌に関連するか否かを決定する。優勢な組込み部位が観察された場合、最初の観察の後3ヶ月以下の間隔で、T細胞クローニング又はLAM−PCR試験を使用して、クローンが持続性であるか一過性であるかを確認する。モノクローナル性が持続する全ての例において、及び特に、クローンの増殖が存在する例において、配列が既知のヒト癌と関連していることが既知であるか否かにかかわらず、対象は、利用可能であれば治療が早期に開始できるように、悪性度の兆候について綿密にモニタリングすべきである。
【0255】
研究後評価(追跡):
患者を、表10に従って、最初の治療レジメン(最後のアルデスロイキン用量の終了として規定する)の4〜6週間後に評価する。
【0256】
【表10】
【0257】
データを収集し、以下に詳述するように評価する。標的病変の評価は以下のとおりである:ベースラインにおいて、全ての関連臓器を代表する最大10病変までの全ての測定可能な病変を、標的病変として同定し、記録し、測定すべきである。標的病変は、それらのサイズ(最長の直径を有する病変)及び正確な反復測定(画像化技術による又は臨床的にのいずれか)へのそれらの適格性に基づいて選択すべきである。全ての標的病変に対する最長径(LD)の合計を計算し、ベースライン合計LDとして報告する。ベースライン合計LDを基準として使用して、疾患の測定可能な寸法の客観的腫瘍応答をさらに特徴付ける。標的病変評価の応答基準は表11に示すとおりである。
【0258】
【表11】
【0259】
非標的病変の評価は以下のとおりである:ベースラインにおいて、全ての他の病変(又は疾患部位)を非標的病変として同定すべきであり、また記録すべきである。測定値は必要なく、これらの病変は「存在」又は「非存在」として示すべきである。標的病変評価の応答基準は表12に示すとおりである。
【0260】
【表12】
【0261】
最良の全体応答の評価
最良の全体応答(表13)は、治療開始から疾患の進行/再発までに記録された最良の応答である(進行性の疾患について、治療開始以降記録された最小の測定値を基準とする)。患者の最良の応答割り当ては、測定値及び確証基準の両方の達成に依存する。
【0262】
【表13】
【0263】
確証的な測定値/応答の持続期間
確証:PR又はCRのステータスを割り当てるために、腫瘍測定値における変化を、応答基準が最初に満たされた少なくとも4週間後に実施すべき反復研究によって確証する。SDの場合、追跡測定値は、6〜8週間の最小間隔で、研究に入ったあと少なくとも1回、SD基準を満たしたものであろう。
【0264】
全体応答の持続期間:全体応答の持続期間は、測定値基準がCR/PR(いずれか最初に記録された方)を満たす時点から、再発性又は進行性の疾患が客観的に記録される最初の日付まで、測定される(進行性の疾患について、治療開始以降記録された最小の測定値を基準とする)。全完全奏功の持続期間は、測定基準がCRを最初に満たす時点から、再発性の疾患が客観的に記録される最初の日付まで、測定される。
【0265】
安定(Stable Disease)の持続期間:安定は、処置の開始から、進行の基準が満たされるまで、治療開始以降記録された最小の測定値を基準として、測定される。
【0266】
この実施例は、ヒト癌患者に対する抗VEGFR2 CAR発現細胞集団の投与方法を実証した。
【0267】
刊行物、特許出願及び特許を含む、本明細書中に引用した全ての参考文献は、それぞれの参考文献が参照によって組み込まれることが個々にかつ具体的に示されているのと同程度又はその全体が本明細書中に記載されているのと同程度まで、参照によって本明細書中に組み込まれる。
【0268】
本発明の説明に関して(特に、以下の特許請求の範囲に関して)、用語「a」及び「an」及び「the」並びに同様の指示対象の使用は、本明細書中に特記しないか文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方をカバーすると解釈すべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含む(containing)」は、特記しない限り、オープンエンドの用語(即ち、「〜を含むがそれらに限定されない」を意味する)と解釈すべきである。本明細書中の値の範囲の記述は、本明細書中に特記しない限り、その範囲内に入る各個別の値に個々に言及する省略方法として働くことのみを意図しており、各個別の値は、それが本明細書中に個々に記述されているかのように本明細書中に組み込まれる。本明細書中に記載される全ての方法は、本明細書中に特記しない又は文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施できる。本明細書中に提供される任意の及び全ての例又は例示的語句(例えば、「など(such as)」)の使用は、本発明をよりよく説明することのみを意図しており、特段特許請求されない限り、本発明の範囲に限定を課すものではない。本明細書中の全ての語句は、特許請求されていない任意の要素を本発明の実施に必須のものとして示していると解釈すべきではない。
【0269】
発明を実施するための発明者が知る最良の形態を含む、本発明の好ましい実施形態が本明細書中に記載されている。これらの好ましい実施形態のバリエーションは、上述の説明を読めば当業者に明らかとなり得る。本発明者らは、当業者がかかるバリエーションを適宜使用することを予期しており、本発明者らは、本明細書中に具体的に記載されたのとは異なる方法で本発明が実施されることを意図している。従って、本発明は、適用法によって許容されるとおり、本明細書中に添付した特許請求の範囲に記載される対象の全ての改変及び等価物を含む。さらに、その全ての可能なバリエーションでの上記要素の任意の組合わせが、本明細書中に特記しない又は文脈と明らかに矛盾しない限り、本発明によって包含される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
KDR−1121抗体若しくはDC101抗体の抗原結合ドメイン、細胞外ヒンジドメイン、T細胞受容体膜貫通ドメイン及び細胞内T細胞受容体シグナル伝達ドメインを含む、キメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項2】
抗原結合ドメインが、配列番号1又は2を含むアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のCAR。
【請求項3】
細胞内ヒンジドメインをさらに含む、請求項1又は2に記載のCAR。
【請求項4】
細胞外ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞内ヒンジドメインがCD8(配列番号3)を含む、請求項3に記載のCAR。
【請求項5】
細胞外ヒンジドメイン及び膜貫通ドメインがCD8(配列番号4)を含む、請求項1又は2に記載のCAR。
【請求項6】
細胞内T細胞受容体シグナル伝達ドメインが、CD28、4−1BB及び/又はCD3ζ(配列番号5又は6)を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項7】
細胞外ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞内T細胞シグナル伝達ドメインがCD28(配列番号7)及び/又はCD3ζ(配列番号8)を含む、請求項1又は2に記載のCAR。
【請求項8】
細胞内T細胞受容体シグナル伝達ドメインがCD28及び/又はCD3ζ(配列番号9)を含む、請求項5に記載のCAR。
【請求項9】
配列番号10〜15からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のCARをコードするヌクレオチド配列を含む、核酸。
【請求項11】
配列番号16〜21からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項10に記載の核酸。
【請求項12】
請求項10又は11の核酸を含む、組換え発現ベクター。
【請求項13】
請求項12に記載の組換え発現ベクターを含む、単離された宿主細胞。
【請求項14】
請求項13に記載の宿主細胞を少なくとも1つ含む、細胞集団。
【請求項15】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のCARに特異的に結合する、抗体又はその抗原結合部分。
【請求項16】
請求項1〜9に記載のCAR、請求項10〜11に記載の核酸、請求項12に記載の組換え発現ベクター、請求項13に記載の宿主細胞、請求項14に記載の細胞集団、又は請求項15に記載の抗体若しくはその抗原結合部分と、医薬上許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項17】
宿主における癌の存在を検出する方法であって、
(a)宿主由来の1以上の細胞を含むサンプルを、請求項1〜9に記載のCAR、請求項10〜11に記載の核酸、請求項12に記載の組換え発現ベクター、請求項13に記載の宿主細胞、請求項14に記載の細胞集団、又は請求項15に記載の抗体若しくはその抗原結合部分と接触させることによって、複合体を形成する工程、及び
(b)複合体を検出する工程であって、該複合体の検出が宿主における癌の存在を示す、工程、
を含む、方法。
【請求項18】
宿主における癌の治療又は予防のための、請求項1〜9に記載のCAR、請求項10〜11に記載の核酸、請求項12に記載の組換え発現ベクター、請求項13に記載の宿主細胞、請求項14に記載の細胞集団、又は請求項15に記載の抗体若しくはその抗原結合部分の使用。
【請求項1】
KDR−1121抗体若しくはDC101抗体の抗原結合ドメイン、細胞外ヒンジドメイン、T細胞受容体膜貫通ドメイン及び細胞内T細胞受容体シグナル伝達ドメインを含む、キメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項2】
抗原結合ドメインが、配列番号1又は2を含むアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のCAR。
【請求項3】
細胞内ヒンジドメインをさらに含む、請求項1又は2に記載のCAR。
【請求項4】
細胞外ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞内ヒンジドメインがCD8(配列番号3)を含む、請求項3に記載のCAR。
【請求項5】
細胞外ヒンジドメイン及び膜貫通ドメインがCD8(配列番号4)を含む、請求項1又は2に記載のCAR。
【請求項6】
細胞内T細胞受容体シグナル伝達ドメインが、CD28、4−1BB及び/又はCD3ζ(配列番号5又は6)を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項7】
細胞外ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞内T細胞シグナル伝達ドメインがCD28(配列番号7)及び/又はCD3ζ(配列番号8)を含む、請求項1又は2に記載のCAR。
【請求項8】
細胞内T細胞受容体シグナル伝達ドメインがCD28及び/又はCD3ζ(配列番号9)を含む、請求項5に記載のCAR。
【請求項9】
配列番号10〜15からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のCARをコードするヌクレオチド配列を含む、核酸。
【請求項11】
配列番号16〜21からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項10に記載の核酸。
【請求項12】
請求項10又は11の核酸を含む、組換え発現ベクター。
【請求項13】
請求項12に記載の組換え発現ベクターを含む、単離された宿主細胞。
【請求項14】
請求項13に記載の宿主細胞を少なくとも1つ含む、細胞集団。
【請求項15】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のCARに特異的に結合する、抗体又はその抗原結合部分。
【請求項16】
請求項1〜9に記載のCAR、請求項10〜11に記載の核酸、請求項12に記載の組換え発現ベクター、請求項13に記載の宿主細胞、請求項14に記載の細胞集団、又は請求項15に記載の抗体若しくはその抗原結合部分と、医薬上許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項17】
宿主における癌の存在を検出する方法であって、
(a)宿主由来の1以上の細胞を含むサンプルを、請求項1〜9に記載のCAR、請求項10〜11に記載の核酸、請求項12に記載の組換え発現ベクター、請求項13に記載の宿主細胞、請求項14に記載の細胞集団、又は請求項15に記載の抗体若しくはその抗原結合部分と接触させることによって、複合体を形成する工程、及び
(b)複合体を検出する工程であって、該複合体の検出が宿主における癌の存在を示す、工程、
を含む、方法。
【請求項18】
宿主における癌の治療又は予防のための、請求項1〜9に記載のCAR、請求項10〜11に記載の核酸、請求項12に記載の組換え発現ベクター、請求項13に記載の宿主細胞、請求項14に記載の細胞集団、又は請求項15に記載の抗体若しくはその抗原結合部分の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公表番号】特表2013−506419(P2013−506419A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532100(P2012−532100)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/048701
【国際公開番号】WO2011/041093
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(510002280)アメリカ合衆国 (7)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/048701
【国際公開番号】WO2011/041093
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(510002280)アメリカ合衆国 (7)
【Fターム(参考)】
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